(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-17
(54)【発明の名称】集中測定量を測定するための測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/00 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
G01N33/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558543
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2020058816
(87)【国際公開番号】W WO2020201139
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】102019204511.1
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518138848
【氏名又は名称】カレッジ・アンド・カザカ・エレクトロニック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ホス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウィオラ,ジョージ
(57)【要約】
集中測定量、特に拡散によって物体により放出された物質の濃度、または温度を測定するための測定装置であって、少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの測定チャンバであって、開口部は、検査対象の物体上に載置可能である少なくとも1つの測定チャンバを備える測定装置において、集中測定量を測定するための少なくとも3つのセンサが測定チャンバ内に配置され、センサは、測定中に検査対象の物体から異なる距離に配置され、センサによって測定された値を受信し、少なくとも3つの測定値ならびに物質またはエネルギー拡散速度から集中測定変数の合計値を決定する評価装置が設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集中測定量、特に拡散によって物体により放出された物質の濃度、または温度を測定するための測定装置であって、
少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの測定チャンバであって、前記開口部は、前記検査対象の物体上に載置可能である少なくとも1つの測定チャンバ
を備え、
前記集中測定量を測定するための少なくとも3つのセンサが前記測定チャンバ内に配置され、前記センサは、測定中に前記検査対象の物体から異なる距離に配置され、
前記センサによって測定された値を受信し、少なくとも3つの前記測定値から前記集中測定量の合計値を決定する評価装置が設けられる
ことを特徴とする、測定装置。
【請求項2】
前記測定チャンバは、少なくとも2つの開口部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
計算規則が前記評価装置に記憶され、それに基づいて前記評価装置が前記合計値を決定することを特徴とする、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記評価装置に記憶された前記計算規則は、前記集中測定量の前記合計値を決定するために、前記センサによって測定された前記値に異なる重み付けをすることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記評価装置に記憶された前記計算規則は、前記合計値を決定する際、ロバスト推定量を使用することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記合計値は、前記評価装置が前記計算規則に基づいて決定する推定値であり、前記計算規則は、前記合計値の時間的経過を考慮に入れることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
モデル関数が、決定されるべき集中測定量の実際の経過の近似シミュレーションのために、前記評価装置または下流の別個の評価ユニットに記憶されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記測定チャンバは、少なくとも1つの側壁を備え、前記少なくとも3つのセンサは、前記検査対象の物体から異なる距離で前記少なくとも1つの側壁上に配置されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記測定チャンバは、少なくとも1つの側壁を備え、前記少なくとも3つのセンサは、前記検査対象の物体から異なる距離で前記測定チャンバの中央領域における前記側壁から離間して配置されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記測定チャンバは、円形断面を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記少なくとも3つのセンサは、少なくとも3つの列に配置され、前記少なくとも3つの列は、前記検査対象の物体から異なる距離に配置され、少なくとも1つのセンサは、列ごとに配置されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項12】
