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特表2022-529047安定かつ保存されているビラスチンの医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】安定かつ保存されているビラスチンの医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/454 20060101AFI20220609BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20220609BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220609BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20220609BHJP
   A61P 27/14 20060101ALI20220609BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220609BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220609BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220609BHJP
【FI】
A61K31/454
A61K31/58
A61P43/00 113
A61P43/00 111
A61P11/02
A61P27/14
A61P37/08
A61P29/00
A61K9/10
A61P11/06
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/40
A61K47/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561834
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2020060521
(87)【国際公開番号】W WO2020212380
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】19382298.8
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504389452
【氏名又は名称】ファエス・ファルマ・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】FAES FARMA, S.A.
【住所又は居所原語表記】Autonomia,10 E-48940 Leioa-Vizcaya ES
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】エルナンデス エレーロ、ゴンサロ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサロ ゴロスティサ、アナ
(72)【発明者】
【氏名】マルシアネス モレノ、パトリシア
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサレス フェルナンデス、パウラ
(72)【発明者】
【氏名】タト セルデイラス、パロマ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB25
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC15
4C076DD37R
4C076DD38
4C076DD39R
4C076DD41R
4C076DD43
4C076DD49R
4C076EE32F
4C076EE39
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086DA12
4C086GA07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA21
4C086MA59
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA34
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、水性医薬組成物であって、
a)ビラスチン、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
b)塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせ、
c)懸濁剤、および
d)2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
を含み、
該水性医薬組成物のpHが3.5~5.5である、水性医薬組成物に関する。
本発明はまた、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および/または、コルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防において鼻腔投与で使用するための上記組成物にも関する。
本発明はまた、上記水性医薬組成物を調製するための方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性医薬組成物であって、
a)ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
b)塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせ、
c)懸濁剤、
d)2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
を含み、
前記水性医薬組成物のpHが3.5~5.5である、水性医薬組成物。
【請求項2】
e)モメタゾン、またはモメタゾンのエステル、エーテルもしくはケトニドをさらに含み、前記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量が8.5重量%未満である、請求項1に記載の水性医薬組成物。
【請求項3】
前記ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の含有量が0.2重量%~0.8重量%である、請求項1または2のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項4】
前記防腐剤の総含有量が0.010~2重量%、好ましくは0.010~0.6重量%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項5】
前記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量が1~5重量%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項6】
前記懸濁剤が、セルロースおよび/またはセルロース誘導体から選択され、当該セルロース誘導体が、セルロースのヒドロキシル基が部分的または完全に置換されてセルロースエーテルを提供するセルロースエーテル誘導体から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を調製する方法であって、
a)下記を含む水溶液
a1. 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、
a2. 塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせ、
a3. ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
a4. pHが3.5~5.5の水溶液を得るための緩衝剤
を調製する工程、
b)懸濁剤の水性懸濁液を調製する工程、
c)工程a)の前記水溶液を工程b)の前記水性懸濁液に添加することによって混合物を調製する工程、および
d)前工程の前記混合物を撹拌下で均質化する工程、場合により、pHを3.5~5.5にするさらなる緩衝剤を添加する工程
を含む、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
b1)モメタゾン、または、エステル、エーテルおよびケトニド誘導体から選択されるモメタゾンの薬学的に許容される誘導体の精製水中分散液を、界面活性剤を用いて、調製する工程をさらに含み、
前記均質化工程d)の前に、工程b1)の前記分散液を工程c)の前記混合物に添加し、
工程a)の前記2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量が8.5重量%未満である、方法。
【請求項9】
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの水溶液が、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量が1~5重量%である水溶液である、請求項7または8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
医薬として使用するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項11】
ヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および/または、コルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防に使用するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性医薬組成物。
【請求項12】
前記Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患が、鼻炎、結膜炎および鼻結膜炎から選択されるアレルギー性障害または疾患である、請求項11に記載の使用のための水性医薬組成物。
【請求項13】
前記コルチコステロイド応答性疾患が、喘息、アレルギー性鼻炎および非アレルギー性鼻炎、非悪性増殖性疾患および炎症性疾患から選択される、請求項11に記載の使用のための水性医薬組成物。
【請求項14】
前記水性医薬組成物が鼻腔内に投与される、請求項10から13のいずれか一項に記載の使用のための水性医薬組成物。
【請求項15】
請求項1から6のいずれか一項に記載の水性医薬組成物を含む、鼻腔スプレーデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビラスチンと、場合によりモメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体とを含む水性医薬組成物、および上記水性医薬組成物を調製するための方法に関する。本発明はまた、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および場合によりコルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防に使用するための上記組成物であって、上記水性医薬組成物が鼻腔内に投与されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒスタミンが、アレルギー性鼻炎、結膜炎、鼻結膜炎、皮膚炎、蕁麻疹および喘息などのアレルギー型疾患において非常に重要な役割を果たしていることは長い間知られている。H受容体ヒスタミンレベルで作用する抗ヒスタミン化合物は、そのような状態を治療するのに有用である。この意味で、文献EP0818454A1およびEP0580541A1ならびに特許出願EP14382576.8は、選択的H抗ヒスタミン活性を有しかつ催不整脈作用の無いベンズイミダゾール化合物を開示している。
【0003】
上記の特性を有する特定の化合物は、ビラスチンとしても知られている2-[4-(2-{4-[1-(2-エトキシエチル)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-1-ピペリジニル}エチル)フェニル]-2-メチルプロパン酸であり、下記式:
【化1】
を有し、スペインのFaes Farma社によって創製された。ビラスチンは、鎮静副作用がなく、心毒性作用がなく、かつ肝代謝されない、H拮抗薬であるベンズイミダゾール化合物である。さらにビラスチンは、アレルギー性鼻結膜炎および蕁麻疹の対症療法にも有効であることが証明されている。
【0004】
医薬組成物自体に十分な抗菌活性がない場合には、ヨーロッパ薬局方(Ph.Eur.)では、通常の保存および使用条件下において医薬組成物の腐敗および感染により患者に害を及ぼす増殖を防ぐために、特に水性製剤に抗菌性防腐剤を添加することを推奨している。抗菌性防腐剤の効力は、医薬組成物の有効成分により増強または減弱され得る。Ph.Eur.は、少なくとも以下の4種から選択される適切な微生物の所定の接種材料を用いて医薬組成物を検証することを推奨している:Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)ATCC9027(細菌、グラム陰性);Staphylococcus aureus(S.aureus)ATCC6538(細菌、グラム陽性);Candida albicans(C.albicans)ATCC10231(酵母)およびAspergillus brasiliensis(A.brasiliensis)ATCC16404(カビ)。
