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特表2022-529200金属空気電池の使用済み電解質からの高純度アルミナ及び共生成物の製造
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  • 特表-金属空気電池の使用済み電解質からの高純度アルミナ及び共生成物の製造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(54)【発明の名称】金属空気電池の使用済み電解質からの高純度アルミナ及び共生成物の製造
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/02 20220101AFI20220613BHJP
【FI】
C01F7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538470
(86)(22)【出願日】2020-04-05
(85)【翻訳文提出日】2021-06-30
(86)【国際出願番号】 IL2020050411
(87)【国際公開番号】W WO2020212970
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/834,417
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513287255
【氏名又は名称】フィナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ウィーヴァー マーク
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA10
4G076AB27
4G076BA11
4G076BC02
4G076BC07
4G076BD01
4G076BE11
4G076CA36
4G076FA10
(57)【要約】
空気アルミニウム電池由来の使用済み電解質を、高純度アルミナ(HPA)と、肥料及び/又は飼料補助剤等の有用な共生成物に変換する方法並びにシステムが提供される。例えば、使用済み電解質由来のカリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)不純物を有する水酸化アルミニウム(ATH)が強酸に溶解されて、pH<4を有する酸性ATH溶液が形成されてもよい。続いて、この酸性ATH溶液がpH>4に中和されて、ATHが沈殿されるとともに、溶解したK/Naが中和された溶液の中に保持されてもよい。次いで、沈殿したATHの特定の純度レベルに達するまで、沈殿したATHを用いて上記溶解及び上記中和が繰り返されてもよい。酸性のATH溶液を中和するために適切な塩基、例えば、アンモニア及び/又はコリンを使用すると、それぞれ硝酸アンモニウム(強酸として硝酸を使用)及び塩化コリン(強酸として塩酸を使用)等の有用な共生成物が得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)不純物を有する水酸化アルミニウム(ATH)を少なくとも1種の強酸に溶解して、pH<4を有する酸性ATH溶液を形成する工程と、
前記酸性ATH溶液をpH>4に中和して、ATHを沈殿させるとともに、溶解したK/Naを中和された前記溶液の中に保持する工程と、
前記沈殿したATHの特定の純度レベルに達するまで、前記沈殿したATHを用いて前記溶解すること及び前記中和することを繰り返す工程と
を含む方法。
【請求項2】
高純度アルミナ(HPA)を提供する99.99%の特定の純度レベルを得るために、前記繰り返す工程が少なくとも2回又は3回行われる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
HPAを提供する99.999%の特定の純度レベルを得るために、前記繰り返す工程が少なくとも4回又は5回行われる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
K/Na不純物を有する前記ATHが、空気アルミニウム電池の使用済み電解質からの沈殿によって提供される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アルカリ性不純物を有する金属空気電池動作物の金属水酸化物残渣を少なくとも1種の強酸に溶解して、pH<4を有する酸性金属水酸化物溶液を形成する工程と、
前記酸性金属水酸化物溶液をpH>4に中和して、金属水酸化物を沈殿させるとともに、溶解したアルカリ分を中和された前記溶液の中に保持する工程と、
前記沈殿した金属水酸化物の特定の純度レベルに達するまで、前記沈殿した金属水酸化物を用いて前記溶解すること及び前記中和することを繰り返す工程と
