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特表2022-529005コア積層体スタックおよびコア積層体を接着剤で接続する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】コア積層体スタックおよびコア積層体を接着剤で接続する方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220609BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
B32B27/00 C
C09J4/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561024
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2020060999
(87)【国際公開番号】W WO2020212623
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】102019110261.8
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521269506
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲゼルシャフト ツール フェルドルンク デル アンゲヴァントテン フォルシュンク アインゲトラゲナー フェライン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100168631
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 康匡
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルケン ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】デゲンハルト ヨースト
(72)【発明者】
【氏名】ポップ マティアス
【テーマコード(参考)】
4F100
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100BA08
4F100CB00B
4F100CB02B
4F100EH61B
4F100EJ08B
4F100EJ17
4F100GB41
4F100JA06B
4F100JK15A
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00B
4J040EK031
4J040FA121
4J040FA131
4J040JA02
4J040JB06
4J040JB07
4J040LA06
4J040LA09
4J040MA02
4J040MB05
4J040MB09
4J040MB14
4J040NA19
4J040PA15
4J040PA32
4J040PA33
(57)【要約】
本発明は、互いに重ねて接着剤によって互いに接続した複数の積層体を含むコア積層体スタックであって、最小質量の接着剤によって一緒にされた積層体ペア間の接着剤の質量と、最大質量の接着剤によって一緒にされた積層体ペア間の接着剤の質量の比が≦1:1.5、好ましくは≦1:2より好ましくは≦1:2.5、特に好ましくは≦1:3である、コア積層体スタックに関する。本発明はまた、コア積層体スタックを製造する方法であって、以下のステップ:a)コア積層体を用意するステップ、b)液体形態の接着剤を用意するステップ、c)一緒に接着される面が、好ましくは最大の重なりを持って、互いに向かい合うように、コア積層体のスタックを形成するステップ、d)接着される各積層体間の隙間に毛管力によって接着剤が引き込まれるように、ステップb)からの接着剤でスタックを濡らすステップ、およびe)接着される積層体間の接着剤を硬化させるステップを含む方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ねて接着剤によって互いに接続した複数の積層体を含む、コア積層体スタックであって、最小質量の接着剤によって一緒にされた積層体ペア間の前記接着剤の質量と、最大質量の接着剤によって一緒にされた積層体ペア間の前記接着剤の質量の比が、≦1:1.5、好ましくは≦1:2、より好ましくは≦1:2.5、非常に好ましくは≦1:3である、コア積層体スタック。
【請求項2】
前記積層体間の隙間の外側縁部が、各々の場合において、接着剤で少なくとも部分的に充填されている、請求項1に記載のコア積層体スタック。
【請求項3】
接着剤が、隙間に面する両方の積層体側面上に、前記積層体間の各隙間の連続周辺部の≧10%、前記積層体間の各隙間の好ましくは≧20%、より好ましくは≧40%、非常に好ましくは80%で配置されている、請求項1または2に記載のコア積層体スタック。
【請求項4】
少なくとも50の積層体、好ましくは、数が50~15,000、より好ましくは200~2000、非常に好ましくは300~1000の積層体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のコア積層体スタック。
【請求項5】
前記積層体間の少なくとも1つの隙間において少なくとも前記接着剤の層厚が、≧20%、好ましくは≧30%、より好ましくは≧40%変動する、請求項1~4のいずれか1項に記載のコア積層体スタック。
【請求項6】
前記接着剤が、アクリレート系接着剤、好ましくは嫌気性硬化接着剤またはシアノアクリレート接着剤、より好ましくは嫌気性硬化接着剤である、請求項1~5のいずれか1項に記載のコア積層体スタック。
【請求項7】
完全硬化前の前記接着剤が、15~1000mPas、好ましくは3~500mPas、より好ましくは5~200mPasの粘度を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のコア積層体スタック。
【請求項8】
シートの結合される表面が、0.5~15μm、好ましくは1~10μm、好ましくは1~5μmの粗さRZを有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のコア積層体スタック。
【請求項9】
前記積層体の結合される領域が、各々の場合において0.5~2000、好ましくは5~1000、より好ましくは50~500cm2である、請求項1~8のいずれか1項に記載のコア積層体スタック。
【請求項10】
前記スタック全体が、≧0.1MPa、好ましくは≧1MPa、より好ましくは3MPaの重ね剪断強度を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のコア積層体スタック。
【請求項11】