【0005】
Burkholderia cepacia(B.cepacia)は、貯液槽、湿潤環境、植物表面、および土壌中に存在するグラム陰性非発酵性桿菌である。2003年、コロラド州デンバーの病院において、小児患者の間でB.cepacia菌群が発生したことが報告された。疫学調査の結果、B.cepaciaによる鼻腔スプレーの内因性汚染が判明し、製造業者による自主的な製品回収が行われた[Susan A.Dolanら、An Outbreak of Burkholderia cepacia Complex Associated with Intrinsically Contaminated Nasal Spray.(内因性汚染された鼻腔スプレーに関連するBurkholderia cepacia菌群の発生)。Infect Control Hosp Epidemiol 2011;32(8):804~810)]。B.cepaciaは、ますます多様化する非滅菌医薬製品の一般的な汚染物質である。この微生物は健常人には医学的リスクをほとんど引き起こさないという事実にもかかわらず、鼻腔スプレー中のB.cepaciaは、免疫不全の人または嚢胞性線維症などの慢性肺疾患の人には上気道コロニー形成を引き起こし、二次的に呼吸器感染症を引き起こす可能性がある。さらに、B.cepaciaは多くの抗生物質に耐性があり、このような感受性集団に感染が生じた場合、根絶が困難なことがある。したがって、高リスク患者に使用される可能性のある鼻腔用製品の安全性を保証するために、追加の対策を検討すべきである。
【0006】
WO2005/082416には、シクロデキストリンを含む医薬組成物に防腐剤を使用する試みが、防腐剤の数を減らすことについては満足のいく結果が得られたのみであることが開示されている。特に、WO2005/082416には、塩化ベンザルコニウムを含む組成物がUSP/Ph.Eur.の要件に適合しなかったことが開示されている。WO2005/082416には、塩化ベンザルコニウムと他の防腐剤との組み合わせについて記載がない。
【0007】
WO2012/094283には、A.brasiliensis(niger)、C.albicans、E.coli、S.aureusおよびP.aeruginosaに対するUSP51防腐効果試験に合格する製剤を得るために、塩化ベンザルコニウム濃度を0.005%から0.0125%まで増加させることが開示されている。
【0008】
逆に、本発明者らは驚くべきことに、ビラスチン、β-シクロデキストリンおよび少なくとも1種の懸濁剤を含む医薬組成物の特定の場合では、防腐剤である塩化ベンザルコニウム単独では、試験した微生物の少なくとも1種に対して十分な抗菌活性が得られないことを見出した。
【0009】
WO2013/078500には、注射に適した医薬組成物において、m-クレゾール、クロロクレゾール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ホウ酸、フェノール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、およびそれらの混合物から選択される防腐剤の有効性を維持するために、1~30%w/vの共溶媒を使用することが開示されている。その実施例では、少なくとも10%の量の共溶媒を使用することが示されている。しかしながら、この文献には、上記共溶媒を使用せずに抗菌効果を達成する可能性については記載がない。さらに、鼻腔投与用の組成物は開示されていない。
【0010】
一方、ステロイド、特にコルチコステロイドは、呼吸器系疾患の軽減に役立つと考えられている。特に、グルココルチコイドは、呼吸器系疾患で活性化される炎症経路の多くを遮断すると考えられている。さらに、コルチコステロイドは、気道の炎症を軽減もしくは予防し、喘息症状、慢性閉塞性肺疾患の治療、または枯草熱などのアレルギー状態における鼻道の炎症の治療に寄与する。喘息などの呼吸器系疾患のためのグルココルチコイドは、全身送達に関連するステロイド関連副作用の発生率を低減するために、吸入によって投与されることが好ましい。
【0011】
最近、CN103784462に、ビラスチンの抗ヒスタミン作用とステロイドの抗炎症作用とを組み合わせた、点鼻または点眼用の治療用組成物が報告されている。しかしながら、ビラスチンの水への溶解度の低さが、開示された医薬組成物を鼻腔経由で適切に投与することを妨げている。
【0012】
KR20130030606AおよびKR20100119632は、抗ヒスタミン剤(ビラスチンではない)およびモメタゾンを含む医薬組成物に関するものである。US2006/045850A1は、抗炎症組成物中のステロイドの溶解性を改善するためのシクロデキストリンの使用に関するものである。EP1894559A1は、シクロデキストリンを添加することによりエアロゾル療法のための難溶性コルチコイドを可溶化するという問題に取り組んでいる。US2007/082870A1は、シクロデキストリンを使用して抗真菌性アゾールの水溶解度を高めるという問題に取り組んでいる。
【0013】
逆に、本発明者らは驚くべきことに、モメタゾンを含む医薬組成物の特定の場合では、防腐剤である塩化ベンザルコニウム単独で、微生物に対する十分な抗菌活性を提供するのに既に十分であることを見出した。この結果は、ビラスチンが存在する場合には観察されなかった。
【0014】
これらの引用文献のいずれも、ビラスチンおよびモメタゾンの両方を含む安定した組成物であって抗菌保存効果のPh.Eur.基準を満たすものについて言及していない。
【0015】
したがって、当技術分野において、十分な抗菌活性を有する、抗ヒスタミン活性を有する鼻腔用医薬組成物が必要とされている。コルチコステロイドの添加によって組成物がさらに改善され、その結果、気道流路および/または肺のコルチコステロイド応答性疾患を同時に治療するために使用することができる。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、Pseudomonas aeruginosa、Staphylococcus aureus、Candida albicans、Aspergillus brasiliensis、Escherichia coliおよびBurkholderia cepaciaの6種の微生物のうちの少なくとも4種に対して抗菌活性を有する、ビラスチンを含む水性医薬組成物を提供する。これは、防腐剤の非任意の(non-arbitrary)群から選択される少なくとも2種の防腐剤を上記組成物中に含むことによって達成される。
【0017】
したがって、第1の態様において、本発明は、水性医薬組成物であって、
a)ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
b)塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール(chlorbutanol)、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせ、
c)懸濁剤、
d)2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
を含み、
該水性医薬組成物のpHが3.5~5.5である、水性医薬組成物に関する。
【0018】
本発明者らは驚くべきことに、塩化ベンザルコニウムとさらなる防腐剤との特定の組み合わせを選択することにより、得られた医薬組成物が抗菌効果に関するPh.Eur.基準を満たすことを見出した。
【0019】
第2の態様において、本発明は、
a)下記を含む水溶液
a1. 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、
a2. 塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせ、
a3. ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
a4. pHが3.5~5.5の水溶液を得るための緩衝剤
を調製する工程、
b)懸濁剤の水性懸濁液を調製する工程、
c)工程a)の水溶液を工程b)の水性懸濁液に添加することによって混合物を調製する工程、および
d)上記工程の混合物を撹拌下で均質化する工程、場合により、pHを3.5~5.5にするさらなる緩衝剤を添加する工程
を含む、水性医薬組成物を調製するための方法に関する。
【0020】
第3の態様において、本発明は、医薬として使用するための、上記で定義された水性医薬組成物に関する。
【0021】
本発明の別の態様は、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および/または、コルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防に使用するための、上記で定義された水性医薬組成物に関する。
【0022】
別の態様では、本発明は、上記の水性医薬組成物を含む鼻腔スプレーデバイスに関する。
【0023】
これらの態様およびその好ましい実施形態は、特許請求の範囲においてもさらに定義される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1Aは、pH4.3~4.9の範囲における2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量によるビラスチンの溶解度の変化を示す図である。図1Bは、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量によるフロ酸モメタゾンの溶解度の変化を示す図である。
図2】pH4.5におけるα-シクロデキストリンの含有量によるビラスチンの溶解度の変化を示す図である。
図3図3Aは、ビラスチンの溶解度におけるkolliphor RH40の影響を示す図である。図3Bは、フロ酸モメタゾン一水和物の溶解度におけるkolliphor RH40の影響を示す図である。
図4A】溶解したモメタゾンのパーセンテージとモメタゾン不純物のパーセンテージとの間に線形挙動があることを示す図である。
図4B】HPBCDシクロデキストリンが、85mg/mL未満の濃度で使用した場合、モメタゾンの可溶化を最小限にすることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、ビラスチンと、場合によりモメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体とを含む水性医薬組成物を提供する。
【0026】
さらに、本発明の水性医薬組成物の安定性および均質性により、鼻腔スプレーによるその効果的な投与が可能となる。
【0027】
第1の態様において、本発明は、水性医薬組成物であって、
a)ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
b)塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせ、
c)懸濁剤、
d)2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
を含み、
該水性医薬組成物のpHが3.5~5.5である、水性医薬組成物に関する。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、
a)ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
b)塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせ、
c)懸濁剤、
d)2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
を含み、
該水性医薬組成物のpHは3.5~5.5である。
【0029】
さらに好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、
a)ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
b)塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせ、
c)懸濁剤、
d)2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
を含み、
該水性医薬組成物のpHは3.5~5.5である。
【0030】
本発明者らは驚くべきことに、塩化ベンザルコニウムとさらなる防腐剤との特定の組み合わせを選択することにより、得られた医薬組成物が抗菌効果に関するPh.Eur.基準を満たすことを見出した。Ph.Eur.は、少なくとも以下の4種から選択される適切な微生物の所定の接種材料を用いて医薬組成物を検証することを推奨している:Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)ATCC9027(細菌、グラム陰性);Staphylococcus aureus(S.aureus)ATCC6538(細菌、グラム陽性);Candida albicans(C.albicans)ATCC10231(酵母)およびAspergillus brasiliensis(A.brasiliensis)ATCC16404(カビ)。
【0031】
