(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(54)【発明の名称】1,2-ビス(ペルフルオロアルキル)エチレンのルイス酸触媒合成
(51)【国際特許分類】
C07C 17/278 20060101AFI20220608BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20220608BHJP
B01J 27/12 20060101ALI20220608BHJP
B01J 27/125 20060101ALI20220608BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220608BHJP
【FI】
C07C17/278
C07C21/18
B01J27/12 Z
B01J27/125 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560262
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-10-12
(86)【国際出願番号】 US2020028687
(87)【国際公開番号】W WO2020214917
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィアチェスラフ エー.ペトロフ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ディー.ロウゼンバーグ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA44A
4G169BB08A
4G169BB08B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC26B
4G169BD12A
4G169BD12B
4G169BD15A
4G169BD15B
4G169CB25
4G169CB62
4G169DA04
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA09
4H006BA13
4H006BA37
4H006BC10
4H006BC11
4H006EA03
4H039CA99
4H039CF10
(57)【要約】
フルオロオレフィンを製造する方法は、式(1)の化合物RfCH=CHFと、式(2)のフッ素化エチレン化合物CX1X2=CX3X4とを、ルイス酸触媒の存在下で接触させる工程を含む。式(1)の化合物において、RfはC1~C10ペルフッ素化アルキル基である。式(2)の化合物において、X1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立してH、Cl、又はFであり、X1、X2、X3、及びX4のうち少なくとも1つはFである。得られた組成物は、式(3)の化合物RfCF3(CX5X6CX7X8)nCH=CHCX9X10CX11X12Fを含む。式(3)の化合物において、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、及びX12はそれぞれ独立してH、Cl、又はFであり、nは0又は1の整数であり、H、Cl、及びFのそれぞれの総数は、式(2)のフッ素化エチレン化合物によりもたらされるH、Cl及びFのそれぞれの総数に対応する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロオレフィンを製造する方法であって、
式(1),R
fCH=CHF(1)
[式中、R
fは、C
1~C
10ペルフッ素化アルキル基又はポリフッ素化アルキル基である]
の化合物を、
式(2),CX
1X
2=CX
3X
4(2)
[式中、X
1、X
2、X
3、及びX
4はそれぞれ独立して、H、Cl、又はFであり、X
1、X
2、X
3、及びX
4のうち少なくとも1つはFである]
のフッ素化エチレン化合物と、
式(3),R
fCF
3(CX
5X
6CX
7X
8)
nCH=CHCX
9X
10CX
11X
12F(3)
[式中、X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、及びX
12はそれぞれ独立して、H、Cl又はFであり、nは0又は1の整数である]
の化合物を含む組成物を形成するのに十分な量でルイス酸触媒の存在下で接触させる工程を含み、
X
5、X
6、X
7、X
8、X
9、X
10、X
11、及びX
12で表されるH、Cl及びFのそれぞれの総数が、式(2)の前記フッ素化エチレン化合物によりもたらされるH、Cl及びFのそれぞれの総数と同じである、方法。
【請求項2】
式(1)の前記化合物がCF
3CH=CHF(1234ze)を含み、
前記組成物が、1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHC
2F
5(F12E)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(2)の前記フッ素化エチレンがCF
2=CF
2(TFE)を含み、
前記組成物が1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHC
2F
5(F12E)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式(1)の前記化合物がCF
3CH=CHF(1234ze)を含み、
式(2)の前記フッ素化エチレンは、CF
2=CF
2(TFE)を含み、
前記組成物が1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHC
2F
5(F12E)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記十分な量が0.01:1~5:1である(TFE):(1234ze)のモル比を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記十分な量が0.1:1~2:1である(TFE):(1234ze)のモル比を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記十分な量が、0.01:1~5:1である式(2)の前記化合物と式(1)の前記化合物とのモル比を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が1,1,1,2,2,5,5,6,6,7,7,7-ドデカフルオロヘプト-2-エン、C
3F
7CH=CHC
2F
5(F23E)を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が4-クロロ-1,1,1,4,5,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHCFClCF
3及び5-クロロ-1,1,1,4,4,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHCF
2CF
2Clを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が希釈剤及び溶媒のうち少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒がペルフッ素化飽和化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ペルフッ素化飽和化合物が、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ヘキサフルオロプロペンの環状二量体(ペルフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン及びペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロブタンの混合物)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(2)の前記フッ素化エチレンがCClF=CF