前記積層体がそれぞれ電気シート製、好ましくは結晶性電気シート製、より好ましくは結晶性軟磁性電気シート製、非常に好ましくは絶縁被膜を有する結晶性軟磁性電気シート製である、請求項1~10のいずれか1項に記載のコア積層体スタック。
【請求項12】
コア積層体スタックを製造する方法であって、
a)コア積層体を用意するステップ、
b)液体形態の接着剤を用意するステップ、
c)互いに結合される領域が互いに向かい合うように、好ましくは最大の重なりを持って向かい合うように、前記コア積層体のスタックを形成するステップ、
d)それぞれ結合される前記積層体間の隙間に毛管力によって接着剤が引き込まれるように、ステップb)からの接着剤で前記スタックを濡らすステップ、および
e)結合される前記積層体間の接前記着剤を完全に硬化させるステップ
を含む方法。
【請求項13】
前記積層体の結合される領域の少なくとも一部が、ステップc)の前に、ステップb)からの前記接着剤との濡れ性を増加させる前処理にかけられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載のコア積層体スタックが製造される、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに重ねて接着剤によって互いに接続した複数の積層体を含むコア積層体スタックであって、最小質量の接着剤によって一緒にされた積層体ペア間の接着剤の質量が、最大質量の接着剤によって一緒にされた積層体ペア間の接着剤の質量に比べて小さい、コア積層体スタックに関する。本発明は、さらに、コア積層体スタック、とりわけ、記載の接着剤シナリオを特色とするそのようなスタックを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い効率の電気機械を製造するために、シートパック(sheet pack)内の渦電流損失を抑制する効率を最大限にするためにはシート厚の薄い個々の積層体で構成されたシートパックを実現することが必要である。
普通のパック形成法は、個々の積層体間の機械的なクランプによって積層体を接続してパックを形成する打ち抜きスタッキングの方法である。しかし、シートの変形の結果として、シートの磁気特性、ひいてはシートパックの磁気特性が悪影響を受ける。
打ち抜きスタッキングの他に、レーザー溶接によるパック形成法が実際に知られているが、しかしやはり、磁気特性が悪影響を受け、やはりまた、渦電流損失の程度が増す。
良好な強度および良好な磁気特性を有するシートパックを得るために、電気シートストリップが両面の全領域にわたって接着剤の薄層で被覆されるシートパック形成法が知られている(Backlack結合ワニス法)。接着剤は、打ち抜き後、後続の硬化ステップでシートパックを加熱することによって硬化されるか、または、パック形成の前および事前打ち抜きの後および最終打ち抜きの前に、積層体をパックブレーキへ移動して、例えばIR放射を使用して、個々の積層体の短時間加熱によって、硬化される。この方法の不都合な点は、硬化のために必要なエネルギーが大きく、結果としてサイクル時間が長いことである。
【0003】
さらに、事前打ち抜きの後、最終打ち抜きの前に、接着剤が点状に塗布され、接着剤はパックブレーキで硬化される接着剤パック形成法がある。結果として得られる結合は全領域にわたっては存在せず、結合強度は比較的低い。
さらに、例えば、硬化が銅イオンによって触媒される嫌気性接着剤の使用に基づく接着剤パック形成法がある。液体活性剤(金属イオンを含む溶液)ではなく、硬化に対して必要とされる触媒銅は、物理的方法によって塗布される。G.Habenichtによる研究論文「Kleben」[接着剤結合]では既に、特に、黄銅および青銅などの銅含有合金の他に、また低レベル合金のスチール、および金属光沢表面のあるアルミニウムも、活性剤なしでさえ嫌気的に結合することができると言及している。「Gebrauchsanweisung Allgemeine Hinweise zur Produktgruppe DELO -ML」[DELO -ML製品群についての一般的使用説明書]、www.delo.de, DELO_ML_GEBR_(2).pdfは、どのように触媒活性がない表面の表面前処理をまた銅含有ブラシを使用して遂行することができるか記述している。
記載の方法のすべてにおいて、少なくとも2つの積層体を接触させる前に、少なくとも1つの積層体に接着剤が存在する。
各シートはロール塗布による展開形または印刷方式による点/局所の形態のいずれかで接着剤を別々に用意しなければならないので、接着剤塗布のこの方法は非常に高コストで不都合である。
【0004】
さらに、特に接着剤または接着剤の成分が打ち抜き作業において塗布される場合、接着剤が電気シートの縁部に出て来ないことを確実にするために注意しなければならない。
さらに、電気シートの表面の粗さに注視して、接着剤の量を塗布することが必要である。目的は、占積率を減じないように、成分へ導入される接着剤の量を最小限にすることである。
【0005】
この関係の問題は、ある種のシートで、表面の粗さが著しく増加した場合、欠陥ができ得るということである。同様にあり得るのは、結合される積層体間の結合隙間中の汚れまたは研削された材料の粒子の存在である。この結果、塗布される接着剤の量は、表面の粗さの違いの結果および/または汚れで汚染する結果、拡大した結合隙間を充満するのには十分ではない。したがって、弱点が結合中に形成され、結果としてコア積層体スタックの製造ステップ内での不合格品が増加する。
類似するシナリオは、コア積層体が、わずかな屈曲のみであっても屈曲を示す事例で存在する。ここでも同様に、結合隙間が広がり、標準化された量の接着剤は結合隙間を閉めるのに十分でない。積層体が一緒にスタックされる前に、次のコア積層体が曲げられる場合、この効果は特に顕著となる。打ち抜きを行うシートストリップの一様でない厚さのスタックで補正するために、この手順はしばしば実際に用いられる。しかしながら、コア積層体中に屈曲-少しではあるが(例えば、打ち抜きを行ったシートストリップ中に既に存在し得る)がある場合、結果は、曲がりが非常に広がった結合隙間を生じるということである。しかし同時に、そのような曲がりの結果、より小さくなった結合隙間の位置もまた存在可能になる。したがって実際に事実として、存在する接着剤の量が少なすぎる結合隙間内のある位置では、結合隙間から接着剤がはみ出し、汚染を引き起こすことがあり、一方、他の位置では接着剤が少なすぎ、そのために可能性のある結果は、互いに重なり合う積層体が十分に接着剤によって接続されない領域が存在することである。
【0006】
