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特表2022-529198インサイチュ光学及び電気化学の分析方法、及びそのための電池セル測定モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(54)【発明の名称】インサイチュ光学及び電気化学の分析方法、及びそのための電池セル測定モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220613BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220613BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/04 Z
G01N21/47 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021536346
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(85)【翻訳文提出日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 KR2018016375
(87)【国際公開番号】W WO2020130201
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0165533
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509242864
【氏名又は名称】コリア・ベーシック・サイエンス・インスティテュート
(71)【出願人】
【識別番号】512328201
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティチュート オブ スタンダーズ アンド サイエンス
(71)【出願人】
【識別番号】521394624
【氏名又は名称】ザ インダストリー アンド アカデミック コーぺレーション イン チュンナム ナショナル ユニバーシティ(アイエーシー)
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】ムン ジュンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョン チョルホ
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュハン
(72)【発明者】
【氏名】チェ キョンスン
(72)【発明者】
【氏名】キム チェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソン ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】シン ホソン
(72)【発明者】
【氏名】パク ソンファ
【テーマコード(参考)】
2G059
5H028
5H030
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB08
2G059EE02
2G059EE03
2G059GG01
2G059JJ01
2G059KK01
5H028AA07
5H028AA10
5H028BB11
5H028BB17
5H028CC08
5H028HH10
5H030AA10
5H030AS20
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF51
(57)【要約】
インサイチュ光学及び電気化学分析用電池セル測定モジュールは、上部に結合部が形成された下部ハウジングと、下部ハウジング上に結合され、上部に電池セルが収容される電池セル収容空間が形成され、電池セル収容空間と連通され、結合部が内部に配される結合ホールを含む固定部と、固定部の電池セル収容空間から、結合ホールを介し、結合部まで連結される高さ制御部と、下部ハウジングに脱着可能に付着され、固定部、高さ制御部を覆い包むように配され、透明窓が具備された上部ハウジングと、上面に開口部を含む電池セルであり、開口部が透明窓と垂直オーバーラップされる位置に配されるように、電池セル収容空間内に載置される電池セルと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に結合部が形成された下部ハウジングと、
前記下部ハウジング上に結合され、上部に電池セルが収容される電池セル収容空間が形成され、前記電池セル収容空間と連通され、前記結合部が内部に配される結合ホールを含む固定部と、
前記固定部の電池セル収容空間から、前記結合ホールを介し、前記結合部まで連結される高さ制御部と、
前記下部ハウジングに脱着可能に付着され、前記固定部、前記高さ制御部を覆い包むように配され、透明窓が具備された上部ハウジングと、
上面に開口部を含む電池セルであり、前記開口部が前記透明窓と垂直オーバーラップされる位置に配されるように、前記電池セル収容空間内に載置される前記電池セルと、を含むことを特徴とする電池セル測定モジュール。
【請求項2】
前記高さ制御部は、
上部に電池セルが配される天板本体と、
前記天板本体の下部に形成され、前記結合部に結合されるように形成される固定柱部と、を含み、
前記固定柱部を介し、前記高さ制御部の高さ調節が可能であることを特徴とする請求項1に記載の電池セル測定モジュール。
【請求項3】
前記電池セルは、
電池積層体収容空間を含む下部ケースと、
前記電池積層体収容空間内に配され、正極活物質が付着された正極集電部と、
前記電池積層体収容空間内に配され、負極活物質が付着された負極集電部と、
前記正極活物質と前記負極活物質との間に配される分離膜と、
前記電池積層体収容空間をカバーし、前記開口部が具備された上部ケースと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の電池セル測定モジュール。
【請求項4】
前記下部ハウジングに連結される下部接続部と、
前記上部ハウジングに連結される上部接続部と、をさらに含み、
前記電池セルの前記下部ケースは、前記高さ制御部、前記結合部及び前記下部ハウジングにより、前記下部接続部と電気的に連結され、
前記電池セルの前記上部ケースは、前記上部ハウジングを介し、前記上部接続部に電気的に連結されることを特徴とする請求項3に記載の電池セル測定モジュール。
【請求項5】
前記正極集電部は、前記開口部とオーバーラップされる位置に貫通ホールを含み、
前記正極活物質の上面が、前記貫通ホールと前記開口部とによって露出され、前記透明窓により、前記正極活物質の前記上面が観察されうるように配されることを特徴とする請求項3に記載の電池セル測定モジュール。
【請求項6】
前記正極集電部、前記正極活物質及び前記分離膜は、前記開口部とオーバーラップされる位置に貫通ホールを含み、
前記負極活物質の上面が、前記貫通ホールと前記開口部とによって露出され、前記透明窓により、前記負極活物質の前記上面が観察されうるように配されることを特徴とする請求項3に記載の電池セル測定モジュール。
【請求項7】
前記高さ制御部と前記電池セルとの間に配されるスペーサをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電池セル測定モジュール。
【請求項8】
電池セル測定モジュールを使用したインサイチュ光学及び電気化学の分析方法であり、
前記電池セル測定モジュールは、
上部に結合部が形成された下部ハウジングと、
前記下部ハウジング上に結合され、上部に電池セルが収容される電池セル収容空間が形成され、前記電池セル収容空間と連通され、前記結合部が内部に配される結合ホールを含む固定部と、
前記固定部の電池セル収容空間から、前記結合ホールを介し、前記結合部まで連結される高さ制御部と、
前記下部ハウジングに脱着可能に付着され、前記固定部、前記高さ制御部を覆い包むように配され、透明窓が具備された上部ハウジングと、
上面に開口部を含む電池セルであり、前記開口部が前記透明窓と垂直オーバーラップされる位置に配されるように、前記電池セル収容空間内に載置される前記電池セルと、を含み、
前記電池セル測定モジュールに、充電動作及び放電動作を行う段階と、
前記電池セル測定モジュールに、光測定サイクルを複数回遂行する段階と、を含み、
前記光測定サイクルは、
前記透明窓を介して観察される前記電池セルの第1部分に第1光を照射する段階と、
前記電池セルから散乱される第1光を検出する段階と、
前記透明窓を介して観察される前記電池セルの前記第1部分に、前記第1光とは異なる波長を有する第2光を照射する段階と、
前記電池セルから散乱される第2光を検出する段階と、を含むことを特徴とするインサイチュ光学及び電気化学の分析方法。
【請求項9】
前記第2光を照射する段階は、
前記透明窓を介して観察される前記電池セルの上面に沿い、第1スキャン幅ほど連続し、前記第2光を照射する段階を含むことを特徴とする請求項8に記載のインサイチュ光学及び電気化学の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサイチュ光学及び電気化学の分析方法、及びそのための電池セル測定モジュールに係り、さらに詳細には、充電及び放電が行われる間の電池セル内部の観察を介する電気化学的挙動分析が可能な電池セル測定モジュールと、それを利用したインサイチュ光学及び電気化学の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、小型モバイル機器、電気自動車のような多様な応用分野に、リチウムイオン電池を使用するための要求が増大するにつれ、多様な応用分野のための多様な要求条件により、リチウムイオン電池の性能を最適化させる必要性が提起されている。特に、大容量を有し、低価である新たな正極活物質候補物質及び負極活物質候補物質に係わる電気化学的特性研究が活発に進められている。しかし、新たな正極活物質及び負極活物質の一部は、充電及び放電による相転移特性と電気化学的性能との関係が明確に究明されておらず、そのような候補物質の性能改善及び商用化が困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的思想がなす技術的課題は、充電及び放電が行われる間の電池セル内部の観察を介する電気化学的挙動の精密な分析が可能な電池セル測定モジュールを提供することである。
【0004】
本発明の技術的思想がなす技術的課題は、前記電池セル測定モジュールを利用し、充電及び放電が行われる間の電池セル内部の観察を介する電気化学的挙動の精密な分析が可能なインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を達成するための本発明の技術的思想によるインサイチュ光学及び電気化学分析用電池セル測定モジュールは、上部に結合部が形成された下部ハウジングと、前記下部ハウジング上に結合され、上部に電池セルが収容される電池セル収容空間が形成され、前記電池セル収容空間と連通され、前記結合部が内部に配される結合ホールを含む固定部と、前記固定部の電池セル収容空間から、前記結合ホールを介し、前記結合部まで連結される高さ制御部と、前記下部ハウジングに脱着可能に付着され、前記固定部、前記高さ制御部を覆い包むように配され、透明窓が具備された上部ハウジングと、上面に開口部を含む電池セルであり、前記開口部が前記透明窓と垂直オーバーラップされる位置に配されるように、前記電池セル収容空間内に載置される前記電池セルと、を含む。
【0006】
例示的な実施形態において、前記高さ制御部は、上部に電池セルが配される天板本体と、前記天板本体の下部に形成され、前記結合部に結合されるように形成される固定柱部と、を含み、前記固定柱部を介し、前記高さ制御部の高さ調節が可能である。
【0007】
例示的な実施形態において、前記電池セルは、電池積層体収容空間を含む下部ケース、前記電池積層体収容空間内に配され、正極活物質が付着された正極集電部、前記電池積層体収容空間内に配され、負極活物質が付着された負極集電部、前記正極活物質と前記負極活物質との間に配される分離膜(separator)、及び前記電池積層体収容空間をカバーし、前記開口部が具備された上部ケースをも含む。
【0008】
例示的な実施形態において、前記下部ハウジングに連結される下部接続部と、前記上部ハウジングに連結される上部接続部と、をさらに含み、前記電池セルの前記下部ケースは、前記高さ制御部、前記結合部及び前記下部ハウジングにより、前記下部接続部と電気的に連結され、前記電池セルの前記上部ケースは、前記上部ハウジングを介し、前記上部接続部に電気的に連結されうる。
【0009】
例示的な実施形態において、前記正極集電部は、前記開口部とオーバーラップされる位置に貫通ホールを含み、前記正極活物質の上面が、前記貫通ホールと前記開口部とによって露出され、前記透明窓により、前記正極活物質の前記上面が観察されうるようにも配される。
【0010】
例示的な実施形態において、前記正極集電部、前記正極活物質及び前記分離膜は、前記開口部とオーバーラップされる位置に貫通ホールを含み、前記負極活物質の上面が、前記貫通ホールと前記開口部とによって露出され、前記透明窓により、前記負極活物質の前記上面が観察されうるようにも配される。
【0011】
例示的な実施形態において、前記高さ制御部と前記電池セルとの間に配されるスペーサをさらに含んでもよい。
【0012】