有利には、本発明は、これらの4種の微生物に対して抗菌効果を有し、好ましくは、Escherichia coli(E.coli)ATCC8739(細菌、グラム陰性)およびBurkholderia cepacia(B.cepacia)ATCC17759(細菌、グラム陰性)の2種の微生物のうちの少なくとも1種に対しても抗菌性を有する、ビラスチンの鼻腔投与用医薬組成物を提供する。
【0032】
「医薬組成物」とは、本明細書中で使用される場合、生理学的に許容され、かつヒトまたは動物に投与した場合にアレルギー反応または類似の好ましくない反応、例えば胃障害、めまいなどを通常は引き起こさない組成物および分子実体をいう。好ましくは、用語「薬学的に許容される」とは、動物用、特にヒト用として、州政府もしくは連邦政府の規制機関によって承認されていること、または米国薬局方もしくは他の一般に認められている薬局方に収載されていることを意味する。
【0033】
「水性医薬組成物」という表現は、水を含む液体医薬組成物を指す。本発明の文脈において、「水性」という用語は、上記組成物が水を含み、好ましくは該組成物の総重量に対して少なくとも50重量%の水、より好ましくは少なくとも60重量%の水、より好ましくは少なくとも70重量%の水、より好ましくは少なくとも80重量%の水、より好ましくは少なくとも85重量%の水、より好ましくは少なくとも90重量%の水を含むことを意味する。特に好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、該組成物の総重量に対して少なくとも80重量%の水を含む。
【0034】
本発明はさらに、ビラスチンと、場合によりモメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体とを含む水性医薬組成物を提供する。特に、ビラスチンと、モメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体とを組み合わせることにより、鼻腔投与による、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、およびコルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防が可能になる。
【0035】
本発明者らは驚くべきことに、本発明の水性医薬組成物中の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)の含有量が8.5重量%未満であると、ビラスチンの溶解性が向上し、ステロイドモメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体の最少量が可溶化され、ステロイドモメタゾンの分解が回避されることにより、水性医薬組成物の均一性および安定性が維持されることを見出した。
【0036】
本開示の文脈において、「重量%」または「%w/w」という用語は、同じ意味である質量分率(質量パーセンテージで表される)を指す。混合物中の物質の質量分率は、その物質の質量と混合物の総質量との比であり、分母を100として、質量パーセンテージで表される。本明細書および特許請求の範囲において、組成物の成分がある濃度範囲で開示されている場合、当業者は、成分の濃度の合計が100%を超えてはならないことを直ちに理解するであろう。その場合、濃度の合計が100%になるように、濃度範囲の上限を低くしてもよいことを当業者は容易に理解するであろう。
【0037】
好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、
e)モメタゾン、または、エステル、エーテルおよびケトニド誘導体から選択されるモメタゾンの薬学的に許容される誘導体
をさらに含み、かつ、
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量が8.5重量%未満であることを特徴とする。
【0038】
本発明の水性医薬組成物の成分について、以下にさらに説明する。
【0039】
ビラスチン
本発明の水性医薬組成物は、下記式:
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物を含む。この化合物は、ビラスチンとしても知られている2-[4-(2-{4-[1-(2-エトキシエチル)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-1-ピペリジニル}エチル)フェニル]-2-メチルプロパン酸である。ビラスチンの合成は、文献EP0818454A1およびEP0580541A1、および特許出願EP14382576.8に記載されている。
【0040】
ビラスチンは、塩または溶媒和物、好ましくは薬学的に許容される塩または溶媒和物の形態であってよい。
【0041】
本明細書中で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、これらが患者への投与に許容されること、つまり過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを誘発しないことを条件に、使用され得る塩の種類に制限のない任意の塩を包含する。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例として、ビラスチンの薬学的に許容される塩は、酸付加塩、塩基付加塩または金属塩であり得、当業者に公知の従来の化学プロセスによって、塩基部分または酸部分を含む親化合物から合成され得る。そのような塩は一般に、例えば、上記化合物の遊離酸形態または遊離塩基形態を、化学量論量の適切な塩基または酸と、水中または有機溶媒中またはこれらの2つの混合物中で反応させることによって調製される。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、アセトン、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水媒体が好ましい。酸付加塩の例としては、無機酸付加塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩など、有機酸付加塩、例えば、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩などが挙げられる。塩基付加塩の例としては、無機塩基塩、例えば、アンモニウム塩など、および有機塩基塩、例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、グルタミン、アミノ酸の塩基性塩などが挙げられる。金属塩の例としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩およびリチウム塩が挙げられる。
【0042】
本発明による用語「溶媒和物」は、非共有結合を介して別の分子(極性溶媒の可能性が最も高い)が結合している本発明による活性化合物の任意の形態を意味するものと理解されるべきである。溶媒和物の例としては、水和物およびアルコラートが挙げられる。溶媒和の方法は、先行技術において一般に公知である。
【0043】
また、本発明の水性医薬組成物中のビラスチンは、1つ以上の同位体濃縮原子が存在することのみが異なる化合物を含むことも意味する。例えば、1つの水素が重水素もしくは三重水素に置換されていること、または1つの炭素が13C濃縮炭素もしくは14C濃縮炭素に置換されていること、または1つの窒素が15N濃縮窒素に置換されていることを除いては本発明の構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。
【0044】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物中のビラスチンの量は、該組成物の総重量を基準として、0.1重量%以上、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、0.7重量%以上または0.8重量%以上である。
【0045】
別の特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物中のビラスチンの量は、該組成物の総重量を基準として、1.0重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、または0.3重量%以下である。
【0046】
好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物中のビラスチンの量は、該組成物の総重量を基準として、0.2~0.8重量%である。好ましくは、本発明の水性医薬組成物中のビラスチンの量は、0.3~0.7重量%、より好ましくは0.4~0.6重量%である。より好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物中のビラスチンの量は、0.4重量%である。
【0047】
モメタゾン
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、モメタゾンおよび/またはその薬学的に許容される誘導体をさらに含有していてもよく、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量は8.5重量%未満である。一般に、モメタゾンなどのステロイドは、細胞、組織および生物体において調節機能を有する。
【0048】
用語「その薬学的に許容される誘導体」とは、モメタゾンの無毒な機能的等価物または誘導体であって、モメタゾンの原子または分子群または結合の置換によって得られ得、それによって基本構造は変化せず、少なくとも1つの位置でモメタゾンの構造と異なるものを指す。特に、本発明の文脈におけるモメタゾンの薬学的に許容される誘導体とは、モメタゾンのエステル、エーテルまたはケトニドを指す。すなわち、モメタゾンのヒドロキシル基の少なくとも1つがエステル、エーテルまたはケトニドとして官能化されている化合物を指す。したがって、特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、エステル、エーテルおよびケトニドから選択されるモメタゾンの薬学的に許容される誘導体を含む。好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、モメタゾン、またはモメタゾンのエステル、エーテルもしくはケトニドをさらに含む。
【0049】
特定の実施形態では、モメタゾンのエステル誘導体とは、少なくとも1つの-OH基が-OC(O)R’基で置換されているモメタゾンを指し、R’はC~Cアルキル、ハロ(C~Cアルキル)、(C~C12)アリール(C~C)アルキル、C~Cシクロアルキル、3~10員のヘテロシクリル、C~C12アリール、および3~10員のヘテロアリールから選択される。特定の実施形態では、R’は、C~Cアルキル、および3~10員のヘテロアリール、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フリル、チオフェニルまたはピリジニルから選択される。特定の実施形態では、エステル誘導体は、フロエートまたはプロピオネート、例えば、フロ酸モメタゾンおよびプロピオン酸モメタゾンである。好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、フロ酸モメタゾンを含む。
【0050】
特定の実施形態では、モメタゾンのエーテル誘導体とは、少なくとも1つの-OH基が-OR’基で置換されているモメタゾンを指し、R’はC~Cアルキル、ハロ(C~Cアルキル)、(C~C12)アリール(C~C)アルキル、C~Cシクロアルキル、3~10員のヘテロシクリル、C~C12アリール、および3~10員のヘテロアリールから選択される。
【0051】
特定の実施形態では、モメタゾンのケトニド誘導体とは、隣接する炭素上、または間に1つの炭素が配置された2つの炭素上のいずれかに配置された2つの-OH基が一緒になって下記式
【化3】
の基を形成するモメタゾンを指し、式中、各R’は独立してC~Cアルキル、ハロ(C~Cアルキル)、(C~C12)アリール(C~C)アルキル、C~Cシクロアルキル、3~10員のヘテロシクリル、C~C12アリール、および3~10員のヘテロアリールから選択される。特定の実施形態では、各R’は独立してC~Cアルキル、例えばメチル、エチル、プロピルまたはブチルから選択される。特定の実施形態では、ケトニド誘導体はアセトニドであり、すなわち、R’は、例えばトリアムシノロンアセトニドに見られるアセトニド基などのメチルである。
【0052】
これらのモメタゾン誘導体の調製方法は、当技術分野で周知である(例えば、M.B.Smith,J.March,March’s Advanced Organic Chemistry,Wiley-Interscience,5th ed.など)。同様に、モメタゾンおよびモメタゾン誘導体は、遊離化合物としても、または溶媒和物(例えば、水和物、アルコラートなど)としても、水性医薬組成物中に存在してよく、いずれの形態も本発明の範囲内に含まれる。したがって、例えば、本発明の水性医薬組成物中のフロ酸モメタゾンの適切な形態としては、無水形態または水和物形態、例えば一水和物形態が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、モメタゾン水和物を含む。溶媒和の方法は、先行技術において周知である。
【0053】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物中のモメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体の量は、該組成物の総重量を基準として0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.03重量%以上、0.04重量%以上、0.05重量%以上、または0.06重量%以上である。
