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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-17
(54)【発明の名称】持続放出製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/198 20060101AFI20220610BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220610BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220610BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220610BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220610BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220610BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220610BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K47/38
A61K47/34
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562148
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(85)【翻訳文提出日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 US2020028624
(87)【国際公開番号】W WO2020214879
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/836,256
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520019827
【氏名又は名称】ホフマン・テクノロジーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ロスマン,ジョン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA54
4C076BB01
4C076CC01
4C076EE24
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE48
4C076FF04
4C076FF31
4C206AA01
4C206AA10
4C206FA53
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA72
4C206NA12
4C206ZA02
4C206ZC20
4C206ZC41
(57)【要約】
本発明は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬組成物及びその方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬、特にα-メチル-パラ-チロシンの持続放出製剤に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む制御放出製剤。
【請求項2】
前記制御放出製剤が持続放出製剤である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の溶解プロフィールを変更するために構成された遅延賦形剤をさらに含む、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記遅延賦形剤が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、微結晶性セルロース、コーンスターチ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアセテートフタレート、ポリエチレングリコール、ゼイン、ポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、及びそれらの混合物から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-パラ-チロシンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がメチロシン又はα-メチル-L-チロシンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がα-メチル-D-チロシンである、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がチロシン誘導体である、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
前記チロシン誘導体が、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-4 ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート H-D-Tyr(TBU)-アリルエステルHCl、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ジエチル 2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-tyr-OMe HCl、H-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-3,5-ジヨード-tyr-OMe HCl、H-D-tyr-OMe HCl、D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-チロシン-ome HCl、メチル D-チロシネートヒドロクロリド、H-D-tyr-OMe・HCl、D-チロシンメチルエステルHCl、H-D-Tyr-OMe-HCl、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)メチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、3-クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-Tyr(3,5-I)-OSu、Fmoc-tyr(3-NO)-OH、α-メチル-L-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-パラ-チロシン、又はそれらの組合せである、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
充填剤をさらに含み、前記充填剤が、クエン酸アセチルトリエチル(ATEC)、クエン酸アセチルトリ-n-ブチル(ATBC)、アスパルテーム、ラクトース、アルギネート、炭酸カルシウム、カーボポール、カラギーナン、セルロース、セルロースアセテートフタレート、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デキストロース、セバシン酸ジブチル、エチルセルロース、フルクトース、ジェランガム、ベヘン酸グリセリル、グアガム、ラクトース、乳酸ラウリル、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ステアリン酸マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、メチルセルロース、微結晶性セルロース、メタクリレート、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポビドン、セラック、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン、スクロース、トリアセチン、クエン酸トリエチル、植物性脂肪酸、キサンタンガム、及びキシリトールから選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
1日2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、及び週1回から選ばれる剤形に構成された、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が150~500mgの量で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
前記製剤が有効量の一つ又は複数の別の治療薬剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
前記別の薬剤が、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、グルココルチコイド、カンナビノイド、又はそれらの組合せである、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つがバソプレシン類似体である、請求項13に記載の製剤。
【請求項16】
バソプレシン類似体がデスモプレシンである、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