前記技術的課題を達成するための本発明の技術的思想による電池セル測定モジュールを使用したインサイチュ光学及び電気化学の分析方法において、前記電池セル測定モジュールは、上部に結合部が形成された下部ハウジングと、前記下部ハウジング上に結合され、上部に電池セルが収容される電池セル収容空間が形成され、前記電池セル収容空間と連通され、前記結合部が内部に配される結合ホールを含む固定部と、前記固定部の電池セル収容空間から、前記結合ホールを介し、前記結合部まで連結される高さ制御部と、前記下部ハウジングに脱着可能に付着され、前記固定部、前記高さ制御部を覆い包むように配され、透明窓が具備された上部ハウジングと、上面に開口部を含む電池セルであり、前記開口部が前記透明窓と垂直オーバーラップされる位置に配されるように、前記電池セル収容空間内に載置される前記電池セルと、を含み、前記電池セル測定モジュールに、充電動作及び放電動作を遂行する段階と、前記電池セル測定モジュールに、光測定サイクルを複数回遂行する段階と、を含み、前記光測定サイクルは、前記透明窓を介して観察される前記電池セルの第1部分に第1光を照射する段階と、前記電池セルから散乱される第1光を検出する段階と、前記透明窓を介して観察される前記電池セルの前記第1部分に、前記第1光とは異なる波長を有する第2光を照射する段階と、前記電池セルから散乱される第2光を検出する段階と、を含む。
【0013】
例示的な実施形態において、前記第2光を照射する段階は、前記透明窓を介して観察される前記電池セルの上面に沿い、第1スキャン幅ほど連続して、前記第2光を照射する段階をも含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明による電池セル測定モジュールは、例えば、グローブボックスのような調節された環境において、コインタイプの電池セルをまず形成した後、電池セル測定モジュールの電池セル収容空間内に電池セルを配し、高さ制御部を介し、高さを調節することにより、下部ハウジングと上部ハウジングとのいずれとも電池セルが密着固定されるように電池セル測定モジュールを容易に形成することができる。
【0015】
従って、電池セルの組み立て過程における、活物質または電解液の損傷が防止され、該電池セルは、電気的短絡のような危険性なしに、相対的に小さい抵抗を有するように容易に形成されうる。該電池セル測定モジュールの抵抗が低減されることにより、多様な電流条件において、所望する電気化学テスト(例えば、高い電流速度における充電及び放電)を行うのに適し、また商用電池セル内における電気化学的挙動と、電池セル測定モジュール内における電気化学的挙動との偏差が低減されもする(すなわち、商用電池セルにおける電気化学的挙動を精密に模写する(simulate)ことができる)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】例示的な実施形態によるインサイチュ光学測定システムを示す概路図である。
図2】例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを示す断面図である。
図3図2のCX部分の拡大図である。
図4】例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを示す断面図である。
図5】例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を示すフローチャートである。
図6】正極活物質の1回充電及び1回放電における電圧プロファイルを示すグラフである。
図7】正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧における光学イメージである。
図8】正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンシフトグラフである。
図9】負極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンイメージ分析グラフである。
図10】正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンイメージ分析グラフである。
図11】正極活物質の組成変化によるラマンイメージ分析グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の構成及び効果を十分に理解するために、添付図面を参照し、本発明の望ましい実施形態について説明する。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、さまざまな形態にも具現され、多様な変更を加えることができる。ただし、本実施形態に係わる説明は、本発明の開示を完全なものにし、本発明が属する技術分野の当業者に、発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。添付図面における構成要素は、説明の便宜のために、その大きさは、実際より拡大されて図示されており、各構成要素の比率は、誇張されていたり縮小されていたりもする。
【0018】
ある構成要素が他の構成要素の「上」にあるか、あるいは「接して」いると記載された場合、他の構成要素上に直接当接しているか、あるいは連結されてもいるが、中間に、さらに他の構成要素が存在しうると理解されなければならないのである。一方、ある構成要素が他の構成要素の「真上」にあるか、あるいは「直接接して」いると記載された場合には、中間にさらに他の構成要素が存在しないとも理解されるのである。構成要素間の関係について説明する他の表現、例えば、「~間に」と「直接~の間に」なども、同様に解釈されうる。
【0019】
第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうるが、前記構成要素は、前記用語によって限定されるものではない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用されうる。例えば、本発明の権利範囲を外れずに、第1構成要素は、第2構成要素とも命名され、類似して、第2構成要素も、第1構成要素とも命名される。
【0020】
単数の表現は、文脈上、明白に異なるように表現しない限り、複数の表現を含む。「含む」または「有する」のような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部分品、またはそれらの組み合わせが存在するということを指定するためのものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部分品、またはそれらの組み合わせが付加されうるとも解釈される。
【0021】
本発明の実施形態において使用される用語は、異なるように定義されない限り、当該技術分野において、当業者に一般的に知られた意味にも解釈される。
【0022】
以下、添付図面を参照し、本発明の望ましい実施形態について説明することにより、本発明について詳細に説明する。
【0023】
図1は、例示的な実施形態によるインサイチュ光学測定システム1を示す概路図である。図2は、例示的な実施形態による電池セル測定モジュール100を示す断面図であり、図3は、図2のCX部分の拡大図である。
【0024】
図1ないし図3を参照すれば、インサイチュ光学測定システム1は、光学分析ユニット(OMU)10、電気化学分析ユニット(ECU)20及び電池セル測定モジュール100を含んでもよい。
【0025】
光学分析ユニット10は、電池セル測定モジュール100内に含まれる電池セル140に対し、光学特性を分析することができる測定装置によっても構成される。例示的な実施形態において、光学分析ユニット10は、光学イメージ分析及びラマンシフト分析を行うようにも構成される。他の実施形態において、光学分析ユニット10は、それぞれ光学イメージ分析、ラマンシフト分析、PL(photoluminescence)特性分析が可能な複数の分析ユニットによっても構成される。
【0026】
例えば、光学分析ユニット10は、レーザを光源にし、電池セル140に光を照射し、電池セル140を介して反射される光を受光して感知することができるラマン分光器を含んでもよい。また、光学分析ユニット10は、光学顕微鏡をさらに含んでもよい。該光学顕微鏡は、電池セル140に光を照射し、電池セル140を介して反射される光を受光し、CCD(charge coupled device)カメラ(図示せず)を介し、電池セル140のイメージ情報を保存することができる。
【0027】
例えば、光学分析ユニット10は、光源12、光スプリッタ14、レンズ16及び検出器18をも含む。例えば、光源12は、レーザソースを含んでもよく、光源12からレーザが放出されうる。光スプリッタ14は、光源12から放出された光を反射させ、レンズ16に入射させることができる。レンズ16に入射された光が、電池セル測定モジュール100内の電池セル140にも入射される。電池セル140から散乱される光が、レンズ16及び光スプリッタ14を通過し、検出器18で受光されうる。検出器18は、カメラまたは分光計を含むものである。
【0028】
例示的な実施形態において、該光学顕微鏡が、電池セル測定モジュール100の測定領域SCAN WIDTH(図3)に光を照射し、前記測定領域のイメージを保存することができ、ラマン分光器が、前記測定領域内の複数の固定された測定位置に光を照射し、複数の固定された測定位置からのラマンシフト測定結果を獲得することができる。また、該ラマン分光器は、前記測定領域内の第1スキャン幅を有する測定ラインに沿って連続して配される測定位置に光を照射し、前記測定ラインからのラマンシフト測定結果を獲得することもできる。
【0029】
電気化学分析ユニット20は、電池セル測定モジュール100内に含まれる電池セル140に係わる電気化学的性能を分析することができる測定装置によっても構成される。例えば、電気化学分析ユニット20は、電池セル140に電気的に連結され、電池セル140の電圧及び電流を調節するか、あるいは電池セル140の電圧情報及び電流情報を記録するようにも構成される。
【0030】
例えば、電気化学分析ユニット20は、電池セル140に対する充電及び放電を含む電気化学サイクルを複数回駆動するようにも構成される。電池セル140に係わる充電サイクルにおいて、電池セル140に、既定の電流速度で電流を印加することができ、電流印加による電池セル140の電圧を測定して記録することができる。電池セル140の電圧が、既定のオフ電圧に逹するとき、電池セル140に係わる放電サイクルが開始され、既定の電流速度で放電電流が流れるときの電池セル140の電圧を測定して記録することができる。
【0031】
電池セル測定モジュール100は、透明窓176を含み、透明窓176を介し、電池セル140に光を照射し、電池セル140から反射される光を感知するようにも構成される。電池セル140は、コインタイプの商用電池のように、内部に正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜(separator)146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fを含むようにまず形成され、その後、電池セル140が、電池セル測定モジュール100内にも組み込まれる。電池セル140は、透明窓176とオーバーラップされる位置に配される開口部148UHをも含む。電池セル測定モジュール100は、透明窓176を介して観察可能な測定領域SCAN WIDTH(図3)内において、透明窓176とオーバーラップされる位置に配される開口部148UHを介して露出される正極活物質142AMの上面を観察するようにも構成される。開口部148UHを介して露出される正極活物質142AMの上面のうち一部分の領域を連続してスキャンすることにより、測定領域内の複数の固定された位置、または連続した測定ラインにおける光学イメージ分析及びラマン分析を容易に行うことができる。
【0032】
例示的な実施形態によれば、電気化学分析ユニット20を介し、電池セル140に係わる電気化学特性分析を行う間、光学分析ユニット10を介し、電池セル140の部分に係わるイメージ及びラマン分析を同時に行うことができる。それにより、関心の対象である正極活物質142AMにつき、充電及び放電の間に生じる前記活物質の電気化学的反応の究明、結晶相(crystalline phase)または結晶構造変化の観察、局所的領域の反応速度分析のような、電池セル140の電気化学的挙動に係わる総合的な分析が可能である。
【0033】
従来のインサイチュ電気化学セルにおいては、光学装備に固定された測定モジュール内に、正極電極、分離膜及び負極電極を順次に積層し、それらの積層体を同時にねじ方式で固定する測定モジュールが使用されるか、あるいはメッシュタイプの専用電極と専用分離膜とを使用する専用測定キットが使用された。
【0034】
ねじ方式の測定モジュールの場合、グローブボックスのような調節された環境(例えば、窒素雰囲気)において、前記積層体を形成し難いという問題があり、活物質及び電解液の酸化または損傷が生じてしまう。または、積層体をねじ方式で固定する段階において、電気的短絡が発生しやすく、ねじ方式で積層体を固定しても、光学装備との完全な電気的連結が提供され難く、積層体測定モジュールの抵抗が相対的に高いのである。従って、高い電流密度で電気化学的テストを行うのに適さず、テスト条件、及びテスト可能な活物質種類が制限されるという問題点が存在する。
【0035】