先行技術において、これらの問題は、結合隙間が確実に充填される程度に、コア積層体間の接着剤の量を上げることによりしばしば解消される。先行技術によると、結果として得られる結合したコア積層体スタックの十分な強度を保証するために、接着剤の量は、各結合隙間において個々に必要とされる量によらず、代わりに想定される最大の結合隙間によって塗布される。これは占積率の相当な減少を引き起こす。変圧器積層スタックの構築において、特に、パック形成法は、含浸樹脂と呼ばれるものを用いる。これらは、コアスタックにおいて同様に、コアスタックの先行排気の後、圧力下でしばしば塗布される。一成分系の場合に、硬化は高い温度で行う。含浸が室温で実行される場合、二成分系が用いられる。
ここでの不都合は、同様に電気シートスタックの外側の含浸樹脂の完全な硬化であり、それによって特に電気モーター用の回転子および固定子の場合には最終輪郭をゆがませることである。電気シートパックの高価で不都合なばり取りはその結果である。
【発明の概要】
【0007】
この背景技術に対して、本発明の目的は、先行技術において概説した不都合を緩和または克服することができる方法を特定することである。目的は、とりわけ、目標、特に接着剤が望ましくない位置に出て来るのを防止することを狙った個々の結合隙間に最適な量の接着剤を導入することである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この目的は、コア積層体スタックを製造する方法であって、
a)コア積層体を用意するステップ、
b)液体形態の接着剤を用意するステップ、
c)互いに結合される領域が互いに向かい合うように、好ましくは最大の重なりを持って向かい合うように、コア積層体のスタックを形成するステップ、
d)それぞれ結合される積層体間の隙間に毛管力によって接着剤が引き込まれるように、ステップb)からの接着剤でスタックを濡らすステップ、および
e)結合される積層体間の接着剤を完全に硬化させるステップ
を含む方法により本発明に従って達成される。
【0009】
この方法を用いると、驚いたことに、互いに緊密に重なりあう電気シート積層体の全領域にわたって電気シートスタックの縁部だけでなく内部においても、接着剤での濡れを非常に大規模に引き起こすことが可能になる。この特定の効果は、コア積層体スタックの製造中の不合格品が減少するということである。本発明の方法は、以下に、より詳細に提起される。
本発明の方法の高い効率の結果、既に上記で示したように、少なくとも個々の積層体ペア間の一般に不十分な結合に基づき、不合格品とされなければならなかったであろうコア積層体スタックが、ここでは、これらの重要な結合隙間においてさえ最適な量の接着剤を有し、結果的に、十分な使用強度を有するということが事実である。
したがって、また本発明の一部は、互いに重ねて接着剤によって互いに接続した複数の積層体を含むコア積層体スタックであって、最小質量の接着剤によって一緒にされた積層体ペア間の接着剤の質量と、最大質量の接着剤によって一緒にされた積層体ペア間の接着剤の質量の比が≦1:1.5、好ましくは≦1:2より好ましくは≦1:2.5、非常に好ましくは≦1:3である、コア積層体スタックである。
【0010】
本発明の意味での接着剤は、DIN EN 923:2016-03 "Klebstoffe - Benennungen und Definitionen"[接着剤-用語および定義]による接着剤である。好ましい接着剤は後に記載される。
個々の結合隙間(積層体間の隙間、すなわち、垂直に観察した場合、互いに重なり合う積層体ペアによって隠れた領域)中の接着剤の質量がどのように決定されるかも、また後に記載される(参照:測定例)。
既に上に示したように、本発明の方法は、通常の要件を完全に満たすコア積層体スタックの製造を可能にするが、先行技術からの他の方法を用いたなら、不十分な結合のために最小必要条件も満足させないであろう。言いかえれば、本発明の方法の力によって、コア積層体スタック内のそれらの結合隙間さえも適切に接着剤で充填することが可能であり、他の技法では、それらの量に関して、全体としてスタック中の結合隙間の平均値からあまりにも急激に外れる。これらの乖離に関する可能な理由は、例えば、隣接した積層体は最適に配列しないことであり;先の打ち抜きプロセスのために、特に縁部領域であり得る事例のように、1つまたは両方の積層体それ自体が最適な平面を欠くので、隣接した積層体が互いに最適の平面で配列することができないことであり;または、結合隙間の最小限の大きさを増加させる結合隙間中に存在する小さな(汚れ汚染)粒子があることおよび/または互いに隣接した積層体の平行配列を妨げることである。
【0011】
他の結合隙間の体積に対する結合隙間体積のこれらおよび他の乖離は、いわば、これが必要な位置に正確に、隙間の中へのより多いまたはより少ない接着剤の導入によって、本発明の方法は自動的に補正する。これは、可能性として最も弱い場所の結合(その体積から外れる結合隙間の結合)が改善されるので、全体的なコア積層体スタック内の凝集が改善されることを保証する。
さらに、この方法によって、占積率は、先行技術でのように、接着剤によって減少するのではなく、その代りに、個々のコア積層体の微細構造によってのみ決定されるので、最大の占積率を有する結合したコア積層体スタックを得ることは可能である。
この本文の目的として、占積率は以下のように定義される:
F=d金属 / (d金属 + 2 × d絶縁膜 + d<隙間>
F: 占積率
<隙間>:隣接した2つの各積層体間のコア積層体スタックにわたって平均した隙間。
金属:シートの金属層の厚さ
シートの厚さ:金属層+ 2 × 絶縁層(存在する場合)の厚さ
ただし、この式は、好ましくは≧20コア積層体を有するコア積層体スタックに対して有効である。
【0012】
したがって、≧97%、好ましくは≧98%、より好ましくは≧98.5%の占積率を有する本発明のコア積層体スタックが好ましい。
本発明において好ましい結合隙間厚さ(d<隙間>)は、≦10μm、好ましくは≦7μm、より好ましくは≦5μmである。
ここで本発明において、本発明のコア積層体スタックが、好ましいまたはさらに好ましい結合隙間厚さの1つを有すること、および/または、好ましいまたはさらに好ましい占積率の1つを有すること、および同時に良好な重ね剪断強度(lap shear strength)、とりわけ後で、以下に好ましいまたはより好ましいと記載される重ね剪断強度を有することが好ましい。
単なる比較として、述べてもよいのは、例えば先行技術において、1.5μmの両側絶縁層を有する、350μmのシート厚から作られたコア積層体で形成されたコア積層体スタックの事例では、≧12μmの結合隙間幅が、通常十分な重ね剪断強度を達成するために必要とされ、これによって≦96%の占積率をもたらすことである。
【0013】
さらに、接着剤によってのみ一緒にされたコア積層体スタックが、本発明の目的として好ましい。したがって、好ましくは、コア積層体スタックは、打ち抜きパック形成されず、代替選好として、それらは溶接されず、さらなる選好としてレーザー溶接されない。
本発明の目的として、さらに、本発明のコア積層体スタックのコア積層体が同一の大きさを有することが好ましい。この文脈において、当業者は、当然、小さな製作公差が生じ得ることを知っているが、しかし、本発明の目的として、1%を超える表面の差を生じてはならない。
