(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-17
(54)【発明の名称】ガイドベーンを備えるターボジェットエンジンナセルの空気取入口
(51)【国際特許分類】
B64D 33/02 20060101AFI20220610BHJP
【FI】
B64D33/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559411
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(85)【翻訳文提出日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2020060040
(87)【国際公開番号】W WO2020212228
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バインダー アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ミンク ダニエル-チプリアン
(57)【要約】
複数の整流ベーン(3)を備える空気吸込口(2)を備える航空機のターボジェットエンジン(1)を用いる方法が開示されており、それぞれの整流ベーン(3)は、それが推力段階を支援する後退位置と、整流ベーン(3)が半径方向内向き方向に内壁(21)から突出することにより内壁(21)の逆気流(F-INV)を整流して推力逆転段階を支援する配備位置(B)と、の間で動くことができるように装着されており、方法において、少なくとも1つの整流ベーン(3)は、ターボジェットエンジン推力段階(1)中、後退位置にあり、方法は、ターボジェットエンジン(1)の推力逆転段階中、整流ベーン(3)を配備位置まで動かすステップを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部において内側気流(F-INT)が推力段階中に上流から下流まで循環し、逆気流(F-INV)が推力逆転段階中に下流から上流まで循環する、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機のターボジェットエンジン(1)を作動させる方法であって、
前記ターボジェットエンジン(1)は、推力逆転を実行するように構成されたファン(11)と、空気取入口(2)を備えるナセルと、を備え、前記空気取入口(2)は、軸線X周りに周方向に延在し、そして、軸線Xに面して前記内側気流(F-INT)及び前記逆気流(F-INV)を誘導するように構成された内壁(21)と、前記内壁(21)の反対側にあって外側気流(F-EXT)を誘導するように構成された外壁(22)と、を備え、前記内壁(21)と前記外壁(22)とは、空気取入口リップ(23)によって互いに接続されて環状空洞(20)を形成し、前記空気取入口(2)は、前記ファン(11)の上流に設置された複数のガイドベーン(3)を備え、
それぞれのガイドベーン(3)は、
-前記推力段階を促進するための後退位置(A)と、
-前記ガイドベーン(3)が、半径方向内向き方向に前記内壁(21)から突出して拡張することにより、前記内壁(21)から前記逆気流(F-INV)を誘導して推力逆転段階を促進する拡張位置(B)と、の間で可動に装着されており、
-前記方法は、少なくとも1つのガイドベーン(3)が、前記ターボジェットエンジン(1)の推力段階中、前記後退位置(A)にあり、前記ターボジェットエンジン(1)の推力逆転段階中に、前記ガイドベーン(3)を前記拡張位置(B)まで動かすステップを備える、方法。
【請求項2】
前記ターボジェットエンジン(1)の前記空気取入口(2)の前記ガイドベーン(3)は、軸線X周りに前記空気取入口(2)の周囲に分布している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ターボジェットエンジン(1)の前記空気取入口(2)は、前記ガイドベーン(3)を前記後退位置(A)から前記拡張位置(B)まで動かすように構成された少なくとも1つの移動式部材(9)を備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ターボジェットエンジン(1)の前記空気取入口(2)の前記ガイドベーン(3)は、前記空気取入口(2)内に並進可能に及び/又は回転可能に装着されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ターボジェットエンジン(1)の前記空気取入口(2)の前記ガイドベーン(3)は、空気力学プロファイルを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ターボジェットエンジン(1)の前記空気取入口(2)は、カバー部材(4)を備え、
