(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-17
(54)【発明の名称】フォージャサイト供給源を有するAFX構造ゼオライトの高速合成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20220610BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20220610BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J20/30
B01J20/18 D
B01J20/18 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561937
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(85)【翻訳文提出日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2020060476
(87)【国際公開番号】W WO2020212356
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス フランコ、 ラケル
(72)【発明者】
【氏名】ハルブザル、 ボグダン
(72)【発明者】
【氏名】リド、 エリック
(72)【発明者】
【氏名】ベルトルー、 ダヴィド
【テーマコード(参考)】
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4G066AA21B
4G066AA23B
4G066AA61A
4G066AA61B
4G066AA62B
4G066AB06D
4G066AB09D
4G066FA03
4G066FA21
4G066FA33
4G066FA34
4G066FA37
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA57
4G073BA75
4G073BB03
4G073BB07
4G073BB44
4G073BB48
4G073BD06
4G073BD07
4G073BD21
4G073CZ03
4G073CZ50
4G073FB11
4G073FB24
4G073FB30
4G073FC12
4G073FC19
4G073FC29
4G073FC30
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA06
4G073GB02
(57)【要約】
本発明は、少なくとも以下を含むAFX構造ゼオライトの高速合成方法に関する:
i)水性媒体中で、2.00~100のSiO
2(FAU)/Al
2O
3(FAU)モル比を有するFAU構造ゼオライトと、窒素含有有機化合物Rと、原子価nの少なくとも1つのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属Mの少なくとも1つの供給源と、を以下のモル組成で、均質な前駆体ゲルが得られるまで、混合する:
(SiO
2(FAU))/(Al
2O
3(FAU))が2.00~100、
H
2O/(SiO
2(FAU))が1~100、
R/(SiO
2(FAU))が0.01~0.6、
M
2/nO/(SiO
2(FAU))が0.005~0.45、
ここで、SiO
2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiO
2の量を示し、Al
2O
3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAl
2O
3の量を示す;
ii)工程i)の終わりに得られる前記前駆体ゲルを、自生圧力下、120℃~250℃の温度において4時間~12時間水熱処理する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下の工程を含む、AFX構造ゼオライトの製造方法:
i)水性媒体中で、2.00~100のSiO
2(FAU)/Al
2O
3(FAU)モル比を有するFAU構造ゼオライトと、窒素含有有機化合物R(Rは1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドである)と、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムおよびカルシウム、ならびにこれらの金属の少なくとも2つの混合物から選択される、原子価n(nは1以上の整数である)の少なくとも1つのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属Mの少なくとも1つの供給源と、を混合する、ここで、反応混合物は、以下のモル組成を有する:
(SiO
2(FAU))/(Al
2O
3(FAU))が2.00~100、好ましくは5.00~99、
H
2O/(SiO
2(FAU))が1~100、好ましくは5~60、
R/(SiO
2(FAU))が0.01~0.6、好ましくは0.1~0.4、
M
2/nO/(SiO
2(FAU))が0.005~0.45、好ましくは0.07~0.22、
ここで、SiO
2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiO
2の量を示し、Al
2O
3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAl
2O
3の量を示す;
次いで、反応混合物を、撹拌しながら、または撹拌せずに、20℃~80℃の温度で、30分間~24時間、好ましくは1時間~12時間に亘って、均質な前駆体ゲルが得られるまで熟成させる;
ii)工程i)の終わりに得られる前記前駆体ゲルを、自生圧力下、120℃~250℃の温度において、4時間~12時間の間、水熱処理する。
【請求項2】
Mがナトリウムであり、好ましくは、少なくとも1つのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属Mの供給源が水酸化ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程i)の反応混合物が、XO
2酸化物の少なくとも1つの追加の供給源を含み、Xは、以下の元素:ケイ素、ゲルマニウム、チタンによって形成される群より選択される1つ以上の4価元素であり、XO
2/SiO
2(FAU)モル比が0.001~33、好ましくは0.001~15であり、前記比におけるSiO
2(FAU)含有量は、FAU構造ゼオライトによって提供される含有量である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
工程i)の反応混合物が、以下のモル組成を有する、請求項3に記載の方法:
(XO
2+SiO
2(FAU))/Al
2O
3(FAU)が2~100、好ましくは5.00~99、
H
2O/(XO
2+SiO
2(FAU))が1~100、好ましくは5~60、
R/(XO
2+SiO
2(FAU))が0.01~0.6、好ましくは0.1~0.4、
