IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイチ2ゴー パワー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(54)【発明の名称】電源
(51)【国際特許分類】
   F17C 11/00 20060101AFI20220613BHJP
【FI】
F17C11/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560168
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(85)【翻訳文提出日】2021-11-24
(86)【国際出願番号】 GB2020050827
(87)【国際公開番号】W WO2020193988
(87)【国際公開日】2020-10-01
(31)【優先権主張番号】1904259.7
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2004425.1
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
2.ZIGBEE
(71)【出願人】
【識別番号】521438766
【氏名又は名称】エイチ2ゴー パワー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】スペッリン ルーク
(72)【発明者】
【氏名】アボ ハメド エナス
(72)【発明者】
【氏名】イタリアノ ピーター
(72)【発明者】
【氏名】オドネル キーラン
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA09
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172DA90
3E172EA10
3E172EA48
3E172EB05
3E172EB18
3E172FA01
3E172FA13
3E172FA26
3E172KA02
(57)【要約】
電源装置100は、第1の電気出口110を有し第1の水素貯蔵装置200Aを含む水素貯蔵装置群200と、第1の加熱器300Aを含む加熱器群300と、第1の解除可能な流体入口継手410及び/又は第1の解除可能な流体出口継手510を含む。第1の水素貯蔵装置200Aは、第1の加熱器300Aと熱的に連結された熱伝導性ネットワーク240Aを内部に備えた第1の流体入口210Aと第1の流体出口220Aを有する圧力容器230Aを含む。圧力容器230Aは、熱伝導性ネットワーク240Aと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料250Aを内部に収容するように配置される。第1の流体入口210A及び/又は第1の流体出口220Aは第1の解除可能な流体入口継手410及び/又は第1の解除可能な流体出口継手510と流体連通する。熱伝導性ネットワーク240Aは2次元及び/又は3次元の格子形状及び/又はフラクタル形状を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電気出口を有する電源であって、
第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群と、第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手と、を含み、
前記第1の水素貯蔵装置は、前記第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に備えた第1の流体入口と第1の流体出口を有する圧力容器を含み、前記圧力容器は、前記熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料を内部に収容するように配置され、前記第1の流体入口及び/又は前記第1の流体出口は、それぞれ前記第1の解除可能な流体入口継手及び/又は前記第1の解除可能な流体出口継手と流体連通し、好ましくは、前記熱伝導性ネットワークは、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する、電源。
【請求項2】
水素ガスを用いて電気を生成するように構成され、かつ燃料電池と熱機関を含む発電機とからなる群から選択される第1の発電機を含む発電機群、前記第1の解除可能な流体出口継手と連結可能な第2の解除可能な流体入口継手、及び/又は前記第1の電気出口と連結可能な第1の解除可能な電気出口継手を含み、
前記第1の発電機は、前記第2の解除可能な流体入口継手と流体連通する第2の流体入口を含む、請求項1に記載の電源。
【請求項3】
前記第1の発電機は、固体高分子形燃料電池(PEMFC)、アルカリ型燃料電池(AFC)及びリン酸型燃料電池(PAFC)からなる群から選択される燃料電池である、請求項2に記載の電源。
【請求項4】
水素ガスを生成するように構成された第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群、第3の解除可能な流体入口継手、及び/又は前記第1の解除可能な流体入口継手と連結可能な第2の解除可能な流体出口継手を含む、請求項1~3のいずれかに記載の電源。
【請求項5】
前記第1の水素ガス生成器は、アルカリ電解セル及びプロトン交換膜(PEM)電解セルからなる群から選択される電解セルを含む、請求項4に記載の電源。
【請求項6】
前記第1の水素ガス生成器と連結可能な第1の電気入口を有し、及び/又は前記第1の電気出口は、前記第1の水素ガス生成器と連結可能である、請求項3~5のいずれかに記載の電源。
【請求項7】
前記第1の水素ガス生成器と、前記第1の水素貯蔵装置と、前記第1の発電機とが互いに切り離される第1の配置と、
前記第1の水素ガス生成器と前記第1の発電機とが前記第1の水素貯蔵装置を介して流体的に連結される第2の配置と、になるように配置可能である、請求項1~6のいずれかに記載の電源。
【請求項8】
第1の壁を含む壁群を含む筐体を含み、前記第1の壁は、前記水素貯蔵装置群を収容するように配置され、かつ前記第1の壁を通る前記第1の電気出口を有する、請求項1~7のいずれかに記載の電源。
【請求項9】
前記第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する速度に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の加熱器を制御するように構成されたコントローラを含む、請求項1~8のいずれかに記載の電源。
【請求項10】
前記コントローラは、前記第1の電気出口を介して出力される電気エネルギーの予測速度に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の加熱器を制御するように構成される、請求項9に記載の電源。
【請求項11】
前記第1の水素貯蔵装置は、水素貯蔵材料を含み、前記水素貯蔵材料は、固体水素化物及び/又は液体有機水素キャリア(LOHC)を含み、及び/又は固体水素化物及び/又は液体有機水素キャリア(LOHC)である、請求項1~10のいずれかに記載の電源。
【請求項12】
第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群と、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群と、第1の発電機を含む発電機群と、コントローラとを含む電源を制御する方法であって、
前記第1の水素貯蔵装置は、前記第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に備えた第1の流体入口と第1の流体出口を有する圧力容器を含み、前記圧力容器は、前記熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料を内部に収容するように配置され、好ましくは、前記熱伝導性ネットワークは、2次元及び/又は3次元の格子形状及び/又はフラクタル形状を有し、
前記方法は、
前記第1の水素ガス生成器により、水素ガスを生成する工程と、
前記第1の水素貯蔵装置により、生成された前記水素ガスを貯蔵する工程と、