前記カバー部材(4)は、前記カバー部材(4)が前記後退位置(A)において前記ガイドベーン(3)をカバーして推力中の空気力学プロファイルを確実にする作動位置(C1)と、前記ガイドベーン(3)が前記拡張位置(A)にあるように、前記カバー部材(4)が、前記作動位置(C1)からオフセットされている保管位置(C2)と、の間で可動に装着されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記ターボジェットエンジン(1)の前記空気取入口(2)の前記ガイドベーン(3)は、前記後退位置(A)において前記空気取入口(2)の前記環状空洞(20)内に拡張する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
ファンベーン(11)を備える前記ターボジェットエンジン(1)について、ガイドベーン(3)の長さは、ファンベーン(11)の長さの1/3よりも小さい、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機のターボジェットエンジンの分野に関し、より具体的には、航空機ターボジェットエンジンナセルの空気取入口を対象とする。
【背景技術】
【0002】
既知の方法では、航空機は、ターボジェットエンジン内で上流から下流まで循環する気流の加速によってその推進を可能にするための1つ又は複数のターボジェットエンジンを備えている。
【0003】
図1を参照すると、ターボジェットエンジン100が表されており、該ターボジェットエンジンは、軸線X沿いに延在し、ファン101を備え、該ファンは、外側シェル102内に軸線X周りに回転可能に装着されることにより、ターボジェットエンジン100の推力中に、ターボジェットエンジン100内で上流から下流まで循環する、内側気流F-INTと称される気流を加速させる。以下において、用語「上流」及び「下流」は、内側気流F-INTの循環について規定される。
【0004】
既知の方法では、ターボジェットエンジン100は、ナセルを備え、該ナセルは、その上流側端部に空気取入口200を備え、該空気取入口は、軸線Xに面する内壁201と、内壁201の反対側にある外壁202と、を備えている。壁201、202は、前縁部を備える空気取入口リップ203によって接続されることにより、環状空洞220を形成する。空気取入口200は、空気力学プロファイルを有し、該空気力学プロファイルは、上流側気流Fを内壁201によって誘導された内側気流F-INTと、外壁202によって誘導された外側気流F-EXTと、に分離する。以下では、用語「内側」及び「外側」は、ターボジェットエンジン100の軸線Xについて半径方向に規定される。
【0005】
特に着陸中に、航空機の制動距離を低減するために、推力逆転システムをナセル内に統合することが知られており、該推力逆転システムは、排気において気流の向きを修正して推力逆転段階を実行する。既知の方法において、推力逆転段階が、ストレートナの下流の2次流れ内でフラップ及び/又はグリルを開いて気流を半径方向外向き又は上流に導くことによって達成される。
【0006】
高バイパス比ターボジェットエンジンについては、ナセルは、大きい直径を有しており、それで、従来の推力逆転システムを統合することは、これがターボジェットエンジンの重量、全体寸法、及び抗力にとってかなり不利であるので望ましくない。
【0007】
推力逆転段階を可能にするための別の解決策は、可変ピッチファン又はVPFを提供することにより、ターボジェットエンジンの2次流れ内で循環する気流を逆転し、それで、航空機が着陸中に減速することを可能する逆推力を生成することを可能にすることにある。
【0008】
図2を参照すると、推力逆転段階中、逆気流F-INVが、ターボジェットエンジン100内で下流から上流まで、すなわち、
図1の内側気流F-INTの反対に循環する。より具体的には、逆気流F-INVは、ファンベーン101の頭部と外側シェル102との間で循環する。逆気流F-INVは、内壁201によって上流に誘導される。この逆気流F-INVは、次いで上流側気流Fに対抗し、それによって推力逆転段階を可能にする。
【0009】
実際には、
図2に示すように、推力逆転段階中、逆気流F-INVは、方位の向きにファン101の回転作用の下でねじられる。その結果、逆気流F-INVは、上流側気流Fと同じ方向には循環せず、それによって、逆推力段階の性能を低減させる。更に、逆気流F-INVの一部は、実質的に半径方向沿いに空気取入口200の空気力学プロファイルをバイパスし、これが、空気取入口リップ203付近に局所減圧Pの領域の出現をもたらす。かかる局所減圧Pは、上流側吸引、すなわち、逆推力に対抗する力を発生させる。実際に、この現象は、かなり有意に逆推力を低下させる。