を含む方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の強酸が、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)及び硝酸(HNO)のうちの少なくとも1つを含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記中和することが、それぞれの少なくとも1種の強酸との共生成物塩をもたらす塩基によって行われる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基がアンモニアを含み、前記共生成物塩が窒素肥料である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記塩基がコリンを含み、前記少なくとも1種の強酸が少なくともHClを含み、前記共生成物塩が動物飼料補助剤としての塩化コリンである請求項7に記載の方法。
【請求項10】
カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)不純物を有する水酸化アルミニウム(ATH)を少なくとも1種の強酸に溶解して、pH<4を有する酸性ATH溶液を形成すること、並びに前記酸性ATH溶液をpH>4に中和して、ATHを沈殿させるとともに、溶解したK/Naを中和された前記溶液の中に保持することを行うように構成されている少なくとも1つの反応器と、
前記少なくとも1種の強酸及び少なくとも1種の中和塩基を前記少なくとも1つの反応器に送出すること、並びに中和された前記溶液の中の前記保持された溶解したK/Naを前記少なくとも1つの反応器から除去することを行うように構成されている配管と、
前記沈殿したATHの特定の純度レベルに達するまで、前記沈殿したATHを用いて前記溶解すること及び前記中和することを繰り返すように構成されているコントローラと
を含むシステム。
【請求項11】
前記コントローラが、高純度アルミナ(HPA)を提供する99.99%の特定の純度レベルを得るために、前記溶解すること及び前記中和することを少なくとも2回又は3回繰り返すように構成されている請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記コントローラが、HPAを提供する99.999%の特定の純度レベルを得るために、前記溶解すること及び前記中和することを少なくとも4回又は5回繰り返すように構成されている請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
K/Na不純物を有する前記ATHが、空気アルミニウム電池の使用済み電解質からの沈殿によって提供される請求項10から請求項12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
アルカリ性不純物を有する金属空気電池動作物の金属水酸化物残渣を少なくとも1種の強酸に溶解して、pH<4を有する酸性金属水酸化物溶液を形成すること、及び前記酸性金属水酸化物溶液をpH>4に中和して、金属水酸化物を沈殿させるとともに、溶解したアルカリ分を中和された前記溶液の中に保持することを行うように構成されている少なくとも1つの反応器と、
前記少なくとも1種の強酸及び少なくとも1種の中和塩基を前記少なくとも1つの反応器に送出すること、並びに中和された前記溶液の中の前記保持された溶解したアルカリ分を前記少なくとも1つの反応器から除去することを行うように構成されている配管と、
前記沈殿した金属水酸化物の特定の純度レベルに達するまで、前記沈殿した金属水酸化物を用いて前記溶解すること及び前記中和することを繰り返すように構成されているコントローラと
を含むシステム。
【請求項15】
前記少なくとも1種の強酸が、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)及び硝酸(HNO)のうちの少なくとも1つを含む請求項10から請求項14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
前記中和することが、それぞれ少なくとも1種の強酸との共生成物塩をもたらす塩基によって行われる請求項10から請求項15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
前記塩基がアンモニアを含み、前記共生成物塩が窒素肥料である請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記塩基がコリンを含み、前記少なくとも1種の強酸が少なくともHClを含み、前記共生成物塩が動物飼料補助剤としての塩化コリンである請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学プロセスの分野に関し、より詳細には、高純度アルミナ(HPA)の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