さらに、本発明の目的として、本発明のコア積層体スタック中の隣接したコア積層体対の共通の界面は、同一の大きさの表面の法線の射影をそれぞれ有することが好ましい。この文脈において、当業者は、当然、小さな製作公差が生じ得ることを知っているが、しかし、本発明の目的として、1%を超える表面の差を生じてはならない。
コア積層体は好ましくは電気シートからなり、特に、X線回折図が離散的な反射を特色とする電気シートである、少なくとも半晶質の電気シートが好ましい。本発明の目的としての電気シートは、好ましくは軟磁気特性を有し、例えば、磁気コア用材料として適切な材料である。電気シートは、好ましくは鉄-ケイ素合金で構成される冷間圧延材料を含み、そこから製造された積層体は、電気機械用の磁気回路、特にダイナモ、発電機、電気モーター、変圧器、リレー、回路遮断器、誘導コイル、点火コイル、電力計および制御可能な偏向磁石の鉄心の製造に使用可能である。
【0014】
本発明の目的として、電気シートは、DIN EN 10106:2016-03による最終焼鈍を受けた冷間圧延され無配向性の電気シート、またはDIN EN 10107:2014-07による最終焼鈍を受けた配向性電気シートであることが特に好ましい。
本発明で使用される積層体は、好ましくは構成される材料に関して非晶質、特に、ガラス状金属ではない。
電気シート用の好ましい材料は、鉄およびケイ素を含む、または好ましくはそれらからなる合金であり、より好ましくは1~10%のケイ素含有率、さらに好ましくは2~6%のケイ素を有する。
電気シートは、本文の目的として、好ましくは絶縁層を含む。
好ましくは、本発明のコア積層体スタックは、積層体間の隙間の外側縁部が、各事例において、接着剤で少なくとも部分的に充填されている。
積層体間の隙間の外側縁部は、積層体の成形に従って非常に違った風に成形されてもよい。既に上に定義していたように、積層体間の隙間は、互いに接合される積層体のそれぞれが、互いに面する領域である。これは、積層体間の隙間において、向かい合う積層体の1つの表面が、2つの側の境界として常に存在することを意味する。この関係において、隙間体積の残りの境界は外側縁部である。連続的領域を表わす円形か長方形のプレートの場合には、これは、周辺縁部であり得るが、しかし、コア積層体が穿孔される場合、例えば積層体間の隙間の外側縁部は、共同で内側穿孔によって画定される周辺縁部であり、外側周辺部を表わす周辺縁部である。したがってこの事例において、隙間の外側縁部は、積層体間で2つに分割される。
【0015】
多数の接着剤塗布方法において(例えば、接着剤のスポット塗布の場合)、起こりうる結合隙間から接着剤の発生、および発生した接着剤による製作環境の汚染を防止するために、隙間の外側縁部が接着剤によって充填されないことを保証するように、可能な限り正確に注意が払われる。本発明の方法によって製造される本発明のコア積層体スタックは、常に外側縁部の少なくとも1つの位置、すなわちスタックが(横方向に)濡れた位置に接着剤を有する。しかしながら、本発明の方法を使用して、積層体間の最適な量の接着剤を導入することが可能であるので、一般に、濡れが1つ、またはいくつかの位置でのみ起こったとしても、接着剤は、結合隙間の外側縁部の本質的部分を占めることになる。
したがって、本発明において、好ましくは、接着剤が、隙間に面する両方の積層体側面上に、積層体間の各隙間の連続周辺部の≧10%、積層体間の各隙間の好ましくは≧20%、より好ましくは≧40%、非常に好ましくは80%で配置されているコア積層体スタックである。
この接着剤占有は、一般に本発明の方法が用いられたという事実の表現である。実際には、本発明の方法において、毛管現象によって-いかなる理論にも縛られないが-コア積層体間で接着剤が到達するので、コア積層体間の隙間に引き込まれる接着剤の最大量は、この接着剤が結合隙間を完全に満たすような状態である。言いかえれば、接着剤が導入された位置以外の位置での接着剤の制御できない発生のリスクはない。
少なくとも50の積層体、好ましくは、数が50~15,000、より好ましくは200~2000、非常に好ましくは300~1000の積層体を含む本発明のコア積層体スタックが好ましい。これらの積層体スタックの大きさは、コイルコアとして例えば、変圧器、発電機などの典型的用途に特に適している。
【0016】
この文脈において、当然ながら、コア積層体スタックは軟磁性であることが好ましい。
本発明の方法(下記参照)は、互いと比較して、結合隙間の接着剤含有率にただ影響を与えるわけではなく、代わりに、特に正確さの逸脱、積層体の屈曲または汚れの場合には、本発明の方法は、結合隙間内の接着剤の層厚に急激な変動の(望ましい)効果を有する。このようにして、実際に、本発明の方法によって可能性のある欠陥を避けることは可能である。したがって、本発明において、積層体間の少なくとも1つの隙間において少なくとも接着剤の層厚が、≧20%、好ましくは≧30%、より好ましくは≧40%変動するコア積層体スタックが好ましい。
これらの好ましいコア積層体スタックは、本発明の方法において付加価値を表わし、その理由は、別法では、先行技術に従って全体的に一定の接着剤量の塗布率を用いると、コア積層体スタックにおいて、正確にこれらの隙間(そこに接着剤層厚の比較的大きい変動がある)で弱点があるからである。
【0017】
本発明において、接着剤は、好ましくはアクリラート系接着剤を重合によって硬化させる接着剤であるコア積層体スタックが好ましい。さらに、選好または代替選好は、UV硬化、湿気硬化(例えば、シアノアクリレート)または嫌気性硬化接着剤に与えられる。
代替として、本発明において、接着剤がシリコーン系接着剤、好ましくはMSポリマー接着剤またはシリコーン接着剤、より好ましくは室温架橋シリコーン接着剤であるコア積層体スタックが好ましい。
これらの接着剤は、本発明の方法に殊に適している。
本発明において、完全硬化前の接着剤が、1~1000mPas、好ましくは3~500mPas、より好ましくは5~200mPasの粘度を有するコア積層体スタックが好ましい。
【0018】
疑義のある場合には、粘度は、DIN EN ISO 2884-1:2006-09に従って、とりわけ20℃、30rpmで直径75mmのコーンを用いてコーン/プレート法で求められる。
好ましい粘度を有する接着剤は、本発明の方法に殊に適している。ここでの問題の粘度は、当然塗布での粘度であり、完全硬化後には、もはやそのような粘度はない。
本発明において、シートの結合される表面は、0.5~15μm、好ましくは1~10μm、好ましくは1~5μmの粗さRZを有するコア積層体スタックが好ましい。
この表面品質は、本発明の方法に殊に適している。同時に、良好な結合成果は、一般にそのような粗さが存在する(望ましくない)乖離の場合でさえ、本発明の方法によってなお達成可能である。