前記センサは、拡散によって前記物体により放出された物質の前記濃度を測定することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項13】
拡散によって放出された物質の前記濃度を測定する前記センサは、前記温度および/または相対湿度をさらに測定すること、または前記温度および/または相対湿度を測定するために少なくとも3つの温度センサおよび/または相対湿度を測定するためのセンサがさらに設けられ、これらはまた、測定中に前記検査対象の物体から異なる距離に配置されることを特徴とする、請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
前記評価装置はまた、前記温度および/または相対湿度の前記測定値を受信し、前記測定値に基づいて合計温度値および/または相対湿度の合計値を決定することを特徴とする、請求項13に記載の測定装置。
【請求項15】
前記温度センサおよび/または相対湿度用のセンサはまた、前記側壁上に配置されることを特徴とする、請求項13~14のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項16】
集中測定量、特に拡散によって物体により放出された物質の濃度、または温度を測定するための方法であって、
検査対象の物体上に前記集中測定量を測定するための少なくとも3つのセンサを有する少なくとも1つの測定チャンバを載置するステップであって、前記測定チャンバは、前記検査対象の物体上に載置された少なくとも1つの開口部を有するステップ
を特徴とし、
前記測定チャンバは、前記センサが測定中に前記検査対象の物体から異なる距離に配置されるように載置され、
評価装置は、前記センサによって測定された値を受信し、前記集中測定量の合計値は、前記測定値から前記評価装置によって決定される、
方法。
【請求項17】
前記合計値を決定するための計算規則が記憶され、それに基づいて前記合計値が決定されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記合計値を決定する際、前記センサによって測定された前記値は、前記計算規則において異なる重み付けをされることを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記検査対象の物体の近くに配置された前記センサの前記測定値は、より高く重み付けされることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記合計値を決定するために、ロバスト推定量が使用されることを特徴とする、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
モデル関数が、決定されるべき集中測定量の実際の経過の近似シミュレーションのために使用されることを特徴とする、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
センサによって直接測定されなかった表面からの特定の距離に対する前記集中測定量の値を決定することができることを特徴とする、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
拡散によって物体により放出された物質の前記濃度は、集中測定量として測定されることを特徴とする、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
加えて、前記温度および/または相対湿度は、前記物体から異なる距離にある少なくとも3つの点で集中測定量として測定されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
Fickの法則と同様に、前記測定された集中測定量c(z)の勾配∇c(z)から対応する測定量の拡散速度を決定することを特徴とする、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記集中測定量は、前記温度であり、前記拡散速度は、熱損失であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記集中測定量は、物質濃度であり、前記拡散速度は、時間当たりおよび面積当たりの物質量であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の事前特徴部分による、集中測定量、特に拡散によって物体により放出もしくは吸収された物質の濃度、または温度を測定するための測定装置、ならびに請求項16による、集中測定量、特に拡散によって物体により放出もしくは吸収された物質の濃度、または温度を測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物体、特に工業用膜または生体膜の評価のために、例えば、物体の拡散挙動は興味深いものである。物体は、例えば、生体膜であり得る。生体膜は、例えば、皮膚表面であり得る。現在の従来技術では、集中測定量、すなわち拡散によって物体により放出された物質の濃度を測定することができる。このことから、膜を通る物質の拡散速度Jを決定することができ、これを膜の拡散挙動の尺度として使用することができる。
