(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(54)【発明の名称】冷却された機械的循環補助システムおよび操作の方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20220609BHJP
A61M 60/148 20210101ALI20220609BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20220609BHJP
A61M 60/806 20210101ALI20220609BHJP
A61M 60/81 20210101ALI20220609BHJP
A61M 60/865 20210101ALI20220609BHJP
A61M 60/855 20210101ALI20220609BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20220609BHJP
A61F 7/00 20060101ALI20220609BHJP
A61M 60/411 20210101ALN20220609BHJP
【FI】
A61M1/36 175
A61M60/148
A61M60/237
A61M60/806
A61M60/81
A61M60/865
A61M60/855
A61M25/00 600
A61F7/00 310J
A61F7/00 310A
A61M60/411
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561897
(86)(22)【出願日】2020-04-18
(85)【翻訳文提出日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 US2020028876
(87)【国際公開番号】W WO2020215032
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフィー ノーム
(72)【発明者】
【氏名】クラン ジェラルド
【テーマコード(参考)】
4C077
4C099
4C267
【Fターム(参考)】
4C077CC03
4C077CC09
4C077DD10
4C077DD18
4C077JJ03
4C077JJ15
4C099AA02
4C099CA20
4C099EA05
4C099EA08
4C099GA30
4C099JA02
4C267AA05
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB05
4C267BB14
4C267BB26
4C267CC08
(57)【要約】
冷却要素を有する、心臓のための機械的循環補助システム、および心臓エピソードの影響を処置すべく該システムを用いるための方法を開示する。補助システムは、遠位端と近位端とを有するポンプを有し、ポンプは、少なくとも1つのブレードを有するローターを含む。システムは、遠位端と、近位端と、内面と、外面とを有するカテーテルも有し、カテーテルは、ポンプハウジングに対して近位側に延在する。カテーテルの外面は、患者の血管系内に配置された場合に血液と接触するように構成されている。カテーテルの外面は、外面と接触する血液を冷却するために構成された熱伝達面を含む。冷却要素は、カテーテル表面に沿って延在する螺旋もしくは二重螺旋、または表面上のペルチェ素子のいずれかであり得る。補助システムは、カテーテルの外面と接触している循環血液を心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止するように選択された温度まで冷却するように選択された温度を提供するように操作される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位端と近位端とを有するポンプであって、該ポンプはローターを含み、該ローターは少なくとも1つのブレードを有する、ポンプと、
該ローターの該少なくとも1つのブレードを取り囲む、ポンプハウジングと、
遠位端と、近位端と、内面と、外面とを有するカテーテルであって、該カテーテルは、該ポンプハウジングに対して近位側に延在し、該外面は、患者の血管系内に配置された場合に血液と接触するように構成されている、カテーテルと
を含む、心臓のための機械的循環補助システムであって、
該カテーテルの該外面は、該外面に接触する血液を冷却するために構成された熱伝達面を含む、
心臓のための機械的循環補助システム。
【請求項2】
熱伝達面が、カテーテルの外面を冷却するように構成されている、請求項1記載の機械的循環補助システム。
【請求項3】
冷却要素をさらに含む、請求項1記載の機械的循環補助システム。
【請求項4】
冷却要素がカテーテル内に延在する、請求項3記載の機械的循環補助システム。
【請求項5】
冷却要素が、カテーテルの内面を冷却するように構成されている、請求項3記載の機械的循環補助システム。
【請求項6】
内面の冷却が、熱エネルギーをカテーテルの外面から離して伝導させて該外面を冷却するように構成されている、請求項5記載の機械的循環補助システム。
【請求項7】
冷却要素が、カテーテルの外面を冷却するように構成されている、請求項6記載の機械的循環補助システム。
【請求項8】
冷却要素が管腔として形成されている、請求項3記載の機械的循環補助システム。
【請求項9】
管腔が、カテーテルの長さに沿って2回延在するように構成されている、請求項8記載の機械的循環補助システム。
【請求項10】
管腔が、冷却された溶液の入口として構成された第1の近位開口と、該冷却された溶液の出口として機能する第2の近位開口とを有する、請求項8記載の機械的循環補助システム。
【請求項11】
管腔が沿って延在する第1のフロー部分が、近位端から遠位端までであり、かつ管腔が沿って延在する第2のフロー部分が、遠位端から近位端までである、請求項10記載の機械的循環補助システム。
【請求項12】
第1のフロー部分が第1の一重螺旋を形成し、かつ第2のフロー部分が第2の一重螺旋を形成する、請求項11記載の機械的循環補助システム。
【請求項13】
第1の一重螺旋と第2の一重螺旋とが、カテーテルの円周の2分の1だけ互いにオフセットしており、該第1および第2の一重螺旋が、二重螺旋を形成する、請求項12記載の機械的循環補助システム。
【請求項14】
2つの内腔を有する一重螺旋を形成するように、第1の一重螺旋が第2の一重螺旋に隣接して配置されている、請求項12記載の機械的循環補助システム。
【請求項15】
冷却要素が、カテーテルの長さに沿って配置されたペルチェ素子である、請求項3記載の機械的循環補助システム。
【請求項16】
冷却要素が、カテーテルの外面と接触している血液をある全身温度まで冷却する、請求項3記載の機械的循環補助システム。
【請求項17】
全身温度が、摂氏約32~約33度である、請求項16記載の機械的循環補助システム。
【請求項18】
冷却要素によって形成された二重螺旋のピッチが、約0.1ミリメートル~約10ミリメートルである、請求項13記載の機械的循環補助システム。
【請求項19】
カテーテルの内面に接触するように構成された二重螺旋の表面積が、カテーテルの表面積の少なくとも60パーセントをカバーしている、請求項13記載の機械的循環補助システム。
【請求項20】
前記冷却された溶液が、晶質液を含む、請求項10記載の機械的循環補助システム。
【請求項21】
晶質液が通常の生理食塩水である、請求項20記載の機械的循環補助システム。
【請求項22】
カテーテル内に冷却要素を含む機械的循環補助装置を、患者の血管系に導入する工程、
カテーテルの外面が血管系内を流れる血液と接触するように、血管系内にカテーテルを配置する工程、
患者内に血液を循環させるために、機械的循環補助装置を作動させる工程、および
機械的循環補助装置を作動させている間に、冷却要素をアクティブにして、カテーテルの外面と接触している循環血液をある全身温度まで冷却するように選択された温度まで、カテーテルの外面をある期間冷却する工程
を含む、患者における心臓エピソードの影響を処置するための方法。
【請求項23】
前記温度が、心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止するように選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
心臓エピソードが心筋梗塞である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
心臓エピソードの影響が瘢痕である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
全身温度が、華氏37度未満である、請求項22記載の方法。
【請求項27】
全身温度が、摂氏約32~約33度である、請求項22記載の方法。
【請求項28】
血液が約10~約15分間冷却される、請求項22記載の方法。
【請求項29】
機械的循環補助装置が、患者の心臓の左側に挿入される、請求項22記載の方法。
【請求項30】
患者の心臓の右側に第2の機械的循環補助システムを導入する工程をさらに含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
第2の機械的循環補助システムが患者の心臓の右側に導入される前に、機械的循環補助システムが患者の心臓の左側に導入される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
第2の機械的循環補助システムが患者の心臓の右側に導入された後に、機械的循環補助システムが患者の心臓の左側に導入される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
心臓の右側の負荷を軽減しかつ心臓の右側を冷却し、一方で、心臓の左側を冷却しかつ心臓の左側の負荷を軽減する工程をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
機械的循環補助装置が、内蔵モーターで作動するように構成されている、請求項22記載の方法。
【請求項35】
カテーテルが、遠位端、近位端、内面、および外面をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項36】
冷却要素が、カテーテルの近位端から遠位端まで延在しかつ該近位端まで戻るように構成されている、請求項35記載の方法。
【請求項37】
冷却要素がカテーテルの内面に接触している、請求項35記載の方法。
【請求項38】
冷却要素が、冷却された溶液を受けるように構成された管腔である、請求項22記載の方法。