また、専用測定キットの場合、メッシュタイプの電極を使用する必要があり、新たな正極活物質及び負極活物質の一部、例えば、メッシュタイプの電極が不要な独立型(stand-alone type)のカルボオーガニック正極活物質のような場合、専用測定キットに適用し難いという問題がある。また、専用測定キットの場合、高さ調節が困難であり、専用測定キットの抵抗が相対的に高く、高い電流密度で電気化学的テストを行うのに適さない。従って、テスト条件、及びテスト可能な活物質種類が制限されるという問題点が存在する。
【0036】
しかし、本発明によれば、コインタイプの電池セル140をまず形成した後、電池セル測定モジュール100内に電池セル140を組み込み、透明窓176と開口部148UHとを介し、正極活物質142AMを観察したり測定したりすることができる。従って、グローブボックスのような調節された環境において、電池セル140を組み込むことができるので、活物質または電解液の損傷が防止されうる。また、電池セル140は、相対的に小さい抵抗を有することができるので、高い電流密度における電気化学テストを含め、多様な条件で電気化学テストを行うことができる。従って、電池セル140の充電段階及び放電段階で生じる電池セル140の電気化学的挙動につき、精密に測定したり分析したりすることができる。
【0037】
以下においては、図2及び図3を参照し、電池セル測定モジュール100の細部構造について詳細に説明する。
【0038】
電池セル測定モジュール100は、下部ハウジング110と、下部ハウジング110に脱着可能になるように付着される上部ハウジング170と、を含んでもよい。
【0039】
下部ハウジング110は、剛性を有する金属物質をも含む。例えば、下部ハウジング110は、腐食が生じないように、SUS材質によっても形成されるが、それに限定されるものではない。
【0040】
下部ハウジング110の上面中心部には、結合部112が配されうる。結合部112は、下部ハウジング110の上面より上側に突出されるようにも配される。例示的な実施形態において、結合部112は、下部ハウジング110と一体にも形成されるが、それに限定されるものではない。他の実施形態において、下部ハウジング110と結合部112は、螺合されうる。そのような場合、結合部112の外周面に、ねじ山(図示せず)をさらに含んでもよく、下部ハウジング110の結合部112と接する内側壁上に、ねじ山(図示せず)がさらに形成され、下部ハウジング110と結合部112とが螺合されうる。
【0041】
下部ハウジング110上には、電池セル収容空間120HAと結合ホール120HBとを含む固定部120が配されうる。固定部120は、結合ホール120HB内部に、結合部112が配されるように、下部ハウジング110上にも結合される。結合ホール120HBの上部において、電池セル収容空間120HAは、結合ホール120HBと連通されるようにも配される。電池セル収容空間120HAは、結合ホール120HBより、水平方向の幅がさらに広くも形成される。電池セル収容空間120HAの水平方向幅は、電池セル140の水平方向幅よりさらに広くも形成される。固定部120は、下部ハウジング110と上部ハウジング170との電気的絶縁のために、剛性を有する絶縁物質、例えば、セラミックス物質、エポキシのようなプラスチック物質を使用しても形成される。
【0042】
固定部120上には、高さ制御部130が配されうる。高さ制御部130は、天板本体130Tと固定柱部130Bとを含んでもよい。天板本体130T上には、電池セル140が配され、固定柱部130Bが、天板本体130T下部から垂直方向(すなわち下部ハウジング110の上面に垂直方向)にも延長される。固定柱部130Bは、固定部120の結合ホール120HB内部に配され、結合ホール120HB内部において、結合部112にも結合される。固定柱部130Bは、結合部112と螺合され、そのような場合、結合部112の内周面と、固定柱部130Bの外周面とに、ねじ山(図示せず)がそれぞれ配されうる。例えば、固定柱部130Bは、結合部112との結合程度により、高さ調節が可能であるが、それに限定されるものではない。高さ制御部130は、腐食が発生せず、電気伝導性を有するように、SUS材質によっても形成されるが、それに限定されるものではない。
【0043】
選択的に、スペーサ132が、高さ制御部130の天板本体130T上にも配される。高さ制御部130上に置かれる電池セル140の厚みが相対的に薄い場合、下部ハウジング110と上部ハウジング170との間に、電池セル140を固定密着させるために、スペーサ132が、天板本体130T上に選択的にも配される。スペーサ132は、腐食が発生せず、電気伝導性を有するように、SUS材質によっても形成されるが、それに限定されるものではない。
【0044】
高さ制御部130上(選択的に、スペーサ132上)には、電池セル140が配されうる。電池セル140は、コインタイプの電池セルでもある。例えば、電池セル140は、幅20mm、厚み16mmの2016タイプ商用コインセル、または幅20mm、厚み32mmの2032タイプ商用コインセルと同一サイズを有することができる。例えば、電池セル140が、2016タイプ商用コインセルと同一サイズを有するとき、スペーサ132が、高さ制御部130と電池セル140との間にも配される。
【0045】
電池セル140は、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fの電池積層体を含んでもよく、前記電池積層体が、下部ケース148Lの電池積層体収容空間(図示せず)内に配され、上部ケース148Uが下部ケース148Lをカバーすることができる。
【0046】
上部ケース148Uは、中央領域に開口部148UHが具備され、開口部148UHは、上部ハウジング170の透明窓176にオーバーラップされる位置にも配される。
【0047】
上部ケース148Uと下部ケース148Lとの間には、密封材149が配され、上部ケース148Uと下部ケース148Lとの電気的短絡を防止することができる。正極集電部142Fは、上部ケース148Uと接触し、負極集電部144Fは、下部ケース148Lと接触するようにも配される。図示されていないが、正極活物質142AM、分離膜146及び負極活物質144AMは、電解液によって浸されている状態でもある。
【0048】
正極集電部142Fは、伝導性物質を含んでもよく、薄い伝導性ホイル、または薄い伝導性メッシュ(mesh)でもある。例えば、正極集電部142Fは、アルミニウム、ニッケル、銅、金、またはそれらの合金をも含む。
【0049】
正極活物質142AMは、リチウムイオンを可逆的に、吸蔵/放出することができる物質をも含む。正極活物質142AMは、光学分析ユニット10及び電気化学分析ユニット20により、充電及び放電による相転移特性を分析することを要求される活物質でもある。例示的な実施形態において、正極活物質142AMは、カルボオーガニック系(carboorganic-based)正極活物質、オリビン(olivine)構造のリチウムリン酸化物系正極活物質、バナジウム酸化物系正極活物質、層状構造のリチウム金属酸化物、スピネル(spinel)構造のリチウムマンガン酸化物系正極活物質、硫黄系正極活物質などを含んでもよい。例えば、ジメチルフェナジン(dimethyl phenazine)とリチウム金属酸化物とを正極活物質142AMとして使用した電池セル140につき、インサイチュ光学測定システム1を介し、電気化学性能及び相転移特性を分析した結果につき、図6ないし図11を介して詳細に説明する。
【0050】
図示されていないが、正極活物質142AM内部には、バインダまたは導電材がさらに含まれてもよい。該バインダは、正極活物質142AMの粒子を互いに付着させ、正極活物質142AMを正極集電部142Fに付着させる役割を行うことができる。該導電材は、正極活物質142AMに電気伝導性を提供することができる。
【0051】
負極集電部144Fは、伝導性物質を含んでもよく、薄い伝導性ホイル、または薄い伝導性メッシュでもある。例えば、負極集電部144Fは、銅、ニッケル、アルミニウム、金、またはそれらの合金をも含む。負極活物質144AMは、リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出することができる物質をも含む。負極活物質144AMは、光学分析ユニット10及び電気化学分析ユニット20により、充電及び放電による相転移特性を分析することが要求される活物質でもある。例示的な実施形態において、負極活物質144AMは、カーボン系負極活物質、黒鉛系負極活物質、シリコン系負極活物質、スズ系負極活物質、複合材負極活物質、リチウム金属負極活物質などを含んでもよい。
【0052】
図示されていないが、負極活物質144AM内部には、バインダまたは導電材がさらに含まれてもよい。該バインダは、負極活物質144AMの粒子を互いに付着させ、負極活物質144AMを負極集電部144Fに付着させる役割を行うことができる。該導電材は、負極活物質144AMに電気伝導性を提供することができる。
【0053】
分離膜146は、多孔性を有することができ、単一膜、または2層以上の多重膜によっても構成される。分離膜146は、ポリマー物質を含んでもよく、例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリオレフィン系ポリマーのうち少なくとも一つをも含む。
【0054】
前記電池積層体は、中央領域に、貫通ホール140SHを具備することができる。例えば、貫通ホール140SHは、正極集電部142Fを貫通し、貫通ホール140SHの底部に、正極活物質142AMの上面が露出されうる。貫通ホール140SHは、上部ケース148Uの開口部148UHとオーバーラップされる位置に形成され、透明窓176と開口部148UHとを介し、貫通ホール140SHの底部に露出される正極活物質142AM上面において、少なくとも1つの固定された位置における物質の組成またはイメージの連続的な観察が可能である。
【0055】
上部ハウジング170は、剛性を有する金属または絶縁物質をも含む。例えば、上部ハウジング170は、腐食が生じないように、SUS材質によっても形成されるが、それに限定されるものではない。上部ハウジング170は、固定部120の外側面を取り囲む形状に、下部ハウジング110上にも結合される。例えば、上部ハウジング170は、下部ハウジング110にも螺合されるが、それに限定されるものではない。
【0056】
上部ハウジング170は、中央領域に開口部176Hを具備し、開口部176H内に、透明窓176が配されうる。透明窓176は、透明な絶縁物質によっても形成される。例えば、透明窓176は、石英またはベリリウムガラスをも含む。図示されていないが、透明窓176のエッジ部分には、Oリング(o-ring)などのシーリング部材(sealing member)がさらに形成されてもよい。
【0057】
透明窓176に隣接した上部ハウジング170の底面は、電池セル140の上面(すなわち、上部ケース148U)と密着固定されうる。
【0058】
下部接続部114は、下部ハウジング110の外側壁に連結され、上部接続部174は、上部ハウジング170の外側壁にも連結される。下部接続部114は、下部ハウジング110、結合部112、高さ制御部130、及び選択的にスペーサ132を介し、電池セル140の下部ケース148Lと電気的に連結されるようにも配される。上部接続部174は、上部ハウジング170を介し、電池セル140の上部ケース148Uと電気的に連結されるようにも配される。下部接続部114は、電池セル140の負極活物質144AMに、電気化学分析ユニット20から電流を供給することができる接続端子でもあり、上部接続部174は、電池セル140の正極活物質142AMに、電気化学分析ユニット20から電流を供給することができる接続端子でもある。
【0059】
従来のインサイチュ電気化学セルにおいては、光学装備に固定された測定モジュール内に、正極電極、分離膜及び負極電極を順次に積層し、それらの積層体を同時にねじ方式で固定する測定モジュールが使用されるか、あるいはメッシュタイプの専用電極と専用分離膜とを使用する専用測定キットが使用された。
【0060】
ねじ方式の測定モジュールの場合、グローブボックスのような調節された環境において、前記積層体を形成し難いという問題があり、活物質及び電解液の酸化または損傷が生じてしまう。または、積層体をねじ方式で固定する段階において、電気的短絡が発生しやすく、ねじ方式で積層体を固定しても、光学装備との完全な電気的連結が提供され難く、積層体測定モジュールの抵抗が相対的に高いのである。従って、高い電流密度で電気化学的テストを行うのに適さず、テスト条件、及びテスト可能な活物質種類が制限されるという問題点が存在する。
【0061】
また、専用測定キットの場合、メッシュタイプの電極を使用する必要があり、新たな正極活物質及び負極活物質の一部、例えば、メッシュタイプの電極が不要な独立型のカルボオーガニック正極活物質のような場合、専用測定キットに適用し難いという問題がある。また、専用測定キットの場合、高さ調節が困難であり、専用測定キットの抵抗が相対的に高く、高い電流密度で電気化学的テストを行うのに適さない。従って、テスト条件、及びテスト可能な活物質種類が制限されるという問題点が存在する。
【0062】
しかし、本発明によれば、例えば、グローブボックスのような調節された環境において、コインタイプの電池セル140をまず形成した後、電池セル測定モジュール100の電池セル収容空間120HA内に電池セル140を配し、高さ制御部130を介し、高さを調節することにより、下部ハウジング110と上部ハウジング170とのいずれも、電池セル140が密着固定されるように、電池セル測定モジュール100を容易に形成することができる。従って、電池セル140の組み込み過程における、活物質または電解液の損傷が防止され、電池セル140は、電気的短絡のような危険性なしに、相対的に小さい抵抗を有するように容易に形成されうる。
