IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラスケム エス.エー.の特許一覧

特表2022-528894第二世代の糖から化学物質を生成するためのキシロースおよびグルコースの同時消費のための代謝工学
<>
  • 特表-第二世代の糖から化学物質を生成するためのキシロースおよびグルコースの同時消費のための代謝工学 図1
  • 特表-第二世代の糖から化学物質を生成するためのキシロースおよびグルコースの同時消費のための代謝工学 図2
  • 特表-第二世代の糖から化学物質を生成するためのキシロースおよびグルコースの同時消費のための代謝工学 図3
  • 特表-第二世代の糖から化学物質を生成するためのキシロースおよびグルコースの同時消費のための代謝工学 図4
  • 特表-第二世代の糖から化学物質を生成するためのキシロースおよびグルコースの同時消費のための代謝工学 図5
  • 特表-第二世代の糖から化学物質を生成するためのキシロースおよびグルコースの同時消費のための代謝工学 図6
  • 特表-第二世代の糖から化学物質を生成するためのキシロースおよびグルコースの同時消費のための代謝工学 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】第二世代の糖から化学物質を生成するためのキシロースおよびグルコースの同時消費のための代謝工学
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/21 20060101AFI20220609BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
C12N1/21 ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559112
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(85)【翻訳文提出日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 BR2020050115
(87)【国際公開番号】W WO2020198830
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/829,398
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319007767
【氏名又は名称】ブラスケム エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ロデゲ ゴゴラ コリング ベロニカ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ベラルディ ゼイドラー アン フェルナンダ
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン パリッツィ ルーカス
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA01Y
4B065AA23Y
4B065AA26X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA02
4B065CA60
(57)【要約】
本開示は、所望の化学物質生成物の生産性アウトプットを増大させるためにキシロースおよびグルコースの同時消費の能力がある微生物を生成するための微生物を遺伝子改変するための方法を提供する。本開示は、キシロースおよびグルコースの同時消費の能力がある改変細菌、および前記微生物を含む組成物をさらに提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵生成物をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物であって、
キシロースおよびグルコースを同時に用い、
(a)ペントースATP結合トランスポータータンパク質が発現されないような、前記微生物のゲノムからの前記トランスポータータンパク質の欠失または不活性化;
(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合された、C5糖共輸送体の少なくとも一つをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列であって、前記C5糖共輸送体が、(1)キシロース共輸送体および/または(2)アラビノース共輸送体を含む、前記一つ以上の内因性または外因性核酸配列;
(c)(1)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素と、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードし、かつ/または(2)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素と、一つ以上のキシロース異性化酵素および/もしくは一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードする、一つ以上の内因性または外因性核酸配列
のうちの一つ以上を含む、前記組み換え微生物。
【請求項2】
前記微生物によって生成される前記発酵生成物が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む一つ以上の分子である、請求項1に記載の組み換え微生物。
【請求項3】
二つ以上の分子が同時に生成される、請求項2に記載の組み換え微生物。
【請求項4】
発酵生成物をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え大腸菌(E. coli)であって、
当該組み換え微生物がキシロースおよびグルコースを同時に用い、前記微生物が、
(a)ATP結合トランスポータータンパク質araFGHおよびxylFGHが発現されないような、前記微生物のゲノムからの前記トランスポータータンパク質の欠失または不活性化;
(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合された、C5糖共輸送体の少なくとも一つをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列であって、前記C5糖共輸送体が、(1)キシロース共輸送体および/または(2)アラビノース共輸送体を含む、前記一つ以上の内因性または外因性核酸配列;
(c)(1)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素と、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードし、かつ/または(2)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素と、一つ以上のキシロース異性化酵素および/もしくは一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードする、一つ以上の内因性または外因性核酸配列
のうちの一つ以上を含む、前記組み換え大腸菌。
【請求項5】
モノエチレングリコール(MEG)および/またはアセトンをキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物であって、
キシロースおよびグルコースを同時に用い、
(a)親微生物のゲノムからの、aldA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに
(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現
のうちの一つ以上を含み、
MEGおよび/またはアセトン生成のための経路を発現する、
前記組み換え微生物。
【請求項6】
glcDEFの欠失または不活性化をさらに含む、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項7】
前記C5共輸送体が、前記araFGH座位のGAPDHプロモーターによって制御される、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項8】
前記C5糖共輸送体がキシロース共輸送体XylEである、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項9】
前記XylEが、配列番号49を含むアミノ酸配列を含む、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項10】
前記XylEが、配列番号48を含む核酸配列によりコードされる、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項11】
前記キシロース共輸送体が前記微生物に対して内因性である、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項12】
前記C5糖共輸送体がアラビノース共輸送体AraEである、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項13】
前記AraEが、配列番号47を含むアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の組み換え微生物。
【請求項14】
前記AraEが、配列番号46を含む核酸配列によりコードされる、請求項12に記載の組み換え微生物。
【請求項15】
前記アラビノース共輸送体が前記微生物に対して内因性である、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項16】
前記キシロースの取り込みが、他の単糖による異化抑制に感受性を有さない、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項17】
機能的ホスホトランスフェラーゼ系を含む、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項18】
cAMP受容体タンパク質(CRP)をコードする天然の野生型核酸配列を含む、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項19】
前記CRPが、配列番号10を含むアミノ酸配列を含む、請求項18に記載の組み換え微生物。
【請求項20】
前記CRPが、配列番号9を含む核酸配列によりコードされる、請求項18に記載の組み換え微生物。
【請求項21】
前記キシロース共輸送体の構成的過剰発現が、前記原料から前記微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項22】
前記アラビノース共輸送体の構成的過剰発現が、前記原料から前記微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項23】
前記連続的キシロース移入が、前記原料における他の糖の存在と無関係に生じる、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項24】
以下の(c)~(e):
(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;
(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに
(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化
のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含む、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項25】
(c)および(d)が、proDプロモーターにより制御されるオペロン中に存在する、請求項24に記載の組み換え微生物。
【請求項26】
前記proDプロモーターが、配列番号53を含む核酸配列によりコードされる、請求項25に記載の組み換え微生物。
【請求項27】
前記キシロース異性化酵素がXylAである、請求項24に記載の組み換え微生物。
【請求項28】
前記キシロース異性化酵素が前記微生物に対して内因性である、前記請求項のいずれか一項に記載の組み換え微生物。
【請求項29】
前記XylAが、配列番号6を含むアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の組み換え微生物。
【請求項30】
前記XylAが、配列番号5を含む核酸配列によりコードされる、請求項27に記載の組み換え微生物。
【請求項31】
前記ケトヘキソキナーゼがヒト(Homo Sapiens)由来である、請求項24に記載の組み換え微生物。
【請求項32】
前記ケトヘキソキナーゼが前記微生物に対して異種性である、請求項24に記載の組み換え微生物。
【請求項33】
前記ケトヘキソキナーゼがkhk-Cである、請求項32に記載の組み換え微生物。
【請求項34】
前記khk-Cが、配列番号12を含むアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の組み換え微生物。
【請求項35】
前記khk-Cが、配列番号11を含む核酸配列によりコードされる、請求項33に記載の組み換え微生物。
【請求項36】
前記フルクトース-二リン酸アルドラーゼがヒト由来である、請求項24に記載の組み換え微生物。
【請求項37】
前記フルクトース-二リン酸アルドラーゼが前記微生物に対して異種性である、請求項24に記載の組み換え微生物。
【請求項38】
前記フルクトース-二リン酸アルドラーゼがaldoBである、請求項37に記載の組み換え微生物。
【請求項39】
前記aldoBが、配列番号51を含むアミノ酸配列を含む、請求項38に記載の組み換え微生物。
【請求項40】
前記aldoBが、配列番号50を含む核酸配列によりコードされる、請求項38に記載の組み換え微生物。
【請求項41】
前記グリコアルデヒド還元酵素が前記微生物に対して内因性である、請求項24に記載の組み換え微生物。
【請求項42】
前記グリコアルデヒド還元酵素がfucOである、請求項24に記載の組み換え微生物。
【請求項43】
前記fucOが、配列番号98を含むアミノ酸配列を含む、請求項42に記載の組み換え微生物。
【請求項44】
前記fucOが、配列番号52を含む核酸配列によりコードされる、請求項42に記載の組み換え微生物。
【請求項45】
前記キシルロキナーゼがXylBである、請求項24に記載の組み換え微生物。
【請求項46】
前記xylBが、配列番号14を含むアミノ酸配列を含む、請求項45に記載の組み換え微生物。
【請求項47】
前記xylBが、配列番号13を含む核酸配列によりコードされる、請求項45に記載の組み換え微生物。
【請求項48】
以下の(c)~(e):
(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;
(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに
(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化
のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含む、請求項5に記載の組み換え微生物。
【請求項49】
前記キシロース脱水素酵素が、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、バークホルデリア・ゼノボランス(Burkholderia xenovorans)、ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)由来である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項50】
前記キシロース脱水素酵素がxdhである、請求項49に記載の組み換え微生物。
【請求項51】
前記xdhが、配列番号16、17、または19を含むアミノ酸配列を含む、請求項50に記載の組み換え微生物。
【請求項52】
前記xdhが、配列番号15、18、または97を含む核酸配列によりコードされる、請求項50に記載の組み換え微生物。
【請求項53】
前記キシロース脱水素酵素が前記微生物に対して異種性である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項54】
前記キシロノラクトナーゼが、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項55】
前記キシロノラクトナーゼがxylCである、請求項54に記載の組み換え微生物。
【請求項56】
前記xylCが、配列番号55、57、または59を含むアミノ酸配列を含む、請求項55に記載の組み換え微生物。
【請求項57】
前記xylCが、配列番号54、56、または58を含む核酸配列によりコードされる、請求項55に記載の組み換え微生物。
【請求項58】
前記キシロノラクトナーゼが前記微生物に対して異種性である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項59】
前記キシロノラクトナーゼが前記微生物に対して内因性である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項60】
前記キシロース脱水酵素が、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項61】
前記キシロース脱水酵素がxylDである、請求項60に記載の組み換え微生物。
【請求項62】
前記xylDが、配列番号61、63、または65を含むアミノ酸配列を含む、請求項61に記載の組み換え微生物。
【請求項63】
前記xylDが、配列番号60、62、または64を含む核酸配列によりコードされる、請求項61に記載の組み換え微生物。
【請求項64】
前記キシロース脱水酵素が前記微生物に対して異種性である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項65】
前記キシロース脱水酵素が前記微生物に対して内因性である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項66】
前記グリコアルデヒド還元酵素が前記微生物に対して内因性である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項67】
前記グリコアルデヒド還元酵素がfucOである、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項68】
前記fucOが、配列番号98を含むアミノ酸配列を含む、請求項49に記載の組み換え微生物。
【請求項69】
前記fucOが、配列番号52を含む核酸配列によりコードされる、請求項49に記載の組み換え微生物。
【請求項70】
前記グリコアルデヒド還元酵素が前記微生物に対して異種性である、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項71】
前記キシロース異性化酵素がXylAである、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項72】
前記xylAが、配列番号6を含むアミノ酸配列を含む、請求項71に記載の組み換え微生物。
【請求項73】
前記xylAが、配列番号5を含む核酸配列によりコードされる、請求項71に記載の組み換え微生物。
【請求項74】
前記キシルロキナーゼがXylBである、請求項48に記載の組み換え微生物。
【請求項75】
前記xylBが、配列番号14を含むアミノ酸配列を含む、請求項74に記載の組み換え微生物。
【請求項76】
前記xylBが、配列番号13を含む核酸配列によりコードされる、請求項74に記載の組み換え微生物。
【請求項77】
以下の(f)~(h):
(f)アセトアセチル-CoAチオラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;
(g)アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;および
(h)アセトンへのアセトアセテートの変換を触媒するアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現
のうちの一つ以上を伴うアセトン生成のための経路をさらに含む、請求項24または48に記載の組み換え微生物。
【請求項76】
(f)、(g)、および(h)が、OXB11プロモーターにより制御されるオペロン中に存在する、請求項77に記載の組み換え微生物。
【請求項77】
前記OXB11プロモーターが、配列番号78を含む核酸配列によりコードされる、請求項76に記載の組み換え微生物。
【請求項78】
前記アセトアセチル-CoAチオラーゼがクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来である、請求項77に記載の組み換え微生物。
【請求項79】
前記アセトアセチル-CoAチオラーゼが、配列番号67または69を含むアミノ酸配列を含む、請求項78に記載の組み換え微生物。
【請求項80】
前記アセトアセチル-CoAチオラーゼが、配列番号66または68を含む核酸配列によりコードされる、請求項78に記載の組み換え微生物。
【請求項81】
前記アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼがAtoDAである、請求項77に記載の組み換え微生物。
【請求項82】
AtoDAサブユニットアルファが、配列番号72を含むアミノ酸配列を含む、請求項81に記載の組み換え微生物。
【請求項83】
AtoDAサブユニットアルファが、配列番号70を含む核酸配列によりコードされる、請求項81に記載の組み換え微生物。
【請求項84】
AtoDAサブユニットベータが、配列番号73を含むアミノ酸配列を含む、請求項83に記載の組み換え微生物。
【請求項85】
AtoDAサブユニットベータが、配列番号71を含む核酸配列によりコードされる、請求項83に記載の組み換え微生物。
【請求項86】
前記アセトアセテートデカルボキシラーゼが、クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)またはクロストリジウム・アセトブチリカム由来である、請求項77に記載の組み換え微生物。
【請求項87】
前記アセトアセテートデカルボキシラーゼがAdcである、請求項86に記載の組み換え微生物。
【請求項88】
前記Adcが、配列番号75または77を含むアミノ酸配列を含む、請求項86に記載の組み換え微生物。
【請求項89】
前記Adcが、配列番号74または76を含む核酸配列によりコードされる、請求項88に記載の組み換え微生物。
【請求項90】
以下の(f)~(i):
(f)アセトアセチル-CoAチオラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;
(g)アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;および
(h)アセトンへのアセトアセテートの変換を触媒するアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;
(i)イソプロパノールへのアセトンの変換を触媒するアルコール脱水素酵素をコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現
のうちの一つ以上を伴うイソプロパノール生成のための経路をさらに含む、請求項24または48に記載の組み換え微生物。
【請求項91】
グリコール酸をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物であって、
キシロースおよびグルコースを同時に用い、
(a)親微生物のゲノムからの、fucO、yqhD、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに
(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現
のうちの一つ以上を含み、
グリコール酸の生成のための一つ以上の経路をさらに発現する、
前記組み換え微生物。
【請求項92】
glcDEFの欠失または不活性化をさらに含む、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項93】
dkgAの欠失または不活性化をさらに含む、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項94】
yahKの欠失または不活性化をさらに含む、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項95】
前記キシロース共輸送体が、前記araFGH座位のGAPDHプロモーターによって制御される、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項96】
前記C5糖共輸送体がキシロース共輸送体XylEである、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項97】
前記XylEが、配列番号49を含むアミノ酸配列を含む、請求項96に記載の組み換え微生物。
【請求項98】
前記XylEが、配列番号48を含む核酸配列によりコードされる、請求項96に記載の組み換え微生物。
【請求項99】
前記キシロース共輸送体が前記微生物に対して内因性である、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項100】
前記C5糖共輸送体がアラビノース共輸送体AraEである、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項101】
前記アラビノース共輸送体が前記微生物に対して内因性である、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項102】
前記キシロースの取り込みが、他の単糖による異化抑制に感受性を有さない、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項103】
機能的ホスホトランスフェラーゼ系を含む、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項104】
cAMP受容体タンパク質(CRP)をコードする天然の野生型核酸配列を含む、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項105】
前記CRPが、配列番号10を含むアミノ酸配列を含む、請求項104に記載の組み換え微生物。
【請求項106】
前記CRPが、配列番号9を含む核酸配列によりコードされる、請求項104に記載の組み換え微生物。
【請求項107】
前記キシロース共輸送体の構成的過剰発現が、前記原料から前記微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項108】
前記アラビノース共輸送体の構成的過剰発現が、前記原料から前記微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項109】
前記連続的キシロース移入が、前記原料における他の糖の存在と無関係に生じる、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項110】
以下の(c)から(e):
(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;
(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに
(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化
のうちの一つ以上を伴うグリコール酸生成のための経路を含む、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項111】
(c)および(d)が、proDプロモーターにより制御されるオペロン中に存在する、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項112】
前記proDプロモーターが、配列番号53を含む核酸配列によりコードされる、請求項111に記載の組み換え微生物。
【請求項113】
前記キシロース異性化酵素がXylAである、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項114】
前記XylAが、配列番号6を含むアミノ酸配列を含む、請求項113に記載の組み換え微生物。
【請求項115】
前記XylAが、配列番号5を含む核酸配列によりコードされる、請求項113に記載の組み換え微生物。
【請求項116】
前記キシロース異性化酵素が前記微生物に対して内因性である、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項117】
前記ケトヘキソキナーゼがヒト由来である、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項118】
前記ケトヘキソキナーゼが前記微生物に対して異種性である、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項119】
前記ケトヘキソキナーゼがkhk-Cである、請求項118に記載の組み換え微生物。
【請求項120】
前記khk-Cが、配列番号12を含むアミノ酸配列を含む、請求項119に記載の組み換え微生物。
【請求項121】
前記khk-Cが、配列番号11を含む核酸配列によりコードされる、請求項119に記載の組み換え微生物。
【請求項122】
前記フルクトース-二リン酸アルドラーゼがヒト由来である、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項123】
前記フルクトース-二リン酸アルドラーゼがaldoBである、請求項122に記載の組み換え微生物。
【請求項124】
前記aldoBが、配列番号51を含むアミノ酸配列を含む、請求項123に記載の組み換え微生物。
【請求項125】
前記aldoBが、配列番号50を含む核酸配列によりコードされる、請求項123に記載の組み換え微生物。
【請求項126】
前記フルクトース-二リン酸アルドラーゼが前記微生物に対して異種性である、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項127】