前記貯蔵された水素ガスを少なくとも部分的に放出する工程であって、前記コントローラにより前記第1の加熱器を制御して貯蔵された前記水素ガスを少なくとも部分的に放出することを必要に応じて含む工程と、
前記第1の発電機により、放出された前記水素ガスを用いて電気エネルギーを生成する工程と、を含む、方法。
【請求項13】
前記コントローラにより、前記第1の発電機が電気エネルギーを生成する速度に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の加熱器を制御する工程を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コントローラにより、前記第1の発電機が生成する電気エネルギーの予測速度に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の加熱器を制御する工程を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記コントローラにより、前記第1の発電機が電気エネルギーを生成する速度に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の水素ガス生成器が水素ガスを生成する速度を制御する工程を含む、請求項12~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
プロセッサ及びメモリを含むコンピュータ装置によって実行されると、前記コンピュータ装置に請求項12~15のいずれかに記載の方法を実行させる命令が記録される、有形の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には電源の分野に関する。より具体的には、本発明は、電源及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素は、化石燃料に代わる環境的に魅力的な燃料である。重要なことに、水素は、再生可能エネルギーを用いて水を電気分解させることなどにより、化石燃料を使用せずに生成できる。水素は、単位質量あたりのエネルギー密度が比較的に高く、また主な燃焼生成物が水であるため実質的に無公害である。
【0003】
水素は、燃料として広い潜在的用途を有するが、その使用上に適切に貯蔵できないという大きな欠点がある。従来、水素は、圧縮ガスとして高圧下で圧力容器内に貯蔵されるか又は極低温に冷却されて極低温液体として貯蔵される。しかしながら、水素が圧縮ガスとして貯蔵される場合、一般的に、例えば遠隔地での配置が制限される大きな圧力容器を使用する必要がある。また、液体水素の製造に費用が掛かる。そして液体として貯蔵される場合に重大な安全上の問題が存在し、20K未満で貯蔵する必要があるため、例えば、臨時的な施設(temporary installation)での使用を妨げる。更に、従来の圧力容器又は液体水素を用いる場合の貯蔵の拡縮可能性(scalability)は、安全性及び/又はコストによって定められる(mandate)ため、関連するインフラによって制限される。
【0004】
したがって、水素を発電用燃料として、例えば、遠隔地及び/又は臨時的な施設に用いることは、問題となっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明によれば、添付された特許請求の範囲に記載されたように、電源、電源の制御方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。本発明の更なる特徴は、従属請求項及び本明細書の説明から明らかになるであろう。
【0006】
第1の態様に係る、第1の電気出口(electrical outlet)を有する電源は、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群(set of hydrogen storage devices)と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群と、第1の解除可能な(releasable)流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手と、を含む。前記第1の水素貯蔵装置は、前記第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結(thermally coupled to)された熱伝導性ネットワーク(thermally conducting network)を内部に備えた第1の流体入口と第1の流体出口を有する圧力容器を含む。前記圧力容器は、前記熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料を内部に収容するように配置される。前記第1の流体入口及び/又は前記第1の流体出口は、それぞれ前記第1の解除可能な流体入口継手及び/又は前記第1の解除可能な流体出口継手と流体連通(in fluid communication with)する。好ましくは、前記熱伝導性ネットワークは、2次元及び/又は3次元の格子形状(lattice geometry)、螺旋形状(gyroidal geometry)及び/又はフラクタル形状(fractal geometry)を有する。
【0007】
第2の態様に係る、第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群と、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群と、第1の発電機を含む発電機群と、コントローラとを含む電源の制御方法において、前記第1の水素貯蔵装置は、前記第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に備えた第1の流体入口と第1の流体出口を有する圧力容器を含む。前記圧力容器は、前記熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料を内部に収容するように配置される。好ましくは、前記熱伝導性ネットワークは、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。前記方法は、前記第1の水素ガス生成器により、水素ガスを生成する工程と、前記第1の水素貯蔵装置により、前記生成された水素ガスを貯蔵する工程と、前記貯蔵された水素ガスを少なくとも部分的に放出する工程であって、前記コントローラにより前記第1の加熱器を制御して前記貯蔵された水素ガスを少なくとも部分的に放出することを必要に応じて含む工程と、前記第1の発電機により、前記放出された水素ガスを用いて電気エネルギーを生成する工程と、を含む。
【0008】
第3の態様は、プロセッサとメモリを備えるコンピュータ装置によって実行されると、コンピュータ装置に第2の態様による方法を実行させる命令をその上に記録した有形の非一時的な(non-transient)コンピュータ読み取り可読な記録媒体を提供するものである。
【0009】
〔発明の詳細な説明〕
〔電源〕
第1の態様に係る、第1の電気出口を有する電源は、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群と、第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手と、を含む。第1の水素貯蔵装置は、第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に備えた第1の流体入口と第1の流体出口を有する圧力容器を含む。圧力容器は、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料を内部に収容するように配置される。第1の流体入口及び/又は第1の流体出口は、それぞれ第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手と流体連通する。好ましくは、熱伝導性ネットワークは、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。
【0010】
