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特表2022-529054持続性が強化された新規微生物を含む組成物、新規微生物とプレバイオティクスの相乗的組み合わせ、およびそのような微生物の分離方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】持続性が強化された新規微生物を含む組成物、新規微生物とプレバイオティクスの相乗的組み合わせ、およびそのような微生物の分離方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220609BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20220609BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20220609BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20220609BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220609BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220609BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20220609BHJP
   C12N 9/24 20060101ALN20220609BHJP
   A23L 31/00 20160101ALN20220609BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A61K35/745
A61K35/74 A
A61K35/74 D
A61K9/08
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/12
A61P1/00
C12N15/31
C12N9/24
A23L31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561876
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 US2020028848
(87)【国際公開番号】W WO2020215009
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/835,279
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/881,911
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/000,915
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512259123
【氏名又は名称】ニューテック・ベンチャーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハツキンス、ロバート
(72)【発明者】
【氏名】コック、カー リーン
(72)【発明者】
【氏名】マルドナド-ゴメス、マリア
【テーマコード(参考)】
4B018
4B050
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD86
4B018ME01
4B018ME11
4B050CC08
4B050KK07
4B050LL01
4B050LL02
4B065AA21X
4B065AC14
4B065BD16
4B065CA41
4B065CA44
4C076AA12
4C076AA16
4C076AA17
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA54
4C076AA56
4C076BB01
4C076CC16
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC59
4C087CA09
4C087CA11
4C087MA17
4C087MA21
4C087MA22
4C087MA23
4C087MA34
4C087MA35
4C087MA36
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA44
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA66
(57)【要約】
新規プロバイオティクスであるビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム、XOS、およびキシロオリゴ糖を添加したビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムを含む特に効果的なプレバイオティクスおよびプロバイオティクスの組み合わせが、相乗効果のあるプロバイオティクスおよびプレバイオティクスの組み合わせを特定する方法と共に提供される。さらに、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスを組み合わせたキットも提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、およびそれらの任意の組み合わせまたは抽出物を含む群から選択されるプロバイオティクス種と、所定の量のキシロオリゴ糖と、を含むプレバイオティクスを含むシンバイオティクス組成物。
【請求項2】
前記プロバイオティクス種がビフィドバクテリウム・ロンガムである、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項3】
前記プロバイオティクス種がビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガムである、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項4】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガムが、配列番号5と少なくとも90%の配列相同性を有するヌクレオチド配列を有する、請求項3に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項5】
少なくとも1種類の酵素をさらに含む、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項6】
前記酵素がグリコシルヒドロラーゼファミリーのメンバーである、請求項5に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項7】
グリコシルヒドロラーゼファミリーからの少なくとも2種類の異なる酵素をさらに含む、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項8】
前記プロバイオティクス種および前記プレバイオティクスの重量比が100:1~1:100の範囲である、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項9】
液体、固体、錠剤、ピル、カプセル、液体媒体中の固体、粉末、トローチ、ストロー、サシェ、カシェ剤、溶液、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、無菌包装された粉末を含む群から選択された形態を有するか、または、食品と組み合わせた形態もしくは食品へ導入された形態を有する、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項10】
前記プロバイオティクス種の量が約10~約1012CFUの範囲で含まれる、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項11】
前記プレバイオティクスが、可溶性デンプン、酵母エキス、オリゴ糖、多糖類、およびフルクトース、キシロース、ソイ、ガラクトース、グルコースおよび/またはマンノースを含む他の前記プレバイオティクスを含む群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項12】
前記プレバイオティクスが、ポリデキストロース、ポリデキストロース粉末、ラクツロース、ラクトスクロース、ラフィノース、グルコオリゴ糖、イヌリン、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、前記キシロオリゴ糖、キトオリゴ糖、マンノオリゴ糖、アリビノオリゴ糖、シアリルオリゴ糖、フコオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖を含む群から選択される少なくとも1つの成分をさらに含む、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項13】
前記プロバイオティクス種および前記プレバイオティクスが互いに接触している、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項14】
1種類以上の追加の活性成分、賦形剤、溶解剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、保存剤、浸透剤、浸透圧保護剤、凍結保護剤、およびこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項15】
1種類以上の前記賦形剤が、微結晶性セルロース、マルトデキストリン、コロイド状二酸化ケイ素、ラクトース、デンプン、ソルビトール、シクロデキストリン、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項14に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項16】
1種類以上の前記溶解剤が、有機酸または前記有機酸の塩を含む群から選択される、請求項14に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項17】
1種類以上の前記有機酸が、クエン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項16に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項18】
1種類以上の前記界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレンセパレート、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドキュセートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項14に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項19】
1種類以上の前記酸化防止剤が、メタ重亜硫酸ナトリウム、α、β、およびδ-トコフェロールエステルおよびα-トコフェロールアセテートなどのトコフェロール、アスコルビン酸およびそれらの薬学的に許容される塩、パルミチン酸アスコルビル、アルキルガレート、亜硫酸塩およびそれらの薬学的に許容される塩、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項14に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項20】
1種類以上の前記防腐剤が、グルコン酸クロルヘキシジン、グルコノデルタラクトン、メチルパラベン、水酸化ナトリウム、およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項14に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項21】
1種類以上の前記保存剤が、パラベンおよびそのナトリウム塩を含む群から選択される、請求項14に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項22】
1種類以上の前記浸透剤が、スルホキシド、アゾン(1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンまたはラウロカプラム)、ピロリドン、脂肪酸、精油、テルペン、テルペノイド、オキサゾリジノン、尿素、およびこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項14に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項23】
前記プロバイオティクス種が凍結乾燥されている、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項24】
前記ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの前記プロバイオティクス種が、配列番号6または配列番号73~99のいずれか1つと少なくとも90%の配列相同性を有するヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項25】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガムの前記プロバイオティクス種が、配列番号13と少なくとも95%の配列相同性を有する16S配列を有する、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項26】
前記ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの前記プロバイオティクス種が、配列番号14と少なくとも95%の配列相同性を有する16S配列を有する、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項27】
