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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-17
(54)【発明の名称】溶液安定性の酵素組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/18 20060101AFI20220610BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20220610BHJP
   D21C 3/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C12N9/18 ZNA
C12P1/00 A
D21C3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560561
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 FI2020050215
(87)【国際公開番号】W WO2020208296
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】19167787.1
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521443106
【氏名又は名称】アーベー エンジュメス オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベーゼンマッター、ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】パルムネン、カティヤ
(72)【発明者】
【氏名】ペルッカライネン、ミルッカ
(72)【発明者】
【氏名】レフティカリ、レーナ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
4L055
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050DD03
4B050KK04
4B050LL05
4B064AH19
4B064CA21
4B064DA16
4L055BA31
4L055FA30
(57)【要約】
酵素成分、安定化剤成分、任意的な抗菌性の防腐剤成分および水を含む溶液安定性の酵素組成物、ならびに、パルプおよび紙の製造におけるその使用が開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アミノ酸配列WGESAGおよびS、HおよびE/Dから構成される触媒三残基を有することによって特徴付けられる酵素を含む酵素成分、
(b)1分子当たり3またはそれ以上の水酸基を有する有機糖アルコールを含む安定化剤成分であって、前記安定化剤成分が少なくとも前記酵素成分の総計の重量の少なくとも5分の1である安定化剤成分、
(c)任意的な、微生物の成長を防止する抗菌性の防腐剤成分、ならびに
(d)前記成分(a)、(b)および(c)の中に溶解されている水
を含む溶液安定性の酵素組成物であって、
前記溶液安定性の酵素組成物の前記酵素成分が、37℃での保管のもと、少なくとも4週間のあいだ溶液中で残存している溶液安定性の酵素組成物。
【請求項2】
前記酵素が、ステロールエステル、好ましくはステロールの脂肪酸とのエステル、より好ましくはコレステロールのリノール酸とのエステルに対する酵素活性を有することによって特徴付けられる加水分解酵素である請求項1記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項3】
前記酵素が、50℃で、好ましくは60℃で、より好ましくは70℃で、最も好ましくは75℃で、少なくとも5分間、水性組成物中または水性環境中または水性溶液中でインキュベーションした後に、少なくとも50%の酵素活性を保持している熱安定性酵素である請求項1または2記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項4】
前記酵素が、真菌のステロールエステラーゼ、好ましくは好熱性の真菌のステロールエステラーゼである請求項1~3のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項5】
前記酵素が、ステロールエステラーゼであり、および、前記触媒三残基が、S、HおよびEから構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項6】
前記酵素が、シタリジウム・サーモフィラム(Scytalidium thermophilum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terestri)、コリナスクス・サーモフィラス(Corynascus thermophilus)、マイリオコッカム・サーモフィラム(Myriococcum thermophilum)、サーモマイセス・ステラタス(Thermomyces stellatus)、チエラビア・オーストラリエンシス(Thielavia australiensis)、マルブランキア・シンナモメア(Malbranchea cinnamomea)、メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)およびケトミウム・サーモフィラム(Chaetomium thermophilum)からなる群より選択される好熱性真菌のゲノムからの遺伝子およびそれらのフラグメントおよびそれらの保存的変更によってエンコードされているステロールエステラーゼである請求項1~5のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項7】
前記酵素が、配列番号1または配列番号2であるステロールエステラーゼと、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%の配列相同性を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項8】
前記糖アルコールが、一分子当たり、4つ以上、好ましくは5つ以上、より好ましくは6以上の水酸基を有する請求項1~7のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項9】
前記糖アルコールが、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、およびグリセロールからなる群より選択される請求項1~8のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項10】
前記抗菌性の防腐剤が、イソチアゾリノンから選択される、好ましくは、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-オクチルイソチアゾリン-3-オンおよび4,5-ジクロロ-2-オクチルイソチアゾリン-3-オンからなる群より選択される請求項1~9のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項11】
前記安定化剤成分が、前記酵素成分の総計の重量の少なくとも4分の1、より好ましくは少なくとも3分の1含まれる請求項1~10のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項12】
安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、およびそれらの塩およびそれらのエステルからなる群より選択される抗菌性の防腐剤を含む請求項1~11のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項13】
前記防腐剤が、耐酸性バクテリア、カビおよび酵母からなる群より選択される少なくとも一つの微生物に対して活性である請求項1~12のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項14】
前記組成物が、ポリエチレングリコールp-アルキルフェニルエーテルを本質的に含まず、好ましくは全ての非イオン性界面活性剤を含まず、より好ましくは全ての界面活性剤を含まない請求項1~13のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項15】
前記組成物が、セリンプロテアーゼ阻害剤を本質的に含まず、好ましくは全てのプロテアーゼ阻害剤を含まない請求項1~14のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物のパルプの製造における使用。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の溶液安定性の酵素組成物の紙の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパルプおよび製紙製造などにおける産業用途での使用に適切である溶液安定性の酵素組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
商業用途が意図される溶液安定性の酵素組成物は、優位には、保管のあいだの十分な安定性および良好な寿命を有する。ステロールエステラーゼを含む組成物は、エステル、例えばフィトステロール、コレステロールおよびグリセロールのカルボン酸、特には脂肪酸とのエステルなどの加水分解および合成に有用である。このような組成物は、例えばパルプおよび紙の製造およびリサイクルにおいて、酵素がこれらのプロセス中で典型的に遭遇する条件下で活性である限り、加工助剤として産業的に適用され得る。
【0003】
酵素および一般的にはタンパク質の水溶液の安定性を高めるために、多くの方法が追及されてきており、これは、Gianfredaら、Molecular and Cellular Biochemistry 1991年、97-128頁でレビューされている。これらの方法には、グリコシル化、PEG化、架橋、部位特異的変異導入によるタンパク質修飾、およびアミノ酸の化学的修飾が含まれる。別の方法は、例えばpH緩衝液、塩、界面活性剤、アミノ酸、糖、有機溶媒、ポリマーおよびシクロデキストリンなどの添加剤の添加である。
【0004】
例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ソルビトール、および、Tween 20の商品名で知られている界面活性剤ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレートが、Charmanら、Pharmaceutical Research 1993年、954-962頁によって、ブタ生長ホルモンタンパク質に対してそれらの安定化応力について評価されており、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンおよびTween 20とは対照的に、ソルビトールは、ごくわずかな効果しか示さず、沈殿に対してなんらの優位性も導かなかったと結論づけられている。
【0005】
全てのタンパク質および酵素溶液を安定化する効果のある添加剤は知られていない。それでもなお、特異的な酵素を安定化する特定の添加剤は発見されている。例えば、セリンプロテアーゼ阻害剤はリパーゼを安定化することが発見されている(欧州特許第2521732号明細書)。パルプおよび紙への応用のための脂質生成物中の脂肪分解酵素、例えば、関連するデータシートに開示されているNovozymes社からのResinaseHTおよびStickawayはプロピレングリコールで安定化される。StickawayのpHは、6.5~9.5のあいだである。8より大きなpH値では、メラノカルパス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)由来のステロールエステラーゼは明らかに不安定であり、Kontkanenら、Applied Microbiology and Biotechnology 2006年、696-704頁による設定であるpH3~7のあいだのpH範囲内ではより安定である。
