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特表2022-528846負極集電体、負極シート及び電気化学装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】負極集電体、負極シート及び電気化学装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20220609BHJP
【FI】
H01M4/66 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021557695
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(85)【翻訳文提出日】2021-09-28
(86)【国際出願番号】 CN2019090403
(87)【国際公開番号】W WO2020237712
(87)【国際公開日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】201910473184.6
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼欣
(72)【発明者】
【氏名】黄起森
(72)【発明者】
【氏名】王▲シ▼▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】盛▲長▼亮
(72)【発明者】
【氏名】彭佳
(72)【発明者】
【氏名】李▲銘▼▲領▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼向▲輝▼
【テーマコード(参考)】
5H017
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017AS10
5H017BB08
5H017DD03
5H017DD05
5H017DD06
5H017EE01
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH00
5H017HH01
5H017HH03
(57)【要約】
本願は、負極集電体、負極シート及び電気化学装置を開示する。負極集電体は、有機支持層と、有機支持層の少なくとも一つの表面に設けられた銅系導電層と、を含み、銅系導電層における銅系結晶粒径dは、10nm~500nmである。本願に係る負極集電体は、良好な力学的性能を有し、同時に比較的軽い重量と良好な導電及び集電の性能とを両立させるため、負極集電体、負極シート及び電気化学装置の製造良品率と使用中の安全性及び信頼性とを向上させることができ、電気化学装置が高い重量エネルギー密度及び良好な電気化学的特性を有するのに有利である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体であって、
有機支持層と、前記有機支持層の少なくとも一つの表面に設けられた銅系導電層と、を含み、
前記銅系導電層における銅系結晶粒径dは、10nm~500nmである、
負極集電体。
【請求項2】
前記銅系導電層の厚さDと前記銅系結晶粒径dとは、1≦D/d≦300を満たし、好ましくは2≦D/d≦100であり、より好ましくは3≦D/d≦50であり、及び/又は、
前記銅系導電層における銅系結晶粒径dは、30nm~300nmであり、好ましくは50nm~150nmである、
請求項1に記載の負極集電体。
【請求項3】
前記有機支持層のヤング率Eは、E≧2GPaであり、好ましくは52GPa≦E≦20GPaである、
請求項1に記載の負極集電体。
【請求項4】
前記負極集電体の破断伸び率は、3%以上である、
請求項1に記載の負極集電体。
【請求項5】
前記銅系導電層の厚さDは、30nm≦D≦3μmであり、好ましくは300nm≦D≦2μmであり、好ましくは500nm≦D≦1.5μmであり、より好ましくは600nm≦D≦1.2μmであり、及び/又は、
前記有機支持層の厚さDは、1μm≦D≦30μmであり、好ましくは1μm≦D≦15μmであり、好ましくは1μm≦D≦10μmであり、好ましくは1μm≦D≦8μmであり、好ましくは2μm≦D2≦8μmであり、より好ましくは2μm≦D≦6μmである、
請求項1に記載の負極集電体。
【請求項6】
前記銅系導電層は、銅及び銅合金のうちの一種類又は複数種類を含み、
前記銅合金は、銅元素及び添加元素を含み、前記添加元素は、好ましくは、チタン、バナジウム、ニッケル、クロム、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、ニオブ、タングステン、銀、パラジウム及びカドミウムのうちの一種類又は複数種類であり、前記銅合金における銅元素の質量百分率含有量は、好ましくは80wt%以上であり、
好ましくは、前記銅系導電層は、気相蒸着層又は電気メッキ層である、
請求項1に記載の負極集電体。
【請求項7】
前記有機支持層は、高分子材料及び高分子系複合材料のうちの一種類又は複数種類を含み、
前記高分子材料は、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアセチレン、シリコーンゴム、ポリオキシメチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレングリコール、ポリ窒化硫黄類、ポリフェニル、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピリジン、セルロース、デンプン、タンパク質、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、これらの誘導体、それらの架橋物及びそれらの共重合体のうちの一種類又は複数種類であり、
前記高分子系複合材料は、前記高分子材料と、金属材料及び無機非金属材料のうちの一種類又は複数種類を含む添加剤と、を含む、
請求項1に記載の負極集電体。
【請求項8】
前記銅系導電層の自身の厚さ方向において対向する2つの面の少なくとも一つに設けられた保護層をさらに備え、
前記保護層は、金属、金属酸化物及び導電性炭素のうちの一種類又は複数種類を含み、好ましくは、ニッケル、クロム、ニッケル系合金、銅系合金、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化ニッケル、グラファイト、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーの一種類又は複数種類を含み、
好ましくは、前記保護層の厚さDは、1nm≦D≦200nmであり、前記保護層の厚さDと前記銅系導電層の厚さDとは、D≦0.1Dを満たす、
請求項1に記載の負極集電体。
【請求項9】
負極シートであって、
負極集電体と、前記負極集電体に設けられた負極活物質層と、を備え、
前記負極集電体は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の負極集電体である、
負極シート。
【請求項10】
電気化学装置であって、
正極シート、負極シート及び電解質を含み、
前記負極シートは、請求項9に記載の負極シートである、
電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年5月31日に提出された「負極集電体、負極シート及び電気化学装置」の発明名称の中国特許出願201910473184.6の優先権を主張し、その全ての内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、電気化学装置の技術分野に属し、特に、負極集電体、負極シート及び電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電気化学装置、例えばリチウムイオン二次電池は、良好な充放電性能を備え、且つ環境に優しく、電気自動車及び消費類電子製品に広く利用されている。集電体は、電気化学装置の重要な構成要素であり、活物質層を支持すると共に、活物質層で生成された電流を集めて外部へ出力する。従って、集電体は、電極シート及び電気化学装置の性能に重要な影響を及ぼす。