M
2/nO/(XO
2+SiO
2(FAU))が0.005~0.45、好ましくは0.07~0.22。
【請求項5】
Xがケイ素である、請求項3および4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程i)の反応混合物が、Y
2O
3酸化物の少なくとも1つの追加の供給源を含み、Yは、以下の元素:アルミニウム、ホウ素、ガリウムによって形成される群より選択される1つ以上の3価元素であり、Y
2O
3/Al
2O
3(FAU)モル比が0.001~45であり、好ましくは0.001~40であり、ただし、限界値を含み、前記比におけるAl
2O
3(FAU)含有量は、FAU構造ゼオライトによって提供される含有量である、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程i)の反応混合物が、以下のモル組成を有する、請求項6に記載の方法:
SiO
2(FAU)/(Al
2O
3(FAU)+Y
2O
3)が2.00~100、好ましくは5.00~99、
H
2O/(SiO
2(FAU))が1~100、好ましくは5~60、
R/(SiO
2(FAU))が0.01~0.6、好ましくは0.1~0.4、
M
2/nO/(SiO
2(FAU))が0.005~0.45、好ましくは0.07~0.22、
SiO
2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiO
2の量であり、Al
2O
3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAl
2O
3の量である。
【請求項8】
Yがアルミニウムである、請求項6および7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程i)の終わりに得られる前駆体ゲルの、3価元素の酸化物として表される総量に対する、4価元素の酸化物として表される総量のモル比が2.00~100である、請求項3~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程i)の反応混合物に、AFX構造ゼオライトの種結晶が、好ましくは、反応混合物中に存在する無水形態の前記4価および3価元素(単数または複数)の供給源の全質量に対して0.01%~10%の量で添加され、前記種結晶は、4価および3価元素の供給源の全質量において考慮されない、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程ii)の水熱処理が、150℃~230℃の温度で、4時間~12時間、ただし、上限は除外され、好ましくは5時間~10時間、より好ましくは5時間~8時間に亘って行われる、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程ii)の終わりに得られる固相を濾別し、洗浄し、20℃~150℃、好ましくは60℃~100℃の温度で、5時間~24時間に亘って乾燥して、乾燥ゼオライトを得る、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
続いて、前記乾燥ゼオライトを、450℃~700℃の温度で、2時間~20時間に亘って焼成し、焼成の前に徐々に温度を上昇させることができる、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AFX構造ゼオライトを製造するための新規な方法に関する。この新規な方法は、水熱条件下で、FAU構造ゼオライトを転化/変換することにより、AFX構造ゼオライトの合成を行うことを可能にする。特に、前記新規な方法は、ケイ素およびアルミニウムの供給源として使用されるFAU構造ゼオライトと、2つの第4級アンモニウム官能基を含む、特定の有機分子または構造化剤である、ジヒドロキシド形態の1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンと、から出発して、AFX構造ゼオライトの迅速な合成を行うことを可能にする。本発明の方法により得られる前記AFX構造ゼオライトは、触媒、吸着剤または分離剤として有利に適用される。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトまたはシリコアルミノホスフェートのような結晶性微孔質材料は、石油産業において、触媒、触媒担体、吸着剤または分離剤として広く使用されている固体である。多くの微孔質結晶性構造が発見されているが、精製および石油化学産業は、ガスの精製または分離、炭素ベースの種の転換などのような用途のための特定の特性を有する新規なゼオライト構造を常に探し求めている。
【0003】
AFX構造ゼオライトは、特に、ゼオライトSSZ-16およびゼオタイプ(zeotype)SAPO-56およびMEAPSO-56を含む。AFX構造ゼオライトは、8つの4面体で区切られた小孔の三次元系を有し、2つのタイプのケージ、すなわち、グメリン沸石(gmelinite、GMEケージ)および大きなAFTケージ(~8.3×13.0Å)によって形成される。AFX構造ゼオライト、特にゼオライトSSZ-16を合成するための多くの方法が知られている。ゼオライトSSZ-16は、1,4-ジ(1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン)ブチルジブロミド類に由来する窒素含有有機種を用いて、典型的には3日を超える結晶化時間で合成された(米国特許第4508837号明細書)。シェブロン・リサーチ・アンド・テクノロジー・カンパニーは、DABCO-Cn-ジクワットカチオン(ここで、DABCOは、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを表し、nは3、4または5である)存在下で、典型的には3日を超える結晶化時間で、ゼオライトSSZ-16を製造した(米国特許第5194235号明細書)。S.B.Hongらは、ゼオライトSSZ-16の合成のための構造化剤として、ジクォータナリアルキルアンモニウムイオンであるEt6-ジクワット-n(ここで、Et6-ジクワットは、N’,N’-ビス-トリエチルペンタンジアンモニウムを表し、nは5である)を使用し、7~14日間のゼオライトSSZ-16の形成時間を要した(Micropor.Mesopor.Mat.,60(2003),237-249)。1,3-ビス(アダマンチル)イミダゾリウムカチオンを、AFX構造ゼオライトを製造するための構造化剤として使用し、結晶化時間がそれぞれ7~10日間、一般には2~15日間であることも挙げられる(R.H.Archerら、Micropor.Mesopor.Mat.,130(2010),255-265;ジョンソン・マッセイ社、国際公開第2016/077667号)。稲垣怜史ら(特開2016-169139号公報)は、アルキル基で置換された2価のN,N,N’,N’-テトラアルキルビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3:05,6-ジピロリジウムカチオンを使用して、一般に20~400時間の結晶化時間で、ゼオライトSSZ-16を製造した。シェブロン U.S.A.(国際公開第2017/200607号)は、以下のジカチオンを使用して、1~28日間の結晶化時間で、ゼオライトSSZ-16の合成を行うことを提案している:
