特表 2022-529027 ２以上の結合した弾性フィラメント束および複数の非弾性要素を含む複合糸

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公表特許公報(A)

(11)【公表番号】

(43)【公表日】2022-06-16

(54)【発明の名称】２以上の結合した弾性フィラメント束および複数の非弾性要素を含む複合糸

(51)【国際特許分類】

   D02G 3/04 20060101AFI20220609BHJP

   D02G 3/32 20060101ALI20220609BHJP

   D03D 15/283 20210101ALI20220609BHJP

   D03D 15/292 20210101ALI20220609BHJP

   D03D 15/47 20210101ALI20220609BHJP

   D03D 15/37 20210101ALI20220609BHJP

   D03D 15/56 20210101ALI20220609BHJP

   D04B 1/16 20060101ALI20220609BHJP

   D04B 21/16 20060101ALI20220609BHJP

   D01H 1/115 20060101ALI20220609BHJP

【ＦＩ】

D02G3/04

D02G3/32

D03D15/283

D03D15/292

D03D15/47

D03D15/37

D03D15/56

D04B1/16

D04B21/16

D01H1/115

【審査請求】未請求

【予備審査請求】未請求

(21)【出願番号】P 2021561730

(86)(22)【出願日】2020-04-17

(85)【翻訳文提出日】2021-12-13

(86)【国際出願番号】 EP2020060937

(87)【国際公開番号】W WO2020212618

(87)【国際公開日】2020-10-22

(31)【優先権主張番号】19169982.6

(32)【優先日】2019-04-17

(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP

(81)【指定国・地域】

(71)【出願人】

【識別番号】507343327

【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス

【氏名又は名称原語表記】ＳＡＮＫＯ ＴＥＫＳＴＩＬ ＩＳＬＥＴＭＥＬＥＲＩ ＳＡＮ． ＶＥ ＴＩＣ． Ａ．Ｓ．

【住所又は居所原語表記】Ｏｒｇａｎｉｚｅ Ｓａｎａｙｉ Ｂｏｌｇｅｓｉ ３． Ｃａｄｄｅ １６４００ Ｉｎｅｇｏｌ－Ｂｕｒｓａ（ＴＲ）

(74)【代理人】

【識別番号】100060759

【弁理士】

【氏名又は名称】竹沢 荘一

(74)【代理人】

【識別番号】100083389

【弁理士】

【氏名又は名称】竹ノ内 勝

(74)【代理人】

【識別番号】100198317

【弁理士】

【氏名又は名称】横堀 芳徳

(72)【発明者】

【氏名】エルドアン バルシュ オッデン

(72)【発明者】

【氏名】ファトマ コルクマズ

(72)【発明者】

【氏名】トゥンジャイ キリジェカン

【テーマコード（参考）】

4L002

4L036

4L048

4L056

【Ｆターム（参考）】

4L002AA06

4L002AA07

4L002AB02

4L002AB04

4L002AB05

4L002AC01

4L002AC07

4L002BA00

4L002CA00

4L002EA06

4L002FA01

4L036MA04

4L036MA05

4L036MA33

4L036MA37

4L036MA39

4L036PA21

4L036PA41

4L036PA47

4L036UA25

4L048AA20

4L048AA21

4L048AA22

4L048AA24

4L048AA27

4L048AA34

4L048AA51

4L048AB07

4L048AB08

4L048AB11

4L048AB18

4L048AC12

4L048CA04

4L048DA01

4L056AA31

4L056FA07

(57)【要約】

【課題】弾性糸を高弾性衣服に使用したときに、弾性糸の破断および滑りの影響を受けることがない（または影響が少ない）弾性糸を提供すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも２つの弾性フィラメント束（１０１、１０２）および複数の非弾性要素（１０３）を含む複合糸（１００）に関し、弾性フィラメント束（１０１、１０２）は、ほぼ連続的な方法で互いに接続された複数の弾性フィラメント（１５０）を含んでおり、それぞれの非弾性要素（１０３）は、非弾性フィラメントまたは結合された非弾性フィラメント束の中から選択され、弾性フィラメント束（１０１、１０２）および非弾性要素（１０３）は、撚合せることによって互いに接続されている。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

