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  • 特表-歯科用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(54)【発明の名称】歯科用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/887 20200101AFI20220613BHJP
【FI】
A61K6/887
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559993
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 US2020027417
(87)【国際公開番号】W WO2020214475
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/833,960
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517264281
【氏名又は名称】デンツプライ シロナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】リッター,ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】クリー,ヨアヒム イー.
(72)【発明者】
【氏名】ルー,フイ
(72)【発明者】
【氏名】ノイハウス,キラ
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA06
4C089BD05
(57)【要約】
重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを含有する歯科材料が本明細書に開示されている。本開示は、歯科用の重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー組成物の調製のための、重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーの調製方法および使用に関する。本開示はさらに、歯科材料を重合させることにより得られる硬化歯科材料に関する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式(I):
【化1】
の化合物を含む重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー
(式中、
、R、RおよびRは互いに独立しており、かつ水素、C1~4アルキル基またはC~C18アリール基を表し、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基、C~C10アリール基、エステルまたはアミド基であり、
Xはアルキレン基、O、SまたはCOであり、
nは0~1の整数であり、
mは1~6の整数であり、かつ
Zは、(m+1)価の非置換もしくは置換C~C18アルキレン基、非置換もしくは置換C~Cシクロアルキレン基、非置換もしくは置換アラルキレン基、非置換もしくは置換C~C18アリーレン基または非置換もしくは置換C~C18ヘテロアリーレン基であり、ここではZの各非置換もしくは置換基は1~6個の酸素、ケイ素、硫黄原子またはNR(式中、Rは水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状もしくは環式C1~6アルキル基を表す)のうちの少なくとも1つを任意に含む)と、
(ii)少なくとも1つの(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基またはビニル基を有する少なくとも1種の重合性樹脂モノマーと、
(iii)任意で、粒状充填剤と、
(iv)光開始剤およびレドックス開始剤のうちの少なくとも1つと
を含む歯科材料。
【請求項2】
、R、R、RおよびRは水素であり、Xはアルキレンであり、かつnは1である、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項3】
、R、R、R、RおよびRは水素であり、Xはアルキレンであり、mは1であり、かつnは1である、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項4】
Zは、式IV、VまたはVIの基:
【化2】
(式中、
、R、R、R、RおよびRは独立して同じまたは異なる水素原子、C1~6直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基またはC4~10アリール基であり、
は直鎖状、分岐鎖状もしくは環式アルキル基を表し、
およびXは独立して同じまたは異なる酸素原子、硫黄原子またはNR基(式中、Rは水素原子またはC1~4アルキル基である)であり、
は直鎖状もしくは分岐鎖状C2~3アルキレン基またはC~C18アリーレン基から選択される二価の炭化水素ラジカルであり、
およびLは独立して同じまたは異なるC2~20アルキレン基であり、
aは1~18の整数であり、
bは1~10の整数であり、
cは1~10の整数であり、
dは0~1の整数であり、
eは1~10の整数であり、かつ
fは0~1の整数である)
を表す、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項5】
前記式(I)の化合物は、
(i)x当量の、式(II):
【化3】
の化合物を有する少なくとも1種の成分A
(式中、
、R、RおよびRは互いに独立しており、かつ水素、C1~4アルキル基またはC~C18アリール基を表し、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基、C~C10アリール基、エステルまたはアミド基であり、
Xはアルキレン基、O、SまたはCOであり、
nは0~1の整数であり、かつ
Tはヒドロキシル基またはハロゲン原子である)と、
(ii)y当量の、式III:
【化4】
の化合物の第一級アミン官能基および第二級アミン官能基のうちの少なくとも1つを有する成分B
(式中、
は、(r+1)価の脂肪族C2~10基、シクロ脂肪族C~C基、または7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここではRの各基は酸素または硫黄原子を任意に含み、かつRの各基はC1~4アルキル基で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基または(メタ)アクリル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
およびLは独立して1~4個の炭素を有する同じまたは異なる直鎖状もしくは分岐鎖状鎖アルキレンであり、
は直接結合またはRで置換された窒素原子であり、
は酸素原子であり、
pおよびqは0~4の整数であり、かつ
rは1~6の整数である)と
を含み、
ここではxおよびyは成分(i)および(ii)のモル当量である
混合物を反応させることによって得られる、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項6】
前記少なくとも1種の重合性樹脂モノマーは、2,2’-ビス[4-(3-メタクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)-フェニル]プロパン(ビス-GMA)、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(TEGDMA)、ウレタンジメタクリレート(UDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、C~C20アルキル(メタ)アクリレート、芳香族メタクリレートおよびヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項7】
前記重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーは前記歯科材料の総重量に対して1~99%w/wの量で存在している、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項8】
前記光開始剤およびレドックス開始剤のうちの少なくとも1つは前記歯科材料の総重量に対して0.01~5%w/wの量で存在している、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項9】
前記少なくとも1種の重合性樹脂モノマーは前記歯科材料の総重量に対して1~99%w/wの量で存在している、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項10】
前記歯科材料は歯科用コンポジットまたは歯科用セメントであり、かつ粒状充填剤を含む、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項11】
前記粒状充填剤は前記歯科用コンポジット材料の総重量に対して10~90%w/wの量で存在している、請求項10に記載の歯科材料。
【請求項12】
安定化剤、1種以上の重合阻害剤、1種以上の溶媒およびそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載の歯科材料。
【請求項13】
(i)式(I):
【化5】
の化合物を含む重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー
(式中、
、R、RおよびRは互いに独立しており、かつ水素、C1~4アルキル基またはC~C18アリール基を表し、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基、C~C10アリール基、エステルまたはアミド基であり、
Xはアルキレン基、O、SまたはCOであり、
nは0~1の整数であり、
mは1~6の整数であり、かつ
Zは、(m+1)価の非置換もしくは置換C~C18アルキレン基、非置換もしくは置換C~Cシクロアルキレン基、非置換もしくは置換アラルキレン基、非置換もしくは置換C~C18アリーレン基または非置換もしくは置換C~C18ヘテロアリーレン基であり、ここではZの各非置換もしくは置換基は1~6個の酸素、ケイ素、硫黄原子またはNR(式中、Rは水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状もしくは環式C1~6アルキル基を表す)のうちの少なくとも1つを任意に含む)と、