【0004】
本願は、上記に鑑みて、優れた性能の負極集電体、負極シート及び電気化学装置を提案する。
【発明の概要】
【0005】
本願の実施例は、負極集電体、負極シート及び電気化学装置を提供し、負極集電体の力学的性能を向上させ、比較的軽い重量と良好な導電及び集電の性能とを両立させることを目的とする。
【0006】
第1の態様において、本願の実施例は、負極集電体を提供し、負極集電体は、有機支持層と、有機支持層の少なくとも一つの表面に設けられた銅系導電層と、を含み、銅系導電層における銅系結晶粒径dは、10nm~500nmである。
【0007】
第2の態様において、本願の実施例は、負極シートを提供し、負極シートは、負極集電体と、負極集電体に設けられた負極活物質層と、を含み、負極集電体は、本願の実施例の第1の態様に係る負極集電体である。
【0008】
第3の態様において、本願の実施例は、電気化学装置を提供し、電気化学装置は、正極シート、負極シート及び電解質を含み、負極シートは、本願の実施例の第2の態様に係る負極シートである。
【0009】
本願の実施例に係る負極集電体、負極シート及び電気化学装置において、負極集電体は、有機支持層と、有機支持層に設けられた銅系導電層と、を含み、有機材料を用いた支持層は、その重量が比較的軽く、負極集電体及び負極シートが比較的軽い重量を有するのに有利であるため、電気化学装置が比較的高い重量エネルギー密度を有するようにする。また、有機材料を用いた支持層は、靭性が高く、且つ、銅系導電層における銅系結晶粒径dが10nm~500nmであることにより、銅系導電層と有機支持層との間に高い界面結合力を持たせ、さらに銅系導電層は有機支持層の延伸に伴い均一に変形することができ、局所的な応力集中を効果的に防止し、銅系導電層が破断する確率を大幅に減少させるため、負極集電体の破断靭性を大幅に向上させ、この負極集電体の力学的性能を改善し、さらに負極集電体、負極シート及び電気化学装置の製造過程における良品率と使用過程における安全性及び信頼性とを顕著に向上させる。また、銅系導電層における銅系結晶粒径dが10nm~500nmであり、同時に当該負極集電体が良好な導電性及び集電性を有することを保証しているため、電気化学装置が良好な電気化学的性能を有することを保証するのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、本願の実施例に用いられている図面を簡単に説明するが、当業者にとっては、創造的な労力を必要とせず、これらの図面に基づいて他の図面を取得することも可能である。
【0011】
図1】本願の一実施例に係る負極集電体の概略構成図である。
図2】本願の他の実施例に係る負極集電体の概略構成図である。
図3】本願の他の実施例に係る負極集電体の概略構成図である。
図4】本願の他の実施例に係る負極集電体の概略構成図である。
図5】本願の他の実施例に係る負極集電体の概略構成図である。
図6】本願の一実施例に係る負極シートの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願の発明の目的、技術案及び有益な技術的効果をより明確にするために、実施例を参照して本願をさらに詳細に説明する。なお、本明細書に記載された実施例は、単に本願を解釈するためのものであり、本願を限定するためのものではないことと理解すべきである。
【0013】
簡単のために、本明細書はいくつかの数値範囲のみを具体的に開示した。しかしながら、任意の下限は任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、任意の下限は他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができ、同様に、任意の上限は任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、各単独で開示された点又は単一の数値自身は下限又は上限として任意の他の点又は単一の数値と組み合わせるか又は他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0014】
本明細書の説明において、説明すべきこととして、特に説明しない限り、「以上」、「以下」は対象となる数字を含み、「一種類又は複数種類」における「複数種類」の意味は二種類及び二種類以上である。
【0015】
本願の上記発明の概要は、本願における各開示の実施形態や各種類の実施形態を記述することを意図するものではない。以下、本実施形態をより具体的に例示する。本願全文の複数の箇所で、一連の実施例によりガイダンスを提供したが、これらの実施例は様々な組み合わせ形式で使用することができる。各実施例において、列挙は、代表的なグループのみを挙げており、網羅すると解釈すべきではない。
負極集電体
【0016】
本願の実施例の第1の態様は、負極集電体10を提供する。図1は、本願の実施例に係る負極集電体10の概略構成図である。図1を参照すると、負極集電体10は、積層配置された有機支持層101及び銅系導電層102を含む。
【0017】
有機支持層101の厚さ方向において、対向する第1面101a及び第2面101bを有し、銅系導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bに設けられている。
【0018】
なお、銅系導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bのいずれか一つに設けられてもよく、例えば、銅系導電層102は、有機支持層101の第1面101aに設けられており、勿論、銅系導電層102は、有機支持層101の第2面101bに設けられてもよい。
【0019】
また、銅系導電層102における銅系結晶粒径dは、10nm~500nmである。
【0020】
本明細書において、銅系導電層102における銅系結晶粒径dは、以下のような測定方法で測定することができる。負極集電体10に対してX線回折分析を行い、銅系導電層102の回折ピークを測定し、例えばCu(111)結晶面の回折ピークを測定し、回折ピークの回折角及び半値幅に基づいて、シェラー(Scherrer)式により算出して、銅系結晶粒径dが得られる。具体的に、式は、以下の通りである。
d=Kγ/(Bcosθ)
式において、Kは、シェラー定数であり、K=0.89とし、Bは、回折ピークの半値幅であり、算出過程においてそれをラジアン(rad)に変換する必要があり、θは、回折角であり、γは、X線の波長であって、0.154056nmである。
【0021】
負極集電体10に対するX線回折分析は、当該分野の周知の機器及び方法を用いて行うことができ、例えば、X線粉末回折計を用いて、JIS K 0131-1996X線回折分析通則に従ってX線回折スペクトルを測定する。例として、ドイツBrukerAxS社のBrukerD8 Discover型X線回折装置を使用し、CuKα線を放射線源とし、放射線の波長 λ=1.54056Åであり、走査2θ角度範囲は、20°~80°であり、走査速度は、0.05°/sである。
【0022】
本願の実施例の負極集電体10は、有機支持層101と、有機支持層101に設けられた銅系導電層102と、を含む。
【0023】
本願の負極集電体は、有機支持層101の密度が金属(例えば銅)の密度よりも小さいため、従来の銅箔集電体に比べて電気化学装置の軽量化に有利であり、これにより、電気化学装置のエネルギー密度が顕著に向上される。
【0024】
