(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】アクチュエータ装置用のストローク伝達器
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20220609BHJP
F16H 7/04 20060101ALI20220609BHJP
F15B 15/02 20060101ALI20220609BHJP
F15B 15/00 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
H02N2/04
F16H7/04
F15B15/02 A
F15B15/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561692
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2019059929
(87)【国際公開番号】W WO2020211937
(87)【国際公開日】2020-10-22
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519205132
【氏名又は名称】メティスモーション ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MetisMotion GmbH
【住所又は居所原語表記】Paulsdorfferstr. 36, Eingang C, 81549 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク バッハマイアー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ゲアリヒ
(72)【発明者】
【氏名】根本 健
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ツェルス
【テーマコード(参考)】
3H081
3J049
5H681
【Fターム(参考)】
3H081AA05
3H081BB01
3H081CC22
3H081CC28
3H081DD18
3H081DD33
3H081FF47
3H081HH04
3J049AA06
3J049BH02
3J049CA10
5H681AA06
5H681BB13
5H681BC09
5H681BC10
5H681DD23
5H681EE11
(57)【要約】
ここに示されているのは、アクチュエータ装置(1)用のストローク伝達器(2)である。ストローク伝達器(2)は、・互いに機械的に直列接続されている第1変換ユニットおよび第2変換ユニットを有し、・第1変換ユニットは、液圧式変換ユニット(H)として構成されており、その駆動側(Ha)においてアクチュエータ(A)に接続可能であり、その被駆動側(Hb)において第2変換ユニットの駆動側(Ma)に接続されており、・第2変換ユニットは、ロープシステム(M)として構成されており、その被駆動側(Mb)において被駆動体(T)を有する。さらに、アクチュエータ(A)と、アクチュエータ(A)に機械的に直列接続されているストローク伝達器(2)と、を有するアクチュエータ装置(1)が示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ装置(1)用のストローク伝達器(2)であって、前記ストローク伝達器(2)は、
・互いに機械的に直列接続されている第1変換ユニットおよび第2変換ユニットを有し、
・前記第1変換ユニットは、液圧式変換ユニット(H)として構成されており、前記第1変換ユニットの駆動側(Ha)においてアクチュエータ(A)に接続可能であり、かつ前記第1変換ユニットの被駆動側(Hb)において前記第2変換ユニットの駆動側(Ma)に接続されており、
・前記第2変換ユニットは、ロープシステム(M)として構成されており、前記第2変換ユニットの被駆動側(Mb)において被駆動体(T)を有する、
ストローク伝達器(2)。
【請求項2】
前記ロープシステム(M)は、運動伝達ロープ(101)および複数のガイドプーリ(107、108)を有する滑車システムとして構成されている、請求項1記載のストローク伝達器(2)。
【請求項3】
前記ロープシステム(M)は、1:2以下の変換比を有する、請求項1または2記載のストローク伝達器(2)。
【請求項4】
前記液圧式変換ユニット(H)と前記ロープシステム(M)とは、合わせて1:2以下の、特に1:4以下の全体変換比を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載のストローク伝達器(2)。
【請求項5】
前記被駆動体(T)は、少なくとも0.5mmのストロークを有する、請求項1から4までのいずれか1項記載のストローク伝達器(2)。
【請求項6】
前記被駆動体(T)は、実質的にただ1つの並進自由度において可動に支持されている、縦長に形成されたプランジャーである、請求項1から5までのいずれか1項記載のストローク伝達器(2)。
【請求項7】
前記液圧式変換ユニット(H)は、駆動要素(13a)および被駆動要素(13b、21b)を有し、かつ最大で1:2の変換比で前記駆動要素(13a)の運動を前記被駆動要素(13b、21b)に伝達するように構成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のストローク伝達器(2)。
【請求項8】
前記液圧式変換ユニット(H)には、作動流体(7)が充填可能であり、前記液圧式変換ユニット(H)は、第1チャンバ(11a)および第2チャンバ(11b)を有し、前記第1チャンバ(11a)と、前記第2チャンバ(11b)とは互いに液圧的に接続されており、前記第1チャンバ(11a)および第2チャンバ(11b)のうちの一方が駆動チャンバ(11a)として、他方が被駆動チャンバ(11b)として構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のストローク伝達器(2)。
【請求項9】
少なくとも前記第1チャンバ(11a)では、ピストン軸線に沿ってピストン(13a)が可動に配置されており、これにより、前記ピストン(13a)は、容積が可変の作業チャンバ(15a)と後側チャンバ(17a)とに前記第1チャンバ(11a)を分離し、前記後側チャンバ(17a)は、少なくとも部分的に、可変の軸線方向長さを有するベローズ要素(19a)によって画定されている、請求項8記載のストローク伝達器(2)。
【請求項10】
付加的に、特に圧力印加可能な、前記作動流体(7)用の貯蔵チャンバ(41)を有する、請求項8または9記載のストローク伝達器(2)。
【請求項11】
アクチュエータ(A)と、前記アクチュエータ(A)に機械的に直列接続されている、請求項1から10までいずれか1項記載のストローク伝達器(2)と、を有するアクチュエータ装置(1)。
【請求項12】
前記アクチュエータ(A)は、固体アクチュエータである、請求項11記載のアクチュエータ装置(1)。
【請求項13】
2つの部分システム(61、62)を有し、それぞれの前記部分システム(61、62)は、アクチュエータ(A)と、前記アクチュエータ(A)に機械的に直列接続されている、請求項1から10までのいずれか1項記載のストローク伝達器(2)と、を有する、請求項12記載のアクチュエータ装置(1)。