前記グリコアルデヒド脱水素酵素がaldAである、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項128】
前記aldAが、配列番号4を含むアミノ酸配列を含む、請求項127に記載の組み換え微生物。
【請求項129】
前記aldAが、配列番号3を含む核酸配列によりコードされる、請求項127に記載の組み換え微生物。
【請求項130】
前記グリコアルデヒド脱水素酵素が前記微生物に対して内因性である、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項131】
前記キシルロキナーゼがXylBである、請求項110に記載の組み換え微生物。
【請求項132】
前記xylBが、配列番号14を含むアミノ酸配列を含む、請求項131に記載の組み換え微生物。
【請求項133】
前記xylBが、配列番号13を含む核酸配列によりコードされる、請求項131に記載の組み換え微生物。
【請求項134】
以下の(c)~(e):
(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;
(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに
(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化
のうちの一つ以上を伴うグリコール酸生成のための経路を含む、請求項91に記載の組み換え微生物。
【請求項135】
(c)および(d)がproDプロモーターにより制御される、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項136】
前記proDプロモーターが、配列番号53を含む核酸配列によりコードされる、請求項135に記載の組み換え微生物。
【請求項137】
前記キシロース異性化酵素がXylAである、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項138】
前記XylAが、配列番号6を含むアミノ酸配列を含む、請求項137に記載の組み換え微生物。
【請求項139】
前記XylAが、配列番号5を含む核酸配列によりコードされる、請求項138に記載の組み換え微生物。
【請求項140】
前記キシルロキナーゼがXylBである、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項141】
前記xylBが、配列番号14を含むアミノ酸配列を含む、請求項140に記載の組み換え微生物。
【請求項142】
前記xylBが、配列番号13を含む核酸配列によりコードされる、請求項140に記載の組み換え微生物。
【請求項143】
前記キシロース脱水素酵素が、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項144】
前記キシロース脱水素酵素がxdhである、請求項143に記載の組み換え微生物。
【請求項145】
前記xdhが、配列番号16、17、または19を含むアミノ酸配列を含む、請求項144に記載の組み換え微生物。
【請求項146】
前記xdhが、配列番号15、18、または97を含む核酸配列によりコードされる、請求項144に記載の組み換え微生物。
【請求項147】
前記キシロース脱水素酵素が前記微生物に対して異種性である、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項148】
前記キシロノラクトナーゼが、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項149】
前記キシロノラクトナーゼがxylCである、請求項148に記載の組み換え微生物。
【請求項150】
前記xylCが、配列番号55、57、または59を含むアミノ酸配列を含む、請求項149に記載の組み換え微生物。
【請求項151】
前記xylCが、配列番号54、56、または58を含む核酸配列によりコードされる、請求項149に記載の組み換え微生物。
【請求項152】
前記キシロノラクトナーゼが前記微生物に対して異種性である、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項153】
前記キシロノラクトナーゼが前記微生物に対して内因性である、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項154】
前記グリコアルデヒド脱水素酵素がaldAである、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項155】
前記aldAが、配列番号4を含むアミノ酸配列を含む、請求項154に記載の組み換え微生物。
【請求項156】
前記aldAが、配列番号3を含む核酸配列によりコードされる、請求項154に記載の組み換え微生物。
【請求項157】
前記グリコアルデヒド脱水素酵素が前記微生物に対して内因性である、請求項134に記載の組み換え微生物。
【請求項158】
(f)イソクエン酸リアーゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現;および/または
(g)グリオキシル酸レダクターゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現
のうちの一つ以上を伴うグリコール酸の生成のための経路をさらに発現する、請求項110または134に記載の組み換え微生物。
【請求項159】
(f)および(g)が、OXB20プロモーターにより制御されたオペロン中に存在する、請求項158に記載の組み換え微生物。
【請求項160】
前記OXB20プロモーターが、配列番号96を含む核酸配列によりコードされる、請求項159に記載の組み換え微生物。
【請求項161】
前記イソクエン酸リアーゼがAceAである、請求項158に記載の組み換え微生物。
【請求項162】
前記AceAが、配列番号90を含むアミノ酸配列を含む、請求項161に記載の組み換え微生物。
【請求項163】
前記AceAが、配列番号89を含む核酸配列によりコードされる、請求項161に記載の組み換え微生物。
【請求項164】
前記グリオキシル酸レダクターゼがYcdWである、請求項158に記載の組み換え微生物。
【請求項165】
前記YcdWが、配列番号92を含むアミノ酸配列を含む、請求項164に記載の組み換え微生物。
【請求項166】
前記YcdWが、配列番号91を含む核酸配列によりコードされる、請求項164に記載の組み換え微生物。
【請求項167】
クロストリジウム属(Clostridium)の種、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム(Butyribacterium methylotrophicum)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、クロストリジウム・アセチカム(Clostridium aceticum)、アセトバクテリウム・ウッディ(Acetobacterium woodii)、アルカリバクルム・バッキ(Alkalibaculum bacchii)、クロストリジウム・ドラケイ(Clostridium drakei)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウム・スカトロゲネス(Clostridium scatologenes)、モーレラ・サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)、アセトネマ・ロングム(Acetonema longum)、ブラウチア・プロダクタ(Blautia producta)、クロストリジウム・グリコリクム(Clostridium glycolicum)、クロストリジウム・マグナム(Clostridium magnum)、クロストリジウム・マヨムベイ(Clostridium mayombei)、クロストリジウム・メソオキシベンゾボランス(Clostridium methoxybenzovorans)、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキ、オキソバクター・フェニギイ(Oxobacter pfennigii)、サーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、スポロムサ・オバタ(Sporomusa ovata)、サーモアセトゲニウム・ファエウム(Thermoacetogenium phaeum)、アセトバクテリウム・カービノリカム(Acetobacterium carbinolicum)、スポロムサ・テルミチダ(Sporomusa termitida)、モーレラ・グリセリニ(Moorella glycerini)、ユーバクテリウム・アグリガンス(Eubacterium aggregans)、トレポネーマ・アゾトニュートリシウム(Treponema azotonutricium)、大腸菌(Escherichia coli)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、バチルス属(Bacillus)の種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シファゾマイセス・スティピティス(Scheffersomyces stipitis)、およびテリスポロバクター・グリコリカス(Terrisporobacter glycolicus)からなる群から選択される親微生物から得られる、前記請求項のいずれか一項に記載の組み換え微生物。
【請求項168】
前記親微生物が大腸菌である、請求項167に記載の組み換え微生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月4日に出願された米国特許仮出願第62/829,398号の利益を主張し、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表に関する説明
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、本明細書に参照により組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、BRSK_021_01WO_ST25.txtである。テキストファイルは222kbで、2020年4月4日に作成され、電子的に提出されている。
【背景技術】
【0003】
本開示の背景
ペントースのような代替の原料からの、モノエチレングリコール、グリコール酸、C3化合物(アセトン、イソプロパノールおよびプロペンなど)、アミノ酸、ならびにポリオールなどの所望の化学物質の生成は、石油系化学物質からそれをもたらす代替手段である。
【0004】
ペントースであるキシロースの利用は、最も継続可能な化学物質プロジェクトと区別される原因である。原料としてのリグノセルロースバイオマスの利用が、別の方法で食糧を生成する植物の利用を必要としないことを考えると、リグノセルロースバイオマスは、有望な継続可能な原料である。リグノセルロースバイオマスは、その持続可能性および世界的な可能性に起因して、継続可能な原料としてさらに有望である。リグノセルロース系の糖の分離および単離は、土地の使用を増加させることなく糖の生成を増加させるための一つの選択肢である。キシロースは、ヘミセルロース系加水分解物における主要な炭素源であり、グルコースおよびアラビノースが続く。キシロースは、典型的には、ヘミセルロース系加水分解物に存在する糖の70~80%を表し、一方、グルコースは、10~20%を占める。
【0005】
大腸菌(Escherichia coli)では、微量のグルコースでさえも、キシロースの取り込みを完全に阻害し(たとえキシロースが、主な糖であっても)、これにより、糖の所望の化学物質への全体的な変換が制限される。工業プロセスにおいて、生産性(生産物のg/1時間当たりのリットル)は、経済的実行可能性を確保するための鍵となる要素であり、したがって、微生物株は、キシロースなどの一次基質を、生成物に最高速度で常に変換する能力を有する必要がある。グルコースが、リグノセルロース系加水分解物に存在することを考慮すると、バッチ操作中に、キシロース取り込みは、生産性を低下しながら、グルコースの完全な枯渇まで引き延ばされる。供給バッチまたは継続操作を考慮すると、キシロースとグルコースの両方を含有するストリームは、反応装置に常に供給され、グルコースの可能性のある抑制を補強し、これにより、共通の継続可能な原料から一つ以上の生成物を生成する微生物の能力の可能性のある生産性を最大にできない。
【0006】
継続可能な原料から所望の生産物を生成する能力がある微生物の生産性を最大にする必要性、特に、微生物上の炭素源の抑制活性を最小化するか、または排除しながら、複数の炭素源の使用を最大にする必要性が存在する。
【0007】
本明細書中に記載されるように、本開示は、糖の混合ストリームの存在に起因して引き起こされる典型的な異化抑制効果を心配することなく、望ましい化学物質の生成のために糖の混合ストリームを用いる微生物工学のための方法および組成物を提供する。
【発明の概要】
【0008】
本開示の概要
一部の態様では、本開示は、全体として、発酵生成物をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物に関し、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、微生物は、以下:(a)ペントースATP結合トランスポータータンパク質が発現されないような、微生物のゲノムからのトランスポータータンパク質の欠失または不活性化;(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合された、C5糖共輸送体の少なくとも一つをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列であって、C5糖共輸送体が、(1)キシロース共輸送体および/または(2)アラビノース共輸送体を含む、一つ以上の内因性または外因性核酸配列;(c)(1)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素と、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードし、かつ/または(2)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素と、一つ以上のキシロース異性化酵素および/もしくは一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードする、一つ以上の内因性または外因性核酸配列のうちの一つ以上を含む。
【0009】
一部の態様では、微生物によって生成される発酵生成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む一つ以上の分子である。一部の態様では、二つ以上の分子が、同時に生成される。
【0010】
一部の態様では、本開示は、全体として、発酵生成物をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え大腸菌(E. coli)に関し、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、微生物は、以下:(a)ATP結合トランスポータータンパク質araFGHおよびxylFGHが発現されないような、微生物のゲノムからのトランスポータータンパク質の欠失または不活性化;(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合された、C5糖共輸送体の少なくとも一つをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列であって、C5糖共輸送体が、(1)キシロース共輸送体および/または(2)アラビノース共輸送体を含む、一つ以上の内因性または外因性核酸配列;(c)(1)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素と、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードし、かつ/または(2)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素と、一つ以上のキシロース異性化酵素および/もしくは一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードする、一つ以上の内因性または外因性核酸配列のうちの一つ以上を含む。
【0011】
一部の態様では、本開示は、全体として、モノエチレングリコール(MEG)および/またはアセトンをキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物に関し、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、以下:(a)親微生物のゲノムからのaldA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を含み、組み換え微生物は、MEGおよび/またはアセトン生成のための経路を発現する。
【0012】
一部の態様では、微生物がglcDEFの欠失または不活性化をさらに含む、請求項5に記載の組み換え微生物。一部の態様では、C5共輸送体は、araFGH座位のGAPDHプロモーターによって制御される。一部の態様では、C5糖共輸送体は、キシロース共輸送体XylEである。一部の態様では、XylEは、配列番号49を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、XylEは、配列番号48を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、キシロース共輸送体は、微生物に対して内因性である。
【0013】
一部の態様では、C5糖共輸送体は、アラビノース共輸送体AraEである。一部の態様では、AraEは、配列番号47を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、AraEは、配列番号46を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、アラビノース共輸送体は、微生物に対して内因性である。
【0014】
一部の態様では、キシロースの取り込みは、他の単糖による異化抑制に感受性を有さない。一部の態様では、微生物は、機能的ホスホトランスフェラーゼ系を含む。一部の態様では、微生物は、cAMP受容体タンパク質(CRP)をコードする天然の野生型核酸配列を含む。一部の態様では、CRPは、配列番号10を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CRPは、配列番号9を含む核酸配列によりコードされる。
【0015】
一部の態様では、キシロース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、アラビノース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、連続的キシロース移入は、原料における他の糖の存在と無関係に生じる。
【0016】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(c)~(e):(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含む。一部の態様では、(c)および(d)は、proDプロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、proDプロモーターは、配列番号53を含む核酸配列によりコードされる。
【0017】
一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、XylAは、配列番号6を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、XylAは、配列番号5を含む核酸配列によりコードされる。
【0018】
一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、ヒト(Homo Sapiens)由来である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、khk-Cである。一部の態様では、khk-Cは、配列番号12を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、khk-Cは、配列番号11を含む核酸配列によりコードされる。
【0019】
一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、aldoBである。一部の態様では、aldoBは、配列番号51を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、aldoBは、配列番号50を含む核酸配列によりコードされる。
【0020】
一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、fucOである。一部の態様では、fucOは、配列番号98を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、fucOは、配列番号52を含む核酸配列によりコードされる。
【0021】
一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。一部の態様では、xylBは、配列番号14を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xylBは、配列番号13を含む核酸配列によりコードされる。
【0022】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(c)~(e):(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含む。
【0023】
一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、カウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、バークホルデリア・ゼノボランス(Burkholderia xenovorans)、ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)由来である。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、xdhである。一部の態様では、xdhは、配列番号16、17、または19を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xdhは、配列番号15、18、または97を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、微生物に対して異種性である。
【0024】
一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、xylCである。一部の態様では、xylCは、配列番号55、57、または59を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xylCは、配列番号54、56、または58を含む核酸配列によりコードされる。
【0025】
一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して内因性である。
【0026】
一部の態様では、キシロース脱水酵素は、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロース脱水酵素は、xylDである。一部の態様では、xylDは、配列番号61、63、または65を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xylDは、配列番号60、62、または64を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、キシロース脱水酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロース脱水酵素は、微生物に対して内因性である。
【0027】
一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、fucOである。一部の態様では、fucOは、配列番号98を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、fucOは、配列番号52を含む核酸配列によりコードされる。
【0028】
一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、xylAは、配列番号6を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xylAは、配列番号5を含む核酸配列によりコードされる。
【0029】
一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。一部の態様では、xylBは、配列番号14を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xylBは、配列番号13を含む核酸配列によりコードされる。
【0030】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(f)~(h):(f)アセトアセチル-CoAチオラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;(g)アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;および(h)アセトンへのアセトアセテートの変換を触媒するアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を伴うアセトン生成のための経路をさらに含む。
【0031】
一部の態様では、(f)、(g)、および(h)は、OXB11プロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、OXB11プロモーターは、配列番号78を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、アセトアセチル-CoAチオラーゼは、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)由来である。一部の態様では、アセトアセチル-CoAチオラーゼは、配列番号67または69を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、アセトアセチル-CoAチオラーゼは、配列番号66または68を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼは、AtoDAである。一部の態様では、AtoDAサブユニットアルファは、配列番号72を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、AtoDAサブユニットアルファは、配列番号70を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、AtoDAサブユニットベータは、配列番号73を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、AtoDAサブユニットベータは、配列番号71を含む核酸配列によりコードされる。
【0032】
アセトアセテートデカルボキシラーゼが、クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)またはクロストリジウム・アセトブチリカム由来である、請求項77に記載の組み換え微生物。一部の態様では、アセトアセテートデカルボキシラーゼは、Adcである。一部の態様では、Adcは、配列番号75または77を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、Adcは、配列番号74または76を含む核酸配列によりコードされる。
【0033】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(f)~(i):(f)アセトアセチル-CoAチオラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;(g)アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;および(h)アセトンへのアセトアセテートの変換を触媒するアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現、(i)イソプロパノールへのアセトンの変換を触媒するアルコール脱水素酵素をコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を伴うイソプロパノール生成のための経路をさらに含む。
【0034】
一部の態様では、本開示は、全体として、グリコール酸をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物に関し、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、以下:(a)親微生物のゲノムからのfucO、yqhD、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を含み、組み換え微生物は、グリコール酸の生成のための一つ以上の経路をさらに発現する。
【0035】
一部の態様では、微生物は、glcDEFの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、微生物は、dkgAの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、微生物は、yahKの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、キシロース共輸送体は、araFGH座位のGAPDHプロモーターによって制御される。