２以上の弾性フィラメント束（１０１、１０２）および複数の非弾性要素（１０３）を含む複合糸（１００）であって、
前記弾性フィラメント束（１０１、１０２）は、互いに接続した複数の弾性フィラメント（１５０）を含んでおり、
前記非弾性要素（１０３）は、複数の非弾性フィラメントおよび／または少なくとも非弾性フィラメント束を含んでおり、
前記弾性フィラメント束（１０１、１０２）および前記非弾性要素（１０３）は、撚合せによって互いに接続されていることを特徴とする複合糸（１００）。

【請求項2】

本質的に、弾性フィラメント（１０１、１０２）および前記非弾性要素（１０３）からなり、撚合せによって結合されていることを特徴とする請求項１に記載の複合糸（１００）。

【請求項3】

それぞれの前記非弾性要素（１０３）は、少なくとも１つのポリエステルフィラメントおよび／またはポリアミドフィラメントを含んでいることを特徴とする請求項１または２に記載の複合糸（１００）。

【請求項4】

１メートルあたり５０を超える絡み合い点、より好ましくは１メートルあたり８０を超える絡み合い点、最も好ましくは１メートルあたり１００を超える絡み合い点、好ましくは１メートルあたり１５０までの絡み合い点を含んでいることを特徴とする請求項１から３のいずれか１項に記載の複合糸（１００）。

【請求項5】

前記弾性フィラメント（１０１）は、好ましくは１．１～６．９、より好ましくは２～６、さらに好ましくは３～５でドラフトされていることを特徴とする請求項１から４のいずれか１項に記載の複合糸（１００）。

【請求項6】

前記非弾性要素（１０３）のドラフトは１．０１～６であり、好ましくは５未満であり、最も好ましくは４未満であることを特徴とする請求項１から５のいずれか１項に記載の複合糸（１００）。

【請求項7】

前記非弾性要素（１０３）のドラフトは、前記弾性フィラメント（１０１）のドラフトよりも小さいことを特徴とする請求項１から６のいずれか１項に記載の複合糸（１００）。

【請求項8】

前記非弾性要素（１０３）には、質感が付与されていることを特徴とする請求項１から７のいずれか１項に記載の複合糸（１００）。

【請求項9】

前記非弾性要素（１０３）は、好ましくは、ＰＥＴ／ＰＴＴ、ＰＢＴ／ＰＴＴ、ＰＥＴ／ＰＴＭＴから選択される２成分フィラメントを含んでいることを特徴とする請求項１から８のいずれか１項に記載の複合糸（１００）。

【請求項10】

少なくとも３つの弾性フィラメント束（１０１、１０２）、好ましくは少なくとも５つの弾性フィラメント束（１０１、１０２）を含んでいることを特徴とする請求項１から９のいずれか１項に記載の複合糸（１００）。

【請求項11】

前記弾性フィラメント束（１０１、１０２）の番手が、２～１０００デニール、好ましくは１０～１００デニールであることを特徴とする請求項１から１０のいずれか１項に記載の複合糸（１００）。

【請求項12】

さらに、前記結合した弾性フィラメント束に加えて、前記非弾性要素（１０３）と撚合されている少なくとも１つ、好ましくは複数の単一弾性フィラメントを含んでいることを特徴とする請求項１から１１のいずれか１項に記載の複合糸（１００）。

【請求項13】

請求項１から１２のいずれか１項に記載の複合糸を含む生地（２００）、好ましくは織布。

【請求項14】

請求項１３に記載の生地（２００）を含む物品（３００）、好ましくは衣服。

【請求項15】

ａ．複数のフィラメントおよび／または結合したフィラメント束を含む複数の非弾性要素（１０３）を準備するステップと、
ｂ．互いに接続された複数の弾性フィラメント（１５０）を含んでおり、かつ互いに分離している少なくとも２つの弾性フィラメント束（１０１、１０２）を準備するステップと、
ｃ．前記弾性フィラメント束（１０１、１０２）および前記非弾性要素（１０３）を好ましくはエアジェット撚合せによって撚合せるステップと、
ｄ．前記撚合せるステップによって得られた前記複合糸（１００）を収集するステップとを含む複合糸（１００）の製造方法。

【請求項16】

前記ステップｃとｄとの間において、前記複合糸（１００）に更なる糸、またはロービング、またはスライバーを追加しないことを特徴とする請求項１５に記載の複合糸（１００）の製造方法