【請求項14】
ロボットまたは昇降テーブル用のアクチュエータ装置として構成されている、請求項11から13までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(1)。
【請求項15】
液体の注入を調量するためのアクチュエータ装置として構成されている、請求項11から13までのいずれか1項記載のアクチュエータ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータに接続可能な液圧式変換ユニットを有する、アクチュエータ装置用のストローク伝達器に関する。本発明はさらに、このようなストローク伝達器を備えたアクチュエータ装置に関する。
【0002】
従来技術からは、特に、一般に圧電アクチュエータおよび液圧式変換ユニットを含む圧電液圧式アクチュエータ装置が公知であり、ここでは圧電アクチュエータは、液圧式変換ユニット用の駆動器として作用する。このような組み合わせ型アクチュエータ装置の重要の特徴は、液圧ユニットが設けられていることにより、圧電アクチュエータ単独による機械的ストロークよりも格段に大きな機械的ストロークを達成できることである。これは、例えば、液圧ユニットにおける変換比によって、かつ/または圧電アクチュエータの数多くの小さな個別運動の作用を足し合わせる、液圧ユニットにおけるポンプ作用によって達成可能である。これにより、圧電アクチュエータの、また他の公知の固体アクチュエータの第1の欠点、すなわちそれらのストロークが小さいという第1の欠点が克服される。このような圧電液圧式アクチュエータは、例えば、独国特許出願公開第102016213654号明細書および独国特許出願公開第102013219759号明細書から公知である。
【0003】
しかしながら、このような単段の液圧式変換ユニットによって達成可能なストローク増幅よりもさらに格段に大きなストローク増幅が望ましい、アクチュエータ装置用の数多くの応用が存在する。例えば、数mmの、一部では数センチメートルにもおよぶ機械的なストロークをアクチュエータ装置が供給しなければならない多くの応用が存在する。これらの例は、ロボット工学におけるアクチュエータ装置、昇降テーブルの調整のための、液体の噴射の調量のための、または開閉装置における開閉過程をトリガするためのアクチュエータ装置である。これらの応用の多くには、大きなストロークが必要なだけでなく、同時に高い速度も必要である。例えば、いくつかの応用では、全体運動が終了するまでの、アクチュエータの電気的な駆動制御の全体トリガ時間が、わずか数ミリ秒(または一部ではさらに短い)しか許容されない。上で挙げた応用の多くにおいて重要である別の要求は、可能な限りに効率的に電気エネルギを機械エネルギに変換することである。上で挙げた応用の多くにおいて重要である別の要求は、比較的大きな力を被駆動側に伝達することである。したがって、全体としては、ストローク、動特性、エネルギ効率および力についての上で挙げた要求を同時に、可能な限りに良好に満足するストローク伝達器についても、これを装備したアクチュエータ装置についても需要が存在するのである。ここでは全体システムのエネルギは、アクチュエータのエネルギによって制限され、ストローク伝達器により、ストロークと力との間の比が設定可能である。それぞれの応用について、部分的には同時には満たすことのできない複数の境界条件間で、可能な限りに柔軟に、適切な妥協を見つけることができるように設計されたストローク伝達器についての特別な需要が存在する。
【0004】
したがって本発明の課題は、上で挙げた困難を克服するストローク伝達器を示すことである。特に、アクチュエータ装置において、利用可能な全体エネルギの枠内で大きなストローク、高い動特性、高いエネルギ効率および大きな力伝達を同時に可能にするストローク伝達器を提供できるようにしたい。ストローク伝達器の構造により、上で挙げたパラメータ間の、それぞれの応用について調整される妥協の設定が、可能な限りに簡単に行えるようにしたい。本発明の別の課題は、このような伝達器を備えたアクチュエータ装置を提供することである。
【0005】
これらの課題は、請求項1に記載されたストローク伝達器と、請求項11に記載されたアクチュエータ装置とによって解決される。本発明によるストローク伝達器は、アクチュエータ装置用のストローク伝達器として設計される。ストローク伝達器には、互いに機械的に直列接続されている第1変換ユニットおよび第2変換ユニットが含まれている。第1変換ユニットは、液圧式変換ユニットとして構成されており、その駆動側においてアクチュエータに接続可能である。第1変換ユニットは、その被駆動側において、第2変換ユニットの駆動側に接続されている。第2変換ユニットは、ロープシステムとして構成されており、その被駆動側において被駆動体を有する。
【0006】
ロープシステムの上で挙げた被駆動体は、ストローク伝達器全体の上位の被駆動体である。ストローク伝達器は、特に、その駆動側において、アクチュエータ装置のアクチュエータに接続可能な、対応する駆動体も有する。
【0007】
本明細書において「機械的に直列接続されている」という用語は一般に、第1変換ユニットの被駆動側が、第2変換ユニットの駆動側に力伝達式および運動伝達式に接続されていることであると理解すべきである。したがって、ロープシステムは特に、アクチュエータとは反対側の、液圧式変換ユニットの側に力伝達式に接続されているべきである。したがって、液圧式変換ユニットは、アクチュエータの後方で第1変換段を形成し、ロープシステムは、後置された第2変換段を形成する。これらの2つの段により、液圧式変換ユニットおよびロープシステムの個々の変換比から乗算的に合成される全体変換比が得られる。ロープシステムそれ自体は、その駆動側において液圧式変換ユニットに機械的に連結されており、その被駆動側において、可動の被駆動体に接続されている。この被駆動体は、例えば、一般に並進運動体であってよいが、回転運動体であってもよい。本発明の関連において重要であるのは単に、この被駆動体が、外側の要素に機械的なストロークを伝達するのに適していることである。
【0008】
ロープシステムは、特に、運動伝達コンポーネントとしてのロープを備えた機械式変換システムである。駆動側は、第1のロープ端部の領域にあり、また被駆動側は、第2のロープ端部の領域にある。
【0009】
本発明による実施形態の重要な利点は、相前後に接続される2つの変換ユニットを有する装置により、使用されるアクチュエータそれ自体が、比較的小さなストロークしか形成できない場合であっても、被駆動体の比較的大きなストロークが達成できることにある。これにより、特に、入力ストロークの小さい固体アクチュエータが使用される場合であっても、特に数ミリメートルの、それぞれの応用に必要な出力ストロークを形成することができる。
【0010】
別の利点は、このアクチュエータが、特にわずかに数ミリ秒の短いトリガ時間であっても比較的大きなストロークを達成できることに見られる。このことは、特に、全体的な変換システムの高い剛性によって得られる。
【0011】