【0036】
一部の態様では、C5糖共輸送体は、キシロース共輸送体XylEである。一部の態様では、XylEは、配列番号49を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、XylEは、配列番号48を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、キシロース共輸送体は、微生物に対して内因性である。
【0037】
一部の態様では、C5糖共輸送体は、アラビノース共輸送体AraEである。一部の態様では、アラビノース共輸送体は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、キシロースの取り込みは、他の単糖による異化抑制に感受性を有さない。一部の態様では、微生物は、機能的ホスホトランスフェラーゼ系を含む。
【0038】
一部の態様では、微生物は、cAMP受容体タンパク質(CRP)をコードする天然の野生型核酸配列を含む。一部の態様では、CRPは、配列番号10を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、CRPは、配列番号9を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、キシロース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、アラビノース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、連続的キシロース移入は、原料における他の糖の存在と無関係に生じる。
【0039】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(c)から(e):(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うグリコール酸生成のための経路を含む。一部の態様では、(c)および(d)は、proDプロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、proDプロモーターは、配列番号53を含む核酸配列によりコードされる。
【0040】
一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、XylAは、配列番号6を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、XylAは、配列番号5を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、微生物に対して内因性である。
【0041】
一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、khk-Cである。一部の態様では、khk-Cは、配列番号12を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、khk-Cは、配列番号11を含む核酸配列によりコードされる。
【0042】
一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、aldoBである。一部の態様では、aldoBは、配列番号51を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、aldoBは、配列番号50を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、微生物に対して異種性である。
【0043】
一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、aldAである。一部の態様では、aldAは、配列番号4を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、aldAは、配列番号3を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、微生物に対して内因性である。
【0044】
一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。一部の態様では、xylBは、配列番号14を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xylBは、配列番号13を含む核酸配列によりコードされる。
【0045】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(c)~(e):(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うグリコール酸生成のための経路を含む。一部の態様では、(c)および(d)は、proDプロモーターによって制御される。一部の態様では、proDプロモーターは、配列番号53を含む核酸配列によりコードされる。
【0046】
一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、XylAは、配列番号6を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、XylAは、配列番号5を含む核酸配列によりコードされる。
【0047】
一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。一部の態様では、xylBは、配列番号14を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xylBは、配列番号13を含む核酸配列によりコードされる。
【0048】
一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、xdhである。一部の態様では、xdhは、配列番号16、17、または19を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xdhは、配列番号15、18、または97を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、微生物に対して異種性である。
【0049】
一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、xylCである。一部の態様では、xylCは、配列番号55、57、または59を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xylCは、配列番号54、56、または58を含む核酸配列によりコードされる。
【0050】
一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して内因性である。
【0051】
一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、aldAである。一部の態様では、aldAは、配列番号4を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、aldAは、配列番号3を含む核酸配列によりコードされる。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、微生物に対して内因性である。
【0052】
一部の態様では、微生物は、以下:(f)イソクエン酸リアーゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現;および/または(g)グリオキシル酸レダクターゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を伴うグリコール酸の生成のための経路をさらに発現する。一部の態様では、(f)および(g)は、OXB20プロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、OXB20プロモーターは、配列番号96を含む核酸配列によりコードされる。
【0053】
一部の態様では、イソクエン酸リアーゼは、AceAである。一部の態様では、AceAは、配列番号90を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、AceAは、配列番号89を含む核酸配列によりコードされる。
【0054】
一部の態様では、グリオキシル酸レダクターゼは、YcdWである。一部の態様では、YcdWは、配列番号92を含むアミノ酸配列を含む。一部の態様では、YcdWは、配列番号91を含む核酸配列によりコードされる。
【0055】
一部の態様では、組み換え微生物は、クロストリジウム属(Clostridium)の種、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム(Butyribacterium methylotrophicum)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、クロストリジウム・アセチカム(Clostridium aceticum)、アセトバクテリウム・ウッディ(Acetobacterium woodii)、アルカリバクルム・バッキ(Alkalibaculum bacchii)、クロストリジウム・ドラケイ(Clostridium drakei)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウム・スカトロゲネス(Clostridium scatologenes)、モーレラ・サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)、アセトネマ・ロングム(Acetonema longum)、ブラウチア・プロダクタ(Blautia producta)、クロストリジウム・グリコリクム(Clostridium glycolicum)、クロストリジウム・マグナム(Clostridium magnum)、クロストリジウム・マヨムベイ(Clostridium mayombei)、クロストリジウム・メソオキシベンゾボランス(Clostridium methoxybenzovorans)、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキ、オキソバクター・フェニギイ(Oxobacter pfennigii)、サーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、スポロムサ・オバタ(Sporomusa ovata)、サーモアセトゲニウム・ファエウム(Thermoacetogenium phaeum)、アセトバクテリウム・カービノリカム(Acetobacterium carbinolicum)、スポロムサ・テルミチダ(Sporomusa termitida)、モーレラ・グリセリニ(Moorella glycerini)、ユーバクテリウム・アグリガンス(Eubacterium aggregans)、トレポネーマ・アゾトニュートリシウム(Treponema azotonutricium)、大腸菌、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、バチルス属(Bacillus)の種、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)の種、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シファゾマイセス・スティピティス(Scheffersomyces stipitis)、およびテリスポロバクター・グリコリカス(Terrisporobacter glycolicus)からなる群から選択される親微生物から得られる。一部の態様では、親微生物は、大腸菌である。
【0056】
一部の態様では、本開示は、全体として、発酵生成物をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物に関し、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、微生物は、以下:(a)ペントースATPトランスポータータンパク質が発現されないような、微生物のゲノムからの結合トランスポータータンパク質の欠失または不活性化;(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合された、C5糖共輸送体の少なくとも一つをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列であって、C5糖共輸送体が、(1)キシロース共輸送体および/または(2)アラビノース共輸送体を含む、一つ以上の内因性または外因性核酸配列;(c)(1)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素と、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードし、かつ/または(2)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素と、一つ以上のキシロース異性化酵素および/もしくは一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードする、一つ以上の内因性または外因性核酸配列のうちの一つ以上を含む。一部の態様では、微生物によって生成される発酵生成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の炭素原子を含む一つ以上の分子である。一部の態様では、二つ以上の分子が、同時に生成される。
【0057】
一部の態様では、本開示は、全体として、発酵生成物をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え大腸菌に関し、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、微生物は、以下:(a)ATP結合トランスポータータンパク質araFGHおよびxylFGHが発現されないような、微生物のゲノムからのトランスポータータンパク質の欠失または不活性化;(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合された、C5糖共輸送体の少なくとも一つをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列であって、C5糖共輸送体が、(1)キシロース共輸送体および/または(2)アラビノース共輸送体を含む、一つ以上の内因性または外因性核酸配列;(c)(1)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素と、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードし、かつ/または(2)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素と、一つ以上のキシロース異性化酵素および/もしくは一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードする、一つ以上の内因性または外因性核酸配列のうちの一つ以上を含む。
【0058】
一部の態様では、本開示は、全体として、モノエチレングリコール(MEG)および/またはアセトンをキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物に関し、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、以下:(a)親微生物のゲノムからのaldA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を含み;組み換え微生物は、MEGおよび/またはアセトン生成のための経路を発現する。
【0059】
一部の態様では、微生物は、glcDEFの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、C5共輸送体は、araFGH座位のGAPDHプロモーターによって制御される。一部の態様では、C5糖共輸送体は、キシロース共輸送体XylEである。一部の態様では、キシロース共輸送体は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、C5糖共輸送体は、アラビノース共輸送体AraEである。一部の態様では、アラビノース共輸送体は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、キシロースの取り込みは、他の単糖による異化抑制に感受性を有さない。一部の態様では、微生物は、機能的ホスホトランスフェラーゼ系を含む。一部の態様では、微生物は、cAMP受容体タンパク質(CRP)をコードする天然の野生型核酸配列を含む。一部の態様では、aldAをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号3に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、aldAをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む。キシロース共輸送体の構成的過剰発現が、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする、請求項5に記載の組み換え微生物。アラビノース共輸送体の構成的過剰発現が、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする、請求項5に記載の組み換え微生物。連続的キシロース移入が、原料における他の糖の存在と無関係に生じる、請求項5に記載の組み換え微生物。
【0060】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(c)~(e):(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含む。
【0061】
一部の態様では、(c)および(d)は、proDプロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、fucOである。一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。
【0062】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(c)~(e):(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含む。
【0063】
一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して内因性である。一部の態様では、キシロース脱水酵素は、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である。
【0064】
一部の態様では、キシロース脱水酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロース脱水酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、fucOである。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。
【0065】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(f)~(h):(f)アセトアセチル-CoAチオラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;(g)アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;および(h)アセトンへのアセトアセテートの変換を触媒するアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を伴うアセトン生成のための経路をさらに含む。一部の態様では、(f)、(g)、および(h)は、OXB11プロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。
【0066】
一部の態様では、アセトアセチル-CoAチオラーゼは、クロストリジウム・アセトブチリカム由来である。一部の態様では、アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼは、AtoDAである。一部の態様では、アセトアセテートデカルボキシラーゼは、クロストリジウム・ベイジェリンキ由来である。
【0067】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(f)~(i):(f)アセトアセチル-CoAチオラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;(g)アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;および(h)アセトンへのアセトアセテートの変換を触媒するアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現、(i)イソプロパノールへのアセトンの変換を触媒するアルコール脱水素酵素をコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を伴うイソプロパノール生成のための経路をさらに含む。
【0068】
一部の態様では、本開示は、全体として、グリコール酸をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物に関し、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、以下:(a)親微生物のゲノムからの、fucO、yqhD、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を含み、組み換え微生物は、グリコール酸の生成のための一つ以上の経路をさらに発現する。一部の態様では、微生物は、glcDEFの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、微生物は、dkgAの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、微生物は、yahKの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、キシロース共輸送体は、araFGH座位のGAPDHプロモーターによって制御される。一部の態様では、C5糖共輸送体は、キシロース共輸送体XylEである。一部の態様では、キシロース共輸送体は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、C5糖共輸送体は、アラビノース共輸送体AraEである。一部の態様では、アラビノース共輸送体は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、キシロースの取り込みは、他の単糖による異化抑制に感受性を有さない。
【0069】
一部の態様では、微生物は、機能的ホスホトランスフェラーゼ系を含む。一部の態様では、微生物は、cAMP受容体タンパク質(CRP)をコードする天然の野生型核酸配列を含む。一部の態様では、CRPをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号9に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、CRPをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシロース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、アラビノース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、連続的キシロース移入は、原料における他の糖の存在と無関係に生じる。
【0070】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(c)から(e):(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うグリコール酸生成のための経路を含む。一部の態様では、(c)および(d)は、proDプロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。
【0071】
一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、aldAである。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。
【0072】
一部の態様では、組み換え微生物は、以下の(c)~(e):(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うグリコール酸生成のための経路を含む。一部の態様では、(c)および(d)は、proDプロモーターによって制御される。
【0073】
一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、ハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、aldAである。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、微生物に対して内因性である。
【0074】
一部の態様では、微生物は、以下:(f)イソクエン酸リアーゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現;および/または(g)グリオキシル酸レダクターゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を伴うグリコール酸の生成のための経路をさらに発現する。一部の態様では、(f)および(g)は、OXB20プロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、イソクエン酸リアーゼは、AceAである。一部の態様では、グリオキシル酸レダクターゼは、YcdWである。
【0075】
一部の態様では、組み換え微生物は、クロストリジウム属、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)、ユーバクテリウム・リモスム(Eubacterium limosum)、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム(Butyribacterium methylotrophicum)、ムーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)、クロストリジウム・アセチカム(Clostridium aceticum)、アセトバクテリウム・ウッディ(Acetobacterium woodii)、アルカリバクルム・バッキ(Alkalibaculum bacchii)、クロストリジウム・ドラケイ(Clostridium drakei)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)、クロストリジウム・フォルミコアセチカム(Clostridium formicoaceticum)、クロストリジウム・スカトロゲネス(Clostridium scatologenes)、モーレラ・サーモオートトロフィカ(Moorella thermoautotrophica)、アセトネマ・ロングム(Acetonema longum)、ブラウチア・プロダクタ(Blautia producta)、クロストリジウム・グリコリクム(Clostridium glycolicum)、クロストリジウム・マグナム(Clostridium magnum)、クロストリジウム・マヨムベイ(Clostridium mayombei)、クロストリジウム・メソオキシベンゾボランス(Clostridium methoxybenzovorans)、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキ、オキソバクター・フェニギイ(Oxobacter pfennigii)、サーモアナエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、スポロムサ・オバタ(Sporomusa ovata)、サーモアセトゲニウム・ファエウム(Thermoacetogenium phaeum)、アセトバクテリウム・カービノリカム(Acetobacterium carbinolicum)、スポロムサ・テルミチダ(Sporomusa termitida)、モーレラ・グリセリニ(Moorella glycerini)、ユーバクテリウム・アグリガンス(Eubacterium aggregans)、トレポネーマ・アゾトニュートリシウム(Treponema azotonutricium)、大腸菌、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、バチルス属の種、コリネバクテリウム属の種、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、シファゾマイセス・スティピティス(Scheffersomyces stipitis)、およびテリスポロバクター・グリコリカス(Terrisporobacter glycolicus)からなる群から選択される親微生物から得られる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本明細書で企図される生成物を生成するためにキシロースおよびグルコースを用いる複数の経路を示す。
図2】1:1の割合の培養における、共消費株におけるグルコースおよびキシロースの同時使用の検出を示すグラフであり、一方、親株では、グルコースが枯渇した後にのみキシロースが消費され始めた。
図3】最初の糖混合物の75%を消費する共消費株を示すグラフであり、一方、親株は、62%(培養36時間)のみ消費した。6:1の割合の培養について、親株と共消費株の両方が、同様のプロファイルのキシロース消費およびバイオマス生成で、初期のグルコースおよびキシロースを完全に消費した。
図4】株におけるMEG使用を示すグラフである。MEGの総量は、12%増加し、アセトンの量は、197%増加した。