前記一つ又は複数の別の薬剤の少なくとも一つが神経調節薬である、請求項13に記載の製剤。
【請求項18】
神経調節薬がGABAである、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
神経調節薬がアセチルコリンを増強する、請求項17に記載の製剤。
【請求項20】
神経調節薬が、リバスチグミン、又はピロカルピン、又は類似の薬剤である、請求項17に記載の製剤。
【請求項21】
前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がラセミ体のα-メチル-パラ-チロシンであり、前記一つ又は複数の別の薬剤がデスモプレシン及びGABAを含む、請求項13に記載の製剤。
【請求項22】
前記抗うつ薬が、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬、又はそれらの組合せである、請求項14に記載の製剤。
【請求項23】
前記抗うつ薬が、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、ベンラファキシン、又はそれらの組合せである、請求項14に記載の製剤。
【請求項24】
請求項1に記載の医薬製剤をそれを必要とする患者に投与することを含む治療法。
【請求項25】
チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を有効量の賦形剤と混合して混合物を形成し、そして該混合物を単位剤形に構成することを含む、請求項1に記載の医薬製剤の製造法。
【請求項26】
ワックスマトリックス中に分散されたチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む制御放出医薬製剤であって、前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、α-メチル-DL-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-L-チロシン、又はそれらの組合せである制御放出製剤。
【請求項27】
ポリマーマトリックス中に分散されたチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む制御放出医薬製剤であって、前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、α-メチル-DL-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-L-チロシン、又はそれらの組合せである制御放出製剤。
【請求項28】
カプセル化形態中に分散されたチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む制御放出医薬製剤であって、前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が、α-メチル-DL-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-L-チロシン、又はそれらの組合せを含む制御放出製剤。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[0001]本願は、2019年4月19日出願の米国仮出願第62/836,256号に基づく優先権を主張し、その開示内容は引用によってその全文を本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬組成物及びその方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬、特にα-メチル-パラ-チロシンの持続放出製剤に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]チロシンヒドロキシラーゼ(チロシン 3-モノオキシゲナーゼ)は、アミノ酸のL-チロシンからL-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)への変換を触媒する役割を担う酵素である。この酵素は、分子酸素(O)と、鉄(Fe2+)及びテトラヒドロビオプテリンを補因子として用いてその変換を行う。
【0004】
[0004]チロシンヒドロキシラーゼの阻害は、チロシンヒドロキシラーゼによって合成される前駆体L-ドーパ(L-3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン)の不足により、ドーパミン及びノルエピネフリンの枯渇を招きうる。
【0005】
[0005]様々なチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬、例えばα-メチル-L-チロシン(メチロシン)は、様々な疾患及び障害の治療のために当該技術分野ではよく知られている。α-メチル-パラ-チロシン(α-メチル-DL-チロシン又はAMPTとしても知られる)は、現在、がん及び自閉症の治療に向けて開発中である。
【0006】
[0006]チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は市販されているが、当業者は持続放出製剤を全く開発してこなかった。今日まで、α-メチル-パラ-チロシンを含め、いずれのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬についても持続放出製剤は存在しない。
【0007】
[0007]そこで、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の持続放出製剤を求めるニーズが存在する。
【発明の概要】
【0008】
[0008]一側面において、本発明は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む制御放出医薬製剤を提供する。一例において、制御放出製剤は持続放出製剤である。持続放出製剤は、前記チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の溶解プロフィールを変更するために構成された遅延賦形剤を含みうる。遅延賦形剤の例は、これらに限定されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、微結晶性セルロース、コーンスターチ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアセテートフタレート、ポリエチレングリコール、ゼイン、ポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、及びそれらの混合物などでありうる。特別な態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬はラセミ体のα-メチル-パラ-チロシンである。
【0009】
[0009]別の側面において、本発明は、本発明の制御放出製剤の製造法も提供し、該方法は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を有効量の賦形剤と混合して混合物を形成し、そして該混合物を単位剤形に構成することを含む。
【0010】
[0010]さらに別の側面において、本発明は、本発明の制御放出製剤をそれを必要とする患者に投与することを含む治療法も提供する。
【0011】
[0011]一定の態様において、制御放出医薬製剤は、ワックスマトリックス中に分散された、α-メチル-パラ-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-L-チロシン、又はそれらの組合せを含む。
【0012】
[0012]様々な態様において、制御放出医薬製剤は、ポリマーマトリックス中に分散された、α-メチル-パラ-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-L-チロシン、又はそれらの組合せを含む。
【0013】
[0013]他の態様において、制御放出医薬製剤は、カプセル化形態の中に分散された、α-メチル-パラ-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-L-チロシン、又はそれらの組合せを含む。
【0014】
[0014]本発明のその他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明、実施例及び図面から明らかになるであろう。しかしながら、以下の詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好適な態様を示してはいるが、この詳細な説明から本発明の精神及び範囲内で様々な変更及び修正が当業者には明白であるから、説明のためだけに提供されていることは理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0015]本発明の主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細な説明を参照することにより、より容易に理解できるであろう。本発明は、本明細書中に記載及び/又は示されている特定の生成物、方法、条件又はパラメーターに限定されないこと、そして本明細書中で使用されている用語はほんの一例として特定の態様を説明するためのものであり、特許請求されている本発明を制限することを意図したものでないことは理解されるはずである。