(ii)少なくとも1つの(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基またはビニル基を有する少なくとも1種の重合性樹脂モノマーと、
(iii)任意で、粒状充填剤と、
(iv)光開始剤およびレドックス開始剤のうちの少なくとも1つと
を含む混合物を重合させることにより得られる硬化歯科材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを含有する歯科材料に関する。本開示は、歯科用の重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー組成物の調製のための、重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーの調製方法および使用に関する。本開示はさらに歯科材料を重合させることにより得られる硬化歯科材料に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用コンポジット修復手順の間に、コンポジットレジンの重合により重合収縮応力が生じる。この重合応力が歯との境界面に伝わることで、エナメル破折、不十分な結合、術後の過敏症および二次齲蝕などの多くの臨床的問題が引き起こされる。
【0003】
これに関連して、単官能性ビニルシクロプロパン誘導体のような環式モノマーは、(メタ)アクリレートなどの直鎖状モノマーと比較して有意により低い重合応力で反応することが先行技術において知られている。重合中に単官能性ビニルシクロプロパン誘導体は開環機序により重合する。しかし一般に、単官能性ビニルシクロプロパンエステルの重合反応速度は遅い。
【0004】
米国特許第6,136,887号は重合性ビニルシクロプロパン誘導体を開示しており、米国特許第7,365,222号は二環式シクロプロパン誘導体を開示しており、これらは重合中に低い体積収縮を示すと同時に、(メタ)アクリレートとラジカル共重合性である。
【0005】
米国特許出願公開第2018/0036209号は少なくとも1種のビニルシクロプロパンを含有するラジカル重合性歯科材料を開示しており、これはラジカル重合において僅かにのみ収縮し、かつ特に光重合において、高いラジカル重合反応性を有する。
【0006】
米国特許出願公開第2008/0058443号は、低い重合収縮および匹敵する機械的特性を有し、かつ重合性基を有する少なくとも1種の重合性カリックス[n]アレーンを含む歯科材料を開示しており、この重合性基は、(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドなどのラジカル条件下で重合することができる基、開環によるラジカル条件下で重合することができる環式基、あるいは例えばシクロ脂肪族エポキシドまたはオキセタン基または多反応性ニトロン基などのカチオン性条件下で重合することができる基である。
【0007】
米国特許第9,580,524号は、単独重合により体積膨張を示し、かつ向上した溶媒溶解性を可能にするビニルシクロプロパン、当該ビニルシクロプロパンを含有するモノマー組成物、当該ビニルシクロプロパンのポリマー、当該ポリマーを含有するポリマー組成物、および当該モノマー組成物を硬化させることにより得ることができる物品を開示している。当該ビニルシクロプロパンは、光学材料、成形材料、複合材料、注型材料、封止材料、医用材料、歯科材料、記録材料、セメント、コーティング材料、接着剤、およびホログラフィック光記録媒体のための材料などの製造で好適に使用することができる。
【0008】
3-エトキシカルボニル-トリシクロ[3.2.1.02,4]オクタ-6-エンは、ラジカル開始剤の存在下でノルトリシクレン繰り返し骨格単位を有する安定なポリマーに変換できることがAlupeiら(Polymer 45(2004),2111-2117)によって証明されている。通常のビニル重合の代わりに、この重合機序は開環プロセスに付随する分子内シクロプロパン化に基づいており、かつ重合応力を減少させる。
【0009】
単官能性ビニルシクロプロパンアミドを使用することにより、この重合速度は上昇する。
【0010】
ビス(多環式アミド)化合物はこの単官能性ビニルシクロプロパン構造を取る。このアミド構造は加水分解安定であり、かつ十分な重合反応速度を有する。
【発明の概要】
【0011】
重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを添加剤として歯科用組成物に組み込むことなどによる、良好に保存される結合、容易な取り扱いおよび所望の審美性を同時に有するバルクフィル修復物の開発が必要とされ続けている。
【0012】
本開示の目的は、匹敵する二重結合含有量を有する(メタ)アクリレートと比較して重合応力を有意に低下させるために、重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーおよび歯科用組成物における添加剤としてのその使用を提供することにある。重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを含有する組成物は、歯科材料、特に歯科用コンポジット材料、歯科用グラスアイオノマー、歯科用シーラント、歯科用接着剤、接着促進剤、接着防止材料、セメント、クラウン形成材料または印象材として特に好適である。
【0013】
本開示の第1の態様では、
(i)式(I):
【化1】
の化合物を含む重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー
(式中、
、R、RおよびRは互いに独立しており、かつ水素、C1~4アルキル基またはC~C18アリール基を表し、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基、C~C10アリール基、エステルまたはアミド基であり、
Xはアルキレン基、O、SまたはCOであり、
nは0~1の整数であり、
mは1~6の整数であり、かつ
Zは、(m+1)価の非置換もしくは置換C~C18アルキレン基、非置換もしくは置換C~Cシクロアルキレン基、非置換もしくは置換アラルキレン基、非置換もしくは置換C~C18アリーレン基または非置換もしくは置換C~C18ヘテロアリーレン基であり、ここではZの各非置換もしくは置換基は1~6個の酸素、ケイ素、硫黄原子またはNR(式中、Rは水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状もしくは環式C1~6アルキル基を表す)のうちの少なくとも1つを任意に含む)と、
(ii)少なくとも1つの(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基またはビニル基を有する少なくとも1種の重合性樹脂モノマーと、
(iii)任意で、粒状充填剤と、
(iv)光開始剤およびレドックス開始剤のうちの少なくとも1つと
を含む歯科材料が提供される。
【0014】
本開示は、歯科材料の調製のための重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーの使用を提供する。
【0015】
本開示の第2の態様では、式(I)の化合物を含む重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを調整するための方法が提供される。本方法は、
(i)x当量の、式(II):
【化2】
の化合物を有する少なくとも1種の成分A
(式中、
、R、RおよびRは互いに独立しており、かつ水素、C1~4アルキル基またはC~C18アリール基を表し、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基、C~C10アリール基、エステルまたはアミド基であり、
Xはアルキレン基、O、SまたはCOであり、
nは0~1の整数であり、かつ
Tはヒドロキシル基またはハロゲン原子である)と、
(ii)y当量の、式III:
【化3】
の化合物の第一級アミン官能基および第二級アミン官能基のうちの少なくとも1つを有する成分B
(式中、
は、(r+1)価の脂肪族C2~10基、シクロ脂肪族C~C基、または7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここではRの各基は酸素または硫黄原子を任意に含み、かつRの各基はC1~4アルキル基で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基または(メタ)アクリル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
およびLは独立して1~4個の炭素を有する同じまたは異なる直鎖状もしくは分岐鎖状鎖アルキレンであり、
は直接結合またはRで置換された窒素原子であり、
は酸素原子であり、
pおよびqは0~4の整数であり、かつ
rは1~6の整数である)と
を含み、
ここではxおよびyは成分(i)および(ii)のモル当量である
混合物を反応させて、
以下の式(I):
【化4】
の化合物を含む重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー
(式中、
、R、RおよびRは互いに独立しており、かつ水素、C1~4アルキル基またはC~C18アリール基を表し、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基、C~C10アリール基、エステルまたはアミド基であり、
Xはアルキレン基、O、SまたはCOであり、
nは0~1の整数であり、
mは1~6の整数であり、かつ
Zは、(m+1)価の非置換もしくは置換C~C18アルキレン基、非置換もしくは置換C~Cシクロアルキレン基、非置換もしくは置換アラルキレン基、非置換もしくは置換C~C18アリーレン基または非置換もしくは置換C~C18ヘテロアリーレン基であり、ここではZの各非置換もしくは置換基は1~6個の酸素、ケイ素、硫黄原子またはNR(式中、Rは水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状もしくは環式C1~6アルキル基を表す)のうちの少なくとも1つを任意に含む)
を形成するための工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】CDCl中でのビス(ノルボルネンシクロプロパンアミド)化合物1のH NMRスペクトルを示す。
