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▶ テュルキエ・ペトロル・ラフィネリレリ・アノニム・シルケティ・テュプラシュの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(54)【発明の名称】断熱材とその適用方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/26 20060101AFI20220613BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20220613BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20220613BHJP
   C04B 14/24 20060101ALI20220613BHJP
   C04B 14/02 20060101ALI20220613BHJP
   C04B 32/00 20060101ALI20220613BHJP
   F16L 59/04 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
C04B28/26
C04B18/08 Z
C04B14/10 A
C04B14/24
C04B14/02 B
C04B32/00 A
F16L59/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021559223
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 TR2020050262
(87)【国際公開番号】W WO2020204865
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】2019/05135
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520056084
【氏名又は名称】テュルキエ・ペトロル・ラフィネリレリ・アノニム・シルケティ・テュプラシュ
【氏名又は名称原語表記】TURKIYE PETROL RAFINERILERI ANONIM SIRKETI TUPRAS
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】アジュクサル,ジェム
(72)【発明者】
【氏名】オーシュ,エルハン
(72)【発明者】
【氏名】ジェレビ,セルダル
(72)【発明者】
【氏名】テケ,イェシム
(72)【発明者】
【氏名】カラカヤ,ジュネイト
(72)【発明者】
【氏名】トゥラン,セルヴェット
(72)【発明者】
【氏名】タトルス,グヤセッティン ジャン
【テーマコード(参考)】
3H036
4G112
【Fターム(参考)】
3H036AB15
3H036AB23
3H036AB26
4G112PA02
4G112PA06
4G112PA08
4G112PA09
4G112PA27
(57)【要約】
(断熱材とその適用方法)本発明は、断熱材、断熱材を製造するためのプロセス、および表面への材料の適用プロセスに関する。断熱材は、30~90重量%のケイ酸アルミニウム源と1~30重量%の中空無機材料粒子とを含む。ケイ酸アルミニウム源は、フライアッシュ及び/又は粘土ベース材料を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材であって、
前記断熱材の総重量に対して30~90重量%のケイ酸アルミニウム源を含む固相と、
アルカリ性溶液を含む液相と、
前記断熱材の総重量に対して1~30重量%の中空無機材料粒子と、
を含む断熱材。
【請求項2】
添加剤をさらに含む、請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記断熱材の総重量に対して1~20%の中空無機材料粒子を含む、請求項1に記載の断熱材。
【請求項4】
中空無機粒子は、反応媒体中において、前記ケイ酸アルミニウム源でコーティングされている、請求項1に記載の断熱材。
【請求項5】
ケイ酸アルミニウム源は、フライアッシュ、スラグ、カオリン、バーミキュライト粘土ベース材料及び/又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の断熱材。
【請求項6】
ケイ酸アルミニウム源は、フライアッシュ及び/又は粘土ベース材料である、請求項1に記載の断熱材。
【請求項7】
前記粘土ベース材料はカオリンを含む、請求項6に記載の断熱材。
【請求項8】