また、有機材料を用いた支持層は、靭性が高いとともに、銅系導電層102における銅系結晶粒径dが10nm~500nmであることにより、銅系導電層102と有機支持層101との間の界面結合力が高く、且つ銅系導電層102は有機支持層101の延伸に伴い均一に変形することができ、局所的な応力集中を効果的に防止し、銅系導電層102が破断する確率を大幅に減少させるため、負極集電体10の破壊靭性が大幅に向上され、負極集電体10の力学的性能が改善され、加工過程又は使用過程での負極集電体10の破断やマイクロクラックの発生が防止され、さらに、負極集電体10、負極シート20及び電気化学装置の製造過程における良品率と使用過程における安全性及び信頼性とが顕著に向上される。
【0025】
銅系導電層102における銅系結晶粒径dが10nm~500nmであり、且つ銅系導電層102の良好な導電性能が確保されるため、負極集電体10の良好な導電及び集電の性能が確保され、負極シート20及び電気化学装置の低インピーダンス及び負極の分極の低減に有利であり、電気化学装置は、高い倍率性能及びサイクル性能を含む電気化学的性能を有する。
【0026】
いくつかの選択可能な実施例において、銅系導電層102における銅系結晶粒径dの上限値は、500nm、450nm、400nm、350nm、300nm、250nm、200nm、150nm、100nm、80nm、50nmから選択することができ、下限値は、380nm、320nm、280nm、240nm、180nm、120nm、90nm、70nm、30nm、10nmから選択することができる。銅系導電層102における銅系結晶粒径dの範囲は、前述の任意の下限と任意の上限との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の下限と任意の他の下限との組み合わせにより形成されてもよいし、同様に、任意の上限値と他の任意の上限値との組み合わせにより形成されてもよい。
【0027】
好ましくは、銅系導電層102における銅系結晶粒径dは、30nm~300nmであり、より好ましくは50nm~150nmである。銅系導電層102がこのような銅系結晶粒径dを有することにより、負極集電体10は、上記効果をより良く発揮することができる。
【0028】
本願の実施例の負極集電体10において、銅系導電層102の厚さDは、好ましくは30nm≦D≦3μmである。
【0029】
本願の実施例の負極集電体10は、有機支持層101の表面に比較的小さい厚さの銅系導電層102が設けられており、従来の金属集電体(例えば銅箔)に比べて負極集電体10の重量を大幅に低減することができるため、電気化学装置の重量の低減に有利であり、電気化学装置のエネルギー密度が大幅に向上される。
【0030】
また、銅系導電層102の厚さDは、好ましくは30nm≦D≦3μmであり、これにより、銅系導電層102が良好な導電性能を有し、負極集電体10の良好な導電及び集電の性能を確保するのに有利であるため、電気化学装置の良好な電気化学的性能を保証することができる。また、銅系導電層102が加工過程及び使用過程で破断しにくくなり、負極集電体10に高い破断靭性を持たせ、負極集電体10が良好な機械的安定性及び動作安定性を有するよう保証している。なお、銅系導電層102の厚さDが上記範囲内にあると、電気化学装置に釘刺し等の異常が発生した場合、銅系導電層102に発生するバリが小さくなるので、発生した金属バリが対極に接触するリスクを低減し、さらに、電気化学装置の安全性能を改善することができる。
【0031】
いくつかの選択可能な実施例において、銅系導電層102の厚さDの上限は、3μm、2.5μm、2μm、1.8μm、1.5μm、1.2μm、1μm、900nm、750nm、450nm、250nm、100nmから選択することができ、下限は、1.6μm、1μm、800nm、600nm、400nm、300nm、150nm、100nm、80nm、30nmから選択することができ、銅系導電層102の厚さDの範囲は、前述の任意の下限と任意の上限との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の下限と任意の他の下限との組み合わせにより形成されてもよいし、同様に、任意の上限と任意の他の上限との組み合わせにより形成されてもよい。
【0032】
より好ましくは、銅系導電層102の厚さDは、300nm≦D≦2μmであり、好ましくは500nm≦D≦1.5μmであり、より好ましくは600nm≦D≦1.2μmである。
【0033】
いくつかの実施例において、銅系導電層102の厚さDと銅系結晶粒径dとは、1≦D/d≦300を満たす。銅系導電層102の厚さDと銅系結晶粒径dとが上記関係を満たすことにより、負極集電体10の力学的性能を向上させることができ、より高い導電性と集電性とを両立させることができる。
【0034】
いくつかの選択可能な実施例において、上記D/dの上限値は、300、280、250、230、220、200、190、170、150、120、100、80、60、50、48から選択することができ、下限値は、1、2、3、5、6、8、10、12、15、18、20、22、25、30、33、35、37、40、42、45から選択することができる。D/dの範囲は、前述の任意の下限値と任意の上限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の下限値と任意の他の下限値との組み合わせにより形成されてもよいし、同様に、任意の上限値と任意の他の上限値との組み合わせによりで形成されてもよい。
【0035】
好ましくは、銅系導電層102の厚さDと銅系結晶粒径dとは、2≦D/d≦100を満たし、より好ましくは3≦D/d≦50を満たす。
【0036】
本願の実施例の負極集電体10において、銅系導電層102は、銅(Cu)及び銅合金のうちの一種類又は複数種類を含む。
【0037】
銅合金は、銅を主元素とし、且つ、一種類又は複数種類の添加元素を含む合金である。好ましくは、添加元素は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)及びカドミウム(Cd)から選択される。上記一種類又は複数種類の添加元素を添加することにより、銅合金導電層の力学的性能、耐加工性及び耐食性を向上させることができる。
【0038】
さらに好ましくは、銅合金の質量百分率含有量は、80wt%以上であり、より好ましくは、90wt%以上、例えば90wt%~95wt%である。銅合金における銅元素の質量百分率含有量を上記範囲にすることで、銅合金の導電層は、良好な導電性能、力学的性能、耐加工性及び耐食性を両立させることができる。
【0039】
本願の実施例の負極集電体10において、有機支持層101のヤング率Eは、好ましくはE≧2GPaであり、これにより、有機支持層101は、良好な靭性を有すると同時に、適切な剛性も有し、銅系導電層102に対する有機支持層101の支持作用を満たして、負極集電体10の全体的強度を確保するだけでなく、有機支持層101が負極集電体10の加工過程で過度に延伸又は変形しないようにし、さらに、有機支持層101及び銅系導電層102の破損をより効果的に防止し、同時に有機支持層101と銅系導電層102との間の結合強度がより高くなって、銅系導電層102が剥離しにくくなり、負極集電体10の機械的安定性及び動作安定性が向上されるため、電気化学装置の性能が向上される。
【0040】
さらに、有機支持層101のヤング率Eは、好ましくは2GPa≦E≦20Gpaであり、例えば、2GPa、3GPa、4GPa、5GPa、6GPa、7GPa、8GPa、9GPa、10GPa、11GPa、12GPa、13GPa、14GPa、15GPa、16GPa、17GPa、18GPa、19GPa、20GPaである。このような有機支持層101は、良好な靭性、適切な剛性、及び加工過程での巻回時の柔軟性を有する。
【0041】
有機支持層101のヤング率Eは、当技術分野で既知の方法によって測定することができる。一例として、有機支持層101を15mm×200mmのサンプルに切断し、マイクロメーターを利用してサンプルの厚さh(μm)を測定し、常温常圧(25℃、0.1MPa)下で、高速レールテンショナを用いて引張試験を行う。初期位置を設定して治具間のサンプルの長さを50mmに設定し、引張速度が50mm/minであり、破断になるまで引張った際の負荷L(N)、装置の変位y(mm)を記録すると、応力ε(GPa)=L/(15×h)、ひずみη=y/50であり、応力-ひずみ曲線を描き、初期線形領域の曲線を取り、当該曲線の勾配がヤングEである。