【0063】
また、電池セル測定モジュール100内に電池セル140を配し、高さ制御部130により、電池セル140が、上部ハウジング110及び下部ハウジング170のいずれとも密着固定されるように調節することにより、電池セル測定モジュール100は、相対的に小さい抵抗を有することができる。電池セル測定モジュール100の抵抗が低減されることにより、多様な電流条件で、所望する電気化学テスト(例えば、高い電流速度における充電及び放電)を行うのに適し、また商用電池セル内における、電気化学的挙動と、電池セル測定モジュール100内における電気化学的挙動との偏差が低減されもする(すなわち、商用電池セルにおける電気化学的挙動を精密に模写することができる)。
【0064】
図4は、例示的な実施形態による電池セル測定モジュール100Aを示す断面図である。図4において、図1ないし図3と同一参照符号は、同一構成要素を意味する。
【0065】
図4を参照すれば、電池セル140は、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fの電池積層体を含んでもよく、前記電池積層体が、下部ケース148Lの電池積層体収容空間(図示せず)内に配され、上部ケース148Uが下部ケース148Lをカバーすることができる。
【0066】
前記電池積層体は、中央領域に貫通ホール140SHを具備することができる。例えば、貫通ホール140SHは、正極集電部142F、正極活物質142AM及び分離膜146を貫通し、貫通ホール140SHの底部に、負極活物質144AMの上面が露出されうる。貫通ホール140SHは、上部ケース148Uの開口部148UHとオーバーラップされる位置に形成され、透明窓176と開口部148UHとを介し、貫通ホール140SHの底部に露出される負極活物質144AM上面において、少なくとも1つの固定された位置における物質の組成またはイメージの連続的な観察が可能である。
【0067】
一方、図3を参照し、正極活物質142AMの上面を観察する場合と、図4を参照し、負極活物質144AMの上面を観察する場合とについて説明したが、それらとは異なり、貫通ホール140SHの深みを調節することにより、分離膜146の上面、正極集電部142Fの上面、または負極集電部144Fの上面が観察されうる。
【0068】
図5は、例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を示すフローチャートである。
【0069】
図5を参照すれば、正極電極、分離膜及び負極電極を含む電池積層体を準備する(S210段階)。
【0070】
該電池積層体は、正極集電部142F上に、正極活物質142AMをコーティングして乾燥させて形成された正極電極と、負極集電部144F上に、負極活物質144AMをコーティングして乾燥させて形成された負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に介在された分離膜146と、と含んでもよい。該電池積層体は、電解液に所定時間浸される。
【0071】
該電池積層体を形成する過程において、電池積層体の一部分を除去し、貫通ホール140SHを形成することができる。例えば、正極活物質142AMの表面を観察するために、正極集電部142Fの中央領域を貫通する貫通ホール140SHを形成することができる。
【0072】
その後、下部ケース内に電池積層体を配し、開口部を具備する上部ケースを結合させ、電池セルを形成することができる(S220段階)。
【0073】
上部ケース148Uは、中央領域に開口部148UHを具備することができ、開口部148UHと貫通ホール140SHとがオーバーラップされるようにも配される。電池セル140は、開口部148UHにより、貫通ホール140SHの底部に露出される正極活物質142AMの表面を観察するようにも配される。上部ケース148Uと下部ケース148Lは、加圧方式により、それぞれ正極集電部142F及び負極集電部144Fと接触するように形成され、それにより、電池セル140内部の抵抗が相対的に小さくもなる。例えば、電池セル140を形成する段階は、グローブボックスのような調節された環境内においても遂行される。前記調節された環境は、例えば、窒素雰囲気でもあり、電解液または活物質の大気雰囲気の露出による酸化などが防止されうる。
【0074】
その後、電池セル測定モジュール内の電池セルに対する充電動作及び放電動作を行うことができる(S230段階)。
【0075】
電池セル測定モジュール100に連結された電気化学分析ユニット20により、電池セル140の容量、電圧、電流及び時間に係わる情報を得ることができる。例えば、電気化学分析ユニット20を介し、電池セル140に既設定の電流密度を使用した単位充電ステップまたは単位放電ステップが遂行されうる。
【0076】
透明窓を介し、電池セル測定モジュール内の電池セルの上面に第1光を照射することができる(S240段階)。
【0077】
該電池セル測定モジュールから反射される光(または、散乱される光)を感知し、光学イメージを獲得することができる(S250段階)。
【0078】
透明窓を介し、電池セル測定モジュール内の電池セルの上面に、第2光を照射することができる(S260段階)。該第2光は、該第1光とは異なる波長を有する光でもある。
【0079】
該電池セル測定モジュールから反射される光(または、散乱される光)を感知して分析することができる(S270段階)。
【0080】
例えば、電池セル140の電圧が、既設定の第1測定電圧に逹するとき、第1光を照射するS240段階、第1光の散乱光を感知し、光学イメージを獲得するS250段階、第2光を照射するS260段階、第2光の散乱光を感知して分析するS270段階が順次に遂行されうる。S240段階ないしS270段階を、1つの光測定サイクルと称することができる。該光測定サイクルの間、電池セル140に、一定電圧が維持されるか、あるいは電流の流れが中断されるように、電気化学分析ユニット20がプログラミングされうる。
【0081】
例えば、第2光を照射するS260段階と、第2光の散乱光を感知して分析するS270段階は、ラマンシフト特性またはPL特性を獲得する段階でもある。
【0082】
例示的な実施形態において、第2光を照射するS260段階において、透明窓176を介して観察される電池セル140の上面(例えば、貫通ホール140SHの底部に露出された正極活物質142AM、または負極活物質144AMの上面)に、第1スキャン幅ほど連続して第2光を照射することができる。他の実施形態において、第2光を照射するS260段階において、透明窓176を介して観察される電池セル140の上面(例えば、貫通ホール140SHの底部に露出された正極活物質142AM、または負極活物質144AMの上面)に対し、複数の測定位置に、第2光を順次に照射することができる。
【0083】
その後、S210段階ないしS270段階を反復することができる。
【0084】
具体的には、1つの光測定サイクルが遂行された後、また電気化学分析ユニット20を介し、電池セル140に、既設定の電流密度を使用した単位充電ステップ、または単位放電ステップが遂行されうる。2回目の光測定サイクルにおいては、1回目の光測定サイクルにおいて、第2光を照射した測定位置と同一測定位置に、第2光を照射することができる。それにより、同一測定位置に配される正極活物質142AMまたは負極活物質144AMの経時的または電圧変化によるラマンシフト情報を提供することができ、それにより、正極活物質142AMまたは負極活物質144AMの相転移特性、界面特性及び/または結晶構造に係わる精密な分析が行われうる。
【0085】
例えば、S210段階ないしS270段階を順次に遂行することにより、単位充電ステップまたは単位放電ステップが構成されうる。例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法は、総5回ないし総数十回の単位充電ステップ、及び/または総5回ないし総数十回の単位放電ステップをも含む。
【0086】
一般的に、従来のインサイチュ電気化学セルにおいては、インサイチュ電気化学セルの組み込み過程において、活物質及び/または電解液の損傷が生じたり、インサイチュ電気化学セルの短絡が生じたり、電気化学セルの抵抗が相対的に大きかったりするので、インサイチュ電気化学セルの電気化学的挙動に係わる精密な分析が困難でもある。
【0087】
しかし、本発明によれば、例えば、グローブボックスのような調節された環境において、コインタイプの電池セル140をまず形成した後、電池セル測定モジュール100を形成することができる。従って、電池セル140の組み込み過程における活物質または電解液の損傷が防止され、電池セル140は、電気的短絡などの危険性なしに、相対的に小さい抵抗を有するように容易に形成されうる。電池セル測定モジュール100が小さい抵抗を有するので、多様な電流条件で、所望する電気化学テスト(例えば、高い電流速度における充電及び放電)を行うことができ、また商用電池セル内における、電気化学的挙動と、電池セル測定モジュール100内における電気化学的挙動との偏差が低減されうる(すなわち、商用電池セルにおける電気化学的挙動を精密に模写することができる)。
【0088】
以下においては、図6ないし図11を介し、例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを使用し、例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を遂行して獲得した分析結果について説明する。図6ないし図8においては、正極活物質として、カルボオーガニック正極物質のうち一つであるジメチルフェナジン(DMPZ)を使用し、負極活物質として、リチウムメタルを使用した電池セルにつき、インサイチュ光学及び電気化学の分析方法を遂行した。図9ないし図11においては、正極活物質として、リチウムコバルトニッケル酸化物(LiCoNi1-x、0≦x≦1)を使用し、負極活物質として、黒鉛電極を使用した電池セルにつき、インサイチュ光学及び電気化学の分析方法を遂行した。
【0089】
図6は、DMPZ正極活物質の1回充電及び1回放電における電圧プロファイルを示すグラフである。図6においては、一定電流モードで得られる正極活物質の電圧が図示されている。
【0090】
図6を参照すれば、カルボオーガニック正極物質であるDMPZは、2個のプラトー領域(plateau region)R2,R4を示すことができる。具体的には、充電開始以後、電圧が上昇する第1領域R1、およそ3.0ないし3.1Vにおいて、一定電圧区間を有する第2領域R2、電圧が上昇する第3領域R3、およそ3.75ないし3.85Vにおいて、一定電圧区間を有する第4領域R4、及び電圧が上昇する第5領域R5が示されることを確認することができる。
【0091】
図7は、正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧における光学イメージである。
【0092】
図7においては、DMPZ正極活物質の開放電圧OCV、3.1V、3.3V、3.6V、3.7V及び3.8Vにおいて、第1光の散乱から得られた光学イメージが図示されている。
【0093】
図7を参照すれば、開放電圧OCVにおいて、DMPZ粒子が局所的に集まって配されるDMPZリッチ領域が観察される。第1プラトー区間を過ぎた後、3.3V(すなわち、図6の第3領域R3)の開始地点に対応する電圧領域)において、DMPZリッチ領域の表面が若干緩慢に変化され、それは、第1プラトー区間において、電気化学反応の結果として、DMPZ粒子が電解液に溶出されるためであると見られる。3.6V及び3.7V(すなわち、図6の第3領域R3の終了地点に対応す電圧領域)において、DMPZリッチ領域の表面がさらに緩慢に変化され、第2プラトー区間に対応する3.8V(図6の第4領域R4に対応する電圧領域)において、測定領域の表面がさらに滑らかなモルフォロジーを示し、DMPZリッチ領域のDMPZ粒子の量がさらに小さく観察される。それは、2番目のプラトー段階において、DMPZが電解液に溶出されるためであると見られる。
【0094】
図8は、正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンシフトグラフである。
【0095】
図8を参照すれば、第1部分においては、充電初期に、開放電圧OCVから3.1Vに逹するまで、DMPZに由来する第1ピーク(●)、第2ピーク(○)、第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)と、カーボンに由来する第5ピーク(■)及び第6ピーク(□)を含む6個のピークが観察される。およそ3.6Vから、第1ピーク(●)、第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)の強度は、大きく低下され、約4.1V以上において、カーボンに由来する第5ピーク(■)及び第6ピーク(□)だけが観察されるということが分かる。すなわち、第1プラトーと第2プラトーとを経ながら、正極活物質表面におけるDMPZ粒子が電解液内部に溶出され、第1ピーク(●)、第2ピーク(○)、第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)の強度が漸進的に低下すると推測することができる。それは、図7で観察された結果とも符合するのである。