高純度アルミナ(HPA)は、Alベースで99.99重量%超の全体純度を有する1つのクラスの酸化アルミニウム材料である。HPAは、発光ダイオード(LED)、合成サファイアガラス(携帯電話の画面)、半導体ウェハー、Liイオン電池等のハイエンド製品に必要な成分であることから、ここ3~4年で劇的な成長を遂げている。高純度アルミナ(HPA)の市場は、2015年には25,000トンと推定され、2025年までの年平均成長率(CAGR)は15~30%と推定されている。販売価格は純度レベルによって決まり、4N(99.99%)グレードが約25,000ドル/トン、5N(99.999%)グレードが約50,000ドル/トンである。この高い価格は、現在の製造では複雑な処理が行われているためである。ほぼすべての既存の製造では、高純度のアルミニウム金属を原料として、アルコキシド加水分解、コリン沈殿、ミョウバン熱分解等の多段階の化学処理ルートを使用している。これらのプロセスは、住友化学、Sasol(アルコキシド加水分解)、Heibi Pengda(コリン沈殿)、Baikowski、Zibo Xinfumeng(ミョウバン分解)等の既存のメーカーによって行われている。他のメーカー(Orbite、Altech)は、アルミノシリケート粘土鉱石の酸溶解精製に基づく新しいHPAプロセスを商業化する意図を発表している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
以下は、本発明の最初の理解を提供する簡略化された要約である。この要約は、必ずしも重要な要素を特定したり、本発明の範囲を限定したりするものではなく、単に以下の説明の導入部として機能するものである。
【0004】
本発明の1つの態様は、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)不純物を有する水酸化アルミニウム(ATH)を少なくとも1種の強酸に溶解して、pH<4を有する酸性ATH溶液を形成する工程と、この酸性ATH溶液をpH>4に中和して、ATHを沈殿させるとともに、溶解したK/Naをこの中和された溶液の中に保持する工程と、沈殿したATHの特定の純度レベルに達するまで、この沈殿したATHを用いて上記溶解すること及び上記中和することを繰り返す工程とを含む方法を提供する。
【0005】
本発明の1つの態様は、アルカリ性不純物を有する金属空気電池動作物の金属水酸化物残渣を少なくとも1種の強酸に溶解して、pH<4を有する酸性金属水酸化物溶液を形成する工程と、この酸性金属水酸化物溶液をpH>4に中和して、金属水酸化物を沈殿させるとともに、溶解したアルカリ分をこの中和された溶液の中に保持する工程と、沈殿した金属水酸化物の特定の純度レベルに達するまで、この沈殿した金属水酸化物を用いて上記溶解すること及び上記中和することを繰り返す工程とを含む方法を提供する。
【0006】
本発明の1つの態様は、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)不純物を有する水酸化アルミニウム(ATH)を少なくとも1種の強酸に溶解して、pH<4を有する酸性ATH溶液を形成すること、並びにこの酸性ATH溶液をpH>4に中和して、ATHを沈殿させるとともに、溶解したK/Naをこの中和された溶液の中に保持することを行うように構成されている少なくとも1つの反応器と、上記少なくとも1種の強酸及び少なくとも1種の中和塩基を上記少なくとも1つの反応器に送出すること、並びに中和された溶液の中の保持された溶解したK/Naを上記少なくとも1つの反応器から除去することを行うように構成されている配管と、上記沈殿したATHの特定の純度レベルに達するまで、その沈殿したATHを用いて上記溶解すること及び上記中和することを繰り返すように構成されているコントローラとを含むシステムを提供する。
【0007】
本発明の1つの態様は、アルカリ性不純物を有する金属空気電池動作物の金属水酸化物残渣を少なくとも1種の強酸に溶解して、pH<4を有する酸性金属水酸化物溶液を形成すること、及びこの酸性金属水酸化物溶液をpH>4に中和して、金属水酸化物を沈殿させるとともに、溶解したアルカリ分をこの中和された溶液の中に保持することを行うように構成されている少なくとも1つの反応器と、上記少なくとも1種の強酸及び少なくとも1種の中和塩基を上記少なくとも1つの反応器に送出すること、並びに中和された溶液の中の保持された溶解したアルカリ分を上記少なくとも1つの反応器から除去することを行うように構成されている配管と、上記沈殿した金属水酸化物の特定の純度レベルに達するまで、その沈殿した金属水酸化物を用いて上記溶解すること及び上記中和することを繰り返すように構成されているコントローラとを含むシステムを提供する。
【0008】
本発明のこれらの、追加の、及び/若しくは他の態様並びに/又は利点は、以下の詳細な説明に記載されており、詳細な説明から推論できる可能性があり、及び/又は本発明の実施によって学ぶことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の実施形態をよりよく理解するために、また、本発明がどのように実施されうるかを示すために、これより、純粋に例示として、添付の図面を参照することにする。図面では、全体にわたって同様の数字は対応する要素又はセクションを示す。
【0010】
図1図1は、本発明のいくつかの実施形態に係るシステムの高レベルの模式的ブロック図である。