【請求項39】
管腔が、前記冷却された溶液の入口として構成された第1の近位開口と、前記冷却された溶液の出口として構成された第2の近位開口とを有する、請求項38記載の方法。
【請求項40】
管腔が、カテーテルの長さに沿って2回延在するように構成されている、請求項38記載の方法。
【請求項41】
冷却要素がペルチェ素子である、請求項22記載の方法。
【請求項42】
カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端まで冷却要素が沿って延在する第1の経路が、第1の螺旋を形成する、請求項35記載の方法。
【請求項43】
カテーテルの遠位端からカテーテルの近位端まで冷却要素が沿って延在する第2の経路が、第2の螺旋を形成する、請求項42記載の方法。
【請求項44】
第1および第2の螺旋が、カテーテルの遠位端において流体接続している、請求項43記載の方法。
【請求項45】
第1の螺旋と第2の螺旋とが、カテーテルの遠位端においてカテーテルの円周に沿ってある角度でオフセットしている、請求項43記載の方法。
【請求項46】
第1の螺旋と第2の螺旋との間のオフセットの角度が0度である、請求項45記載の方法。
【請求項47】
第1および第2の螺旋が二重螺旋を形成するように、第1の螺旋と第2の螺旋との間のオフセットの角度が180度である、請求項45記載の方法。
【請求項48】
冷却要素によって形成された二重螺旋のピッチが、約1ミリメートル~約10ミリメートルである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
二重螺旋が、カテーテルの内面に接触するように構成されており、かつカテーテルの面積の60%をカバーしている、請求項47記載の方法。
【請求項50】
前記冷却された溶液が、晶質液を含む、請求項39記載の方法。
【請求項51】
晶質液が通常の生理食塩水である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
ペルチェ素子が、約0.1アンペア~約2アンペアの電流を受けるように構成されている、請求項41記載の方法。
【請求項53】
カテーテル内に冷却要素を含む機械的循環補助システムを、患者の血管系に導入する工程であって、該冷却要素は、冷却された溶液を受けるように構成された管腔である、工程、
カテーテルの外面が血管系内を流れる血液と接触するように、血管系内にカテーテルを配置する工程、
機械的循環補助システムを作動させる工程、および
補助システムを作動させている間に、該冷却された溶液を管腔に注入して、カテーテルの外面と接触している血液をある全身温度まで冷却するように選択された温度まで、カテーテルの外面をある期間冷却する工程
を含む、患者における心臓エピソードの影響を処置するための方法。
【請求項54】
前記選択された温度が、心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止するように選択される、請求項53記載の方法。
【請求項55】
心臓エピソードが心筋梗塞である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
心臓エピソードの影響が瘢痕である、請求項54記載の方法。
【請求項57】
全身温度が、華氏37度未満である、請求項53記載の方法。
【請求項58】
全身温度が、摂氏約32~約33度である、請求項53記載の方法。
【請求項59】
血液が約10~約15分間冷却される、請求項53記載の方法。
【請求項60】
機械的循環補助システムが、患者の心臓の左側に挿入される、請求項53記載の方法。
【請求項61】
患者の心臓の右側に追加の機械的循環補助システムを導入する工程をさらに含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
心臓の右側の負荷を軽減しかつ心臓の右側を冷却し、一方で、心臓の左側を冷却しかつ心臓の左側の負荷を軽減する工程をさらに含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
機械的循環補助システムが内蔵モーターで作動する、請求項53記載の方法。
【請求項64】
カテーテルが、遠位端、近位端、内面、および外面をさらに含む、請求項53記載の方法。
【請求項65】
管腔が、カテーテルの近位端から遠位端まで延在しかつ該近位端まで戻るように構成されている、請求項64記載の方法。
【請求項66】
管腔がカテーテルの内面に接触している、請求項64記載の方法。
【請求項67】
カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端まで管腔が沿って延在する第1の経路が、第1の螺旋を形成する、請求項64記載の方法。
【請求項68】
カテーテルの遠位端からカテーテルの近位端まで管腔が沿って延在する第2の経路が、第2の螺旋を形成する、請求項67記載の方法。
【請求項69】
第1および第2の螺旋が、カテーテルの遠位端において流体接続している、請求項68記載の方法。
【請求項70】
第1の螺旋と第2の螺旋とが、カテーテルの遠位端においてカテーテルの円周に沿ってある角度でオフセットしている、請求項68記載の方法。
【請求項71】
第1の螺旋と第2の螺旋との間のオフセットの角度が0度である、請求項70記載の方法。
【請求項72】
第1および第2の螺旋が二重螺旋を形成するように、第1の螺旋と第2の螺旋との間のオフセットの角度が180度である、請求項70記載の方法。
【請求項73】
管腔によって形成された二重螺旋のピッチが、約1ミリメートル~約10ミリメートルである、請求項72記載の方法。
【請求項74】
カテーテルの内面に接触するように構成された二重螺旋が、カテーテルの面積の60%をカバーしている、請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記冷却された溶液が、晶質液を含む、請求項53記載の方法。
【請求項76】
晶質液が通常の生理食塩水である、請求項75記載の方法。
【請求項77】
カテーテル内に冷却要素を含む機械的循環補助システムを、患者の血管系に導入する工程であって、該冷却要素は、第1の導体および第2の導体を含むペルチェ素子であり、該第1の導体および第2の導体は、異なる電子密度を有しており、電流を受けるように構成された第1のワイヤーに固定されている、工程、
カテーテルの外面が血管系内を流れる血液と接触するように、血管系内にカテーテルを配置する工程、
機械的循環補助システムを作動させる工程、および
機械的循環補助システムを作動させている間に、第1のワイヤーを通じて第1の導体と第2の導体の接合部に電流を流して、患者の血管系を流れる血液を選択された温度まで冷却し、心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止する工程
を含む、患者における心臓エピソードの影響を処置するための方法。
【請求項78】
前記選択された温度が、心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止するように選択される、請求項77記載の方法。
【請求項79】
心臓エピソードが心筋梗塞である、請求項78記載の方法。
【請求項80】
心臓エピソードの影響が瘢痕である、請求項78記載の方法。
【請求項81】
前記選択された温度が、華氏37度未満である、請求項77記載の方法。
【請求項82】
前記選択された温度が、摂氏約32~約33度である、請求項77記載の方法。
【請求項83】
血液が約10~約15分間冷却される、請求項77記載の方法。
【請求項84】
機械的循環補助システムが、患者の心臓の左側に導入される、請求項77記載の方法。
【請求項85】
患者の心臓の右側に追加の機械的循環補助システムを導入する工程をさらに含む、請求項84記載の方法。
【請求項86】
心臓の右側の負荷を軽減しかつ心臓の右側を冷却し、一方で、心臓の左側を冷却しかつ心臓の左側の負荷を軽減する工程をさらに含む、請求項85記載の方法。
【請求項87】
カテーテルが、遠位端、近位端、内面、および外面をさらに含む、請求項77記載の方法。
【請求項88】
ペルチェ素子が、カテーテルの近位端から遠位端まで延在しかつ該近位端まで戻るように構成されている、請求項87記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は「Cooled Impella」と題した2019年4月19日に出願の米国仮特許出願第62/836,534号の出願日の恩典を主張し、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
心臓から動脈に血液を送達するために心臓内または血管内血液ポンプなどの機械的循環補助システムが心臓に導入され得る。そのような機械的循環補助装置は、患者が心臓エピソードを被った後に心臓の機能を補助するために導入されることが多い。1つのそのような種類の装置は「インペラ(Impella)」心臓ポンプとして公知の一連の装置である。一部の血液ポンプアセンブリは心臓手術時に経皮的に血管系を通じて導入され得る。具体的には、血液ポンプアセンブリは、カテーテル法を介して、大腿動脈または腋窩/鎖骨下動脈を通じて上行大動脈に入り、大動脈弁を通り、左心室に挿入することができる。挿入された血液ポンプアセンブリはカニューレを通じて心臓の左心室から血液を取り込み、次いで血液を大動脈に排出するように構成され得る。血液ポンプアセンブリは下大静脈から血液を取り込み、次いで血液を肺動脈に排出するように構成されることもある。一部の機械的循環補助装置は内蔵モーターを動力源とする一方で、他は外部モーターおよび駆動ケーブルを動力源とする。さらに別の血液ポンプは患者の体外に配置された外部ポンプと、血管系を通じて心臓または他の所望の位置まで延在する長いカテーテルとを用いる。一部の血液ポンプシステムはカテーテルによるものではなくむしろ外科的に埋め込まれる。
【0003】
血液ポンプの使用を必要とする心臓エピソードは、典型的には、患者に多くの有害な影響を引き起こすことがある。そのような心臓エピソードは心筋梗塞、心停止、高リスク経皮的冠動脈治療介入、心原性ショック、ならびに左心室および右心室不全を含む。特に、より一般的には心臓発作と呼ばれる心筋梗塞を経験した患者には心臓組織に広範な瘢痕が残る場合がある。そのような瘢痕は心臓の正常な伝導経路を変化させ、影響を受けた筋肉を弱らせる。瘢痕の大きさおよび場所によっては、患者は不整脈、心ブロック、心室動脈瘤、心臓壁の炎症、心臓壁の破裂のリスクが高まることがあり、これらはすべて致命的な場合がある。したがって、そのような心筋瘢痕を軽減するかまたは防止することが非常に望ましい。
