(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(54)【発明の名称】金属電池および金属イオン電池用の非水電解質用のカーボネート溶媒
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20220613BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20220613BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220613BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20220613BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20220613BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20220613BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220613BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220613BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20220613BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20220613BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/13
H01M4/66 A
H01M10/0568
H01M10/0567
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M10/054
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021558568
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(85)【翻訳文提出日】2021-11-02
(86)【国際出願番号】 IB2020053563
(87)【国際公開番号】W WO2020212872
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226816
【氏名又は名称】エスセエ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コジェリ, マティアジュ
(72)【発明者】
【氏名】プティ, セシル
(72)【発明者】
【氏名】ペイイェ, サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017CC01
5H017EE05
5H017HH01
5H017HH10
5H029AJ13
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029DJ07
5H029EJ01
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ07
5H029HJ10
5H029HJ18
5H050AA18
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA08
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA07
5H050HA10
5H050HA18
(57)【要約】
アルミニウム集電体と、溶媒として式(I):(I)のカーボネート化合物を含む低腐食性非水電解質と、を含む、金属電池または金属イオン電池が提供される。この電池は、約4.2V以上の上限電圧を有し、該電圧での電池動作中のアルミニウムのアノード溶解が抑制される。本発明は、電池用の非水電解質用のカーボネート溶媒に関する。より具体的には、本発明は、Li金属に対して4.2Vより高い電圧でアルミニウム集電体に対するそれらの腐食性が低いことを特徴とする非水電解質用のカーボネート溶媒に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属電池または金属イオン電池であって、
(a)アルミニウム集電体を含み、かつLi金属基準電極に対して約4.2V以上の上限電位を有するカソードと、
(b)アノードと、
(c)前記アノードおよび前記カソードを分離するセパレータ膜と、
(d)前記アノードおよび前記カソードと接触する低腐食性非水電解質と、を含み、
前記電池が約4.2V以上の上限電圧を有し、
前記アルミニウム集電体におけるアルミニウムのアノード溶解が、前記上限電圧までの電圧で電池動作中に抑制されており、
前記電解質が、溶媒として式(I):
【化11】
[式中、
R
1は、C
3~C
24アルキル、C
3~C
24アルコキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表し、
R
2は、C
1~C
24アルキル、C
1~C
24ハロアルキル、C
2~C
24アルコキシアルキル、C
2~C
24アルキロイルオキシアルキル、C
3~C
24アルコキシカルボニルアルキル、C
1~C
24シアノアルキル、C
1~C
24チオシアナトアルキル、C
3~C
24トリアルキルシリル、C
4~C
24トリアルキルシリルアルキル、C
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、C
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)、C
5~C
24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)またはC
6~C
24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(プロピレングリコール)を表す]
のカーボネート化合物と、前記溶媒に溶解した導電性塩と、を含む、金属電池または金属イオン電池。
【請求項2】
前記カソードの前記上限電位が、Li金属基準電極に対して、約4.4V以上、好ましくは約4.6V以上、約4.8V以上、約5.0V以上、約5.2V以上、約5.4V以上または約5.5V以上である、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電池の前記上限電圧が、約4.4V以上、好ましくは約4.6V以上、より好ましくは約4.8V以上、なおより好ましくは約5.0V以上、さらにより好ましくは約5.2V以上、より好ましくは約5.4V以上または最も好ましくは約5.5V以上である、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
R
1が、C
3~C
24アルキルまたはC
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、好ましくはC
3~C
24アルキルを表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の電池。
【請求項5】
R
2が、C
1~C
24アルキル、C
2~C
24アルコキシアルキル、C
1~C
24シアノアルキル、C
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキル、C
5~C
24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)またはC
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、好ましくはC
1~C
24アルキルを表す、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池。
【請求項6】
R
1およびR
2における炭素原子の合計が、
5個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは7個以上、なおより好ましくは8個以上、そして最も好ましくは9個以上、および/または
24個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは16個以下、なおより好ましくは14個以下、さらにより好ましくは12個以下、そして最も好ましくは10個以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の電池。
【請求項7】
R
2がメチルまたはエチルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の電池。
【請求項8】
R
1および/またはR
2が、プロピルまたはイソプロピル(2-プロピル)である、請求項1~7のいずれか一項に記載の電池。
【請求項9】
R
1および/またはR
2が、ブチル、2-ブチル、3-ブチル、イソブチル(3-メチルプロピル)またはtertブチル(2,2-ジメチルエチル)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の電池。
【請求項10】
R
1および/またはR
2が、ペンチルまたはその異性体(2-ペンチルおよび3-ペンチルを含む)のうちの1つ、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-メチル-2-ブチルおよび2-メチル-2-ブチル)である、請求項1~9のいずれか一項に記載の電池。
【請求項11】
R
1および/またはR
2が、ヘキシルまたはその異性体(2-ヘキシルおよび3-ヘキシルを含む)のうちの1つ、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、2-エチルブチルおよび3-エチル-2-ブチル)である、請求項1~10のいずれか一項に記載の電池。
【請求項12】
R
1および/またはR
2が、ヘプチル、その異性体のうちの1つ、または2-エチルヘキシルである、請求項1~11のいずれか一項に記載の電池。
【請求項13】
R
1および/またはR
2が、2-メトキシエチルまたは2-イソプロポキシエチルである、請求項1~12のいずれか一項に記載の電池。
【請求項14】
R
2が2-シアノエチルである、請求項1~13のいずれか一項に記載の電池。
【請求項15】
R
2が(2-トリメチルシリルオキシ)エチルである、請求項1~14のいずれか一項に記載の電池。
【請求項16】
R
1および/またはR
2が、2-メトキシエチル、2-イソプロポキシエチルまたは2-(2-メトキシエトキシ)エチルである、請求項1~15のいずれか一項に記載の電池。
【請求項17】
R
2が2-トリメチルシリルオキシエチルである、請求項1~16のいずれか一項に記載の電池。
【請求項18】
前記式(I)のカーボネート化合物が、ジドデシルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、エチルドデシルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、メチル2-ペンチルカーボネート、ジ(2-ペンチル)カーボネート、2-ブチルメチルカーボネート、ジ(2-ブチル)カーボネート、2-エチルブチルメチルカーボネート、ジ(2-エチルブチル)カーボネート、イソブチルイソプロピルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネート、ジ(2-メトキシエチル)カーボネート、2-イソプロポキシエチルメチルカーボネート、ジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートまたはジ(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)カーボネートである、請求項1~17のいずれか一項に記載の電池。
【請求項19】
前記式(I)の化合物が、ジドデシルカーボネート、ジブチルカーボネート、2-エチルブチルメチルカーボネート、ジ(2-エチルブチル)カーボネート、ジ(2-ブチル)カーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、ジ(2-ペンチル)カーボネート、エチルドデシルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネート、ジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートまたはジイソブチルカーボネートである、請求項1~18のいずれか一項に記載の電池。
【請求項20】
前記式(I)の化合物が、ジドデシルカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、エチルドデシルカーボネートまたはジイソブチルカーボネート、好ましくはジイソブチルカーボネートである、請求項1~19のいずれか一項に記載の電池。
【請求項21】
前記導電性塩が、
・LiClO
4、
・LiP(CN)
αF
6-α[式中、αは0~6の整数である]、好ましくはLiPF
6、
・LiB(CN)
βF
4-β[式中、βは0~4の整数である]、好ましくはLiBF
4、
・LiP(C
nF
2n+1)
γF
6-γ[式中、nは1~20の整数であり、γは1~6の整数である]、
・LiB(C
nF
2n+1)
δF
4-δ[式中、nは1~20の整数であり、δは1~4の整数である]、
・Li
2Si(C
nF
2n+1)
εF
6-ε[式中、nは1~20の整数であり、εは0~6の整数である]、
・リチウムビスオキサラトボレート、
・リチウムジフルオロオキサラトボレートまたは
・以下の一般式:
【化12】
【化13】
[式中、
R
3は、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、水素または有機カチオンを表し、
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、シアノ、フッ素、塩素、1~24個の炭素原子を有する分岐状もしくは線状アルキルラジカル、1~24個の炭素原子を有する過フッ素化線状アルキルラジカル、アリール、ヘテロアリール、過フッ素化アリールもしくはヘテロアリールを表す]
のうちの1つによって表される化合物もしくはその誘導体である、請求項1~20のいずれか一項に記載の電池。
【請求項22】
前記導電性塩がスルホニルアミド塩である、請求項1~21のいずれか一項に記載の電池。
【請求項23】
前記導電性塩が、リチウム塩、好ましくはリチウムスルホニルアミド塩である、請求項1~22のいずれか一項に記載の電池。
【請求項24】
前記リチウムスルホニルアミド塩が、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSI)またはリチウムN-フルオロスルホニル-トリフルオロメタンスルホニルアミド(LiFTFSI)である、請求項23に記載の電池。
【請求項25】
前記導電性塩がLiFSIである、請求項24に記載の電池。
【請求項26】
前記導電性塩が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムまたはマグネシウム塩である、請求項1~22のいずれか一項に記載の電池。
【請求項27】
前記導電性塩が、前記電解質中に、少なくとも約0.05M、少なくとも約0.1M、少なくとも約0.5Mもしくは少なくとも約1M、および/または最大約3M、最大約2M、最大約1.5Mもしくは最大約1Mの濃度で存在する、請求項1~26のいずれか一項に記載の電池。
【請求項28】
前記電解質中の前記導電性塩の前記濃度が1Mである、請求項27に記載の電池。
【請求項29】
前記電解質が、1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の電池。
【請求項30】
前記1つ以上の添加剤が、
・固体電解質界面およびサイクル特性を改善する薬剤、
・高電圧および低電圧における安定性を改善する不飽和カーボネート、ならびに/または
・粘度を低下させ、かつ導電性を増加させる有機溶媒である、請求項29に記載の電池。
【請求項31】
固体電解質界面(SEI)およびサイクル特性を改善する前記薬剤、ならびに前記不飽和カーボネートが、合わせて合計で、前記電解質の総重量の少なくとも約0.1%w/w、少なくとも1%w/w、少なくとも約2%w/w、少なくとも約5%w/wもしくは少なくとも約7%w/w、および/または最大約20%w/w、最大約15%w/w、最大約10%w/wもしくは最大約7%w/wに相当する、請求項30に記載の電池。
【請求項32】
粘度を低下させ、かつ導電性を増加させる前記有機溶媒が、合計で、前記電解質の総体積の少なくとも約1%v/v、少なくとも約2%v/v、少なくとも約5%v/vもしくは少なくとも約7%v/v、および/または最大約80%v/v、最大約50%v/v、最大約20%v/v、最大約15%v/v、最大約10%v/vもしくは最大約7%v/vに相当する、請求項30または31に記載の電池。
【請求項33】
前記式(I)のカーボネート化合物が、前記電解質中の唯一の溶媒である、請求項1~29のいずれか一項に記載の電池。
【請求項34】
前記1つ以上の添加剤が、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)またはそれらの混合物である、請求項29~32のいずれか一項に記載の電池。
【請求項35】
前記1つ以上の添加剤が、FEC、好ましくは約2w/w%のFECであり、単独であるか、またはEC、DECもしくは混合物と一緒になっており、したがって、好ましくは、単独であるか、または
・約5%v/vのEC、
・約10%v/vのEC、
・約15%v/vのEC、
・約20%v/vのEC、
・約30%v/vのEC、
・約20%v/vのECとDECとの混合物、
・約25%v/vのECとDECとの混合物、
・約30%v/vのECとDECとの混合物、
・約50%v/vのECとDECとの混合物、
・約70%v/vのECとDECとの混合物、もしくは
・約75%v/vのECとDECとの混合物
と一緒になっており、前記混合物が、好ましくは、約1:10~約1:1、好ましくは約3:7のEC:DEC体積比を有し、
全てのw/w%が前記電解質の総重量に基づいており、全てのv/v%が前記電解質の総体積に基づいている、請求項34に記載の電池。
【請求項36】
前記式(I)のカーボネート化合物、前記式(I)のカーボネート化合物が、前記電解質の総体積の少なくとも約25%v/v、好ましくは少なくとも約50%v/v、より好ましくは少なくとも約75%v/v、なおより好ましくは少なくとも約85%v/v、さらにより好ましくは少なくとも約90%v/v、そして最も好ましくは少なくとも約95%に相当する、請求項1~35のいずれか一項に記載の電池。
【請求項37】
前記電解質が腐食抑制剤を含まない、請求項1~36のいずれか一項に記載の電池。
【請求項38】
前記電解質が、LiPF6、リチウムシアノフルオロホスフェート、リチウムフルオロオキサラトホスフェート、LiDFOB、LiBF4、リチウムフルオロシアノボレートまたはLiBOBのような1つ以上の腐食抑制剤をさらに含む、請求項1~36のいずれか一項に記載の電池。
【請求項39】
前記腐食抑制剤が、合計で、前記電解質の総重量の少なくとも約1%w/w、少なくとも約2%w/w、少なくとも約5%w/wもしくは少なくとも約10%w/w、および/または最大約35%w/w、最大約25%w/w、最大約20%w/w、最大約15%w/w、最大約10%w/wもしくは最大約7%w/wに相当する、請求項37に記載の電池。
【請求項40】
リチウム電池またはリチウムイオン電池、好ましくはリチウムイオン電池である、請求項1~38のいずれか一項に記載の電池。
【請求項41】
前記アノードがリチウム金属またはグラファイト製である、請求項40に記載の電池。
【請求項42】
前記カソードが、前記アルミニウム集電体上に配置されたリチウム化合物を含み、前記リチウム化合物が、好ましくは、
・LNO(LiNiO
2)、LMO(LiMn
2O
4)、LiCo
xNi
1-xO
2[式中、xは0.1~0.9である]、LMC(LiMnCoO
2)、LiCu
xMn
2-xO
4、NMC(LiNi
xMn
yCo
zO
2)もしくはNCA(LiNi
xCo
yAl
zO
2)のような、遷移金属のリチウム化酸化物、または
・LFP(LiFePO
4)、LNP(LiNiPO
4)、LMP(LiMnPO
4)、LCP(LiCoPO
4)、Li
2FCoPO
4;LiCo
qFe
xNi
yMn
zPO