図2図2は、本発明のいくつかの実施形態に係る方法を示す高レベルのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明では、本発明の様々な態様が記載される。説明の目的のために、本発明の完全な理解を提供するために、特定の構成及び詳細が示されている。しかしながら、本発明は、本明細書中に示された特定の詳細がなくても実施できることも、当業者には明らかであろう。さらには、周知の特徴は、本発明を不明瞭にしないために、省略又は簡略化されている可能性がある。図面を具体的に参照するとき、示された特定事項は例示であり、本発明の説明的な論述を目的としたものに過ぎず、本発明の原理及び概念的側面についての最も有用で容易に理解できる説明であると考えられるものを提供することを目的として提示されていることが強調される。この点において、本発明の基本的な理解に必要な以上に、本発明の構造的な詳細を示す試みはなされておらず、図面を用いて解釈される説明は、本発明のいくつかの形態がどのように実際に具現化されうるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
本発明の少なくとも1つの実施形態が詳細に説明される前に、本発明は、以下の説明に記載された、又は図面に示された構造の詳細及び構成要素の配置にその適用が限定されないことを理解されたい。本発明は、様々な方法で実施又は遂行されてもよい他の実施形態に適用可能であるだけでなく、開示された実施形態の組み合わせにも適用可能である。本明細書で採用されている言い回しや専門用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではないことも理解されたい。
【0013】
本発明の実施形態は、高純度アルミナ(HPA)を製造するため、並びにHPAと肥料及び/又は飼料補助剤(サプリメント)との同時製造のための効率的かつ経済的な方法及び機構を提供する。空気アルミニウム電池由来の使用済み電解質を、HPAと、肥料及び/又は飼料補助剤等の有用な共生成物とに変換する方法並びにシステムが提供される。例えば、使用済み電解質由来のカリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)不純物を有する水酸化アルミニウム(三水酸化アルミニウム、ATH)が、強酸に溶解されて、pH<4を有する酸性ATH溶液が形成されてもよい。続いて、この酸性ATH溶液がpH>4に中和されて、ATHが沈殿されるとともに、溶解したK/Naが中和された溶液の中に保持されてもよい。次いで、沈殿したATHの特定の純度レベルに達するまで、沈殿したATHを用いて上記溶解及び上記中和が繰り返されてもよい。酸性ATH溶液を中和するために適切な塩基、例えば、アンモニア及び/又はコリンを使用すると、それぞれ硝酸アンモニウム(強酸として硝酸を使用)及び塩化コリン(強酸として塩酸を使用)等の有用な共生成物が得られる。
【0014】
特定の実施形態は、電池由来の水酸化アルミニウム固体を99.99重量%超の高純度アルミナに変換するとともに、価値のある肥料及び飼料補助化学製品を同時製造するプロセスを含む。空気アルミニウム電池は、高純度のアルミニウム金属を使用して電気化学的に電気を生成する。電池の動作中には、高純度のアルミニウム金属及び水酸化カリウム/水酸化ナトリウムの液体電解質が消費される。その結果として得られる液は、液体のアルミン酸カリウム/ナトリウム溶液として電解質に溶解したアルミニウムからなる。この溶液を固体の水酸化アルミニウムと再生/再利用可能な水酸化カリウム/水酸化ナトリウム電解質に変換する再生プロセスがこれまでに開発されている。電池に使用されるアルミニウムは、当初は非常に高純度(99.99%超のAl)であるが、再生プロセスから得られる水酸化アルミニウムは、従来の洗浄では容易に除去できない大量のカリウム/ナトリウム不純物(0.5重量%超)を含有する。
【0015】
図1は、本発明のいくつかの実施形態に係るシステム100の高レベルの模式的ブロック図である。システム100は、システム100によって取り扱われる材料の観点から概略的に説明されており、システム100は、模式的な図解では詳細に示されていない容器、反応器、配管等を含むことに留意されたい。図2は、本発明のいくつかの実施形態に係る方法200を示す高レベルのフロー図である。方法の段階は、方法200を実施するように任意に構成されてもよいシステム100に関して実施されてもよい。方法200は、以下の段階をその順序によらず含んでもよい。
【0016】
システム100は、カリウム(K)及び/又はナトリウム(Na)不純物110を有する水酸化アルミニウム(ATH)を少なくとも1種の強酸130に溶解して、pH<4を有する酸性ATH溶液を形成すること、並びにこの酸性ATH溶液をpH>4に中和して、ATH120を沈殿させるとともに、溶解したK/Naを中和された溶液135の中に保持することを行うように構成されている少なくとも1つの反応器105を含む。システム100は、強酸(複数種可)130及び中和塩基(複数種可)142を反応器(複数可)105に送出すること、並びに中和された溶液135の中の保持された溶解したK/Na並びに/又は追加の生成物(複数種可)145を反応器(複数可)105から除去することを行うように構成されている配管115(模式的に示されているが、場合によっては、酸(複数種可)130、塩基(複数種可)142、溶液(複数種可)135及び生成物145のための容器及び/又は供給源をさらに含む)をさらに含む。システム100は、高純度アルミナ(HPA)160を得るために、沈殿したATHの特定の純度レベルに達するまで、沈殿したATH(120→110)を用いて上記溶解及び上記中和を繰り返すように構成されているコントローラ125をさらに含む。