この目的のために、独国特許第2553377号明細書に記載されているような装置が使用される。そのような装置は、2つの開口部を有する少なくとも1つの測定チャンバを備え、少なくとも2つの開口部のうちの1つは、検査対象の膜上に載置可能である。2つのセンサが測定チャンバ内に配置され、センサは測定中に検査対象の物体から異なる距離に配置される。このようにして、拡散速度を決定することができる。
【0003】
これまでに知られている従来技術では、開口部が1つだけでセンサが1つだけの測定チャンバも知られている。次いで、第1の開口部の反対側に拡散シンクとして機能する冷凍プレートが設けられる。
【0004】
しかし、この測定をより高速かつより信頼性の高いものにする必要性が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、測定がより高速かつより信頼性の高い、集中測定量を測定するための測定装置および方法を提供することである。
【0007】
この目的は、請求項1および16の特徴によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、有利には、集中測定量、特に拡散によって物体により放出された物質の濃度、または温度を測定するための測定装置であって、少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの測定チャンバであって、開口部は、検査対象の物体上に載置可能である少なくとも1つの測定チャンバを備え、測定チャンバ内には、集中測定量を測定するための少なくとも3つのセンサが配置され、センサは、測定中に検査対象の物体から異なる距離に配置され、センサによって測定された値を受信し、物体から少なくとも3つの異なる距離で測定された値から集中測定量の合計値を決定する評価装置が設けられる、測定装置を提供する。
【0009】
集中測定量は、考慮中の系のサイズが変動しても変化しない状態変数である。この場合、集中測定量は、拡散によって物体により放出された物質の濃度、または温度であり得る。集中測定量はまた、圧力、電圧、またはあらゆる種類の濃度もしくは密度であってもよい。集中測定量は、直接的または間接的に測定することができる。
【0010】
測定装置は、少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの測定チャンバを備え、開口部は、検査対象の物体上に載置可能である。
【0011】
測定チャンバが少なくとも2つの開口部を有し、2つの開口部のうちの少なくとも1つは、検査対象の物体上に載置可能であることが特に好ましい。したがって、少なくとも2つの開口部を有する測定チャンバは、開放測定チャンバを形成する。
【0012】
あるいは、測定チャンバは、検査対象の物体上に載置可能な1つの開口部のみを有することができ、開口部の反対側に拡散シンクとして機能する冷凍プレートを設けることができる。そのような測定チャンバは、閉鎖測定チャンバである。
【0013】
本発明は、関連するセンサが膜から異なる距離を有するいくつかの空間分解値を有するという利点を有し、すべての値を評価することによってより正確な結果を得ることができる。測定結果もまた、より迅速に入手可能である。
【0014】
好ましくは、計算規則が評価装置に記憶され、それに基づいて評価装置が合計値を決定する。
【0015】
測定の開始時には、例えば、装置を皮膚上に載置したとき、例えば、物体から拡散により放出された物質が個々のセンサに達するのに一定の時間がかかる。したがって、センサは、すぐに対応する値を測定することができず、測定値が安定するまでに時間がかかる。そのようなプロセスは、記憶された計算規則において考慮に入れることができる。
【0016】
計算規則として、例えば、モデル関数が、決定されるべき集中測定量の実際の経過の近似シミュレーションのために、評価装置または下流の別個の評価ユニットに記憶され得る。
【0017】
測定装置が検査対象の物体上に載置された後、例えば、センサによって決定された温度測定値は、センサの最終収束温度(Tfinal)として、初期測定値(Tinitial)から実際の物体温度値にゆっくりとしか調整されないため、測定装置のセンサが実際の物体温度または最終収束温度(Tfinal)に調整されるように、実際の物体温度を測定するには一定の補償期間が必要である。測定装置の補償期間は、最大300秒の場合がある。