【0016】
[0016]本明細書においては別途定義されない限り、本願との関連で使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解されている意味を有するものとする。さらに、文脈によって別段の定めがある場合を除き、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0017】
[0017]上記及び本開示全体を通じて使用されている下記の用語及び略語は、別途記載のない限り、下記の意味を有すると理解されるものとする。
【0018】
[0018]本開示においては、文脈上明白に他の場合を示していない限り、単数形の“a”、“an”及び“the”はその複数形の指示対象を含み、特定の数値への参照は少なくともその特定の値を含む。従って、例えば、“ある一つの化合物”への参照は、一つ又は複数のそのような化合物及び当業者に公知のその等価物などへの参照でもある。“複数”という用語は、本明細書においては、一つより多いことを意味する。値の範囲が表現されている場合、別の態様は、一つの特定値から及び/又は他の特定値までを含む。
【0019】
[0019]同様に、値が先行詞“約”の使用によって近似値として表現されている場合、その特定値は別の態様を形成すると理解される。全ての範囲は包括的かつ結合可能である。本開示の文脈において、ある特定量に“約”が付いている場合、その量は記載されている量の±20%以内、又は好ましくは記載量の±10%以内、又はさらに好ましくは記載量の±5%以内を意味する。従って、例えば、“重量で約70%のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬”を含む医薬製剤への言及(参照)は、該製剤中のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の量が重量で70%±14%(すなわち56%~84%)、又は好ましくは70%±7%(すなわち63%~77重量%)、又はさらに好ましくは70%±4%(すなわち66%~74重量%)であることへの言及(参照)と理解される。
【0020】
[0020]本明細書において、用語“治療”又は“療法”(ならびにそれらの異なる語形)は、予防的(preventative, prophylactic)、治癒的、又は緩和的治療を含む。本明細書において、“治療する”という用語は、状態、疾患又は障害の少なくとも一つの有害作用又は悪影響又は症状を緩和又は軽減することを含む。
【0021】
[0021]用語“立体異性体”は、同一の化学組成を有するが、空間における原子又は基の配置に関して異なる化合物のことを言う。用語“エナンチオマー”は、重ね合わせることができない互いの鏡像である立体異性体のことを言う。
【0022】
[0022]“対象”、“個人”、及び“患者”という用語は、本明細書中では互換的に使用され、本発明による医薬組成物による治療(予防的治療を含む)が提供される動物、例えばヒトを指す。本明細書中で使用されている“対象”という用語は、ヒト及びヒト以外の動物を指す。“ヒト以外の動物”及び“ヒト以外の哺乳動物”という用語は本明細書においては互換的に使用され、全ての脊椎動物、例えばヒト以外の霊長類(特に高等霊長類)、ヒツジ、イヌ、齧歯類(例えばマウス又はラット)、モルモット、ヤギ、ブタ、ネコ、ウサギ、ウシ、ウマなどの哺乳動物、及び、爬虫類、両生類、ニワトリ、及びシチメンチョウなどの非哺乳動物を含む。
【0023】
[0023]本明細書中で使用されている用語“阻害薬”は、タンパク質、ポリペプチド又は酵素の発現又は活性を阻害するが、必ずしも発現及び/又は活性の完全阻害を意味しない化合物を含む。どちらかと言えば、阻害は、タンパク質、ポリペプチド又は酵素の発現及び/又は活性を、所望の効果を生じるのに足る程度及び期間阻害することを含む。
【0024】
[0024]様々な態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の制御放出を提供する医薬製剤を提供する。そのような製剤は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の放出を変更するために、様々な方法及び様々な剤形(例えば錠剤及びビーズ)で構成できる。例えば、制御放出医薬製剤の一つのタイプは持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬医薬製剤である。持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬医薬製剤は、他の点では同等の即時放出製剤と比べてインビボ条件下で製剤の溶解速度を低下させる(それによってチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の溶解及び/又は放出を遅くする)ように選択されて製剤中に配合された遅延賦形剤(放出調節剤とも呼ばれる)及び/又は充填剤などの様々な賦形剤を含有しうる。
【0025】
[0025]用語“即時放出”は、本明細書においては、活性成分(例えばチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬)の溶解プロフィールを変更しないように構成された製剤を特定するために使用される。例えば、即時放出医薬製剤は、溶解プロフィールを変更する目的で含められた成分を含有しない医薬製剤でありうる。従って、即時放出製剤は、標準溶解試験で薬物の実質的に完全な溶解のために30分未満しかかからない薬物製剤を含む。“標準溶解試験”とは、該用語が本明細書において使用される場合、米国薬局方第24版(2000)(USP24)、pp.1941-1943に従って、そこに記載されている装置2を用いて主軸回転速度100rpm及び37℃の水の溶解媒体で実施される、又はそれと実質的に同等の他の試験条件を用いて実施される試験である。
【0026】
[0026]用語“制御放出”は、本明細書においては、その通常の意味で使用されており、それらの溶解プロフィールを変更するための成分と組み合わされた医薬製剤を含む。“持続放出”製剤は制御放出製剤の一種で、活性成分の溶解プロフィールが他の点では同等の即時放出製剤よりも長時間にわたって延長されるように、成分が医薬製剤に添加されている。従って、制御放出製剤は、標準溶解試験のインビボ放出プロフィールを代表する条件で、薬物の実質的に完全な溶解に30分以上かかる薬物製剤を含む。
【0027】
[0027]用語“経口送達可能”は、本明細書においては、その通常の意味で使用されており、経口(peroral)及び口腔内(intra-oral)(例えば舌下又は頬内(buccal))投与を含む経口(oral)投与に適切な薬物製剤を含む。好適な組成物は、主に経口投与用、例えば嚥下用に適応されている。好適な経口送達可能組成物の例は、錠剤及びカプセルのような、典型的には水又はその他の飲用液体を用いて丸ごと又は砕いて嚥下される個別の(discrete)固形品を含む。
【0028】
[0028]インビボ“吸収”という用語は、本明細書においては、その通常の意味で使用されており、血流に入るチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬のパーセンテージへの参照を含む。これは、従来、1回量のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の経口投与に関する標準薬物動態(PK)研究のデータから算出される。PKデータは、標準的な統計実践に従って、生物学的データに見られる通常の変動を受けることは理解されるであろう。
【0029】
[0029]本明細書における“対象”は、任意の種の動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。本明細書において特定の薬物又は化合物(例えばチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬)が“適応される”と言われる対象における状態及び障害は、その薬物又は化合物が規制当局によって明示的に承認されている状態及び障害だけに限定されず、その薬物又は化合物による治療に適していると医師が承知している又は合理的に信じるその他の状態及び障害も含む。
【0030】
チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬
[0030]チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許出願公開第2015/0290279号、同第2015/0216827号、同第2015/0111937号、同第2015/0111878号、同第2013/0184214号、及び同第20130183263号;米国特許第8,481,498号、同第9,308,188号、及び同第9,326,962号;ならびにPCT特許出願公開第2015061328号に十分に記載されている。これらは引用によってそれらの全文を本明細書に援用する。当業者に公知の任意の適切なチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が使用できる。
【0031】
[0031]一定の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は、チロシン誘導体である。チロシン誘導体は、立体異性体及びエナンチオマーを含む様々な異性体の形態で存在できる。チロシン誘導体は、例えば、L型又はD型のいずれでも存在できる。チロシン誘導体は、例えば、ラセミ体でも存在できる。