このように、この電源は、水素貯蔵材料に貯蔵された水素から得られる、モジュール化及び/又は拡縮可能な(scalable)電力供給源を提供する。特に、水素貯蔵材料に貯蔵された水素を、例えば、第1の加熱器により熱伝導性ネットワークを介して加熱することによって放出することができる。その後に、放出された水素の化学エネルギーを、発電機を介して少なくとも部分的に電気エネルギーに変換することができる。更に、第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手により、電源のモジュール性及び/又は拡縮可能性が提供される。例えば、第1の解除可能な流体入口継手を連結してから再連結することにより、異なる容量、入手可能性及び/又は特性を有する異なる水素ガス生成器を水素貯蔵装置群と連結することができる。例えば、第1の解除可能な流体出口継手を連結してから再連結することにより、異なる容量、効率、入手可能性(availability)及び/又は特性を有する燃料電池及び/又は従来の燃焼発電機などの異なる発電機を、水素貯蔵装置群と連結することができる。このように、電源は、予想される使用量及び/又は需要に応じて、特定の電力出力、例えば、電源のピーク電力出力、総容量及び/又は持続時間のために効率的に構成できる。
【0011】
〔水素貯蔵装置〕
この電源は、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群と、第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手と、を含む。一例では、水素貯蔵装置群は、M(Mは少なくとも1、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の自然数である)個の水素貯蔵装置を含む。このように、例えば、電源の水素貯蔵容量を要求に一致(match)させることができる。一例では、電源は、第1の流体入口及び第1の流体出口をそれぞれ第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手と連結することにより、追加のm(Mは少なくとも1、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の自然数である)個の水素貯蔵装置を含むように配置される。このように、例えば、電源の水素貯蔵容量を増加させて、増大した要求を満たすことができる。逆に、例えば、余剰の水素貯蔵装置を切り離すことにより電源の水素貯蔵容量を減少させて、減少した要求を満たすことができる。即ち、電源の水素貯蔵容量は、例えば、拡大又は縮小できる(scale, for example up or down)。一例では、水素貯蔵装置群は、水素貯蔵装置群の各第1の流体入口をまとめる(manifold)ように配置された入口マニホルド(inlet manifold)を含む。一例では、水素貯蔵装置群は、水素貯蔵装置群の各第1の流体出口をまとめるように配置された出口マニホルド(outlet manifold)を含む。一例では、水素貯蔵装置群の各水素貯蔵装置は、入口マニホルド及び/又は出口マニホルドと個別的に解除可能に連結される。このように、水素の、水素貯蔵装置群への貯蔵及び/又はそこからの放出を更に拡縮及び/又は平衡化することができる(scaled and/or balanced)。例えば、電源の動作中に、その動作を中断せずに、特定の水素貯蔵装置を入口マニホルド及び/又は出口マニホルドから切り離すか又はそれと連結することができる。一例では、水素貯蔵装置群の各水素貯蔵装置は、前述したように弁を用いて入口マニホルド及び/又は出口マニホルドと個別的に弁で連結される。このように、水素の選択された水素貯蔵装置への貯蔵及び/又はそこからの放出は、対応する弁を選択的に開閉することにより制御することができる。
【0012】
この第1の水素貯蔵装置は、第1の流体入口と第1の流体出口を有する圧力容器を含む。第1の流体入口及び/又は第1の流体出口は、それぞれ第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手と流体連通する。圧縮水素ガスを貯蔵するための従来の圧力容器と異なり、この圧力容器は、100bar以下、好ましくは75bar以下、より好ましくは50bar以下、さらに好ましくは25bar以下、最も好ましくは10bar以下の比較的に低い動作圧力に応じて設計される。一例では、第1の水素貯蔵装置は、円筒状であり、皿状に形成された端部(dished end)を有する。動作圧力に少なくとも部分的に依存して、他の適切な形状も知られている。例えば、第1の水素貯蔵装置は、四角柱などの立方体であってよい。このように、水素貯蔵装置群を例えばコンパクトに容易に積み重ねることにより、その物理的な占用面積を減少させ、及び/又は輸送を容易にすることができる。なお、第1の流体入口及び第1の流体出口は、それぞれ、水素の圧力容器への入口及び水素の圧力容器からの出口のために用いられ、例えば、圧力容器の壁を通る貫通孔(perforation)(即ち、開口部(aperture)、通路(passageway)、孔(hole))によって少なくとも部分的に形成される。一例では、第1の流体入口及び第1の流体出口は、それぞれガス入口及びガス出口である。一例では、第1の流体入口及び第1の流体出口は、同じ貫通孔によって及び/又は介して形成される。一例では、圧力容器は、第1のガス入口及び第1のガス出口をそれぞれ含む複数のガス入口及び/又はガス出口を有する。なお、第1の解除可能な流体入口継手と対応する継手を、例えば繰り返し、連結し、切り離すことができる。適切な解除可能な継手(金具(fittings)、接続器(connector)とも呼ばれる)は、プッシュフィット式金具(push-fit fitting)、バヨネット(bayonet)金具、急速接続(quick connect)金具、BS341又はDIN477への円筒接続部、ホース端金具、パイプ端金具、チューブ端金具及びねじ金具を含む。その他の解除可能な継手も知られている。一例では、この電源は、例えば、第1の解除可能な流体入口継手と並置された、熱電対(thermocouple)、サーモウエル(thermowell)、弁、フラッシュバックアレスタ(flashback arrestor)、吸着剤保護フィルタなどのフィルタ、圧力センサー及びマスフローコントローラ(MFC)のうちの1つ以上を含む。弁は、一般的に、水素が容器内に出入り可能な開位置と、容器が密閉された閉位置との間で移動可能である。一例では、弁は、電気的及び/又は空気圧で作動可能である。このように、例えば、コントローラを介して弁を遠隔的に作動させることができる。一例では、MFCは、電気的に作動可能である。このように、例えば、コントローラを介してMFCを遠隔的に作動させて水素の流れを制御することができる。第2の解除可能な流体入口継手は、必要な変更を加えて(mutatis mutandis)、第1の解除可能な流体入口継手に関して記載された通りであってもよい。
【0013】
この圧力容器は、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料を、内部に収容する(receive)ように配置される。
【0014】
水素を圧縮ガス又は液体として貯蔵する代替手段として、特定の金属及び合金は、水素(即ち、水素貯蔵材料)の可逆的な貯蔵及び放出を可能にする。これらの水素貯蔵材料は、サイクル間に水素損失が少なく、及び/又はサイクル間の熱損失(熱効率)が低減されるため(low hydrogen loss during cycling and/or reduced heat loss between cycles (thermal efficiency))、水素貯蔵効率が高く(high hydrogen-storage efficiency)、従来の水素貯蔵方法に比べて優れていると考えられる。特に、水素を固体水素化物として貯蔵することにより、水素を圧縮ガス又は液体として貯蔵する場合よりも大きな体積貯蔵密度を達成することができる。また、水素を圧縮ガス又は液体として貯蔵する場合に比べて、水素を固体水素化物として貯蔵すれば、安全上のリスクが低下する。一例では、水素貯蔵材料は、固体水素化物を含み、及び/又は固体水素化物である。
【0015】