前記液相は、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、NaOH、KOH及び/又はそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の断熱材。
【請求項9】
前記液相は、ケイ酸ナトリウム及び/又はNaOHを含む、請求項1に記載の断熱材。
【請求項10】
前記中空無機材料は、セラミックマイクロスフェア、ガラスマイクロスフェア、及び/又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の断熱材。
【請求項11】
前記中空無機材料はガラスマイクロスフェアを含む、請求項1に記載の断熱材。
【請求項12】
前記断熱材は粉末形態又はスラリー形態である、請求項1に記載の断熱材。
【請求項13】
前記断熱材の総重量に対して、
5~63重量%のフライアッシュと、
1~50重量%のカオリンと、
1~30重量%の中空無機粒子と、
6~56重量%のケイ酸ナトリウムと、
1~20重量%のNaOHと、
5~55重量%の水と、
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項14】
前記断熱材の総重量に対して、
18~48重量%のフライアッシュと、
1~40重量%のカオリンと、
1~20重量%の中空無機粒子と、
10~50重量%のケイ酸ナトリウムと、
1~20重量%のNaOHと、
5~40重量%の水と、
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項15】
前記断熱材の総重量に対して、
18~23重量%のフライアッシュと、
8~12重量%のメタカオリンと、
9~12重量%の中空無機粒子と、
42~46重量%のケイ酸ナトリウムと、
2~5重量%のNaOHと、
10~15重量%の水と、
を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項16】
前記断熱材の総重量に対して、
20重量%のフライアッシュと、
9重量%のメタカオリンと、
10重量%のガラスマイクロスフェアと、
44重量%のケイ酸ナトリウムと、
2重量%のNaOHと、
15重量%の水と、
を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の断熱材。
【請求項17】
請求項1に記載の断熱材を得るための方法であって、
ふるいからフライアッシュをふるい分けすることと、前記フライアッシュを乾式混合することと、を含む前記固相組成物を形成する工程と、
NaOH粒子を水に完全に溶解させることと、溶解したNaOH溶液をケイ酸ナトリウム水溶液にゆっくり添加してアルカリ性溶液を得ることと、調製した前記アルカリ性溶液に水を添加することと、前記アルカリ性溶液の液体を混合することと、を含む前記液相組成物を形成する工程と、
調製した前記固相を液体混合物にゆっくり添加する工程と、
使用前に、中空無機粒子をスラリー混合物に添加する工程と、
を含む方法。
【請求項18】
63マイクロメートル(μm)のサイズのふるいから、18~23重量%のフライアッシュをふるい分ける工程と、
前記フライアッシュと8~12重量%のカオリンとを30分間乾式混合する工程と、
乾式混合物の形成とは別に、2~5重量%のNaOH粒子を水に完全に溶解する工程と、
溶解したNaOH溶液を42~46重量%のケイ酸ナトリウム水溶液にゆっくり添加し、pH10~12を有するアルカリ性溶液を得る工程と、
10~15重量%の水を、調製した前記アルカリ性溶液に添加し、前記アルカリ性溶液の液体を混合する工程と、
調製した固体混合物を液体混合物にゆっくり添加し、30分間混合する工程と、
使用前に、9~12重量%の中空無機粒子をスラリー混合物に添加して15分間混合する工程と、
を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
63マイクロメートル(μm)のサイズのふるいから、20重量%のフライアッシュをふるい分ける工程と、
前記フライアッシュと9重量%のカオリンとを30分間乾式混合する工程と、
乾式混合物の形成とは別に、2重量%のNaOH粒子を水に完全に溶解する工程と、
溶解したNaOH溶液を44重量%のケイ酸ナトリウム水溶液にゆっくり添加し、pH10~12を有するアルカリ性溶液を得る工程と、
15重量%の水を、調製した前記アルカリ性溶液に添加し、前記アルカリ性溶液の液体を混合する工程と、
調製した固体混合物を液体混合物にゆっくり添加し、30分間混合する工程と、
使用前に、10重量%の中空無機粒子をスラリー混合物に添加して15分間混合する工程と、