2(CTFE)を含み、
前記組成物が、4-クロロ-1,1,1,4,5,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHCClFCF
3又は5-クロロ-1,1,1,4,4,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHCF
2CClF
2を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒が塩化アルミニウム(AlCl
3)又は式(4),AlCl
xF
3-
x[式中、x=0.01~0.5]の化合物を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒が塩化アルミニウム(AlCl
3)を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
R
fが、C
2~C
10ペルフッ素化アルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
R
fが、CF
3、C
2F
5、C
3F
7、iC
3F
7、C
4F
9、C
5F
11、i-C
5F
11、C
6F
13又はi-C
6F
13である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記接触させる工程が準周囲温度又は周囲温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記反応が自発圧力(autogenic pressure)下にて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記反応が0.1~300psigで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記反応が閉鎖系で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記接触させる工程が-50℃~50℃の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記触媒が塩化アルミニウム(AlCl
3)又はx=0.01~0.5である塩化フッ素化アルミニウムAlCl
xF
3-
x(ACF)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記触媒が塩化アルミニウム(AlCl
3)を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記希釈剤及び前記溶媒のうち前記少なくとも1つが、前記接触させる工程によって形成される反応生成物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項26】
フルオロオレフィンを製造する方法であって、
1,1,1,2,2,5,5,6,6,7,7,7-ドデカフルオロヘプト-2-エン、C
3F
7CH=CHC
2F
5(F23E)を含む組成物を形成するのに十分な量で触媒の存在下で、CF
3CH=CHF(1234ze)とCF
2=CF
2(TFE)とを接触させる工程を含む、方法。
【請求項27】
前記接触させる工程が-10℃~50℃の温度で行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHC
2F
5(F12E)を更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、4-クロロ-1,1,1,4,5,5,5-へプタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHCFClCF
3及び5-クロロ-1,1,1,4,4,5,5-へプタフルオロペント-2-エン、CF
3CH=CHCF
2CF
2Clを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が希釈剤及び溶媒のうち少なくとも1つを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記溶媒がペルフッ素化飽和化合物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ペルフッ素化飽和化合物が、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ヘキサフルオロプロペンの環状二量体(ペルフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン及びペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロブタンの混合物)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記十分な量が0.01:1~5:1の(TFE):(1234ze)のモル比を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記十分な量が0.1:1~2:1の(TFE):(1234ze)のモル比を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記接触させる工程が準周囲温度又は周囲温度で行われる、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記反応が自発圧力下にて実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記反応が0.1~300psigで実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記反応が閉鎖系で実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記触媒が塩化アルミニウム(AlCl
3)を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つの前記希釈剤及び前記溶媒が、前記接触させる工程によって形成される反応生成物を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項41】
請求項1に記載の方法によって形成される組成物。
【請求項42】
請求項2に記載の方法によって形成される組成物。
【請求項43】
請求項4に記載の方法によって形成される組成物。
【請求項44】
請求項26に記載の方法によって形成される組成物。
【請求項45】
請求項28に記載の方法によって形成される組成物。
【請求項46】
フルオロオリゴマーを製造する方法であって、
CF
3CH=CHCH(CF
3)CF
2Hを含む組成物を形成するのに十分な温度及び圧力にて、触媒の存在下でCF
3CH=CHF(1234ze)を加熱する工程を含む、方法。
【請求項47】
前記触媒が塩化アルミニウム(AlCl
3)又はx=0.01~0.5の塩化フッ素化アルミニウムであるAlCl
xF
3-
x(ACF)を含む、請求項44の方法。
【請求項48】
