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特表2022-529010圧縮機潤滑システムの流体フロー制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】圧縮機潤滑システムの流体フロー制御
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20220609BHJP
   F04D 29/063 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
F04B49/06 331Z
F04D29/063
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561647
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 US2020028502
(87)【国際公開番号】W WO2020214807
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/834,871
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521301840
【氏名又は名称】ジョンソン・コントロールズ・タイコ・アイピー・ホールディングス・エルエルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】スネル,ポール・ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,ブライソン・リー
(72)【発明者】
【氏名】ハイジー,マシュー・リー
【テーマコード(参考)】
3H130
3H145
【Fターム(参考)】
3H130AA14
3H130AB27
3H130AB42
3H130AC11
3H130BA56E
3H130BA71G
3H130DB03X
3H130DD01Z
3H130DF01X
3H130DH04X
3H130ED05G
3H145AA06
3H145AA12
3H145AA27
3H145AA42
3H145BA01
3H145BA31
3H145CA09
3H145DA05
3H145DA45
3H145EA17
3H145EA26
3H145EA34
3H145EA42
3H145EA48
(57)【要約】
圧縮機(32)用の流体圧力制御システム(110)は、圧縮機(32)のベアリング(96)に向けて潤滑剤を誘導すべく構成されたポンプ(90)と、圧縮機(32)のシャフト(94)の速度を示すフィードバックを提供すべく構成されたセンサ(112)を含み、シャフト(94)がベアリング(96)により少なくとも部分的に支持されるべく構成されている。流体圧力制御システム(110)はまた、プロセッサ(44)により実行されたならば当該プロセッサ(44)に、シャフト(94)の速度を示す信号をセンサ(112)から受信させ、当該信号に基づいてポンプ(90)の動作を調整させるべく構成された実行可能な命令を有する非一時的計算機可読媒体を含んでいる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機の流体圧力制御システムであって、
前記圧縮機のベアリングに向けて潤滑剤を誘導すべく構成されたポンプと、
前記圧縮機のシャフトであって前記ベアリングにより少なくとも部分的に支持されているように構成されたシャフトの速度を示すフィードバックを提供すべく構成されたセンサと、
プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
前記シャフトの速度を示す信号を前記センサから受信させ、
前記信号に基づいて前記ポンプの動作を調整させるべく構成された実行可能な命令を含む非一時的計算機可読媒体を含むシステム。
【請求項2】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
前記シャフトの速度に基づいて前記潤滑剤の目標流量を決定させ、
前記圧縮機のベアリングに向かう前記潤滑剤の流量が前記目標流量に近づくように前記ポンプの動作を調整させるべく構成されている、請求項1に記載の流体圧力制御システム。
【請求項3】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、比例関数を用いて前記シャフトの速度に基づいて前記潤滑剤の目標流量を決定させるべく構成されている、請求項2に記載の流体圧力制御システム。
【請求項4】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、指数関数を用いて前記シャフトの速度に基づいて前記潤滑剤の目標流量を決定させるべく構成されている、請求項2に記載の流体圧力制御システム。
【請求項5】
前記センサが前記シャフトの終端に近接して配置されている、請求項1に記載の流体圧力制御システム。
【請求項6】
前記ベアリングを含み、前記潤滑剤が前記ベアリングと前記シャフトの間に膜を形成すべく構成されている、請求項1に記載の流体圧力制御システム。
【請求項7】
前記ポンプが電気ポンプを含んでいる、請求項1に記載の流体圧力制御システム。
【請求項8】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
前記潤滑剤の流量が目標流量に到達するように調整する信号を前記電気ポンプに出力させるべく構成されている、請求項7に記載の流体圧力制御システム。
【請求項9】
圧縮機の流体圧力制御システムであって、
前記圧縮機のベアリングに向けて潤滑剤を誘導すべく構成されたポンプと、
前記圧縮機内の前記ベアリングにおける温度を示すフィードバックを提供すべく構成されたセンサと、
プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
前記圧縮機内の前記ベアリングにおける温度を示す信号を前記センサから受信させ、
前記信号に基づいて前記ポンプの速度を調整させるべく構成された実行可能な命令を含む少なくとも1個の非一時的計算機可読媒体を含むシステム。
【請求項10】
潤滑回路を含み、前記ポンプ及び前記圧縮機が前記潤滑回路内に配置され、前記潤滑回路が前記潤滑剤を、前記ポンプから前記ベアリングに、及び前記ベアリングから前記ポンプに誘導すべく構成されている、請求項9に記載の流体圧力制御システム。
【請求項11】
前記センサが、前記潤滑回路内に配置され、且つ前記ベアリングの上流で前記潤滑回路内の前記潤滑剤の流体供給温度を示す第1の信号を出力すべく構成された第1のセンサと、
前記潤滑回路内に配置され、且つ前記ベアリングの下流で前記潤滑回路内の前記潤滑剤の流体排出温度を示す第2の信号を出力すべく構成された第2のセンサを含んでいる、請求項10に記載の流体圧力制御システム。
【請求項12】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
