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特表2022-528979LC-MS/MSによる11-オキソアンドロゲンの検出のための方法およびシステム
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  • 特表-LC-MS/MSによる11-オキソアンドロゲンの検出のための方法およびシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】LC-MS/MSによる11-オキソアンドロゲンの検出のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20220609BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20220609BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20220609BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20220609BHJP
   G01N 33/74 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
G01N27/62 V
G01N27/62 X
G01N30/72 C
G01N30/04 P
G01N30/88 E
G01N33/74
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560857
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2020028513
(87)【国際公開番号】W WO2020214811
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/834,738
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ホルムキスト, ブレット
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー, ドナルド ウォルト
(72)【発明者】
【氏名】グラント, ラッセル フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】カーティン, ウィリアム
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA09
2G041DA18
2G041EA04
2G041EA12
2G041FA10
2G041FA23
2G041GA09
2G041HA01
2G041LA09
2G045AA40
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB11
2G045CB16
2G045CB30
2G045DA54
2G045FA36
2G045FB06
(57)【要約】
開示されるのは、サンプル中の11-オキソアンドロゲン等の内因性バイオマーカーの分析に液体クロマトグラフィ/タンデム質量分析(LC-MS/MS)を使用するための方法、システム、およびコンピュータプログラム製品である。11-オキソアンドロゲンは、11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)、11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)、または11-ケトテストステロン(11KT)の少なくとも1つを含んでもよい。より詳細には、サンプル中の11-オキソ-アンドロゲンの量を検出かつ定量するための方法、システム、およびコンピュータプログラム製品が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの存在または量をタンデム質量分析によって決定するための方法であって:
(a)被験体からサンプルを得ることと;
(b)必要に応じて、安定な同位体標識された11-オキソアンドロゲンを内部標準として前記サンプルに加えることと;
(c)液体クロマトグラフィを実行して前記サンプルを精製することと;
(d)前記11-オキソアンドロゲンをタンデム質量分析によって測定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記サンプルは生体サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体サンプルは、血液、血漿、血清、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、器官、毛髪、筋肉、または他の組織サンプルの1つを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンデム質量分析は、(i)前記11-オキソアンドロゲンの前駆イオンを生成する工程と;(ii)前記前駆イオンの1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを生成する工程と;(ii)工程(i)において生成された前記前駆イオン、および/または工程(ii)において生成された少なくとも1つもしくはそれを超える前記フラグメントイオン、あるいは双方の存在または量を検出して、検出された前記イオンを前記サンプル中の前記11-オキソアンドロゲンの存在または量に関連付ける工程とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体クロマトグラフィは高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体クロマトグラフィは高乱流液体クロマトグラフィ(HTLC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記11-オキソアンドロゲンは、11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)、11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)、または11-ケトテストステロン(11KT)の少なくとも1つを含んでもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
質量分析の前に少なくとも1つの精製工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記精製工程は液-液抽出(LLE)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記タンデム質量分析は、陽イオン大気圧化学イオン化(APCI)モードを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
既知量の各精製11-オキソアンドロゲンをチャコール処理血清中にスパイクして較正曲線を生成することによって、前記サンプル中の前記11-オキソアンドロゲンの逆算量を求めることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
各バッチにおいて、二重のセットのチャコール処理キャリブレータを分析することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
既知量の前記少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンを加えて、約3.0~1,000ng/dLの範囲内である、目的の精製された分析物の最終濃度を生じさせる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記タンデム質量分析は、前記少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンについての複数の前駆体-フラグメント遷移を測定するように実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記タンデム質量分析は、前記少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを選択することと、定性的標準としての1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンを選択することとを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約303.401であり、前記定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.100であるフラグメントイオンを含み;そして前記1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.100および/または約97.100であるフラグメントイオンを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
-11β-ヒドロキシアンドロステンジオンを内部標準として加えることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記タンデム質量分析は、質量電荷比(m/z)が約308.400である内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約122.200であるフラグメントイオンを生成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ケトテストステロン(11KT)である、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約303.400であり、前記定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.200であるフラグメントイオンを含み;そして前記1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.200および/または約91.200であるフラグメントイオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
-11β-ケトテストステロンを内部標準として加えることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記タンデム質量分析は、質量電荷比(m/z)が約306.400である内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約121.200であるフラグメントイオンを生成する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)である、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約305.400であり;前記定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.100であるフラグメントイオンを含み;そして前記1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.000および97.000であるフラグメントイオンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
-11β-ヒドロキシテストステロンを内部標準として加えることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記質量分析は、質量電荷比(m/z)が約309.200m/zである内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約121.100であるフラグメントイオンを生成する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
3.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11OHAの検出、および/または1.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11OHTの検出、および/または1.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11KTの検出を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
試験サンプル中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するためのシステムであって:
1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを含有すると疑われる試験サンプルを提供するためのステーションと;
前記1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを、前記サンプル中の他の成分から部分的に精製するためのステーションと;
1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを、前記サンプル中の他の成分からクロマトグラフィにより分離するためのステーションと;
クロマトグラフィにより分離された前記1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを質量分析によって分析して、前記試験サンプル中の前記1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンの存在または量を決定するためのステーションと
を含む、システム。
【請求項30】
前記少なくとも1つの目的のバイオマーカーについての少なくとも1つの内部標準を加えるためのステーションをさらに含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを部分的に精製するための前記ステーションは、液-液抽出、固相抽出、またはタンパク質沈殿の少なくとも1つを実行するためのステーションを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンをクロマトグラフィにより分離するための前記ステーションは、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を実行するためのステーションを含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項33】
クロマトグラフィにより分離された1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを分析するための前記ステーションは、タンデム質量分析計を含む、請求項29に記載のシステム。
【請求項34】
前記ステーションの少なくとも1つがコンピュータによって制御される、請求項29に記載のシステム。
【請求項35】
1つもしくはそれを超えるコンピュータに、サンプル中の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの存在または量を測定するための動作を実行させるように構成された命令を含む、非一過性機械可読記憶媒体で有形に具現化されるコンピュータプログラム製品であって、前記動作は、以下:
(a)被験体からサンプルを得る工程と;
(b)必要に応じて、安定な同位体標識された11-オキソアンドロゲンを内部標準として前記サンプルに加える工程と;
(c)液体クロマトグラフィを実行する工程と;
(d)前記11-オキソアンドロゲンをタンデム質量分析によって測定する工程と
の少なくとも1つを含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年4月16日出願の米国仮特許出願第62/834,738号明細書、発明の名称「Methods and Systems for the Detection of 11-OXO-Andrgens by LC-MS/MS」の優先権を主張する。米国仮特許出願第62/834,738号明細書の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示の主題は、11-オキソアンドロゲンの分析のための方法およびシステムに関する。特定の実施形態において、11-オキソアンドロゲンは、ヒト被験体にとって内因性であり、測定値が臨床診断に使用され得る。
【背景技術】
【0003】
11-酸素化(11-オキソ)アンドロゲンは、副腎起源のアンドロゲン産生についての新たなバイオマーカーである。11-オキソ-アンドロゲンとして、11-ヒドロキシΔアンドロステンジオン(11OHA)、11-ケトテストステロン(11KT)、および11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)が挙げられる。11-オキソアンドロゲンは、過剰なアンドロゲンレベルに関連する種々の状態において役割を果たし得る(Bloem et al.,Molecules,2013,18,13228-13244)。例えば、11-オキソアンドロゲンは、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)(O’Reilly et al.,2017,J.Clin.Endocrinol.Metab.,102:840-848)、21-ヒドロキシラーゼ欠損症(Turcu et al.,2017,J.Clin.Endocrinol.Metab.)、および去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)(Pretorius et al.,July 21,2016,PLOS ONE)と関連し得る。
