(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】バイオポリマー同定のためのナノギャップデバイス
(51)【国際特許分類】
G01N 27/00 20060101AFI20220609BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220609BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALN20220609BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALN20220609BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20220609BHJP
C12N 9/10 20060101ALN20220609BHJP
C12N 9/16 20060101ALN20220609BHJP
C12N 9/38 20060101ALN20220609BHJP
C12N 9/40 20060101ALN20220609BHJP
C12N 15/10 20060101ALN20220609BHJP
C12Q 1/48 20060101ALN20220609BHJP
C12Q 1/34 20060101ALN20220609BHJP
【FI】
G01N27/00 J
C12M1/34 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6876 Z
C07K16/00
C12N9/10
C12N9/16 Z
C12N9/38
C12N9/40
C12N15/10 Z
C12Q1/48 Z
C12Q1/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560995
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 US2020028364
(87)【国際公開番号】W WO2020214735
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521391748
【氏名又は名称】ユニバーサル シーケンシング テクノロジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ペイミン
(72)【発明者】
【氏名】レイ, ミン
(72)【発明者】
【氏名】チュン, キスプ
【テーマコード(参考)】
2G060
4B029
4B050
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AA15
2G060AD06
2G060DA12
2G060FA07
2G060JA07
2G060KA09
4B029AA07
4B029BB20
4B029FA12
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4B063QR08
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4B063QR32
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4B063QR48
4B063QR55
4B063QS33
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4B063QX02
4H045AA10
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、バイオポリマーの電子的な配列決定および同定のためのデバイスを提供する。本発明の実施形態は、バイオポリマーの電子的感知および同定のためのナノギャップデバイスに関する。本発明におけるバイオポリマーは、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、多糖、天然または合成のいずれかのそれらのアナログなどであるがこれらに限定されない。以下の開示において、DNAが、本発明の本質的な枠組みを例示するための材料として使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオポリマーの同定、特徴付けおよび/または配列決定のためのシステムであって、
a.基材;
b.前記基材上に互いに隣り合わせに配置された第1の電極および第2の電極によって形成されたナノギャップ;
c.前記ナノギャップのサイズとほぼ等しい寸法または前記ナノギャップのサイズに匹敵する寸法を有するように構成され、かつ化学結合を介して一方の末端を前記第1の電極に付着させ、もう一方の末端を前記第2の電極に付着させることによって前記ナノギャップを架橋するように構成されたナノ構造体;
d.前記バイオポリマーと相互作用し生化学的反応を実施するように構成された、前記ナノ構造体に付着された感知分子;
e.前記ナノギャップと前記基材との間に配置されたゲート電極;ならびに
f.前記ゲート電極と、前記第1の電極および前記第2の電極と一緒になった前記ナノギャップとを分離する、第1の絶縁層
を含む、システム。
【請求項2】
a.前記ゲート電極と前記基材とを分離する第2の絶縁層であって、前記基材が非伝導性であるかまたは非伝導性材料でコーティングされている場合には、前記第2の絶縁層が必要に応じたものである、第2の絶縁層;および
b.前記第1の電極および前記第2の電極を覆うキャップ誘電体層
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
a.前記第1の電極と前記第2の電極との間に印加されるバイアス電圧;
b.前記ゲート電極に印加される参照電圧;
c.前記感知分子によって開始されるコンフォメーション変化によって引き起こされる前記ナノ構造体内のゆがみから生じる前記ナノ構造体を通る電流変動を記録するように構成されたデバイス;ならびに
d.前記バイオポリマーまたは前記バイオポリマーのサブユニットを同定、特徴付けおよび/または配列決定するように構成されたデータ分析のためのソフトウェア
をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記バイオポリマーが、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、多糖、天然の、改変されたまたは合成されたもののいずれかの、上述のバイオポリマーのいずれか、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記感知分子が、ネイティブの、変異した、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、核酸プローブ、酵素、受容体および抗体、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、DNAヘリカーゼ、DNAリガーゼ、DNAエキソヌクレアーゼ、逆転写酵素、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、テロメラーゼ、RNAプライマーゼ、リボソーム、スクラーゼ、ラクターゼ、ネイティブの、変異した、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、上述の酵素のいずれか、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記DNAポリメラーゼが、φ29 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、DNAポリメラーゼY、DNAポリメラーゼPol I、Pol II、Pol III、Pol IVおよびPol V、Polα(アルファ)、Polβ(ベータ)、Polσ(シグマ)、Polλ(ラムダ)、Polδ(デルタ)、Polε(イプシロン)、Polμ(ミュー)、PolΙ(イオタ)、Polκ(カッパ)、Polη(エータ)、ネイティブの、変異した、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、上述の酵素のいずれか、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ナノ構造体が、天然の、改変されたまたは合成の核酸を含み、かつ二本鎖DNA、DNA/RNA二重鎖、DNAオリガミ構造体、任意の形状のDNAナノ構造体、またはそれらの組合せを含む、伝導性DNA構造体または伝導性RNA構造体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記DNA構造体または前記RNA構造体が、天然の核酸塩基と実質的に無差別に塩基対合するように構成されたユニバーサル塩基を含み、前記ユニバーサル塩基が、水素結合または塩基スタッキングのいずれかを介して前記天然の核酸塩基と相互作用する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記DNA構造体または前記RNA構造体が、約50%~約95%のGC含量を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記DNA構造体または前記RNA構造体が、約60%~約80%のGC含量を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項12】
前記DNA構造体または前記RNA構造体が、AT塩基対合に実質的に影響することなしに前記ナノ構造体の伝導率を改善する改変されたアデニンを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
DNA構造体またはRNA構造体の伝導率が、(1)7位においてNをCHで置き換えること;(2)前記CHの水素を、メチル基CH
3を含む電子供与基またはフッ素Fを含む電子求引基でさらに置き換えること;(3)7位または8位のいずれかにおいて、前記CHの水素をアルケン基またはアルキン基でさらに置き換えること、によってAT塩基対のアデニンを改変することによって調節可能であるように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記ナノ構造体が、天然の、改変されたもしくは合成のいずれかのアミノ酸で作製された伝導性ポリペプチドもしくはポリペプチド構造体、または任意の伝導性ポリマー、あるいはそれらの組合せである、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記感知分子に隣接して前記ナノ構造体に付着するように構成され、かつ前記バイオポリマーの同定、特徴付けおよび/または配列決定を補助するように構成された分子ピンセット、をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記感知分子が、DNAヘリカーゼを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記キャップ誘電体層の上部に化学的不動態化層をさらに含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1の電極および前記第2の電極の上部に化学的不動態化層をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記第1の絶縁層が、以下の構成:
a.その下のギャップ電極を覆う、前記ナノギャップを横切る実質的に連続した被覆、および
b.前記ナノギャップ部位においてその下の前記ギャップ電極を露出させる、前記ナノギャップを横切る実質的に不連続の被覆
のうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1の絶縁層が、チタン酸ストロンチウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素ハフニウム、酸化ジルコニウム、またはそれらの組合せを含む、約10よりも高い誘電率を有する誘電材料を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記第1の電極および前記第2の電極が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、タングステン(W)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiNx)もしくは窒化タンタル(TaNx)を含む貴金属、または伝導性炭素材料、例えば、カーボンナノチューブもしくはグラフェン、またはMoX
2(X=S、Se、Te)の形態での遷移金属ジカルコゲナイド、またはドープシリコン、あるいはそれらの組合せを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記ゲート電極が、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、窒化チタン(TiNx)、窒化タンタル(TaNx)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、クロム(Cr)、銅(Cu)を含むがこれらに限定されない一般的な金属性材料、または一般的な半導体HK/MG材料、およびそれらの組合せで作製される、請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
a.前記ナノギャップが、約2nm~約1000nmの範囲の幅、約2nm~約1000nmの長さおよび約2nm~約1000nmの深さを含み;
b.前記第1の電極および前記第2の電極が、前記ナノギャップの深さと実質的に等しい厚さおよび前記ナノギャップの幅と実質的に等しい幅を含み;
c.前記ギャップ電極が、約2nm~約1000nmの厚さを含み;
d.前記キャップ誘電体層が、約1nm~約1000nmの厚さを含み;ならびに/または
e.前記第1の絶縁層および前記第2の絶縁層が各々、約1nm~約1000nmの厚さを含む、
請求項1および2に記載のシステム。
【請求項24】
a.前記ナノギャップが、約5nm~約30nmの範囲の幅、約5nm~約20nmの長さおよび約3nm~約30nmの深さを含み;