【0010】
それ故、本発明の目標は、この現象を低減させて、推力中の航空機の性能に影響を及ぼすことなく、逆推力段階中のターボジェットエンジンの性能を向上させることである。
【0011】
特許文献1からの先行技術では、放出される騒音を低減するための、巡航、離陸、及び着陸位置の間で可動であるリング部分を備える空気取入口が公知である。かかるリング部分は、特に高バイパス比ジェットエンジンに対して、推力逆転段階を促進せず、そのために、フラップ推力逆転システムは、重量が大きく、全体寸法が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、内部において内側気流が推力段階中に上流から下流まで循環し、逆気流が推力逆転段階中に下流から上流まで循環する、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機ターボジェットエンジンナセルの空気取入口に関し、空気取入口は、軸線X周りに周方向に延在し、そして、軸線Xに面して内側気流及び逆気流を誘導するように構成された内壁と、内壁の反対側にあって外側気流を誘導するように構成された外壁と、を備え、内壁と外壁とは空気取入口リップによって一緒に接続されている。
【0014】
本発明は、空気取入口が、複数のガイドベーンを備え、それぞれのガイドベーンが、
-推力段階を促進するための後退位置と、
-ガイドベーンが半径方向内向き方向沿いに内壁から突出して拡張することにより、逆気流を内壁から誘導して逆推力段階を促進する拡張位置と、の間で可動に装着されていることにおいて注目に値する。
【0015】
本発明によって、ガイドベーンが拡張されることにより、内壁付近で循環する逆気流を誘導する。逆気流の部分の回転運動が、したがって、軸線方向の気流に直接対抗するように低減されるか又は除去さえされることにより、最適な推力逆転段階を獲得する。それ故、ファンの下流に置かれて推力中に用いられるOGV型ベーンの方式において、ファンの上流の空気取入口ガイドベーンは、推力逆転段階中、ファンからの逆気流を誘導するための最適な誘導を可能にする。
【0016】
更に、誘導された気流が軸方向に向いているので、これは、空気取入口リップにおける分離が促進されることを可能にし、それ故、真空の形成を除去することによって先行技術と比較して推力を改善する。
【0017】
用語「ガイドベーン」とは、真直ぐな又は傾斜した一定厚さの平板等のいずれか別のプロファイルと同様の空気力学プロファイルを指す。
【0018】
本発明の一態様に従うと、ガイドベーンは、軸線X周りに空気取入口の周囲にわたって均一又は非均一な態様で分布していることにより、空気取入口の、より一般的にはナセルの周囲環境の関数としての誘導に適合する。それ故、逆気流は、必要及び制約に従って有利に向けられてもよい。
【0019】
本発明の一態様によると、空気取入口は、ガイドベーンを後退位置から拡張位置まで動かすように構成された少なくとも1つの移動式部材を備えている。
【0020】
一態様によると、移動式部材は、能動的である。移動式部材は、制御可能なアクチュエータの形式である。
【0021】
別の一態様によると、移動式部材は、受動的であり、好ましくは環状空洞内に形成された、ガイドベーン上に開いている気圧導管の形式であることにより、後退位置と拡張位置との間で吸引又は噴出によってガイドベーンを動かす。
【0022】
別の一態様によると、ガイドベーンは、空気取入口内に並進可能及び/又は回転可能に装着されている。ガイドベーンは、軸線Xに実質的に平行な回転軸線周り(横方向回転)に、又は軸線Xに実質的に垂直な回転軸線周り(長手方向回転)に、回転可能に駆動されるように構成されている。
【0023】
本発明の一態様によると、ガイドベーンは、空気力学プロファイルを備えている。ガイドベーンは、半径方向断面内に、下流側に設置された前縁部と、上流側に設置された後縁部と、を備えている。それ故、ガイドベーンは、推力逆転段階中の気流だけを誘導するのに適している。好ましくは、ガイドベーンは、前側の、特に湾曲した表面と、後側の、特に湾曲した表面と、を備えている。
【0024】
本発明の一態様によると、空気取入口は、カバー部材を備え、該カバー部材は、カバー部材が後退位置においてガイドベーンをカバーすることにより推力中の空気力学プロファイルを確実にする作動位置と、ガイドベーンが拡張位置にあるようにカバー部材がそれの作動位置からオフセットされている保管位置と、の間で可動に装着されている。かかるカバー部材は、空気取入口の空気力学プロファイルが後退位置において最適化されることを可能にする。
【0025】