4もしくはLi
2MnSiO
4のような、遷移金属と錯アニオンとのリチウム化合物である、請求項40または41に記載の電池。
【請求項43】
前記リチウム化合物がLMNまたはLCOである、請求項42に記載の電池。
【請求項44】
ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、カリウム電池、カリウムイオン電池、マグネシウム電池、マグネシウムイオン電池、アルミニウム電池またはアルミニウムイオン電池である、請求項1~39のいずれか一項に記載の電池。
【請求項45】
式(I):
【化14】
[式中、
R
1は、C
3~C
24アルキル、C
3~C
24アルコキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表し、
R
2は、C
1~C
24アルキル、C
1~C
24ハロアルキル、C
2~C
24アルコキシアルキル、C
2~C
24アルキロイルオキシアルキル、C
3~C
24アルコキシカルボニルアルキル、C
1~C
24シアノアルキル、C
1~C
24チオシアナトアルキル、C
3~C
24トリアルキルシリル、C
4~C
24トリアルキルシリルアルキル、C
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、C
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)、C
5~C
24ω-O-シリルオリゴ(エチレングリコール)またはC
6~C
24ω-O-シリルオリゴ(プロピレングリコール)を表し、
ただし、R
2がC
1~C
9アルキルである場合、R
1は、C
10~C
24アルキル、C
3~C
24アルコキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表す]のカーボネート化合物。
【請求項46】
R
2がC
1~C
9アルキルである場合、R
1が、C
3~C
24アルコキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表す、請求項45に記載のカーボネート化合物。
【請求項47】
R
1およびR
2における炭素原子の合計が、
5個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは7個以上、なおより好ましくは8個以上、そして最も好ましくは9個以上、および/または
24個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは16個以下、なおより好ましくは14個以下、さらにより好ましくは12個以下、そして最も好ましくは10個以下である、請求項45または46に記載のカーボネート化合物。
【請求項48】
R
1が、C
3~C
24アルキル、C
3~C
24アルコキシアルキルまたはC
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、好ましくはC
3~C
24アルキルまたはC
3~C
24アルコキシアルキル、より好ましくはC
3~C
24アルキルを表す、請求項45~47のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項49】
R
2が、C
1~C
24アルキル、C
2~C
24アルコキシアルキル、C
1~C
24シアノアルキル、C
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキル、C
5~C
24ω-O-シリルオリゴ(エチレングリコール)またはC
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、好ましくはC
1~C
24アルキルまたはC
2~C
24アルコキシアルキル、より好ましくはC
1~C
24アルキルを表す、請求項45~48のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項50】
R
1がC
10~C
24アルキル(好ましくはC
12~C
24アルキル、より好ましくはC
14~C
24アルキル)を表し、R
2がC
1~C
24アルキルを表す、請求項45~49のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項51】
R
1がC
3~C
24アルキルを表し、R
2がC
1~C
24シアノアルキルを表す、請求項45~49のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項52】
前記シアノアルキルが2-シアノエチルである、請求項49に記載のカーボネート化合物。
【請求項53】
R
1がC
3~C
24アルキルを表し、R
2がC
2~C
24アルコキシアルキルを表す、請求項45~49のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項54】
R
1がC
3~C
24アルコキシアルキルを表し、R
2がC
1~C
24アルキルを表す、請求項45~49のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項55】
R
1およびR
2がどちらも、C
3~C
24アルコキシアルキルを表す、請求項45~49のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項56】
前記アルコキシアルキルが、2-メトキシエチルまたは2-イソプロポキシエチルである、請求項53~55のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項57】
R
1がC
3~C
24アルキルを表し、R
2がC
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキルを表す、請求項45~49のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項58】
前記トリアルキルシリルオキシアルキルが(2-トリメチルシリルオキシ)エチルである、請求項57に記載のカーボネート化合物。
【請求項59】
R
1およびR
2がどちらも、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)を表す、請求項45~49のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項60】
前記ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)が2-(2-メトキシエトキシ)エチルである、請求項59に記載のカーボネート化合物。
【請求項61】
前記式(I)のカーボネート化合物が、ジドデシルカーボネート、エチルドデシルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネート、ジ(2-メトキシエチル)カーボネート、2-イソプロポキシエチルメチルカーボネート、ジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートまたはジ(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)カーボネートである、請求項45~49のいずれか一項に記載のカーボネート化合物。
【請求項62】
前記式(I)の化合物が、ジドデシルカーボネート、エチルドデシルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネートまたはジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートである、請求項61に記載のカーボネート化合物。
【請求項63】
前記式(I)の化合物が、ジドデシルカーボネートまたはエチルドデシルカーボネートである、請求項62に記載のカーボネート化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用の非水電解質用のカーボネート溶媒に関する。より具体的には、本発明は、Li金属に対して4.2Vより高い電圧でアルミニウム集電体に対するそれらの腐食性が低いことを特徴とする非水電解質用のカーボネート溶媒に関する。
【背景技術】
【0002】
Li電池およびLiイオン電池について、電気通信のための、特に輸送セルの帯電のための新しい技術的解決策が提示されている。それらの目的は、より高い電圧のカソードを達成するために、そのような電池にできるだけ高いエネルギー密度を提供することである。しかしながら、これには、そのようなシステムの動作中に生じる高電位における酸化に対して耐性のある高性能電解質が必要とされる。また、他の寄生プロセスがシステムの劣化および故障を引き起こす可能性がある。そのような寄生プロセスの1つは、集電体の腐食または電解溶解であり、この寄生プロセスは、典型的には、4V超の電位で有意となる。
【0003】
ほとんどのリチウム電池システムおよびリチウムイオン電池システムで使用されている従来の電解質は、高電圧電池でも使用されており、多くの良好な特性を有するLiPF6塩をベースとしている。例えば、これは、アルミニウム集電体材料の大部分を不動態化し、良好な導電性を有し、かつ比較的安価である。しかしながら、これにはいくつかの欠点もあり、最も顕著なのは、水分に対する敏感性であり、それによって、電池の性能の急速な劣化を引き起こすHFが形成される。別の欠点は、その限られた熱安定性、ポリマー中での限られた溶解性、および有毒な分解生成物の放出である。従来の電解質の調製に使用されている溶媒は、安価に入手可能なC1~C2ジアルキルカーボネートおよび低級環状カーボネート、なかでもエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートである。
【0004】
リスクの高いLiPF6をより安全な代替物に置き換えるために、多くの塩が提示されている。そのような塩のうちの1つのクラスが、ビススルホニルアミドであり、実際に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド-LiTFSIが、ポリマー電解質を含む電解質の調製用の塩として提示されている。さらに、このクラスの他の化合物も提示されている。LiTFSIは、3.6Vより高い電圧でアルミニウム集電体の深刻なアノード溶解(誤って腐食と呼ばれる)を生じさせることが分かっている。これは、電池の充電に使用されるべき電気化学的電荷がアルミニウム溶解のために消費され、それによって、電池が実際には充電できないことを意味する。このプロセスがより小さな速度で生じる場合(電荷の一部のみが腐食プロセスによって消費されることを意味する)、電池を充電することはできるが、充電を繰り返すと、集電体がさらに溶解する。これによって、活性電極コーティングと集電体との間の接触がゆっくりと減少し、容量の損失がもたらされる。これによって、電池システムの多くの充放電を伴う長期動作に深刻な欠点が生じる。
【0005】
この理由から、これらの問題を克服すべく、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)アミド-LiBETIが開発されたが、その主な欠点は、その分子量が非常に高いこと、その価格が高いこと、および全ての長鎖ペルフルオロアルカンと同様に生体内にそれが蓄積することである。他方で、2つのより軽い塩が提示されている:リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド-LiFSIおよび不斉リチウムN-フルオロスルホニル-トリフルオロメタンスルホニルアミド-LiFTFSI。他の不斉ビスフルオロスルホニルアミドも提示されている。
【0006】
LiFSIを含有する電解質は、最大4.2Vの電圧に耐えることができると言及されている。しかしながら、これらの電解質がより高い電圧に耐えることができることは明確ではなく、実験的な証拠がない。
【0007】
スルホン系溶媒中でのアルミニウム集電体のアノード溶解についての調査が済んでいる。分子溶媒の代替物として、イオン性液体が、アルミニウムのアノード溶解を抑制するのに良好な溶媒として報告された。しかしながら、イオン性液体は容易には入手できず、それらの主な欠点は、それらの価格が高いことであり、そのため、電池システムにおける使用にとってはあまり魅力的ではない。
【0008】
LiTFSIによって引き起こされるアルミニウムコレクタのアノード溶解に対する様々な溶媒の影響についての調査が済んでいる。コレクタの腐食は、電解質溶媒に依存し、カーボネートおよびラクトンの存在下では腐食が強く、ニトリルの存在下では腐食が最小限であることが見出されている。そのような結論から、スルホニルアミド塩と共に使用する際のカーボネート溶媒の利用が推奨されない。
【0009】
アルミニウムのアノード溶解の抑制には、フルオロボレート、最も効果的にはリチウムジフルオロオキサラトボレート、LiDFOBによって影響を与えることができ、その欠点は、この添加剤の価格が比較的高いことである。
【0010】
また、LiPF6がアルミニウムアノード溶解抑制剤として使用され得る。しかしながら、アルミニウムのアノード溶解を効果的に抑制するためには、非常に高濃度のLiPF6が必要である。実際には、高濃度のため、そのような電解質は、LiPF6への添加剤としてLiFSIが用いられたLiPF6電解質として分類するのがより正確であろう。
【0011】
別の提示された解決策は、高濃度の電解質の使用である。しかしながら、そのようなシステムの不所望な高い価格および低温での結晶化問題を含むいくつかの欠点がある。
【0012】
保護コーティングでアルミニウム集電体を保護する試みも多少成功しているものの、これは電池のコストおよび重量を増加させる。さらに、この抑制の最も問題な点は、電極が適切なサイズにカットされることを理由にエッジが保護されていないことである。腐食は、多くのサイクル後にエッジから伝播し得るため、そのようなセルの長期的な動作を損なう。
【0013】
リチウム電池に可能な溶媒については議論されているが、集電体における不所望なプロセスにはほとんど注意が払われていない。電池産業で使用されているほとんどの電解質は、低級ジアルキルカーボネート、ジメチル、ジエチルおよびエチルメチルカーボネートをベースとしており、添加剤、なかでもエチレンカーボネートと混合される。アルキルカーボネートの合成は、工業規模であっても、非常によく発達している。実験室でそれらを調製するための最も好適な方法は、エステル交換反応である。
【0014】
高電圧用途については、従来のLiPF6塩と共にフッ素化カーボネートが提示されている。しかしながら、これらの溶媒は非常に高価であり、全ての長鎖フッ素化化合物と同様に、深刻な環境リスクを呈し得る。一部のフッ素化カーボネートの殺虫活性についても記載されている。
【0015】
アルミニウムの腐食を抑制するための先の解決策は、アノードアルミニウム溶解の問題に対する最適な解決策に相当するものではなく、したがって、従来の溶媒の最適な代替物に相当するものではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によると、以下のものが提供される。
1.金属電池または金属イオン電池であって、
(a)アルミニウム集電体を含み、かつLi金属基準電極に対して約4.2V以上の上限電位を有するカソードと、
(b)アノードと、
(c)アノードおよびカソードを分離するセパレータ膜と、
(d)アノードおよびカソードと接触する低腐食性非水電解質と、を含み、
電池が約4.2V以上の上限電圧を有し、
アルミニウム集電体におけるアルミニウムのアノード溶解が、該上限電圧までの電圧で電池動作中に抑制されており、
電解質が、溶媒として式(I):
【化1】
[式中、
R
1は、C
3~C
24アルキル、C
3~C
24アルコキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表し、
R
2は、C
1~C
24アルキル、C
1~C
24ハロアルキル、C
2~C
24アルコキシアルキル、C
2~C
24アルキロイルオキシアルキル、C
3~C
24アルコキシカルボニルアルキル、C
1~C
24シアノアルキル、C
1~C
24チオシアナトアルキル、C
3~C
24トリアルキルシリル、C
4~C
24トリアルキルシリルアルキル、C
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、C
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)、C
5~C
24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)またはC
6~C
24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(プロピレングリコール)を表す]
のカーボネート化合物と、該溶媒に溶解した導電性塩と、を含む、金属電池または金属イオン電池。
2.カソードの上限電位が、Li金属基準電極に対して、約4.4V以上、好ましくは約4.6V以上、約4.8V以上、約5.0V以上、約5.2V以上、約5.4V以上または約5.5V以上である、項目1に記載の電池。
3.電池の上限電圧が、約4.4V以上、好ましくは約4.6V以上、より好ましくは約4.8V以上、なおより好ましくは約5.0V以上、さらにより好ましくは約5.2V以上、より好ましくは約5.4V以上または最も好ましくは約5.5V以上である、項目1または2に記載の電池。
4.R
1が、C
3~C
24アルキルまたはC
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、好ましくはC
3~C
24アルキルを表す、項目1~3のいずれか1つに記載の電池。
5.R
2が、C
1~C
24アルキル、C
2~C
24アルコキシアルキル、C
1~C
24シアノアルキル、C
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキル、C
5~C
24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)またはC
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、好ましくはC
1~C
24アルキルを表す、項目1~4のいずれか1つに記載の電池。
6.R
1およびR
2における炭素原子の合計が、
5個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは7個以上、なおより好ましくは8個以上、そして最も好ましくは9個以上、および/または
24個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは16個以下、なおより好ましくは14個以下、さらにより好ましくは12個以下、そして最も好ましくは10個以下である、項目1~5のいずれか1つに記載の電池。
7.R
2がメチルまたはエチルである、項目1~6のいずれか1つに記載の電池。
8.R
1および/またはR
2が、プロピルまたはイソプロピル(2-プロピル)である、項目1~7のいずれか1つに記載の電池。
9.R
1および/またはR
2が、ブチル、2-ブチル、3-ブチル、イソブチル(3-メチルプロピル)またはtertブチル(2,2-ジメチルエチル)である、項目1~8のいずれか1つに記載の電池。
10.R
1および/またはR
2が、ペンチルまたはその異性体(2-ペンチルおよび3-ペンチルを含む)のうちの1つ、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-メチル-2-ブチルおよび2-メチル-2-ブチル)である、項目1~9のいずれか1つに記載の電池。
11.R
1および/またはR
2が、ヘキシルまたはその異性体(2-ヘキシルおよび3-ヘキシルを含む)のうちの1つ、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、2-エチルブチルおよび3-エチル-2-ブチル)である、項目1~10のいずれか1つに記載の電池。
12.R
1および/またはR
2が、ヘプチル、その異性体のうちの1つ、または2-エチルヘキシルである、項目1~11のいずれか1つに記載の電池。
13.R
1および/またはR
2が、2-メトキシエチルまたは2-イソプロポキシエチルである、項目1~12のいずれか1つに記載の電池。
14.R
2が2-シアノエチルである、項目1~13のいずれか1つに記載の電池。
15.R
2が(2-トリメチルシリルオキシ)エチルである、項目1~14のいずれか1つに記載の電池。
16.R
1および/またはR