【0018】
本発明によれば、測定装置が物体表面上に載置された後、初期温度(Tinitial)から開始して実際の物体温度または最終収束温度(Tfinal)までの温度測定値の時間的経過をシミュレートするために、実際の物体温度または最終収束温度(Tfinal)を決定するためのモデル関数をシミュレートすることができる。モデル関数は、温度がまだ平衡している間に測定装置が物体上に載置された後の短い測定期間中に記録された測定値によって、最終物体温度値または最終収束温度(Tfinal)を計算することを可能にする。特に、指数関数は、例えば温度経過について、評価装置または下流の別個の評価ユニットにモデル関数として記憶することができる。
【0019】
特に好ましくは、以下の関数が、評価装置または下流の別個の評価ユニットに測定装置のセンサの温度経過についてのモデル関数として記憶される:
【0020】
【0021】
ここで、
T0=時点t=0での温度、T1はt=∞での最終収束温度、τ=[1/s]における指数関数の時定数、tは[s]における時点または期間、Tは時点tでの現在温度である。
測定装置が測定対象の物体上に載置された後の規定の期間中、温度測定値Ttiが規定の時間tiにおいてセンサによって決定される。好ましくは、測定値を決定するために20~30秒の最小測定期間が選択される。測定期間の開始は、物体上に測定装置を載置してからの10~20秒の範囲の期間から選択されることが特に好ましい。
モデル関数の時定数τは、モデル関数の未知数と考えることができ、あるいは、実際の温度経過を測定することによって測定装置について決定し、評価装置に記憶することができる。特に好ましくは、τは、1/60~1/90[1/s]の範囲の値に設定することができる。
【0022】
一般に、変数T0は、未知数として決定されるべき、仮定されたモデル関数についてのtme点t=0における温度、またはモデル関数によって近似される期間tにわたる温度の経過である。しかし、温度T0は、測定装置を介して決定された初期温度(Tinitial)、またはモデル関数を介して温度経過が近似される任意の中間温度に設定することができる。
【0023】
時点t=∞での最終収束温度T1は、モデル関数を介した温度経過の理論的に仮定された最良の可能な近似での実際の物体温度(Tfinal)に対応する。
【0024】
集中測定値の合計値を時点tで測定された現在温度の測定値Tとして使用することができ、これは、計算規則を使用してセンサの測定値から計算することができる。
【0025】
モデル関数T0およびT1の2つの未知数、あるいはモデル関数τ、T0、およびT1の3つの未知数は、Levenberg-Marquardtアルゴリズムを使用することによって決定するか、または測定値の対から近似することができる。
【0026】
Levenberg-Marquardtアルゴリズムは、ロバストな統計的方法(最尤推定量)を用いて反復手順で組み合わせ、残差の分布関数に基づいて、その値がモデル関数に適合しない測定点を選別することができる。次いで、モデルパラメータの改善された推定を、低減された測定点のセットに対して行うことができる。
検査対象の物体は、任意の拡散源またはシンクであり得る。好ましくは、物体は、工業用膜または生体膜であり得る。生体膜は、例えば、皮膚表面であり得る。
【0027】
センサによって、例えば、拡散によって物体により放出された物質の濃度cを直接的または間接的に測定することができる。濃度勾配∇cは、空間濃度分布c(z)から計算することができる。このことから、拡散によって放出された対応する物質の拡散速度Jは、物質対固有の拡散定数Dを用いてFickの法則に従って計算することができる:
【0028】
【0029】
拡散定数は、特定の物質ペアリングについて知られており、文献で調べることができる。あるいは、拡散定数は、実験的に決定することもできる。拡散定数は、圧力および温度に依存する。ただし、拡散定数は、特定の圧力および温度について知られている。原則として、濃度勾配は、2つの点z1およびz2におけるc(z)の測定値から決定することができる。この目的のために、勾配の値は、2つの測定値から推定されなければならない。これは、例えば、以下の線形差手法で可能である:
【0030】
【0031】
しかし、空間的により高い分解濃度測定は、はるかに高い信頼性で測定値から濃度の勾配を導出することを可能にする。n個の距離z1~znにおける濃度c(zi)を決定すれば、測定点は、任意のパラメータ化可能な関数の補間点とみなすことができる。例えば、これは、次数kの多項式p(z)とすることができる。
【0032】
【0033】
既知の数値法により、以下が適用されるように多項式パラメータa0~ak-1を決定することができる:
【0034】
【0035】
これにより、濃度の分析導関数∂c/∂zを計算することが可能になる:
【0036】
【0037】