前記ビフィドバクテリウム・ロンガムまたは前記ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの前記プロバイオティクス種が、配列番号5もしくは配列番号6、または配列番号15~99のいずれか1つの配列を含む群から選択される連続したヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列相同性を有する少なくとも50個の連続した前記ヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を有する、請求項1に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項28】
配列番号5または配列番号6の連続した前記ヌクレオチド配列が、配列番号15~99、およびそれらの任意の組み合わせのいずれか1つを含む群から選択される、請求項27に記載のシンバイオティクス組成物。
【請求項29】
腸および/または全身の健康を改善する方法であって、治療上有効な量の請求項1に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む方法。
【請求項30】
前記腸および/または全身の健康を改善する方法が、消化管の特性またはパラメータを評価するステップによって判定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記腸および/または全身の健康を改善する方法は、便通および規則性の改善、満腹感の改善、腸のバリア機能の改善、膨満感およびガスの減少、消化管の感染症のリスクの減少、疝痛症状の持続時間の減少、および/またはアトピー性皮膚炎のリスクの減少の少なくとも1つを通じて判定される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記プレバイオティクスおよび前記プロバイオティクス種が互いに6時間以内に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記投与するステップが繰り返される、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記それを必要とする対象が、哺乳動物および家禽を含む群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
腸および/または全身の健康が、請求項1の組成物の投与を受けていない対象または前記対象の群と比較して、または請求項1に記載の前記組成物の投与前および投与後の同一の前記対象と比較して、少なくとも10%改善される、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、液体、固体、錠剤、ピル、カプセル、液体媒体中の固体、粉末、トローチ、ストロー、サシェ、カシェ剤、溶液、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、無菌包装された粉末を含む群から選択された形態で投与される、または食品と組み合わされるか、もしくは食品に導入される、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
対象の消化管の微生物叢を調節する方法であって、
治療上有効な量の請求項1に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項38】
消化管の微生物叢の調節が、請求項1の組成物の投与前および投与後の前記対象における前記微生物叢の集団を比較することによって判定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記プレバイオティクスおよび前記プロバイオティクス種が互いに6時間以内に投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記投与が繰り返される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記それを必要とする対象が、哺乳動物および家禽を含む群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が、液体、固体、錠剤、ピル、カプセル、液体媒体中の固体、粉末、トローチ、ストロー、サシェ、カシェ剤、溶液、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、滅菌包装された粉末を含む群から選択された形態で投与されるか、または食品と組み合わされるか、もしくは食品に導入される、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
酪酸レベルを増加させる方法であって、
請求項1に記載の組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現在、消化管微生物叢(gastrointestinal microbiome)の組成および機能が、ホストの健康維持にとって大きな役割を果たしていることがよく知られている。人間の消化管微生物叢が食事によってどのような影響を受けるかは、食品、栄養、および生物医学の研究において最も重要な分野の1つである。特に、微生物叢の乱れ(disrupted)やバランス失調(dysbiotic)は、消化管の広い範囲または全身の疾患の原因となることが示唆されている。現在、研究者らは、これらのアンバランスの改善もしくは適正化のための治療法または食事療法の開発に特に関心を寄せている。
【0002】
多くの生物医学的な報告や臨床試験の結果では、ある治療法について、一部の個人には効果的であるが、その他の者には効果的でないことがあるという所見が頻繁に述べられている。このレスポンダー/ノンレスポンダー現象は、プロバイオティクス、プレバイオティクス、およびその他の腸内環境を整えるための治療を用いた試験でもよく見られる。例えば、プレバイオティクスを摂取すると、ビフィドジェニック反応が起こることが多くの臨床試験で示されているが、期待されているこのような反応が起こらない試験参加者も多く見られる。常在する微生物叢に基づいて、レスポンダーおよびノンレスポンダーを特定または予測することは、依然として重要な課題である。
【0003】
ノンレスポンダーの表現型については、いくつかの説明が考えられる。例えば、ノンレスポンダーは、プレバイオティクスについて、ある基質を利用するための生理学的または生化学的な機能を備えた菌株を欠いている可能性がある。あるいは、そのような菌株を有していても、他の微生物叢が、それらの基質を利用するための菌株を容易に打ち負かしてしまう可能性もある。同様に、プロバイオティクスもホスト特有の性質に影響を受けることがある。また、結腸に到達するまでに、摂取した菌株が胃や小腸での消化に耐えられない可能性もある。結腸では、菌株が他の腸内の共生生物によって抑制または打ち負かされる可能性もある。
【0004】
腸内での有用な微生物を集積するための1つのアプローチは、シンバイオティクスの形で特定の菌株を導入することである。理想的には、これらのシンバイオティクスは、プレバイオティクスがプロバイオティクスによって特異的かつ優先的に発酵されるように、プレバイオティクス-プロバイオティクスの組み合わせで構成される。このアプローチの合理性は、古典的な生態理論に基づいている。具体的には、ティルマン(Tilman)の資源比率競争モデルでは、ある分類群の優位性は、ある資源の利用可能性と需要、および栄養分の摂取率に依存すると述べられている。したがって、プレバイオティクスがコンパニオンプロバイオティクスを特異的に刺激して増殖を促すようなシンバイオティクスが処方されていれば、プロバイオティクスが腸内で樹立(establish)する機会が増えることになる。確かに、以前の研究では、シンバイオティクスとして投与された場合のプロバイオティクスの持続可能性について述べられてきた。
【0005】
適切に設計されたシンバイオティクスは、ノンレスポンダーをレスポンダーに変えることにより、レスポンダー比率を高める可能性もある。このような、いわゆる相乗的シンバイオティクスは10年以上も前に構想されていたが、相乗的シンバイオティクスの成功した処方はほとんど報告されていない。これは、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスを組み合わせることにより相乗効果を発揮させる戦略的な方法が無いことが主な原因であると考えられる。
【0006】
最近、我々はインビボ選択(in vivo selection)またはIVSと呼ばれるそのようなアプローチの1つについて述べてきた。端的に説明すると、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)の自己由来株(すなわち、消化管の常在菌)を、プレバイオティクスであるガラクトオリゴ糖(GOS)によってインビボで集積し、その後、培養法により回収した。集積株(B.adolescentis IVS-1)をシンバイオティクスとしてGOSと再結合させ、げっ歯類に投与したところ、IVS-1株の存在率は37%に増加した。IVS-1株の存在量の増加は、他の常在ビフィズス菌(Bifidobacteria)を含む競合菌よりも急速にGOSを消費するこの菌株の能力によるものと考えられている。対象であるヒトのプレバイオティクスと結合させてもIVS-1株の存在量は増加しなかったが、この菌株の存在量は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)のアロクトン株(すなわち、消化管の非常在菌)と比較して、依然として高いレベルに達している(Krumbeckら、2018)。
【0007】
IVS法には、有用な特性を有すると予測される自己由来の相乗効果のある菌株を分離する潜在的な可能性があるが、この方法では、少なくともヒトを対象とした研究を実施する必要がある。一方、IVS法を模倣した再現性のあるインビトロ(in vitro)戦略を考案することができれば、より早く、より費用対効果の高い方法で同様の菌株を得ることが可能になるだろう。
【0008】
本開示では、相乗効果を発揮する可能性を有すると予測されるプロバイオティクス株を選択するための代替戦略として、インビトロエンリッチメント(IVE)の概念を提案する。ビフィドバクテリウム(ビフィドバクテリウム属)の自己由来株を、ターゲット・アプローチを用いた段階的なバッチ式糞便発酵モデルによって集積した。IVEによって得られるこのような菌株は、同種のプレバイオティクスと組み合わせたときに、腸内環境で競争力を発揮することが期待される。この研究では、プレバイオティクスのキシロオリゴ糖(XOS)を使用し、複数のドナーからインビトロの糞便環境にXOSを再導入したときに相乗効果を示すビフィドバクテリウム株を得ることに成功した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様では、プロバイオティクス種およびプレバイオティクス(「相補的シンバイオティクス」または「シンバイオティクス」)の相乗的な組み合わせが提供される。形態によっては、プロバイオティクス種は、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(B.pseudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(B.longum)、およびそれらの任意の組み合わせまたは抽出物を含む群から選択される。形態によっては、プレバイオティクスはキシロオリゴ糖(XOS)である。形態によっては、プレバイオティクスは、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15(B.longum subsp longum CR15)またはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム CR16(B.pseudocatenulatum CR16)であり、好ましくはビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15である。形態によっては、プレバイオティクスには、プレバイオティクスの利用をアシストする酵素が含まれている。形態によっては、酵素は、グリコシルヒドロラーゼファミリーの少なくとも1つのメンバーを含む。形態によっては、酵素は優先的にXOSを利用する。形態によっては、酵素は、グリコシルヒドロラーゼファミリーの少なくとも2つの異なるメンバーを含む。形態によっては、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15またはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム CR16は、それぞれ配列番号5または配列番号6と、少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%の配列相同性を有するヌクレオチド配列を有している。CR15は、NCBI申請番号PRJNA540282を指すこともある。形態によっては、ビフィドバクテリウム・ロンガムまたはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムは、少なくとも1000、950、900、850、800、750、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、225、200、175、150、140、130、120、110、105、100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、24、23、22、21、20、19、または18個の連続したヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を含み、配列番号5または配列番号6の連続したヌクレオチド配列と少なくとも90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、または100%の配列相同性を有する。好ましくは、配列番号5または配列番号6の連続したヌクレオチド配列およびビフィドバクテリウム・ロンガムまたはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの連続したヌクレオチド配列は、同じゲノム領域由来のものである。