例えば、固相金属又は合金材料は、高密度で水素を吸収し、特定の温度/圧力又は電気化学的条件下で金属水素化物を形成することにより、大量の水素を貯蔵することができ、そしてこれらの条件を変更することにより水素を放出することができる。
【0016】
一般的に、このような貯蔵材料への及びそこからの水素の交換効率は、それらの各々の熱伝達能力によって増強又は阻害される可能性がある。特に、水素化(水素吸収とも呼ばれる)は発熱的である一方、脱水素化(水素脱離とも呼ばれる)は吸熱的である。したがって、このような貯蔵材料内で熱を移動させるか又はこのような貯蔵材料の体積全体にわたって好ましい温度プロファイルを維持することは、このような金属又は合金水素化物水素貯蔵材料において重要な要因になる。一般的な問題として、金属水素化物の結晶構造から水素を放出するには、ある程度のエネルギー、通常、熱を入力する必要がある。金属、金属合金又は他の貯蔵システムの結晶構造内に水素を配置すると、一般的にエネルギー、通常、熱が放出され、水素化可能な合金の結晶構造内に水素化する又は水素原子を配置する高発熱反応が発生する(providing a highly exothermic reaction of hydriding or placing hydrogen atoms within the crystal structure of the hydrideable alloy)。
【0017】
水素貯蔵金属又は合金の水素化から放出された熱を除去することができる。非効果的に熱を除去する場合、水素化処理を減速させるか又は終了させる可能性がある。これは、急速な充填を妨げる深刻な問題となる。急速に充填するとき、水素貯蔵材料が速やかに水素化され、かなりの量の熱が生成される。本明細書に記載された水素貯蔵装置、特に熱伝導性ネットワークは、水素貯蔵合金の水素化に起因する熱を効果的に除去して水素化物材料(hydride material)の急速な充填を容易にする。例えば、US2003/0209149及びAfzalらがInternational Journal of Hydrogen Energy、2017、42(52)、30661-30682に掲載された「金属水素化物による水素貯蔵における熱伝達技術:レビュー」には、既にこの問題の解決手段が報告されている。
【0018】
本明細書に記載された水素貯蔵装置は、水素ガスの急速な充填と排出を可能にするとともに、比較的にコンパクトである。典型的には、熱を加えて水素ガスを排出し、水素の充填中に熱を放出し、かつこの熱を吸収する(例えば、冷却を適用する)必要がある。この水素貯蔵装置は、特に熱伝導性ネットワークを介して急速な加熱及び/又は冷却を可能にし、これは、充填と排出の時間が比較的に短いため、動作中に周囲に浪費される熱が少ないことを意味する。また、この水素貯蔵装置は、非常にターゲットを絞った加熱を可能にすることにより不必要な熱損失及び関連するエネルギーの浪費を回避できる。
【0019】
本発明の装置における水素貯蔵材料は、金属水素化物(metal hydride)である化合物であってよい。典型的には、金属元素は、水素と反応して金属水素化物を形成し、例えば、
Mg+H→MgHである。
【0020】
一般的に、この反応は、水素圧力を高めることにより前進することができる。
【0021】
水素の放出は、水素化物に熱を加えるときに発生する。例えば、水素化マグネシウムの場合、1barの圧力で、MgHは、287℃でMg金属及び水素に分解される。
MgH→Mg+H
【0022】
一例では、水素貯蔵材料は、MgH、NaAlH、LiAlH、LiH、LaNi、TiFeH、水素化パラジウム PdH、LiNH、LiBH及びNaBHから選択される1種以上の金属水素化物を含む。MgH、NaAlH、LiAlH、LiH及び/又はLaNiは好ましい。一例では、水素貯蔵材料は、これらの金属水素化物のうちの2種以上の混合物を含む。これらの異なる金属水素化物は、異なる貯蔵及び/又は放出速度(release rate)を有する可能性がある。したがって、これらの金属水素化物のうちの2種以上の混合物は、例えば異なる条件下での所望の貯蔵及び/又は放出速度のために、及び/又は異なる条件下で比較的により一定の貯蔵及び/又は放出速度を提供するために選択される。一例では、水素貯蔵材料は、触媒及び/又は添加剤(additive)などのドーパント(dopants)を含む。例えば、Ti及び/又はZrを触媒ドーパントとして用いることにより、テトラヒドリドアルミン酸ナトリウムなどの水素貯蔵及び/又は放出速度(kinetic)を向上させることができる。アルカリ金属アラネートが非可逆性の「化学水素化物」として知られていたが、触媒による可逆性により、新しいファミリーの低温水素化物(new family of low-temperature hydrides)が可能になる。例えば、アルカリ金属アラネート複合水素化物(alkali metal alanate-complex hydride)NaAlHは、TiClやチタンアルコキシド(Ti-alkoxide)の触媒をドープした場合には、水素を容易に放出、吸収する。現在、これらの触媒の種類、ドーピング処理及びメカニズムの理解の観点から、これらの触媒の最適化を検討する研究が進められている。一般的に、任意の適切な遷移金属又は希土類金属、例えばTi、Zr、V、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Nb、Ge、Ce、La、Nd、Pd、Pr、Zn、Al、Ag、Ga、In及び/又はCdを触媒として使用することができる。添加剤は、水素貯蔵材料の熱伝達を向上させるためのCを含む。一例では、水素貯蔵材料は、粒子(例えば、粉末状)として提供される。一例では、粒子は、最大で500μm、最大で250μm、最大で100μm又は最大で50μmのD50又はD90を有する微粒子である。一例では、粒子は、少なくとも1μm、少なくとも5μm、少なくとも10μm又は少なくとも25μmのD50又はD10を有する微粒子である。一例では、粒子は、最大で500nm、最大で250nm、最大で100nm又は最大で50nmのD50又はD90を有するナノ粒子である。一例では、粒子は、少なくとも1nm、少なくとも5nm、少なくとも10nm又は少なくとも20nmのD50又はD10を有するナノ粒子である。一例では、粒子は、粒径の異なる粒子の混合物、例えば、微粒子とナノ粒子との混合物とすることにより、二峰性の粒径分布を有する(having a bimodal particle size distribution)。このように、充填効率(packing efficiency)、例えば粒子の密度及び/又は表面積を増加させることにより、水素の貯蔵及び/又は水素の貯蔵速度(rate of storage of hydrogen)をそれぞれ増加させることができる。一例では、例えば、ボールミルなどの摩滅(attrition)で水素貯蔵材料を処理することで、その粒径及び/又はその粒径分布を減少させ、及び/又はドーパント及び/又は添加剤を組み込むことができる。
【0023】
水素を圧縮ガス又は液体として貯蔵する代替手段として、特定の不飽和有機化合物は、水素(即ち、水素貯蔵材料)の可逆的な貯蔵及び放出を可能にする。これらの水素貯蔵材料は、例えば、サイクル間に水素損失が少なく、及び/又はサイクル間の熱損失(熱効率)が低減されるため、水素貯蔵効率が高く、従来の水素貯蔵方法に比べて優れていると考えられる。特に、水素をLHOCとして貯蔵することにより、水素を圧縮ガス又は液体として貯蔵する場合よりも大きな体積貯蔵密度を達成することができる。また、水素を圧縮ガス又は液体として貯蔵する場合に比べて、水素をLOHCとして貯蔵すれば、安全上のリスクが低下する。一例では、水素貯蔵材料は、LOHCを含み、及び/又はLOHCである。
【0024】
例えば、不飽和有機化合物は、高密度で水素を吸収し、特定の温度/圧力の条件下で飽和有機化合物を形成することにより、大量の水素を貯蔵することができ、そしてこれらの条件を変更することにより水素を放出することができる。
【0025】
一般的に、このような貯蔵材料への及びそこからの水素の交換効率は、それらの各々の熱伝達能力によって増強又は阻害される可能性がある。特に、水素化(LOCからLOHCにロードして(load。負荷)、水素を貯蔵する)は、発熱的である一方、脱水素化(LOHCからLOCにアンロードして(unload)、水素を放出する)は吸熱的(endothermic)である。したがって、このような貯蔵材料内で熱を移動させるか又はこのような貯蔵材料の体積全体にわたって好ましい温度プロファイル(temperature profile)を維持することは、このような水素貯蔵材料において決定的な要因になる。