図5】1:1の割合の培養における、共消費株におけるグルコースおよびキシロースの同時使用の検出を示すグラフであり、一方、親株では、キシロースは、グルコースの枯渇の18時間後にのみ減少し始めた。
図6】最初の糖混合物の61%を消費する共消費株を示すグラフであり、一方、親株は、52%(培養36時間)のみ消費した。6:1の割合の培養について、共消費株および親株は、同様のプロファイルのキシロース消費およびバイオマス生成で、初期のグルコースおよびキシロースを完全に消費した。
図7】MEGの総量が、9%増加し、アセトンの量が、119%増加したことを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本開示の詳細な説明
本開示は、全体として、単一のタイプの原料に存在する複数の炭素源の抑制効果に起因して、通常、最大収率および生産性に至るものを達成する能力がないバイオ再生可能なプラント原料からの所望の生成物の生成を最大にするための微生物工学に関する。本開示は、最大の生産性で機能しない微生物をもたらす、一部の単糖の共消費から生じる抑制効果を低減または除去するための方法および組成物を記載したものである。
【0078】
以下の定義および略語は、本開示の解釈に使用されるべきである。
【0079】
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「酵素」への言及は、複数のそのような酵素を含み、また「微生物」への言及は、一つ以上の微生物への言及などを含む。
【0080】
本明細書で使用される場合、「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」、「含める(include)」、「含めている(including)」、「有する(have)」、「有している(having)」、「含有する(contain)」、「含有している(containing)」という用語、またはそれらの任意の他の変形は、非排他的包含を網羅することが意図される。要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、そのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に明示的に列挙されていない、または固有ではない他の要素を含み得る。さらに、反対に明示的に述べられていない限り、「または」は、包括的な「または」を指し、排他的な「または」を指すものではない。
【0081】
「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体のいずれかの長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してもよく、既知または未知の任意の機能を実施することができる。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である。遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖解析から定義される遺伝子座、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組み換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、およびプライマー。ポリヌクレオチドは、一つ以上の改変ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含んでもよい。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、ポリマーのアセンブリの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば標識成分とのコンジュゲーションなどにより、重合後にさらに改変されてもよい。
【0082】
「相補性」は、従来のワトソンクリックまたは他の非従来型のいずれかによる、別の核酸配列との水素結合を形成する核酸の能力を指す。相補性のパーセントは、第二の核酸配列との水素結合(例えば、ワトソン-クリック塩基対合)を形成することができる核酸分子中の残基のパーセンテージを示す(例えば、10個のうちの5、6、7、8、9、10個は、それぞれ50%、60%、70%、80%、90%、および100%の相補性である)。「完全相補的」とは、核酸配列の全ての連続残基が、第二の核酸配列中の同じ数の連続残基と水素結合することを意味する。本明細書で使用される場合、「実質的に相補的」とは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50個、もしくはそれ以上のヌクレオチドの領域にわたって少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、もしくは100%である相補性の程度を指すか、またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする二つの核酸を指す。例えば、相補性パーセントを評価する目的などでの配列同一性は、任意の適切なアライメントアルゴリズムによって測定されてもよく、Needleman-Wunschアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucleotide.htmlで入手可能なEMBOSS Needle alignerを参照されたい、任意選択でデフォルト設定あり)、BLASTアルゴリズム(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiで入手可能なBLAST alignment toolを参照されたい、任意選択でデフォルト設定あり)、またはSmith-Watermanアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/nucleotide.htmlで入手可能なEMBOSS Water alignerを参照されたい、任意でデフォルト設定あり)を含むが、これらに限定されない。最適なアライメントは、デフォルトパラメータを含む、選択されたアルゴリズムの任意の適切なパラメータを使用して評価され得る。
【0083】
本明細書で使用される場合、「発現」とは、ポリヌクレオチドが、DNA鋳型から(およびmRNAまたは他のRNA転写物などに)転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAが、その後ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。転写物およびコードされたポリペプチドは、「遺伝子産物」と総称されてもよい。ポリヌクレオチドが、ゲノムDNAから得られる場合、発現は、真核生物細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。
【0084】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖または分岐であってもよく、修飾されたアミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸が割り込んでいてもよい。用語はまた、修飾、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーションなどの任意の他の操作されたアミノ酸ポリマーを包含する。本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、グリシンおよびDまたはL光学異性体の両方、ならびにアミノ酸類似体およびペプチドミメティックを含む、天然および/または非天然もしくは合成のアミノ酸を含む。
【0085】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、用語「およそ」と同義で使用される。例示的には、量に関する用語「約」の使用は、引用された値からわずかに外れた値、例えば、±0.1%~10%を示す。
【0086】
「生物学的に純粋な培養物」または「実質的に純粋な培養物」という用語は、培養物の複製を妨げるか、または通常の細菌学的技術によって検出されるのに十分な量で他の細菌種を含まない、本明細書に記載の細菌種の培養物を指す。
【0087】
本明細書で使用される場合、「制御配列」は、オペレーター、プロモーター、サイレンサー、またはターミネーターを指す。
【0088】
本明細書で使用される場合、「導入される」とは、自然に発生する導入ではなく、現代のバイオテクノロジーによる導入を指す。
【0089】
本明細書で使用される場合、「構成的プロモーター」は、ほとんどの条件下でおよび/またはほとんどの開発段階の間に活性であるプロモーターである。バイオテクノロジーで使用される発現ベクターに構成的プロモーターを使用することにはいくつかの利点があり、例えば、トランスジェニック細胞または生物を選択するために使用されるタンパク質の高レベルの産生、容易な検出および定量を可能にするレポータータンパク質またはスコア化可能な(scorable)マーカーの高レベルの発現、調節転写システムの一部である転写因子の高レベルの産生、生物体において偏在する活性を必要とする化合物の産生、および開発のすべての段階に必要な化合物の製造である。
【0090】
本明細書で使用される場合、「非構成的プロモーター」は、特定の条件下で、特定のタイプの細胞で、および/または特定の発達段階の間に活性であるプロモーターである。例えば、誘導性プロモーター、および開発制御下にあるプロモーターは、非構成的プロモーターである。
【0091】
本明細書で使用される場合、「誘導性」プロモーターまたは「抑制性」プロモーターは、化学的または環境的要因の制御下にあるプロモーターである。誘導性プロモーターによる転写に影響を与え得る環境条件の例としては、嫌気性条件、特定の化学物質、光の存在、酸性または塩基性条件などが挙げられる。
【0092】
本明細書で使用される場合、「動作可能に結合された」という用語は、一方の機能が他方によって制御されるように、単一の核酸断片上の核酸配列の会合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列の発現を制御できる(すなわち、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)場合、コード配列と動作可能に結合される。コード配列は、センスまたはアンチセンスの配向で調節配列に動作可能に結合され得る。別の実施例では、本開示の相補的RNA領域は、直接的もしくは間接的に、標的mRNAに5’で、もしくは標的mRNAに3’で、もしくは標的mRNA内に結合されてもよいか、または標的mRNAに対して第一の相補的領域は5’であり、その補体は3’である。
【0093】
本明細書で使用される場合、「シグナル配列」という用語は、ペプチドおよびポリペプチドを細胞の位置または細胞外環境に向けて標的化するアミノ酸配列を指す。シグナル配列は、典型的にはポリペプチドのN末端部分に存在し、典型的には酵素的に除去される。それらのシグナル配列を有するポリペプチドは、全長および/または未処理と呼称される。それらのシグナル配列が除去されたポリペプチドは、成熟および/または処理されていると称される。
【0094】
様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素などに関して本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、自然界の所与の酵母、細菌、生物、微生物、または細胞に通常または自然に見つからない、かつ/または産生されない分子を指す。
【0095】
一方で、様々な分子、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素などに関して本明細書で使用される場合、「内因性」または「天然」という用語は、自然界の所与の酵母、細菌、生物、微生物、または細胞に通常、または自然に見出され、かつ/またはそれらによって産生される分子を指す。
【0096】
改変宿主細胞に関連して本明細書で使用される場合、「異種性」という用語は、様々な分子を指し、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、酵素、など、以下のうちの少なくとも一つが真である:(a)分子が、宿主細胞に対し、外来性(「外因性」)(すなわち、そこに自然には見られない)、(b)分子が、所与の宿主微生物または宿主細胞に自然に見出され(例えば、それに「内因性」である)が、細胞の不自然な位置で、または不自然な量で産生される、および/または(c)分子が、内因性ヌクレオチドまたはアミノ酸配列とはヌクレオチドまたはアミノ酸配列が異なり、その結果、内因的に見出されるような内因性ヌクレオチドまたはアミノ酸とヌクレオチドまたはアミノ酸配列が異なる分子は、細胞内で不自然な量で(例えば、自然に見出されるよりも多い)産生される。
【0097】
第一のファミリーまたは種の原酵素または遺伝子に関して本明細書で使用される場合、「相同体」という用語は、第二のファミリーまたは種の別個の酵素または遺伝子を指し、これらは機能解析、構造解析、またはゲノム解析によって、第一のファミリーまたは種の原酵素または遺伝子に対応する第二のファミリーまたは種の酵素または遺伝子であると決定される。相同体は、機能的、構造的、またはゲノム的な類似性を有することが多い。酵素または遺伝子の相同体を、遺伝的プローブおよびPCRを使用して容易にクローン化し得る技術が公知である。相同体としてのクローン配列の同一性は、機能的アッセイおよび/または遺伝子のゲノムマッピングによって確認することができる。
【0098】
遺伝子によってコードされるアミノ酸配列が第二の遺伝子のアミノ酸配列と類似のアミノ酸配列を有する場合に、あるタンパク質は、第二のタンパク質に対して「相同性」を有しているか、または「相同」である。あるいは、二つのタンパク質が「類似の」アミノ酸配列を有する場合、タンパク質は、第二のタンパク質と相同性を有する。したがって、「相同タンパク質」という用語は、二つのタンパク質が類似のアミノ酸配列を有することを意味することが意図される。ある特定の例では、二つのタンパク質間の相同性は、進化に関連付けられた、その共有された祖先を示す。「相同配列」または「相同体」という用語は、機能的に関連すると考えられ、信じられ、または知られている。機能的関係は、(a)配列同一性の程度、および/または(b)同一もしくは類似の生物学的機能を含むがこれに限定されない、いくつかの方法のうちのいずれか一つで示され得る。好ましくは、(a)および(b)の両方が示されている。配列同一性の程度は変化してもよく、しかし一態様では、少なくとも50%(当該技術分野で公知の標準的な配列アライメントプログラムを使用する場合)、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも98.5%、または少なくとも約99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.8%、または少なくとも99.9%である。相同性は、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987)Supplement 30,section 7.718,Table 7.71で論じたような、当技術分野で容易に入手可能なソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。一部のアラインメント・プログラムは、MacVector(Oxford Molecular Ltd,Oxford,U.K.)およびALIGN Plus(Scientific and Educational Software,Pennsylvania)である。他の非限定的なアライメントプログラムには、Sequencher(Gene Codes,Ann Arbor,Michigan)、AlignX、およびVector NTI(Invitrogen,Carlsbad,CA)が含まれる。類似の生物学的機能には、限定されるものではないが、以下が含まれ得る:同じまたは類似の酵素反応を触媒すること、基質または補助因子に対して同じまたは類似の選択性を有すること、同じまたは類似の安定性を有すること、様々な発酵条件(温度、pHなど)に対して同じまたは類似の耐性を有すること、および/または様々な代謝基質、産生物、副産物、中間体などに対する同じまたは類似の耐性を有すること。生物学的機能の類似性の程度は変動し得るが、一態様では、所与の生物学的機能を決定するための、当業者に公知の一つ以上のアッセイによれば、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも98.5%であるか、または少なくとも約99%であるか、または少なくとも99.5%であるか、または少なくとも99.8%であるか、または少なくとも99.9%である。
【0099】
「バリアント」という用語は、本明細書に記載される任意のポリペプチドまたは酵素を指す。バリアントはまた、多量体、個々の成分を含む多量体、個々の成分の倍数を含む多量体(例えば、参照分子の多量体)、化学分解産物、および生物学的分解産物の一つ以上の成分を包含する。特に、非限定的な態様では、酵素は、参照酵素をコードするポリペプチド配列の任意の部分における変化により、参照酵素に対する「バリアント」であり得る。参照酵素のバリアントは、参照酵素の調製物の酵素活性を測定するために使用される標準アッセイにおいて、少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも105%、少なくとも110%、少なくとも120%、少なくとも130%またはそれ以上の酵素活性を有し得る。一部の態様では、バリアントはまた、本開示の全長酵素または未処理酵素に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを指し得る。一部の態様では、バリアントはまた、本開示の成熟酵素、または処理された酵素に対し、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドを指し得る。
【0100】
本明細書で使用される場合、用語「微生物(microorganism)」または「微生物(microbe)」は、広く解釈されるべきである。互換的に使用されるこれらの用語には、二つの原核生物ドメイン、細菌および古細菌が含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
本明細書で使用される場合、「単離する」、「単離された」、「単離された微生物」および同様の用語は、一つ以上の微生物が、特定の環境(例えば、培地、水、反応チャンバなど)で関連する物質の少なくとも一つから分離されたことを意味することが意図される。したがって、「単離された微生物」は、その天然に存在する環境には存在せず、むしろ、これは、本明細書に記載される様々な技術を通じて、微生物が、その天然の状況から取り出され、天然に存在しない存在状況に置かれていることである。したがって、単離された株または単離された微生物は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、または胞子(もしくは株の他の形態)として存在してもよい。態様では、単離された微生物は、商業的または産業的に許容可能な担体であり得る、許容可能な担体と関連してもよい。
【0102】
本開示の特定の態様では、単離された微生物は、「単離された生物学的に純粋な培養物」として存在する。当業者であれば、特定の微生物の単離された生物学的に純粋な培養物は、当該培養物が他の生きた生物を実質的に含まず、対象の個々の微生物のみを含有することを理解するであろう。培養物は、様々な濃度の当該微生物を含有することができる。本開示は、単離された生物学的に純粋な微生物が、大抵、「純度の低い物質または不純な物質と必ず異なる」ことを記載している。例えば、In re Bergstrom,427 F.2d 1394,(CCPA 1970)(discussing purified prostaglandins)を参照し、またIn re Bergy,596 F.2d 952(CCPA 1979)(discussing purified microbes)を参照し、またParke-Davis & Co.v.H.K.Mulford & Co.,189 F.95(S.D.N.Y.1911)(Learned Hand discussing purified adrenaline),aff’d in part,rev’d in part,196 F.496(2d Cir.1912)を参照されたく、これらは各々、参照により本明細書に取り込まれる。さらに、一部の態様では、本開示は、単離された生物学的に純粋な微生物培養物内で見られなければならない、ある特定の定量的濃度測定値、または純度限界を提供する。これらの純度値の存在は、ある特定の態様では、ここで開示される微生物を、天然の状態に存在するその微生物と区別するさらなる属性である。例えば、Merck & Co.v.Olin Mathieson Chemical Corp.,253 F.2d 156(4th Cir.1958)(微生物により産生されるビタミンB12の純度限界について論じる)を参照し、これは、参照により本明細書に取り込まれる。
【0103】
本開示の微生物は、胞子および/または栄養細胞を含み得る。一部の態様では、本開示の微生物は、生存可能だが、培養可能でない(VBNC)状態にある微生物を含む。本明細書で使用される場合、「胞子」または「複数の胞子」は、生存および分散に適した細菌および真菌によって生成される構造を指す。胞子は、概して、休止状態の構造として特徴付けられるが、胞子は、発芽プ過程を通して分化する能力がある。発芽は、胞子の、代謝活性、成長、および繁殖する能力がある栄養細胞への分化である。単一の胞子の発芽は、単一の真菌または細菌の栄養細胞をもたらす。真菌の胞子は、無性生殖の単位であり、真菌のライフサイクルにおいて必須の構造である場合もある。細菌胞子は、通常、栄養細胞の生存または成長に貢献し得ない生存状態のための構造である。
【0104】
本明細書で使用される場合、「微生物組成物」は、本開示の一つ以上の微生物を含む組成物を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「担体」、「許容可能な担体」、「商業的に許容可能な担体」、または「工業的に許容可能な担体」は、微生物が投与、保存、または移動され得る希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指し、微生物に有害な影響を与えない。
【0106】
本明細書において使用される場合、「産生力」という用語は、生合成経路からの産生物の収率を指す。一態様では、産生力は、出発化合物の重量当たりの最終産生物の重量パーセントとして表すことができる。
【0107】
本明細書で使用される場合、「熱力学的最大収率」という用語は、原料と比較した産生物のエネルギー値に基づく、グルコースなどの所与の原料の発酵から得られた産生物の最大収率を指す。通常の発酵では、例えば、光、水素ガス、またはメタンまたは電気などの追加のエネルギー源を使用しない場合、産生物は、原料よりも多くのエネルギーを含有しない。熱力学的最大収率は、原料からのすべてのエネルギーおよび質量が産生物に変換される産生物の収率を意味する。この収率は計算することができ、特定の経路に依存しない。産生物への特定の経路が、熱力学的最大収率よりも低い収率を有する場合、産生物は質量を失い、産生物へのより効率的な経路に改善されるか、または置き換られ得る可能性が最も高い。
【0108】
用語「平衡化した酸化還元」は、それらが消費するのと同じぐらい多くの酸化還元補助因子を一緒に生成する、一連の反応を指す。代謝経路を設計し、酸化還元補助因子が平衡化されているか、または平衡化されている状態に近いように生物を操作することにより、通常、所望の化合物より効率的で高収率の生成をもたらす。酸化還元反応は、二つの半反応が同時に起こるので常に一緒に起こり、一つは酸化反応であり、もう一つは還元反応である。酸化還元プロセスでは、還元剤は電子を酸化剤に伝達する。したがって、反応において、還元体または還元剤が電子を失って酸化され、酸化体または酸化剤が電子を得て還元される。一態様では、酸化還元反応は、生物学的システムで起こる。生物学的エネルギーは、酸化還元反応によって頻繁に貯蔵され、放出される。光合成は、二酸化炭素の糖への還元および水の分子酸素への酸化を伴う。逆反応である呼吸は、糖を酸化して、二酸化炭素および水を生成する。中間ステップとして、還元された炭素化合物を使用して、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を還元し、次いで、プロトン勾配の生成に寄与し、これはアデノシン三リン酸(ATP)の合成をもたらし、酸素の還元によって維持される。酸化還元状態という用語を使用して、細胞または組織などの生物学的システムにおけるGSH/GSSG、NAD+/NADHおよびNADP+/NADPHの平衡化を記載する。酸化還元状態は、いくつかの代謝物のセット(例えば、乳酸およびピルビン酸、ベータ-ヒドロキシ酪酸、およびアセト酢酸)のバランスに反映され、その相互変換はこれらの比に依存する。異常な酸化還元状態は、低酸素症、発作、および敗血症などの様々な有害な状況で発生し得る。
【0109】
本明細書で使用される場合、「生産性」という用語は、1時間当たりに生成される生物学的生成物の総量、生成物のグラム/(1時間当たりのリットル)を指す。
【0110】
本明細書で使用される場合、用語「微生物を実質的に含まない」、「細菌を実質的に含まない」、または「真菌/酵母を実質的に含まない」は、微生物/細菌/真菌/真菌/酵母が存在しないことを意味すると解釈されるべきではないが、これは一部の態様では好ましい場合がある。むしろ、「実質的に含まない」は、一例として、細菌を実質的に含まない組成物が、組成物に存在する任意の細菌が、検出限界を下回るほど少ない組成物であることを意味すると解釈されるべきである。一部の態様では、微生物は、一つ以上の細菌、真菌、酵母、ウイルス、原生生物、および藻類から選択される。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「微生物を含まない」は、微生物の完全な不在、または繁殖である栄養成長する能力がある生存可能な微生物の完全な不在のいずれかを指す。
【0112】
キシロースおよびグルコースの同時消費
産業または商業プロセスにおいて、微生物の生産性は、大規模な反応の経済的実行可能性を検討する際に考慮しなければならない重要な要因であり、頻繁に、紙一重となる。この意味での微生物の生産性は、1時間当たりのリットル当たりに生成された生成物のグラムである。修飾された微生物の不存下では、キシロースとグルコースの両方を含有するストリームは、反応チャンバ(複数可)に常に供給し、少なくともグルコースによる一つ以上の単糖の取り込み抑制をもたらす可能性が高い。
【0113】
ジオーキシックシフトの根底にある機序は、炭素異化抑制(CCR)であり、ここでは、全体的な転写調節因子CRP(cAMP受容体タンパク質)が、キシロースアラビノースおよびガラクトースなどの二次糖についての異化オペロンの転写活性化を調節する中心的役割を果たしている。ホスホエノールピルビン酸:糖ホスホトランスフェラーゼシステム(PTS)はまた、大腸菌におけるキシロース使用のグルコース誘導性抑制にも関与する。キシロースは、唯一の炭素およびエネルギー源として大腸菌によって用いられ、ペントースリン酸経路を介して代謝され得る。キシロースは、高親和性ATP依存性システムおよび比較的低親和性のD-キシロース:H+シンポーターの二つの取り込み系によって移入され得る。より高いエネルギー効率の共輸送体を介して主に輸送されるアラビノース輸送とは異なり、キシロースは、高い糖濃度であっても、より高いエネルギーコストATP依存性輸送体を介して主に輸送される。キシロースの取り込みおよび異化に関与するすべての遺伝子は、CCRに感受性を有する。
【0114】
ペントースを所望の化学物質に変換するため有効なバイオプロセスを有するためには、工業プロセスに必要な収率および生産性を達成するために、混合糖の効率的、同時、かつ迅速な使用のために宿主微生物を操作する必要がある。本開示は、リグノセルロースバイオマスからのキシロースおよびグルコースの同時消費を効率的に促進し、結果として、中間体としてD-キシロネートまたはD-キシルロース-1Pまたはグリコールアルデヒドを有する経路から得られる所望の化学物質について、操作された微生物株の完全な可能性にアクセスする代謝工学戦略を記載する。
【0115】
大腸菌における糖共使用を操作する一般的な戦略は、galP(ガラクトース:H+共輸送体)活性の改善およびCRPの変異誘発と関連しているか否かに関わらず、PTS成分の不活性化に依存する。しかしながら、PTS成分の不活性化は、グルコース取り込みを損ない、CRP変異体は、頻繁に、他の重要な遺伝子の発現における予測不可能な変化により可能性のある成長の表現型を遅くする。これら二つのアプローチは、生産性、特に、高い糖濃度および低コストの培地という条件についての生産性の低下をもたらす。
【0116】
出願人は、PTS不活性化と無関係である中間体としてD-キシルロース-1PまたはD-キシロネートまたはグリコールアルデヒドを有し、ATP結合トランスポーターの欠失を有する所望の化学物質の生成のためのグルコースおよびキシロース共消費を支持するための代謝工学戦略を開発することが第一であると考えている。
【0117】
一部の態様では、所望の化学物質の生成のためのキシロースおよびグルコースの同時消費の促進は、(1)ATP依存性D-キシロース共輸送体の構成的過剰発現;(2)D-キシルロース-1PもしくはD-キシロネートへのキシロースの変換のための遺伝子の構成的発現;(3)天然のペントース(主に、キシロースおよびアラビノース)ABCトランスポーター系の欠失;ならびに/またはキシロース異化遺伝子の欠失に基づく。
【0118】
本明細書に記載される主題は、ABCトランスポーターの欠失または不活性化および共輸送体の発現および中間体としてD-キシルロース、D-キシロネート、またはグリコールアルデヒドを用いるかまたはそれを含む経路が、糖共使用にプラスの影響を与えるだけでなく、所望の化学物質の生成のための経路の全体的な収率および生産性も高めるという点で、当該技術分野の状態に渡り区別される。この改善は、微生物の全体的な代謝の調節、ATP可能性プロファイルの改変、および中間体であるD-キシルロース-1P、D-キシロネート、および/またはグリコールアルデヒドの生成の促進による。Kim et al.(2015.Metabolic Engineering,30:141-148),Sievert et al.(2017.PNAS,114(28):7349-7354),Wang et al.(2018.Microbial Cell Factories,17(12):1-12),and Bai et al.(2016.Metabolic Engineering,38:285-292)を参照のこと。