形態によっては、連続するヌクレオチド配列は、配列番号15~99およびそれらの任意の組み合わせを含む群から選択される。形態によっては、細菌種のビフィドバクテリウム・ロンガムまたはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムとしての分類は、16Sシーケンシングによって行われる。形態によっては、16Sシーケンシングはビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガムの16Sシーケンスまたはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの16Sシーケンスと少なくとも95、96、97、98、98.1、98.2、98.3、98.4、98.5、98.6、98.7、98.8、98.9、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、もしくは100%の配列相同性を有する。形態によっては、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガムの16Sシーケンスは、配列番号3および配列番号4のプライマーペアによって生成された配列であるか、またはそれに対応していてもよい。いくつかの形態では、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガムの16Sシーケンスは、配列番号13と少なくとも95、96、97、98、98.1、98.2、98.3、98.4、98.5、98.6、98.7、98.8、98.9、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、または100%の配列相同性を有する。形態によっては、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの16Sシーケンスは、配列番号14と少なくとも95、96、97、98、98.1、98.2、98.3、98.4、98.5、98.6、98.7、98.8、98.9、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、または100%の配列相同性を有する。形態によっては、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスは、互いに6時間以内、より好ましくは5時間以内、さらに好ましくは4時間以内、さらに好ましくは3時間以内、さらに好ましくは2時間以内、さらに好ましくは1時間以内、さらに好ましくは45分以内、さらに好ましくは30分以内、さらに好ましくは15分以内、さらに好ましくは5分以内、4分以内、3分以内、2分以内、1分以内、そして最も好ましくは同時に投与される。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの投与における重量比は、約100:1~1:100の範囲である。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは1つの組成物に組み込まれる。形態によっては、組成物は、液体、ゼラチン、カプセル、サシェ、ストロー、タブレット、粉末を含む群、食品との組み合わせもしくは食品へ導入された形態、または、投与もしくは摂取に関する説明書と共に、所定の量のプロバイオティクスおよび所定の量のプレバイオティクスの両方を含むキットの形態から選択される。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、異なる形態を有し、投与もしくは摂取に関する説明書が含まれる。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数で投与される。形態によっては、プレバイオティクスは、プロバイオティクスの最初の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数で投与される。形態によっては、プロバイオティクスは、プレバイオティクスの最初の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数で投与される。いくつかの形態では、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスは、経口、座薬、または微生物叢移植によって投与される。形態によっては、一度の投与に含まれるプロバイオティクスの量は、約10~約1012CFU、より好ましくは10~1011CFU、最も好ましくは約10~1010CFUである。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、動物、好ましくは哺乳類または家禽類に投与され、それらには、特にヒト、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、ヒツジ、七面鳥、およびニワトリを含む。
【0010】
本開示の別の態様では、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの相乗的な組み合わせを判定する方法を提供する。形態によっては、この方法は、糞便を、好ましくはスラリー状にして、プレバイオティクスによって発酵させるステップと、発酵した糞便-プレバイオティクス混合物を少なくとも1回、新鮮な培地に移すステップと、どのプロバイオティクス株が樹立および/または維持されたかを判定するステップとを含む。好ましい態様では、複数の異なる糞便-プレバイオティクス混合物について、それぞれが異なるプレバイオティクスを有しているため、どのプロバイオティクスが最も効果的に作用したか、または樹立や維持に最も奏功したかを比較することができる。形態によっては、糞便-プレバイオティクス混合物は、少なくとも5、10、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30回またはそれ以上、新鮮な培地に移される。形態によっては、いずれのプロバイオティクス株が樹立および/または維持されたかの判定は、糞便-プレバイオティクス混合物のサンプルを、寒天などの成長培地、より好ましくはプロバイオティクスの増殖用に設計された寒天にプレーティングするステップと、その後、16S rRNAシーケンシングなどによってプロバイオティクス株を同定するステップとが含まれる。形態によっては、添加したプロバイオティクスの増殖率と糞便中の天然の細菌叢を比較するために、糞便にプロバイオティクス株を添加する。形態によっては、糞便に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のプロバイオティクス株が添加される。形態によっては、プロバイオティクス株は、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、およびそれらの任意の抽出物または組み合わせを含み、上述したような任意の形態を有する。態様によっては、プレバイオティクスはXOSである。
【0011】
本開示の別の態様では、対象の消化管の微生物叢を調整する方法を提供する。概して、本方法は、少なくとも1種類のプロバイオティクス種と少なくとも1種類のプレバイオティクスの相乗的な組み合わせを投与するステップを含む。いくつかの態様では、プロバイオティクス種は、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、およびビフィドバクテリウム・ロンガム、ならびにそれらの任意の組み合わせもしくは抽出物を含む群から選択され、または上述した任意の態様により選択される。形態によっては、プレバイオティクスはキシロオリゴ糖(XOS)である。形態によっては、プレバイオティクスは、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15またはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム CR16、好ましくはビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15である。いくつかの形態では、プレバイオティクスとプロバイオティクスは、互いに6時間以内、より好ましくは5時間以内、さらに好ましくは4時間以内、さらに好ましくは3時間以内、さらに好ましくは2時間以内、さらに好ましくは1時間以内、さらに好ましくは45分以内、さらに好ましくは30分以内、さらに好ましくは15分以内、さらに好ましくは5分以内、4分以内、3分以内、2分以内、1分以内、そして最も好ましくは同時に投与される。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの投与における重量比は、約100:1~1:100の範囲である。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは1つの組成物に組み込まれる。形態によっては、組成物は、液体、ゼラチン、カプセル、錠剤、粉末を含む群、または投与または摂取に関する説明書と共に、所定の量のプロバイオティクスおよび所定の量のプレバイオティクスの両方を含むキットの形態から選択される。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、異なる形態を有し、投与および摂取に関する説明書が含まれる。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、それぞれ1、2、3,4,5,6,7,8,9,10、またはそれ以上の回数で投与される。形態によっては、プレバイオティクスは、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスの最初の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数で投与される。形態によっては、プロバイオティクスは、プレバイオティクスおよび/またはプロバイオティクスの最初の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数で投与される。形態によっては、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスは、経口、座薬、または微生物叢移植によって投与される。形態によっては、一度の投与に含まれるプロバイオティクスの量は、約10~約1012CFU、より好ましくは10~1011CFU、最も好ましくは約10~1010CFUである。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、動物、好ましくは哺乳動物または家禽に投与され、それらには、特にヒト、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、七面鳥、ニワトリ、およびヒツジを含む。
【0012】
本開示の別の態様では、腸および/または全身の健康を改善する方法が提供される。形態によっては、腸の改善および/または全身の健康は、消化管の特性またはパラメータを評価することによって判定されてもよい。形態によっては、腸の改善および/または全身の健康は、便通および規則性の改善、満腹感の改善、腸のバリア機能の改善、膨満感およびガスの減少、消化管の感染症のリスクの減少、疝痛症状の持続時間の減少、および/またはアトピー性皮膚炎のリスクの減少の少なくとも1つを通じて判定される。形態によっては、改善の判定は、上述のようなプロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスの投与を受けていない対象または対象群の比較により行われる。形態によっては、改善の判定は、本開示の組成物の投与前および投与後の同一の対象の比較により行われる。形態によっては、改善の程度は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90%、またはそれ以上である。概して、この方法は、少なくとも1種類のプロバイオティクス種および少なくとも1種類のプレバイオティクスの相乗的組み合わせを投与するステップを含む。形態によっては、プロバイオティクス種は、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、およびビフィドバクテリウム・ロンガム、ならびにそれらの任意の組み合わせまたは抽出物を含む群から選択される。形態によっては、プレバイオティクスはキシロオリゴ糖(XOS)である。形態によっては、プレバイオティクスは、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15またはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム CR16、好ましくはビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15、または上述した任意の形態を有する。形態によっては、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスは、互いに6時間以内、より好ましくは5時間以内、さらに好ましくは4時間以内、さらに好ましくは3時間以内、さらに好ましくは2時間以内、さらに好ましくは1時間以内、さらに好ましくは45分以内、さらに好ましくは30分以内、さらに好ましくは15分以内、さらに好ましくは5分以内、4分以内、3分以内、2分以内、1分以内、そして最も好ましくは同時に投与される。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスの投与における重量比は、約100:1~1:100の範囲である。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスが1つの組成物に組み込まれる。形態によっては、組成物は、液体、ゼラチン、カプセル、錠剤、粉末、または、投与または摂取に関する説明書と共に、所定の量のプロバイオティクスおよび所定の量のプレバイオティクスの両方を含むキットを含む群から選択された形態を有する。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、異なる形態を有し、投与および摂取に関する説明書が含まれる。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、それぞれ1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数で投与される。形態によっては、プレバイオティクスは、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスの最初の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数で投与される。形態によっては、プロバイオティクスは、プレバイオティクスおよび/またはプロバイオティクスの最初の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上の回数で投与される。形態によっては、プロバイオティクスおよび/またはプレバイオティクスは、経口、または微生物叢移植によって投与される。形態によっては、一度の投与に含まれるプロバイオティクスの量は、約10~約1012CFU、より好ましくは10~1011CFU、そして最も好ましくは約10~1010CFUである。形態によっては、プロバイオティクスおよびプレバイオティクスは、動物、好ましくは哺乳動物または家禽に投与され、それらには、特にヒト、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、七面鳥、ニワトリ、およびヒツジを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