一方では、液圧式変換ユニットは、高い剛性で比較的容易に設計可能である。これは、特に、作動流体の比較的少ない作業容積が使用されることにより、側方の変形性の小さいチャンバ壁により、かつ/またはストローク要素としてピストンを使用することにより、達成可能である。一般に液圧式変換ユニットは、高い動特性を有するストローク変換に特に良好に適している。本明細書の関連において、変換ユニットの「高い動特性」とは一般に、高速な時間応答特性のことであると理解される。言い換えると、「高い動特性」は、駆動側における短くかつ高速の運動が、わずかな時間のずれおよびわずかな時間的な伸長で、被駆動側における対応して短くかつ高速の運動に変換されることを意味するものとする。
【0012】
液圧式変換ユニットの他に、直列接続されるロープシステムも比較的容易に、高い機械的な剛性および対応する高い動特性で実現可能である。特に、小さな弾性および大きな引張強さを有するロープ材料を選択する場合、このようなロープシステムでは比較的容易に高い剛性が、同時に可動部分の比較的小さな質量で達成可能である。
【0013】
別の利点は、比較的小さなピーク電力で大きなストロークおよび高い動特性を達成できることに見ることができる。これは特に、アクチュエータにおけるストロークの形成も、2つの変換段におけるストローク変換も共に比較的にエネルギ効率的に行うことができることによって可能になる。特に、固体アクチュエータを使用する際には、1次ストロークを形成するときに比較的少ない損失しか発生しない。特に、作業容積を、ひいては作動流体の移動される質量を小さく維持できる場合には、液圧式変換ユニットも容易に、小さなエネルギ損失で動作させることができる。特に、ロープの弾性的な変形性が小さい場合、ロープシステムも容易に少ないエネルギ損失で動作させることができる。
【0014】
したがって、本発明によるストローク伝達器により、上で挙げた応用のさまざまな応用についてのストロークの長さおよびトリガ速度に対する要求を満たすことができ、同時に全体としてエネルギ効率的な変換が行われる。これは、特に、被駆動体の機械的な運動エネルギへの、アクチュエータの動作に使用される電気エネルギの効率的な変換であってよい。
【0015】
純粋な液圧式ストローク変換器に比べて、液圧およびロープシステムの本発明による2段の組み合わせにより、特に大きなストロークだけでなく、同時に比較的少ない質量も可能になる。すなわち、ロープシステムは、液圧式変換ユニットに比べ、比較可能な変換比で、格段に容易にしかも少ない全体質量で実現可能である。純粋なロープシステムに比べ、本発明による2段の組み合わせにより、比較可能な変換比で、全体として、より高い剛性が、ひいては改善された動特性が可能になる。すなわち、少ない作業容積と、圧縮率のわずかな作動流体と、少ないリーケージとを使用する際には、液圧式変換ユニットにより、純粋なロープシステムによるよりも格段に容易に、特に高い動特性を実現することができる。すなわち、純粋なロープシステムでは、必要なプーリの個数により、システムの質量が比較的に大きくなってしまい得る。2つの変換段の異なる特性により、極めて容易に、ストローク伝達器の全体パラメータをそれぞれの応用の要求に適合させることができる。それぞれの応用に特に高いエネルギ効率が重要である場合、例えば、全体変換のより高い割合をロープシステムによって実現することができる。これにより、全体質量が、ひいては損失も特に少なく維持される。これに対し、それぞれの応用に特に高い動特性がより重要な場合には、全体変換の比較的高い割合を、液圧式変換ユニットによって実現することができる。これにより、ストローク変換器の特に高い剛性、ひいては特に高い動特性が実現される。したがって本発明によるストローク伝達器の基本的なコンセプトにより、2つの変換段の設計を介して、それぞれ必要なシステムパラメータに特に柔軟に適合させることができる。
【0016】
本発明によるアクチュエータ装置は、アクチュエータと、アクチュエータに機械的に直列接続された本発明によるストローク伝達器とを有する。アクチュエータ装置の利点は、ストローク伝達器の上で説明した利点と同様にして得られる。
【0017】
本発明の有利な実施形態および発展形態は、請求項1および請求項11に従属する請求項および以下の説明から明らかになる。ストローク伝達器およびアクチュエータ装置の説明される実施形態は一般に、互いに有利に組み合わせ可能である。
【0018】
有利な一実施形態によれば、ロープシステムは、滑車システムとして設計されていてよい。このような滑車システムは、特に、運動伝達ロープおよび複数のガイドプーリを有していてよい。この実施形態の利点は、これにより、比較的容易に所望の経路変換比を設定できることである。特に、ガイドプーリの個数を選択することによって変換比に影響を及ぼすことができる。同時に、小さい弾性および高い引張強さを有するロープを選択することにより、高い剛性および小さい質量を有する機械的な変換ユニットを得ることができる。
【0019】
このような滑車システムでは、ガイドプーリの個数nは有利には少なくとも2個であってよく、特に有利には少なくとも4個であってよく、特に2個と20個との間であってよい。これらのプーリは、特に、グループで複数の個別のブロックにまとめることができ、同じブロックのプーリはそれぞれ同じ支持体に固定される。特に全体で、それぞれ複数のプーリを備えた対向するこのような2つのブロックを設けることができる。2つのブロックのプーリにわたるロープの取り巻き角度は有利には、約180°であってよい。言い換えると、この場合、実質的にはそれぞれのプーリの半分が、ロープによって取り巻かれる。
【0020】
プーリから成る説明した2つのブロックに加えて、滑車システムは、別の側方のガイドプーリも有していてよく、このガイドプーリでは、ロープの取り巻き角度が、設定位置に応じて可変である。この可変の取り巻き角度は、特に、90°~180°の範囲にあってよい。取り巻き角度の変化は、ロープシステムのロープに固定の接続された被駆動体の運動によって決まり、すなわち、例えばプランジャーの運動によって決まる。したがってこれは、特に、被駆動側の側方のガイドプーリであってよい。
【0021】
一般に、かつ詳細な実施形態およびガイドプーリの個数とは無関係に、滑車システムは基本的に、複滑車、スパニッシュバートンおよび/または差動滑車であってよい。
【0022】
一般に、ロープシステムは有利には1未満の変換比を有していてよい。ロープシステムの駆動体の運動は、この変換比でロープシステムの被駆動体の運動に伝達される。変換比が1未満の場合、被駆動側におけるストロークは、駆動側におけるストロークよりも大きい。したがってここでいう変換比とは一般に、それぞれ変換装置の被駆動側におけるストロークに対する、駆動側におけるストロークの比のことと理解されるべきである。ストロークがより大きくなると、この変換比は相応に1よりも小さくなる。特に好ましくは、ロープシステムは、1:2以下の変換比を有する。したがって1:2を下回る変換比により、2倍よりも大きいストローク増幅が得られる。言い換えると、この場合、ロープシステムの被駆動側におけるストロークは、駆動側におけるストロークに対して少なくとも2倍になる。したがって、これにより、アクチュエータ装置の第2変換段において、大きな(別の)ストローク変換が得られる。これにより、ストローク伝達器に対し、全体として、それぞれの応用に十分である、被駆動体の十分に大きなストロークを得ることができる。このことは特に、比較的小さい1次ストロークを有するアクチュエータに対しても達成可能である。