を含む請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項17~19のいずれか一項に記載の方法により得られた断熱材。
【請求項21】
1W/mK未満、好ましくは0.07W/mK未満のの熱伝導率を有する、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法により得られた断熱材。
【請求項22】
前記材料はスプレーにより適用される、請求項12に記載の断熱材の表面への適用方法。
【請求項23】
産業、特に製油所における炉、ヒーター、焼却炉、高温パイプなどの金属表面への適用による産業用設備をコーティングするための、請求項1~16のいずれか一項に記載の断熱材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライアッシュ、粘土ベース材料(又は粘土基材料:clay based material)及び/又は無機添加剤などのセラミック基無機ケイ酸アルミニウム源を含む断熱材に関する。本発明は、該断熱材の製造方法およびその適用(又は用途、又は塗布:application)に関する。
【0002】
(発明の背景)
エネルギー効率の向上または省エネルギー化(energy conservation)は、世界中で最も重要な主題(subjects)の1つであり、それに関する多くのテーマ(subjects)が存在してきた。世界では、枯渇しそうな特定の場所のエネルギー源と、省エネルギー化がますます重要になっている。
【0003】
エネルギー効率を向上させる動機は多く存在する。最も期待される第一歩は、エネルギー使用量を削減することでエネルギーコストが削減され、消費者と産業(又は工業:industrial)プロセスの経済的コスト削減につながり得ることである。エネルギーの節約(Energy saving)は、世界のエネルギー需要を削減し、コストの節約に加えて環境保護にも役立つ。
【0004】
産業は、世界で最もエネルギーが必要な分野の1つである。産業プロセスにおけるエネルギー効率を高めることで、後続のプロセスで必要なエネルギーを削減することができ、コストの節約に役立ち、環境へのダメージも減る。
【0005】
断熱は、産業用アプリケーションおよび設備(又は機器:equipments)のエネルギーを節約するために非常に重要である。
【0006】
断熱材は、主にエネルギー分野で使用される産業用設備による熱損失を防ぐことにより、エネルギー消費を削減するための優れた解決策である。使用される産業用設備及びプロセスの効率を考えるとき、最初に適用する戦略はエネルギーを節約することであるべきである。断熱は、不要な温度変化を減らし、冷暖房システムのエネルギー需要を減らすのに役立つ。
【0007】
産業(又は工業:industry)、特に製油所では、断熱材として熱損失を防ぐためにガラス又はロックウールなどの従来の絶縁材料(insulation materials)が一般的に使用されている。そのような材料は、それらの厚くて弾力性のない構造のため、平らな表面にのみ適用され得る。そのため、表面が凹んだ設備を断熱することはできない。製油所には、接続設備、熱交換ヘッド、フランジ、バルブ、カバー、またはマニホールドなどの、表面が凹んでいる(又は凹部を有する:recessed)設備が多く存在し、継続的なメンテナンスまたは制御のために、開閉する必要がある。しかしながら、従来の材料のいくつかは、製油所における高温での使用には適していない。
【0008】
別のオプションとして、ポリウレタンフォーム、ポリスチレンボード、フェノールフォームなどの有機ベースの材料(又は有機系材料:organic based materials)が断熱材として使用されていたが、可燃性又は不安定性などの、それらの有機物の特質(nature)の欠点から、無機系材料の必要性が高まった。
【0009】
無機断熱材には、一般的にグラスウール、ロックウール、発泡パーライト(expansion perlite)、マイクロナノ(又はミクロナノ:micro nano)断熱ボードなどが含まれる。これらの無機材料には、有機材料と比較して、優れた耐火性、高強度、耐久性など、いくつかの利点がある。
【0010】
米国特許出願公開第2018/0148376A1号は、セラミック酸化物と無機結合剤とで形成された断熱材を開示する。該断熱材は製造工程で最大1000℃まで処理される。本発明の適用分野の非常に長いリストがあるが、該材料の適用(又は塗布、又は用途:application)は、特に建物および建設材料に適している。さらに、それは金属表面への適用(又は塗布:application)の特定の例を示していない。