2が、2-メトキシエチル、2-イソプロポキシエチルまたは2-(2-メトキシエトキシ)エチルである、項目1~15のいずれか1つに記載の電池。
17.R
2が2-トリメチルシリルオキシエチルである、項目1~16のいずれか1つに記載の電池。
18.式(I)のカーボネート化合物が、ジドデシルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、エチルドデシルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、メチル2-ペンチルカーボネート、ジ(2-ペンチル)カーボネート、2-ブチルメチルカーボネート、ジ(2-ブチル)カーボネート、2-エチルブチルメチルカーボネート、ジ(2-エチルブチル)カーボネート、イソブチルイソプロピルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネート、ジ(2-メトキシエチル)カーボネート、2-イソプロポキシエチルメチルカーボネート、ジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートまたはジ(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)カーボネートである、項目1~17のいずれか1つに記載の電池。
19.式(I)の化合物が、ジドデシルカーボネート、ジブチルカーボネート、2-エチルブチルメチルカーボネート、ジ(2-エチルブチル)カーボネート、ジ(2-ブチル)カーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、ジ(2-ペンチル)カーボネート、エチルドデシルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネート、ジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートまたはジイソブチルカーボネートである、項目1~18のいずれか1つに記載の電池。
20.式(I)の化合物が、ジドデシルカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、エチルドデシルカーボネートまたはジイソブチルカーボネート、好ましくはジイソブチルカーボネートである、項目1~19のいずれか1つに記載の電池。
21.導電性塩が、
・LiClO
4、
・LiP(CN)
αF
6-α[式中、αは0~6の整数である]、好ましくはLiPF
6、
・LiB(CN)
βF
4-β[式中、βは0~4の整数である]、好ましくはLiBF
4、
・LiP(C
nF
2n+1)
γF
6-γ[式中、nは1~20の整数であり、γは1~6の整数である]、
・LiB(C
nF
2n+1)
δF
4-δ[式中、nは1~20の整数であり、δは1~4の整数である]、
・Li
2Si(C
nF
2n+1)
εF
6-ε[式中、nは1~20の整数であり、εは0~6の整数である]、
・リチウムビスオキサラトボレート、
・リチウムジフルオロオキサラトボレートまたは
・以下の一般式:
【化2】
[式中、
R
3は、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、水素または有機カチオンを表し、
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、シアノ、フッ素、塩素、1~24個の炭素原子を有する分岐状もしくは線状アルキルラジカル、1~24個の炭素原子を有する過フッ素化線状アルキルラジカル、アリール、ヘテロアリール、過フッ素化アリールもしくはヘテロアリールを表す]
のうちの1つによって表される化合物もしくはその誘導体である、項目1~20のいずれか1つに記載の電池。
22.導電性塩がスルホニルアミド塩である、項目1~21のいずれか1つに記載の電池。
23.導電性塩が、リチウム塩、好ましくはリチウムスルホニルアミド塩である、項目1~22のいずれか1つに記載の電池。
24.リチウムスルホニルアミド塩が、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSI)またはリチウムN-フルオロスルホニル-トリフルオロメタンスルホニルアミド(LiFTFSI)である、項目23に記載の電池。
25.導電性塩がLiFSIである、項目24に記載の電池。
26.導電性塩が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムまたはマグネシウム塩である、項目1~22のいずれか1つに記載の電池。
27.導電性塩が、電解質中に、少なくとも約0.05M、少なくとも約0.1M、少なくとも約0.5Mもしくは少なくとも約1M、および/または最大約3M、最大約2M、最大約1.5Mもしくは最大約1Mの濃度で存在する、項目1~26のいずれか1つに記載の電池。
28.電解質中の導電性塩の濃度が1Mである、項目27に記載の電池。
29.電解質が、1つ以上の添加剤をさらに含む、項目1~28のいずれか1つに記載の電池。
30.1つ以上の添加剤が、
・固体電解質界面およびサイクル特性を改善する薬剤、
・高電圧および低電圧における安定性を改善する不飽和カーボネート、ならびに/または
・粘度を低下させ、かつ導電性を増加させる有機溶媒である、項目29に記載の電池。
31.固体電解質界面(SEI)およびサイクル特性を改善する薬剤、ならびに不飽和カーボネートが、合わせて合計で、電解質の総重量の少なくとも約0.1%w/w、少なくとも約1%w/w、少なくとも約2%w/w、少なくとも約5%w/wもしくは少なくとも約7%w/w、および/または最大約20%w/w、最大約15%w/w、最大約10%w/wもしくは最大約7%w/wに相当する、項目30に記載の電池。
32.粘度を低下させ、かつ導電性を増加させる有機溶媒が、合計で、電解質の総体積の少なくとも約1%v/v、少なくとも約2%v/v、少なくとも約5%v/vもしくは少なくとも約7%v/v、および/または最大約80%v/v、最大約50%v/v、最大約20%v/v、最大約15%v/v、最大約10%v/vもしくは最大約7%v/vに相当する、項目30または31に記載の電池。
33.式(I)のカーボネート化合物が、電解質中の唯一の溶媒である、項目1~29のいずれか1つに記載の電池。
34.1つ以上の添加剤が、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)またはそれらの混合物である、項目29~32のいずれか1つに記載の電池。
35.1つ以上の添加剤が、FEC、好ましくは約2w/w%のFECであり、単独であるか、またはEC、DECもしくは混合物と一緒になっており、したがって、好ましくは、単独であるか、または
・約5%v/vのEC、
・約10%v/vのEC、
・約15%v/vのEC、
・約20%v/vのEC、
・約30%v/vのEC、
・約20%v/vのECとDECとの混合物、
・約25%v/vのECとDECとの混合物、
・約30%v/vのECとDECとの混合物、
・約50%v/vのECとDECとの混合物、
・約70%v/vのECとDECとの混合物、もしくは
・約75%v/vのECとDECとの混合物
と一緒になっており、該混合物が、好ましくは、約1:10~約1:1、好ましくは約3:7のEC:DEC体積比を有し、
全てのw/w%が電解質の総重量に基づいており、全てのv/v%が電解質の総体積に基づいている、項目34に記載の電池。
36.式(I)のカーボネート化合物、式(I)のカーボネート化合物が、電解質の総体積の少なくとも約25%v/v、好ましくは少なくとも約50%v/v、より好ましくは少なくとも約75%v/v、なおより好ましくは少なくとも約85%v/v、さらにより好ましくは少なくとも約90%v/v、そして最も好ましくは少なくとも約95%に相当する、項目1~35のいずれか1つに記載の電池。
37.電解質が腐食抑制剤を含まない、項目1~36のいずれか1つに記載の電池。
38.電解質が、LiPF6、リチウムシアノフルオロホスフェート、リチウムフルオロオキサラトホスフェート、LiDFOB、LiBF4、リチウムフルオロシアノボレートまたはLiBOBのような1つ以上の腐食抑制剤をさらに含む、項目1~36のいずれか1つに記載の電池。
39.腐食抑制剤が、合計で、電解質の総重量の少なくとも約1%w/w、少なくとも約2%w/w、少なくとも約5%w/wもしくは少なくとも約10%w/w、および/または最大約35%w/w、最大約25%w/w、最大約20%w/w、最大約15%w/w、最大約10%w/wもしくは最大約7%w/wに相当する、項目37に記載の電池。
40.リチウム電池またはリチウムイオン電池、好ましくはリチウムイオン電池である、項目1~38のいずれか1つに記載の電池。
41.アノードがリチウム金属またはグラファイト製である、項目40に記載の電池。
42.カソードが、アルミニウム集電体上に配置されたリチウム化合物を含み、該リチウム化合物が、好ましくは、
・LNO(LiNiO
2)、LMO(LiMn
2O
4)、LiCo
xNi
1-xO
2[式中、xは0.1~0.9である]、LMC(LiMnCoO
2)、LiCu
xMn
2-xO
4、NMC(LiNi
xMn
yCo
zO
2)もしくはNCA(LiNi
xCo
yAl
zO
2)のような、遷移金属のリチウム化酸化物、または
・LFP(LiFePO
4)、LNP(LiNiPO
4)、LMP(LiMnPO
4)、LCP(LiCoPO
4)、Li
2FCoPO
4;LiCo
qFe
xNi
yMn
zPO
4もしくはLi
2MnSiO
4のような、遷移金属と錯アニオンとのリチウム化合物である、項目40または41に記載の電池。
43.リチウム化合物がLMNまたはLCOである、項目42に記載の電池。
44.ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、カリウム電池、カリウムイオン電池、マグネシウム電池、マグネシウムイオン電池、アルミニウム電池またはアルミニウムイオン電池である、項目1~39のいずれか1つに記載の電池。
45.式(I):
【化3】
[式中、
R
1は、C
3~C
24アルキル、C
3~C
24アルコキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表し、
R
2は、C
1~C
24アルキル、C
1~C
24ハロアルキル、C
2~C
24アルコキシアルキル、C
2~C
24アルキロイルオキシアルキル、C
3~C
24アルコキシカルボニルアルキル、C
1~C
24シアノアルキル、C
1~C
24チオシアナトアルキル、C
3~C
24トリアルキルシリル、C
4~C
24トリアルキルシリルアルキル、C
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、C
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)、C
5~C
24ω-O-シリルオリゴ(エチレングリコール)またはC
6~C
24ω-O-シリルオリゴ(プロピレングリコール)を表し、
ただし、R
2がC
1~C
9アルキルである場合、R
1は、C
10~C
24アルキル、C
3~C
24アルコキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表す]のカーボネート化合物。
46.R
2がC
1~C
9アルキルである場合、R
1が、C
3~C
24アルコキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表す、項目45に記載のカーボネート化合物。
47.R
1およびR
2における炭素原子の合計が、
5個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは7個以上、なおより好ましくは8個以上、そして最も好ましくは9個以上、および/または
24個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは16個以下、なおより好ましくは14個以下、さらにより好ましくは12個以下、そして最も好ましくは10個以下である、項目45または46に記載のカーボネート化合物。
48.R
1が、C
3~C
24アルキル、C
3~C
24アルコキシアルキルまたはC
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、好ましくはC
3~C
24アルキルまたはC
3~C
24アルコキシアルキル、より好ましくはC
3~C
24アルキルを表す、項目45~47のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
49.R
2が、C
1~C
24アルキル、C
2~C
24アルコキシアルキル、C
1~C
24シアノアルキル、C
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキル、C
5~C
24ω-O-シリルオリゴ(エチレングリコール)またはC
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、好ましくはC
1~C
24アルキルまたはC
2~C
24アルコキシアルキル、より好ましくはC
1~C
24アルキルを表す、項目45~48のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
50.R
1がC
10~C
24アルキル(好ましくはC
12~C
24アルキル、より好ましくはC
14~C
24アルキル)を表し、R
2がC
1~C
24アルキルを表す、項目45~49のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
51.R
1がC
3~C
24アルキルを表し、R
2がC
1~C
24シアノアルキルを表す、項目45~49のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
52.シアノアルキルが2-シアノエチルである、項目49に記載のカーボネート化合物。
53.R
1がC
3~C
24アルキルを表し、R
2がC
2~C
24アルコキシアルキルを表す、項目45~49のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
54.R
1がC
3~C
24アルコキシアルキルを表し、R
2がC
1~C
24アルキルを表す、項目45~49のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
55.R
1およびR
2がどちらも、C
3~C
24アルコキシアルキルを表す、項目45~49のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
56.アルコキシアルキルが、2-メトキシエチルまたは2-イソプロポキシエチルである、項目53~55のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
57.R
1がC
3~C
24アルキルを表し、R
2がC
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキルを表す、項目45~49のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
58.トリアルキルシリルオキシアルキルが(2-トリメチルシリルオキシ)エチルである、項目57に記載のカーボネート化合物。
59.R
1およびR
2がどちらも、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)を表す、項目45~49のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
60.ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)が2-(2-メトキシエトキシ)エチルである、項目59に記載のカーボネート化合物。
61.式(I)のカーボネート化合物が、ジドデシルカーボネート、エチルドデシルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネート、ジ(2-メトキシエチル)カーボネート、2-イソプロポキシエチルメチルカーボネート、ジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートまたはジ(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)カーボネートである、項目45~49のいずれか1つに記載のカーボネート化合物。
62.式(I)の化合物が、ジドデシルカーボネート、エチルドデシルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネートまたはジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートである、項目61に記載のカーボネート化合物。
63.式(I)の化合物が、ジドデシルカーボネートまたはエチルドデシルカーボネートである、項目62に記載のカーボネート化合物。
【図面の簡単な説明】
【0017】
添付図面では、
【
図1】0.1Vステップ(各幅は1時間)で4Vから5.5Vに増加する電位における、LIFSIおよびEC/DECを含む従来の電解質中での、Li金属に対するアルミニウム集電体のクロノアンペロメトリーを示す。
【
図2】0.1Vステップ(各幅は1時間)で4Vから5.5Vに増加する電位における、LIFTFSIおよびEC/DECを含む従来の電解質中での、Li金属に対するアルミニウム集電体のクロノアンペロメトリーを示す。
【
図3】0.1Vステップ(各幅は1時間)で4Vから5.5Vに増加する電位における、LITFSIおよびEC/DECを含む従来の電解質中での、Li金属に対するアルミニウム集電体のクロノアンペロメトリーを示す。
【
図4】0.1Vステップ(各幅は1時間)で4Vから5.5Vに増加する電位における、LIFSIおよびジイソブチルカーボネートを含む本発明の実施形態による電解質中での、Li金属に対するアルミニウム集電体のクロノアンペロメトリーを示す。
【
図5】0.1Vステップ(各幅は1時間)で4Vから5.5Vに増加する電位における、LIFTFSIおよびジイソブチルカーボネートを含む本発明の実施形態による電解質中での、Li金属に対するアルミニウム集電体のクロノアンペロメトリーを示す。
【
図6】0.1Vステップ(各幅は1時間)で4Vから5.5Vに増加する電位における、LITFSIおよびジイソブチルカーボネートを含む本発明の実施形態による電解質中での、Li金属に対するアルミニウム集電体のクロノアンペロメトリーを示す。
【
図7】LIFSIおよびEC/DECを含む従来の電解質における、LI金属に対するLCOカソードの充電/放電曲線を示す。
【
図8】LIFSIおよびジイソブチルカーボネートを含む本発明の実施形態による電解質における、Li金属に対するLCOカソードの充電/放電曲線を示す。
【
図9】LIFSIおよびジイソブチルカーボネート+ECを含む本発明の実施形態による電解質における、Li金属に対するLCOカソードの充電/放電曲線を示す。
【
図10】LIFSIおよびEC/DECを含む従来の電解質における、LI金属に対するLMNカソードの充電/放電曲線を示す。
【
図11】LIFSIおよびジイソブチルカーボネートを含む本発明の実施形態による電解質における、Li金属に対するLMNカソードの充電/放電曲線を示す。
【
図12】サイクル数に対する3つのセルの放電容量を示し、第1のセルは、ジイソブチルカーボネート中に入ったLiFSIを使用しており、第2のセルは、90%ジイソブチルカーボネート/10%EC中に入ったLiFSIを使用しており、第3のセルは、EC/DEC(体積3:7)中に入った1MのLiPF6の従来の電解質を使用している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者等は、式(I)のカーボネート化合物が、リチウムスルホニルアミド塩を含有する電解質中でさえも、4.2Vより高い電圧でさえアルミニウムに対して腐食性が低いことを特徴とするため、アルミニウム集電体を備える1つのカソードを備える電池内の非水電解質において、有利に溶媒として使用することができると見出した。アルミニウムのアノード溶解が優先される電気化学反応となり、電荷の大部分がこの有害な腐食プロセスのために消費されるため、そのような高電圧システムにおける従来の溶媒と一緒にこれらのリチウムスルホニルアミド塩を利用することは、通常は不可能である。
【0019】