【0017】
これに対応して、方法200は、K/Na不純物を有するATHを少なくとも1種の強酸に溶解して、pH<4を有する酸性ATH溶液を形成する工程(段階210)と、酸性ATH溶液をpH>4に中和して、ATHを沈殿させるとともに、溶解したK/Naを中和された溶液の中に保持する工程(段階220)と、沈殿したATHの特定の純度レベルに達するまで、沈殿したATHを用いて上記溶解及び上記中和を繰り返す工程(段階230)とを含む。
【0018】
K/Na不純物を有するATH95は、空気アルミニウム電池の使用済み電解質からの沈殿によって提供されてもよく(段階212)、それによって、使用済み電解質の副生成物が価値ある製品HPAに変換される。例えば、方法200は、空気アルミニウム電池動作物の使用済み電解質から少なくとも部分的に受け取ったATHを使用することを含んでもよく、又はより一般的には、方法200の実施形態は、金属空気電池動作物の金属水酸化物残渣に少なくとも部分的に適用されてもよい。開示された実施形態のいずれかが、Zn-空気等の他の金属空気電池に適用されて、高純度ZnO等の対応する高純度材料が得られてもよいことに留意されたい。
【0019】
特定の実施形態では、システム100及び/又は方法200は、非限定的な例として、場合によっては空気アルミニウム電池動作物の金属水酸化物残渣として受け取った、開示されたATHを用いて、金属空気電池動作物の金属水酸化物残渣からアルカリ性不純物を除去することを含んでもよい。
【0020】
様々な実施形態において、強酸(複数種可)130は、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)及び硝酸(HNO)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0021】
様々な実施形態において、中和140(及び中和段階220)は、それぞれの強酸(複数種可)130との共生成物塩(複数種可)145をもたらす塩基(複数種可)142によって行われてもよく(段階222)、例えば、塩基142はアンモニアを含んでもよく、追加生成物145としての共生成物塩は窒素肥料150を含んでもよく、及び/又は塩基142はコリンを含んでもよく、強酸(複数種可)130はHClを含んでもよく、追加生成物145としての共生成物塩は動物飼料補助剤150としての塩化コリンを含んでもよい(段階224)。
【0022】
様々な実施形態において、コントローラ125は、HPA160を提供する99.99%の特定の純度レベルを得るために、溶解210及び中和220を少なくとも2回若しくは3回繰り返すように構成されてもよく、及び/又はコントローラ125は、HPA160を提供する99.999%の特定の純度レベルを得るために、溶解210及び中和220を少なくとも4回若しくは5回繰り返すように構成されてもよい(段階232)。
【0023】
有利なことに、いくつかの開示された実施形態は、電解質再生プロセスによって水酸化アルミニウム(ATH)に変換されてもよい、空気アルミニウム電池で使用される高純度のアルミニウムを利用する。空気アルミニウム電池から受け取った場合、沈殿したATHは、再生プロセスからカリウム/ナトリウムが混入している可能性があるが、他の成分(例えば、Fe、Si等)については元のアルミニウムの高純度レベルを保持している。開示された実施形態では、カリウム/ナトリウムの混入は、ATHを塩酸(HCl)、硫酸(HSO)又は硝酸(HNO)等の強酸に溶解して、溶液中にアルミニウム及びカリウム/ナトリウムの共役塩を形成することによって除去されてもよい。その結果、pH>4に中和することで、ATHを沈殿させるとともに、カリウム/ナトリウム塩(例えば、カリウム/ナトリウムの硝酸塩、硫酸塩、及び/又は塩化物)は溶液中に維持される。濾過して洗浄した後、沈殿した固体のATHは、通常95%超のカリウム/ナトリウム混入物質を失う。このプロセスは、所望のアルミナ純度が得られるまで数回繰り返されてもよく、例えば、特定の実施形態では、4N(99.99%の純度)HPAには3回の精製段階が必要である場合があり、5N(99.999%の純度)HPAには5~6回の精製段階が必要である場合がある。
【0024】