【0011】
従って、エネルギー産業、特に材料が異なる表面を適用するのに効率的であり、熱伝導率が低下している製油所において、産業システム設備の表面コーティングに適用可能な断熱材が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
(発明の目的)
本発明は、上記の問題を克服し、多孔質構造のセラミック配合(又は処方:formulation)を有する安価で使いやすい形態の断熱材を提供する。本発明はまた、断熱材の製造、その材料の適用、およびその使用を提供する。
【0013】
(発明の分野)
本発明は、断熱材の総重量に対して、30~90重量%のケイ酸アルミニウム源(Al源および/またはSi源)を含む固相と;アルカリ性溶液を含む液相と; 断熱材の総重量に対して、1~30重量%(好ましくは1~20重量%)の中空無機材料粒子とを含む断熱材を提供する。本発明は、好ましくは添加剤を含む。
【0014】
本発明はまた、断熱材の製造プロセスおよび表面への材料の適用プロセス(又は塗布プロセス:the application process)に関する。
【0015】
得られた断熱材は、熱伝導率が非常に低く、0.1W/m.K未満などである。該材料は、腐食および他の環境の副作用(side effects)に対しても、高い耐性がある。該材料は、耐火性があるとしてAクラスの不燃性材料に分類され得る。さらに、本発明は、温度T<900℃、より好ましくはT<500℃で適用可能な(又は塗布可能な:applicable)、低い熱伝導率を有する断熱材を提供する。
【0016】
これら全ての技術的利点に加えて、該材料は、あらゆる種類の表面に簡単に適用(又は塗布:applied)でき、適用後の乾燥段階で表面に亀裂が発生しないという特徴がある。
【0017】
本発明において、セラミック基の、スラリー状および/または粉末状断熱材が得られる。より好ましくは、粉末状断熱材が形成される。製造プロセスは、無機ケイ酸アルミニウム源(Al源および/またはSi源)を含む固相と、アルカリ性溶液を含む液相とのジオポリマー化反応、それに続く中空無機化合物および他の適切な添加剤の反応媒体(the reaction medium)への添加に基づく。
【0018】
ジオポリマーは、I族酸化物によって安定した(balanced)完全に無機類のアルミノケイ酸塩ベースのセラミックである。ジオポリマーは、ゼオライトと同様のSi-O-Al高分子骨格で構成される。ジオポリマーの主な違いは、アモルファス相にある。これらはハードゲルであり、結晶またはガラスセラミック材料に変わり(又は変質し:converted)得る。ジオポリマーの構造には、高い多孔性ネットワーク中に分散した小さなアルミノケイ酸塩クラスターが細孔と共に含まれる。本発明のジオポリマー化反応の主な利点は、アモルファス相としてであること、中空無機化合物で充填される及び/又は覆われる多孔質ネットワークを有することである。
【0019】
ジオポリマーは通常、産業固形廃棄物及び/又は以下のような天然鉱物の化学的活性化によって得られる:フライアッシュもしくはスラグ、粘土基材料もしくはカオリンもしくはバーミキュライト。
【0020】
本発明では、ポリマー構造が高度に多孔性の構造を有し、高度に多孔性であるネットワーク中に分散した小さなアルミノケイ酸塩クラスターを細孔と共に含むため、ジオポリマー化反応が使用される。形成された細孔は、無機中空材料を使用して細孔を充填するのに適しているので、本発明のジオポリマー化反応において最大の気泡を得ることは非常に重要である。
【0021】
本発明において、ジオポリマー反応は、フライアッシュ、スラグ、カオリン、バーミキュライト及び/又は粘土と、アルカリ性溶液を含む液相とを含む。
【0022】
本発明の一実施形態では、フライアッシュ、スラグ、カオリン、バーミキュライト及び/又は粘土ベース材料が、断熱材のAl源及び/又はSi源として使用される。セラミック酸化物ベースの断熱材は、何年もの間使用されている。
【0023】
本発明では、セラミックは、その軽量、高温での安定性、熱衝撃に対する耐性、および幅広い熱能力および物理的特性のために原料として選択されて、産業における熱伝達用途の設備、特に製油所で使用される。
【0024】
一実施形態では、断熱材に含まれる固相は、産業固形廃棄物から得られるフライアッシュを含む。
【0025】
本発明の一実施形態では、フライアッシュは、トルコの火力発電所廃棄物から得られ、不純物を除去し、フライアッシュの粒子径を分類するために、25~74マイクロメートル(μm)のサイズを有するふるいから、ふるい分けされる。
【0026】