【0054】
別の特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物中のモメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体の量は、該組成物の総重量を基準として0.08重量%以下、0.07重量%以下、0.06重量%以下、0.05重量%以下、0.04重量%以下、または0.03重量%以下である。
【0055】
好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物中のモメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体の量は、該組成物の総重量を基準として0.02~0.06重量%であり、好ましくは0.05重量%である。
【0056】
防腐剤
本発明において、本発明の医薬組成物は、防腐剤である塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤とを組み合わせて含む。
【0057】
さらに好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、防腐剤である塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤、より好ましくは、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤とを組み合わせて含む。
【0058】
本願の文脈において、「防腐効果」、「防腐有効性」または「抗菌効果」という用語は、組成物が鼻腔用製剤のPh.Eur.基準(ヨーロッパ薬局方9.0-5.1.3.Efficacy of Antimicrobial Preservation(抗菌保存効果)-01/2014:50104)を満たすことを意味する。Ph.Eur.基準によると、検査される製品において達成されるべき推奨効果は、判定基準Aによって決定される。A判定基準が達成できない正当な理由がある場合、防腐剤が有効であるとみなされるには、B判定基準を満たさなければならない。微生物数の経時的な減少の観点からの許容基準は、意図する保護の程度に応じて製剤の種類によって異なる。下の表は、接種材料について得られた値に対する生菌数のlog10減少の観点からの抗菌活性の評価基準を要約しており、前述のPh.Eur.第5.1.3章に記載されている。
【0059】
【表1】
【0060】
防腐剤は、組成物中の微生物の増殖(例えば、細菌または真菌)を抑制するために使用され得る。防腐剤の「有効量」とは、判定基準AまたはBの範囲内で組成物中の微生物の増殖を防ぐのに必要な量である。
【0061】
本発明の特定の実施形態では、本発明の医薬組成物が効果的に保存される最低期間は、7日以上、好ましくは14日以上、より好ましくは28日以上である。
【0062】
本発明では、医薬組成物を容器中に保存することで、容器を開封した日から少なくとも7日間、好ましくは14日間以上、より好ましくは28日間以上の期間、組成物を効果的に保存することができる。
【0063】
より好ましい実施形態では、防腐剤は、少なくとも6ヶ月間の保存期間にわたって、組成物中の微生物の増殖を防ぐことができる。
【0064】
Ph.Eur.は、少なくとも以下の4種から選択される適切な微生物の所定の接種材料を用いて医薬組成物を検証することを推奨している:Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)ATCC9027(細菌、グラム陰性);Staphylococcus aureus(S.aureus)ATCC6538(細菌、グラム陽性);Candida albicans(C.albicans)ATCC10231(酵母)およびAspergillus brasiliensis(A.brasiliensis)ATCC16404(カビ)。
【0065】
本発明は、検証試験において、これらの4種の微生物に対して抗菌効果を有するが、好ましくはEscherichia coli(E.coli)ATCC8739(細菌、グラム陰性)およびBurkholderia cepacia(B.cepacia)ATCC17759(細菌、グラム陰性)の2種の微生物のうちの少なくとも1種に対しても抗菌効果を有するビラスチンの鼻腔用医薬組成物を提供するという利点がある。
【0066】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物は、P.aeruginosa、S.aureus、Candida albicansおよびA.brasiliensisに対する抗菌効果のPh.Eur.基準に適合している。好ましくは、本発明の医薬組成物は、P.aeruginosa、S.aureus、C.albicans、A.brasiliensis、ならびにB.cepaciaおよびE.coliから選択される2種の微生物のうちの少なくとも1種に対する抗菌効果のPh.Eur.基準に適合している。より好ましくは、本発明の医薬組成物は、P.aeruginosa、S.aureus、C.albicans、A.brasiliensisおよびB.cepaciaに対する抗菌効果のPh.Eur.基準に適合している。さらにより好ましくは、本発明の医薬組成物は、P.aeruginosa、S.aureus、C.albicans、A.brasiliensis、B.cepaciaおよびE.coliに対する抗菌効果のPh.Eur.基準に適合している。
【0067】
本明細書に記載されているように、本発明者らは驚くべきことに、ビラスチン、β-シクロデキストリン、少なくとも1種の懸濁剤、および防腐剤である塩化ベンザルコニウム単独を含む医薬組成物が、試験した6種の微生物のうちの少なくとも1種に対して十分な抗菌活性を有さないことを見出した。さらに、この驚くべき発見は、防腐剤の1つとして塩化ベンザルコニウムを含んでいたとしても、複数の防腐剤を任意に組み合わせて使用した場合には、本発明の医薬組成物が十分に保存されないと認識するまでに至った。
【0068】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、医薬組成物の少なくとも2種の防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される。2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩は、チメロサールとも呼ばれる。
【0069】
好ましい実施形態では、医薬組成物の少なくとも2種の防腐剤は、フェニルエチルアルコール、チメロサール、セトリミド、ベンジルアルコールおよび塩化ベンザルコニウムを含む群から選択される。
【0070】
好ましくは、少なくとも2種の防腐剤のうちの1種は、塩化ベンザルコニウムである。
【0071】
本明細書に記載されるすべての実施形態に適合する好ましい実施形態では、医薬組成物の少なくとも2種の防腐剤は、P.aeruginosa、S.aureus、C.albicans、A.brasiliensis、E.coliおよびB.cepaciaからなる群から選択される微生物の少なくとも1種に対して、得られる組成物の抗菌効果において相乗効果を有する。
【0072】
本明細書に開示される任意の他の実施形態と両立できる好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物中に存在する少なくとも2種の防腐剤は、EDTA、EDTAと組み合わせたソルビン酸カリウム、p-クロロクレゾール、クロルヘキシジン、プロピルパラベンと組み合わせたメチルパラベンからなる群から選択されない。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、少なくとも0.0005重量%、0.001重量%、0.002重量%、0.005重量%、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.15重量%または0.2重量%の防腐剤の組み合わせを含む。
【0074】
先の実施形態と両立できる別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、0.2重量%以下、0.3重量%以下、0.4重量%以下、0.5重量%以下、0.6重量%以下、0.7重量%以下、0.8重量%以下、0.9重量%以下、1重量%以下、1.1重量%以下、1.2重量%以下、1.3重量%以下、1.4重量%以下または1.5重量%以下の防腐剤の組み合わせを含む。
【0075】
本発明の好ましい実施形態は、防腐剤の組み合わせの量が、0.001重量%~1.5重量%である実施形態である。好ましくは、0.001重量%~1.1重量%、0.005重量%~1.1重量%、0.01重量%~1.1重量%、より好ましくは0.01重量%~1重量%、最も好ましくは0.02重量%~1重量%である。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、共溶媒を含まない。
【0077】
別の好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物中の防腐剤は、まず共溶媒に溶解してからバルク溶液に添加するのではない。
【0078】
最も好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物中の少なくとも2種の防腐剤は、水に添加される。
【0079】
本発明の文脈では、上記共溶媒は、防腐剤の可溶化を補助する化合物であり、防腐剤と共溶媒の混合物は、防腐剤を共溶媒に溶解することによって別に調製され、これが後にバルク溶液に添加される。本明細書で定義する共溶媒は、エタノール、グリセリン、プロピレングリコール、イソプロピルアルコール、グリセロールホルマール、テトラグリコール、ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物から選択され、その量は1~30%w/vである。
【0080】
懸濁剤
用語「懸濁剤」とは、液体媒体中に分散した粒子の凝集を克服し、粒子がよりゆっくりと沈降するように媒体の粘度を増加させる薬剤を指す(Remington,The Science and practice of pharmacy,第21版,p.1072,2005)。
【0081】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物中の懸濁剤は、セルロースおよび/またはセルロース誘導体から選択され、当該セルロース誘導体が、セルロースのヒドロキシル基が部分的または完全に置換されてセルロースエーテル(-OR)を提供する。好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物中の懸濁剤は、微結晶セルロース(MCC)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはそれらの混合物から選択されるセルロースエーテル誘導体である。本発明の医薬組成物に適した懸濁剤は、例えば、Vivapur(登録商標)MCG811P(JRS Pharma)、Avicel(登録商標)RC591(FMC Biopolymer)およびAvicel(登録商標)RC581(JRS Pharma)の商品名で市販されている。
【0082】
特に、本発明の水性医薬組成物を鼻腔送達デバイスに適用する場合には、Avicel RC591およびVivapur MCGが、そのチキソトロピー性のために好ましく使用される。両化合物はゲルネットワークを形成し、薬物粒子が鼻腔送達デバイス中で懸濁されている状態を維持する。撹拌中およびポンピング中はゲルが流動性になり、容易に噴霧することができるので、効率的で標準化された最適な霧化および堆積パターンが得られる。撹拌後には、流体はその粘性を回復し、鼻からのしたたり落ちまたは咽喉領域への流出を防ぎ、鼻腔内での薬剤物質の滞留時間を長くする。好ましくは、Avicel RC-591は20mg/mL(2.0重量%)で使用されるが、本発明の水性医薬組成物中では18mg/mL(1.8wt%)の濃度のVivapur MCG811Pが推奨される。
【0083】
本発明の水性医薬組成物は、組成物の総重量を基準として1.0~2.5重量%、好ましくは1.3~2重量%、さらにより好ましくは1.6~1.9重量%、さらにより好ましくは1.8重量%の懸濁剤を含む。本発明者らは、1重量%未満の含有量では流動性が高すぎる分散液が生成されるが、この値を超える含有量ではチキソトロピックゲルが生成されることを見出した。
【0084】
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
ビラスチンは水にわずかしか溶解せず、その溶解度はpHに依存し、pH<3.6およびpH>8.5で親水性が高くなり、pH3.8~8.5の範囲では疎水性が高くなる。したがって、本発明の水性医薬組成物のpHが3.5~5.5の範囲では、ビラスチンの可溶化剤が必要である。
【0085】
したがって、本発明の水性医薬組成物は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)も含む。
【0086】
さらに、本発明の医薬組成物中のHPBCDはまた、組成物の不快な風味を隠し、患者への医薬組成物の投与を有利にする。
【0087】