pの勾配が一定でない関数である場合、これを使用して位置依存勾配を決定することができる。決定されるべき目標変数は拡散速度Jであるため、pのパラメータの決定と∇c(z)の計算の両方は、例えば、Jの時間経過が外乱に対して可能な限り安定かつロバストであるか、または測定装置が表面上に載置された後に可能な限り迅速に応答するように選択することができる。
【0038】
拡散によって物体により放出された物質は、水蒸気であり得る。物体である場合、皮膚である場合、これは経皮水分蒸散量と呼ばれる。この目的のために、皮膚を通る水蒸気の拡散速度は、測定量として決定される。このような測定値を、TEWL値と呼ぶ。
【0039】
評価装置に記憶された計算規則は、集中測定量の合計値を決定するために、センサによって測定された値に異なる重み付けをすることができる。
【0040】
これは、より正確な結果がはるかに速く入手可能であるという利点を有する。装置が再び物体上に載置されると、拡散によって放出された物質の量が対応するセンサに達するのに一定の時間がかかるため、物体の近くに載置されたセンサは、遠くに載置されたセンサよりも速く対応する値を測定することができる。
【0041】
各装置について、試験測定を実施することができ、特別な装置について、測定のどの時間でどの値が最良値を達成するためにどのように重み付けされるかを記憶することができる。
【0042】
評価装置に記憶された計算規則は、合計値を決定する際、線形推定量、非線形推定量、またはロバスト推定量を使用することができる。複数のロバスト推定量が知られている。
そのようなロバスト推定量は、実質的に逸脱する値が考慮に入れられないという利点を有する。このようにして、より正確な結果を得ることができる。
【0043】
合計値は、すべての測定値から決定された値である。この値は、実際の集中測定量を表すと考えられる。測定が長時間実施される場合、測定値はすべてのセンサについて非常に安定しており、合計値は例えば、すべての測定値の平均値とすることができる。
【0044】
しかし、装置の用途に応じて、異なる計算規則が存在してもよく、例えば、測定の開始時に、既に上述したようにセンサの測定値の異なる重み付けが適用されてもよい。例えば、環境内の乱気流のために個々の値が大きく変動する場合でも、これを記録して考慮に入れることができる。例えば、ロバスト推定量は、これらの広く変動する値を考慮に入れることができない。
【0045】
合計値は、評価装置が計算規則に基づいて決定する推定値とすることができ、計算規則は、合計値の時間的経過を考慮に入れる。
【0046】
試験試行を通して、例えば、経時的な合計値の時間的経過を知ることができる。ここで新しい測定が開始され、装置が物体上に載置され、最初の測定値が入手可能である場合、合計値の推定値は、合計値の記憶された典型的な時間的経過に基づいて決定することができる。
【0047】
センサは、測定チャンバの中央または側壁に配置することができる。
【0048】
測定チャンバは、少なくとも1つの側壁を備えることができ、少なくとも3つのセンサは、検査対象の物体から異なる距離で少なくとも1つの側壁に配置することができる。
【0049】
あるいは、センサは、測定チャンバの中央または中央領域に載置されてもよい。
【0050】
少なくとも1つの側壁は、第1および第2の開口部の間に配置することができる。
【0051】
測定チャンバは、円形断面を有することができる。
【0052】
少なくとも3つのセンサは、少なくとも3つの列に配置することができ、少なくとも3つの列は、検査対象の物体から異なる距離に配置され、少なくとも1つのセンサは、列ごとに配置される。
【0053】
少なくとも5つのセンサを設けることもまた、可能である。したがって、少なくとも5つの列を設けることができ、いくつかのセンサが列ごとに設けられてもよい。例えば、6つのセンサを列ごとに配置してもよく、合計で少なくとも30個のセンサを設けることができる。
【0054】
センサは、拡散によって物体により放出された物質の濃度を測定することができる。拡散によって放出された物質の濃度を測定するセンサは、温度および/または相対湿度をさらに測定することができる。あるいは、拡散によって放出された物質の濃度を測定するセンサに加えて、温度および/または相対湿度を測定するために少なくとも3つの温度センサおよび/または相対湿度を測定するためのセンサを設けることができ、これらはまた、測定中に検査対象の物体から異なる距離に配置される。
【0055】
評価装置はまた、温度および/または相対湿度の測定値を受信し、測定値に基づいて合計温度値および/または相対湿度の合計値を決定することができる。
【0056】
追加の温度センサおよび/または相対湿度用のセンサはまた、測定チャンバの側壁上または中央領域または中央に配置されてもよい。
【0057】
本発明によれば、集中測定量、特に拡散によって物体により放出された物質の濃度、または温度を測定するための方法を提供することができ、方法は、
検査対象の物体上に集中測定量を測定するための少なくとも3つのセンサを有する少なくとも1つの測定装置を載置するステップであって、測定チャンバは、検査対象の物体上に載置された少なくとも1つの開口部を有するステップ