1,1’-(1,4-シクロヘキシレンジメチレン)ビス[1-メチルピペリジニウム]、
1,1’-(1,4-シクロヘキシレンジメチレン)ビス[1-エチルピペリジニウム]、
1,1’-(1,4-シクロヘキシレンジメチレン)ビス[1-メチルピロリジニウム]、
1,1’-(1,4-シクロヘキシレンジメチレン)ビス[1-エチルピロリジニウム]。
H.-Y.Chenら(ジョンソン・マッセイ社、米国特許出願公開第2018/0093897号明細書)は、少なくとも1,3-ビス(アダマンチル)イミダゾリウムおよび中性アミンを含むカチオンの混合物を用いて、アルカリ金属カチオンの非存在下で、1~20日間の結晶化時間でAFX構造ゼオライトJMZ-10を製造した。H.-Y.Chenら(ジョンソン・マッセイ社、米国特許出願公開第2018/0093259号明細書)は、1,3-ビス(アダマンチル)イミダゾリウム、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウム、N,N-ジエチル-cis-2,6-ジメチルピペリジニウム、N,N,N-1-トリメチルアダマンチルアンモニウム、N,N,N-ジメチルエチルシクロヘキシルアンモニウムから選択される有機分子と、少なくとも1つのアルカリ土類金属カチオンとを含むカチオンの混合物を用いて、アルカリ金属カチオンを用いた合成によって得られるゼオライトと比較して、近いAl部位(Al sites)を有するAFX構造ゼオライトJMZ-7を得た。このゼオライトを得るために必要な時間は、3~15日間と様々である。
【0004】
K.G.Strohmaierら(エクソンモービル、国際公開第2017/202495号)は、アミン配位子によって安定化された金属錯体の存在下で、有機分子1,1’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス(1-メチルピペリジニウム)を使用して、1日間~約100日間の範囲の結晶化時間で、AFX構造ゼオライトを得た。
【0005】
驚くべきことに、出願人は、特定の構造化剤である、ジヒドロキシド形態の1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンの存在下で、シリカおよびアルミナの供給源としてのFAU型ゼオライトから出発することによって、および迅速な合成により高純度のAFXゼオライトを得るための特定の条件下で、結晶化時間を短縮することが可能であることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4508837号明細書
【特許文献2】米国特許第5194235号明細書
【特許文献3】国際公開第2016/077667号
【特許文献4】特開2016-169139号公報
【特許文献5】国際公開第2017/200607号
【特許文献6】米国特許出願公開第2018/0093897号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2018/0093259号明細書
【特許文献8】国際公開第2017/202495号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Micropor.Mesopor.Mat.,60(2003),237-249
【非特許文献2】Micropor.Mesopor.Mat.,130(2010),255-265
【発明の概要】
【0008】
本発明は、少なくとも以下の工程を含む、AFX構造ゼオライトの製造方法に関する:
i)水性媒体中で、2.00~100のSiO2(FAU)/Al2O3(FAU)モル比を有するFAU構造ゼオライトと、窒素含有有機化合物R(Rは1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドである)と、リチウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムおよびカルシウム、ならびにこれらの金属の少なくとも2つの混合物から選択される、原子価n(nは1以上の整数である)の少なくとも1つのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属Mの少なくとも1つの供給源と、を均質な前駆体ゲルが生成されるまで混合し、反応混合物は、以下のモル組成を有する:
(SiO2(FAU))/(Al2O3(FAU))が2.00~100、好ましくは5.00~99、
H2O/(SiO2(FAU))が1~100、好ましくは5~60、
R/(SiO2(FAU))が0.01~0.6、好ましくは0.1~0.4、
M2/nO/(SiO2(FAU))が0.005~0.45、好ましくは0.07~0.22、
ここで、SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiO2の量を示し、Al2O3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAl2O3の量を示す;
ii)工程i)の終わりに得られる前記前駆体ゲルを、自生圧力下、120℃~250℃の温度において、4時間~12時間の間、水熱処理する。
【0009】
有利には、Mはナトリウムであり、好ましくは、少なくとも1つのアルカリおよび/またはアルカリ土類金属Mの供給源は、水酸化ナトリウムである。
【0010】
工程i)の反応混合物は、XO2酸化物の少なくとも1つの追加の供給源を含んでいてもよく、Xは、以下の元素:ケイ素、ゲルマニウム、チタンによって形成される群より選択される1つ以上の4価元素であり、XO2/SiO2(FAU)モル比は0.001~33、好ましくは0.001~15であり、前記比におけるSiO2(FAU)含有量は、FAU構造ゼオライトによって提供される含有量である。
【0011】
工程i)の反応混合物は、有利には、以下のモル組成を有する:
(XO2+SiO2(FAU))/Al2O3(FAU)が2~100、好ましくは5.00~99、
H2O/(XO2+SiO2(FAU))が1~100、好ましくは5~60、
R/(XO2+SiO2(FAU))が0.01~0.6、好ましくは0.1~0.4、
M2/nO/(XO2+SiO2(FAU))が0.005~0.45、好ましくは0.07~0.22。
【0012】
好ましくは、Xはケイ素である。
【0013】
工程i)の反応混合物は、Y2O3酸化物の少なくとも1つの追加の供給源を含んでいてもよく、Yは、以下の元素:アルミニウム、ホウ素、ガリウムによって形成される群より選択される1つ以上の3価元素であり、Y2O3/Al2O3(FAU)モル比は0.001~45、好ましくは0.001~40であり、ただし、限界値を含み、前記比におけるAl2O3(FAU)含有量は、FAU構造ゼオライトによって提供される含有量である。
【0014】
工程i)の反応混合物は、有利には、以下のモル組成を有する:
SiO2(FAU)/(Al2O3(FAU)+Y2O3)が2.00~100、好ましくは5.00~99、
H2O/(SiO2(FAU))が1~100、好ましくは5~60、
R/(SiO2(FAU))が0.01~0.6、好ましくは0.1~0.4、
M2/nO/(SiO2(FAU))が0.005~0.45、好ましくは0.07~0.22、
SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiO2の量であり、Al2O3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAl2O3の量である。
【0015】
好ましくは、Yはアルミニウムである。
【0016】
有利には、工程i)の終わりに得られる前駆体ゲルの、3価元素の酸化物として表される総量に対する、4価元素の酸化物として表される総量のモル比が2.00~100である。
【0017】
工程i)の反応混合物に、AFX構造ゼオライトの種結晶を、好ましくは、反応混合物中に存在する無水形態の前記4価および3価元素(単数または複数)の供給源の全質量に対して0.01%~10%の量で添加することができ、前記種結晶は、4価および3価元素の供給源の全質量において考慮されない。
【0018】
工程i)は、反応混合物を、撹拌しながら、または撹拌せずに、20℃~80℃の温度で、30分間~24時間、好ましくは1時間~12時間の間、熟成させる工程を含んでいてもよい。
【0019】
工程ii)の水熱処理は、有利には、150℃~230℃の温度で、4時間~12時間、ただし、上限は除外され、好ましくは5時間~10時間、より好ましくは5時間~8時間に亘って行われる。
【0020】
有利には、工程ii)の終わりに得られる固相を濾別し、洗浄し、20℃~150℃、好ましくは60℃~100℃の温度で、5時間~24時間に亘って乾燥して、乾燥ゼオライトを得る。
【0021】
続いて、乾燥ゼオライトを、450℃~700℃の温度で、2~20時間に亘って焼成してもよく、焼成の前に徐々に温度を上昇させることができる。
【0022】
本発明はまた、上記の製造方法によって得られる、4.00~100、好ましくは4.00~60のSiO2/Al2O3比を有するAFX構造ゼオライトに関する。
【0023】
本発明はまた、上記の製造方法によって得られる、4.00~100のSiO2/Al2O3比を有するAFX構造焼成ゼオライトであって、X線回折パターンで測定した平均dhkl値および相対強度が次のとおりであるものに関する。
【0024】
【0025】
ここで、VS=非常に強い;S=強い;m=中程度;mw=中程度に弱い;w=弱い;vw=非常に弱い、である。相対強度Irelは、相対強度スケールに関連して与えられ、ここで、値100は、X線回折パターンのうち、最も強いラインに割り当てられる:vw<15;15≦w<30;30≦mw<50;50≦m<65;65≦S<85;VS≧85。
【0026】
図面のリスト
本発明に係る方法の他の特徴および利点は、以下に記載される添付の図面を参照して、非限定的な例示的な実施形態についての以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明に係る合成方法において構造化剤として用いられる窒素含有有機化合物の化学式を表す。
【
図2】
図2は、例2~4に従って得られたAFXゼオライトのX線回折(XRD)パターンを表す。
【
図3】
図3は、例2に従って得られたAFXゼオライトの、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた画像を表す。
【
図4】
図4は、例3に従って得られたAFXゼオライトの、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた画像を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施形態の説明
本発明の主題の1つは、特定の窒素含有有機化合物または構造化剤、ジヒドロキシド形態の1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンの存在下、水熱条件下で、特定のSiO2/Al2O3比を有するFAU構造ゼオライトを、転化/変換することによって、AFX構造ゼオライトを製造するための新規な方法である。
【0029】
特に、出願人は、ケイ素およびアルミニウムの供給源として使用される、2.00~100のSiO2(FAU)/Al2O3(FAU)モル比を有するFAU構造ゼオライトと混合された、窒素含有有機化合物または構造化剤である、ジヒドロキシド形態の1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンが、該混合物への、少なくとも1つの4価XO2元素の少なくとも1つの供給源、および/または少なくとも1つの3価Y2O3元素の少なくとも1つの供給源の、追加の供給の存在下または非存在下で、3価元素の酸化物として表される総量に対する、4価元素の酸化物として表される総量のモル比が2.00~100である、AFX構造ゼオライトの前駆体ゲルの製造につながり、次いで、高純度のAFX構造ゼオライトの製造につながることを発見した。ここで、4価元素の酸化物の総量は、FAUゼオライトに由来するSiO2含有量と、XO2酸化物の少なくとも1つの追加の供給源が添加される場合は、考えられるXO2酸化物の追加の供給源に由来するXO2含有量と、の合計を表し、3価元素の酸化物の総量は、FAUゼオライトに由来するAl2O3含有量と、Y2O3酸化物の少なくとも1つの追加の供給源が添加される場合は、考えられるY2O3酸化物の追加の供給源に由来するY2O3含有量と、の合計を表す。任意の他の結晶相または非晶質相は、一般に、および非常に優先的に、製造方法の最後に得られるAFX構造ゼオライトからなる結晶性固体には存在しない。
【0030】
より正確には、本発明の主題の1つは、少なくとも以下の工程を含む、AFX構造ゼオライトの迅速な合成を可能にする、ゼオライトを製造するための新規な方法である:
i)水性媒体中で、2.00~100のSiO2(FAU)/Al2O3(FAU)モル比を有するFAU構造ゼオライトと、構造化剤とも呼ばれる、特定の窒素含有有機化合物R、1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドと、原子価n(nは1以上の整数である)の少なくとも1つのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属Mと、を混合し、混合物は以下のモル組成を有する:
(SiO2(FAU))/(Al2O3(FAU))が2.00~100、好ましくは5.00~99、
H2O/(SiO2(FAU))が1~100、好ましくは5~60、
R/(SiO2(FAU))が0.01~0.6、好ましくは0.1~0.4、
M2/nO/(SiO2(FAU))が0.005~0.45、好ましくは0.07~0.22。