【0042】
本願の実施例の負極集電体10において、有機支持層101の厚さDは、好ましくは1μm≦D≦30μmである。有機支持層101の厚さDは、1μm以上であり、これにより、有機支持層101は、比較的高い機械的強度を有し、加工過程や使用過程で破断しにくくなり、銅系導電層102に対して良好な支持及び保護の作用を果たし、負極集電体10の機械的安定性及び動作安定性が向上される。有機支持層101の厚さDは、30μm以下であり、電気化学装置が比較的小さい体積及び比較的低い重量を有するのに有利であるため、電気化学装置の体積エネルギー密度及び重量エネルギー密度が向上される。
【0043】
いくつかの選択可能な実施例において、有機支持層101の厚さDの上限値は、30μm、25μm、20μm、18μm、15μm、12μm、10μm、8μmから選択することができ、下限値は、1μm、1.5μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、9μm、16μmから選択することができる。有機支持層101の厚さDの範囲は、前述の任意の下限値と任意の上限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の下限値と任意の他の下限値との組み合わせにより形成されてもよいし、同様に、任意の上限値と任意の他の上限値との組み合わせにより形成されてもよい。
【0044】
より好ましくは、有機支持層101の厚さDは、1μm≦D≦15μmであり、好ましくは1μm≦D≦10μmであり、好ましくは1μm≦D≦8μmであり、好ましくは2μm≦D≦8μmであり、より好ましくは2μm≦D≦6μmである。有機支持層101の厚さDが1μm≦D≦15μm、好ましくは10μm以下、特に8μm以下である場合、電気化学装置の重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度をさらに向上させることができ、同時に、銅系導電層102のd値及びD/dを上記範囲とすることにより、負極集電体10の力学的性能をより良く改善することができ、負極集電体10の高い導電性と集電性とを両立させることができ、また、このときの銅系導電層102のd値、D/d等は、負極集電体10の力学的性能、機械的性能等に対する影響もより顕著となる。
【0045】
本願の実施例の負極集電体10は、有機支持層101が高分子材料及び高分子系複合材料のうちの一種類又は複数種類を用いている。
【0046】
上記高分子材料としては、例えば、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリイン系、シロキサンポリマー、ポリエーテル系、ポリアルコール系、ポリスルホン系、多糖類ポリマー、アミノ酸系ポリマー、ポリ窒化硫黄系、芳香環ポリマー、芳香族複素環ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、それらの誘導体、それらの架橋物、及びそれらの共重合体のうちの一種類又は複数種類である。
【0047】
さらに、前記高分子材料は、例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6とも呼ばれる)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66とも呼ばれる)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリメタフェニレンイソフタルアミド(PMIA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレンゴム(PPE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTEE)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、ポリアセチレン(Polyacetylene、PAと略称)、シリコーンゴム(Silicone rubber)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエチレングリコール(PEG)、セルロース、デンプン、タンパク質、ポリフェニル、ポリピロール(PPy)、ポリアニリン(PAN)、ポリチオフェン(PT)、ポリピリジン(PPY)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、それらの誘導体、それらの架橋体、及びそれらの共重合体のうちの一種類又は複数種類である。
【0048】
上記高分子系複合材料としては、上記高分子材料と添加剤とを含むものであってもよく、添加剤は、金属材料及び無機非金属材料のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0049】
金属材料添加剤としては、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、鉄、鉄合金、銀及び銀合金のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0050】
無機非金属材料添加剤としては、例えば、炭素系材料、酸化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩及び酸化チタンのうちの一種類又は複数種類であり、さらに、例えば、ガラス材料、セラミック材料及びセラミック複合材料のうちの一種類又は複種である。炭素系材料添加剤としては、例えば、グラファイト、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバー等のうちの一種類又は複数種類である。
【0051】
上記添加剤としては、金属材料で被覆される炭素系材料であってもよく、例えばニッケルで被覆される黒鉛粉及びニッケルで被覆される炭素繊維のうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0052】
好ましくは、有機支持層101としては、絶縁性高分子材料及び絶縁性高分子系複合材料のうちの一種類又は複数種類を使用している。このような有機支持層101は、体積抵抗率が高いため、電気化学装置の安全性能の向上に有利である。
【0053】
さらに、有機支持層101は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)及びポリイミド(PI)のうちの一種類又は複数種類を含む。
【0054】
本願の実施例の負極集電体10は、有機支持層101が単層構造であってもよいし、2層、3層、4層等の2層以上の複合層構造であってもよい。
【0055】
図2は、本願の他の実施例に係る負極集電体10の概略構成図である。図2を参照すると、有機支持層101は、第1のサブレイヤ1011、第2のサブレイヤ1012及び第3のサブレイヤ1013が積層配置された複合層構造である。複合層構造の有機支持層101は、対向する第1面101aと第2面101bとを有し、銅系導電層102は、有機支持層101の第1面101aと第2面101bとに積層配置されている。勿論、銅系導電層102は、有機支持層101の第1面101aのみに設けられてもよいし、有機支持層101の第2面101bのみに設けられてもよい。
【0056】
有機支持層101が2層以上の複合層構造である場合、各のサブレイヤの材料は同一であってもよく、異なってもよい。
【0057】