【0026】
熱を非効果的に供給又は除去する場合、水素化及び脱水素化を減速させるか又は終了させる。これは、急速な充填と放出を妨げる深刻な問題となる。急速に充填と放出するとき、それぞれLOC及びLOHCを加熱と冷却するためにかなりの量の熱が必要とされ、特にLOC及びLOHCの熱伝導率が比較的に低いことを考えると、かなりの量の熱を均一に供給する必要がある。本明細書に記載された水素貯蔵装置、特に熱伝導性ネットワークは、水素貯蔵材料を効果的に加熱と冷却して急速な充填と放出を容易にする。
【0027】
本明細書に記載された水素貯蔵装置は、水素ガスの急速な充填と排出を可能にするとともに、比較的にコンパクトである。この水素貯蔵装置は、特に熱伝導性ネットワークを介して急速な加熱と冷却を可能にし、これは、充填と排出の時間が比較的に短いため、動作中に周囲に浪費される熱が少ないことを意味する。また、この水素貯蔵装置は、非常にターゲットを絞った(highly targeted heating)加熱を可能にすることにより、不必要な熱損失及び関連するエネルギーの浪費を回避する。
【0028】
一例では、LOHCは、以下を含み、及び/又は以下である:飽和シクロアルケン、芳香族化合物、複素環式芳香族化合物及び/又はこれらの混合物。なお、LOHCとは、一般的に水素化された(即ち、ロードされて飽和になった)液体有機化合物を指す。LOCとは、一般的に脱水素化された(即ち、アンロードされて不飽和になった)液体有機化合物を指す。しかしながら、実際には、所定の分子名は、所定の文脈において当業者によって理解される正確な意味で、両方を指すために交換可能(interchangeably)に使用できる。したがって、例えば、N-エチルカルバゾール(N-ethylcarbazole)(NEC)は、一般的にLOHCと呼ばれるが、不飽和である。LOHCに対する研究は、最初に、相対的に高い水素容量(6~8wt.%)を有し、かつCOを含まない水素(COx-free hydrogen)を生成するシクロアルカン(cycloalkanes)に焦点を合わせた。複素環式芳香族化合物(又はN-複素環式化合物(N-Heterocycles))も好適である。N-エチルカルバゾール(NEC)が公知のLOHCであるが、多くの他のLOHCも知られている。ジベンジルトルエン(dibenzyltoluene)は、-39℃(融点)から390℃(沸点)までの広い液体範囲と、6.2wt.%の水素貯蔵密度があるため、LOHC材料として最適である。ギ酸は、4.4wt.%の水素容量を有する有望な水素貯蔵材料として提案されている。水素からメタンを製造するなどの他の化学貯蔵オプションと比べて、LOHCを使用すると、比較的に高い重量貯蔵密度が到達でき(約6wt.%)、そして全体的なエネルギー効率が高くなる。
【0029】
一例では、LOHCは、以下を含み、及び/又は以下である:N-エチルカルバゾール(ethylcarbazole)(NEC)、モノベンジルトルエン(monobenzyltoluene)(MBT)、ジベンジルトルエン(DBT)、1,2-ジヒドロ-1,2-アザボリン(AB)、トルエン(TOL)、ナフタレン(NAP)、ベンゼン、フェナントレン(phenanthrene)、ピレン(pyrene)、ピリジン(pyridine)、キノリン(chinoline)、フルオレン(flurene)、カルバゾール(carbazole)、メタノール、ギ酸、フェナジン(phenazine)、アンモニア及び/又はこれらの混合物。LOHCとして報告されているシクロアルカン(Cycloalkanes)は、シクロヘキサン、メチル-シクロヘキサン(methyl-cyclohexane)及びデカリン(decalin)を含む。シクロアルカンの脱水素化は、高度に吸熱的(63~69kJ/mol H2)であり、これは、この処理において比較的に高い温度及び/又は熱の入力が必要とされることを意味する。これらの3つのシクロアルカンのうち、デカリンの脱水素化が最も熱力学的に有利であり、また、メチル-シクロヘキサンは、メチル基が有するため2番目である。Ni、Mo、Pt系触媒は、脱水素化(dehydrogenation)に関して検討されている。しかしながら、コーキング(coking)は、触媒の長期安定性にとって依然として大きな課題である。一般的に、LOHCの水素化及び脱水素化には触媒が必要である。また、炭化水素をN、Oなどのようなヘテロ原子で置換することにより、可逆的な脱水素化/水素化の特性を向上させることができることが実証されている。水素化及び脱水素化に必要な温度は、ヘテロ原子の数が増加するにつれて大幅に低下する。全てのN-複素環式化合物のうち、飽和-不飽和の一対となるドデカヒドロ-N-エチルカルバゾール(12H-NEC)及びNECは、かなり大きな水素含有量(5.8wt.%)を有する有望な水素貯蔵の候補として検討されている。NEC乃至12H-NECの標準的な触媒(standard catalyst)は、Ru及びRh系触媒である。水素化の選択率は、7MPaと130℃~150℃で97%に達することができる。N-複素環式化合物は、シクロアルカンの好ましくない熱力学的特性を最適化することができるが、比較的高コスト、高毒性及び/又は速度障壁(kinetic barriers)などの問題がある。水素貯蔵材料としてギ酸を用いることが報告されている。水素を含まない一酸化炭素は、非常に広い圧力範囲(1~600bar)で生成されている。水溶性ルテニウム触媒を用いた均質型触媒系は、水溶液中でHCOOHをHとCOに選択的に分解する。この触媒系は、ギ酸を分解する際の他の触媒の場合の限界(limitations)(例えば、低い安定性、制限された触媒寿命、COの形成(poor stability, limited catalytic lifetimes, formation of CO))を克服し、ギ酸を実現可能な水素貯蔵材料にする。この分解の共生成物である二酸化炭素は、第2の工程で水素化されてギ酸を合成することにより、水素ベクターとして使用できる。COの触媒水素化が長い間検討されており、効率的な手順が開発されている。ギ酸は、室温及び大気圧で53gL-1の水素を含む。純粋なギ酸は、重量で4.3wt.%の水素を貯蔵している。純粋なギ酸は、69℃の引火点を有する液体である。しかしながら、85%のギ酸は、可燃性ではない。アンモニア(NH)は、適当な触媒改質器(catalytic reformer)においてHを放出する。アンモニアは、穏やかな加圧及び極低温の制約(mild pressurization and cryogenic constraints)を有する液体として、高い水素貯蔵密度を示している。また、水と混合した際に、室温と室圧下で液体として保存することもできる。アンモニアは、世界中で2番目に一般的に製造されている化学薬品であり、アンモニアを製造、輸送、分配するための大きな基礎施設が存在する。アンモニアを改質して、有害な廃物なしに水素を生成することができる。
【0030】
使用時、水素を貯蔵する過程において、以下に記載されるように、水素を、例えば水素ガス生成器から、第1の流体入口を通って第1の水素貯蔵装置の第1の容器に収容することができる。好ましくは、第1の水素貯蔵装置は、最初に完全排出状態(fully discharged state)である。水素が水素貯蔵材料に接触すると、前述したように、水素貯蔵の発熱吸収(即ち、水素化)反応により、水素貯蔵材料の温度が上昇する。発熱反応からの熱を熱伝導性ネットワークを介して伝導することにより、温度の上昇を減衰させる。必要に応じて、第1の冷却器を動作させて温度の上昇を更に減衰させた後、設定された低温閾値(例えば、20℃)に達すると、その動作を停止させる。例えば、第1の容器内の圧力が所定の動作圧力(例えば、10bar)に達し、例えばこの所定の動作圧力で安定するときに、第1の流体入口と並置された弁を開いて水素を導入させ、そして閉じて水素を含有させる。水素貯蔵材料の種類によって、吸収速度(kinetics of absorption)が異なる可能性がある。このように水素の貯蔵工程がそれに応じて変更される可能性がある。例えば、水素の貯蔵を加速するために、水素の吸収は、より高い温度、例えば、少なくとも100℃で水素化の反応速度(kinetics of hydriding)に有利に働くことが好ましい場合がある。