請求項44に記載の方法によって形成される組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年4月18日に出願された、米国特許出願第62/835714号の恩典を主張する。ここに、本明細書の一部を構成するものとして米国特許出願第62/835714号の開示内容を援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、フッ素化アルケン化合物の製造に関する。
【背景技術】
【0003】
低温熱利用(すなわち、約300℃未満の温度での熱)の関心が存在する。こうした熱は、様々な商業的源、産業的源、又は天然源から取り出されてもよい。加熱要件に合致する、高温機械的圧縮熱ポンプ(HTHP)による利用可能な熱の温度の上昇及び有機ランキンサイクル(ORC)による、利用可能な熱の機械的力又は電力への転換は、低温の熱を利用するための2つの有望なアプローチである。
【0004】
ORC及びHTHPは、作動液体の使用を必要とする。HTHP及びORCに現在一般的に使用される高い地球温暖化係数(GWP)を有する作動液体(例えば、HFC-245fa)はこれまでに参照されているが、HTHP及びORCにとってより環境的に持続可能な作動液体への必要性が存在している。より具体的には、200セルシウス温度(本明細書では「℃」)に近い又はこれを超える温度で利用可能な熱を力へと転換するのに、及び低温にて利用可能な熱から200℃に近い温度で加熱するのに特に好適である、約50℃よりも高い沸点を有する低GWP作動液体への必要性が存在している。更により具体的には、エタノールの沸点(78.4℃)に近い沸点を有する低GWP作動液体は、特にヨーロッパで、重量車(例えば、トラック)向けのORCシステムでのエタノールの代用品として有利である可能性がある。こうした液体はまた、液浸冷却及び相変化冷却(例えば、データセンタの冷却を含む電子機器)を含む、様々な用途向けの溶媒及び熱伝導流体として使用され得る。
【0005】
例えば、F23E(C2F5CH=CHC3F7)といったフルオロアルケンは、実質的な水素化過程/脱水素化過程を含む、4工程過程の調製を使用し、F-ヘプテン-3出発材料を使用して調製されることができる。ただし、この過程は非常に期間が長く、比較的高価な出発材料(F-ヘプテンは、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及び2モルのテトラフルオロエタン(TFE)の反応を使用して作製される)を基とする。
【0006】
国際公開第2008/057513号は、式RCH=CHC2F5である内部ジヒドロフルオロオレフィンの調製のための過程を説明している。この過程は、RCH=CHF[式中、Rは1~10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基から選択され、当該アルキル基は、n-アルキル鎖、sec-アルキル鎖、又はイソ-アルキル鎖であるフッ素化オレフィンのいずれかである]を、五フッ化アンチモン(SbF5)の存在下で液相にてテトラフルオロエチレンと反応させる工程と、ルイス酸触媒を除去する工程と、ジヒドロフルオロオレフィンを単離する工程と、を含む。本明細書の一部を構成するものとして、国際公開第2008/057513号の開示内容を援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第62/835714号
【特許文献2】国際公開第2008/057513号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、
式(1)、
RfCH=CHF(1)
[式中、Rfは、C1~C10ペルフッ素化アルキル基又はポリフッ素化アルキル基である]
の化合物と、
式(2)、
CX1X2=CX3X4(2)
[式中、X1、2、X3、及びX4はそれぞれ独立して、H、Cl、又はFであり、
X1、X2、X3、及びX4のうち少なくとも1つはFである]
のフッ素化エチレン化合物と、
式(3)、
RfCF3(CX5X6CX7X8)nCH=CHCX9X10CX11X12F(3)
[式中、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、及びX12はそれぞれ独立してH、Cl又はFであり、nは0又は1の整数である]
の化合物を含む組成物を形成するのに十分な量でルイス酸触媒の存在下で接触させる工程を含み、
X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、及びX12で表されるH、Cl及びFのそれぞれの総数が、式(2)のフッ素化エチレン化合物によりもたらされるH、Cl及びFのそれぞれの総数と同じである、フルオロオレフィンを製造する方法に関する。
【0009】
本発明の別の実施形態は、
式(1)の化合物が、CF3CH=CHF(1234ze)を含み、
組成物が1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、3CH=CHC2F5(F12E)を含む、前述の実施形態を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態は、
式(2)のフッ素化エチレンが、CF2=CF2(TFE)を含み、
組成物が1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、3CH=CHC2F5(F12E)を含む、前述の実施形態を含む。
【0011】
本発明の別の実施形態は、
式(1)の化合物が、CF3CH=CHF(1234ze)を含み、
式(2)のフッ素化エチレンは、CF2=CF2(TFE)を含み、
組成物が1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、3CH=CHC2F5(F12E)を含む、前述の実施形態を含む。
【0012】
本発明の別の実施形態は、十分な量が0.01:1~5:1である(TFE):(1234ze)のモル比を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0013】
本発明の別の実施形態は、十分な量が0.1:1~2:1である(TFE):(1234ze)のモル比を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0014】
本発明の別の実施形態は、十分な量が、0.01:1~5:1である式(2)の化合物と式(1)の化合物のモル比を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0015】
本発明の別の実施形態は、組成物が1,1,1,2,2,5,5,6,6,7,7,7-ドデカフルオロヘプト-2-エン、C3F7CH=CHC2F5(F23E)を更に含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0016】
本発明の別の実施形態は、組成物が4-クロロ-1,1,1,4,5,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCFClCF3及び5-クロロ-1,1,1,4,4,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCF2CF2Clを更に含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0017】
本発明の別の実施形態は、組成物が希釈剤及び溶媒のうち少なくとも1つを更に含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0018】
本発明の別の実施形態は、溶媒がペルフッ素化飽和化合物である、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0019】