本願の実施例の負極集電体10は、保護層103をさらに選択的に含んでもよい。図3乃至図5を参照すると、銅系導電層102は、自身の厚さ方向において対向する2つの表面を有し、保護層103は、銅系導電層102の2つの表面のいずれか一つ又は両方に積層配置されて、銅系導電層102を保護し、銅系導電層102の化学的腐食や機械的破壊等の損害を防止し、負極集電体10の動作安定性及び耐用年数を保証できるため、電気化学装置が高い安全性能及び電気化学的性能を有するのに有利である。また、保護層103は、負極集電体10の強度を高めることもできる。
【0058】
なお、図3図5では、有機支持層101の片面に銅系導電層102が形成されており、銅系導電層102の自身の厚さ方向において対向する2つの面の一つ又は両方に保護層103を有しているが、他の実施例では、有機支持層101の対向する両面にそれぞれ銅系導電層102を有してもよく、任意の一つの銅系導電層102の自身の厚さ方向において対向する2つの表面の一つ又は両方に保護層103を有してもよく、2つの銅系導電層102の自身の厚み方向において対向する2つの表面の一つ又は両方に保護層103を有してもよい。
【0059】
保護層103は、金属、金属酸化物及び導電性カーボンのうちの一種類又は複数種類を含む。
【0060】
上記金属は、例えば、ニッケル、クロム、ニッケル系合金及び銅系合金のうちの一種類又は複数種類である。上記ニッケル系合金は、純ニッケルを基質として一種類又は複数種類の他の元素を添加してなる合金であり、好ましくはニッケルクロム合金である。ニッケルクロム合金は、金属ニッケルと金属クロムからなる合金であり、選択的に、ニッケルクロム合金におけるニッケルとクロムとの重量比は、1:99~99:1、例えば9:1である。上記銅系合金は、純銅を基質として一種類又は複数種類の他の元素を添加してなる合金であり、好ましくはニッケル銅合金である。選択的に、ニッケル銅合金におけるニッケルと銅との重量比は、1:99~99:1、例えば9:1である。
【0061】
上記金属酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化コバルト、酸化クロム及び酸化ニッケルのうちの一種類又は複数種類である。
【0062】
上記導電性カーボンは、例えば、グラファイト、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類であり、さらに、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック及びグラフェンのうちの一種類又は複数種類である。
【0063】
さらに、保護層103は、好ましくは金属及び金属酸化物のうちの一種類又は複数種類を使用し、負極集電体10の性能を向上させることができる
【0064】
金属保護層及び金属酸化物保護層は、耐食性能が高く、且つ硬度が高く、比表面積が大きいため、銅系導電層102の化学的腐食や機械的破壊等の損傷を効果的に防止することができ、負極集電体10の強度を向上させ、負極集電体10の安定性及び使用寿命を向上させるとともに、銅系導電層102と有機支持層101又は負極活物質層20(図6に示す)との間の界面をさらに改善し、電気化学装置の性能を向上させることができる。
【0065】
いくつかの例として、図3を参照すると、負極集電体10は、積層配置された有機支持層101、銅系導電層102及び保護層103を含む。有機支持層101の厚さ方向において対向する第1面101a及び第2面101bを有し、銅系導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bの少なくとも一つに積層配置され、保護層103は、銅系導電層102における有機支持層101に背向する表面に積層配置されている。
【0066】
銅系導電層102における有機支持層101に背向する表面には、保護層103(以下、上部保護層と略称)が設けられて、銅系導電層102に対して化学的腐食や機械的破壊を防止する保護作用を発揮し、負極集電体10と負極活物質層20との間の界面を改善し、負極集電体10と負極活物質層20との結合力を向上させることもできる。上部保護層が金属保護層又は金属酸化物保護層である場合、上記効果をより良く発揮することができる。
【0067】
さらに、上部保護層が金属保護層である場合、界面の抵抗を顕著に低下させ、負極集電体10と負極活物質層201との間の導電性能を向上させ、負極の分極を小さくし、電気化学装置の性能を向上させることができる。
【0068】
又は、さらに、上部保護層が金属酸化物保護層である場合、化学的腐食や機械的破壊を防止する保護作用をより顕著に発揮することができる。
【0069】
また、上部保護層は、金属保護層と金属酸化物保護層との2層保護層であってもよいが、銅系導電層102における有機支持層101に背向する表面に金属保護層を設けることが好ましく、また、この金属保護層における有機支持層101に背向する表面に金属酸化物保護層を設けることにより、負極集電体10の導電性能や耐食性能の改善、機械的破壊の防止等をより良好に発揮することができる。
【0070】
他の例として、図4を参照すると、負極集電体10は、積層配置された有機支持層101、銅系導電層102及び保護層103を含む。有機支持層101の厚さ方向において対向する第1面101a及び第2面101bを有し、銅系導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bの少なくとも一つに積層配置され、保護層103は、銅系導電層102における有機支持層101に面する表面に積層配置されている。
【0071】
銅系導電層102における有機支持層101に面する表面には、保護層103(以下、下部保護層と略称)が設けられており、下部保護層は、銅系導電層102に対して化学的腐食や機械的損傷を防止する作用を発揮するとともに、銅系導電層102と有機支持層101との結合力を高め、銅系導電層102と有機支持層101との分離を防止し、銅系導電層102に対する支持保護作用を高めることができる。
【0072】
さらに、下部保護層は、金属酸化物保護層であり、金属酸化物保護層の比表面積がより大きく、硬度がより高く、銅系導電層102と有機支持層101との結合力をより高めるのに有利であり、負極集電体10の強度を向上させる。
【0073】
又は、さらに、下部保護層が金属保護層である場合、銅系導電層102と有機支持層101との結合力を改善し、負極集電体10の強度を向上させるとともに、電極シートの分極をより小さくすることができ、負極集電体10の導電性を向上させる。
【0074】
下部保護層は、金属保護層であることが好ましい。
【0075】
さらに別の例として、図5を参照すると、積層配置された負極集電体10は、有機支持層101、銅系導電層102及び保護層103を含む。有機支持層101の厚さ方向において対向する第1面101a及び第2面101bを有し、銅系導電層102は、有機支持層101の第1面101a及び第2面101bの少なくとも一つに積層配置され、保護層103は、銅系導電層102における有機支持層101に背向する表面及び有機支持層101に面する表面に積層配置されている。
【0076】
銅系導電層102の二つの表面にはいずれにも保護層103が設けられており、銅系導電層102をより十分に保護して、負極集電体10に高い総合性能を持たせている。
【0077】
なお、銅系導電層102の二つの表面における保護層103は、その材料が同一であってもよいし異なってもよく、その厚さが同一であってもよいし異なってもよい。
【0078】
好ましくは、保護層103の厚さDは、1nm≦D≦200nm、且つ、D≦0.1Dである。保護層103が薄すぎると、銅系導電層102を保護することができず、厚すぎると、電気化学装置のエネルギー密度が低下されてしまう。
【0079】
いくつかの実施例において、保護層103の厚さDの上限値は、200nm、180nm、150nm、120nm、100nm、80nm、60nm、55nm、50nm、45nm、40nm、30nm、20nmであってもよく、下限値は、1nm、2nm、5nm、8nm、10nm、12nm、15nm、18nmであってもよい。保護層103の厚さDの範囲は、上記任意の下限値と任意の上限値との組み合わせにより形成されてもよいし、任意の下限値と任意の他の下限値との組み合わせにより形成されてもよいし、同様に、任意の上限値と任意の他の上限値との組み合わせにより形成されてもよい。