【発明の概要】
【0004】
心筋梗塞による瘢痕を処置する1つの公知の方法は、患者の心臓を通って流れる血液を望ましい全身温度まで急速に冷却する全身的低体温誘導法である。例えば、望ましい全身温度は患者の通常の体温よりも低くなることがある(例えば、摂氏5度未満)。全身的低体温法を介した望ましい全身温度への血液の十分な温度低下は心臓を冷却し、これによって代謝反応、組織死、および心筋瘢痕などの心臓内での多くの生理学的プロセスを遅延させる。しかしながら、全身的低体温誘導法の現状での使用は患者に不整脈を引き起こすことが公知であり、これは、心臓が既に弱ってきている、心筋瘢痕を有する患者において、特に問題となる。よって、心筋瘢痕の望ましくない影響を最小限に抑えるべく、かつ低体温誘導法の望ましくない影響を最小限に抑えるべく、不整脈も防止しつつ心筋瘢痕を防止するかまたは軽減するために血流を同時に全身的に冷却できるシステムを有することが望ましい。
【0005】
本明細書に記載のシステム、方法、および装置は、心臓の負荷を軽減しつつ同時に患者の血液を全身的に冷却するように構成された機械的循環補助システム、例えば、血液ポンプシステムを提供する。血液ポンプまたは他の循環補助システムの血液接触面は全身的な冷却を行うための熱伝達面として構成することができる。ポンプシステムのカテーテルの熱伝達面が患者の血管系を通じて循環する血液と接触すると、血液を急速に冷却することができ、この冷却は血液から十分な熱を取り除いて患者における全身的な低体温効果を誘導し得る。誘導された低体温効果は、心臓エピソードの望ましくない影響を引き起こすかまたは悪化させる生物学的プロセスを遅延させる。しかしながら、全身的低体温を誘導すると不整脈を引き起こすことがあるため、低体温療法は血液ポンプまたは他の循環補助システムの標準的な操作と同時に誘導される。このようにして、全身的低体温誘導法は心臓エピソードの望ましくない影響を軽減(または逆転)させ得る一方で血液ポンプまたは他の循環補助システムは血管系内で血液を循環させ、これによって心臓(および他の血管系)の栄養状態を向上させて全身的低体温誘導法の望ましくない影響を防止するかまたは回避する。本明細書に記載のシステム、方法、および装置は、心筋梗塞、心停止、高リスク経皮的冠動脈インターベンション、心原性ショック、ならびに左心室および右心室不全を非限定的に含む様々な血管病変を処置するために用いることができる。多くの適合例において、本明細書に記載のシステムは、冷却と同時に心臓に機械的循環補助を提供する(例えば、心臓の負荷を軽減することによる)ための血液ポンプシステムである。概して、血液ポンプシステムは、ブレードを取り囲むポンプハウジング内で回転する少なくとも1つのブレードを有するローターを備えたポンプを有する。概して、ポンプはモーターによって駆動される。一部のポンプは内蔵モーターを動力源とする一方で、他は外部モーターおよび駆動ケーブルを動力源とする。他のポンプシステムは、患者の外部に配置される外部ポンプと、血管内で心臓(または血管系における他の位置)まで延在する長いカテーテル(またはカニューレ)とを有する。本開示のシステムの適合例はポンプの近位端から延在するカテーテルをさらに含んでもよい。他の適合例は外科的に取り付けられるポンプシステムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、柔軟で非外傷性の突出部がポンプの遠位端から延在する。たとえば、柔軟で非外傷性の突出部はピグテールであってもよい。
【0006】
いくつかの局面によれば、本明細書に記載のシステムは、低体温を誘導する血管内冷却面を含む。冷却面は、カテーテルの長さ、またはシステムの他の血管内表面の長さに沿って延在し、かつ患者内を循環する血液と接触すべく血管系内に配置されるように構成される。いくつかの実施形態では、冷却要素は血液との熱交換器として形成されてもよいし、カテーテルの外面を冷却することによって機能してもよく、これは次いで、血液がカテーテルの外面に接触するため、患者の血管系を循環する血液を冷却する。同様の冷却システムを、カテーテルの代わりに、またはカテーテルの熱伝達効果を増強するためのいずれかで、補助システムの血液接触面の別の部分(例えば、ポンプハウジング)に適用してもよい。いくつかの適合例では、熱伝達要素はカテーテル(または他のシステム構成要素)の外面に直接的に適用されるので、カテーテルの外面(血液接触面)が直接的に冷却される;そのような適合例では、血液は熱伝達要素と直接的に接触してもよい。別の適合例では、熱伝達は、カテーテル壁の厚さ内にまたはカテーテルの内面に沿って熱伝達要素を配置することによって間接的に起きるので、まずカテーテル壁の内側または厚さを冷却し、その厚さまたは内面がカテーテル壁の厚さを通じた伝導によってカテーテルの外面を冷却する。
【0007】
ポンプシステムへの冷却要素の組み込みの少なくとも1つの利点は、血液(および全身の血管)の温度を調整して心臓エピソードの望ましくない影響を防止しつつ同時に、調整された温度(例えば、全身的低体温誘導法)の望ましくない影響を防止することができるということである。
【0008】
開示の第1の態様によれば、心臓のための血液ポンプシステムは、ポンプを含む。ポンプはモーターと、ローターと、患者内に挿入され、例えば冷却要素によって、温度調整されるように構成された熱伝達面とを有する。ポンプは遠位端および近位端を有する。概して、ローターはポンプを通じて血液を運搬するための少なくとも1つのブレードを有する。いくつかの実施形態では、冷却要素は、熱流体冷却を提供するための、冷却された溶液をカテーテルの長さに沿って送達するように構成された管腔として構成されてもよい。別の実施形態では、冷却要素は、熱電冷却を提供するための、電流をカテーテルの長さに沿って送達するように構成されたペルチェ素子として構成されてもよい。ペルチェ素子は2つの半導体材料の接合部に電流を送達するように構成されたワイヤーを含んでいてもよい。半導体の接合部はカテーテルの長さに沿った任意の好適な点に配置されていてもよい。同様に、半導体はカテーテルの長さに沿って所望の熱流を誘導するように任意の好適な構成で配向されていてもよい。いくつかの実施形態では、ペルチェ素子に電流を送達する電源はポンプに電力を供給する電源と同じである。別の実施形態では、ペルチェ素子に電流を送達する電源はポンプに電力を供給する電源とは異なる外部電源である。
【0009】
システムはローターの少なくとも1つのブレードを取り囲むポンプハウジングをさらに含む。血管内用途では、カテーテルはポンプハウジングの近位端から延在する。カテーテルは内面、外面、近位端、および遠位端を有する。カテーテルが患者の血管系内に配置されると血液がカテーテルの外面を流れる。ポンプシステムは代替的にはカテーテルを用いずに外科的に取り付けられてもよく、ポンプ(またはそのカニューレ)はペルチェ素子または他の冷却要素の構成を有してもよい。
【0010】
カテーテル用途では、冷却要素はカテーテルの長さに沿って延在し、冷却要素は様々な構成にアレンジされてもよい。冷却要素は円形、楕円形、菱形、長方形、線形、または他の形状の断面を有してもよい。冷却要素に接触するカテーテルの内面の割合を調節するために、断面の幾何学的形状を調節することができる。例えば、円形の断面を有する実施形態では、断面の面積が増加すれば、カテーテルの内面のより多くの部分が冷却要素に接触し、熱伝達の速度や伝達される熱の総量を増加させることができる。
【0011】
いくつかの局面によれば、冷却要素はカテーテルまたは他の血液と接触するシステム構成要素に接触して、該構成要素の熱制御を提供し、ひいては血液の所望の熱制御および/または調節(例えば、冷却)を提供し得る。冷却要素はまた、必要であれば、温度を上昇させるように、例えば、血液の温度を上昇させるように構成されてもよい。血管系を冷却するために、冷却要素はカテーテル(または他のシステム構成要素)の血液接触面を血液の全身温度よりも低い温度まで冷却する。例えば、多くの用途では、カテーテルの血液接触面がその温度まで冷却される該温度は、摂氏約32度であってもよい)。いくつかの態様では、冷却要素はカテーテルまたは他のシステム構成要素の外面に接触している。別の態様では、冷却要素はカテーテルの内面の一部に接触しており(側方の管腔(side-lumen)を介してか、またはカテーテルもしくは他のシステム構成要素の壁内に埋め込まれるかのいずれかで)、それらの態様では冷却要素はカテーテルの内面をより低い温度まで冷却し、これは次いで伝導によってカテーテルの外面を冷却する。いくつかの実施形態では、冷却要素はカテーテルの長さに沿って延在することができ、次いで別のシステム構成要素内へとさらに延在してもよい。例えば、冷却要素が内部へ延在することができる別のシステム構成要素はポンプハウジングである。よって、カテーテルの外面は所望の温度(例えば、全身血液温度よりも低い)まで間接的に冷却されてもよく、外面はカテーテルまたは他のシステム構成要素の外面と接触している血液を冷却することができる。心臓の血液は所望の全身温度が達成されるまで冷却される。冷却は急速に行われてもよい。例えば、血液は約5分~約20分の期間全身的に冷却されてもよい。別の実施形態では、期間は約7.5分~約17.5分である。さらなる実施形態では、期間は約10分~約15分である。いくつかの実施形態では、期間は約12.5分である。特定の実施形態では、血液は5分未満冷却される。別の実施形態では、血液は3分未満冷却される。
【0012】
特定の実施形態では、血液がその温度まで冷却される該全身温度は、摂氏37度未満である。いくつかの実施形態では、血液がその温度まで冷却される該全身温度は、摂氏約30度~約35度である。別の実施形態では、血液がその温度まで冷却される該全身温度は、摂氏約31度~約34度の範囲である。さらなる実施形態では、血液がその温度まで冷却される該全身温度は、摂氏約32度~約33度である。患者内を循環する血液の冷却は、心臓エピソードの有害な影響を引き起こすかまたは悪化させる原因となる生物学的プロセスを遅延させる低体温効果をもたらす。具体的には、血液の冷却は患者が心筋梗塞になった後に患者の心臓に心筋瘢痕を引き起こす原因となるプロセスを遅延させることができる一方で、同時に行われる心臓のポンピングは全身的低体温誘導療法によって誘導されることが公知の悪影響を防止する。
【0013】