【0004】
ステロイド骨格の位置11に酸素を有するアンドロゲンの存在がかなりの間知られていたが、当該アンドロゲンの臨床的有用性および有病率が、最近になってようやく明らかになってきた。例えば、11KTは、PCOS患者において過剰レベルで存在することが示されており、そしてPCOSについて、テストステロンまたはΔアンドロステンジオンよりも良好なバイオマーカーであるようである。また、先天性(congenitial)副腎過形成(CAH)を引き起こす酵素欠損(21-ヒドロキシラーゼ欠損症)は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の過剰産生によって駆動される過剰な副腎アンドロゲン産生を引き起こす。主要な、活性がある副腎由来アンドロゲンは、11-オキソアンドロゲンである。副腎アンドロゲンの除去は、CRPCが挙げられる過剰なアンドロゲンに関連する状態の処置に有益であった。したがって、11-オキソアンドロゲンは、とりわけ小児および女性において、CAHの制御をモニタリングするのに重要であり得る。
【0005】
超高速コンバージェンスクロマトグラフィタンデム質量分析法(UPC-MS/MS)によるアンドロゲン性ステロイドの測定方法(Quanson et al.,2016,J.Chromatog.B,1031:131-138;O’Reilly et al.,2017,J.Clin.Endocrinol.Metab.,102:840-848;Pretorius et al.,July 21,2016,PLOS ONE)、およびLC-MS/MS(Turcu et al.,2017,J.Clin.Endocrinol.Metab.、2017年5月1日にオンラインで入手可能;Turcu et al.,2015,J.Clin.Endocrinol.Metab.,100:2283-2290;Turcu et al.,2016,Eur.J.Endocrinol,174:601-609)が、以前に記載されている。
しかしながら、臨床診断および/または予後のための11-オキソアンドロゲンの正確な測定値を提供するのに商業的に有用なアッセイが必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Quansonら、J.Chromatog.B(2016)1031:131~138
【非特許文献2】O’Reillyら、J.Clin.Endocrinol.Metab.(2017)102:840~848
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
特定の実施形態において、開示されるのは、サンプル中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するための方法であって:少なくとも1つの目的のバイオマーカーを含有すると考えられるサンプルを提供することと;少なくとも1つの目的のバイオマーカーを、サンプル中の他の成分からクロマトグラフィにより分離することと;クロマトグラフィにより分離された少なくとも1つの目的のバイオマーカーを質量分析によって分析して、サンプル中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定することとを含む方法である。
【0008】
一部の実施形態において、目的のバイオマーカーは、11-オキソアンドロゲンである。一部の実施形態において、本開示の主題は、特定の11-オキソアンドロゲンの定量的分析のための方法およびシステムを提供する。特定の実施形態において、11-オキソアンドロゲンは、11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)、11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)、または11-ケトテストステロン(11KT)の少なくとも1つを含んでもよい。一実施形態において、本発明の方法およびシステムは、誘導体化プロセスを必要とせずに、そのようなホルモンの測定を可能にする。
【0009】
例えば、一実施形態において、開示されるのは、サンプル中の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの存在または量をタンデム質量分析によって決定するための方法である。本方法は、(a)被験体からサンプルを得る工程と;(b)必要に応じて、安定な同位体標識された11-オキソアンドロゲンを内部標準としてサンプルに加える工程と;(c)HPLCを実行する工程と;(d)11-オキソアンドロゲン(標識されているものと標識されていないものの双方)をタンデム質量分析によって測定する工程とのいずれか1つを含んでもよい。一実施形態において、タンデム質量分析は、(i)11-オキソアンドロゲンの前駆イオンを生成する工程と;(ii)前駆イオンの1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを生成する工程と;(iii)工程(i)において生成された前駆イオン、および/または工程(ii)において生成された少なくとも1つもしくはそれを超えるフラグメントイオン、あるいは双方の存在または量を検出して、検出されたイオンをサンプル中の11-オキソアンドロゲンの存在または量に関連付ける工程とを含んでもよい。一実施形態において、タンデム質量分析は、HPLCに繋がれる。HPLC工程の直後に、タンデム質量分析が行われ得る(すなわちLC-MS/MS)。一部の実施形態において、HPLCは、高乱流液体クロマトグラフィ(HTLC)である。一部の実施形態において、本方法はコンバージェンスクロマトグラフィを含まない。一部の実施形態において、液-液抽出を使用して、HPLCの前に、11-オキソ-アンドロゲンを部分的に精製する。一部の実施形態において、各バッチにおいて、二重のセットのチャコール処理(charcoal stripped)キャリブレータを分析する。
【0010】
本開示の別の態様が、本方法を実行するためのシステムである。一部の実施形態において、システムは、1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを含有すると疑われる試験サンプルを提供するためのステーションと;1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを、サンプル中の他の成分から部分的に精製するためのステーションと;1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを、サンプル中の他の成分からクロマトグラフィにより分離するためのステーションと;クロマトグラフィにより分離された1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを質量分析によって分析して、試験サンプル中の1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンの存在または量を決定するためのステーションとを含む。
【0011】
本開示の更なる態様が、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサに、サンプル中の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの存在または量を測定するための動作を実行させるように構成された命令を含む、非一過性機械可読記憶媒体で有形に(tangibly)具現化されるコンピュータプログラム製品であって、この動作は、(a)被験体からサンプルを得る工程と;(b)必要に応じて、安定な同位体標識された11-オキソアンドロゲンを内部標準としてサンプルに加える工程と;(c)液-液抽出を実行する工程と;(d)11-オキソアンドロゲンをタンデム質量分析によって測定する工程との少なくとも1つを含む。
【0012】
本明細書中で上述した本開示の特定の目的は、本明細書中で以下に説明する添付の図面および実施例と併せて、説明が進むにつれてさらに明らかになるであろう。
【0013】
このように本発明を一般的な用語で説明してきたが、ここで、必ずしも一定の縮尺で描かれていない非限定的な添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本開示の一実施形態に従う11-オキソアンドロゲンの定量分析方法のフローチャートを示す。
【0015】
図2図2は、本開示の一実施形態に従う11-オキソアンドロゲンの定量分析のためのシステムを示す。
【0016】
図3図3は、本開示の一実施形態に従う、それぞれ20ng/dLアンドロゲンでの11-ケトテストステロン、11-ヒドロキシ-Δアンドロステンジオン、および11-ヒドロキシテストステロンの質量クロマトグラムを示す。
【0017】
図4図4は、本開示の一実施形態に従う11-ケトテストステロン、11-ヒドロキシテストステロン、および11-ヒドロキシΔアンドロステンジオンについての方法相関を示す。
【0018】
図5図5は、本開示の一実施形態に従う、男性および女性における11-ケトテストステロン(11KT)、11-ヒドロキシテストステロン(11OHA)、および11-ヒドロキシΔアンドロステンジオン(11OHT)についての基準範囲(reference interval)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで、本開示の主題は、本開示の主題の全てではないが一部の実施形態が示されている添付の説明および図面を参照して、以下でより完全に説明される。本開示の主題は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書中に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない;むしろ、これらの実施形態は、適用可能な法的要件を本開示が満たすように実現される。同様の番号は、全体を通して、同様の要素を指す。
【0020】
前述の説明および関連する図面に提示される教示の利益を有する、本明細書中に記載される本開示の主題の多くの修正および他の実施形態が、本開示の主題が関係する技術分野の当業者に思い浮かぶであろう。したがって、本開示の主題は、開示される特定の実施形態に限定されるべきではないこと、そして修正および他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解すべきである。具体的な用語が本明細書中で使用されているが、一般的かつ説明的な意味でしか使用されず、限定の目的では使用されない。
【0021】
定義
以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、本開示の主題の説明を容易にするために示される。他の定義が、本明細書の全体を通して見出される。別段の定義がされない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、この本明細書に記載の主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0022】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるにも拘わらず、具体的な実施例に示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、あらゆる数値が、本質的に、それぞれの試験測定値において見出される標準偏差に必然的に由来するある程度の誤差を含有する。さらに、本明細書中で開示される全ての範囲は、その中に包含されるありとあらゆる部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」の明示される範囲は、最小値1と最大値10との間(およびそれらを含む)のありとあらゆる部分範囲を含むとみなされるべきである;すなわち、1つもしくはそれを超える最小値、例えば1~6.1で始まって、10またはそれ未満の最大値、例えば5.5~10で終わる全ての部分範囲である。加えて、「本明細書に組み込まれる」と言及されるあらゆる参照は、その全体が組み込まれると理解されるべきである。
【0023】
用語「a」、「an」、および「the」は、特許請求の範囲を含む本出願で使用される場合、「1つもしくはそれを超える」を指す。ゆえに、例えば、「細胞」への言及は、文脈上明らかに反対の解釈(例えば複数の細胞)でない限り、複数のそのような細胞を含む等である。
【0024】
用語「精度(accuracy)」は、試験結果と、絶対的および/または相対的なバイアスとして表される許容される基準値との間の一致の近さを指す。
【0025】
用語「分析物」は、測定もしくは検出されている化合物および/または測定可能な量の名前で表される成分を指す。
【0026】
用語「分析測定範囲」(AMR)は、通常のアッセイプロセスの一部ではないいかなる希釈も、濃縮も、他の前処理もなしに、検体について方法が直接測定することができる分析物の値の範囲を指す。
【0027】
用語「分析的干渉」は、検出試薬またはシグナルそれ自体と特異的または非特異的に反応する物質の存在に起因する分析物の見かけの濃度、活性、または強度のアーチファクト的な増減を指す。
【0028】
用語「生体サンプル」は、動物、細胞培養物、および器官培養物が挙げられるがこれらに限定されない生物学的供給源から得られるサンプルを指す。適切なサンプルとして、血液、血漿、血清、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、器官、毛髪、筋肉、または他の組織サンプルが挙げられる。
【0029】
用語「バイオマーカー」は、生物の生理学的状態に関する生体情報を提供し得るあらゆる生体分子である。特定の実施形態において、バイオマーカーの有無は、情報を与え得る。他の実施形態において、バイオマーカーのレベルは、情報を与え得る。
【0030】
用語「特異性」は、サンプル内で潜在的に見出される物質とともに提示された場合に、目的の分析物を識別することができる測定手順の能力を指す。一実施形態において、「特異性」は、目的の分析物の不在下での、目的の分析物以外の物質に対する交差反応性パーセント(%)および/または応答%として表される。
【0031】
用語「選択性」は、サンプル内で潜在的に見出される物質の寄与なしに、目的の分析物を正確に測定することができる測定手順の能力を指す。一実施形態において、「選択性」は、目的の分析物の存在下での、目的の分析物以外の物質に対する交差反応性%および/または応答%として表される。
【0032】
本明細書中で使用される「被験体」は、動物を含み得る。ゆえに、一部の実施形態において、サンプルまたは生体サンプルは、イヌ、ネコ、ウマ、ラット、およびサルが挙げられるがこれらに限定されない哺乳動物から得られる。一部の実施形態において、サンプルまたは生体サンプルは、ヒト被験体から得られる。一部の実施形態において、被験体は、患者、すなわち、疾患または状態の診断、予後、または処置のために臨床的状況に自身を提示する、生きている人である。一部の実施形態において、試験サンプルは、生体サンプルではないが、例えば合成ステロイドの製造または実験室分析中に得られる非生体サンプルを含み、これを分析して、組成、ならびに/または製造プロセスおよび/もしくは分析プロセスの収率を決定することができる。
【0033】
用語「精製する」もしくは「分離する」、またはそれらの派生語は、サンプルマトリックス由来の目的の分析物(1つもしくはそれを超える)以外の全ての物質の除去を必ずしも指すわけではない。代わりに、一部の実施形態において、用語「精製する」または「分離する」は、サンプルマトリックス内に存在する1つもしくはそれを超える他の成分に対して、1つもしくはそれを超える目的の分析物の量を富化する手順を指す。一部の実施形態において、「精製」または「分離」手順を使用して、分析物の検出に干渉し得るサンプルの1つもしくはそれを超える成分、例えば、質量分析による検体の検出に干渉し得る1つもしくはそれを超える成分を除去することができる。
【0034】
本明細書中で使用される「誘導体化すること」は、2つの分子を反応させて新しい分子を形成することを意味する。誘導体化剤として、イソチオシアネート基、ダンシル基、ジニトロフルオロフェニル基、ニトロフェノキシカルボニル基、および/またはフタルアルデヒド基が挙げられ得る。
【0035】
本明細書中で使用される用語「クロマトグラフィ」は、液体または気体によって運ばれる化学混合物が、静止した液体または固相の周りまたは上を流れるにつれての、化学実体の差次的分布の結果として、構成要素に分離されるプロセスを指す。
【0036】
用語「ブランク限界」(LOB)は、ブランクサンプルについて(述べられた確率で)おそらく観察される最も高い測定結果を指す。LOBは、典型的に、ブランク測定値の平均プラス1.645×SD(または2×SD)として表される。
【0037】
用語「検出限界」(LOD)は、(述べられた確率で)検出することができるサンプル中の分析物の最低量を指す。LODは、典型的に、低サンプル測定値のLOBプラス1.645×SD(または2×SD)として表される。
【0038】