b.前記第1の電極および前記第2の電極が、前記ナノギャップにおいて、前記ナノギャップの深さと実質的に等しい厚さおよび前記ナノギャップの幅と実質的に等しい幅を含み;
c.前記ギャップ電極が、約3nm~約50nmの厚さを含み;
d.前記キャップ誘電体層が、約3nm~約20nmの厚さを含み;ならびに/または
e.前記第1の絶縁層および前記第2の絶縁層が各々、約2nm~約100nmの厚さを含む、
請求項1および2に記載のシステム。
【請求項25】
前記第1の電極および前記第2の電極が、前記ナノギャップの深さと実質的に等しい合わせた厚さを有する、同じまたは異なる材料の2つまたはそれよりも多くの金属層を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記第1の電極および前記第2の電極が、上層および下層とは異なる材料を含む中間層を有する3金属サンドイッチ層から構成され、前記上層および前記下層の厚さが、約0.5nm~約3nmの範囲であり、合計厚さが、前記ナノギャップの深さと実質的に等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記ナノギャップの壁が先細であり、前記ナノギャップの開口部は、前記ナノギャップの下部よりも広い、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
前記ナノギャップの前記壁の先細りが、前記基材表面の法線に対して約10度以上の角度を含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
単一のナノギャップに関連する全ての構成要素および任意の特色を各々が含む複数のナノギャップを含む、請求項1、2、3、15、17および18に記載のシステム。
【請求項30】
前記複数のナノギャップが、約100~約1億のナノギャップ、好ましくは、約10,000~ほぼ100万との間のナノギャップのアレイを構成する、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記ナノ構造体が、カーボンナノチューブを含む、請求項15から30に記載のシステム。
【請求項32】
バイオポリマーの同定、特徴付けおよび/または配列決定のための方法であって、
a.基材を提供するステップ;
b.前記基材上に第2の絶縁層を構築するステップであって、前記基材が非伝導性であるかまたは非伝導性材料でコーティングされている場合には、前記第2の絶縁層が必要に応じたものである、ステップ;
c.前記第2の絶縁層上に、または前記第2の絶縁層が存在しない場合には前記基材上に直接、ゲート電極層を構築するステップ;
d.前記ゲート電極層の上部に第1の絶縁層を構築するステップ;
e.前記第1の絶縁層上に第1の電極および第2の電極を構築し、それらを実質的に互いに隣り合わせに配置して、ナノギャップを形成するステップ;
f.前記ナノギャップに実質的に匹敵する寸法を含み、化学結合を介して一方の末端を前記第1の電極に付着させ、もう一方の末端を前記第2の電極に付着させることによって前記ナノギャップを架橋するように構成されたナノ構造体を提供するステップ;ならびに
g.前記バイオポリマーと相互作用し生化学的反応を実施するように構成された感知分子を提供し、あらかじめ規定された位置において前記感知分子を前記ナノ構造体に付着させるステップ
を含む、方法。
【請求項33】
a.前記第1の電極と前記第2の電極との間にバイアス電圧を印加するステップ;
b.参照電圧を前記ゲート電極に印加するステップ;
c.前記ナノ構造体に付着された前記感知分子によって開始されるコンフォメーション変化によって引き起こされる前記ナノ構造体内のゆがみから生じる前記ナノ構造体を通る電流変動を記録するように構成されたデバイスを提供するステップ;ならびに
d.前記バイオポリマーまたは前記バイオポリマーのサブユニットを同定、特徴付けおよび/または配列決定するように構成されたデータ分析のためのソフトウェアを提供するステップ
をさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記バイオポリマーが、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、多糖、天然の、改変されたまたは合成されたもののいずれかの、上述のバイオポリマーのいずれか、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記感知分子が、ネイティブの、変異した、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、核酸プローブ、酵素、受容体および抗体、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、DNAヘリカーゼ、DNAリガーゼ、DNAエキソヌクレアーゼ、逆転写酵素、RNAプライマーゼ、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、テロメラーゼ、リボソーム、スクラーゼ、ラクターゼ、ネイティブの、変異した、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、上述の酵素のいずれか、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記DNAポリメラーゼが、φ29 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、DNAポリメラーゼY、DNAポリメラーゼPol I、Pol II、Pol III、Pol IVおよびPol V、Polα(アルファ)、Polβ(ベータ)、Polσ(シグマ)、Polλ(ラムダ)、Polδ(デルタ)、Polε(イプシロン)、Polμ(ミュー)、PolΙ(イオタ)、Polκ(カッパ)、Polη(エータ)、ネイティブの、変異した、発現されたまたは合成されたもののいずれかの、上述の酵素のいずれか、ならびにそれらの組合せからなる群より選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ナノ構造体が、天然の、改変されたまたは合成の核酸のいずれかで作製され、かつ二本鎖DNA、DNA/RNA二重鎖、DNAオリガミ構造体、任意の形状のDNAナノ構造体、およびそれらの組合せを含む、伝導性DNA構造体または伝導性RNA構造体である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記DNA構造体または前記RNA構造体が、天然の核酸塩基と実質的に無差別に塩基対合するように構成されたユニバーサル塩基を含み、前記ユニバーサル塩基が、水素結合または塩基スタッキングのいずれかを介して前記天然の核酸塩基と相互作用する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記DNA構造体または前記RNA構造体が、約50%~約95%のGC含量を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記DNA構造体または前記RNA構造体が、60%~80%のGC含量を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記DNA構造体または前記RNA構造体が、AT塩基対合に実質的に影響することなしに前記ナノ構造体の伝導率を改善するように構成された改変されたアデニンを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記DNA構造体または前記RNA構造体の伝導率が、(1)7位においてNをCHで置き換えること;(2)前記CHの水素を、メチル基CH