図2】CMX樹脂に対するビス(ノルボルネンシクロプロパンアミド)化合物1(HLU18-150-N5T5)の重合収縮応力データ比較を示す。 曲線1:t00182 2018年11月6日午後2時11分 伸び計 HLU18-150-N5T5_L103118_QHL-2分_S1.tsd 0=ビームドキュメンテーションにおける線の数(t00182 Nov 6 2018 2 11 pm tensometer HLU18-150-N5T5_L103118_QHL-2min_S1.tsd 0=number of lines in beam documentation) 曲線2:t00183 2018年11月6日午後4時25分 伸び計 HLU18-150-N5T5_L103118_QHL-2分_S2.tsd 0=ビームドキュメンテーションにおける線の数(t00183 Nov 6 2018 4 25 pm tensometer HLU18-150-N5T5_L103118_QHL-2min_S2.tsd 0=number of lines in beam documentation) 曲線3:t00008 2018年10月1日午前10時24分 伸び計 CMX樹脂_K900833_L1802000718_修復後_S1.tsd(t00008 Oct 1 2018 10 24 am tensometer CMX-Resin _K900833_L1802000718_PostRepair_S1.tsd) 曲線4:t00009 2018年10月1日午前11時31分 伸び計 CMX樹脂_K900833_L1802000718_修復後_S2.tsd(t00009 Oct 1 2018 11 31 am tensometer CMX-Resin _K900833_L1802000718_PostRepair_S2.tsd) 曲線5:t00011 2018年10月1日午後2時50分 伸び計 CMX樹脂_K900833_L1802000718_修復後_S3.tsd(t00011 Oct 1 2018 2 50 pm tensometer CMX-Resin _K900833_L1802000718_PostRepair_S3.tsd)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示の上記態様ならびに他の態様、特徴および利点を添付の図を参照しながら様々な実施形態に関して以下に説明する。本開示で使用される用語のいくつかを以下に定義する。
【0018】
「アルキル」という用語は、特に定めがない限り、1~18個の炭素原子を有するモノラジカルの分岐鎖状もしくは非分岐鎖状飽和炭化水素鎖を指す。この用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、n-デシル、ドデシルおよびテトラデシルなどの基によって例示することができる。アルキル基はアルケニル、アルコキシおよびヒドロキシルから選択される1つ以上の置換基でさらに置換されていてもよい。
【0019】
「アルキレン」という用語は、特に定めがない限り、1~18個の炭素原子を有する直鎖状の飽和二価の炭化水素ラジカルまたは3~18個の炭素原子を有する分岐鎖状の飽和二価の炭化水素ラジカル、例えばメチレン、エチレン、2,2-ジメチルエチレン、プロピレン、2-メチルプロピレンおよびブチレンなど、好ましくはメチレン、エチレンまたはプロピレンを指す。
【0020】
「アルコキシ」という用語は、酸素原子に結合されたアルキル基を含む官能基である。C1~4アルコキシ基は、1~4個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシを含むことができる。
【0021】
「アリーレン」という用語は「アリール」の二価部分である。「アリール」という用語は、C~C18員環の芳香族、複素環式、縮合芳香族、縮合複素環式、二芳香族または二複素環式の環系を指す。広く定義される「アリール」は本明細書で使用される場合、5、6、7、8、9および10員環の単環芳香族基、例えばベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどを含み、これらは0~4個のヘテロ原子を含んでいてもよい。環構造中にヘテロ原子を有する「アリール」基を「ヘテロアリール」または「複素環」または「ヘテロ芳香族」と呼ぶ場合もある。芳香族環は1つ以上の環位置において、限定されるものではないが、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ(または四級化アミノ)、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホン酸、リン酸、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族もしくはヘテロ芳香族部分、--CF、--CNおよびそれらの組み合わせなどの1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0022】
「アリール」という用語は、その2つ以上の炭素が2つの隣接している環(すなわち、「縮合環」)に共通している二環以上の環を有する多環式の環系も含み、ここでは当該環の少なくとも1つは芳香族であり、例えば1つ以上の他の環式の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/または複素環であってもよい。複素環の例としては、限定されるものではないが、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、4aHカルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H-1,5,2-ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H-インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H-インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4-ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H-ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H-キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H-1,2,5-チアジアジニル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニルおよびキサンテニルが挙げられる。
【0023】
「ヘテロアリーレン」という用語は、「ヘテロアリール」の二価部分である。
【0024】
「アラルキレン」という用語は、「アラルキル」の二価部分である。「アラルキル」という用語は、式-R’-アリールのラジカルを指し、式中R’は上に定義されているアルキレン、例えばメチレンおよびエチレンなどである。アリール部分は、アリール基について上に記載されているように任意に置換されている。
【0025】
「シクロアルキレン」という用語は、「シクロアルキル」の二価部分である。「シクロアルキル」という用語は、単環式もしくは多環式シクロアルキルラジカルを指す。単環式シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。多環式シクロアルキルラジカルの例としては、例えばアダマンチル、ノルボルニル、デカリニル(decalinyl)、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタニルおよびトリシクロ[5.2.1.02,6]デシルなどが挙げられる。本明細書において特に具体的に明記しない限り、「シクロアルキル」という用語は、アルキル、ハロ、オキソまたはアルキレン鎖から選択される1つ以上の置換基で任意に置換されている単環式もしくは多環式シクロアルキルラジカルを含むことが意図されている。
【0026】
「シクロアルキルアルキレン」という用語は-R’-シクロアルキル基を指し、ここではR’は上に定義されているアルキレン、例えばメチレンおよびエチレンなどである。本明細書で使用されるC~Cシクロアルキルアルキレンは、C~Cアルキレン基を介して結合されたシクロアルキルを指す。
【0027】
「二価の炭化水素ラジカル」という用語は、エチレン、メチルメチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンおよびオクタデシレンなどのアルキレンラジカル;ビニレン、アリレンおよびブタジエニレンなどのアルキレンラジカル;シクロブチレン、シクロペンチレンおよびシクロヘキシレンなどのシクロアルキレンラジカル;シクロペンテニレンおよびシクロヘキセニレンなどのシクロアルケニレンラジカル;フェニレンおよびキセニレン(xenylene)などのアリーレンラジカル;ベンジレンなどのアラルキレンラジカル;およびトリレンなどのアルカリレンラジカルなどの2~18個の炭素原子を有する二価の炭化水素ラジカルを指す。
【0028】
フリーラジカル重合に関する「重合性部分」という用語は多くの場合に、炭素-炭素二重結合などの付加重合を可能にするあらゆる二重結合を指す。
【0029】
「(メタ)アクリレート」という用語は本開示の文脈では、アクリレートおよび対応するメタクリレートを指すことが意図されている。
【0030】
「(メタ)アクリル」という用語は、本開示の文脈では、アクリルおよび対応するメタクリルを指すことが意図されている。
【0031】
本開示は、重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを含有する歯科材料に関する。本開示は、重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを調製する方法に関する。本開示は、歯科用の重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー組成物の調製のための重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーの使用に関する。重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを含有する組成物は、歯科材料として、特に歯科用コンポジット材料、歯科用グラスアイオノマー、歯科用シーラント、歯科用接着剤、接着促進剤、接着防止材料、セメント、クラウン形成材料または印象材として特に好適である。