【0031】
使用時、水素を放出する(即ち、脱離)過程において、貯蔵とは逆の処理が発生する。第1の流体出口と並置された(inline with)弁を開いて、水素を通過させて、水素が例えば発電機から出ることを可能にする。前述したように、水素が水素貯蔵材料から放出されるため、吸熱脱離(endothermic desorption)により温度が低下する。第1の加熱器は、熱電対を使用した熱伝導性ネットワークの温度測定によって活性化(activate)されるため、熱伝導性ネットワークを加熱し、ひいては水素貯蔵材料を加熱する。設定された高温閾値(例えば、80℃)に達すると、第1の加熱器の動作を停止させることができる。その後に、該圧力が所定の圧力(例えば1bar)に達し、例えばこの所定の圧力で安定すると、弁を閉じることができる。
【0032】
一例では、第1の水素貯蔵装置は、静的な第1の水素貯蔵装置を含み、及び/又は静的な第1の水素貯蔵装置である(first hydrogen storage device comprises and/or is a static first hydrogen storage device)。このような静的な装置は、所定の体積のLOHC(例えば、最大で第1の容器の開放体積に相当)を、第1の流体入口を通って第1の容器内に収容し、かつ熱伝導性ネットワークを介して加熱することにより、第1の流体出口を通って第1の容器から出る水素ガスを放出する。LOHCから全ての水素が放出されると、液体有機キャリアLOC(即ち、アンロードされるLOHC)のみが第1の容器内に残り、かつ(例えば、再ロードのために)第1の流体出口を通って排出されてもよく、第1の容器内で再ロードされてもよい。代替的に、このような静的な装置は、所定の体積の液体有機キャリアLOCを水素ガスと共に、第1の流体入口を通って第1の容器内に収容し、かつ熱伝導性ネットワークを介して加熱と冷却することにより、水素ガスをLOC中にLOHCとして貯蔵する。LOCに十分にロードすると、ロード後のLOHCのみが第1の容器内に残る。したがって、静的な装置では、水素を放出(又はそれぞれ充填)する間に、LOHC(又はLOC)が第1の容器を流れないことを理解しておくべきである。一例では、静的な第1の水素貯蔵装置は、内部にLOHC(又はLOC)を混合又は撹拌するための混合機又は撹拌機を含むことにより、脱水素化(又は水素化)の効率を向上させる。
【0033】
これに対して、一例では、第1の水素貯蔵装置は、動的な(フロースルー(flow-through)とも呼ばれる)第1の水素貯蔵装置を含み、及び/又は動的な第1の水素貯蔵装置である。このような動的な装置は、例えば、LOHCの流れを、例えば第1の流体入口を通って第1の容器内に連続的に収容し、かつ熱伝導性ネットワークを介して加熱することにより、LOC(即ち、アンロードされるLOHC)と共に第1の流体出口を通って第1の容器から出る水素ガスを放出する。代替的に、このような動的な装置は、LOCの圧流を水素ガスの流れと共に、第1の容器内に収容し、かつ熱伝導性ネットワークを介して加熱と冷却をすることにより、第1の流体出口を通って第1の容器から出る水素ガスを、ロードされるLOC中にLOHCとして貯蔵する。したがって、動的な装置では、水素を放出(又はそれぞれ充填)する間に、LOHC(又はLOC)が第1の容器を流れることに注意すべきである。一例では、第1の水素貯蔵装置は、水素貯蔵材料を第1の容器に流すように配置されたポンプを含む。
【0034】
一例では、第1の水素貯蔵装置は、反応器を含み、及び/又は反応器として知られている。
【0035】
圧力容器は、第1の加熱器と熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に含む。一例では、熱伝導性ネットワークの表面は、第1の加熱器と熱的に接触している(したがって熱的に連結される)。一例では、第1の加熱器は、少なくとも部分的に、熱伝導性ネットワークと一体的に形成され、及び/又はその内部に形成される。例えば、第1の加熱器は、熱伝導性ネットワーク内(即ち、内部)に埋め込まれてよい。
【0036】
熱伝導性ネットワークは、任意の適切な熱伝導性材料、例えば、アルミニウム、銅などの金属、銅の黄銅合金又は青銅合金などのこれらの金属の合金、及び/又はステンレス鋼で形成されてよい。また、好ましい材料は、熱伝導性ネットワークの構造的完全性(structural integrity)を維持するのに十分な強度を有しながら、水素及び/又は水素貯蔵材料と反応せず、及び/又は、水素及び/又は水素貯蔵材料によって脆化(embrittle)されない。一例では、熱伝導性ネットワークは、水素との反応及び/又は水素による脆化を抑制するためのコーティングを含む。
【0037】
一例では、熱伝導性ネットワークは、2次元及び/又は3次元(即ち、互いに直交する次元)の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。なお、このような形状は、複数のノード(node)を有し、これらのノードの間に熱伝導性アーム(arm)(即ち、略長尺部材)を有し、アームの間に空隙(void)(即ち、隙間、空間)が形成されている。このような形状、特にフラクタル形状は、体積に対する表面積の比が比較的に大きいため、水素貯蔵材料との間で特に効果的に熱を伝達することができる。一例として、フラクタル形状は、ゴスパー島(Gosper Island)、3D IH-フラクタル、2次コッホ島(Quadratic Koch Island)、2次コッホ面(Quadratic Koch surface)、フォンコッホ面(Von Koch surface)、コッホ雪片(Koch Snowflake)、シェルピンスキーカーペット(Sierpinski carpet)、シェルピンスキー四面体(Sierpinski tetrahedron)、マンデルボックス(Mandelbox)、マンデルバルブ(Mandelbulb)、十二面体フラクタル、二十面体フラクタル、八面体フラクタル、メンガー(Menger)のスポンジ及びエルサレムキューブからなる群から選択される。ゴスパー島などの特定のフラクタル形状により、複数の独立した繰り返し単位ブロックを作成してから、共にテッセレーション(tessellation)で組み立てる(即ち、重複や隙間なしで共に組み立てる)ことができる。これにより、水素貯蔵装置を通って熱伝導性ネットワークに複数のチャネル(channel)を設置することができることにより、各チャネルは、表面積が大きく、同じ構造であるが、繰り返し単位の間に無駄な空間を残さない。ジャイロイド(gyroid)は、第1の態様の範囲内にあるリドノイド(lidnoid)に似ているように、無限に連結した三重周期極小曲面である。ジャイロイドは、空間を、水素貯蔵材料が流れることができる、2つの反対方向に、合同(congruent)の迷路状流路(labyrinths of passages)に分ける。一例では、格子形状の有効密度(格子体積比とも呼ばれる)は、1次元、2次元又は3次元(即ち、互いに直交する次元)で均一である。一例では、格子形状の有効密度は、1次元、2次元又は3次元(即ち、互いに直交する次元)で不均一である。なお、特定の次元での均一な有効密度は、この特定の次元で、格子形状のアーム間で一定の空隙率(constant void fraction)を提供する。逆に、特定の次元での不均一な有効密度は、この特定の次元で、格子形状のアーム間で一定でない空隙率(non-constant void fraction)を提供する。有効密度が高いほど、熱伝導性材料の含有量が多いため、熱伝導が速くなる。例えば、有効密度は、特定の寸法、例えば、径方向に増減してよい。このように、熱伝導性ネットワークは、熱伝導性ネットワークを介する水素貯蔵材料へ及び/又は水素貯蔵材料からの熱伝達を向上させ、例えば最適化するように、特定の圧力容器形状に設計、例えば最適化されてよい。一例では、格子形状の有効密度は、第1の次元、例えば軸方向に均一であり、かつ互いに直交する第2の次元及び第3の次元、例えば、径方向に不均一である。格子形状、例えば3次元ケージのような正方格子形状の体積に対する表面積の比は、同じ体積のフラクタル形状に比べて相対的に低い。しかし、格子形状の形成及び/又は製造は、比較的に複雑でなく、及び/又は費用が少ないため、好ましい。一例では、3Dプリンティング(即ち、付加製造)、例えば選択的レーザ溶解(selective laser melting)(SLM)により、少なくとも部分的に熱伝導性ネットワークを形成することにより、例えば、内部に空隙を有する3次元の複雑な形状を形成することができる。一例では、熱伝導性ネットワークは、鋳造と、射出成形、押出成形などの成形法により少なくとも部分的に形成される。その他の付加製造処理も知られている。一例では、熱伝導性ネットワークは、製造、及び/又はフライス加工(milling)、旋盤加工(turning)、ドリル加工などの機械加工により少なくとも部分的に形成される。その他の除去製造処理(subtractive manufacturing processes)も知られている。