前記流体供給温度及び前記流体排出温度に基づいて前記圧縮機内の前記ベアリングにおける温度を判定させるべく構成されている、請求項11に記載の流体圧力制御システム。
【請求項13】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
インターフェースボードに信号を出力させて、前記圧縮機内の前記ベアリングにおける温度を前記インターフェースボードのディスプレイに表示させるべく構成されている、請求項9に記載の流体圧力制御システム。
【請求項14】
前記センサが前記ベアリングに近接して配置されている、請求項9に記載の流体圧力制御システム。
【請求項15】
前記センサが、前記圧縮機内の前記ベアリングにおける温度を示す信号を出力すべく構成された熱電対を含んでいる、請求項14に記載の流体圧力制御システム。
【請求項16】
圧縮機の流体圧力制御システムであって、
前記圧縮機のベアリングに向けて潤滑剤を誘導すべく構成されたポンプと、
前記圧縮機のシャフトであって前記ベアリングにより少なくとも部分的に支持されるべく構成されたシャフトの速度を示すフィードバックを提供すべく構成された第1のセンサと、
前記圧縮機内の前記ベアリングにおける温度を示すフィードバックを提供すべく構成された第2のセンサと、
プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
前記シャフトの速度を表す第1の信号を前記第1のセンサから受信させ、
前記圧縮機内の前記ベアリングにおける温度を示す第2の信号を
前記第2のセンサから受信させ、
前記第1の信号、前記第2の信号、又はその両方に基づいて前記ポンプの速度を調整させるべく構成された実行可能な命令を含む
少なくとも1個の非一時的計算機可読媒体を含むシステム。
【請求項17】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
前記ポンプにより前記圧縮機のベアリングに向けられた流体の目標流量を決定させるべく構成されている、請求項16に記載の流体圧力制御システム。
【請求項18】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
前記目標流量に到達する前記ポンプの目標速度を決定させ、
前記目標流量に到達する前記ポンプの前記目標速度を前記ポンプの速度の動作範囲と比較させるべく構成されている、請求項17に記載の流体圧力制御システム。
【請求項19】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
前記圧縮機内の前記ベアリングにおける温度が目標温度範囲を上回ったことに基づいて前記潤滑剤の前記目標流量を決定させ、
前記ポンプの動作を調整して前記潤滑剤の流量を前記目標流量に接近させるべく構成されている、請求項17に記載の流体圧力制御システム。
【請求項20】
前記実行可能な命令が、前記プロセッサにより実行されたならば前記プロセッサに、
インターフェースボードを介して受信した入力に基づいて前記目標温度範囲を決定させるべく構成されている、請求項19に記載の流体圧力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月16日出願の米国仮特許出願第62/834,871号「FLUID PRESSURE CONTROL FOR A COMPRESSOR」の優先権及び利益を主張するものであり、これは全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本節は、後述する本開示の各種態様に関連し得る各種の技術的態様を読者に紹介することを目的としている。この議論は読者に背景情報を提供して本開示の各種態様に対する理解を深めるのに役立つと考えられる。従って、これらの文言は従来技術の承認ではなく、上記の観点から読むべきであることを理解されたい。
【0003】
加熱、換気、空調、及び/又は冷蔵(HVAC&R)システムは様々な施設及び多くの目的で用いられている。例えば、HVAC&Rシステムは、環境を調整すべく構成された蒸気圧縮冷蔵システム(例:濃縮器、気化器、圧縮機、及び/又は膨張器を有する冷媒回路)を含んでいてよい。蒸気圧縮冷蔵システムは、圧縮機内に潤滑流体(例:油)を誘導して圧縮機の各種要素(例:ベアリング)を潤滑する潤滑回路を含んでいてよい。温度及び圧力等、圧縮機内の状態は圧縮機の動作中に変化し得る。残念ながら、既存のHVAC&Rシステムは、一定の圧力で圧縮機に潤滑流体を供給する場合があり、このため圧縮機内の状態が変化するに従い、潤滑流体がHVAC&Rシステム内の意図しない場所へ流れる恐れがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一実施形態において、圧縮機の流体圧力制御システムは、圧縮機のベアリングに向けて潤滑剤を誘導すべく構成されたポンプと、圧縮機のシャフトの速度を示すフィードバックを提供すべく構成されたセンサを含み、シャフトはベアリングにより少なくとも部分的に支持されるべく構成されている。流体圧力制御システムはまた、プロセッサにより実行されたならば当該プロセッサに、シャフトの速度を示す信号をセンサから受信させ、当該信号に基づいてポンプの動作を調整させるべく構成された実行可能な命令を有する非一時的計算機可読媒体を含んでいる。
【0005】
本開示の一実施形態において、圧縮機の流体圧力制御システムは、圧縮機のベアリングに向けて潤滑剤を誘導すべく構成されたポンプと、圧縮機内のベアリングにおける温度を示すフィードバックを提供すべく構成されたセンサと、プロセッサにより実行されたならば当該プロセッサに、圧縮機内のベアリングにおける温度を示す信号をセンサから受信して当該信号に基づいてポンプの速度を調整させるべく構成された実行可能な命令を有する少なくとも1個の非一時的計算機可読媒体を含んでいる。
【0006】
本開示の一実施形態において、圧縮機の流体圧力制御システムは、圧縮機のベアリングに向けて潤滑剤を誘導すべく構成されたポンプと、圧縮機のシャフトの速度を示すフィードバックを提供すべく構成された第1のセンサと、圧縮機内のベアリングにおける温度を示すフィードバックを提供すべく構成された第2のセンサを含んでいる。シャフトはベアリングにより少なくとも部分的に支持されるべく構成されている。流体圧力制御システムはまた、プロセッサにより実行されたならば当該プロセッサに、シャフトの速度を表す第1の信号を第1のセンサから受信させ、圧縮機内のベアリングにおける温度を示す第2の信号を第2のセンサから受信して、第1の信号、第2の信号、又はその両方に基づいてポンプの速度を調整させるべく構成された実行可能な命令を有する少なくとも1個の非一時的計算機可読媒体を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一態様による、商業施設における加熱、換気、空調、及び/又は冷蔵(HVAC&R)システムの一実施形態を利用可能な建物の透視図である。
図2】本開示の一態様による、HVAC&Rシステムの一実施形態の透視図である。