ここで、SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiO2の量であり、Al2O3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAl2O3の量であり、H2Oは、反応混合物中に存在する水のモル量であり、Rは、前記窒素含有有機化合物のモル量であり、M2/nOは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の供給源としての、酸化物の形態M2/nOで表されるモル量であり、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびこれらの金属の少なくとも2つの混合物から選択される1つ以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属であり、非常に好ましくは、Mはナトリウムであり、工程i)は、前駆体ゲルと呼ばれる均質な混合物を得ることを可能にする時間に亘って行われる;
ii)工程i)の終わりに得られる前記前駆体ゲルを、前記AFX構造ゼオライトが形成されるまで、自生圧力下、120℃~250℃の温度において、4時間~12時間の間、水熱処理する。
【0031】
したがって、本発明の1つの利点は、FAU構造ゼオライトからの、高純度のAFX構造ゼオライトの迅速な形成を可能にする新規な製造方法を提供することであり、該方法は、有機構造化剤、1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドの存在下で行われる。
【0032】
2.00~6.00のSiO2/Al2O3比を有するFAU供給源としては、Zeolyst製の市販のゼオライトCBV100、CBV300、CBV400、CBV500およびCBV600、ならびにTOSOH製の市販のゼオライトHSZ-320NAA、HSZ-320HOAおよびHSZ-320HUAを挙げることができる。6.00(限界値を含む)~200のSiO2/Al2O3モル比を有する出発物質のFAU構造ゼオライトは、当業者に公知の任意の方法、例えば、6.00未満のSiO2/Al2O3モル比を有するFAU構造ゼオライトの水蒸気処理(蒸気処理)および酸洗浄によって得ることができる。6.00以上のSiO2/Al2O3比を有するFAU供給源としては、Zeolyst製の市販のゼオライトCBV712、CBV720、CBV760、およびCBV780、ならびにTOSOH製の市販のゼオライトHSZ-350HUA、HSZ-360HUA、HSZ-385HUAを挙げることができる。出発物質のFAU構造ゼオライトはまた、そのナトリウム形態、または任意の他の形態、あるいはナトリウムカチオンとアンモニウムカチオンとが部分的もしくは全体的に交換した形態で使用することができ、任意に、焼成工程が続いてもよい。
【0033】
工程i)の反応混合物のモル組成において、および本明細書全体を通して:
XO2は、酸化物の形態で表される追加の4価元素(単数または複数)のモル量を示し、Y2O3は、酸化物の形態で表される追加の3価元素(単数または複数)のモル量を示し、
SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiO2の量を示し、Al2O3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAl2O3の量を示し、
H2Oは、反応混合物中に存在する水のモル量であり、
Rは、前記窒素含有有機化合物のモル量であり、
M2/nOは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の供給源によって、酸化物の形態M2/nOで表されるモル量である。
【0034】
好ましい実施形態では、工程i)の反応混合物はまた、XO2酸化物の少なくとも1つの追加の供給源を含み、XO2/SiO2(FAU)モル比は0.001~33であり、混合物は、有利には、以下のモル組成を有する:
(XO2+SiO2(FAU))/Al2O3(FAU)が2.00~100、好ましくは5.00~99、
H2O/(XO2+SiO2(FAU))が1~100、好ましくは5~60、
R/(XO2+SiO2(FAU))が0.01~0.6、好ましくは0.1~0.4、
M2/nO/(XO2+SiO2(FAU))が0.005~0.45、好ましくは0.07~0.22。
ここで、Xは、以下の元素:ケイ素、ゲルマニウム、チタンによって形成される群より選択される1つ以上の4価元素であり、好ましくは、Xはケイ素であり、SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiO2の量であり、Al2O3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAl2O3の量であり、Rは、1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドであり、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびこれらの金属の少なくとも2つの混合物から選択される1つ以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属であり、非常に好ましくは、Mはナトリウムである。
【0035】
別の好ましい実施形態では、工程i)の反応混合物はまた、Y2O3酸化物の少なくとも1つの追加の供給源を含み、Y2O3/Al2O3(FAU)モル比は0.001~45であり、混合物は、有利には、以下のモル組成を有する:
SiO2(FAU)/(Al2O3(FAU)+Y2O3)が2.00~100、好ましくは5.00~99、
H2O/(SiO2(FAU))が1~100、好ましくは5~60、
R/(SiO2(FAU))が0.01~0.6、好ましくは0.1~0.4、
M2/nO/(SiO2(FAU))が0.005~0.45、好ましくは0.07~0.22。
【0036】
ここで、Yは、以下の元素:アルミニウム、ホウ素、ガリウムによって形成される群より選択される1つ以上の3価元素であり、好ましくは、Yはアルミニウムであり、SiO2(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるSiO2の量であり、Al2O3(FAU)は、FAUゼオライトによって提供されるAl2O3の量であり、Rは、1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドであり、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびこれらの金属の少なくとも2つの混合物から選択される1つ以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属であり、非常に好ましくは、Mはナトリウムである。
【0037】
前記4価元素(単数または複数)の供給源(単数または複数)は、元素Xを含む任意の化合物であってよく、反応性形態の水溶液中で、この元素を放出することができる。
【0038】
Xがチタンである場合、Ti(EtO)4が、チタンの供給源として有利に使用される。
【0039】