【0080】
より好ましくは、保護層103の厚さDは、5nm≦D≦200nmであり、好ましくは10nm≦D≦200nmである。
【0081】
さらに、銅系導電層102の二つの表面のいずれにも保護層103が設けられている場合、上部保護層の厚さDは、1nm≦D≦200nm、且つ、D≦0.1Dであり、下部保護層の厚さDは、1nm≦D≦200nm、且つ、D≦0.1Dである。好ましくは、D>Dであり、上部保護層と下部保護層とが協働して銅系導電層102に対して化学的腐食や機械的損傷を防止する保護作用を果たすとともに、電気化学装置のエネルギー密度を向上させるのに有利である。より好ましくは、0.5D≦D≦0.8Dであり、上部保護層及び下部保護層の相乗保護作用をより良好に発揮することができる。
【0082】
本願の実施例において、負極集電体10の破断伸び率は3%以上である。破断伸び率が3%以上である負極集電体10は、高い破断靭性を有し、加工過程及び使用過程での破断の発生や銅系導電層102でのクラック発生の確率を大幅に低減させるため、負極集電体10、負極シート20及び電気化学装置の製造時の良品率と使用時の安全性及び信頼性とが向上される。
【0083】
破断伸び率は、当該技術分野で周知の方法により測定することができ、一例として、負極集電体10を15mm×200mmのサンプルに切断し、常温常圧(25℃、0.1MPa)下で、高速レールテンショナを用いて引張試験を行い、初期位置を設定して治具の間のサンプルの長さを50mmに設定し、引張速度が5mm/minになるように設定し、引張破断時の装置変位y(mm)を記録し、最終的に算出すると、破断伸び率は(y/50)×100%であった。
【0084】
本願の実施例において、銅系導電層102は、機械的な圧延、接着、気相蒸着法(vapor deposition)、化学メッキ(Electroless plating)、電気メッキ(Electroplating)のうちの少なくとも1つの手段により有機支持層101に形成されてもよく、気相蒸着法及び電気メッキ法が好ましく、即ち、銅系導電層102は、好ましくは気相蒸着層又は電気メッキ層であるため、銅系導電層102における銅系結晶粒径dを10nm~500nmの範囲とするのに有利であり、銅系導電層102と有機支持層101との間に高い結合力を持たせ、負極集電体10の力学的性能及び導電性能を向上させる。
【0085】
上記気相蒸着法は、物理気相蒸着法であることが好ましい。物理気相蒸着法は、蒸着法及びスパッタ法のうちの少なくとも一つが好ましく、蒸着法は、真空蒸着法、熱蒸着法及び電子ビーム蒸着法のうちの少なくとも1つが好ましく、スパッタ法は、マグネトロンスパッタ法が好ましい。
【0086】
一例として、真空蒸着法により銅系導電層102を形成することは、真空めっきチャンバ内に表面洗浄処理が施された有機支持層101を配置し、1300℃~2000℃の高温で金属蒸着チャンバ内の金属ワイヤを溶融且つ蒸発し、蒸発後の金属が真空めっきチャンバ内の冷却システムを通過し、最終的に有機支持層101上に蒸着されて、銅系導電層102を形成することを含む。
【0087】
保護層103を有する場合、保護層103は、気相蒸着法、インサイチュ形成法、塗布法のうちの少なくとも一つの手段により、銅系導電層102に形成されることができる。気相蒸着法は、前述の気相蒸着法であってもよい。インサイチュ形成法では、インサイチュ不動態化法、即ち、金属表面に金属酸化物不動態化層をインサイチュ形成する方法が好ましい。塗布法は、ロールコーティング、押出コートコーティング、ナイフコーティング及びグラビアコーティングのうちの少なくとも一つが好ましい。
【0088】
好ましくは、保護層103は、気相蒸着法及びインサイチュ形成法のうちの少なくとも一つの手段により銅系導電層102に形成され、銅系導電層102と保護層103との結合力を向上させるのに有利であるため、負極集電体10に対する保護層102の保護作用がより良好に発揮され、負極集電体10の動作性能が確保される。
【0089】
銅系導電層102と有機支持層101との間に保護層103(下部保護層)が設けられる場合、有機支持層101に下部保護層を形成してから、下部保護層に銅系導電層102を形成してもよい。下部保護層は、気相蒸着法及び塗布法のうちの少なくとも一つの手段により、有機支持層101に形成されてもよく、ここで、気相蒸着法が好ましい。銅系導電層102は、機械的な圧延、接着、蒸着法、無電解メッキの少なくとも1つの手段により、下部保護層に形成されてもよく、気相蒸着法が好ましい。
負極シート
【0090】
本願の実施例の第2の態様は、負極シート30を提供し、図6は、本願の実施例に係る負極シート30の概略構成図であり、図6を参照すると、負極シート30は、積層配置された負極集電体10及び負極活物質層20を含み、負極集電体10は、本願の実施例の第1の態様の負極集電体10である。
【0091】
本願の実施例の第1の態様の負極集電体10を用いることにより、本願の実施例の負極シート30は、高い力学的性能と高い製造良品率と高い使用安全性及び信頼性とを有するとともに、低い重量及び高い電気化学的性能を両立させることができる。
【0092】
一例として、図6を参照すると、負極シート30は、積層配置された負極集電体10及び負極活物質層20を含み、負極集電体10は、自身の厚さ方向において対向する二つの表面を含み、負極活物質層20は、負極集電体10の二つの表面に積層配置されている。
【0093】
なお、負極活物質層20は、負極集電体10の二つの表面の任意の一つに積層配置されてもよい。
【0094】
本願の実施例の負極シート30、負極活物質層20は、当該分野における任意の負極活物質材料を用いることができ、本願で限定されるものではない。
【0095】
例えばリチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質材料は、金属リチウム、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMBと略記)、ハードカーボン、ソフトカーボン、シリコン、シリコン-炭素複合体、SiO、Li-Sn合金、Li-Sn-O合金、Sn、SnO、SnO、スピネル構造のチタン酸リチウム及びLi-Al合金のうちの一種類又は複数種類であってよい。
【0096】
選択的に、負極活物質層20は、導電剤を含んでもよく、本願は、導電剤の種類を限定しない。例として、導電剤は、グラファイト、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類である。
【0097】
選択的に、負極活物質層20は、接着剤を含んでもよく、本願は、接着剤の種類を限定しない。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの一種類又は複数種類である。
【0098】
負極シート30は、本分野の従来の方法により製造することができる。一般的に、負極活物質と選択可能な導電剤、接着剤及び増粘剤とは、一般的に溶媒で分散させて、均一な負極スラリーを形成し、溶媒は、NMP又は脱イオン水であってもよく、負極スラリーを負極集電体10に塗布して、乾燥等の工程を経た後、負極シート30を取得する。
電気化学装置
【0099】
本願の実施例の第3の態様は、電気化学装置を提供し、電気化学装置は、正極シート、負極シート及び電解質を含み、ここで、負極シートは、本願の実施例の第2の態様の負極シートである。
【0100】
上記電気化学装置は、リチウムイオン二次電池、リチウム一次電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池等であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0101】