一態様によると、ガイドベーンは、後退位置において空気取入口の環状空洞内に拡張する。一態様によると、ガイドベーンは、方位空洞内に拡張する。
【0026】
本発明は、また、内部において内側気流が推力段階中に上流から下流まで循環し、逆気流が推力逆転段階中に下流から上流まで循環する、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機ターボジェットエンジンに関し、ターボジェットエンジンは、推力逆転を実行するように構成されたファンと、上記のように、推力逆転を促進するための空気取入口を備えるナセルと、を備え、ガイドベーンは、ファンの上流に設置されている。
【0027】
本発明の好ましい一態様によると、ターボジェットエンジンは、ファンベーンを備え、ガイドベーンの長さは、ファンベーンの長さの1/3よりも少ない。
【0028】
本発明は、また、上記のように、少なくとも1つのガイドベーンがターボジェットエンジンの推力段階中、後退位置にある空気取入口を作動させる方法に関し、該方法は、上記ターボジェットエンジンの推力逆転段階中、ガイドベーンが半径方向内向き方向に内壁から突出して拡張するように、ガイドベーンを拡張位置に動かすステップを備え、それにより、内壁の逆気流を誘導して、推力逆転段階を促進する。
【0029】
本発明は、単に例として与えられ、同一の参照符が類似の対象に与えられている、非限定的な例として与えられた以下の添付図面を参照する以下の説明からよりよく理解されるであろう。
【0030】
留意すべきは、図面は、本発明を実施するために詳細に本発明について開示し、言うまでもなく必要に応じて本発明を更に規定することに役立つ場合があることである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】先行技術に従う、推力において作動するターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図2】先行技術に従う、逆推力において作動するターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図3】本発明に従う、推力において作動するターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図4】本発明に従う、逆推力において作動するターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図5】後退位置における、空気取入口リップ上に1列のガイドベーンを備える空気取入口についての横断面図の略図である。
【
図6】拡張位置における空気取入口リップ上に1列のガイドベーンを備える空気取入口についての横断面図の略図である。
【
図7A】第1後退位置における、空気取入口リップにガイドベーンを備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図7B】第2拡張位置における、空気取入口リップにガイドベーンを備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図7C】カバー部材が固定されたガイドベーンを備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図8】ガイドベーンが拡張位置にあるときの軸直角平面内の空気取入口についての部分略図である。
【
図9A】回転ガイドベーンの拡張運動についての略図である。
【
図9B】回転ガイドベーンの拡張運動についての略図である。
【
図9C】回転ガイドベーンの拡張運動についての略図である。
【
図9D】回転ガイドベーンの拡張運動についての略図である。
【
図10A】半径方向に対して傾斜した拡張軸線沿いに並進するガイドベーンの拡張運動についての略図である。
【
図10B】半径方向に対して傾斜した拡張軸線沿いに並進するガイドベーンの拡張運動についての略図である。
【
図10C】半径方向に対して傾斜した拡張軸線沿いに並進するガイドベーンの拡張運動についての略図である。
【
図10D】半径方向に対して傾斜した拡張軸線沿いに並進するガイドベーンの拡張運動についての略図である。
【
図11A】受動型移動式デバイスを備える空気取入口についての略図である。
【
図11B】受動型移動式デバイスを備える空気取入口についての略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図3及び4を参照すると、本発明に従うターボジェットエンジン1が表されており、該ターボジェットエンジンは、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在し、気流を画定する外側シェル12内に軸線X周りに回転可能に装着されたファン11を備えている。既知の方法において、ファン11は、推力段階中に、内側気流F-INT(