特許または出願ファイルには、カラーで制作された図面が少なくとも1つ含まれている。カラー図面を含むこの特許または特許出願のコピーは、要求および必要な手数料の支払いにより得られる。
【0014】
以下の詳細な説明を考慮すると、本開示はよりよく理解され、上述した以外の特徴、側面および利点が明らかになるであろう。詳細な説明は、以下の図面を参照している。
【0015】
図1A】糞便環境でXOSを用いて集積されたビフィズス菌の発酵実験における成功した(緑)および失敗した集積(赤)の仮説的な傾向を示すグラフであり、菌株の樹立は菌株およびホストに依存していた。
図1B】ビフィドバクテリウム・アドレセンティス CR11(B.adolescentis CR11)が分離されたサンプルにおける総ビフィドバクテリウム(●)およびビフィドバクテリウム・アドレセンティス(B.adolescentis)(■)の集積を示すグラフであり、ビフィズス菌は糞便環境でXOSを用いて集積されたが、菌株の樹立は菌株およびホストに依存していた。
図1C】糞便環境においてXOSによって集積された総ビフィドバクテリウム(●)の釣り合いのとれた集積を伴うビフィドバクテリウム・アドレセンティス CR11(■)の樹立の失敗を示すグラフであるが、菌株の樹立は菌株およびホストに依存していた。
図1D】ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15(■)と総ビフィドバクテリウム(●)の樹立を示すグラフである。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示し、ビフィドバクテリウムは糞便環境でXOSを用いて集積されたが、菌株の樹立は菌株とホストに依存していた。
図2図2Aは、糖を補充した最小培地におけるビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の増殖を示すグラフである。波長600nmでの光学密度測定は、最初の16時間以内に4時間、また24時間にmMRS(◆)およびXOSに等量の残留糖を含むmMRS(■)、1%のグルコース(▲)、1%のXOS(●)により行われ、1%のXOS DP 2,3,4(六角形)および1%のXOS DP≧4(▼)である。図2Bは、1%のXOSでのCR15増殖後の残りのXOSフラグメントのTLCを示す図である。
図3-1】XOSの存在下(▲)または非存在下(●)で20個の個別の糞便サンプルに植え付けた後のビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立を示す一連のグラフである。各実験では、菌株を10CFU/mLで植え付け、菌株特異的プライマーを使用したRT-qPCRで数量化した。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示す。
図3-2】XOSの存在下(▲)または非存在下(●)で20個の個別の糞便サンプルに植え付けた後のビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立を示す一連のグラフである。各実験では、菌株を10CFU/mLで植え付け、菌株特異的プライマーを使用したRT-qPCRで数量化した。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示す。
図3-3】XOSの存在下(▲)または非存在下(●)で20個の個別の糞便サンプルに植え付けた後のビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立を示す一連のグラフである。各実験では、菌株を10CFU/mLで植え付け、菌株特異的プライマーを使用したRT-qPCRで数量化した。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示す。
図3-4】XOSの存在下(▲)または非存在下(●)で20個の個別の糞便サンプルに植え付けた後のビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立を示す一連のグラフである。各実験では、菌株を10CFU/mLで植え付け、菌株特異的プライマーを使用したRT-qPCRで数量化した。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示す。
図3-5】XOSの存在下(▲)または非存在下(●)で20個の個別の糞便サンプルに植え付けた後のビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立を示す一連のグラフである。各実験では、菌株を10CFU/mLで植え付け、菌株特異的プライマーを使用したRT-qPCRで数量化した。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示す。
図4A】XOSの存在下(▲)または非存在下(●)での20個のサンプルすべてにおけるビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立傾向の概要を示すグラフであり、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15は7つのサンプルで明確に樹立した。10CFU/mLの試験菌株を植え付ける前に、時間0のサンプルを採取した。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示す。
図4B】ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15が11個のサンプルで潜在的に樹立したことを示すグラフである。10CFU/mLの試験菌株を植え付ける前に、時間0のサンプルを採取した。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示す。
図4C】2つのサンプルにおいてビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15が置換られたかまたはウォッシュアウト(wash out)されたことを示すグラフである。10CFU/mLの試験菌株を植え付ける前に、時間0のサンプルを採取した。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示す。
図4D】XOSがない場合に、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15がいずれのサンプルにおいても樹立しなかったことを示すグラフである。ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立のさまざまな傾向が糞便サンプル全体で観察された。10CFU/mLの試験菌株を植え付ける前に、時間0のサンプルを採取した。水平の破線は検出限界(10CFU/mL)を示す。
図5A】α多様性のシャノンインデックスを用いた、処理全体にわたる微生物群集組成物および多様性分析を示すグラフである。
図5B】α多様性のASV測定値を用いた、微生物群集組成物および処置間の多様性分析を示すグラフである。
図5C】主座標分析(PCoA)を示すグラフである。ベースライン(青)および発酵期間の終了時、XOSの存在下(緑)または非存在下(赤)群間の明確なコミュニティプロファイルを明確にしている(PERMANOVA、p=0.001)。*は、0時間と24時間の間の有意な差を示す。+は、同定の時点での処置間の有意な差を示す。
図5D】主成分分析(PCA)を示すグラフである。ベースライン(青)および発酵期間の終了時、XOSの存在下(緑)または非存在下(赤)群間の明確なコミュニティプロファイルを明確にしている(PERMANOVA、p=0.001)。*は、0時間と24時間の間の有意な差を示す。+は、同定の時点での処置間の有意な差を示す。
図6A】ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15を用いた樹立実験でXOSによって引き起こされる分類群の有意な変化を示す図である。XOSの存在下を示す図6(A)および非存在下を示す図6(B)で著しく異なる分類群(FDR<0.05)を識別するために、FDR調整を伴うWilcoxon順位和検定を用いた。オレンジ色のノードは、ベースライン時と96時間後を比較して、より多く存在することを示し、緑色と赤色のノードは、ベースライン時と96時間後を比較して、より多く存在することを示す。
図6B】ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15を用いた樹立実験でXOSによって引き起こされる分類群の有意な変化を示す図である。XOSの存在下を示す図6(A)および非存在下を示す図6(B)で著しく異なる分類群(FDR<0.05)を識別するために、FDR調整を伴うWilcoxon順位和検定を用いた。オレンジ色のノードは、ベースライン時と96時間後を比較して、より多く存在することを示し、緑色と赤色のノードは、ベースライン時と96時間後を比較して、より多く存在することを示す。
図7A】XOS存在下でのビフィドバクテリウム・ロンガムに対応するASVの存在量を、各時点での相対的な存在量として示したグラフである。0は、発酵開始時のサンプルのベースラインを示し、NXは、XOS非存在下での発酵を示し、Xは、XOS存在下での発酵を示す。
図7B】XOS存在下でのビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムに対応するASVの存在量を、各時点での相対的な存在量として示したグラフである。0は、発酵開始時のサンプルのベースラインを示し、NXは、XOS非存在下での発酵を示し、Xは、XOS存在下での発酵を示す。
図7C】XOS存在下でのビフィドバクテリウム・アドレセンティスの存在量を、各時点での相対的な存在量として示したグラフである。0は、発酵開始時のサンプルのベースラインを示し、NXは、XOS非存在下での発酵を示し、Xは、XOS存在下での発酵を示す。
図8A】XOS存在下でのビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15(▲)の集積を示すグラフである。
図8B】XOSの存在下でのビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム(●)の集積を示すグラフである。ベースライン(9つのサンプル)に存在するビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムは、発酵終了時には高い細胞数に達していた(A)。ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムがベースラインで検出されなかった場合に(11サンプル)、96時間後にもこの種は検出されなかった。
図9】分類群と予測されるS/BCFA遺伝子の平均相対存在量、および微生物の発酵代謝物と発酵サンプルで同定された属との相関関係を示す一連のグラフである。代謝物との間に少なくとも1つの有意な相関があった属のみをマッピングした。+は、属の数と代謝物の濃度の有意な相関を示す(FDR<0.05)。SCFAは、短鎖脂肪酸を示し、BCFAは、分岐鎖脂肪酸を示す。Xは、XOSの存在を示し、NXは、XOSの非存在を示す。
図10A】試験した4つのサンプルにおいて、XOSを添加した場合(▲)と添加しない場合(●)の発酵中のビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15のqPCR定量を示すグラフである。
図10B】各時点におけるXOS存在下でのビフィドバクテリウム・ロンガムの相対的な存在量を示すグラフである。0は発酵開始時のサンプルのベースライン、NXはXOS非存在下での発酵、XはXOS存在下での発酵を示し、S14の4日目のサンプルは配列されておらず、▲はXOSを添加した場合、●はXOSを添加しない場合を示す。
図10C】各時点におけるXOS存在下でのビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの相対的な存在量を示すグラフである。0は発酵開始時のサンプルのベースライン、NXはXOS非存在下での発酵、XはXOS存在下での発酵を示し、S14の4日目のサンプルは配列されておらず、▲はXOSを添加した場合、●はXOSを添加しない場合を示す。
図10D】各時点におけるXOS存在下でのビフィドバクテリウム・アドレセンティスの相対存在量を示すグラフであり、0は発酵開始時のサンプルのベースライン、NXはXOS非存在下での発酵、XはXOS存在下での発酵であり、S14の4日目のサンプルは配列されておらず、▲はXOSを添加した場合、●はXOSを添加しない場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