【0023】
ロープシステムにより、有利には、1:2~1:50の一般に有利な範囲における変換比を容易に実現可能である。1:2~1:20の有利な範囲における変換比は、比較的少ない装置コストで実現可能である。
【0024】
一般に有利であり、かつロープシステムの詳細な実施形態とは無関係に、ストローク伝達器において液圧式変換ユニットとロープシステムとは合わせて、1:2以下の、特に1:4以下の全体変換比を有することができる。言い換えると、2つの変換段は、被駆動体に対し、アクチュエータのストロークに対して少なくとも2倍の、特に少なくとも4倍のストロークが達成されるように協働可能である。特に好ましくは、この全体変換比は、1:10以下、特に1:20以下、さらに特に好ましくは1:50以下であってよく、それどころか特に1:100以下であってもよい。このように大きな全体変換比によって可能になるのは、極めて小さなストロークを有する1次アクチュエータ(例えば圧電アクチュエータ)を用いる場合であっても、被駆動体の十分に大きなストロークを達成することである。
【0025】
したがって被駆動体は一般に、有利には少なくとも0.5mmの、特に少なくとも2mmのストロークを有していてよい。言い換えると、アクチュエータの1次ストロークと、2つの変換段のストロークを何倍かに増幅する作用とにより、少なくともこのストロークだけ、被駆動体を運動させることが可能である。被駆動体のストロークは、例えば、多くの応用について、有利には0.5mm~5mmの範囲を取り得る。
【0026】
しかしながらロープシステムおよび/またはストローク伝達器全体のストロークを増幅する変換を有する、説明した実施形態とは択一的に、基本的に可能でもあり、かつ状況によって有利でもあるのは、それぞれの変換比を1よりも大きく選択する場合である。このことは、特に、液圧式変換ユニットの変換比それ自体に、ロープシステムの変換比それ自体に、特に全体としてのストローク伝達器の変換比に当てはまり得る。これにより、それぞれの被駆動側には、駆動側において供給される力よりも大きな力が加わることができる。したがって、この変形実施形態は一般に、大きな力が必要とされる応用に有利である。特に有利には、2つの変換段のそれぞれについての変換比は一般に、2より大であってよく、特に2~10の範囲にあってよい。
【0027】
一般に、かつ変換比の詳細な実施形態とは無関係に、被駆動体は、縦長に形成されたプランジャーであってよい。このようなプランジャーは、特に、実質的にただ1つの並進自由度において可動に支持されていてよい。このような1次元的に可動な支持には、特にアンチフリクションブッシュが使用可能である。言い換えると、この場合にプランジャーは、並進運動体として作用する。したがって、この場合にロープの運動は、この並進運動体の1次元運動に伝達される。
【0028】
しかしながら並進運動体を有する実施形態とは択一的に、被駆動体は回転運動体であってもよい。言い換えると、並進運動は、変換ユニットにより、回転運動体の回転運動に変換されてもよい。回転運動へのこのような変換は、例えば、プーリとの接続によって行うことが可能である。
【0029】
液圧式変換ユニットの有利な一実施形態によれば、液圧式変換ユニットは、駆動要素および被駆動要素を有していてよい。液圧式変換ユニットは、特に、1よりも小さい経路変換比で駆動要素の運動を被駆動要素に伝達するように構成可能である。すなわち、言い換えると、液圧式変換ユニットにより、好ましくはストロークの増幅も行われるとよい。特に有利には、液圧ユニットの変換比は、最大1:2、特に1:10であってよく、それどころか極めて有利には最大で1:20、またはそれどころか最大で1:50であってもよい。これにより、すなわち、アクチュエータ装置全体の第1段においてすでに、ストロークの対応する増幅を達成することができ、この場合には液圧ユニットのこのストロークが、ロープシステムの説明した有利な変換比によって再度、さらに増幅される。
【0030】
液圧式変換ユニットの一般に有利な一実施形態によれば、これには作動流体が充填可能である。液圧式変換ユニットは特に、第1チャンバおよび第2チャンバを有し、これらのチャンバは、互いに液圧的に接続されており、これらのうちの一方が駆動チャンバとして、他方が被駆動チャンバとして構成されている。この際には、駆動チャンバおよび被駆動チャンバは一般に、管路によって流体接続可能であるか、または上位のチャンバ容積体の部分領域として直接に互いに混ざり合うことも可能である。液圧式変換ユニットのこの基本構造は、例えば、独国特許出願公開第102016213654号明細書および独国特許出願公開第102013219759号明細書から公知である。
【0031】
液圧式変換ユニットの特に好ましい一実施形態によれば、少なくとも第1チャンバには(すなわち1つの駆動チャンバおよび/または被駆動チャンバには)、ピストン軸線に沿ってピストンが可動に配置されていてよい。このピストンは、容積が可変の作業チャンバと後側チャンバとに第1チャンバを分離可能であり、後側チャンバは、少なくとも部分的に、可変の軸線方向長さを有するベローズ要素によって画定されている。言い換えると、液圧ユニットは、純粋なピストンシステムでも純粋のベローズシステムでもなく、むしろ混合型のピストン・ベローズシステムであり、ここでは、2つのタイプの画定要素が少なくとも、2つのチャンバのうちの1つにおいて並んでいる。特に、2つのチャンバ(駆動チャンバおよび被駆動チャンバ)は、このような混合型のピストン・ベローズシステムとして実現することさえも可能である。このような混合型のピストン・ベローズシステムの特に有利な実施形態は、Siemens社およびMetisMotion社によって同じ出願日に提出された、"Hydraulische Uebersetzungseinheit fuer eine Aktoreinrichtung"(アクチュエータ装置用の液圧式変換ユニット)という名称の国際出願に詳しく説明されており、したがってこの国際出願は、本願の開示内容に含まれるものとする。しかしながら択一的には、液圧式変換ユニットは、純粋のピストンシステムまたは純粋のベローズシステムとして実現することも可能であり、これらも同様に、上で引用した並行して提出された出願に詳しく説明されている。ストローク伝達器の考えられる応用および別の有利な実施形態に関し、その他の点については、Siemens社によって同じ出願日に提出された、"Ausloesevorrichtung fuer eine elektrische Schalteinrichtung"(電気回路装置用のトリガ装置)という名称のドイツ国特許も本願の開示内に取り入られるものとする。
【0032】