図3)として知られた、ターボジェットエンジン1内で上流から下流まで循環する気流を加速し、推力逆転段階中に、逆気流F-INV(
図4)として知られた、ターボジェットエンジン1内で下流から上流まで循環する気流を加速するように構成されている。実際には、逆気流F-INVは、空気流れの半径方向外側部分内で、特に空気流れ半径の1/3にわたって、下流から上流まで循環する。内側気流F-INTは、空気流れ半径方向内側部分内で、特に空気流れ半径の2/3にわたって、上流から下流まで常に循環する。内側気流F-INTは、十分な流速を確実にすることにより、ターボジェットエンジンのいかなるポンピング現象も回避する。
【0033】
図3に示すように、ターボジェットエンジン1は、その上流側端部に空気取入口2を備えるナセルを備え、該空気取入口2は、軸線X周りに周方向に延在し、そして、軸線Xに面して内側気流F-INT及び逆気流F-INVを誘導するように構成された内壁21と、内壁21の反対側にあって外側気流F-EXTを誘導するように構成された外壁22と、を備えている。壁21、22は、前縁部を備える空気取入口リップ23によって接続されて、環状空洞20を形成する。
【0034】
この例では、ターボジェットエンジン1は、推力逆転手段、特に可変ピッチファン11又はVPFを備え、それにより、ターボジェットエンジン1内で循環する気流を逆転させ、それで、着陸中の航空機の減速を可能にする逆推力を生成する。
【0035】
本発明に従って、
図3及び4を参照すると、空気取入口2は、複数のガイドベーン3を備え、それぞれのガイドベーン3は、
-推力段階を促進するための後退位置Aと、
-ガイドベーン3が半径方向内側方向沿いに内壁21から突出して拡張することにより、内壁21から逆気流F-INVを誘導して逆推力段階を促進する拡張位置Bと、の間で可動に装着されている。
【0036】
それ故、空気取入口2は、推力中及び逆推力中の2つの異なる役割を可能にする。後退位置Aでは、ガイドベーン3は、空気力学プロファイルを有する前縁部23の空気力学性能に影響を及ぼさない。推力は、したがって最適である。
【0037】
拡張位置Bにおけるその動作に続いて、それぞれのガイドベーン3は、推力逆転段階中にファン11によって前もってねじられたF-INV気流を誘導することを可能にする。誘導された逆気流F-INVRは、それで、空気取入口21の内壁21上を循環し、これが、上流側気流Fに最適に対抗する。逆推力段階の性能は、最適である。
【0038】
本発明に従うと、推力逆転段階に対して、ガイドベーン3は、2次流れ内に位置するベーンに相似した機能を実行し、略語「出口ガイドベーン」によって当業者に知られている。
【0039】
図5を参照すると、いくつかのガイドベーン3を備える空気取入口2が表されており、該ガイドベーンは、推力逆転段階を改善することを可能にするように、軸線X周りに空気取入口2の周囲に分布している。好ましくは、ガイドベーン3の数は、空気取入口2の周囲全体にわたって誘導することを可能にするように十分大きく、重量及び抗力を低減するように十分小さい。好ましくは、ターボジェットエンジン1がOGV型ベーンを備えているとき、推力逆転段階についてのガイドベーン3の数は、OGV型ベーンの数に実質的に等しい。
【0040】
好ましくは、空気取入口の周囲において逆気流の誘導を異なるように修正するために、ガイドベーン3は、同一でなくてもよいか、又は異なる拡張程度まで動かされてもよい。これは、有利なことに、空気取入口の周囲環境を考慮に入れること、特に、逆気流を方向付けることによって音響公害を制限することを可能にする。
【0041】
好ましくは、ガイドベーン3は、列状に構成され、それぞれの列は、軸線Xから同じ半径方向距離のところに設置された複数のガイドベーン3を備えている。その代替として、ガイドベーン3が、異なる半径方向距離のところに設置されることにより、逆気流の誘導を空気取入口の周囲において異なるように変化させてもよい。例えば、単一の列が
図5に示されているけれども、明らかに列の数がより多くてもよい。
【0042】
ファン11からの距離である、ガイドベーン3の軸線方向位置は、適用に応じて変化してもよい。実際に、ガイドベーン3がファン11により近い程、誘導がより効果的である。逆に、ガイドベーン3がファン11からより遠い程、発生される雑音がより小さくなる。
【0043】