疑義のある場合には、粗さRzの値がDIN EN ISO 4288に従って求められる。
【0019】
本発明において、積層体の結合される領域が、各事例において0.5~2000、好ましくは5~1000、より好ましくは50~500cm2であるコア積層体スタックが好ましい。
結合の領域がこれらの大きさであるので、本発明の方法(下記参照)は、特に好結果を、殊に不合格品の減少という意味で示す。本発明において使用される積層体の寸法は、誘導子、発電機および大規模モーター、およびまた変圧器および電気モーターに適切である。複数の用途については、コア積層体領域は当然ながら、より小さなものも、より大きなものも可能である。
スタック全体が、≧0.1MPa、好ましくは≧1MPa、より好ましくは3MPaの重ね剪断強度を有するコア積層体スタックが好ましい。
疑義のある場合には、この重ね剪断強度はDIN EN 1465:2009-07に従って測定される。[接着剤-結合組立体の引張重ね剪断強度の測定、EN 1465:2009のドイツ版]。
【0020】
対応する重ね剪断強度は、本発明の方法によって、従来の方法に従えば実際にこれらの値を達成しない結合隙間に対してさえ、保証することができる。これは実際に、不合格品の減少に結びつく。
本発明において、積層体は、電気シートであり、好ましくは結晶性電気シート製、より好ましくは結晶性軟磁性電気シート製、非常に好ましくは絶縁被膜を有する結晶性軟磁性電気シート製である、コア積層体スタックが好ましい。
これらの材料は、本発明の用途目的に対して特に適している。
本発明において、スタックが宙吊りの負荷を受けた場合、スタック全部は破壊されないコア積層体スタックが好ましく、これは、スタックが一番上の積層体でのみ固定されて、その後宙吊りになっても不変のままであることを意味する。
既に上に示したように、本発明の核心は、本発明のコア積層体スタックを製造するための、およびまた、基本的に、コア積層体スタックを製造するための接着剤を塗布または導入する方法である。実際には、本発明の一部と考えられる上記コア積層体スタックは、とりわけ、積層体の配置のために、従来の方法においては、結合隙間が、対応して接着剤で理想的に充填されなかったであろうことから、不合格品とされていたであろうコア積層体スタックである。
【0021】
したがって、本発明の核心は、コア積層体スタックを製造する方法であって、
a)コア積層体を用意するステップ、
b)液体形態の接着剤を用意するステップ、
c)互いに結合する領域が互いに、好ましくは最も重なって向かい合うように、コア積層体のスタックを形成するステップ、
d)それぞれ結合する積層体間の隙間に毛管力によって接着剤が引き込まれるように、ステップb)からの接着剤でスタックを濡らすステップ、および
e)結合する積層体間の接着剤を完全硬化させるステップを含む方法である。
【0022】
本発明の方法はまた、上に記載のように、本発明のコア積層体スタックを製造することが好ましい。
既に上に示したように、本発明の方法によって互いに緊密に重なりあうコア積層体に、積層体が圧力下にある場合でさえ、コア積層体間の領域において理想的な量の接着剤が供給されるのを保証することが可能である。既に上に記載したように、ここでは、流動性の高い接着剤を使用することが好ましい。
既に上に示したように、仮説として、-理論には縛られないが-結合隙間において互いに対してプレスされるコア積層体の濡れは、毛管現象に基づく。隙間の大きさは次に、特に、互いに重なりあうコア積層体それぞれの粗さによって決定される。本発明の方法において、コア積層体スタックを圧縮して操作することが好ましく、ここでは特にステップd)において行うことを意味するが、それは、このことがそれぞれの積層体(結合隙間)間の領域を最小限にし、占積率を最大限にするからである。
代替としては、接着剤が塗布されたときにコア積層体スタックが圧縮状態にないこと、特に、積層体スタックの積層体の相互に面する表面に垂直に積極的に圧力を結合中に働かせないことが好ましい。これは、適所に個々の積層体を保持するために、例えば代替のクランプ装置の使用によって達成することができる。回転子および固定子の場合、この目的に対しては、引張プロセスで直径を増加させる引張ローラーが好適である。この目的のために、コア積層体を適切に配列し、非引張ローラーに糸張りする。ここでの配列および糸張りの順序は任意である。引張ローラーへの糸張りは、さらなる引張装置によって支援することができ、引張装置が積層体の表面の法線と平行にコア積層体スタックを圧縮する。コア積層体スタックを糸張りした後、引張ローラーを引張し、そのため、コア積層体は適所に保持され、相互に面する積層体の表面の法線に平行な圧縮の必要はない。この方法によって、同時に接着剤の浸透を容易にするために、目標通りにコア積層体スタックの高さを調節し、目標通りに結合隙間を拡大させることが可能となる。
【0023】
本発明の効果は、それぞれ使用される接着剤によって結合させる積層体表面の濡れ性(界面エネルギー)に依存する。したがって、本発明の方法において、ステップc)の前に、積層体の結合される領域の少なくとも一部を、ステップb)からの接着剤との濡れ性を増加させる前処理にかけるのが好ましいことがある。
この目的のために、早ければ打ち抜き(積層体の形のその場所に)の前、さもなければその後に、当業者によく知られている適切な表面処理に、シートをかけることができる。しかし、原則的に、当然ながら、当業者はまた、対応する濡れ助剤(後に以下を参照のこと)の使用によって、使用される接着剤の一部に理想的な濡れ挙動を設定することができる。
既に上に示したように、流動性の高い接着剤は、本発明の方法に好ましい。特に、(積層体間に)導入された場合、嫌気的条件になって、その結果完全に硬化することができる嫌気性接着剤が好ましい。硬化の後、電気シートスタックの縁部で架橋していない接着剤は、容易に溶媒を用いて除去することができ、または、コア積層体スタックの最終輪郭に影響がない少量の残留物は、例えばUV照射によって完全硬化させることができる。
【0024】
当業者によって、嫌気性接着剤の選択は以下に基づいて行なわれる
- 最小の層厚および良好な濡れ速度の確立のための、接着剤の十分に低い粘度、
- 接着剤の十分に低い界面エネルギー(毛管現象を後押しするため)、
- 接着剤の十分に高い凝集強度、
- 媒体および熱への曝露、殊に150℃でトランスミッションオイル中の浸漬、および/または85℃、相対湿度85%での劣化に関して、結果として得られる結合の十分な経時安定性、
- 製造および最小のサイクル時間のための、一方で接着剤の十分に高い反応性、他方では濡れ時間の間の十分に低い反応性。
【0025】
さらに、当業者は、例えば界面活性剤(例えば、フルオロ界面活性剤およびシラン)、PDMSブロックを含むブロック共重合体などの濡れ助剤による接着剤の界面エネルギーを減少させ、それによって接着剤の濡れ性向を改善する可能性を有する。