図3】本開示の一態様による、蒸気圧縮システムの一実施形態の模式図である。
図4】本開示の一態様による、蒸気圧縮システムの別の実施形態の模式図である。
図5】本開示の一態様による、貯槽を有する蒸気圧縮システムの一実施形態の模式図である。
図6】本開示の一態様による、流体圧力制御システムを有する蒸気圧縮システムの一実施形態の模式図である。
図7】本開示の一態様による、蒸気圧縮システムの流体圧力制御システムを動作させる処理の一実施形態を示すフロー図である。
図8】本開示の一態様による、蒸気圧縮システムの流体圧力制御システムを動作させる処理の一実施形態を示すフロー図である。
図9】本開示の一態様による、蒸気圧縮システムの流体圧力制御システムを動作させる処理の一実施形態を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の1個以上の特定の実施形態について以下に述べる。これらの記述する実施形態はここに開示する技術の複数の例に過ぎない。また、これらの実施形態の簡潔な説明を提供するために、実際の実装の全ての特徴が本明細書に記載されていない場合がある。このような実際の実装の開発において、あらゆる工学又は設計プロジェクトと同様に、実装毎に異なり得るシステム関連及びビジネス関連の制約の順守等、開発者の特定の目的を実現するには多くの実装に固有の決定を下さねばならないことを認識されたい。更に、そのような開発努力は複雑且つ時間を要するかもしれないが、本開示の利点を享受する当業者にとって設計、製造、及び生産の定型作業であることを認識されたい。
【0009】
上述のように、蒸気圧縮システムは全般的に、冷蔵回路内を流れる冷媒を含んでいる。冷媒は、冷蔵回路内に配置された複数の導管及び部品内を流れながら、蒸気圧縮システムが構造の内部空間を調整できるようにする相転移を受ける。蒸気圧縮システムは全般的に、冷蔵回路の特定の部品(例:圧縮機、貯槽、及び冷却器)内を流れて、冷蔵回路の圧縮機を動作中に潤滑する流体(例:油等の潤滑剤)を有する潤滑回路を含んでいる。圧縮機は、圧縮機内の冷媒を圧縮すべく構成されたローターに結合されたシャフトを含んでいる。シャフトは少なくとも1個のベアリングにより支持され、潤滑回路の流体は全般的にシャフトとベアリングの間を流れ、シャフトが回転する際に潤滑すべく構成されている。
【0010】
潤滑回路のポンプは、潤滑回路内で流体を貯槽から圧縮機へ圧送する。具体的には、流体は貯槽から圧縮機のベアリング及びシャフトへ流れる。ポンプは、流体を潤滑回路内で(例えばベアリングへ)一定の流量及び/又は一定の圧力で圧送することができる。圧縮機の動作中、シャフト速度は、全般的に圧縮機の動作モード及び/又は蒸気圧縮システムの動作条件(例:冷媒回路内を流れる冷媒の温度及び/又は圧力、オペレータ入力、又はこれらの組み合わせ)等、特定の要因により変化し得る。追加的又は代替的に、圧縮機内のベアリングにおける潤滑流体の温度は全般的に圧縮機の動作モード及び/又は蒸気圧縮システムの動作パラメータ(例:冷媒回路内を流れる冷媒の温度及び/又は圧力、圧縮機のシャフトと他の部品(例:ローター)の摩擦、又はこれらの組み合わせ)に起因して変化し得る。
【0011】
圧縮機は、圧縮機の部品(例:ベアリング及び/又はシャフト)内を流れて潤滑する流体を密閉すべく構成されたシール(例:ハーメチックシール及び/又はラビリンスシール)を含んでいる。しかし、ベアリングにおけるシャフト速度及び/又は温度が変化するに従い、一定の流量及び/又は一定の圧力で流れる流体が圧縮機のシールから漏れ出す恐れがある。例えば、シャフト速度及び/又は温度が比較的低い場合、流体の圧力は、一定の流量でベアリング及び/又はシャフトに沿って流れる流体に起因して圧縮機内で増大し、これにより流体がシールから漏出する恐れがある。シャフト速度及び/又は温度が比較的高い場合、流体はベアリング及び/又はシャフトを適切に潤滑するのに充分な速度で流れることができない恐れがある(例:流体の一定の流量はベアリング及び/又はシャフトを適切に潤滑するには遅すぎる恐れがある)。ベアリング及び/又はシャフトの潤滑が不充分ならば摩擦の増大に起因してベアリング、シャフト、及び/又は圧縮機が過熱する恐れがある。このように、潤滑回路内を流れる流体の流量が一定であることが、シャフト速度の変化及び/又は圧縮機内の流体の温度の変化と合わせて、圧縮機及び蒸気圧縮システムの効率を低下させる恐れがある。
【0012】
本開示の蒸気圧縮システムの複数の実施形態で冷媒として使用できる流体のいくつかの例として、R-410A、R-407、又はR-134a等のハイドロフルオロカーボン(HFC)を主成分とする冷媒、R-1233又はR-1234等のハイドロフルオロオレフィン(HFO)を主成分とする冷媒、アンモニア(NH3)、R-717、二酸化炭素(CO2)、R-744等の「天然」冷媒、又は炭化水素を主成分とする冷媒、水蒸気、或いは他の任意の適当な冷媒が挙げられる。いくつかの実施形態において、蒸気圧縮システムは、R-134等の中圧冷媒と比較して、1気圧で通常の沸点が摂氏約19度(華氏66度)である低圧冷媒とも称される冷媒を効率的に利用すべく構成されていてよい。本明細書で用いる「通常の沸点」とは、1気圧で測定された沸点温度を指す場合がある。本開示の蒸気圧縮システムの複数の実施形態で潤滑剤として利用できる流体のいくつかの例として合成油、鉱油、又は他の任意の適当な潤滑剤が挙げられる。
【0013】
本開示は、蒸気圧縮システムの圧縮機の流体圧力制御システムを目的とする。流体圧力制御システムの特定の実施形態は、圧縮機のシャフト速度及び/又は圧縮機内のベアリングにおける温度を検知するセンサを含んでいる。例えば、第1のセンサがシャフト速度を示すフィードバックを提供すべくシャフトに配置されていてよく、及び/又は第2のセンサが圧縮機内のベアリングにおける温度を示すフィードバックを提供すべくベアリングに配置されていてよい。特定の実施形態において、追加的なセンサが流体供給温度及び流体排出温度の各々を示すフィードバックを提供すべく圧縮機の供給導管及び/又は圧縮機の排出導管に配置されていてよい。流体供給温度及び/又は流体排出温度に基づいて、流体圧力制御システムのコントローラが圧縮機内のベアリングにおける温度を判定することができる。
【0014】
圧縮機内のベアリングにおけるシャフト速度及び/又は温度に基づいて、流体圧力制御システムのコントローラは、ポンプからベアリングへの流体の流量を調整(例:潤滑回路内の流体の圧力を調整)することができる。コントローラは、シャフト速度及び/又は温度に基づいて目標流量を決定して、流体の流量が目標流量に接近するようにポンプの速度を調整することができる。目標流量は、シャフト速度及び/又は圧縮機内のベアリングにおける温度の関数(例:線形関数、非線形関数、比例関数、指数関数、又はこれらの組み合わせ)であってよい。シャフト速度及び/又は温度が全般的に低下するに従い、コントローラは、流体の流量を全般的により低い目標流量まで低下させるべくポンプの速度を調整することができる。シャフト速度及び/又は温度が全般的に上昇するに従い、コントローラは、流体の流量を全般的により高い目標流量まで上昇させるべくポンプの速度を調整することができる。コントローラが流体の流量を調整するに従い、圧縮機及び蒸気圧縮システムの動作及び/又は効率は全般的に向上し得る。例えば、流体の流量の調整は、圧縮機のシールからの流体の漏出を少なくとも部分的に遮断又減少させ、及び/又は流体、シャフト、及び/又はベアリングの間の摩擦を減少させることができる。