他に定義されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術的および科学的用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または同等の任意の方法および材料を、本開示の実施または試験に用いることができるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。
【0017】
態様によっては、本開示の方法は、好ましくはビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、および任意の抽出物または組み合わせを含む群から選択される少なくとも1種類のプロバイオティクスを、対象、好ましくはそれを必要とする対象に投与することを目的とする。本明細書では、「それを必要とする対象」とは、消化管の微生物叢および/または腸の健康および/または全身の健康を改善する必要がある対象のサブセットを指す。一実施形態では、それを必要性とする対象には、動物、哺乳類、家禽類、より好ましくはヒト、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ヤギ、七面鳥、ニワトリ、ヒツジを含んでいてもよい。さらに、本方法は、プレバイオティクス、好ましくは投与されたプロバイオティクスと相乗的に作用するプレバイオティクス、または腸内細菌叢内での樹立と増殖が必要な細菌株または菌株を投与するステップを含む。好ましい形態によっては、プロバイオティクスはビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガムである。
【0018】
本明細書で使用される用語「投与」には、細菌株および/またはその抽出物、ならびに本明細書に記載されたプレバイオティクスを対象に導入するすべての手段を含み、これらに限定されないが、経口(po)、吸入、バッカル錠、舌下投与、坐薬、微生物叢移植などを含む。本明細書に記載されている菌株および/または抽出物、ならびにプレバイオティクスは、単位剤形および/または従来の非毒性の薬学的に許容される担体、アジュバント、およびビヒクルを含む製剤で投与されてもよい。プロバイオティクスおよび/またはその抽出物ならびにプレバイオティクスは、同じ方法または同じ形態で投与される必要はない。
【0019】
経口投与の例示的な形態としては、液体、固体、錠剤、ピル、カプセル、液体媒体中の固体、粉末、トローチ剤、ストロー、サシェ、カシェ剤、溶液、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、無菌包装された粉末、食品との組み合わせ、または食品への導入などが挙げられる。
【0020】
特に好ましい実施形態では、本開示の方法は、プロバイオティクスまたはその抽出物およびプレバイオティクスを対象の食事に組み込むステップを含む。形態によっては、プロバイオティクスは、生きた培養物または凍結乾燥調製物を含んでいてもよい。
【0021】
実施形態によっては、本明細書に記載されている様々な形態のいずれかの治療有効量のプロバイオティクスまたはその抽出物は、1つ以上の賦形剤と混合されるか、1つ以上の賦形剤によって希釈されるか、またはカプセル、サシェ、紙、または他の容器の形態としてもよい担体内に封入されてもよい。賦形剤は、希釈剤として機能してもよく、活性成分のビヒクル、担体、または媒体として機能する、固体、半固体、または液体の材料であってもよい。したがって、例えば、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、およびそれらの抽出物や組み合わせは、液体、固体、錠剤、ピル、カプセル、液体媒体中の固体、粉末、トローチ、ストロー、サシェ、カシェ剤、溶液、エリキシル、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体または液体媒体中の)、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、無菌包装された粉末の形態で投与されてもよく、また、食品との組み合わせや、食品への導入によるものでもよい。
【0022】
本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師、その他の臨床医が求める組織系、動物、ヒトにおける生物学的または薬理学的な反応を誘発する活性化合物または薬剤の量を指し、治療される疾患、状態、または病気の症状の緩和を含む。一態様では、治療有効量は、任意の医学的治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で、状態、疾患、または疾患の症状を治療または緩和することができる量である。ある患者に対する具体的な治療効果のある用量レベルは、治療される状態の重症度、採用されている具体的な組成物、患者の年齢、体重、通常の健康状態、性別、食生活、投与時間、投与経路、治療期間、プロバイオティクスもしくはその抽出物およびプレバイオティクスの組み合わせもしくは同時に使用される薬剤、および医師、研究者、獣医師、または通常の技術を持つ他の臨床医に既知の要因など、さまざまな要因に依存する。
【0023】
治療有効量は、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、およびそれらの抽出物または組み合わせなどのプロバイオティクスの投与中に発生する可能性のある毒性、または他の望ましくない副作用を考慮して有利に選択されることも理解されたい。
【0024】
本明細書で使用する「プレバイオティクス」とは、健康上の利点をもたらす基質を意味し、これらに限定されないが、1つまたは限られた数の有益な腸内細菌の成長および/または活動の選択的な刺激、摂取したプロバイオティクス微生物の増殖および/または活動の刺激、腸内病原菌の選択的な減少、腸内短鎖脂肪酸プロファイルへの好ましい影響などが含まれる。ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、もしくはそれらの任意の抽出物または組み合わせ、および/またはXOSなどの少なくとも1つのプレバイオティクスなどのプロバイオティクスのいくつかの組み合わせは、互いに相乗的に作用する。このようなプレバイオティクスは、天然に存在するもの、合成されたもの、または生物および/または植物の遺伝子操作によって現れたものであり、そのような新しい供給源が既知のものか、後に開発されたものであるかを問わない。本開示で有用なプレバイオティクスには、可溶性デンプン、酵母エキス、オリゴ糖、多糖類、および、フルクトース、キシロース、ソイ、ガラクトース、グルコース、マンノースなどを含む他のプレバイオティクスを含んでいてもよい。形態によっては、XOSが特に好ましい。
【0025】
より具体的には、本開示で有用なプレバイオティクスとしては、可溶性デンプン、酵母エキス、ポリデキストロース、ポリデキストロース粉末、ラクツロース、ラクトスクロース、ラフィノース、グルコオリゴ糖、イヌリン、フラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、キシロオリゴ糖、キトオリゴ糖、マンノオリゴ糖、アリビノオリゴ糖、シアリルオリゴ糖、フコオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、およびゲンチオリゴ糖などを含んでいてもよい。
【0026】
一実施形態では、組成物中に存在するプレバイオティクスの総量は、組成物の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、および30g/Lを含む約1.0g/L~約30.0g/Lであってもよい。より好ましくは、栄養組成物中に存在するプレバイオティクスの総量は、組成物の約2.0g/Lおよび約8.0g/Lであってよい。いくつかの実施形態では、栄養組成物中に存在するプレバイオティクスの総量は、約0.1g/100kcal~約1g/100kcalであってもよい。特定の実施形態では、栄養組成物中に存在するプレバイオティクスの総量は、約0.3g/100kcal~約0.7g/100kcalであってもよい。
【0027】
本開示のプレバイオティクスは、プロバイオティクスと同じカプセルまたは製剤内にあっても、他の剤形内にあってもよい。形態によっては、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスは、組成物中で互いに接触している。本開示のプレバイオティクスおよび組成物はまた、それらの効用を高めるために炭水化物または繊維と共に摂取されてもよい。
【0028】
本開示の組成物はまた、1つまたは複数の活性成分、賦形剤、溶解剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤、保存剤、浸透剤、浸透圧保護剤、凍結防止剤、およびこれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0029】
当業者に知られているように、様々な賦形剤が組成物と混合されてもよい。好ましい賦形剤には、例えば、微結晶性セルロース、マルトデキストリン、コロイド状二酸化ケイ素、ラクトース、デンプン、ソルビトール、シクロデキストリン、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0030】
好ましい溶解剤には、例えば、クエン酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、酢酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸などの有機酸が含まれるが、これらは、単独でまたは組み合わせて使用されてもよい。また、これらの薬剤は、酸の塩と組み合わせて、例えばクエン酸ナトリウムとクエン酸を組み合わせて緩衝システムを形成してもよい。
【0031】
好ましい界面活性剤には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレンセパレート、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安息香酸ベンジル、セトリミド、セチルアルコール、ドキュセートナトリウム、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、レシチン、中鎖トリグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、ポロキサマー、ポリビニルアルコール、およびソルビタン脂肪酸エステルなどが含まれる。
【0032】
好ましい酸化防止剤には,例えば,メタ重亜硫酸ナトリウム,α,β,δ-トコフェロールエステルおよびα-トコフェロールアセテートなどのトコフェロール類,アスコルビン酸およびその薬学的に許容される塩,パルミチン酸アスコルビル,アルキルガレート(例えば,TENOX(登録商標)PG,TENOX(登録商標)S-1),亜硫酸塩およびその薬学的に許容される塩、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、およびモノチオグリセロールなどが含まれる。
【0033】
好ましい防腐剤には、例えば、グルコン酸クロルヘキシジン、グルコノデルタラクトン、メチルパラベン、水酸化ナトリウム、およびそれらの組み合わせが含まれる。
【0034】
好ましい保存剤にはパラベンが含まれる。好適な保存剤には、パラベンが挙げられる。好適なパラベンとしては、例えば、メチルパラベン(E番号E218)、エチルパラベン(E214)、プロピルパラベン(E216)、ブチルパラベンおよびヘプチルパラベン(E209)が含まれる。あまり一般的ではないが、好ましいパラベンには、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、ベンジルパラベン、およびそれらのナトリウム塩も含まれる。
【0035】
好ましい浸透剤には、例えば、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド)、アゾン(1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンまたはラウロカプラム)、ピロリドン(例えば、N-メチル-2-ピロリドン)、脂肪酸(例えば、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、カプリン酸など)、精油(ユーカリ、チェノポディウム、イランイラン、L-メントールなど)、テルペン(例えば、セスキテルペンなど)、テルペノイド、オキサゾリジノン(例えば、4-デシルオキサゾリジン-2-オンなど)、および尿素などが含まれる。
【0036】
本開示で使用するプロバイオティクスを凍結乾燥形態で製造する場合、プロバイオティクス株3000Xgを、室温で15分間遠心分離し、それにより得られた細胞ペレットを10mlの20%グリセロールの使用済み培地再懸濁液に懸濁する(遠心分離後に回収した培地を50%滅菌グリセロールと混合することにより、20%再懸濁液を生成する)。得られた細胞懸濁液を液体窒素中で急速凍結し、次いで、凍結乾燥して凍結乾燥生細胞生成物を得る。次いで、10ミリグラムの凍結乾燥した細胞をペプトン水に懸濁し、ブレインハートインフュージョン寒天プレートに散布して、凍結乾燥品1ミリグラムあたりの生菌数(コロニー形成単位:CFU)を測定する。あるいは、高細胞密度の発酵槽から連続的に遠心分離して細胞を採取し、そのスラリーを凍結して凍結乾燥させるような、適切な工業的または商業的製造プロセスを用いることにより、凍結乾燥をスケールアップしてもよい。
【0037】
以下の例は、本開示の特定の実施形態をさらに説明するものであるが、その一方で、以下の例示的な例は、いかなる形においても、本開示を限定するように解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0038】
例1
【0039】
本実施例では、XOSを利用することができる菌株を集積するための段階的なインビトロ発酵を行い、最も成功した菌株を同定し、特徴付けた。
【0040】
方法
【0041】
サンプルの収集
【0042】