【請求項17】

前記非弾性要素（１０３）に質感を付与するステップを含んでいることを特徴とする請求項１５または１６に記載の複合糸（１００）の製造方法。

【請求項18】

前記ステップｃにおいて、好ましくは１．２％～７．０％の割合で前記非弾性要素（１０３）を過剰に供給することを特徴とする請求項１５から１７のいずれか１項に記載の複合糸（１００）の製造方法。

【請求項19】

請求項１５から１８のいずれか１項に記載の製造方法によって得られる複合糸。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、弾性糸、特に複合弾性糸に関する。本発明の糸は、特に、ジェギングおよび同様の衣服などの高弾性衣服用の生地の製造に用いられる。

【背景技術】

【0002】

エラスタンまたはスパンデックスのフィラメントおよび糸は、当該技術分野で周知であり、弾性糸および生地を製造するために繊維分野で広く使用されてきている。エラスタンのフィラメントは、いくつかの押し出しセルを有する紡糸口金を通してポリウレタンポリマーを押し出すことによって製造される。フィラメントが押出機を出る前に、ある量の固体の単一フィラメントまたはストランドが互いに結合して、所望の番手、すなわち所望の厚さを有するフィラメント束を生成する。このように、エラスタン（スパンデックス）の各フィラメント束は、一緒に結合する、すなわち、製造プロセスにおいて互いに接触するようになる時に、表面の生来の粘着性によって、互いに接着されている多くのより小さな個々のフィラメントで構成されている。特許文献１は、結合したマルチフィラメント束の適切な製造プロセスを開示している。

【0003】

エラスタンフィラメント束は、糸を作るために使用される。結合したエラスタンフィラメントの単一の束を複数の実質的に非弾性の（または、実質的に非伸縮性の）ポリエステルフィラメントと組み合わせることによって弾性糸を製造することが知られている。

【0004】

これらの種類の弾性糸を高弾性布の製造に使用する場合に、いくつかの問題が認められる。この種の生地の主な問題は、「エラスタンの破断」または「エラスタンの滑り」として、すなわち弾性糸が切断し、内側に引き込まれる恐れがあることが知られている。これは、特に衣服の腰側および股の両方の縫い端領域で、破断した場所から切断した弾性糸が生地の内部へ滑り込む結果となる。

【0005】

これらの問題は、例えばオーバーロックシームまたはフォールドシームで縫製するときに、ドライスクレイピングプロセスを行うときに、工業用洗濯機で洗濯するときに、回転式乾燥機で乾燥するときに、または家庭で洗濯するときなどに発生するおそれがある。

【0006】

特許文献２は、複合糸が、少なくとも１つの弾性制御フィラメントおよび少なくとも１つの非弾性制御フィラメントを備える、フィラメント状コアを有することを開示している。好ましいことに、紡糸されたステープル繊維から形成された繊維シースが、そのほぼ全長に亘って、フィラメント状コアを取り囲んでいる。少なくとも１つの弾性制御フィラメントは、最も好ましいことに、スパンデックスおよび／またはラストールフィラメントを含んでいる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0007】

【特許文献1】米国特許第３０９４３７４号明細書

【特許文献2】国際公開第２００８／１３０５６３号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

本発明の目的は、上述の問題を解決し、高弾性衣服に使用したときに、弾性糸の破断および「滑り」の影響を受けることがない（または影響が少ない）糸を提供することである。

【課題を解決するための手段】

【0009】

これらの目的は、本発明の１つまたは複数の請求項によって解決される。

【0010】

本発明の一態様は、独立請求項に記載の複合糸、生地、物品、およびプロセスに関する。一方、好ましい態様は、従属請求項に記載されている。

【0011】

本発明の一態様によれば、複合糸は、２以上の弾性フィラメント束および複数の非弾性要素を含んでいる。互いに結合した弾性フィラメント束（以下、「弾性束」とも呼ばれる）の中に、少なくとも第１弾性フィラメント束（以下、「第１弾性束」とも呼ばれる）、および第２弾性フィラメント束（以下、「第２弾性束」とも呼ばれる）が存在する。そして、第１弾性束および第２弾性束のそれぞれは、ほぼ連続的な方法で互いに接続された、すなわち結合した複数の弾性フィラメントを含んでいる。非弾性要素は、異なる複数の非弾性フィラメント、または異なる複数の非弾性フィラメントの束とすることができる。複数の結合した弾性フィラメント束は、複数の個々の非弾性モノフィラメントと組み合わされることが好ましい。弾性フィラメントと非弾性フィラメントとの最初の束は、撚合せによって接続している。撚合された接続は、結び目を提供する。