一般に有利でありかつ液圧式変換ユニットの詳細な実施形態とは無関係に、液圧式変換ユニットは、作動流体用の貯蔵チャンバを有していてよい。このような貯蔵チャンバは、特に、上で説明した後側チャンバに流体接続されているかまたは流体接続可能であってよい。貯蔵チャンバは、特に、後側チャンバ用のピストンの運動が完全には容積に関して中立でない場合に有効になり得る。したがって後側チャンバの小さな容積変化は、貯蔵チャンバに流体的に連結することによって有利に補償されることが可能である。しかしながら、択一的または付加的には、貯蔵チャンバに接続することは、温度変化によって生じる、作動流体の体積変化を補償するためにも有益になり得る。この実施形態の特に有利な変形実施形態では、貯蔵チャンバには、圧力を印加することができる。圧力印加のためのこのような選択肢は、例えば、貯蔵チャンバの領域における付加的なベローズ要素またはピストンによって実現可能である。これに関し、貯蔵チャンバに流体的に連結されている後側チャンバにおける圧力よりも、例えば高いかまたは低くてよい圧力を貯蔵チャンバに印加することができる。例えば、貯蔵チャンバの領域に設けられている設定要素を用いて、液圧システム全体を所望の出発圧力に予荷重を加えることができ、これにより、特に、被駆動側に設けられている被駆動体の所望の出発位置を設定可能である。被駆動体のそれぞれ設定される出発位置は、使用されるベローズ要素の剛性と、アクチュエータ体および被駆動体に作用する予荷重力とに依存する。
【0033】
一般に液圧式変換ユニットには、作動流体が充填可能である。したがってこの実施形態では、作動流体はすでに変換ユニットの一部である。しかしながら、本発明を実現するために基本的に十分であるのは、変換ユニットが、作動流体を充填するのに適したチャンバシステムを有する場合である。適切な作動流体は、例えば、シリコーンオイル、グリコールであり、または液体金属でもある。変換ユニットに作動流体が充填される場合、作動流体は、駆動チャンバにも被駆動チャンバにも(かつ場合によってはそれぞれ作業チャンバにも後側チャンバにも)あり、付加的には選択的に設けられる1つまたは複数の接続管路および/または貯蔵チャンバにもある。一般に、駆動チャンバおよび被駆動チャンバは、管路によって流体接続可能であるか、または上位のチャンバ容積体の部分領域として直接に互いに混ざり合うことも可能である。
【0034】
一般に、液圧式変換ユニットの全作業容積は有利には1ml以下であってよい。特に、作業容積は、0.5mlを下回る、または0.1mlさえも下回る範囲にあってよく、特に0.01ml~0.5mlもしくは0.01ml~0.1mlにあってよい。このような小さい作業容積により、高い剛性および/または高い動特性を有する変換ユニットが特に容易に実現可能である。
【0035】
別の有利な一実施形態によれば、液圧式変換ユニットは、ポンピング可能な変換ユニットとして構成可能であり、これによって駆動チャンバの領域において連続する複数の個別運動により、被駆動チャンバの領域において足し合わされた運動を形成可能である。このようなポンピング作用は、例えば、独国特許出願公開第102017214697号明細書および欧州特許出願第17203689.9号明細書に記載されており、したがってこれらは、本願の開示内容に含まれるものとする。このような実施形態では、変換が行われるだけでなく、駆動体の個別運動の足し合わせも行われて、被駆動体の足し合わされた全体運動になる。このために、例えば、液圧管路において駆動側の作業チャンバと被駆動側の作業チャンバとの間に1つまたは複数の逆止弁を設けることができる。選択的には、作業容積に液圧的に連結可能な、作動流体用の1つまたは複数のポンプリザーバを付加的に設けることが可能である。
【0036】
アクチュエータ装置の有利な一実施形態によれば、アクチュエータは、固体アクチュエータである。このような固体アクチュエータでは、後置接続される変換ユニットの本発明による実施形態の説明した利点が、特に有効に発揮される。というのは特に、固体アクチュエータのストロークは、実践的には大きく限定されており、かつ出力伝達のためには、アクチュエータタイプに応じて高い剛性が有利だからである。固体アクチュエータは一般に、高い固有周波数を有し、ひいては有利な高い動特性を有する。
【0037】
特に好ましい一変形形態によれば、固体アクチュエータは、圧電アクチュエータである。圧電アクチュエータは、特に好都合な1次アクチュエータであることが過去に判明している。圧電アクチュエータによれば、特に正確な運動が達成可能である。その第1の欠点、すなわちその機械的なストロークが小さいことは、説明したように後続の変換ユニットによって補償可能である。対応して力が小さくなってしまう場合であっても、変換段により、多くの応用に対して力は十分である。
【0038】
特に好ましくは、アクチュエータ装置の圧電アクチュエータは、圧電積層アクチュエータとして構成される。圧電積層アクチュエータは、積層体として配置されている複数の個別の圧電素子から成る、従来技術から基本的に公知である直列接続体である。このような積層アクチュエータは、圧電アクチュエータだけで、個々の圧電素子によって可能になり得る運動振幅よりも大きな運動振幅を達成するために特に有利である。
【0039】
しかしながら、本発明は、固体アクチュエータとしての圧電アクチュエータには限定されない。したがって圧電アクチュエータの公知の利点および欠点の多くは、別のタイプの固体アクチュエータにも当てはまる。これらの固体アクチュエータについても、後続の変換ユニットにより、比較的小さい出力ストロークを増幅することができる。好ましい一変形実施形態によれば、上で挙げた固体アクチュエータは、例えば、磁歪性アクチュエータまたは電歪性アクチュエータである。択一的には、固体アクチュエータは、形状記憶アクチュエータであってもよい。
【0040】
アクチュエータ装置の別の有利な一実施形態によれば、このアクチュエータ装置は、機械的に並列接続された少なくとも2つの部分システムを有していてよく、それぞれの部分システムは、アクチュエータと、これに機械的に直列接続されている本発明のストローク伝達器とを有する。したがってそれぞれの部分システムは、アクチュエータと、アクチュエータに機械的に直列接続されている液圧式変換ユニットと、液圧式変換ユニットに機械的に直列接続されているロープシステムと、を有する。特に、個々のロープシステムは、共通の上位の被駆動ユニットに機械的に連結可能であり、これにより、2つの液圧式変換ユニットおよび2つのロープシステムを用いて、2つのアクチュエータを同時に駆動制御することにより、上位の被駆動体の運動が一緒に引き起こされる。
【0041】
アクチュエータ、液圧式変換ユニットおよびロープシステムをこのように二重化もしくは多重化することにより、かつこれらを機械的に並列接続することにより、特に、対応する大きなエネルギが、被駆動体の運動に供給されるようにすることができる。特に有利であるのは、2つの部分システムを対称に、同一に構成することであり、これにより、供給されるエネルギをほぼ2倍にすることができる。特に、2つの部分システムを鏡映対称に配置する場合に有利には、被駆動体が直線的なスムーズに運動する際に、エネルギをほぼ2倍にすることができる。というのは、引っ掛かりが有利に回避されるためである。一般に特に有利には2つの部分システムは、共通のケーシングに配置されてよい。
【0042】
アクチュエータ装置の有利な一変形実施形態によれば、アクチュエータ装置は、ロボット用および/またはロボットシステム用のアクチュエータ装置であってよい。したがってアクチュエータ装置は有利には、ロボットおよび/またはロボットシステムに使用可能である。特に、アクチュエータ装置は、ロボット工学におけるエンドエフェクタの運動もしくは位置決めに使用可能である。このような応用については、特に、数mm~数10cmの比較的大きな機械的ストローク範囲が必要である。