を含み、
測定チャンバは、センサが測定中に検査対象の物体から異なる距離に配置されるように載置され、
評価装置は、センサによって測定された値を受信し、集中測定量の合計値は、測定値から評価装置によって決定される。
【0058】
合計値を決定するために、合計値を決定するために使用される計算規則を記憶することができる。
【0059】
合計値を決定する際、センサによって測定された計算規則の値は、異なる重み付けをすることができる。
【0060】
検査対象の膜の近くに配置されたセンサの測定値は、より高く重み付けすることができる。
【0061】
異なる重み付けにより、より信頼性の高い値をより迅速に決定することができる。
【0062】
合計値を決定するために、ロバスト推定量を使用することができる。
【0063】
センサによって直接測定されなかった表面からの特定の距離に対する集中測定量の値を決定することもまた、可能である。
【0064】
検査対象の物体から異なる距離に位置するセンサからの異なる測定値の存在は、膜からの距離に対する値の依存性を表す関数を決定することを可能にする。このようにして、センサによって直接決定されない特定の距離に対して、値を決定することもできる。このようにして、集中測定量を物体表面上で直接決定することもできる。温度または相対湿度がセンサまたは追加のセンサを用いて集中測定量として測定される場合、物体表面上の温度または相対湿度を決定することが可能である。
【0065】
拡散によって放出された物質の濃度、センサの第2の開口部の外側の直接の環境における温度、または相対湿度を、さらに示すことができる。
【0066】
加えて、温度は、物体から異なる距離にある少なくとも3つの点で測定することが可能である。
【0067】
以下では、本発明の例示的な実施形態が図面を参照してより詳細に説明され、図面には、以下が概略的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】拡散によって物体により放出された物質の量を測定するための測定装置を示す図である。
【
図4】同様に測定チャンバを通る断面、およびタッチダウンキャップを通る断面を示す図である。
【
図5】物体の表面について(連続曲線)および測定装置の第2の開口部について(破線曲線)の測定の時間的経過、ならびに水蒸気濃度、温度、および相対湿度の外挿を示す図である。
【
図6】物体に対するセンサの位置の関数としての水蒸気濃度の外挿を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1は、集中測定量を測定するための測定装置を示す。本発明の例示的な実施形態では、拡散によって物体5により放出された物質の濃度が測定される。
【0070】
ハンドル2が示されている。測定チャンバ6を有するヘッド4が、ハンドル上に配置される。図示の例示的な実施形態では、測定チャンバ6は、少なくとも2つの開口部8および10を有し、少なくとも2つの開口部14のうちの1つは、検査対象の物体5上に載置可能である。この場合、開口部8は、検査対象の物体5上に載置することができる。測定チャンバ6は、
図2に平面図で示されている。測定チャンバ6は、
図2に見られるように円形断面を有する。
【0071】
図3は、測定チャンバ6を通る断面を示す。複数のセンサ12が、測定チャンバ6の側壁14上に配置されていることが分かる。センサ12は、互いに隣接してまたは互いに重なって列および行に配置される。5つのセンサが、互いに重なって一列に配置される。6つのセンサを一列に配置し、平均して3つの列のセンサ12が見えるようになっている。
【0072】
センサ12は、拡散によって放出された物質の濃度を直接的または間接的に測定する。
【0073】
物体5は、生体膜または工業用膜とすることができる。測定チャンバ6は、物体5上に載置することができる。生体膜は、特に、皮膚表面であり得る。
【0074】
加えて、図示のセンサ12は、集中測定量として温度を測定することもできる。あるいは、温度を測定する別個のセンサを設けることもでき、温度を測定するために複数のセンサを設けることも可能である。
【0075】
評価装置16が、ハンドル2内または外部に配置される。
【0076】
評価装置16は、センサ12によって測定された値を受信し、少なくとも3つの測定値から拡散によって放出された物質の濃度の合計値を決定する。30個のセンサが設けられている場合には、少なくとも30個のセンサの測定値が提供される。好ましくは、計算規則が評価装置16に記憶され、それに基づいて評価装置16が合計値を決定する。
【0077】
計算規則、したがって評価装置16は、異なるセンサ12によって測定された値に異なる重み付けをすることができる。例えば、検査対象の物体の近くに配置されたこれらのセンサ12の値は、より高く重み付けすることができる。