【0012】

このように、撚合せは、弾性フィラメント束と、撚合せ前は、実質的に分離した要素であった非弾性要素とを結合するために使用される。

【0013】

上述のように、各フィラメント束は、ほぼ連続的な方法で（たとえば、製造ステップにおいて、またはボンディング、接着、または同様の方法によって）互いに結合する、すなわち接続する、複数（２つ以上）の弾性フィラメントを含んでいる。「ほぼ連続的」とは、フィラメント間の接続が厳密ではないが（例えば、撚合せによって設けられるように）、互いに接続しているフィラメントの連続部分があることを意味する。実際、弾性繊維要素の場合、ある量のフィラメントを一緒に結合させて（束ねて）、所望の厚さを生成することができることが知られている。例えば、スパンデックス糸は、通常、結合したフィラメント束として準備することが知られている。なぜなら、マルチフィラメント束、すなわち結合したフィラメント束を準備するために、エラスタン糸は、互いに接着する複数のより小さな個々のフィラメントから構成することができるからである。

【0014】

このバンドルは、弾性である。ＤＩＮ ５３８２０ ｐａｒｔ ２によると５０％～１０００％（破断点伸びとして）伸ばすことができる。

【0015】

非弾性要素は、「非弾性」である。なぜなら、同じ試験で測定した場合、非弾性要素は、弾性束よりも小さい、好ましくは弾性束よりも７５％未満、より好ましくは５０％未満の破断点伸びを有しているからである。通常、非弾性要素は、ＤＩＮ ＩＳＯ ２０６２によると、５％～１００％の破断点伸びを有している。

【0016】

同じ弾性束のフィラメントは、これが製造ステップで行われると述べたように、ほぼ連続的な方法で接続されている。

【0017】

その結果、特許請求の範囲に記載した解決策では、少なくとも２つ、好ましくは３つ以上の弾性フィラメント束が存在する。これらは、単一の要素のように振る舞うこともなく、移動することもないが（そのため、破断する恐れがある）、非弾性要素と撚合されても、互いに一定の独立性を保持している。弾性マルチフィラメント束は、互いに分離されているため、１つの束が縫製ステップで切断したり、応力により破断したりする場合でも、弾性フィラメントの残りの束は、依然として糸に弾性を付与することができる。この事実は、応力に対するより良い耐性を付与し、特に、上述の状況では、ダメージを弾性束の一部（または束のフィラメントの一部）のみに制限することができる。

【0018】

好ましくは、複合糸は、本質的に、上述した弾性束と非弾性要素とからなっている。特に、好ましい態様によれば、上述の糸は、コアシース複合糸のコアとして使用されることはない。言い換えれば、この糸は、例えばステープル繊維のシースによって覆われていない。

【0019】

本発明の一態様によれば、複合糸は、弾性束および非弾性フィラメントからなっている。

【0020】

上述のように、好ましい実施形態では、３つ以上の弾性束が存在する。本発明の実施形態では、実際には、少なくとも３つの弾性束、または少なくとも５つの弾性束、または少なくとも７つの弾性束を備えることができる。例示的かつ好ましい実施形態は、２つ、好ましくは３～２２の弾性束を備えている。

【0021】

本発明の実施形態では、複合糸は、上述の弾性フィラメント束に加えて、少なくとも１つ、好ましくは複数の単一弾性フィラメントを含んでいる。単一弾性フィラメントは、それらの製造段階で単一フィラメントを束に結合させることを回避することによって得ることができる。

【0022】

一般的な概念として、非弾性要素の数および番手は制限されていない。しかし、非弾性要素の総番手は、弾性要素の総番手以上であることが好ましい。言い換えれば、複合糸中の非弾性要素の重量比率は、複合糸中の弾性要素の重量比率よりも大きいとより好ましい。生成した糸では、弾性フィラメントを、生成した複合糸の５重量％～５０重量％とすることができる。

【0023】

また、本発明の一態様によれば、複合糸における非弾性要素の数は、生成した糸における弾性束の数よりも多くなっている。

【0024】

さらに本発明の一態様によれば、それぞれの非弾性要素は、少なくとも１つのポリエステルフィラメント、および／またはポリアミドフィラメント、および／またはポリエステルコポリマー、および／またはポリアミドコポリマーを含んでいる。