3を含む電子供与基またはフッ素Fを含む電子求引基でさらに置き換えること;(3)7位または8位のいずれかにおいて、前記CHの水素をアルケン基またはアルキン基でさらに置き換えること、によってAT塩基対のアデニンを改変することによって調節可能であるように構成される、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記ナノ構造体が、天然の、改変されたもしくは合成のいずれかのアミノ酸で作製された伝導性ポリペプチドもしくはポリペプチド構造体、または任意の伝導性ポリマー、あるいはそれらの組合せを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項45】
前記バイオポリマーの同定、特徴付けおよび/または配列決定を補助するように構成された分子ピンセットを提供するステップ、ならびにあらかじめ規定された位置において前記分子ピンセットを前記ナノ構造体に付着させるステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項46】
前記感知分子がDNAヘリカーゼである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第1の電極および前記第2の電極をキャップ誘電体層で覆うステップであって、前記電極の末端が、前記ナノギャップにおいて露出されている、ステップ、または代替的に前記第1の電極および前記第2の電極を化学的不動態化層で覆うステップをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項48】
前記キャップ誘電体層を化学的不動態化層で覆うステップをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の絶縁層が、以下の構成:
a.その下のギャップ電極を覆う、前記ナノギャップを横切る実質的に連続した被覆、および
b.前記ナノギャップ部位においてその下の前記ギャップ電極を露出させる、前記ナノギャップを横切る実質的に不連続の被覆
のうちの1つを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項50】
前記第1の絶縁層が、酸化タンタル、チタン酸ストロンチウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素ハフニウム、酸化ジルコニウム、およびそれらの組合せを含む、約10よりも高い誘電率を有する誘電材料を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項51】
前記第1の電極および前記第2の電極が、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、タングステン(W)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiNx)、窒化タンタル(TaNx)を含む貴金属、または伝導性炭素材料、例えば、カーボンナノチューブおよびグラフェン、またはMoX
2(X=S、Se、Te)の形態での遷移金属ジカルコゲナイド、またはドープシリコン、あるいはそれらの組合せを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項52】
前記ゲート電極が、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、窒化チタン(TiNx)、窒化タンタル(TaNx)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、クロム(Cr)、銅(Cu)を含む一般的な金属性材料、または一般的な半導体HK/MG材料、およびそれらの組合せを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項53】
前記ナノギャップの部位において:
a.前記ナノギャップが、約2nm~約1000nmの範囲の幅、約2nm~約1000nmの長さおよび約2nm~約1000nmの深さを含み;
b.前記第1の電極および前記第2の電極が、前記ナノギャップの深さと実質的に等しい厚さおよび前記ナノギャップの幅と実質的に等しい幅を含み;
c.前記ギャップ電極が、前記ナノギャップ部位において約2nm~約1000nmの厚さを含み;
d.前記キャップ誘電体層が、約1nm~約1000nmの厚さを含み;ならびに
e.前記第1の絶縁層および前記第2の絶縁層が各々、約1nm~約1000nmの厚さを含む
請求項32および47に記載の方法。
【請求項54】
前記ナノギャップの部位において:
a.前記ナノギャップが、約5nm~約30nmの範囲の幅、約5nm~約20nmの長さおよび約3nm~約30nmの深さを含み;
b.前記第1の電極および前記第2の電極が、前記ナノギャップの深さと実質的に等しい厚さおよび前記ナノギャップの幅と実質的に等しい幅を有し;
c.前記ギャップ電極が、約3nm~約50nmの厚さを含み;
d.前記キャップ誘電体層が、約3nm~約20nmの厚さを含み;ならびに
e.前記第1の絶縁層および前記第2の絶縁層が各々、約2nm~約100nmの厚さを含む
請求項32および47に記載の方法。
【請求項55】
前記第1の電極および前記第2の電極が、前記ナノギャップの深さと実質的に等しい合わせた厚さを有する、同じまたは異なる材料の2つまたはそれよりも多くの金属層を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項56】
前記第1の電極および前記第2の電極が、上層および下層とは異なる材料を含む中間層を有する3金属サンドイッチ層で作製され、前記上層および前記下層の厚さが、約0.5nm~約3nmの範囲であり、合計厚さが、前記ナノギャップの深さと実質的に等しい、請求項32に記載の方法。
【請求項57】
前記ナノギャップの壁が実質的に先細であり、前記ナノギャップの開口部は、前記ナノギャップの下部よりも広い、請求項32に記載の方法。
【請求項58】
前記ナノギャップの前記壁の先細りが、前記基材表面の法線に対して約10度以上の角度である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記絶縁層および前記電極層の各々が、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PVD)、分子蒸着(MVD)を含む半導体材料堆積方法、電気めっきもしくはスピンコーティング、またはそれらの組合せを使用して別々に製造される、請求項32に記載の方法。