用語「定量下限」(LLOQ)は、述べられた許容され得る正確度(precision)および精度で定量的に求めることができるサンプル中の分析物の最低量を指す。
【0039】
用語「定量上限」(ULOQ)は、希釈せずに定量的に求めることができるサンプル中の分析物の最大量を指す。
【0040】
用語「試行内不正確度(Intra-run Imprecision)」は、同じ測定条件(同じ分析試行)下で実行された同じ測定量の逐次的な測定の結果間の一致の近さを指す。
【0041】
用語「試行間不正確度(Inter-run Imprecision)」は、規定される条件(異なる分析試行および/またはオペレータ、実験室、機器、試薬ロット、キャリブレータ等)下で得られる独立した試験結果間の一致の近さを指す。
【0042】
用語「最大希釈/濃度」は、報告可能な数値結果を得るために実行され得る最大希釈および/または濃度についての確立された実験室仕様を指す。
【0043】
用語「基準範囲」は、実験室によってサービスされる集団に用いられる場合に、基準群と同様の特徴を有する被験体の大部分を正確に含み、かつ他を除外する範囲を指す。
【0044】
本明細書中で使用される「液体クロマトグラフィ」(LC)は、流体が、微細に分割された物質のカラムを通って、または毛細管通路を通って均一に浸透するときの、流体溶液の1つもしくはそれを超える成分の選択的遅延のプロセスを指す。遅延は、この流体が固定相(1つもしくはそれを超える)に対して移動するときの、1つもしくはそれを超える固定相とバルク流体(すなわち移動相)との間での混合物の成分の分配に由来する。「液体クロマトグラフィ」として、逆相液体クロマトグラフィ(RPLC)、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、および高乱流液体クロマトグラフィ(HTLC)が挙げられる。本明細書中で使用される用語「HPLC」または「高速液体クロマトグラフィ」は、移動相を圧力下で固定相、典型的には高密度に充填されたカラムに押し通すことによって分離の程度が増大する液体クロマトグラフィを指す。
【0045】
クロマトグラフィカラムは、典型的に、化学部分の分離(すなわち分画)を促進する媒体(すなわち充填材料)を含む。媒体として、微小粒子が挙げられ得る。粒子は、種々の化学部分と相互作用して、本明細書中の実験において定量されたバイオマーカー分析物等の化学部分の分離を促進する結合表面を含んでもよい。適切な一結合表面は、アルキル結合表面等の疎水性結合表面である。アルキル結合表面は、C-4、C-8、またはC-18結合アルキル基、好ましくはC-18結合基を含んでもよい。クロマトグラフィカラムは、サンプルを受け入れるための入口ポートと、分画されたサンプルを含む流出液を排出するための出口ポートとを含む。この方法では、サンプル(または予備精製サンプル)を入口ポートにてカラムに適用して、溶媒または溶媒混合液で溶出して、出口ポートにて排出することができる。目的の異なる分析物を溶出するために、異なる溶媒モードを選択することができる。例えば、液体クロマトグラフィは、勾配モード、イソクラティックモード、または多型(polytyptic)(すなわち混合)モードを使用して実行することができる。
【0046】
本明細書中で使用される「高乱流液体クロマトグラフィ(high turbulence liquid chromatography)」もしくは「HTLC」、または「乱流液体クロマトグラフィ」もしくは「TFLC」分析は、カラムを通るサンプルの乱流が、サンプルからの目的の分析物の分離の基礎になるカラム充填に依存する。このようなカラムでは、分離は拡散プロセスである。乱流、例えばHTLCカラムおよびHTLC法によってもたらされる乱流は、質量輸送速度を高めて、もたらされる分離特性を向上させることができる。例えば、典型的な高乱流または乱流液体クロマトグラフィシステムでは、大きな(例えば>25ミクロン)粒子が充填された狭い(例えば、内径0.5mm~2mm、長さ20mm~50mm)カラム上にサンプルを直接注入する場合がある。カラムに流速(例えば毎分3~500mL)を与えると、カラムの幅が比較的狭いため、移動相の速度が上がる。カラム内に存在する大きな粒子は、速度の上昇が背圧を引き起こすのを妨げ、かつ粒子間の振動渦の形成を促進することによって、カラム内に乱流を生じさせることができる。
【0047】
高乱流液体クロマトグラフィでは、分析物分子は粒子に迅速に結合することができ、そして典型的にはカラムの全長に沿って広がることも拡散することもない。縦方向の拡散の軽減は、典型的には、サンプルマトリックスからの目的の分析物のより良好かつより迅速な分離を提供する。さらに、カラム内の乱流は、分子が粒子を通過する際に典型的に生じる分子上の摩擦を低減する。例えば、従来のHPLCでは、粒子の最も近くを移動する分子は、粒子間の経路の中心を通って流れる分子よりもゆっくりとカラムに沿って移動する。この流速の差により、分析物分子はカラムの全長に沿って広がる。乱流がカラム中に導入されると、粒子由来の分子に対する摩擦は無視でき、縦方向の拡散を低減する。
【0048】
本明細書中で使用される用語「分析カラム」は、試験サンプルマトリックスの成分の分離を達成するのに十分なクロマトグラフィプレートを有するクロマトグラフィカラムを指す。好ましくは、分析カラムから溶出される成分は、目的の分析物(1つもしくはそれを超える)の存在または量を決定することができるように分離される。一部の実施形態において、分析カラムは、平均直径が約5μmである粒子を含む。一部の実施形態において、分析カラムは、官能化シリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリシックシリカ固定相、例えばフェニル-ヘキシル官能化分析カラムである。
【0049】
分析カラムは、「抽出カラム」と区別することができ、「抽出カラム」は典型的に、保持された物質を保持されていない物質から分離または抽出して、更なる精製または分析用の「精製」サンプルを得るために使用される。一部の実施形態において、抽出カラムは、官能化シリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリシックシリカ固定相、例えばPoroshell SBC-18カラムである。
【0050】
本明細書中で使用される用語「質量分析」または「MS」は、一般に、質量電荷比または「m/z」に基づいて、イオンをフィルタリング、検出、かつ測定する方法を指す。MS技術では、1つもしくはそれを超える目的の分子がイオン化されてから、イオンが質量分析計に導入され、そこで、電場の組合せにより、イオンは、質量(「m」)および電荷(「z」)に依存的な空間内の経路を辿る。
【0051】
特定の実施形態において、質量分析計は、「四重極」システムを使用する。「四重極」または「四重極イオントラップ」質量分析計では、発振無線周波数(RF)場内のイオンは、電極間に印加される直流(DC)電位、RFシグナルの振幅、およびm/zに比例する力を受ける。電圧および振幅は、特定のm/zを有するイオンのみが四重極の全長を移動する一方、他の全てのイオンが偏向されるように選択され得る。ゆえに、四重極機器は、機器中に注入されたイオンの「質量フィルタ」および「質量検出器」の双方として機能し得る。
【0052】
特定の実施形態において、「タンデム質量分析」(MS/MS)が使用される。例えば、米国特許第6,107,623号明細書、発明の名称「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)参照。タンデム質量分析(MS/MS)は、一群の質量分析法に与えられる名称であり、それによれば、サンプルから生成される「親または前駆」イオンがフラグメント化されて、1つもしくはそれを超える「フラグメントまたはプロダクト」イオンが生じ、それらが続いて第2のMS手順によって質量分析される。MS/MS方法は、複雑な混合物、とりわけ生体サンプルの分析に有用である。その理由の一部は、MS/MSの選択性が、分析前の広範なサンプル浄化の必要性を最小限に抑えることができるからである。MS/MS法の一例において、前駆イオンがサンプルから生成されて、第1の質量フィルタ(四重極1またはQ1)を通過して、特定の質量電荷比を有するイオンが選択される。次いで、これらのイオンは、典型的には第2の四重極(Q2)内の中性ガス分子との衝突によってフラグメント化されて、第3の四重極(Q3)内で選択されるプロダクト(フラグメント)イオンが生じる。その質量スペクトルは、電子増倍管検出器によって記録される。そのように生成されたプロダクトイオンスペクトルは、前駆イオンの構造を示し、2段階の質量フィルタリングは、複雑な混合物の従来の質量スペクトル内に存在する干渉種由来のイオンを除去することができる。
【0053】
本明細書中で使用される用語「イオン化」および「イオン化すること」は、1つもしくはそれを超える電子単位に等しい正味の電荷を有する分析物イオンを生成するプロセスを指す。陰イオンは、1つもしくはそれを超える電子単位の正味の負電荷を有するイオンであり、陽イオンは、1つもしくはそれを超える電子単位の正味の正電荷を有するイオンである。
【0054】
本明細書中で使用される用語「電子イオン化」は、気体または気相中の目的の分析物が電子の流れと相互作用する方法を指す。電子が分析物と衝突すると、分析物イオンが生じ、次いでこれを質量分析技術に供することができる。本明細書中で使用される用語「化学イオン化」は、試薬ガス(例えばアンモニア)が電子衝突を受けて、試薬ガスイオンと分析物分子との相互作用によって分析物イオンが形成される方法を指す。本明細書中で使用される用語「電場脱離」は、不揮発性試験サンプルをイオン化表面上に置いて、強い電場を使用して分析物イオンを生成する方法を指す。
【0055】
本明細書中で使用される用語「脱離」は、表面からの分析物の除去、および/または分析物の、気体相中への進入を指す。
【0056】
本明細書中で使用される用語「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」または「MALDI」は、不揮発性サンプルをレーザー照射に曝露し、そして光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、およびクラスタ崩壊を含む種々のイオン化経路によってサンプル中の分析物を脱離させ、かつイオン化する方法を指す。MALDIについて、サンプルはエネルギー吸収マトリックスと混合されて、分析物分子の脱離が促進される。
【0057】
本明細書中で使用される用語「表面増強レーザー脱離イオン化」または「SELDI」は、不揮発性サンプルをレーザー照射に曝露し、そして光イオン化、プロトン化、脱プロトン化、およびクラスタ崩壊を含む種々のイオン化経路によってサンプル中の分析物を脱離させ、かつイオン化する別の方法を指す。SELDIについて、サンプルは典型的に、1つもしくはそれを超える目的の分析物を優先的に保持する表面に結合される。また、MALDIにおけるように、このプロセスは、エネルギー吸収材料を使用してイオン化を促進してもよい。
【0058】
本明細書中で使用される用語「エレクトロスプレーイオン化」または「ESI」は、短い長さの、端部に高い正または負の電位が印加されるキャピラリーチューブに沿って溶液を通過させる方法を指す。チューブの端部に到達すると、溶液は、溶媒蒸気中の溶液の非常に小さな液滴のジェットまたはスプレーに気化(噴霧)され得る。液滴のこのミストは、凝縮を防止し、かつ溶媒を蒸発させるために僅かに加熱された蒸発チャンバを通って流れることができる。液滴が小さくなるにつれて、電気表面電荷密度は、同様の電荷間の自然な反発力によりイオンおよび中性分子が放出されるような時間まで、増大する。
【0059】
本明細書中で使用される用語「大気圧化学イオン化」または「APCI」は、ESIと同様の質量分析法を指す。しかしながら、APCIは、大気圧にてプラズマ内で起こるイオン-分子反応によってイオンを生成する。プラズマは、スプレーキャピラリと対電極との間の放電によって維持される。次いで、イオンは典型的に、1セットの差動ポンプ式スキマーステージを使用して、質量分析器中に抽出される。乾燥かつ予熱されたNガスの向流を使用して、溶媒の除去を向上させることができる。APCIにおける気相イオン化は、極性があまりない種の分析について、ESIよりも効果的であり得る。
【0060】
本明細書中で使用される用語「大気圧光イオン化」(「APPI」)は、分子Mの光イオン化の機構が、分子M+を形成する光子吸収および電子放出である質量分析の形態を指す。光子エネルギーは典型的に、イオン化電位のすぐ上にあるので、分子イオンは解離の影響を受けにくい。多くの場合、クロマトグラフィを必要とせずにサンプルを分析することが可能であるので、かなりの時間および費用を節約することができる。水蒸気またはプロトン性溶媒の存在下では、分子イオンはHを抽出してMH+を形成し得る。これは、Mが高いプロトン親和性を有する場合に起こる傾向がある。定量精度は、M+とMH+の和が一定であるため、影響されない。プロトン性溶媒中の薬剤化合物は、通常、MH+として観察されるが、ナフタレンまたはテストステロン等の非極性化合物は、通常、M+を形成する(例えば、Robb et al.,2000,Anal.Chem.72(15):3653-3659参照)。
【0061】
本明細書中で使用される用語「誘導結合プラズマ」は、サンプルが、部分的にイオン化されたガスと、ほとんどの元素を原子化(atomize)かつイオン化するほど十分に高い温度にて相互作用する方法を指す。
【0062】
本明細書中で使用される用語「オンライン」は、システムの種々の構成要素が動作可能に接続されており、そして一部の実施形態において、互いに流体連通しているシステム中に、試験サンプルが配置される、例えば注入されるように実行される精製工程または分離工程を指す。
【0063】
用語「オンライン」とは対照的に、用語「オフライン」は、前および/または後の精製工程もしくは分離工程および/または分析工程とは別個に実施される精製手順、分離手順、または抽出手順を指す。そのようなオフライン手順では、目的の分析物は典型的に、例えば抽出カラムまたは液/液抽出によって、サンプルマトリックス中の他の成分から分離されてから、別のクロマトグラフィシステムまたは検出器システムへのその後の導入のために収集される。オフライン手順は典型的に、オペレータの側での手動介入を必要とする。
【0064】
本明細書中で使用される用語「イムノアッセイ」(IA)は、抗体への物質の結合または結合の阻害を定量することによって、目的の分析物の量を測定する方法を指す。抗体への物質(例えば抗原)の結合量を検出するのに酵素が使用される場合、アッセイは、酵素結合免疫アッセイ(ELISA)である。本明細書中で使用される用語「ラジオイムノアッセイ」(RIA)は、抗体への放射標識(radiolabled)物質の結合または結合の阻害を定量することによって、目的の分析物の量を測定する方法を指す。
【0065】
本明細書中で使用される用語「溶血した」は、ヘモグロビンおよび他の細胞内容物の、血漿または血清中への放出をもたらす赤血球膜の破裂を指し、用語「脂血症の(lipemic)」は、血液中の過剰な脂肪または脂質を指す。
【0066】
LC-MSによる11-オキソアンドロゲンの分析のための方法およびシステム
本開示の実施形態は、内因性バイオマーカーとしての11-オキソアンドロゲンの定量的分析のための方法およびシステムを含む。これらのバイオマーカーの測定値は、臨床診断に使用することができる。一実施形態において、本開示の方法およびシステムは、誘導体化プロセスを必要とせずに、そのようなホルモンの測定を可能にする。特定の実施形態において、本開示の方法およびシステムによる分析に適した試験サンプルは、1つもしくはそれを超える目的の標的分析物を含有し得るあらゆる液体サンプルを含み得る。一実施形態において、バイオマーカーは被験体にとって内因性である。例えば、一部の実施形態において、試験サンプルは生体サンプルを含む。本発明は、種々の方法で具現化され得る。
【0067】
方法
一実施形態において、本開示は、サンプル中の少なくとも1つの目的の11-オキソアンドロゲンの存在または量を決定するための方法であって、少なくとも1つの目的の11-オキソアンドロゲンバイオマーカーを含有すると考えられるサンプルを提供する工程と;少なくとも1つの目的の11-オキソアンドロゲンバイオマーカーを、サンプル中の他の成分からクロマトグラフィにより分離する工程と;クロマトグラフィにより分離された少なくとも1つの目的の11-オキソアンドロゲンバイオマーカーを質量分析によって分析して、サンプル中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定する工程とを含む方法を含む。一部の実施形態において、生体サンプルは、ヒトまたは別の哺乳動物から得られる生体サンプルである。
【0068】
特定の実施形態において、11-オキソアンドロゲンは、11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)、11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)、または11-ケトテストステロン(11KT)の少なくとも1つを含んでもよい。本明細書中で使用される11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)は、11-ヒドロキシΔアンドロステンジオンを指す。
【0069】