【0032】
[0032]代表的なチロシン誘導体は、例えば、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-4 ヒドロキシフェニル)プロパノエート、D-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート H-D-チロシン(tBu)-アリルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4,5-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-[(2-クロロ-6-フルオロフェニル)メトキシ]フェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2-クロロ-3,4-ジメトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-5-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、ジエチル 2-(アセチルアミノ)-2-(4-[(2-クロロ-6-フルオロベンジル)オキシ]ベンジルマロネート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(2,6-ジクロロ-3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロパノエート、メチル (2R)-2-アミノ-3-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパノエート、H-DL-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、H-3,5-ジヨード-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、H-D-3,5-ジヨード-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、H-D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-チロシン-メチルエステルヒドロクロリド、メチル D-チロシネートヒドロクロリド、H-D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、D-チロシンメチルエステルヒドロクロリド、H-D-チロシンメチルエステル-ヒドロクロリド、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、(2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)メチルエステルヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アミノ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、メチル (2R)-2-アザニル-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパノエートヒドロクロリド、3-クロロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシン、3-ニトロ-L-チロシンエチルエステルヒドロクロリド、DL-m-チロシン、DL-o-チロシン、Boc-チロシン(3,5-I)-OSu、Fmoc-チロシン(3-NO)-OH、α-メチル-L-チロシン、α-メチル-D-チロシン、及びα-メチル-パラ-チロシンの一つ又は複数を含む。本発明の一定の態様において、チロシン誘導体は、以下に示すようなα-メチル-L-チロシンである。
【0033】
【化1】
[0033]他の態様において、チロシン誘導体はα-メチル-D-チロシンである。他の態様において、チロシン誘導体は以下に示すようなラセミ体のα-メチル-パラ-チロシンである。
【0034】
【化2】
[0034]α-メチル-パラ-チロシンは、本明細書においては、DNP-01又はLI:79又はAMPT又はα-メチル-DL-チロシンとも呼ばれる。言い換えれば、α-メチル-パラ-チロシンの別名は、例えば、DNP-01、LI:79、AMPT、及びα-メチル-DL-チロシンなどである。
【0035】
[0035]特別な態様において、チロシン誘導体は、α-メチル-L-チロシン又はα-メチル-パラ-チロシンの構造変異体である。α-メチル-L-チロシン又はα-メチル-パラ-チロシンの構造変異体は、当該技術分野では周知であり、例えば米国特許第4,160,835号に十分に記載されている。前記特許は引用によってその全文を本明細書に援用する。
【0036】
[0036]一態様において、本発明のチロシン誘導体は、式:
【0037】
【化3】
を有するアリールアラニン化合物である。
【0038】
[0037]上記式中、Rは、水素、メチル又はエチルエステル基、又は1~4個の炭素原子のアルキルであり;Rは、水素、低級アルキル、低級アルケン、スクシンイミド、又は1~4個の炭素原子のアルキルであり;Rは、下記一般式:
【0039】
【化4】
の置換ベンゼン環であり;
[0038]上記式中、Yは、パラ位に位置し、水素、ヒドロキシ、メチルエーテル、ジメチルエーテル、トリメチルエーテル、又は非置換もしくはハロゲン置換ベンジルであり;Y、及びYは、同じであるか又は異なり、Y、及びYの片方又は両方はメタ位か又はオルト位のいずれかに位置し、Y、及びYは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、メチルエーテル、又はニトロであり;そしてRは、水素、アセチル、tert-ブチルオキシカルボニル又はフルオレニルメチルオキシカルボニルである。
【0040】
[0039]一部の態様において、Y及びYは、同じであるか又は異なり、水素、シアノアミノ、カルボキシル、シアノ、チオカルバモイル、アミノメチル、グアニジノ、ヒドロキシ、メタンスルホンアミド、ニトロ、アミノ、メタンスルホニルオキシ、カルボキシメトキシ、ホルミル、メトキシ、及び置換又は非置換5-又は6-員の、炭素及び1個又は複数個の窒素、硫黄又は酸素原子を含有するヘテロサイクリック環から選ばれ、そのようなヘテロサイクリック環の具体例は、ピロール-1-イル、2-カルボキシピロール-1-イル、イミダゾール-2-イルアミノ、インドール-1-イル、カルバゾール-9-イル、4,5-ジヒドロ-4-ヒドロキシ-4-トリフルオロメチルチアゾール-3-イル、4-トリフルオロメチルチアゾール-2-イル、イミダゾール-2-イル及び4,5-ジヒドロイミダゾール-2-イルであるが、(a)Y及びYは両方ともヒドロキシではあり得ず、(b)Y及びYは両方とも水素ではあり得ず、そして(c)Y及びYの一方が水素の場合、他方はヒドロキシルではあり得ない。
【0041】
[0040]一例において、Rは、式:
【0042】
【化5】
を有する置換又は非置換ベンゾヘテロサイクリック環である。
【0043】
[0041]そのベンゾヘテロサイクリック環は、インドリン-5-イル、1-(N-ベンゾイルカルバムイミドイル)-インドリン-5-イル、1-カルバムイミドイルインドリン-5-イル、1H-2-オキシインドール-5-イル、インドール-5-イル、2-メルカプトベンズイミダゾル-5(6)-イル、2-アミノベンズイミダゾール-5(6)-イル、2-メタンスルホンアミド-ベンズイミダゾール-5(6)-イル、1H-ベンゾオキサゾール-2-オン-6-イル、2-アミノベンゾチアゾール-6-イル、2-アミノ-4-メルカプトベンゾチアゾール-6-イル、2,1,3-ベンゾチアジアゾール-5-イル、1,3-ジヒドロ-2,2-ジオキソ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-5-イル、1,3-ジヒドロ-1,3-ジメチル-2,2-ジオキソ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール-5-イル、4-メチル-2(1H)-オキソキノリン-6-イル、キノキサリン-6-イル、2-ヒドロキシキノキサリン-6-イル、2-ヒドロキシキノキサリン-7-イル、2,3-ジヒドロキシキノキサリン-6-イル及び2,3-ジヒドロ-3(4H)-オキソ-1,4-ベンゾオキサジン-7-イルからなる群から選ばれる。
【0044】
[0042]別の例において、Rは、式:
【0045】
【化6】
を有する置換又は非置換ヘテロサイクリック環である。
【0046】
[0043]そのヘテロサイクリック環は、5-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン-2-イル、2-ヒドロキシピリダ-4-イル、2-アミノピリダ-4-イル、2-カルボキシピリダ-4-イル又はテトラゾロ[1,5-a]ピリダ-7-イルからなる群から選ばれる。
【0047】
[0044]一つの特別な態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬はアクアヤマイシン(aquayamycin)である。一例において、アクアヤマイシンは以下に示す式の化合物である。
【0048】
【化7】