一実施形態では、断熱材は、好ましくは63μm未満の平均粒子径を有するフライアッシュを5~63重量%含む。
【0027】
本発明の一実施形態では、断熱材は、断熱材の総重量に対して、好ましくは18~約48重量%のフライアッシュを含み得る。
【0028】
本発明の一実施形態では、断熱材は、市販されている粘土ベース材料をさらに含む。
【0029】
一実施形態では、断熱材は、断熱材の総重量に対して、1~50重量%(好ましくは1~40重量%)の粘土ベース材料を含む。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態では、粘土ベース材料は、カオリナイト、バーミキュライト、パーライト、ハロイサイト、イライト、スメクタイト、白雲母、ベントナイトおよびアタパルジャイト、あるいはそれらの任意の組み合わせであり得る。粘土ベース材料は、市販のカオリナイト粘土、石器、または耐火粘土であり得る。
【0031】
本発明の一実施形態では、カオリンは、粘土ベース材料として好ましい可能性がある。
【0032】
本発明の別の実施形態では、カオリンは、使用前に700~800℃でメタカオリンに変わり得る。メタカオリンは、Al源/Si源として選択され得、ここで、Al比はSi比よりも高く、Al3+カチオン源として使用されるべきであり、それはジオポリマー化反応に必要とされる。
【0033】
いくつかの実施形態では、粘土ベース材料は、使用前に処理されてもよい。粘土ベース材料は、粘土ベース材料中の過剰な水分を除去するために、使用前に約900℃、または約800℃、または約700℃に加熱することによって処理されてもよい。ちなみに、水分は結晶化前に除去されている。粘土ベース材料をアモルファス形態に保ち、反応媒体のスラリー混合物中に溶解することが非常に重要である。
【0034】
本発明の一実施形態では、断熱材は、セラミック酸化物をさらに含む。適用分野および所望の特性に従って、中空無機材料は、セラミック、ガラスマイクロスフェア(又はガラスマイクロ球:glass microspheres)、アルミン酸塩及び/又はケイ酸塩を含むセラミック酸化物として使用され得、好ましくは、中空ガラスマイクロスフェア粒子(glass hollow microsphere particles)が使用され得る。
【0035】
一実施形態では、断熱材は、断熱材の総重量に対して1~30重量%の中空無機材料、好ましくは1~20重量%の中空無機材料を含む。
【0036】
本発明の一実施形態では、中空無機材料は、120マイクロメートル(μm)未満の平均粒子径を有し得る。平均粒子径は5~120μmで変化し得る。
【0037】
中空無機材料の粒子径は、あらゆる種類の表面、好ましくは高温表面にスプレーコーティングで断熱材を塗布することに適している。
【0038】
反応媒体中で使用されるセラミック酸化物基中空無機材料は、熱伝導率を0.1W/m.K未満の値まで低下させており、これは本発明にとって重要である。
【0039】
いくつかの実施形態では、断熱材の液相は、結合剤をさらに含む。本発明の一実施形態では、ケイ酸カリウム及び/又はケイ酸ナトリウムを断熱材の液相として使用することができる。
【0040】
本発明の一実施形態では、水中のケイ酸ナトリウム溶液(NaO:SiO)が、10より高いpHを有するアルカリ性溶媒として好ましく使用される。それは、反応速度を増加させ、また反応媒体中の中空無機材料の結合速度を増加させる、などの優れた特徴を有するために選択されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、断熱材の液相は、水、NaOH及び/又はKOHなどの、反応媒体中で使用されるさらなる添加剤をさらに含む。これらの添加剤は、pHと反応速度を制御するために使用され、反応媒体中の溶媒としても使用される。
【0042】
いくつかの実施形態では、断熱材は、他の添加剤をさらに含む。添加剤は、着色剤、繊維、分散剤、界面活性剤、ステアリン酸潤滑剤、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0043】
本発明の第2の態様では、使用前に組み合わせる2つの異なる組成物の部分を準備することを含む、断熱製品を製造するために提供されるプロセスがある。組成物の1つの部分は、フライアッシュおよび粘土ベース材料を含む固相であり、組成物の他の部分は、ケイ酸ナトリウム及び/又はケイ酸カリウム、NaOH、KOH及び/又は水を含む液相である。本発明の一実施形態では、組成物は、無機中空材料をさらに含む。
【0044】