いくつかの実施形態では、冷却要素は管腔として構成されてもよく、管腔は冷却された溶液をカテーテルの長さに沿って送達するように構成されてもよい。管腔への冷却された溶液の注入は患者に低体温効果を誘導し得る。この低体温効果をもたらすために、管腔の少なくとも一部はカテーテルの内面の一部に接触した側方の管腔であってもよい。あるいは、管腔の少なくとも一部はカテーテルの壁内に埋め込まれていてもよい。カテーテルの内面に接触するように選択されるかまたはカテーテルの壁に埋め込まれるように選択される管腔の特定の部分は、カテーテルの一部に沿った所望の熱伝達速度を実現するように選択することができる。カテーテルの長さに沿った異なる領域での特定の熱伝達速度は特定の心臓エピソードの悪影響の処置に有益なことがある。例えば、いくつかの実施形態では、管腔の半分がカテーテルの内面の一部に接触していてもよい。別の実施形態では、管腔の4分の3がカテーテルの内面の一部に接触していてもよい。同様に、管腔の半分がカテーテルの壁内に埋め込まれていてもよい。別の実施形態では、管腔の4分の3がカテーテルの壁内に埋め込まれていてもよい。冷却された溶液の流れがカテーテルの内面を冷却するとカテーテルの熱伝達面が冷却される。続いてカテーテルの熱伝達面が血液を冷却し、患者に低体温効果を誘導する。管腔は第1の近位開口および第2の近位開口を有する。第1の近位開口は冷却された溶液の入口として構成されてもよく、第2の近位開口は冷却された溶液の出口として構成されてもよい。管腔は第1のフロー部分および第2のフロー部分という2つの部分を含むように構成されてもよく、両部分はカテーテルの長さに沿って延在する。第1のフロー部分は第1の近位開口からカテーテルの遠位端まで延在し、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端までの冷却された溶液の遠位方向の流れを収容する。第2のフロー部分はカテーテルの遠位端から第2の近位開口まで延在し、カテーテルの遠位端からカテーテルの近位端までの冷却された溶液の近位方向の流れを収容する。第1および第2のフロー部分はカテーテルのうちの同じ長さだけ延在してもよい。第1のフロー部分はカテーテルの近位端の第1の近位開口からカテーテルの遠位端までであってもよく、管腔が沿って延在する第1の管腔経路長を規定する。
【0014】
第1の管腔経路長は、管腔が沿って延在するカテーテルの長さと等しくてもよい。第2のフロー部分はカテーテルの遠位端からカテーテルの近位端における第2の近位開口までであってもよく、管腔が沿って延在する第2の管腔経路長を規定する。第2の管腔経路長は、管腔が沿って延在するカテーテルの長さに等しくてもよい。いくつかの実施形態では、第1の管腔経路長は第2の管腔経路長より大きくてもよい。別の実施形態では、第1の管腔経路長は第2の管腔経路長と等しくてもよい。管腔が沿って延在するカテーテルの長さはカテーテルの長さの4分の3であってもよい。別の実施形態では、管腔が沿って延在するカテーテルの長さはカテーテルの長さの2分の1であってもよい。特定の実施形態では、管腔はカテーテルの全長に沿って延在する。管腔が沿って延在するカテーテルの長さにより、冷却された溶液を同じ長さだけカテーテルに沿って送達することが可能になる。そのような実施形態では、冷却された溶液が第1の近位開口に注入された後、および流体が第1のフロー部分に沿って延在した後、これは第2のフロー部分に沿って延在し、第2の近位開口からシステムを出ていく。冷却された溶液を受けるための管腔を有するように構成された血液ポンプの少なくとも1つの利点は、ポンプが全身的低体温を誘導して心臓エピソードの望ましくない影響を処置しつつ同時に、不整脈を含む全身的低体温の望ましくない影響を処置するために心臓の負荷も軽減し得ることである。
【0015】
管腔は様々な異なる様式でカテーテル内に配置されてもよい。特定の実施形態では、管腔はカテーテルの内面に接触するように構成されてもよい。例えば、管腔は、第1の管腔経路長を規定する第1のフロー部分に沿って延在するが、カテーテルの内面に接触するように構成されてもよい。第1のフロー部分は、直線または螺旋を非限定的に含む任意の好適な経路に沿って延在することができる。次いで管腔は、カテーテルの中心を通って、第2の管腔経路長を規定する第2のフロー部分に沿って延在するように構成されてもよい。別の実施形態では、管腔の一部がカテーテルの壁内に埋め込まれていてもよい。例えば、管腔の第1のフロー部分がカテーテルの壁に埋め込まれてもよい一方で、第2のフロー部分がカテーテルの中心を通って延在する。別の実施形態では、管腔の第1のフロー部分がカテーテルの中心を通って延在してもよい一方で、第2のフロー部分がカテーテルの壁に埋め込まれる。特定の実施形態では、第1のフロー部分および第2のフロー部分の両方がカテーテルの壁に埋め込まれる。第2のフロー部分も直線または螺旋を非限定的に含む様々な幾何学的形状に構成されていてもよい。第2のフロー部分をカテーテルの内面に接触させない状態に保つことが、血液からすでに熱を吸収した溶液をカテーテルの内面から離れた状態に保ち、血液のより急速な温度低下を可能にする。カテーテルの長さに沿った異なる領域へおよびそれらからの両方に熱を導くために、カテーテル内の管腔の具体的な配向を調整してもよい。
【0016】
加えて、冷却された溶液の流れは、管腔内で可逆的になるように構成されてもよい。上述のように、管腔は、カテーテルの近位端にある第1の近位開口からカテーテルの遠位端まで、カテーテルの長さに沿って延在するように構成されてもよい。管腔は様々な様式でカテーテルの長さに沿って延在してもよい。いくつかの実施形態では、管腔の一部がカテーテルの内面に接触していてもよい。別の実施形態では、管腔の一部がカテーテルの壁内に埋め込まれていてもよい。概して、管腔は冷却された流体を受けるように構成される。冷却された流体はカテーテルの表面を冷却し、これは熱の伝導によってカテーテルの熱伝達面を冷却する。この熱伝達面は患者の血液に全身的な効果を誘導する。そのような実施形態では、冷却された溶液は第1の近位開口に注入されてもよく、冷却された溶液の入口として第1の近位開口が機能することができ、冷却された溶液がカテーテルの近位端からカテーテルの遠位端まで第1のフロー部分に沿って流れることができる。そのような実施形態では、流体はカテーテルの遠位端からカテーテルの近位端までカテーテルの第2の長さに沿って第2の近位開口に移動して、冷却された溶液の出口として第2の近位開口が機能することができる。冷却された溶液の流れが管腔内で可逆的であるように構成されていてもよいため、別の実施形態では、冷却された溶液はまず第2の近位開口に注入され、冷却された溶液の入口として第2の近位開口が機能することができ、冷却された溶液がカテーテルの近位端からカテーテルの遠位端まで第2のフロー部分に沿って流れることができる。そのような実施形態では、流体はカテーテルの遠位端からカテーテルの近位端まで第1のフロー部分に沿って第1の近位開口に戻り、冷却された溶液の出口として第1の近位開口が機能することができる。冷却された溶液の流れのこの可逆性は管腔を含むすべての態様に適用される。
【0017】
いくつかの実施形態では、カテーテルの一端から他端まで延在する管腔によって形成される経路は螺旋である。例えば、第1のフロー部分に沿って延在する管腔は一重螺旋を形成していてもよい。一重螺旋は、螺旋として成形された一本鎖(例えば、一本の管腔、ワイヤー、または半導体)として本明細書では規定される。次いで、管腔はカテーテルの中心を通って第2のフロー部分に沿って戻るように構成されていてもよい。別の実施形態では、この状態が逆になっていてもよい。具体的には、管腔はカテーテルの中心を通って第1のフロー部分に沿って延在してもよい。次いで、管腔は螺旋状の第2のフロー部分に沿って戻るように構成されていてもよい。前述のように、カテーテル内の管腔の特定の幾何学的形状がカテーテルの特定の領域へおよびこれらから熱を導く働きをすることができる。したがって、カテーテルに沿って特定の熱分布を作り出すために熱の方向を制御することができる。例えば、特定の患者の病態または解剖学的状態は特定の熱分布から恩恵を受けることがある。一重螺旋がカテーテルの内面に接触する構成では、1つの利点は、血液から熱を吸収した流体がカテーテルの内面と接触しないように、管腔を通る冷却された溶液の流れ方向を選択し得るため、血液を急速に冷却できるということである。カテーテルの長さに沿って螺旋に沿って延在する管腔を有する機械的循環補助装置(例えば、血液ポンプ)の少なくとも1つの利点は、そのようなポンプが血液を効率的に冷却して全身的低体温を誘導して心臓エピソードの悪影響を処置しつつ、心臓を補助して全身的低体温誘導法の悪影響も弱めることができるということである。
【0018】
別の実施形態では、管腔は螺旋に沿って両方向に延在する。管腔は第1の螺旋に沿って第1のフロー部分に沿って延在し、管腔は第2の螺旋に沿って第2のフロー部分に沿って延在する。管腔の第1の螺旋および第2の螺旋はカテーテルの遠位端で流体接続している。そのような実施形態では、第1の螺旋と第2の螺旋とが、二重螺旋を形成するようにカテーテルの円周に沿ったある角度でオフセットしていてもよい。本明細書に規定される二重螺旋はカテーテルの円周に沿って互いに180度配向した同じピッチおよび半径の2つの螺旋を含む。第1の螺旋と第2の螺旋とがカテーテルの円周に沿ったある角度でオフセットしていない実施形態では、第1の螺旋および第2の螺旋は二倍幅の一重螺旋を形成している。本明細書に規定される二倍幅の一重螺旋は、同じピッチおよび同じ半径の2つの一重螺旋であって、それらの長さに沿った各点にて接触した一重螺旋を含む。別の実施形態では、第1の螺旋と第2の螺旋とが、カテーテルの円周に沿ってある中間角度でオフセットしていてもよい。この中間角度は0度~180度であってもよい。例えば、第1の螺旋と第2の螺旋とが、カテーテルの円周に沿って約45度オフセットしていてもよい。別の実施形態では、第1の螺旋と第2の螺旋とが、カテーテルの円周に沿って約90度オフセットしていてもよい。特定の実施形態では、第1の螺旋と第2の螺旋とが、カテーテルの円周に沿って約135度オフセットしていてもよい。二重螺旋、二倍幅の一重螺旋、または任意の他の構成を形成しているかどうかにかかわらず、螺旋要素の少なくとも一部がカテーテルの内面に接触している。
【0019】
いくつかの実施形態では、冷却要素によって形成される二重螺旋のピッチは、約1ミリメートル~約10ミリメートルである。さらなる実施形態では、冷却要素によって形成される二重螺旋のピッチは、約3ミリメートル~約8ミリメートルである。別の実施形態では、冷却要素によって形成される二重螺旋のピッチは、約5ミリメートル~約6ミリメートルである。特定の実施形態では、冷却要素によって形成される二重螺旋のピッチは、約5.5ミリメートルである。カテーテルに沿って確立される特定の熱プロファイルおよび熱伝達プロファイル毎に冷却要素によって形成される螺旋のピッチが異なる。