図7A及び7Bを参照すると、空気取入口2が表されており、該空気取入口は、半径方向の拡張方向沿いに可動に装着されたガイドベーン3を備えている。しかし、言うまでもなく、拡張方向は、長手方向又は方位成分を含んでもよく、重要なことは、拡張方向が少なくとも半径方向成分を含むことである。それにもかかわらず、圧倒的に半径方向の拡張方向が好ましく、その理由は、半径方向に拡張するOGVベーンに類似した機能をガイドベーン3が実行することを可能にするからである。内壁21は、拡張位置Bにおいて、ガイドベーン3が中で動く環状空洞20内に通じる通路開口210を備えている。通路開口210の寸法は、拡張位置Bにおいて、ガイドベーン3との隙間を最小にするように決定される。これは、拡張位置Bにおいて、環状空洞20内での逆気流F-INVの循環を制限する。
【0044】
この例では、空気取入口2は、ガイドベーン3を後退位置Aから拡張位置Bまで並進的に動かすための移動式部材9を備えている。例として、この移動式部材9は、能動型である移動式部材9の形式であり、例えば、計算機からの制御コマンドを受け取ることの結果として動作を可能にするための、空気圧、油圧、電気、又は別のアクチュエータの形式である。好ましくは、移動式部材9は、また、ガイドベーン3が拡張位置Bから後退位置Aまで並進的に動かされることを可能にする。空気取入口2は、1つ又は複数の制御可能な移動式部材9を備えてもよい。
【0045】
図8に示すように、ガイドベーン3は、半径方向断面内に、下流側に設置された前縁部BAと、上流側に設置された後縁部BFと、を備えている。好ましくは、ガイドベーンは、ガイドベーン3の前側及び後側にある逆気流F-INVを誘導して、軸方向に循環する誘導された逆気流F-INVRを得るような空気力学プロファイルを有する。
【0046】
依然として
図7A及び7Bを参照すると、制御可能な移動式部材9は、ファン11によってねじられた逆気流F-INVの循環内にガイドベーン3が突出して拡張するように、可動接続部材3が半径方向内向きに動かされることを可能にする。
【0047】
本発明の随意の一態様によって、
図7A及び7Bを参照すると、空気取入口2は、カバー部材4を備え、該カバー部材は、推力中の空気力学プロファイルを確実にするようにカバー部材4が後退位置Aにおいてガイドベーン3をカバーする作動位置C1(
図7A)と、カバー部材4が、ガイドベーン3が拡張位置Bにあるようにその作動位置C1からオフセットされている保管位置C2(
図7B)と、の間で可動に装着されている。後退位置Aにおいて、カバー部材4は、ガイド開口210をカバーし、拡張位置Bにおいてはそれをカバーしない。
【0048】
好ましくは、カバー部材4は、内壁21と同一の材料でできており、そして、その形状が、内壁21の拡張部であるように選ばれることにより、空気取入口リップ2の空気力学プロファイルは、推力中、不変のままである。
【0049】
図7A~7Bの例では、カバー部材4は、作動位置C1から保管位置C2まで、上流に内壁21沿いに並進して動かされる。しかし、言うまでもなく、カバー部材4は、別の形状を有してもよく、異なる態様で、特に周囲方向沿いに動かされてもよい。更に、カバー部材4は、1つ又は複数の部品を備えてもよい。更に、カバー部材4の動作は、ガイドベーン3の移動式部材9によって、又はいずれか別の移動式部材によって実行されてもよい。
【0050】
拡張位置Bにおいて、
図7B及び
図8に示すように、ガイドベーン3は、逆気流F-INVに作用して、それを上流側気流Fと軸線方向に整列させて、最適な推力逆転段階を可能にする。ファン11の作用は、それ故、効果的に推力逆転段階に関与してもよい。
【0051】
その代替として、
図7Cを参照すると、カバー部材4は、ガイドベーン3の内側端部と一体的に装着されて、逆気流F-INV内で後者と共に動かされる。かかる実施形態は、動かされるべきガイドベーン3だけを必要とし、これは有利なことである。
【0052】
依然として
図7Cを参照すると、拡張位置Bにおいて、ガイドベーン3は、その外側端部に閉鎖部材6を備え、該閉鎖部材は、ガイドベーン3が中を動く内壁21の通路開口210を少なくとも部分的に塞ぐように構成されている。かかる閉鎖部材6は、有利なことに、特にガイドベーン3とガイド開口210との間に形成された隙間を経由する、空気取入口2の環状空洞20内での逆気流F-INVの循環を制限することを可能にする。もちろん、かかる閉鎖部材6は、また、別の実施形態にも適応可能である。閉鎖部材6は、好ましくはガイドベーン3と一体的である。
【0053】
図7A~7Cにおいて、実質的に半径方向に拡張されたガイドベーン3が表されてきた。それでもやはり、ガイドベーン3の拡張は、異なる運動に従って実行されてもよい。
【0054】
図9A~9Bを参照すると、ガイドベーン3が上流側に方位ヒンジ軸線30周りに旋回する第1回転運動が表されている。後退位置A(
図9A)において、ガイドベーン3は、下流側に長手方向に整列させられており、次いで、拡張位置B(