【0119】
本開示は、両方の糖を同時に消費することを可能にする、キシロース上のグルコースの異化抑制を克服する戦略を含む。糖の共消費のための他の方法とは異なり、本戦略は、天然のPTS系によるグルコースの効率的な取り込みを維持しながら、糖による異化抑制に感受性を有さない効率的なキシロース取り込みを保証することに焦点を当てるように設計され、実施された。
【0120】
一部の態様では、本方法は、対象の微生物株において以下の改変を行うことを含む:1(a)構成的プロモーターに動作可能に結合された天然のキシロース共輸送体XylEを過剰発現させること、および/または1(b)構成的プロモーターに動作可能に結合された天然のアラビノース共輸送体AraEを過剰発現させること;2(a)天然のキシロース異性化酵素XylAおよび異種性ケトヘキソキナーゼkhk-Cを構成的プロモーター下で過剰発現させること、および天然のキシルロキナーゼXylBの欠失もしくは不活性化、または2(b)構成的プロモーターに動作可能に結合された異種性キシロース脱水素酵素xdhを過剰発現させること、ならびに天然のキシロース異性化酵素XylAの欠失もしくは不活性化および/または天然のキシルロキナーゼXylBの欠失;ならびに3、ATP結合トランスポータータンパク質AraFGH、XylFGH、RbsABC、およびAlsABCの欠失。
【0121】
一部の態様では、キシロースおよびアラビノース共輸送体の構成的発現は、CRP制御と無関係で、結果として、培養ブロスに存在する他の糖と無関係でのキシロース移入を可能にする。一部の態様では、キシロース異性化酵素の構成的発現は、CRP制御と無関係で、結果としてまた、培養ブロスに存在する他の糖と無関係でのキシロース使用を可能にする。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼkhk-Cの発現は、D-キシルロースを所望の化学物質の生成のための中間体であるD-キシルロース1-Pに効率的に変換する。一部の態様では、キシルロキナーゼの欠失は、天然のペントースリン酸経路への化学物質生成のための経路からの炭素の転換を防止する。
【0122】
一部の態様では、キシロース脱水素酵素の構成的発現は、CRP制御と無関係で、結果としてまた、培養ブロスに存在する他の糖と無関係でのキシロース使用を可能にし、また、D-キシロースを所望の化学物質の生成のための中間体としてのD-キシロネートに効率的に変換する。一部の態様では、キシルロキナーゼおよび/またはキシロース異性化酵素の欠失は、天然のペントースリン酸経路への化学物質生成のための経路からの炭素の転換を防止する。一部の態様では、アラビノースABCトランスポーターおよびキシロースABCトランスポーターなどのATP結合カセットトランスポーターの欠失は、糖移入中のATP喪失を回避する。ATPの正味の量は、大腸菌の中心的な代謝の活性を変化させ、経路収率を潜在的に増加させることができる。
【0123】
構成的プロモーター下での天然のキシロース共輸送体XylEの過剰発現
D-キシロース/プロトン共輸送体XylEは、xylE遺伝子によりコードされるトランスポーターの主要な促進物質スーパーファミリー(MFS)のメンバーであるATP依存性低親和性トランスポーターである。xylEの転写は、XylR(配列番号7または配列番号8)によって制御されると考えられる。XylRは、xylR遺伝子によってコードされる転写因子であり、キシロース(xylE、xylFGH、およびxylAB遺伝子)に応答して、キシロース代謝遺伝子およびトランスポーター遺伝子の転写を正に制御する。
【0124】
キシロース共輸送体の構成的過剰発現は、炭素異化抑制を放出し、培養ブロスに存在する糖と無関係での連続的キシロース移入を可能にするが、グルコース取り込みは、依然として、PTS系構成要素により行われる。それ故、加水分解物に存在するグルコースとキシロースの両方は、大腸菌によって同時に移入され得る。
【0125】
構成的プロモーター下での天然のアラビノース共輸送体AraEの過剰発現
D-アラビノース/プロトン共輸送体AraEは、araE遺伝子によりコードされるトランスポーターの主要な促進物質スーパーファミリー(MFS)のメンバーであるATP依存性低親和性トランスポーターである。araEの転写は、AraC(配列番号32および配列番号33)およびCRPによって制御される。AraCは、アラビノース(xylE、xylFGH、およびxylAB遺伝子)に応答して、キシロース代謝遺伝子およびトランスポーター遺伝子の転写を負に制御し、アラビノース(araE、araFGH、およびaraBAD遺伝子)に応答して、アラビノース代謝遺伝子およびトランスポーター遺伝子の転写を正に制御する、araC遺伝子によりコードされる転写因子である。araEの発現は、グルコースの不在下で、アラビノースによって誘導される。AraEトランスポーターは、乱雑であり、キシロースおよび他のペントースを輸送できることが知られている。
【0126】
乱雑なアラビノース共輸送体の構成的発現は、CCRを放出し、培養ブロスに存在する糖と無関係で連続的キシロース移入を可能にするが、グルコース取り込みは、依然として、PTS系構成要素により行われる。それ故、加水分解物に存在するグルコースとキシロースの両方は、大腸菌によって同時に移入され得る。
【0127】
構成的プロモーター下での天然のキシロース異性化酵素XylAおよび異種性ケトヘキソキナーゼkhk-Cの発現、ならびに天然のキシルロキナーゼXylBの欠失
XylAは、D-キシルロースへのD-キシロースの変換を触媒する内因性D-キシロース異性化酵素(図1、反応5、経路B)である。D-キシロース異性化酵素(E.C.5.3.1.5)は、D-キシロースの大腸菌の天然の異化反応を触媒する。xylAの転写は、XylRおよびCRPによって制御され、その発現は、グルコースの不存下でキシロースによって誘導される。ケトヘキソキナーゼ(図1、反応6、経路B)は、D-キシルロースのD-キシルロース-1-Pへのリン酸化を触媒する。ケトヘキソキナーゼ(E.C.2.7.1.3)は、様々な生物に見出されるが、ヒト肝臓由来のkhk-Cは、キシルロースに対する活性の有望な候補である。D-キシルロース1-Pは、様々な化学物質の生成のための重要な中間体である。
【0128】
XylBは、D-キシルロースのリン酸化を触媒する(図1、反応8、経路B)xylBによりコードされるキシルロースキナーゼ(2.7.1.17)である。これは、ペントースリン酸経路の中間体であるD-キシルロース-5-ホスフェートを生成する天然のキシロース分解経路の第二の工程である。この反応は、khk-CによるD-キシルロースのリン酸化と競合し、D-キシルロース-1-P生成からペントースリン酸経路への流れを逸脱する。
【0129】
天然のキシロース異性化酵素xylAの構成的発現は、CCRを放出し、ケトヘキソキナーゼkhk-Cの構成的異種性発現と関連するとき、培養ブロスに存在する糖と無関係で連続的キシロース使用を可能にし、化学物質を生成するための中間体としてD-キシルロース1-Pを生じる。グルコース取り込みは、依然として、PTS系構成要素により行われる。それ故、加水分解物に存在するグルコースとキシロースの両方は、大腸菌によって同時に用いられ得る。キシルロキナーゼxylBの欠失は、天然のペントースリン酸経路への化学物質生成のための経路からの炭素の転換を防止する。
【0130】
構成的プロモーター下での異種性キシロース脱水素酵素xdhの発現ならびに天然のキシロース異性化酵素Xylaの欠失および/または天然のキシルロキナーゼXylBの欠失
異種性キシロース脱水素酵素であるxdhは、D-キシロノラクトンへのD-キシロースの変換を触媒する(図1、反応1、経路A)。D-キシロース脱水素酵素(E.C.1.1.1.175)は、様々な生物において見られるが、カウロバクター・クレセンタス由来のxdhは、D-キシロース上の活性の候補である。D-キシロノラクトンは、D-キシロン酸に自発的に変換され得るため、キシロースでのxdhの発現は、様々な化学物質の生成のための重要な中間体であるD-キシロン酸を生じる。
【0131】
xylAによりコードされるD-キシロース異性化酵素(E.C.5.3.1.5)であるXylAは、ペントースリン酸経路の中間体である、D-キシルロースへのD-キシロースの変換(図1、反応5、経路A)を触媒する。xylBによりコードされるキシルロースキナーゼ(2.7.1.17)であるXylBは、ペントースリン酸経路の別の中間体であるD-キシルロース-5-ホスフェートを生成するキシロース分解経路における第二の工程であるD-キシルロースのリン酸化(図1、反応8、経路A)を触媒する。両方の反応は、xdhと競合し、D-キシロン酸生成からペントースリン酸経路への流れを逸脱する。
【0132】
キシロース脱水素酵素の構成的異種性発現は、培養ブロスに存在する糖と無関係で連続的キシロース使用を可能にし、所望の化学物質を生成するための中間体としてD-キシロン酸を生じる。グルコース取り込みは、依然として、PTS系構成要素により行われる。それ故、加水分解物に存在するグルコースとキシロースの両方は、大腸菌によって同時に用いられ得る。D-キシロース異性化酵素および/またはキシルロキナーゼの欠失は、天然のペントースリン酸経路への化学物質生成のための経路からの炭素の転換を防止する。
【0133】
ATP結合カセットトランスポータータンパク質AraFGH、XylFGH、RbsABC、およびAlsABCの欠失
アラビノースABCトランスポーターAraFGH(E.C.3.6.3.17、TCDB 3.A.1.2.2)は、araFGH遺伝子によりコードされる高親和性ATP駆動系である。AraFは、ペリプラズム結合タンパク質であり、AraHは、膜成分であり、AraGは、このABCトランスポーターのATP結合成分である。araFGHオペロンの転写は、AraCおよびCRPによって制御される。araFGH発現は、グルコースの不存下でアラビノースによって誘導される。AraFGHトランスポーターは、乱雑であり、キシロースおよび他のペントースを輸送できることが知られている。
【0134】
キシロースABCトランスポーターXylFGH(E.C.3.6.3.17、TCDB 3.A.1.2.4)は、xylFGH遺伝子によりコードされる高親和性ATP駆動系である。XylFは、ペリプラズム結合タンパク質であり、XylHは、膜成分であり、XylGは、このABCトランスポーターのATP結合成分である。xylFGHオペロンの転写は、XylRおよびCRPによって制御され、その発現は、グルコースの不存下でキシロースによって誘導される。
【0135】
リボースABCトランスポーターRbsABC(E.C.3.6.3.17;TCDB 3.A.1.2.1)は、rbsABC遺伝子によりコードされる高親和性ATP駆動系である。
【0136】
一部の態様では、RbsABCのRbsBペリプラズム結合タンパク質サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号35に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、RbsABCのRbsBペリプラズム結合タンパク質サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号38に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、RbsABCのRbsA ATP結合サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号34に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、RbsABCのRbsA ATP結合サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号37に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、RbsABCのRbsC膜サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号36に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、RbsABCのRbsC膜サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号39に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0137】
アロースABCトランスポーターAlsABC(E.C.3.6.3.17;TCDB 3.A.1.2.6)は、alsABC遺伝子によりコードされるATP駆動系である。
【0138】
一部の態様では、AlsABCのalsBペリプラズム結合タンパク質サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号41に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、AlsABCのalsBペリプラズム結合タンパク質サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号44に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、AlsABCのalsA ATP結合サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号40に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、AlsABCのalsA ATP結合サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号43に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、AlsABCのalsC膜サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号42に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、AlsABCのalsC膜サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号45に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0139】
大腸菌における優先キシローストランスポーターを含む、リボースABCトランスポーター、アロースABCトランスポーター、アラビノースABCトランスポーター、およびキシロースABCトランスポーターなどのATP結合カセットトランスポーターの欠失は、xylE構成的発現(実施例1および2を参照)と関連して、CCRを放出し、連続的キシロース移入を可能にする。さらに、欠失は、糖移入中のATP損失を回避する。ATPネットは、大腸菌の中心的な代謝の活性を変化させることができる。
【0140】
微生物
本明細書に記載されるように、一部の態様では、組み換え微生物は、キシロースとグルコースの両方を同時に用いる能力がある。
【0141】
本明細書に記載されるように、一部の態様では、組み換え微生物は原核微生物である。一部の態様では、原核微生物は細菌である。「細菌」、または「真正細菌」は、原核生物のドメインを指す。細菌は、以下のように少なくとも11の別個の群を含む:(1)二つの主要な下位区分:(1)高G+C群(放線菌(Actinomycetes)、マイコバクテリウム(Mycobacteria)、ミクロコッカス(Micrococcus)他)、(2)低G+C群(バチルス、クロストリジウム、ラクトバチルス(Lactobacillus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、マイコプラズマ(Mycoplasma))がある、グラム陽性(グラム+)細菌;(2)プロテオバクテリア(Proteobacteria)、例えば、紅色光合成+非光合成グラム陰性細菌(最も「一般的な」グラム陰性細菌を含む);(3)シアノ細菌、例えば、酸素産生光栄養生物;(4)スピロヘータ(Spirochete)および関連する種;(5)プランクトミセス(Planctomyces);(6)バクテロイデス(Bacteroides)、フラボバクテリウム(Flavobacteria);(7)クラミジア(Chlamydia);(8)緑色硫黄細菌;(9)緑色非硫黄細菌(嫌気性光栄養生物も);(10)放射線抵抗性ミクロコッカスおよび近縁種;(11)サーモトガおよびテルモシフォ好熱菌。
【0142】
「グラム陰性細菌」には、球菌、非腸内桿菌(nonenteric rod)、および腸内桿菌(enteric rod)が含まれる。グラム陰性細菌の属には、例えば、ナイセリア(Neisseria)、スピリルム(Spirillum)、パスツレラ(Pasteurella)、ブルセラ(Brucella)、エルシニア(Yersinia)、フランシセラ(Francisella)、ヘモフィルス(Haemophilus)、ボルデテラ(Bordetella)、エシェリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、ビブリオ(Vibrio)、シュードモナス(Pseudomonas)、バクテロイデス、アセトバクター(Acetobacter)、アエロバクター(Aerobacter)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、アゾトバクター(Azotobacter)、スピリルム、セラチア(Serratia)、ビブリオ、リゾビウム(Rhizobium)、クラミジア、リケッチア(Rickettsia)、トレポネーマ(Treponema)、およびフソバクテリウム(Fusobacterium)が含まれる。
【0143】
「グラム陽性細菌」には、球菌、非芽胞性桿菌、および芽胞性桿菌が含まれる。グラム陽性細菌の属には、例えば、アクチノミセス(Actinomyces)、バチルス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エリシペロスリクス(Erysipelothrix)、ラクトバチルス、リステリア(Listeria)、マイコバクテリウム、ミキソコッカス(Myxococcus)、ノカルジア(Nocardia)、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、およびストレプトマイセス(Streptomyces)が含まれる。
【0144】
一部の態様では、本開示の微生物は真菌である。
【0145】
一部の態様では、組み換え微生物は真核微生物である。一部の態様では、真核微生物は酵母である。典型的な態様では、酵母は、ヤロウイア(Yarrowia)、カンジダ(Candida)、サッカロマイセス(Saccharomyces)、ピキア(Pichia)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クリベロマイセス(Kluyveromyces)、イサチェンキア(Issatchenkia)、ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)、デバリオマイセス(Debaryomyces)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、パチソレン(Pachysolen)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、トリコスポロン(Trichosporon)、ロドトルラ(Rhodotorula)、およびミキソチマ(Myxozyma)からなる群から選択される属のメンバーである。
【0146】
一部の態様では、組み換え微生物は原核微生物である。典型的な態様では、原核生物の微生物は、エシェリキア、クロストリジウム、ザイモモナス(Zymomonas)、サルモネラ、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス、バチルス、ラクトバチルス、エンテロコッカス(Enterococcus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、クレブシエラ、パエニバチルス(Paenibacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、コリネバクテリウム、およびブレビバクテリウム(Brevibacterium)からなる群から選択される属のメンバーである。
【0147】
一部の態様では、本開示の方法において使用するための微生物は、ヤロウイア、カンジダ、サッカロマイセス、ピキア、ハンゼヌラ、クリベロマイセス、イサチェンキア、ザイゴサッカロミセス、デバリオマイセス、シゾサッカロミセス、パチソレン、クリプトコッカス、トリコスポロン、ロドトルラ、ミキソチマ、エシェリキア、クロストリジウム、ザイモモナス、サルモネラ、ロドコッカス、シュードモナス、バチルス、ラクトバチルス、エンテロコッカス、アルカリゲネス、クレブシエラ、パエニバチルス、アルスロバクター、コリネバクテリウム、およびブレビバクテリウムからなる群から選択され得る。
【0148】
一部の態様では、本明細書に記載される方法から生じる微生物は、以下の属のいずれかから選択される種であってもよい:ナイセリア、スピリルム、パスツレラ、ブルセラ、エルシニア、フランシセラ、ヘモフィルス、ボルデテラ、エシェリキア、サルモネラ、シゲラ、クレブシエラ、プロテウス、ビブリオ、シュードモナス、バクテロイデス、アセトバクター、アエロバクター、アグロバクテリウム、アゾトバクター、スピリルム、セラチア、ビブリオ、リゾビウム、クラミジア、リケッチア、トレポネーマ、フソバクテリウム、アクチノミセス、バチルス、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エリシペロスリクス、ラクトバチルス、リステリア、マイコバクテリウム、ミキソコッカス、ノカルジア、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、ストレプトマイセス、サッカロマイセス、ピキア、およびアスペルギルス(Aspergillus)。
【0149】
一部の態様では、本開示の方法において使用するための微生物には、クロストリジウム属、クロストリジウム・リュングダリイ、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ラグスダレイ、ユーバクテリウム・リモスム、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム、ムーレラ・サーモアセチカ、クロストリジウム・アセチカム、アセトバクテリウム・ウッディ、アルカリバクルム・バッキ、クロストリジウム・ドラケイ、クロストリジウム・カルボキシジボランス、クロストリジウム・フォルミコアセチカム、クロストリジウム・スカトロゲネス、モーレラ・サーモオートトロフィカ、アセトネマ・ロングム、ブラウチア・プロダクタ、クロストリジウム・グリコリクム、クロストリジウム・マグナム、クロストリジウム・マヨムベイ、クロストリジウム・メソオキシベンゾボランス、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキ、オキソバクター・フェニギイ、サーモアナエロバクター・キブイ、スポロムサ・オバタ、サーモアセトゲニウム・ファエウム、アセトバクテリウム・カービノリカム、スポロムサ・テルミチダ、モーレラ・グリセリニ、ユーバクテリウム・アグリガンス、トレポネーマ・アゾトニュートリシウム、大腸菌、サッカロマイセス・セレビシエ、シュードモナス・プチダ、バチルス属、コリネバクテリウム属、ヤロウイア・リポリティカ、シファゾマイセス・スティピティス、およびテリスポロバクター・グリコリカスが含まれる。
【0150】
「組み換え微生物」および「組み換え宿主細胞」という用語は、本明細書において互換的に使用され、組み込み構築物において、内因性酵素を発現もしくは過剰発現させるために、ベクターに含まれる異種酵素などの異種酵素を発現するために遺伝子改変された微生物、または内因性遺伝子の発現に変化を有する微生物を指す。「変化」とは、遺伝子の発現、一つ以上のポリペプチドもしくはポリペプチドサブユニットをコードするRNA分子もしくは同等のRNA分子のレベル、または一つ以上のポリペプチドもしくはポリペプチドサブユニットの活性が、上方制御または下方制御され、それにより発現、レベル、または活性が、変化の非存在下で観察されたものよりも多いか、またはそれ以下であることを意味する。例えば、「変化させる(alter)」という用語は、「阻害する(inhibit)」を意味することができるが、「変化」という用語の使用は、この定義に限定されるものではない。「組み換え微生物」および「組み換え宿主細胞」という用語は、特定の組み換え微生物だけでなく、そのような微生物の子孫または潜在的な子孫を指すことが理解される。変異または環境の影響のいずれかのために、特定の改変が後続する世代において起こり得るため、このような子孫は、実際には親細胞と同一ではないが、本明細書で使用される用語の範囲内に含まれる場合がある。
【0151】
本開示の方法で使用される微生物の培養は、本開示の微生物を使用して基質を培養および発酵させるために、当技術分野で公知の任意の数のプロセスを使用して実施することができる。
【0152】
発酵は、連続撹拌タンクバイオリアクター、バブルカラムバイオリアクター、エアリフトバイオリアクター、流動化床バイオリアクター、充填床バイオリアクター、光バイオリアクター、固定化細胞反応器、トリクルベッド反応器、移動床バイオフィルムリアクター、気泡塔、ガスリフト発酵槽、中空糸膜型バイオリアクターなどの膜リアクタなどの、任意の適切なバイオリアクターで行われてもよい。一部の態様では、バイオリアクターは、微生物が培養される第一の成長反応器と、成長反応器からの発酵ブロスが供給され、発酵生成物の大部分が産生される第二の発酵反応器とを含む。一部の態様では、バイオリアクターは、微生物の培養、および提供される基質および/または原料などの炭素源からの発酵生成物の産生を同時に達成する。
【0153】
生成物
一部の態様では、本開示の操作された微生物は、発酵生成物をキシロースとグルコースとを含む原料から生成し、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用いる。一部の態様では、微生物によって生成される発酵生成物は、少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個の炭素原子を含む一つ以上の分子を含む。
【0154】
一部の態様では、本開示の操作された微生物は、モノエチレングリコール、グリコール酸、C3化合物(アセトン、イソプロパノールおよびプロペンなど)、アミノ酸、ならびにポリオールなどの所望の化学物質を生成する能力がある。Koch et al.(国際公開第2017156166A1号)およびMcbride et al.(国際公開第2011022651A1号)を参照のこと。
【0155】
一部の態様では、本開示の操作された微生物は、単一タイプの原料に存在する複数の炭素源の抑制効果の不存に起因して、最大収率で所望の化学物質を生成する能力がある。
【0156】
遺伝子改変
本開示の一つ以上の微生物に導入される遺伝子改変は、標的遺伝子の調節配列を変化させうるかまたは無効化しうる。一部の態様では、本開示の一つ以上の微生物に導入される遺伝子改変は、一つ以上の微生物に新たな形質または表現型を導入し得る。遺伝的変異が導入される微生物に対応する動物、植物、真菌、酵母、細菌、またはウイルスのゲノム内に存在する異種調節配列および調節配列を含む、一つ以上の調節配列も挿入されてもよい。さらに、調節配列は、微生物培養中の遺伝子の発現レベルに基づいて選択されてもよい。遺伝的変異(genetic variation)は、標的部位に特異的に導入される、予め決定された遺伝的変異であってもよい。一部の態様では、遺伝的変異は、一つ以上の微生物染色体に導入される核酸配列である。一部の態様では、遺伝的変異は、一つ以上の染色体外核酸配列に導入される核酸配列である。遺伝的変異は、標的部位内のランダムな変異(mutation)であってもよい。遺伝的変異は、一つ以上のヌクレオチドの挿入または欠失であってもよい。一部の事例では、複数の異なる遺伝的変異(例えば、2、3、4、5、10個、またはそれ以上)が、単離された細菌のうちの一つ以上に導入される。複数の遺伝的変異は、上記タイプのいずれか、同じタイプまたは異なるタイプ、および任意の組み合わせであってもよい。一部の事例では、複数の異なる遺伝的変異が連続的に導入され、第一の単離ステップの後に第一の遺伝的変異、第二の単離ステップの後に第二の遺伝的変異が導入されるなど、微生物内に複数の所望の改変を蓄積するように、それらが繰り返される。
【0157】
一部の態様では、遺伝子改変は、標的遺伝子または調節配列の欠失または不活性化である。一部の態様では、欠失は、標的遺伝子または標的遺伝子の実質的な部分の除去である。一部の態様では、欠失は、標的遺伝子または標的遺伝子の実質的な部分の置換である。さらなる態様では、欠失は、標的遺伝子の完全な機能喪失をもたらす。一部の態様では、欠失は、標的遺伝子の部分的な機能喪失をもたらす。一部の態様では、機能喪失または部分的機能喪失は、改変された標的遺伝子配列の活性を、改変されていない標的遺伝子配列の活性と比較することによって決定される。一部の態様では、標的遺伝子の不活性化は、標的配列に動作可能に結合された一つ以上の調節配列または制御配列(複数可)を欠失または破壊した結果である。一部の態様では、標的遺伝子の不活性化は、標的遺伝子を異種性配列で破壊した結果である。一部の態様では、不活性化は、標的遺伝子の部分的な機能喪失をもたらす。一部の態様では、不活性化は、標的遺伝子の完全な機能喪失をもたらす。
【0158】
一部の態様では、所望の化学物質の生成に記載される基質の一つ以上は、炭素原料(例えば、キシロースおよびグルコース)から生合成される。
【0159】