例えば、一実施形態において、開示されるのは、生体サンプル中の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの存在または量をタンデム質量分析によって決定するための方法である。本方法は、(a)被験体から生体サンプルを得る工程と;(b)必要に応じて、安定な同位体標識された11-オキソアンドロゲンを内部標準として生体サンプルに加える工程と;(c)必要に応じて、液-液抽出を行う工程と;(d)HPLCを実行する工程と;(e)11-オキソアンドロゲン(標識されているものと標識されていないものの双方)を質量分析によって測定する工程のいずれか1つを含み得る。一実施形態において、質量分析はタンデム質量分析(MS/MS)である。例えば、一実施形態において、タンデムMS/MS分析は、トリプル四重極タンデム質量分析計の使用を含む。
【0070】
一実施形態において、タンデム質量分析は、(i)11-オキソアンドロゲンの前駆イオンを生成する工程と;(ii)前駆イオンの1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを生成する工程と;(iii)工程(i)において生成された前駆イオン、および/または工程(ii)において生成された少なくとも1つもしくはそれを超えるフラグメントイオン、あるいは双方の存在または量を検出して、検出されたイオンをサンプル中の11-オキソアンドロゲンの存在または量に関連付ける工程とを含んでもよい。特定の実施形態において、タンデム質量分析は、陽イオン大気圧化学イオン化(APCI)モードを使用する。また、特定の実施形態において、目的の分析物および必要に応じた内部標準の定量化は、選択された反応モニタリングモード(SRM)で行われる。
【0071】
一実施形態において、タンデム質量分析は、HPLCに繋がれる。HPLC工程の直後に、タンデム質量分析が行われ得る(すなわちLC-MS/MS)。一部の実施形態において、HPLCは、高乱流液体クロマトグラフィ(HTLC)である。特定の実施形態において、サンプルは、コンバージェンスクロマトグラフィに供されない。一部の実施形態において、LCは、超高速液体クロマトグラフィ(UPLC)ではない。
【0072】
一実施形態において、LC-MS/MSは、オンラインで実行される。例えば、本明細書中で開示されるように、本方法の工程のいずれか1つが、コンピュータによって制御されてもよい。一部の実施形態において、コンピュータは、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサ、および/または命令(例えばソフトウェアプログラム)を含有する非一過性コンピュータ可読記憶媒体を含む。ゆえに、本明細書中で開示されるのはまた、1つもしくはそれを超えるコンピュータ上で実行されると、1つもしくはそれを超えるコンピュータに、本明細書中で開示される方法の工程の少なくとも1つを含む動作を実行させる命令を含有する非一過性コンピュータ可読記憶媒体である。
【0073】
本方法は、特定の実施形態において、複数のm/z前駆体-フラグメント遷移の測定を含んでもよい。例えば、特定の実施形態において、そして本明細書中でより詳細に説明されるように、第1のフラグメントが、目的の11-オキソアンドロゲンの定量化のために選択されるが、追加のフラグメント(1つもしくはそれを超える)が、定性的標準として選択されてもよい。
【0074】
例えば、11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)について、105.100および/または97.100m/zのクオリファイアフラグメントピークを伴う、303.401m/zの前駆体から、121.150、121.100、121.050m/zのフラグメント(エコーピーク)への遷移が測定され得る。または、121.100のm/zフラグメントが測定され得る。内部標準-11β-ヒドロキシアンドロステンジオンについて、前駆イオンは308.400m/zであり得、フラグメントは122.200m/zであり得る。内部標準クオリファイアピークについて、前駆体は307.400m/zであり得、フラグメントは109.200m/zであり得る。
【0075】
11-ケトテストステロン(11KT)について、105.200および/または91.200m/zのクオリファイアフラグメントピークを伴う、303.400m/zの前駆体から、121.200、121.150、または121.250m/zのフラグメントへの遷移が測定され得る。または、121.200のm/zフラグメントが測定され得る。内部標準-11β-ケトテストステロンについて、前駆イオンは306.400m/zであり得、フラグメントは121.20m/zであり得る。
【0076】
11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)について、105.000および/または97.000m/zのクオリファイアフラグメントピークを伴う、305.400m/zの前駆体から、121.100、121.150、または121.050m/zのフラグメントへの遷移を測定してもよく、る。または、121.100のm/zフラグメントが測定され得る。内部標準-11β-ヒドロキシテストステロンについて、前駆イオンは309.200m/zであり得、フラグメントは121.100m/zであり得る。-11β-ヒドロキシテストステロンの内部標準クオリファイアピークについて、前駆体は309.200m/zであり得、フラグメントは109.100および/または97.100m/zであり得る。
【0077】
一部の実施形態において、本開示の方法は、LC-MS/MSの前に、目的の11-オキソアンドロゲンの少なくとも部分的な精製を含む。一部の実施形態において、本方法は、タンパク質沈殿、液-液抽出(LLE)、固相抽出(SPE)、免疫精製、およびそれらのあらゆる組合せ等の少なくとも1つの精製工程を含み得る。特定の実施形態において、サンプルは、抽出カラムに供される。一実施形態において、カラムはLLEカラムである。一実施形態において、LLEは、ヘキサン:酢酸エチルの使用を含んでもよい。または、一部の実施形態において、カラムはSPEカラムである。場合によっては、抽出および質量分析は、オンラインで実行される。また、本方法は、LC-MS/MSによる分析の前に、サンプル希釈を含んでもよい。また、部分的な精製は、希釈を含んでもよい。一部の実施形態において、各バッチにおいて、二重のセットのチャコール処理キャリブレータが分析され、既知量の精製された各分析物を、チャコール処理血清中にスパイクして、約3.0~1,000ng/dLの範囲内である目的の精製された分析物の最終濃度を生成することによって生じた較正曲線から、サンプル中の個々の分析物の逆算量が求められる。
【0078】
本発明の方法(2)の一例を、図1に示す。ゆえに、一実施形態において、本方法は、サンプル、例えば、1つもしくはそれを超える目的の11-オキソアンドロゲンを含有すると考えられる血清サンプルを提供する工程(4)を含んでもよい。一部の実施形態において、適切な内部標準が、サンプルに加えられる(6)。例えば、血清サンプル中の11-オキソアンドロゲンを分析する本開示の方法の一部の実施形態において、-11β-ケトテストステロン、-11β-ヒドロキシテストステロン、および/または-11β-ヒドロキシアンドロステンジオン(King of Prussia,PAから市販されている)の少なくとも1つが、11KT、11OHT、および11OHAの測定用の内部標準としてそれぞれ加えられる。または、11KT、11OHT、もしくは11OHAの他の安定な標識同位体を使用してもよい。
【0079】
さらに他の実施形態において、目的の11-オキソアンドロゲンバイオマーカーの構造類似体を使用してもよい。例えば、そのような構造類似体は、第1の化学基が第2の化学基で置換されている化合物を含んでもよい。一般に、当該基は、例えば、メチル(-CH)基の、エチル(-CHCH)基との置換等、類似の化学反応性を有するが、質量が異なる。
【0080】
一部の実施形態において、目的の分析物は、HPLCの前にサンプルのLLEによって部分的に精製される(8)。加えて、かつ/または代わりに、サンプルは、その後の精製工程においてLCまたはMSに使用することができる溶媒中に希釈されてもよい。
【0081】
一実施形態において、LLEは、分析物を濃縮して部分的に精製するのに使用される。例えば、LLEは、生体サンプルから脂質および/またはフィブリノーゲンを除去してもよい。一部の実施形態において、11-オキソアンドロゲンを、有機溶媒を用いて血清サンプルから抽出することができる。例えば、一実施形態において、より極性のある溶媒と混合されたアルカンが使用される。例えば、特定の実施形態において、ヘキサンは、より極性のある溶媒と混合される。一実施形態において、極性溶媒は、酢酸エチルまたは同様の溶媒を含む。一実施形態において、9:1ヘキサン:酢酸エチルが使用される。または、他の溶媒が使用されてもよい。LLE後、サンプルを約1分間遠心分離(例えば、2000rpmまたは1207g)して、上清をデカントして、ペレット化したサンプルを蒸発させて残留溶媒を除去してから、LCまたはHPLCに適した溶媒(例えばアセトニトリル:水)中で再構成してもよい。
【0082】
さらに図1を参照すると、本方法はさらに、サンプル中の他の成分から目的の分析物を分離する手段として液体クロマトグラフィを含んでもよい(9)。一実施形態において、2つの液体クロマトグラフィ工程が使用される。例えば、本方法は、第1の抽出カラム液体クロマトグラフィに続く第2のHPLC分析カラムへの目的のバイオマーカーの移動を含んでもよい。他の実施形態において、1つのHPLC工程のみが使用される。
【0083】
例えば、再構成された抽出物は、HPLCシステムに適用され得、分析物は、抽出カラムによるイソクラティック分離を使用して溶出される。特定の実施形態において、使用される移動相は勾配を含む。
【0084】
液体クロマトグラフィは、特定の実施形態において、高乱流液体クロマトグラフィまたは高スループット液体クロマトグラフィ(HTLC)(時折、乱流液体クロマトグラフィ(TFLC)とも称される)を含んでもよい。例えば、Zimmer et al.,J.Chromatogr.A 854:23-35(1999)参照;また、米国特許第5,968,367号明細書;米国特許第5,919,368号明細書;米国特許第5,795,469号明細書;および米国特許第5,772,874号明細書参照。一部の実施形態において、HTLCは、単独で、または1もしくはそれを超える精製方法と組み合わせて、質量分析の前に目的のバイオマーカーを精製するのに使用されてもよい。また、一部の実施形態において、HTLCサンプル調製方法の使用は、液-液抽出を含む他のサンプル調製方法の必要性を除外し得る。ゆえに、一部の実施形態において、試験サンプル、例えば生体液を、高乱流液体クロマトグラフィシステムに直接配置、例えば注入することができる。
【0085】
例えば、一実施形態において、4-1100 Series Quaternary Pumps、4-1100 Series Binary Pumps、8-1100 Series Vacuum Degasserまたは8-1200 Series Binary Pumps、8-1200 Series Vacuum DegasserからなるAria TX4 HTLC System(Thermo Scientific MA)が使用される。この実施形態において、サンプルは、HTLCカラムに適用される前に、試薬グレード水中10%アセトニトリル中で再構成される。一実施形態において、ポンプA移動相はアセトニトリル:メタノール:水(5:5:90)であり、ポンプB移動相はアセトニトリル:メタノール:水(45:45:10)である。
【0086】
次いで、分離された分析物は、質量分析計(MS)システムに導入される(10)。一部の実施形態において、タンデムMS/MSシステムが使用される。一実施形態において、API 5000またはAPI 5500(または等価物)タンデム質量分析計、Danaher(Toronto,CA)が使用される。次いで、本明細書中で詳述されるように、タンデムMSによって測定される特徴的な遷移の量に基づいて、目的の分析物を定量することができる。一部の実施形態において、タンデム質量分析計は、トリプル四重極質量分析計を含む。
【0087】
質量分析では、分析物をイオン化して、質量分析装置での分解に適した気相イオンを生成する。イオン源でイオン化が起こる。当該技術において知られているいくつかのイオン源がある。一部の実施形態において、分析物は、当該技術において知られているあらゆる方法によってイオン化され得る。例えば、イオン化は、以下のイオン源:大気圧化学イオン化(APCI)、大気圧光イオン化(APPI)、電子衝撃イオン化(EI)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離(MALDI)、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)、サーモスプレーイオン化、誘導結合プラズマ(ICP)、および高速原子衝撃(FAB)のいずれかを使用して実行することができる。11-オキソアンドロゲンは、陽イオンモードまたは陰イオンモードでイオン化され得る。
【0088】
特定の実施形態において、タンデム質量分析計は、陽イオン大気圧化学イオン化(APCI)モードで作動する。一部の実施形態において、分析物および内部標準の定量化は、選択された反応モニタリングモード(SRM)で実行される。
【0089】
一部の実施形態において、各サンプル中の各分析物の逆算量は、既知量の精製された分析物材料を、標準試験サンプル、例えばチャコール処理ヒト血清中にスパイクすることによって生成される較正曲線に対する内部標準化を使用する場合のサンプル応答または応答比の比較によって求められ得る。一実施形態において、内部標準化対濃度較正曲線を使用する場合に、応答または応答比を生成するために、キャリブレータが既知の濃度にて調製される。一実施形態において、この決定は、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサで実行されると、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサにこの決定をさせる動作を実行させる命令を含有するコンピュータまたはデータ分析システムおよび/または非一過性コンピュータ可読記憶媒体によって少なくとも部分的に実行される。
【0090】
種々の実施形態において、本方法は、生データの詳細なレビュー、品質管理、患者結果のレビューおよび解釈、その後の実験室システムへのリリースを含む。例えば、特定の実施形態において、サンプルのバッチ毎に、二重の較正曲線が使用される。逆算濃度がLLOQにて>20%、または他の濃度にて>15%だけ理論濃度を超えるならば、合計25%の標準点(standard point)が、組み合わせた曲線から除外されてもよい。一実施形態において、最も低い残りの標準よりも下、または最も高い残りの標準よりも上の結果が報告されてもよい。一実施形態において、標準曲線相関係数は(r)>0.98である。また、特定の実施形態において、対照プールは、当該技術において知られているような許容され得る限界の範囲内でなければならない。例えば、特定の実施形態において、11KT、11OHT、および11OHAについて4つのレベルの対照が選択されてもよい。一部の実施形態において、対照データは、Levy-Jenningsチャートでの各試行について記録される。対照チャートは、シフトまたは傾向についてレビューされてもよい。全てのクロマトグラフィピーク形状が、一貫性についてレビューされてもよい。例えば、ピーク歪みが観察される場合、汚染物質が存在し得る。一実施形態において、本方法は、積分されたピークの保持時間がキャリブレータおよび品質管理サンプルに対応することを確認することによって、クロマトグラム内で複数のピークが観察される場合に正しいピークが積分されることを保証することを含む。例えば、本方法は、内部標準ピーク面積対指数プロットのレビューを含んでもよい。一実施形態において、隣接ピークよりも50%を超えて大きい内部標準ピーク面積が、反復分析のために提出されてもよく、かつ/または隣接ピークよりも33%を超えて小さい内部標準ピーク面積が、反復分析のために提出されてもよい。一実施形態において、このレビューおよび分析は、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサで実行されると、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサに、この分析および/またはレビューを実行する動作を実行させる命令を含有するコンピュータまたはデータ分析システムおよび/または非一過性コンピュータ可読記憶媒体によってなされる。
【0091】
11-オキソアンドロゲンの分析のためのシステム
他の実施形態において、開示されるのは、サンプル中の1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンバイオマーカーの存在または量を決定するためのシステムである。例えば、一部の実施形態において、システムは、少なくとも1つの目的の11-オキソアンドロゲンバイオマーカーを含有すると考えられるサンプルを提供するためのステーションと;少なくとも1つの目的の11-オキソアンドロゲンバイオマーカーを、サンプル中の他の成分からクロマトグラフィにより分離するためのステーションと;クロマトグラフィにより分離された少なくとも1つの目的の11-オキソアンドロゲンバイオマーカーを質量分析によって分析して、サンプル中の1つもしくはそれを超えるバイオマーカーの存在または量を決定するためのステーションとを含んでもよい。一実施形態において、サンプルは、ヒトまたは別の哺乳動物から得られる生体サンプルである。