式(I)のカーボネート化合物の低腐食性は、リチウムスルホニルアミド塩が主な導電性塩である場合に特に有利であるが、当業者であれば、他の導電性塩との関連で、高電圧リチウムおよびリチウムイオン電池を達成するためのこれらの溶媒の可能性を認識するであろう。また、当業者であれば、この電解質を、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムおよびマグネシウム系電池のような様々なタイプの電池で使用することができ、そのようにするとき、他の塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムおよびマグネシウム塩を溶媒に溶解させることができると理解するであろう。
【0020】
実際に、式(I)のカーボネート化合物は、電池内の電解質における溶媒として使用したときに、4.2Vより高い電位でさえも、リチウム金属基準電極に対して測定して、アルミニウムの(例えば、アルミニウム集電体、および電池内の任意の他のアルミニウム部材における)アノード溶解を抑制するそれらの能力を特徴とする。そのような電池の例は、リチウム電池またはリチウムイオン電池である。明確にするために、別段の指定がない限り、本出願における全ての電極電位は、Li金属アノードを基準とする。
【0021】
アルミニウム集電体のアノード溶解は、開回路電位よりも高い特定の外部強制電位(臨界電位)でのアルミニウム集電体の溶解として定義される。臨界電位では、電解質の成分は、コレクタの表面と反応して可溶性化合物を形成し、それから、この可溶性化合物が、電解質に溶解し、アルミニウムの溶解、すなわち準腐食(quasi corrosion)を引き起こす。アルミニウムの有意な溶解は、その動作電圧が臨界電位を上回る場合、電池システムの故障をもたらし得る。したがって、アノード溶解を抑制することによって、より安全かつより強力な電池技術、特にリチウムイオン電池が可能になる。本明細書では、アノード溶解を「抑制する」とは、アノード溶解が生じないこと、またはこれが電池にとって非有害となる程度に低減されることを意味する。
【0022】
また、式(I)のカーボネート化合物のこの低腐食性によって、リチウムスルホニルアミド塩含有電解質およびリチウムイオン電池の場合であっても、拡張された動作電圧(特に、Li金属基準電極に対して4.2Vを超える動作電圧)のアルミニウム集電体を含む電池の製造が可能になる。これによって、腐食抑制剤を含まないリチウムスルホニルアミド塩含有非水電解質の調製が可能になる(その一方で、4.2Vよりも高い電圧でアルミニウム集電体に対する該低腐食性がなおも維持される)。
【0023】
さらに、従来のカーボネート溶媒(例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)など)と比較した場合、式(I)のカーボネート化合物は、特にリチウムイオン電池内で使用される場合に、より広い動作温度範囲を有する。実際に、式(I)のカーボネート化合物が(結晶化せずに)液体である温度範囲は、これらの従来のカーボネート溶媒の温度範囲よりも広い傾向にある。例えば、実施形態では、式(I)のカーボネート化合物は、-10℃を大きく下回る融点を有し得て、融点を有しない場合さえあり、したがって、式(I)のカーボネート化合物がそれらのガラス転移点に達するまで、結晶化せずに液体のままである。さらに、カーボネート化合物の融点は、分子量の増加と共に特定の点まで低下する傾向にある。
【0024】
さらに、式(I)のカーボネート化合物は、従来のカーボネート溶媒よりも高い沸点を有する。例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネートおよびジブチルカーボネートの沸点は、それぞれ90℃、126℃、168℃および207℃である。これは、高級カーボネートから調製された電解質が、急速に蒸発するリスクなく、より高い温度で使用可能であることを示す。これらのより高い沸点によって、式(I)のカーボネート化合物を溶媒として使用する電解質を含む電池の安全性が改善される。
【0025】
最後となるが、式(I)のカーボネート化合物は、非常にグリーンな、すなわち、環境に優しい溶媒群である。
【0026】
したがって、本発明者等は、本明細書で、金属電池または金属イオン電池であって、
(a)アルミニウム集電体を含み、かつLi金属基準電極に対して約4.2V以上の上限電位を有するカソードと、
(b)アノードと、
(c)アノードおよびカソードを分離するセパレータ膜と、
(d)アノードおよびカソードと接触する低腐食性非水電解質と、を含み、
電池が約4.2V以上の上限電圧を有し、
アルミニウム集電体におけるアルミニウムのアノード溶解が、該上限電圧までの電圧で電池動作中に抑制されており、
電解質が、溶媒として式(I)のカーボネート化合物と、該溶媒に溶解した導電性塩と、を含む、金属電池または金属イオン電池を提供する。
【0027】
実施形態では、カソードの上限電位は、好ましくは、Li金属基準電極に対して、約4.4V以上、約4.6V以上、約4.8V以上、約5.0V以上、約5.2V以上、約5.4V以上または約5.5V以上である。
【0028】
実施形態では、カソードの上限電位は、好ましくは、Li金属基準電極に対して、約6.0V以下、約5.6V以下、約5.5V以下、約5.4V以下、約5.2V以下、約5.0V以下、約4.8V以下である。
【0029】
実施形態では、電池の上限電圧は、好ましくは、約4.4V以上、約4.6V以上、約4.8V以上、約5.0V以上、約5.2V以上、約5.4V以上または約5.5V以上である。
【0030】
実施形態では、電池の上限電圧は、好ましくは、約6.0V以下、約5.6V以下、約5.5V以下、約5.4V以下、約5.2V以下、約5.0V以下、約4.8V以下である。
【0031】
カソードの下限電位および電池の下限電圧は、本発明の電池内の溶媒として式(I)のカーボネート化合物を使用することによっては実質的に影響を受けない。実際に、これらの下限は、上昇した電位でのみアノード溶解が生じることから、本発明にとって重大ではない。さらに、カソードの下限電位は、典型的には、電解質に使用される溶媒によっては影響を受けない。したがって、これらの下限は、他の溶媒を使用する対応する従来の電池に見られるものである。
【0032】
実際に、カソードは、下限電位から上限電位に向かう電位窓を特徴とする。下限電位とは、それを超えるとさらなる放電によってカソードが損傷し得る電位である。上限電位とは、それを超えるとさらなる充電によってカソードが損傷し得る電位である。これらの電位値は、常に特定の基準を基準として与えられる。例えば、全てのリチウム電池について、この基準はLi金属基準電極である。本明細書では、電位値は、他のタイプの電池(ナトリウム系電池、マグネシウム系電池など)に言及する場合であっても、全てLi金属基準電極を基準とする。
【0033】
さらに、電池は、下限電圧から上限電圧に向かう動作電圧窓を特徴とする。下限電圧とは、電池が完全に放電されていると見なされ、かつそれを超えるとさらなる放電によって電池(またはそのコンポーネント)が損傷し得る電圧である。上限電位とは、電池が完全に充電されていると見なされ、かつそれを超えるとさらなる充電によって電池(またはそのコンポーネント)が損傷し得る電圧である。したがって、電池は、それらの動作電圧窓内の電圧で動作し、すなわち、電池は、最大エネルギーを提供するように充電されたときに、理想的には上限電圧にできるだけ近くで、それらの動作電圧窓内にそれらの電圧が収まるように充電/放電される。
【0034】
注目すべきは、電池電圧が、カソードの電位とアノードの電位との間の差である点である。
電池電圧=(カソードの電位)-(アノードの電位)
したがって、電池電圧値を提供するときに基準は必要ない。
【0035】
電池のアノードがリチウム金属である場合、これは(常に)0Vの電位を有する。したがって、そのような場合、電池の上限電圧および下限電圧は、カソードの上限電位および下限電位に等しい。他の場合では、アノードがグラファイト製である場合などに、アノードは>0Vの電位を有する。アノードが>0Vの電位を有する場合、電池の上限電圧および下限電圧は、それぞれカソードの上限電位および下限電位よりも低い。例えば、グラファイトアノードは、(ほとんどの場合)約0.1Vの電位を有するが、それにもかかわらず、この電位は、約2.5Vから0Vの非常に近くまで変化し得る。LTOアノードは、ほとんどの場合、約1.5Vの電位を有する。
【0036】
先に言及したように、アルミニウム集電体におけるアルミニウムのアノード溶解は、少なくとも該上限電圧までの電圧で電池動作中に抑制されている。本明細書において、アノード溶解の「抑制」とは、この現象が全く起こらないこと、またはアルミニウムのアノード溶解のために電荷のかなりの部分を失うことなく電池を該上限電圧まで充電することができるようにこの現象が制限されていることを意味する。例えば、電荷の0.01%未満、好ましくは0.001%未満、より好ましくは0.0001%未満が失われる。別の尺度では、腐食電流密度は、約1μA/cm2未満であることが好ましい。実際に、有意なアノード溶解が電池の動作電圧窓内で生じると、有意量の電荷が失われ、有意量のアルミニウムが溶解し、集電体と活物質との間の接触が失われ、有効容量がさらに失われる。最も酷いケースでは、電池を最初に充電するときに、ほとんどの電荷がアルミニウム溶解によって消費され、これは、電池によって貯蔵される電荷量(すなわち、有効電荷量)が非常に少ないことを意味する。言い換えるなら、電池は動作しない。特に、(例えば、リチウムの、または他の金属をベースとする電池中の他の金属の)ビス(スルホニルアミド)塩を含む電解質が、アルミニウムのそのような酷いアノード溶解を引き起こし得る。対照的に、そのような塩を溶媒としての式(I)のカーボネート化合物に溶解させると、アノード溶解がうまく抑制される。
【0037】
好ましい実施形態では、電池は、リチウム電池、リチウムイオン電池、ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、カリウム電池、カリウムイオン電池、マグネシウム電池、マグネシウムイオン電池、アルミニウム電池またはアルミニウムイオン電池である。好ましくは、電池は、リチウム電池、リチウムイオン電池、ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、カリウム電池、カリウムイオン電池、マグネシウム電池、マグネシウムイオン電池である。より好ましい実施形態では、本発明の電池は、リチウム電池またはリチウムイオン電池であり、さらにより好ましくはリチウムイオン電池である。
【0038】
本発明の電池の様々なコンポーネントのさらなる詳細は、以下のセクションにおいて提供される。
【0039】
上記のような電池を製造するおよび/または動作させる方法であって、該方法が、電池を、約4.2V以上、好ましくは、約4.4V以上、約4.6V以上、約4.8V以上、約5.0V以上、約5.2V以上、約5.4V以上または約5.5V以上の上限電圧まで充電するステップを含む、方法も提供される。
【0040】
式(I)のカーボネート化合物
式(I)のカーボネート化合物は、
【化4】
であり、式中、
R
1は、C
3~C
24アルキル、C
3~C
24アルコキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表し、
R
2は、C
1~C
24アルキル、C
1~C
24ハロアルキル、C
2~C
24アルコキシアルキル、C
2~C
24アルキロイルオキシアルキル、C
3~C
24アルコキシカルボニルアルキル、C
1~C
24シアノアルキル、C
1~C
24チオシアナトアルキル、C
3~C
24トリアルキルシリル、C
4~C
24トリアルキルシリルアルキル、C
4~C
24トリアルキルシリルオキシアルキル、C
3~C
24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)、C
4~C
24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)、C
5~C
24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)またはC
6~C
24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(プロピレングリコール)を表す。
【0041】
より好ましい実施形態では、R1は、C3~C24アルキルまたはC3~C24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)を表す。より好ましい実施形態では、R1は、C3~C24アルキルを表す。
【0042】
より好ましい実施形態では、R2は、C1~C24アルキル、C2~C24アルコキシアルキル、C1~C24シアノアルキル、C4~C24トリアルキルシリルオキシアルキル、C5~C24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)またはC3~C24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)を表す。最も好ましい実施形態では、R2は、C1~C24アルキルを表す。
【0043】
先に定義したR1およびR2が、それぞれ少なくとも3個および1個の炭素原子を含有すると考えると、R1およびR2における炭素原子の合計は、少なくとも4個である。好ましい実施形態では、R1およびR2における炭素原子の合計は、
5個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは7個以上、なおより好ましくは8個以上、そして最も好ましくは9個以上、および/または
24個以下、好ましくは20個以下、より好ましくは16個以下、なおより好ましくは14個以下、さらにより好ましくは12個以下、そして最も好ましくは10個以下である。
【0044】
R1およびR2におけるアルキルおよび置換アルキルはそれぞれ、線状または分岐状である。
【0045】
本明細書において、「アルキル」は、当技術分野における通常の意味を有する。具体的には、これは、一般式-CnH2n+1の一価飽和脂肪族炭化水素ラジカルである。
【0046】
R1におけるC3~C24アルキルの非限定的な例としては、プロピル、イソプロピル(2-プロピル)、ブチル、2-ブチル、3-ブチル、イソブチル(3-メチルプロピル)、tertブチル(2,2-ジメチルエチル)、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-メチル-2-ブチル、2-メチル-2-ブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、2-エチルブチル、3-エチル-2-ブチル、2-エチルヘキシル、ペンチルおよびその異性体(2-ペンチルおよび3-ペンチルを含む)、ヘキシルおよびその異性体(2-ヘキシルおよび3-ヘキシルを含む)、ヘプチルおよびその異性体、オクチルおよびその異性体、ノニルおよびその異性体、デシルおよびその異性体、ウンデシルおよびその異性体、ならびにドデシルおよびその異性体が挙げられる。好ましい実施形態では、R1におけるC3~C24アルキルは、C3~C18アルキル、好ましくはC3~C12アルキル、好ましくはC3~C11アルキル、好ましくはC3~C10アルキル、好ましくはC3~C9アルキル、より好ましくはC3~C8アルキル、さらにより好ましくはC3~C7アルキル(なおより好ましくはC4~C7アルキル)、なおより好ましくはC3~C6アルキル(なお好ましくはC4~C6アルキル)、より好ましくはC3~C5アルキル、そして最も好ましくはC4~C5アルキルである。
【0047】
R2におけるC1~C24アルキル鎖の非限定的な例としては、R1に関して先に列挙されているC3~C24アルキル、ならびにメチルおよびエチルが挙げられる。好ましい実施形態では、R2は、C1~C18アルキル、好ましくはC1~C12アルキル、C1~C9アルキル、C1~C8アルキル、C1~C7アルキル、C2~C7アルキル、C3~C7アルキル(好ましくはC4~C7アルキル)、C3~C6アルキル(好ましくはC4~C6アルキル)、C3~C5アルキル、そして最も好ましくはC4~C5アルキルである。
【0048】
好ましい実施形態では、R1およびR2のどちらも、アルキル基である。より好ましい実施形態では、R1およびR2は、同じアルキル基である。代替的な好ましい実施形態では、R1およびR2は、異なるアルキル基である。
【0049】
R1およびR2における好ましいC3アルキルとしては、プロピルおよびイソプロピル(2-プロピル)が挙げられる。
【0050】
R1およびR2における好ましいC4アルキルとしては、ブチル、2-ブチル、3-ブチル、イソブチル(3-メチルプロピル)およびtertブチル(2,2-ジメチルエチル)が挙げられる。
【0051】
R1およびR2における好ましいC5アルキルとしては、ペンチルおよびその異性体(2-ペンチルおよび3-ペンチルを含む)、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-メチル-2-ブチルおよび2-メチル-2-ブチルが挙げられる。
【0052】
R1およびR2における好ましいC6アルキルとしては、ヘキシルおよびその異性体(2-ヘキシルおよび3-ヘキシルを含む)、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、2-エチルブチルおよび3-エチル-2-ブチルが挙げられる。
【0053】
R1およびR2における好ましいC7アルキルとしては、ヘプチルおよびその異性体が挙げられる。
【0054】
R1およびR2における好ましいC8アルキルとしては、2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0055】
本明細書において、「ハロアルキル」とは、水素原子のうちの1個以上(または全てさえ)がそれぞれハロゲン原子によって置き換えられており、ハロゲン原子が互いに同一または異なる(1個より多くのハロゲン原子が存在する場合)アルキル基を指す。ハロゲン原子としては、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)およびヨウ素(I)が挙げられる。好ましくは、ハロゲン原子はフッ素である。R2におけるC1~C24ハロアルキルの非限定的な例としては、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、2,2,2-トリフルオロエチルおよび1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピルが挙げられる。
【0056】
本明細書において、「アルコキシアルキル」とは、水素原子のうちの1個以上、好ましくは1個がそれぞれアルコキシ基によって置き換えられており、アルコキシ基が互いに同一または異なる(1個より多くのアルコキシ基が存在する場合)アルキル基を指す。好ましい実施形態では、アルコキシアルキルは、1個のアルコキシ基のみを含む。アルコキシ基は、式-O-アルキルのラジカルであり、このアルキルは、線状または分岐状であり、好ましくは線状である。C2~C24アルコキシアルキルは、アルキルおよびアルコキシ基に含まれる炭素原子の数の合計が2~24個であるアルコキシアルキルラジカルである。好ましい実施形態では、アルコキシアルキルは、(C1~C2)アルコキシ(C2~C6)アルキルである。R2またはR1におけるアルコキシアルキルの非限定的な例としては、2-メトキシエチル、3-メトキシプロピル、2-メトキシプロピル、4-メトキシブチル、4-エトキシブチル、5-メトキシペンチル、6-メトキシヘキシルおよび2-イソプロポキシエチルが挙げられる。好ましい実施形態では、アルコキシアルキルは、2-メトキシエチルまたは2-イソプロポキシエチルである。
【0057】
本明細書において、「アルキロイルオキシアルキル」とは、水素原子のうちの1個以上、好ましくは1個がそれぞれアルキロイルオキシ基によって置き換えられており、1個より多くのアルキロイルオキシ基が存在する場合、アルキロイルオキシ基が同一であるか、または異なるアルキル基を指す)。好ましい実施形態では、アルキロイルオキシアルキルは、1個のアルキロイルオキシ基のみを含む。アルキロイルオキシ基は、式-O-C(=O)-アルキルのラジカルであり、このアルキルは、線状または分岐状である。C2~C24アルキロイルオキシアルキルは、アルキルおよびアルキロイルオキシ基に含まれる炭素原子の数の合計が2~24個であるアルキロイルオキシアルキルである。R2におけるC2~C24アルキロイルオキシアルキルの非限定的な例としては、2-アセトキシエチル、3-アセトキシプロピル、2-アセトキシプロピルおよび4-アセトキシブチルが挙げられる。