概して、「遺伝的変異」という用語は、参照ゲノムもしくはその部分、または参照遺伝子もしくはその部分など、参照ポリヌクレオチドと比較してポリヌクレオチド配列に導入された任意の変更を指す。遺伝的変異は、「変異」と呼称されてもよく、遺伝的変異を含む配列または生物体は、「遺伝的バリアント」または「変異体」と呼称されてもよい。遺伝的変異は、遺伝子発現、代謝、および細胞シグナル伝達を含む、いくつかの生物学的活性の増加または減少など、いくつもの数の影響を与える可能性がある。遺伝的変異は、標的部位に特異的に導入され得るか、または無作為に導入され得る。遺伝的変異を導入するための様々な分子ツールおよび方法が使用可能である。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応変異誘発、オリゴヌクレオチド指定変異誘発、飽和変異誘発、断片シャフリング変異誘発、相同組み換え、リコンビニアリング(recombineering)、ラムダレッド媒介組み換え、CRISPR/Cas9システム、化学変異誘発、およびこれらの組み合わせを介して、遺伝的変異が導入され得る。遺伝的変異を導入する化学的方法には、化学変異原、例えば、メタンスルホン酸エチル(EMS)、メタンスルホン酸メチル(MMS)、N-ニトロソウレア(EN U)、N-メチル-N-ニトロ-N’-ニトロソグアニジン、4-ニトロキノリンN-オキシド、硫酸ジエチル、ベンゾピレン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、トリエチルメラミン、アクリルアミドモノマー、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジエポキシアルカン(例えば、ジエポキシブタン)、ICR-170、ホルムアルデヒド、プロカルバジン塩酸塩、エチレンオキシド、ジメチルニトロサミン、7,12ジメチルベンズ(a)アントラセン、クロラムブシル、ヘキサメチルホスホルアミド、ビスルファン(bisulfan)などへのDNAの曝露が含まれる。放射線変異誘発剤は、紫外線、γ線照射、X線、および高速中性子衝撃を含む。遺伝的変異はまた、例えば、トリメチルプソラレンを紫外線と使用して核酸に導入することも可能である。移動性DNA要素、例えば、転移因子のランダム挿入または標的挿入は、遺伝的変異を生成するための別の適切な方法である。遺伝的変異は、例えば、エラーが発生しやすいPCRなどのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、細胞を含まないインビトロシステムでの増幅中に核酸に導入することができる。遺伝的変異は、DNAシャッフリング技術(例えば、エクソンシャッフリング、ドメインスワッピングなど)を使用してインビトロで核酸に導入することができる。
【0160】
遺伝的変異はまた、細胞中のDNA修復酵素の欠損の結果として核酸に導入され得る。例えば、変異型DNA修復酵素をコードする変異型遺伝子の細胞中の存在は、細胞のゲノム中に高頻度の変異(すなわち、約1個の変異/100個の遺伝子~1個の変異/10,000個の遺伝子)を産生することが予想される。DNA修復酵素をコードする遺伝子の例としては、限定されるものではないが、Mut H、Mut S、Mut L、およびMut U、ならびに他の種におけるそれらの相同体(例えば、MSH 1 6、PMS 1 2、MLH 1、GTBP、ERCC-1など)が挙げられる。遺伝的変異を導入するための様々な方法の例示的な説明は、例えば、Stemple(2004)Nature 5:1-7;Chiang et al.(1993)PCR Methods Appl 2(3):210-217;Stemmer(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:10747-10751、および米国特許第6,033,861号、および第6,773,900号において提供される。
【0161】
微生物に導入される遺伝的変異は、トランスジェニック、シスジェニック、ゲノム内、属内、属間、合成、進化、再配列、またはSNPに分類され得る。
【0162】
CRISPR/Cas9(クラスター化された規則的な間隔の短いパリンドロームの反復(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/CRISPR関連(Cas)システムを使用して、所望の変異を導入することができる。CRISPR/Cas9は、CRISPR RNA(crRNA)を使用して侵入核酸のサイレンシングを導くことによって、ウイルスおよびプラスミドに対する適応免疫を細菌および古細菌に提供する。Cas9タンパク質(またはその機能的に等価なタンパク質および/またはバリアント、すなわちCas9様タンパク質)は、タンパク質と、crRNAおよびtracrRNA(ガイドRNAとも呼ばれる)と呼ばれる二つの天然RNA分子または合成RNA分子との会合に依存するDNAエンドヌクレアーゼ活性を自然に有している。一部の事例では、二つの分子は共有結合して単一の分子(単一ガイドRNA(sgRNA)とも呼ばれる)を形成する。したがって、Cas9またはCas9様タンパク質は、Cas9またはCas9様タンパク質を活性化し、タンパク質を標的核酸配列に誘導する、DNA標的化RNA(この用語は、二分子ガイドRNA構成および単一分子ガイドRNA構成の両方を包含する)と会合する。Cas9またはCas9様タンパク質がその天然の酵素機能を保持する場合、標的DNAを切断して二本鎖切断を作製し、ゲノム変化(すなわち、編集:欠失、挿入(ドナーポリヌクレオチドが存在する場合)、置換など)をもたらし、それによって遺伝子発現を変化させることができる。Cas9のいくつかのバリアント(そのバリアントはCas9様という用語によって包含される)は、それらがDNA切断活性の減少を有するように改変されている(場合によっては、それらは標的DNAの両方の鎖ではなく単一の鎖を切断し、他の場合には、それらはDNA切断活性がない場合まで著しく低下させる)。遺伝的変異を導入するためのCRISPRシステムのさらなる例示的な説明は、例えば、US8795965に見出すことができる。
【0163】
部位特異的変異誘導とも呼ばれるオリゴヌクレオチド指定変異誘発は、典型的には合成DNAプライマーを用いる。この合成プライマーは、所望の変異を含有し、目的の遺伝子中のDNAとハイブリダイズできるように、変異部位周辺の鋳型DNAに対して相補的である。変異は、単一塩基変化(点変異)、複数の塩基変化、欠失、または挿入、またはこれらの組み合わせであってもよい。次いで、遺伝子の残りをコピーするDNAポリメラーゼを使用して一本鎖プライマーを伸長させる。このようにコピーされた遺伝子は、変異部位を含有し、その後、ベクターとして宿主細胞に導入され、クローン化されてもよい。最後に、変異体は、DNA配列決定によって選択され、所望の変異を含有することを確認することができる。
【0164】
遺伝的変異は、エラーが発生しやすいPCRを使用して導入することができる。この技術では、目的の遺伝子は、配列の複製の忠実性が不十分な条件下で、DNAポリメラーゼを使用して増幅される。結果として、増幅産物は、配列に少なくとも一つのエラーを含む。遺伝子が増幅され、結果として生じる反応産物が、鋳型分子と比較した場合に配列の一つ以上の変化を含有する場合、結果として生じる産物は、鋳型と比較して変異誘発される。ランダム変異を導入する別の手段は、ニトロソグアニジンまたはメタンスルホン酸エチルなどの化学変異原に細胞を曝露させることであり(Nestmann,Mutat Res 1975 June;28(3):323-30)、次いで遺伝子を含有するベクターを宿主から単離する。
【0165】
相同組み換え変異誘発は、外因性DNA断片と標的ポリヌクレオチド配列との間の組み換えを伴う。二本鎖の切断が生じた後、切断の5’末端周辺のDNA切片を切除(resection)と呼ばれるプロセスで切り取る。続く鎖の侵入ステップでは、破損したDNA分子の突出した3’末端が、その後、破損していない類似のまたは同一のDNA分子に「侵入」する。この方法は、遺伝子の削除、エクソンの除去、遺伝子の追加、および点変異の導入に使用することができる。相同組み換え変異誘発は、永久的または条件付きであり得る。典型的には、組み換え鋳型も提供される。組み換え鋳型は、別のベクターの成分であってもよいか、別個のベクターに含まれてもよいか、または別個のポリヌクレオチドとして提供されてもよい。いくつかの態様では、組み換え鋳型は、部位特異的ヌクレアーゼによってニック状または切断された標的配列内またはその近傍など、相同組み換えの鋳型として機能するように設計される。鋳型ポリヌクレオチドは、約10、15、20、25、50、75、100、150、200、500、1000個、またはそれ以上のヌクレオチドの長さなど、任意の適切な長さであってもよい。いくつかの態様では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的配列を含むポリヌクレオチドの一部分に対して相補的である。最適に整列されている場合、鋳型ポリヌクレオチドは、標的配列の一つ以上のヌクレオチド(例えば、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100個、またはそれ以上のヌクレオチド)と重複し得る。いくつかの態様では、鋳型配列と標的配列を含むポリヌクレオチドとが最適に整列する場合、鋳型ポリヌクレオチドの最も近いヌクレオチドは、標的配列から約1、5、10、15、20、25、50、75、100、200、300、400、500、1000、5000、10000個、またはそれ以上のヌクレオチド内に存在する。相同組み換えの方法に有用な部位特異的ヌクレアーゼの非限定的な例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、およびメガヌクレアーゼが挙げられる。このようなヌクレアーゼの使用のさらなる説明については、例えば、米国特許第8795965号および米国特許第20140301990号を参照されたい。
【0166】
遺伝的変異の導入は、不完全なプロセスであってもよく、その結果、処理された細菌集団の一部の細菌は所望の変異を担持し、他の細菌は担持しない。一部の事例では、所望の遺伝的変異を担持する細菌を富化するために、選択圧を適用することが望ましい。従来、成功した遺伝的バリアントに対する選択は、例えば、抗生物質耐性遺伝子を挿入する場合、または非致死性化合物を致死性代謝物へと変換することができる代謝活性を廃止する場合など、遺伝的変異によって付与または廃止されるいくつかの機能を付与するかしないかに対する選択が含まれていた。ポリヌクレオチド配列自体に基づいて選択圧を適用することも可能であり、それにより、所望の遺伝的変異のみを導入する必要がある(例えば、選択可能なマーカーも必要としない)。この場合、選択圧は、標的部位に導入される遺伝的変異を欠く切断ゲノムを含んでもよく、その結果、選択は、遺伝的変異が導入されることが求められている参照配列に対して効果的に向けられる。典型的には、切断は、標的部位の100ヌクレオチド以内(例えば、標的部位からの75、50、25、10、またはより少ないヌクレオチド以内での、標的部位でのまたは標的部位内の切断を含む)で発生する。切断は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ(TALEN)、またはメガヌクレアーゼからなる群から選択される部位特異的ヌクレアーゼによって指示されうる。このようなプロセスは、相同組み換えの鋳型が提供されないことを除いて、標的部位で相同組み換えを強化するためのプロセスに類似する。結果として、所望の遺伝的変異を欠く細菌は、修復せずに放置すると細胞死をもたらす切断を受ける可能性がより高い。次いで、選択に耐えた細菌を単離して、改善された形質付与の評価をしてもよい。
【0167】
CRISPRヌクレアーゼを部位特異的ヌクレアーゼとして使用して、切断を標的部位に方向付けることができる。Cas9を使用して非変異細胞を殺すことによって、変異した微生物の改善された選択を取得することができる。その後、微生物を組織から再単離することができる。非バリアントに対する選択のために用いられるCRISPRヌクレアーゼシステムは、相同組み換えの鋳型が提供されていないことを除いて、遺伝的変異の導入に関して上述したものと類似した要素を用いることができる。標的部位に向けられた切断により、影響を受けた細胞の死を促進する。
【0168】
ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ(TALEN)システム、およびメガヌクレアーゼなどの標的部位での切断を特異的に誘導するための他の選択肢が使用可能である。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって生成される人工DNAエンドヌクレアーゼである。ZFNは、所望のDNA配列を標的にするように操作することができ、これにより、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、固有の標的配列を切断することができる。細胞内に導入された場合、ZFNは、二本鎖切断を誘導することによって、細胞内の標的DNA(例えば、細胞のゲノム)を編集するために使用され得る。転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、TAL(転写活性化因子様)エフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することによって生成される人工DNAエンドヌクレアーゼである。TALENは、実質的に任意の所望のDNA配列を結合するように迅速に操作することができ、TALENを細胞内に導入すると、二本鎖切断を誘導することによって細胞中の標的DNA(例えば、細胞のゲノム)を編集するために使用することができる。メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)は、大きな認識部位(12~40塩基対の二本鎖DNA配列)によって特徴付けられるエンドデオキシリボヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼは、高度に標的化された方法で配列を置換、除去、または改変するために使用することができる。タンパク質工学を介してそれらの認識配列を改変することによって、標的配列を変更することができる。メガヌクレアーゼは、細菌、植物、または動物にかかわらず、すべてのゲノムタイプを改変するために使用でき、一般的に、LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cystボックスファミリー、およびHNHファミリーの四つのファミリーにグループ化される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼとしては、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII、およびI-TevIIIが挙げられる。
【0169】
一部の態様では、微生物は、組み換え微生物である。一部の態様では、微生物は、モノエチレングリコールを生成するように遺伝子改変されている。一部の態様では、微生物は、アセトン、イソプロパノール、およびプロペンなどの一つ以上の3炭素化合物を生成するように遺伝子改変されている。一部の態様では、微生物は、モノエチレングリコールおよび一つ以上の3炭素化合物を共生成するよう遺伝子改変されている。一部の態様では、微生物は、モノエチレングリコール、アセトン、イソプロパノール、およびプロペンの一つ以上を生成するための微生物の生合成経路で遺伝子改変されている。Koch et al.(国際公開第2017156166A1号)を参照のこと、これは、モノエチレングリコール、アセトン、イソプロパノール、およびプロペンの一つ以上を継続可能な原料から生成するように微生物を操作することについての技術分野の状態に関する。
【0170】
一部の態様では、微生物は、キシロネート経路の導入により遺伝子改変されている。一部の態様では、微生物は、キシルロースリン酸経路の導入により遺伝子改変されている。一部の態様では、微生物は、リブロースリン酸経路の導入により遺伝子改変されている。Koch et al.を参照のこと。
【0171】
キシロースおよびグルコースを同時に用いる、発酵生成物をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力がある組み換え微生物
一部の態様では、組み換え微生物は、以下:(a)ペントースATP結合トランスポータータンパク質が発現されないような、微生物のゲノムからのトランスポータータンパク質の欠失または不活性化;(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合された、C5糖共輸送体の少なくとも一つをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列であって、C5糖共輸送体が、(1)キシロース共輸送体および/または(2)アラビノース共輸送体を含む、一つ以上の内因性または外因性核酸配列;(c)(1)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素と、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードし、かつ/または(2)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素と、一つ以上のキシロース異性化酵素および/もしくは一つ以上のキシルロキナーゼの欠失もしくは不活性化とをコードする、一つ以上の内因性または外因性核酸配列のうちの一つ以上を含む。
【0172】
一部の態様では、C5糖共輸送体は、5-炭素糖を輸送する能力がある共輸送体タンパク質である。一部の態様では、5炭素糖は、キシロース、アラビノース、またはリボースであり得るが、これらに限定されない。
【0173】
MEGおよび/またはアセトンの一般的な生成
一部の態様では、組み換え微生物が、(a)親微生物のゲノムからの、aldA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現を含み、組み換え微生物は、MEGおよび/またはアセトン生成のための経路を発現する。
【0174】
一部の態様では、微生物は、グリコール酸脱水素酵素glcDEFの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、C5共輸送体は、araFGH座位のGAPDHプロモーターによって制御される。一部の態様では、GAPDHプロモーターをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号95に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、C5糖共輸送体は、キシロース共輸送体XylEである。一部の態様では、XylEをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号48に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、XylEをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号49に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシロース共輸送体は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、C5糖共輸送体は、アラビノース共輸送体AraEである。一部の態様では、アラビノース共輸送体は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、AraEをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号46に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、AraEをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号47に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシロースは、他の単糖による異化抑制に感受性を有さない。
【0175】
一部の態様では、微生物は、機能的ホスホトランスフェラーゼ系を含む。一部の態様では、微生物は、cAMP受容体タンパク質(CRP)をコードする天然の野生型核酸配列を含む。一部の態様では、CRPをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号9に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、CRPをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシロース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、アラビノース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、連続的キシロース移入は、原料における他の糖の存在と無関係に生じる。
【0176】
キシルロース経路を含む、MEGおよび/またはアセトンの生成
一部の態様では、組み換え微生物は、(a)親微生物のゲノムからの、aldA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーター動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現を含み、組み換え微生物は、(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含み、組み換え微生物は、MEGおよび/またはアセトン生成のための経路を含む。
【0177】
一部の態様では、(c)および(d)は、proDプロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、proDプロモーターをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号53に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、XylAをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号5に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、XylAをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼはKhk-Cである。 一部の態様では、ケトヘキソキナーゼはヒト由来である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、Khk-Cをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号11に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、Khk-Cをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、aldoBである。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、aldoBをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号50に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、aldoBをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、fucOである。一部の態様では、fucOをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号52に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、fucOをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号98に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。一部の態様では、XylBをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号13に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、XylBをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0178】
キシロン酸経路を含む、MEGおよび/またはアセトンの生成
一部の態様では、組み換え微生物は、(a)親微生物のゲノムからの、aldA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーター動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現を含み、組み換え微生物は、(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含み、組み換え微生物は、MEGおよび/またはアセトン生成のための経路を含む。
【0179】
一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、またはハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、カウロバクター・クレセンタスキシロース脱水素酵素をコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号15に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、カウロバクター・クレセンタスキシロース脱水素酵素をコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号16に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、バークホルデリア・ゼノボランスキシロース脱水素酵素をコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号97に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、バークホルデリア・ゼノボランスキシロース脱水素酵素をコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号17に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、ハロフェラックス・ボルカニキシロース脱水素酵素をコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号18に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、ハロフェラックス・ボルカニキシロース脱水素酵素をコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0180】
一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、またはハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して内因性である。一部の態様では、カウロバクター・クレセンタスキシロノラクトナーゼをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号54に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、カウロバクター・クレセンタスキシロノラクトナーゼをコードする一つ以上のnuアミノ酸配列は、配列番号55に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、バークホルデリア・ゼノボランスキシロノラクトナーゼをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号56に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、バークホルデリア・ゼノボランスキシロノラクトナーゼをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号57に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、ハロフェラックス・ボルカニキシロノラクトナーゼをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号58に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、ハロフェラックス・ボルカニキシロノラクトナーゼをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号59に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0181】
一部の態様では、キシロース脱水酵素は、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、またはハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロース脱水酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロース脱水酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、カウロバクター・クレセンタスキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号60に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、カウロバクター・クレセンタスキシロース脱水酵素をコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号61に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、バークホルデリア・ゼノボランスキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号62に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、バークホルデリア・ゼノボランスキシロース脱水酵素をコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号63に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、ハロフェラックス・ボルカニキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号64に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、ハロフェラックス・ボルカニキシロース脱水酵素をコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号65に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、fucOである。一部の態様では、グリコアルデヒド還元酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。