【請求項60】
前記絶縁層が、プラズマ励起CVD(PECVD)または低圧CVD(LPCVD)方法のいずれかを使用して製造される、請求項32に記載の方法。
【請求項61】
前記電極が、スパッタリング方法を使用して製造される、請求項32に記載の方法。
【請求項62】
前記第1の電極および前記第2の電極ならびに前記ナノギャップが、EBL(電子ビームリソグラフィ)もしくはEUV(極紫外線リソグラフィ)、またはPDE(プラズマドライエッチング)もしくはIBE(イオンビームエッチング)もしくはALE(原子層エッチング)を使用して製造される、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バイオポリマーの電子的感知および同定のためのナノギャップデバイスに関する。本発明におけるバイオポリマーは、DNA、RNA、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、多糖、天然または合成のいずれかのそれらのアナログなどであるがこれらに限定されない。以下の開示において、DNAが、本発明の本質的な枠組みを例示するための材料として使用される。
【背景技術】
【0002】
2つの電極間に広がるナノギャップは、新たなDNA配列決定技術の開発における使用のためにかなり注目を集めてきた。これは、分子標識化を潜在的に伴わずに、単一分子レベルで生物学的相互作用および生化学的反応を感知するための電子的方法を提供し、これは、色素分子をタグとして要求する蛍光検出を超える利点である。ナノギャップは、半導体技術を使用して製造され得、低コストで大規模に産生され得る。その上、その小さいサイズは、診療現場で使用することができる手持ち式デバイスを保証する。
DNA分子が、電圧バイアス下で連続して、2つの尖った電極間のナノギャップを通過する際に、そのヌクレオチドの各々は、ギャップを横断するトンネル電流をモジュレートする。したがって、個々の核酸塩基を特徴付けるトンネル電流の変化を追跡することによって、DNA分子の配列を読み出すことができる。電子トンネルは指数関数的に減衰するので、ナノギャップは、効率的な電子輸送のために、3nmよりも小さくなければならない。ナノファブリケーション技術の現状では、かかる小さいナノメートルサイズのギャップを、産業規模で高い収量および品質で製作するのは困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明では、ナノギャップは、それを、そのコンフォメーションがその周囲の変化に対して感受性である伝導性ナノワイヤ構造体で架橋することによって、3nmよりも大きくすることができる。これは、付着した感知分子と共にシグナル変換器として機能する。したがって、本発明は、化学的および生物的感知のための機能的ナノギャップデバイスを提供する。特に、本発明は、DNAポリメラーゼをナノワイヤに付着させた場合、DNA配列決定のためのナノギャップデバイスを提供する。単一のDNA分子の配列は、標的DNAを鋳型として使用したプライマーへのヌクレオチドの取り込みによって引き起こされる電気シグナルを記録することによって、リアルタイムで読み出され得る。ナノギャップDNAシーケンサーは、十万のナノギャップのアレイから構成することができ、ヒトゲノムの低コスト(100ドル未満)かつハイスループットリアルタイム(約1時間)の配列決定を可能にする。
【0004】
ナノワイヤ構造体の伝導率をさらに改善するために、ナノギャップ製造を容易にし、シグナル品質を改善するために、ナノギャップをさらに大きくすることができるように、非従来型のゲート電極が、本発明において導入される。ゲート電極の導入は、ナノギャップを、本質的にFET(電界効果トランジスタ)デバイスにする。
【0005】
電界効果トランジスタは、それらのバイオセンサー適用について集中的に調査されてきたが、それは、電界効果トランジスタが、携帯型電子デバイスへと必然的に一体化され得るからであり、また、電界効果がキャパシタンス関連であり、表面変化に対して非常に感受性であることが公知だからである。電解質溶液中での静電相互作用は、最大でデバイスクリーニング長λに及ぶことが公知である。これは、荷電した分析物が検出器界面において電気的に探査され得る長さスケールを定義し;実際、電荷がλ値よりも遠い距離に存在する場合、それは、電解質溶液のイオンによって遮蔽される。一部の報告は、デバイ長の値が、認識事象が起こる距離の値を下回る場合に、どのようにして有機FET(OFET)およびナノワイヤFET(NWFET)センサーが標的分子(分析物)に対して「盲目に」されるのかを示している1、2。一般に、これらの寄稿は、FET検出が、λが分析物のサイズよりも大きくなるような十分に低い塩濃度においてのみ可能であることを示唆している3。
【0006】
従来型のMOSFETセンサーでは、ゲート電極は、絶縁性層によって覆われる。ゲート電極を覆うための絶縁性材料を電解質で置き換えることによって、ゲート電極は、電解質溶液中での化学ポテンシャルのモジュレーションに対して感受性になる4。電解質ゲートFET(EGFET)では、FETチャネルおよびゲート電極は、電解質と直接接触している。したがって、2つの電気化学二重層(EDL)が、1つは半導体/電解質界面に、もう1つはゲート電極/電解質界面に形成される。結果として、チャネル電位のモジュレーションが、容量性プロセスに起因して生じる5。これは、EGFETと、半導体材料のドーピングがトランジスタのオン/オフ切り換え特徴を担っている古典的なMOSFETおよびOFETとの間での、主要な差異である4。EGFETの主要な利点の1つは、望ましくない酸化還元反応またはさらには水分解を防止し、したがって、生体試料中の重要な分析物の検出にとって明らかに重要である水性環境中での適用を可能にする、その比較的低い動作電圧(operating potential)(1V未満)である。最近、Nakatsukaらは、DNAアプタマーを用いて改変されたプリント極薄酸化金属電界効果トランジスタアレイを電解質ゲーティングと共に使用して、生理学的高イオン強度条件下で、小さい分子を検出した6。また、電解質ゲーティングは、単一分子伝導率を測定するために使用されてきた7。
注記:本明細書の全ての図面は、例示のみを目的としている。それらの寸法は、縮尺通りに描写されているわけではなく、要素の形状およびそれらの間での関連性は、全て例示であり、実際の物体を示しているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、ゲート電極なしの調節可能なナノ構造体を使用するナノギャップ分子感知デバイスを示す図である。
【0008】
【
図2】
図2は、絶縁されたゲート電極を用いたナノギャップ分子感知デバイス(従来型のFETデバイス)を示す図である。
【0009】
【
図3】
図3は、むき出しのゲート電極を用いたナノギャップ分子感知デバイス(電解質ゲートFET(EGFET)デバイス)を示す図である。
【0010】
【
図4】
図4は、(a)上部が覆われた感知電極;(b)上部が部分的に露出した感知電極;(c)絶縁されたゲート電極および部分的に上部が露出した感知電極を有する台形ナノギャップを示す図である。