【0043】
アクチュエータ装置の有利な一変形実施形態によれば、アクチュエータ装置は、電子コンポーネントを検査するための昇降システム用のアクチュエータ装置であってよい。このような昇降システムは、この専門分野において昇降テーブルとも称される。このような昇降テーブルにアクチュエータ装置を使用するためにも、少なくとも数mm~数センチメートルの比較的大きな機械的ストロークが有利である。この応用の際には、例えば、機能がテストされるべき電子コンポーネント(例えば発光ダイオード)は、支持台に持ち上げられ、この電子コンポーネントに測定電圧が印加される。
【0044】
アクチュエータ装置の択一的かつ有利な一変形実施形態および使用によれば、アクチュエータ装置は、液体の注入を調量するアクチュエータ装置として構成されていてよい。例えば、アクチュエータ装置は、患者に薬を注射するために構成されていてよい。択一的には、アクチュエータ装置は、化学反応容器に液体の化学薬品を注入するために構成されていてよい。いずれの場合も、注入すべき液体のこのような調量についても、少なくとも数mmのストロークが有利である。このことは、特に、注入すべき液体体積が、数ミリリットルの範囲にある場合に当てはまる。
【0045】
以下では、付録の図面を参照し、いくつかの有利な実施形態に基づいて本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の第1実施例によるアクチュエータ装置の概略基本図である。
【
図5】異なる設定位置にある、
図4のロープシステムを示す図である。
【
図6】本発明の第2実施例によるアクチュエータ装置の概略基本図である。
【
図7】
図6の2つの液圧式変換ユニットの概略図である。
【
図8】
図6の2つのロープシステムの概略図である。
【
図9】
図6のロープシステムおよび液圧式変換ユニットの概略全体図である。
【
図10】本発明のシステムにおける電圧およびストロークの時間経過を時間の関数として示す線図である。
【
図11】電圧、電流、出力およびエネルギの時間経過を時間の関数として示す線図である。
【0047】
図面において同じ要素、または機能的に同じ要素には、同じ参照符号が付されている。
【0048】
図1には、本発明の第1実施例によるアクチュエータ装置1の概略基本図が示されている。ボックス間の接続線はそれぞれ、個々の要素の機械的な連結を表す。アクチュエータ装置1には、アクチュエータAと、アクチュエータに機械的に直列接続されている液圧式変換ユニットHと、液圧式変換ユニットHに機械的に直列接続されているロープシステムMと、が含まれている。液圧式変換ユニットHとロープシステムMとは一緒にストローク伝達器2を構成している。ロープシステムMは、第2変換段として液圧式変換ユニットHに後置接続されている機械的な変換ユニットとして作用する。ロープシステムMにより、与えられた応用に対し、外部の要素の運動を引き起こすことができる被駆動体Tを動かすことができる。応用に応じて、例えば数mmのストロークが必要になり得る。アクチュエータ装置1は、相前後して接続された2つの変換ユニットによって、すなわち液圧式変換ユニットHと、機械的な変換ユニットとしてのロープシステムMとによってこのストロークを達成するように設計されている。
【0049】
アクチュエータ装置1内の1次ストロークは、例えば、圧電アクチュエータであってよいアクチュエータAによって形成される。このアクチュエータAのストロークはSAで表されている。これは同時に、後続の液圧式変換ユニットHの駆動側Haに作用するストロークでもある。この液圧式変換ユニットの変換比は、この実施例において、液圧式変換ユニットHの被駆動側Hbにおけるストロークが、1次ストロークに比べて増幅されるように選択されている。被駆動側におけるストロークはSHで表されている。これは同時に、後続のロープシステムMの駆動部側Maに作用するストロークでもある。ストロークの増幅は、絶えず増大する矢印によって示されているが、この増幅は、縮尺通りではない。後続のロープシステムMの変換比によっても、ストロークの別の増幅が行われる。したがってロープシステムMの被駆動側MbにおけるストロークSMは、別の係数だけ増大される。この出力ストロークSMは同時に、アクチュエータ装置1の被駆動体Tにおいて達成されるストロークである。
【0050】
後続の図では、相前後して接続された2つの変換ユニットの作用の仕方を詳しく説明する。
図2には、例えば、
図1の実施例において使用され得る液圧式変換ユニットHの概略図が示されている。この液圧式変換ユニットHは、アクチュエータAに直列接続されている。駆動側HaのストロークSAは、2つのピストン13aおよび13bが液圧的に連結されて協働することにより、被駆動側HbにおけるストロークSHに変換される。変換比は、対応する2つのピストン本体の液圧面の比によって決定される。第1作業チャンバ15aは、ピストン運動によって変化する、駆動チャンバ11aの部分領域を構成し、第2作業チャンバ15bは、そこでのピストン運動によって変化する、被駆動チャンバ11bの部分領域を構成する。2つの作業チャンバ15aおよび15bは、作動流体管路16に流体的に連結されている。2つのチャンバ11aおよび11bの反対側の容積は、この実施例では封入されて実施されている。言い換えると、2つのチャンバ11aもしくは11bのそれぞれは、ピストンによって作業チャンバ15aもしくは15bと、後側チャンバ17aもしくは17bとに分離されている。2つの後側チャンバはそれぞれ、外部環境に対して流体的に封入されている。これらはそれぞれ、少なくとも部分的に、可変の軸線方向長さを有するベローズ要素19aもしくは19bによって画定されている。図示した実施例ではそれぞれ、該当する後側チャンバの側壁の一部が、このようなベローズによって形成されている。このベローズによって可能になるのは、後側チャンバが封入されていてよく、かつそれにもかかわらずそれぞれのピストンが運動する際に容積の補償が行われ得るようにすることである。
図2の実施例では、駆動チャンバ11aも被駆動チャンバ11bも、このような柔軟性のある封入された後側チャンバによって実現されている。2つの後側チャンバは、管路37を介して、作動流体7用の貯蔵チャンバ41に流体的に連結されている。この貯蔵チャンバ41は、側方がベローズ要素43によって画定されている。貯蔵チャンバには、カバープレート45を介し、あらかじめ設定されたストロークSRによって圧力が印加可能である。被駆動体21b(この実施例では被駆動チャンバのピストンピンである)を介し、変換比に対応して増幅されたストロークSHが、後続のロープシステムに伝達可能である。このような組み合わせ型のピストン・ベローズシステムのより正確な動作の仕方および別の有利な実施形態は、"Hydraulische Uebersetzungseinheit fuer eine Aktoreinrichtung"(アクチュエータ装置用の液圧式変換ユニット)という名称の、並行して提出された上で挙げた国際出願に詳しく説明されている。
【0051】
図3には、例えば、