【0020】
いくつかの実施形態では、冷却要素によって形成される二重螺旋は、カテーテルの内面の約30パーセント~約90パーセントをカバーする。別の実施形態では、冷却要素によって形成される二重螺旋は、カテーテルの内面の約40パーセント~約80パーセントをカバーする。特定の実施形態では、冷却要素によって形成される二重螺旋は、カテーテルの内面の約50パーセント~約70パーセントをカバーする。いくつかの実施形態では、冷却要素によって形成される二重螺旋は、カテーテルの内面の約60パーセントをカバーする。冷却要素によってカバーされた内表面積がより大きい血液ポンプの実施形態は、血液をより急速に冷却することを可能にしつつなお、心臓を補助して全身的低体温誘導法の悪影響に対処する。
【0021】
二重螺旋に構成された管腔を有する実施形態では、第1のフロー部分に沿って延在する第1の一重螺旋および第2のフロー部分に沿って延在する第2の一重螺旋は、カテーテルの遠位端で流体接続する。具体的には、管腔はまず第1のフロー部分に沿って延在しつつ第1の螺旋に沿って延在する。次いで、管腔は第2のフロー部分に沿って延在しつつ第2の螺旋に沿って延在してもよい。管腔が第1のフロー部分に沿って延在した後、管腔は固定された長手方向の点にてカテーテルの円周の長さに沿って延在する。管腔は、カテーテルの円周の長さに沿って延在するが、カテーテルの内面に接触していてもよい。二重螺旋構成では、管腔は、第1の螺旋と第2の螺旋とがカテーテルの円周に沿って180度の角度でオフセットしているように、固定された長手方向の点にてカテーテルの円周の2分の1に沿って延在する。二重螺旋の形状に構成された管腔を有する実施形態の少なくとも1つの利点は、二重螺旋のピッチを変更することによって、カテーテルの長さに沿って異なる冷却速度および異なる熱プロファイルを実現できるということである。
【0022】
別の実施形態では、管腔は二倍幅の一重螺旋を形成し、これは、上に規定したように、同じピッチおよび同じ半径の2つの一重螺旋であって、それらの長さに沿った各点にて接触した一重螺旋を含む。そのような実施形態では、第1の一重螺旋および第2の一重螺旋は流体接続している。管腔が第1のフロー部分に沿って延在する第1の一重螺旋および管腔が第2のフロー部分に沿って延在する第2の一重螺旋は、一緒になって二倍幅の一重螺旋を形成する。具体的には、管腔は第1の螺旋に沿って延在しつつ第1のフロー部分に沿って延在する。次いで管腔は第2の螺旋に沿って延在しつつ第2のフロー部分に沿って延在してもよい。管腔が第1のフロー部分に沿って延在した後、管腔は固定された長手方向の点にてカテーテルの円周の長さに沿って延在する。二倍幅の一重螺旋構成では、管腔は、第1の螺旋と第2の螺旋とがカテーテルの円周に沿って0度の角度でオフセットしているように、固定された長手方向の点にてカテーテルの全周に沿って延在する。二倍幅の一重螺旋のピッチは、カテーテルに沿って特定の熱プロファイルが得られるように調整されてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、冷却された溶液が管腔に注入されて血液を冷却する。冷却された溶液は晶質液を含んでもよい。晶質液は、通常の生理食塩水(溶液1リットルあたり塩化ナトリウムを9グラム含む溶液)、乳酸リンゲル溶液、1/3 NS 2/3D5、またはグルコースであってもよい。概して、熱容量が最も大きい溶液が選択され、そのため、そのような溶液は温度の上昇を経ることなく血液を最も急速に冷却することができ、これにより、溶液は、カテーテルの両方向の長さに沿ってカテーテルの内面との接触を維持できる。したがって、冷却された溶液を受けるように構成された管腔を有する血液ポンプは血液を急速に冷却することができ、心臓エピソードの悪影響を処置しつつ、また心臓の負荷を軽減して全身的低体温誘導法の悪影響からの補助を提供する。
【0024】
冷却された溶液をカテーテルの長さに沿って送達する管腔として構成された冷却要素の代替物として、いくつかの実施形態では冷却要素はペルチェ素子である。ペルチェ素子はカテーテルの壁内に埋め込まれるか、またはカテーテルの外面または内面に沿って固定されていてもよい。別の実施形態では、ペルチェ素子は血液ポンプシステムのポンプハウジングまたは他の血液接触構成要素内に埋め込まれる。ペルチェ素子は血液ポンプシステムのカテーテル、ポンプハウジング、または他の血液接触構成要素に融合させることができる。別の実施形態では、ペルチェ素子は血液ポンプシステムのカテーテル、ポンプハウジング、または他の血液接触構成要素に接着剤で取り付けることができる。概して、ペルチェ素子は血液ポンプシステムのカテーテル、ポンプハウジング、または他の構成要素の任意の組み合わせから熱を導くように構成されていてもよい。ペルチェ素子は特性の異なる2つの半導体材料間の熱伝達を推進する。例えば、2つの半導体材料の電子密度は異なっていてもよい(例えば、一方の材料はn型半導体であってもよく、他方の材料はp型半導体であってもよい)。ペルチェ素子は、様々な幾何学的形状に構成することができる。特に、ペルチェ素子は、熱流を所望の方向に導くために様々な異なる構成でアレンジされてもよい接合部を形成する2つの半導体材料を含む。概して、接合部は、カテーテルの長さに沿った所望の熱分布および熱交換速度を実現するために、カテーテルの長さに沿った任意の好適な点に配置されてもよい。例えば、半導体材料は熱流が径方向に導かれるように配向されてもよいし、または熱流がカテーテルの長さに沿って長手方向に導かれるように配向されてもよい。半導体材料はさらに、半導体材料によって形成された接合部に電流を送達するのを可能にする任意の構成にアレンジされてもよい。いくつかの実施形態では、ペルチェ素子に電流を送達する電源はポンプに電力を供給する電源と同じである。別の実施形態では、ペルチェ素子に電流を送達する電源はポンプに電力を供給する電源とは異なる。半導体材料の接合部への電流の送達はペルチェ効果による冷却を引き起こし、ここで、第1の半導体材料および第2の半導体材料を含む接合部であって、電子密度の異なる2つの半導体材料(例えば、n型半導体およびp型半導体)の接合部に電圧がかかると冷却が起こる。ペルチェ効果の適用は、カテーテルの内面に接触する半導体材料が温度低下すること、およびカテーテルの外面と接触している血液をある全身温度まで冷却するヒートシンクとして作用することを引き起こす。いくつかの実施形態では、接合部はカテーテルの遠位端に向かってカテーテルの表面内に配置される。別の実施形態では、接合部は導体の近位端に向かってカテーテルの壁内に構成されていてもよい。
【0025】
第1の半導体材料はカテーテルの長さに沿って2回延在するように構成されていてもよい。半導体の導体材料が沿って延在するカテーテルの第1の長さは、半導体材料が沿って延在するカテーテルの第2の長さと概して等しい。半導体材料が沿って延在するカテーテルの第1の長さは、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端までであってもよい。半導体材料が沿って延在するカテーテルの第2の長さは、カテーテルの遠位端からカテーテルの近位端までであってもよい。半導体材料が沿って延在するカテーテルの第1の長さは、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端までのうちのカテーテルの長さの4分の3であってもよく、半導体材料が沿って延在するカテーテルの第2の長さは、カテーテルの遠位端からカテーテルの近位端までのうちのカテーテルの長さの4分の3であってもよい。ペルチェ素子を用いた実施形態の少なくとも1つの利点は、カテーテルに沿った特定の熱交換速度および特定の熱分布を作り出すために、様々な半導体材料を選択しかつ組み込むことができるということである。したがって、血液ポンプへのペルチェ素子の組み込みは、心臓の補助を提供して全身的低体温誘導法の悪影響を克服しつつ、全身的低体温の誘導も可能にして心臓エピソードの悪影響を処置するものである。
【0026】
冷却要素としてペルチェ素子を有する実施形態では、ペルチェ素子の半導体材料の接合部に送達される電流は約0.01アンペア~約3アンペアの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、約0.1アンペア~約2アンペアの電流がペルチェ素子の半導体材料の接合部に送達される。さらなる実施形態では、約0.5アンペア~1.5アンペアの電流がペルチェ素子の半導体材料の接合部に送達される。特定の実施形態では、約1アンペアの電流がペルチェ素子の半導体材料の接合部に送達される。ペルチェ素子のワイヤーを流れる特定の電流を調節して半導体材料の接合部に特定の電位差を作り出すことができ、カテーテルに沿って特定の熱分布および血液の冷却速度を実現することが可能になる。
【0027】
開示のいくつかの局面によれば、患者における心臓エピソードの影響を処置するための方法はまず患者の血管系に機械的循環補助装置を導入する工程を含む。機械的循環補助システムは血液ポンプであってもよい。血液ポンプは、カテーテル内に配置される流体用管腔またはペルチェ素子などの冷却要素を含む。血液ポンプを患者の血管系に導入した後、方法を実施する施術者はカテーテルの外面が血管系を通って流れる血液と接触するように血管系内にカテーテルを配置する。次いで、施術者は、患者内に血液を循環させるために、血液ポンプを作動させる。血液ポンプを作動させつつ、施術者は冷却要素をアクティブにする。前述のように、冷却要素はカテーテルの内面を冷却することによって熱交換器として機能する。次いでカテーテルの内面がカテーテルの外面を冷却し、次いでこれが患者の血液を冷却する。この冷却は選択された温度までカテーテルの外面が確実に到達するように選択された期間にわたって実施される。カテーテルの外面の温度は、カテーテルの外面と接触している血液がある全身温度まで冷却されるように選択される。外面がその温度まで冷却される該温度は、全身温度以下であってもよい。具体的には、心臓エピソードの影響を処置するために血液は選択された全身温度まで冷却される。いくつかの実施形態では、心臓エピソードは心筋梗塞であってもよく、いくつかの実施形態では、心筋梗塞の影響は心筋瘢痕である。
【0028】
いくつかの実施形態では、システムが患者の左心室の負荷を軽減するのを補助するように血液ポンプが患者の心臓の左側に挿入される。方法の他の実施形態では、システムが患者の右心室の負荷を軽減するのを補助するように血液ポンプが患者の心臓の右側に挿入される。
【0029】