本発明の一実施形態において、組成物の固相は、断熱材の総重量に対して、5~63重量%のフライアッシュと、1~50重量%のメタカオリンとを含む。好ましくは、組成物の固相は、フライアッシュとメタカオリンを第1の混合物として混合することによって調製される。中空粒子は、固相と液相を組み合わせた後、最後に反応媒体に添加される。本発明の一実施形態において、組成物はさらに1~30重量%の無機材料を含む。
【0045】
本発明の一実施形態において、組成物の液相は、6~56重量%のケイ酸ナトリウムと、1~20重量%のNaOHと、5~55重量%の水とを含む。組成物の液相は、NaOHを水に溶解し、第2の混合物としてケイ酸ナトリウム溶液と混合することによって調製される。
【0046】
第1および第2の混合物を組み合わせた後、中空粒子は、中空無機材料の損傷を回避するように反応媒体に添加される。
【0047】
第3の態様では、第2の態様のプロセスによって製造された断熱製品が提供される。
【0048】
以下の実施例は、本発明の背景を提供し、本発明を明確に理解するためだけのものであり、範囲を実施例だけに制限するためのものではない。
【0049】
断熱材の組成物、また該材料の製造プロセスは、さらに詳細を含む以下の実施例で開示される。
【実施例
【0050】
(例1:断熱材の組成物)
本発明の第1の態様に従って、断熱材は以下を含む。
【0051】
【表1】
【0052】
この例では、断熱材組成物に中空粒子は使用されておらず、それは参考例として使用され得る。
【0053】
(例2:断熱材の組成物)
本発明の第1の態様に従って、断熱材は以下を含む。
【0054】
【表2】
【0055】
この例では、中空無機材料が約10重量%使用されている。
【0056】
(例3:断熱材の組成物)
本発明の第1の態様に従って、断熱材は以下を含む。
【0057】
【表3】
【0058】
(例4:断熱材の組成物)
本発明の第1の態様に従って、断熱材は以下を含む。
【0059】
【表4】
【0060】
(例5:断熱材の組成物)
本発明の第1の態様に従って、断熱材は以下を含む。
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
(熱伝導率と表面接着能力の結果と評価)
以下の実施例と、熱伝導率の結果によると、例2、3、4および5は、0.1W/mK未満の非常に低い熱伝導率を有することが分かる。例1は、中空無機材料を含まない参考材料組成物として与えられている。表1に示した例と結果から、中空無機粒子を使用すると、材料の熱伝導率が大幅に低下することが明らかである。
【0064】
さらに、中空無機材料が組成物に添加されていない例1では、金属表面への接着力は非常に良好であるが、熱伝導率は非常に高く、ほぼ1W/mKであり、それによって、本発明によれば、該組成物は実用性がない。他の例2、3および4を相互に比較し、例1とも比較すると、組成物に中空無機材料を添加することにより、熱伝導率が大幅に低下していることがわかるが、例3および4では、金属表面への接着力が低下している。k<0.1W/mKを提供するための接着力の改善は、組成物中のアルカリ性溶媒のケイ酸ナトリウムを増加させることによって達成される。
【0065】
中空粒子が多量であると、材料の接着性能に悪影響を与えることがわかる。組成物に添加された中空粒子の表面を完全に覆うことができないという事実は、粒子の破壊と、結合相の欠如と、の両方のために、材料の機械的特性に悪影響を与えると考えられる。従って、例2から分かるように、組成物内の中空粒子の量は、9~12重量%など、最適にすべきである。
【0066】
フライアッシュ/メタカオリンの比率は、例2、3、4および5で有用であることがわかる。
【0067】
観測の結果、例5は、低コストおよび0.1W/mK未満の熱伝導率に関して最大の利益を提供するように選択され、また金属表面への最大の接着力を提供する。
【0068】
材料中のフライアッシュの量が50重量%を超えて使用される場合、ジオポリマー化反応に必要なSi/Al比は達成されるが、ジオポリマー化反応は期待される範囲で完全には発生/完了しないことがわかる。この場合、断熱スラリー中の不溶性結晶相は、反応生成物のアモルファス相よりも多くなるであろう。その結果、粒子が互いに結合せず、コーティング材料の接着強度が低下する。
【0069】
さらに、メタカオリンを、50重量%を超える量で使用する場合、ジオポリマー化反応に必要なSi/Al比が低下するであろうし、ジオポリマー反応が完全に発生/完了しなくなるであろう。ジオポリマー反応で形成されたシアラット構造(Sialat structure)は発生しないであろうし、結合相は安定しないであろう。
【0070】