【0011】
【
図5】
図5は、1種よりも多くの金属、(a)2種の金属、(b)3種の金属(金属2および金属3は、同じでも異なってもよい)で作製された感知電極を示す図である。
【0012】
【
図6】
図6は、伝導性DNAオリガミナノ構造体に付着させたDNAポリメラーゼによるDNA配列決定のためのナノギャップデバイスの概略図である。
【0013】
【
図7】
図7は、DNAナノ構造体上の一体化されたユニバーサル塩基分子ピンセットと合わせた、DNAポリメラーゼによるDNA配列決定のためのナノギャップデバイスの概略図である。
【0014】
【
図8】
図8は、DNAナノ構造体上の一体化された核酸塩基認識分子ピンセットと合わせた、DNAヘリカーゼによるDNA配列決定のためのナノギャップデバイスの概略図である。
【0015】
【
図9】
図9は、標準的塩基対、改変されたアデニンとチミンとの間の塩基対の、化学構造、計算されたDFT構造(B3LYP/6-311+G(2df,2p))および分子軌道を示す図である(このDFT研究では、ヌクレオシドの全ての糖部分は、計算を単純化するために、メチル基で置き換えられている)。
【0016】
【
図10】
図10は、
図9に記載されるのと同じ方法でDFTによって計算したAT塩基対のHOMOエネルギー準位に対する、アデニンにおける置換基の影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の概要
本発明は、バイオポリマーの電子的同定および/または配列決定のためのナノギャップ分子感知デバイス、ならびに生化学的反応および生物学的相互作用のプロセス記録を提供する。一実施形態では、ナノギャップは、絶縁層(例えば、窒化ケイ素または二酸化ケイ素)が被せられた非伝導性基材(例えば、シリコン基材)上の2つの電極間で、約10nmのサイズである。電極は、(誘電体)絶縁層によってまたは化学的不動態化単層によって、完全に覆われる。電極は、金属、好ましくは、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、タングステン(W)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)および窒化チタン(TiN)、または伝導性炭素材料、例えば、カーボンナノチューブおよびグラフェン、またはMoX2(X=S、Se、Te)が好ましい遷移金属ジカルコゲナイド、またはドープシリコンで作製される。電子的測定のための機能的ナノギャップデバイスを作製するために、感知分子部分を保有する匹敵するサイズの伝導性ナノ構造体が、ナノギャップを架橋するために使用される。本発明では、米国仮特許出願第62/794,096号および同第62/812,736号に開示されるものなどの調節可能な伝導性DNAナノ構造体が、2つの仮特許出願に開示されたものと同じ付着方法を用いてギャップを架橋するために適切である。DNAポリメラーゼ、例えば、φ29 DNAポリメラーゼが、DNAナノ構造体上に固定化される。配列決定のために、標的DNA(鋳型)は、デバイス中で、ポリメラーゼによる複製に供される。複製プロセスの間に、ヌクレオチドは、DNAポリメラーゼによって、伸長中のDNAプライマー中に取り込まれる。機構的に、DNA中へのヌクレオチドの取り込みには、ポリメラーゼのコンフォメーションにおける変化が伴い、これは、DNAナノ構造体のコンフォメーションを乱す。DNA分子の伝導率は、そのコンフォメーションと関連するので、このプロセスは、異なるヌクレオチドの取り込みを同定するためのシグネチャーとして使用され得る電流の変動を生じる。あるいは、DNAナノ構造体は、カーボンナノチューブ、および二本鎖DNA、ポリペプチドまたは他の伝導性ポリマーで単純に作製された分子ワイヤによって置き換えることができる。
【0018】
本発明の一部の実施形態では、ナノギャップは、従来型のFET概念を使用して形成される。
図2に例示されるように、ゲート電極層は、ナノギャップの下に構築され、感知電極のうち一方はソースとして機能し、もう一方はドレインとして機能する(これらは交換可能である)。ゲート電極の追加は、報告によれば、ナノギャップデバイスの伝導率を増加させ
2、3、11、以前の実施形態において言及されたゲート電極なしのナノギャップよりも高いシグナル強度を可能にする。
【0019】
本発明の一部の実施形態では、ナノギャップデバイス性能についてのさらなる改善として、
図2に示されるような上述のゲート電極が、
図3に例示されるように、その場所の絶縁層を除去することによって、ナノギャップにおいて電解質緩衝液に曝露される。このプロセスは、EGFET型ナノギャップデバイスを創出する。
【0020】
例示目的のために、以下は、ナノファブリケーション技術を使用してEGFETナノギャップデバイスを構築するための方法の例である:
P1.基材調製
半導体または絶縁性(例えば、ガラス)基材
P2.絶縁体2堆積
化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PVD)、分子蒸着(MVD)、電気めっきまたはスピンコーティングなどによって調製されるSiNx、SiOxまたは他の誘電材料。好ましい方法は、プラズマ励起CVD(PECVD)または低圧CVD(LPCVD)である。この層の厚さは、通常、1nm~10μmの間またはそれよりも厚く、好ましくは2nm~100nmである。基材が絶縁性または非伝導性である場合、このステップは、省くことができる。
P3.ゲート電極堆積
この層は、貴金属、例えば、Au、Pt、Pd、W、Ti、Ta、TiNx、TaNx、Al、Ag、Cr、Cu、ならびに半導体において使用される他の金属および/または一般的なHK/MG材料を含み、好ましくは、架橋性ナノ構造体付着のより良い制御のために、感知電極とは異なる。好ましい方法は、スパッタリングまたは蒸発PVDである。この層の厚さは、通常、2nm~1μmの間またはそれよりも大きく、好ましくは3nm~50nmである。
P4.絶縁体1堆積
SiNx、SiOxまたは他の誘電材料が、好ましくは、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PVD)、分子蒸着(MVD)、電気めっきまたはスピンコーティングなどによって、この層を調製するために使用される。好ましい方法は、プラズマ励起CVD(PECVD)または低圧CVD(LPCVD)である。この層の寸法は、絶縁体2と類似である。
P5.感知電極堆積
一般的な金属性伝導性層、例えば、Au、Pt、Pd、W、Ti、Ta、Cr、TiNx、TaNx、Al、Ag、ならびに半導体において使用される他の金属および/または一般的なHK/MG材料、好ましくはPt、Pd、Au、TiおよびTiN。これは、P2で言及された方法によって調製することができるが、最も好ましい方法は、スパッタリングまたは蒸発PVDである。この層の厚さは、架橋性ナノ構造体および感知分子によって決定され、通常、2nm~1μmの間またはそれよりも厚く、好ましくは3nm~30nmである。
P6.感知電極ラインパターニング
P6.1 10,000~900,000uC/cm
2の線量でのEBL(電子ビームリソグラフィ)、またはEUV(極紫外線リソグラフィ)