特定の実施形態では、第1の血液ポンプが患者の心臓の一方側に導入され、第2の血液ポンプが患者の心臓の他方側に導入される。いくつかの実施形態では、第1の血液ポンプが患者の心臓の右側に導入され、第2の血液ポンプが患者の心臓の左側に導入される。別の実施形態では、第1の血液ポンプは患者の心臓の左側に導入され、第2の血液ポンプは患者の心臓の右側に導入される。そのような実施形態は、血液を冷却することと、患者の心臓の両側の負荷を軽減することとを同時に含む。血液を冷却することと心臓の両側の負荷を軽減することとを同時にすることで、施術者は、片側を冷却するよりもさらに迅速に心臓を冷却し、同時に心臓を補助して、全身的低体温誘導法の望ましくない影響を防止することが可能になり得る。
【0030】
別の実施形態では、患者における心臓エピソードの影響を処置するための方法はまず、カテーテル内に構成された管腔を含む機械的循環補助装置を患者の血管系に導入する工程を含む。方法の機械的循環補助装置は血液ポンプであってもよい。血液ポンプを血管系に導入した後、態様の方法を実施する施術者はカテーテルの外面が血管系内を流れる血液と接触するようにカテーテルを患者の血管系内に配置する。血液ポンプが適切に配置されたら、施術者は血液ポンプを作動させ、システムが作動している間に施術者は冷却された溶液を管腔へ注入する。冷却された溶液の管腔への注入は、カテーテルの外面と接触している循環血液がある全身温度まで冷却されるように選択されたカテーテルの外面の温度まで、カテーテルの外面をある期間冷却する。カテーテルの外面がその温度まで冷却される該温度は、全身温度以下であってもよい。全身温度は心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止するように選択される。いくつかの実施形態では、心臓エピソードは心筋梗塞であり、心筋梗塞の影響は心筋瘢痕である。そのような実施形態は、管腔に挿入された冷却された溶液が患者の血液において全身的低体温を誘導して心臓エピソードの悪影響を処置するかまたは防止することができる一方で、ポンプが患者内に血液を循環させて、全身的低体温誘導法によって引き起こされ得る悪い副作用を防止する(例えば、心臓の負荷を軽減することによって)という利点をもたらす。
【0031】
別の実施形態では、患者における心臓エピソードの影響を処置するための方法はまず患者の血管系に機械的循環補助装置を導入する工程を含む。機械的循環補助装置は血液ポンプであってもよい。態様の血液ポンプは、異なる電子密度を有する2つの半導体材料の接合部を含む、カテーテル内に構成されたペルチェ素子を含む。血液ポンプを血管系に導入した後、態様の方法を実施する施術者はカテーテルの外面が血管系内を流れる血液と接触するようにカテーテルを患者の血管系内に配置する。血液ポンプが適切に配置されたら、施術者は血液ポンプを作動させ、血液ポンプが作動している間に施術者は第1のワイヤーに電流を流す。2つの半導体材料の接合部間に流れる電流が半導体材料のうちの一方からの熱の除去を可能にするペルチェ効果によって、冷却する半導体材料がカテーテルの外面を冷却する。この冷却は、カテーテルの外面と接触している循環血液がある全身温度まで冷却されるように選択されたカテーテルの外面の温度が達成されるまで、ある期間にわたって生じる。全身温度は心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止するように選択される。いくつかの実施形態では、心臓エピソードは心筋梗塞であり、心筋梗塞の影響は心筋瘢痕である。したがって、ペルチェ素子を有するように構成されたポンプは心臓に補助を提供して全身的低体温誘導法の悪影響を防止しつつ、なおかつ全身的低体温を誘導して心臓エピソードの悪影響を処置するかまたは予防することができる。
【0032】
方法の特定の実施形態では、ペルチェ素子を含む第1の血液ポンプが患者の心臓の一方側に導入され、ペルチェ素子を含む第2の血液ポンプが患者の心臓の他方側に導入される。いくつかの実施形態では、ペルチェ素子を含む第1の血液ポンプが患者の心臓の右側に導入され、ペルチェ素子を含む第2の血液ポンプが患者の心臓の左側に導入される。別の実施形態では、ペルチェ素子を含む第1の血液ポンプが患者の心臓の左側に導入され、ペルチェ素子を含む第2の血液ポンプが患者の心臓の右側に導入される。そのような実施形態は、患者の心臓の両側を冷却し同時に負荷軽減することを含む。心臓の両側を負荷軽減し同時に冷却することで、施術者は心臓の血液をより迅速に冷却することが可能であり、心臓エピソードの影響を防止しつつ同時に、心臓の負荷を軽減することによって全身的低体温誘導法の悪影響を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】冷却要素を有する、心臓のための機械的循環補助システムの図示例を示し、
図7においてその構成要素がより詳細に示される。
【
図2】冷却要素を有する、心臓のための機械的循環補助システムの一部分の例示的な斜視図を示す。
【
図4】心筋梗塞を処置しつつ同時に心臓の負荷を軽減するための例示的な方法を示す。
【
図5】管腔を有するように構成された機械的循環補助システムを用いて、心筋梗塞を処置しつつ同時に心臓の負荷を軽減するための例示的な方法を示す。
【
図6】ペルチェ素子を有するように構成された機械的循環補助システムを用いて、心筋梗塞を処置しつつ同時に心臓の負荷を軽減するための例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
詳細な説明
本明細書に開示のシステム、方法、および装置の全体的な理解を提供するために特定の例示的な態様を記載する。本明細書に記載の態様および特徴は、心臓のためのポンプに関連した使用のために具体的に記載されているが、教示は他のポンプおよび他のタイプの医療機器に適合されかつ適用され得ると理解される。
【0035】
本明細書に記載のシステム、方法、および装置は、心臓の負荷を軽減しつつ同時に、心臓エピソードの有害な影響を軽減するかまたは防止するために患者の血液を冷却するように患者内に低体温も誘導するように構成された、心臓のための機械的循環補助システムを提供する。具体的には、本明細書に記載のシステム、方法、および装置はポンプのカテーテルの長さに沿って全身冷却要素を有するポンプを提供し、冷却要素は、心筋梗塞によって生じる瘢痕を軽減するかまたは防止するために患者の心臓内に低体温を誘導するように構成されている。
【0036】
図1は、ポンプが心臓の負荷を軽減しつつ同時に患者内に低体温を誘導することができる、冷却要素を有する、心臓のための機械的循環補助システムまたは血液ポンプ100の図示例を示す。例示的な
図1は、カテーテルの長さに沿って一方向に延在する、一重螺旋に沿って延在する冷却要素を示す。前述のように、本明細書に規定される一重螺旋は螺旋として成形された一本鎖を指す。心臓ポンプ100は、ローター102と、モーター104と、遠位端108および近位端110を有するポンプハウジング106と、カニューレ112と、遠位延在部114と、冷却要素116と、内面120、外面122、遠位端124、および近位端126を有するカテーテル118とをさらに含む。ローター102、モーター104およびポンプハウジング106を備えた心臓ポンプ100を
図7により詳細に示す。冷却要素116は直径128を有し、カテーテル118は半径130を有する。冷却要素116により形成される螺旋はピッチ132を有する。カテーテル118はポンプハウジング106の近位端110から近位方向に延在する。冷却要素116はカテーテル118内に構成されている。
図1に示されるように、冷却要素116はそれ自体が折り返す前はカテーテル118の長さL
1に沿って延在する。しかしながら、冷却要素116は、血液ポンプ100が心臓内もしくは血管系の他の部分内に配置された際に患者の血液の全身的冷却が達成されるように、カテーテル118の図示された長さL
2に沿って、またはカテーテル118の任意の他の長さに沿って延在するように構成されていてもよい。したがって、冷却要素116は概してカテーテル118の長さを二倍に延ばしたように構成されている。冷却要素116はカテーテル118の近位端126からカテーテル118の遠位端124までの第1の長さ、およびカテーテル118の遠位端124からカテーテル118の近位端126までの第2の長さに沿って延在する。カテーテル118内への冷却要素116の組み込みの少なくとも1つの利点は、システムが、心臓エピソードの有害な影響を防止するかまたは軽減するために患者の心臓内に低体温を誘導することができる一方で同時に、患者の心臓に低体温を誘導する際に一般的に遭遇される有害な影響を防止するように心臓の負荷を軽減することができるということである。そのようなポンプの使用を必要とする心臓エピソードは心筋梗塞または心臓発作であってもよく、そのようなエピソードの影響は心筋瘢痕であってもよい。誘導された低体温を経た患者の血液の温度低下は概して、心筋瘢痕の形成の原因とされる1つまたは複数の生物学的プロセスを遅延し得、これによって、患者が心臓エピソードを被った後に心臓への長期的な損傷を防止するのに役立つ。
【0037】
冷却要素116は様々な異なる幾何学的形状でカテーテル内に構成されていてもよい。前述のように、冷却要素116はそれ自体が折り返す前にカテーテル118の任意の好適な長さに沿って延在してもよい。2つのそのような例示的な長さL
1およびL
2を
図1に示す。冷却要素116はカテーテル118の任意の他の好適な長さに沿って延在してもよい。加えて、冷却要素116は、冷却要素116が沿って延在するカテーテル118の2つの長さのそれぞれに沿って異なる幾何学的形状で配向していてもよい。例えば、例示的な
図1では、冷却要素116はカテーテル118の近位端126からカテーテル118の遠位端124まで直線的に延在する。冷却要素116は、一旦、長さL
1に沿って延在し、折り返してカテーテル118の遠位端124からカテーテル118の近位端126まで螺旋に沿って延在してもよい。
図1では、冷却要素116がカテーテル118の遠位端124からカテーテル118の近位端126まで延在する螺旋は、カテーテル118の内面120に制限されてもよい。冷却要素116が管腔である実施態様では、冷却された溶液が冷却要素116に注入される。前述のように、管腔を含む冷却要素116の所与の幾何学的形状について、管腔内の冷却された溶液の流動方向は可逆的である。そのような実施形態では、冷却された流体は、冷却された流体がまず要素116の直線部分に沿って延在し、次いで要素116の螺旋状部分に沿ってカテーテル118の近位端126に向かって逆向きに延在するか、または冷却された流体がまず冷却要素116の螺旋状部分に沿って延在し、次いで要素116の直線部分に沿ってカテーテル118の近位端126に向かって逆向きに延在するように要素116のいずれかの長さに注入されてもよい。