【0006】
Pleissら、Journal of Molecular Catalysis B 2000年、491-508頁は、ほぼ全てのリパーゼ、多くのエステラーゼ、および全ての公知のクチナーゼ、ならびにセリンプロテアーゼが、セリン、ヒスチジンおよびアスパラギン酸塩から構成される触媒三残基を有していることを確証した。
【0007】
アスパラギン酸塩の代わりに、グルタミンがステロールエステラーゼの触媒三残基に存在しており、ここで、触媒三残基はセリン、ヒスチジンおよびグルタミンから構成される。
【0008】
一般的なリパーゼ、トリアシルグリセロールリパーゼとも称され、そしてIUBMBの酵素命名法によってEC 3.1.1.3に分類される、例えば、Kontkanen ら、Journal of Biochemistry 2004年、51-59頁によって研究された、カンジダ・アンタルクチカ(Candida antarctica)、サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)およびリゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)などは、グリセロールエステルに対し非常に活性であるが、ステロールエステルに対しては測定可能な活性は示さない。
【0009】
EC 3.1.1.13に分類されるステロールエステラーゼは、短鎖および長鎖のカルボン酸とのステロールおよびグリセロールのエステルを含む、種々の多くのエステルを加水分解する。
【0010】
EC 3.1.1.7に分類されるアセチルコリンエステラーゼは、アセチルコリンおよび他のコリンエステルを加水分解する。それらの配列および三次元構造の起因したエステラーゼとリパーゼとの区分けは、Fojanら、Biochimie 2000年、1033-1041頁にレビューされている。
【0011】
植物および木材のステロールエステル混合物に対する酵素活性が、Kontkanenら、Journal of Biochemistry 2004年、51-59頁によってコレステロールエステルに対する活性と比較され、純粋なコレステロールエステルがステルールエステラーゼのモデル基質として使用できると結論付けられた。ステロールの例としては、コレステロール、フィトステロール、およびエルゴステロールなどがあげられ、これらはそれぞれ、動物、植物、および真菌中の天然の化合物である。動物由来のコレステロールエステラーゼが、一般的には本物のコレステロールエステラーゼである。微生物由来のコレステロールエステラーゼは、一般的な用語においては、ステロールエステラーゼである。
【0012】
いずれにしても、ステロールエステラーゼおよびコレステロールエステラーゼは、EC 3.1.1.13の一つの酵素クラスにある。
【0013】
メラノカルパス・アルボミセス由来のステロールエステラーゼの水溶液の安定性を維持するために、Kontkanenら、Enzyme and Microbial Technology 2006年、265-273頁は、1%の、非イオン性界面活性剤であり、商品名Trion X-100の名前でも知られているポリエチレングリコールp-イソオクチルフェニルエーテルを使用した。
【0014】
したがって、全ての酵素に効果のある安定化化合物はまだ報告されておらず、酵素が安定に存在している液性組成物を提供する必要性がある。
【発明の概要】
【0015】
それまで予想されていなかったにも関わらず、発明者らは、ある種の有機ポリヒドロキシ化合物が、WGESAG配列モチーフおよびS、HおよびE/Dから構成される触媒三残基を有する酵素を含む水性組成物を安定化させることを発見した。有機ポリヒドロキシ化合物が適切な濃度で存在し、および、分子あたり十分な数の水酸基を有していれば、安定化効果は、界面活性剤の添加なしでさえ達成され得る。
【0016】
本発明の第1の様態によれば、
(a)アミノ酸配列WGESAGおよびS、HおよびE/Dから構成される触媒三残基を有することによって特徴付けられる酵素を含む酵素成分、
(b)1分子当たり3またはそれ以上の水酸基を有する有機糖アルコールを含む安定化剤成分であって、該安定化剤成分が少なくとも酵素成分の総計の重量の少なくとも5分の1である安定化剤成分、
(c)任意的な、微生物の成長を防止する抗菌性の防腐剤成分、ならびに
(d)該成分(a)、(b)および(c)の中に溶解されている水
を含む溶液安定性の酵素組成物であって、
溶液安定性の酵素組成物の酵素成分が、37℃での保管のもと、少なくとも4週間のあいだ溶液中で残存している溶液安定性の酵素組成物が提供される。
【0017】
本発明の別の態様によれば、(a)アミノ酸配列WGESAGおよびS、HおよびE/Dから構成される触媒三残基を有することによって特徴付けられる酵素を含む酵素成分、(b)1分子当たり3もしくはそれ以上、4もしくはそれ以上の水酸基を有する有機ポリヒドロキシ化合物を含む安定化剤成分、(c)任意的な、微生物の成長を防止する抗菌性の防腐剤成分、ならびに(d)該成分(a)、(b)および(c)の中に溶解されている水を含む溶液安定性の酵素組成物が提供される。
【0018】
ある実施形態において、組成物中の安定化剤成分の濃度は、20~75重量%、好ましくは25~70重量%、より好ましくは30~65重量%、および、最も好ましくは33~60重量%である。ある実施形態において、安定化剤成分の濃度の下限は、20重量%、好ましくは22重量%、24重量%、25重量%、より好ましくは、26重量%、28重量%、30重量%、最も好ましくは33重量%である。ある実施形態において、安定化剤成分の濃度の上限は、75重量%、好ましくは74重量%、72重量%、70重量%、より好ましくは、68重量%、66重量%、65重量%、および最も好ましくは60重量%である。
【0019】
ある実施形態において、組成物中の水の量は、少なくとも10重量%、好ましくは、少なくとも12重量%、14重量%、15重量%、より好ましくは、少なくとも16重量%、18重量%、20重量%、および最も好ましくは、少なくとも25重量%である。
【0020】
ある実施形態において、組成物のpHは、2~10のあいだ、好ましくは2.5~9のあいだ、より好ましくは3~8のあいだ、および、最も好ましくは3.5~7.5のあいだである。
【0021】
本発明の第2の態様において、上記の態様による溶液安定性の酵素組成物の、パルプの製造における使用、および使用の方法が提供される。ある実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、酵素処理が必要であるパルプの製造において使用される材料と接触させられるような方法でそれが添加されることによって使用される。
【0022】
本発明の第3の態様において、上記の態様による溶液安定性の酵素組成物の、紙の製造における使用、および使用の方法が提供される。ある実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、酵素処理が必要である紙の製造において使用される材料と接触させられるような方法でそれが添加されることによって使用される。
【0023】
配列表
以下の配列は、シグナルペプチドを除いた成熟タンパク質である。
【0024】
配列は、アミノ末端からカルボキシル末端へと記載されている。水溶液中に存在する実際の酵素分子は、酵素機能を損失することなしに、配列の両末端(アミノおよび/またはカルボキシル末端)から短縮され得る。例えば、配列番号1の配列と比較して、Kontkanenら、Enzyme and Microbial Technology 2006年、265-273頁は、それらの配列がAAPXVEISTGから始まっていることから、配列番号1の配列のアミノ末端の最初の13アミノ酸が、メラノカルパス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)由来のステロールエステラーゼの調製において欠失していることを発見した。したがって、ある実施形態において、酵素活性を有する、N末端がトランケートされた酵素が開示される。
【0025】
配列番号1は、メラノカルパス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0026】
配列番号2は、ケトミウム・サーモフィラム(Chaetomium thermophilum)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0027】
配列番号3は、シタリジウム・サーモフィラム(Scytalidium thermophilum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terestri)、コリナスクス・サーモフィラス(Corynascus thermophilus)、マイリオコッカム・サーモフィラム(Myriococcum thermophilum)、メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)およびケトミウム・サーモフィラム(Chaetomium thermophilum)由来のステロールエステラーゼの配列のアライメントから得られた合成の酵素の配列である。
【0028】
配列番号4は、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0029】
配列番号5は、コリナスクス・サーモフィラス(Corynascus thermophilus)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0030】
配列番号6は、マイリオコッカム・サーモフィラム(Myriococcum thermophilum)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0031】
配列番号7は、チエラビア・オーストラリエンシス(Thielavia australiensis)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0032】
配列番号8は、チエラビア・テレストリス(Thielavia terestri)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0033】
配列番号9は、シタリジウム・サーモフィラム(Scytalidium thermophilum)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0034】
配列番号10は、マルブランキア・シンナモメア(Malbranchea cinnamomea)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0035】
配列番号11は、サーモマイセス・ステラタス(Thermomyces stellatus)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0036】
配列番号12は、ケトミウム・グロボサム(Chaetomium globosum)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0037】
配列番号13は、マズレラ・マイセトマチス(Madurella mycetomatis)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0038】
配列番号14は、ソルダリア・マクロスポラ(Sordaria macrospora)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0039】