[0045]別の特別な態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬はオウデノン(oudenone)である。一例において、オウデノンは以下に示す式の化合物である。
【0049】
【化8】
[0046]当業者に公知の他の適切なチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬も使用できる。他のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の例は、例えば、これらに限定されないが、シクロヘキシミド、アニソマイシン(anisomycin)、3-ヨード-L-チロシン、ピラトリオン(pyratrione)、カテコール又はトリフェノール環系を有するフェニルカルボニル誘導体、例えば、フェネチルアミン及び没食子酸誘導体、4-イソプロピルトロポロン、2-(4-チアゾリル)ベンズイミダゾール、8-ヒドロキシキノリン、o-フェナントロリン、5-ヨード-8-ヒドロキシキノリン、ビリルビン、2,9-ジメチル-1,10-フェナントロリン、α-α’-ジピリジル、ジベンゾ[f,h]キノキサリン、2,4,6-トリピリジル-s-トリアジン、エチル 3-アミノ-4H-ピロロ-イソオキサゾール-5(6H)-カルボキシレート、α-ニトロソ-β-ナフトール、ナトリウムジエチルジチオカルバメート、エチレンジアミン四酢酸などである(R Hochster,Metabolic Inhibitors V4:A Comprehensive Treatise 52 Elsevier(2012)参照)。
【0050】
持続放出製剤
[0047]一部の態様において、持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬医薬製剤は、一つ又は複数の遅延賦形剤を含む。この文脈において“遅延”賦形剤という用語は本明細書においてはその通常の意味で使用されており、薬物の溶解プロフィールを制御、例えば、他の点では同等の遅延賦形剤を含有しない医薬製剤と比べて標準溶解試験でチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の溶解を遅くするように構成された(例えば製剤に配合された)賦形剤を含む。薬学的に許容可能な遅延賦形剤の例は、これらに限定されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、微結晶性セルロース、コーンスターチ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアセテートフタレート、ポリエチレングリコール、ゼイン、ポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリド、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、及びそれらの混合物などである。一部の態様において、遅延賦形剤は、持続放出ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、微結晶性セルロース、コーンスターチ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアセテートフタレート、ポリエチレングリコール、ゼイン、ポリ-DL-ラクチド-コ-グリコリド(PLGA)、及びそれらの混合物の少なくとも一つを含む。遅延賦形剤は本明細書においては放出調節剤と呼ばれることもある。
【0051】
[0048]一定の態様において、制御放出医薬製剤は、ワックスマトリックス中に分散された、α-メチル-パラ-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-L-チロシン、又はそれらの組合せを含む。
【0052】
[0049]一部の態様において、ワックスマトリックスは水に不溶性で水中浸食性の遅延賦形剤を含む。例えば、カルナバワックス、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ポリエチレングリコール硬化ヒマシ油、キャスターワックス、ポリエチレングリコールモノステアレート、及びトリグリセリドなどであるが、これらに限定されない。
【0053】
[0050]様々な態様において、制御放出医薬製剤は、ポリマーマトリックス中に分散された、α-メチル-パラ-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-L-チロシン、又はそれらの組合せを含む。
【0054】
[0051]一部の態様において、ポリマーマトリックスは水に不溶性で水中不活性の遅延賦形剤を含む。例えば、エチルセルロース、ポリエチレン、メチルアクリレート-メタクリレートコポリマー、及びポリ塩化ビニルなどであるが、これらに限定されない。
【0055】
[0052]他の態様において、ポリマーマトリックスは親水性で水溶性の遅延賦形剤を含む。例えば、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(“ナトリウムCMC”)などであるが、これらに限定されない);非セルロース多糖類(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、寒天、カラギーン、キサンタンガム、アラビアゴム、及びカライア(caraia)ゴム;ガラクトマンノース、グアガム、アルファロバ(alfarroba)ガムなどであるが、これらに限定されない);及びアクリル酸ポリマー(カルボキシポリメチレンなどであるが、これに限定されない)などであるが、これらに限定されない。
【0056】
[0053]他の態様において、制御放出医薬製剤は、カプセル化形態中に分散された、α-メチル-DL-チロシン、α-メチル-D-チロシン、α-メチル-L-チロシン、又はそれらの組合せを含む。
【0057】
[0054]マトリックス系において、薬物は、ポリ塩化ビニルなどの水不溶性ポリマーで形成された多孔質マトリックス内に固体粒子として分散される。
【0058】
[0055]様々な態様において、マトリックス系は、これらに限定されないが、ワックス、グリセリド、ステアリン酸、セルロース材料などの緩徐浸食マトリックスでありうる。一部の態様において、持続作用を有するように意図された薬物の一部は、脂質又はセルロース材料と組み合わせた後に顆粒化される。
【0059】
[0056]一定の態様において、薬物は不活性プラスチックマトリックスに包埋されてもよい。態様において、薬物は、これらに限定されないが、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリアミド又はポリメタクリレートなどの不活性不溶性マトリックスと共に造粒できる。
【0060】
[0057]一定の態様において、薬物は、分散流体による浸透を遅らせるポリマーなどの材料でその表面をコーティングすることもできる。コーティングは、マイクロカプセル化、すなわち比較的薄いコーティングを固体の小粒子又は液体及び分散物の液滴に適用する方法によって実施できる。態様において、ポリマーは、これらに限定されないが、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、エチルセルロース、ポリエチレン、ポリメタクリレート、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)、亜硝酸セルロース、シリコーン、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などである。
【0061】
[0058]賦形剤を持続放出製剤の溶解プロフィールを制御するように構成できる様々な方法がある。例えば、賦形剤を、医薬製剤からの薬物の放出を制御するために有効な量で薬物(例えばチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬)と均質混合することができる。そのような混合物は、例えば乾燥混合物、湿潤混合物、錠剤、カプセル、ビーズなどの様々な形態でありうる。そして様々な方法で形成できる。次いで、得られた混合物は錠剤又はカプセルなどの所望の剤形に形成できる。
【0062】
[0059]制御放出のために有効な遅延賦形剤の量は、本明細書中に提供されているガイダンスによって決定できる。例えば、一部の態様において、持続放出医薬製剤は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%(w/w)の遅延賦形剤を含む。一部の態様において、医薬製剤中の遅延賦形剤の濃度は、約5-95、10-80、20-70、25-65、35-55、40-50、5-20、10-30、20-40、30-50、40-60、50-70、60-80、70-95%(w/w)の範囲でありうる。
【0063】
[0060]持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬医薬製剤の溶解プロフィールの様々な溶解特性は、その中に配合される遅延賦形剤の適切な構成によって制御することができる。好ましくは、溶解プロフィールは、同等の即時放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬製剤の溶解速度より遅い溶解速度を含む。例えば、一部の態様において、医薬製剤は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と、インビトロ放出プロフィールを下記の薬物放出範囲内、すなわち1時間で0-40%放出;4時間で10-60%放出;8時間で20-80%放出;12時間で≧70%放出の範囲内に制御するように構成された少なくとも一つの遅延賦形剤とを含む。