本発明の別の実施形態は、ペルフッ素化飽和化合物が、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ヘキサフルオロプロペンの環状二量体(ペルフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン及びペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロブタンの混合物)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0020】
本発明の別の実施形態は、
式(2)のフッ素化エチレンがCClF=CF2(CTFE)を含み、
組成物が4-クロロ-1,1,1,4,5,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCClFCF3又は5-クロロ-1,1,1,4,4,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCF2CClF2を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0021】
本発明の別の実施形態は、
触媒が塩化アルミニウム(AlCl3)又は式(4)、
AlClxF3-x[式中、x=0.01~0.5]の化合物を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0022】
本発明の別の実施形態は、触媒が塩化アルミニウム(AlCl3)を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0023】
本発明の別の実施形態は、Rfが、C2~C10ペルフッ素化アルキル基である、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0024】
本発明の別の実施形態は、Rfが、CF3、C2F5、C3F7、iC3F7、C4F9、C5F11、i-C5F11、C6F13又はi-C6F13である、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0025】
本発明の別の実施形態は、接触させる工程が準周囲温度又は周囲温度で行われる、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0026】
本発明の別の実施形態は、反応が自発圧力(autogenic pressure)下にて実施される、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0027】
本発明の別の実施形態は、反応が0.1~300psigで実施される、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0028】
本発明の別の実施形態は、反応が閉鎖系で実施される、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0029】
本発明の別の実施形態は、接触させる工程が-50℃~50℃の温度で行われる前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0030】
本発明の別の実施形態は、触媒が塩化アルミニウム(AlCl3)又はx=0.01~0.5である塩化フッ素化アルミニウムAlClxF3-x(ACF)を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0031】
本発明の別の実施形態は、触媒が塩化アルミニウム(AlCl3)を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0032】
本発明の別の実施形態は、希釈剤及び溶媒のうち少なくとも1つが、当該接触させる工程によって形成される反応生成物を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0033】
本発明の一実施形態は、
1,1,1,2,2,5,5,6,6,7,7,7-ドデカフルオロヘプト-2-エン、C3F7CH=CHC2F5(F23E)を含む組成物を形成するのに十分な量で触媒の存在下で、CF3CH=CHF(1234ze)とCF2=CF2(TFE)とを接触させる工程を含む、フルオロオレフィンを製造する方法に関する。
【0034】
本発明の別の実施形態は、接触させる工程が-10℃~50℃の温度で行われる、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0035】
本発明の別の実施形態は、組成物が1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHC2F5(F12E)を更に含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0036】
本発明の別の実施形態は、組成物が、4-クロロ-1,1,1,4,5,5,5-へプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCFClCF3及び5-クロロ-1,1,1,4,4,5,5-へプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCF2CF2Clを更に含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0037】
本発明の別の実施形態は、組成物が希釈剤及び溶媒のうち少なくとも1つを更に含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0038】
本発明の別の実施形態は、溶媒がペルフッ素化飽和化合物である、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0039】
本発明の別の実施形態は、ペルフッ素化飽和化合物が、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ヘキサフルオロプロペンの環状二量体(ペルフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン及びペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロブタンの混合物)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0040】
本発明の別の実施形態は、十分な量が0.1:1~5:1である(TFE):(1234ze)のモル比を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0041】
本発明の別の実施形態は、十分な量が0.1:1~2:1である(TFE):(1234ze)のモル比を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0042】
本発明の別の実施形態は、接触させる工程が準周囲温度又は周囲温度で行われる、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0043】
本発明の別の実施形態は、反応が自発圧力下にて実施される、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0044】
本発明の別の実施形態は、反応が0.1~300psigで実施される、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0045】
本発明の別の実施形態は、反応が閉鎖系で実施される、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0046】