【0015】
本開示の制御技術は各種のシステムに用いることができる。しかし、議論を円滑にすべく、本開示の制御技術を組み込むことができるシステムの複数の例を以下に記述する図1~4に示す。
【0016】
ここで図面を参照するに、図1は、典型的な商業施設用の建物12の加熱、換気、及び空調(HVAC)システム10の環境の一実施形態の透視図である。HVACシステム10は、建物12の冷却に使用できる冷却された液体を供給する蒸気圧縮システム14を含んでいてよい。HVACシステム10はまた、建物12を加熱すべく暖かい液体を供給するボイラー16及び建物12内の空気を循環させる送風システムを含んでいてよい。空気循環システムはまた、還気ダクト18、空気供給ダクト20、及び/又はエアハンドラ22を含んでいてよい。いくつかの実施形態において、エアハンドラ22は、導管24によりボイラー16及び蒸気圧縮システム14に接続された熱交換機を含んでいてよい。エアハンドラ22内の熱交換機は、HVACシステム10の動作モードに応じて、ボイラー16から加熱された液体、又は蒸気圧縮システム14から冷却された液体のいずれかを受容することができる。HVACシステム10は、建物12の各階の別々のエアハンドラと共に示されているが、他の実施形態において、HVACシステム10はフロア間で共有可能なエアハンドラ22及び/又は他の部品を含んでいてよい。
【0017】
図2、3に、HVACシステム10で使用可能な蒸気圧縮システム14の複数の実施形態を示す。蒸気圧縮システム14は、圧縮機32から始まる回路を通して冷媒を循環させることができる。当該回路はまた、濃縮器34、膨張弁(群)又は機器(群)36、及び液体冷却器又は気化器38を含んでいてよい。蒸気圧縮システム14は更に、アナログ/デジタル(A/D)変換器42、マイクロプロセッサ44、不揮発性メモリ46、及び/又はインターフェースボード48を有する制御パネル40(例:コントローラ)を含んでいてよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、蒸気圧縮システム14は、可変速度ドライブ(VSD)52、モーター50、圧縮機32、濃縮器34、膨張弁又は器36、及び/又は気化器38のうち1個以上を用いることができる。モーター50は、圧縮機32を駆動でき、可変速度ドライブ(VSD)52から電力供給されてよい。VSD52は、特定の固定ライン電圧及び固定ライン周波数を有する交流(AC)電力をAC電力源から受電して可変電圧及び周波数を有する電力をモーター50に供給する。他の実施形態において、モーター50はAC又は直流(DC)電力源から直接電力供給されてよい。モーター50は、VSDにより、或いはAC又はDC電力源から直接、電力供給可能な任意の種類の電気モーター、例えばスイッチトリラクタンスモーター、誘導モーター、電子整流された永久磁石モーター、又は他の適当なモーターを含んでいてよい。
【0019】
圧縮機32は、冷媒蒸気を圧縮し、排出路を通して蒸気を濃縮器34まで配送する。いくつかの実施形態において、圧縮機32は遠心圧縮機であってよい。圧縮機32は、圧縮機の部品を潤滑する流体(例:潤滑油)を含んでいる。圧縮機32により濃縮器34まで運ばれた冷媒蒸気は、濃縮器34内の冷却液体(例:水又は空気)に熱を伝達することができる。冷媒蒸気は、冷却液体との熱伝達の結果として濃縮器34内の冷媒液体に凝結することができる。濃縮器34からの冷媒液体は膨張器36内を気化器38へ流れることができる。図3に描かれた実施形態において、濃縮器34は冷却された水であって、濃縮器に冷却液体を供給する冷却塔56に接続されたチューブ束54を含んでいる。
【0020】
気化器38へ配送された冷媒液体は、濃縮器34で用いられたものと同一の冷却液体であっても、又はなくてもよい別の冷却液体からの熱を吸収することができる。気化器38内の冷媒液体は、冷媒液体から冷媒蒸気への相転移を行うことができる。図3に描かれた実施形態に示すように、気化器38は、冷却負荷62に接続された供給ライン60S及び戻りライン60Rを有するチューブ束58を含んでいてよい。気化器38の冷却液体(例:水、エチレングリコール、塩化カルシウム塩水、塩化ナトリウム塩水、又は他の任意の適当な流体)は、戻りライン60Rを介して気化器38に流入し、供給ライン60Sを介して気化器38から出る。気化器38は、冷媒との熱伝熱を介してチューブ束58内の冷却液体の温度を下げることができる。気化器38内のチューブ束58は、複数の管及び/又は複数のチューブ束を含んでいてよい。いずれの場合も、冷媒蒸気は、気化器38から出て、吸入ラインにより圧縮機32まで戻ってサイクルを完了する。
【0021】
図4は、濃縮器34と膨張器36の間に組み込まれた中間回路64を有する蒸気圧縮システム14の模式図である。中間回路64は、濃縮器34に直接流体接続された取入口ライン68を有していてよい。他の実施形態において、取入口ライン68は濃縮器34に間接的に流体結合されていてよい。図4に描かれた実施形態に示すように、取入口ライン68は中間容器70の上流に配置された第1の膨張器66を含んでいる。いくつかの実施形態において、中間容器70は、フラッシュタンク(例:フラッシュインタークーラ)であってよい。他の実施形態において、中間容器70は熱交換機又は「表面エコノマイザ」として構成されていてよい。図4に描かれた実施形態において、中間容器70はフラッシュタンクとして用いられ、第1の膨張器66は濃縮器34から受容した冷媒液体の圧力を下げる(例:膨張させる)べく構成されている。膨張処理中、液体の一部が気化する可能性があり、従って中間容器70は、第1の膨張器66から受容した液体から蒸気を分離するために用いられてよい。また、中間容器70では、冷媒液体が中間容器70に流入する際に(例えば中間容器70に流入する際に見られる体積の急激な膨張によって)に見られる圧力低下に起因して冷媒液体の更なる膨張が生じる場合がある。中間容器70内の蒸気は、圧縮機32により圧縮機32の吸入ライン74を通って吸い込まれる場合がある。他の実施形態において、中間容器内の蒸気は、圧縮機32の(例えば吸入段階でない)中間段階に吸い込まれる場合がある。中間容器70に集まる液体は、膨張器66及び/又は中間容器70の膨張に起因して濃縮器34から排出される冷媒液体よりも低いエンタルピーを有していてよい。中間容器70からの液体は次いで、第2の膨張器36を通ってライン72内を気化器38へ流れることができる。
【0022】