【0025】

本発明は、請求項１に記載の複合糸である。本発明は、請求項１３に記載の生地、好ましくは織布にも関するものであり、かつ本発明は、１つ以上の上述の態様による糸、および請求項１３に記載の生地を含む物品、好ましくは衣服を含んでいる。

【0026】

さらに、本発明は、請求項１５に記載の方法に関する。複合糸を製造するためのこの方法は、各非弾性要素がフィラメントまたは結合したフィラメント束から選択される、複数の非弾性要素を準備するステップと、ほぼ連続的な方法で互いに接続された複数の弾性フィラメントを含む２以上の弾性フィラメント束であり、これらが互いに分離している弾性フィラメント束を準備するステップと、弾性フィラメント束および非弾性要素を撚合せるステップと、撚合せステップによって得られた複合糸を収集するステップとを含んでいる。撚合せは、エアジェット撚合せによって行われることが好ましい。

【0027】

複数の結合した弾性フィラメント束と、複数の非弾性フィラメントとを使用し、これらを、絡み合い点または結び目に撚合せることによって、エラスタンの滑りがないか、滑りが非常に小さい生成した糸を得ることができる。この弾性糸は、さらに処理することなく、そのまま使用することもできる。

【0028】

例示的で非限定的な本発明の実施形態を、以下の図を参照して説明する。

【図面の簡単な説明】

【0029】

【図1】本発明の一実施形態による複合糸の一部の模式図である。

【図2】図１に示す複合糸を製造可能な装置の模式図である。

【図3】図２に示す装置で使用することができる撚合せ装置の模式図である。

【図4】図１に示す複合糸を連続して含む生地を用いて得られる衣服の模式図である。

【図5】結合した弾性フィラメント束の模式的断面図である。

【図6】３つのモノフィラメントの模式的断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0030】

複合糸１００は、弾性フィラメントの少なくとも２つの束（上述のように「弾性束」とも呼ばれる）１０１、１０２、すなわち、少なくとも１つの第１弾性束１０１および第２弾性束１０２を含んでいる。

【0031】

視覚化と説明とを容易にするために、結合した弾性フィラメントの２つの束１０１、１０２を用いて説明する。本発明の異なる実施形態では、より多くの弾性束１０１、１０２を設けることができる。本発明の実施形態によれば、結合した弾性フィラメントの３～８の束が設けられている。

【0032】

弾性束の可能な実施形態では、２つの弾性フィラメント、例えば、４０Ｄ／４０Ｄの弾性フィラメント（エラスタン）を備えている。さらなる可能な実施形態では、弾性束１０１、１０２は、４つの弾性フィラメント、例えば、２０Ｄ／２０Ｄ／２０Ｄ／２０Ｄの弾性フィラメント（エラスタン）を備えている。弾性束のさらなる可能な実施形態では、７つの弾性フィラメント、例えば、１０Ｄ／１０Ｄ／１０Ｄ／１０Ｄ／１０Ｄ／１０Ｄ／１０Ｄの弾性フィラメント（エラスタン）を備えており、ここで、「Ｄ」はデニールを表している。

【0033】

弾性フィラメント束１０１、１０２は、２０～１０００デニール、好ましくは５０～３００デニールからなる番手を有している。互いに結合したフィラメントの数は、２～２００、好ましくは４～１５０、より好ましくは６～１００である。

【0034】

弾性フィラメント１５０は、好ましくはエラストマーフィラメント、すなわち、室温で元の長さの少なくとも２倍まで繰り返し伸ばすことができるフィラメントであり、張力を取り除くと、すぐに、かつ強制的に、ほぼ元の長さに戻る。本発明の一態様によれば、弾性フィラメント１５０は、エラスタンフィラメントなどのポリウレタンフィラメントである。

【0035】

弾性束１０１、１０２は、複数の弾性フィラメント１５０を含んでいる。弾性フィラメント１５０は、ほぼ連続的な方法で互いに接続されている。

【0036】

弾性フィラメント１５０は、任意の公知の手段によって、ほぼ連続的な方法で互いに接続することができる。

【0037】

複合糸１００は、複数の非弾性要素１０３を含んでいる。上述の実施形態では、非弾性要素１０３は、非弾性フィラメント束の一部である。その結果、上述の実施形態では、非弾性要素１０３は、非弾性フィラメントに対応している。異なる実施形態では、非弾性要素を、複数の接続された（例えば、接着された）非弾性サブフィラメントとすることができる。非弾性フィラメントの番手は、弾性フィラメント１５０の番手よりも小さい。好ましい非弾性フィラメントは、０．５～３デニールの番手を有している。