【0038】
冷却要素116がカテーテル118の遠位端124からカテーテル118の近位端126まで延在する螺旋のピッチ132は、態様間で異なっていてもよい。例えば、冷却要素116が沿って延在する螺旋のピッチ132は、約1ミリメートル~約21ミリメートルであってもよい。いくつかの実施形態では、冷却要素116が沿って延在する螺旋のピッチ132は、約3ミリメートル~約19ミリメートルであってもよい。別の実施形態では、冷却要素116が沿って延在する螺旋のピッチ132は、約5~約17ミリメートルであってもよい。特定の実施形態では、冷却要素116が沿って延在する螺旋のピッチ132は、約7ミリメートル~約15ミリメートルであってもよい。さらなる実施形態では、冷却要素116が沿って延在する螺旋のピッチ132は、約9ミリメートル~約13ミリメートルであってもよい。別の実施形態では、冷却要素116が沿って延在する螺旋のピッチ132は、約11ミリメートルであってもよい。冷却要素116によって形成される螺旋の可変ピッチ132の少なくとも1つの利点は、冷却要素116によってカバーされる所望の内表面積を得るために冷却要素の特定の幾何学的形状を選択することができるということである。
【0039】
同様に、所望のカバーされた内表面積を達成するように直径128を選択し得る。例えば、直径128は約0.5ミリメートル~約7.5ミリメートルであってもよい。別の実施形態では、直径128は約1ミリメートル~約7ミリメートルであってもよい。さらなる実施形態では、直径128は約1.5ミリメートル~約6.5ミリメートルであってもよい。特定の実施形態では、直径128は約2ミリメートル~約6ミリメートルであってもよい。別の実施形態では、直径128は約2.5ミリメートル~約5.5ミリメートルであってもよい。別の実施形態では、直径128は約3ミリメートル~約5ミリメートルであってもよい。さらなる実施形態では、直径128は約4ミリメートルであってもよい。
【0040】
冷却要素116の直線部分とカテーテル118の内面120との距離も装置の長さに沿った特定の温度プロファイルが得られるように調整することができる。例えば、冷却要素の直線部分はカテーテル118の中心に延在してもよい。別の実施形態では、冷却要素の直線部分はカテーテル118の中心とカテーテル118の内面120との中央をカテーテル118の長さ方向に延在してもよい。冷却要素116の直線部分とカテーテル118の内面120との距離が小さいほど、カテーテル118の外面122の温度がより低くなる。逆に、冷却要素116の直線部分とカテーテル118の内面120との距離が大きいほど、カテーテル118の外面122の温度がより高くなる。
【0041】
いくつかの実施形態では、冷却要素116は、カテーテル118の近位端126からカテーテル118の遠位端124まで延在する第1の螺旋に沿って延在する。第1の螺旋は、一旦、カテーテル118に沿った所望の長さに沿って延在し、それ自体が折り返して、カテーテル118の遠位端124からカテーテル118の近位端126まで延在する第2の螺旋を形成してもよい。これらの2つの螺旋は0度~180度の範囲の角度で互いに円周方向にオフセットしていてもよい。
【0042】
2つの螺旋間の角度が180度である実施形態は、二重螺旋として構成された冷却要素を規定している。そのような実施形態では、第1の螺旋は、一旦、カテーテル118の近位端126からカテーテル118の遠位端124までカテーテルに沿った第1の長さに沿って延在し、カテーテル118の長さに沿った所与の長手方向の点においてカテーテル118の半円周に沿って延在してもよい。この半円周に沿って延在した後、冷却要素116が沿って延在する第2の螺旋は、カテーテル118の遠位端124からカテーテル118の近位端126までカテーテル118の第2の長さに沿って延在してもよい。冷却要素116によって形成される二重螺旋は、可変ピッチを有していてもよい。例えば、冷却要素116が沿って延在する二重螺旋のピッチは、約1ミリメートル~約21ミリメートルであってもよい。いくつかの実施形態では、冷却要素116が沿って延在する二重螺旋のピッチは、約3ミリメートル~約19ミリメートルであってもよい。別の実施形態では、冷却要素116が沿って延在する二重螺旋のピッチは、約5~約17ミリメートルであってもよい。特定の実施形態では、冷却要素116が沿って延在する二重螺旋のピッチは、約7ミリメートル~約15ミリメートルであってもよい。さらなる実施形態では、冷却要素116が沿って延在する二重螺旋のピッチは、約9ミリメートル~約13ミリメートルであってもよい。別の実施形態では、冷却要素が沿って延在する二重螺旋のピッチは、約11ミリメートルであってもよい。前述のように、2つの螺旋間の角度が0度である実施形態は二倍幅の一重螺旋として構成された冷却要素を規定する。上に規定した二倍幅の一重螺旋は、同じピッチおよび同じ半径の2つの一重螺旋であって、それらの長さに沿った各点にて接触した一重螺旋を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、カテーテルの半径130は冷却要素116によって形成される螺旋の半径に対応していてもよい。そのような実施形態では、冷却要素116はカテーテル118の内面120に制限される。別の実施形態では、カテーテルの半径130は冷却要素116によって形成される螺旋の半径の一方または両方より大きくてもよい。例えば、冷却要素116によって形成される第1の螺旋はカテーテル118の内面120に制限されていてもよい一方で、第2の螺旋はカテーテルの半径130の約1/6~約5/6の半径を有していてもよい。別の実施形態では、第2の螺旋の半径はカテーテルの半径130の約1/3~約2/3である。さらなる実施形態では、要素116によって形成される第2の螺旋はカテーテルの半径130の約1/2の半径を有していてもよい。第1の螺旋と第2の螺旋との間のオフセットの角度が180度ではない実施形態では、2つの螺旋は一重の二倍幅の螺旋を形成していてもよい。そのような構成は
図3に関連して下にさらに記載している。
【0044】
図2は、二重螺旋状に構成された冷却要素210を有する、心臓のための機械的循環補助システムまたは血液ポンプ200の一部分を示す例示的な斜視図である。例示的な血液ポンプシステム200は、内面204と外面206と半径208とを有するカテーテル202、および冷却要素210を備える。
図2では、冷却要素210はピッチ212を有する2つの一重螺旋を含む二重螺旋状にアレンジされている。例示的な
図2に示す冷却要素210の二重螺旋はカテーテルの半径208と同等の半径を有する。そのため、
図2に示す冷却要素210はカテーテル202の内面204に制限されている。いくつかの実施形態では、カテーテルの半径208は冷却要素210によって形成される螺旋の半径のうちの一方または両方より大きくてもよい。例えば、冷却要素210によって形成される第1の螺旋は、これがカテーテル202の内面204に制限される一方で第2の螺旋がカテーテルの半径208の約1/6~5/6の半径を有し得るように、カテーテルの半径208と同等の半径を有していてもよい。別の実施形態では、第2の螺旋の半径はカテーテルの半径208の約1/3~2/3である。さらなる実施形態では、要素210によって形成される第2の螺旋はカテーテルの半径208の約1/2の半径を有していてもよい。別の実施形態では、第1の螺旋および第2の螺旋は両方がカテーテルの半径208未満の半径を有する。例えば、いくつかの実施形態では、第1および第2の螺旋はカテーテル半径208の約1/6~約5/6の半径を有する。別の実施形態では、第1および第2の螺旋はカテーテルの半径208の約1/3~約2/3の半径を有する。特定の実施形態では、第1および第2の螺旋はカテーテルの半径208の約1/3~約2/3の半径を有する。
【0045】
図1に関連して前述したように、要素210によって形成される第1および第2の螺旋は0度~180度の範囲の角度で互いに円周方向にオフセットしていてもよい。このように、要素210によって形成される第1および第2の螺旋は二重螺旋としてかまたは二倍幅の一重螺旋として構成されていてもよい。
図2の例示的な態様では、第1の螺旋と第2の螺旋とが、上に規定したように、二重螺旋を形成するように180度の角度でオフセットしている。
図3に関連して下に記載するように、2つの螺旋はカテーテル202の長さに沿って二倍幅の一重螺旋を形成するように0度の角度でオフセットしていてもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、冷却要素210はカテーテル202の長さに沿って螺旋を1つだけ形成する。例えば、冷却要素210はカテーテル202の中心を一方向に延在してもよく、カテーテル202の内面204に沿って螺旋の形状で他方向に延在してもよい。カテーテル202内の冷却要素210の特定の幾何学的形状はカテーテル202の長さに沿って特定の温度プロファイルを得るために調整することができる。
【0047】
図3A、3B、および3Cは、心臓のための機械的循環補助システムまたは血液ポンプにおける使用のための冷却要素を含むカテーテルの断面の3つの図示例を示す。
図3A、3B、および3Cは冷却要素として構成された管腔を含むカテーテルの断面を図示しているが、前述のように冷却要素はペルチェ素子であってもよい。
図3Aは第1の管腔302と、第2の管腔304と、管腔チャネル306と、カテーテル308とを有する、心臓のための血液ポンプシステム300における使用のための冷却要素の例示的な断面を示す。
図3Aでは、第1の管腔302および第2の管腔304は管腔チャネル306内に含まれている。管腔チャネル306はカテーテル308内に含まれている。
図3Aでは、第1の管腔302は、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端までの第1方向の流れを収容し、第2の管腔304は、カテーテルの遠位端からカテーテルの近位端までの第2方向の流れを収容する。
図3Bは第1の管腔312と、第2の管腔314と、カテーテル316とを有する、心臓のための血液ポンプ310における使用のための冷却要素の別の例示的な断面を示す。
図3Bでは、第1の管腔312は、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端までの第1方向の流れを収容し、第2の管腔314は、カテーテルの遠位端からカテーテルの近位端までの第2方向の流れを収容する。
図3Cは第1の管腔部分322と、第2の管腔部分324と、管腔チャネル326と、カテーテル328とを有する、心臓のための血液ポンプ320における使用のための冷却要素の第3の例示的な断面を示す。