【0096】
図9は、負極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンイメージ分析グラフである。図9は、黒鉛電極を使用した負極活物質の表面に、第1スキャン幅を有する測定領域につき、連続した測定を行った結果を示す。
【0097】
図9を参照すれば、同一位置に配される黒鉛電極部分において、セル電圧が上昇することにより、結晶化度が変化するところが観察されうる。また、第1スキャン幅を有する測定領域につき、平面的に黒鉛を含む負極活物質が均一に分散されて配されるところが観察されうる。
【0098】
図10は、正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンイメージ分析グラフである。図10は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNiCoMn)を含む正極活物質の表面に、第1スキャン幅を有する測定領域につき、連続したs測定を行った結果を示す。
【0099】
図10を参照すれば、充電段階の初期(3.6Vの電圧区間)、約600cm-1のピーク位置において、高いラマンシフトピークが観察され、約600cm-1のピーク位置におけるピークが漸進的に低下し、3.8Vないし4.2Vの区間においては、そのような区間に特別なピークが観察されないということを確認することができる。その後、4.2Vの区間において、約475cm-1及び約530cm-1のピーク位置における新たなピークが生じ、そのようなピークは、約4.4Vにおいて、最大の強度を示していて、4.8Vまで漸進的に強度が低下するということを確認することができる。
【0100】
図11は、正極活物質の組成変化によるラマンイメージ分析グラフである。図11において、リチウムコバルトニッケル酸化物(LiCoNi1-x、0≦x≦1)を正極活物質として使用した電池セルにつき、コバルトとマンガンとの含量を異ならせてラマンシフト特性が観察された。
【0101】
図11を参照すれば、正極活物質内のコバルト含量が増加するにつれ(すなわち、x>0.5、例えば、ニッケル含量が減少するにつれ)、第1ピーク(●)と第2ピーク(○)とが観察されるということが確認される。リチウムコバルトマンガン酸化物(LiCoNi1-x、0.5≦x≦1)の組成範囲を有する負極活物質は、リチウムコバルト酸化物と実質的に同一結晶構造を有し、コバルト含量が増加するほど、結晶性が漸進的に上昇されるということを確認することができる。
【0102】
図6ないし図11を参照して詳細に説明したように、本発明による電池セル測定モジュール、及びインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を介し、多様な種類の正極活物質及び負極活物質に係わる電気化学挙動及び結晶構造が明確に観察され、それにより、多様な種類の正極活物質及び負極活物質の性能改善及び商用化のための多様なアプローチが導出されうる。本発明は、テスト条件と物質種類に制限されず、多様な正極活物質及び負極活物質の電気化学的反応の究明、結晶相または結晶構造変化の観察、局所的領域の反応速度分析、活物質の界面移動観察、活物質の局所的厚み変化観察のような電気化学的挙動に係わる総合的な分析にも適用される。
【0103】
以上、本発明につき、望ましい実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内及び範囲内において、当分野で当業者により、さまざまな変形及び変更が可能であろう。
【0104】
謝辞(Acknowledgement)
今回の研究は、科学技術情報通信部が支援する国立研究財団を介する基礎科学研究プログラムの支援を受けた(NRF-2017M3A7B4049176)。
【0105】
今回の作業は、韓国基礎科学研究院(KBSI)助成T38606の支援を受けた。
【0106】
今回の作業は、韓国政府が拠出する国家研究財団(NRF)によって支援された(2018R1A5A1025224)。
【0107】
今回の研究は、科学技術情報通信部(科技部)が拠出する国家研究財団(NRF-2017M3D1A1039561)を介する創作資料発掘プログラムの支援を受けた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサイチュ光学及び電気化学の分析方法、及びそのための電池セル測定モジュールに係り、さらに詳細には、充電及び放電が行われる間の電池セル内部の観察を介する電気化学的挙動分析が可能な電池セル測定モジュールと、それを利用したインサイチュ光学及び電気化学の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、小型モバイル機器、電気自動車のような多様な応用分野に、リチウムイオン電池を使用するための要求が増大するにつれ、多様な応用分野のための多様な要求条件により、リチウムイオン電池の性能を最適化させる必要性が提起されている。特に、大容量を有し、低価である新たな正極活物質候補物質及び負極活物質候補物質に係わる電気化学的特性研究が活発に進められている。しかし、新たな正極活物質及び負極活物質の一部は、充電及び放電による相転移特性と電気化学的性能との関係が明確に究明されておらず、そのような候補物質の性能改善及び商用化が困難であるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の技術的思想がなす技術的課題は、充電及び放電が行われる間の電池セル内部の観察を介する電気化学的挙動の精密な分析が可能な電池セル測定モジュールを提供することである。
【0004】
本発明の技術的思想がなす技術的課題は、前記電池セル測定モジュールを利用し、充電及び放電が行われる間の電池セル内部の観察を介する電気化学的挙動の精密な分析が可能なインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を達成するための本発明の技術的思想によるインサイチュ光学及び電気化学分析用電池セル測定モジュールは、上部に結合部が形成された下部ハウジングと、前記下部ハウジング上に結合され、上部に電池セルが収容される電池セル収容空間が形成され、前記電池セル収容空間と連通され、前記結合部が内部に配される結合ホールを含む固定部と、前記固定部の電池セル収容空間から、前記結合ホールを介し、前記結合部まで連結される高さ制御部と、前記下部ハウジングに脱着可能に付着され、前記固定部、前記高さ制御部を覆い包むように配され、透明窓が具備された上部ハウジングと、上面に開口部を含む電池セルであり、前記開口部が前記透明窓と垂直オーバーラップされる位置に配されるように、前記電池セル収容空間内に載置される前記電池セルと、を含む。
【0006】
例示的な実施形態において、前記高さ制御部は、上部に電池セルが配される天板本体と、前記天板本体の下部に形成され、前記結合部に結合されるように形成される固定柱部と、を含み、前記固定柱部を介し、前記高さ制御部の高さ調節が可能である。
【0007】
例示的な実施形態において、前記電池セルは、電池積層体収容空間を含む下部ケース、前記電池積層体収容空間内に配され、正極活物質が付着された正極集電部、前記電池積層体収容空間内に配され、負極活物質が付着された負極集電部、前記正極活物質と前記負極活物質との間に配される分離膜(separator)、及び前記電池積層体収容空間をカバーし、前記開口部が具備された上部ケースをも含む。
【0008】
例示的な実施形態において、前記下部ハウジングに連結される下部接続部と、前記上部ハウジングに連結される上部接続部と、をさらに含み、前記電池セルの前記下部ケースは、前記高さ制御部、前記結合部及び前記下部ハウジングにより、前記下部接続部と電気的に連結され、前記電池セルの前記上部ケースは、前記上部ハウジングを介し、前記上部接続部に電気的に連結されうる。
【0009】
例示的な実施形態において、前記正極集電部は、前記開口部とオーバーラップされる位置に貫通ホールを含み、前記正極活物質の上面が、前記貫通ホールと前記開口部とによって露出され、前記透明窓により、前記正極活物質の前記上面が観察されうるようにも配される。
【0010】
例示的な実施形態において、前記正極集電部、前記正極活物質及び前記分離膜は、前記開口部とオーバーラップされる位置に貫通ホールを含み、前記負極活物質の上面が、前記貫通ホールと前記開口部とによって露出され、前記透明窓により、前記負極活物質の前記上面が観察されうるようにも配される。
【0011】
例示的な実施形態において、前記高さ制御部と前記電池セルとの間に配されるスペーサをさらに含んでもよい。
【0012】
前記技術的課題を達成するための本発明の技術的思想による電池セル測定モジュールを使用したインサイチュ光学及び電気化学の分析方法において、前記電池セル測定モジュールは、上部に結合部が形成された下部ハウジングと、前記下部ハウジング上に結合され、上部に電池セルが収容される電池セル収容空間が形成され、前記電池セル収容空間と連通され、前記結合部が内部に配される結合ホールを含む固定部と、前記固定部の電池セル収容空間から、前記結合ホールを介し、前記結合部まで連結される高さ制御部と、前記下部ハウジングに脱着可能に付着され、前記固定部、前記高さ制御部を覆い包むように配され、透明窓が具備された上部ハウジングと、上面に開口部を含む電池セルであり、前記開口部が前記透明窓と垂直オーバーラップされる位置に配されるように、前記電池セル収容空間内に載置される前記電池セルと、を含み、前記電池セル測定モジュールに、充電動作及び放電動作を遂行する段階と、前記電池セル測定モジュールに、光測定サイクルを複数回遂行する段階と、を含み、前記光測定サイクルは、前記透明窓を介して観察される前記電池セルの第1部分に第1光を照射する段階と、前記電池セルから散乱される第1光を検出する段階と、前記透明窓を介して観察される前記電池セルの前記第1部分に、前記第1光とは異なる波長を有する第2光を照射する段階と、前記電池セルから散乱される第2光を検出する段階と、を含む。
【0013】
例示的な実施形態において、前記第2光を照射する段階は、前記透明窓を介して観察される前記電池セルの上面に沿い、第1スキャン幅ほど連続して、前記第2光を照射する段階をも含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明による電池セル測定モジュールは、例えば、グローブボックスのような調節された環境において、コインタイプの電池セルをまず形成した後、電池セル測定モジュールの電池セル収容空間内に電池セルを配し、高さ制御部を介し、高さを調節することにより、下部ハウジングと上部ハウジングとのいずれとも電池セルが密着固定されるように電池セル測定モジュールを容易に形成することができる。
【0015】
従って、電池セルの組み立て過程における、活物質または電解液の損傷が防止され、該電池セルは、電気的短絡のような危険性なしに、相対的に小さい抵抗を有するように容易に形成されうる。該電池セル測定モジュールの抵抗が低減されることにより、多様な電流条件において、所望する電気化学テスト(例えば、高い電流速度における充電及び放電)を行うのに適し、また商用電池セル内における電気化学的挙動と、電池セル測定モジュール内における電気化学的挙動との偏差が低減されもする(すなわち、商用電池セルにおける電気化学的挙動を精密に模写する(simulate)ことができる)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】例示的な実施形態によるインサイチュ光学測定システムを示す概路図である。
図2】例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを示す断面図である。
図3図2のCX部分の拡大図である。
図4】例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを示す断面図である。
図5】例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を示すフローチャートである。
図6】正極活物質の1回充電及び1回放電における電圧プロファイルを示すグラフである。
図7】正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧における光学イメージである。
図8】正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンシフトグラフである。
図9】負極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンイメージ分析グラフである。
図10】正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンイメージ分析グラフである。
図11】正極活物質の組成変化によるラマンイメージ分析グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の構成及び効果を十分に理解するために、添付図面を参照し、本発明の望ましい実施形態について説明する。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、さまざまな形態にも具現され、多様な変更を加えることができる。ただし、本実施形態に係わる説明は、本発明の開示を完全なものにし、本発明が属する技術分野の当業者に、発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。添付図面における構成要素は、説明の便宜のために、その大きさは、実際より拡大されて図示されており、各構成要素の比率は、誇張されていたり縮小されていたりもする。