本発明の文脈では、HPBCDはさまざまな置換度を有してよい。例えば、4.1~5.1の置換度を有するCavasol W7 HP(商標)およびCavasol W7 HP5(商標)(Ashland)、4.5の置換度を有するCavitron W7 HP7(商標)(Ashland)、Kleptose HPB(商標)(Roquette’s)、5.6の置換度を有するKleptose HP(商標)(Roquette’s)(HP8BCD)、および3.5~6.5の置換度を有するTrappsol(CTD)が市販されている。
【0088】
本発明の医薬組成物がさらにモメタゾンを含む場合、本発明者らは驚くべきことに、可溶化モメタゾンのパーセンテージと、結果として生じる不純物のパーセンテージとの間に直接的な線形関係があることを見出した。さらに、本発明者らは、本発明の医薬組成物中にHPBCDが存在することにより、適切な量のビラスチンが可溶化されることを保証しつつ、ステロイドの分解を薬学的に許容されるレベル未満に最小化するという意味で安定しているビラスチンおよびモメタゾンを含む製剤が提供できることを見出した。この意味で、HPBCDは、本発明の水性医薬組成物のpH範囲でビラスチンの可溶化をもたらすが、他のシクロデキストリン、例えばα-シクロデキストリン(α-CD)などは、必要な溶解度をもたらさない。図1Aは、pH範囲4.3~4.9において、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量によるビラスチンの溶解度の変化を示す。特に、図1Aでは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量が25mg/mL(2.5重量%)の場合、ビラスチンの溶解度はpH値4.6で約10mg/mLであることを示している。対照的に、HPBCDの代わりに5重量%のα-シクロデキストリン(α-CD)を使用すると、図2に示すように、pH4.5ではビラスチンの溶解度は1mg/mLに達しない。
【0089】
さらに、図1Bは、HPBCDの含有量が75mg/mL(7.5重量%)である場合、フロ酸モメタゾンの溶解度は約4mg/mLのままであることを示している。この意味で、本発明者らは、本発明の水性医薬組成物中のHPBCDの含有量が8.5重量%未満であると、ビラスチンの完全な溶解がもたらされ、同時に、最少量のモメタゾンが溶解されるため、ステロイドの望ましくない分解が薬学的に許容されるレベル未満に最小化されることも見出した。
【0090】
好ましい実施形態では、医薬組成物は、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量が8.5重量%未満である。
【0091】
本文全体を通して記載されているように、かつ特に明記しない限り、8.5重量%未満の含有量は、製剤の85mg/mL未満の含有量として理解されるべきである。これは、医薬組成物1mLの重量が約1000mgであるためである。
【0092】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8重量%のHPBCDを含む。別の特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、9、8、7、6、5、4、3重量%以下のHPBCDを含む。
【0093】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、1~8.5重量%のHPBCDを含む。別の特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、2~8.5重量%のHPBCDを含む。
【0094】
さらに別の特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、5重量%未満のHPBCDを含む。
【0095】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、1~5重量%のHPBCDを含む。好ましい実施形態では、HPBCDの含有量は2~4重量%であり、より好ましくは、HPBCDの含有量は3重量%である。
【0096】
pH
本発明の水性医薬組成物のpHは3.5~5.5である。
【0097】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物のpHは4.0~5.0である。別の特定の実施形態では、水性医薬組成物のpHは4.3~4.9である。
【0098】
好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物のpHは、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、または5.5である。好ましくは、本発明の水性医薬組成物のpHは、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、または5.0である。より好ましくは、本発明の水性医薬組成物のpHは、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、または4.9である。
【0099】
本発明の水性医薬組成物は、鼻腔投与用に開発された。鼻腔、特にヒトの鼻腔の生理学的pHは、約5.5~6.5であり、鼻炎の際には約7.2~8.3に増加する。
【0100】
好ましい実施形態では、水性医薬組成物は、緩衝剤をさらに含む。本明細書中で使用される場合、用語「緩衝剤」とは、本明細書で提供される水性医薬組成物に適切なpH特性を付与する薬剤を指す。上記緩衝剤は、本発明の組成物のpHを、pH3.5~5.5に、より好ましくはpH4.0~5.0に、さらにより好ましくはpH4.3~4.9に、さらにより好ましくはpH4.6に調整するために使用される。
【0101】
本願に記載されるpH値は、室温で、pHメータを用いて、特にpHメータCrison Microph 2000から直接読み取ることにより測定したものである。本発明の文脈において、本発明の医薬組成物のpHは、組成物のpHを測定するのに適した任意の他のデバイスによって測定されてよい。
【0102】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、またはそれらの組み合わせから選択される緩衝剤を含む。好ましい実施形態では、緩衝剤は、クエン酸ナトリウム半水和物、無水クエン酸、およびそれらの混合物から選択される。より好ましくは、緩衝剤は、クエン酸一水和物およびクエン酸三ナトリウム二水和物から選択される。
【0103】
特定の実施形態では、水性医薬組成物は0.15~0.20重量%の緩衝剤を含む。好ましい実施形態では、水性医薬組成物は、0.17~0.19重量%の緩衝剤を含む。より好ましくは、本発明の水性医薬組成物は、2.0mg/mLのクエン酸一水和物を含む。
【0104】
本発明の水性医薬組成物のpH範囲は、水性医薬組成物の化学的、物理的、および/または生理学的安定性を維持し、かつ鼻腔が十分耐えられるものである。
【0105】
追加の賦形剤
本発明の水性医薬組成物は、追加の賦形剤をさらに含んでよい。特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、湿潤剤、界面活性剤、等張化剤、および/またはそれらの組み合わせを含む。
【0106】
好ましくは、水性医薬組成物は、0.005%~0.03重量%の界面活性剤、および1~3重量%の湿潤剤を含む。
【0107】
別の特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、無水グリセリン、グリセロールおよびプロピレングリコールから選択される湿潤剤をさらに含む。好ましくは、本発明の水性医薬組成物中の湿潤剤は、無水グリセリンである。
【0108】
別の特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、組成物の表面張力を低下させ、製造プロセスを容易にし得ると考えられている。好適な界面活性剤の例としては、ポリエトキシル化ソルビタン誘導体、例えば、ポリソルベート、ソルビタンエステルとエチレンオキシドとの反応によって生成されたそれらのエーテルエトキシレート、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレン植物油、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンエステルまたは脂肪酸と樹脂酸の混合物、ポリオキシエチレンソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、脂肪酸と樹脂酸の混合物のポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリエトキシル化ソルビタン誘導体または脂肪酸のエステル(例えばポリソルベート)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪アルコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレングリコールモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、オレイン酸ナトリウム、四級アンモニウム誘導体、オレイン酸カリウム、N-セチルN-エチルモルホリニウムエトサルフェート、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物から選択されてよいが、これらに限定されない。特に好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシル40硬化ヒマシ油(Cremophor RH40)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(-BO-10V、Cremophor A20、Cremophor A25)、ポロクサマー、リン脂質およびプロピレングリコールである。好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、0.005~0.03重量%の界面活性剤を含む。好ましくは、本発明の水性医薬組成物は、界面活性剤としてポリソルベート80を含む。ポリソルベート80は、組成物の表面張力を低下させ、製造プロセスを容易にし得る。好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物は、0.005~0.03重量%のポリソルベート80を含む。
【0109】
別の特定の実施形態では、水性医薬組成物は等張化剤を含む。特に、本発明の水性医薬組成物が鼻腔スプレー懸濁液として使用される場合、等張化剤は、水性医薬組成物のモル浸透圧濃度を生理学的値に可能な限り近く維持するのに役立ち得る。好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物中の等張化剤は、無水グリセリン、ソルビトール、マンニトールまたはプロピレングリコールである。より好ましい実施形態では、等張化剤は無水グリセリンである。より好ましくは、本発明の水性医薬組成物は、21mg/mL(2.1重量%)の無水グリセリンを含む。
【0110】
本発明の水性医薬組成物を調製するための方法
一態様では、本発明は、本発明の水性医薬組成物を調製するための方法に関する。
【0111】
本発明の方法は、
a)下記を含む水溶液
a1. 2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、
a2. 塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせ、
a3. ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物、
a4. pHが3.5~5.5の水溶液を得るための緩衝剤
を調製する工程、
b)懸濁剤の水性懸濁液を調製する工程、
c)工程a)の水溶液を工程b)の水性懸濁液に添加することによって混合物を調製する工程、および
d)上記工程の混合物を撹拌下で均質化する工程、場合により、pHを3.5~5.5にするさらなる緩衝剤を添加する工程
を含む。
【0112】
本発明の方法は、水性医薬組成物の調製につながるものである。したがって、医薬組成物について上記で開示されたすべての特定の実施形態および好ましい実施形態、特に成分の種類および使用量に関する実施形態は、本発明の方法にも適用される。
【0113】
本発明の方法の工程a)によれば、成分を添加する順序は重要ではない。
【0114】
本発明者らは、ビラスチンまたはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物の存在が水溶液のpHを上昇させ、それによりpHを3.5~5.5に維持するために緩衝剤が通常必要であることを見出した。
【0115】
好ましくは、緩衝剤をまず水に添加し、続いてシクロデキストリンを添加し、次にビラスチンを添加する。
【0116】
防腐剤は、第1試薬として、緩衝剤の添加前に添加してもよく、またはビラスチンを添加して初めて添加してもよい。このように、特定の実施形態では、防腐剤は、本発明の方法において添加される第1成分である。別の特定の実施形態では、防腐剤は、ビラスチンが溶解して初めて水溶液に添加される。
【0117】
また、場合により、これらの成分を攪拌条件下で水溶液に添加することができる。
【0118】