接着剤の反応性はまた当業者によって、限界内で、しばしば銅の表面の触媒濃度によって調節することができる。
触媒を塗布するために、特にここでは各事例において銅の塗布のためにブラシがけ、噴出または研磨して操作することが好ましく、積層体表面も同時に粗化されてもよい。
代替として、触媒が液体形態である場合、特に噴霧法、ロール塗布または浸漬法、またはスポンジまたは刷毛塗りによる触媒の塗布が好ましい。
上に示したのと同様に、基板の濡れ品質に依存して、特にアニールしていない状態でC5コーティングを含む基板が存在する場合、基板を前処理する必要があり得る。この場合、濡れ性は、C5コーティングおよび/または打ち抜き油および/または引き抜き油の有機構成分子によって限定される。この前処理は、典型的には清浄化および/または活性化方法を用いて達成される。
【0026】
例証となる清浄化方法は以下を含む。
- 溶媒清浄化/超音波清浄化
- 超音波支援を用いる/用いない水による清浄化
- CO2スノー噴出/ペレットブラスト
- レーザー処理。
接着剤の濡れ性を改善する方法は、0.01~1.00質量%、好ましくは、0.05~0.10質量%の濃度範囲のフルオロ界面活性剤(例えば3MのNovec FC-4430)の添加を含む。
表面の化学的改質によって濡れ性を改善する活性化方法は、以下の方法を含む:
- 低圧または大気圧でのプラズマ処理、殊に酸素含有プラズマ処理
- VUV照射、殊にXeエキシマー発光体および/または低圧Hg発光体
- (UV)レーザー処理
- 火炎処理
- コロナ処理または誘電体遮蔽放電処理
毛管現象を調整し、接着剤層の最小厚さを保証するために、非常に滑らかな基板(Rz<0.5μm)の場合には、シートの微細構造を調節することまたは個々のシート間のスペーサーを設置することが有用であり得る。
【0027】
微細構造の調節のために、以下の方法が好ましい:
- ブラシがけ、とりわけ銅を含有する剛毛を用いてのブラシがけ、
・電気シートの絶縁被膜にブラシで摩擦学的に圧力をかけた場合、ブラシ繊維の構成分子を含む転写膜または摩擦膜が形成される。
・少量の銅(XPSによる測定でCu0.05原子%)でさえ、接着剤を硬化させるため触媒効果を発現させるのに十分である。
- 特に好ましくは破砕したガラス、とりわけ5μm等級のブラスト剤を用いる(真空吸引)ブラスト処理、
- レーザー法、殊にNd-YAG
好ましいスペーサーは次の通りである:
- ワニス、殊にC5ワニス中の無機充填剤、
- 5μmの大きさを有する粒子(ガラス/ケイ酸塩/ベントナイト/ポリマー分散体(PS))
【0028】
本発明の方法において接着剤塗布の好ましい技法は次の通りである:
- スポンジもしくはフェルト、または細かいもしくは粗いブラシもしくは塗料ローラーを用いる接着剤の塗布、
- 電気シートスタックの浸漬による塗布、特に均一量の接着剤に通してシートスタックの回転による塗布
- 噴霧または滴下または流し塗りによる塗布。
コア積層体スタックの領域すべてを接着剤での濡れのために意図されるのでなければ、濡らすべきは好ましくは以下の領域である:
- 切断されたシートの歯、より好ましくは歯の根元、言いかえれば、歯から、歯が位置する円周までの変わり目(ヨーク)
- 永久磁石のための、切断されたシートの切り欠き。
好ましくは接着剤が塗布されない領域:
- 回転子および/または固定子の歯表面、
- 回転子の円筒状の外側面
- 固定子の円筒状の内側面
- 電気シートスタックとの、プレス装置の接触領域。
【0029】
同様に接着剤が、例えば、引張ローラーを使用する場合など2つ以上のステップで塗布されるのが好ましい場合がある。この場合、第1のステップの接着剤は外側から塗布される。接着剤が硬化した後、引張ローラーを取り外し、塗布は内側から行う。この方法は、結合隙間の濡れおよび充填を完結するために理想的に、拡大した濡れ領域をもたらす。ここでのステップにおいて、異なる塗布方法を使用することは、同様に可能である-例えば、均一量の接着剤によってシートスタックの回転を使用して電気シートスタックの浸漬により外側の面への接着剤の第1の塗布、および塗料ローラーを用いる内側の面への接着剤の第2の塗布。
使用される任意のプレス装置は、好ましくはコア積層体の切断エッジまたは打ち抜きエッジと接触しないように設計されている。それによって、プレス中に形成されるプレス装置/コア積層体の隙間の間に接着剤が入り込むのを防止する。そのような場合には、可能性のある帰結は、シートスタックとプレス装置の間の接着剤の、望ましくない完全硬化であり得る。
代替として、好ましくは、プレス装置は、それがコア積層体の切断エッジまたは打ち抜きエッジと接触するが、しかし好ましくは、流動経路がないために接着剤の塗布はプレス中に起こらず、接着剤が届かない領域においてのみとなるように、設計されている。このようにして、シートスタックとプレス装置の間の接着剤の望ましくない完全硬化を防止することもまた可能である。
【0030】
流動経路の長さは、画定された時間、ここでは恐らくプレス時間の結合隙間において接着剤が移動することができる行程を記載する。それは、毛管現象によってのみならず、接着剤の粘度および接着剤の硬化速度によって同様に影響を受ける。
粘度を減じる方策は、例えば、温度上昇である。粘度を増加させる方策は、例えば、温度低下である。接着剤の配合に加えて反応性を増加させる方策は、例えば、触媒の量を増加するか、より強く加速する触媒、または温度上昇を選ぶことである。反応性を減じる方策は、例えば触媒の量を下げるか、それほど強く加速しない触媒を選ぶこと、または温度低下である。
流動経路を増加するための方策は、さらに下記であってもよい:
- 圧力差を加えること。この場合、高圧側は、接着剤が塗布される側であり、低圧側は接着剤が流れるように意図される側である。
- コア積層体スタック、ただし少なくとも1つのコア積層体の変位、好ましくは超音波ソノトロードによる振動。
【0031】
流動経路を限定するための方策は、さらに以下の通り(毛細管ブロック)であってもよい:
- 結合隙間の大きさを増加させること
- コア積層体に、例えばシリコーンまたはテフロンでコーティングすることにより、濡らすことが困難な領域の導入。
上になされた表明から独立して、選好は、一般に≦30mN/m、好ましくは≦27mN/m、より好ましくは≦24mN/m、非常に好ましくは≦20mN/mの界面エネルギーを有する接着剤である。ここでの界面エネルギーは、疑義のある場合にはDIN 55660-3:2011-12:「コーティング材料-濡れ性-3部:ペンダント滴下法を使用する液体の表面張力の測定」に従って確認される。
本発明は、以下に実施例によって、より厳密に特徴付けされる。
【実施例
【0032】
(測定例)
(測定例1)2つの積層体間の接着剤の量の測定
回転子のコアスタックを、例えば実施例3(下記参照)に従って製作する。