本発明の別の実施形態は、触媒が塩化アルミニウム(AlCl3)を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0047】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの希釈剤及び溶媒が、接触させる工程によって形成される反応生成物を含む、前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0048】
本発明の一実施形態は、
CF3CH=CHCH(CF3)CF2Hを含む組成物を形成するのに十分な温度及び圧力にて、触媒の存在下で、CF3CH=CHF(1234ze)を加熱する工程を含む、フルオロオリゴマーを製造する方法に関する。
【0049】
本発明の別の実施形態は、触媒が塩化アルミニウム(AlCl3)又はx=0.01~0.5である塩化フッ素化アルミニウムAlClxF3-x(ACF)を含む前述の実施形態の任意の組合せを含む。
【0050】
一実施形態において、フルオロオレフィンを製造する方法は、式(1)の化合物RfCH=CHFと、式(2)のフッ素化エチレン化合物CX1X2=CX3X4とを接触させる工程を含む。式(1)の化合物において、RfはC1~C10ペルフッ素化アルキル基である。式(2)の化合物において、X1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立してH、Cl、又はFであり、X1、X2、X3、及びX4のうち少なくとも1つはFである。接触させる工程は、ある量でルイス酸触媒の存在下で、式(3)の化合物RfCF3(CX5X6CX7X8)nCH=CHCX9X10CX11X12Fを含む組成物を形成するのに十分な条件の下で行われる。式(3)の化合物において、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、及びX12はそれぞれ独立して、H、Cl、又はFであり、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、及びX12で表されるH、Cl及びFのそれぞれの総数は、式(2)のフッ素化エチレン化合物によりもたらされるH、Cl及びFのそれぞれの総数と同じである。
【0051】
別の実施形態において、フルオロオレフィンを製造する方法は、1,1,1,2,2,5,5,6,6,7,7,7-ドデカフルオロヘプト-2-エン、C3F7CH=CHC2F5(F23E)を含む組成物を形成するのに十分な量で触媒の存在下で、CF3CH=CHF(1234ze)とCF2=CF2とを接触させる工程を含む。
【0052】
別の実施形態において、フルオロオリゴマーを製造する方法は、CF3CH=CHCH(CF3)CF2Hを含む組成物を形成するのに十分な温度及び圧力で、触媒の存在下で、CF3CH=CHF(1234ze)を加熱する工程を含む。
【0053】
本発明の一実施形態は、前述の方法の任意の組合せによって形成される組成物に関する。
【0054】
この実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせた状態で使用され得る。本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の原理を例示する添付図面と併せてなされる、以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0055】
フッ素化アルケンの製造のためのワンステップ合成を提供する。
【0056】
例えば本明細書にて開示される特徴のうち1つ以上を含まない概念と比較すると、本開示の実施形態はフッ素化アルケンの製造のためのワンステップ合成を提供する。より具体的には、本開示はペルフッ素化アルキル鎖を有するフッ素化アルケンの製造のためのワンステップ合成を提供する。
【0057】
この手法は、気相フッ素化反応に好適な任意の反応器にて実施されてもよい。反応器は使用される反応物質に耐性がある材料から製造される。反応器は、ステンレス鋼、Hastelloy(登録商標)、Inconel(登録商標)、Monel(登録商標)、金、又は金線又は石英といったフッ化水素の腐食効果に耐性がある材料から構成されていてもよい。反応は、回分式、連続式、半連続式、又はこれらの組合せであってもよい。好適な反応器としては、バッチ反応容器及び管状反応器が挙げられる。
【0058】
一実施形態において、式(1)、
RfCH=CHF(1)
[式中、RfはC1~C10ペルフッ素化アルキル基である]の化合物を、
反応器に充填して加熱し、触媒の存在下で式(2)、
CX1X2=CX3X4(2)
[式中、X1、X2、X3、及びX4はそれぞれ独立して、H、Cl、又はFであり、
X1、X2、X3、及びX4のうち少なくとも1つがFである]のフッ素化エチレン化合物、と接触させる。
【0059】
反応器の温度及び圧力を、ルイス酸触媒の存在下で式(3)、
RfCF3(CX5X6CX7X8)nCH=CHCX9X10CX11X12F(3)
[式中、X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、及びX12はそれぞれ独立してH、Cl、又はFであり、nは0又は1の整数である]の化合物を含み、
X5、X6、X7、X8、X9、X10、X11、及びX12で表されるH、Cl及びFのそれぞれの総数が、式(2)のフッ素化エチレン化合物によりもたらされるH、Cl及びFのそれぞれの総数と同じである、組成物の形成を引き起こすのに十分なレベルに維持する。
【0060】
いくつかの実施形態において、式(1)の化合物は1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、CF3CH=CHF(1234ze)を含む。一実施形態において、式(1)の化合物はCF3CH=CHF(1234ze)を含む。いくつかの実施形態において、Rfは直鎖又は分枝鎖ペルフッ素化アルキル基又はポリフッ素化アルキル基であってもよい。いくつかの実施形態において、Rfは、CF3、C2F5、C3F7、iC3F7、C4F9、C5F11、i-C5F11、C6F13又はi-C6F13であってもよい。
【0061】
いくつかの実施形態において、式(2)のフッ素化エチレンは、テトラフルオロ-エテン、CF2=CF2又はCFCl=CF2(1-クロロ-1,2,2-トリフルオロ-エテン)、CF2=CH2(1,1-ジフルオロ-エテン)、CH2=CHF(1-フルオロ-エテン)、CF2=CCl2(1,1-ジクロロ-2,2-ジフルオロ-エテン)、CFCl=CFC(1,2-クロロ-1,2-ジフルオロ-エテン)のうち少なくとも1つを含む。一実施形態において、式(2)のフッ素化エチレンはテトラフルオロ-エテンCF2=CF2を含む。
【0062】
一実施形態において、式(1)の化合物はCF3CH=CHF(1234ze)を含み、式(2)のフッ素化エチレンはCF2=CF2を含む。CF3CH=CHF(1234ze)とCF2=CF2(TFE)の反応により、1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHC2F5(F12E)を含む組成物の形成が生じてもよい。
【0063】
必要な場合には、1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エンは、使用前に単離及び任意で精製されてもよい。1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エンの好適な使用は、熱力学サイクルを利用する系での作動液体、反応中間体、冷媒、相変化の有無に関わらない熱伝導流体、及び溶媒を含むが、これに限定されない。
【0064】