図1のアクチュエータ装置に使用され得るロープシステムMの概略図が示されている。このロープシステムの駆動側には、駆動体103が設けられている。この駆動体103は、液圧ユニットによってすでに増幅されたストロークSHによって運動可能である。このストロークSHは、後置接続されたロープシステムMにより、ロープシステムの被駆動側においてさらに増幅されたSMに変換される。このためにロープシステムMは、運動を伝達するロープ101と、複数のガイドプーリ107とを有する滑車システムとして構成されている。
図3のロープシステムでは、例示的に4つのガイドプーリが示されている。しかしながらこの個数は、実際のシステムでは、より大きな増幅を得るためにさらに格段に多くてよい。運動を伝達するロープの端部は、駆動体103に接続されている。ロープの反対側の端部は、被駆動体109に接続されている。この実施例では、被駆動体109はここでも上位の被駆動体Tに固定に接続されている。この上位の被駆動体Tはこの実施例では、並進運動体として(特にプランジャーとして)実現されている。並進運動体Tは、この実施例では、並進運動体Tが実質的に矢印SMの方向にのみ1次元的に運動できるように、詳しく示されていないアンチフリクションブッシュに支持されていてよい。
【0052】
4つのガイドプーリにより、被駆動体109の領域では、4倍だけ増幅されたストロークが形成される。すなわちSM=4×SHである。しかしながらこの倍数は単に基本的に、複滑車においてガイドプーリの個数を選択することにより、特定の所望の変換比が、しかもこの実施例では1:4の比が得られることを説明しようとするものである。この実施例においてガイドプーリ107は、グループで2つのブロックにまとめられており、これらのブロックは、時として滑車のシャー(Scheren)とも称される。第1ブロックは、駆動体103に接続されている2つのプーリから成る。第2ブロックは、固定体105に接続されている2つのプーリから成る。したがって駆動体103および固定体105は、滑車システムのブロック用の実質的な2つの支持体を構成する。
【0053】
図4には、ロープシステムMについて択一的な一実施例の概略図が示されている。この択一的なロープシステムの作用の仕方は基本的に、
図3の実施例の場合と同様である。しかしながら
図3とは異なり、この実施例では、付加的な側方のガイドプーリ108が設けられている。すでに説明したガイドプーリ107とは異なり、ロープは、このプーリを180°の取り巻き角度で取り巻くのではなく、この実施例では90°~180°の間にあるより小さな取り巻き角度βで取り巻いている。付加的な側方のガイドプーリ108により、一方では、直線的にのみ運動する上位の駆動体(または並進運動体)Tへの運動の伝達が容易になる。他方では、これにより、達成可能なストローク増幅をさらに高めることができる。
【0054】
変換比に与える影響は、
図4のロープシステムを別の設定位置で示す
図5から明らかである。この実施例では、
図4の位置に比べて、駆動体103が、特定のストロークSHだけ上方にずらされている。これにより、被駆動側のガイドプーリ108の前の領域において、Δs=4×SHとなるロープ103のストロークが得られる。側方のガイドプーリ108の後ろの領域において、この変化は、次のようになる。
【0055】
側方のガイドプーリ108と並進運動体Tとの間のロープの長さ区間は、
図4の位置では長さl_0を有している。側方のガイドプーリの前のロープのストロークΔs=4×SHにより、この区間の長さは、値l_1=l_0-Δsに短縮される。ロープ101と並進運動体Tとの間に挟まれる角度は、α_0からα_1に変化する。側方のガイドプーリと並進運動体との間の垂直方向の間隔(すなわち形成される三角形の高さ)は、h_0からh_1に変化するのに対し、並進運動体Tが1次元にのみ移動可能に支持されていることにより、水平方向の間隔dは一定のままである。したがって高さの差分Δh=h_1-h_0は、並進運動体の1次元的な経路長に対応し、ひいてはストロークSMに対応する。ピタゴラスの定理により、この高さの差分は、以下の数式、すなわち
SM=Δh=h_0-sqrt((l_0-Δs)^2-d^2)
によって計算可能である。
【0056】
図6には、本発明の第2実施例によるアクチュエータ装置1の概略基本図が示されている。前の実施例とは異なり、この実施例ではアクチュエータ装置1は、機械的に並列接続された2つの部分システム61および62から構成されている。2つの部分システムのそれぞれは、アクチュエータA1もしくはA2と、ストローク伝達器とを有する。これらの2つのストローク伝達器のそれぞれは、それぞれのアクチュエータに機械的に直列接続された液圧式変換ユニットH1もしくはH2と、それぞれの液圧式変換ユニットに機械的に直列接続されたロープシステムM1もしくはM2を有する。2つのロープシステムM1およびM2は、共通の上位の被駆動体Tに機械的に連結されている。こうすることによって、2つのアクチュエータA1およびA2を同時に駆動制御することにより、上位の被駆動体Tの運動が一緒に引き起こされることになる。このような部分システムを1つだけ有する
図1の実施形態に比べて、被駆動体を運動させるための機械エネルギは、約2倍になる。
【0057】
後続の図では、これらの2つの部分システムの液圧ユニットH1およびH2、ならびにロープシステムM1およびM2の特に有利な、対称的な構成がどのようになり得るかついての実施例がされている。
図7には、特に
図6の実施例において使用可能な2つの液圧式変換ユニットH1およびH2の概略図が示されている。したがってこの実施例では2つのアクチュエータA1もしくはA2はそれぞれ、対応する液圧式変換ユニットH1もしくはH2に機械的に直列接続されている。この実施例では、個々の液圧式変換ユニットは、それぞれ
図2の実施例と同様に構成されており、蝶形の構成において対称に並べられて配置されている。図示した実施例において、個々の液圧式変換ユニットH1およびH2は、流体的に互いに連結されていない。しかしながらこれらの液圧式変換ユニットは択一的に、例えば、2つの貯蔵チャンバ41の連結を介して、または共通の1つの貯蔵チャンバを有する構成によって流体的に連結することも基本的に可能である。2つの液圧式変換ユニットは、この実施例では、機械的に並列接続されている。2つの被駆動体21bは、2つのアクチュエータを同時かつ同じ方向に駆動制御することにより、同時に同じ方向のストロークSHが、2つの被駆動体21bにおいて形成されるように構成されている。機械的に並列接続された2つの液圧式変換ユニットH1およびH2は、2つの入力部および2つの出力部を備えた上位の液圧式変換ユニットHとみなすことも可能である。
【0058】
図8には、特に
図6の実施例において使用可能な2つのロープシステムM1およびM2の概略図が示されている。これらの2つのロープシステムM1およびM2は、特に、それらの2つの駆動体103を介して、
図7の2つの液圧式ユニットの被駆動体21bに連結可能である。この実施例では、2つのロープシステムM1およびM2はそれぞれ、それ自体、
図4および