【0032】
本開示の一態様では、
(i)式(I):
【化5】
の化合物を含む重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー
(式中、
、R、RおよびRは互いに独立しており、かつ水素、C1~4アルキル基またはC~C18アリール基を表し、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基、C~C10アリール基、エステルまたはアミド基であり、
Xはアルキレン基、O、SまたはCOであり、
nは0~1の整数であり、
mは1~6の整数であり、かつ
Zは、(m+1)価の非置換もしくは置換C~C18アルキレン基、非置換もしくは置換C~Cシクロアルキレン基、非置換もしくは置換アラルキレン基、非置換もしくは置換C~C18アリーレン基または非置換もしくは置換C~C18ヘテロアリーレン基であり、ここではZの各非置換もしくは置換基は1~6個の酸素、ケイ素、硫黄原子またはNR(式中、Rは水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状もしくは環式C1~6アルキル基を表す)のうちの少なくとも1つを任意に含む)と、
(ii)少なくとも1つの(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基またはビニル基を有する少なくとも1種の重合性樹脂モノマーと、
(iii)任意で、粒状充填剤と、
(iv)光開始剤およびレドックス開始剤のうちの少なくとも1つと
を含む歯科材料が提供される。
【0033】
I.重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー
重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーは、式(I):
【化6】
の化合物
(式中、
、R、RおよびRは互いに独立しており、かつ水素、C1~4アルキル基またはC~C18アリール基を表し、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基、C~C10アリール基、エステルまたはアミド基であり、
Xはアルキレン基、O、SまたはCOであり、
nは0~1の整数であり、
mは1~6の整数であり、かつ
Zは、(m+1)価の非置換もしくは置換C~C18アルキレン基、非置換もしくは置換C~Cシクロアルキレン基、非置換もしくは置換アラルキレン基、非置換もしくは置換C~C18アリーレン基または非置換もしくは置換C~C18ヘテロアリーレン基であり、ここではZの各非置換もしくは置換基は1~6個の酸素、ケイ素、硫黄原子またはNR(式中、Rは水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状もしくは環式C1~6アルキル基を表す)のうちの少なくとも1つを任意に含む)
である。
【0034】
「重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー」という用語は、シクロプロピル基およびアミド基を含む2つ以上の環式部分を含むことが意図されている。多環式アミドモノマーは加水分解安定である。具体的には、重合性多環式アミドモノマーは、1ヶ月以内に酸性条件下、約23~27℃の温度の水性媒体中で加水分解するエステルなどの基を主鎖中に含んでいない。酸性条件は2~4などの1~5のpHまたはpH3を指す。
【0035】
特定の実施形態では、重合性多環式アミドモノマーは式Iの化合物を有するシクロプロピル基を含むポリシクロオレフィンであり、ここではR、R、R、RおよびRは水素であり、Xはアルキレンであり、かつnは1である。
【0036】
特定の一実施形態では、重合性多環式アミドモノマーは式Iの化合物を有するシクロプロピル基を含むノルボルネン型部分であり、ここではR、R、R、RおよびRは水素であり、Xはメチレンであり、かつnは1である。
【0037】
一実施形態では、重合性多環式アミドは、置換されたトリシクロ[3.2.1.02,4]オクタ-6-エンを含むモノマーである。
【0038】
特定の一実施形態では、重合性多環式アミドモノマーは、mが1であり、かつRが水素である式Iの化合物である。
【0039】
式Iの化合物の特定の実施形態では、Zは非置換もしくは置換C~C18アルキレン基であり、これは1~6個の酸素、ケイ素、硫黄原子またはNR(式中、Rは水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状もしくは環式C1~6アルキル基を表す)のうちの少なくとも1つを任意に含んでいてもよい。
【0040】
一実施形態では、Zは式IV:
【化7】
(式中、
およびRは独立して同じまたは異なる水素原子、C1~6直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基またはC4~10アリール基であり、かつ
aは1~18の整数である)
に係る基を表す。
【0041】
特定の一実施形態では、Zは、
【化8】

【化9】
または
【化10】
から選択される。
【0042】
特定の実施形態では、Zは、式V:
【化11】
(式中、
、R、RおよびRは独立して同じまたは異なる水素原子、C1~6直鎖状もしくは分岐鎖状アルキル基またはC4~10アリール基であり、
およびXは独立して同じまたは異なる酸素原子、硫黄原子およびNR基(式中、Rは水素原子またはC1~4アルキル基である)であり、
は直鎖状もしくは分岐鎖状C2~3アルキレン基またはC~C18アリーレン基から選択される二価の炭化水素ラジカルであり、
bは1~10の整数であり、
cは1~10の整数であり、かつ
dは0~1の整数である)
に係る基を表す。
【0043】
特定の実施形態では、Zは、式VI:
【化12】
(式中、
は直鎖状、分岐鎖状もしくは環式アルキル基を表し、
およびLは独立して同じまたは異なるC2~20アルキレン基であり、
eは1~10の整数であり、かつ
fは0~1の整数である)
に係る基を表す。
【0044】
式Iの化合物は、以下の化合物:
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】
、または
【化18】
から選択されてもよい。
【0045】
本明細書に開示されている歯科材料の一実施形態では、重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーは、歯科材料の総重量に対して1~99%の量で存在していてもよい。あるいは、それは歯科材料の総重量に対して2~95%または5~90%の範囲あるいはそれらの間の任意の値、範囲または部分範囲である。
【0046】
本開示の一態様では、式Iの化合物を有する重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを調製する方法が記載されている。
【0047】
一実施形態では、式(I)の化合物は、
(i)x当量の、式(II):
【化19】
の化合物を有する少なくとも1種の成分A
(式中、
、R、RおよびRは互いに独立しており、かつ水素、C1~4アルキル基またはC~C18アリール基を表し、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基、C~C10アリール基、エステルまたはアミド基であり、
Xはアルキレン基、O、SまたはCOであり、
nは0~1の整数であり、かつ
Tはヒドロキシル基またはハロゲン原子である)と、
(ii)y当量の、式III:
【化20】
の化合物の第一級アミン官能基および第二級アミン官能基のうちの少なくとも1つを有する成分B
(式中、
は、(r+1)価の脂肪族C2~10基、シクロ脂肪族C~C基、または7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここではRの各基は酸素または硫黄原子を任意に含み、かつRの各基はC1~4アルキル基で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基または(メタ)アクリル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
およびLは独立して1~4個の炭素を有する同じまたは異なる直鎖状もしくは分岐鎖状鎖アルキレンであり、
は直接結合またはRで置換された窒素原子であり、
は酸素原子であり、
pおよびqは0~4の整数であり、かつ
rは1~6の整数である)と
を含み、
ここではxおよびyは成分(i)および(ii)の当モル量である
混合物を反応させる工程によって得られる。
【0048】
一実施形態では、式(II)の化合物を有する成分Aは、ノルボルネンシクロプロパンカルボン酸またはノルボルネンシクロプロパンカルボニルハライドであってもよい。
【0049】
ハライドは臭素または塩素から選択されてもよい。
【0050】
具体的な実施形態では、式(II)の化合物を有する成分Aは、ノルボルネンシクロプロパンカルボニルクロリドであってもよい。
【0051】
本明細書に開示されている歯科材料の一実施形態では、第一級アミン官能基および第二級アミン官能基のうちの少なくとも1つを有する成分Bは、式II:
【化21】
の化合物
(式中、
は、(r+1)価の脂肪族C2~10基、シクロ脂肪族C~C基、または7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここではRの各基は酸素または硫黄原子を任意に含み、かつRの各基はC1~4アルキル基で任意に置換されており、
は、水素原子、C1~6アルキル基、C3~10シクロアルキル基、C~C12アラルキル基または(メタ)アクリル基であり、ここではRの各基はC1~4アルキル基、C1~4アルコキシ基またはヒドロキシル基のうちの1つ以上で任意に置換されており、
およびLは独立して1~4個の炭素を有する同じまたは異なる直鎖状もしくは分岐鎖状鎖アルキレンであり、
は直接結合またはRで置換された窒素原子であり、
は酸素原子であり、
pおよびqは0~4の整数であり、かつ
rは1~6の整数である)
である。
【0052】
「第一級アミン官能基および第二級アミン官能基のうちの少なくとも1つ」という語句は、「第一級アミン官能基のみ」、「第二級アミン官能基のみ」または「第一級アミン官能基および第二級アミン官能基の両方」を意味すると解釈されるべきである。
【0053】