電気化学装置が本願の実施例の第2の態様に係る負極シートを用いているため、本願の実施例の電気化学装置は、高いエネルギー密度、倍率性能、サイクル性能及び安全性能を含む総合的な電気化学的性能を有する。
【0102】
上記正極シートは、正極集電体及び正極活物質層を含むものであってもよい。
【0103】
正極集電体は、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金のうちの一種類又は複数種類を用いることができる。
【0104】
正極活物質層は、本分野の任意の正極活物質を用いることができ、本願に限定されるものではない。
【0105】
例えばリチウムイオン二次電池に用いられる正極活物質は、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム遷移金属複合酸化物に他の遷移金属又は非遷移金属又は非金属を添加して得られた複合酸化物のうちの一種類又は複数種類であってもよい。ここで、遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Ti、Zn、V、Al、Zr、Ce及びMgのうちの一種類又は複数種類であってもよい。
【0106】
例として、正極活物質は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩のうちの一種類又は複数種類から選択されてもよい。例えば、リチウム遷移金属複合酸化物は、LiMn、LiNiO、LiCoO、LiNi1-yCo(0<y<1)、LiNiCobAl1-a-b(0<a<1、0<b<1、0<a+b<1)、LiMn1-m-nNiCo(0<m<1、0<n<1、0<m+n<1)、LiMPO(Mは、Fe、Mn、Coのうちの一種類又は複数種類であってもよい)及びLi(POのうちの一種類又は複数種類である。
【0107】
選択的に、正極活物質層は、接着剤を含んでもよく、本願は、接着剤の種類を限定しない。例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性アクリル樹脂(water-based acrylic resin)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びポリビニルブチラール(PVB)のうちの一種類又は複数種類である。
【0108】
選択的に、正極活物質層は、導電剤を含んでもよく、本願は、導電剤の種類を限定しない。例として、導電剤は、グラファイト、超電導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの一種類又は複数種類である。
【0109】
正極シートは、本分野の従来の方法により製造することができる。一般的に、正極活物質と選択可能な導電剤及び接着剤とを溶媒(例えば、N-メチルピロリドン、NMPと略称)で分散させて均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布して、乾燥等の工程を経た後、正極シートを取得する。
【0110】
本願の実施例の電気化学装置において、電解質としては、固体電解質を用いてもよいし、電解質塩を有機溶媒に分散させた電解液等の非水電解液を用いてもよい。
【0111】
上記電解液において、有機溶媒は、電気化学反応においてイオンを輸送する媒体として、本分野の任意の有機溶媒を用いることができる。電解質塩は、イオンの供給源として、本分野の任意の電解質塩であってよい。
【0112】
例えばリチウムイオン二次電池に用いられる有機溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1,4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルケトン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)のうちの一種類又は複数種類である。
【0113】
例えばリチウムイオン二次電池に用いられる電解質塩は、LiPF(ヘキサフルオロリン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(ヘキサフルオロヒ酸リチウム)、LiFSI(ジフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(ジフルオロシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiBOB(ジシュウ酸ホウ酸リチウム)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(ジフルオロジシュウ酸リン酸リチウム)及びLiTFOP(テトラフルオロシュウ酸リン酸リチウム)のうちの一種類又は複数種類である。
【0114】
電解液は、添加剤をさらに選択的に含んでもよく、添加剤の種類は特に限定されず、必要に応じて選択することができる。例として、添加剤は、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、スクシノニトリル(SN)、アジポニトリル(ADN)、1,3-プロペンスルトン(PST)、トリス(トリメチルシラン)リン酸エステル(TMSP)及びトリス(トリメチルシラン)ホウ酸エステル(TMSB)のうちの一種類又は複数種類である。
【0115】
電気化学装置が電解液を用いる場合、正極シートと負極シートとの間にセパレータを設けて隔離の役割を果たす必要がある。セパレータの種類は特に限定されず、周知の良好な化学的安定性及び機械的安定性を有する多孔質構造のセパレータを任意に選択することができ、例えば、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちの一種類又は複数種類を使用することができる。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であってもよいし、異なってもよい。
【0116】
上記正極シート、セパレータ、負極シートを順に積層し、セパレータが正極シートと負極シートの間に位置して隔離の役割を果たすようにして、電気コアを取得してよく、或いは、巻回することにより電気コアを取得してもよい。電気コアをハウジングに入れ、電解液を注液し、封止して、電気化学装置を製造する。
実施例
【0117】
下記実施例は、本願に開示の内容をより具体的に説明しており、これらの実施例は説明のためのものに過ぎず、本願に開示の内容の範囲内で様々な修正及び変更を行うことは、当業者にとって明らかである。特別な説明がない限り、以下の実施例に報告された全ての部、百分率、及び比はいずれも重量に基づいて計算され、且つ実施例に使用された全ての試薬はいずれも市販のもであるか又は従来の方法に従って合成して取得されるものであり、且つ、さらに処理する必要がなく直接使用できるものであり、また、実施例に使用された機器はいずれも市販のものである。
製造方法
負極集電体の製造
【0118】
所定の厚さの有機支持層を選択して表面洗浄処理を行い、表面洗浄処理を行った有機支持層を真空メッキ室内に配置し、1300℃~2000℃の高温で金属蒸発室内の高純度銅線を溶融蒸発させ、蒸発後の金属は真空メッキ室内の冷却システムを経て、最後に有機支持層の二つの表面に蒸着して、銅系導電層を形成する。
負極シートの製造
【0119】
負極活物質 黒鉛、導電性カーボンブラック、増粘剤 カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、接着剤 スチレンブタジエンゴムエマルジョン(SBR)を96.5:1.0:1.0:1.5の重量比で、適量の脱イオン水で十分に攪拌混合させて、均一な負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体に塗布して、乾燥等の工程を経た後、負極シートを取得する。
正極集電体の製造
【0120】
厚さ12μmのアルミニウム箔を使用する。
従来の正極シートの製造