好ましい実施形態では、pHが3.5~5.5、好ましくは4~5、より好ましくは4.3~4.9、さらにより好ましくは4.4~4.6、さらにより好ましくは4.45になるように、方法の任意の時点で緩衝剤を水溶液に添加する。好ましくは、緩衝剤は、クエン酸一水和物またはクエン酸三ナトリウム二水和物から選択される。
【0119】
本願に記載されるpH値は、pHメータ、特にpHメータCrison Microph 2000から直接読み取ることにより測定したものである。緩衝剤は、好ましくは、撹拌条件下で水溶液に添加される。
【0120】
ある特定の実施形態では、緩衝剤を、工程a)および/または工程d)で水溶液に添加する。
【0121】
好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物中のビラスチン、HPBCDおよび防腐剤の量は、本発明の組成物について上述したとおりである。
【0122】
本発明の方法の工程b)によれば、懸濁剤の水性懸濁液が調製される。特定の実施形態では、懸濁剤は、医薬組成物について上述したとおりである。別の特定の実施形態では、懸濁剤は、医薬組成物について上述した量である。
【0123】
工程b)の水性懸濁液は、懸濁剤を撹拌条件下で脱イオン水に溶解することによって調製することができる。水性懸濁液は、撹拌することによってさらに均質化することができる。好ましくは、水性懸濁液を攪拌することによって均質化し、懸濁相を得る。均質性評価は、試料を観察して相分離または凝集物の有無を検出することによって行われる。
【0124】
特に、微結晶セルロース(MCC)および/またはカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)は、本発明の水性医薬組成物中で懸濁剤として作用するために活性化工程を必要とする。特定の実施形態では、微結晶セルロース(MCC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)およびそれらの混合物から選択される懸濁剤を水中に分散させ、高剪断力を加えることによって活性化する。高剪断力により粒子が解体され、ゲルネットワークを形成することが可能になる。
【0125】
好ましい実施形態では、まず、全体積に対して30%~40%の体積の水、好ましくは33%~37%、さらにより好ましくは34%~36%の体積の水、さらにより好ましくは35%の体積の水を含む懸濁剤の水溶液を調製することにより、懸濁剤を活性化する。懸濁剤は撹拌下で水に添加する。得られた水性懸濁液は、高剪断力を加えることにより均質化される。均質性評価は、試料を観察して相分離または凝集物の有無を検出することによって行われる。
【0126】
特定の実施形態では、本発明の方法において等張化剤がさらに添加される。
【0127】
より好ましくは、等張化剤は、本発明の方法の工程a)または工程b)のいずれかで添加される。特に、本発明の水性医薬組成物が鼻腔スプレー懸濁液として使用される場合、等張化剤は、水性医薬組成物のモル浸透圧濃度を生理学的値に可能な限り近く維持するのに役立つ。好ましくは、本発明の水性医薬組成物中の等張化剤は、無水グリセリンまたはグリセロールであり、より好ましくは無水グリセリンである。より好ましくは、本発明の水性医薬組成物は、21mg/mL(2.1重量%)の無水グリセリンを含む。
【0128】
さらに、場合により、湿潤剤を撹拌条件下で懸濁剤の水性懸濁液に添加することができる。ある特定の実施形態では、工程b)において、湿潤剤をさらに含む懸濁剤の水性懸濁液が調製される。別の好ましい実施形態では、工程b)において、湿潤剤および等張化剤をさらに含む懸濁剤の水性懸濁液が調製される。
【0129】
特定の実施形態では、本発明の水性医薬組成物を調製するための方法は、モメタゾンを添加する工程をさらに含む。
【0130】
好ましくは、その方法は、
b1)モメタゾン、または、エステル、エーテルおよびケトニド誘導体から選択されるモメタゾンの薬学的に許容される誘導体の精製水中分散液を、界面活性剤を用いて、調製する工程をさらに含み、
均質化工程d)の前に、工程b1)の分散液を工程c)の混合物に添加し、
工程a)の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンの含有量が8.5重量%未満である。
【0131】
本発明者らは、本発明の水性医薬組成物中のHPBCDの含有量が8.5重量%未満であると、ビラスチンの完全な溶解がもたらされ、同時に、最少量のモメタゾンが溶解されるため、ステロイドの望ましくない分解が薬学的に許容されるレベル未満に抑えられることを見出した。
【0132】
工程b1)によれば、分散液は、モメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体を界面活性剤とともに精製水中に分散させることによって形成される。界面活性剤は、分散液の表面張力を低下させ、均質性および安定性を高める。さらに、界面活性剤は、モメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体の水中での湿潤および分散を容易にし、それによって製造方法を容易にする。この工程に好適な界面活性剤としては、ポリソルベート80が挙げられる。好ましい実施形態では、分散液は、モメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体を0.005~0.03重量%のポリソルベート80とともに分散させることによって形成される。
【0133】
工程b1)で分散されるモメタゾンおよびモメタゾン誘導体は、遊離形態であっても、溶媒和物(例えば、水和物、アルコラートなど)であってもよく、いずれの形態も本発明の範囲内に含まれる。溶媒和方法は、当技術分野で一般に公知である。好ましくは、溶媒和物は水和物である。
【0134】
好ましい実施形態では、分散液は、フロ酸モメタゾンを界面活性剤とともに精製水中に分散させることによって形成される。より好ましくは、フロ酸モメタゾンは、無水形態または一水和物形態などの水和物形態である。
【0135】
特定の実施形態では、分散液中のモメタゾンまたは薬学的に許容される誘導体の量は、組成物の総重量を基準として0.02~0.06重量%、好ましくは0.05重量%である。
【0136】
本発明の方法の工程c)では、工程a)の水溶液を工程b)の水性懸濁液に添加し、場合により、工程b1)からのモメタゾンの分散液も添加する。得られた混合物を工程d)で攪拌することにより均質化する。
【0137】
場合により、ステロイドを含有する均質化された混合物に緩衝剤を添加して、pHが3.5~5.5の最終製剤を得ることができる。好ましい一実施形態では、最終製剤のpHは4.0~5.0、より好ましくは4.3~4.9である。より好ましい実施形態では、最終製剤のpHは約4.6である。好適な緩衝剤としては、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、またはそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、緩衝剤は、クエン酸ナトリウム半水和物、無水クエン酸およびそれらの混合物から選択される。
【0138】
用途
ビラスチンはヒスタミンH受容体の拮抗薬であることが見出されており、したがって、ヒスタミンH受容体の拮抗作用によって寛解させやすいことが知られている疾患の治療および/または予防に有用であろう。当業者であれば、どのような疾患がヒスタミンH受容体の拮抗作用によって寛解させやすいことが知られているかを容易に特定する。一例として、そのような疾患は、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、蕁麻疹、CNS疾患(Simons,F.Estelle R.,and Keith J.Simons.“Histamine and H1-antihistamines:celebrating a century of progress.”Journal of Allergy and Clinical Immunology 128.6(2011):1139~1150)または発赤、掻痒および腫脹、鼻漏、気管支収縮、アナフィラキシー、蕁麻疹、ならびに食物摂取および睡眠の調節、痙攣、および注意力(Kalpaklioglu,Fusun,and Ayse Baccioglu.“Efficacy and safety of H1-antihistamines:an update.”Anti-Inflammatory & Anti-Allergy Agents in Medicinal Chemistry(Formerly Current Medicinal Chemistry-Anti-Inflammatory and Anti-Allergy Agents)11.3(2012):230~237)である。
【0139】
さらに、本発明の水性医薬組成物中のモメタゾンまたはその薬学的に許容される誘導体は、気道の炎症を軽減または予防し、呼吸障害の緩和に寄与する。
【0140】
したがって、本発明の一態様は、医薬として使用するための、本発明の水性医薬組成物に関する。
【0141】
本発明の別の態様は、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および/または、コルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防に使用するための本発明の水性医薬組成物に関する。好ましい実施形態は、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および/または、コルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防に使用するための本発明の水性医薬組成物に関し、上記水性医薬組成物は鼻腔内に投与される。
【0142】
本発明はまた、本発明の水性医薬組成物を有効量投与することを含む、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および/または、コルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防のための方法にも関する。好ましい実施形態は、本発明の水性医薬組成物を有効量投与することを含む、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および/または、コルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防のための方法に関し、上記水性医薬組成物は鼻腔内に投与される。
【0143】
本発明はまた、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および/または、コルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防のための医薬の製造のための本発明の水性医薬組成物の使用にも関する。好ましい実施形態は、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の、および/または、コルチコステロイド応答性疾患の治療および/または予防のための医薬の製造のための本発明の水性医薬組成物の使用に関し、上記水性医薬組成物は鼻腔内に投与される。
【0144】
本発明は、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の治療および/または予防に使用するための水性医薬組成物を提供する。したがって、特定の実施形態では、本発明は、Hヒスタミン受容体の拮抗作用によって寛解させやすい障害または疾患の治療および/または予防に使用するための水性医薬組成物に関し、上記障害または疾患は、鼻炎、結膜炎および鼻結膜炎から選択される。好ましくは、水性医薬組成物は鼻腔内に投与される。
【0145】
本発明はまた、コルチコステロイド応答性疾患の治療に使用するための水性医薬組成物も提供する。特定の実施形態では、本発明は、喘息、アレルギー性鼻炎および非アレルギー性鼻炎、非悪性増殖性疾患および炎症性疾患から選択されるコルチコステロイド応答性疾患の治療に使用するための水性医薬組成物も提供する。好ましくは、水性医薬組成物は鼻腔内に投与される。
【0146】
本明細書の文脈における「治療」または「治療する」という用語は、疾患または該疾患に関連する1つ以上の症状を寛解させるまたは排除するために、本発明による水性医薬組成物を投与することを意味する。「治療」はまた、疾患の生理学的後遺症を寛解させるまたは排除することも包含する。
【0147】
本発明の文脈における「寛解させる」という用語は、治療される患者の状況に対する任意の改善を意味すると理解される。
【0148】
本明細書の文脈における「予防」または「予防する」という用語は、疾患または該疾患に関連する1つ以上の症状に罹患または発症するリスクを低減するために、本発明による化合物または製剤を投与することを意味する。
【0149】
医薬形態
本発明の水性医薬組成物の鼻腔への局所投与は、定用量スプレーポンプまたは単回および2回用量スプレーデバイスなどの鼻腔スプレーデバイスを利用して達成され得る。したがって、本発明の一態様は、本発明の水性医薬組成物を含む鼻腔スプレーデバイスを対象とする。好ましい実施形態では、本発明の水性医薬組成物を含む鼻腔スプレーは、定用量スプレーポンプである。
【0150】
溶液は、適切なデバイス(鼻腔スプレーボトルおよびアクチュエータなど)を各鼻孔に挿入することによって鼻腔内に投与され得る。次いで、活性薬物が鼻腔スプレーデバイスから排出される。
【実施例
【0151】
材料および方法
材料