【0092】
一実施形態において、質量分析はタンデム質量分析(MS/MS)である。一実施形態において、質量分析は、大気圧化学イオン化(APCI)モードで作動する。一実施形態において、目的の11-オキソアンドロゲンバイオマーカーの定量化が、選択された反応モニタリングモード(SRM)で実行される。例えば、タンデム質量分析用のステーションは、Applied Biosystems API 5000またはAPI 5500タンデム質量分析計(または等価物)、Danaher(Toronto,CA)を含んでもよい。
【0093】
一実施形態において、クロマトグラフィ分離用のステーションは、液体クロマトグラフィ(LC)を実行するための少なくとも1つの装置を含む。一実施形態において、液体クロマトグラフィ用のステーションは、抽出クロマトグラフィ用のカラムを含む。加えて、または代わりに、液体クロマトグラフィ用のステーションは、分析クロマトグラフィ用のカラムを含む。特定の実施形態において、抽出クロマトグラフィおよび分析クロマトグラフィ用のカラムは、単一のステーションまたは単一のカラムを含む。抽出物体クロマトグラフィまたは分析液体クロマトグラフィに使用され得る固定相および移動相を含む種々のカラムが、本明細書中に記載されている。抽出物体クロマトグラフィに使用されるカラムは、目的のバイオマーカーに応じて変えることができる。一部の実施形態において、抽出カラムは、官能化シリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリシック(monlithic)シリカ固定相、例えばPoroshell SBC-18カラムである。分析液体クロマトグラフィに使用されるカラムは、目的のバイオマーカーおよび/または抽出物体クロマトグラフィ工程に使用されたカラムに応じて変えることができる。例えば、特定の実施形態において、分析カラムは、平均直径が約5μmである粒子を含む。一部の実施形態において、分析カラムは、官能化シリカもしくはポリマー-シリカハイブリッド、またはポリマー粒子もしくはモノリシックシリカ固定相、例えばフェニル-ヘキシル官能化分析カラムである。
【0094】
一部の実施形態において、HPLCを使用して、11-オキソアンドロゲンをサンプル中の他の成分から精製し、他の成分は、サンプルの抽出および/または希釈後に11-オキソアンドロゲンと共精製される。一実施形態において、HTLCを使用して、11-オキソアンドロゲンをサンプル中の他の成分から精製する。例えば、一実施形態において、4-1100 Series Quaternary Pumps、4-1100 Series Binary Pumps、8-1100 Series Vacuum Degasserまたは8-1200 Series Binary Pumps、8-1200 Series Vacuum DegasserからなるAria TX4 HPLC System(Thermo Scientific MA)が使用される。
【0095】
一実施形態において、システムはさらに、例えば液-液抽出(LLE)および/または希釈によって、少なくとも1つの目的の11-オキソアンドロゲンバイオマーカーをサンプル中の他の成分から部分的に精製するためのステーションを含んでもよい。または、一部の実施形態において、固相抽出(SPE)が使用されてもよい。ゆえに、特定の実施形態において、システムはまた、試験サンプルから1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンバイオマーカーを抽出するための、かつ/またはサンプルを希釈するためのステーションを含んでもよい。部分的な精製(例えばLLE)用のステーションは、サンプルへの溶媒の添加、ならびに廃棄画分の除去のための装置および試薬を含んでもよい。場合によっては、-11β-ケトテストステロン、-11β-ヒドロキシテストステロン、および/または-11β-ヒドロキシアンドロステンジオン(King of Prussia,PAから市販されている)等の同位体標識内部標準を使用して、手順中に起こり得るバイオマーカーの損失を標準化する。ゆえに、LLE用のステーションは、溶媒を用いた作業に必要とされるフードまたは他の安全性の特徴を含んでもよい。
【0096】
また、特定の実施形態において、ステーションの少なくとも1つが、コンピュータによって自動化および/または制御される。例えば、本明細書に記載されるように、特定の実施形態において、手動の介入がほとんどまたは全く必要とされないように、工程の少なくとも一部が自動化される。例えば、本明細書中で開示されるように、ステーションのいずれか1つが、データプロセッサまたはコンピュータによって制御されてよい。また、本明細書で開示されるのは、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサまたはコンピュータ上で実行されると、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサまたはコンピュータに、システムのステーションの少なくとも1つについての動作を実行させる命令を含有するデータプロセッサおよび/または非一過性コンピュータ可読記憶媒体である。
【0097】
図2は、本発明のシステム(100)の一実施形態を示す。図2に示されるように、システムは、目的のバイオマーカー(例えば、1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲン)を含み得るサンプルを、サンプリングコンテナに分注するためのステーション(104)を含んでもよい。一実施形態において、サンプルは、コンテナ(1つもしくはそれを超える)中に分注されて、液-液抽出またはサンプル希釈が促進される。分注用のステーションは、分析に使用されないサンプルの部分を廃棄するための容器を含んでもよい。
【0098】
システムは、サンプルに内部標準を加えるためのステーション(108)をさらに含んでもよい。一実施形態において、内部標準は、非天然の同位体で標識された目的のバイオマーカー(例えば、1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲン)を含む。ゆえに、内部標準を加えるためのステーションは、同位体標識された内部標準溶液の、サンプルへの添加を促進するための安全性の特徴を含んでもよい。システムはまた、一部の実施形態において、サンプルのLLEおよび/または希釈用のステーション(110)を含んでもよい。
【0099】
システムはまた、サンプルの液体クロマトグラフィ(LC)用のステーション(112)を含んでもよい。本明細書中に記載されるように、一実施形態において、液体クロマトグラフィ用のステーションは、抽出物体クロマトグラフィカラムを含んでもよいし、ステーションは、HPLCを含んで、抽出カラムを含まなくてもよい。または、以下でより詳細に考察されるように、高乱流液体クロマトグラフィ(HTLC)等の他のタイプの液体クロマトグラフィが使用されてもよい。例えば、一実施形態において、4-1100 Series Quaternary Pumps、4-1100 Series Binary Pumps、8-1100 Series Vacuum Degasserまたは8-1200 Series Binary Pumps、8-1200 Series Vacuum DegasserからなるAria TX4 HTLC System(Thermo Scientific MA)が使用される。この実施形態において、サンプルは、HTLCカラムに適用される前に、試薬グレード水中10%アセトニトリル中で再構成されてもよい。一実施形態において、ポンプA移動相はアセトニトリル:メタノール:水(5:5:90)であり、ポンプB移動相はアセトニトリル:メタノール:水(45:45:10)である。
【0100】
ゆえに、液体クロマトグラフィ用のステーションは、固定相を含むカラム、および移動相として使用される溶媒を含むコンテナまたは容器を含んでもよい。ステーションは、カラム(1つもしくはそれを超える)に用いられることとなる個々の溶媒の量を調整するための適切なラインおよびバルブを含んでもよい。また、ステーションは、目的のバイオマーカーを含まない画分をLCから除去および廃棄する手段を含んでもよい。一実施形態において、目的のバイオマーカーを含有しない画分は、カラムから連続的に除去されて、除染用の廃棄物容器に送られて、廃棄されることとなる。
【0101】
また、システムは、目的の11-オキソ-アンドロゲンの特性評価および定量化用のステーションを含んでもよい。一実施形態において、システムは、11-オキソ-アンドロゲンバイオマーカーの質量分析(MS)用のステーション(116)を含んでもよい。一実施形態において、質量分析用のステーションは、タンデム質量分析(MS/MS)用のステーションを含む。また、特性評価および定量化用のステーションは、データ分析用のステーション(118)を含んでもよい。データ分析用のステーションは、MS/MSステーションの一部、または別個のステーションであってもよく、そしてMS/MS結果の分析用のコンピュータおよび/またはソフトウェアを含んでもよい。一実施形態において、データ分析用のステーションは、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサで実行されると、1つもしくはそれを超えるデータプロセッサにデータ分析を実行させる命令を含有するコンピュータまたはデータプロセッサおよび/または非一過性コンピュータ可読記憶媒体(例えばソフトウェア)を含む。一実施形態において、分析は、目的のバイオマーカーの同定および定量化の双方を含む。
【0102】
一部の実施形態において、精製工程または分離工程のうちの1つまたはそれより多くを「オンライン」で実行することができる。オンラインシステムは、あるコンテナからサンプルのアリコートを取り出して、そのようなアリコートを別のコンテナ中に移すためのオートサンプラーを含んでもよい。例えば、オートサンプラーを用いて、抽出後のサンプルをLC抽出カラム上に移してもよい。オンラインシステムは、LC抽出カラムから単離された画分をLC分析カラム上に注入するための1もしくはそれを超える注入ポート、および/またはLC精製サンプルをMSシステム中に注入するための1もしくはそれを超える注入ポートを含んでもよい。ゆえに、オンラインシステムは、以下に限定されないが、HTLCカラムが挙げられる1つもしくはそれを超えるカラムを含んでもよい。そのような「オンライン」システムでは、目的の試験サンプルおよび/または分析物は、システムを出ることなく、例えば収集されてからシステムの別の構成要素に配置されることなく、システムのある構成要素から別の構成要素に渡され得る。
【0103】
一部の実施形態において、オンライン精製または分離方法は、高度に自動化されている。そのような実施形態において、プロセスがセットアップされて開始されると、工程は、オペレータの介入を必要とせずに実行され得る。例えば、一実施形態において、システムまたはシステムの一部は、コンピュータ(102)によって制御されてもよい。ゆえに、特定の実施形態において、システムは、ポンプ、バルブ、およびオートサンプラーが挙げられる、システムの種々の構成要素を制御するためのソフトウェアを含んでもよい。そのようなソフトウェアを使用して、サンプルおよび溶質の添加、ならびに流速の正確なタイミングにより、抽出プロセスを最適化することができる。
【0104】
方法における工程の一部もしくは全て、およびシステムを構成するステーションは、オンラインであってもよいが、特定の実施形態において、工程の一部または全てが「オフライン」で実行されてもよい。
【0105】
ゆえに、本開示は、11-オキソアンドロゲン等の目的のバイオマーカー分析物を、サンプル中に存在し得る他の成分から分離する手段として、液体クロマトグラフィおよび質量分析を適用するための方法およびシステムを提供する。方法およびシステムは、HTLCおよびタンデム質量分析の前に、サンプルを部分的に精製する手段として、オフライン液-液抽出および/またはサンプル希釈工程を含んでもよい。方法およびシステムは、臨床診断に使用され得る。
【0106】
システムおよび方法は、特定の実施形態において、多重化アッセイを提供することができる。例えば、本発明の特定の実施形態は、サンプル中の1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンの定量分析のための多重化液体クロマトグラフィタンデム質量分析(LC-MS/MS)または二次元もしくはタンデム液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析(LC)-LC-MS/MS)法を含んでもよい。
【0107】
実施形態は、特定の利点を提供することができる。一実施形態において、血清中の11-ケトテストステロン、11-ヒドロキシテストステロン、および11-アンドロステンジオンの定量的測定を可能にするために、精度が良く、正確、簡易、かつ迅速な市販のHPLC-MS/MS同位体希釈法が開発されている。当該方法は、3つの11-酸素化アンドロゲンの分析を多重化することによって、血清サンプルを保存する。基準範囲を、成人男性および成人女性について開発することができる。男性および女性についての類似の分布は、11-オキシアンドロゲンの副腎起源を強調する。また、一実施形態において、他のアッセイシステムとの良好な相関により、公開されているデータを使用して、先天性副腎過形成、多嚢胞性卵巣症候群、および前立腺がんの疾患状態についての結果の解釈が可能となろう。
【0108】
特定の実施形態において、方法およびシステムは、測定されることとなる分析物の多くについて以前に達成可能であった感度よりも高い感度を提供し得る。また、方法およびシステムの実施形態は、測定されることとなる分析物の多くについて以前は達成可能でなかった迅速なスループットを提供し得る。
【0109】
別の利点として、本開示の方法およびシステムによって提供される特異性および感度は、種々の物質からの分析物の分析を可能にし得る。例えば、本開示の方法は、血液、血清、血漿、尿、および唾液が挙げられるがこれらに限定されない複雑なサンプルマトリックス中の目的の分析物の定量化に適用され得る。また、本開示の方法およびシステムを使用することにより、誘導体化することなく、そして1~3ng/dLもの低いレベルにて、11-オキソアンドロゲンの測定が可能となる。ゆえに、本方法およびシステムは、臨床適および/または臨床試験に適している。
【0110】
追加の潜在的な利点として、特定の実施形態において、本開示のシステムおよび方法は、標的分析物の低いng/dL定量限界(LLOQ)を達成しながら、溶血サンプルおよび脂血症サンプルを含む種々のサンプル含量等の、同重体干渉に対処するためのアプローチを提供する。したがって、本開示の方法およびシステムの実施形態は、臨床診断に使用される臨床バイオマーカーの定量的、高感度、かつ特異的な検出を提供し得る。
【実施例
【0111】
以下の実施例は、本開示の主題の代表的な実施形態を実施するためのガイダンスを当業者に提供するために含まれている。本開示、および当該技術における一般的なレベルに照らして、当業者であれば、以下の実施例が、例示でしかないことが意図されていること、そして本開示の主題の範囲から逸脱することなく多数の変更、修正、および改変を採用してよいことを理解することができる。
【0112】
実施例1-11-オキソアンドロゲンについてのLC-MS/MSの検証
Agilent(登録商標)1200ポンプ(Agilent Technologies,Inc.)およびSciex(登録商標)5000(Danaher)トリプル四重極質量分析計を備えたTX-4 HPLCシステム(Thermo-Fisher)を使用して、分析方法を開発した。枯渇血清(Golden West Biologicals)中の分析物毎に、独立した較正曲線を作成した。サンプル調製は、3つの重水素化重同位体内部標準のカクテル(IsoSciences)を用いた同位体希釈、それに続くLLEからなった。水/メタノール/アセトニトリル溶媒勾配による逆相C8分析カラム(3.0×50mm、2.7um)を使用して、4分未満で全ての同重体のクロマトグラフィ分離を達成した。多重反応モニタリング(MRM)モードでの検出には、ポジティブモード大気圧化学イオン化(APCI)を使用した。MRMは、1つもしくはそれを超える前駆イオン由来の複数のプロダクトイオンへのSRMの適用である。
【0113】
検証データ
分析感度は、分析物毎に1~3ng/dLであり、分析測定範囲は最大1,000ng/dL(希釈して最大10,000ng/dL)であった。アッセイ間正確度は、LLOQにて11-ケトテストステロン(11KT)について4.6~14.9%CV、LLOQにて11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)について6.4~13.4%CV、そしてLLOQにて11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)について6.1~10.7%に及んだ。精度は、11KTについて100.7~106.4%、11OHAについて99.3~113%、そして11OHTについて98.5~101%に及んだ。女性および男性の成人の双方についての基準範囲を、11KT(女性、5.0~60.6ng/dL;男性9.5~70.8ng/dL)、11OHA(女性、19.2~333ng/dL;男性、36.4~313ng/dL)、および11OHT(女性、<39.8ng/dL;男性、5.2~43.4ng/dL)について開発した。