図5の実施例と同様に構成されている。これらとは異なり、この実施例では、これらのような2つのロープシステムは、その被駆動側のロープ端部により、共通の上位の並進運動体Tに連結されている。2つのロープシステムの配置は、鏡映対称である。これらのロープシステムは、蝶形に背中合わせに配置されており、これにより、2つのロープ101は、対向する2つの側方のガイドプーリ108を介して、並進運動体Tに対称に合流している。この蝶形の構成によって容易に可能になるのは、共通に運動させられる並進運動体Tへの、均一かつ引っ掛かりのない運動の伝達である。この実施例でも、機械的に並列接続される2つのロープシステムM1およびM2を、2つの入力部および連結された1つの出力部を有する上位のロープシステムMとみなすことが可能である。このような上位のロープシステムには、2つの部分システムM1およびM2のプーリによって共通に利用される、特に、共通の通しのロープも使用可能である。駆動体103も、共通に利用される貫通式のプレートとして実現可能である。
【0059】
図9には、
図6の実施例の2つの液圧式変換ユニットH1およびH2ならびに2つのロープシステムM1およびM2の概略全体図が示されている。特に、この実施例では、
図7の2つの液圧式変換ユニットH1およびH2は、
図8の2つのロープシステムM1およびM2を有する全体として対称な装置に組み合わされている。このような対称な装置によれば、エネルギを2倍にすることの利点が、特に容易にかつ効率的に実現可能である。特に、
図9に示されたすべての要素は、この実施例では図示されていない共通のケーシングに配置可能である。これにより、簡単に取り扱うことができるモジュールを得ることができ、このモジュールにより、2つのアクチュエータAを同時に電気的に駆動制御しながら、十分に大きい機械エネルギで、上位の被駆動体Tの十分に大きな全体ストロークSMを作用させることができる。
【0060】
図10および
図11には、
図6~
図9のアクチュエータ装置を実現するための重要な物理特性量が示されており、これらはSimulinkシミュレータによって計算されている。さまざまな物理量が、ミリ秒単位で時間201の関数として示されている。
図10の最も上の曲線では、2つのアクチュエータA1、A2のそれぞれに印加される電圧202が、ボルト単位で示されている。これらのアクチュエータは、このような電圧を印加することによって運動させることができる圧力アクチュエータである。この実施例では、50msの時間にわたって作用する、ほぼ三角形状の160Vの電圧パルスが印加される。その下にある3つのグラフは、アクチュエータ装置のさまざまな箇所において、この電圧パルスから形成されるストロークを示している。参照符号203により、ストロークがマイクロメートル単位で示されている。ストロークSAは、2つの圧電アクチュエータA1およびA2のそれぞれによって形成される1次ストロークであり、この1次ストロークは、それぞれの液圧式変換ユニットH1もしくはH2の駆動側にストロークとして作用する。この1次ストロークは比較的小さい。しかしながらそれぞれの液圧ユニットの変換比により、それらの被駆動側には、曲線の最大値においてほぼ400μmに達する大きく増幅されたストロークSHが得られる。3つ目のグラフでは、参照符号204により、ストロークがミリメートル単位で示されている。このグラフでは、それぞれ後続のロープシステムの駆動側に作用する説明したストロークSHと、それぞれの側方のガイドプーリ108の領域において得られるストロークΔsとが比較されている。このストロークΔsは、最大値においてすでに約3mmの領域にある。第4グラフにおいても、参照符号204により、ストロークがミリメートル単位で示されている。このグラフでは、ロープのストロークΔsと、ロープシステム全体の被駆動側に、すなわち被駆動体Tの領域において得られるストロークSMとが比較されている。それぞれの側方のガイドプーリ108の機能により、このグラフでは、さらに付加的なストローク増幅が得られ、これにより、被駆動体Tでは、約7mmのストロークSMが達成される。2つの部分システムを使用することにより、比較的大きな機械エネルギ(言い換えると、与えられたストロークにおいて比較的大きな力)も達成可能である。
【0061】
図11の個々のグラフでは、2つのアクチュエータA1およびA2の駆動制御についてのシミュレーションから得られるさまざまな電気パラメータが示されている。ここでも、最も上の曲線は、ミリ秒単位の時間201の関数としてボルト単位で、それぞれの圧電アクチュエータに印加される電圧202を示している。
図10とは異なり、このグラフでは、電圧パルスの開始後の最初の約30msだけが示されている。第2の曲線は、2つの圧電アクチュエータを駆動制御する際に流れる電流205をアンペア単位で示している。このグラフでは、電流の最大値は、ちょうど7Aのところにある。第3の曲線は、ワット単位で電力206を示している。このグラフでは、ピーク電力は、ちょうど350Wのところにある。第4の曲線は、全体として取り込まれる電気エネルギ207をmJ単位で示している。ピーク電力も、全体として取り込まれるエネルギも、1200Wのピーク電力が測定される、上で説明した比較可能な電磁アクチュエータの場合よりも格段に小さい。
【0062】
したがって、説明したアクチュエータ装置により、被駆動体Tの運動の際に、ストローク、動特性および力についてのあらかじめ定められたパラメータが実現可能であり、同時に従来技術に比べてピーク電力が格段に低減される。これにより、それぞれアクチュエータに至る電気線路に、従来技術の場合よりも格段に小さい線路断面を使用できることにもなる。
【符号の説明】
【0063】
1 アクチュエータ装置
2 ストローク伝達器
7 作動流体
11a 第1チャンバ(駆動チャンバ)
11b 第2チャンバ(被駆動チャンバ)
13a 第1ピストン(駆動ピストン)
13b 第2ピストン(被駆動ピストン)
15a 第1作業チャンバ
15b 第2作業チャンバ
16 作動流体管路
17a 第1後側チャンバ
17b 第2後側チャンバ
19a 第1ベローズ要素
19b 第2ベローズ要素
21b 被駆動体
37 管路
41 貯蔵チャンバ
43 ベローズ要素
45 カバープレート
61 第1部分システム
62 第2部分システム
101 ロープ
103 ロープシステムの駆動体
105 ロープシステムの固定体
107 ガイドプーリ
108 側方のガイドプーリ
109 ロープシステムの被駆動体
201 ms単位の時間
202 V単位の電圧
203 μm単位のストローク
204 mm単位のストローク
205 A単位の電流
206 W単位の電力
207 mJ単位のエネルギ
A アクチュエータ
A1 第1部分システムのアクチュエータ
A2 第2部分システムのアクチュエータ
α_0 取り巻き角度
α_1 取り巻き角度
β ロープの取り巻き角度
d 側方の間隔
Δs 側方のガイドプーリの前のストローク
Δh 高さの差分
h_0 高さ
h_1 高さ
H 液圧式変換ユニット
Ha 液圧式変換ユニットの駆動側
Hb 液圧式変換ユニットの被駆動側
H1 第1部分システムの液圧ユニット
H2 第2部分システムの液圧ユニット
l_0 長さ区間
l_1 長さ区間
M ロープシステム
Ma ロープシステムの駆動側
Mb ロープシステムの被駆動側
M1 第1部分システムのロープシステム
M2 第2部分システムのロープシステム
SA 液圧ユニットの駆動側におけるストローク
SH 液圧ユニットの被駆動側におけるストローク
SM ロープシステムの被駆動側におけるストローク
SR 貯蔵チャンバにおけるストローク
T 被駆動体
【国際調査報告】