(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】2以上の単一弾性フィラメントおよび複数の非弾性要素を含む複合糸
(51)【国際特許分類】
D02G 3/04 20060101AFI20220609BHJP
D02G 3/32 20060101ALI20220609BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20220609BHJP
D03D 15/292 20210101ALI20220609BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20220609BHJP
D03D 15/56 20210101ALI20220609BHJP
D04B 1/16 20060101ALI20220609BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20220609BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20220609BHJP
A41D 31/18 20190101ALI20220609BHJP
【FI】
D02G3/04
D02G3/32
D03D15/47
D03D15/292
D03D15/283
D03D15/56
D04B1/16
D04B21/16
A41D31/00 503L
A41D31/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561729
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2020060936
(87)【国際公開番号】W WO2020212617
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】エルドアン バルシュ オッデン
(72)【発明者】
【氏名】ファトマ コルクマズ
(72)【発明者】
【氏名】トゥンジャイ キリジェカン
【テーマコード(参考)】
4L002
4L036
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA06
4L002AA07
4L002AB02
4L002AB04
4L002AB05
4L002AC01
4L002AC07
4L002BA00
4L002CA00
4L002FA01
4L036MA04
4L036MA05
4L036MA15
4L036MA37
4L036MA39
4L036PA42
4L036PA46
4L036UA07
4L048AA20
4L048AA21
4L048AA22
4L048AA24
4L048AA27
4L048AA34
4L048AA51
4L048AB07
4L048AB08
4L048AB11
4L048AB18
4L048AB21
4L048AC12
4L048CA04
4L048DA01
(57)【要約】
【課題】、高弾性衣服において、弾性糸の切断、および特に、衣服の腰側および股の両方の縫い端領域で、縫い目から生地の内部へ弾性糸の滑りの影響を受けない(または影響が少ない)糸を提供すること。
【解決手段】少なくとも2つの単一弾性フィラメント(101)および複数の非弾性要素(103)を備える複合糸(100)であって、前記非弾性要素(103)は、複数の非弾性フィラメントおよび/または非弾性フィラメントの束を備えており、前記単一弾性フィラメント(101)および前記非弾性フィラメント(103)は、撚合せることによって互いに接続されていることを特徴とする複合糸(100)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の単一弾性フィラメント(101)および複数の非弾性要素(103)を含む複合糸(100)であって、
前記非弾性要素(103)は、複数の非弾性フィラメントおよび/または非弾性フィラメントの束を備えており、
前記単一弾性フィラメント(101)および前記非弾性フィラメント(103)は、撚合せることによって互いに接続されていることを特徴とする複合糸(100)。
【請求項2】
本質的に、前記単一弾性フィラメント(101)および前記非弾性要素(103)からなり、撚合せによって結合されていることを特徴とする請求項1に記載の複合糸(100)。
【請求項3】
それぞれの前記非弾性要素は、少なくとも1つのポリエステルフィラメントおよび/またはポリアミドフィラメントを含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の複合糸(100)。
【請求項4】
1メートルあたり50を超える絡み合い点、より好ましくは1メートルあたり80を超える絡み合い点、最も好ましくは1メートルあたり100を超える絡み合い点、好ましくは1メートルあたり150までの絡み合い点を含んでいることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合糸(100)。