【0038】
この電源は、第1の加熱器を含む加熱器群(set of heaters)を必要に応じて含む。一例では、この電源は、第1の加熱器を含む加熱器群を含み、熱伝導性ネットワークは、第1の加熱器と熱的に連結されている。第1の加熱器を加熱することにより、熱を、第1の加熱器と熱的に連結された熱伝導性ネットワークに伝達する。これにより、熱を、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料に伝達する。このように、第1の加熱器によって熱伝導性ネットワークを介して水素貯蔵材料を加熱することにより、水素を水素貯蔵材料から放出することができる。一例では、第1の加熱器は、圧力容器の内部に配置される。一例では、第1の加熱器は、圧力容器の外部に配置される。第1の加熱器を圧力容器の外部に配置することにより、特定の方面で装置の組み立てを容易にし、電気配線のアクセスをより簡単にすることができる。一例では、第1の加熱器は、熱電加熱器及び/又はジュール加熱器及び/又は還流型加熱器、例えば還流液体を含み、及び/又は、熱電加熱器及び/又はジュール加熱器及び/又は還流型加熱器、例えば還流液体である。例えば、通路を含む第1の容器は、その中及び/又はその上にジュール加熱器及び還流型加熱器を交換可能に収容するように配置される。例えば、第1の容器は、貫通路を含み、貫通路の端部を通って内部に挿入されたカートリッジヒーター(cartridge heater)を収容するように配置され、この貫通路の対向端が例えば絶縁プラグによって閉じられてよい。代替的に、カートリッジヒーター及びプラグを取り外し、代わりに流体継手を端部に取り付けることにより、熱伝導性ネットワークを加熱するための燃料電池からの加熱された冷却剤(即ち、加熱流体)などの還流液体を、流体継手を通って圧送することができる。このように、熱伝導性ネットワークを加熱及び/又は冷却するための柔軟性が提供される。一例では、第1の水素貯蔵装置は、通路を含む。第1の水素貯蔵装置は、通路内でジュール加熱器を収容する第1の構成と、通路を通る液体の流れを収容する第2の構成と、になるように配置可能である。その他の加熱器も知られている。一例では、電源は、例えば、比例・積分・微分(PID)制御を介して第1の加熱器に接続された熱電対を含む。このように、第1の加熱器の温度を制御することができる。一例では、第1の加熱器は、カートリッジヒーター又は挿入型加熱器を含み、及び/又はカートリッジヒーター又は挿入型加熱器である。一般的に、カートリッジヒーターは、電気抵抗線を含む長尺状円筒であり、例えば電気抵抗線が酸化マグネシウムに埋め込まれる。適切なカートリッジヒーター及び挿入型加熱器は、ワトロー(Watlow)社(MO、USA)から入手可能である。一例では、第1の加熱器は、熱伝導性ネットワーク内に形成され及び/又は熱伝導性ネットワーにより設置された通路に挿入される。一例では、第1の加熱器は、熱伝導性ネットワークに組み込まれ、例えば熱伝導性ネットワークと一体的に形成されている。このように、熱伝導性ネットワークの加熱効率が向上する。一例では、電源は、第1の加熱器を含むN(Nは少なくとも1、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の自然数である)個の加熱器を含む。このN個の加熱器は、第1の加熱器に関して説明した通りであり得る。一例では、電源は、M個の水素貯蔵装置及びN個の加熱器を含む(M及びNは少なくとも1の自然数であり、M=N、例えば、M=N=1、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上である)。一例では、電源は、第1の加熱器に電力を供給するために構成された電池、好ましくは充電式電池、例えばリチウムイオン電池を含む。充電式電池は、後述するように、水素ガス生成器群に供給される電力を使用して再充電することができる。
【0039】
一例では、電源は、第1の加熱器を含む第1の加熱器/冷却器を含む加熱器群を含む加熱器/冷却器群を含む。第1の加熱器/冷却器を冷却することにより、熱を、この第1の加熱器/冷却器と熱的に連結された熱伝導性ネットワークから伝達する。これにより、熱を、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料から伝達する。このように、第1の加熱器/冷却器によって熱伝導性ネットワークを介して水素貯蔵材料を冷却することにより、水素を水素貯蔵材料に貯蔵することができる。換言すれば、第1の加熱器/冷却器により、空間効率の良い方法で、水素貯蔵時に水素貯蔵材料から熱を除去することができると共に、水素放出時に水素貯蔵材料に熱を供給することができる。一例では、第1の加熱器/冷却器は、圧力容器の内部に配置される。一例では、第1の加熱器/冷却器は、圧力容器の外部に配置される。第1の加熱器/冷却器を圧力容器の外部に配置することにより、特定の方面で装置の組み立てを容易にし、電気配線のアクセス(access for electrical wiring)をより簡単にすることができる。熱電加熱器及び/又は冷却器素子を非常に緻密に(即ち、正確に、精密に、及び/又は応答可能に)制御することにより、高度な正確性、精度及び/又は短い応答時間を有する制御が提供される。第1の加熱器/冷却器の加熱器は、第1の加熱器に関して上述した通りであってよい。一例では、第1の加熱器/冷却器の冷却器は、ファンによって推進される空気又はポンプによって推進される冷却流体(例えば水)による能動冷却を必要に応じて備えるヒートシンクを含み、及び/又はこのようなヒートシンクである。一例では、第1の加熱器/冷却器は、熱電冷却及び加熱を利用したペルチェ素子又はその他の素子を含み、及び/又はこのような素子である。この種類の素子は、一般的に、ペルチェ(Peltier)ヒートポンプ、固体冷凍機、又は熱電冷却器(TEC)と呼ばれている。熱電加熱器及び冷却器素子は、必要に応じた能動冷却(例えば、ファンによって推進される空気による能動冷却又はポンプによって推進される冷却流体(例えば水)による能動冷却)を備えるヒートシンクと併用されてよい。熱伝導性ネットワークと熱的に連結されていない熱電素子側の熱を加えるか又は除去することより、熱電素子が熱伝導性ネットワークを加熱と冷却する能力を向上させる。一例では、第1の加熱器/冷却器(例えば、熱電加熱器及び冷却器)は、熱伝導性ネットワークと熱的に接触している。両者が熱的に接触するため、熱を一方から他方に効果的に渡すことができる。熱をどちらの方向に渡すことができ、熱伝導性ネットワークを加熱してもよいし、冷却してもよい。加熱器/冷却器モジュールと熱伝導性ネットワークとの接触は、直接物理的接触でなくてもよい。いくつかの実施形態では、圧力容器の壁などの介在物がある。このような実施形態では、介在物は、加熱器/冷却器モジュールと熱伝導性ネットワークとの間の良い熱的接触を可能にし続ける必要があり、このように、熱を一方から他方へ効果的に渡すことができる。適切な熱電加熱器及び/又は冷却器素子は、当業者に知られており、CUI社(又はUSA)などのほとんどの電子機器供給業者から商業的に入手可能である。一例では、水素貯蔵装置は、ペルチェ加熱器/冷却器組立体を構成するように基台上に1つ以上の熱電加熱器及び/又は冷却器を含み、熱伝導性ネットワークは、ペルチェ加熱器/冷却器組立体と熱的に連結されている(例えば、取り付けられている)。例えば、熱伝導性ネットワークを加熱器/冷却器組立体に3D印刷してよい。必要に応じて、例えば、適切な量の圧縮を印加することにより、発泡体(foam)(例えば、後述する金属発泡体(metal foam))を熱伝導性ネットワークに取り付けてよい。代替的に、発泡体は、物理的な結合、例えば、熱伝導性ネットワークと発泡体とをはんだ付け、ろう付け(brazing)及び/又は溶接するにより、取り付けられてよい。このような配置において、ほとんどのはんだ及び充填材に対して、高い熱伝導率を有することが好ましい。