【0064】
[0061]例示的態様において、持続放出医薬製剤は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と、患者への投与時に同等の条件下で同等の即時放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の平均遊離血清チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬Cmax値よりも低い(例えば少なくとも約5%低い)平均遊離血清チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬Cmax値を提供するように構成された少なくとも一つの遅延賦形剤とを含む。例えば、遅延賦形剤は、インビボにおける遊離チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の血清プロフィールを下記のごとく制御するように構成できる。すなわち、大きな、定常状態での血清濃度曲線下面積で示されるチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬バイオアベイラビリティであって、同用量の従来の即時放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬製剤と実質的に同じかまたはそれよりも大きいバイオアベイラビリティ、又は同用量の従来の即時放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬製剤と比較して定常状態でより低いCmaxが存在するような制御である。
【0065】
[0062]本明細書中に記載の持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬医薬製剤は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与が適応される状態又は障害を有する対象に、1日1回又は2回から2~7日間に1回の範囲の投与スケジュール下での経口投与に有用であるように製剤化できる。従って、一部の態様において、医薬製剤は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の毎日又は毎週投与に適切な制御剤形を含む。
【0066】
[0063]一定の持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬製剤は、一つ又は複数の驚くべきそして予期せぬ特徴及び利益を示すことができる。例えば、持続放出剤形は、典型的には、例えば迅速な代謝、排出又はその他の枯渇経路のために血漿中半減期が短い薬物の投与間の間隔を長くすることを求められる。
【0067】
[0064]態様において、治療法は、本明細書中に記載の持続放出医薬製剤を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0068】
[0065]一部の態様において、持続放出医薬製剤は、カプセル、錠剤又は経口投与に適切なその他の固体剤形に形成される。好適な態様において、持続放出医薬製剤は、錠剤又はカプセルのような個別の固形投与単位として製剤化され、そこではチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬又はその塩は粒子としてその中に存在し、一つ又は複数の薬学的に許容可能な賦形剤と共に製剤化されている。一部の態様において、賦形剤は、少なくとも一部は、本明細書中に記載された所望のプロフィールと一致する放出プロフィール及び/又はPKプロフィールを提供するように選ばれた遅延賦形剤である。
【0069】
[0066]一部の態様において、選択された特定の固体剤形は、特定の持続放出製剤について本明細書中に定義されているような放出及び/又はPKプロフィールを達成する限り、重要でない。一部の態様において、該プロフィールは一つ又は複数の遅延賦形剤又は放出調節剤を用いて達成される。一部の態様において、使用に適切な放出調節剤はワックス又はポリマーマトリックスなどで、それと共に及び/又はその中にチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が分散されている;放出制御層又はコーティングが投与単位全体又はチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬含有粒子、顆粒、ビーズ又は投与単位内の領域を包囲している。
【0070】
[0067]持続放出医薬製剤は、錠剤及びビーズのような様々な剤形に構成でき;遅延賦形剤(放出調節剤とも呼ばれる)のような様々な充填剤及び賦形剤を含有でき;そして様々な方法で製造できる。当業者であれば、本明細書中に提供されている記載によって導かれる常用実験によって適切な構成を決定することができる。
【0071】
[0068]持続放出医薬製剤は充填剤を含有しうる。適切な充填剤の例は、これらに限定されないが、METHOCEL、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、コーンスターチ、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVPなどである。
【0072】
[0069]持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬医薬製剤は他の賦形剤も含有しうる。適切な賦形剤の例は、これらに限定されないが、クエン酸アセチルトリエチル(ATEC)、クエン酸アセチルトリ-n-ブチル(ATBC)、アスパルテーム、ラクトース、アルギネート、炭酸カルシウム、カーボポール、カラギーナン、セルロース、セルロースアセテートフタレート、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デキストロース、セバシン酸ジブチル、エチルセルロース、フルクトース、ジェランガム、ベヘン酸グリセリル、グアガム、ラクトース、乳酸ラウリル、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ステアリン酸マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、メチルセルロース、微結晶性セルロース、メタクリレート、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポビドン、セラック、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン、スクロース、トリアセチン、クエン酸トリエチル、植物性脂肪酸、キサンタンガム、キシリトールなどである。
【0073】
[0070]一部の態様において、持続放出医薬製剤は、例えば、重量で約5%、10%、20%、30%、40%、又は50%から約60%、70%、80%、90%又は95%のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む。例えば、一部の態様において、持続放出医薬製剤は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95%(w/w)のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を含む。一部の態様において、医薬製剤中のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の濃度は、約5-95、10-80、20-70、25-65、35-55、40-50、5-20、10-30、20-40、30-50、40-60、50-70、60-80、70-95%(w/w)の範囲でありうる。
【0074】
[0071]持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬医薬製剤の溶解速度は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬がいかに迅速に血流への吸収に利用可能になるかを決定するため、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬のバイオアベイラビリティを制御する。溶解速度は剤形のサイズ及び組成に依存する。一部の態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬製剤の溶解速度は、製剤の追加成分を変更することによって変えることができる。デンプン又はコーンスターチ、又は架橋PVPのような崩壊剤は、所望の場合、溶解性を増大させるために使用できる。可溶化剤もチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬製剤の溶解性を増大するために使用できる。一部の態様において、代替結合剤、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、PVP、ガム、キサンチンなども溶解速度を高めるために使用できる。
【0075】
[0072]一部の態様において、製剤の溶解速度は、製剤をより疎水性にする成分を加えることによって低下させることもできる。例えば、エチルセルロース、ワックス、ステアリン酸マグネシウムなどのポリマーを添加すると溶解速度を下げることができる。