P6.2 ラインエッチング:絶縁体1層上または絶縁体1層中で止まるPDE(プラズマドライエッチング)またはIBE(イオンビームエッチング)またはALE(原子層エッチング)。ナノギャップにおけるライン幅は、通常、5nm~1μmの間またはそれよりも広く、好ましくは5nm~30nmである。
P7.キャップ誘電体堆積
SiNx、SiOxまたは他の誘電材料が、好ましくは、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、物理蒸着(PVD)、分子蒸着(MVD)、電気めっきまたはスピンコーティングなどによって、層を調製するために使用される。好ましい方法はALDである。誘電体層の厚さは、通常、1nm~1000nmの間、好ましくは3nm~20nmである。
P8.ナノギャップパターニング
P8.1 10,000~900,000uC/cm
2の線量でのEBL、またはEUV
P8.2 ギャップエッチング:ゲート電極層上またはゲート電極層中で止まるPDE(プラズマドライエッチング)またはIBE(イオンビームエッチング)またはALE(原子層エッチング)、および次いで、ギャップエリアにおける絶縁性層1の除去。
P9.相互接続およびパッドパターニング
これは、リフトオフならびに通常のリソ-エッチプロセスへの追加によって処理される。
従来型のFETナノギャップデバイス(
図2)の構築のために、ステップP8.2のナノギャップエッチングを変化させて、ゲート電極の代わりに、絶縁体1上で停止させる。ゲート電極なしのナノギャップデバイス(
図1)の構築のためには、ただ単にステップP2およびP3を省く。
【0021】
本発明の一部の実施形態では、ナノギャップ開口部は、
図4(a)、(b)および(c)に例示されるように、下部よりも広くされ、台形ギャップ形状を形成する。ギャップの上部において広くなったナノギャップ開口部は、ナノギャップ内の感知電極上へのDNAナノ構造体の付着、ならびにポリメラーゼによる標的DNAの捕捉および複製を容易にする。広くなった開口部を作製するために、ナノギャップ製造ステップ8.2において、面法線よりも10度以上小さい角度で、ナノギャップをエッチングする。
【0022】
本発明の一部の実施形態では、感知電極は、1つよりも多くの金属層で作製され(
図5を参照のこと)、これは、より良い電極製造および/またはより良い電気的特性ならびにより柔軟性のある化学的付着特性のための良好な接着を提供する。
図5aに示される2つの金属層は、同じ厚さで作製されても異なる厚さで作製されてもよく、各々が1nm~1μmの範囲であり、好ましくは、金属層1は、3nm~20nmの範囲である。
図5bに示される3金属サンドイッチ感知電極は、中心の金属を保護する必要がある場合または任意の絶縁性材料へそれを接着させることが非常に困難である場合に、必要な場合がある。3金属サンドイッチでは、金属2および金属3は、同じ材料でも異なる材料でもよく、接着層として機能するように、非常に薄く(0.5~3nm)され得る。一般に、各層の厚さ、ならびに電極全体の厚さは、3nm~30nmの範囲である。これは、数マイクロメートルの厚さであり得、または一部の場合にはさらに厚くてもよい。
【0023】
一実施形態では、5~20nmの範囲のサイズを有するナノギャップが製造される(
図6を参照のこと)。DNAオリガミ構造体が、ナノギャップを架橋するために両方の電極に付着され、その上に、DNAポリメラーゼが固定化される。DNA構造体および電極への付着についての全ての関連の方法は、米国仮特許出願第62/812,736号に開示されている。DNAポリメラーゼは、天然の、変異したまたは合成されたもののいずれかの、ファイ29(φ29)DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Tagポリメラーゼ、DNAポリメラーゼY、DNAポリメラーゼPol I、Pol II、Pol III、Pol IVおよびPol V、Polα(アルファ)、Polβ(ベータ)、Polσ(シグマ)、Polλ(ラムダ)、Polδ(デルタ)、Polε(イプシロン)、Polμ(ミュー)、PolΙ(イオタ)、Polκ(カッパ)、polη(エータ)、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、テロメラーゼなどの群から選択される。DNAは、ナノギャップデバイス中で、ポリメラーゼ複製を介して配列決定される。あるいは、DNAナノ構造体は、二本鎖DNA、ポリペプチドおよび他の伝導性ポリマーで作製された分子ワイヤによって置き換えられ得、またはより複雑なDNAナノ構造体によって置き換えられ得る。
【0024】
本発明の一部の実施形態では、ゲート電極上の絶縁性層(絶縁体1)は、酸化タンタル、チタン酸ストロンチウム、酸化ハフニウム、酸化ケイ素ハフニウム(hafnium silicon oxide)、酸化ジルコニウムを含む、高い誘電率(k>10)を有する材料であり、酸化ハフニウムが好ましい。また、絶縁性層は、2nm~1μmの範囲の厚さを有するかまたはそれよりも厚く、2~100nmが好ましい。
【0025】
本発明の一部の実施形態では、ナノギャップは、2nm~1μmの範囲の幅、2nm~1μmの範囲の長さおよび2nm~1μmの範囲の深さの寸法を有する。
【0026】
本発明の一部の実施形態では、伝導性ナノワイヤは、前記ナノギャップを架橋するために、ソース電極およびドレイン電極の両方に付着される。ナノワイヤは、個々の感知分子がナノワイヤ上に完全に配置されるのを可能にしつつ、感知分子がナノワイヤの表面上に並行して据え付けられることを防止するために、その幅を感知分子の直径に一致させた、1つの感知分子または複数の感知分子を収容するために調節可能な寸法を有する。
【0027】
前記ナノワイヤは、天然に存在する核酸、合成核酸、またはそれらのハイブリッド;天然に存在するペプチド、合成ペプチド、またはそれらのハイブリッド;非天然のアミノ酸を含有するタンパク質から構成されるナノ構造体である。これらのナノ構造体は、1つの部位または複数の部位を介した感知分子の固定化のためのあらかじめ規定された機能を含有する。これらのナノ構造体はまた、1つの付着部位または複数の部位を介して電極の各々にそれらを付着させるための直交する機能を含む。
【0028】
前記感知分子は、核酸プローブ、酵素、受容体、抗体を含む様々な認識分子である。これらの分子は全て、それらの標的と特異的に相互作用し、これがナノワイヤの構造を乱して、電流における測定可能な変化を生じる。
【0029】
一部の実施形態では、本発明は、ナノギャップDNA配列決定デバイスを提供する。
図7に示されるように、DNA配列決定デバイスは、分子ワイヤとして機能するDNAタイルナノ構造体によって架橋された、2つの電極間に広がる上に築かれ、DNAタイルナノ構造体の上に、DNAポリメラーゼが、DNA配列リーダーとして固定化される。配列決定のために、酵素は、標的DNAを鋳型として使用してプライマーへとヌクレオチドを取り込み、これには、コンフォメーションにおける変化が伴い、これは、根底にあるDNAナノ構造体を乱して、電流フローにおける変動を生じる。変化をさらに増幅するために、天然に存在する核酸塩基と塩基対を等しく形成することができるユニバーサル塩基が、DNAタイル上でDNAポリメラーゼの近傍に配置される。したがって、DNAポリメラーゼがDNA分子を動かす場合、これは、ユニバーサル塩基との核酸塩基対合もまた乱して、DNAナノ構造体におけるより多くの変化を生じ、より大きい電気的応答を誘発する。