【0114】
本開示の方法およびシステムの検証についての結果の概要を、表1に示す。
【表1】
【0115】
実施例2-精度および正確度
11-ケトテストステロン、11-ヒドロキシテストステロン、および11-ヒドロキシアンドロステンジオンを、それぞれd-11-ケトテストステロン、d-11-ヒドロキシテストステロン、およびd-11-ヒドロキシアンドロステンジオン(d=重水素)で同位体希釈した後に、LC-MS/MSによって分析した。分析物および内部標準を、ヘキサン:酢酸エチル溶液を使用して、血清サンプル、標準、およびアッセイ対照から抽出した。有機画分を水層から分離して、蒸発乾固させた。再構成したサンプル、標準、および対照を、96ウェルプレートに移して、ARIA TX4 HPLCシステムおよびSCIEX API 5000または5500質量分析計を使用するLC-MS/MSによって分析した。アッセイの分析測定範囲は、0.5mLサンプル容量を使用する場合、3.0ng/dL~1000ng/dLである。例示的なマスクロマトグラムを図3に示す。
【表2】
【0116】
エタノール中に溶解した粉末から秤量した市販の精製11KT、11OHT、および11OHAから作業ストックを調製して、チャコール処理血清中1.0~1000ng/dLの作業標準濃度に希釈した。
【0117】
生物分析および臨床アッセイの双方の品質管理プール(n=25)を、検証において典型的に実行されるように使用した。11KT、11OHA、およびOHT毎の対照を、標準マトリックスおよび/またはヒト血清中で調製した。11-ケトテストステロンは、全25アッセイにおいて、標準作業手順に従う臨床受入れ基準を満たし、11-ヒドロキシアンドロステンジオンは25アッセイのうち22において臨床受入れ基準を満たし、そして11-ヒドロキシテストステロンは25アッセイのうち24において臨床受入れ基準を満たした。
【0118】
既知濃度の11KT、11OHT、および11OHAを含有する算出容量の溶液を、チャコール処理血清中にスパイクすることによって、精度を求めた。各処理血清サンプルの20反復を一度のアッセイで測定して、アッセイ内の精度および不正確度を求めた。各追加アッセイ試行において2反復を測定して、合計24反復について、アッセイ間の精度および不正確度を求めた。
【0119】
精度:85~115%(LLOQにて80~120%)となるアッセイ内およびアッセイ間の精度(不正確度(%CV)は≦15%(LLOQにて20%)となる)。
【0120】
11KTについて、1.0ng/dLの濃度でのアッセイ内精度は107.7%であり、不正確度は10.0%CVであった。他のレベルでのアッセイ内精度は101.1%~104.7%におよび、アッセイ内不正確度は3.5~5.9%CVに及んだ。
【0121】
11OHAについて、1.0ng/dLの濃度でのアッセイ内精度は113.5%であり、不正確度は19.9%であった。他のレベルでのアッセイ内精度は97.8~103.7%におよび、アッセイ内不正確度は5.5~11.2%CVに及んだ。
【0122】
11OHTについて、1.0ng/dLの濃度でのアッセイ内精度は110.9%であり、不正確度は19.4%CVであった。他のレベルでのアッセイ内精度は101.1~103.7%におよび、アッセイ内不正確度は3.7~8.9%CVに及んだ。
【0123】
11KTについて、1.0ng/dLの濃度でのアッセイ間精度は106.4%であり、不正確度は17.9%CVであった。他のレベルでのアッセイ間精度は100.7~102.8%におよび、アッセイ間不正確度は4.1~9.4%CVに及んだ。
【0124】
11OHAについて、1.0ng/dLの濃度でのアッセイ間精度は113.0%であり、不正確度は21.2%であった。3.0ng/dLのLLOQでは、精度は103.9%であり、不正確度は14.3%であった。他のレベルでのアッセイ間精度は99.3~100.6%におよび、アッセイ間不正確度は5.8~6.7%CVに及んだ。
【0125】
11OHTについて、1.0ng/dLの濃度でのアッセイ間精度は98.5%であり、不正確度は18.8%CVであった。他のレベルでのアッセイ間精度は95.6~101.0%におよび、アッセイ間不正確度は4.9~16.5%CVに及んだ。
【0126】
2つの異なる試験実験室間の相関を図4に示す。2つの異なる試験実験室(実験室1および実験室2)についてのLC-MS/MS結果を比較するデミング回帰分析は、0.81~0.88の傾きを示した(図4)。11KTについてのデミング回帰はy=0.81x+0.38であり、R値は0.9931であった。11OHAについてのデミング回帰はy=0.88x+5.59であり、R値は0.985であった。11OHTについてのデミング回帰はy=0.82x-0.15であり、R値は0.9985であった。
【0127】
サンプルマトリックス不正確度受入れ基準:アッセイ内およびアッセイ間の不正確度(%CV)は≦15%である。
【0128】
11KTについて、アッセイ内不正確度は2.4~4.2%CVに及んだ。11OHAについて、アッセイ内不正確度は2.9~7.8%CVに及んだ。11OHTについて、アッセイ内不正確度は2.5~10.9%CVに及んだ。
【0129】
11KTについて、アッセイ間不正確度は4.6~9.5%CVに及んだ。11OHAについて、外れ値データを除去した後のアッセイ間不正確度は、6.0~13.0%CVに及んだ。11OHTについて、アッセイ間不正確度は6.0~10.0%CVに及んだ。
【0130】
実施例3-定量下限
定量下限(LLOQ)は、アッセイ内精度およびアッセイ間精度(80~120%)ならびに不正確度(≦20%CV)の双方において受入れ基準を満たす最低濃度として定義される。
【0131】
受入れ基準:80%~120%となるアッセイ内およびアッセイ間の精度、および≦20%となる%CV。加えて、LLOQでのクロマトグラフィ応答は、平均ブランク応答の少なくとも5倍である。
【0132】
11KTについて、LLOQについての受入れ基準を満たす最低濃度は1.0ng/dLであった。11OHAについて、LLOQについての受入れ基準を満たす最低濃度は3.0ng/dLであった。11OHTについて、LLOQについての受入れ基準を満たす最低濃度は1.0ng/dLであった。
【0133】
11KTについて、アッセイ内精度データ由来の平均クロマトグラフィ応答および平均ブランク(S0)の比は23.4であった。アッセイ間精度データ由来のクロマトグラフィ応答およびブランク(S0)の比は3.1~56.8におよび、平均は10.0であった。
【0134】
11OHAについて、アッセイ内精度データ由来の平均クロマトグラフィ応答および平均ブランク(S0)の比は8.0であった。アッセイ間精度データ由来のクロマトグラフィ応答およびブランク(S0)の比は4.7~21.8におよび、平均は9.1であった。
【0135】
11OHTについて、アッセイ内精度データ由来の平均クロマトグラフィ応答および平均ブランク(S0)の比は32.5であった。アッセイ間精度データ由来のクロマトグラフィ応答およびブランク(S0)の比は5.1~17.8におよび、平均は8.9であった。
【0136】
実施例4-定量上限
定量上限(ULOQ)は、アッセイ内精度およびアッセイ間精度(85~115%)ならびに不正確度(≦15%CV)の双方において受入れ基準を満たす最高濃度として定義される。
【0137】
受入れ基準:アッセイ内およびアッセイ間の精度は85~115%であり、%CVは≦15%である。
【0138】
11KTについて、受入れ基準を満たす測定最高濃度は1000ng/dLであった。11OHAについて、受入れ基準を満たす測定最高濃度は1000ng/dLであった。11OHTについて、受入れ基準を満たす測定最高濃度は1000ng/dLであった。
【0139】
実施例5-分析的干渉(脂血症、溶血、および黄疸)
高濃度プールサンプルを、脂血症、溶血、および黄疸の干渉について試験した。高濃度サンプルを、種々の容量の血清サンプル(高脂血症サンプル、20%(v/v)赤血球にスパイクしたサンプル、ならびに16mg/dL抱合型ビリルビンおよび16mg/dL非抱合型ビリルビンにスパイクしたサンプル)と混合した。結果を、元のニートのサンプルと比較した。
【0140】
受入れ基準:各干渉濃度でのサンプル毎の反復のうちの少なくとも2/3において85~115%となる分析物の回収。11KT、11OHA、および11OHT毎に、脂血症、溶血、およびビリルビンの各濃度での全反復が、受入れ基準内であった。このことは、これらのマトリックス成分が、11KT、11OHA、または11OHTの分析に影響を及ぼさなかったことを実証している。
【0141】
実施例6-サンプルタイプ
3人のボランティアドナーから、赤色上部血清(red-top serum)、SST血清、EDTA血漿、およびヘパリン血漿のサンプルを収集した。各サンプルタイプを三連で分析して、SST血清、EDTA血漿、およびヘパリン血漿の個々の結果および平均結果を赤色上部血清の結果と比較した。
【0142】
受入れ基準:平均結果について、そしてサンプルタイプ毎に2/3反復で、85~115%となる、ベースライン(赤色上部血清)と比較した分析物の回収パーセント。
【0143】
実施例7-ヒト血清および標準マトリックスにおける選択性
既知濃度の分析物(0、50、200、および800ng/dL)をヒト血清サンプル中にスパイクすることによって、本方法の選択性を実証した。ニートのサンプルおよびスパイクサンプルを三連で分析して、結果をニートの平均結果と比較した。
【0144】
受入れ基準:予想値(ニートの平均結果プラススパイク濃度)の85~115%以内となる分析物の回収。11KT、11OHA、および11OHT毎に、各濃度での全反復が、予想結果の85~115%以内であった。
【0145】
また、既知濃度の分析物(0、50、200、および800ng/dL)でチャコール処理血清をスパイクしてから、ニートのサンプルおよびスパイクしたサンプルを三連で分析して、結果をベースライン(ニート)平均濃度と比較することによって、標準マトリックスにおける選択性を実証した。
【0146】
受入れ基準:予想値(ニートの平均結果プラススパイク濃度)の85~115%以内となる分析物の回収。11KT、11OHA、および11OHT毎に、各濃度での全反復が、予想結果の85~115%以内であった。
【0147】
実施例8-内部標準干渉
水中にスパイクした内部標準の作業濃度を分析して、分析物遷移における応答を、アッセイサンプルおよび精度サンプル1(1.0ng/dL)の低い標準(1.0ng/dL)と比較することによって、分析物遷移における内部標準干渉の量を実証した。
【0148】
受入れ基準:低い標準よりも低くなる内部標準の分析物応答。
【0149】
11KTについて、分析物遷移に対する内部標準の平均寄与は、低い標準の応答の26.6%であった。
【0150】
11OHAについて、分析物遷移に対する内部標準の平均寄与は、低い標準の応答の9.5%であった。
【0151】
11OHTについて、分析物遷移に対する内部標準の平均寄与は、低い標準の応答の22.3%であった。
【0152】
実施例9-希釈の直線性
3つのサンプルを高濃度にスパイクして、これを試薬グレードの水で1/2、1/5、および1/10希釈してから三連で分析することによって、希釈の直線性を実証した。希釈の結果を、ニートのサンプルと比較した。
【0153】
受入れ基準:各希釈でのアリコートの2/3において85~115%となる回収。11KT、11OHA、および11OHT毎に、各濃度での全反復が、予想結果の85~115%以内であり、最大1/10のサンプル希釈が可能であった。
【0154】
実施例10-特異性
本方法の特異性を、生理学的に有意な濃度(1,000ng/dL)の潜在的に干渉性のステロイド化合物を分析することによって実証した。
【0155】
受入れ基準:LLOQよりも低くなる分析物遷移における応答。
【0156】
11KTについて、全ての潜在的に干渉性の化合物(1,000ng/dLの濃度を加えた)についての分析応答は、1.0ng/dLのLLOQ未満(≦0.25ng/dL)であった。
【0157】
11OHAについて、全ての潜在的に干渉性の化合物についての分析応答は、3.0ng/dLのLLOQ未満(≦0.23ng/dL)であった。
【0158】
11OHTについて、全ての潜在的に干渉性の化合物についての分析応答は、1.0ng/dLのLLOQ未満(≦0.25ng/dL)であった。
【0159】
評価した潜在的に干渉性の化合物を以下に示す。
【表3】
【0160】
実施例11-ヒト血清および処理血清における短期安定性および三か月安定性
A.血清
6人の健常ボランティアを抽出(draw)して、その血清のアリコートを、マイナス55℃未満にて17日間の凍結、室温(15~30℃)にて2時間、1日、3日間、14日間;マイナス10℃未満(<)にて14日間の凍結、2~8℃(2時間、3日、または14日)での維持、または6回の凍結解凍サイクルを含む種々の安定性条件に供することによって、血清中の短期安定性を求めた。各安定性条件にて保存した血清を、三連で分析して、結果を、抽出の日に分析した血清の平均結果と比較した。
【0161】
受入れ基準:ドナーの少なくとも2/3由来の反復の少なくとも2/3における平均ベースライン結果の85~115%以内となる分析物の安定性後濃度(post stability concentration)。
【0162】
11KTについて、<-55℃での少なくとも17日、<-10℃での14日、2~8℃での冷蔵の14日、15~30℃の室温での14日、6回の凍結/解凍サイクル、2~8℃での全血での少なくとも1日の保存、および15~30℃での全血での少なくとも2時間の保存について、安定性を実証した。
【0163】
<-55℃での少なくとも17日、<-10℃での14日、2~8℃での冷蔵の14日、15~30℃の室温での14日、6回の凍結/解凍サイクル、2~8℃での全血での少なくとも3日の保存、および15~30℃での全血での少なくとも3日の保存について、11OHAの安定性を実証した。
【0164】
<-55℃での少なくとも28日、<-10℃での14日、2~8℃での冷蔵の14日、15~30℃の室温での14日、6回の凍結/解凍サイクル、2~8℃での全血での少なくとも1日の保存、および15~30℃での全血での少なくとも2日の保存について、11OHTの安定性を実証した。
【0165】
B.処理血清
チャコール処理血清中の各分析物の3つの濃度を調製して、アリコートを種々の安定性条件に供することによって、処理血清中の短期安定性を求めた。各安定性条件にて保存した処理血清を、三連で分析して、結果を、調製の日に分析した平均ベースライン結果と比較した。
【0166】
受入れ基準:ドナーの少なくとも2/3由来の反復の少なくとも2/3における平均ベースライン結果の85~115%以内となる分析物の安定性後濃度。11KT、11OHA、および11OHTのそれぞれについて、<-55℃での少なくとも17日、<-10℃での14日、2~8℃での冷蔵の14日、15~30℃の室温での14日、および6回の凍結/解凍サイクルについて、安定性を実証した。
【0167】
C.3ヶ月安定性
短期間の安定性について使用した、健常ボランティア由来の血清のアリコートを、<-10℃にて3ヶ月間保存した。各血清を、三連で分析して、結果を、抽出の日に分析した血清の平均結果と比較した。
【0168】
受入れ基準:ドナーの少なくとも2/3由来の反復の少なくとも2/3における平均ベースライン結果の85~115%以内となる分析物の安定性後濃度。11KT、11OHA、および11OHTのそれぞれについて、<-10℃での少なくとも3ヶ月にわたり、安定性を実証した。
【0169】
実施例12-オートサンプラー安定性
アッセイを調製して、その日にLC-MS/MSで分析して、加工処理したアッセイをオートサンプラー内に10℃にて少なくとも48時間放置してから再分析することによって、オートサンプラー安定性を実証した。
【0170】
受入れ基準:試験したサンプルの少なくとも2/3における平均ベースライン結果の85~115%以内となる分析物の安定性後濃度。オートサンプラー安定性実験を、保存緩衝液としての水中10%アセトニトリルで84時間行った。11KTは受入れ基準を満たし、68の安定性後結果のうち65(95.6%)が、元の85~115%以内であり、平均回収は100.1%であった。11OHAは受入れ基準を満たし、68の安定性後結果のうち60(88.2%)が、元の結果の85~115%以内であり、平均回収は105.1%であった。11OHTは受入れ基準を満たし、68の安定性後結果のうち47(69.1%)が、元の結果の85~115%以内であり、平均回収は107.1%であった。
【0171】
実施例13-ベンチトップ安定性
2つのアッセイを調製して、その日にLC-MS/MSで一方を分析して、他方のアッセイをベンチトップに15~30℃にて少なくとも48時間放置してから分析することによって、ベンチトップ安定性を実証した。元々の試験では、再構成緩衝液としてメタノール:水を使用したが、11KTおよび11OHAは、アセトニトリル:水中でより安定であることが見出された。
【0172】
受入れ基準:試験したサンプルの少なくとも2/3における平均ベースライン結果の85~115%以内となる分析物の安定性後濃度。
【0173】
11KTは受入れ基準を満たし、68の安定性後結果のうち64(94.1%)が、元の85~115%以内であり、平均回収は101.3%であった。
【0174】
11OHTは受入れ基準を満たし、68の安定性後結果のうち52(76.5%)が、元の85~115%以内であり、平均回収は106.6%であった。
【0175】