図3Cでは、第1の管腔部分322および第2の管腔部分324は管腔チャネル326内に含まれている。具体的には、管腔チャネル326は、第1の管腔を含む第1の管腔部分322と第2の管腔を含む第2の管腔部分324という2つの部分に分かれている。第1の管腔部分322および第2の管腔部分324は様々な構成で管腔チャネル326内に配向されていてもよい。例えば、
図3Cに示すように、第1の管腔部分322および第2の管腔部分324はいずれも管腔チャネル326のうちの半分を含んでいてもよい。別の実施態様では、第1の管腔部分322は第2の管腔部分324よりも管腔チャネル326のうちのより大きな部分を含んでいてもよい。別の実施態様では、第1の管腔部分322は第2の管腔部分324よりも管腔チャネル326のうちのより小さい部分を含んでいてもよい。管腔チャネル326はカテーテル328内に含まれている。
図3Cでは、第1の管腔部分322は、カテーテルの近位端からカテーテル328の遠位端までの第1方向の流れを収容し、第2の管腔部分324は、カテーテルの遠位端からカテーテル328の近位端までの第2方向の流れを収容する。冷却要素としてペルチェ素子を有する構成では、ペルチェ素子の半導体は様々な構成ならびに相対的な形状および大きさで同様に配向されていてもよい。例えば、ペルチェ素子の第1の半導体材料はカテーテルの内面の形状に合わせてカテーテルの内面に接触して構成されていてもよい一方で、第2の半導体材料は円筒形でカテーテルの中心に沿って延在してもよい。さらに第1の半導体材料はカテーテルの壁内に埋め込まれていてもよい。いくつかの実施形態では、第1の半導体材料は第2の半導体材料の表面積よりも大きい表面積を有していてもよい。別の実施形態では、第1の半導体材料は第2の半導体材料と同じ表面積を有していてもよい。特定の実施形態では、第1の半導体材料は第2の半導体材料よりも小さい表面積を有していてもよい。
【0048】
図4は心筋梗塞を処置しつつ同時に心臓の負荷を軽減するための例示的な方法400を示す。方法400はまず機械的循環補助システムを患者の心臓の左側に導入する工程402を含む。機械的循環補助システムは血液ポンプであってもよい。方法400のポンプはカテーテル内に構成された冷却要素を含む。そのような冷却要素は冷却された溶液または電流のいずれかを受けるように構成されており、冷却要素は、カテーテルの外面と接触している血液が冷却されるように、カテーテルの内面に接触するように構成されている。続いて、方法400を行う施術者は内蔵モーターを用いてポンプを作動させることを含む工程404を実施する。ポンプが作動した後、次いで施術者は冷却要素を作動させて、カテーテルの外面と接触している血液を冷却する工程406を実施する。工程406では、血液は、血液がある全身温度に達するような期間冷却される。例えば、血液は、約5分~約20分の期間、全身的に冷却されてもよい。別の実施形態では、期間は約7.5分~約17.5分である。さらなる実施形態では、期間は約10~約15分である。いくつかの実施形態では、血液が全身温度まで冷却される期間は約12.5分である。全身温度は心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止するように選択される。いくつかの実施形態では、処置されるかまたは予防される心臓エピソードは心筋梗塞であり、いくつかの実施形態では、処置されるかまたは予防される心筋梗塞の影響は心筋瘢痕である。心臓を通じて循環する血液の冷却は心筋瘢痕を引き起こす生物学的プロセスを遅延させ、これは心筋梗塞後の患者の心臓の瘢痕化を軽減しかつ防止する。含まれる冷却要素は患者内に低体温を誘導する一方で、血液ポンプによって提供される補助は心臓の負荷を軽減するのに役立ち、誘導された不整脈を含む、低体温誘導法のマイナスの副作用を防止するかまたは軽減する。
【0049】
図5は、管腔を有するように構成された機械的循環補助システムを用いて、心筋梗塞を処置しつつ同時に心臓の負荷を軽減するための例示的な方法500を示す。機械的循環補助システムは血液ポンプであってもよい。別の実施形態では、機械的循環補助システムは大動脈内バルーンポンプ、左心補助システム、または右心補助システムであってもよい。上述のように、方法の機械的循環補助システムの管腔は様々な幾何学的形状に構成されていてもよい。例えば、
図1に示すように、管腔はカテーテルの長さに沿って一方向に螺旋に沿って延在してもよい。別の実施形態では、
図2に示すように、管腔は二重螺旋を形成していてもよい。方法500はまず患者の心臓の左側に血液ポンプを導入する工程502を含む。方法500のポンプは冷却された流体を受けるように構成された管腔を含む。前述のように、冷却された溶液は晶質液を含んでもよい。晶質液は、通常の生理食塩水(溶液1リットルあたり塩化ナトリウムを9グラム含む溶液)、乳酸リンゲル溶液、1/3 NS 2/3D5、またはグルコースであってもよい。概して、熱容量が最も大きい溶液が選択され、そのため、そのような溶液は温度の上昇を経ることなく血液を最も急速に冷却することができ、これにより、溶液は、カテーテルの両方向の長さに沿ってカテーテルの内面との接触を維持できる。どのような幾何学的形状についても、管腔の少なくとも一部がカテーテルの内面に接触し、管腔はカテーテルの外面と接触している血液を冷却するように構成されている。方法500を実施する施術者は工程504において内蔵モーターを用いてポンプを作動させる。ポンプを作動させながら、施術者は工程506において、冷却された溶液を管腔に注入して、カテーテルの外面と接触している血液を冷却する。工程506では、血液は、血液がある全身温度に達するような期間冷却される。全身温度は心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止するように選択される。前述のように、冷却された溶液の温度は、血液がある全身温度に達して、患者が心臓エピソードを被った後に患者に有害な影響を引き起こす原因とされる生物学的プロセスを遅延させるのに十分な程度に冷たくなるように選択される。心臓エピソードは心筋梗塞であってもよく、心筋梗塞の影響は瘢痕であってもよい。冷却および心臓の負荷軽減を同時に行うことで、冷却要素によって低体温の誘導が可能になる一方で、血液ポンプは低体温誘導法の有害な影響を防止する。
【0050】
図6は、ペルチェ素子を有するように構成された機械的循環補助システムを用いて、心筋梗塞を処置しつつ同時に心臓の負荷を軽減するための例示的な方法600を示す。機械的循環補助システムは血液ポンプであってもよい。方法600はまず患者の心臓の左側に血液ポンプを導入する工程602を含む。方法600のポンプはペルチェ素子を含む。ペルチェ素子は異なる特性を有する2つの半導体材料間で熱の移動を行う。例えば、2つの半導体材料の電子密度は異なっていてもよい。ペルチェ素子は様々な幾何学的形状に構成することができる。特に、ペルチェ素子は、熱の流れを所望の方向および装置の所望の部分に向かわせるために、様々な異なる構成にアレンジし得る接合部を形成する2つの半導体材料を含む。例えば、半導体材料は熱の流れが径方向に向かうように配向されていてもよいし、または半導体材料は熱の流れがカテーテルの長さに沿って長手方向に向かうように配向されていてもよい。さらに、半導体材料は、半導体材料によって形成される接合部に電流を送達することができる任意の構成にアレンジされていてもよい。異なる電子密度を有する2つの半導体材料の接合部は、カテーテルの長さに沿って特定の熱分布を確立するために、カテーテルの長さに沿った任意の好適な点に位置していてもよい。いくつかの実施形態では、異なる電子密度を有する2つの半導体材料の接合部はカテーテルの遠位端に位置している。別の実施形態では、異なる電子密度を有する2つの半導体材料の接合部はカテーテルの近位端に位置している。半導体材料の一方は、カテーテルの外面と接触している血液を冷却するように構成されるように、カテーテルの内面に接触している。ポンプを導入した後、次いで施術者は工程604において内蔵モーターを用いてポンプを作動させる。ポンプを作動させながら、工程606では、第1のワイヤーを通じてペルチェ素子の半導体材料の接合部まで電流を流し、カテーテルの外面と接触している血液を冷却する。ペルチェ素子の半導体材料の接合部に送達される電流は約0.01アンペア~約3アンペアの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、約0.1アンペア~約2アンペアの電流がペルチェ素子の半導体材料の接合部に送達される。さらなる実施形態では、約0.5アンペア~1.5アンペアの電流がペルチェ素子の半導体材料の接合部に送達される。特定の実施形態では、約1アンペアの電流がペルチェ素子の半導体材料の接合部に送達される。ペルチェ素子のワイヤーを流れる特定の電流を調整して半導体材料の接合部に特定の電位差を生じさせることができ、カテーテルに沿った特定の熱分布および血液の冷却速度を実現することが可能になる。血液は、血液がある全身温度に達するような期間冷却される。例えば、血液は約5分~約20分の期間全身的に冷却されてもよい。別の実施形態では、期間は約7.5分~約17.5分である。さらなる実施態様では、期間は約10~約15分である。いくつかの実施態様では、血液が全身温度まで冷却される期間は約12.5分である。全身温度は心臓エピソードの影響を軽減するかまたは防止するように選択される。心臓エピソードは心筋梗塞であってもよく、処置される心筋梗塞の影響は心筋瘢痕であってもよい。
【0051】
前記は開示の原理の単なる例示であり、装置は、限定ではなく例示の目的のために提示された記載の局面以外で実施することができる。本明細書で開示の装置はポンプにおける使用のために示されているが、他の装置にも適用し得ると理解されたい。当業者であれば本開示を検討後に改変例および変形例に思い至るであろう。開示の特徴は、本明細書に記載の1つまたは複数の他の特徴との任意の組み合わせおよびサブコンビネーション(複数の従属的な組み合わせおよびサブコンビネーションを含む)で実施されてもよい。上に記載したかまたは例示した様々な特徴は、それらの任意の構成要素を含め、他のシステムと組み合わされるかまたは統合されてもよい。さらに、特定の特徴は省略されるかまたは実施されなくてもよい。
【0052】
当業者であれば変更、置換、改変の例を認識可能であり、本明細書に開示の情報の範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書で引用したすべての文献がそれらの全体において参照により組み入れられ、本願の一部となる。
【国際調査報告】