配列番号15は、ポドスポラ・アンセリナ(Podospora anserina)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0040】
配列番号16は、ニューロスポラ・テトラスペルマ(Neurospora tetrasperma)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0041】
配列番号17は、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0042】
配列番号18は、コニオチャエタ・リグニアリア(Coniochaeta ligniaria)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0043】
配列番号19は、クタネオトリコスポロン・オレアギノサム(Cutaneotrichosporon oleaginosum)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0044】
配列番号20は、スポロトリックス・シェンキイ(Sporothrix schenckii)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0045】
配列番号21は、スタキボトリス・クロロハロナタ(Stachybotrys chlorohalonata)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0046】
配列番号22は、コレトトリクム・オルチドフィラム(Colletotrichum orchidophilum)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0047】
配列番号23は、コレトトリクム・インカナム(Colletotrichum incanum)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0048】
配列番号24は、コレトトリクム・トフィエルジアエ(Colletotrichum tofieldiae)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0049】
配列番号25は、ハイドロキシロンsp.EC38(Hypoxylon sp. EC38)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0050】
配列番号26は、アスペルギラス・グラウカス(Aspergillus glaucus)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0051】
配列番号27は、エウティパ・ラタ(Eutypa lata)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0052】
配列番号28は、フサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0053】
配列番号29は、フサリウム・アベナセアム(Fusarium avenaceum)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0054】
配列番号30は、ジアポルテ・アンペリナ(Diaporthe ampelina)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0055】
配列番号31は、オフィオストマ・ピセアエ(Ophiostoma piceae)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【0056】
配列番号32は、プレウロタス・サピダス(Pleurotus sapidus)由来のステロールエステラーゼの配列である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
ステロールエステラーゼは、ステロールエステル結合に作用する酵素であり、特には、ステロールエステラーゼは、ステロールエステルの加水分解、アルコール分解、酸分解、アシル基転移、エステル交換反応および/または合成を触媒する。ある実施形態において、本発明のステロールエステラーゼは、EC 3.1.1.13のクラスに属している。
【0058】
酵素は、触媒タンパク質である。
【0059】
タンパク質は、ポリペプチドである。
【0060】
ポリペプチドは、アミノ結合で結合されたアミノ酸の長鎖である。ある実施形態において、ペプチドは、20個までのアミノ酸で構成されている分子であり、ポリペプチドは、20個より多くのアミノ酸で構成されている分子である。
【0061】
一般的に受け入れられているIUPACのアミノ酸およびポリペプチドの側鎖の一文字の略号が使用され、具体的には、Sはセリンであり、Hはヒスチジンであり、Aはアラニンであり、Gはグリシンであり、Eはグルタミン酸およびグルタミン酸塩であり、Dはアスパラギン酸およびアスパラギン酸塩であり、Wはトリプトファンである。
【0062】
特異的なアミノ酸配列によって特徴付けられる酵素のフラグメントは、例えば代替のスプライシングなどによって、該配列のアミノ酸末端および/またはカルボキシル末端から一またはそれ以上のアミノ酸が欠損している、および/または、一またはそれ以上の欠失および/または一またはそれ以上のアミノ酸の挿入を該配列中にもつ、ポリペプチドであって、酵素活性をもつフラグメントである。ある実施形態において、酵素のフラグメントは、フラグメント化されていない酵素と同一または類似の酵素活性、および任意には安定性を有する。
【0063】
プロピレングリコールは、1,2-プロパンジオールであり、1分子当たり2つの水酸基をもつ有機ポリヒドロキシ化合物である。1,2-プロパンジオールは、2つの光学異性体およびラセミ混合物を含むそれらの混合物として存在ており、これらは本発明のプロピレングリコールの定義に包含される。
【0064】
糖アルコールは、炭水化物、特には一糖、二糖、三糖、オリゴ糖および多糖の水素添加によって製造され得る有機化合物である。水素添加は、アルデヒド基またはケトン基の水酸基への還元を引き起こす。一糖は、1分子当たり2つまたはそれ以上の水酸基を有するアルデヒドまたはケトンである。したがって、糖アルコールは、1分子当たり3つまたはそれ以上、または、4つまたはそれ以上の水酸基を有する。
【0065】
シクリトールは、3つまたはそれ以上、または、4つまたはそれ以上の環原子に水酸基を有するシクロアルカンである。シクリトールは、1分子当たり3つまたはそれ以上、または、4つまたはそれ以上の水酸基を有する。
【0066】
パルプは、元は植物から得られる材料の湿塊である。このようなパルプは、例えば、木材、綿、パピルス、麦、フルーツ、紙およびラグなどから製造される。
【0067】
コレステロールのリノール酸とのエステルは、リノール酸コレステロールである。
【0068】
好熱性真菌は、45℃で、好ましくは50℃で、またはそれより高い温度で成長する真菌である。
【0069】
熱安定性酵素は、50℃で、好ましくは60℃で、より好ましくは70℃で、最も好ましくは75℃で、少なくとも5分間、好ましくは少なくとも10分間、より好ましくは少なくとも30分間、および最も好ましくは少なくとも1時間、水性組成物中または水性環境中または水性溶液中でインキュベーションした後に、少なくとも50%の酵素活性を保持している酵素である。好ましくは、熱安定性酵素は、50℃で少なくとも5分間の水溶液中でのインキュベーションの後で少なくとも50%の酵素活性を保持している。酵素活性は、以下の実施例1にしたがって測定され得る。
【0070】
用語「一つの(a)」、および「一つの(an)」、および「もう一つの(another)」は、1つ、または、1より多いこと、すなわち、文法上の対象である「一つの(a)」、「一つの(an)」または「もう一つの(another)」のうちの、1つ、または、いくつか(several)を含む少なくとも一つ、を意味している。
【0071】
用語「含む(comprise)」およびその変形、例えば「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、包括的を意味し、可能な追加の成分を含む。これらの用語はまた、ある実施形態においては、それらの狭い意味である「からなる(consisting of)」を含み得る。
【0072】
本圧名の酵素の一実施形態において、触媒三残基は、セリン、ヒスチジンおよびグルタミン酸塩/アスパラギン酸塩から構成され、および、触媒三残基の該セリンは、配列WGESAGに組み込まれている。
【0073】
触媒三残基は、触媒反応に関連する3つのアミノ酸残基の複合体である。触媒三残基のこのような残基は、触媒反応のあいだ、求核剤、塩基および酸として機能する。触媒三残基以外に、オキソアニオンホールおよび疎水性基質結合部位がまた、酵素の活性部位残基によって形成される。触媒三残基の残基は、突然変異実験によって、構造決定によって、または周知の触媒残基を有する相同体との配列アライメントによって同定され得る。配列アライメントのツールの例としては、例えば、Clustal Omega、PfamScan、Needleman-Wunschアルゴリズムを用いるMuscle and Emboss Needleなどが挙げられる。これらのツールは、オンラインで入手可能であり、例えば、https://www.ebi.ac.uk/services/all and at https://www.ebi.ac.uk/Tools/pfa/で入手可能である。
【0074】
触媒三残基は、加水分解酵素および転移酵素中に見出され得る。配列番号1~9中の触媒三残基の位置は、S221、H466およびE353である。本発明の酵素の例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、配列番号1~32に開示されるアミノ酸配列またはそれらのフラグメントを含む酵素が挙げられる。本発明の酵素のさらなる例としては、これらに限定される訳ではないが、メラノカルパス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terestri)、チエラビア・オーストラリエンシス(Thielavia australiensis)、コリナスクス・サーモフィラス(Corynascus thermophilus)、マイリオコッカム・サーモフィラム(Myriococcum thermophilum)、マルブランキア・シンナモメア(Malbranchea cinnamomea)、サーモマイセス・ステラタス(Thermomyces stellatus)および他の好熱性真菌由来のステロールエステラーゼが挙げられる。