以下の実施例で使用した化合物および微生物は、通常の供給業者で容易に入手することができる。今回の場合、一例として、ビラスチンはNeuland Laboratories Limitedによって供給され、フロ酸モメタゾン一水和物はSterlingによって供給され、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンはRoquetteによって供給され、ポリソルベート80はSeppicによって、MCCおよびNa-CMCはJRS Pharma(Vivapur(登録商標)MCG)またはFMC(Avicel RC591)によって、クエン酸一水和物はBrenntagによって、無水グリセリンはKLK Oleoによって、塩化ベンザルコニウムおよびクエン酸三ナトリウム二水和物はいずれもMerckによって供給された。防腐剤は、以下に示した供給業者から入手した:フェニルエチルアルコール(Sigma-Aldrich-Merck)、チメロサール(Sigma-Aldrich-Merck)、セトリミド(Guinama)、ベンジルアルコール(Merck)、EDTA(Brentag)、ソルビン酸カリウム(Celanese)、p-クロロクレゾール(Panreac)、クロルヘキシジン(Guinama)、メチルパラベンおよびプロピルパラベン(Clariant Produckte GmbH)。
【0152】
以下の実施例で使用した水は、Merck-MilliporeのElix(登録商標)浄水システムを使用して得られた精製水であった。
【0153】
微生物であるPseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)ATCC9027(細菌、グラム陰性)、Staphylococcus aureus(S.aureus)ATCC6538(細菌、グラム陽性)、Candida albicans(C.albicans)ATCC10231(酵母)、Aspergillus brasiliensis(A.brasiliensis)ATCC16404(カビ)、Escherichia coli(E.coli)ATCC8739(細菌、グラム陰性)およびBurkholderia cepacia(B.cepacia)ATCC17759(細菌、グラム陰性)は、CECT(Coleccion Espanola de Cultivos Tipo、バレンシア、スペイン)から購入した。
【0154】
本明細書で使用した微生物は、ブラジルの遺伝財産または関連する伝統的知識の試料へのアクセスの結果として得られたものではない。また、本発明で使用した生物材料はいずれも、インドから入手、調達または維持したものではない。
【0155】
HPLC測定は、Xbridge Shield RP18 3.5μm 4.6μm×250mmカラムを装備したPDAまたはUV-VIS検出器を備えたHPLC-HCLASSクロマトグラフシステムを使用して行った。移動相は炭酸水素アンモニウム(10mM pH9、FLUKA)、アセトニトリル(FISCHER)およびメタノール(SCHARLAU)であった。試料は、1.2μmのSupor膜(バッチ:18-1077(PALL))を備えたAcrodisc 32mm Sryingeフィルタにかけた。
【0156】
製剤の代表的な製造技術
本発明に属する代表的な水性医薬組成物は、以下に説明する2つの方法のうちの少なくとも1つに従って調製することができる。当業者は、異なる賦形剤または異なる量の成分を含む本発明の製剤を調製する場合、以下の方法を所望の最終組成物に適合させれば十分であることを容易に理解する。
【0157】
方法I-ビラスチン鼻腔用製剤(さらなるAPIなし)
段階I:ビラスチンの代表的な水溶液の調製
本実施例は、本発明の限定とみなされるべきではなく、とりわけ、試薬の添加順序は関係しない。
【0158】
0.215gの塩化ベンザルコニウム(防腐剤)を430mLの水に添加し、防腐剤が完全に溶解するまで混合物を攪拌した(340rpmのマグネチックスターラーで5分間)。続いて、5gのベンジルアルコールを添加し、第2の防腐剤が完全に溶解するまで混合物を撹拌した(340rpmのマグネチックスターラーで5分間)。
【0159】
次いで、無水グリセリン(21g)を水溶液に添加し、得られた混合物を5分間撹拌し続けた(340rpmのマグネチックスターラー)。次いで、2gのクエン酸一水和物を混合物に添加し、溶液を5分間撹拌し続けた(340rpmのマグネチックスターラー)。
【0160】
次いで、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(6.25g)を水溶液に添加し、混合物を撹拌して均質な溶液を得た(340rpmのマグネチックスターラーで58分間)。2gのビラスチンを添加し、溶液をさらに45分間撹拌し続けた(340rpmのマグネチックスターラー)。
【0161】
撹拌しながら、緩衝剤(クエン酸三ナトリウム無水物、1.94g)を添加して、ビラスチンの水溶液のpHを4.45にした。
【0162】
段階II:懸濁剤の水性懸濁液の調製
18gのAvicel RC591(微結晶セルロース(MCC)およびカルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC))を、攪拌下(1100rpmで35分間)で400mLの精製水に添加することにより、懸濁剤の水性懸濁液を調製した。次いで、得られた水性懸濁液を高剪断力により均質化する(22000rpmで5分間)。得られた水性懸濁液を約15分間静置する。
【0163】
段階III:溶液相と懸濁液相の組み合わせ
上記段階Iで得られたビラスチンの溶液相を懸濁液相に添加し、10分間撹拌しながら均質化した(900rpm)。撹拌状態をさらに10分間維持しながら(800rpm)、総容積が1Lとなるように精製水(120.2g)を添加した。
【0164】
組成物のpHをpHメータCrison Microph 2000を用いて室温で測定し、0.37gのクエン酸三ナトリウム無水物を添加してpHを4.6にした。
【0165】
ビラスチン鼻腔用製剤Iの均質性評価は、試料を観察して相分離または凝集物の有無を確認することによって行った。
【0166】
方法II-ビラスチン・モメタゾン鼻腔用製剤
段階I:ビラスチンの代表的な水溶液の調製
ビラスチン・モメタゾン水溶液は、下記の方法に従って調製することができる。
【0167】
クエン酸一水和物を精製水に添加してpHを4.45にし、この溶液を攪拌して均一かつ均質な溶液を得た。次いで、この水溶液に2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(25mg/mL)を添加し、この混合物を撹拌して均質な溶液を得た。
【0168】
次いで、(2-[4-(2-{4-[1-(2-エトキシエチル)-1H-ベンズイミダゾール-2-イル]-1-ピペリジニル}エチル)フェニル]-2-メチルプロパン酸)またはビラスチンを添加し、この溶液を撹拌して均質な溶液を得た。続いて、このビラスチンの水溶液に塩化ベンザルコニウム(防腐剤)を、撹拌状態を維持しながら添加した。さらに、このビラスチンの水溶液のpHが4.45になるように、攪拌状態を維持しながら緩衝剤(クエン酸三ナトリウム無水物)を添加した。
【0169】
段階II:モメタゾンの分散液の調製
ポリソルベート80を、撹拌下で精製水に添加した。次いで、フロ酸モメタゾン一水和物を、攪拌状態を約20分間維持しながらこのポリソルベート80の溶液に添加した。
【0170】
段階III:懸濁剤の水性懸濁液の調製
懸濁剤の水性懸濁液は、Vivapur MCG811Pを精製水に撹拌下で添加することにより調製する。次いで、得られた水性懸濁液を高剪断力により均質化する。得られた水性懸濁液を約15分間静置する。
【0171】
この水性懸濁液に無水グリセリンを撹拌しながら添加する。
【0172】
段階IV:代表的な最終製剤IIを得るための溶液相と懸濁液相の組み合わせ
ビラスチンの溶液相を懸濁液相に添加し、撹拌により均質化した。次いで、フロ酸モメタゾンの分散液を、撹拌状態をさらに約10分間維持しながら添加した。撹拌状態を維持しながら、精製水を総重量まで添加した。
【0173】
組成物のpHは、pHメータCrison Microph 2000を用いて室温で測定し、場合によりクエン酸三ナトリウム無水物を添加して、pHを4.6にした。
【0174】
ビラスチン・モメタゾン鼻腔用製剤IIの均質性評価は、試料を観察して相分離または凝集物の有無を確認することによって行った。
【0175】
実施例1-本発明のビラスチン鼻腔用製剤
本実施例に示されている製剤は、上述の方法Iに従って調製したが、ここでは、さらなる防腐剤を塩化ベンザルコニウム(BAK)と同時に添加した。この製剤は、以下の成分を含んでいた:
【0176】
【表2】
【0177】
さらに、各製剤は、下の表に示すように、さらなる防腐剤の種類および/または量が異なっていた。
【0178】
【表3】
【0179】
実施例2-汚染された試料を調製するためのプロトコル
製剤の防腐効果を評価するために、Ph.Eur.第9版の基準に準拠したが、その内容は、10~10CFU/mL(1mLあたりのコロニー形成単位)の微生物濃度で下表の6種の微生物のうちの少なくとも4種を用いた、製剤の人工的汚染である。
【0180】
【表4】
【0181】
低温Microbank(商標)バイアルから採取した微生物を、C.albicansを除いてトリプシン(トリプチケース)ソイ寒天(TSA)チューブに接種し、C.albicansはサブローデキストロース寒天(SDA)チューブに接種した。接種チューブを、C.albicansを除いて30~35℃で24時間インキュベートし、C.albicansは20~25℃で48時間接種した。
【0182】
培養後、培養物を9g/mLのNaClで希釈して、10CFU/mLの濃度を得た。
【0183】
次いで、各製剤を汚染した。概して、各製剤の17mLを170μL以下の接種材料で汚染したので、添加容量は1%以下であった。得られた混合物を穏やかに均質化した。汚染された製剤は、実験期間中、20~25℃の温度で暗所に維持した。
【0184】
本発明の医薬組成物の成分を含まない接種試料と同様に、汚染のない製剤も評価した。
【0185】
その後、2日目、7日目、14日目および28日目に製剤をサンプリングした。
【0186】
実施例3-実施例1の製剤の抗菌効果
以下の表は、実施例2に記載されたプロトコルに従って、実施例1の製剤の汚染された試料を調製してから0日後、2日後、7日後、14日後および28日後にCFUの数をカウントして得られた結果を要約したものである。
【0187】
【表5】
【0188】
【表6】
【0189】
【表7】
【0190】
【表8】
【0191】
【表9】
【0192】
【表10】
【0193】
【表11】
【0194】
【表12】
【0195】
【表13】
【0196】
【表14】
【0197】
【表15】
【0198】
【表16】
【0199】
【表17】
【0200】
結果から、BAKと、クロルヘキシジン、クロロクレゾール、メチルパラベン+プロピルパラベン、またはEDTAとの組み合わせでは、製剤の抗菌活性が十分ではないことを示している(表9~14)。さらに、防腐剤がBAKとEDTA(0.5%)およびソルビン酸カリウム(0.008%)との組み合わせである場合の試験(図示せず)でも、否定的な結果となった。
【0201】
逆に、BAKと、セトリミド、フェニルエタノール、チメロサール、またはベンジルアルコールのいずれかとの組み合わせは、鼻腔用製剤の抗菌活性に関するPh.Eur.の判定基準に適合している(第2表~8表)。
【0202】
実施例4-ビラスチンまたはモメタゾンを含む製剤中のBAKの抗菌効果
本実施例では、ビラスチンまたはモメタゾンを含む製剤中にBAKを単独で使用した場合の抗菌効果を示す。
【0203】
ビラスチンを含む製剤は、上述の方法Iに従って調製され、一方、モメタゾン(フロ酸モメタゾン一水和物)を含む製剤は、上述の方法IIの適合形態(ビラスチンまたはシクロデキストリンに関連する工程を省略することによる)に従って調製された。
【0204】
本実施例では、モメタゾンのみを含む製剤は、0.517mg/mLのフロ酸モメタゾン一水和物、2mg/mLのクエン酸一水和物、21mg/mLのグリセリンおよび0.1mg/mLのポリソルベート80(tween80)を含み、pHが4.6(クエン酸三ナトリウム二水和物)である。下の表は、モメタゾンのみを含む本実施例の製剤の組成物中のさらなる賦形剤を示す:
【0205】
【表18】
【0206】
本実施例では、ビラスチンのみを含む製剤は、8mg/mLのビラスチン、3mg/mLのクエン酸一水和物、21mg/mLのグリセリンを含み、pHが4.6(クエン酸三ナトリウム二水和物)である。下の表は、ビラスチンのみを含む本実施例の製剤の組成物中のさらなる賦形剤を示す:
【0207】
【表19】
【0208】
これらの製剤を上記実施例2に記載の検証試験に供した結果、モメタゾンのみを含む製剤は十分な抗菌活性を有していたが(Ph.Eur.の判定基準Aに適合)、ビラスチンのみを含む製剤は十分な抗菌活性を有さなかったことを示した。
【0209】
実施例5-漸増量のビラスチンと、BAKとベンジルアルコールの組み合わせとを含む製剤における抗菌効果
本実施例は、ビラスチンを含む製剤中にベンジルアルコールと組み合わせて使用した場合のBAKの抗菌効果を示す。
【0210】
検証した製剤は、下の表に示す成分を除いて、実施例1に上記したとおりであった。検証試験は、実施例2に記載したとおりであった。
【0211】
【表20】
【0212】