いくつかの実施形態において、式(2)のフッ素化エチレンは多数の式(2)の化合物を含んでもよい。得られた式(3)の化合物は、式(3)の多数の化合物を含んでもよい。一実施形態において、式(2)のフッ素化エチレンは、テトラフルオロ-エテンCF2=CF2(TFE)及び1-クロロ-1,2,2-トリフルオロ-エテンを含んでもよい。更なる実施形態において、式(1)の化合物はCF3CH=CHF(1234ze)を含んでもよい。
【0065】
得られた式(3)の化合物は、1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHC2F5(F12E)、並びに4-クロロ-1,1,1,4,5,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCFClCF3及び/又は5-クロロ-1,1,1,4,4,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCF2CF2Cl、4,5-ジクロロ-1,1,1,4,5,5-ヘキサフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCFClCF2Cl、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCH2CF3を含んでもよい。代替的な実施形態において、式(3)の化合物は、4-クロロ-1,1,1,4,5,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCClFCF3又は5-クロロ-1,1,1,4,4,5,5-ヘプタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHCF2CClF2を含んでもよい。
【0066】
本発明に従い、接触される式(2)の化合物対式(1)の化合物のモル比は、組成物及び反応生成物の比率を制御するために使用され得る。いくつかの実施形態において、式(2)の化合物と式(1)の化合物は、0.01:1~5:1のモル比が得られる量で接触される。一実施形態において、式(2)の化合物と式(1)の化合物は、0.1:1~2:1である(2):(1)のモル比が得られる量で接触される。約1:1の接触モル比はC5化合物を生成することができ、約2:1のモル比はC7化合物を生成することができる。任意の所望の比率が使用されることができるが、約2:1の比率が有用である。一実施形態において、式(2)の化合物と式(1)の化合物は、1:1~2:1である(2):(1)のモル比が得られる量で接触される。一実施形態において、式(2)の化合物は(TFE)であり、式(1)の化合物は(1234ze)である。
【0067】
反応条件及び化学量論は、上に説明される1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エン、CF3CH=CHC2F5(F12E)といった式(3)の化合物が反応中間体として作用することが可能であるように選択されてもよい。いくつかの実施形態において、式(2)のフッ素化エチレンは式(1)の化合物の量に対して化学量論的に過剰な状態で提供されてもよい。いくつかの実施形態において、(TFE)といった過剰な式(2)の化合物により、式(2)の化合物の1つ以上の追加単位が、拡張炭素鎖を有する追加の式(3)の化合物を形成するために、1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロペント-2-エンと反応することが可能となる。一実施形態において、式(3)の化合物を含む組成物は、1,1,1,2,2,5,5,6,6,7,7,7-ドデカフルオロヘプト-2-エン、C3F7CH=CHC2F5(F23E)を含んでもよい。
【0068】
反応は、閉鎖系にて通常実施される。いくつかの実施形態において、ルイス酸は強ルイス酸である。一実施形態において、触媒は塩化アルミニウム(AlCl3)、又は五フッ化アンチモン(SbF5)、又は塩化フッ素化アルミニウムAlClxF3-xである。いくつかの実施形態において、アルミニウムベースの触媒に関して、xは1~3の整数であってもよい。いくつかの実施形態において、xは0.01~0.5であってもよい。触媒量は、反応混合物の約0.1~約20重量パーセント、いくつかの場合では約1~15重量%、いくつかの場合では約5~約10重量%の範囲であることができる。
【0069】
追加の好適な強ルイス酸は、(Chemical Reviews,1996,v.96,pp.3269-3301;強ルイス酸の一覧は3271ページに記載される)にて見いだすことができ、その内容が参照として本明細書に組み入れられる。いくつかの実施形態において、反応混合物は準周囲温度又は周囲温度に加熱される。いくつかの実施形態において、反応混合物は-50℃~50℃の温度に加熱される。一実施形態において、反応混合物は-50℃~25℃の温度に加熱される。いくつかの実施形態において、反応は0.1重量ポンド毎平方インチゲージ(psig)~300重量ポンド毎平方インチゲージ(psig)の反応圧にて行われる。いくつかの実施形態において、反応は自発圧力下にて行われる。
【0070】
いくつかの実施形態において、式(3)の化合物の形成は、反応混合物の全ての構成成分が可溶であるかどうかに応じて、溶媒又は希釈剤のうち少なくとも1つの存在下で実施されてもよい。いくつかの実施形態において、溶媒又は希釈剤はペルフッ素化飽和化合物である。いくつかの実施形態において、ペルフッ素化飽和化合物は、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ヘキサフルオロプロペンの環状二量体(ペルフルオロ-1,2-ジメチルシクロブタン及びペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロブタンの混合物)及びこれらの組合せを含んでもよい。又は反応の生成物は反応媒体として使用され得る。溶媒又は希釈剤の少なくとも1つの量は、反応容器の約10~約50体積パーセント、約15~40体積パーセント、いくつかの場合では約20~30体積パーセントの範囲であり得る。
【0071】
特定の一実施形態において、少なくとも1つの希釈剤又は溶媒は、式(1)及び(2)を接触させる工程により形成される反応生成物を含む。バッチ法では反応環境中の反応生成物の残留部をそのまま残しておくことから、連続法では、反応生成物希釈剤又は溶媒を一部の回収された反応生成物を再利用することで反応環境へと供給することができ、これは希釈剤又は溶媒を反応環境へと送達するとりわけ好適な技術である。
【0072】
式(3)の化合物は、例えば熱伝導流体又は冷媒といった熱の移動を目的とする多数の用途にて使用されてもよい。一実施形態において、式(3)の化合物は物品から熱を移動するために使用されてもよい。物品を、少なくとも1つの式(3)の化合物を含む熱伝導媒質と接触させてもよい。
【0073】
代替的な実施形態において、式(1)の化合物は二量体化されてもよい。式(1)の化合物を、例えば五フッ化アンチモン(SbF5)といった触媒の存在下で、式(2)のフッ素化エチレン化合物がない状態で、それ自体と反応させてもよい。いくつかの実施形態において、反応は溶媒の存在下で遂行されてもよい。好適な溶媒としては、上に説明されるものが挙げられる。
【0074】
代替的な実施形態の一例において、二量体は以下に示すように、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、CF3CH=CHF(1234ze)を反応させることにより形成されてもよい。
【0075】
【0076】
本発明の一実施形態において、反応はOH基を有する化合物を含まない環境、又はこれを実質的に含まない環境で実施される。このようなOH含有化合物の例は、炭化水素グリース又は油、及び水又はアルコールといったOH基を有する溶媒である。実質的に含まないとは、50ppm未満、25ppm未満及びいくつかの場合では10ppm未満のOH含有化合物が存在することを意味する。