また、11OHAは受入れ基準を満たし、68の安定性後結果のうち60(88.2%)が、元の結果の85~115%以内であり、平均回収は100.9%であった。
【0176】
実施例14-標準曲線精度および不正確度
6つのアッセイにおいて標準の逆算濃度をコンパイルすることによって、標準の精度および不正確度を実証した。較正曲線を定義するために、各試行において8つの標準点を含めた。標的濃度の±15%(LLOQにて±20%)を超えたデータ点の25%以下を除外することによって、標準曲線を調整した。
【0177】
受入れ基準:有効な標準曲線には、逆算精度が標的濃度の±15%(LLOQにて±20%)以内である標準曲線あたり最低6つの許容され得る点が必要とされる。85%~115%(LLOQにて80%~120%)となるアッセイ間精度、および≦15%(LLOQにて≦20%)となる%CV。
【0178】
11KTについて、LLOQでの6つのアッセイにわたるアッセイ間精度は102.9%であり、他の濃度では97.4%~101.8%に及んだ。アッセイ間の不正確度は、LLOQにて11.5%CVであり、他の濃度では2.9~4.8%CVに及んだ。6つの標準曲線は全て、受入れ要件を満たす。
【0179】
11OHAについて、低い標準での6つのアッセイにわたるアッセイ間精度は102.9%であり、他の濃度では97.6%~103.1%に及んだ。アッセイ間の不正確度は、LLOQにて17.2%CVであり、他の濃度では2.8~8.1%CVに及んだ。6つの標準曲線は全て、受入れ要件を満たす。
【0180】
11OHTについて、低い標準での6つのアッセイにわたるアッセイ間精度は100.6%であり、他の濃度では96.5%~102.5%に及んだ。アッセイ間の不正確度は、LLOQにて19.7%CVであり、他の濃度では2.4~7.4%CVに及んだ。6つの標準曲線は全て、受入れ要件を満たす。
【0181】
実施例15-基準範囲
甲状腺刺激ホルモンの結果がそのアッセイの基準範囲内にある最低120人の成人女性および120人の成人男性の血清サンプルを分析することによって、11KT、11OHA、および11OHTについての基準範囲を求めた。検証バッチは、男性および女性の基準範囲決定用の患者サンプルを含有したが、当該サンプルは、許容され得る基準範囲サンプルであるか否かを決定するためのスクリーニングをしなかった。追加の患者血清サンプルを、テストステロンおよびアンドロステンジオンについてスクリーニングした。テストステロンおよびアンドロステンジオンについて結果が基準範囲内であるサンプルのみを、11-オキシステロイド基準範囲試験に使用した。
【0182】
123の成人男性サンプルおよび137の成人女性サンプルを、11-オキシステロイド基準範囲について試験した(図5)。11KTについての成人女性基準範囲は5.0~60.6ng/dLである。11KTについての成人男性基準範囲は9.5~70.8ng/dLである。11OHAについての成人女性基準範囲は19.2~333ng/dLである。11OHAについての成人男性基準範囲は36.4~313ng/dLである。11OHTについての成人女性基準範囲は<39.8ng/dLである。11OHTについての成人男性基準範囲は5.2~43.4ng/dLである。
実施例16-実施形態
A.1.サンプル中の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの存在または量をタンデム質量分析によって決定するための方法であって:
(a)被験体からサンプルを得ることと;
(b)必要に応じて、安定な同位体標識された11-オキソアンドロゲンを内部標準としてサンプルに加えることと;
(c)液体クロマトグラフィを実行してサンプルを精製することと;
(d)11-オキソアンドロゲンをタンデム質量分析によって測定することと
を含む、方法。
A.2.サンプルは生体サンプルである、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.3.生体サンプルは、血液、血漿、血清、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、器官、毛髪、筋肉、または他の組織サンプルの1つを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.4.タンデム質量分析は、(i)11-オキソアンドロゲンの前駆イオンを生成する工程と;(ii)前駆イオンの1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを生成する工程と;(ii)工程(i)において生成された前駆イオン、および/または工程(ii)において生成された少なくとも1つもしくはそれを超えるフラグメントイオン、あるいは双方の存在または量を検出して、検出されたイオンをサンプル中の11-オキソアンドロゲンの存在または量に関連付ける工程とを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.5.液体クロマトグラフィは高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.6.液体クロマトグラフィは高乱流液体クロマトグラフィ(HTLC)を含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.7.11-オキソアンドロゲンは、11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)、11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)、または11-ケトテストステロン(11KT)の少なくとも1つを含んでもよい、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.8.質量分析の前に少なくとも1つの精製工程をさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.9.精製工程は液-液抽出(LLE)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.10.タンデム質量分析は、陽イオン大気圧化学イオン化(APCI)モードを使用する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.11.既知量の各精製11-オキソアンドロゲンをチャコール処理血清中にスパイクして較正曲線を生成することによって、サンプル中の11-オキソアンドロゲンの逆算量を求めることをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.12.各バッチにおいて、二重のセットのチャコール処理キャリブレータを分析することをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.13.既知量の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンを、チャコール処理キャリブレータに加えて、約3.0~1,000ng/dLの範囲内である、目的の精製された分析物の最終濃度を生じさせる、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.14.タンデム質量分析は、少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンについての複数の前駆体-フラグメント遷移を測定するように実行される、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.15.タンデム質量分析は、少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを選択することと、定性的標準としての1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンを選択することとを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.16.少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.17.11OHAについて、前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約303.401であり、定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.100であるフラグメントイオンを含み;そして1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.100および/または約97.100であるフラグメントイオンを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.18.-11β-ヒドロキシアンドロステンジオンを内部標準として加えることをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.19.-11β-ヒドロキシアンドロステンジオンについて、タンデム質量分析は、質量電荷比(m/z)が約308.400である内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約122.200であるフラグメントイオンを生成する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.20.少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ケトテストステロン(11KT)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.21.11KTについて、前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約303.400であり、定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.200であるフラグメントイオンを含み;そして1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.200および/または約91.200であるフラグメントイオンを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.22.-11β-ケトテストステロンを内部標準として加えることをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.23.-11β-ケトテストステロンについて、タンデム質量分析は、質量電荷比(m/z)が約306.400である内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約121.200であるフラグメントイオンを生成する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.24.少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.25.11OHTについて、前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約305.400であり;定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.100であるフラグメントイオンを含み;そして1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.000および97.000であるフラグメントイオンを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.26.-11β-ヒドロキシテストステロンを内部標準として加えることをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.27.-11β-ヒドロキシテストステロンについて、質量分析は、質量電荷比(m/z)が約309.200m/zである内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約121.100であるフラグメントイオンを生成する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
A.28.3.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11OHAの検出、および/または1.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11OHTの検出、および/または1.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11KTの検出を含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つの方法。
B.1.試験サンプル中の少なくとも1つの目的のバイオマーカーの存在または量を決定するためのシステムであって:
1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを含有すると疑われる試験サンプルを提供するためのステーションと;
サンプル中の他の成分から1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを部分的に精製するためのステーションと;
サンプル中の他の成分から1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンをクロマトグラフィにより分離するためのステーションと;
クロマトグラフィにより分離された前記1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを質量分析によって分析して、試験サンプル中の1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンの存在または量を決定するためのステーションと
を含む、システム。
B.2.少なくとも1つの目的のバイオマーカーについての少なくとも1つの内部標準を加えるためのステーションをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.3.1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを部分的に精製するためのステーションは、液-液抽出、固相抽出、またはタンパク質沈殿の少なくとも1つを実行するためのステーションを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.4.1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンをクロマトグラフィにより分離するためのステーションは、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)または高乱流液体クロマトグラフィ(HTLC)を実行するためのステーションを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.5.クロマトグラフィにより分離された1つもしくはそれを超える11-オキソアンドロゲンを分析するためのステーションは、タンデム質量分析計を含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.6.ステーションの少なくとも1つがコンピュータによって制御される、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.7.サンプルは生体サンプルである、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.8.生体サンプルは、血液、血漿、血清、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、器官、毛髪、筋肉、または他の組織サンプルの1つを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.9.タンデム質量分析は、(i)11-オキソアンドロゲンの前駆イオンを生成する工程と;(ii)前駆イオンの1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを生成する工程と;(ii)工程(i)において生成された前駆イオン、および/または工程(ii)において生成された少なくとも1つもしくはそれを超えるフラグメントイオン、あるいは双方の存在または量を検出して、検出されたイオンをサンプル中の11-オキソアンドロゲンの存在または量に関連付ける工程とを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.10.11-オキソアンドロゲンは、11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)、11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)、または11-ケトテストステロン(11KT)の少なくとも1つを含んでもよい、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.11.