【0058】
本明細書において、「アルコキシカルボニルアルキル」とは、水素原子のうちの1個以上がそれぞれアルコキシカルボニル基によって置き換えられており、アルコキシカルボニル基が互いに同一または異なる(1個より多くのアルコキシカルボニル基が存在する場合)アルキル基を指す。好ましい実施形態では、アルコキシカルボニルアルキルは、1個のアルコキシカルボニル基のみを含む。アルコキシカルボニル基は、式-C(=O)-O-アルキルのラジカルであり、このアルキルは、線状または分岐状である。C2~C24アルコキシカルボニルは、アルキルおよびアルコキシカルボニル基に含まれる炭素原子の数の合計が3~24個であるアルコキシカルボニルである。R2におけるC3~C24アルコキシカルボニルアルキルの非限定的な例としては、2-エトキシカルボニルエチルおよび3-メトキシカルボニルプロピルが挙げられる。
【0059】
本明細書において、「シアノアルキル」とは、水素原子のうちの1個以上がそれぞれシアノ(-C≡N)基によって置き換えられたアルキル基を指す。好ましい実施形態では、シアノアルキルは、1個のシアノ基のみを含む。好ましい実施形態では、シアノアルキルは、C1~C5シアノアルキルである。R2におけるC1~C24シアノアルキルの非限定的な例としては、シアノメチル、2-シアノエチル、3-シアノプロピル、4-シアノブチルおよび5-シアノペンチルが挙げられる。好ましい実施形態では、R2におけるC1~C24シアノアルキルは、2-シアノエチルである。
【0060】
本明細書において、「チオシアナトアルキル」とは、水素原子のうちの1個以上がそれぞれチオシアナト(-S-C≡N)基によって置き換えられたアルキル基を指す。好ましい実施形態では、チオシアナトアルキルは、1個のチオシアナト基のみを含む。R2におけるC1~C24チオシアナトアルキルの非限定的な例としては、チオシアナトメチル、2-チオシアナトエチル、3-チオシアナトプロピル、4-チオシアナトブチル、5-チオシアナトペンチルおよび6-チオシアナトヘキシルが挙げられる。
【0061】
本明細書において、「トリアルキルシリル」とは、式(アルキル)3-Si-のラジカルを指し、アルキル基は、同一または異なり、線状または分岐状である。C3~C24トリアルキルシリルは、全てのアルキル基に含まれる炭素原子の数の合計が3~24個であるトリアルキルシリルである。好ましい実施形態では、トリアルキルシリルにおけるアルキル基はそれぞれ、C1~C4アルキル基である。好ましい実施形態では、3個のアルキル基が同じである。R2におけるC3~C24トリアルキルシリルの非限定的な例としては、トリメチルシリル、エチルジメチルシリル、ジエチルメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチルプロピルシリル、ジメチルイソプロピルシリル、トリイソプロピルシリル、ブチルジメチルシリルおよびtertブチルジメチルシリルが挙げられる。
【0062】
本明細書において、「トリアルキルシリルアルキル」とは、水素原子のうちの1個以上がそれぞれトリアルキルシリル基によって置き換えられており、トリアルキルシリルが、先に定義された通りであり、互いに同一または異なる(1個より多くのトリアルキルシリル基が存在する場合)アルキル基である。C4~C24トリアルキルシリルアルキルにおいて、4個のアルキル基全てに含まれる炭素原子の数の合計は、4~24個である。好ましくは、トリアルキルシリルアルキルは、1個のトリアルキルシリル基のみを含む。好ましい実施形態では、C4~C24トリアルキルシリルアルキルは、トリアルキルシリルアルキル(C1~C4)アルキルであり、好ましくはトリアルキルシリルアルキル(C2~C4)アルキルである。好ましい実施形態では、Si原子に結合した3個のアルキル基は、メチル基である。R2におけるC4~C24トリアルキルシリルアルキルの非限定的な例としては、トリメチルシリルエチル、2-トリメチルシリエチル、3-トリメチルシリルプロピルおよび4-トリメチルシリルブチルが挙げられる。
【0063】
本明細書において、「トリアルキルシリルオキシアルキル」とは、水素原子のうちの1個以上がそれぞれトリアルキルシリルオキシ基によって置き換えられており、トリアルキルシリルオキシ基が互いに同一または異なる(1個より多くのトリアルキルシリルオキシ基が存在する場合)アルキル基を指す。好ましくは、トリアルキルシリルオキシアルキルは、1個のトリアルキルシリルオキシ基のみを含む。本明細書において、「トリアルキルシリルオキシ」とは、式(アルキル)3-Si-O-のラジカルであり、アルキル基は、互いに同一または異なり、線状または分岐状である。C4~C24トリアルキルシリルオキシアルキルにおいて、4個のアルキル基全てに含まれる炭素原子の数の合計は、4~24個である。好ましい実施形態では、C4~C24トリアルキルシリルオキシアルキルは、トリアルキルシリルオキシ(C3~C4)アルキルである。好ましい実施形態では、Si原子に結合した3個のアルキル基は、メチル基である。R2におけるC4~C24トリアルキルシリルオキシアルキルの非限定的な例としては、(2-トリメチルシリルオキシ)エチル、3-トリメチルシリルオキシプロピルおよび4-トリメチルシリルオキシブチルが挙げられる。好ましい実施形態では、R2におけるC4~C24トリアルキルシリルオキシアルキルは、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルである。
【0064】
本明細書において、ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)は、式-(CH2-CH2-O-)n-アルキルのラジカルであり、式中、nは1以上である。C3~C24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)において、アルキルおよび(CH2-CH2-O-)反復モチーフに含まれる炭素原子の数の合計は、3~24個である。好ましい実施形態では、nは、1~5の整数である。好ましい実施形態では、アルキル基は、C1~C4アルキルである。R2またはR1におけるω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)の非限定的な例としては、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、2-プロポキシエチル、2-イソプロポキシエチル、2-ブチルオキシエチル、2-(2-メトキシエトキシ)エチル、2-(2-ブトキシエトキシ)エチル、2-(2-エトキシエトキシ)エチル、2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]エチル、2-[2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ]エチル、2,5,8,11-テトラオキサトリデシル、3,6,9,12-テトラオキサテトラデシル、2,5,8,11,14-ペンタオキサヘキサデシルまたは3,6,9,12,15-ペンタオキサヘプタデシルが挙げられる。好ましい実施形態では、R2またはR1のω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)は、2-メトキシエチル、2-イソプロポキシエチルまたは2-(2-メトキシエトキシ)エチルである。
【0065】
本明細書において、ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)は、式-(CH2-CH2-CH2-O-)n-アルキルのラジカルであり、式中、nは1以上である。C4~C24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)において、アルキルおよび(CH2-CH2-CH2-O-)反復モチーフに含まれる炭素原子の数の合計は、4~24個である。好ましい実施形態では、nは1である。好ましい実施形態では、アルキル基は、C1~C4アルキルである。R2またはR1におけるω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)の非限定的な例としては、2-メトキシプロピル、2-エトキシプロピル、1-メトキシ-2-プロピル、1-エトキシ-2-プロピル、1-プロポキシ-2-プロピル、1-イソプロポキシ-2-プロピルおよび1-ブトキシ-2-プロピルが挙げられる。
【0066】
本明細書において、ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)は、式-(CH2-CH2-O-)n-Si-(アルキル)3のラジカルであり、式中、アルキル基は、同一または異なり、線状または分岐状であり、nは1以上である。C5~C24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)において、アルキル基および(CH2-CH2-O-)反復モチーフに含まれる炭素原子の数の合計は、5~24個である。好ましい実施形態では、nは、1~5の整数である。好ましい実施形態では、(Si原子に結合した)3個のアルキル基は、メチル基である。R2におけるω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)の非限定的な例としては、2-トリメチルシリルオキシエチル、2-(2-トリメチルシリルオキシエトキシ)エチル、2-[2-(2-トリメチルシリルオキシエトキシ)-エトキシ]エチル、2-{2-[2-(2-トリメチルシリルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エチルおよび2-(2-{2-[2-(2-トリメチルシリルオキシエトキシ)エトキシ]エトキシ}エトキシ)エチルが挙げられる。好ましい実施形態では、R2のω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)は、2-トリメチルシリルオキシエチルである。
【0067】
本明細書において、ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(プロピレングリコール)は、式-(CH2-CH2-CH2-O-)n-Si-(アルキル)3のラジカルであり、式中、アルキル基は、同一または異なり、線状または分岐状であり、nは1以上である。C6~C24ω-O-トリアルキルシリルオリゴ(エチレングリコール)において、アルキル基および(CH2-CH2-CH2-O-)反復モチーフに含まれる炭素原子の数の合計は、6~24個である。好ましい実施形態では、nは1である。好ましい実施形態では、(Si原子に結合した)3個のアルキル基は、メチル基である。R2におけるω-O-トリアルキルシリルオリゴ(プロピレングリコール)の非限定的な例としては、2-トリメチルシリルオキシプロピルおよび1-トリメチルシリルオキシ-2-プロピルが挙げられる。
【0068】
好ましくは、式(I)のカーボネート化合物は、イソプロピルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、イソプロピルプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ブチルイソプロピルカーボネート、2-ブチルメチルカーボネート、2-ブチルエチルカーボネート、2-ブチルプロピルカーボネート、ジ(2-ブチル)カーボネート、2-ブチルイソプロピルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、イソブチルプロピルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、イソブチルイソプロピルカーボネート、2-ブチルイソブチルカーボネート、2-エチルブチルメチルカーボネート、ジ(2-エチルブチル)カーボネート、メチルペンチルカーボネート、エチルペンチルカーボネート、ペンチルプロピルカーボネート、ブチルペンチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、イソプロピルペンチルカーボネート、2-ブチルペンチルカーボネート、イソブチルペンチルカーボネート、メチル2-ペンチルカーボネート、エチル2-ペンチルカーボネート、2-ペンチルプロピルカーボネート、ブチル2-ペンチルカーボネート、ジ(2-ペンチル)カーボネート、イソプロピル2-ペンチルカーボネート、2-ブチル2-ペンチルカーボネート、イソブチル2-ペンチルカーボネート、メチル3-ペンチルカーボネート、エチル3-ペンチルカーボネート、3-ペンチルプロピルカーボネート、ブチル3-ペンチルカーボネート、ジ(3-ペンチル)カーボネート、イソプロピル3-ペンチルカーボネート、2-ブチル3-ペンチルカーボネート、イソブチル3-ペンチルカーボネート、ペンチル2-ペンチルカーボネート、ペンチル3-ペンチルカーボネート、2-ペンチル3-ペンチルカーボネート、メチルヘキシルカーボネート、エチルヘキシルカーボネート、プロピルヘキシルカーボネート、ブチルヘキシルカーボネート、ペンチルヘキシルカーボネート、ジヘキシルカーボネート、イソプロピルヘキシルカーボネート、イソブチルヘキシルカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、ジドデシルカーボネート、エチルドデシルカーボネート、シアノメチルプロピルカーボネート、ブチルシアノメチルカーボネート、シアノメチルイソプロピルカーボネート、2-ブチルシアノメチルカーボネート、イソブチルシアノメチルカーボネート、tertブチルシアノメチルカーボネート、シアノメチルペンチルカーボネート、シアノメチル2-ペンチルカーボネート、シアノメチル3-ペンチルカーボネート、シアノメチルヘキシルカーボネート、シアノメチルヘプチルカーボネート、シアノメチルオクチルカーボネート、シアノメチルノニルカーボネート、シアノメチルデシルカーボネート、シアノメチルウンデシルカーボネート、シアノメチルドデシルカーボネート、シアノメチル2-エチルヘキシルカーボネート、2-シアノエチルプロピルカーボネート、ブチル2-シアノエチルカーボネート、2-シアノエチルイソプロピルカーボネート、2-ブチル2-シアノエチルカーボネート、イソブチル2-シアノエチルカーボネート、tertブチル2-シアノエチルカーボネート、2-シアノエチルペンチルカーボネート、2-シアノエチル2-ペンチルカーボネート、2-シアノエチル3-ペンチルカーボネート、2-シアノエチルヘキシルカーボネート、2-シアノエチルヘプチルカーボネート、2-シアノエチルオクチルカーボネート、2-シアノエチルノニルカーボネート、2-シアノエチルデシルカーボネート、2-シアノエチルウンデシルカーボネート、2-シアノエチルドデシルカーボネート、2-シアノエチル2-エチルヘキシルカーボネート、3-シアノプロピルプロピルカーボネート、ブチル3-シアノプロピルカーボネート、3-シアノプロピルイソプロピルカーボネート、2-ブチル3-シアノプロピルカーボネート、イソブチル3-シアノプロピルカーボネート、tertブチル3-シアノプロピルカーボネート、3-シアノプロピルペンチルカーボネート、3-シアノプロピル2-ペンチルカーボネート、3-シアノプロピル3-ペンチルカーボネート、3-シアノプロピルヘキシルカーボネート、3-シアノプロピルヘプチルカーボネート、3-シアノプロピルオクチルカーボネート、3-シアノプロピルノニルカーボネート、3-シアノプロピルデシルカーボネート、3-シアノプロピルウンデシルカーボネート、3-シアノプロピルドデシルカーボネート、3-シアノプロピル2-エチルヘキシルカーボネート、4-シアノブチルプロピルカーボネート、ブチル4-シアノブチルカーボネート、4-シアノブチルイソプロピルカーボネート、2-ブチル4-シアノブチルカーボネート、イソブチル4-シアノブチルカーボネート、tertブチル4-シアノブチルカーボネート、4-シアノブチルペンチルカーボネート、4-シアノブチル2-ペンチルカーボネート、4-シアノブチル3-ペンチルカーボネート、4-シアノブチルヘキシルカーボネート、4-シアノブチルヘプチルカーボネート、4-シアノブチルオクチルカーボネート、4-シアノブチルノニルカーボネート、4-シアノブチルデシルカーボネート、4-シアノブチルウンデシルカーボネート、4-シアノブチルドデシルカーボネート、4-シアノブチル2-エチルヘキシルカーボネート、プロピルトリメチルシリルカーボネート、ブチルトリメチルシリルカーボネート、イソプロピルトリメチルシリルカーボネート、2-ブチルトリメチルシリルカーボネート、イソブチルトリメチルシリルカーボネート、tertブチルトリメチルシリルカーボネート、ペンチルトリメチルシリルカーボネート、2-ペンチルトリメチルシリルカーボネート、3-ペンチルトリメチルシリルカーボネート、ヘキシルトリメチルシリルカーボネート、ヘプチルトリメチルシリルカーボネート、オクチルトリメチルシリルカーボネート、ノニルトリメチルシリルカーボネート、デシルトリメチルシリルカーボネート、トリメチルシリルウンデシルカーボネート、ドデシルトリメチルシリルカーボネート、2-エチルヘキシルトリメチルシリルカーボネート、エチルジメチルシリルプロピルカーボネート、ブチルエチルジメチルシリルカーボネート、エチルジメチルシリルイソプロピルカーボネート、2-ブチルエチルジメチルシリルカーボネート、イソブチルエチルジメチルシリルカーボネート、tertブチルエチルジメチルシリルカーボネート、エチルジメチルシリルペンチルカーボネート、エチルジメチルシリル2-ペンチルカーボネート、エチルジメチルシリル3-ペンチルカーボネート、エチルジメチルシリルヘキシルカーボネート、エチルジメチルシリルヘプチルカーボネート、エチルジメチルシリルオクチルカーボネート、エチルジメチルシリルノニルカーボネート、デシルエチルジメチルシリルカーボネート、エチルジメチルシリルウンデシルカーボネート、ドデシルエチルジメチルシリルカーボネート、エチルジメチルシリル2-エチルヘキシルカーボネート、ジエチルメチルシリルプロピルカーボネート、ブチルジエチルメチルシリルカーボネート、ジエチルメチルシリルイソプロピルカーボネート、2-ブチルジエチルメチルシリルカーボネート、イソブチルジエチルメチルシリルカーボネート、tertブチルジエチルメチルシリルカーボネート、ジエチルメチルシリルペンチルカーボネート、ジエチルメチルシリル2-ペンチルカーボネート、ジエチルメチルシリル3-ペンチルカーボネート、ジエチルメチルシリルヘキシルカーボネート、ジエチルメチルシリルヘプチルカーボネート、ジエチルメチルシリルオクチルカーボネート、ジエチルメチルシリルノニルカーボネート、デシルジエチルメチルシリルカーボネート、ジエチルメチルシリルウンデシルカーボネート、ジエチルメチルシリルドデシルカーボネート、2-エチルヘキシルジエチルメチルシリルカーボネート、プロピルトリエチルシリルカーボネート、ブチルトリエチルシリルカーボネート、イソプロピルトリエチルシリルカーボネート、2-ブチルトリエチルシリルカーボネート、イソブチルトリエチルシリルカーボネート、tertブチルトリエチルシリルカーボネート、ペンチルトリエチルシリルカーボネート、2-ペンチルトリエチルシリルカーボネート、3-ペンチルトリエチルシリルカーボネート、ヘキシルトリエチルシリルカーボネート、ヘプチルトリエチルシリルカーボネート、オクチルトリエチルシリルカーボネート、ノニルトリエチルシリルカーボネート、デシルトリエチルシリルカーボネート、トリエチルシリルウンデシルカーボネート、ドデシルトリエチルシリルカーボネート、2-エチルヘキシルトリエチルシリルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリルプロピルカーボネート、ブチルジメチルイソプロピルシリルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリルイソプロピルカーボネート、2-ブチルジメチルイソプロピルシリルカーボネート、イソブチルジメチルイソプロピルシリルカーボネート、tertブチルジメチルイソプロピルシリルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリルペンチルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリル2-ペンチルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリル3-ペンチルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリルヘキシルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリルヘプチルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリルオクチルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリルノニルカーボネート、デシルジメチルイソプロピルシリルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリルウンデシルカーボネート、ジメチルイソプロピルシリルドデシルカーボネート、2-エチルヘキシルジメチルイソプロピルシリルカーボネート、プロピルトリイソプロピルシリルカーボネート、ブチルトリイソプロピルシリルカーボネート、イソプロピルトリイソプロピルシリルカーボネート、2-ブチルトリイソプロピルシリルカーボネート、イソブチルトリイソプロピルシリルカーボネート、tertブチルトリイソプロピルシリルカーボネート、ペンチルトリイソプロピルシリルカーボネート、2-ペンチルトリイソプロピルシリルカーボネート、3-ペンチルトリイソプロピルシリルカーボネート、ヘキシルトリイソプロピルシリルカーボネート、ヘプチルトリイソプロピルシリルカーボネート、オクチルトリイソプロピルシリルカーボネート、ノニルトリイソプロピルシリルカーボネート、デシルトリイソプロピルシリルカーボネート、トリイソプロピルシリルウンデシルカーボネート、ドデシルトリイソプロピルシリルカーボネート、2-エチルヘキシルトリイソプロピルシリルカーボネート、プロピルtertブチルジメチルシリルカーボネート、ブチルtertブチルジメチルシリルカーボネート、イソプロピルtertブチルジメチルシリルカーボネート、2-ブチルtertブチルジメチルシリルカーボネート、イソブチルtertブチルジメチルシリルカーボネート、tertブチルtertブチルジメチルシリルカーボネート、ペンチルtertブチルジメチルシリルカーボネート、2-ペンチルtertブチルジメチルシリルカーボネート、3-ペンチルtertブチルジメチルシリルカーボネート、ヘキシルtertブチルジメチルシリルカーボネート、ヘプチルtertブチルジメチルシリルカーボネート、オクチルtertブチルジメチルシリルカーボネート、ノニルtertブチルジメチルシリルカーボネート、デシルtertブチルジメチルシリルカーボネート、tertブチルジメチルシリルウンデシルカーボネート、ドデシルtertブチルジメチルシリルカーボネート、2-エチルヘキシルtertブチルジメチルシリルカーボネート、プロピル2-トリメチルシリエチルカーボネート、ブチル2-トリメチルシリエチルカーボネート、イソプロピル2-トリメチルシリエチルカーボネート、2-ブチル2-トリメチルシリエチルカーボネート、イソブチル