研究期間中、ボランティアから合計20個の糞便サンプルを採取した。各参加者には、既知の消化管の疾患がないこと、19歳以上であること、過去6ヵ月間に抗生物質やプロバイオティクスサプリメントを摂取していないこと、ヨーグルトを定期的に摂取していないこと、3ヵ月間に1~3回の便サンプルを提供することを明記した同意書に署名するよう求めた。参加者には、便器検体採取キット(Fisher Scientific、ニューハンプシャー、米国)と収集および糞便の保存の詳細な手順とを提供した。この研究は、UNL Institutional Review Board(IRB 20160616139)によって承認された。
【0043】
サンプルを嫌気性チャンバ(Bactron IV Anaerobic Chamber, Sheldon Manufacturing, Cornelius, OR USA、5%H、5%CO、90%N)によって採取し、処理した。サンプルは、pH7のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈(1:10)してホモジナイズした後、2mlのアリコートを-80℃で保存した。
【0044】
糞便の段階的な発酵
【0045】
すべての集積および樹立実験XOS95(登録商標)では、重合度がDP2からDP20の範囲である95%の純粋なプレバイオティクス基質を使用した(Prenexus Health、アリゾナ、米国)。すべての発酵において、各糞便サンプルは個々の実験ユニットとして扱った。集積実験では、段階的なインビトロバッチ発酵を行った。希釈した糞便スラリーを均質化し、ろ過し、発酵ブロスと6:3の比率(v/v)で混合し、総容量9.0mlとした。添加した際、XOSの濃度は1%であった。すべての発酵は37℃で嫌気的に培養して行われた。24時間後、XOSを含む9.9mlの発酵ブロスにサンプル100μlを移し、100倍希釈を行った。その後、サンプルは24時間ごとに3回移され、合計96時間実行された。0時間、24時間、48時間、72時間、および96時間経過後のサンプルを採取し、DNA抽出とSCFA分析のために-20℃で保存した。4回の発酵サイクルの終了時(96時間経過時)に、サンプルをBifidobacterium Selective Iodoacetate Mupirocin(BSIM)にプレーティングし、コロニーを採取した。分離した各コロニーは、グルコースを取り除き、1%のXOSを添加した変更de Man, Rogosa and Sharpe (mMRS)で培養した(mMRS-XOS)。分離された菌は、その後のDNA抽出、16Sサンガーシーケンシングおよび同定のために-20℃で保存した。
【0046】
樹立実験では、上述の通りに得られたXOS集積菌株を発酵サイクルの最初に植え付けたことを除いて、同様のバッチ発酵を行った。試験菌株は、まずMRSブロスで24時間培養し、1%のXOSを含む、または含まない新鮮な糞便発酵培地(1%)に植え付けて使用した。その後のサンプルの移動は以前と同じように実行された。サンプルを24時間ごとに最長で7日間採取し、BISMプレートから分離した菌をmMRS-XOSで培養して保存した。最初の集積実験は3つの糞便サンプルで行い、その後のビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立実験には20個のサンプルを使用した。
【0047】
DNA抽出と16Sサンガーシーケンシングと分析
【0048】
収集されたサンプル(発酵培地および分離株)からDNAを、Martinezら(2015)によって説明されているように、フェノール-クロロホルムを用いて抽出した。ただし、培養時間は30分間とし、DNAペレットは100μlのDNase-free水に再懸濁された。分離株については、16Sプライマーを用いてPCRを実施した。8F(5'-AGAGTTTGATCCTGGCTCAG-3')(配列番号1)、1391R(5'-GACGGGCGGTGTGTRCA-3')(配列番号2)およびPCR産物をQIAquick PCR Purification Kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いて精製し、NanoDrop ND-1000分光光度計(Thermo Fisher、マサチューセッツ、米国)を用いて定量化した。精製されたPCR産物は、ミシガン州立大学のGenomics CoreFacilityで配列された。
【0049】
IVEプロバイオティクスの候補となる分離株の予備的な同定を、NCBI BLASTnを用いて行った。このブラスト検索ツールに基づいて分離株に属と種を付け、異なる個体から分離された場合には、ユニークな菌株とした。
【0050】
qRT-PCRを用いたビフィズス菌の定量化
【0051】
すべてのインビトロ発酵実験において、発酵サンプル中の細菌群の定量化は、Mastercycler Realplex2(Eppendorf AG、ハンブルグ、ドイツ)を用いた定量的PCR(qPCR)によって行った。各反応混合物には、12.5μlのqPCR Master Mix(2X Maxima SYBR green、Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ、米国)、各標的微生物の0.4μMの特異的プライマー、8.5μlの水、3μlの鋳型DNAを加え、最終容量を25μlとした。各サンプルに重複したウェルを使用した。標準偏差が0.5を超えるサンプルを再分析した。各アッセイでは、プレートカウント法により測定した純粋培養から分離したDNAを用いて標準曲線を作成した。DNA標準試料の10倍段階希釈を行い、標準試料のサイクル閾値(ct)値をlog10CFU/ml値に対してプロットした。ビフィドバクテリウム・ロンガム CR15のプライマー設計に用いたビフィドバクテリウムのゲノムを以下に示す。ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15のユニークなターゲット配列を同定するために、近縁種の株の全ゲノム配列を用いた。ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15のターゲットアンプリコンとして、アデニン特異的メチルトランスフェラーゼPaeR71遺伝子を選択した。
【0052】
【表1】
【0053】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15のゲノムシーケンシングとアセンブリ
【0054】
全ゲノムシーケンシングのために、QIAamp DNA mini kit(Qiagen、ヒルデン、ドイツ)を用いてDNA抽出を行い、Nextera XT DNA Library Prep Kitを用いてゲノムライブラリーを調製した。ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15のゲノムを、Illumina MiSeqで配列し、603,691対のリードを得た。このリードを、SPAdes Genome Assembler (ver 3.11)を用いてde-novoでアセンブルし、Mauveを用いてリファレンスゲノムを参照してアライメントした。アセンブル後、63コンティグ、123倍のカバレッジを有するドラフトゲノムを得た。
【0055】
遺伝子のアノテーションはPROKKAを用いて行った。さらに、ドラフトゲノムについて、dbCANを用いてCAZyデータベースに、TransAAPを用いてtransportDB 2.0データベースにアノテーションし、それぞれ炭水化物活性酵素群と糖輸送体を同定した。
【0056】
菌株特異的プライマー設計と検証
【0057】
RUCS(ユニークなコア配列に対するPCRプライマーの迅速同定)を用いて、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15のドラフトゲノム中のユニークなターゲットを同定し、インシリコPCRを行った。NCBIデータベースから検索したビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム株の近縁8種の全ゲノムのアライメントにより、ユニークなターゲット配列を同定した。
【0058】
【表2】
【0059】
プライマーの特異性は、NCBI Primer Blastを用いて、細菌のNCBI RefSeq代表ゲノムデータベースに対してブラストして確認した。ヒトの腸の非常在菌であるゲリディバクター・アルゲンス(Gelidibacter algens)という菌株が1件だけプライマーペアと一致した。続いて、アデニン特異的トランスフェラーゼPaeR71遺伝子を210塩基対の長さのターゲットアンプリコンとして選択し、プライマーペアとして、フォワード(F)CCGCATCACAACTGCTATTGG(配列番号3)およびリバース(R)CGAAAGCCCCAATTTGTTCGT(配列番号4)(Invitrogen、カリフォルニア、米国)を用いた。グラジエントPCRを行い、適切なアニーリング温度を58℃に決定した。16S rRNAレベルで95~100%の同一性を有する培養コレクションの11株を用いて、PCRとqPCRの両方による実験的なプライマー検証を実施した。
【0060】
表3は、ビフィドバクテリウムの異なる群をターゲットとするために用いられるプライマー配列およびPCRプログラムを示す。
【0061】
【表3】
【0062】
増殖測定
【0063】
選択した菌株のXOS上での増殖能力を、1%のXOSを含むmMRSで検証した。対照(control)では、1%のグルコース(mMRS-グルコース)、または95%の純粋XOSに存在する残留糖質の相当量(約0.035%の最終濃度、mMRS-res)のいずれかをmMRSに調製した。残留糖分は、メーカーの仕様書に基づき、グルコース、フルクトース、スクロースが同じ割合で含まれていると予測された。さらに、バックグラウンドでの糖質の増殖を最小限に抑えるために、mMRS培地は半分の濃度(標準的なMRSの半分の成分量)で調製した。
【0064】
試験菌株を、まず凍結したストック培養物からBSIMプレート上にストリーキングし、37℃で48時間、嫌気的に培養した。シングルコロニーを分離し、MRSブロスに37℃で24時間植え付けた。その後、培養液の1%(v/v)を新鮮なMRSに移した。これらの継代培養物を一晩12時間培養した後、予め温めておいた還元済みのmMRS、mMRS-XOS、mMRS-グルコース、またはmMRS-resに1%(v/v)で植え付けた。その後、37℃で嫌気的に培養し、プレートリーダー(Synergy HTX Plate Reader, BioTek, バーモント、米国)を用いて、最初の12時間は4時間ごとに、24時間後には再度、光学密度を600nmで測定して増殖を判定した。すべての実験を3回実施した。
【0065】
16SrRNAアンプリコンのシーケンシングおよび分析
【0066】
糞便発酵物から抽出したDNAについて、16S rRNAアンプリコンシーケンシングを実行した。サンプルは、16SシーケンスのV4領域のプライマーを用いて、2×250bpのMiSeqシーケンサーで配列を決定した。合計4,397,582個の配列が得られ、1サンプルあたり36,954個の配列が得られた。
【0067】
QIIME2を用いて配列を分析した。QIIMEにインポートする前に、ペアエンドシーケンスを非多重化した。FastQCを用いて、サンプルごとの配列品質をチェックした。DADA2ワークフロー(ウェブ上のbenjjneb.github.io/dada2/を参照)を使用して、キメラ配列を削除し、フォワードリードを240bpに、リバースリードを200bpに切り縮めた。DADA2を用いてユニークなアンプリコンシーケンスバリアント(ASV)において重複する配列を取り除き、正確な代表配列のリストを作成した。ASVとは、上述したように、DADA2パイプラインによって解決される正確な配列を指す。その結果、各サンプルについてASVが測定された回数を記録したASV表が作成された。合計974個の特徴が確認された。分類は、Greengenesデータベースを用いて、99%の配列相同性に基づいて事前にトレーニングされた分類器を用いて行った。α多様性の測定は、5171配列のサンプル深度を用いて計算した。
【0068】
コミュニティシーケンシングデータの統計分析は、QIIMEおよびRStudio(ver 3.4.3)を用いて行った。シャノンインデックスおよびASV測定値という、2つの異なるα多様性の測定値が計算された。各処理および時点間のペアワイズ比較は、クラスカル・ウォリス検定(Kruskal-Wallis test)を用いて行った。すべての統計的検定にFDR補正を導入し、有意性のカットオフ値には0.05を用いて判定した。β多様性については、主座標分析(PCoA)と主成分分析(PCA)のプロットを作製し、コミュニティの構成を比較した。vegan(github.com/vegandevs/vegan)パッケージを用いて、Bray Curtis距離を計算し、PERMANOVA解析を行った。96時間後のXOS存在下における処理間の特定のASVの相対的な存在量の比較は、Wilcoxonの順位和検定を用いて行い、Metacoderを用いて視覚化した。相対的な存在量が0.1%以上であった分類群のみを分析対象とした。
【0069】
短鎖/分枝鎖脂肪酸(S/BCFA)分析
【0070】
YangやRoseと同様に、ガスクロマトグラフィーを用いて、すべてのサンプル時間における20個の糞便サンプルすべてについて、S/BCFA濃度を測定した。端的に説明すると、0.4mlの発酵上清を約0.16gのNaClと0.2mlの9M硫酸でボルテックス(攪拌)した。次いで、0.5mlのジエチルエーテルを加え、チューブを振とうし、短時間遠心分離した。次いで、抽出液1μlを、フューズドシリカキャピラリーカラム(Nukol 30m x 0.25mm内径 x 0.25μm膜厚、Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ、米国)を備えたガスクロマトグラフ(Clarus 580、PerkinElmer、Waltham、マサチューセッツ、米国)に注入した。S/BCFAの定量化は、上述したように実行された。6つのサンプルについては、分析物の量が不十分であったため定量化できなかった。そのため、これらのサンプルのいずれかに該当する対象を除外し、20人中14人の対象のS/BCFA濃度を最終的な統計分析に用いた。各時点での治療法間の比較のために、Kruskal Wallis検定およびFDR調整を行ったWilcoxon順位和検定を実施した。