一番上の2つのシート間の接着剤単層へメスを導入し、楔試験と同じ方法で第2の単層から第1の単層を剥がす。接着剤の故障モードは一般に複雑な混合した破砕のものであり、接着剤の残留物が両面に存在することを意味する。コアスタックを単層毎にこの方法で分解し、シートの順序を記録する。当業者は確実に、正確に向かい合う破砕面を帰属することができる。
接着剤の残留物を有する各積層体の質量を測定する。
最後に、以下のようにレーザーを使用して、目標通りに接着剤の残留物から1対の向かい合う破砕面を取り除く。
【0033】
レーザータイプ:Coherent COMPexPro(商標)205F
* レーザーフルエンス:170mJ/cm2
* 波長:248nm
* パルス時間:25ns
* 反復速度:10Hz
* レーザープロフィール:2×15mm2(平頂)*
分析装置:OCEAN-OPTICS USB4000
* 測定の積分時間:5秒
* レンズまでの距離(焦点):95mm
* 表面に対する測定角度:45°
* 使用したフィルター:280nmのカットフィルター
評価:起源
* 50の単一レーザーパルスにわたる、時間積分によるプラズマ照射の測定
* 評価の積分範囲(波長):250nm-850nm
* 3回の測定に基づいて、測定データを決定した。
最適な発光の光度が初めの値の85%に減少するまで、一個所でレーザー処理を継続する。次いで、次の位置でコーティングを取り除く。両方の破砕面の領域から接着剤を除去するまで、この手順を継続する。
最後に、2つのコア積層体をもう一度秤量し、対応する接着剤プライ中の接着剤の質量を、差異の形成によって決定する。
【0034】
さらにすべての接着剤単層についてこの手順を行ない、このようにして、接着剤単層の質量の平均値および標準偏差を確認する。さらに、最小質量を有する接着剤単層、および最大質量を有する接着剤単層を確認する。
(測定例2)接着剤単層内の接着剤層厚の計量
例えば、実施例3(下記参照)に従って、回転子のコアスタックを製作する。
一番上の2つのシート間の接着剤単層へメスを導入し、楔試験と同じ方法で第2の単層から第1の単層を剥がす。接着剤の故障モードは一般に複雑な混合した破砕のものであり、接着剤の残留物が両面に存在することを意味する。
当業者は確実に、正確に向かい合う測定領域を帰属することができる。
レーザー共焦点顕微鏡を使用して2つの破砕面を検査する。
測定原理:
従来の顕微鏡法に比較して、レーザー走査型共焦点顕微鏡(LSCM)によって生じる画像は、より大きなコントラストを有し、高さ情報を提供する。この手順については、短波レーザービーム(408nm)を用いて表面を走査し、光学系によって表面から戻ってくるビーム光を集める。試料表面に対する集光系の変位、およびまた異なる距離の焦点の反復測定の結果として、nm範囲の高さ情報が得られる。
【0035】
測定パラメーターおよび手順:
製造業者KeyenceからのVK 9700レーザー走査型共焦点顕微鏡を使用して、測定を行なった。測定にかける領域は270μm × 202μmであった。3つの光学面が可能であった:1.金属基板/絶縁被膜界面、2.絶縁被膜/接着剤界面、3.接着剤表面。
2つの破砕面を縫合法(一連の個々の画像を形成する)によって完全測定にかけ、2つの向かい合う破砕面の接着剤層厚を足し合わせることによって、全体的な接着剤層厚の分布を確認する。
調査中の接着剤単層内の接着剤層厚の平均値および標準偏差を確認し、さらに、最小および最大の接着剤層厚を確認する。
疑義のある場合には、特定の接着剤に対して測定例1を実行することができない場合、接着剤単層の質量の平均値および標準偏差も決定するためにまた、最小質量を有する接着剤単層、および最大質量を有する接着剤単層をまた確認するために、上記の手法を用いることができる。この目的のために、さらにすべての接着剤単層について上に記載の手順を行なわなければならず、接着剤層厚は、接着剤の密度を考慮して個々の接着剤単層の接着剤の質量に変換しなければならない。
【0036】
(作業例)
(作業例1)
80mmの内径および130mmの外径および150mmの高さ(シート厚0.3mm、500シート、粗さRa=0.48±0.05μm/Rz=4.80±0.45μm)を有する回転子積層体の電気シートスタック(RembrandtinからのEB 5308のC5絶縁被膜を有する、製造業者Arcelor MittalからのM310-50A電気シート)を、シートの配列が円筒を形成し、積層体に存在する切り欠きが互いに重なる(この場合永久磁石の導入のため)ように、保持器具によって置く。
硬化に必要とされる触媒粒子を塗布するために、銅ブラシを使用して基板両面にブラシをかける(国際出願PCT/EP2018/080059号実施例4に従って)。このようにして、同時に、Rzを4μmに調節する。
プレス設備を使用して、100kPaの圧力でこのスタックを圧縮する。
圧縮状態において、接着剤DELO ML 5327(粘度300mPas)を用いて噴霧することにより、積層体エッジでスタックを濡らす。
室温で30分間の硬化後に、電気シートスタックをプレス設備から取り出し、超音波浴中での溶媒清浄化(IPA)によって過剰(この場合)の未硬化接着剤を噴霧面から取り除く。
生成物は、取り扱いの強度を示す密着した電気シートコアである。
剥離強度の試験(シートスタックからの第1のシートの分離)の後に、結合の破砕面が明らかになる。流動の前線は、接着剤がエッジから始まり、第1および第2のシート単層間の隙間に6mm+/-2mm浸透し、硬化したことを示す。
【0037】
(作業例2)
80mmの内径および130mmの外径および150mmの高さ(シート厚0.3mm、500シート、粗さRa=0.48±0.05μm/Rz=4.80±0.45μm)を有する回転子積層体の電気シートスタック(RembrandtinからのEB 5308のC5絶縁被膜を有する、製造業者Arcelor MittalからのM310-50A電気シート)を、シートの配列が円筒を形成し、積層体に存在する切り欠きが互いに重なる(この場合永久磁石の導入のため)ように、保持器具によって置く。
濡れ性を改善するために、以下のパラメーターを用いて大気圧プラズマで基板を前処理する:
- Surfx Atomflo generator 500
- 4-lin-g3
- 電力100W
- 速度:3.2m/分
- ノズルから基板の距離 2mm
- ライン距離 10mm
- サイクル 5
- プロセスガスアルゴン20l/分 酸素0.1l/分
処理によって、29mN/mから67mN/mにシートの界面エネルギーが上がる。(前進角のCA測定;試験液:水、ジヨードメタン、エチレングリコール;RabelおよびKaelbleからの値を用いてOwens-Wendtに従って評価)。
硬化に必要とされる触媒粒子の塗布のために、銅ブラシを使用して基板両面にブラシがけする(国際出願PCT/EP2018/080059号実施例4に従って)。このように、同時に、Rzを4μmに調節する。
【0038】
プレス設備を使用して、100kPaの圧力でこのスタックを圧縮する。