【請求項5】
前記単一弾性フィラメント(101)は、好ましくは1.1~6.9、より好ましくは2~6、さらに好ましくは3~5でドラフトされていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の複合糸(100)。
【請求項6】
前記非弾性要素(103)のドラフトは1.6であり、より好ましくは5未満であり、さらにより好ましくは4未満であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の複合糸(100)。
【請求項7】
前記非弾性要素(103)のドラフトは、前記単一弾性フィラメント(101)のドラフトよりも小さいことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の複合糸(100)。
【請求項8】
前記非弾性要素(103)には、質感が付与されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の複合糸(100)。
【請求項9】
前記非弾性要素(103)は、好ましくは、PET/PTT、PBT/PTT、PET/PTMTから選択される2成分フィラメントを含んでいることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の複合糸(100)。
【請求項10】
少なくとも3つの単一弾性フィラメント(101)、好ましくは少なくとも5つの単一弾性フィラメント(101)、より好ましくは少なくとも10の単一弾性フィラメント(101)、さらに好ましくは2~50の単一弾性フィラメント(101)を含んでいることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の複合糸(100)。
【請求項11】
前記単一弾性フィラメント(101)は、2~100デニール、より好ましくは10~100デニールの番手を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の複合糸(100)。
【請求項12】
前記非弾性要素(103)と撚合されている少なくとも弾性フィラメントの束をさらに含んでいるか、または前記弾性フィラメントが単一弾性フィラメントからなってことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の複合糸(100)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の複合糸を含む生地(200)、好ましくは織布。
【請求項14】
請求項13に記載の生地(200)を含む物品(300)、好ましくは衣服。
【請求項15】
a.複数の非弾性フィラメントまたは非弾性フィラメントの束を含む複数の非弾性要素(103)を準備するステップと、
b.少なくとも2つの分離した単一弾性フィラメント(101)を準備するステップと、
c.前記単一弾性フィラメント(101)および前記非弾性要素(103)を好ましくはエアジェット撚合せによって撚合せるステップと、
d.前記撚合せるステップによって得られた前記複合糸(100)を収集するステップとを含む複合糸(100)の製造方法。
【請求項16】
前記ステップcとdとの間において、前記複合糸(100)に更なる糸、またはロービング、またはスライバーを追加しないことを特徴とする請求項15に記載の複合糸(100)の製造方法。
【請求項17】
前記非弾性要素(103)に質感を付与するステップを含んでいることを特徴とする請求項15または16に記載の複合糸(100)の製造方法。
【請求項18】
前記ステップcにおいて、好ましくは1.2%~7.0%の割合で前記非弾性要素(103)を過剰に供給することを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載の複合糸(100)の製造方法。
【請求項19】
請求項15から18のいずれか1項に記載の製造方法によって得られる複合糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性糸、特に複合弾性糸に関する。本発明の糸は、特に、ジェギングおよび同様の衣服などの高弾性衣服用の生地の製造に用いられる。
【背景技術】
【0002】
エラスタンまたはスパンデックスのフィラメントおよび糸は、当該技術分野で周知であり、弾性糸および生地を製造するために繊維分野で広く使用されてきている。エラスタンのフィラメントは、いくつかの押し出しセルを有する紡糸口金を通してポリマーを押し出すことによって製造される。フィラメントが押出機を出る前に、ある量の固体の単一フィラメントまたはストランドが一緒に結合して、所望の番手、すなわち所望の厚さを有するフィラメントの束を生成する。このように、エラスタン(スパンデックス)のフィラメントの各束は、これらの表面の生来の粘着性によって、互いに接着されている多くのより小さい繊維で構成されている。