このような好熱性真菌としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、好熱性子嚢菌綱(thermophilic ascomycetes)(例えば、カナリオミセス・サーモフィラ(Canariomyces thermophila)、ケトミウム・ピングタンギウム(Chaetomidium pingtungium)、ケトミウム・ブリタニカム(Chaetomium britannicum)、ケトミウム・メソポタミカム(Chaetomium mesopotamicum)、ケトミウム・セネガレンシス(Chaetomium senegalensis)、ケトミウム・サーモファイル(Chaetomium thermophile)、ケトミウム・バージニカム(Chaetomium virginicum)、コリナスカス・セペドニウム(Corynascus sepedonium)、コリナスカス・サーモフィラス(Corynascus thermophilus)、クラシカルポン・サーモフィラム(Crassicarpon thermophilum)、コネメリア・アエギプティアカ(Coonemeria aegyptiaca)、コネメリア・クルスタシア(Coonemeria crustacea)、ダクチロミセス・サーモフィラス(Dactylomyces thermophilus)、メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)、メラノカルプス・サーモフィラス(Melanocarpus thermophilus)、ミリオコッカム・サーモフィラム(Myriococcum thermophilum)クラシカルポン・ホットソニイ(Crassicarpon hotsonii)、タラロマイセス・ビッソクラミジオイデス(Talaromyces byssochlamydioides)、タラロマイセス・デュポンティ(Talaromyces duponti)、タラロマイセス・エメルソニイ(Talaromyces emersonii)、タラロマイセス・サーモフィラス(Talaromyces thermophilus)、サーモアスカス・アウランチアカス(Thermoascus aurantiacus)、サーモマイセス・ステラタス(Thermomyces stellatus)、チエラビア・オーストラリエンシス(Thielavia australiensis)、チエラビア・マイナー(Thielavia minor)、チエラビア・テリコラ(Thielavia terricola)など)、好熱性接合菌類(thermophilic zygomycetes)(例えば、リゾムコル・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)、リゾムコル・ナイニタレンシス(Rhizomucor nainitalensis)、リゾムコル・プシラス(Rhizomucor pusillus)、リゾパス・ミクロスポアス(Rhizopus microspores)、リゾパス・リゾポジフォルミス(Rhizopus rhizopodiformis)など)、および、好熱性不完全菌類(thermophilic deuteromycetes)(例えば、アクレモニウム・アラバメンゼ(Acremonium alabamense)、アクレモニウム・サーモフィラム(Acremonium thermophilum)、アースリニウム・プテロスペルマム(Arthrinium pterospermum)、クリソスポリウム・トロピカム(Chrysosporium tropicum)、マルブランキア・シンナモメア(Malbranchea cinnamomea)、ミセリオフトラ・フェルグシ(Myceliophthora fergusi)、ミセリオフトラ・ヒンヌレア(Myceliophthora hinnulea)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、シタリジウム・インドネシカム(Scytalidium indonesicum)、シタリジウム・サーモフィラム(Scytalidium thermophilum)、レメルソニア・サーモフィラ(Remersonia thermophila)、サーモマイセス・イバダネンシス(Thermomyces ibadanensis)、サーモマイセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)など)などが挙げられる。
【0075】
熱安定性酵素を発現している好熱性微生物由来の遺伝子およびポリペプチドは、保管および応用のあいだに安定な酵素組成物として興味深いものである。特に、真菌の発現宿主中で高い収率での酵素を導く好熱性真菌は、酵素製造および保管および応用のあいだの安定のためとりわけ興味深いものである。
【0076】
Maheshwariら、Microbiology and Molecular Biology Reviews 2000年、461-488頁は、真核生物のあいだで、数種の真菌のみが45~55℃のあいだの温度で成長する能力を備えていることを報告した。このような真菌は、バクテリアおよび古細菌の好熱性種ほど極端ではない好熱性種である。Maheshwariらは、およそ50000の周知の真菌種のうち、30数種のみの種が真核生物のこの温度上限を突破すると推定した。Salarら、Journal of Agricultural Technology 2007年、77-107頁は、好熱性真菌である42個の種を報告した。
【0077】
本発明のさらなる酵素の例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、真菌、特には、担子菌門(Basidiomycota)、特にはプレウロツス(Pleurotus)種由来のステロールエステラーゼが挙げられる。本発明の酵素のこのような例としてはまた、これらに限定される訳ではないが、例えば、子嚢菌門(Ascomycota)、特にはメラノカルパス属(Melanocarpus)、ケトミウム属(Chaetomium)、ケトミジウム属(Chaetomidium)、コリナスクス属(Corynascus)、クラシカルポン属(Crassicarpon)、カナリオミセス属(Canariomyces)、コレトトリクム属(Colletotrichum)、コネメリア属(Coonemeria)、クラシカルポン属(Crassicarpon)、ダクチロミセス属(Dactylomyces)、マルブランキア属(Malbranchea)、マイリオコッカム属(Myriococcum)、ニューロスポラ属(Neurospora)、オフィオストマ属(Ophiostoma)、タラロマイセス属(Talaromyces)、サーモアスカス属(Thermoascus)、サーモマイセス属(Thermomyces)、チエラビア属(Thielavia)、フサリウム属(Fusarium)およびアスペルギラス属(Aspergillu)などの種由来のステロールエステラーゼが挙げられる。
【0078】
酵素のあいだの関係を示すための一つの方法は、シークエンスの比較である。
【0079】
シークエンスの相同性のパーセンテージは、https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/においてオンラインで入手可能であるClustal Omegaアルゴリズムを用いて算出された。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【0083】
ステロールエステラーゼの触媒三残基のセリンは、保存されている配列WGESAGに組み込まれている。このWGESAGの配列は、触媒三残基にグルタミン酸塩を有しており、関連しているが異なる酵素、例えばトルピド・カリフォルニカ(Torpedo californica)由来のアセチルコリンエステラーゼ、バチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)由来のパラーニトロベンジルエステラーゼ、ゲオトリクム・カンジダム(Geotrichum candidum)由来およびカンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)由来のリパーゼなどにはなく、これらは代わりに配列FGESAGを含んでいる。アクチノミセス(avtinomycetes)バクテリア由来のコレステロールエステラーゼの関連のないファミリーにおけるWGESAG配列の非存在、実際にはいかなるGXSXGモチーフもないこと、は、Xiangら、Biochimica et Biophysica Acta 2007年、112-120頁によって明らかにされた。ステロールエステルに対して活性を示さない通常のリパーゼと異なり、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)由来のリパーゼは、両方の基質、グリセロールエステルおよびステロールエステルに対して活性である。基質特異性以外の配列の特徴は、酵素を分類するための特徴を決定している。いくつかの場合において、配列の特徴は、分類の手段として特定の活性よりも、より正確である。配列-構造-機能相関関係に起因して、配列の特徴と基質特異性とはリンクしている。また、安定性および特定の安定化剤成分に対する受容性などの他の酵素特性も、特定の配列にそれらの根本的な原因をもっている。
【0084】
したがって、ある実施形態において、特定のポリヒドロキシ化合物に対して発明者らが発見した安定化効果は、好ましくはWGESAGモチーフとS、HおよびE/Dから構成される触媒三残基との両方をもち、S残基は、該モチーフの一部である酵素に特徴的である。以下の実施例において、この安定化効果は、該モチーフおよび触媒三残基を含んでいる様々な酵素に関して、および様々なポリヒドロキシ化合物に対して見られる。したがって、上記のパラメータは、酵素と安定化効果が見られる特定のポリヒドロキシ化合物との限られたセットを定義する。
【0085】
本発明の酵素は、その元の生物学的供給源から単離され得、または、無細胞システムにおいて製造され得、または、その元の宿主もしくは発現宿主、例えば異種発現宿主における分泌性または細胞間タンパク質として製造され得る。このような発現宿主としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、糸状菌、酵母、バクテリア、植物および海藻、例えばトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)、アスペルギラス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、バチラス・サブチリス(Bacillus subtilis)および大腸菌(Escherichia coli)などが挙げられ、そして、Fernandezら、Advanced Technologies for Protein Complex Production and Characterization 2016年、15-24頁、および、Yinら、Journal of Biotechnology 2007年、335-347頁によってレビューされた。Kontkanenら、Applied Microbiology and Biotechnology 2006年、696-704頁は、メラノカルパス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)由来のステロールエステラーゼの、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)中での発現を記載した。
【0086】
本発明の酵素、および、本発明の酵素をエンコードする遺伝子は、天然に見いだされるポリペプチドおよび核酸から導かれ得、または、天然で発見された核酸またはポリペプチド由来の配列情報を有する合成のポリペプチドまたは合成の拡散から導かれ得る。このような配列情報は、天然に見いだされる2以上の配列から導かれてもよく、例えば共通の祖先の配列の算出、周知の相同な配列のアライメントからの合成の配列の算出、特にはそれぞれの位置における最も頻度の高いアミノ酸および一致した配列からの逸脱の算出から導かれてもより。
【0087】
さらに、本発明の酵素、および、本発明の酵素をエンコードする遺伝子は、機能の損失を伴わない一または複数の変更を含み得る。このような変更の例は、天然に見いだされるポリペプチドまたは核酸に対する、挿入、削除、および/または置換、好ましくは保存的置換である。タンパク質におけるアミノ酸の実験上の交換可能性は、YampolskyおよびStoltzfus、Genetics 2005年、1459-1472頁によってレビューされた。アミノ酸変更は、スラッシュで分けられたそれらの一文字によって示され、例えばE/Dは。EまだはDであることを意味している。このような保存的置換の具体的な例は、EとDとのあいだの交換であり、これは、EおよびDは、共に酸性アミノ酸であり、それらの側鎖中で一つのメチレンスペーサーのみが異なっているだけであるためである。さらに、保存的置換の例は、塩基性アミノ酸(例えばR/K/H)、酸性アミノ酸およびそれらのアミド(例えばE/D/N/Q)、芳香族アミノ酸(例えばG/A/S)、中性アミノ酸(例えばT/S/A/V/M/C)、電荷性アミノ酸(例えばE/D/R/K/H)および他の極性アミノ酸(例えばS/T/N/Q/H)のグループ内での置換である。20個の標準的なアミノ酸による置換に加えて、他の遺伝的にエンコードされたアミノ酸、例えばセレノシステインおよびピロリシンなど、およびいわゆる非天然のアミノ酸、などもまたタンパク質に組み入れられ得る。このような非天然のアミノ酸の例としては、Wangら、Chemistry & Biology 2009年、323-336頁にレビューされている。段階的な固相ペプチド合成によって、任意の入手可能なアミノ酸はペプチド中に組み込まれ得、これは、タンパク質および酵素を製造するためにより大きなペプチドおよびポリペプチドに化学的に結合され得る。