【0077】
本明細書で使用される際、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、列挙する要素を含む、組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない他の要素、又はそのような組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器などに伴われる他の要素を包含し得る。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下、すなわち、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つにより満たされる。
【0078】
移行句「からなる(consisting of)」は、特定されていないあらゆる要素、工程、又は成分を除外する。特許請求の範囲における場合には、このような語句は、材料に通常付随する不純物を除き、列挙された材料以外の材料の包含を特許請求項から締め出すものである。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく請求項の本文の節内で現れる場合、この語句はその節の中に示される要素のみを限定するものであり、その他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。
【0079】
移行句「から本質的になる(consisting essentially of)」は、文字どおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素は、請求される発明の基本的及び新規の特徴、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための行動様式に実質的に影響を及ぼす。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の意味を持つ。
【0080】
出願人らが、発明又はその一部を、「含む」などの非限定的な用語で定義していた場合、(特に明記しない限り)その記載は、用語「から本質的になる」又は「からなる」を使用する発明もまた含むと解釈すべきであることが容易に理解されるべきであろう。
【0081】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0082】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を例示するために提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0083】
式(3)の化合物の形成に関する典型例を以下に示す。
【0084】
(実施例1)
SbF5により触媒されるHFO-1234zeとクロロトリフルオロエチレンの反応
【0085】
【化2】
400mLのHastelloy(登録商標)撹拌管に12g(0.055モル)のSbF
5を充填し、撹拌管をドライアイスで冷却させ、排気して150g(1.32モル)のHFO-1234ze及び150g(1.29モル)のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を充填した。バリケードを配置し、周囲温度に加温して16時間撹拌し続けた。反応容器を、氷を使用して冷却し、通気させて液状生成物に1Lの水を加えた。有機層を分離し、MgSO
4上で乾燥させ、ろ過して290gの粗製品を得た。これを分別し、沸点が59~62℃である、148g(50%の収率)の留分を得た。これは、比率36:64である、CF
3CH=CHCF
2CF
2ClとCF
3CH=CHCFClCF
3の混合物として同定された(この留分の純度は97.8%)。この留分を再度蒸留し、沸点が60~61℃である、99.3%の純度である120gの材料を得た。
E-CF
3CH=CHCF
2CF
2Cl:
19F NMR(CDCl
3):-66.38(3F,m),-71.74(2F,m),-113.98(2F,m)ppm
E-CF
3CH=CHCFClCF
3:
19F NMR(CDCl
3):-66.90(3F,m),-82.15(3F,m),-131.82(1F,m)ppm
1H NMR(CDCl
3、混合異性体):6.48(m)ppm
GC/MS(m/z、異性体の混合物):230(M
+、C
5H
2ClF
7
+)
【0086】
反応生成物の混合物中のCF3CH=CHCF2CF2ClとCF3CH=CHCFClCF3の比率は、変化し得る。反応生成物の比率は、約30:70、約32:68、約34:66、及びいくつかの場合では約36:64の範囲であり得る。
【0087】
(実施例2)
AlCl3により触媒されるHFO-1234zeとクロロトリフルオロエチレンの反応
【0088】
【化3】
400mLのHastelloy(登録商標)撹拌管に12g(0.09モル)の無水粉砕AlCl
3を充填した。撹拌管をドライアイスで冷却させ、排気して75g(0.66モル)のHFO-1234ze及び75g(0.64モル)のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を充填した。撹拌管をバリケード内に配置し、周囲温度に加温して16時間撹拌し続けた。反応器を、氷を使用して冷却し、通気させて液状生成物に1Lの水を加えた。有機層を分離し、MgSO
4上で乾燥させ、ろ過して148gの粗製品を得た。これは、より高い沸点材料と共に、68%のCF
3CH=CHCF
2CF
2ClとCF
3CH=CHCFClCF
3の混合物(CF
3CH=CHCF
2CF
2ClとCF
3CH=CHCFClCF
3の比率は54:46)を含有することが明らかとなった。C
5H
2ClF
7留分の算出された収率は66%であった。
【0089】
必要な場合には、触媒量を変化させることができる。CF3CH=CHCF2CF2ClとCF3CH=CHCFClCF3の反応生成物の比率は、約64:36、約62:38、及びいくつかの場合では約60:40の範囲であり得る。
【0090】
SbF5とのHFO-1234zeの反応(比較例)。
【0091】
1LのHastelloy(登録商標)撹拌反応器に、11g(0.05モル)のSbF5を充填し、ドライアイスで冷却させ、窒素を伴い加圧することで漏れを確認し、通気させて排気し、500g(4.4モル)のHFO1234zeを反応器中で凝縮させた。これを周囲温度に戻し、25~30℃で12時間維持し、水(100mL)を、ポンプを使用して反応器に注入した。反応器を通気して開放し、反応混合物を1Lの水を含有する分液漏斗に加え、有機層を分離し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過して474gの粗生成物を得た。これを更にフラッシュ蒸留して、400gの粗成生物を得た。Hastelloy(登録商標)を詰めた36インチのガラスカラムを使用して分別し、86~87℃の沸点である350g(70%収率)の材料を得た。これをNMR及びGC/MSにより3%のZ-異性体を含有するE-CF3CH=CHCH(CF3)CF2Hであると同定した。
E-CF3CH=CHCH(CF3)CF2H:
19F NMR(CDCl3):-65.86(3F,m),-67.47(3F,m),-120.00(1F,ddm,300,54.1Hz),-123.60(1F,ddm,300,54.1Hz)ppm
1H(NMR(CDCl3、混合異性体):6.06(1H,m),6.10(1H,t,d,54.1,2.5Hz),6.33(1H,m)ppm
GC/MS(m/z):228(M+,C6H4F8
+)
【0092】
(実施例3)