【0003】
エラスタンフィラメントの束は、糸を作るために使用される。エラスタンフィラメントの単一の束を、複数の実質的に非弾性の(または、実質的に非伸縮性の)ポリエステルフィラメントと組み合わせることによって、弾性糸を製造することが知られている。
【0004】
これらの種類の弾性糸を高弾性布の製造に使用する場合に、いくつかの問題が認められる。この種類の生地の主な問題は、「エラスタンの破損」と「エラスタンの滑り」として、すなわち、弾性糸の切断、および特に、衣服の腰側および股の両方の縫い端領域で、縫い目から生地の内部への弾性糸の滑りとして知られている。
【0005】
これらの問題は、例えばオーバーロックシームまたはフォールドシームで縫製するとき、ドライスクレイピングプロセスを行うとき、工業用洗濯機で洗濯するとき、回転式乾燥機で乾燥するとき、または家庭で洗濯するときなどに発生するおそれがある。
【0006】
特許文献1は、複合糸が、少なくとも1つの弾性制御フィラメント、および少なくとも1つの非弾性制御フィラメントを備える、フィラメント状コアを有することを開示している。好ましいことに、紡糸されたステープル繊維から形成された繊維シースが、そのほぼ全長に亘って、フィラメント状コアを取り囲んでいる。少なくとも1つの弾性制御フィラメントは、最も好ましいことに、スパンデックスおよび/またはラストールフィラメントを含んでいる。
【0007】
この種類の糸は綿のシースを提供するが、これは本発明にとって望ましいことではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の問題を解決し、高弾性衣服に使用したときに、弾性糸の破損および「滑り」の影響を受けることがない(または影響が少ない)糸を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの目的は、本発明の1つまたは複数の請求項によって解決される。
【0011】
本発明の一態様は、独立請求項に記載の複合糸、生地、物品、およびプロセスに関する。一方、好ましい態様は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明の一態様によれば、複合糸は、少なくとも2つの単一弾性フィラメントおよび複数の非弾性要素を含んでいる。非弾性要素は、異なる非弾性フィラメント、または非弾性フィラメントの異なる束とすることができる。単一弾性フィラメントと非弾性フィラメントとは、撚合せによって接続されている。
【0013】
このように、撚合せは、単一弾性フィラメントと、撚合せ前は、実質的に分離した要素であった非弾性要素とを結合するために使用される。
【0014】
上述のように、弾性フィラメントは「単一」である。つまり、連続的に接続されたフィラメントの同じ弾性束の一部ではない。実際、弾性繊維要素の場合、ある量のフィラメントを一緒に束ねて、所望の厚さを生成することができることが知られている。スパンデックス糸は、それらの表面の自然な粘着性によって、互いに接着する複数のより小さな個々のフィラメントから構成することができるので、例えばスパンデックス糸は、フィラメントの束であることが知られている。これに反して、「単一弾性フィラメント」とは、モノフィラメントの「糸」を意味する。
【0015】
単一弾性フィラメントは、DIN 53820 part 2によると50%~1000%(破断点伸びとして)伸ばすことができるため、「弾性」を有する。
【0016】
非弾性要素は、単一弾性フィラメントよりも、好ましくは75%未満、より好ましくは50%未満の破断点伸びを有するので、「非弾性」である。通常、非弾性要素は、DIN ISO 2062によると、5%~100%の破断点伸びを有している。
【0017】
特許請求の範囲に記載された解決策では、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の単一弾性フィラメントが存在する。これらは、単一の要素のように振る舞うこともなく、移動することもないが(そのため、破断する恐れがある)、非弾性要素と撚合されても、互いに一定の独立性を保持している。この事実は、応力に対するより良い耐性を備えており、特に、ダメージを弾性フィラメントの一部のみに抑えることができる。好ましい態様によれば、上述の振る舞いの独立性を維持するのを助けるために、単一弾性フィラメントは、撚合せる前に互いに結合しないようにすべきである。言い換えれば、好ましい態様によれば、弾性フィラメントは、撚合せる前に分離した状態に保たれるべきである。これらは、互いに接近して撚合せ装置に供給することができ、これにより、互いに接触する可能性があるが、互いにねじれることはない。
【0018】