前記センサ12は、乱気流による干渉の影響を受けにくい。さらに、これらのセンサ12により、測定チャンバ6が再び物体上に載置された後、測定値はより迅速に入手可能となる。拡散によって放出された物質は、物体上に測定装置1を載置した後、最初にセンサ12に達しなければならない。したがって、前記センサ12は、一定時間後にのみ拡散によって放出された物質を測定することができる。
【0078】
図4も同様に装置を通る断面を示しており、追加のタッチダウンキャップが示されている。前記タッチダウンキャップは、特に皮膚表面の検査中に皮膚表面を保護するために使用される。
【0079】
図5は、物体の表面について(連続曲線)および測定装置の第2の開口部について(破線曲線)の測定の時間的経過、ならびに水蒸気濃度、温度、および相対湿度の外挿を示す。一定時間の後、初めて安定値に達する。ただし、初期に既に測定された測定値に基づいて、合計値の推定値を決定することもできる。推定値を決定するために、評価装置16、したがって計算規則は、合計値および/または測定値の時間的経過を考慮に入れる。時間的経過は、比較試験によって決定することができ、例えば、典型的な時間的経過関数を決定することができる。最初の値が現在入手可能である場合、予想される安定した合計値は、これらの最初の値および記憶された時間的経過関数に基づいて決定することが可能である。測定がより長く続いた場合であっても、乱気流または他の外乱が発生する可能性がある。
【0080】
合計値を決定する際、他の測定値と大きく異なる測定値は考慮に入れなくてもよい。
【0081】
したがって、測定のさらなる経過において、異なる重み付けを依然として適用することができる。
【0082】
例えば、計算規則は、合計値を決定するためにロバスト推定量を使用することができる。
【0083】
物体表面での拡散によって放出された物質の濃度を決定することもまた、可能である。
【0084】
測定装置のすぐ近傍での拡散によって放出された物質の濃度を決定することもまた、可能である。
【0085】
この目的のために、例えば
図6に示すように、外挿を実施することができる。
【0086】
図6は、センサと検査対象の膜との間の距離の関数としての水蒸気濃度を示す。これらの測定値に基づいて、関数を決定することができる。この関数を決定することによって、物体表面および環境中の水蒸気濃度について結論を導き出すことができる。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集中測定量、特に拡散によって物体により放出された物質の濃度、または温度を測定するための測定装置であって、
少なくとも1つの開口部を有する少なくとも1つの測定チャンバであって、前記開口部は、前記検査対象の物体上に載置可能である少なくとも1つの測定チャンバ
を備え、
前記集中測定量を測定するための少なくとも3つのセンサが前記測定チャンバ内に配置され、前記センサは、測定中に前記検査対象の物体から異なる距離に配置され、
前記センサによって測定された値を受信し、少なくとも3つの前記測定値から前記集中測定量の合計値を決定する評価装置が設けられる
ことを特徴とする、測定装置。
【請求項2】
前記測定チャンバは、少なくとも2つの開口部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
計算規則が前記評価装置に記憶され、それに基づいて前記評価装置が前記合計値を決定することを特徴とする、請求項1または2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記評価装置に記憶された前記計算規則は、前記集中測定量の前記合計値を決定するために、前記センサによって測定された前記値に異なる重み付けをすることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記評価装置に記憶された前記計算規則は、前記合計値を決定する際、ロバスト推定量を使用することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記合計値は、前記評価装置が前記計算規則に基づいて決定する推定値であり、前記計算規則は、前記合計値の時間的経過を考慮に入れることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項7】
モデル関数が、決定されるべき集中測定量の実際の経過の近似シミュレーションのために、前記評価装置または下流の別個の評価ユニットに記憶されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記測定チャンバは、少なくとも1つの側壁を備え、前記少なくとも3つのセンサは、前記検査対象の物体から異なる距離で前記少なくとも1つの側壁上に配置されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項9】
前記測定チャンバは、少なくとも1つの側壁を備え、前記少なくとも3つのセンサは、前記検査対象の物体から異なる距離で前記測定チャンバの中央領域における前記側壁から離間して配置されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項10】