Xがケイ素である好ましい場合、ケイ素の供給源としては、ゼオライト合成に一般に使用されるケイ素の供給源のいずれか1つ、例えば粉末シリカ、ケイ酸、コロイドシリカ、溶解シリカまたはテトラエトキシシラン(TEOS)であってよい。粉末シリカの中でも、沈降シリカ、特にアルカリ金属ケイ酸塩、ヒュームドシリカ、例えばCab-O-SilまたはAerosil、およびシリカゲルの溶液からの沈殿によって得られるものを使用することができる。Ludoxといった登録商標で販売されているものなど、様々な粒径、例えば10~15nmまたは40~50nmの平均等価直径を有するコロイドシリカを使用してもよい。好ましくは、ケイ素の供給源はAerosilである。
【0040】
本発明によれば、Yは、以下の元素:アルミニウム、ホウ素、ガリウムによって形成される群より選択される1つ以上の3価元素であり得る。そして、工程i)の混合物において使用される。好ましくは、Yはアルミニウムであり、Y2O3/Al2O3(FAU)モル比は0.001~45であり、好ましくは0.001~40であり、前記比におけるAl2O3(FAU)含有量は、FAU構造ゼオライトによって提供される含有量である。
【0041】
Y2O3酸化物の少なくとも1つの追加の供給源を加えることにより、工程i)の終わりに得られるAFX構造ゼオライトの前駆体ゲルのXO2/Y2O3比を調整することが可能となる。
【0042】
前記3価元素(単数または複数)Yの供給源(単数または複数)は、元素Yを含む任意の化合物であってよく、反応性形態の水溶液中で、この元素を放出することができる。元素Yは、1≦b≦3(bは整数もしくは有理数)である酸化形態YOb、または任意の他の形態で混合物中に組み込まれてもよい。Yがアルミニウムである好ましい場合、アルミニウムの供給源は、好ましくは水酸化アルミニウムまたはアルミニウム塩、例えば塩化物、硝酸塩または硫酸塩、アルミン酸ナトリウム、アルミニウムアルコキシド、またはアルミナ自体であり、好ましくは、水和または水和可能な形態、例えばコロイド状アルミナ、擬ベーマイト、ガンマアルミナまたはアルファまたはベータアルミナ三水和物である。上記供給源の混合物を使用することもできる。
【0043】
使用される有機構造化剤Rは、ジヒドロキシド形態の1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサン、またはOH/Brモル比>50である、ジヒドロキシドおよびジブロミド形態の混合物である。好ましくは、Rは、ジヒドロキシド形態の1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンである。
【0044】
本発明に係る方法の工程(i)は、AFX構造ゼオライトの前駆体ゲルを得るために、1つ以上のアルカリおよび/またはアルカリ土類金属の少なくとも1つの供給源の存在下で、FAU構造ゼオライトと、任意に、XO2酸化物の供給源またはY2O3酸化物の供給源と、少なくとも1つの窒素含有有機化合物R(Rは、1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドである)とを含有する水性反応混合物を調製することにある。前記試薬の量は、AFX構造ゼオライトの結晶化を可能にする組成をこのゲルに与えるように、上記のように調整される。
【0045】
したがって、本発明に係る製造方法は、FAU構造ゼオライトを含む前駆体ゲルのSiO2/Al2O3比を、反応混合物内の、選択されたFAU構造ゼオライトと、任意の追加の供給源である、少なくとも1つの4価元素XO2の少なくとも1つの供給源および/または少なくとも1つの3価元素Y2O3の少なくとも1つの供給源と、に応じて調整することができる。
【0046】
AFX構造ゼオライトの結晶の形成に必要な時間および/または全結晶化時間を短縮するために、本発明に係る方法の前記工程i)の間に、反応混合物に、AFX構造ゼオライトの種を添加することが有利であり得る。前記種結晶はまた、不純物を損ない、前記AFX構造ゼオライトの形成を促進する。そのような種は、結晶性固体、特にAFX構造ゼオライトの結晶を含む。種結晶は一般に、反応混合物中に存在する無水形態の前記4価および3価元素(単数または複数)の供給源の全質量に対して0.01%~10%の割合で添加され、前記種結晶は、4価および3価元素の供給源の全質量において考慮されない。前記種は、上記で定義した、反応混合物の組成および/またはゲルの組成を決定するために、すなわち反応混合物の組成の種々のモル比を決定する際に考慮されない。
【0047】
混合工程i)は、均質な混合物が得られるまで、好ましくは10分間以上の時間、好ましくは当業者に公知の任意のシステムにより、低剪断速度または高剪断速度で撹拌しながら行われる。
【0048】
工程i)の終わりに、均質な前駆体ゲルが得られる。
【0049】
AFX構造ゼオライトの結晶の大きさを制御するために、水熱結晶化の前に、本発明に係る方法の前記工程i)の間に、反応混合物の熟成を行うことが有利であり得る。前記熟成はまた、不純物を損ない、前記AFX構造ゼオライトの形成を促進する。本発明に係る方法の前記工程i)の間における反応混合物の熟成は、撹拌しながら、または撹拌せずに、室温または20℃~80℃の温度において、有利には30分間~24時間の間、行うことができる。
【0050】
本発明に係る方法の工程(ii)によれば、工程(i)の終わりに得られる前駆体ゲルは、前記AFX構造ゼオライトが形成されるまで、120℃~250℃の温度で4時間~12時間の間行われる、自生圧力下での水熱処理に供される。
【0051】
前駆体ゲルは、有利には、AFX構造ゼオライトが完全に結晶化するまで、任意に、ガス、例えば窒素を添加することによって、好ましくは120℃~250℃、好ましくは150℃~230℃の温度で、自生反応圧力下、水熱条件下に置かれる。
【0052】
結晶化の達成に必要な時間は、4時間~12時間、好ましくは12時間未満、好ましくは5時間~10時間、より好ましくは5時間~8時間と様々である。
【0053】
反応は一般に、撹拌しながら、または撹拌せずに、好ましくは撹拌しながら行われる。使用され得る攪拌システムは、当業者に公知の任意のシステム、例えば、対向ブレードを有する傾斜ブレード、攪拌ターボミキサーまたはアルキメデスのスクリューである。
【0054】
反応の終わりに、本発明に係る製造方法の前記工程ii)を行った後、AFX構造ゼオライトから形成される固相を、好ましくは、濾別し、洗浄した後、乾燥する。乾燥は一般に、20℃~150℃、好ましくは60℃~100℃の温度で、5~24時間に亘って行われる。
【0055】
続いて、乾燥ゼオライトは、有利には、焼成されてもよい。焼成されたAFX構造ゼオライトは、一般にX線回折によって分析され、この技術はまた、本発明に係る方法によって得られる前記ゼオライトの純度を決定することを可能にする。
【0056】
非常に有利には、本発明に係る方法は、任意の他の結晶相または非晶質相を含まないAFX構造ゼオライトの形成をもたらす。得られるAFXゼオライトは、90%を超える、好ましくは95%を超える、非常に好ましくは97%を超える、さらにより好ましくは99.8%を超える純度を有する。乾燥工程後の、前記AFX構造ゼオライトは、焼成およびイオン交換のような後続の工程へ向けた準備が整う。これらの工程には、当業者に知られている任意の従来の方法を使用することができる。