ビラスチン濃度を上げても、組み合わせた防腐剤の抗菌効果には影響がなく、本実施例で示した製剤は、Ph.Eur.で要求される少なくとも28日間、試験した6種の微生物:P.aeruginosa、S.aureus、C.albicans、A.brasiliens、E.coli、B.cepaciaについて、判定基準A(Ph.Eur.)に適合している。
【0213】
本実施例は、BAKとベンジルアルコールとの組み合わせが、ビラスチンを含む医薬組成物において抗菌活性を示す適切な組み合わせであることを証明している。
【0214】
実施例6-HPBCDを可溶化剤として使用した場合の均質性の目視(de visu)評価
本実施例の製剤は、上記「方法II-ビラスチン・モメタゾン鼻腔用製剤」の項で説明したように調製した。下の表は、本発明の本実施例の最終製剤中の成分の含有量を示す:
【0215】
【表21】
【0216】
上記組成物と同じ組成を有するが、ビラスチン含有量が2mg/mLおよび8mg/mLに変更された、本発明の2種のさらなる水性医薬組成物を調製した。
【0217】
pH測定:4.6
【0218】
均質性の目視評価:製剤は均質であった。
【0219】
実施例7-比較。ビラスチンおよびモメタゾンの代替可溶化剤を使用した場合の均質性の目視評価
シクロデキストリンをビラスチンおよびモメタゾンの代替可溶化剤に置き換えた5種の製剤を調製し、それらの均質性の目視評価を行った。本実施例の製剤は、上記(方法II-ビラスチン・モメタゾン鼻腔用製剤)で説明したのと同様の方法で調製したが、今回はシクロデキストリンを、それぞれLabrasol(登録商標)(8g)、Brij(登録商標)35(8g)(Fagron)、Myrj(登録商標)40(8g)(Fagron)、Tween(登録商標)80(8g)(Basf)、またはPoloxamer188(10g)(Basf)に、それらの界面活性剤特性のために置き換えた。本実施例の製剤では、Spam80は消泡剤として作用する。
【0220】
7.1 Labrasol(登録商標)を使用した場合の均質性の目視評価
下の表は、ビラスチンおよびモメタゾンの可溶化剤としてLabrasol(登録商標)を使用した本実施例の最終製剤中の成分の正確な含有量を示す:
【0221】
【表22】
【0222】
均質性の目視評価:相分離があったため、製剤は均質ではなかった。
【0223】
7.2 Myrj(登録商標)40を使用した場合の均質性の目視評価
下の表は、ビラスチンおよびモメタゾンの可溶化剤としてMyrj(登録商標)40を使用した本実施例の最終製剤中の成分の正確な含有量を示す:
【0224】
【表23】
【0225】
均質性の目視評価:凝固塊が容器の底に形成されていたため、製剤は均質ではなかった。
【0226】
7.3 Brij(登録商標)35を使用した場合の均質性の目視評価
下の表は、ビラスチンおよびモメタゾンの可溶化剤としてBrij(登録商標)35を使用した本実施例の最終製剤中の成分の正確な含有量を示す:
【0227】
【表24】
【0228】
均質性の目視評価:かなりの量の泡があったため、製剤は均質ではなかった。
【0229】
7.4 Tween80を使用した場合の均質性の目視評価
下の表は、ビラスチンおよびモメタゾンの可溶化剤としてTween80を使用した本実施例の最終製剤中の成分の正確な含有量を示す:
【0230】
【表25】
【0231】
均質性の目視評価:相分離があったため、製剤は均質ではなかった。
【0232】
7.5 Poloxamer188を使用した場合の均質性の目視評価
下の表は、ビラスチンおよびモメタゾンの可溶化剤としてPoloxamer188を使用した本実施例の最終製剤中の成分の正確な含有量を示す:
【0233】
【表26】
【0234】
均質性の目視評価:相分離があったため、製剤は均質ではなかった。
【0235】
実施例8.HPBCDを12.5~100mg/mLの量で使用したビラスチン・フロ酸モメタゾン一水和物製剤のpH値4.3、4.6および4.9での溶解度
6種の異なる製剤(フロ酸モメタゾン一水和物および実施例7で定義した残りの賦形剤を含む)を調製した(下表参照)。これらの6種の製剤のHPBCDの量は12.5~100mg/mLであった。次に、これらの製剤のそれぞれに過剰量のビラスチンを添加し、最大溶解度を試験した。さらに、溶解したフロ酸モメタゾンのパーセンテージも試験した。すべての測定は時間0で行った。
【0236】
【表27-1】
【0237】
【表27-2】
【0238】
結果を図1Aおよび1Bに示す。結果は、時間0で少なくとも25mg/mLのHPBCDを使用すると、試験したpH範囲4.3~4.9でビラスチン用量にとって望ましい溶解度である8mg/mLに到達することを示す。結果はさらに、試験したpH範囲4.3~4.9でHPBCDの含有量を増加させると、可溶化ステロイドの含有量も増加することを示す(上の表および図1Bを参照)。
【0239】
実施例9-比較。Kolliphor RH40を0~50mg/mLの量で使用したビラスチン・フロ酸モメタゾン一水和物製剤のpH値3.7、4.0、4.3および4.6での溶解度
硬化ヒマシ油とエチレンオキシドから誘導された非イオン性水中油型可溶化乳化剤であるKolliphor RH40(マクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート)を、ビラスチンおよびモメタゾンの可溶化剤として評価した。
【0240】
この目的のために、濃度0、5、15、25および50mg/mL、ならびにpH値3.7、4.0、4.3および4.6のKolliphor RH40の水性製剤を調製した。
【0241】
ビラスチンの最大濃度を決定するために、可溶化剤製剤のそれぞれにビラスチンを飽和が観察されるまで添加した。
【0242】
さらに、0.5mg/mLのフロ酸モメタゾン一水和物を各製剤に添加した。ビラスチン溶解度におけるKolliphor RH40の影響を図3Aおよび3Bに示す。4.3を超えるpH値では、50mg/mLの濃度のKolliphor RH40では8mg/mLのビラスチンを可溶化するには不十分であることが示されている(図3A)。さらに、Kolliphor RH40は、50mg/mLの濃度かつpH4.3で、添加したフロ酸モメタゾン一水和物の10%超を可溶化する(図3B)。
【0243】
結果は、Kolliphor RH40が、所望の量のビラスチンを適切に可溶化せず、同時にかなりの量のフロ酸モメタゾン一水和物を可溶化するため、本発明の文脈では不適切な可溶化剤であることを示す。
【0244】
実施例10-比較、Kolliphor RH40を使用した場合の安定性
シクロデキストリンを可溶化剤としてKolliphor RH40に置き換えた比較製剤を調製した。
【0245】
本実施例の製剤は、上記で説明したのと同様の方法で調製したが、今回はシクロデキストリンをマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレート(Kolliphor RH40)に置き換え、成分の量をわずかに調整した。下の表は、本実施例の最終製剤中の成分の正確な含有量を示す:
【0246】
【表28】
【0247】
本実施例の製剤では、ソルビタンモノオレエートは消泡剤として作用する。
【0248】
上の表に従って製造されたバッチを準備し、パッケージングして、25℃/40%RHおよび40℃/25%RHの条件の安定性チャンバーに3ヶ月間入れた。
【0249】
【表29】
【0250】
結果は、モメタゾン全分解生成物のレベルが薬学的に許容されるレベルを超えていることを示す。さらに、モメタゾン全分解生成物の含有量は、25℃/40%RHおよび40℃/25%RHのいずれの安定性条件でも、時間0から3ヶ月目までで値が2倍になっているため、経時的に増加している。Kolliphor RH40を可溶化剤として用いた製剤の安定性は、不十分であると考えられる。したがって、Kolliphor RH40は、ビラスチンを十分に可溶化しないだけでなく(上記実施例参照)、薬学的に許容されるレベルを超えてモメタゾンの分解を引き起こすという望ましくない副作用があるため、ビラスチンの可溶化には適切ではないと結論付けられる。
【0251】
実施例11-シクロデキストリンを使用した場合の安定性
2、4および8mg/mLの3種の異なるビラスチン製剤を、上記で説明したのと同様の方法で調製し、安定性チャンバーに入れた。下の表は、本実施例の3種の製剤中の成分の正確な含有量を示す:
【0252】
【表30】
【0253】
3種の製剤(2、4および8mg/mLの濃度のビラスチン)を、6ヶ月間または12ヶ月間、25℃/40%RHおよび40℃/25%RHの条件の安定性チャンバーに入れた。
【0254】
【表31】
【0255】
【表32】
【0256】
【表33】
【0257】
上の表に示すように、40℃/25%RHで6ヶ月後にモメタゾン全分解生成物のレベルがわずかに上昇していることが分かる。この増加は、本実施例の3種の製剤でほぼ同じである。この増加は、25℃/40%RHで12ヶ月後には認められない。したがって、これら3種の製剤の安定性は十分であり、薬学的に許容されるとみなされる。
【0258】
これらの結果を比較実施例9で得られた結果と比較すると、Kolliphor RH40とは対照的に、シクロデキストリンHPBCDは、8mg/mLのビラスチンを可溶化するのに十分であり、薬学的に許容されるレベルを超えるモメタゾンの分解という望ましくない副作用がないことが分かる。
【0259】
実施例12-モメタゾン不純物
本実施例は、可溶化剤としてのHPBCDの存在によって生じるモメタゾン不純物があるという驚くべき発見に基づいて本発明者らが作成したデータを示す。
【0260】
モメタゾンのパーセンテージを以下の式を用いて計算した:
【数1】
式中:
Am:試料溶液中のモメタゾンピーク面積
Astd:STD1溶液A中のモメタゾンのピーク面積(n=5)の平均
Pstd:標準溶液中のモメタゾンの重量(mg)
Pm:試料重量(g)
Dstd:標準溶液中のモメタゾンの希釈(mL)
Dm:試料溶液の希釈(mL)
F:モメタゾンの作用標準または参照標準の効力(1あたりの量)
T:懸濁液中のモメタゾンの理論量(mg/mL)(0.517mg/mL)
d:試料密度(g/mL)
【0261】
モメタゾン分解生成物のパーセンテージを以下の式を用いて計算した:
【数2】
式中:
Am:試料溶液中のモメタゾンピーク面積
Astd:STD1溶液B中のモメタゾンのピーク面積(n=5)の平均
Pstd:標準溶液中のモメタゾンの重量(mg)
Pm:試料重量(g)
Dstd:標準溶液中のモメタゾンの希釈(mL)
Dm:試料溶液の希釈(mL)
F:モメタゾンの作用標準または参照標準の効力(1あたりの量)
T:懸濁液中のモメタゾンの理論量(mg/mL)(0.517mg/mL)
d:試料密度(g/mL)
RRF:モメタゾン分解生成物の相対感度係数(1とみなされる)
【0262】
シクロデキストリンHPBCDがモメタゾンの不純物に及ぼした影響を評価するために、実施例6に記載されている製剤(表を参照)と同様の製剤を、シクロデキストリン濃度を25mg/mLから95mg/mLまで漸増させてpH4.6で調べた。製剤を50℃で3ヶ月間、強制安定性条件に付した。結果はHPLC測定から得た。
【0263】
【表34】
【0264】
図4Aに示すように、可溶化モメタゾンに対するモメタゾン不純物のプロットから、これら2つのパラメータ間には直接的な線形関係があることが明らかである。
【0265】
シクロデキストリン濃度に対するモメタゾン不純物のプロットを図4Bに示す。シクロデキストリン25~85mg/mLの区間では、HPBCD濃度の増加に伴って、モメタゾン不純物のパーセンテージの安定した増加が観察される。シクロデキストリン濃度が95mg/mLまで増加すると、この傾向はもはや線形ではなく、モメタゾン不純物の顕著な増加が観察される。
【0266】
実施例13-本発明のさらなるビラスチン鼻腔用製剤
本実施例に示される製剤は、実施例1で説明した内容に従って調製した。本実施例では、BAKを第2の防腐剤と組み合わせて含むさらなる製剤が開示されている。
【0267】
本実施例の製剤は、以下の成分を含んでいた:
【0268】
【表35】
【0269】
さらに、各製剤は、下の表に示すように、さらなる防腐剤の種類および/または量が異なっていた。
【0270】
【表36】
【0271】
実施例14-さらなる製剤の抗菌効果
以下の表は、実施例2に記載されたプロトコルに従って、実施例13の製剤の汚染させた試料を調製してから0日後、2日後、7日後、14日後および28日後にCFUの数をカウントして得られた結果を要約したものである。
【0272】
【表37】
【0273】
製剤13.2、製剤13.3および製剤13.4に検証試験を実施したところ、これら3種の製剤はすべて判定基準Aに適合している。
【0274】
これらの結果は、BAKと、安息香酸ナトリウム、クロルブタノールまたはフェノキシエタノールのいずれかとの組み合わせにより、製剤の十分な抗菌活性が可能になり、鼻腔用製剤の抗菌活性に関するPh.Eur.の判定基準Aに適合することを示している。
【0275】
結論として、本実施例の結果は、実施例3の結果とともに、塩化ベンザルコニウムと、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、クロルブタノール、フェノキシエタノール、セトリミドおよび2-(エチルメルクリオメルカプト)安息香酸ナトリウム塩を含む群から選択される少なくとも1種のさらなる防腐剤との組み合わせにより、製剤の十分な抗菌活性が可能になり、鼻腔用製剤の抗菌活性に関するPh.Eur.の判定基準Aに適合することを示している。
図1
図2
図3
図4A
図4B
【国際調査報告】