【0076】
[0073]一部の態様において、持続放出医薬製剤の溶解速度は、剤形中のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の約25%が最初の1時間以内に、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の約60%が最初の6時間以内に、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の約80%が最初の9時間以内に、そしてチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の実質的に全部が最初の12時間以内に溶解するような速度である。他の態様において、持続放出医薬製剤の溶解速度は、剤形中のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の約35%が最初の1時間以内に、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の約85%が最初の6時間以内に、そしてチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の実質的に全部が最初の9時間以内に溶解するような速度である。さらに他の態様において、剤形の持続放出医薬製剤の溶解速度は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の約45%が最初の1時間以内に、そしてチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の実質的に全部が最初の6時間以内に溶解するような速度である。
【0077】
[0074]製剤の溶解速度は剤形をコーティングすることによって遅くすることもできる。コーティングの例は、腸溶コーティング、持続放出ポリマーなどである。
【0078】
[0075]持続放出医薬製剤は、溶解に例えば約2、4、6、又は8時間から約15、20、又は25時間かかりうる。好ましくは、製剤は約3、4、5、又は6時間から約8、9、又は10時間の溶解速度を有する。
【0079】
[0076]別の態様において持続放出医薬製剤の製造法を提供する。該方法は、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬を賦形剤及び/又は充填剤と混合して混合物を形成し、そして該混合物から適切な剤形(例えば、錠剤、カプセル、ビーズなど)を形成することを含む。一部の態様において、製剤の製造法はさらに、剤形の形成前に別の賦形剤及び/又は充填剤を混合物に添加することを含む。充填剤及び賦形剤は本明細書中に記載の通りである。態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬は充填剤及び/又は賦形剤と混合されて湿潤混合物を形成する。次に、該湿潤混合物は粒子又はビーズに形成でき、次いでそれを乾燥できる。乾燥生成物は次に、経口送達用に錠剤化されるか又はゼラチンカプセルに封入されうる。
【0080】
[0077]態様において、医薬製剤は持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬と充填剤とを含む。一部の態様において、該製剤はさらに賦形剤を含む。一部の態様において、充填剤はポリマーである。一部の態様において、賦形剤はポリマーである。一部の態様において、充填剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、コーンスターチ、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、及び架橋PVPからなる群から選ばれる。一部の態様において、賦形剤は、クエン酸アセチルトリエチル(ATEC)、クエン酸アセチルトリ-n-ブチル(ATBC)、アスパルテーム、ラクトース、アルギネート、炭酸カルシウム、カーボポール、カラギーナン、セルロース、セルロースアセテートフタレート、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、デキストロース、セバシン酸ジブチル、エチルセルロース、フルクトース、ジェランガム、ベヘン酸グリセリル、グアガム、ラクトース、乳酸ラウリル、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、ステアリン酸マグネシウム、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、メチルセルロース、微結晶性セルロース、メタクリレート、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポビドン、セラック、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン、スクロース、トリアセチン、クエン酸トリエチル、植物性脂肪酸、キサンタンガム、及びキシリトールからなる群から選ばれる。
【0081】
[0078]本発明は、本発明の化合物と一つ又は複数の薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物も提供する。“薬学的に許容可能な担体”は、使用される投与量及び濃度で、それに暴露される細胞又は哺乳動物に対して非毒性である任意の賦形剤を含む。医薬組成物は一つ又は追加の治療薬を含んでいてもよい。
【0082】
[0079]“薬学的に許容可能な”とは、健全な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合う過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題合併症なしにヒト及び動物の組織との接触に適切な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形のことを言う。
【0083】
[0080]薬学的に許容可能な担体は、溶媒、分散媒、緩衝液、コーティング、抗菌及び抗真菌薬、湿潤剤、保存剤、キレート化剤、抗酸化剤、等張剤及び吸収遅延剤などである。
【0084】
[0081]薬学的に許容可能な担体は、水;生理食塩水:リン酸緩衝生理食塩水;デキストロース;グリセロール;アルコール、例えばエタノール及びイソプロパノール;リン酸、クエン酸及びその他の有機酸;アスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又はイムノグロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン又はリシン;単糖類、二糖類、及びその他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、又はデキストリン;EDTA;塩形成対イオン、例えばナトリウム;及び/又はノニオン界面活性剤、例えばTWEEN、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICS;等張剤、例えば糖、ポリアルコール、例えばマンニトール及びソルビトール、及び塩化ナトリウム;ならびにそれらの組合せなどである。
【0085】
[0082]本発明の範囲内で、開示化合物は薬学的に許容可能な塩の形態で製造できる。“薬学的に許容可能な塩”とは、親化合物がその酸塩又塩基塩の製造により改変されている開示化合物の誘導体のことを言う。薬学的に許容可能な塩の例は、これらに限定されないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などである。薬学的に許容可能な塩は、例えば非毒性の無機酸又は有機酸から形成された親化合物の従来型の非毒性塩又は第四級アンモニウム塩などである。例えば、そのような従来型の非毒性塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩;及び酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2-アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から製造される塩などである。これらの生理学的に許容可能な塩は、当該技術分野で公知の方法、例えば、遊離アミン塩基を過剰の酸と共に水性アルコール中に溶解することにより、又は遊離カルボン酸を水酸化物などのアルカリ金属塩基又はアミンで中和することにより製造される。
【0086】
[0083]本明細書中に記載の化合物は代替の形態で製造されてもよい。例えば、多くのアミノ含有化合物は酸付加塩として使用又は製造できる。多くの場合、そのような塩は化合物の単離及び取扱い特性を改良する。例えば、試薬、反応条件などに応じて、本明細書中に記載の化合物は、例えば、それらの塩酸塩又はトシル酸塩として使用又は製造できる。同形の結晶形、全てのキラル形及びラセミ体、N-オキシド、水和物、溶媒和物、及び酸塩水和物も本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0087】
[0084]本発明の一定の酸性又は塩基性化合物は双性イオンとして存在しうる。遊離酸、遊離塩基及び双性イオンを含む全ての形態の化合物が本発明の範囲内に含まれると想定される。アミノ基とカルボキシ基の両方を含有する化合物は、しばしばそれらの双性イオン形と平衡状態で存在することは当該技術分野で周知である。従って、例えばアミノ基及びカルボキシ基の両方を含有する本明細書中に記載のいずれの化合物も、それらの対応する双性イオンへの参照も含む。