さらに、ジオポリマースラッジに使用されるケイ酸ナトリウムとNaOHは、ジオポリマー化に必要なアルカリ性媒体を提供する。アルカリ性媒体は、ジオポリマー化を実現するための最も重要なパラメーターの1つである。さらに、水はジオポリマー反応の反応媒体を形成し、またスラッジの流れにも影響を与える。HOは、反応媒体中でOを生成することにより、互いに接続され均一に分布した細孔を生成するための適切な条件を生みだす。
【0071】
中空無機粒子は組成物内によく分布しており、その粒子径はより大きくなる。ガラススフェアの表面は完全にコーティングされていないと考えられ、この理由は、組成物中におけるアルカリ溶媒相の高いケイ酸ナトリウム:液体比のためである。
【0072】
さらに、大量のNaOHを使用すると無機材料が溶液に溶解するため、使用するNaOHの量を決定することも非常に重要である。
【0073】
NaSiOは、アルカリ性溶媒としての使用に加えて、金属を所望の温度(300℃など)でコーティングするための金属-断熱材界面を提供し、そのため接着強度が向上する。
【0074】
断熱材の製造方法は、以下のさらに詳細な例で開示される。
【0075】
(例5:断熱材の製造と適用)
本発明の第2の態様では、断熱材は、以下のステップによって固相と液相を組み合わせるプロセスにより調製される;
固相を第1の混合物として調製し;
63マイクロメートル(μm)サイズのふるいから、フライアッシュをふるい分けし、
フライアッシュとメタカオリンを30分間乾式混合し;
液相を第2の混合物として調製し;
NaOH粒子を水に完全に溶解し;
溶解した溶液をケイ酸ナトリウム水溶液にゆっくりと加え、pH:10~12のアルカリ性溶液を形成し;
調製したアルカリ性溶液に水を加え、30分間混合し;
調製した固体混合物を液体混合物にゆっくりと加え、15分近く混合し、流体スラリー混合物を得て;
最後に、中空無機粒子をスラリー混合物に加え、さらに15分間混合する。
調製した断熱材は、高温及び/又は低温の表面にスプレーする準備ができており、その後、表面の断熱材を硬化させる。
【0076】
本発明の一態様では、物品を第1の態様に係る断熱材で少なくとも部分的にコーティングすることを含む、物品の耐熱性を改善するための適用方法(又は塗布方法:an application method)が提供される。
【0077】
本発明に従って開発された断熱材は、スプレー法(又は噴霧法:spraying method)により材料を塗布することにより、表面にスプレーまたは成形される材料としての使用に適している。
【0078】
本発明の一実施形態では、粉末形態の断熱材は、使用前に水または他の適切な溶媒と混合されて、スプレー塗布されるスラリー混合物を形成する。
【0079】
本発明の一実施形態では、粉末形態の断熱材は、水または他の適切な溶媒と混合され、その後、特定の最終用途のための型を使用することによって特別に成形される。
【0080】
本発明の一実施形態では、処理される表面は、断熱材の適用前に、水および他の汚染物があるべきではない。
【0081】
本発明の一態様では、表面に適用される(又は塗布される:applied)断熱材は、1~20mmの厚さを有する。
【0082】
本発明の一実施形態では、表面に適用される(又は塗布される:applied)断熱材は、好ましくは1~10mmの厚さを有する。
【0083】
本発明の別の実施形態では、コーティングの厚さが1~10mmである場合、表面温度ははるかに低下する。
【0084】
本発明の一実施形態では、断熱材が表面に塗布された後の硬化期間は、表面温度に応じて変化し、平均して1~24時間、好ましくは18~20時間かかる。
【0085】
本発明の断熱材は、表面が滑らかであるかどうかに関係なく、異なる金属表面に適用(又は塗布:applied)することができる。断熱材が適用された金属表面は、最終的に高温耐性(T>300℃)と低い熱伝導係数(k<0.1W/mK)を有するであろう。本発明の分野では、金属設備の表面温度は、250~300℃から60~70℃に低下する。
【0086】
本発明では、製造された断熱材は、耐火性および耐熱性のコーティング・接着剤、高温セラミック、耐火性繊維複合材料用の新しいバインダーに使用することができる。
【0087】
本発明の粉末ベースの断熱材は、好ましくは、産業、特に製油所において、炉、ヒーター、焼却炉、ホットパイプなどの金属表面に適用される。
【0088】
本発明の断熱材は、粉末ベースの材料形態を備え、好ましくはスプレー法でコーティングすることにより、装置に断熱を提供する。
【0089】
本発明の一態様では、断熱材は、製油所設備の熱伝導表面での熱損失を防ぐように、特に製油所で使用するために提供される。
【国際調査報告】