2-トリメチルシリエチルカーボネート、tertブチル2-トリメチルシリエチルカーボネート、ペンチル2-トリメチルシリエチルカーボネート、2-ペンチル2-トリメチルシリエチルカーボネート、3-ペンチル2-トリメチルシリエチルカーボネート、ヘキシル2-トリメチルシリエチルカーボネート、ヘプチル2-トリメチルシリエチルカーボネート、オクチル2-トリメチルシリエチルカーボネート、ノニル2-トリメチルシリエチルカーボネート、デシル2-トリメチルシリエチルカーボネート、2-トリメチルシリエチルウンデシルカーボネート、ドデシル2-トリメチルシリエチルカーボネート、2-エチルヘキシル2-トリメチルシリエチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネートまたは(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネートである。
【0069】
より好ましい実施形態では、式(I)のカーボネート化合物は、ジドデシルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、エチルドデシルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、エチルイソプロピルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、ジペンチルカーボネート、メチルペンチルカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、メチル2-ペンチルカーボネート、ジ(2-ペンチル)カーボネート、2-ブチルメチルカーボネート、ジ(2-ブチル)カーボネート、2-エチルブチルメチルカーボネート、ジ(2-エチルブチル)カーボネート、イソブチルイソプロピルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネート、ジ(2-メトキシエチル)カーボネート、2-イソプロポキシエチルメチルカーボネート、ジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートまたはジ(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)カーボネートである。
【0070】
より好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、ジドデシルカーボネート、ジブチルカーボネート、2-エチルブチルメチルカーボネート、ジ(2-エチルブチル)カーボネート、ジ(2-ブチル)カーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、ジ(2-ペンチル)カーボネート、エチルドデシルカーボネート、2-シアノエチルブチルカーボネート、2-メトキシエチルイソブチルカーボネート、(2-トリメチルシリルオキシ)エチルブチルカーボネート、ジ(2-イソプロポキシエチル)カーボネートまたはジイソブチルカーボネートである。
【0071】
さらに好ましい実施形態では、式(I)の化合物は、ジドデシルカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)カーボネート、2-エチルヘキシルメチルカーボネート、エチルドデシルカーボネートまたはジイソブチルカーボネートである。
【0072】
最も好ましい実施形態では、式(I)のカーボネート化合物は、ジイソブチルカーボネートである。
【0073】
本発明の別の態様では、本発明は、その全ての好ましい下位群、特に、R2がC1~C9アルキルである場合にR1がC3~C9アルキルではないものを含む、先のカーボネート化合物自体を全て提供する。好ましいそのような化合物としては、R2がC1~C9アルキルである場合に、R1が、C3~C24アルコキシアルキル、C3~C24ω-O-アルキルオリゴ(エチレングリコール)またはC4~C24ω-O-アルキルオリゴ(プロピレングリコール)を表すものが挙げられる。
【0074】
非水電解質
先に言及したように、低腐食性非水電解質は、溶媒として先のセクションの式(I)のカーボネート化合物と、該溶媒に溶解した導電性塩と、を含む。
【0075】
実施形態では、該式(I)のカーボネート化合物の混合物が該溶媒として使用され得る。
【0076】
本発明の電解質は、当技術分野で既知の任意の技術を使用して調製することができる。例えば、本発明のカーボネート溶媒から電解質を調製するために、当業者であれば、適切な導電性塩を該カーボネート溶媒中に適切な濃度で溶解させることができると知っているであろう。電解質の用途に応じて、様々な塩を選択することができる。例えば、上記のように、電解質をリチウム電池内で使用する場合、リチウム塩を選択することができる。しかしながら、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムおよびマグネシウム系電池については、他の塩、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムおよびマグネシウム塩を溶媒に溶解させることができる。
【0077】
導電性塩
導電性塩の選択は、アノード溶解に影響を及ぼす。例えば、より少ない本発明の式(I)のカーボネート化合物を含有する電解質の場合、不動態化導電性塩を添加すると、それでもなおアルミニウムのアノード溶解を防止する電解質が生成される。LiPF6のような一部の無機塩は、不溶性化合物を形成し、したがって、Liアノードに対して5V超までアノード溶解を引き起こさないため、アルミニウムの表面を不動態化する。対照的に、一部の塩は、アルミニウム、特に、アルミニウムの非常に強い溶解を引き起こす低フッ素化スルホニルアミドを不動態化しない。前述のように、これは、電池システムの動作電圧が臨界電位を上回る場合、電池システムの故障をもたらし得る。そのような導電性塩を使用する場合、アノード溶解をさらに防止するために、電解質中に式(I)のカーボネート化合物をより多く含むことが好ましい。
【0078】
導電性塩は、以下のものから選択され得る。LiClO
4;LiP(CN)
αF
6-α[式中、αは0~6の整数である]、好ましくはLiPF
6;LiB(CN)
βF
4-β[式中、βは0~4の整数である]、好ましくはLiBF
4;LiP(C
nF
2n+1)
γF
6-γ[式中、nは1~20の整数であり、γは1~6の整数である];LiB(C
nF
2n+1)
δF
4-δ[式中、nは1~20の整数であり、δは1~4の整数である];Li
2Si(C
nF
2n+1)
εF
6-ε[式中、nは1~20の整数であり、εは0~6の整数である];リチウムビスオキサラトボレート;リチウムジフルオロオキサラトボレート;ならびに以下の一般式:
【化5-1】
【化5-2】
[式中、
R
3は、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、水素または有機カチオンを表し、
R
4、R
5、R
6、R
7、R
8は、シアノ、フッ素、塩素、1~24個の炭素原子を有する分岐状もしくは線状アルキルラジカル、1~24個の炭素原子を有する過フッ素化線状アルキルラジカル、アリールもしくはヘテロアリールラジカル、または過フッ素化アリールもしくはヘテロアリールラジカルを表す]
によって表される化合物およびそれらの誘導体。
【0079】
好ましい実施形態では、導電性塩はリチウム塩である。これは、例えば、電解質がリチウム電池またはリチウムイオン電池内で使用される場合に適切である。リチウム塩の非限定的な例としては、上記の塩、好ましくは、過塩素酸リチウム、リチウムテトラフルオロボレート、リチウムヘキサフルオロホスフェート、リチウムスルホニルアミド塩(例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド、リチウムN-フルオロスルホニル-トリフルオロメタンスルホニルアミド(LiFTFSI)およびリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド)ならびにそれらの誘導体が挙げられる。好ましい実施形態では、導電性塩は、リチウムスルホニルアミド塩である。好ましい実施形態では、リチウムスルホニルアミド塩は、リチウムビス(フルオロスルホニル)アミド(LiFSI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(LiTFSI)またはリチウムN-フルオロスルホニル-トリフルオロメタンスルホニルアミド(LiFTFSI)である。より好ましい実施形態では、導電性塩はLiFSIである。これは、例えば、電解質がリチウムイオン電池内で使用されるべき場合に適切である。実際に、本発明の電解質の重要な利点は、これによって、カソードの上限電位がLi金属に対して4.2V超である電池システムでのリチウムスルホニルアミド塩の使用が可能になることである。
【0080】
代替的な実施形態では、塩は、先に列挙されているようなナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムまたはマグネシウム塩である。これは、例えば、電解質が、ナトリウム系電池、カリウム系電池、カルシウム系電池、アルミニウム系電池またはマグネシウム系電池内で使用されるべき場合に適切である。
【0081】
電解質中に存在する導電性塩の濃度は変化し得る。当業者であれば、導電性塩の量が電解質の有効性に深刻な悪影響を及ぼすべきではないと理解するであろう。導電性塩の濃度は、添加剤の存在にかかわらず、カーボネート溶媒および任意の他の溶媒(存在する場合)中の導電性塩のモル濃度を指す。これは、以下の式によって表すことができる。
【数1】
式中、電解質の体積は、式(I)のカーボネート化合物、溶解している塩、および存在する任意の液体添加剤の最終的な総体積である。
【0082】
実施形態では、導電性塩の濃度は、少なくとも約0.05Mおよび/または最大約3Mである。実施形態では、導電性塩の濃度は、少なくとも約0.05M、少なくとも約0.1M、少なくとも約0.5Mもしくは少なくとも約1M、および/または最大約3M、最大約2M、最大約1.5Mもしくは最大約1Mである。
【0083】
好ましい実施形態では、導電性塩の濃度は1Mである。
【0084】
電解質の電気化学的特性を改善する添加剤
実施形態では、電解質は、電解質の電気化学的特性を改善するために使用される1つ以上の添加剤をさらに含む。電解質の電気化学的特性を改善する添加剤の非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:
・固体電解質界面(SEI)およびサイクル特性を改善する薬剤、
・高電圧および低電圧における安定性を改善する不飽和カーボネート、ならびに
・粘度を低下させ、かつ導電性を増加させる有機溶媒。
【0085】
当業者であれば、1つの添加剤が、電解質に対して1つより多くの特定の技術的効果を及ぼし、したがって、添加剤の所望の効果に応じて、異なる好ましい濃度範囲を有する例示的な添加剤の先の一覧のうちの1つより多くで引用され得ると理解するであろう。
【0086】
固体電解質界面およびサイクル特性を改善する薬剤は、好ましくは電解質中に存在する。固体電解質界面およびサイクル特性を改善する薬剤の非限定的な例としては、エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、メチレン-エチレンカーボネート、プロパ-1-エン-1,3-スルトン、アクリルアミド、フマロニトリルおよびトリアリルホスフェートが挙げられる。固体電解質界面およびサイクル特性を改善する好ましい薬剤としては、エチレンカーボネート(EC)およびフルオロエチレンカーボネート(FEC)が挙げられる。
【0087】
不飽和カーボネートは、任意選択的に電解質中に存在する。高電圧および低電圧における安定性を改善する不飽和カーボネートの非限定的な例としては、ビニレンカーボネート、ならびにエテンの誘導体(すなわち、ビニル化合物)、例えば、メチルビニルカーボネート、ジビニルカーボネートおよびエチルビニルカーボネートが挙げられる。
【0088】
粘度を低下させ、かつ導電性を増加させる有機溶媒は、任意選択的に電解質中に存在する。好ましい実施形態では、そのような有機溶媒が存在する。粘度を低下させ、かつ導電性を増加させる有機溶媒の非限定的な例としては、極性溶媒、好ましくは、アルキルカーボネート、アルキルエーテルおよびアルキルエステルが挙げられる。例えば、有機溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジグリム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグリム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラグリム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、メトキシプロピオニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、γ-ブチロラクトンのような環状エステル、ε-カプロラクトン、トリフルオロ酢酸エステル、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホンまたは過アルキル化スルファミドであり得る。実施形態では、可燃性を低下させ、かつ導電性を増加させるために、イオン性液体も添加され得る。粘度を低下させ、かつ導電性を増加させる好ましい有機溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)およびジエチルカーボネート(DEC)が挙げられる。
【0089】
実施形態では、固体電解質界面(SEI)およびサイクル特性を改善する薬剤および不飽和カーボネートは、合わせて合計で、電解質の総質量の少なくとも約0.1%および/または最大約20%に相当する。実施形態では、これらの添加剤の量は、合計で、電解質の総重量の少なくとも約0.1%w/w、少なくとも1%w/w、少なくとも約2%w/w、少なくとも約5%w/wもしくは少なくとも約7%w/w、および/または最大約20%w/w、最大約15%w/w、最大約10%w/wもしくは最大約7%w/wに相当する。
【0090】
実施形態では、粘度を低下させ、かつ導電性を増加させる有機溶媒は、合計で、電解質の総体積の少なくとも約1%v/vおよび/または最大約80%v/vに相当する。実施形態では、有機溶媒は、合計で、電解質の総体積の少なくとも約1%v/v、少なくとも約2%v/v、少なくとも約5%v/vもしくは少なくとも約7%v/v、および/または最大約80%v/v、最大約50%v/v、最大約20%v/v、最大約15%v/v、最大約10%v/vもしくは最大約7%v/vに相当する。
【0091】
好ましい実施形態では、添加剤は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)またはそれらの混合物である。
【0092】
より好ましい実施形態では、添加剤は、FEC、好ましくは約2w/w%のFECであり、単独であるか、またはEC、DECもしくはそれらの混合物と一緒になっており、好ましくは、単独であるか、または
・最大約5%v/vのEC、
・最大約10%v/vのEC、
・最大約15%v/vのEC、
・最大約20%v/vのEC、
・最大約30%v/vのEC、
・最大約20%v/vのECとDECとの混合物、
・最大約25%v/vのECとDECとの混合物、
・最大約30%v/vのECとDECとの混合物、
・最大約50%v/vのECとDECとの混合物、
・最大約70%v/vのECとDECとの混合物、もしくは
・最大約75%v/vのECとDECとの混合物
と一緒になっており、全てのw/w%が電解質の総重量に基づいており、全てのv/v%が電解質の総体積に基づく。
【0093】
実施形態では、ECとDECとの混合物におけるエチレンカーボネート(EC)対ジエチルカーボネート(DEC)の体積比は、約1:10~約1:1であり、好ましくは、この体積比は、約3:7である。
【0094】
好ましい実施形態では、添加剤は、エチレンカーボネートおよびフルオロエチレンカーボネートのみである(好ましくは上述の量)。
【0095】
より好ましい実施形態では、添加剤はフルオロエチレンカーボネートのみである(好ましくは上述の量)。
【0096】
腐食抑制剤
好ましい実施形態では、電解質は腐食抑制剤を含まない。実際に、先に言及したように、式(I)のカーボネート化合物の利点のうちの1つは、4.2Vより高い電圧でさえも、アルミニウム集電体に対するそれらの腐食性が低いことを特徴とする点である。
【0097】
代替的な実施形態では、電解質は、1つ以上の腐食抑制剤をさらに含む。腐食抑制剤の非限定的な例としては、LiPF6、リチウムシアノフルオロホスフェート、リチウムフルオロオキサラトホスフェート、LiDFOB、LiBF4、リチウムフルオロシアノボレートおよびLiBOBが挙げられる。
【0098】
実施形態では、腐食抑制剤は、合計で、電解質の総重量の少なくとも約1%および/または最大約35%に相当する。実施形態では、腐食抑制剤の総量は、電解質の総重量の少なくとも約1%w/w、少なくとも約2%w/w、少なくとも約5%w/wもしくは少なくとも約10%w/w、および/または最大約35%w/w、最大約25%w/w、最大約20%w/w、最大約15%w/w、最大約10%w/wもしくは最大約7%w/wに相当する。
【0099】
電解質における式(I)の化合物の最小濃度
当業者であれば、電解質における式(I)のカーボネート化合物の濃度は、導電性塩の所望の濃度ならびに先の添加剤および腐食抑制剤の量のような様々な要因に影響されると理解するであろう。
【0100】
それでも、本発明の電解質は、所望のアノード溶解抑制を達成するのに十分な濃度で式(I)のカーボネート化合物を含有すべきである。
【0101】