式IIIの一実施形態では、Rは、(r+1)価の脂肪族C2~10基、シクロ脂肪族C~C基、または7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基である。Rは二価(r=1)、三価(r=2)、四価(r=3)、五価(r=5)、六価(r=5)または七価(r=6)であってもよい。
【0054】
本明細書に開示されている歯科材料の特定の実施形態では、式IIIの化合物は、式IIIa:
【化22】
のジアミン(式中、
は上に定義されているとおりであり、かつ
Wは、二価の脂肪族C2~10基、シクロ脂肪族C~C基、または7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基であり、ここでは各基は酸素または硫黄原子を任意に含み、かつこれらはC1~4アルキル基で任意に置換されている)
であってもよい。
【0055】
本明細書に開示されている歯科材料の特定の実施形態では、式IIIの化合物は、式IIIb:
【化23】
の化合物
(式中、RおよびXは上に定義されているとおりである)
であってもよい。
【0056】
本明細書に開示されている歯科材料の特定の実施形態では、式IIIの化合物は、式IIIc:
【化24】
のモノアミン
(式中、Rは一価の脂肪族C1~10基、シクロ脂肪族C~C基、または7~24個の炭素原子を有するアラルキレン基である)
であってもよい。
【0057】
本明細書に開示されている歯科材料の特定の実施形態では、式IIIの化合物は、式IIId:
【化25】
のアミン
(式中、RおよびRは上に定義されているとおりである)
であってもよい。
【0058】
式IIIの化合物は、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、4,7,10-トリオキサ-1,13-トリデカンジアミン、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエチルアミン、1,3-ビス-(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス-(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、Jeffamine T403、Jeffamine T3000、Jeffamine T5000、アミノアルコール、プロパノールアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N,N’-ジベンジル5-オキサノナンジアミン-1,9、N,N’-ジベンジル3,6-ジオキサオクタンジアミン-1,8、N,N’-ジエチルプロパンジアミン、N,N’-ジメチルプロピレンジアミン、n-ブチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミンまたはベンゾイルアミンから選択されてもよい。
【0059】
式Iの化合物を有する重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを調製する方法の特定の実施形態では、x当量の、式(II)の化合物を有する少なくとも1種の成分A、ならびにy当量の、式IIIの化合物の第一級アミン官能基および第二級アミン官能基のうちの少なくとも1つを有する成分Bを溶媒に溶解して反応温度で撹拌してもよい。
【0060】
式Iの化合物を有する重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーを調製する方法の特定の実施形態では、溶媒はジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジメチルスルホキシドおよびジメチルホルムアミドからなる群から選択されてもよい。反応温度は、例えば30℃~55℃などの0℃~60℃であってもよい。
【0061】
式Iの化合物を有する重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーの調製では、塩基を使用してもよい。当該塩基はトリエチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジイソプロピルエチルアミンおよびジメチルアミノピリジンからなる群から選択される。
【0062】
充填剤
本開示の歯科材料は粒状充填剤を含んでいてもよい。「粒状充填剤」は粉末状金属酸化物または水酸化物、ケイ酸塩鉱物あるいはイオン溶出ガラスまたはセラミックである。粒状充填剤の例は、歯科修復組成物に現在使用されている充填剤から選択されてもよい。
【0063】
粒状充填剤は単峰性もしくは多峰性(例えば二峰性)粒度分布を有していてもよい。粒状充填剤は無機材料であってもよい。またそれは重合性樹脂に不溶性であり、かつ任意に無機充填剤が充填された架橋された有機材料であってもよい。粒状充填剤は、放射線不透過性、放射線透過性または非放射線不透過性であってもよい。
【0064】
好適な粒状無機充填剤の例は、石英、窒化ケイ素などの窒化物、例えばCe、Sb、Sn、Zr、Sr、BaおよびAlから得られるガラス、コロイド状シリカ、長石、ホウケイ酸ガラス、カオリン、タルク、チタニアおよび亜鉛ガラスならびに発熱性ケイ素などのサブミクロンケイ素粒子などの天然に生じるまたは合成の材料である。
【0065】
好適な充填剤粒子の例としては、限定されるものではないが、ケイ酸ストロンチウム、ホウケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウム、ホウケイ酸バリウム、フルオロアルミノホウケイ酸バリウムガラス、アルミノホウケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、カルシウムアルミノナトリウムフルオロフォスファーシリケート(calcium alumino sodium fluoro phosphor-silicate)、ケイ酸ランタン、ケイ酸アルミノおよび上記充填剤の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。充填剤粒子はフュームドシリカをさらに含んでもよい。フュームドシリカの例としては、DeGussa社製のOX-50(40nmの平均粒径を有する)、DeGussa社製のAerosil R-972(16nmの平均粒径を有する)、DeGussa社製のAerosil 9200(20nmの平均粒径を有する)、Aerosil 90、Aerosil 150、Aerosil 200、Aerosil 300、Aerosil 380、Aerosil R711、Aerosil R7200およびAerosil R8200などの他のAerosilフュームドシリカならびにCabot社製のCab-O-Sil M5、Cab-O-Sil TS-720、Cab-O-Sil TS-610が挙げられる。好適な粒状有機充填剤粒子の例としては、充填または非充填の微粉ポリカーボネートまたはポリエポキシドが挙げられる。
【0066】
本明細書に開示されている材料に使用される充填剤粒子は、有機化合物と混合する前に表面処理されていてもよい。シランカップリング剤または他の化合物を用いる表面処理は、粒状充填剤とマトリックスとの結合を高め、かつ充填剤粒子を有機樹脂マトリックス内により均一に分散させることができ、かつ物理的および機械的特性も向上させるので有益である。好適なシランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシランおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0067】
粒状充填剤は通常、例えば電子顕微鏡法あるいはMALVERN Mastersizer SまたはMALVERN Mastersizer 2000装置によって具体化されている従来のレーザー回折粒度分布法を用いて測定した場合に、0.01~40μmなどの0.005~100μmの平均粒径を有する。
【0068】
本開示の歯科用組成物はナノスケール粒子を含有していてもよい。本開示におけるナノスケール粒子として、歯科用組成物で使用されるあらゆる公知のナノスケール粒子をどんな制限もなく使用してもよい。ナノスケール粒子の好ましい例としては、ケイ素、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの無機酸化物の粒子、これらの酸化物のいずれかの複合酸化物の粒子ならびにリン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、フッ化イットリウムおよびフッ化イッテルビウムの粒子が挙げられる。好ましくはナノスケール粒子は、火炎熱分解により調製されるケイ素、アルミナ、チタニアの粒子である。
【0069】
ナノスケール粒子の平均粒径は3~40nmなどの1~50nmである。ナノスケール粒子の平均粒径は、これらのナノスケール粒子の電子顕微鏡写真を撮影して100個のランダムに選択されたナノスケール粒子の直径の平均値を計算することにより測定することができる。無機ナノスケール粒子に先に表面処理剤により表面処理を施して無機充填剤と本開示の重合性組成物との親和性を高め、かつ無機充填剤と重合性組成物との化学結合を向上させて硬化生成物の機械的強度を高めることが望ましい。
【0070】
一実施形態では、粒状充填剤は、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(Ormosil II)で希釈された有機修飾されたケイ素ナノ粒子であってもよい。
【0071】
本開示の歯科材料は、歯科材料の総重量に対して10~90%w/wの量で粒状充填剤を含んでいてもよい。あるいは、それは歯科材料の総重量に対して30~85%の範囲あるいはその間の任意の値、範囲または部分範囲であってもよい。
【0072】
光開始剤
本開示の歯科材料は、光開始剤およびレドックス開始剤のうちの少なくとも1つを含む。
【0073】
「光開始剤およびレドックス開始剤のうちの少なくとも1つ」という語句は、「光開始剤のみ」、「レドックス開始剤のみ」または「光開始剤およびレドックス開始剤の両方」を意味するように解釈されるべきである。
【0074】