前記測定チャンバは、円形断面を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項11】
前記少なくとも3つのセンサは、少なくとも3つの列に配置され、前記少なくとも3つの列は、前記検査対象の物体から異なる距離に配置され、少なくとも1つのセンサは、列ごとに配置されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項12】
前記センサは、拡散によって前記物体により放出された物質の前記濃度を測定することを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項13】
拡散によって放出された物質の前記濃度を測定する前記センサは、前記温度および/または相対湿度をさらに測定すること、または前記温度および/または相対湿度を測定するために少なくとも3つの温度センサおよび/または相対湿度を測定するためのセンサがさらに設けられ、これらはまた、測定中に前記検査対象の物体から異なる距離に配置されることを特徴とする、請求項12に記載の測定装置。
【請求項14】
前記評価装置はまた、前記温度および/または相対湿度の前記測定値を受信し、前記測定値に基づいて合計温度値および/または相対湿度の合計値を決定することを特徴とする、請求項13に記載の測定装置。
【請求項15】
前記温度センサおよび/または相対湿度用のセンサはまた、前記側壁上に配置されることを特徴とする、請求項13~14のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項16】
集中測定量、特に拡散によって物体により放出された物質の濃度、または温度を測定するための方法であって、
検査対象の物体上に前記集中測定量を測定するための少なくとも3つのセンサを有する少なくとも1つの測定チャンバを載置するステップであって、前記測定チャンバは、前記検査対象の物体上に載置された少なくとも1つの開口部を有するステップ
を特徴とし、
前記測定チャンバは、前記センサが測定中に前記検査対象の物体から異なる距離に配置されるように載置され、
評価装置は、前記センサによって測定された値を受信し、前記集中測定量の合計値は、前記測定値から前記評価装置によって決定される、
方法。
【請求項17】
前記合計値を決定するための計算規則が記憶され、それに基づいて前記合計値が決定されることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記合計値を決定する際、前記センサによって測定された前記値は、前記計算規則において異なる重み付けをされることを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記検査対象の物体の近くに配置された前記センサの前記測定値は、より高く重み付けされることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記合計値を決定するために、ロバスト推定量が使用されることを特徴とする、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
モデル関数が、決定されるべき集中測定量の実際の経過の近似シミュレーションのために使用されることを特徴とする、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
センサによって直接測定されなかった表面からの特定の距離に対する前記集中測定量の値を決定することができることを特徴とする、請求項16~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
拡散によって物体により放出された物質の前記濃度は、集中測定量として測定されることを特徴とする、請求項
16~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
加えて、前記温度および/または相対湿度は、前記物体から異なる距離にある少なくとも3つの点で集中測定量として測定されることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
Fickの法則と同様に、前記測定された集中測定量c(z)の勾配∇c(z)から対応する測定量の拡散速度を決定することを特徴とする、請求項16~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記集中測定量は、前記温度であり、前記拡散速度は、熱損失であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記集中測定量は、物質濃度であり、前記拡散速度は、時間当たりおよび面積当たりの物質量であることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【国際調査報告】