圧縮状態において、接着剤DELO ML 5327(粘度300mPas)を用いて噴霧することにより、積層体エッジでスタックを濡らす。
室温で30分間の硬化後に、電気シートスタックをプレス設備から取り出し、超音波浴中での溶媒清浄化(IPA)によって過剰(この場合)の未硬化接着剤を、噴霧面から取り除く。
生成物は、取り扱いの強度を示す密着した電気シートコアである。
剥離強度の試験(シートスタックからの第1のシートの分離)の後に、結合の破砕面が明らかになる。流動の前線は、接着剤がエッジから始まり、第1および第2のシート単層間の隙間に10mm+/-2mm浸透し、硬化したことを示す。
【0039】
(作業例3)
80mmの内径、130mmの外径および8個の永久磁石のための切り欠き(積層体は4回の回転対称を有する)を有する回転子積層体を含む、打ち抜いた積層体の電気シートスタック(RembrandtinからのEB 5308のC5絶縁被膜を有する、製造業者Arcelor MittalからのM310-50A電気シート)を高さ150mm(シート厚0.3mm、500シート)にスタックし、以下のように接合して電気シートコアを形成する。硬化に必要とされる触媒粒子の塗布のために、電気シートを、スタックの製造より前に、銅ブラシを使用して、両面にブラシがけする(国際出願PCT/EP2018/080059号実施例4に従って)。この手順を用いて、Rzを同時に4μmに調節する。
【0040】
これらのブラシがけした電気シートを、円筒を形成し、積層体に存在する切り欠きが互いに重なる(この場合永久磁石の導入のため)ように、保持器具によって置く。125のシートすべてに、最大の平面平行を有する電気シートスタックを得るために、シートの圧延方向を各事例で90°回転する。
プレス設備を使用して、100kPaの圧力でこのスタックを圧縮する。
圧縮状態において、接着剤Cyberbond RL 65(粘度10mPas)を用いて噴霧することにより、結合隙間に接着剤が引き込まれた後、外部に接着剤がなおあるように、積層体エッジで十分にスタックを濡らす。
室温で30分間の硬化の後に、電気シートスタックをプレス設備から取り出し、噴霧された面から、超音波浴中での溶媒清浄化(IPA)によって過剰(この場合)の未硬化接着剤を除去する。
生成物は、取り扱い強度を示す密着した電気シートコアである。吊るしてスタックに負荷がかかった場合、スタック全部は破壊しない。これは、単に一番上の積層体のみによって固定し、続いて宙吊りにした場合、スタックが不変のままであることを意味する。
剥離強度の試験(シートスタックから第1のシートの分離)の後に、結合の破砕面は明らかになる。流動の前線は、接着剤が、第1および第2のシート単層間の隙間に完全に浸透し、硬化したことを示す。結果はこのように、全領域の結合である。
測定例1に従って、499の接着剤層単層の最小および最大質量を確認する。接着剤層単層の最大質量は109.3mgである。接着剤層単層の最小質量は、47.8mgである。
測定例2に従って確認した、一番上の接着剤単層の最小および最大の接着剤層厚の測定は、200μm × 2770μmの領域にわたって平均して、10.3±2.6μmの最大の接着剤層厚および5.3±0.4μmの最小の接着剤層厚の結果を得た。
【0041】
(作業例4)
重ね剪断試験試料の幾何形状(25mm × 100mm)を有する2つの電気シートを、硬化に必要とされる触媒粒子の塗布のために、銅ブラシを使用して接着を行う側にブラシがけする(国際出願PCT/EP2018/080059号実施例4に従って)。この手順を用いて、同時にRzを4μmに調節する。
2つのクランプを使用して、DIN 1645に従って重ね剪断試験試料を作り、2つのブラシがけした側が互いに接触するように、これらの基板を1mmの重なりで固定する。
クランプが2つなので、これらの2つの基板を、100kPaの圧力で互いに対してプレスする。
圧縮状態において、接着剤DELO ML 5327(粘度300mPas)を用いてブラシをかけることにより、2つの積層体エッジを濡らす。
室温で30分間の硬化の後、クランプから重ね剪断試験試料を解放し、超音波浴中での溶媒清浄化(IPA)によって過剰(この場合)の未硬化接着剤を、ブラシがけした面から除去する。
これにより、取り扱い強度を有する重ね剪断試験試料を製造する。
【0042】
第1のシートのブラシがけした側を、第2のシートの接着剤被覆した側と接触させ、クランプを用いて固定する。1分後に、結合の強度は、結合が移動するのに(取り扱い強度)十分である。40℃(作業中の打ち抜き工具の典型的な温度)で6分後、結合は、既に2.5±0.7MPaの重ね剪断値を有している。室温で24時間の後には、4.5±0.8MPaの重ね剪断強度が得られる。
150℃のトランスミッションオイル中での老化の150時間後に、重ね剪断強度はなお4.2±0.5MPaである。85℃、相対湿度85%での劣化1000時間の後に、重ね剪断強度は、4.1±0.2MPaであった。
【0043】
(作業例5)
80mmの内径および130mmの外径および150mmの高さ(シート厚0.3mm、500シート)を有する回転子積層体の電気シートスタック(RembrandtinからのEB 5308のC5絶縁被膜を有する、製造業者Arcelor MittalからのM310-50A電気シート)を、シートの配列が円筒を形成し、積層体に存在する切り欠きが互いに重なる(この場合、永久磁石の導入のため)ように、保持器具によって置く。
0.1質量%のフルオロ界面活性剤(3MのNovec FC-4430)の接着剤DELO ML 5327への添加は濡れ性を改善した。
この添加は、著しく接着剤の表面張力を下げ、その結果、全領域の濡れが基板のプラズマ活性化なしでさえ可能になる。
硬化に必要とされる触媒粒子の塗布のために、銅ブラシを使用して、基板両面にブラシがけする(国際出願PCT/EP2018/080059号実施例4に従って)。このようにして、同時に、Rzを4μmに調節する。
プレス設備を使用して、100kPaの圧力でこのスタックを圧縮する。
【0044】
圧縮状態において、添加した接着剤DELO ML 5327を用いて噴霧することにより、積層体エッジでスタックを濡らす。
室温で30分間の硬化後に、電気シートスタックをプレス設備から取り出し、超音波浴中での溶媒清浄化(IPA)によって過剰(この場合)の未硬化接着剤を、噴霧した面から除去する。
生成物は、取り扱い強度を示す密着した電気シートコアである。吊るしてスタックに負荷がかかった場合、スタック全部は破壊しない。これは、単に一番上の積層体のみによって固定し、続いて宙吊りにした場合、スタックが不変のままであることを意味する。
剥離強度試験(シートスタックからの第1のシートの分離)の後、結合の破砕面は明らかになる。流動の前線は、接着剤がエッジから始まり、第1および第2のシート単層間の隙間に15mm±2mm浸透し、硬化したことを示す。
【国際調査報告】