好適な光開始剤としてはI型およびII型が挙げられる。それらは独立して、あるいは異なる光開始剤+さらなる共開始剤の混合物として使用することができる。いくつかの好ましい光増感剤としては、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6-テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノンおよび他の環式α-ジケトンなどの約300nm~約800nm(約400nm~約500nmなど)の範囲内の一部の光を吸収するモノケトンおよびジケトン(例えばα-ジケトン)が挙げられる。これらのうち、カンファーキノンが典型的に好ましい。好ましい電子供与体化合物としては、促進剤としての置換アミン、例えば、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチルが挙げられる。
【0075】
さらなる好ましい実施形態によれば、光開始剤は、以下の式:
10-I-R11
のヨードニウム化合物
(式中、
10およびR11は互いに独立しており、かつ有機部分を表し、
はアニオンである)
をさらに含む。
【0076】
例えば、ジアリールヨードニウム塩は、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウム(DPI)テトラフルオロボレート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウム(Me2-DPI)テトラフルオロボレート、フェニル-4-メチルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ-(4-t-ブチルフェニル)-ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムp-トルエンスルホネート、ジ(4-ヘプチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(3-ニトロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-クロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(ナフチル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ジ(4-トリフルオロメチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、DPIヘキサフルオロホスフェート、Me2-DPIヘキサフルオロホスフェート、DPIヘキサフルオロアルセネート、ジ(4-フェノキシフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル-2-チエニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、3,5-ジメチルピラゾリル-4-フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、DPIヘキサフルオロアンチモネート、2,2’-DPIテトラフルオロボレート、ジ(2,4-ジクロロフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-ブロモフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-メトキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3-カルボキシフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3-メトキシカルボニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(3-メトキシスルホニルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-アセトアミドフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(2-ベンゾチエニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートおよびDPIヘキサフルオロホスフェートから選択されてもよい。
【0077】
特にヨードニウム化合物としては、ジフェニルヨードニウム(DPI)ヘキサフルオロホスフェート、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウム(Me2-DPI)ヘキサフルオロホスフェート、ジ-(4-t-ブチルフェニル)-ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート(Irgacure(登録商標)250、BASF SE社から入手可能な市販品)、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムテトラフルオロボレート、4-オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートおよび4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムボレートが挙げられる。
【0078】
特定の実施形態によれば、ヨードニウム化合物は、ジ(4-メチルフェニル)ヨードニウム(Me2-DPI)ヘキサフルオロホスフェートである。
【0079】
フリーラジカル光重合性組成物を重合させるための他の好適な光開始剤としては、典型的には約380nm~約1200nmの機能的波長範囲を有するホスフィンオキシドのクラスが挙げられる。約380nm~約450nmの機能的波長範囲を有する好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル開始剤は、アシルおよびビスアシルホスフィンオキシドである。
【0080】
約380nm~約450nm超の波長範囲で照射した場合にフリーラジカル反応を開始することができる市販されているホスフィンオキシド光開始剤としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE 651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE 2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE 369)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IRGACURE 907)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR 1173)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403)、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの25:75(重量で)混合物(IRGACURE 1700)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの1:1(重量で)混合物(DAROCUR 4265)、および2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィン酸エチル(LUCIRIN LR8893X)が挙げられる。
【0081】
好適なレドックス開始剤は、典型的には互いに反応するかそれ以外の方法で互いに協働して光が存在しない暗反応において重合性二重結合の重合を開始することができる、フリーラジカルを生成する還元剤および酸化剤を含む。還元剤および酸化剤は、典型的な歯科条件下での貯蔵および使用を可能にするために、重合開始剤系が十分に貯蔵安定であり、かつ望ましくない着色を有しないように選択される。さらに還元剤および酸化剤は、重合開始剤系の本組成物への溶解を可能にするために重合開始剤系が樹脂系と十分に混和性であるように選択される。
【0082】
有用な還元剤としては、米国特許第5,501,727号に記載されているようなアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体および金属錯体化アスコルビン酸化合物、アミンすなわち第三級アミン、例えば4-tert-ブチルジメチルアニリンが挙げられる。他の補助還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、亜ジチオン酸もしくは亜硫酸アニオンの塩およびそれらの混合物が挙げられる。
【0083】
好適な酸化剤としては過硫酸およびその塩、例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウム、セシウムおよびアルキルアンモニウム塩が挙げられる。さらなる酸化剤としては過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、ヒドロペルオキシド、例えばクミルヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ(2-エチルヘキシル)カーボネート、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジ(tert-ブチル)ペルオキシド、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチル-ヘキサノエート、アミルヒドロペルオキシドおよび過硫酸カリウム、塩化コバルト(III)および塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸およびその塩、過マンガン酸およびその塩、過リン酸およびその塩などの遷移金属の塩ならびにそれらの混合物が挙げられる。1種以上の異なる酸化剤または1種以上の異なる還元剤を重合開始剤系に使用してもよい。
【0084】
また少量の遷移金属化合物を添加してレドックス硬化速度を加速させてもよい。遷移金属化合物はV、Fe、Cu、Ti、Mn、NiおよびZnの塩であってもよい。最も好ましくは、それはFeまたはCuの遷移金属塩である。四価および/または五価バナジウム化合物が好ましく、酸化バナジウム(IV)、バナジルアセチルアセトネート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)バナジウム(IV)(oxobis(1-phenyl-1,3-butanedionato)vanadium(IV))、ビス(マルトラト)オキソバナジウム(IV)、酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、およびメタバナジン酸アンモニウム(V)が挙げられる。銅化合物の例としては、銅アセチルアセトネート、酢酸銅(II)、オレイン酸銅、塩化銅(II)および臭化銅(II)が挙げられる。