好ましくは、複合糸は、本質的に、上述した単一弾性フィラメントと非弾性要素とからなっている。特に、好ましい態様によれば、上述の複合糸は、コアシース糸のコアとして使用されることはない。言い換えれば、複合糸は、例えばステープル繊維のシースによって覆われていない。
【0019】
本発明の一態様によれば、複合糸は、弾性フィラメントと非弾性フィラメントからなっている。
【0020】
糸を構成する弾性フィラメントの全てを、単一弾性フィラメントとすることができる。しかし、複合糸は、単一弾性フィラメントに加えて、弾性接続されたフィラメントの束の一部である弾性フィラメントを含むことができる。言い換えれば、本発明の実施形態は、単一弾性フィラメントを備えることができ、かつ、接続された弾性フィラメントの束も備えることができる。
【0021】
好ましい実施形態では、3つ以上の弾性フィラメントが存在する。本発明の実施形態では、実際には、少なくとも3つの弾性フィラメント、または少なくとも5つの弾性フィラメント、または少なくとも10の弾性フィラメントを備えることができる。
【0022】
例示的かつ好ましい実施形態では、2~22の単一弾性フィラメントを備えている。
【0023】
一般的な概念として、非弾性要素の数および番手は制限されていない。しかし、非弾性要素の総番手は、弾性フィラメントの総番手以上であることが好ましい。言い換えれば、複合糸中の非弾性要素の重量比率は、複合糸中の弾性フィラメントの重量比率に等しいことが好ましく、それよりも大きいとより好ましい。生成した糸では、弾性フィラメントを、生成した複合糸の5重量%~50重量%とすることができる。
【0024】
また、本発明の一態様によれば、複合糸における非弾性要素の数は、生成した糸における弾性フィラメントの数よりも多くなっている。
【0025】
さらに本発明の一態様によれば、それぞれの非弾性要素は、少なくとも1つのポリエステルフィラメント、および/またはポリアミドフィラメント、および/またはポリエステルコポリマー、および/またはポリアミドコポリマーを含んでいる。
【0026】
本発明は、1つ以上の上述の態様による複合糸を含む生地、好ましくは織布、およびこのような生地を含む物品、好ましくは衣服にも関するものである。
【0027】
さらに、本発明は、各非弾性要素を非弾性フィラメントまたは非弾性フィラメントの束から選択した複数の非弾性要素を準備するステップと、少なくとも2つの分離した単一弾性フィラメントを準備するステップと、単一弾性フィラメントおよび非弾性要素を撚合せるステップと、撚合せるステップによって得られた複合糸を収集するステップとを含む複合糸の製造方法にも関する。撚合せは、エアジェット撚合せによって行われることが好ましい。
【0028】
結合した弾性フィラメントの複数の束と、複数の非弾性フィラメントとを使用し、これらを、絡み合い点または結び目に撚合せることによって、エラスタンの滑りがないか、滑りが非常に小さい生成した糸を得ることができる。この弾性糸は、さらに処理することなく、そのまま使用することもできる。
【0029】
例示的で非限定的な本発明の実施形態を、以下の図を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態による複合糸の一部の模式図である。
【
図2】
図1に示す複合糸を製造可能な装置の模式図である。
【
図3】
図2に示す装置で使用することができる撚合せ装置の模式図である。
【
図4】
図1に示す複合糸を連続して含む生地を用いて得られる衣服の模式図である。
【
図5】3つの単一弾性フィラメントの模式的断面図である。
【
図6】連続的に接続された弾性フィラメントの束の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
複合糸100は、少なくとも2つの単一弾性フィラメント101からなっている。
【0032】
3つの単一弾性フィラメント(モノフィラメント)を、
図5に模式的に示してある。上述したように、単一弾性フィラメントを提供することは、すべてのフィラメントが単一の要素のように振る舞う、
図6に模式的に示している連続的に接続されたフィラメントの束Bとは異なる。これとは反対に、たとえ撚合されたとしても、後で詳細に説明するように、単一弾性フィラメント(モノフィラメント)は、特に撚合せによって設けられる接続点Pからの距離において、互いにある程度の独立した動きを保持している。
【0033】
単一弾性フィラメントの数は、2以上であり、好ましくは3以上、より好ましくは7以上、さらにより好ましくは10以上50までである。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態では、2~50の単一弾性フィラメントを備えている。
【0035】
単一弾性フィラメントは、好ましくはエラストマーフィラメント、すなわち、室温で元の長さの少なくとも2倍まで繰り返し伸ばすことができるフィラメントであり、張力を取り除くと、すぐに、かつ強制的に、ほぼ元の長さに戻る。本発明の一態様によれば、単一弾性フィラメント101は、エラスタンフィラメントなどのポリウレタンフィラメントである。