【0088】
さらに、本発明の酵素は、ステロールエステルに対する酵素活性によって特徴付けられるポリペプチドのアミノ末端および/またはカルボキシ末端に、別のポリペプチドおよび/またはオリゴペプチドが結合されている融合ポリペプチドであり得る。このようなオリゴペプチドおよびポリペプチドの例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、ポリヒスチジンタグ、シグナルペプチド、リンカー、結合ドメイン、抗体、シャペロン、例えばコレステロールオキシダーゼ活性を有する蛍光タンパク質および酵素などが挙げられる。
【0089】
本発明の組成物中の酵素の濃度は、0.0001~10重量%から、および、そのあいだの任意の範囲から選択される。このような割合は、組成物の総計の重量あたりの活性酵素タンパク質重量として意味される。別の実施形態において、酵素濃度は、0.01~10重量%、好ましくは0.1~8重量%、およびさらにより好ましくは1~5重量%である。このようなパーセンテージは、乾燥質量ベースを意味されている。別の実施形態において、酵素濃度は、組成物の重量当たりの酵素活性として特定され、10~100000SEU/g、好ましくは100~50000SEU/g、より好ましくは200~30000SEU/g、および最も好ましくは400~10000SEU/gから選択される。酵素活性は、以下の実施例1において記載されている方法を用いて測定され得る。
【0090】
別の実施形態において、酵素は、ステロールエステラーゼである。ステロールエステラーゼは、多用途の酵素であり、広範な基質特異性を有する。カルボン酸(例えば短鎖および長鎖のカルボン酸、飽和および不飽和の脂肪酸など)のステロールおよびグリセロールエステルの他に、他の天然および人口のエステル、例えばポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレートなど)、ビニルアセテートモノマーを含むポリマー(例えばポリビニルアセテートなど)およびパラーニトロフェニルエステルもまた基質になり得、および/または本発明の酵素の製品となり得る。したがって、このような酵素は、多くの産業用途、特にはパルプおよび紙、食物、フィード、繊維、洗剤、パーソナルケア、および診断用の三秒において有用である。そのような産業内の具体的な例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、清掃用途、特にはランドリーおよび/またはコンタクトレンズのための使用、ポリエステル繊維および/またはウールの製造における加工助剤としての使用、紙および/またはパルプの製造および/またはリサイクルにおける使用、総コレステロール(例えば血液中)の測定のためのバイオセンサーおよび/または診断用試薬における使用、および、ステロールエステルの合成における使用などが挙げられる。このようなステロールエステル、特にはコレステロールおよびフィトステロールのエステル、より好ましくはオレイン酸スチグマステロールの使用の例としては、食品(例えばマーガリンに添加される)、フィード、化粧品、および医薬処方における使用、ならびに、例えばコレステロールエステルを含む液晶ディスプレイなどにおける技術的な用途における使用が挙げられる。
【0091】
本発明のステロールの例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば。コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、フィトステロール、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、シトスタノール、スチグマスタロール、カンペスタロール、ブラシカステロール、フコステロール、およびシクロアルテノールなどが挙げられる。
【0092】
本発明のステロールエステルの例は、これらに限定される訳ではないが、例えば、コレステロールのエステル、エルゴステロールのエステル、ラノステロールのエステル、フィトステロールのエステル、シトステロールのエステル、スチグマステロールのエステル、カンペステロールのエステル、シトスタノールのエステル、スチグマスタロールのエステル、カンペスタロールのエステル、ブラシカステロールのエステル、フコステロールのエステル、およびシクロアルテノールのエステルなどが挙げられる。
【0093】
本発明のコレステロールのエステルの例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、リノール酸コレステロール、リノレン酸コレステロール、ミリストレイン酸コレステロール、パルミトレイン酸コレステロール、オレイン酸コレステロール、サピエン酸コレステロール、アラキドン酸コレステロール、エルカ酸コレステロール、クロトン酸コレステロール、フェニルプロピオン酸コレステロール、フェニル酢酸コレステロール、けい皮酸コレステロール、安息香酸コレステロール、ニトロ安息香酸コレステロール、ジクロロ安息香酸コレステロール、クロロギ酸コレステロール、ギ酸コレステロール、酢酸コレステロール、プロピオン酸コレステロール、酪酸コレステロール、吉草酸コレステロール(ペンタン酸コレステロール)、カプロン酸コレステロール、ヘプタン酸コレステロール、オクタン酸コレステロール(カプリル酸コレステロール)、ノナン酸コレステロール(ペラルゴン酸コレステロール)、デカン酸コレステロール(カプリン酸コレステロール)、ラウリン酸コレステロール、ミリスチン酸コレステロール、パルミチン酸コレステロール、ステアリン酸コレステロール、エイコサン酸コレステロール(アラキジン酸コレステロール)、ドコサン酸コレステロール(ベヘン酸コレステロール)、テトラコサン酸メチルコレステロール(リグノセリン酸コレステロール)、ヘキサコサン酸コレステロール(セロチン酸コレステロール)、アセト酢酸コレステロール、ヘミこはく酸コレステロール、およびイソ酪酸コレステロールなどが挙げられる。
【0094】
本発明の酵素活性は、酵素基質としてステロールエステルを用いておよびpH変化を測定する、または、対応するエステルからのカルボン酸の遊離を測定するpH-stat法を適用して、または、リノール酸コレステロールからのコレステロールの遊離を測定する下記の実施例1に記載の方法によって、測定され得る。ここで詳細に記載される方法において、リノール酸コレステロールは、ステロールの他のエステル、特にはコレステロールのエステル、より特には上記に例示されたコレステロールのエステルによって置き換えられてもよい。
【0095】
ある実施形態において、酵素成分は、酵素を含む使用済み発酵ブロースである。使用済み発酵ブロースは、例えば、酵素の組換え産生によって得られ得る。使用済み発酵ブロースは、酵素産生後に濃縮および/または澄明にされてもよい。別の実施形態において、いくつかの発酵からの使用済み発酵ブロースの混合物が使用されてよい。
【0096】
ある実施形態において、溶液安定性の酵素組成物、および酵素成分は、37℃で少なくとも4週間、好ましくは少なくとも24週間の保管において溶液中に残存する。酵素が溶液中に残存している場合、酵素による混濁または沈殿は発生しない。37℃で少なくとも4週間、好ましくは少なくとも24週間溶液中に酵素を保持することのできる溶液安定性の酵素組成物とは、酵素が溶解性のままであり、および触媒的に機能できることを意味している。酵素がその触媒特性を失った場合、それはもう酵素ではなく、例えば変性タンパク質である。
【0097】
微生物の成長または他の理由が、37℃での保管のあいだの混濁または沈殿の発生を引き起こし得る。潜在的に微生物の成長に適切である条件において、組成物中に抗菌性の防腐剤を含むことが好ましいかもしれない。
【0098】
ある実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、4℃での4週間の保管後、好ましくは4℃での8週間の保管後、より好ましくは4℃での24週間の保管後、澄明に維持されている。ある実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、20℃での4週間の保管後、好ましくは20℃での8週間の保管後、より好ましくは20℃での24週間の保管後、澄明に維持されている。ある実施形態において、37℃での4週間の保管後、好ましくは37℃での8週間の保管後、より好ましくは37℃での24週間の保管後、澄明に維持されている。したがって、溶液安定性の酵素組成物は、保管のあいだに顕著に混濁するまたは沈殿することのない組成物である。
【0099】
ある実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、4℃での4週間の保管後、好ましくは4℃での8週間の保管後、そのような酵素組成物の調製直後の酵素活性と比較して、その活性の3分の1より高い、好ましくは2分の1より高い残存酵素活性を有している。ある実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、20℃での4週間の保管後、好ましくは20℃での8週間の保管後、そのような酵素組成物の調製直後の酵素活性と比較して、その活性の3分の1より高い、好ましくは2分の1より高い残存酵素活性を有している。ある実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、37℃での4週間の保管後、好ましくは37℃での8週間の保管後、そのような酵素組成物の調製直後の酵素活性と比較して、その活性の3分の1より高い、好ましくは2分の1より高い残存酵素活性を有している。
【0100】
本発明のポリヒドロキシ化合物は、一分子当たり、3以上、または4以上の水酸基、好ましくは4以上の水酸基、より好ましくは5以上の水酸基を有する有機ポリヒドロキシ化合物である。有機ポリヒドロキシ化合物の例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、ポリビニルアルコール、特定の炭水化物、シクリトール、および糖アルコールなどが挙げられる。本発明の糖アルコールの例としては、これらに限定される訳ではないが、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、グリセロール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、リビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、および加水分解水添デンプンなどが挙げられる。イノシトールは、糖アルコールの例であり、および同時にシクリトールの例である。天然のシクリトールは、6つの環原子および4つ以上の環原子上の水酸基を有している。このようなシクリトールの例としては、イノシトール、ボルネシトール、コンズリトール、オノニトール、ピニトール、ピンポリトール、ケブラキトール、バリエノール、ビスクミトール、シケリトールが挙げられる。
【0101】
ある実施形態において、安定化剤成分は、一分子当たり、4以上の水酸基、または5以上の水酸基を有する有機ポリヒドロキシ化合物を含む。好ましい実施形態において、安定化剤成分は、一分子当たり、4以上の水酸基を有する糖アルコールを含む。