精製工程は液-液抽出(LLE)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.12.タンデム質量分析は、陽イオン大気圧化学イオン化(APCI)モードを使用する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.13.既知量の各精製11-オキソアンドロゲンをチャコール処理血清中にスパイクして較正曲線を生成することによって、サンプル中の11-オキソアンドロゲンの逆算量を求めるためのステーションをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.14.既知量の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンを、チャコール処理キャリブレータに加えて、約3.0~1,000ng/dLの範囲内である、目的の精製された分析物の最終濃度を生じさせる、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.15.タンデム質量分析は、少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンについての複数の前駆体-フラグメント遷移を測定するように実行される、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.16.タンデム質量分析は、少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを選択することと、定性的標準としての1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンを選択することとを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.17.少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.18.11OHAについて、前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約303.401であり、定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.100であるフラグメントイオンを含み;そして1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.100および/または約97.100であるフラグメントイオンを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.19.-11β-ヒドロキシアンドロステンジオンを内部標準として加えることをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.20.-11β-ヒドロキシアンドロステンジオンについて、タンデム質量分析は、質量電荷比(m/z)が約308.400である内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約122.200であるフラグメントイオンを生成する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.21.少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ケトテストステロン(11KT)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.22.11KTについて、前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約303.400であり、定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.200であるフラグメントイオンを含み;そして1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.200および/または約91.200であるフラグメントイオンを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.23.-11β-ケトテストステロンを内部標準として加えることをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.24.-11β-ケトテストステロンについて、タンデム質量分析は、質量電荷比(m/z)が約306.400である内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約121.200であるフラグメントイオンを生成する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.25.少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.26.11OHTについて、前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約305.400であり;定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.100であるフラグメントイオンを含み;そして1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.000および97.000であるフラグメントイオンを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.27.-11β-ヒドロキシテストステロンを内部標準として加えることをさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.28.-11β-ヒドロキシテストステロンについて、質量分析は、質量電荷比(m/z)が約309.200m/zである内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約121.100であるフラグメントイオンを生成する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
B.29.3.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11OHAの検出、および/または1.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11OHTの検出、および/または1.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11KTの検出を含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのシステム。
C.1.1つもしくはそれを超えるデータプロセッサに:
(a)被験体からサンプルを得る工程と;
(b)必要に応じて、安定な同位体標識された11-オキソアンドロゲンを内部標準としてサンプルに加える工程と;
(c)液体クロマトグラフィを実行する工程と;
(d)タンデム質量分析によって11-オキソアンドロゲンを測定する工程と
の少なくとも1つを含む、サンプル中の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの存在または量を測定するための動作を実行させるように構成された命令を含む、非一過性機械可読記憶媒体で有形に具現化されるコンピュータプログラム製品。
C.2.サンプルは生体サンプルである、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.3.生体サンプルは、血液、血漿、血清、尿、唾液、涙液、脳脊髄液、器官、毛髪、筋肉、または他の組織サンプルの1つを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.4.タンデム質量分析は、(i)11-オキソアンドロゲンの前駆イオンを生成する工程と;(ii)前駆イオンの1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを生成する工程と;(ii)工程(i)において生成された前駆イオン、および/または工程(ii)において生成された少なくとも1つもしくはそれを超えるフラグメントイオン、あるいは双方の存在または量を検出して、検出されたイオンをサンプル中の11-オキソアンドロゲンの存在または量に関連付ける工程とを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.5.液体クロマトグラフィは高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.6.液体クロマトグラフィは高乱流液体クロマトグラフィ(HTLC)を含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.7.11-オキソアンドロゲンは、11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)、11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)、または11-ケトテストステロン(11KT)の少なくとも1つを含んでもよい、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.8.質量分析の前に少なくとも1つの精製工程についての命令をさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.9.精製工程は液-液抽出(LLE)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.10.タンデム質量分析は、陽イオン大気圧化学イオン化(APCI)モードを使用する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品方法。
C.11.既知量の各精製11-オキソアンドロゲンをチャコール処理血清中にスパイクして較正曲線を生成することによって、サンプル中の11-オキソアンドロゲンの逆算量を求めるための命令をさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.12.各バッチにおいて、二重のセットのチャコール処理キャリブレータを分析するための命令をさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.13.既知量の少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンを、チャコール処理キャリブレータに加えて、約3.0~1,000ng/dLの範囲内である、目的の精製された分析物の最終濃度を生じさせるための命令をさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.14.タンデム質量分析は、少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンについての複数の前駆体-フラグメント遷移を測定するように実行される、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.15.タンデム質量分析は、少なくとも1つの11-オキソアンドロゲンの定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンを選択することと、定性的標準としての1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンを選択することとを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.16.少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ヒドロキシアンドロステンジオン(11OHA)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.17.11OHAについて、前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約303.401であり、定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.100であるフラグメントイオンを含み;そして1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.100および/または約97.100であるフラグメントイオンを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.18.-11β-ヒドロキシアンドロステンジオンを内部標準として加えるための命令をさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.19.-11β-ヒドロキシアンドロステンジオンについて、タンデム質量分析は、質量電荷比(m/z)が約308.400である内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約122.200であるフラグメントイオンを生成する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.20.少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ケトテストステロン(11KT)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.21.11KTについて、前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約303.400であり、定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.200であるフラグメントイオンを含み;そして1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.200および/または約91.200であるフラグメントイオンを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.22.-11β-ケトテストステロンを内部標準として加えるための命令をさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.23.-11β-ケトテストステロンについて、タンデム質量分析は、質量電荷比(m/z)が約306.400である内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約121.200であるフラグメントイオンを生成する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.24.少なくとも1つの11-オキソ-アンドロゲンは11-ヒドロキシテストステロン(11OHT)である、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.25.11OHTについて、前駆イオンは質量電荷比(m/z)が約305.400であり;定量化用の1つもしくはそれを超えるフラグメントイオンは、m/zが約121.100であるフラグメントイオンを含み;そして1つもしくはそれを超える追加のクオリファイアフラグメントイオンは、m/zが約105.000および97.000であるフラグメントイオンを含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.26.-11β-ヒドロキシテストステロンを内部標準として加えるための命令をさらに含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.27.-11β-ヒドロキシテストステロンについて、質量分析は、質量電荷比(m/z)が約309.200m/zである内部標準用の前駆イオン、およびm/zが約121.100であるフラグメントイオンを生成する、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
C.28.3.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11OHAの検出、および/または1.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11OHTの検出、および/または1.0ng/dL~1,000ng/dLの範囲にわたる11KTの検出を含む、以前の、そして/または以降の実施形態のいずれか1つのコンピュータプログラム製品。
【0183】
本明細書中で言及される文書は全て、参照によって本明細書に組み込まれる。本発明の範囲および精神から逸脱しない本発明の記載される実施形態に対する種々の修正および変形が、当業者に明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態と共に説明してきたが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきでないことを理解すべきである。実際、当業者に明らかな本発明を実施する記載された態様の種々の修正が、本発明によって包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】