【0071】
PICRUStを用いて、16Sデータからの分類学的な存在量を、Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes(KEGG)Ontologyデータベースに基づき、機能的なS/BCFA代謝遺伝子に関連づけた。また、16Sシーケンシングデータと入手可能なすべてのS/BCFA濃度を用いて、分類群およびS/BCFAの相関分析も実施した。さらに、各処理について、分類群とS/BCFA予測代謝遺伝子の平均相対存在量を可視化した。
【0072】
結果
【0073】
XOSを利用したビフィドバクテリウム株の集積
【0074】
まず、3つの異なる糞便ドナーサンプルを用いた集積実験から、合計60のビフィズス菌分離株が得られた。集積が成功すると、100倍に希釈するたびに、特定の細菌種が増加または回復することが予測される(図1A)。集積されなかった菌は、4回の発酵サイクル(約25世代)が終了した時点で、低濃度で存在しているか、完全にウォッシュアウトしたこと(検出レベル未満である)が予想される。得られた60株について、16S rRNAのサンガー法による配列をBLASTnで同定した結果、7つのユニークなビフィズス菌株が得られた。これらには、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスの5つの菌株、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムおよびビフィドバクテリウム・ロンガムのそれぞれ1つの菌株が含まれていた。qPCRを用いて属レベルで定量化した結果、3つのサンプルすべてにおいて総ビフィドバクテリウムが集積されていることが明らかになった。具体的には、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス種の集積を示すサンプルから1つのビフィドバクテリウム・アドレセンティスが得られ(図1B)、このビフィドバクテリウム・アドレセンティス CR11をその後の樹立実験に選択した。
【0075】
ビフィドバクテリウム・アドレセンティス CR11の樹立およびビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の驚くべき発見
【0076】
インビトロの糞便環境で菌株を樹立する能力は、試験菌株をプレバイオティクスと一緒に導入したことを除いて、XOSを用いた集積と同様の方法で樹立実験を実施することにより評価した。試験期間中に試験菌株が持続することを樹立の成功とし、試験期間中に試験菌株の存在量の減少またはウォッシュアウトを樹立の失敗とした。発酵開始時にプレバイオティクスと一緒にビフィドバクテリウム・アドレセンティス CR11を新たな糞便サンプルに再導入したところ、属特異的qPCRによる定量化により、当初はビフィドバクテリウムの集積が観察された(図1C)。驚くべきことに、種特異的qPCRに基づくと、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスが他のビフィズス菌に置き換わっていることは明らかであった。実際、その後に培養によって回収されたすべての分離株(n=10)は、16Sサンガーシーケンシングによってビフィドバクテリウム・ロンガムとして同定された。
【0077】
次いで、このビフィドバクテリウム・ロンガム株(ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15と同定され、命名された)を別の糞便サンプルに導入した。定量化してみると、ビフィドバクテリウム・ロンガム種が安定して増加しており、分離株(n=10)の100%がビフィドバクテリウム・ロンガムと同定された(図1D)。ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15をmMRS-XOSで培養したところ、この菌は重合度の低いポリマーを優先してXOSを利用することがわかった。
【0078】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15のゲノムアセンブリとアノテーション
【0079】
全ゲノム配列データ(合計296Mbp)を作製し、2.4Mbpのドラフトゲノムをリファレンスゲノムに対して96%のカバレッジでアセンブルした。CAZyデータベースのアノテーションにより、XOSの利用に関連するタンパク質がいくつか同定されたが、その中には、グリコシルヒドロラーゼであるGH43とGH120、糖鎖結合分子であるCBM6とCBM22が含まれる。また、ProkkaとTransAAPを用いて、D-キシルロース5リン酸(xfp)、キシロースイソメラーゼ(xylA)、キシルロキナーゼ(xylB)、β-キシロシダーゼ(xynB)、キシロースインポートATP結合タンパク質(xylG)、キシロース輸送系パーミアーゼタンパク質(xylH)、ABC型キシロース輸送系(xylF)など、関連する糖輸送・利用遺伝子をアノテーションした。次いで、アデニン特異的メチルトランスフェラーゼPaeR71遺伝子をターゲットとする菌株特異的プライマーをゲノムから設計した。
【0080】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立のホスト依存
【0081】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15およびXOSによる追加の樹立実験は、20の個別のドナーサンプルを使用して行われた。XOSの非存在下での実験は並行して実施され、対照として機能した。XOSの存在下において、株特異的qPCRによる定量化により、CR15菌株が7のサンプルで明確に樹立されたことが明らかになり、他の11サンプルでは、中間的な樹立を示した(図3および図4A~4B)。後者には、CR15レベルが発酵の開始と終了の間で変動したか、2ログ以下で減少したサンプルが含まれていた(図4C)。2つのサンプルでのみ、CR15株が樹立されなかった(図4D)。ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15は、プレバイオティクスを含まない対照では減少するか、完全にウォッシュアウトした。
【0082】
XOS処理による糞便中の微生物コミュニティの異なる方向へのシフト
【0083】
次いで、16Sアンプリコンシーケンシングを実行して、10個のサンプルのサブセットにおけるコミュニティ構造の変化を調査した。サンプルの経時的なα多様性を評価するために、シャノンインデックスとアンプリコンシーケンスバリアント(ASV)測定値を計算した。いずれの処理でも、0時間から24時間の間に多様性が最初に大きく減少した(FDR<0.05)(図5A~5B)。ただし、最初の24時間時点以降、それ以上の変化は測定されなかった。発酵期間を通して、XOSを追加したサンプルの多様性は、プレバイオティクスを含まない対照よりも有意に低かった(FDR<0.05)。ベースラインおよび発酵終了時のサンプルのβ多様性分析を、Bray-Curtis距離に基づく主座標分析(PCoA)を用いて可視化した。ベースラインのサンプルは一緒にクラスター化したが、96時間後の発酵サンプルは処理に応じて明らかに別々にクラスター化した(図5C)。主成分分析(PCA)により、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、およびエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)がXOS群のドライバーであることが明らかになった(図5D)。
【0084】
16S rRNAシーケンスの分類学的分析により、XOSの存在下で高度なビフィドジェニック反応が見られ、XOS非存在下での対照群では測定されなかったラクトバシラス属(Lactobacillus)の有意な集積が見られた(図6A)。また、96時間後には、XOSによる処理とXOSによらない処理の両方で、エンテロコッカスの集積を測定した(図6A~6B)。3種類のビフィドバクテリウムのASVについて、発酵期間中のビフィドジェニック反応への貢献度を調べた(図7A~7C)。これらの特異的配列変異体を、NCBI nrデータベースにおいてBLASTnを実行した結果、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、およびビフィドバクテリウム・アドレセンティスの各種に属することが判明した。これらの種は、発酵後に得られた分離株の16Sサンガーシーケンシングからも観察されている。
【0085】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15およびビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの共集積
【0086】
追加の分析により、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよびビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムのASVの平均存在量が処理間で異なることが明らかになった。最初の24時間で、ビフィドバクテリウム・ロンガムASVの平均相対存在率は、XOS存在下の発酵では4%から43%に増加したが、プレバイオティクスを使用しない対照群では11%までしか増加しなかった(図7A)。その後、いずれの処理でもビフィドバクテリウム・ロンガムASVの量は減少したが、96時間後の残存率について、対照群ではわずか1%であったのに対し、XOS存在下の発酵群では10%であった(図7A)。さらに、XOSを添加した発酵では、96時間後のビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムASVは平均で4%から29%に増加した(図7B)。ビフィドバクテリウム・アドレセンティスASVの存在量は、XOS存在下での処理、XOS非存在下での処理のいずれの発酵においても、少ないことが測定された(図7C)。
【0087】
CR15の持続性に対するビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの効果を、種レベルのqPCRによって決定した。ほとんどのケース(n=11)では、ベースラインにおいて、糞便サンプル中にビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムが存在しなかった(すなわち、検出されなかった)場合には、発酵中も低いレベルが続き、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立に成功した(図8B)。一方、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムは、ベースライン(n=9)において、検出可能なレベルのCR15が存在していれば、持続して共存することができた(図8A)。
【0088】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の持続性の可能性をさらに調査するために、20の糞便サンプルのうち4つのサブセットを用いて7日間のウォッシュアウト実験(washout experiment)を実施した。2つのサンプル(対象3および4)では、7日目までビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の高い数値を維持していた。しかし、他の2つのサンプル(対象14および16)では、XOSの存在下においても、7日目までにビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15が減少またはウォッシュアウトした(図10A、10B)。その後、これらの7日目のサンプルの16Sアンプリコンシーケンシングを実行したところ、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスおよびビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムに対応する2つのASVが大量に存在することが判明した(図10C、10D)。この7日間の発酵実験により、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15のXOSへの依存性およびホスト依存反応がさらに明らかになった。サンプルには最初にXOSが添加され、最初の3日間は段階的な移行が実行された。3日目には、XOSを含む発酵槽とXOSを含まない発酵槽に並行して移す分割を行った。その後、分割時のそれぞれの処理に次いで、4日目から7日目まで段階的な移行を実行した。16Sシーケンシングを、0、3、4、および7日目のサンプルに対して実行した。ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の16S RNAシーケンスは配列番号13であり、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム CR16の16S RNAシーケンスは配列番号14である。
【0089】
XOSを添加した発酵における、酢酸の集積
【0090】
20のビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の樹立実験のすべてについて、XOSの存在下および非存在下の短鎖および分岐鎖脂肪酸(S/BCFA)のプロファイルを得た。すべての時点で、酢酸が最も高く、次にプロピオン酸と酪酸が低かった(表4)。24時間後には、酢酸および総SCFAがプレバイオティクス群で有意に高かったのに対し、48時間後には、酪酸とプロピオン酸が対照群で有意に高かった。96時間後には、BCFAであるイソブチレートおよびイソバレレートが対照群で有意に高くなった。24時間後には、いずれの処理方法でもSCFAの生成量はおおむね安定していた。
【0091】
表4は、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15を用いた樹立実験の発酵上清のS/BCFA濃度を示す。
【0092】
【表4】
【0093】