【0018】
ある構成要素が他の構成要素の「上」にあるか、あるいは「接して」いると記載された場合、他の構成要素上に直接当接しているか、あるいは連結されてもいるが、中間に、さらに他の構成要素が存在しうると理解されなければならないのである。一方、ある構成要素が他の構成要素の「真上」にあるか、あるいは「直接接して」いると記載された場合には、中間にさらに他の構成要素が存在しないとも理解されるのである。構成要素間の関係について説明する他の表現、例えば、「~間に」と「直接~の間に」なども、同様に解釈されうる。
【0019】
第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうるが、前記構成要素は、前記用語によって限定されるものではない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用されうる。例えば、本発明の権利範囲を外れずに、第1構成要素は、第2構成要素とも命名され、類似して、第2構成要素も、第1構成要素とも命名される。
【0020】
単数の表現は、文脈上、明白に異なるように表現しない限り、複数の表現を含む。「含む」または「有する」のような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部分品、またはそれらの組み合わせが存在するということを指定するためのものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部分品、またはそれらの組み合わせが付加されうるとも解釈される。
【0021】
本発明の実施形態において使用される用語は、異なるように定義されない限り、当該技術分野において、当業者に一般的に知られた意味にも解釈される。
【0022】
以下、添付図面を参照し、本発明の望ましい実施形態について説明することにより、本発明について詳細に説明する。
【0023】
図1は、例示的な実施形態によるインサイチュ光学測定システム1を示す概路図である。図2は、例示的な実施形態による電池セル測定モジュール100を示す断面図であり、図3は、図2のCX部分の拡大図である。
【0024】
図1ないし図3を参照すれば、インサイチュ光学測定システム1は、光学分析ユニット(OMU)10、電気化学分析ユニット(ECU)20及び電池セル測定モジュール100を含んでもよい。
【0025】
光学分析ユニット10は、電池セル測定モジュール100内に含まれる電池セル140に対し、光学特性を分析することができる測定装置によっても構成される。例示的な実施形態において、光学分析ユニット10は、光学イメージ分析及びラマンシフト分析を行うようにも構成される。他の実施形態において、光学分析ユニット10は、それぞれ光学イメージ分析、ラマンシフト分析、PL(photoluminescence)特性分析が可能な複数の分析ユニットによっても構成される。
【0026】
例えば、光学分析ユニット10は、レーザを光源にし、電池セル140に光を照射し、電池セル140を介して反射される光を受光して感知することができるラマン分光器を含んでもよい。また、光学分析ユニット10は、光学顕微鏡をさらに含んでもよい。該光学顕微鏡は、電池セル140に光を照射し、電池セル140を介して反射される光を受光し、CCD(charge coupled device)カメラ(図示せず)を介し、電池セル140のイメージ情報を保存することができる。
【0027】
例えば、光学分析ユニット10は、光源12、光スプリッタ14、レンズ16及び検出器18をも含む。例えば、光源12は、レーザソースを含んでもよく、光源12からレーザが放出されうる。光スプリッタ14は、光源12から放出された光を反射させ、レンズ16に入射させることができる。レンズ16に入射された光が、電池セル測定モジュール100内の電池セル140にも入射される。電池セル140から散乱される光が、レンズ16及び光スプリッタ14を通過し、検出器18で受光されうる。検出器18は、カメラまたは分光計を含むものである。
【0028】
例示的な実施形態において、該光学顕微鏡が、電池セル測定モジュール100の測定領域SCAN WIDTH(図3)に光を照射し、前記測定領域のイメージを保存することができ、ラマン分光器が、前記測定領域内の複数の固定された測定位置に光を照射し、複数の固定された測定位置からのラマンシフト測定結果を獲得することができる。また、該ラマン分光器は、前記測定領域内の第1スキャン幅を有する測定ラインに沿って連続して配される測定位置に光を照射し、前記測定ラインからのラマンシフト測定結果を獲得することもできる。
【0029】
電気化学分析ユニット20は、電池セル測定モジュール100内に含まれる電池セル140に係わる電気化学的性能を分析することができる測定装置によっても構成される。例えば、電気化学分析ユニット20は、電池セル140に電気的に連結され、電池セル140の電圧及び電流を調節するか、あるいは電池セル140の電圧情報及び電流情報を記録するようにも構成される。
【0030】
例えば、電気化学分析ユニット20は、電池セル140に対する充電及び放電を含む電気化学サイクルを複数回駆動するようにも構成される。電池セル140に係わる充電サイクルにおいて、電池セル140に、既定の電流速度で電流を印加することができ、電流印加による電池セル140の電圧を測定して記録することができる。電池セル140の電圧が、既定のオフ電圧に逹するとき、電池セル140に係わる放電サイクルが開始され、既定の電流速度で放電電流が流れるときの電池セル140の電圧を測定して記録することができる。
【0031】
電池セル測定モジュール100は、透明窓176を含み、透明窓176を介し、電池セル140に光を照射し、電池セル140から反射される光を感知するようにも構成される。電池セル140は、コインタイプの商用電池のように、内部に正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜(separator)146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fを含むようにまず形成され、その後、電池セル140が、電池セル測定モジュール100内にも組み込まれる。電池セル140は、透明窓176とオーバーラップされる位置に配される開口部148UHをも含む。電池セル測定モジュール100は、透明窓176を介して観察可能な測定領域SCAN WIDTH(図3)内において、透明窓176とオーバーラップされる位置に配される開口部148UHを介して露出される正極活物質142AMの上面を観察するようにも構成される。開口部148UHを介して露出される正極活物質142AMの上面のうち一部分の領域を連続してスキャンすることにより、測定領域内の複数の固定された位置、または連続した測定ラインにおける光学イメージ分析及びラマン分析を容易に行うことができる。
【0032】
例示的な実施形態によれば、電気化学分析ユニット20を介し、電池セル140に係わる電気化学特性分析を行う間、光学分析ユニット10を介し、電池セル140の部分に係わるイメージ及びラマン分析を同時に行うことができる。それにより、関心の対象である正極活物質142AMにつき、充電及び放電の間に生じる前記活物質の電気化学的反応の究明、結晶相(crystalline phase)または結晶構造変化の観察、局所的領域の反応速度分析のような、電池セル140の電気化学的挙動に係わる総合的な分析が可能である。
【0033】
従来のインサイチュ電気化学セルにおいては、光学装備に固定された測定モジュール内に、正極電極、分離膜及び負極電極を順次に積層し、それらの積層体を同時にねじ方式で固定する測定モジュールが使用されるか、あるいはメッシュタイプの専用電極と専用分離膜とを使用する専用測定キットが使用された。
【0034】
ねじ方式の測定モジュールの場合、グローブボックスのような調節された環境(例えば、窒素雰囲気)において、前記積層体を形成し難いという問題があり、活物質及び電解液の酸化または損傷が生じてしまう。または、積層体をねじ方式で固定する段階において、電気的短絡が発生しやすく、ねじ方式で積層体を固定しても、光学装備との完全な電気的連結が提供され難く、積層体測定モジュールの抵抗が相対的に高いのである。従って、高い電流密度で電気化学的テストを行うのに適さず、テスト条件、及びテスト可能な活物質種類が制限されるという問題点が存在する。
【0035】
また、専用測定キットの場合、メッシュタイプの電極を使用する必要があり、新たな正極活物質及び負極活物質の一部、例えば、メッシュタイプの電極が不要な独立型(stand-alone type)のカルボオーガニック正極活物質のような場合、専用測定キットに適用し難いという問題がある。また、専用測定キットの場合、高さ調節が困難であり、専用測定キットの抵抗が相対的に高く、高い電流密度で電気化学的テストを行うのに適さない。従って、テスト条件、及びテスト可能な活物質種類が制限されるという問題点が存在する。
【0036】
しかし、本発明によれば、コインタイプの電池セル140をまず形成した後、電池セル測定モジュール100内に電池セル140を組み込み、透明窓176と開口部148UHとを介し、正極活物質142AMを観察したり測定したりすることができる。従って、グローブボックスのような調節された環境において、電池セル140を組み込むことができるので、活物質または電解液の損傷が防止されうる。また、電池セル140は、相対的に小さい抵抗を有することができるので、高い電流密度における電気化学テストを含め、多様な条件で電気化学テストを行うことができる。従って、電池セル140の充電段階及び放電段階で生じる電池セル140の電気化学的挙動につき、精密に測定したり分析したりすることができる。
【0037】
以下においては、図2及び図3を参照し、電池セル測定モジュール100の細部構造について詳細に説明する。
【0038】
電池セル測定モジュール100は、下部ハウジング110と、下部ハウジング110に脱着可能になるように付着される上部ハウジング170と、を含んでもよい。
【0039】
下部ハウジング110は、剛性を有する金属物質をも含む。例えば、下部ハウジング110は、腐食が生じないように、SUS材質によっても形成されるが、それに限定されるものではない。
【0040】
下部ハウジング110の上面中心部には、結合部112が配されうる。結合部112は、下部ハウジング110の上面より上側に突出されるようにも配される。例示的な実施形態において、結合部112は、下部ハウジング110と一体にも形成されるが、それに限定されるものではない。他の実施形態において、下部ハウジング110と結合部112は、螺合されうる。そのような場合、結合部112の外周面に、ねじ山(図示せず)をさらに含んでもよく、下部ハウジング110の結合部112と接する内側壁上に、ねじ山(図示せず)がさらに形成され、下部ハウジング110と結合部112とが螺合されうる。
【0041】
下部ハウジング110上には、電池セル収容空間120HAと結合ホール120HBとを含む固定部120が配されうる。固定部120は、結合ホール120HB内部に、結合部112が配されるように、下部ハウジング110上にも結合される。結合ホール120HBの上部において、電池セル収容空間120HAは、結合ホール120HBと連通されるようにも配される。電池セル収容空間120HAは、結合ホール120HBより、水平方向の幅がさらに広くも形成される。電池セル収容空間120HAの水平方向幅は、電池セル140の水平方向幅よりさらに広くも形成される。固定部120は、下部ハウジング110と上部ハウジング170との電気的絶縁のために、剛性を有する絶縁物質、例えば、セラミックス物質、エポキシのようなプラスチック物質を使用しても形成される。
【0042】
固定部120上には、高さ制御部130が配されうる。高さ制御部130は、天板本体130Tと固定柱部130Bとを含んでもよい。天板本体130T上には、電池セル140が配され、固定柱部130Bが、天板本体130T下部から垂直方向(すなわち下部ハウジング110の上面に垂直方向)にも延長される。固定柱部130Bは、固定部120の結合ホール120HB内部に配され、結合ホール120HB内部において、結合部112にも結合される。固定柱部130Bは、結合部112と螺合され、そのような場合、結合部112の内周面と、固定柱部130Bの外周面とに、ねじ山(図示せず)がそれぞれ配されうる。例えば、固定柱部130Bは、結合部112との結合程度により、高さ調節が可能であるが、それに限定されるものではない。高さ制御部130は、腐食が発生せず、電気伝導性を有するように、SUS材質によっても形成されるが、それに限定されるものではない。
【0043】
選択的に、スペーサ132が、高さ制御部130の天板本体130T上にも配される。高さ制御部130上に置かれる電池セル140の厚みが相対的に薄い場合、下部ハウジング110と上部ハウジング170との間に、電池セル140を固定密着させるために、スペーサ132が、天板本体130T上に選択的にも配される。スペーサ132は、腐食が発生せず、電気伝導性を有するように、SUS材質によっても形成されるが、それに限定されるものではない。
【0044】