【0102】
ある実施形態において、安定化剤成分は、糖を含まない。
【0103】
ある実施形態において、安定化剤成分は、単糖を含まない。
【0104】
ある実施形態において、安定化剤成分は、多糖を含まない。
【0105】
ある実施形態において、安定化剤成分は、糖類を含まない。
【0106】
ある実施形態において、安定化剤成分は、デンプンを含まない。
【0107】
ある実施形態において、有機ポリヒドロキシ化合物は、炭素、水素、および酸素原子のみからなる。別の実施形態において、有機ポリヒドロキシ化合物は、炭素、水素、酸素、および別の元素からなる。そのような元素の例としては、窒素、硫黄、リン、ボロン、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が挙げられる。
【0108】
ある実施形態において、安定化剤成分は、組成物に好ましくは添加される合成有機ポリヒドロキシ化合物を含む。したがって、安定化剤成分は、組成物に天然には顕著な量では存在しない。
【0109】
一実施形態において、安定化剤成分は、ソルビトールおよびグリセロールの混合物を含む。
【0110】
別の実施形態において、安定化剤成分は、マルチトールおよびソルビトールの混合物、マルチトールおよびグリセロールの混合物、またはソルビトールおよびマルチトールおよびグリセロールの混合物を含む。別の実施形態において、安定化剤成分は、マンニトールおよびソルビトールの混合物、マンニトールおよびグリセロールの混合物、またはソルビトールおよびマンニトールおよびグリセロールの混合物を含む。別の実施形態において、安定化剤成分は、キシリトールおよびソルビトールの混合物、キシリトールおよびグリセロールの混合物、またはソルビトールおよびキシリトールおよびグリセロールの混合物を含む。
【0111】
一実施形態において、安定化剤成分は、ソルビトール、グリセロール、マルチトール、マンニトール、およびキシリトールからなる群より選択される任意の組み合わせの2つ以上の糖アルコールの混合物を含む。
【0112】
一実施形態において、糖アルコールの混合物が、単一の糖アルコールの代わりに使用される。糖アルコールが、互いに、酵素成分と、または酵素組成物中に存在する任意の他の成分と、不適合性でない限り、任意の適切な糖アルコールの混合物が使用され得る。
【0113】
本発明の組成物中の糖アルコールの濃度の上限は、それらの溶解度の限度である。水性のソルビトール溶液は、70重量%の濃度で、マルチトールは75重量%の濃度で、市販で入手可能である。本発明の組成物中の糖アルコールの濃度の下限は、本発明の組成物中の安定化賦形剤としてのそれらの有効性である。有効性は、以下の実施例2に記載の方法を用いて測定され得る。
【0114】
一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、20重量%、24重量%、25重量%、28重量%、30重量%、33重量%、35重量%、40重量%、または50重量%の該糖アルコールを含む。該糖アルコールの高い濃度のこのような実施形態は、そのような組成物は、0℃より低い温度で液体として維持されるため優位である。このような組成物は、0℃より低い温度で保存され得、例えば、冬に屋外で、凍結することなく保管され得る。高い濃度のソルビトール、マルチトール、ラクチトール、および水素化されたコーンシロップを含む組成物の氷点は、Urajiら、Food Science Technology International 1996年、38-42頁によって報告された。
【0115】
一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、少なくとも2つの異なる糖アルコールの混合物を含む。様々な割合の異なる糖アルコールが、以下の実施例に示されているように、保管安定性を提供するために効果的である。第1の糖アルコールは、例えば、約20重量%、25重量%、30重量%、40重量%、または50重量%で存在していてもよく、一方、第2の糖アルコールは、例えば、約5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、または30重量%で存在していてもよい。
【0116】
抗菌性の防腐剤の手段は、有機化合物を含む水性組成物の環境温度での長期保存のあいだに、特にそのような組成物が滅菌されていない場合に、特に重要である。液体製品の滅菌は、そのような製品が医学的応用よりも技術的応用に用いられる場合にあまり一般的ではない。したがって、本発明において、溶液安定性の酵素組成物は、微生物の成長を防止するために抗菌性の防腐剤を含む。
【0117】
本発明の抗菌性の防腐剤は、好ましくは抗菌性の化学化合物および/または抗真菌性化学化合物、より好ましくはかび、酵母、および/または酸耐性のバクテリアに対する化学化合物である。このような抗菌性の防腐剤は、例えば、防カビ剤、静真菌薬、殺菌剤、および/または静菌剤などである。本発明の抗菌性の防腐剤の例としては、これらに限定される訳ではないが、特には、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-オクチルイソチアゾリン-3-オンおよび4,5-ジクロロ-2-オクチルイソチアゾリン-3-オン、フェノキシエタノール、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、特には、4-ヒドロキシ安息香酸および2-ヒドロキシ安息香酸(これはサリチル酸とも称される)、ソルビン酸、プロピオン酸、乳酸、ヘキサン酸、オクタン酸、二酸化硫黄、さらにこれらの酸の塩、特には、安息香酸のナトリウム塩、カリウム塩、およびカルシウム塩、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸誘導体、ソルビン酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、オクタン酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、およびピロ亜硫酸塩などが挙げられる。抗菌性の防腐剤のさらなる例としては、ヒドロキシ安息香酸のエステル、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸メチル、4-ヒドロキシ安息香酸エチル、4-ヒドロキシ安息香酸プロピル、4-ヒドロキシ安息香酸ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、4-ヒドロキシ安息香酸イソブチル、4-ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、4-ヒドロキシ安息香酸フェニル、および4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル(これらは、それぞれ、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ヘプチルパラベン、イソブチルパラベン、イソプロピルパラベン、フェニルパラベン、およびベンジルパラベンとも称される)、ならびにこれらの塩、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸メチルナトリウム、4-ヒドロキシ安息香酸エチルナトリウム、4-ヒドロキシ安息香酸プロピルナトリウム、などである。
【0118】
さらなる実施形態において、抗菌性の防腐剤の代わりに、またはそれに加えて、高濃度の安定化剤成分が微生物の成長を防止するために使用される。十分に高い濃度とは、高い浸透圧および/または低い水分活性に起因して抗菌性効果を伴う濃度である。したがって、本発明の安定化剤成分は、同時に、本発明の抗菌性の防腐剤として機能し得る。高濃度でのこのような化合物の例としては、少なくとも約50重量%の濃度であるスクロース、少なくとも約45重量%の濃度であるソルビトール、少なくとも約25重量%の濃度であるグリセリン、および、BarrおよびTice、Journal of the American Pharmaceutical Association 1957年、217-223頁によって測定された様々な高濃度でのグリセリンおよびソルビトールの混合物が挙げられる。
【0119】
抗菌性の防腐剤効果を有する化合物は、0.002~75重量%、好ましくは0.005~10重量%、より好ましくは0.01~5重量%、さらにより好ましくは0.02~2重量%、最も好ましくは0.04~0.5重量%の濃度で、本発明にしたがって使用される。本発明の組成物中の抗菌性の防腐剤の濃度の下限は、そのような組成物中の微生物の成長を防止するための有効性である。
【0120】
抗菌性効果は、微生物(例えば耐酸性バクテリアであるラクトバチラス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、カビのアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)または酵母のピキア・パストリス(Pichia pastoris))を播種し、そして保管温度(例えば8℃、25℃、または37℃)で1週間以上、特には数週間インキュベーションした後に、水性組成物(例えば本発明の組成物)中で、生存細胞を計数(例えばコロニー形成単位)し、そして、抗菌性の防腐剤なしの類似の水生組成物と比較する、および/またはインキュベーション前の播種された水性組成物と比較することによって決定され得る。
【0121】
耐酸性のバクテリア、カビ、および酵母は、食品腐敗微生物である。
【0122】
本発明の組成物の長期の保管安定性を達成するために、プロテアーゼ阻害剤、抗酸化剤、または界面活性剤は必要でない。
【0123】
本発明は、以下の実施形態を参照してさらに説明される。
【0124】
一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、産業用の使用のためである。別の実施形態において、それは、紙および/またはパルプの製造における使用のためである。
【0125】
一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物のpHは、強酸性から中性、弱アルカリ性までの範囲から選択される。一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物のpHは、酸性領域から選択される。一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物のpHは、クエン酸で緩衝化された範囲であるpH3.0~6.2から選択される。一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物のpHは、酢酸で緩衝化された範囲であるpH3.5~5.8から選択される。一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物のpHは、リン酸で緩衝化された範囲であるpH5.8~8.0から選択される。一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物のpHは、緩衝化されていない中性の範囲から選択される。一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物のpHは、pH緩衝液、好ましくはクエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、またはリン酸緩衝液で緩衝化されたpH範囲3.7~8.1から選択される。一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物のpHは、pH3~8の範囲から選択される。これらの範囲は、実施例で明らかにされているように、該範囲内では本発明の特定のポリヒドロキシ化合物に関して長期間にわたって良好な安定性が達成され得るため、特に優位である。さらに、該範囲内では、長期の保管期間のあいだに本発明の組成物の全ての成分と適合する緩衝物質に関して良好な安定性が達成され得る。