【0036】
各単一弾性フィラメント101の番手は、2~100デニール、好ましくは10~100デニール、より好ましくは10~70デニールである。
【0037】
複合糸100は、複数の非弾性要素103を含んでいる。上述の実施形態では、非弾性要素103は、非弾性フィラメントの束の一部である。その結果、上述の実施形態では、非弾性要素は、非弾性フィラメントに対応している。異なる実施形態として、非弾性要素を、接続された(例えば、接着された)非弾性フィラメントの束とすることができる。各非弾性フィラメントの番手は、単一弾性フィラメント101の番手よりも小さい。好ましい非弾性フィラメントは、0.5~3デニールの番手を有している。
【0038】
一般に、複合糸100は、複数の非弾性要素103を含んでおり、非弾性要素103は、単一非弾性フィラメントまたは非弾性フィラメントの束とすることができる。
【0039】
非弾性要素103は、当該技術分野で知られている部分配向糸(POY)の単一フィラメント(モノフィラメント)であることが好ましい。非弾性要素103のフィラメントは、ポリエステルフィラメントおよびポリアミド(ナイロン)フィラメント、あるいはポリエステルまたはポリアミドコポリマーで作られたフィラメントから選択されることが好ましい。非弾性フィラメントは、質感が付与されたフィラメントであることが好ましい。
【0040】
非弾性要素103は、PBT/PTTまたはPET/PTTまたはPET/PTMT2成分フィラメントなどの2成分フィラメントを含むこともできる。
【0041】
単一弾性フィラメント101および非弾性要素103は、撚合せによって複数の点Pで互いに接続されて、生成した複合糸100を構成している。その結果、生成した複合糸100において、非弾性要素103に接続されていない(すなわち、2つの後続の接続点Pの間)、単一弾性フィラメント101の部分が存在し、その部分は、互いに実質的に独立して振る舞うことができる。上述のように、このような独立性を助けるために、図示のように、単一弾性フィラメント101は、独立したフィラメントとして、または少なくともねじれていない状態で、撚合せ装置に供給されることが好ましい。
【0042】
上述のように、非弾性要素103は、非弾性フィラメントを含んでいる(または非弾性フィラメントで構成されている)。上述のように、糸の1つの非弾性フィラメントの番手が、好ましくは、糸の1つの弾性フィラメントの番手よりも小さい番手であったとしても、非弾性フィラメントの数および/または総番手は、弾性フィラメントの数および/または総番手よりもそれぞれ大きいことが好ましい。
【0043】
言い換えれば、生成した複合糸の非弾性フィラメントの容積%は、生成した複合糸の弾性フィラメントの容積%よりも大きく(悪くても等しく)、および/または生成した複合糸の非弾性フィラメントの重量%は、生成した複合糸の弾性フィラメントの重量%よりも大きい(悪くても等しい)。撚合せは、エアジェット撚合せによって行うことが好ましい。
【0044】
複合糸100は、典型的には、生地200、好ましくは織布を提供するために使用される。本発明の一態様は、このような生地200を含む物品300、典型的には衣服に関する。可能な実施形態によれば、
図2に示すように、本発明による複合糸の製造プロセスにおいて、非弾性要素103は、1つ以上の供給源1、例えば、1つ以上のボビンによって提供される。図示の実施形態によれば、単一の供給源1は、分離した非弾性要素(すなわち、非弾性フィラメント)103の束を提供する。
【0045】
非弾性フィラメントの各供給源は、フィラメントの番手/デニールが異なる場合があり、最終製品では、40D/4F(4フィラメントで40デニール)+30D/3F(3フィラメントで30デニール)など、フィラメント全体の番手/デニールの異なる組み合わせとすることができる。
【0046】
非弾性要素103は、ガイド3、例えばチューブを通過し、次にドラフト手段2、例えば1つ以上のドラフトローラーによって、ドラフトすることができる。
【0047】
それぞれの弾性フィラメントは、撚合せる前に、異なるレベルのドラフト比で引き伸ばすことができる。
【0048】
非弾性要素103に対しては、例えば、加熱要素4、その後に冷却要素5、例えば、非弾性要素103が通過する加熱チャンバおよび冷却チャンバによって、熱処理を行うこともできる。最初の加熱要素4の温度は、180~210℃にすることができる。
【0049】
非弾性要素の破損がこのプロセス中に発生するかどうかを検証するために、センサ6を設けることができ、これにより、非弾性要素が供給源1からこれ以上引き出されないことを監視し、回避することができる。非弾性要素103の張力を検証するために、さらなるセンサ7を設けることができる。
【0050】