【0182】
キシルロース経路を含む、MEGおよび/またはアセトンの生成
一部の態様では、組み換え微生物は、(a)親微生物のゲノムからの、aldA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーター動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現を含み、組み換え微生物は、(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含み、組み換え微生物は、(f)アセトアセチル-CoAチオラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;(g)アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;および(h)アセトンへのアセトアセテートの変換を触媒するアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を伴うアセトン生成のための経路を含み、組み換え微生物は、MEGおよび/またはアセトン生成のための経路を発現する。
【0183】
一部の態様では、(f)、(g)、および(h)は、OXB11プロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、OXB11をコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号78に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、アセトアセチル-CoAチオラーゼは、Thlである。一部の態様では、チオラーゼは、クロストリジウム・アセトブチリカムまたはクロストリジウム・ベイジェリンキ由来である。一部の態様では、クロストリジウム・アセトブチリカムthlチオラーゼをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号68に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、クロストリジウム・アセトブチリカムthlチオラーゼをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号69に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、クロストリジウム・ベイジェリンキthlチオラーゼをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号66に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、クロストリジウム・ベイジェリンキthlチオラーゼをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号67に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼは、AtoDAである。一部の態様では、アセトアセテートデカルボキシラーゼは、Adcである。一部の態様では、デカルボキシラーゼは、クロストリジウム・アセトブチリカムまたはクロストリジウム・ベイジェリンキ由来である。一部の態様では、クロストリジウム・アセトブチリカムAdcアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号74に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、クロストリジウム・アセトブチリカムAdcアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号75に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、クロストリジウム・ベイジェリンキAdcアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号76に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、クロストリジウム・ベイジェリンキAdcアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0184】
キシロン酸経路に特異的なMEGおよび/またはアセトンの生成
一部の態様では、組み換え微生物は、(a)親微生物のゲノムからの、aldA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーター動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現を含み、組み換え微生物は、(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)MEGへのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド還元酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化のうちの一つ以上を伴うMEG生成のための経路を含み、組み換え微生物は、以下:(f)アセトアセチル-CoAチオラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;(g)アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現;および(h)アセトンへのアセトアセテートの変換を触媒するアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を伴うアセトン生成のための経路を含み、組み換え微生物は、MEGおよび/またはアセトン生成のための経路を発現する。
【0185】
一部の態様では、(f)、(g)、および(h)は、OXB11プロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、アセトアセチル-CoAチオラーゼは、Thlである。一部の態様では、チオラーゼは、クロストリジウム・アセトブチリカム由来である。一部の態様では、アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼは、AtoDAである。一部の態様では、アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼAtoDサブユニットアルファをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号70に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼAtoDサブユニットアルファをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号72に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼAtoDサブユニットベータをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号71に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼAtoDサブユニットベータをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号73に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、アセトアセテートデカルボキシラーゼは、Adcである。一部の態様では、デカルボキシラーゼは、クロストリジウム・アセトブチリカムまたはクロストリジウム・ベイジェリンキ由来である。一部の態様では、クロストリジウム・アセトブチリカムAdcアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号74に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、クロストリジウム・アセトブチリカムAdcアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号75に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、クロストリジウム・ベイジェリンキAdcアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号76に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、クロストリジウム・ベイジェリンキAdcアセトアセテートデカルボキシラーゼをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号77に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0186】
イソプロパノールの生成
一部の態様では、組み換え微生物は、イソプロパノールを、アセトンを生成する能力がある任意の一つ以上の原料から生成する能力がある。一部の態様では、アセトンを生成するよう操作された組み換え微生物は、イソプロパノールへのアセトンの変換を触媒するアルコール脱水素酵素をコードする少なくとも一つの外因性核酸分子を発現するようさらに操作される。一部の態様では、前述のアセトン生成の開示の(f)、(g)、および(h)は、(i)イソプロパノールへのアセトンの変換を触媒するアルコール脱水素酵素をコードする少なくとも一つの外因性核酸分子の発現でさらに改変される。一部の態様では、アルコール脱水素酵素をコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号93に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、アルコール脱水素酵素をコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号94に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0187】
グリコール酸の生成
一部の態様では、組み換え微生物は、グリコール酸をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力があり、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、以下:(a)親微生物のゲノムからの、fucO、yqhD(配列番号1または配列番号2)、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーター動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を含み、組み換え微生物は、グリコール酸の生成のための一つ以上の経路をさらに発現する。
【0188】
一部の態様では、AraFGHのAraFペリプラズム結合タンパク質サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号20に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、AraFGHのAraFペリプラズム結合タンパク質サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、AraFGHのAraG ATP結合サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号21に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、AraFGHのAraG ATP結合サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号24に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、AraFGHのAraH膜サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号22に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、AraFGHのAraH膜サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号25に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0189】
一部の態様では、xylFGHのxylFペリプラズム結合タンパク質サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号26に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、xylFGHのxylFペリプラズム結合タンパク質サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号29に記載されるアミノ酸配列含む。一部の態様では、xylFGHのxylG ATP結合サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号27に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、xylFGHのxylG ATP結合サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号30に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、xylFGHのxylH膜サブユニットをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号28に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、xylFGHのxylH膜サブユニットをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号31に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0190】
一部の態様では、微生物は、glcDEFの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、推定FAD連結サブユニットGlcDをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号79に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、推定FAD連結サブユニットGlcDをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号82に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、推定FAD結合サブユニットGlcEをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号80に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、推定FAD結合サブユニットGlcEをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号83に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、推定鉄-硫黄サブユニットGlcFをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号81に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、推定鉄-硫黄サブユニットGlcFをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号84に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、微生物は、アルデヒド還元酵素dkgAの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、dkgAをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号85に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、dkgAをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号86に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、微生物は、アルデヒド還元酵素yahKの欠失または不活性化をさらに含む。一部の態様では、yahKをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号87に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、yahKをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号88に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシロース共輸送体は、araFGH座位のGAPDHプロモーターによって制御される。一部の態様では、C5糖共輸送体は、キシロース共輸送体XylEである。一部の態様では、xylEをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号48に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、xylEをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号49に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシロース共輸送体は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、C5糖共輸送体は、アラビノース共輸送体AraEである。一部の態様では、araEをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号46に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、araEをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号47に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、アラビノース共輸送体は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、キシロースの取り込みは、他の単糖による異化抑制に感受性を有さない。一部の態様では、微生物は、機能的ホスホトランスフェラーゼ系を含む。一部の態様では、微生物は、cAMP受容体タンパク質(CRP)をコードする天然の野生型核酸配列を含む。一部の態様では、CRPをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号9に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、CRPをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号10に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシロース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、アラビノース共輸送体の構成的過剰発現は、原料から微生物へのキシロースの連続的移入を可能にする。一部の態様では、連続的キシロース移入は、原料における他の糖の存在と無関係に生じる。
【0191】
キシルロース経路を含む、グリコール酸の生成
一部の態様では、組み換え微生物は、グリコール酸をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力があり、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用いる、以下:(a)親微生物のゲノムからの、fucO yqhD、yahK、dkgA araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーター動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を含み、組み換え微生物は、以下:(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化の一つ以上を伴うグリコール酸の生成のための一つ以上の経路をさらに発現する。
【0192】
一部の態様では、(c)および(d)は、proDプロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、proDプロモーターをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号53に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、xylAをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号5に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、xylAをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、Khk-Cである。一部の態様では、khk-Cをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号11に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、khk-Cをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号12に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、ケトヘキソキナーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、aldoBである。一部の態様では、alsoBをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号50に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、aldoBをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号51に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、フルクトース-二リン酸アルドラーゼは、ヒト由来である。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコールアルデヒド脱水素酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、aldAである。一部の態様では、aldAをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号3に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、aldAをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。一部の態様では、xylBをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号13に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、xylBをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0193】
キシロン酸経路を含む、グリコール酸の生成
一部の態様では、組み換え微生物は、グリコール酸をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力があり、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、以下:(a)親微生物のゲノムからの、fucO、yqhD、yahK、dkgA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーター動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を含み、組み換え微生物は、以下:(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化の一つ以上を伴うグリコール酸の生成のための一つ以上の経路をさらに発現する。
【0194】
一部の態様では、(c)および(d)は、proDプロモーターによって制御される。一部の態様では、キシロース異性化酵素は、XylAである。一部の態様では、キシルロキナーゼは、XylBである。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、またはハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロース脱水素酵素は、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、カウロバクター・クレセンタス、バークホルデリア・ゼノボランス、またはハロフェラックス・ボルカニ由来である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して異種性である。一部の態様では、キシロノラクトナーゼは、微生物に対して内因性である。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、aldAである。一部の態様では、グリコアルデヒド脱水素酵素は、微生物に対して内因性である。
【0195】
キシルロース経路を含む、グリコール酸の生成(代替経路)
一部の態様では、組み換え微生物は、グリコール酸をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力があり、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、以下:(a)親微生物のゲノムからの、fucO、yqhD、yahK、dkgA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーター動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を含み、組み換え微生物は、以下:(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース異性化酵素および/またはケトヘキソキナーゼおよび/またはフルクトース-二リン酸アルドラーゼをコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化の一つ以上を伴うグリコール酸の生成のための一つ以上の経路をさらに発現し、微生物は、以下:(f)イソクエン酸リアーゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現;および/または(g)グリオキシル酸レダクターゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現の一つ以上を伴うグリコール酸の生成のための経路をさらに発現する。一部の態様では、(f)および(g)は、OXB20プロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、OXB20プロモーターをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号96に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、イソクエン酸リアーゼは、AceAである。一部の態様では、グリオキシル酸レダクターゼは、YcdWである。一部の態様では、ycdWをコードする一つ以上の核酸分子は、配列番号91に記載される核酸配列を含む。一部の態様では、ycdWをコードする一つ以上のアミノ酸配列は、配列番号92に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0196】
キシロン酸経路を含む、グリコール酸の生成(代替経路)