図9B)において、上流側にスイングさせられて実質的に半径方向に拡張する。拡張位置Bにおいて、ガイドベーン3は、必ずしも半径方向に拡張するわけではなく、下流側又は上流側に傾斜していてもよい。
【0055】
同様に、
図9C~9Dを参照すると、ガイドベーン3が下流側に方位ヒンジ軸線30周りに旋回させられる第2回転運動が表されている。後退位置A(
図9C)において、ガイドベーン3は、上流側に長手方向に整列させられており、次いで、拡張位置B(
図9D)において、下流側にスイングさせられて実質的に半径方向に拡張する。拡張位置Bにおいて、ガイドベーン3は、必ずしも半径方向に拡張するわけではなく、下流側又は上流側に傾斜していてもよい。
【0056】
軸線Xに実質的に垂直な回転軸線周りに回転方向に(長手方向回転)駆動されるガイドベーンが述べられてきたけれども、言うまでもなく、回転軸線は、軸線X(横方向回転)に実質的に平行であってもよい。この代替案に従うと、ガイドベーン3は、好ましくは、後退位置Aにおいて、特に内壁21に当接して押圧された状態で、方位空洞内に置かれる。
【0057】
回転運動は、後退位置Aにおいて、それが半径方向全体寸法を制限するので有利である。言うまでもなく、ガイドベーン3は、また、回転と並進とを組み合わせる運動に従って動かされてもよい。
【0058】
本発明の好ましい一態様によると、ガイドベーン3は、拡張位置において、旋回させられた内壁21の一部分を形成する。言い換えると、ガイドベーン3は、内壁21と外壁22との間に形成された環状空洞20内部に位置していない。
【0059】
実質的に半径方向沿いに並進的に拡張されるガイドベーン3が、
図7A~7Cに表されてきた。もちろん、下流側に(
図10A~10B)又は上流側に(
図10A~10B)傾いた並進軸線沿いの拡張が、また、考えられてもよい。
【0060】
本発明の一態様によると、ガイドベーン3の拡張が、受動的である移動式部材によって達成されてもよい。
【0061】
図11A~11Bを参照すると、受動型移動式部材が、空気圧導管9’の形式で表されており、該空気圧導管は、環状空洞20内に形成されて、ガイドベーン3上に開いていることにより、吸引又は噴出によって後退位置と拡張位置との間でそれを動かす。
【0062】
好ましくは、空気圧導管9’が、過圧源90’に接続されており、該過圧源は、空気流れと空気圧導管9’との間の圧力差によって、ガイドベーン3が吸引によって動かされることを可能にする。空気流れの圧力は、ファン11による逆気流F-INVの加速に起因してより低い。この例では、空気流れの空気力学の力が完全な拡張を可能にするので、吸引拡張は部分的であってもよい。受動型移動式部材は、並進及び回転運動の両方に適している。
【0063】
本発明の一態様によると、空気圧導管9’は、逆気流によって供給される。好ましくは、推力段階中には、逆気流がもはや存在せず、これがガイドベーン3を後退位置Aまで自動的に動かす。
【0064】
上記の本発明に従って空気取入口2を作動させる方法が、以下で説明される。明瞭のために、単一のガイドベーン3の動作が述べられるけれども、言うまでもなく、いくつかのガイドベーン3が、付随して又は連続して動かされてもよい。
【0065】
推力中、ファン11は、内側気流F-INTを上流から下流まで加速し、該内側気流は、推力を促進する空気力学プロファイルを有する空気取入口2によって誘導されている。ガイドベーン3は、ターボジェットエンジン1の推力中、後退位置Aにあり、それにより、空気取入口2は、気流を誘導するための空気力学プロファイルを有する。カバー部材4の使用は、推力中の最適空気力学プロファイルを確実にする。
【0066】
上記ターボジェットエンジン1の推力逆転段階中、特に、ファンベーン11のピッチの変更に続いて、移動式部材9は、ガイドベーン3を拡張位置Bまで動かし、そこにおいてガイドベーン3が半径方向内向き方向に内壁21から突出して拡張しており、それにより、内壁21から逆気流F-INVを誘導して推力逆転段階を促進する。
【0067】
有利なことに、かかる作動方法は、内側気流F-INTが不変状態に維持される場合の推力、及びガイドベーン230が逆気流F-INVのねじれ解除を可能にする場合の逆推力の両方において、航空機に良好な性能を提供する。
図8を参照すると、誘導された逆気流F-INVRは、上流側気流Fと同じだが反対向きの方向沿いに循環し、それによって、効果的な逆推力段階を提供する。
【0068】
本発明の一態様によると、ガイドベーン3の一部分だけが動作ステップ中に動かされて、異なる作動状態、例えば、制動中の作動状態に適合する。
【0069】
本発明によって、ターボジェットエンジン1の性能は、推力段階中に既存の性能を維持しながら、推力逆転段階中に有意に改善される。
【国際調査報告】