単一弾性フィラメント101は、1つ以上の関連する供給源11から引き出される。図示の実施形態のように、単一の供給源11(例えば、単一のボビン)が、公知の方法で、複数の単一弾性フィラメント101を供給することができる。その結果、これらの経路の少なくとも一部について、単一弾性フィラメント101および非弾性要素103は、異なる分離した経路に沿って移動する。
【0051】
次に、非弾性要素103および単一弾性フィラメント101は、複数の接続点Pで、撚合せ装置8、好ましくはエアジェット撚合せ装置によって、一緒に接続される。
【0052】
上述のように、撚合せ装置により、生成した糸のフィラメントの間に複数の接続点Pが設けられる。特に、公知のように、撚合せにより、生成した糸のフィラメント101、103の間に、複数の接続点P(結び目)が設けられる。例えば、糸の太さの変化を評価することによって、糸の1メートルあたりの絡み合いの数、すなわち結び目を測定する公知の方法および試験機が存在する。例として、テクステクノ、ハー、シュタイン(Textechno H. Stein)ドイツ国メンヒェングラートバッハ(Moenchengladbach、DE; https://www.textechno.com)によるITEMAT +の「インターレーステスト」では、撚合せ点の数を評価するために、糸を所定の伸びで2つのシリンダー間を通過させる。各撚合せ点で、弾性フィラメントと非弾性フィラメントの絡み合い、または結び目が設けられており、それらは、糸が引っ張られたり伸ばされたりしても残る。或いは滑らかな糸では、試験機が感知することができる、
【0053】
同様の機械で試験を行ったところ、6.0%伸ばされた場合には、本発明による糸は、好ましくは、1メートルあたり少なくとも50の接続点(すなわち結び目)、より好ましくは1メートルあたり少なくとも80の接続点/結び目、さらにより好ましくは、1メートルあたり少なくとも100の絡み合い/結び目が設けられている。1メートルあたりの適切な結び目の数は、最大120であり、例えば、80~120である。
【0054】
好ましい態様によれば、非弾性要素103は、好ましくは1.2%~7.0%の割合で、撚合せ装置8に過剰に供給される。
【0055】
撚合せる前に、複数の単一弾性フィラメント101は、ドラフト装置9、例えばドラフトローラーを共に通過することができる。好ましくは、(単一弾性フィラメント101および非弾性要素103の両方に適用される)ドラフト装置9のドラフトは、ドラフト装置2(ドラフト装置9の上流に配置されている)によって非弾性要素103に適用されるドラフトよりも大きい。特に、ドラフト装置9に適用されるドラフトは、ドラフト装置2によって適用されるドラフトよりも、1.5~1.8倍大きくすることができる。
【0056】
単一弾性フィラメント101のドラフトは、好ましくは1.1~6.9、より好ましくは2~6であり、さらに好ましくは3~5である。非弾性要素103に関して、ドラフトは、好ましくは6未満、より好ましくは5未満、さらに好ましくは4未満である。さらに、単一弾性フィラメント101は、好ましくは非弾性要素103よりもドラフトされている。
【0057】
さらに、単一弾性フィラメント101と接続する前に、非弾性要素103を、質感付与装置10によって質感を付与することができる。摩擦ディスク装置などの任意の適切な質感付与装置を使用することができる。
【0058】
撚合せた後、複合糸が形成される。そこでは、単一弾性フィラメント101および非弾性要素103が、撚合せることによって接続されている。
【0059】
さらなる仕上げプロセス、例えば、加熱チャンバ16による熱処理、および/または1つ以上のドラフト装置13によるさらなるドラフト、および/または仕上げ装置14による仕上げ剤、例えばオイルまたは同様の物質の塗布を行うことができる。
【0060】
複合糸100は、最終的に集糸要素15に集糸される。通常、集糸された複合糸100は、ボビンに巻かれている。
【0061】
一実施形態では、この製造プロセス中において、実質的に更なる糸、ロービング、スライバーまたは同様の繊維要素が、複合糸100に追加されることはない。そのため、衣服などの物品300用の生地、特に織布200を製造するための糸として、単一弾性フィラメント101(および可能ならば、弾性フィラメントの束)と非弾性要素103とを本質的に含む形態で使用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 供給源
2 ドラフト装置
3 ガイド
4 加熱要素
5 冷却要素
6、7 センサ
8 撚合せ装置
9 ドラフト装置
10 質感付与装置
11 供給源
13 ドラフト装置
14 仕上げ装置
15 集糸要素
16 加熱チャンバ
100 複合糸
101 単一弾性フィラメント
103 非弾性要素
200 生地(織布)
300 物品(衣服)
B 連続的に接続されたフィラメントの束
P 接続点
【国際調査報告】