【0085】
レドックス開始剤系は任意に重合促進剤を含んでいてもよい。
【0086】
重合促進剤は、芳香族スルホン酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩およびチオ尿素化合物から選択される。
【0087】
重合促進剤として使用することができる芳香族スルホン酸塩の例としては、限定されるものではないが、p-トルエンスルホン酸塩、例えばp-トルエンスルフィン酸ナトリウム、p-トルエンスルフィン酸カリウム、p-トルエンスルフィン酸カルシウム;ベンゼンスルフィン酸塩、例えばベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸塩、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6-トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウムおよび2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウムが挙げられる。
【0088】
重合促進剤として使用することができる亜硫酸塩の例としては、限定されるものではないが、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウムおよび亜硫酸水素カリウムが挙げられる。
【0089】
重合促進剤として使用することができるチオ尿素の例としては、限定されるものではないが、1-エチル-2-チオ尿素、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素、チオ尿素、エチルチオ尿素、メチルチオ尿素、N,N’-ジメチルチオ尿素、N,N’-ジエチルチオ尿素、N,N’-ジ-n-プロピルチオ尿素、N,N’-ジシクロヘキシルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、トリエチルチオ尿素、トリ-n-プロピルチオ尿素、トリシクロヘキシルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラ-n-プロピルチオ尿素、テトラシクロヘキシルチオ尿素、3,3-ジメチルエチレンチオ尿素、4,4-ジメチル-2-イミダゾリンチオン、1,1-ジブチルチオ尿素、1,3-ジブチルチオ尿素およびそれらの混合物が挙げられる。
【0090】
還元剤および酸化剤は適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在している。
【0091】
還元剤または酸化剤は本組成物の貯蔵安定性を高め、かつ必要であれば還元剤および酸化剤を一緒に包装するのを可能にするためにマイクロカプセル化されていてもよい(米国特許第5,154,762号)。カプセル材料の適当な選択により、貯蔵安定な状態で酸化剤および還元剤の組み合わせならびにさらには酸官能性成分および任意の充填剤の組み合わせを可能にしてもよい。さらに水不溶性カプセル材料の適当な選択により、貯蔵安定な状態で還元剤および酸化剤の粒状反応性ガラスおよび水との組み合わせを可能にする。
【0092】
二重硬化開始剤系は光開始剤系とレドックス開始剤系とを組み合わせたものである。
【0093】
歯科材料の一実施形態では、光開始剤およびレドックス開始剤のうちの少なくとも1つは歯科材料の0.1重量%~約5重量%の量で存在していてもよい。
【0094】
単独重合/共重合
本開示に係る重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーは単独で、あるいはラジカル重合性モノマーと混合して重合させてもよい。
【0095】
重合性モノマー
歯科材料の一実施形態では、重合性モノマーは歯科材料の1重量%~約99重量%の量で存在していてもよい。
【0096】
重合性モノマーは、アクリレート、メタクリレート、エチレン性不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和モノマー、(メタ)アクリル酸のC2~8ヒドロキシルアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のC1~24アルキルエステルまたはシクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸のC2~18アルコキシアルキルエステル、オレフィンまたはジエン化合物、モノエステル/ジエステル、モノエーテル、付加物、ビニルモノマー、スチリルモノマー、TPH樹脂、SDR樹脂、PBA樹脂および/またはBPA非含有樹脂であってもよい。
【0097】
具体的なアクリレートモノマーの例としては、限定されるものではないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールモノおよびジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、モノ、ジ、トリアクリレート、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリおよびテトラアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリレート]プロパン、2,2’-ビス(4-アクリロキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-アクリロキシ-フェニル)]プロパン、2,2’-ビス(4-アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-アクリレート]プロパンおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートエステルが挙げられる。
【0098】
具体的な従来のメタクリレートモノマーの例としては、限定されるものではないが、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールA(2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン)のジグリシジルメタクリレート(BisGMA)、4,4,6,16(もしくは4,6,6,16)-テトラメチル-10,15-ジオキソ-11,14-ジオキサ-2,9-ジアザヘプタデカ-16-エン酸2-[(2-メチル-1-オキソ-2-プロペン-1-イル)オキシ]エチルエステル(CAS番号72869-86-4)(UDMA)、グリセロールモノおよびジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリおよびテトラメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート(BisMEP)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、2-2’-ビス(4-メタクリロキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[4(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシ-フェニル)]プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス[3(4-フェノキシ)-2-ヒドロキシプロパン-1-メタクリレート]プロパン、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-2-メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-トリメチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン-ビス-1-メチル-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、およびメチレン-ビス-1-クロロメチル-2-メタクリロキシエチル-4-シクロヘキシルカルバメートが挙げられる。
【0099】
エチレン性不飽和化合物の例としては、限定されるものではないが、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステル、ハロゲンおよびヒドロキシ含有メタクリル酸エステルおよびそれらの組み合わせが挙げられる。そのようなフリーラジカル重合性化合物としては、n-、sec-もしくはt-ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビス[1-(2-アクリロキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートおよびトリスヒドロキシエチル-イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、((ジ)ウレタンジメタクリレート)、ポリエチレングリコールのビス-(メタ)アクリレート、および塩素、臭素、フッ素およびヒドロキシル基含有モノマー、例えば3-クロロ-2-ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレートならびに2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパンとヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)との反応生成物が挙げられる。
【0100】
カルボキシル基含有不飽和モノマーの例としては、限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸およびフマル酸などが挙げられる。
【0101】
(メタ)アクリル酸のC2~8ヒドロキシルアルキルエステルの例としては、限定されるものではないが、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよびヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0102】
(メタ)アクリル酸のC2~18アルコキシアルキルエステルの例としては、限定されるものではないが、メトキシブチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレートおよびエトキシブチルメタクリレートが挙げられる。