【0121】
正極活物質 LiNi1/3Co1/3Mn1/3(NCM333)、導電性カーボンブラック、接着剤 ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を93:2:5の重量比で、適量のN-メチルピロリドン(NMP)溶媒で十分に攪拌混合させて、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体に塗布して、乾燥等の工程を経た後、正極シートを取得する。
電解液の調製
【0122】
3:7の体積比のエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(EMC)とを均一に混合して有機溶媒を取得した後、1mol/LのLiPFを前記有機溶媒で均一に溶解させる。
リチウムイオン二次電池の製造
【0123】
正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層配置し、ここで、セパレータは、PP/PE/PP複合フィルムを使用し、その後、電池コアとして巻回し、ハウジングに入れ、上記電解液を電池コアに注液し、封止して、リチウムイオン二次電池を取得する。
試験部分
1.負極集電体試験
(1)銅系導電層における銅系結晶粒径dの測定
【0124】
ドイツBruker AxS社のBruker D8 Discover型X線回折計を用い、CuKα線を放射線源とし、放射線の波長 λ=1.54056Åであり、走査2θ角度範囲が20°~80°であり、走査速度が0.05°/sであり、銅系導電層のX線回折スペクトルを測定した。銅系結晶粒径dは、X線回折スペクトルにおけるCu(111)結晶面の回折ピークの回折角及び半値幅から、シェラー式により算出された。
(2)有機支持層のヤング率Eの測定
【0125】
有機支持層を15mm×200mmのサンプルに切断し、マイクロメーターを利用してサンプルの厚さh(μm)を測定し、常温常圧(25℃、0.1MPa)下で、高速レールテンショナを用いて引張測定を行う。初期位置を設定して治具の間のサンプルの長さを50mmに設定し、引張速度が50mm/minであり、破断になるまで引張った際の負荷L(N)、装置の変位y(mm)を記録すると、応力ε(GPa)=L/(15×h)、ひずみη=y/50であり、応力-ひずみ曲線を描き、初期線形領域の曲線を取り、当該曲線の勾配は、ヤングEである。
(3)負極集電体の破断伸び率の測定
【0126】
負極集電体を15mm×200mmのサンプルに切断し、常温常圧(25℃、0.1MPa)下で、高速レールテンショナを用いて引張試験を行う。初期位置を設定して治具の間のサンプルの長さを50mmに設定し、引張速度が5mm/minになるように設定し、引張破断時の装置変位y(mm)を記録し、最終的に算出すると、破断伸び率は(y/50)×100%であった。
2.電池性能試験
(1)サイクル性能試験
【0127】
45℃下で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vになるまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに1Cの倍率で2.8Vになるまで定電流放電し、これを一つの充放電サイクルとし、今回の放電容量が1回目サイクルの放電容量である。上記の方法を利用してリチウムイオン二次電池を1000回充放電サイクルを行い、1000回目サイクルの放電容量を記録し、リチウムイオン二次電池の1C/1Cで1000回サイクル後の容量保持率を算出した。
リチウムイオン二次電池の1C/1Cで1000回サイクル後の容量保持率(%)=1000回目サイクルの放電容量/1回目サイクルの放電容量×100%
(2)倍率性能試験
【0128】
25℃下で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vになるまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに1Cの倍率で3.0Vになるまで定電流放電し、測定によって、リチウムイオン二次電池の1C倍率の放電容量が得られた。
25℃下で、リチウムイオン二次電池を1Cの倍率で4.2Vになるまで定電流充電し、さらに電流が0.05C以下になるまで定電圧充電し、さらに4Cの倍率で3.0Vになるまで定電流放電し、測定によって、リチウムイオン二次電池の4C倍率の放電容量が得られた。
リチウムイオン二次電池の4C倍率の容量保持率(%)=4C倍率の放電容量/1C倍率の放電容量×100%
試験結果
1.電気化学装置の重量エネルギー密度の改善での本願の負極集電体の作用
【0129】
【表1】
【0130】
表1において、負極集電体の重量百分率は、負極集電体の単位面積あたりの重量を従来の負極集電体の単位面積あたりの重量で割って得られた百分率である。
【0131】
本願を用いた負極集電体は、従来の銅箔負極集電体に比べて、重量が様な程度で減少されたため、電池の重量エネルギー密度を向上させることができる。
2.本願の負極集電体及び電気化学装置の電気化学的性能に対する保護層の作用
【0132】
【表2】
【0133】
表2の負極集電体は、表1の負極集電体7に保護層を設けたものである。
【0134】
負極集電体7-14の上部保護層としては、2層の保護層を用い、具体的に、銅系導電層における有機支持層に背向する表面には、厚さ25nmのニッケル保護層(即ち、下部の層)が設けられ、ニッケル保護層における有機支持層に背向する表面には、厚さ25nmの酸化ニッケル保護層(即ち、上部の層)が設けられている。
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】
【0137】
表4から分かるように、本願の実施例の負極集電体を用いた電池は、サイクル寿命及び倍率性能が良好であり、従来の負極集電体を用いた電池のサイクル性能及び倍率性能に相当する。これは、本願の実施例を用いた負極集電体が負極シート及び電池の電気化学的性能に著しい悪影響を及ぼさないことを示す。特に、保護層が設けられた負極集電体により製造された電池は、45℃、1C/1Cで1000回サイクル後の容量保持率及び4C倍率の容量保持率がさらに向上され、電池の信頼性がより良好であることを示している。
3.負極集電体に対する銅系導電層の銅系結晶粒径d、及び厚さDと銅系結晶粒径dとの比の影響
【0138】
銅系導電層を製造する堆積温度、堆積速度、堆積時間等を調整することにより、異なる銅系結晶粒径d及び異なる厚さDの銅系導電層が得られる。
【0139】
【表5】
【0140】
表5における銅合金の成分は、銅95wt%及びニッケル5wt%である。
【0141】
表5の結果から分かるように、銅系導電層の銅系結晶粒径dの値が小さすぎると、負極集電体の力学的性能が劣り、破断伸び率が小さく、破断しやすいため、負極集電体、負極シート及び電気化学装置の製造時の良品率が悪く、負極集電体、負極シート及び電気化学装置の使用中の安全性及び信頼性が低い。また、D/d値は、負極集電体の力学的性能にも影響を与える。
【0142】
前述の説明は、本願の具体的な実施形態に過ぎず、本願の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者は本願に開示の技術的範囲内で、様々な等価な修正又は置換を容易に想到でき、これらの修正又は置換はいずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願の保護範囲は、請求の範囲の保護範囲を基準とすべきである。
【符号の説明】
【0143】
10…負極集電体、101…有機支持層、101a…第1面、101b…第2面、1011…第1のサブレイヤ、1012…第2のサブレイヤ、1013…第3のサブレイヤ、102…銅系導電層、103…保護層、20…負極活物質層、30…負極シート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】