【0038】

複合糸１００は、複数の非弾性要素１０３を含んでおり、非弾性要素１０３は、単一非弾性フィラメント、または非弾性サブフィラメント束とすることができる。

【0039】

フィラメント束の各供給源は、異なるフィラメント束の番手／デニールを有することができ、最終製品では、４０デニール＋３０デニールなど、全てのフィラメント束の番手／デニールを異なる組み合わせとすることができる。

【0040】

非弾性要素１０３は、当該技術分野で知られている部分配向糸（ＰＯＹ）のモノフィラメント、すなわち単一フィラメントであることが好ましい。非弾性要素１０３のフィラメントは、ポリエステルフィラメントおよびポリアミド（ナイロン）フィラメント、あるいはポリエステルコポリマーまたはポリアミドコポリマーで作られたフィラメントから選択されることが好ましい。非弾性フィラメントは、質感が付与されたフィラメントであることが好ましい。

【0041】

各弾性束は、異なるレベルのドラフト比で引き伸ばすことができる。

【0042】

非弾性要素１０３は、ＰＢＴ／ＰＴＴまたはＰＥＴ／ＰＴＴまたはＰＥＴ／ＰＴＭＴ２成分フィラメントなどの２成分フィラメントを含むこともできる。

【0043】

弾性束１０１、１０２および非弾性要素１０３は、撚合せによって複数の点Ｐで互いに接続されて、生成した複合糸１００を構成する。その結果、生成した複合糸１００において、第２弾性束１０２に接続されていない、第１弾性束１０１の部分が存在し（すなわち、２つの後続の接続点Ｐの間）、その部分は、第２弾性束１０２の対応する部分に関して実質的に独立して振る舞うことができる。上述のように、このような独立性を助けるために、図示のように、弾性束１０１、１０２は、独立した束として、例えば、少なくともねじれていない状態で、撚合せ装置に供給されることが好ましい。

【0044】

撚合せは、エアジェット撚合せによって行うことが好ましい。

【0045】

複合糸１００は、典型的には、生地２００、好ましくは織布を提供するために使用される。本発明の一態様は、このような生地２００を含む物品３００、典型的には衣服に関する。可能な実施形態によれば、図２に示すように、本発明による複合糸の製造プロセスにおいて、非弾性要素１０３は、１つ以上の供給源１、例えば、１つ以上のボビンによって提供される。図示の実施形態によれば、単一の供給源１は、分離した非弾性要素（すなわち、非弾性フィラメント）１０３の束を提供する。

【0046】

非弾性要素１０３は、ガイド３、例えばチューブを通過し、次にドラフト手段２、例えば１つ以上のドラフトローラーによって、ドラフトすることができる。

【0047】

非弾性要素１０３に対しては、例えば、加熱要素４、その後に冷却要素５、例えば、非弾性要素１０３が通過する加熱チャンバおよび冷却チャンバによって、熱処理を行うこともできる。最初の加熱要素４の温度は、１８０～２１０℃にすることができる。

【0048】

非弾性要素の破断がこのプロセス中に発生するかどうかを検証するために、センサ６を設けることができ、これにより、非弾性要素が供給源１からこれ以上供給されないように監視し、回避することができる。非弾性要素１０３の張力を検証するために、さらなるセンサ７を設けることができる。

【0049】

弾性束１０１、１０２は、関連する供給源１１、１２から引き出される。好ましくは、各弾性束１０１、１０２は、異なる供給源１１、１２から引き出される。その結果、これらの経路の少なくとも一部について、第１弾性束１０１、第２弾性束１０２、および非弾性要素１０３は、異なる分離した経路に沿って移動する。

【0050】

次に、非弾性要素１０３および弾性束１０１、１０２は、複数の接続点Ｐで、撚合せ装置８、好ましくはエアジェット撚合せ装置によって、一緒に接続される。

【0051】

上述のように、撚合せ装置により、生成した糸のフィラメントの間に、複数の接続点Ｐが設けられる。特に、公知のように、撚合せにより、生成した糸のフィラメント１０１、１０３の間に、複数の接続点Ｐ（結び目）が設けられる。糸の１メートルあたりの絡み合いの数／結び目を測定するための公知の方法および試験機が存在する。