AlCl3により触媒されるHFO-153-10zeとクロロトリフルオロエチレンの反応
【0093】
【化4】
ドライボックス内部にて、50mLのフラスコに1.0g(0.007モル)の無水粉砕AlCl
3を充填した。これに、熱電対、マグネチックスターラ及び窒素ラインに接続されたドライアイス凝縮器を備え付けた。反応器を氷で冷却させ、11g(0.042モル)のHFO-153-10ze((C
4F
9CH=CHF)を充填し、5g(0.042モル)のクロロトリフルオロエチレン(CTFE)を、30分以上の期間にわたって気体注入口を介して反応混合物へと導入した。反応容器を、水浴中でゆっくりと周囲温度に加温し、4時間撹拌し続けた。粗反応混合物を300mLの水で希釈し、有機層を分離してMgSO
4上で乾燥させ、ろ過して15gの粗製品を得た。これを10インチのビグリューカラムを使用して蒸留し、3%のより高い沸点材料と共に、C
4F
9CH=CHCF
2CF
2Cl及びC
4F
9CH=CHCFClCF
3(比率54:46)の混合物を含有する120~129℃が沸点の7.9g(75%)の物質を得た。
E-C
4F
9CH=CHCF
2CF
2Cl:
19F NMR(CDCl3,J,Hz):-71.53(2F,t,4.7,Hz),-81.10(3Ft,8.5,Hz),-113.68(2F,m),-114.16(2F,m)-124.35(2F,m),-125.85(2F,m)ppm
1H NMR(CDCl3 J,Hz):6.50(m)
E-C
4F
9CH=CHCFClCF
3:
19F NMR(CDCl3,J,Hz):-81.10(3Ft,8.5,Hz),-81.84(3F,d,7.1,Hz),-113.68(2F,m),-124.35(2F,m),-125.85(2F,m),-131.68(1F,m)ppm
1H NMR(CDCl3 J,Hz):6.50(m)
MS(z/e、異性体の混合物):361[(M-F)
+、C
8H
2ClF
12
+)
【0094】
C4F9CH=CHCF2CF2Cl及びC4F9CH=CHCFClCF3の反応生成物の比率は、約64:36、約62:38、及びいくつかの場合では約60:40の範囲であり得る。
【0095】
(実施例4)
AlCl3により触媒されるHFO-1234zeとテトラフルオロエチレンの反応
【0096】
【化5】
400mLのHastelloy(登録商標)撹拌管に5g(0.038モル)の無水粉砕AlCl
3を充填し、撹拌管をドライアイスで冷却させ、排気して60g(0.52モル)のHFO-1234ze及び50g(0.5モル)のテトラフルオロエチレン(TFE)を充填した。撹拌管をバリケード内に配置し、2時間周囲温度に加温した。更に50g(0.5モル)のTFEを充填し、12時間撹拌し続けた。反応器を氷で冷却し、通気して液状生成物(140g)に1Lの水を加えた。有機層を分離し、MgSO
4上で乾燥させ、ろ過して130gの粗製品を得た。これは65%のE-CF
3CH=CHCF
2CF
3(F12E)と35%のE-C
2F
5CH=CHC
3F
7(F23E)を含有していた。10インチのビグリューカラムを使用して分別し、GC/MS及びNMRによりCF
3CH=CHCF
2CF
3(沸点は29~30℃)として同定された46g(収率43%)の材料、及びNMR及びGC/MSによりE-C
2F
5CH=CHC
3F
7(純度98%)として同定された28g(収率17%)の沸点70~74℃(主に73~74℃)の材料を得た。
E-CF
3CH=CHCF
2CF
3:
19F NMR(CDCl
3):-66.30(3F,dm,4.1,1.5Hz),-85.07(3F,m),-117.98(2F,dm,8.7,2.3Hz)ppm
GC/MS(m/z):214(M
+,C
5H
2F
8
+)
1H NMR(CDCl
3):6.46(m)ppm
E-C
2F
5CH=CHC
3F
7:
19F NMR(CDCl
3):-80.66(3F,t,9.1Hz),-85.07(3F,m),-115.28(2F,quint.,8.7Hz),-117.88(2F,dm,8.5,2.0Hz),-127.88(2F,s)ppm。
1H NMR(CDCl
3):6.46(m)ppm
GC/MS(m/z):314(M
+,C
7H
2F
12
+)
【0097】
必要な場合には、反応生成物混合物中のE-CF3CH=CHCF2CF3(F12E)とE-C2F5CH=CHC3F7(F23E)は、反応物質の量を変化させることにより変化させることができる。反応生成物中のE-CF3CH=CHCF2CF3(F12E)とE-C2F5CH=CHC3F7(F23E)の量は、1重量%:100重量%、25重量%:75重量%、及びいくつかの場合では約50重量%:50重量%で変化し得る。
【0098】
(実施例5)
AlCl3により触媒されるHFO-1234zeとフッ化ビニリデンの反応
【0099】
【化6】
この反応は、一度に冷却された反応容器に加えられる5%(0.038モル)の無水粉砕AlCl
3、60g(0.52モル)のHFO-1234ze、及び32g(0.5モル)のフッ化ビニリデン(VF2)を使用し、60g(0.52モル)の400mLのHastelloy(登録商標)撹拌管にて同様の方式にて実施された。反応混合物を、上に説明されるもののように後処理した。粗生成物(89g)を、特性付けされていない60gの更に高い沸点の材料と共に蒸留し、沸点が63~68℃を有する21g(収率24%)の留分を得た。これは、GC/MS及びNMRにより、E-CF
3CH=CHCH
2CF
3とZ-CF
3CH=CHCH
2CF
3の混合物(比率92:8)として同定された。
E-CF
3CH=CHCH
2CF
3:
19F NMR(CDCl
3):-65.93(3F,t,9.2Hz),-65.31(3F,dm,5.2,1.5Hz)ppm
1H NMR(CDCl
3):2.97(2H,quint,8.6Hz),5.91(1H,m),6.33(1H,m)ppm
Z-CF
3CH=CHCH
2CF
3:
19F NMR(CDCl
3):-59.36(3F,d,7.9Hz),-66.41(3F,t,9.2Hz)ppm
1H NMR(CDCl
3):3.16(2H,quint,8.6Hz),5.91(m),6.33(1H,m)ppm
GC/MS(m/z、混合異性体):178(M
+、C
5H
4F
6
+)
【0100】
AlCl3により触媒されるHFO-1234yfとテトラフルオロエチレンの反応(比較例)。
【0101】
5g(0.038モル)の無水粉砕AlCl3、115g(1モル)のHFO1234yf(CF3CF=CH2、HFO-1234ze)及び50gのTFEの反応を、周囲温度にて400mLのHastelloy(登録商標)の撹拌管中で上に説明されるように実行した。16時間の間にわたり圧力降下は観察されず、撹拌管を通気した後には液状生成物は一切回収されなかった。
【0102】
生成混合物中でのE-CF3CH=CHCH2CF3とZ-CF3CH=CHCH2CF3の比率は、約1重量%:100重量%、約25重量%:75重量%、及びいくつかの場合では、約50重量%:50重量%の範囲であった。この比率は、反応物質の比率、追加の溶媒及び温度のうち少なくとも1つを変更することにより変化し得る。
【0103】
本発明を1つ以上の実施形態を参照して説明してきたが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに同等物を使用することができることが理解されるであろう。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むことが意図される。加えて、詳細な説明で特定された全ての数値は、正確な及び近似的な値が両方とも明示的に特定されているかのように解釈されるものとする。
【国際調査報告】