高さ制御部130上(選択的に、スペーサ132上)には、電池セル140が配されうる。電池セル140は、コインタイプの電池セルでもある。例えば、電池セル140は、幅20mm、厚み16mmの2016タイプ商用コインセル、または幅20mm、厚み32mmの2032タイプ商用コインセルと同一サイズを有することができる。例えば、電池セル140が、2016タイプ商用コインセルと同一サイズを有するとき、スペーサ132が、高さ制御部130と電池セル140との間にも配される。
【0045】
電池セル140は、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fの電池積層体を含んでもよく、前記電池積層体が、下部ケース148Lの電池積層体収容空間(図示せず)内に配され、上部ケース148Uが下部ケース148Lをカバーすることができる。
【0046】
上部ケース148Uは、中央領域に開口部148UHが具備され、開口部148UHは、上部ハウジング170の透明窓176にオーバーラップされる位置にも配される。
【0047】
上部ケース148Uと下部ケース148Lとの間には、密封材149が配され、上部ケース148Uと下部ケース148Lとの電気的短絡を防止することができる。正極集電部142Fは、上部ケース148Uと接触し、負極集電部144Fは、下部ケース148Lと接触するようにも配される。図示されていないが、正極活物質142AM、分離膜146及び負極活物質144AMは、電解液によって浸されている状態でもある。
【0048】
正極集電部142Fは、伝導性物質を含んでもよく、薄い伝導性ホイル、または薄い伝導性メッシュ(mesh)でもある。例えば、正極集電部142Fは、アルミニウム、ニッケル、銅、金、またはそれらの合金をも含む。
【0049】
正極活物質142AMは、リチウムイオンを可逆的に、吸蔵/放出することができる物質をも含む。正極活物質142AMは、光学分析ユニット10及び電気化学分析ユニット20により、充電及び放電による相転移特性を分析することを要求される活物質でもある。例示的な実施形態において、正極活物質142AMは、カルボオーガニック系(carboorganic-based)正極活物質、オリビン(olivine)構造のリチウムリン酸化物系正極活物質、バナジウム酸化物系正極活物質、層状構造のリチウム金属酸化物、スピネル(spinel)構造のリチウムマンガン酸化物系正極活物質、硫黄系正極活物質などを含んでもよい。例えば、ジメチルフェナジン(dimethyl phenazine)とリチウム金属酸化物とを正極活物質142AMとして使用した電池セル140につき、インサイチュ光学測定システム1を介し、電気化学性能及び相転移特性を分析した結果につき、図6ないし図11を介して詳細に説明する。
【0050】
図示されていないが、正極活物質142AM内部には、バインダまたは導電材がさらに含まれてもよい。該バインダは、正極活物質142AMの粒子を互いに付着させ、正極活物質142AMを正極集電部142Fに付着させる役割を行うことができる。該導電材は、正極活物質142AMに電気伝導性を提供することができる。
【0051】
負極集電部144Fは、伝導性物質を含んでもよく、薄い伝導性ホイル、または薄い伝導性メッシュでもある。例えば、負極集電部144Fは、銅、ニッケル、アルミニウム、金、またはそれらの合金をも含む。負極活物質144AMは、リチウムイオンを可逆的に吸蔵/放出することができる物質をも含む。負極活物質144AMは、光学分析ユニット10及び電気化学分析ユニット20により、充電及び放電による相転移特性を分析することが要求される活物質でもある。例示的な実施形態において、負極活物質144AMは、カーボン系負極活物質、黒鉛系負極活物質、シリコン系負極活物質、スズ系負極活物質、複合材負極活物質、リチウム金属負極活物質などを含んでもよい。
【0052】
図示されていないが、負極活物質144AM内部には、バインダまたは導電材がさらに含まれてもよい。該バインダは、負極活物質144AMの粒子を互いに付着させ、負極活物質144AMを負極集電部144Fに付着させる役割を行うことができる。該導電材は、負極活物質144AMに電気伝導性を提供することができる。
【0053】
分離膜146は、多孔性を有することができ、単一膜、または2層以上の多重膜によっても構成される。分離膜146は、ポリマー物質を含んでもよく、例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリオレフィン系ポリマーのうち少なくとも一つをも含む。
【0054】
前記電池積層体は、中央領域に、貫通ホール140SHを具備することができる。例えば、貫通ホール140SHは、正極集電部142Fを貫通し、貫通ホール140SHの底部に、正極活物質142AMの上面が露出されうる。貫通ホール140SHは、上部ケース148Uの開口部148UHとオーバーラップされる位置に形成され、透明窓176と開口部148UHとを介し、貫通ホール140SHの底部に露出される正極活物質142AM上面において、少なくとも1つの固定された位置における物質の組成またはイメージの連続的な観察が可能である。
【0055】
上部ハウジング170は、剛性を有する金属または絶縁物質をも含む。例えば、上部ハウジング170は、腐食が生じないように、SUS材質によっても形成されるが、それに限定されるものではない。上部ハウジング170は、固定部120の外側面を取り囲む形状に、下部ハウジング110上にも結合される。例えば、上部ハウジング170は、下部ハウジング110にも螺合されるが、それに限定されるものではない。
【0056】
上部ハウジング170は、中央領域に開口部176Hを具備し、開口部176H内に、透明窓176が配されうる。透明窓176は、透明な絶縁物質によっても形成される。例えば、透明窓176は、石英またはベリリウムガラスをも含む。図示されていないが、透明窓176のエッジ部分には、Oリング(o-ring)などのシーリング部材(sealing member)がさらに形成されてもよい。
【0057】
透明窓176に隣接した上部ハウジング170の底面は、電池セル140の上面(すなわち、上部ケース148U)と密着固定されうる。
【0058】
下部接続部114は、下部ハウジング110の外側壁に連結され、上部接続部174は、上部ハウジング170の外側壁にも連結される。下部接続部114は、下部ハウジング110、結合部112、高さ制御部130、及び選択的にスペーサ132を介し、電池セル140の下部ケース148Lと電気的に連結されるようにも配される。上部接続部174は、上部ハウジング170を介し、電池セル140の上部ケース148Uと電気的に連結されるようにも配される。下部接続部114は、電池セル140の負極活物質144AMに、電気化学分析ユニット20から電流を供給することができる接続端子でもあり、上部接続部174は、電池セル140の正極活物質142AMに、電気化学分析ユニット20から電流を供給することができる接続端子でもある。
【0059】
従来のインサイチュ電気化学セルにおいては、光学装備に固定された測定モジュール内に、正極電極、分離膜及び負極電極を順次に積層し、それらの積層体を同時にねじ方式で固定する測定モジュールが使用されるか、あるいはメッシュタイプの専用電極と専用分離膜とを使用する専用測定キットが使用された。
【0060】
ねじ方式の測定モジュールの場合、グローブボックスのような調節された環境において、前記積層体を形成し難いという問題があり、活物質及び電解液の酸化または損傷が生じてしまう。または、積層体をねじ方式で固定する段階において、電気的短絡が発生しやすく、ねじ方式で積層体を固定しても、光学装備との完全な電気的連結が提供され難く、積層体測定モジュールの抵抗が相対的に高いのである。従って、高い電流密度で電気化学的テストを行うのに適さず、テスト条件、及びテスト可能な活物質種類が制限されるという問題点が存在する。
【0061】
また、専用測定キットの場合、メッシュタイプの電極を使用する必要があり、新たな正極活物質及び負極活物質の一部、例えば、メッシュタイプの電極が不要な独立型のカルボオーガニック正極活物質のような場合、専用測定キットに適用し難いという問題がある。また、専用測定キットの場合、高さ調節が困難であり、専用測定キットの抵抗が相対的に高く、高い電流密度で電気化学的テストを行うのに適さない。従って、テスト条件、及びテスト可能な活物質種類が制限されるという問題点が存在する。
【0062】
しかし、本発明によれば、例えば、グローブボックスのような調節された環境において、コインタイプの電池セル140をまず形成した後、電池セル測定モジュール100の電池セル収容空間120HA内に電池セル140を配し、高さ制御部130を介し、高さを調節することにより、下部ハウジング110と上部ハウジング170とのいずれも、電池セル140が密着固定されるように、電池セル測定モジュール100を容易に形成することができる。従って、電池セル140の組み込み過程における、活物質または電解液の損傷が防止され、電池セル140は、電気的短絡のような危険性なしに、相対的に小さい抵抗を有するように容易に形成されうる。
【0063】
また、電池セル測定モジュール100内に電池セル140を配し、高さ制御部130により、電池セル140が、上部ハウジング110及び下部ハウジング170のいずれとも密着固定されるように調節することにより、電池セル測定モジュール100は、相対的に小さい抵抗を有することができる。電池セル測定モジュール100の抵抗が低減されることにより、多様な電流条件で、所望する電気化学テスト(例えば、高い電流速度における充電及び放電)を行うのに適し、また商用電池セル内における、電気化学的挙動と、電池セル測定モジュール100内における電気化学的挙動との偏差が低減されもする(すなわち、商用電池セルにおける電気化学的挙動を精密に模写することができる)。
【0064】
図4は、例示的な実施形態による電池セル測定モジュール100Aを示す断面図である。図4において、図1ないし図3と同一参照符号は、同一構成要素を意味する。
【0065】
図4を参照すれば、電池セル140は、正極集電部142F、正極活物質142AM、分離膜146、負極活物質144AM及び負極集電部144Fの電池積層体を含んでもよく、前記電池積層体が、下部ケース148Lの電池積層体収容空間(図示せず)内に配され、上部ケース148Uが下部ケース148Lをカバーすることができる。
【0066】
前記電池積層体は、中央領域に貫通ホール140SHを具備することができる。例えば、貫通ホール140SHは、正極集電部142F、正極活物質142AM及び分離膜146を貫通し、貫通ホール140SHの底部に、負極活物質144AMの上面が露出されうる。貫通ホール140SHは、上部ケース148Uの開口部148UHとオーバーラップされる位置に形成され、透明窓176と開口部148UHとを介し、貫通ホール140SHの底部に露出される負極活物質144AM上面において、少なくとも1つの固定された位置における物質の組成またはイメージの連続的な観察が可能である。
【0067】
一方、図3を参照し、正極活物質142AMの上面を観察する場合と、図4を参照し、負極活物質144AMの上面を観察する場合とについて説明したが、それらとは異なり、貫通ホール140SHの深みを調節することにより、分離膜146の上面、正極集電部142Fの上面、または負極集電部144Fの上面が観察されうる。
【0068】
図5は、例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を示すフローチャートである。
【0069】
図5を参照すれば、正極電極、分離膜及び負極電極を含む電池積層体を準備する(S210段階)。
【0070】
該電池積層体は、正極集電部142F上に、正極活物質142AMをコーティングして乾燥させて形成された正極電極と、負極集電部144F上に、負極活物質144AMをコーティングして乾燥させて形成された負極電極と、前記正極電極と前記負極電極との間に介在された分離膜146と、と含んでもよい。該電池積層体は、電解液に所定時間浸される。
【0071】
該電池積層体を形成する過程において、電池積層体の一部分を除去し、貫通ホール140SHを形成することができる。例えば、正極活物質142AMの表面を観察するために、正極集電部142Fの中央領域を貫通する貫通ホール140SHを形成することができる。
【0072】
その後、下部ケース内に電池積層体を配し、開口部を具備する上部ケースを結合させ、電池セルを形成することができる(S220段階)。
【0073】
上部ケース148Uは、中央領域に開口部148UHを具備することができ、開口部148UHと貫通ホール140SHとがオーバーラップされるようにも配される。電池セル140は、開口部148UHにより、貫通ホール140SHの底部に露出される正極活物質142AMの表面を観察するようにも配される。上部ケース148Uと下部ケース148Lは、加圧方式により、それぞれ正極集電部142F及び負極集電部144Fと接触するように形成され、それにより、電池セル140内部の抵抗が相対的に小さくもなる。例えば、電池セル140を形成する段階は、グローブボックスのような調節された環境内においても遂行される。前記調節された環境は、例えば、窒素雰囲気でもあり、電解液または活物質の大気雰囲気の露出による酸化などが防止されうる。
【0074】
その後、電池セル測定モジュール内の電池セルに対する充電動作及び放電動作を行うことができる(S230段階)。
【0075】