【0057】
乾燥後および焼成前に得られる前記AFX構造ゼオライトの強熱減量は、一般に5~18質量%である。本発明によれば、強熱減量(LOI)は、固体化合物、固体化合物またはペーストの混合物(本発明の場合、好ましくは前記製造されたAFXゼオライト)が、(マッフル炉型の)静的オーブン中、1000℃で2時間の熱処理の間に経験する、初期の形態での固体化合物、固体化合物の混合物、またはペーストの混合物の質量に対する(本発明の場合、好ましくは試験された乾燥AFXゼオライトの質量に対する)、質量損失割合を表す。強熱減量は一般に、固体中に含まれる溶媒(水など)の損失に相当するが、鉱物固体成分中に含まれる有機化合物の除去にも相当する。
【0058】
本発明に係る方法により得られるAFX構造ゼオライトを焼成する工程は、好ましくは、450℃~700℃の温度で、2~20時間の間行われる。
【0059】
焼成工程の終わりに得られるAFX構造ゼオライトは、いかなる有機種も、特に有機構造化剤Rも含まない。
【0060】
前記焼成工程の終わりに、X線回折は、本発明に係る方法によって得られる固体が実際にAFX構造ゼオライトであることを確認することを可能にする。得られる純度は、好ましくは99.8%を超える。この場合、得られる固体は、少なくとも表1に記録されたラインを含むX線回折パターンを有する。好ましくは、X線回折パターンが、表1に記録されたものよりも有意な強度を有する(すなわち、バックグラウンドノイズの約3倍を超える強度を有する)他のラインを含まない。
【0061】
この回折パターンは、銅のKα1放射線(λ=1.5406Å)を用いて、従来の粉末法を利用する回折装置による放射線結晶学的解析によって得られる。角度2θで表される回折ピークの位置に基づいて、試料に特有の格子面間隔dhklを、ブラッグの法則を用いて算出する。dhklに係る測定誤差Δ(dhkl)は、2θの測定に割り当てられる絶対誤差Δ(2θ)の関数として、ブラッグの法則によって計算される。一般に、±0.02°に等しい絶対誤差Δ(2θ)が受け入れられる。dhklの各々の値に割り当てられる相対強度Irelは、対応する回折ピークの高さに従って測定される。本発明に係るAFX構造結晶性固体のX線回折パターンは、少なくとも表1に示すdhkl値におけるラインを含む。dhkl値の列において、格子間間隔の平均値は、オングストローム(Å)で示されている。これらの値の各々には、±0.6Å~±0.01Åの測定誤差Δ(dhkl)が割り当てられなければならない。
【0062】
AFX構造ゼオライトのSiO2/Al2O3比は、一般に4.00~100、好ましくは4.00~60、非常に好ましくは6.00~60である。
【0063】
【0064】
ここで、VS=非常に強い;S=強い;m=中程度;mw=中程度に弱い;w=弱い;vw=非常に弱い、である。相対強度Irelは、相対強度スケールに関連して与えられ、ここで、値100は、X線回折パターンのうち、最も強いラインに割り当てられる:vw<15;15≦w<30;30≦mw<50;50≦m<65;65≦S<85;VS≧85。
【0065】
表1:焼成されたAFX構造結晶性固体のX線回折パターンで測定されたdhklの平均値および相対強度
【0066】
X線蛍光分光法(XFS)は、物質の物理的性質、X線蛍光を用いた化学分析技術である。これにより、ベリリウム(Be)から始まる化学元素の大部分を、数ppm~100%に亘る濃度範囲で分析することができ、正確かつ再現性のある結果が得られる。X線は、試料中の原子を励起するために使用され、それにより、原子は、存在する各元素のエネルギー特性を有するX線を放出する。次いで、これらのX線の強度およびエネルギーを測定して、物質中の元素の濃度を決定する。
【0067】
本発明に係る方法によって得られるAFX構造ゼオライトのプロトン化形態を得ることも有利である。前記プロトン化形態は、酸、特に塩酸、硫酸または硝酸などの強鉱酸、または塩化アンモニウム、硫酸アンモニウムもしくは硝酸アンモニウム(ammonium chloride, sulfate or nitrate)などの化合物とのイオン交換を行うことによって得ることができる。前記イオン交換は、前記AFX構造ゼオライトを、イオン交換溶液と共に1回以上、懸濁液中に配置することによって行うことができる。前記ゼオライトは、イオン交換の前または後に、あるいは、2つのイオン交換工程の間に焼成されてもよい。ゼオライトの多孔内に含まれる有機物を除去し、それによりイオン交換を促進させるために、ゼオライトは、イオン交換の前に焼成することが好ましい。
【0068】
本発明の方法によって得られるAFX構造ゼオライトは、イオン交換後に、精製および石油化学の分野における触媒用の酸性固体として使用することができる。それはまた、吸収剤として、またはモレキュラーシーブとして使用されてもよい。
【実施例】
【0069】
本発明を以下の例によって説明するが、これらは決して限定的なものではない。
【0070】
例1:1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシド(構造化剤R)の調製
50gの1,6-ジブロモヘキサン(0.20モル、99%、Alfa Aesar)を、50gのN-メチルピペリジン(0.51モル、99%、Alfa Aesar)および200mLのエタノールを含む1L丸底フラスコに入れる。反応媒体を撹拌し、5時間還流する。次いで、混合物を室温まで冷却し、次いで濾過する。混合物を300mLの冷ジエチルエーテルに注ぎ、形成された沈殿を濾過し、100mLのジエチルエーテルで洗浄する。得られた固体をエタノール/エーテル混合物中で再結晶する。得られた固体を真空下で12時間乾燥させる。71gの白色固体が得られる(すなわち、収率80%)。
【0071】
生成物は、予想される1H-NMRスペクトルを有する。1H-NMR(D2O,ppm/TMS):1.27(4H,m);1.48(4H,m);1.61(4H,m);1.70(8H,m);2.85(6H,s);3.16(12H,m)。
【0072】
18.9gのAg2O(0.08モル、99%、Aldrich)を、調製した構造化剤1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジブロミド30g(0.07モル)および脱イオン水100mLを含む250mLテフロン(登録商標)ビーカーに入れる。反応媒体を、光の非存在下で12時間撹拌する。次いで、混合物を濾過する。得られた濾液は、1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドの水溶液からなる。この種の分析は、ギ酸を標準物質として使用するプロトンNMRによって行われる。
【0073】
例2:本発明によるAFX構造ゼオライトの製造