図5は、蒸気圧縮システム14に含まれ得る潤滑回路80の一実施形態を示す模式図である。上述のように、蒸気圧縮システム14は、圧縮機32内を循環して圧縮機32の部品(例:ベアリング及び/又はシャフト)を潤滑する流体(例:油等の潤滑剤)を利用することができる。より具体的には、潤滑回路80は、流体を各種部品の潤滑に用いるべく、流体を圧縮機32等の蒸気圧縮システム14内の様々な位置に循環させるべく構成されている。潤滑回路80は、流体を回収及び/又は貯蔵すべく圧縮機32に流体結合された貯槽82を含んでいる。圧縮機32の部品を潤滑した後で、流体は圧縮機排出導管84を介して貯槽82の方へ流れて貯槽82内に蓄積することができる。図示するように、潤滑回路80は、濃縮器34及び気化器38の各々で冷媒と混合して集まる流体を貯槽82へ排出すべく構成された濃縮器排出導管86及び気化器排出導管88を含んでいる。例えば、濃縮器排出導管86及び/又は気化器排出導管88は、流体(例:油又は油と冷媒の混合物)を高圧ガスとして貯槽82に誘導すべく構成されていてよい。濃縮器排出導管86内、及び/又は気化器排出導管88内を流れる流体は、貯槽82に流入する前にエダクタ89内を流れることができる。エダクタ89は、濃縮器34及び気化器38から出る流体を貯槽82に流入する前に混合する、及び/又は濃縮器34及び気化器38から出て貯槽82に向かう流体を吸引することができる。
【0023】
貯槽82内にポンプ90(例:水中ポンプ及び/又は可変速度ポンプ)が、圧縮機供給導管92を介して圧縮機32に流体又は流体と冷媒の混合物を誘導すべく配置されていてよい。他の実施形態において、ポンプ90は、貯槽82の外側に配置されていても、及び/又は貯槽82及び圧縮機32の間に配置されていてもよい。さらに、いくつかの実施形態において、潤滑回路80は、圧縮機排出導管84及び/又は圧縮機供給導管92に沿って配置された冷却器を含んでいてよい。冷却器は、圧縮機32に潤滑する際に、流体が既に吸収した熱を流体から除去すべく構成されていてよい。
【0024】
特定の実施形態において、ポンプ90は、ポンプ90が流体の特定の流量を提供又は可能にすべく調整されるよう構成された速度が可変な電気ポンプであってよい。例えば、ポンプ90は、潤滑回路80内における流体の目標流量の調整を示す信号をコントローラから受信することができる。ポンプ90の速度は受信した信号に基づいて、ポンプ90内を流れる流体が目標流量に到達できるように調整することができる。本明細書に記述するように、目標流量への調整は比例調整、線形調整、非線形調整、指数調整、他の種類の流量の調整、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。比較により、機械駆動ポンプ(例:シャフトを介して流量を調整すべく駆動されるポンプ)は、流量を他の仕方ではなく線形に調整すべく構成されていてよい。このように、ポンプ90により供給される流体の流量は、機械駆動ポンプと比較した場合、より広範な目標流量に調整することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、ポンプ90は固定速度ポンプであってよく、ポンプ90の下流の流量は電子レギュレータ又は電子バイパス弁を介して調整することができる。例えば、電子レギュレータ又は電子バイパス弁は、ポンプ90と圧縮機32の間に(例えば圧縮機供給導管92に沿って)配置されていてよい。電子レギュレータ又は電子バイパス弁は、潤滑回路80内における流体の目標流量への調整を示す信号をコントローラから受信することができる。これに応答して、電子レギュレータ又は電子バイパス弁の動作を調整してポンプ90内を通る流体の流れが目標流量に到達できるようにする。
【0026】
図6は、潤滑回路80の一実施形態を示す模式図である。図6に描かれた実施形態に示すように、圧縮機32は、シャフト94に結合されたローターに圧縮機32内の冷媒を回転して圧縮させるべく構成されたシャフト94を含んでいる。シャフト94は、ベアリング96により少なくとも部分的に支持されている。図示する実施形態は1個のベアリング96を有する圧縮機32を示しているが、他の実施形態において圧縮機32は、シャフト94を支持すべく構成された追加的なベアリング96(例:2個のベアリング、3個のベアリング、4個のベアリング、6個のベアリング、10のベアリング等)を含んでいてよい。流体(例:油又は他の潤滑剤)は、シャフト94とベアリング96の間に流体膜が形成されるようにシャフト94とベアリング96の間を流れて、シャフト94が回転するにつれてシャフト94を潤滑することができる。流体は、圧縮機供給導管92に結合された圧縮機流体取入口98を介して圧縮機32に流入し、矢印102で示すように全般的にベアリング流体取入口100に誘導されてよい。流体はベアリング流体取入口100から、シャフト94とベアリング96の間を流れて、最終的に矢印104で示すように(例えばベアリング96の終端で)ベアリング96から流出することができる。ベアリング96を通過した後で、流体は、圧縮機排出導管84に結合された圧縮機流体排出口106へ流れることができる。このように、流体は貯槽82からベアリング96を通って貯槽82へ戻るように循環することができる。
【0027】
蒸気圧縮システム14はまた、潤滑回路80内の流体(例:潤滑剤)の流れを制御すべく構成された流体圧力制御システム110を含んでいる。例えば、潤滑回路80及び蒸気圧縮システム14の一部は全般的に、蒸気圧縮システム14の動作パラメータを示すフィードバックに基づいて流体圧力制御システム110により制御することができる。具体的には、蒸気圧縮システム14は、センサ112により検知されたシャフト94のシャフト速度(例:回転シャフト速度)を示すフィードバックに基づいて制御することができる。センサ112は、シャフト94に近接して配置されていてよく、センサ112がシャフト94の速度を示す信号を制御パネル40に出力できるように、制御パネル40に通信可能に結合されている。追加的又は代替的に、蒸気圧縮システム14は、センサ114により検知された圧縮機32内のベアリング96における流体の温度を示すフィードバックに基づいて制御することができる。センサ114は、ベアリング96に近接して配置され、センサ114が圧縮機32のベアリング96における温度を示す信号を制御パネル40に出力できるように制御パネル40に通信可能に結合されている。いくつかの実施形態において、センサ114は、ベアリング96に近接して配置され、温度を示すフィードバックを提供すべく構成された熱電対及び/又は他の適当な機器であってよい。
【0028】
特定の実施形態において、流体圧力制御システム110は、圧縮機供給導管92に沿って(例えば潤滑回路80に沿ってベアリング96の上流に)配置されていてよく、圧縮機供給導管92内の流体の流体供給温度を検知すべく構成されたセンサ116を含んでいてよい。追加的又は代替的に、センサ116は、圧縮機流体取入口98に配置されていてよく、圧縮機流体取入口98における流体供給温度を検知すべく構成されていてよい。センサ116は、制御パネル40に通信可能に結合され、流体供給温度を示す信号を制御パネル40に出力すべく構成されている。
【0029】