【0126】
一実施形態において、酵素は、ステロールエステル、好ましくはステロールの脂肪酸とのエステル、より好ましくはコレステロールのリノール酸とのエステルに対する酵素活性を有することによって特徴付けられる加水分解酵素である。
【0127】
一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、発酵ブロース、または、澄明にされたおよび任意には濃縮された発酵ブロースを含む。
【0128】
一実施形態において、酵素は、熱安定性酵素である。該実施形態は、熱安定性は他のタイプの安定性、特には環境温度における長期の安定性と関連しているため、優位である。さらに、該実施形態はまた、50℃よち高い温度、好ましくは60℃より高い温度、より好ましくは70℃より高い温度、最も好ましくは75℃より高い温度がしばしば適用されるパルプおよび紙の製造における使用に対して優位である。一実施形態において、パルプおよび紙の製造における該使用は、酸性のpHで、好ましくはpH5.0での使用である。別の実施形態において、パルプおよび紙の製造における該使用は、pH3.0~8.0での使用である。
【0129】
一実施形態において、該酵素は、真菌、好ましくは好熱性真菌由来のステロールエステラーゼである。
【0130】
一実施形態において、該酵素は、真菌のステロールエステラーゼ、好ましくは好熱性の真菌のステロールエステラーゼである。
【0131】
一実施形態において、該酵素は、ステロールエステラーゼであり、および、触媒三残基は、S、HおよびEから構成されている。
【0132】
一実施形態において、該酵素は、シタリジウム・サーモフィラム(Scytalidium thermophilum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terestri)、コリナスクス・サーモフィラス(Corynascus thermophilus)、マイリオコッカム・サーモフィラム(Myriococcum thermophilum)、サーモマイセス・ステラタス(Thermomyces stellatus)、チエラビア・オーストラリエンシス(Thielavia australiensis)、マルブランキア・シンナモメア(Malbranchea cinnamomea)、メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)およびケトミウム・サーモフィラム(Chaetomium thermophilum)からなる群より選択される好熱性真菌由来のステロールエステラーゼならびにそのようなステロールエステラーゼのフラグメントおよび保存的変更である。別の実施形態において、酵素は、上記の好熱性真菌のグループ内であり、配列番号1~32の任意の一つにしたがったアミノ酸配列を有する酵素のステロールエステラーゼ近接ホモログである。
【0133】
一実施形態において、該酵素は、シタリジウム・サーモフィラム(Scytalidium thermophilum)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、チエラビア・テレストリス(Thielavia terestri)、コリナスクス・サーモフィラス(Corynascus thermophilus)、マイリオコッカム・サーモフィラム(Myriococcum thermophilum)、サーモマイセス・ステラタス(Thermomyces stellatus)、チエラビア・オーストラリエンシス(Thielavia australiensis)、マルブランキア・シンナモメア(Malbranchea cinnamomea)、メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)およびケトミウム・サーモフィラム(Chaetomium thermophilum)からなる群より選択される好熱性真菌のゲノムからの遺伝子およびそれらのフラグメントおよびそれらの保存的変更によってエンコードされているステロールエステラーゼである。
【0134】
一実施形態において、該酵素は、メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)またはケトミウム・サーモフィラム(Chaetomium thermophilum)由来のステロールエステラーゼと、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%の配列相同性を有する。
【0135】
一実施形態において、該酵素は、配列番号1または配列番号2であるステロールエステラーゼと、少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも80%の配列相同性を有する。
【0136】
別の実施形態において、酵素は、配列番号1または2である対応するアミノ酸と、少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95または99%の配列相同性を有する。
【0137】
別の実施形態において、酵素は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10である対応する配列と、少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95または99%の配列相同性を有し、および、好ましくは熱安定性ステロールエステラーゼ、より好ましくは真菌の熱安定性ステロールエステラーゼである。
【0138】
別の実施形態において、酵素は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、または32である対応する配列と、少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95または99%の配列相同性を有する。
【0139】
一実施形態において、酵素は、配列番号1~32である配列のいずれとも100%の配列相同性は示さない。
【0140】
一実施形態において、該ポリヒドロキシ化合物は、一分子当たり、3つ以上、好ましくは4つ以上、より好ましくは6以上の水酸基を有する。
【0141】
一実施形態において、該ポリヒドロキシ化合物は、一分子当たり、4つ以上、好ましくは5つ以上、より好ましくは6以上の水酸基を有する。安定化効果が該ポリヒドロキシ化合物は、濃度が増加するにつれて、および水酸基の数が増えるにつれて増大するため、該ヒドロキシ化合物は、本発明の様々な酵素を安定化することができるという点で特に優位である。一分子当たりのより多くの水酸基は、より高い分子質量を導き、および、水に関連する特性の改良および水とタンパク質の相互作用の改良を導く。
【0142】
一実施形態において、該ポリヒドロキシ化合物は、糖アルコールである。
【0143】
一実施形態において、該糖アルコールは、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、キシリトール、およびグリセロールからなる群より選択される。
【0144】
一実施形態において、該糖アルコールは、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、およびキシリトールからなる群より選択される。該実施形態は、グリセロール、の存在が望ましくない適用、例えば、グリセロールが酵素の機能を干渉する、またはその使用に互換性がないような適用において、優位である。グリセロールはグリセロールエステルの加水分解生成物であるため、グリセロールは生成物阻害に起因して酵素活性の低下を引き起こし得る。したがって、グリセロールの代わりに、一分子当たり4つ以上の水酸基を有する糖アルコール、好ましくはソルビトール、マンニトール、マルチトール、およびキシリトールからなる群より選択される糖アルコールの使用が、本発明の組成物をグリセロールエステルの加水分解のために適用する場合に望ましいかもしれない。グリセロールエステルの酵素的加水分解の産業的な適用の例は、パルプおよび紙の製造におけるものである。グリセロールエステルおよびステロールエステルは、木材パルプおよび紙の製造のあいだに粘り気のある堆積物を生じる木材レジン中に存在し、および、好ましくは、堆積が起こるまえに迅速に加水分解される。
【0145】
一実施形態において、安定化剤成分は、重量当たり、該酵素組成物の少なくとも5分の1、好ましくは少なくとも4分の1、より好ましくは少なくとも3分の1を構成する。これらの量は、それらが長期間の安定化効果を提供するため好ましい。
【0146】
一実施形態において、安定化剤成分は、酵素成分の総計の重量の少なくとも5分の1、好ましくは少なくとも4分の1、より好ましくは少なくとも3分の1含まれる。特定の安定化剤成分に依存して、安定化効果は、濃度が増加するにつれて増大する。
【0147】
一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-オクチルイソチアゾリン-3-オンおよび4,5-ジクロロ-2-オクチルイソチアゾリン-3-オンからなる群より選択される抗菌性の防腐剤を含む。これらの防腐剤は、それらが酵素組成物と互換性があり、および、長期間にわたって抗菌性効果を提供するために、好ましい。
【0148】
一実施形態において、該防腐剤は、イソチアゾリノンであり、好ましくは、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-オクチルイソチアゾリン-3-オンおよび4,5-ジクロロ-2-オクチルイソチアゾリン-3-オンからなる群より選択される。
【0149】
一実施形態において、該防腐剤は、安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、およびそれらの塩およびそれらのエステルからなる群より選択される。食品に添加されることが許可されている防腐剤を含むこのような実施形態は、本発明の組成物の食品グレードの登録のために必要な前提条件として優位である。食品および食品接触剤としての承認はまた、食品、フィード、パルプおよび紙の製造における使用において必要または優位であり得る。
【0150】
一実施形態において、該防腐剤は、耐酸性バクテリア、カビおよび酵母からなる群より選択される少なくとも一つの微生物に対して活性である。
【0151】
一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、ポリエチレングリコールp-アルキルフェニルエーテルを本質的に含まず、好ましくは全ての非イオン性界面活性剤を含まず、より好ましくは全ての界面活性剤を含まない。この実施形態は、例えば界面活性剤による泡形成が望ましくない場合など、界面活性剤の存在が望ましくない場合の適用において特に有益である。
【0152】
一実施形態において、溶液安定性の酵素組成物は、セリンプロテアーゼ阻害剤を本質的に含まず、好ましくは全てのプロテアーゼ阻害剤を含まない。該実施形態は、例えば洗濯物の洗濯および他の洗浄用途のための洗剤組成物中など、プロテアーゼおよび本発明の酵素組成物の同時の活性が適用される場合に優位である。
【0153】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらは発明の範囲を限定するものではなく、本発明は添付の請求項およびその等価物によって規定される。
【実施例
【0154】
実施例1-ステロールエステル、リノール酸コレステロールに対する加水分解酵素活性の測定