実際には、アノード溶解の抑制を達成するために必要な式(I)のカーボネート化合物の濃度は、意図される動作電圧および腐食抑制剤の存在のような様々な要因に応じて変化する。一般に、腐食抑制剤が存在する場合、アノード溶解の所望の抑制を達成するためには、より低い濃度の式(I)のカーボネート化合物が必要となる。
【0102】
好ましい実施形態では、式(I)のカーボネート化合物は、電解質の総体積の少なくとも約25%v/v、好ましくは少なくとも約50%v/v、より好ましくは少なくとも約75%v/v、なおより好ましくは少なくとも約85%v/v、さらにより好ましくは少なくとも約90%v/v、そして最も好ましくは少なくとも約95%に相当する。
【0103】
電解質が先のセクションに記載されているように1つ以上の腐食抑制剤を含む代替的な実施形態では、式(I)のカーボネート化合物は、より低い濃度で存在することができる。例えば、電解質の体積に基づいて、少なくとも約10%v/v、好ましくは少なくとも約15%v/v、より好ましくは少なくとも約20%v/v、なおより好ましくは少なくとも約25%v/v、そして最も好ましくは少なくとも約30%の濃度である。
【0104】
好ましい実施形態では、本発明の電解質は他の溶媒を含まない。言い換えるなら、電解質中の唯一の溶媒は、式(I)のカーボネート化合物である。
【0105】
電池の残りのコンポーネント
先に言及したように、本発明の電池は、
(a)アルミニウム集電体を含むカソードと、
(b)アノードと、
(c)アノードおよびカソードを分離するセパレータ膜と、
(d)アノードおよびカソードと接触する低腐食性非水電解質と、からなる。
【0106】
先に言及したように、この電池は、好ましい実施形態では、リチウム電池、リチウムイオン電池、ナトリウム電池、ナトリウムイオン電池、カリウム電池、カリウムイオン電池、マグネシウム電池、マグネシウムイオン電池、アルミニウム電池またはアルミニウムイオン電池である。
【0107】
非水溶媒、アノード、カソードおよびセパレータ膜の選択は、電池のタイプに応じて変化する。電池がリチウムイオン電池である場合、例えば、リチウムスルホニルアミド塩のようなリチウム塩を導電性塩として含む電解質を選択することがより適切であろう。しかしながら、電池がナトリウム系電池である場合、例えば、ナトリウム塩を導電性塩として含む電解質を選択することがより適切であろう。
【0108】
非水電解質は、先のセクションで定義した電解質である。
【0109】
アノードは、典型的には電池に使用される任意のアノードであり得る。
【0110】
好ましい実施形態では、アノードは、リチウム電池またはリチウムイオン電池に好適なものである。そのようなアノードは、通常、Li金属、炭素質材料(グラファイト、コークスおよび硬質炭素)、ケイ素およびその合金、スズおよびその合金、アンチモンおよびその合金、ならびに/またはチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)製である。通常、これらの材料が、溶媒、ポリマーバインダーおよび電気伝導性添加剤(カーボンナノチューブおよびカーボンブラックのような様々な形態の導電性炭素を含む)と混合され、その後、銅集電体上にコーティングされて、アノードが得られる。好ましい実施形態では、アノードは、リチウム金属またはグラファイト製である。
【0111】
本発明の電解質の使用の1つの利点は、アルミニウム集電体のアノード溶解の防止であるため、カソードは、アルミニウム集電体を含む電池に典型的に使用される任意のカソードであり得る。
【0112】
好ましい実施形態では、カソードは、リチウム電池またはリチウムイオン電池に好適なものである。そのようなカソードは、通常、リチウム化合物を含む。通常、これらのリチウム化合物が、溶媒、ポリマーバインダーおよび電気伝導性添加剤(カーボンナノチューブおよびカーボンブラックのような様々な形態の導電性炭素を含む)と混合され、その後、アルミニウム集電体上にコーティングされて、カソードが得られる。このアルミニウム集電体は、特に電解質が非不働態化導電性塩を含有する場合、上昇した電位でアノード溶解しやすい。そのようなリチウム化合物としては、LCO(LiCoO2)、LNO(LiNiO2)、LMO(LiMn2O4)、LiCoxNi1-xO2[式中、xは0.1~0.9である]、LMN(LiMn3/2Ni1/2O4)、LMC(LiMnCoO2)、LiCuxMn2-xO4、NMC(LiNixMnyCozO2)、NCA(LiNixCoyAlzO2)、遷移金属と錯体アニオンとを有するリチウム化合物、LFP(LiFePO4)、LNP(LiNiPO4)、LMP(LiMnPO4)、LCP(LiCoPO4)、Li2FCoPO4、LiCoqFexNiyMnzPO4およびLi2MnSiO4などの移金属のリチウム化酸化物が挙げられる。
【0113】
好ましい実施形態では、本発明のカソードは、LMNカソードまたはLCOカソードである。
【0114】
実施形態では、カソードは、集電体のみを備える。
【0115】
実施形態では、カソードは、上記のリチウム化合物、好ましくはLMNまたはLCOで集電体をコーティングすることによって作製される。好ましい実施形態では、集電体は、アルミニウム集電体である。
【0116】
電極間の物理的接触を防止するために、通常、セパレータ膜が電極間に配置されている。セパレータ膜は、典型的には電池に使用される任意のセパレータ膜であり得る。
【0117】
好ましい実施形態では、セパレータ膜は、リチウム電池またはリチウムイオン電池に好適なものである。そのようなセパレータ膜の別の機能は、リチウムデンドライトが電極間の短絡を引き起こすのを防ぐことである。そのようなセパレータ膜としては、典型的には、(i)好ましくはポリエチレン「PE」、ポリプロピレン「PP」またはPEとPPとの組み合わせから作製されたポリオレフィン系多孔質高分子膜、例えば、三層PP/PE/PP膜、(ii)熱活性化可能なマイクロポーラス膜、(iii)ガラス、セラミックまたは合成織物(織布または不織布)を含む織物から作製された多孔質材料、(iv)ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースおよびポリアミドのようなポリマー材料から作製された多孔質膜、(v)高電位での性能を改善するために追加のセラミック層が備えられた多孔質高分子膜、ならびに(vi)高分子電解質膜が挙げられる。しかしながら、言及したように、セパレータ膜は、典型的には電池、好ましくはリチウム電池またはリチウムイオン電池、例えば、Celgard 3501(商標)またはCelgard Q20S1HX(商標)に使用される任意のセパレータ膜でもあり得る。
【0118】
電池のタイプに応じて、異なるカソード、アノードおよびセパレータ膜が提供または調製され得る。電解質と同様に、カソード、アノードおよびセパレータ膜は、当技術分野において既知の任意の技術を使用して調製することができ、電池は、当技術分野において既知の任意の技術を使用して調製することができる。
【0119】
先に言及したように、本発明の電池には、当業者に容易に理解されるであろう非常に様々な用途がある。そのような用途としては、電気自動車、電動工具、グリッドエネルギー貯蔵、医療機器および設備、玩具、ハイブリッド電気自動車、携帯電話、ラップトップ、ならびに様々な軍事および航空宇宙用途が挙げられる。
【0120】
カーボネート溶媒、非水電解質および電池を製造する方法
本発明の別の態様では、先のカーボネート溶媒および電池を製造する方法が提供される。
【0121】
本発明のカーボネート溶媒、電解質および電池はそれぞれ、当技術分野で既知の任意の技術を使用して調製することができる。
【0122】
例えば、本発明のカーボネート溶媒は、以下の式に従って合成することができる:
【化6-1】
【化6-2】
【0123】
先の式において、R6は、先に定義したR1およびR2の両方を表す。アルキルカーボネートの合成は、非常によく発達したプロセスである。最も都合が良い方法を以下に論じるが、当業者であれば、他の合成方法が使用可能であると理解するであろう。
【0124】
より小さな規模での本発明のカーボネート溶媒の調製は、好適な触媒の存在下での、容易に入手可能なジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートまたはプロピレンと脂肪族アルコールとの塩基触媒エステル交換反応によって最も都合良く達成される。カーボネートエステルのエステル交換反応は、典型的な平衡反応である他のエステルのエステル交換反応と同じ規則に従い、ルシャトリエの原理を使用することによって容易に制御することができる。アルコールとカーボネートエステルとの比は、完全に平衡化された反応混合物中の生成物の比を決定する。完全な置換が望ましい場合は、過剰なアルコールを使用すべきである。所望の生成物が混合カーボネートである場合、モル比が1の近くである必要があるか、または少し過剰な出発カーボネートを使用する必要がある。反応の間、反応生成物を反応混合物から絶えず除去することが望ましい。これによって、反応が完了までより速く進行することができる。分離は、低級アルコールの分別蒸留によって最も都合良く行われる。この理由から、形成されたアルコールはより低い沸点を有するため、高級カーボネートよりも低級カーボネートの使用が好ましいが、分離を複雑にし得る共沸混合物の形成に注意を払う必要がある。
【0125】
この変換に使用される触媒は、酸および塩基から選択することができるが、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のカーボネート、酸化物、水酸化物およびアルコキシドのような塩基が、揮発性生成物から容易に分離することができるため好ましい。
【0126】
分別蒸留用に備えられた好適な反応容器内に、適切な量の所望の脂肪族アルコールが入れられ、特定量の金属ナトリウムが添加される。ナトリウムの量は、反応物中に存在する水と反応してこれを全て消費するように選択すべきである。このようにして、無水溶媒を単離することができる。ナトリウム溶解のプロセスは、全ての高級アルコールで必要とされる加熱および撹拌によって加速することができる。窒素またはアルゴンの保護雰囲気を使用して、大気からの二酸化炭素および水の取り込みを排除すべきである。ナトリウムが溶解したら、出発カーボネートエステルを添加し、反応中に形成されるアルコールが反応混合物から蒸留されるような温度で混合物を還流させ、その一方で、全ての反応物が反応器内に残る。反応が終了した後に、反応混合物の成分を、高級アルキルカーボネートのために真空下で分別蒸留によって分離する。共沸物が形成されない場合、このようにして溶媒を高純度で単離することができる。
【0127】
しかしながら、対称カーボネートの工業的調製は、対応するアルコールをホスゲン化することによって実施することができる。
【0128】
少量の混合カーボネートが望まれる場合、最も好適な方法は、形成されるHClを結合させる好適な塩基の存在下にて、非プロトン性溶媒中で脂肪族アルコールを脂肪族クロロホルマートと反応させることであると思われる。この方法は、十分に確立されているにもかかわらず、時折誤った結果をもたらす場合がある。
【0129】
定義
(特に以下のクレームの文脈において)本発明を説明する文脈における「a」および「an」および「the」という用語および同様の指示対象の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0130】
「備える」、「有する」、「含む」および「含有する」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。
【0131】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内にある各別個の値を個々に参照する簡略方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各別個の値は本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。範囲内の値の全てのサブセットも、本明細書で個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0132】
同様に、本明細書において、様々な置換基およびこれらの置換基について列挙されている様々なラジカルを有する一般的な化学構造は、任意の置換基についてのいずれかのラジカルを組み合わせることによって得られるそれぞれおよびあらゆる分子を個別に指す簡潔な方法として機能することが意図されている。それぞれの個々の分子は、本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。さらに、一般的な化学構造における分子の全てのサブセットも、本明細書で個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0133】
本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書で別途指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。
【0134】
本明細書において提供されるありとあらゆる実施例、または例示的な言葉(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0135】
本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須であるとしていかなる特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0136】
本明細書において、「約」という用語は、その通常の意味を有する。実施形態では、この用語は、修飾されている数値のプラスもしくはマイナス10%またはプラスもしくはマイナス5%を意味し得る。
【0137】
特に定義されない限り、本明細書で使用されている全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に共通に理解されるものと同じ意味を有している。
【0138】
間違いのないように、以下のことに留意すべきである。
・アルキロイルは、アルキル-C(=O)-であり、
・アリーロイルは、アリール-C(=O)-であり、
・アルキルオキシカルボニルは、アルキル-O-C(=O)-であり、
・アリールオキシカルボニルは、アリール-O-C(=O)-である。
【0139】
本明細書において、「アルキル」という用語は、当技術分野における通常の意味を有する。特に指定のない限り、アルキル基の炭化水素鎖は、線状であっても、または分岐状であってもよいことに留意されたい。
【0140】
本明細書において、「アリール」という用語は、当技術分野における通常の意味を有する。特に指定のない限り、アリール基は、炭素およびヘテロ原子を含む、好ましくはヘテロ原子を含まない、5~30個の原子を含み得て、より具体的には、5~10個の原子を含み得るか、または5個もしくは6個の原子を含み得ることに留意されたい。
【0141】
明確にするために、以下の略語を使用する:EC-エチレンカーボネート、PC-プロピレンカーボネート、DEC-ジエチルカーボネート、EMC-エチルメチルカーボネート、DMC-ジメチルカーボネート、FEC-フルオロエチレンカーボネート、VC-ビニレンカーボネート、LCO-LiCoO2-コバルト酸リチウム、LMN-LiMn3/2Ni1/2O4。
【0142】
本発明の他の対象、利点および特徴は、例えば添付の図面を参照してのみ与えられる、本発明の特定の実施形態についての以下の非限定的な説明を読むことによってより明らかになるであろう。
【実施例】
【0143】
例示的な実施形態の説明
以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
各実施例の内容の簡単な要約は、以下の通りである:
実施例1~4は、本発明の様々なカーボネート溶媒の調製を含む。
実施例5~7は、従来の電解質を含むボタン型セルにおけるアノード溶解を測定する比較例である。
実施例8~10は、本発明の電解質を含むボタン型セルにおけるアノード溶解を測定する。
実施例11~54は、本発明の様々な電解質のアノード溶解の開始電位を測定することを含む。
実施例55および58は、従来の電解質を含むボタン型セルの充放電を測定した比較例である。
実施例56、57および59は、本発明の電解質を含むボタン型セルの充放電を測定することを含む。
実施例60は、デジタル走査熱量測定(DSC)実験を実施することによって本発明の電解質および従来の電解質の温度範囲を測定することを含む。
実施例61は、サイクル数に対する3つのセルの放電容量を測定することを含み、セルのうちの2つは本発明の電解質を含み、1つは従来の電解質を含む。
【0144】
本発明のカーボネート溶媒の調製
実施例1:エステル交換反応によるジイソブチルカーボネート(溶媒番号10)の調製
ビグリューカラムを備えた250mlの丸底フラスコに、128g(1.73mol)のイソブタノールを入れ、その中に、沸点で0.3gのナトリウムを溶解させ、59g(0.66mol)のジメチルカーボネートを添加した。混合物を、形成されたメタノールを分離しながら一晩還流させた。メタノールの分離が停止した後に、残りを分別蒸留に供すると、120gのジイソブチルカーボネートが無色の液体として得られた。未反応のイソブタノール、ジメチルカーボネートおよびイソブチルメチルカーボネートもまた、先の画分において検出された。生成物の構造は、NMR(核磁気共鳴分光法)、IR(赤外分光法)およびGC/MS(質量選択的検出器を用いたガスクロマトグラフィー)分析によって確認した。
【0145】
実施例2:エステル交換反応によるジ(2-ペンチル)カーボネート(溶媒番号17)およびメチル2-ペンチルカーボネート(溶媒番号16)の調製
ビグリューカラムを備えた250mlの丸底フラスコに、116g(1316mmol)の2-ペンタノールを入れ、その中に、100℃で1gのナトリウムを溶解させ、98g(1088mmol)のジメチルカーボネートを添加した。混合物を、形成されたメタノールを分離しながら48時間かけて還流させた。メタノールの分離が停止した後に、残りを真空分別蒸留に供すると、純粋なメチル2-ペンチルカーボネートを含有する40gのより小さな画分および70gのジ(2-ペンチル)カーボネートの主画分が無色の液体として得られた。未反応のジメチルカーボネート、2-ペンタノールおよびメタノールもまた、先の画分において検出された。生成物の構造は、NMR、IRおよびGC/MS分析によって確認した。
【0146】
実施例3:ブチルクロロホルマートと3-ヒドロキシプロピノニトリルとの反応による2-シアノエチルブチルカーボネート(溶媒番号23)の調製
250mlの丸底フラスコに、3-ヒドロキシプロピノニトリル7.1g(100mmol)、蒸留したばかりのトリエチルアミン11gおよび無水ジクロロメタン150mlを入れる。混合物を氷水浴中で窒素のもと冷却し、30mlのジクロロメタン中に入った13,66g(100mmol)のブチルクロロホルマート溶液を滴加した。添加後に、混合物を室温で2時間にわたって撹拌し、その後、水および硫酸を添加し、分離漏斗によって混合物を分離した。有機相を、水で4回洗浄し、次いで、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残りの透明な油を蒸留すると、純粋な生成物(13.1g)が得られた。生成物の構造は、NMR、IRおよびGC/MS分析によって確認した。
【0147】
実施例4:本発明の他のカーボネート溶媒の調製
他のジアルキルカーボネートを実施例1~3の手順と同様に調製した。これらは全て、それらの
1Hおよび
13C NMR分光法データと共に以下の表(表1)に列挙されている。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0148】
アルミニウム集電体のアノード溶解の測定
以下の例では、アルミニウム集電体のアノード溶解を測定した。アルミニウム集電体のアノード溶解の検出は、多くの電気化学的方法によって実現することができる。アノード溶解の1つの指標は、基準電極と裸のアルミニウム電極との間に特定の電位で生じる電流である。アノード溶解は印加電位に強く依存するため、アノード溶解のプロービング中の電位の変動が不可欠である。
【0149】
先のことを考慮して、以下の例では、クロノアンペロメトリー(CA)を使用して、アルミニウム集電体のアノード溶解を測定した。クロノアンペロメトリーは、所与の電位で電流を測定することを含み、通常、比較的長い期間にわたって実施される。したがって、最も遅いプロセスでさえ、この手法で検出することができる。以下の例について、クロノアンペロメトリーを、0.1VステップでLi金属に対して4~5.5Vの間の電位で1時間にわたって使用した(5.5Vまで4.0、4.1、4.2などで1時間のCA)。これによって、電解質の比較的高速なスクリーニングが可能になる。