特定の実施形態において、流体圧力制御システム110は、圧縮機排出導管84に沿って(例えば潤滑回路80に沿ってベアリング96の下流に)配置され、圧縮機排出導管84内の流体の流体排出温度を検知すべく構成されたセンサ118を含んでいてよい。追加的又は代替的に、センサ118は、圧縮機流体排出口106に配置されていてよく、圧縮機流体排出口106における流体排出温度を検知すべく構成されていてよい。センサ118は、制御パネル40に通信可能に結合され、流体排出温度を示す信号を制御パネル40に出力すべく構成されている。流体供給温度及び/又は流体排出温度を示すフィードバックに基づいて、制御パネル40のマイクロプロセッサ44は(例えばメモリ46に保存された命令を用いて)、圧縮機32内のベアリング96における温度を判定及び/又は計算することができる。例えば、マイクロプロセッサ44は、流体供給温度と流体排出温度の差に基づいて、又は流体供給温度及び流体排出温度を用いる他の適当なアルゴリズムに基づいて、圧縮機32内のベアリング96における温度を計算することができる。
【0030】
マイクロプロセッサ44は、シャフト94のシャフト速度及び/又は圧縮機内のベアリング96における温度に基づいてポンプ90からベアリング96へ流れる流体の目標流量を決定することができる。例えば、マイクロプロセッサ44は流体の目標流量をシャフト速度及び/又は温度の関数(例:線形関数、非線形関数、比例関数、指数関数、又はこれらの組み合わせ)として決定することができる。追加的又は代替的に、マイクロプロセッサ44は、メモリ46に保存された参照テーブルに基づいて目標流量を決定することができる。例えば、参照テーブルは目標流量を、対応するシャフト速度及び/又は温度の関数として列挙することができる。いくつかの実施形態において、マイクロプロセッサ44は参照テーブル内の値を内挿して目標流量を決定することができる。また更なる実施形態において、マイクロプロセッサ44は、インターフェースボード48への入力130(例えば全般的に、流体の特性を表す入力、圧縮機32の動作モード、及び/又は蒸気圧縮システム14の動作モード)に基づいて目標流量を決定することができる。
【0031】
目標流量を決定した後で、流体圧力制御システム110は、流体の流量を目標流量に調整(例えば潤滑回路80内の流体の圧力を制御すべくポンプ90の速度を調整)することができる。例えば、マイクロプロセッサ44は貯槽82及びポンプ90に通信可能に結合され、流体の流量が目標流量に到達するように制御する調整を示す信号をポンプ90に出力することができる。特定の実施形態において、マイクロプロセッサ44は、インターフェースボード48(例:ユーザーインターフェース)のインジケータ132を介してユーザー検知可能な通知及び/又は警報を発することができる。インジケータ132は、任意のユーザー検知可能な通知、例えば発光ダイオード(LED)、可聴警報、ディスプレイ、テキスト、及び/又は他の適当な通知であってよい。例えば、ユーザー検知可能な通知及び/又は警報は、流体の流量、目標流量、流量と目標流量の差、圧縮機32内のベアリング96における温度、潤滑回路80内の流体の圧力、又はこれらの組み合わせを示していてよい。
【0032】
特定の実施形態において、流体圧力制御システム110は、ポンプ90における、及び/又はポンプ90から流出する流体の流量(例:ポンプ90の速度及び/又はポンプ90の吐出圧力)を示すフィードバックを制御パネル40に提供すべく構成されたセンサ120を含んでいてよい。図示するように、センサ120はポンプ90に結合され、貯槽82内に配置されている。他の実施形態において、センサ120は、貯槽82の外部に配置されていてよく、圧縮機32に流入する前にポンプ90から流出する流体の流量(例:圧縮機供給導管92内の、及び/又は圧縮機流体取入口98における流量)を示すフィードバックを提供すべく構成されていてよい。
【0033】
マイクロプロセッサ44は、流量(例えばセンサ120が検知した流量)を目標流量と比較し、当該比較に基づいてポンプ90を制御することができる。例えば、流量と目標流量の差が弁別閾を上回った場合、マイクロプロセッサ44は、(例えばポンプ90の速度を増減することにより)流量を目標流量に調整可能にする信号をポンプ90に出力することができる。弁別閾は、流体の種類、流体の動作パラメータ、圧縮機32及び/又は蒸気圧縮システム14の動作モード、オペレータ入力、又はこれらの組み合わせに基づいていてよい。追加的又は代替的に、弁別閾は、流量及び目標流量のパーセンテージの差(例:1パーセント、2パーセント、5パーセント、10パーセント等)であってよい。
【0034】
図示するように、流体圧力制御システム110は、シャフト速度及び/又は温度を示すフィードバックを受信し、目標流量を決定して、目標流量に到達するようにポンプ90の動作を調整すべく構成された蒸気圧縮システム14の制御パネル40を含んでいる。追加的又は代替的に、流体圧力制御システム110は、シャフト速度及び/又は温度を示すフィードバックを受信し、目標流量を決定して、目標流量に到達するようにポンプ90の動作を調整すべく構成された追加的なコントローラを含んでいてよい。例えば、追加的なコントローラは、潤滑回路80のコントローラであってよく、且つ潤滑回路80内の流体の流れを制御すべく構成されていてよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、制御パネル40のメモリ46は、マイクロプロセッサ44により実行可能な命令及び/又はマイクロプロセッサ44により処理されるデータを保存する1個以上の有形、非一時的、計算機可読媒体を含んでいてよい。例えば、メモリ46は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ等の書き換え可能な不揮発性メモリ、ハードドライブ、光ディスク、他の種類のメモリ、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。また、マイクロプロセッサ44は、1個以上の汎用マイクロプロセッサ、1個以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、1個以上のフィールドプログラム可能論理アレイ(FPGA)、又は、メモリ46に保存された命令を実行するこれらの任意の組み合わせを含んでいてよい。
【0036】
図7は、流体圧力制御システム110を動作させる処理140の一実施形態を示すフロー図である。本明細書で議論するステップが例示的に過ぎず、特定のステップを省略、又は後述する順序とは異なる順序で実行できることを理解されたい。いくつかの実施形態において、処理140は、メモリ46に保存されて制御パネル40のマイクロプロセッサ44により実行されても、又は他の適当なメモリに保存されて流体圧力制御システム110の他の適当な処理回路により実行されてもよい。
【0037】