本発明者らは、典型的な化学処理では、石灰(CaO)又は苛性ソーダ(NaOH)等の低コストの化学物質が酸性塩溶液を中和するために使用されることがあるが、開示された実施形態は、HPA製品に不要な不純物(Ca又はNa)が導入されるのを避けるために、石灰又は苛性ソーダの使用を避けることに留意する。代わりに、開示された実施形態は、出発する強酸と実行可能な共生成物塩を生成する中和化学物質(塩基)を使用し、形成された溶液の廃棄を回避し、HPAの異物混入を防止する。非限定的な例では、アンモニア塩基及び/又はコリン塩基が中和化合物として使用されてもよく、共生成物はそれぞれ、窒素肥料化学物質(硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム及び/若しくは塩化アンモニウム)並びに/又は塩化コリン等の動物飼料補助剤を含む。有利なことに、開示された実施形態では、空気アルミニウム電池の使用済み電解質からHPA及び有用な共生成物の両方が得られる。有利なことに、開示された実施形態では、使用済み電解質からカリウム/ナトリウム不純物を除去して、所定の品質(例えば、4N、5N等)のHPAを得るために、多段階の溶解-再沈殿プロセスを採用する。このプロセスで使用する酸及び塩基を適正に選択することで、塩の廃液ではなく、肥料及び/又は飼料補助剤等の貴重な共生成物がさらに提供される。対照的に、アルコキシド加水分解、ミョウバン分解、粘土溶解等の既存のプロセスは、廃液の排出/処分を避けるために、その作業化学物質(アルコール又は酸)を再生し、リサイクルするための複雑な内部化学プロセスを必要とする。
【0025】
特定の実施形態では、硝酸による使用済み電解質の中和(段階210)により、ATHを沈殿させ、ATHを硝酸アルミニウムへと再溶解させることは、化学反応式Al(OH)+3HNO→Al(NO+3HOに従って行われてもよく、同時にK/Na塩(硝酸カリウム/硝酸ナトリウム)形成135は、化学反応式KOH+HNO→KNO+HO(Kについて)に従って行われる。酸の中和(段階220)は、純粋なATHを沈殿させ、肥料として使用されてもよい硝酸アンモニウム(NHNO)を化学反応式Al(NO+NHOH→Al(OH)↓+NHNO及びKNO+NHOH→KOH+NHNO(Kの場合)に従って得るために、塩基142としてアンモニアを用いて実施されてもよい。開示された例はKに言及しているが、同等の化合物及び反応はNaにも適用可能である(例えば、KOHを少なくとも部分的に置換したNaOHで動作する空気アルミニウム電池90を用いて)ことに留意されたい。
【0026】
特定の実施形態では、塩酸による使用済み電解質の中和(段階210)により、ATHを沈殿させ、ATHを塩化アルミニウムへと再溶解させることは、化学反応式Al(OH)+3HCl→AlCl+3HOに従って行われてもよく、同時にK/Na塩(塩化カリウム/塩化ナトリウム)形成135は、化学反応式KOH+HCl→KCl+HO(Kについて)に従って行われる。酸の中和(段階220)は、純粋なATHを沈殿させて、飼料補助剤として使用されてもよい塩化コリン((CHN(Cl)CHCHOH)を化学反応式AlCl+(CHNOH→Al(OH)↓+(CHNCl及びKCl+(CHNOH→KOH+(CHN(Cl)CHCHOH)(Kについて)に従って得るために、塩基142としてコリンを用いて実施されてもよい。
【0027】
以上の説明において、一実施形態は、本発明の一例又は実施態様である。「1つの実施形態」、「一実施形態」、「特定の実施形態」又は「いくつかの実施形態」の様々な登場は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すものではない。本発明の様々な特徴は、単一の実施形態の文脈で説明されることがあるが、それらの特徴は、別々に又は任意の適切な組み合わせで提供されてもよい。逆に、本発明は、明確にするために別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されることがあるが、本発明は、単一の実施形態で実施されてもよい。本発明の特定の実施形態は、上で開示された異なる実施形態からの特徴を含んでもよく、特定の実施形態は、上で開示された他の実施形態からの要素を組み込んでもよい。特定の実施形態の文脈における本発明の要素の開示は、特定の実施形態のみでの使用を限定するものとはみなされない。さらには、本発明は様々な方法で実行又は実施することができ、本発明は上記の説明で概説したもの以外の特定の実施形態で実施することができることを理解されたい。
【0028】
本発明は、それらの図又は対応する説明に限定されるものではない。例えば、フローは、図示された各ボックスや状態を通って移動する必要はなく、また、図示され説明されたものと全く同じ順序で移動する必要もない。本明細書で使用される技術用語及び科学用語の意味は、特に定義されていない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものである。本発明は限られた数の実施形態に関して説明されてきたが、これらは本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、むしろ好ましい実施形態の一部を例示するものであると解釈されるべきである。他の可能な変形例、変更例、及び応用例もまた、本発明の範囲内である。従って、本発明の範囲は、これまで説明してきた内容によって限定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びその法的な均等物によって限定されるべきである。
図1
図2
【国際調査報告】