この方法は、Stepienら、Acta Biochimica Polonica 2013年、401-403頁、およびSigma-Aldrich社のhttp://www.sigmaaldrich.com/technical-documents/protocols/biology/assay-procedure-for-cholesterol-esterase.htmlによって記載されている方法の改変である。以下の化学品はSigma-Aldrich(現在はMerck)から関連するカタログ番号を用いて購入された:リノール酸コレステロール C0289、コレステロールオキシダーゼ C8649、ホースラディッシュ由来ペルオキシダーゼ 77332、凍結乾燥ウシ血清アルブミン A2153、4-アミノアンチピリン A4382、3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム D4645、Triton X-100 X100。以下の溶液は新しく調製された。
【0155】
AA溶液は、100mL水に溶解された1.76g 4-アミノアンチピリンであった。DHBS溶液は、100mL水に溶解された6g 3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウムであった。CL溶液は、0.5mLイソプロパノールに溶解された9.8mg リノール酸コレステロールに75℃で1%Triton X-100溶液が添加され、25℃まで冷却され、そして1%Triton X-100で25mLとされた溶液であった。ペルオキシダーゼ粉末は、pH7.0の0.1Mリン酸水素カリウム緩衝液に溶解され、および、150PU/mLまで希釈された。コレステロールオキシダーゼ粉末は、氷冷された水に溶解され、30.3U/mLまで希釈された。サンプルの希釈に使用された緩衝液は、pH7.5の500mL 0.2Mリン酸水素カリウム緩衝液に溶解された、0.095g塩化マグネシウム、0.0695gエチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム二水和物、および、1g凍結乾燥ウシ血清アルブミンであった。基質溶液は、4.36mLのpH7.0の0.2Mリン酸水素カリウム緩衝液、2.91mLのCL溶液、0.145mLのAA溶液、0.291mLのDHBS溶液、および0.291mLのペルオキシダーゼ溶液であった。この基質溶液から、0.917mLがピペットによって抜き出されキュベットに入れられ、そして、37℃でインキュベートされた。その後、0.033mLのコレステロールオキシダーゼ溶液が添加された。その後、0.033mLの測定されるサンプルがキュベットに迅速に混合された。その直後に、分当たりの吸収変化(ΔOD/minと省略される)が、Perkin Elmer社の分光光度計Lambda25によって、37℃、512nmで測定された。酵素活性、ステロールエステラーゼユニット(SEUと省略される)が、総体積0.983mL中のサンプル体積が0.033mL、およびキュベット透過の光路1cmを考慮して、SEU/L=ΔOD/min・3.819の式に基づいて算出された。サンプルがキュベットに添加される前に希釈されている場合、結果もまた、適切な希釈因子が乗算された。サンプルは、0.06~0.22のあいだのΔOD/min値が測定されるように希釈された。
【0156】
顕著な酵素活性が、配列番号1、2、3、5、6、9、および10の、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)中での発現により調製されたサンプルにおいて上述の方法を用いて測定された。トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)中での発現は、公知の方法、例えばKontkanenら、Applied Microbiology and Biotechnology 2006年、696-704頁に基づいて行われた。
【0157】
実施例2-液体酵素組成物の安定性の実験的評価
全ての実験において、試験組成物を調製するために使用された酵素材料は、酵素タンパク質のいくつかの異なる発酵からの、微生物の成長を防止するための防腐剤を含む、澄明にされた発酵ブロースまたはそれらの濃縮物のどちらかであった。試験された酵素タンパク質は、メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)由来のステロールエステラーゼ、ケトミウム・サーモフィラム(Chaetomium thermophilum)由来のステロールエステラーゼ、およびトリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)中で発現された配列番号3の合成配列をもつ酵素であった。試験組成物中、酵素液体は、1200~1900SEU/gの範囲の活性レベルに標準化され、および、以下の表に示されるような種々の安定化条件を用いて安定化された。全ての試験組成物は、保存安定性の加速試験に付された。総計の保管時間は24週間であった。安定化試験のため、それぞれの液体は、15mLのスクリューキャップ付きチューブに、1チューブ当たり5mLの液体で分注された。それぞれの保管期間ポイントごとに1つのチューブが調製された。開始ポイントのサンプルチューブは、調製直後にフリーザー内に、目視のために配置された。全ての他のサンプルチューブは、37℃の人工気候室に配置された。それぞれの時間ポイント毎に、目視の下、一つのサンプルチューブが取り出され、そして、活性化分析の前にフリーザーに入れられた。それぞれの保管時間ポイントからの液体の外観が、開始時点の外観と比較された。また、種々の保管時間ポイントからの活性が、開始ポイントと比較された。物理的な安定性結果が、表3~11に示されている。
【0158】
【表3】
【0159】
表3のデータに示されているように、クエン酸で緩衝された酸性のpHで、メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)由来のステロールエステラーゼを、安定化剤なしで、または、ポリヒドロキシ化合物としてプロピレングリコールと共に含んでいる組成物は、物理的に安定ではない。データはまた、15%ソルビトール濃度は、15%プロピレングリコールの存在下での物理的な不安定性を防止するために十分に高くないことを示している。しかしながら、15%プロピレングリコールの存在下での35%ソルビトールは、すでに、4週間のあいだ物理的に安定な液体を維持するために十分である。30%ソルビトールを含む組成物は、少なくとも4週間のあいだ物理的に安定な液体を維持している。40~50%ソルビトールまたはグリセロールまたはそれらの混合物(20%+20%または25%+25%)は、長期にわたって安定である。4週間のデータによれば、マルチトールは、ソルビトールおよびグリセロールと等しい良好な安定化剤である。マルチトールはまた、高濃度でのソルビトールまたはグリセロールとの混合物中でも機能する。
【0160】
【表4】
【0161】
表4のデータに示されているように、クエン酸で緩衝された酸性のpHで、ケトミウム・サーモフィラム(Chaetomium thermophilum)由来のステロールエステラーゼを40%プロピレングリコールと共に含んでいる組成物は、物理的に安定ではない。物理的に安定な組成物は、同様な高い濃度のソルビトール、または、表3のメラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)由来のステロールエステラーゼの物理的に安定な組成物で使用されているようなマンニトールのソルビトールまたはグリセロールとの混合物を用いて達成された。これはまた、マンニトールがソルビトール、グリセロールおよびマルチトールと等しい良好な安定化剤になり得るが、その溶解度の制限に起因して、マンニトールは、良好な物理的安定性を維持するために他のポリヒドロキシ化合物との混合物中で機能することを示している。
【0162】
【表5】
【0163】
表5に示されている結果は、表3および4にそれぞれ示されている同じ組成物中の他の2つのステロールエステラーゼとして配列番号3の合成配列をもつ酵素を含む組成物の相当な物理的安定性を明らかにしている。
【0164】
【表6】
【0165】
表3および表6に示されている物理的安定性データは、2つの試験された防腐剤、安息香酸ナトリウムおよび1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンの存在下と同様の傾向を明らかにしている。
【0166】
【表7】
【0167】
【表8】
【0168】
表3、6、7および8に示されている物理的安定性データは、2つの試験された緩衝剤、酢酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムの存在下と同様の傾向を明らかにしている。また、キシリトール、マニトールおよびマルチトールは、ソルビトールとの混合物中で使用される場合等価である。
【0169】
【表9】
【0170】
表9に示されている物理的安定性データは、5に近いpHにおいて、またpH7.5~8.1の高いpH範囲においても、緩衝化されていないステロールエステラーゼ組成物の場合でも、上述の表に示されていた傾向を示している。
【0171】
【表10】
【0172】
【表11】
【0173】
表10および表11に示されている物理的安定性データは、pH7.4~8.1のリン酸ナトリウム/カリウムで緩衝化された組成物において、上述の表に示されていた傾向を示している。
【0174】
実施例3-酵素組成物の安定性におけるpH増加の実験的評価
全ての実験において、試験組成物を調製するために使用された酵素材料は、実施例2の先の実験と同じ3つの酵素タンパク質のいくつかの異なる発酵からの、微生物の成長を防止するための防腐剤を含む、澄明にされた発酵ブロースの濃縮物であった。試験組成物中、酵素液体は、特定の活性について標準化はされず、以下の表に示される種々の安定化状態を用いて安定化だけされた。全ての試験組成物は、20℃で、人工気候室内で4週間保管された。他の保管安定性試験は、実施例2で記載されたものと同じ様式で行われた。物理的安定性の結果が表12に示されている。
【0175】
【表12】
【0176】
表12の実施例が示しているように、pHの増加は、物理的安定性には十分ではなかった。メラノカルプス・アルボミセス(Melanocarpus albomyces)由来のステロールエステラーゼおよび防腐剤として1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンを含む組成物を用いたある実験においては、液体の外観は、pHを5.6から7.5に調整することによって改善されたが、組成物は調製時のみ澄明であり、物理的に安定ではない。また、7.5のような高いpHは、pH5およびpH7.5の標準化された酵素組成物の活性の低下を示している以下の表13からわかるように、全体としての安定性低下効果をもつ。
【0177】
実施例4-残存活性として測定される液体酵素組成物の安定性の実験的評価
材料および方法は、実施例1および2で記載されているものと同じである。
【0178】
【表13】
【0179】
37℃での4週間の保管後の50%より高い残存酵素活性は、安定酵素組成物を示している。また、37℃での8週間の保管後の40%より高い残存酵素活性も、安定酵素組成物を示している。
【0180】
上記の開示は、本発明の特定の実施および実施形態の非制限的な例として、本発明を行うために発明者らによって現時点で理解されているベストモードの完全かつ有益な記載を提供している。しかしながら、本発明は、上記で示されている実施形態の詳細に制限されるわけではなく、本発明の特徴から逸脱することなく等価の手段を用いて他の実施形態で実施され得るということは当該技術分野における当業者にとって明らかである。
【0181】
さらに、本発明の上述された実施形態の特徴のうちのいくつかは、他の特徴の対応する使用なしでも優位に使用され得る。したがって、上述の記載は、本発明の原則の単なる説明として考慮されるべきであり、それらを限定するものとして考慮されるべきではない。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【配列表】
2022529140000001.app
【国際調査報告】