図7に描かれた実施形態に示すように、ブロック142において、流体圧力制御システム110はマイクロプロセッサ44を介して、潤滑回路80に沿って配置されたセンサ(例:センサ112、114、116、118、及び/又は120)から動作パラメータを示すフィードバックを受信する。動作パラメータは、シャフト94の速度、圧縮機32内のベアリング96における温度、圧縮機供給導管92内の流体供給温度、圧縮機排出導管84内の流体排出温度、ポンプ90における流体の流量、蒸気圧縮システム14の動作に関連付けられた他の動作パラメータ(例:冷媒の動作パラメータ)、又はこれらの組み合わせを含んでいてよい。上述のように、マイクロプロセッサ44は、流体供給温度及び/又は流体排出温度に基づいて圧縮機32内のベアリング96における温度を判定すべく構成されていてよい。
【0038】
ブロック144において、流体圧力制御システム110は、動作パラメータを示すフィードバックに基づいて潤滑回路80内の流体の流量を調整する。例えば、マイクロプロセッサ44は、フィードバック(例:シャフト94の速度、圧縮機32内のベアリング96における温度、圧縮機供給導管92内を流れる流体供給温度、圧縮機排出導管84内を流れる流体排出温度、ポンプ90における流体の流量、蒸気圧縮システム14の動作に関連付けられた他の動作パラメータ、又はこれらの任意の組み合わせを示すフィードバック)に基づいて流体の目標流量を決定し、流体の流量が目標流量に到達するような調整を可能にする信号をポンプ90に出力(例えばポンプ90の速度を調整する信号を出力)することができる。特定の実施形態において、マイクロプロセッサ44は、測定又は検知された流量を目標流量と比較して、流量と目標流量の差が弁別閾を上回ったことに応答して、流体の流量の調整を可能にする信号をポンプ90に出力することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、流体圧力制御システム110は、シャフト94の速度及び圧縮機32内のベアリング96における温度に基づいて潤滑回路80内の流体の流量を調整することができる。例えば、マイクロプロセッサ44は、圧縮機32内のベアリング96における目標温度範囲に基づいて目標流量を決定することができる。圧縮機32内のベアリング96における実際の温度を示すフィードバックは、センサ114、116、及び/又は118から受信されても、センサ114、116、及び/又は118からのフィードバックに基づいて決定されてもよく、及び/又は入力130を介して受信されてもよい。圧縮機32内のベアリング96における実際の温度が目標温度範囲外である場合、マイクロプロセッサ44は、流体の流量の調整を実行する信号をポンプ90に出力することができる。いくつかの実施形態において、メモリ46は、ポンプ90を効果的に動作可能にする動作パラメータの範囲(例:速度範囲)を保存することができる。マイクロプロセッサ44が、流体の目標流量によりポンプ90が動作パラメータの範囲外で動作させられ得ると判定した場合、マイクロプロセッサ44はポンプ90に、動作パラメータの範囲の上限値又は下限値で動作するよう命令することができる。
【0040】
同様に、マイクロプロセッサ44は、シャフト94の速度に基づいて流体の目標流量を決定することができる。例えば、マイクロプロセッサ44は目標流量をシャフト速度の関数(例:一次関数、比例関数、指数関数)として決定することができる。特定の実施形態において、マイクロプロセッサ44は、測定された流量を目標流量と比較して、測定された流量と目標流量の差が弁別閾を上回ったことに応答して、流体の流量の調整を行わせる信号をポンプ90に出力することができる。
【0041】
特定の実施形態において、流体の目標流量がポンプ90に動作パラメータの範囲外で動作させる場合、マイクロプロセッサは、センサ114、116、及び/又は118からのフィードバックの検査を実行して、センサ114、116、及び/又は118が正確に動作しているか否か、ポンプ90、圧縮機32、又は蒸気圧縮システム14の動作を停止すべきか否か、或いは他の制御措置を実行すべきか否かを判定することができる。例えば、センサ114からのフィードバック(例:圧縮機32内のベアリング96における流体の温度を示すフィードバック)が動作パラメータの範囲外である第1の目標流量に対応する場合、マイクロプロセッサ44は、第2のセンサ(例:センサ116又は118)からのフィードバックが同じく動作パラメータの範囲外である第2の目標流量に対応するか否かを判定することができる。第1及び第2の目標流量が共にポンプ90に動作パラメータの範囲外で動作させる場合、マイクロプロセッサ44は、ポンプ90、圧縮機32、及び/又は蒸気圧縮システム14の動作を停止させるか、又は別の制御動作を実行する制御信号を出力することができる。第1又は第2の目標流量の一方だけがポンプ90に動作パラメータの範囲外で動作させる場合、マイクロプロセッサ44は、センサ114、116、及び/又は118の状態/調子(例えばセンサ114、116、及び/又は118が適切に動作していない可能性)を知らせる信号を制御パネル40に出力することができる。
【0042】
図8は、流体圧力制御システム110を動作する処理150の一実施形態を示すフロー図である。本明細書で議論するステップが例示的に過ぎず、特定のステップを省略、又は後述する順序とは異なる順序で実行できることを理解されたい。いくつかの実施形態において、処理150はメモリ46に保存されて制御パネル40のマイクロプロセッサ44により実行されても、又は他の適当なメモリに保存されて他の適当な処理回路により実行されてもよい。
【0043】
図8に描かれた実施形態に示すように、ブロック152において、流体圧力制御システム110は、マイクロプロセッサ44を介して、流体特性(例:潤滑回路80の流体の動作特性、流体の種類、蒸気圧縮システム14内の他の流体の動作特性)を示す入力(群)を受信する。例えば、入力はインターフェースボード48に提供される入力130を含んでいてよい。
【0044】
ブロック154において、マイクロプロセッサ44は、シャフト94の速度を示すフィードバックをセンサ112から受信する。ブロック156において、マイクロプロセッサ44は、シャフト94の速度に基づいてベアリング96への流体の目標流量を決定する。例えば、マイクロプロセッサ44は流体の目標流量をシャフト94の速度の関数(例:一次関数、非線形関数、比例関数、指数関数、又はこれらの組み合わせ)として決定する、及び/又は参照テーブルを参照してシャフト94の速度に基づいて目標流量を決定することができる。
【0045】
ブロック158において、流体圧力制御システム110は、ポンプ90の動作(例:ポンプ90の速度、及び/又はポンプ90の回転斜板の位置/角度)を調整して流体の流量を調整し、目標流量を達成する。例えば、流体圧力制御システム110は、目標流量に到達するようにポンプ90の目標速度を決定し、目標速度とポンプ90の動作速度の範囲を比較して、目標速度に基づいて動作速度の範囲からポンプ90の動作速度を選択し、ポンプ90の動作を選択された動作速度に調整することができる。特定の実施形態において、マイクロプロセッサ44は、測定された流量を目標流量と比較し、測定された流量と目標流量の差が弁別閾を上回ったことに応答して、流体の流量の調整を可能にする信号をポンプ90に出力することができる。