例1に従って調製した1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドの水溶液(18.36質量%)33.37gを、37.15gの脱イオン水と、室温で撹拌しながら混合する。1.72gの水酸化ナトリウム(98質量%、Aldrich)を、室温で撹拌しながら、上記混合物に溶解する。得られた懸濁液が均質になったらすぐに、7.79gのFAU構造ゼオライト(CBV720、SiO2/Al2O3=33.52、Zeolyst、LOI=6.63%)を注ぎ始め、得られた懸濁液を室温で30分間攪拌し続ける。AFX構造ゼオライトの形成を促進するために、0.646gのAFX構造ゼオライトの種(CBV720ゼオライトの質量に対して10%)を合成混合物に添加し、5分間撹拌し続ける。次いで、反応混合物を、撹拌しながら(200rpm)、室温で24時間熟成させる工程に供する。前駆体ゲルのモル組成は、以下のとおりである:1 SiO2:0.0298 Al2O3:0.18 R:0.20 Na2O:34 H2O、すなわち、SiO2/Al2O3比は33.52である。次いで、前駆体ゲルを、均質化後に、4つの傾斜ブレードを有する撹拌システムを備えた160mLステンレス鋼反応器に移す。反応器を閉じ、次いで、自生圧力下、200rpmで撹拌しながら、180℃まで5℃/分で温度上昇させ、5時間加熱して、AFX構造ゼオライトを結晶化させる。得られた結晶生成物を濾別し、脱イオン水で洗浄し、次いで100℃で一晩乾燥する。乾燥固体の強熱減量は14.82%である。次いで、固体をマッフル炉に導入し、焼成工程を実施する:焼成サイクルは、200℃まで1.5℃/分の温度上昇、200℃で2時間保持するホールド、550℃まで1℃/分の上昇、続いて550℃で12時間保持するホールド、次いで室温に戻すことを含む。
【0074】
焼成した固体生成物をX線回折によって分析したところ、99質量%を超える純度を有するAFX構造ゼオライトからなると同定された。焼成した固体について得られたX線回折パターンを
図2に示す。走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた、焼成したAFX構造の固体の写真を
図3に示す。XRFにより決定された生成物のSiO
2/Al
2O
3モル比は11.42である。
【0075】
例3:本発明によるAFX構造ゼオライトの製造
例1に従って調製した1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドの水溶液(18.36質量%)29.3gを、41.73gの脱イオン水と、室温で撹拌しながら混合する。0.764gの水酸化ナトリウム(98質量%、Aldrich)を、室温で撹拌しながら、上記混合物に溶解する。続いて、Al2O3(非晶質ゲル)/Al2O3(FAU)モル比35.27に相当する、0.675gの非晶質水酸化アルミニウムゲル(非晶質Al(OH)3ゲル、58.55質量%のAl2O3、メルク)を合成混合物と混合し、これを室温で0.5時間攪拌し続ける。得られた懸濁液が均質になったらすぐに、7.56gのFAU構造ゼオライト(CBV780、SiO2/Al2O3=98.22、Zeolyst、LOI=8.52%)を注ぎ始め、得られた懸濁液を室温で30分間攪拌し続ける。AFX構造ゼオライトの形成を促進するために、0.614gのAFX構造ゼオライトの種(CBV780ゼオライトの質量に対して10%)を合成混合物に添加し、これを5分間撹拌し続ける。次いで、反応混合物を、撹拌しながら(200rpm)、室温で24時間熟成させる工程に供する。前駆体ゲルのモル組成は、以下のとおりである:1 SiO2:0.05 Al2O3:0.167 R:0.093 Na2O:36.73 H2O、すなわち、SiO2/Al2O3比は20である。次いで、前駆体ゲルを、均質化後に、4つの傾斜ブレードを有する撹拌システムを備えた160mLステンレス鋼反応器に移す。反応器を閉じ、次いで、自生圧力下、200rpmで撹拌しながら、180℃まで5℃/分で温度上昇させ、5時間加熱して、AFX構造ゼオライトを結晶化させる。得られた結晶生成物を濾別し、脱イオン水で洗浄し、次いで100℃で一晩乾燥する。乾燥固体の強熱減量は14.69%である。次いで、固体をマッフル炉に導入し、焼成工程を実施する:焼成サイクルは、200℃まで1.5℃/分の温度上昇、200℃で2時間保持するホールド、550℃まで1℃/分の上昇、続いて550℃で12時間保持するホールド、次いで室温に戻すことを含む。
【0076】
焼成した固体生成物をX線回折によって分析したところ、99質量%を超える純度を有するAFX構造ゼオライトからなると同定された。焼成した固体について得られたX線回折パターンを
図2に示す。走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られた、焼成したAFX構造固体の写真を
図4に示す。XRFにより決定された生成物のSiO
2/Al
2O
3モル比は14.05である。
【0077】
例4:本発明によるAFX構造ゼオライトの製造
例1に従って調製した1,6-ビス(メチルピペリジニウム)ヘキサンジヒドロキシドの水溶液(18.36質量%)28.35gを、41.22gの脱イオン水と、室温で撹拌しながら混合する。1.26gの水酸化ナトリウム(98質量%、Aldrich)を、室温で撹拌しながら、上記混合物に溶解する。次いで、5.74gのAerosil 380シリカ(100質量%、Degussa)を、撹拌しながら少量ずつ注ぐ。得られた懸濁液が均質になったらすぐに、3.43gのFAU構造ゼオライト(CBV600、Zeolyst、SiO2/Al2O3=5.48、LOI=12.65%)を注ぎ始め、得られた懸濁液を室温で5分間攪拌し続ける。次いで、反応混合物を、撹拌しながら(200rpm)、室温で3時間熟成させる工程に供する。SiO2(Aerosil)/SiO2(FAU)モル比は2.65である。得られた前駆体ゲルは、以下のモル組成を有する:1 SiO2:0.05 Al2O3:0.125 R:0.12 Na2O:27.55 H2O、すなわち、SiO2/Al2O3比は20である。0.79gのAFX構造ゼオライトの種(無水CBV600ゼオライトおよびAerosil 380シリカの質量に対して8.7%)を、攪拌しながら、前駆体ゲルに加える。次いで、AFXゼオライトの種を含有する前駆体ゲルを、4つの傾斜ブレードを有する撹拌システムを備えた160mLステンレス鋼反応器に移す。反応器を閉じ、次いで、自生圧力下、200rpmで撹拌しながら、190℃まで5℃/分で温度上昇させ、7時間加熱して、AFX構造ゼオライトを結晶化させる。得られた固体を濾別し、脱イオン水で洗浄し、次いで、100℃で一晩乾燥する。乾燥固体の強熱減量は12.6%である。次いで、固体をマッフル炉に導入し、焼成工程を実施する:焼成サイクルは、200℃まで1.5℃/分の温度上昇、200℃で2時間保持するホールド、580℃まで1℃/分の上昇、続いて580℃で10時間保持するホールド、次いで室温に戻すことを含む。
【0078】
焼成した固体生成物をX線回折によって分析したところ、99質量%を超える純度を有するAFX構造ゼオライトからなると同定された。焼成した固体について得られたX線回折パターンを
図2に示す。XRFにより決定された生成物のSiO
2/Al
2O
3モル比は11.2である。
【国際調査報告】