【0150】
【0151】
通常、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチレンカーボネート(EC)およびプロピレンカーボネート(PC)の混合物中にLiFSI、LiFTFSIおよびLiTFSIを溶解させることによって得られた電解質においては、Li金属に対して4.1~4.3Vの間で有意なアノード溶解が生じて、電極間の高電流/電流密度として検出されることが見出された(
図1~3)。
【0152】
しかしながら、LiFSI、LiFTFSIおよびLiTFSIは、炭素原子の総数が4個以上である高級の、好ましくは分岐したジアルキルカーボネートに溶解させた場合、アルミニウム集電体のアノード溶解を、場合によってはLi金属に対して5V超の電位でさえも引き起こさないことが見出された(
図4~6)。
【0153】
実施例5(比較):LiFSI-EC-DEC電解質中でのアルミニウム集電体のアノード溶解
体積比3:7のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの従来の工業用溶媒混合物(EC/DEC)中に入った1MのLiFSI(Nippon Shokubai)の溶液を調製し、2重量%のフルオロエチレンカーボネートを添加した。
【0154】
UACJによって提供される厚さ15μmのコーティングされていないアルミニウム集電体を有するカソードとしての直径16mmのディスクを使用して、ボタン型セルを組み立てた。Celgard 3501をセパレータ膜として使用し、前述のLiFSI-EC-DEC電解質も使用した。China Energy Lithium Co.,LTD.によって提供される厚さ200μmの16mmのリチウム金属ディスクをアノードとして使用した。このセルを、カソードのアノード溶解をプロービングするために、クロノアンペロメトリー中に、0.1VステップでLi金属に対して4~5.5Vの電位で1時間にわたって使用した(4.0、4.1、4.2…5.5Vで1時間のクロノアンペロメトリー)。この実験の結果は、
図1に見ることができる。すでに4.3Vで電流の有意な出現が観察され、これはアノード溶解を示す。したがって、この電解質は、カソードの電位が4.3Vを上回る電池には使用できない。
【0155】
実施例6(比較):LiFTFSI-EC-DEC電解質中でのアルミニウム集電体のアノード溶解
実施例5に従って、ただし、体積比3:7のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネートの従来の工業用溶媒混合物(EC/DEC)および2重量%のフルオロエチレンカーボネート中に入った1MのLiFTFSIの溶液を電解質として使用して、ボタン型セルを組み立てて試験した。この実験の結果は、
図2に見ることができる。すでに4.1Vで電流の有意な出現が観察され、これはアノード溶解を示す。したがって、この電解質は、カソードの電位が4.2Vを上回る電池には使用できない。
【0156】
実施例7(比較):LiTFSI-EC-DEC電解質中でのアルミニウム集電体のアノード溶解
実施例5に従って、ただし、体積比3:7のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの従来の工業用溶媒混合物(EC/DEC)および2重量%のフルオロエチレンカーボネート中に入った1MのLiTFSIの溶液(3M(商標)から入手可能)を電解質として使用して、ボタン型セルを組み立てて試験した。この実験の結果は、
図3に見ることができる。すでに4.1Vで電流の有意な出現が観察され、これはアノード溶解を示す。したがって、この電解質は、カソードの電位が4.2Vを上回る電池には使用できない。
【0157】
実施例8:LiFSI-ジイソブチルカーボネート電解質中でのアルミニウム集電体のアノード溶解の抑制
ジイソブチルカーボネート(実施例1に従って調製した溶媒番号10)中に入った1MのLiFSI(Nippon Shokubai)の溶液を調製し、この溶液に2重量%のフルオロエチレンカーボネートを添加した。
【0158】
実施例5に従って、ただし、前述のLiFSI-ジイソブチルカーボネート電解質を使用して、ボタン型セルを組み立てて試験した。この実験の結果は、
図4に見ることができる。試験した全ての電位(4~5.5V)で、電流密度は、1μA/cm
2を十分に下回ったままであり、このことは、この電解質が、なかでも、少なくとも5.5Vのカットオフ電位を有するカソードと共に使用可能であることを意味する。
【0159】
実施例9:LiFTFSI-ジイソブチルカーボネート電解質中でのアルミニウム集電体のアノード溶解の抑制
ジイソブチルカーボネート(溶媒番号10)中に入った1MのLiFTFSIの溶液を実施例1に従って調製し、この溶液に2重量%のフルオロエチレンカーボネートを添加した。
【0160】
実施例5に従って、ただし、前述のLiFTFSI-ジイソブチルカーボネート電解質を使用して、ボタン型セルを組み立てて試験した。この実験の結果は、
図5に見ることができる。試験した全ての電位(4~5.5V)で、電流密度は、1μA/cm
2を十分に下回ったままであり、このことは、この電解質が、なかでも、電圧が5.5Vを上回る電池システムにおいて使用可能であることを意味する。前述のように、FSIを含有する従来の溶媒から調製された電解質は、典型的には、動作電圧が4.3Vを上回ると安全ではなくなる(例5~7を参照)。
【0161】
実施例10:LiTFSI-ジイソブチルカーボネート電解質中でのアルミニウム集電体のアノード溶解の抑制
ジイソブチルカーボネート(溶媒番号10)中に入った1MのLiTFSIの溶液を実施例1に従って調製し、この溶液に2重量%のフルオロエチレンカーボネートを添加した。
【0162】
実施例5に従って、ただし、前述のLiTFSI-ジイソブチルカーボネート電解質を使用して、ボタン型セルを組み立てて試験した。この実験の結果は、
図6に見ることができる。試験した全ての電位(4~5.5V)で、電流密度は、1μA/cm
2を下回ったままであり、このことは、この電解質が、なかでも、電圧が5.5Vを上回る電池システムにおいて使用可能であることを意味する。
【0163】
実施例11~54:様々な電解質のアノード溶解の開始電位
実施例5に従って、ただし、前述の結果を有する以下の表(表2)に列挙されている各電解質を使用して、ボタン型セルを組み立てて試験した。この実験の結果は、アルミニウムの有意なアノード溶解が生じる電位として提示され、該電解質の安全な使用限界を表す。異なる溶媒の混合の可能性を例示するためにいくつかの実施例を作製し、アノード溶解を抑制する効果を維持しながら増強された導電性を有する電解質を得た。
【0164】
以下の表において、「EC/DEC(体積3:7)」は、体積比3:7のEC/DEC混合物を示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0165】
ボタン型セルの充放電試験
実施例55(比較):LiFSI-EC-DEC電解質中に入ったLCOの不良な結果の充放電
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に89:3:3:5の重量比で入ったLCO、VGCF(気相法カーボンナノチューブ(vapour grown carbon nanotubes))、カーボンブラックおよびポリフッ化ビニリデン(PVDF)の混合物を使用して、LCOカソード材料を調製した。次いで、この混合物を、UACJによって提供される厚さ15μmのコーティングされていないアルミニウム集電体上にコーティングした。電極材料をカレンダー処理し、カットしてディスクにし、真空オーブン内にて120℃で12時間にわたって乾燥させてから使用した。
【0166】
カソードとしての上記LCOディスク(直径16mm)のうちの1つ、セパレータ膜としてのCelgard Q20S1HX(すなわち、比較例5の電解質)、およびChina Energy Lithium Co.,LTD.によって提供されるアノードとしての厚さ200μmの16mmのリチウム金属ディスクを使用して、ボタン型セルを組み立てた。
【0167】
このセルを、C/24レートで3~4.5Vの充放電をプロービングするために使用した。この実験の結果は、
図7に見ることができる。第1の充電/放電サイクルは通常の形状であるが、第2の充電中に、4.2Vで予期されないプラトーが生じる。このプラトーは、電荷の損失および非常に低い放電容量をもたらすアルミニウム集電体のアノード溶解に起因し得る。したがって、この電解質は、LCO電極の動作に耐えられない。
【0168】
実施例56:LiFSI-ジイソブチルカーボネート電解質中に入ったLCOの良好な結果の充放電
カソードとしての直径16mmのLCOディスク(例55に記載されているプロセスを使用して調製)、セパレータ膜としてのCelgard Q20S1HX(すなわち、実施例8の電解質)、およびChina Energy Lithium Co.,LTD.によって提供されるアノードとしての厚さ200μmの16mmのリチウム金属ディスクを使用して、ボタン型セルを組み立てた。
【0169】
このセルを、C/24レートで3~4.5Vの充放電をプロービングするために使用した。この実験の結果は、
図8に見ることができる。充電-放電曲線は変形しているが、
図7の第2のサイクルに類似したプラトーとして表出し得る寄生プロセスのいずれかの兆候を検出することはできない。したがって、この電解質は、その性能(実施例57に示される)をさらに改善するためのいくつかの添加剤を潜在的に用いて、LCO電極の動作に耐えることができる。
【0170】
実施例57:LiFSI-EC-ジイソブチルカーボネート電解質中に入ったLCOの良好な結果の充放電
実施例33の電解質(すなわち、それぞれ体積で1:9のエチレンカーボネート(EC)とジイソブチルカーボネート(溶媒番号10)との混合物中に入った1MのLiFSI(Nippon Shokubai)の溶液であり、これに2%のフルオロエチレンカーボネートを添加した)を調製した。この電解質は、溶媒番号10を体積で1:9のECと溶媒番号10との混合物に置き換えた点を除いて、実施例56の電解質と類似していることに留意されたい。言い換えるなら、ECが、本明細書において添加剤として使用される。
【0171】
UACJによって提供される厚さ15μmのアルミニウム集電体上にコーティングされたカソードとしての直径16mmのLCOディスク(例55に記載されているプロセスを使用して調製)、セパレータ膜としてのCelgard Q20S1HX、前述のLiFSI-EC-ジイソブチルカーボネート電解質、およびChina Energy Lithium Co.,LTD.によって提供されるアノードとしての厚さ200μmの16mmのリチウム金属ディスクを使用して、ボタン型セルを組み立てた。
【0172】
このセルを、C/24レートで3~4.5Vの充放電をプロービングするために使用した。この実験の結果は、
図9に見ることができる。充電-放電曲線は通常の形状を有し、
図7の第2のサイクルに類似したプラトーとして表出し得る寄生プロセスのいずれかの兆候を検出することはできない。したがって、この電解質は、かなり良好にLCO電極の動作に耐えることができる。
【0173】
実施例58(比較):LiFSI-EC-DEC電解質中に入ったLMNの不良な結果の充放電
NMP中に94:1.5:1.5:3の重量比で入ったLMN、VGCF(気相法カーボンナノチューブ)、カーボンブラックおよびポリフッ化ビニリデン(PVDF)の混合物を使用して、LiMn3/2Ni1/2O4(LMN)カソード材料を調製した。次いで、この混合物を、UACJによって提供される厚さ15μmのコーティングされていないアルミニウム集電体上にコーティングした。電極材料をカレンダー処理し、カットしてディスクにし、真空オーブン内にて120℃で12時間にわたって乾燥させてから使用した。
【0174】
カソードとしての直径16mmのLMNディスク、セパレータ膜としてのCelgard Q20S1HX(すなわち、比較例5の電解質)、およびChina Energy Lithium Co.,LTD.によって提供されるアノードとしての厚さ200μmの16mmのリチウム金属ディスクを使用して、ボタン型セルを組み立てた。
【0175】
このセルを、C/24レートで3.5~4.9Vの充放電をプロービングするために使用した。この実験の結果は、
図10に見ることができる。第1の充電サイクルは、異常な形状を示す。最初に、電位は約4.5Vに増加するが、次いで、約4.3Vで予期されないプラトーまで低下する。このプラトーは、アルミニウム集電体のアノード溶解に起因し得て、それによって、通常のサイクルが1回も実施できないため、電池の極端な故障をもたらし得る。したがって、この電解質は、LMN電極では全く使用できない。
【0176】
実施例59:LiFSI-ジイソブチルカーボネート電解質中に入ったLMNの良好な結果の充放電
カソードとしての直径16mmのLMNディスク(例58に記載されているプロセスを使用して調製)、セパレータ膜としてのCelgard Q20S1HX(すなわち、実施例8の電解質)、およびChina Energy Lithium Co.,LTD.によって提供されるアノードとしての厚さ200μmの16mmのリチウム金属ディスクを使用して、ボタン型セルを組み立てた。
【0177】
このセルを、C/24レートで3.5~4.9Vの充放電をプロービングするために使用した。この実験の結果は、
図11に見ることができる。充電-放電曲線は通常のものと思われ、
図10に見られるものに類似したプラトーとして表出し得る寄生プロセスのいずれかの兆候を検出することはできない。したがって、この電解質は、その性能をさらに改善するためのいくつかの添加剤を潜在的に用いて、LMN電極の動作に耐えることができる。
【0178】
実施例60:従来の溶媒と比較して拡張されたジイソブチルカーボネート系電解質の温度範囲
実施例33の電解質および比較例5の電解質についてデジタル走査熱量測定実験を実施した。
【0179】
比較例5の電解質は、-10℃の融点および-111℃のガラス転移点を呈した。対照的に、本発明の電解質は、融点を示さず、かつ-98℃のガラス転移点を示した。言い換えるなら、実施例33の電解質は、そのガラス転移点-98℃に達するまで、結晶化することなく、液体形態のままであり、最終的に非晶質固体形態のままであった。これは、本発明の電解質が、結晶化することなく従来の電解質よりも低い温度で使用可能であることを示す。
【0180】
実施例61:完全なリチウムイオンセル
実施例8の電解質(ジイソブチルカーボネート中に入ったLiFSI、2%のFEC)および実施例33の電解質(90%のジイソブチルカーボネート中に入ったLiFSI:10%のEC、2%のFEC)、ならびに2%のFECを有する、EC/DEC(体積3:7)中に入った1MのLiPF6の従来の電解質を試験した。
【0181】
グラファイト電極を、Cumstomcells Companyによって、96%の改質グラファイト(SMG)、2%の水系バインダーおよび2%の電子伝導度向上剤を水中で混合することによって調製し、この混合物を厚さ14μmの銅箔上にコーティングし、これを乾燥させ、これをカレンダー処理した。得られた電極材料をカットしてディスクにし、真空オーブン内にて120℃で12時間にわたって乾燥させてから使用した。
【0182】
UACJによって提供される厚さ15μmのアルミニウム集電体上にコーティングされたカソードとしての直径16mmのLCOディスク(例55と同様)、セパレータ膜としてのCelgard Q20S1HX、先に列挙されている電解質のうちの1つ、およびアノードとしての先に調製したグラファイト電極の16mmのディスクを使用して、リチウムイオンボタン型セルを組み立てた。
【0183】
これらのセルを3つの形成サイクル(C/24レートで3~4.4Vの充放電)に供した。その後、これらのセルを、C/4での充電、続いて、4.4Vでの30分間のフロート、およびC/4放電を伴う長期サイクルに供した。この実験の結果(セルの放電容量対サイクル数)は、
図12に見ることができる。LiPF
6電解質は、最も高い開始放電容量を提供するが、次いで、サイクル数にわたって比較的線形な容量の低下を観察することができる。純粋なジイソブチルカーボネート中に入ったLiFSIは、約10%少ない開始容量を有するが、容量の劣化は、LiPF
6の場合よりも遅い。純粋なジイソブチルカーボネート電解質に10%のECを添加すると、出発容量が増加するが、劣化速度はLiPF
6の劣化速度に近づく。
【0184】
この実験では、本発明の溶媒中に入ったLIFSIから調製された電解質を高電圧Liイオン電池において利用することが実証されているが、従来の溶媒中に入ったLiFSIの利用は、この電池システムでは不可能である。
【0185】
クレームの範囲は、実施例に記載されている好ましい実施形態によって限定されるべきではなく、全体として明細書と一致する最も広い解釈が与えられるべきである。
【0186】
参考文献
本明細書は、多くの文書を参照しており、それらの内容は、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。これらの文書としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されることはない。
・US3359296
・US5072040
・US5292601
・US5446134
・US9698447
・US2002/122988
・US2005/241145
・EP858994
・WO2017/221908
・WO2018/072024
・Beran,M.;Prihoda,J.;Zak,Z.;Cernik,M.Polyhedron 2006,25,1292.
・Beran,M.;Prihoda,J.;Taraba,J.Polyhedron 2010,29,991.
・Han,H.-B.;Zhou,S.-S.;Zhang,D.-J.;Feng,S.-W.;Li,L.-F.;Liu,K.;Feng,W.-F.;Nie,J.;Li,H.;Huang,X.-J.;Armand,M.;Zhou,Z.-B.J.Power Sources 2011,196,3623.
・Meister,P.;Qi,X.;Kloepsch,R.;Kramer,E.;Streipert,B.;Winter,M.;Placke,T.ChemSusChem 2017,10,804.
・Kraemer,E.;Passerini,S.;Winter,M.ECS Electrochem.Lett.2012,1,C9.
・Park,K.;Yu,S.;Lee,C.;Lee,H.J.Power Sources 2015,296,197.
・Xia,L.;Jiang,Y.;Pan,Y.;Li,S.;Wang,J.;He,Y.;Xia,Y.;Liu,Z.;Chen,G.Z.ChemistrySelect 2018,3,1954.
・Yamada,Y.;Chiang,C.H.;Sodeyama,K.;Wang,J.;Tateyama,Y.;Yamada,A.ChemElectroChem 2015,2,1687.
・Flamme,B.;Rodriguez Garcia,G.;Weil,M.;Haddad,M.;Phansavath,P.;Ratovelomanana-Vidal,V.;Chagnes,A.Green Chemistry 2017,19,1828.
・Shaikh,A.-A.G.;Sivaram,S.Chem.Rev.1996,96,951.,Parrish,J.P.;Salvatore,R.N.;Jung,K.W.Tetrahedron 2000,56,8207.
・Buysch,H.-J.In Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry;Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA:2000;Vol.7,p45,doi:10.1002/14356007.a05_197
・Tundo,P.;Arico,F.;Rosamilia Anthony,E.;Rigo,M.;Maranzana,A.;Tonachini,G.In Pure Appl.Chem.2009;Vol.81,p1971.
・Kenar,J.A.;Knothe,G.;Copes,A.L.J.Am.Oil Chem.Soc.2004,81,285.
・Chen,Z.;Zhang,Z.;Amine,K.In Advanced Fluoride-Based Materials for Energy Conversion;Groult,H.,Ed.;Elsevier:2015,p1.
【国際調査報告】