【0103】
オレフィンまたはジエン化合物としては、限定されるものではないが、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、イソプレン、クロロプロペン、フッ素含有オレフィンおよび塩化ビニルが挙げられる。
【0104】
モノエステルの例としては、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコール)と不飽和カルボン酸(好ましくはメタクリル酸)とのモノエステル、酸無水物基含有不飽和化合物(例えば、無水マレイン酸または無水イタコン酸)とグリコール(例えば、エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオールまたはネオペンチルグリコール)とのモノエステルまたはジエステルが挙げられる。
【0105】
モノエーテルの例としては、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコール)とヒドロキシル基含有不飽和モノマー(例えば、2-ヒドロキシルメタクリレート)とのモノエーテルが挙げられる。
【0106】
付加物の例としては、限定されるものではないが、不飽和カルボン酸とモノエポキシ化合物との付加物、グリシジル(メタ)アクリレート(好ましくはメタクリレート)と一塩基酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、p-t-ブチル安息香酸または脂肪酸)との付加物が挙げられる。
【0107】
ビニルモノマーの例としては、限定されるものではないが、アミノプロピルビニルエーテル、アミノエチルビニルエーテル、N-ビニルホルムアミド、炭酸ビニレン、酢酸ビニル、ジビニルベンゼン、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、ハロゲン化ビニリデンおよびビニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0108】
スチリルモノマーの例としては、限定されるものではないが、スチレンおよび2-メチルスチレンが挙げられる。
【0109】
(メタ)アクリルアミドは、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス-(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、
【化26】
から選択されてもよい。
【0110】
さらなる成分
本開示に係る歯科用組成物は、さらなる成分、例えば紫外線安定剤、1種以上の重合阻害剤、1種以上の溶媒、着色剤、蛍光剤、乳白剤、顔料、粘度調整剤、フッ化物放出剤およびそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0111】
紫外線安定剤の例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(UV-9)、2-(2’-ヒドロキシ-4’,6’-ジ-tert-ペンチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、フェノチアジンおよびHALS(ヒンダードアミン光安定剤)が挙げられる。
【0112】
フリーラジカル系のための典型的な重合阻害剤としては、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ヒドロキノン、フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(2,6-ジ-tert-ブチル-4-エトキシフェノール)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(ジメチルアミノ)メチルフェノールまたは2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノンおよびブチルヒドロキシアニリンなどが挙げられる。当該阻害剤は、本組成物中のフリーラジカルを捕捉し、かつ歯科材料の貯蔵寿命安定性を引き延ばすためのフリーラジカルスカベンジャーとして作用する。重合阻害剤が存在する場合、歯科材料の約0.005重量%~約1.1重量%または約0.01重量%~約0.08重量%などの歯科材料の約0.001重量%~約1.5重量%の量で存在していてもよい。歯科材料は1種以上の重合阻害剤を含んでいてもよい。
【0113】
本開示の歯科材料は水および有機溶媒を含む溶媒混合物を含む。溶媒混合物は1種以上の有機溶媒を含んでいてもよい。
【0114】
本明細書で使用される「有機溶媒」という用語は、室温で流体または液体であり、かつ本歯科用組成物の成分を溶解するか少なくとも部分的に溶解することができるあらゆる有機化合物を意味する。有機溶媒はその揮発性および生理学的無害性を考慮して適切に選択される。好ましくは有機溶媒は水よりも揮発性であり、すなわち20℃では水よりも高い蒸気圧を有する。さらに有機溶媒は治療される患者、特にヒトの患者にとって非毒性であることが好ましい。
【0115】
好ましくは溶媒混合物の有機溶媒は、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、アセトンおよびメチルエチルケトンからなる群から選択される。好ましくは歯科材料は、歯科材料の総重量に対して25~50重量%、より好ましくは27~47重量%、最も好ましくは29~44重量%の量で溶媒混合物を含む。
【0116】
溶媒混合物中に含まれている有機溶媒はn-プロパノールまたはイソプロパノール、好ましくはイソプロパノールであることが好ましい。
【0117】
歯科材料としての重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーの使用
歯科用組成物は本開示の歯科用組成物の成分を混合することにより調製する。歯科用組成物の成分は、本開示の歯科用組成物を形成するために様々な方法および量で(例えば混合またはブレンドすることにより)1つにまとめることができる。
【0118】
硬化性歯科材料組成物は、
a)1~99%w/wの重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマー、
b)ラジカル重合のための0.01~5%w/wの光開始剤、および
c)1~99%の重合性モノマー
を含有していてもよい。
【0119】
本開示の歯科材料はコンポジットであってもよく、約30~約90重量%の量で充填剤材料を含んでいてもよい。
【0120】
本開示の歯科材料は接着剤であってもよく、約50~約65重量%の量で充填剤、および0~70重量%の量で溶媒を含んでいてもよい。
【0121】
本開示に係る歯科材料はセメントであってもよく、約50~約90重量%の量で充填剤を含んでいてもよい。
【0122】
歯科用コンポジットは、重合性かつ加水分解安定な多環式アミドモノマーマトリックスと充填剤とを混合することにより製剤化してもよい。
【0123】
次に、本開示を以下の実施例によりさらに例示する。
【実施例
【0124】
加水分解安定なビス(ノルボルネンシクロプロパンアミド)化合物の合成
5.9g(35mmol)のノルボルネンシクロプロパンカルボニルクロリドを75mLのジクロロメタンに溶解し、氷浴に入れた。2.7g(17mmol)のジアミン異性体混合物、TMHDA(CAS25620-58-0)および3.44g(34mmol)トリメチルアミンを20mLのジクロロメタンに溶解し、反応混合物に滴下した。その反応は室温で30分間起こり、150mLの水を添加して失活させた。水層を分離し、50mLのジクロロメタンで3回洗浄した。全ての有機層を1つにまとめ、乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。ビス(ノルボルネンシクロプロパンアミド)化合物(1)は無色の固体である。この生成物を、図1に示されているように、H NMRスペクトルにより特性評価した
【0125】
実施例1
収縮応力:
米国歯科医師会財団(ADAF:American Dental Association Foundation)のPaffenbarger研究センターで設計および作製された伸び計と呼ばれる収縮応力測定装置により収縮応力を測定した。この装置は、重合中に収縮試料によって生じる曲げ力が片持ち梁を撓ませるという片持ち梁の理論に基づいている。歯科用樹脂またはコンポジットを6.0mmの直径および2.25mmの厚さを有する2本のガラス棒の間にあるセルに注入する。この材料を60秒間にわたって400mW/cmの光強度でQHL-75ハロゲンランプにより硬化させる。伸び計のより詳細な説明、実験手順および特性評価は、(H.Luら,Journal of Materials Science,Materials in Medicine,2004,Vol.15,1097-1103)において考察されており、この内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
ビス(ノルボルネンシクロプロパンアミド)化合物(1)とトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)との共重合
重合収縮応力を決定するために、表1に示されている成分の混合物を混合し、次いで可視光を照射した。
【表1】
【0127】
HLU18-150-N5T5の成分の最大収縮応力は1.5MPaであった(図2に示されている)。
【0128】
比較例
収縮応力についてCMX樹脂を評価し、最大収縮応力は4.5MPaであることを観察した(図2に示されている);CMX樹脂はさらにより高い収縮応力発生率も示した。
【0129】
1つ以上の実施形態を参照しながら本開示について説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく様々な変更をなすことができ、かつそれらの要素の代わりに均等物を使用できることが当業者によって理解されるであろう。さらに特定の状況または材料を本開示の教示に適応させるために、その本質的な範囲から逸脱することなく多くの修飾をなすことができる。従って、本開示は本開示を実施するために考えらえる最良の実施形態として開示されている特定の実施形態に限定されず、かつ本開示は添付の特許請求の範囲に含まれる全ての実施形態を含むことが意図されている。さらに、詳細な説明において特定されている全ての数値は、あたかも正確な値および近似値の両方が明示的に特定されているかのように解釈されるものとする。
図1
図2
【国際調査報告】