【0088】
[0085]製造時、担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒でありうる。適正な流動度は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持できる。本明細書中に開示された治療法で使用するのに適切な製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,第16版(1980)に記載されている。
【0089】
[0086]一部の態様において、組成物は等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを含む。注射用組成物の吸収延長は、組成物に吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによって達成できる。
【0090】
[0087]状態又は疾患を治療するための本発明の組成物の有効用量は、多くの異なる因子、例えば、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか又は動物であるか、その他の投薬、及び治療が予防的治療であるか又は治癒的治療であるかなどによって変動する。通常、患者はヒトであるが、遺伝子組換え(トランスジェニック)哺乳動物を含むヒト以外の哺乳動物も治療できる。治療投与量は、安全性及び有効性を最適化するために、当業者に公知の常法を用いて漸増(titrated)することができる。
【0091】
[0088]本発明の医薬組成物は“治療的有効量”を含みうる。“治療的有効量”とは、所望の治療結果を達成するために必要な投与量及び期間での有効な量のことを言う。分子の治療的有効量は、個人の病状、年齢、性別、及び体重、ならびに個人に所望の反応を引き出す分子の能力などの因子に応じて変動しうる。治療的有効量は、治療上の有益効果が、分子の何らかの有毒又は有害作用を上回る量でもある。
【0092】
[0089]一側面において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与量は約1mg~約4gの範囲でありうる。特別な態様において、チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の投与量は約3mg~約1000mgの範囲でありうる。一部の適切な態様において、薬物は分割用量で提供される。本発明の一部の適切な態様において、25mgのチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬が投与される。一例において、60mgのチロシン誘導体が投与できる。
【0093】
[0090]別の側面において、疾患の治療に有用な別の薬剤の投与量は、治療上有効な又は臨床的に許容可能な量を含みうる。別の例において、別の薬剤の投与量は、本明細書中に記載のチロシンヒドロキシラーゼ阻害薬の効果を補完する又は増強する量である。
【0094】
[0091]本明細書において、用語“治療する”及び“治療”とは、予防的手段を含む療法的治療を指し、その目的は、疾患又は状態に関連する望ましくない生理学的変化を予防又は遅らせる(軽減する)ことである。有益な又は所望の臨床結果は、これらに限定されないが、症状の緩和、疾患又は状態の程度の減退、疾患又は状態の安定化(すなわち疾患又は状態が悪化しない)、疾患又は状態の進行の遅延又は緩徐化、疾患又は状態の改善又は緩和、及び疾患又は状態の寛解(部分的であれ全体的であれ)などで、検出可能か検出不能かは問わない。治療が必要な人は、既に疾患又は状態を有する者のほか、疾患又は状態に罹りやすい者又は疾患又は状態を予防すべき者などである。
【0095】
[0092]本発明の組成物は、1回だけ投与されても、又は複数回投与されてもよい。複数回投与の場合、組成物は、例えば、1日3回、1日2回、1日1回、2日に1回、週2回、毎週、2週間に1回、又は毎月投与されうる。
【0096】
[0093]投与値は、緩和される状態の種類及び重症度、又は使用される持続放出技術の形態に応じて変動しうることに注意する。さらに、任意の特定対象に対する特定の投与計画は、個人の必要性及び組成物を投与又は投与を管理する人の専門的判断に応じて経時的に調整されるべきであること、そして本明細書中に示された投与範囲は例に過ぎず、特許請求された組成物の範囲又は実施を制限する意図はないことも理解されるべきである。
【0097】
[0094]対象への“投与”は、任意の特定送達系に限定されず、経口投与(例えばカプセル又は錠剤で)を含みうるが、これに限定されない。宿主への投与は、単回投与又は反復投与で、そして任意の様々な生理学的に許容可能な塩の形態で、及び/又は医薬組成物の一部として許容可能な薬学的担体及び/又は添加剤(前述)と共に行うことができる。繰り返しになるが、生理学的に許容可能な塩の形態及び標準的な医薬製剤技術は当業者に周知である(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.参照)。
【0098】
[0095]チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬治療による患者の服薬順守は持続放出製剤の投与によって大幅に改善できる。好適な持続放出チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬製剤の重要な特徴は、血清中の遊離画分チロシンヒドロキシラーゼ阻害薬のより効果的な制御である。
【0099】
[0096]一部の態様において、当該医薬製剤は有効量の一つ又は複数の別の治療薬剤を含む。別の薬剤の例は、例えば、これらに限定されないが、抗うつ薬(例えば、選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)、セロトニン-ノルエピネフリン再取込み阻害薬(SNRI)、三環系抗うつ薬、セルトラリン、フルオキセチン、パロキセチン、ベンラファキシン)、ベンゾジアゼピン、グルココルチコイド、カンナビノイド又はそれらの組合せなどである。別の薬剤の追加例は、例えば、これらに限定されないが、バソプレシン類似体(例えばデスモプレシン)、神経調節薬(neuromodulating agent:例えば、GABA、アセチルコリンを増強する薬剤)、リバスチグミン、又はピロカルピン、又は類似の薬剤などである。特別な態様において、一つ又は複数の別の治療薬剤は持続放出薬剤の形態でありうる。
【0100】
[0097]本明細書中に記載の製剤は、任意の適切な哺乳動物、例えば、サル及びヒトのような霊長類、ウマ、ウシ、ネコ、イヌ、ウサギ、ならびにラット及びマウスのような齧歯類を治療するために使用できる。一態様において、治療される哺乳動物はヒトである。
【0101】
[0098]本明細書中に引用されているすべての特許及び文献は、参照によってそれらの全文を本明細書に援用する。
【0102】
[0099]以下の実施例は、前述の開示内容を補足するため、そして本明細書中に記載された主題をより良く理解するために提供される。これらの実施例は記載された主題を制限すると見なされるべきではない。本明細書中に記載された実施例及び態様は、説明のみを目的としたものであること、そしてそれを踏まえれば様々な修正又は変更が当業者には明白であり、それらも本発明の真の範囲内に含まれ、その範囲から逸脱することなくなされうることは理解されるはずである。
【実施例
【0103】
実施例1
[00100]下記の製剤法は、徐放性α-メチル-パラ-チロシン製剤の製造例である。湿式造粒、押出、及び流動床乾燥法が、持続放出α-メチル-DL-チロシン粒子又はペレットの製造に利用できる。
【0104】
[00101]湿潤顆粒を製造するために、α-メチル-パラ-チロシン、微結晶性セルロース(Avicel PH102)及びメチルセルロース(Methocel A15 LV)を様々な割合で高剪断造粒機に入れ、15分間混合する。脱イオン(DI)水を徐々に加え、湿潤顆粒をさらに5~10分間混合する。
【0105】
[00102]次に、ペレットを流動床乾燥機を用いて乾燥させる。乾燥ペレットを流動床乾燥機から取り出し、異なるスクリーンに通すことによってサイジングする。
【0106】
[00103]次に、乾燥ペレットを硬質ゼラチンカプセルに封入する。
【0107】
実施例2
[00104]PLGAコポリマーを用意する。α-メチル-パラ-チロシンをPLGAコポリマーに配合する。製剤は、錠剤又はカプセルの形態にできる。
【0108】
[00105]実施例1又は2に記載の製剤を対象に経口投与する。
【0109】
[00106]血清を採取して分析する。α-メチル-パラ-チロシン組成物は、>95%の処置患者で2時間以内に治療効果を達成でき、治療効果を少なくとも24時間維持する。
【0110】
[00107]該組成物は、薬物送達ビヒクルから、25%以下の変動と70%を超えるカプセル化効率で、活性薬を一貫して放出することを可能にしうる。該組成物は、活性薬を薬物送達ビヒクルから全放出期間を通じて>85%無傷で放出しうる。
【0111】
[00108]本発明の好適な態様を記載してきたが、本発明は、その通りの態様に限定されず、当業者によって様々な変更及び修正が添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲又は精神から逸脱することなくその中で可能であることは理解されるはずである。
【国際調査報告】