【0052】

例として、テクステクノ、ハー、シュタイン（Ｔｅｘｔｅｃｈｎｏ Ｈ． Ｓｔｅｉｎ）ドイツ国メンヒェングラートバッハ（Ｍｏｅｎｃｈｅｎｇｌａｄｂａｃｈ、ＤＥ； ｈｔｔｐｓ：／／ｗｗｗ．ｔｅｘｔｅｃｈｎｏ．ｃｏｍ）によるＩＴＥＭＡＴ ＋の「インターレーステスト」では、撚合せ点の数を評価するために、糸を所定の伸びで２つのシリンダー間を通過させる。各撚合せ点で、弾性フィラメントと非弾性フィラメントの絡み合い、または結び目が設けられており、それらは、糸が引っ張られたり伸ばされたりしても残る。或いは滑らかな糸では試験機が感知することができる。

【0053】

同様の機械で試験を行ったところ、約６．０％伸ばされた場合には、本発明による糸は、好ましくは、１メートルあたり少なくとも５０の接続点（すなわち結び目）、より好ましくは１メートルあたり少なくとも８０の接続点／結び目、さらにより好ましくは、１メートルあたり少なくとも１００の接続点／結び目が設けられている。１メートルあたりの好ましい結び目の数は、８０～１２０である。

【0054】

好ましい態様によれば、非弾性要素１０３は、好ましくは１．２％～７．０％の割合で、撚合せ装置８に過剰に供給される。

【0055】

撚合せる前に、弾性束１０１、１０２、および非弾性要素１０３は、ドラフト装置９、例えばドラフトローラーを共に通過することができる。好ましくは、（弾性束１０１、１０２、および非弾性要素１０３の両方に適用される）ドラフト装置９のドラフトは、ドラフト装置２（ドラフト装置９の上流に配置されている）によって非弾性要素１０３に適用されるドラフトよりも大きい。特に、ドラフト装置９に適用されるドラフトは、ドラフト装置２によって適用されるドラフトよりも、１．５～１．８倍大きくすることができる。

【0056】

弾性束１０１のドラフトは、好ましくは１．１～６．９、より好ましくは２～６であり、さらに好ましくは３～５である。非弾性要素１０３に関して、ドラフトは、好ましくは６未満、より好ましくは５未満、さらに好ましくは４未満である。さらに、弾性束１０１は、好ましくは非弾性要素１０３よりもドラフトされている

【0057】

さらに、弾性束１０１、１０２と接続する前に、非弾性要素１０３を、質感付与装置１０によって質感を付与することができる。摩擦ディスク装置などの任意の適切な質感付与装置を使用することができる。

【0058】

撚合せた後、複合糸が形成される。そこでは、弾性束１０１、１０２および非弾性要素１０３が、撚合せることによって接続されている。

【0059】

さらなる仕上げプロセス、例えば、加熱チャンバ１６による熱処理、および／または１つ以上のドラフト装置１３ａ、１３ｂによるさらなるドラフト、および／または仕上げ装置１４による仕上げ剤、例えばオイルまたは同様の物質の塗布を行うことができる。

【0060】

複合糸１００は、最終的に集糸要素１５に集糸される。通常、集糸された複合糸１００は、ボビンに巻かれている。

【0061】

一実施形態では、この製造プロセス中において、実質的に更なる糸、ロービングまたは同様の繊維要素が、複合糸１００に追加されることはない。そのため、衣服などの物品３００用の生地、特に織布２００を製造するための糸として、弾性束１０１、１０２と非弾性要素１０３とを本質的に含む形態で使用することができる。

【符号の説明】

【0062】

１ 供給源
２ ドラフト装置
３ ガイド
４ 加熱要素
５ 冷却要素
６、７ センサ
８ 撚合せ装置
９ ドラフト装置
１０ 質感付与装置
１１、１２ 供給源
１３ａ、１３ｂ ドラフト装置
１４ 仕上げ装置
１５ 集糸要素
１６ 加熱チャンバ
１００ 複合糸
１０１、１０２ 弾性束（フィラメント束）
１０３ 非弾性要素
１５０ 弾性フィラメント
２００ 生地（織布）
３００ 物品（衣服）
Ｐ 接続点

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【国際調査報告】