【0030】
一部の他の実施形態では、DNA配列決定デバイスは、DNAヘリカーゼおよび核酸塩基認識分子ピンセットを含み、これらは共に、あらかじめ規定された位置でDNAナノ構造体上に固定化される(
図8)。一本鎖DNAがDNAヘリカーゼによってナノギャップを通過する際に、核酸塩基は、分子ピンセットによって連続して捕捉される。核酸塩基と分子ピンセットとの間の相互作用は、設計によって天然に存在する核酸塩基間で異なり、したがって、これらは、異なる電気的応答を誘発する。したがって、DNA配列は、電気的シグナルから推定することができる。
【0031】
一部の実施形態では、DNAナノ構造体は、異なるGC/TA比を含む。GC塩基対は、TA塩基対よりも伝導性が高いことが周知である8。したがって、DNAナノ構造体の伝導率は、GC含量を変化させることによって調節することができる。GC塩基対はTAよりも硬いので、DNAナノ構造体の柔軟性は、TA含量を増加させることによって増加され得、これは、化学的または生物学的事象に対してより応答性が高いDNAナノ構造体を生じる。DNAナノ構造体のより良い伝導率のために、50%~95%、好ましくは60%~80%のGC含量が必要である。
【0032】
一部の実施形態では、DNAナノ構造体は、改変されたアデニン(単数または複数)を含み、これは、それらの柔軟性を維持しつつDNAナノ構造体の伝導率を改善するために使用される(
図9)。GC塩基対は、水溶液中でB型コンフォメーションで、AT塩基対よりも約3倍伝導性が高いことが測定されている
8。GC配列の伝導率は、それらの長さと共に線形に減衰するが、TA配列の伝導率は、それらの長さと共に指数関数的に減衰する
9。これらは、これらの塩基対の分子構造によって説明され得る。GC塩基対(2、
図9)は、AT塩基対(1、
図9)と比較して、そのLUMOとHOMOとの間のより小さいエネルギーギャップを有する。したがって、AT塩基対は、DNA中の電子移動の障壁になる。電極-DNA-電極接合点を介した電子輸送の場合、このプロセスが、金属電極のフェルミ準位(E
F)近辺の最も効率的なプロセスである。したがって、電極のフェルミ準位に最も近いそのエネルギー準位を有する分子軌道(MO)が、分子コンダクタンスに主に寄与する
10。そのLUMOと比較して、GC塩基対のHOMOは、金電極のフェルミ準位(-5.5eV)により近いエネルギーを有し、したがって、DNA分子は、HOMOが位置する塩基Gを介して伝導する(2、
図9)。DNA分子の伝導率を改善するために、本発明は、天然に存在するアデニンよりも、金属電極のものに近いHOMOエネルギー準位を有する改変されたアデニンを提供する。
図9に示されるように、改変は、アデニンの7位および8位において行われ(表示については
図9中のAT塩基対1を参照のこと)、これは、改変されたアデニンがチミン(T)と共に標準的ワトソン・クリック塩基対を形成するのに影響しない。本発明は、共役構造を形成するために、二重結合および三重結合を含む有機基を使用して、アデニンまたは7-デアザアデニン(dazaadenine)を改変する。これらの分子は、異なる程度まで、GC塩基対のものにより近いHOMOで、水素結合を介してTと塩基対を形成し得る(
図9中の3、4、5、6)。
【0033】
一部の実施形態では、本発明は、DNAの伝導率を調節するためにDNA塩基対のHOMO準位を調節するための方法を提供する。AT塩基対1(
図9)を塩基対7(
図10)と比較することによって、アデニンの7位においてNをCHによって置き換えることで、塩基対のHOMO準位エネルギー準位は、-6.03eVから-5.65eVに上昇する。
図10に示されるように、CHの水素を電子供与基(EDG)メチル基(CH
3)によって置き換えることで、塩基対のHOMO準位エネルギー準位は、-5.65eVから-5.48eVにさらに増加するが、CHの水素を電子求引基(EWG)フッ素(F)によって置き換えると、塩基対のHOMO準位エネルギー準位は、-5.65eVから-5.73eVに減少する。したがって、DNAナノ構造体の伝導率は、標準的塩基対にEDGまたはEWGを導入することによって調節され得る。EDGおよびEWGは共に、DNAのHOMOエネルギー準位および次には伝導率を調節することができる置換基のいずれかであり得る。
【0034】
一部の実施形態では、本発明は、DNAナノ構造体上に固定化されたDNAポリメラーゼに付随してユニバーサル塩基を有するデバイスを提供する。ユニバーサル塩基は、天然に存在する核酸塩基と無差別に塩基対合することができる。これは、一本鎖DNAと相互作用して、均一な合成プロセスのためのDNAポリメラーゼを介したその移行を減速させる。ユニバーサル塩基は、天然に存在する核酸塩基との水素結合相互作用のためのトリアゾール-カルボキサミド、および天然に存在する核酸塩基とのスタッキング相互作用のための5-ニトロインドール(nittroindole)などの化合物である。
【0035】
他の実施形態では、本発明は、DNAナノ構造体上に固定化されたDNAヘリカーゼに付随して分子ピンセット(米国仮特許出願第62/772,837号に開示されるものから選択される)を有するデバイスを提供する。ヘリカーゼは、核酸塩基を読み出すために、DNAを分子ピンセットへと移行させる。
【0036】
一部の実施形態では、上述のナノギャップDNA配列決定デバイスおよび方法は、RNAおよびタンパク質を配列決定することにも適用可能である。
【0037】
一部の実施形態では、100~1億の間、好ましくは、1,000~100万の間のナノギャップのアレイを含有するナノチップが、バイオポリマー感知または配列決定のスループット要件を満たすために作製される。
【0038】
一部の実施形態では、1つのチップ上のナノギャップデバイスのアレイは、複数の領域またはモジュールへと分割され、シグナルは、単一の記録ユニットのバンド幅およびサンプリング周波数の制限を克服するために、別々のシグナル記録ユニットによって1つの領域から他の領域へと別々に読み出される。
概論
本明細書で言及される全ての刊行物、特許および他の文書は、それらの全体が参照により取り込まれる。他に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明は、種々の実施形態の記載によって例示され、これらの実施形態は、かなり詳細に記載されてきたが、本出願の範囲を制限することもなく、決して限定することもないことが、本出願人らの意図である。さらなる利点および改変は、当業者に容易に明らかとなる。したがって、本発明は、そのより広い態様において、具体的な詳細、代表的なデバイス、装置および方法、ならびに示され記載される例示的な例に限定されない。したがって、発展が、本出願人の一般的な発明概念の精神から逸脱することなしに、かかる詳細から行われ得る。
参考文献
【化1】
【化2】
【国際調査報告】