電池セル測定モジュール100に連結された電気化学分析ユニット20により、電池セル140の容量、電圧、電流及び時間に係わる情報を得ることができる。例えば、電気化学分析ユニット20を介し、電池セル140に既設定の電流密度を使用した単位充電ステップまたは単位放電ステップが遂行されうる。
【0076】
透明窓を介し、電池セル測定モジュール内の電池セルの上面に第1光を照射することができる(S240段階)。
【0077】
該電池セル測定モジュールから反射される光(または、散乱される光)を感知し、光学イメージを獲得することができる(S250段階)。
【0078】
透明窓を介し、電池セル測定モジュール内の電池セルの上面に、第2光を照射することができる(S260段階)。該第2光は、該第1光とは異なる波長を有する光でもある。
【0079】
該電池セル測定モジュールから反射される光(または、散乱される光)を感知して分析することができる(S270段階)。
【0080】
例えば、電池セル140の電圧が、既設定の第1測定電圧に逹するとき、第1光を照射するS240段階、第1光の散乱光を感知し、光学イメージを獲得するS250段階、第2光を照射するS260段階、第2光の散乱光を感知して分析するS270段階が順次に遂行されうる。S240段階ないしS270段階を、1つの光測定サイクルと称することができる。該光測定サイクルの間、電池セル140に、一定電圧が維持されるか、あるいは電流の流れが中断されるように、電気化学分析ユニット20がプログラミングされうる。
【0081】
例えば、第2光を照射するS260段階と、第2光の散乱光を感知して分析するS270段階は、ラマンシフト特性またはPL特性を獲得する段階でもある。
【0082】
例示的な実施形態において、第2光を照射するS260段階において、透明窓176を介して観察される電池セル140の上面(例えば、貫通ホール140SHの底部に露出された正極活物質142AM、または負極活物質144AMの上面)に、第1スキャン幅ほど連続して第2光を照射することができる。他の実施形態において、第2光を照射するS260段階において、透明窓176を介して観察される電池セル140の上面(例えば、貫通ホール140SHの底部に露出された正極活物質142AM、または負極活物質144AMの上面)に対し、複数の測定位置に、第2光を順次に照射することができる。
【0083】
その後、S210段階ないしS270段階を反復することができる。
【0084】
具体的には、1つの光測定サイクルが遂行された後、また電気化学分析ユニット20を介し、電池セル140に、既設定の電流密度を使用した単位充電ステップ、または単位放電ステップが遂行されうる。2回目の光測定サイクルにおいては、1回目の光測定サイクルにおいて、第2光を照射した測定位置と同一測定位置に、第2光を照射することができる。それにより、同一測定位置に配される正極活物質142AMまたは負極活物質144AMの経時的または電圧変化によるラマンシフト情報を提供することができ、それにより、正極活物質142AMまたは負極活物質144AMの相転移特性、界面特性及び/または結晶構造に係わる精密な分析が行われうる。
【0085】
例えば、S210段階ないしS270段階を順次に遂行することにより、単位充電ステップまたは単位放電ステップが構成されうる。例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法は、総5回ないし総数十回の単位充電ステップ、及び/または総5回ないし総数十回の単位放電ステップをも含む。
【0086】
一般的に、従来のインサイチュ電気化学セルにおいては、インサイチュ電気化学セルの組み込み過程において、活物質及び/または電解液の損傷が生じたり、インサイチュ電気化学セルの短絡が生じたり、電気化学セルの抵抗が相対的に大きかったりするので、インサイチュ電気化学セルの電気化学的挙動に係わる精密な分析が困難でもある。
【0087】
しかし、本発明によれば、例えば、グローブボックスのような調節された環境において、コインタイプの電池セル140をまず形成した後、電池セル測定モジュール100を形成することができる。従って、電池セル140の組み込み過程における活物質または電解液の損傷が防止され、電池セル140は、電気的短絡などの危険性なしに、相対的に小さい抵抗を有するように容易に形成されうる。電池セル測定モジュール100が小さい抵抗を有するので、多様な電流条件で、所望する電気化学テスト(例えば、高い電流速度における充電及び放電)を行うことができ、また商用電池セル内における、電気化学的挙動と、電池セル測定モジュール100内における電気化学的挙動との偏差が低減されうる(すなわち、商用電池セルにおける電気化学的挙動を精密に模写することができる)。
【0088】
以下においては、図6ないし図を介し、例示的な実施形態による電池セル測定モジュールを使用し、例示的な実施形態によるインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を遂行して獲得した分析結果について説明する。図6ないし図8においては、正極活物質として、カルボオーガニック正極物質のうち一つであるジメチルフェナジン(DMPZ)を使用し、負極活物質として、リチウムメタルを使用した電池セルにつき、インサイチュ光学及び電気化学の分析方法を遂行した
【0089】
図6は、DMPZ正極活物質の1回充電及び1回放電における電圧プロファイルを示すグラフである。図6においては、一定電流モードで得られる正極活物質の電圧が図示されている。
【0090】
図6を参照すれば、カルボオーガニック正極物質であるDMPZは、2個のプラトー領域(plateau region)R2,R4を示すことができる。具体的には、充電開始以後、電圧が上昇する第1領域R1、およそ3.0ないし3.1Vにおいて、一定電圧区間を有する第2領域R2、電圧が上昇する第3領域R3、およそ3.75ないし3.85Vにおいて、一定電圧区間を有する第4領域R4、及び電圧が上昇する第5領域R5が示されることを確認することができる。
【0091】
図7は、正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧における光学イメージである。
【0092】
図7においては、DMPZ正極活物質の開放電圧OCV、3.1V、3.3V、3.6V、3.7V及び3.8Vにおいて、第1光の散乱から得られた光学イメージが図示されている。
【0093】
図7を参照すれば、開放電圧OCVにおいて、DMPZ粒子が局所的に集まって配されるDMPZリッチ領域が観察される。第1プラトー区間を過ぎた後、3.3V(すなわち、図6の第3領域R3)の開始地点に対応する電圧領域)において、DMPZリッチ領域の表面が若干緩慢に変化され、それは、第1プラトー区間において、電気化学反応の結果として、DMPZ粒子が電解液に溶出されるためであると見られる。3.6V及び3.7V(すなわち、図6の第3領域R3の終了地点に対応す電圧領域)において、DMPZリッチ領域の表面がさらに緩慢に変化され、第2プラトー区間に対応する3.8V(図6の第4領域R4に対応する電圧領域)において、測定領域の表面がさらに滑らかなモルフォロジーを示し、DMPZリッチ領域のDMPZ粒子の量がさらに小さく観察される。それは、2番目のプラトー段階において、DMPZが電解液に溶出されるためであると見られる。
【0094】
図8は、正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンシフトグラフである。
【0095】
図8を参照すれば、第1部分においては、充電初期に、開放電圧OCVから3.1Vに逹するまで、DMPZに由来する第1ピーク(●)、第2ピーク(○)、第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)と、カーボンに由来する第5ピーク(■)及び第6ピーク(□)を含む6個のピークが観察される。およそ3.6Vから、第1ピーク(●)、第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)の強度は、大きく低下され、約4.1V以上において、カーボンに由来する第5ピーク(■)及び第6ピーク(□)だけが観察されるということが分かる。すなわち、第1プラトーと第2プラトーとを経ながら、正極活物質表面におけるDMPZ粒子が電解液内部に溶出され、第1ピーク(●)、第2ピーク(○)、第3ピーク(▲)及び第4ピーク(△)の強度が漸進的に低下すると推測することができる。それは、図7で観察された結果とも符合するのである。
【0096】
図9ないし図11は、比較例による光学及び電気化学の分析結果例示である。
【0097】
図9は、負極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンイメージ分析グラフである。図9は、黒鉛電極を使用した負極活物質の表面に、第1スキャン幅を有する測定領域につき、連続した測定を行った結果を示す。図9は、ナノフォトン(株)(日本)において開示した分析イメージであり、前述のように、正極電極、分離膜及び負極電極を積層し、同時にねじ方式で固定する測定モジュールを使用した従来技術による測定結果である。
【0098】
図9を参照すれば、同一位置に配される黒鉛電極部分において、セル電圧が上昇することにより、結晶化度が変化するところが観察されうる。また、第1スキャン幅を有する測定領域につき、平面的に黒鉛を含む負極活物質が均一に分散されて配されるところが観察されうる。
【0099】
図10は、正極活物質の1回充電の間の互いに異なる電圧におけるラマンイメージ分析グラフである。図10は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNiCoMn)を含む正極活物質を使用した電池セルに係わるインサイチュラマン分析結果を等高線プロットで示す。図10は、Patrick Lanz et al.が、ElectrochimicaA cta 130, 206-212 (2014)で開示した分析イメージであり、同一測定領域につき、ラマンシフト特性のみを測定した従来技術による測定結果である
【0100】
図10を参照すれば、充電段階の初期(3.6Vの電圧区間)、約600cm-1のピーク位置において、高いラマンシフトピークが観察され、約600cm-1のピーク位置におけるピークが漸進的に低下し、3.8Vないし4.2Vの区間においては、そのような区間に特別なピークが観察されないということを確認することができる。その後、4.2Vの区間において、約475cm-1及び約530cm-1のピーク位置における新たなピークが生じ、そのようなピークは、約4.4Vにおいて、最大の強度を示していて、4.8Vまで漸進的に強度が低下するということを確認することができる。
【0101】
図11は、正極活物質の組成変化によるラマンイメージ分析グラフである。図11において、リチウムコバルトニッケル酸化物(LiCoNi1-x、0≦x≦1)を正極活物質として使用した電池セルにつき、コバルトとマンガンとの含量を異ならせてラマンシフト特性が観察され図11は、Minoru Inaba et al.が、Chemistry Letters 889 (1995)で開示した分析グラフであり、組成を異ならせた複数の分析試料につき、エクスサイチュ(ex-situ)ラマンシフト特性を測定した従来技術による測定結果である。
【0102】
図11を参照すれば、正極活物質内のコバルト含量が増加するにつれ(すなわち、x>0.5、例えば、ニッケル含量が減少するにつれ)、第1ピーク(●)と第2ピーク(○)とが観察されるということが確認される。リチウムコバルトマンガン酸化物(LiCoNi1-x、0.5≦x≦1)の組成範囲を有する負極活物質は、リチウムコバルト酸化物と実質的に同一結晶構造を有し、コバルト含量が増加するほど、結晶性が漸進的に上昇されるということを確認することができる。
【0103】
図6ないし図を参照して詳細に説明したように、本発明による電池セル測定モジュール、及びインサイチュ光学及び電気化学の分析方法を介し、多様な種類の正極活物質及び負極活物質に係わる電気化学挙動及び結晶構造が明確に観察され、それにより、多様な種類の正極活物質及び負極活物質の性能改善及び商用化のための多様なアプローチが導出されうる。本発明は、テスト条件と物質種類に制限されず、多様な正極活物質及び負極活物質の電気化学的反応の究明、結晶相または結晶構造変化の観察、局所的領域の反応速度分析、活物質の界面移動観察、活物質の局所的厚み変化観察のような電気化学的挙動に係わる総合的な分析にも適用される。
【0104】
以上、本発明につき、望ましい実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明は、前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内及び範囲内において、当分野で当業者により、さまざまな変形及び変更が可能であろう。
【0105】
謝辞(Acknowledgement)
今回の研究は、科学技術情報通信部が支援する国立研究財団を介する基礎科学研究プログラムの支援を受けた(NRF-2017M3A7B4049176)。
【0106】
今回の作業は、韓国基礎科学研究院(KBSI)助成T38606の支援を受けた。
【0107】
今回の作業は、韓国政府が拠出する国家研究財団(NRF)によって支援された(2018R1A5A1025224)。
【0108】
今回の研究は、科学技術情報通信部(科技部)が拠出する国家研究財団(NRF-2017M3D1A1039561)を介する創作資料発掘プログラムの支援を受けた。
【国際調査報告】