【0046】
図9は、流体圧力制御システム110を動作する処理160の一実施形態を示すフロー図である。本明細書で議論するステップが例示的に過ぎず、特定のステップを省略、又は後述する順序とは異なる順序で実行できることを理解されたい。いくつかの実施形態において、処理160はメモリ46に保存されて制御パネル40のマイクロプロセッサ44により実行されても、又は他の適当なメモリに保存されて他の適当な処理回路により実行されてもよい。
【0047】
図9に描かれた実施形態に示すように、ブロック162において、流体圧力制御システム110は、マイクロプロセッサ44を介して、流体特性(例:潤滑回路80の流体の動作特性、流体の種類、蒸気圧縮システム14内の他の流体の動作特性)を示す入力(群)を受信する。いくつかの実施形態において、フィードバックは、例えばユーザーによりインターフェースボード48に提供される入力130を含んでいてよい。
【0048】
ブロック164において、マイクロプロセッサ44は、圧縮機32内のベアリング96における流体の温度を示すフィードバックを含んでいてよいフィードバックをセンサ114から受信する。追加的又は代替的に、マイクロプロセッサ44は、流体供給温度をセンサ118から、及び/又は流体排出温度をセンサ116から受信し、流体供給温度及び/又は流体排出温度に基づいて圧縮機32内のベアリング96における流体の温度を判定することができる。
【0049】
ブロック166において、マイクロプロセッサ44は、圧縮機32内のベアリング96における温度に基づいてポンプ90からベアリング96への流体の目標流量を決定する。例えば、マイクロプロセッサ44は流体の目標流量を、ベアリング96における温度の関数(例:一次関数、非線形関数、比例関数、指数関数又はこれらの組み合わせ)として決定する、及び/又は参照テーブルを参照してベアリング96における温度に基づいて目標流量を決定することができる。
【0050】
ブロック168において、流体圧力制御システム110は、ポンプ90の動作を調整して流体の流量を制御し、目標流量を達成する。例えば、流体圧力制御システム110は、目標流量に到達するようにポンプ90の目標速度を決定し、目標速度とポンプ90の動作速度の範囲を比較して、目標速度に基づいて動作速度の範囲からポンプ90の動作速度を選択し、ポンプ90の動作を選択された動作速度に調整することができる。特定の実施形態において、マイクロプロセッサ44は、測定された流量を目標流量と比較し、測定された流量と目標流量の差が弁別閾を上回ったことに応答して、流体の流量の調整を可能にする信号をポンプ90に出力することができる。
【0051】
本明細書では処理140、150及び160を個別の処理として記述しているが、処理140、150、及び160、又はこれらの特定のステップを単一の処理又は方法に結合することができる。例えば、流体圧力制御システム110は、処理140、150、及び160のステップを同時又は個別に実行することができる。特定の実施形態において、上述のように、流体圧力制御システム110は、潤滑回路80内の流体の流量をシャフト94の速度及び圧縮機32内のベアリング96における流体の温度の関数として制御することができる。
【0052】
従って、本開示は圧縮機の各種の部品を潤滑する流体圧力制御システムを目的とする。流体圧力制御システムは、圧縮機のシャフトの速度及び/又は圧縮機内のベアリングにおける温度を示すフィードバックを提供するセンサを含んでいる。例えば、第1のセンサがシャフトに近接して配置されていてよく、シャフトの速度を示すフィードバックを提供すべく構成されていてよい。第2のセンサがベアリングに近接して配置されていてよく、圧縮機内のベアリングにおける温度を示すフィードバックを提供すべく構成されていてよい。特定の実施形態において、センサは、圧縮機の圧縮機供給導管及び/又は圧縮機の圧縮機排出導管に配置されていてよく、流体の流体供給温度及び流体排出温度の各々を検知すべく構成されていてよい。このように、流体圧力制御システムのコントローラが流体供給温度及び/又は流体排出温度に基づいて圧縮機内のベアリングにおける温度を判定することができる。
【0053】
更に、コントローラは、ポンプの動作パラメータを調整して、シャフトの速度及び/又は圧縮機内のベアリングにおける温度に基づいてポンプからベアリングへの流体の流量を制御することができる。例えば、コントローラは、シャフトの速度及び/又はベアリングにおける温度に基づいて目標流量を決定して、目標フローに到達するようにポンプを調整することができる。いくつかの実施形態において、目標流量は、シャフトの速度及び/又はベアリングにおける温度の関数(例:一次関数、非線形関数、比例関数、指数関数又はこれらの組み合わせ)であってよい。シャフトの速度及び/又はベアリングにおける温度が減少するにつれて、コントローラは全般的にポンプの動作を調整して流量を下げることができる。シャフトの速度及び/又はベアリングにおける温度が上昇するにつれて、コントローラは全般的にポンプの動作を調整して流量を増やすことができる。いずれの場合も、コントローラは、ポンプの動作を調整して流体の流量を制御することにより、圧縮機及び/又は蒸気圧縮システムの動作及び効率を全般的に向上させることができる。例えば、流量の制御により圧縮機のシールからの流体の漏出を少なくとも部分的に遮断又は低減させることができ、及び/又は流体、シャフト、及び/又はベアリングの間で摩擦を減らすことができる。
【0054】
本発明の特定の特徴及び実施形態のみを図示及び記述してきたが、当業者には、請求項に記述する主題の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、多くの改良及び変更(例:様々な各種要素の大きさ、寸法、構造、形状及び比率、パラメータ(例:温度、圧力等)の値、取付設定、材料の使用、色、方位等)が想到されよう。任意の処理又は方法ステップの順序又はシーケンスは、代替的な実施形態に従い変更又は入れ替えることができる。従って、添付する請求項は、このような改良及び変更を本発明の真の趣旨に含まれるものとして包含することを意図している。更に、これらの例示的実施形態を簡潔に記述する努力を通じて、実際の実装の全ての特徴(すなわち、本発明の実施に際して最良の形態であると現在考えられるものとは無関係なもの、又は請求項に記載の発明を実施可能にすることに無関係なもの)を本明細書に記述している訳ではない。このような実際の実装の開発では、工学又は設計プロジェクトの場合と同様に、実装固有の決定を数多く下さねばならないことを理解しておく必要がある。そのような開発努力は複雑且つ時間を要するかもしれないが、本開示の利点を享受する当業者にとって過度の実験無しに、設計、製造、及び生産の定型作業であることを認識されたい。
図1
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【国際調査報告】