「SEM」は、平均の標準誤差(standard error of mean)を指す。「*」は前回の時点との有意差を示す。「†」は同一時点内でのXOS処理および対照処理の間の有意差を示す。「SCFA」は短鎖脂肪酸を指し、「BCFA」は分岐鎖脂肪酸を指す。
【0094】
PICRUStを用いて、酢酸と酪酸の生成に関与することが予測される代謝遺伝子の処理間における存在量の違いを評価した。具体的には、酪酸キナーゼ、酢酸キナーゼ、およびアセチル-CoAトランスフェラーゼの各遺伝子について調べた。予想通り、メタゲノム予測では、XOS群において酢酸キナーゼ遺伝子のレベルがより高いことを示した。同様に、対照群では高レベルの酪酸キナーゼおよびアセチルCoAトランスフェラーゼ遺伝子も予測された(図9)。さらに、これらの遺伝子に対するファミリーレベルの分類学上の寄与を調べたところ、プレボテラ科(Prevotellaceae)、パラプレボテラ科(Paraprevotellaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、リケネラ科(Rikenellaceae)が酪酸キナーゼに寄与していることを示唆していた。アセチル-CoAトランスフェラーゼと酢酸キナーゼには、それぞれ11と46の分類群が寄与していることが確認された。その中で、酢酸キナーゼに寄与する分類群は、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)およびラクトバシラス科(Lactobacillaceae)であり、エンテロバクター科(Enterobacteriaceae)とラクノスピラ科(Lachnospiraceae)であった。ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)がアセチル-CoAトランスフェラーゼに寄与することが同定された。また、属の存在量とS/BCFA濃度との相関分析では、ビフィドバクテリウム属およびラクトバシラス属がアセテートと有意な正の相関を持つことが確認された(図9)。エガセラ属(Eggerthella)、バクテロイデス属(Bacteroides)、ラクノスピラ科は、酪酸およびプロピオン酸と正の相関を示したいくつかの属に含まれていた。
【0095】
ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15の全ゲノム配列(配列番号5)は、NCBIデータベースのPRJNA540282およびPRJNA540304にそれぞれアップロードされており、発酵サンプルの16S rRNAシーケンシングは、NCBIデータベースにアップロードされており、PRJNA540282およびPRJNA540304にそれぞれ掲載されている。
【0096】
議論
【0097】
本研究では、プレバイオティクスが集積された菌株を分離するためのインビトロ 集積(IVE)プラットフォームを開発した。このプラットフォームは、同種のプレバイオティクスと組み合わせて相乗的シンバイオティクスを形成することができる。集積は、ビフィドジェニックおよび選択性の高い基質であるXOSを用いて実施した。全体として、15のユニークなビフィドバクテリウム分離株が得られた。すべては、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、ビフィドバクテリウム・ロンガム、およびそれらの抽出物またはそれらの組み合わせであるビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム、およびビフィドバクテリウム・ロンガムの3種のいずれかに属し、これらは成人に見られる主要な常在ビフィドバクテリウムである。これらの3種のうち、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスおよびビフィドバクテリウム・ロンガムは、プロバイオティクス特性およびXOS存在下での増殖の可能性について十分に研究されている。対照的に、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムに対するプロバイオティクスの可能性は十分に調査されていない。しかし、XOSを含む食物繊維を発酵させることが知られている。
【0098】
プレバイオティクスによる菌株の集積と比較して、菌株の樹立はより複雑かつ困難なプロセスである。実際、補給期間が終了した後にプロバイオティクス微生物が持続することはほとんどない。これは、腸内細菌の個性や競争の激しさ、生態系のニッチが開いていないことなどが原因となっている。これらの要因が、食事療法による試験でよく見られるレスポンダー/ノンレスポンダー現象の原因であると考えられる。このように、利用可能な生態的または機能的ニッチがないと、特定の菌株の樹立が阻害されたり、妨げられたりする可能性がある。
【0099】
対照的に、プレバイオティクスや他の特殊な栄養素を適切なプロバイオティクスと一緒に提供することで、新しい栄養のニッチを提供し、持続性を高め、ノンレスポンダーの表現型が発生する頻度を減らすことができる。今回のインビトロ試験では、XOSが豊富なビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15株およびXOSを組み合わせることにより、20のユニークな糞便サンプルのほとんどで菌株の樹立が促進され、定常的な個体群は約107CFU/mlに維持された。持続性の表現型にはばらつきが見られたが、CR15株を持続できなかったのはわずか2つのサンプルであった。菌株の樹立がXOSに依存することは、プレバイオティクス非存在下での発酵において、CR15が急速にウォッシュアウトしたことにより確認された。
【0100】
qPCRは特定の属、種、菌株の個体数を測定するのに有効であったが、コミュニティシーケンシングは微生物組成の変化を評価するための独立した基盤を提供した。分類学上の結果から、XOSの添加によりビフィドバクテリウム・ロンガムが集積されたことが確認された。この測定結果は、高濃度で存在する特定のビフィドバクテリウム・ロンガム ASVがCR15株を代表するものであることも示唆しているが、16Sシーケンスによく類似する他の近縁のビフィドバクテリウム・ロンガム株で構成されている可能性もある。
【0101】
興味深いことに、コミュニティ分析では、ビフィドバクテリウム・ロンガム ASV/CR15株が必ずしも優勢なビフィドバクテリウムではないことも明らかになった。いくつかのサンプルでは、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムおよびビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの2種類のASVが発酵中に見られ、XOSの存在によってこれらの成長が明確にサポートされていた。特に、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムは、複数のサンプルにわたって大量に存在していた。このことはqPCRによっても確認され、ベースライン上にある場合、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムのレベルは発酵期間中を通して高いままであった。いずれの方法でも、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムはXOSによっても集積されることが示唆された。いくつかのサンプルでは、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの存在量が多いときにビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガムの存在量が相対的に少ないことが測定され、これらの2つの微生物がニッチな競争相手であることが示唆された。
【0102】
シンバイオティクス処理では、α多様性測定値が優位に低下したが、これはビフィズス菌が集積されたためだと考えられる。この結果は、PCAプロットでも確認され、ビフィドバクテリウムが2つの処理を区別する主要なドライバーとなった。多様性の低下は、繊維発酵のインビトロ研究で以前に測定されている。
【0103】
段階的発酵が7日間に延長されたとき、CR15は最初の4日間、XOSの存在下で再び持続した。ところが、4日目以降の持続性は大きく変動した。CR15がウォッシュアウトしてしまうと、ビフィドバクテリウム・アドレセンティスとビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムの個体数の増加が測定された。
【0104】
SCFAは、炭水化物の発酵に関連する腸内代謝の有益な副産物である。他のSCFAと同様、酢酸は上皮細胞のエネルギー源となり、腸内で生成されるSCFA全体の中で高い割合を占めている。XOS存在下では、より高い濃度の酢酸がビフィドバクテリウムによる発酵に起因すると考えられるが、集積された乳酸菌(図6A)が酢酸を生成した可能性もある。しかし、酪酸のレベルが低いことは予想外であった。これは、ビフィズス菌が豊富に存在すると、酢酸を産生するビフィズス菌および酢酸を消費する酪酸を産生するビフィズス菌の間で起こる代謝のクロスフィーディングが酪酸の産生量と相関しているためである。とりわけ、リビエールら(2015)は、ビフィドバクテリウム・ロンガムおよびユーバクテリウム・レクターレ(Eubacterium rectale)の菌株の共培養発酵において、アラビノキシランオリゴサカリド(AXOS)のビフィドジェニック効果およびブチロジェニック効果の両方を実証した。16Sシーケンスデータからの遺伝子予測により、特定の酢酸および酪酸遺伝子をターゲットにしたところ、インビトロシステムでは、酢酸キナーゼが酪酸キナーゼおよびアセチル-CoAトランスフェラーゼに比べて高濃度で存在することが確認された。また、XOS発酵液でも、プレバイオティクスなしの対照液に比べて同様の傾向が見られた。さらに、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)およびルミノコッカス科(Ruminococcaceae)に属するルミノコッカス属(Ruminococcus)、コプロコッカス属(Coprococcus)、およびオシロスピラ属(Oscillospira)などの酪酸生産者も、プレバイオティクスなしの対照群でより多く存在していた。これは、酪酸生産者が、連続した移行処理中にウォッシュアウトしたという可能性を示唆している。同様の所見が、乳児の糞便サンプルを使用したインビトロ発酵モデルでも得られた。ただし、インビボの条件下では、CR15が生産する高濃度の酢酸は、酪酸生産者をクロスフィードし、酪酸レベルを上昇させ、ホストに健康上のメリットをもたらすことが期待される。
【0105】
後者の研究では、乳児の糞便発酵物にGOSを補給すると、高濃度の酢酸、低濃度の酪酸および低pHの糞便でのビフィドジェニック効果が発揮された。興味深いことに、pHは細菌群およびインビトロでのSCFAの産生に影響を与えることが以前に報告されている。このことから、糞便群およびその代謝副産物を研究するためのバッチ式インビトロモデルを設計する際には、バッファリングやpHコントロールの改善を考慮する必要があると考えられる。
【0106】
プレバイオティクスは、幾分、ホスト微生物による利用という点から定義されている。
ビフィズス菌において発生するXOSの輸送および利用の具体的なメカニズムについては、まだ機能的な実証が確立されていないが、2つのモデルが提案されている。あるモデルでは、細胞外のキシロース分解酵素がXOSを分解した後、キシロースモノマーが細胞内に輸送される。あるいは、ABC輸送システムによってXOSが輸送され、細胞内のXOSが加水分解される。得られたキシロースモノマーはリン酸化されてキシルロース-5-Pを形成し、ビフィドバクテリウムのシャントに入る。GH8、GH43、およびGH120など、予測上のグリコシルヒドロラーゼをコードする遺伝子群が確認されている。これらのクラスターには、非還元末端β-キシロシダーゼ(non-reducing end β-xylosidase)、還元末端から単糖を遊離するエキソ型キシラナーゼ(reducing-end xylose-releasing exo-oligoxylanase)、およびエンド-1,4-β-キシラナーゼ(endo-1,4- β-xylanase)をコードする遺伝子が含まれ、それぞれが好ましいオリゴマー長を有する。現在のゲノムアノテーションに基づくと、ビフィドバクテリウム・ロンガム・亜種・ロンガム CR15にGH43、GH120クラスターとABC型パーミアーゼをコードする遺伝子が存在することから、この菌株はXOSを細胞内で分解することができると考えられる。
【0107】
他のインビトロモデルと同様に、IVEメソッドには制限がある。ただし、これらの制限にもかかわらず、IVEモデルは、潜在的に相乗効果のある組み合わせを特定し、それらのペアを複数のサンプルでテストするための有用なツールとして機能する。このようなインビトロの方法論は、これらの製剤を検証するためのインビボ試験の前に、菌株の発見とシンバイオティクスの組み合わせのプロセスを加速させることができる。最後に、より洗練され、かつコントロールされたインビトロモデルは、より高い処理能力の基盤となり、短時間で収集できる菌株のライブラリを増やすことができる。
【0108】
シンバイオティクスの組み合わせを特定する他の試みは、一般的に、以前に分離されたプロバイオティクス菌株と1つ以上のプレバイオティクスを組み合わせることに依存している。実際、これらのシンバイオティクスと文献に記載されている他の多くのシンバイオティクスの組み合わせは、補完的なものであると考えられる。これらのアプローチは、プロバイオティクス成分として特徴のある菌株を使用するという利点を有するが、プレバイオティクスがインビボでのプロバイオティクスの成長を必ずしもサポートするという先験的な理由はない。したがって、本研究で述べられた集積法は、プレバイオティクスをめぐって他の常在微生物を打ち負かすと予測されるプロバイオティクス菌株を同定するための基礎となるものである。このようなプロバイオティクスおよびプレバイオティクスの組み合わせは、ホストに健康上の利益をもたらすものであれば、相乗効果のあるシンバイオティクスの定義を満たすことになる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
【配列表】
2022529054000001.app
【国際調査報告】