一部の態様では、組み換え微生物は、グリコール酸をキシロースとグルコースとを含む原料から生成する能力があり、組み換え微生物は、キシロースおよびグルコースを同時に用い、以下:(a)親微生物のゲノムからの、fucO、yqhD,yahK、dkgA、araFGH、およびxylFGHの欠失または不活性化;ならびに(b)一つ以上の構成的プロモーター動作可能に結合されC5糖共輸送体をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現のうちの一つ以上を含み、組み換え微生物は、以下:(c)一つ以上の構成的プロモーターに動作可能に結合されたキシロース脱水素酵素および/またはキシロノラクトナーゼおよび/またはキシロース脱水酵素をコードする一つ以上の内因性または外因性核酸配列の発現;(d)グリコール酸へのグリコアルデヒドの変換を触媒するグリコアルデヒド脱水素酵素をコードする少なくとも一つの内因性または外因性核酸分子の発現;ならびに(e)親微生物のゲノムからの、一つ以上のキシロース異性化酵素および/または一つ以上のキシルロキナーゼの欠失または不活性化の一つ以上を伴うグリコール酸の生成のための一つ以上の経路をさらに発現し、微生物は、以下:(f)イソクエン酸リアーゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現;および/または(g)グリオキシル酸レダクターゼをコードする少なくとも一つの内因性もしくは外因性核酸分子の発現の一つ以上を伴うグリコール酸の生成のための経路をさらに発現する。
【0197】
一部の態様では、(f)および(g)は、OXB20プロモーターによって制御されるオペロン中に存在する。一部の態様では、イソクエン酸リアーゼは、AceAである。一部の態様では、グリオキシル酸レダクターゼは、YcdWである。
【0198】
本明細書に記載される配列および改変を含む組み換え微生物
一部の態様では、本開示は、前述の態様のいずれか一つの組み換え微生物に広く関し、組み換え微生物は、クロストリジウム属、クロストリジウム・リュングダリイ、クロストリジウム・オートエタノゲナム、クロストリジウム・ラグスダレイ、ユーバクテリウム・リモスム、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム、ムーレラ・サーモアセチカ、クロストリジウム・アセチカム、アセトバクテリウム・ウッディ、アルカリバクルム・バッキ、クロストリジウム・ドラケイ、クロストリジウム・カルボキシジボランス、クロストリジウム・フォルミコアセチカム、クロストリジウム・スカトロゲネス、モーレラ・サーモオートトロフィカ、アセトネマ・ロングム、ブラウチア・プロダクタ、クロストリジウム・グリコリクム、クロストリジウム・マグナム、クロストリジウム・マヨムベイ、クロストリジウム・メソオキシベンゾボランス、クロストリジウム・アセトブチリカム、クロストリジウム・ベイジェリンキ、オキソバクター・フェニギイ、サーモアナエロバクター・キブイ、スポロムサ・オバタ、サーモアセトゲニウム・ファエウム、アセトバクテリウム・カービノリカム、スポロムサ・テルミチダ、モーレラ・グリセリニ、ユーバクテリウム・アグリガンス、トレポネーマ・アゾトニュートリシウム、大腸菌、サッカロマイセス・セレビシエ、シュードモナス・プチダ、バチルス属、コリネバクテリウム属、ヤロウイア・リポリティカ、シファゾマイセス・スティピティス、およびテリスポロバクター・グリコリカスからなる群から選択される親微生物から得られる。一部の態様では、親微生物は、大腸菌である。
【0199】
一部の態様では、本開示の酵素、タンパク質、プロモーター、および核酸を表1に概説する。
【0200】
(表1)本開示のタンパク質および核酸
【0201】
遺伝子改変の検出方法
本開示は、本明細書に教示された微生物の検出に有用なプライマー、プローブ、およびアッセイを教示する。一部の態様では、本開示は、WT親株を検出する方法を提供する。他の態様では、本開示は、親株またはWT株から得られた操作されたまたは改変された微生物を検出する方法を提供する。一部の態様では、本開示は、微生物における遺伝子変化を特定する方法を提供する。
【0202】
一部の態様では、本開示のゲノム工学方法は、改変された微生物における非天然ヌクレオチドの「接合」配列の生成をもたらす。これらの天然に存在しないヌクレオチド接合は、本明細書に教示される微生物における特定の遺伝子変化の存在を示す、判断の種類として使用することができる。
【0203】
本技術は、固有に設計されたプライマーおよびプローブを含む、専門的な定量的PCR法の使用を介して、これらの天然に存在するヌクレオチド接合を検出することができる。一部の態様では、本開示のプローブは、天然に存在しないヌクレオチド接合配列に結合する。一部の態様では、従来のPCRが、用いられる。他の態様では、リアルタイムPCRが、用いられる。一部の態様では、定量的PCR(qPCR)が、用いられる。一部の態様では、PCR方法を使用して、微生物のゲノムDNAまたはゲノム外DNAに挿入された異種配列を同定する。
【0204】
したがって、本開示は、リアルタイムにPCR産物を検出するための二つの一般的な方法:(1)任意の二本鎖DNAと相互作用する非特異的蛍光色素、および(2)その相補配列を有するプローブのハイブリダイゼーション後にのみ検出を可能にする蛍光レポーターで標識されたオリゴヌクレオチドからなる配列特異的DNAプローブの使用を包含し得る。一部の態様では、天然に存在しないヌクレオチド接合のみが、教示されたプライマーを介して増幅され、結果として、非特異的色素、または特異的なハイブリダイゼーションプローブの使用のいずれかを介して検出され得る。他の態様では、本開示のプライマーは、プライマーが接合配列の両側に隣接するように選択され、その結果、増幅反応が生じた場合、当該接合配列が存在する。
【0205】
本開示の態様は、軽度から厳密なハイブリダイゼーション条件下で当該天然に存在しないヌクレオチド接合配列に結合する能力がある他のヌクレオチド分子とともに、それ自体が天然に存在しないヌクレオチド接合配列分子を伴う。一部の態様では、軽度から厳密なハイブリダイゼーション条件下で当該天然に存在しないヌクレオチド配列に結合する能力があるヌクレオチド分子は、「ヌクレオチドプローブ」と呼ばれる。
【0206】
一部の態様では、ゲノムDNAは、試料から抽出され、これを使用して、qPCRを使用して本開示の微生物の存在を定量化することができる。qPCR反応において用いられるプライマーは、野生型ゲノムの固有の領域または操作された属間変異株の固有の領域を増幅するためのPrimer Blast(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/tools/primer-blast/)により設計されたプライマーであり得る。qPCR反応は、SYBR GreenER qPCR SuperMix Universal(Thermo Fisher P/N 11762100)キットを使用して、フォワード増幅プライマーおよびリバース増幅プライマーのみを使用して行うことができ、代わりに、Kapa Probe Forceキット(Kapa Biosystems P/N KK4301)を、増幅プライマー、および5’末端にFAM色素標識、内部ZENクエンチナート、ならびに3’末端にマイナーグルーブ結合体および蛍光クエンチャーを含有するTaqManプローブ(Integrated DNA Technologies)とともに使用することができる。
【0207】
定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)は、一つ以上の核酸配列の増幅をリアルタイムで定量する方法である。PCRアッセイのリアルタイム定量は、対象の増幅核酸と、キャリブレーション標準として作用し得る適切な対照核酸配列を比較することによって、PCR増幅工程によって生成される核酸の量の決定を可能にする。
【0208】
TaqManプローブは、多くの場合、標的核酸配列を定量するために特異性の向上を必要とするqPCRアッセイで用いられる。TaqManプローブは、5’末端に付着したフルオロフォアおよびプローブの3’末端に付着したクエンチャーを有するオリゴヌクレオチドプローブを含む。TaqManプローブが、プローブの5’末端と3’末端との間を互いに密接に接触している場合、クエンチャーは、フルオロフォアからの蛍光シグナルの伝達を防止する。TaqManプローブは、特定のプライマーセットによって増幅される核酸領域内にアニーリングするように設計されている。Taqポリメラーゼがプライマーを伸長させ、新生鎖を合成すると、Taqポリメラーゼの5’から3’のエキソヌクレアーゼ活性が、鋳型にアニーリングしたプローブを分解する。このプローブ分解は、フルオロフォアを放出し、それゆえ、クエンチャーへの近接を破壊し、フルオロフォアの蛍光を可能にする。qPCRアッセイで検出された蛍光は、放出されたフルオロフォアおよび反応物に存在するDNA鋳型の量に直接比例する。
【0209】
qPCRの特徴により、従来のPCRアッセイの増幅された産物の観察に概して必要とされるゲル電気泳動調製の、労働集約的な増幅後の工程を排除することができる。従来のPCRに対するqPCRの利点は大きく、速度の向上、使いやすさ、再現性、および定量的能力を含む。
【0210】
微生物組成物
一部の態様では、本開示の微生物は微生物組成物に組み合わされる。
【0211】
一部の態様では、本開示の微生物組成物は固体である。固体組成物が使用される場合、以下を含むがこれらに限定されない一つ以上の担体材料を含むことが望まれ得る:シリカ、タルク、カオリン、石灰岩、チョーク、粘土、ドロマイト、珪藻土などの鉱物土類(mineral earth)、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、トレハロース、キトサン、シェラック、アルブミン、デンプン、脱脂粉乳、スイートホエー粉末、マルトデキストリン、ラクトース、イヌリン、デキストロース、ならびにシリアルミール、樹皮ミール、木粉、およびナッツシェルミールなどの野菜由来の製品である。
【0212】
一部の態様では、本開示の微生物組成物は液体である。さらなる態様では、液体は、水またはアルコールまたは生理食塩水または炭水化物溶液を含み得る溶媒を含む。一部の態様では、本開示の微生物組成物は、ポリマー、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ポリビニルアルコールなどの結合剤を含む。
【0213】
一部の態様では、本開示の微生物組成物は、糖類(例えば、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、オリゴ糖類など)、高分子糖類、脂質、高分子脂質、リポ多糖類、タンパク質、高分子タンパク質、リポタンパク質、核酸、核酸ポリマー、シリカ、無機塩、およびこれらの組み合わせを含む。さらなる態様では、微生物組成物は、寒天、アガロース、ゲルライト(gelrite)、ゲランガムなどのポリマーを含む。一部の態様では、微生物組成物は、プラスチックカプセル、エマルション(例えば、水および油)、膜、および人工膜を含む。一部の態様では、エマルションまたは連結ポリマー(linked polymer)溶液は、本開示の微生物組成物を含み得る。Harel and Bennett(米国特許第8,460,726 B2号)を参照されたい。
【0214】
一部の態様では、本開示の微生物組成物は、固体形態(例えば、分散凍結乾燥胞子)または液体形態(保存媒体中に散在する微生物)で生じる。一部の態様では、本開示の微生物組成物は、使用直前に乾燥形態で液体に添加されて懸濁液を形成する。一部の態様では、微生物組成物は、ガラス化微生物を含む。
【0215】
一部の態様では、本開示の微生物組成物は、0.750、0.700、0.650、0.600、0.550、0.500、0.475、0.450、0.425、0.400、0.375、0.350、0.325、0.300、0.275、0.250、0.225、0.200、0.190、0.180、0.170、0.160、0.150、0.140、0.130、0.120、0.110、0.100、0.095、0.090、0.085、0.080、0.075、0.070、0.065、0.060、0.055、0.050、0.045、0.040、0.035、0.030、0.025、0.020、0.015、0.010、または0.005未満の水分活性(aw)を有する。
【0216】
一部の態様では、本開示の微生物組成物は、約0.750、約0.700、約0.650、約0.600、約0.550、約0.500、約0.475、約0.450、約0.425、約0.400、約0.375、約0.350、約0.325、約0.300、約0.275、約0.250、約0.225、約0.200、約0.190、約0.180、約0.170、約0.160、約0.150、約0.140、約0.130、約0.120、約0.110、約0.100、約0.095、約0.090、約0.085、約0.080、約0.075、約0.070、約0.065、約0.060、約0.055、約0.050、約0.045、約0.040、約0.035、約0.030、約0.025、約0.020、約0.015、約0.010、または約0.005未満の水分活性(aw)を有する。
【0217】
水分活性値は、飽和水溶液(Multon,“Techniques d’Analyse E De Controle Dans Les Industries Agroalimentaires” APRIA(1981))の方法、または生存可能なロボトロンBT湿度計もしくは他の湿度計もしくは検湿器を使用した直接測定によって決定される。
【0218】
原料
一部の態様では、本開示は、一つ以上の所望の化学物質を生成し、回収/単離する方法に関する。回収/収集/単離は、蒸留、膜ベースの分離ガスストリッピング(membrane-based separation gas stripping)、溶媒抽出、および拡張床吸着などの当技術分野で公知の方法によって行うことができる。
【0219】
一部の態様では、原料は炭素源を含む。一部の態様では、炭素源は、糖、グリセロール、アルコール、有機酸、アルカン、脂肪酸、リグノセルロース、タンパク質、二酸化炭素、および一酸化炭素から選択されてもよい。一態様では、炭素源は糖である。一態様では、糖はグルコースまたはそのグルコースのオリゴマーである。一態様では、グルコースのオリゴマーは、フルクトース、スクロース、デンプン、セロビオース、マルトース、ラクトース、およびセルロースから選択される。一態様では、糖は五炭糖である。一態様では、糖は六炭糖である。一部の態様では、原料は、一つ以上の五炭糖および/または一つ以上の六炭糖を含む。一部の態様では、原料は、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む。一部の態様では、原料は、キシロースおよび/またはグルコースのうちの一つ以上を含む。一部の態様では、原料は、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組み合わせのうちの一つ以上を含む。一部の態様では、原料は、キシロースおよびグルコースを含む。
【0220】
一部の態様では、微生物は、一つ以上の五炭糖(ペントース)および/または一つ以上の六炭糖(ヘキソース)を用いる。一部の態様では、微生物は、キシロースおよび/またはグルコースのうちの一つ以上を用いる。一部の態様では、微生物は、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組み合わせのうちの一つ以上を用いる。一部の態様では、微生物は、キシロース、グルコース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、フルクトース、マンノース、スクロース、および/またはこれらの組み合わせのうちの一つ以上を用いる。
【0221】
一部の態様では、ヘキソースは、D-アロース、D-アルトロース、D-グルコース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-ガラクトース、D-タロース、D-タグトース(tagtose)、D-ソルボース、D-フルクトース、D-プシコース、および当技術分野で公知の他のヘキソースから選択され得る。一部の態様では、ペントースは、D-キシロース、D-リボース、D-アラビノース、D-リキソース、D-キシルロース、D-リブロース、および当技術分野で公知の他のペントースから選択されてもよい。一部の態様では、ヘキソースおよびペントースは、本明細書に開示されるヘキソースおよびペントースのいずれかの左旋性または右旋性エナンチオマーから選択され得る。
【0222】
一部の態様では、成長フェーズ中にバイオリアクター/成長培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、炭水化物少なくとも5kg/m3、炭水化物少なくとも10kg/m3、炭水化物少なくとも20kg/m3、炭水化物少なくとも30kg/m3、炭水化物少なくとも40kg/m3、炭水化物少なくとも50kg/m3、炭水化物少なくとも60kg/m3、炭水化物少なくとも70kg/m3、炭水化物少なくとも80kg/m3、炭水化物少なくとも90kg/m3、炭水化物少なくとも100kg/m3、炭水化物少なくとも150kg/m3、炭水化物少なくとも200kg/m3、炭水化物少なくとも250kg/m3、炭水化物少なくとも300kg/m3、炭水化物少なくとも400kg/m3、炭水化物少なくとも500kg/m3、炭水化物少なくとも600kg/m3、炭水化物少なくとも700kg/m3、炭水化物最大800kg/m3である。一部の態様では、成長フェーズ中にバイオリアクター/成長培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、炭水化物約10kg/m3~炭水化物500kg/m3の範囲にある。
【0223】
一部の態様では、成長フェーズに必要な時間は、1~200時間の間で変動する。さらなる態様では、成長フェーズの時間は、5~50時間である。時間は、炭水化物の供給量および/または原料に依存する。
【0224】
一部の態様では、成長フェーズ中にバイオリアクター/成長培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、炭水化物少なくとも50kg/m3、炭水化物少なくとも60kg/m3、炭水化物少なくとも70kg/m3、炭水化物少なくとも80kg/m3、炭水化物少なくとも90kg/m3、炭水化物少なくとも100kg/m3、炭水化物少なくとも150kg/m3、炭水化物少なくとも200kg/m3、炭水化物少なくとも250kg/m3、炭水化物少なくとも300kg/m3、炭水化物少なくとも400kg/m3、炭水化物少なくとも500kg/m3、炭水化物少なくとも600kg/m3、炭水化物少なくとも700kg/m3、炭水化物少なくとも800kg/m3、炭水化物少なくとも900kg/m3、炭水化物最大1000kg/m3である。一部の態様では、生成フェーズ中にバイオリアクター/成長培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、炭水化物約100kg/m3~炭水化物800kg/m3の範囲にある。
【0225】
一部の態様では、生成フェーズに必要な時間は、5~500時間の間で変動する。さらなる態様では、生成フェーズの時間は、バッチおよび流加バッチ操作について10時間~300時間で変動する。他の態様では、生成フェーズの時間は、連続的発酵で最大300時間である。
【0226】
一部の態様では、1フェーズ過程の間にバイオリアクター/成長培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、炭水化物少なくとも50kg/m3、炭水化物少なくとも60kg/m3、炭水化物少なくとも70kg/m3、炭水化物少なくとも80kg/m3、炭水化物少なくとも90kg/m3、炭水化物少なくとも100kg/m3、炭水化物少なくとも150kg/m3、炭水化物少なくとも200kg/m3、炭水化物少なくとも250kg/m3、炭水化物少なくとも300kg/m3、炭水化物少なくとも400kg/m3、炭水化物少なくとも500kg/m3、炭水化物少なくとも600kg/m3、炭水化物少なくとも700kg/m3、炭水化物少なくとも800kg/m3、炭水化物少なくとも900kg/m3、炭水化物最大1000kg/m3である。一部の態様では、生成フェーズ中にバイオリアクター/成長培地に供給されるC5および/またはC6炭水化物の総量は、炭水化物約100kg/m3~炭水化物800kg/m3の範囲にある。
【0227】
一部の態様では、1フェーズ過程における生成フェーズに必要な時間は、5~500時間の間で変動する。さらなる態様では、1フェーズ過程における生成フェーズに必要な時間は、5~300時間の間で変動する。
【0228】
一部の態様では、一つのフェーズまたは複数のフェーズの生成過程は、約5、約10、約25、約50、約75、約100、約125、約150、約175、約200、約225、約250、約275、約300、約325、約350、約375、約400、約425、約450、約475、または約500時間かかる。
【0229】
一部の態様では、一つのフェーズまたは複数のフェーズの生成過程は、5、10、25、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、または500時間かかる。
【0230】
形質の改善
本開示の方法を用いて、様々な所望の形質のうちの一つ以上を導入または改善してもよい。導入されるか、または改善され得る形質の例は、MEG、グリコール酸、ポリオール、アセトン、プロペン、イソプロパノールの速度および速さの増加、キシロースおよびグルコースの同時消費の増加、ならびに糖の消費および/または取り込みに対する一つ以上の糖の阻害効果の減少を含む。
【0231】
一部の態様では、本明細書に記載される方法から生じる微生物は、制御条件下で参照より少なくとも約1%、例えば、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約9%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%高い形質の差異を示す。さらなる例では、本明細書に記載される方法から生じる微生物は、同様の条件下で参照対照成長より、少なくとも約5%、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約8%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%以上である形質の差異を示す。
【0232】
一部の態様では、本開示の形質の任意の一つ以上の増加または減少は、改変されていない微生物と比較して、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約100%の増加である形質の増加である。
【0233】
一部の態様では、本開示の形質の任意の一つ以上の増加または減少は、改変されていない微生物と比較して、少なくとも0.1%、少なくとも0.2%、少なくとも0.3%、少なくとも0.4%、少なくとも0.5%、少なくとも0.6%、少なくとも0.7%、少なくとも0.8%、少なくとも0.9%、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも11%、少なくとも12%、少なくとも13%、少なくとも14%、少なくとも15%、少なくとも16%、少なくとも17%、少なくとも18%、少なくとも19%、少なくとも20%、少なくとも21%、少なくとも22%、少なくとも23%、少なくとも24%、少なくとも25%、少なくとも26%、少なくとも27%、少なくとも28%、少なくとも29%、少なくとも30%、少なくとも31%、少なくとも32%、少なくとも33%、少なくとも34%、少なくとも35%、少なくとも36%、少なくとも37%、少なくとも38%、少なくとも39%、少なくとも40%、少なくとも41%、少なくとも42%、少なくとも43%、少なくとも44%、少なくとも45%、少なくとも46%、少なくとも47%、少なくとも48%、少なくとも49%、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の増加である。
【実施例
【0234】
実施例1:キシロースおよびグルコースを同時に消費する能力がある株におけるD-キシロン酸経路を介したモノエチレングリコール(MEG)およびアセトンの共生成-図1の経路A
大腸菌K12株MG1655を、MEG+アセトン経路からの炭素流を転用し得る三つの遺伝子:aldA、xylA、およびglcDEFの欠失の宿主として使用した。遺伝子を首尾よく欠失させ、PCRおよび配列決定によって欠失を確認した。次の工程は、MEG経路の統合であった。それぞれ、キシロネート経路の第一および最終の酵素をコードする、xdh遺伝子(キシロース脱水素酵素)およびfucO遺伝子(グリコアルデヒド還元酵素)を含有するproDプロモーターの制御下で発現したオペロンを、大腸菌ゲノムに統合し、xdh遺伝子の追加コピーも、proDプロモーターの制御下に置き、異なる座位に統合した。xdh遺伝子の統合は、中間体D-キシロネートおよびグリコールアルデヒドへのキシロースの変換を可能にする。fucO遺伝子の統合は、グリコールアルデヒドをMEGに還元し、MEG生成に特異的である。次の工程は、アセトン経路の統合であった。thlA遺伝子(アセトアセチル-CoAチオラーゼ);AtoDA遺伝子(アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ)およびadc遺伝子(アセトアセテートデカルボキシラーゼ)を含有するOXB11プロモーターの制御下で発現したオペロンを、大腸菌ゲノムに統合し、基本株を得た。基本株を、グルコースおよびキシロースの共消費を促進するための改変のための宿主として使用した。第一の改変は、araFGH座位のGAPDHプロモーターの制御下におけるxylEの追加コピーの統合であり、これにより、araFGHを欠失する。第二の改変は、xylFGHオペロンの欠失であった。統合および欠失の全てを、PCRおよび配列決定によって確認した。
【0235】
形質転換からのコロニーを、前培養のため、12.85g/Lキシロースおよび2.15g/Lグルコース(6:1の割合)または7.5g/Lキシロースおよび7.5g/Lグルコース(1:1の割合)のいずれかを含有するミネラル培地5mLに播種した。16時間の培養後、前培養の5%を、新鮮培地100mLに移した。フラスコを37℃、250rpmでインキュベートした。培養物の開始ODは、0.1であった。
【0236】
1:1割合の培養について、8時間の培養後、グルコースおよびキシロースの同時使用を、共消費株において検出することができたが、親株では、キシロースは、グルコースの枯渇後の18時間後のみに消費し始めた(図2)。36時間の培養において、共消費株は、最初の糖混合物の75%を消費することができたが、親株は、62%のみを消費した。
【0237】
6:1割合の培養について、親株と共消費株の両方が、キシロース消費およびバイオマス生成の同様のプロファイルで、開始のグルコースおよびキシロースを完全に消費することができた(図3)。共消費株では、MEGの総量は、12%増加し、アセトンの量は、197%増加した(図4)。キシロース取込みにおける改変は、その親株に関連する共産生の速度の改善をもたらした。
【0238】
実施例2:キシロースおよびグルコースを同時に消費する能力がある株におけるD-キシルロース経路を介したモノエチレングリコール(MEG)およびアセトンの共生成-図1の経路B
大腸菌K12株MG1655を、MEG+アセトン経路からの炭素流を転用し得る三つの遺伝子:aldA、xylB、およびglcDEFの欠失の宿主として使用した。遺伝子を首尾よく欠失させ、PCRおよび配列決定によって欠失を確認した。次の工程は、MEG経路の統合であった。khk-C遺伝子(ケトヘキソキナーゼ)、aldoB遺伝子(フルクトース-1,6-ビスホスフェートアルドラーゼ)およびfucO遺伝子(グリコアルデヒド還元酵素)を含有するproDプロモーターの制御下で発現させたオペロンを、大腸菌ゲノムに統合し、proDプロモーターの制御下のkhk-CおよびaldoB遺伝子の追加のコピーを、異なる座位に統合した。khk-CおよびaldoB遺伝子の統合により、中間体グリコールアルデヒドへのキシロースの変換が可能になる。fucO遺伝子の統合は、グリコールアルデヒドをMEGに還元し、MEG生成に特異的である。次の工程は、アセトン経路の統合であった。thlA遺伝子(アセトアセチル-CoAチオラーゼ);AtoDA遺伝子(アセテート:アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼ)およびadc遺伝子(アセトアセテートデカルボキシラーゼ)を含有するOXB11プロモーターの制御下で発現したオペロンを、大腸菌ゲノムに統合し、基本株を得た。基本株を、グルコースおよびキシロースの共消費を促進するための改変のための宿主として使用した。第一の改変は、araFGH座位のGAPDHプロモーターの制御下におけるxylEの追加コピーの統合であり、これにより、araFGHを欠失する。第二の改変は、xylFGHオペロンの欠失およびOXB15プロモーターによるxylAプロモーターの置換であった。構成的プロモーター下でのxylAの発現により、中間体D-キシロネートおよびグリコールアルデヒドへのキシロースの変換が可能になる。統合および欠失の全てを、PCRおよび配列決定によって確認した。
【0239】
形質転換からのコロニーを、前培養のため、12.85g/Lのキシロースおよび2.15g/Lのグルコース(6:1の割合)、または7.5g/Lのキシロースおよび7.5g/Lのグルコース(1:1の割合)のいずれかを含有するミネラル培地5 mLに播種した。16時間の培養後、前培養の5%を、新鮮培地100mLに移した。フラスコを37℃、250rpmでインキュベートした。培養物の開始ODは、0.1であった。
【0240】
1:1割合の培養について、12時間の培養後、グルコースおよびキシロースの同時使用を、共消費株において検出することができたが、親株では、キシロースは、グルコースの枯渇後の18時間後のみ、減少し始めた(図5)。36時間の培養において、共消費株は、最初の糖混合物の61%を消費することができたが、親株は、52%のみを消費した。
【0241】
6:1割合の培養について、親株と共消費株の両方が、キシロース消費およびバイオマス生成の同様のプロファイルで、開始のグルコースおよびキシロースを完全に消費することができた(図6)。共消費株では、MEGの総量は、9%増加し、アセトンの量は、119%増加した(図7)。キシロース取込みにおける改変は、その親株に関連する共産生の速度の改善をもたらした。
【0242】
参照による組み込み
本明細書において引用されるすべての参考文献、記事、刊行物、特許、特許広報、および特許出願は、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。しかしながら、本明細書において引用される任意の参考文献、記事、刊行物、特許、特許公開、および特許出願の言及は、世界中の任意の国において、有効な先行技術を構成するか、または共通の一般知識の一部を構成するという承認または任意の形態の提案ではなく、またそのように受け取られてはならない。さらに、以下の参考文献が、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2022528894000001.app
【国際調査報告】