【0040】
一例では、水素貯蔵装置は、熱伝導性ネットワークに取り付けられた(即ち、熱的に連結され、熱的に接触する)熱伝導発泡体、例えば金属発泡体を含む。本発明者らは、このような発泡体が水素貯蔵材料との間で熱伝達を補助(aid)することを見出した。このような発泡体は、高い内部表面積を有することが知られている。一例では、発泡体は、連続気泡発泡体(open-celled foam)、好ましくは連続気泡金属発泡体(金属スポンジとも呼ばれる)を含み、及び/又はこのような発泡体である。連続気泡金属発泡体は、一般的に鋳造法(foundry)又は粉末冶金法(powder metallurgy)により製造される。この粉末法では、「空間ホルダー」(space holders)が使用され、これらが細孔空間及びチャネルを占める。射出成形法では、発泡体が典型的に連続気泡ポリウレタン発泡体骨格で鋳造される。本発明者らは、水素貯蔵材料を発泡体内の空間(即ち、空隙(void)、ルーメン(lumen)、細孔(pore)、気泡(cell))に配置することができ、水素貯蔵材料が水素を貯蔵と放出する能力を保持するとともに、発泡体の大きな表面積によってもたらされる熱伝達の速度の向上の利点を有することを見出した。なお、発泡体の細孔径(即ち、気泡のサイズ)は、水素貯蔵材料、例えばその粒子のサイズより大きい。一例では、発泡体の細孔径と粒径との比は、少なくとも5:1、例えば少なくとも10:1、例えば20:1であり、これらのサイズ(即ち、発泡体の細孔径及び粒径)は、1次元、例えば直径で測定されたものである。一例では、発泡体は、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、ニッケル又は亜鉛(又はこれらの金属を含む組み合わせ合金)で形成された金属発泡体、好ましくは連続気泡金属発泡体を含み、及び/又はこのような発泡体である。特に、アルミニウム発泡体は好ましい。熱伝導性ネットワークは、ネットワーク内の空間に金属発泡体を含有することが好ましい。金属発泡体内の空隙には水素貯蔵材料が含まれている。フラクタルネットワーク内の金属発泡体は、熱電加熱器/冷却器及び水素貯蔵材料との間での優れた熱伝達を提供することがわかっている。
【0041】
一例では、圧力容器がそれと及び/又はその上に密閉連結された蓋(例えば、圧力容器の壁のアクセスハッチ(access hatch)又は開口部などのためのカバー又はブランキングプレート(blanking plate)とも呼ばれる)を含むことにより、熱伝導性ネットワークの周囲に密閉された圧力容器を提供する。圧力容器に蓋を密閉連結する前に、水素貯蔵材料を一般的に粉末状に添加することが有利である。例えば、水素貯蔵材料が粉末状である場合、この粉末を、熱伝導性ネットワークのアーム間に注ぎ、必要に応じて発泡体に注いで、圧力容器を部分的に(即ち、空隙の少なくとも25体積%、好ましくは少なくとも35体積%、より好ましくは少なくとも45体積%)、大部分に(即ち、空隙の少なくとも50体積%、好ましくは少なくとも60体積%、より好ましくは少なくとも70体積%、最も好ましくは少なくとも80体積%)、実質的に(即ち、空隙の少なくとも90体積%、好ましくは少なくとも95体積%、より好ましくは少なくとも97.5体積%)及び/又は完全に充填する。これらの空隙を粉末で実質的に充填することにより、水素貯蔵容量が増大する。逆に、これらの空隙を粉末で部分的に充填することにより、熱伝導性ネットワークとの熱伝達を向上させることができる。この充填は、一般的に、圧力容器の蓋を密閉する前に、アルゴン又は他の不活性ガスなどの不活性雰囲気環境で実施できる。製造の規模によって、この充填をグローブボックス(glove box)内で実施できる。粉末が熱伝導性ネットワーク及び/又は発泡体に浸透することを保証するために、わずかな撹拌、例えば振動は有利である。一例では、水素貯蔵装置は、圧力容器及び/又は熱伝導性ネットワークに機械的に連結され、かつ圧力容器及び/又は熱伝導性ネットワークを揺れ、例えば振動させることで、水素貯蔵材料で圧力容器を充填する効率を向上させるように配置された撹拌機、例えば振動器を含む。
【0042】
使用時、水素を貯蔵する過程において、以下に記載されるように、水素を、例えば水素ガス生成器から、第1の解除可能な流体入口継手及び第1の流体入口を通って第1の水素貯蔵装置の圧力容器に収容することができる。好ましくは、第1の水素貯蔵装置は、最初に完全排出状態である。水素が水素貯蔵材料に接触すると、前述したように、水素貯蔵の発熱吸収(即ち、水素化)反応により、水素貯蔵材料の温度が上昇する。発熱反応からの熱を、熱伝導性ネットワークを介して伝導することにより、温度の上昇を減衰(attenuate)させる。必要に応じて、第1の冷却器を動作させて温度の上昇を更に減衰させた後、設定された低温閾値(例えば、20℃)に達すると、その動作を停止させる。例えば、圧力容器内の圧力が所定の動作圧力(例えば、10bar)に達し、例えばこの所定の動作圧力で安定するときに、第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の流体入口と並置された弁を開いて水素を導入させ、そして閉じて水素を含有させる。水素貯蔵材料の種類によって、吸収の動力学が異なる可能性があり、このように水素の貯蔵工程がそれに応じて変更される可能性がある。例えば、水素の貯蔵を加速するために、水素の吸収は、より高い温度、例えば、少なくとも100℃で水素化の反応速度に有利に働くことが好ましい場合がある。
【0043】
使用時、水素を放出する(即ち、脱離(desorption))過程において、貯蔵とは逆の処理が発生する。第1の解除可能な流体出口継手及び/又は第1の流体出口と並置された弁を開いて、水素を通過させて例えば発電機から出すことを可能にする。前述したように、水素が水素貯蔵材料から放出されるため、吸熱脱離(endothermic desorption)により温度が低下する。第1の加熱器は、熱電対を使用した熱伝導性ネットワークの温度測定によって活性化されるため、熱伝導性ネットワークを加熱し、ひいては水素貯蔵材料を加熱する。設定された高温閾値(例えば、80℃)に達すると、第1の加熱器の動作を停止させることができる。その後に、該圧力が所定の圧力(例えば1bar)に達し、例えばこの所定の圧力で安定すると、弁を閉じることができる。
【0044】
〔相変化材料〕
一例では、第1の水素貯蔵装置は、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する相変化材料(phase change material)(PCM)を含む。このように、水素貯蔵時に熱を生じるのはPCMであってよい。PCMは、融解熱が高く、そして溶融及び凝固などの相変化温度で相が変化すると、大量のエネルギーを貯蔵及び/又は放出することができる材料である。PCMは、潜熱蓄熱(LHS)単位として分類できる。潜熱蓄熱は、液固、固液、固気及び液気の相変化により実現できる。しかしながら、一般的に、PCMに対して、固液、液固の相変化のみが実用的である。一例では、PCMは、固液(及び液固)PCMである。一例では、第1の水素貯蔵装置は、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する相変化材料(PCM)を含む。このように、水素貯蔵時に水素貯蔵材料が生じる熱の少なくとも一部をPCMに貯蔵してから放出して、少なくとも部分的に水素を水素貯蔵材料から放出することができる。
【0045】
熱的負荷時(loading)の固液PCMの典型的な温度プロファイルが考えられる。まず、温度T以下では、PCMは、顕熱蓄熱(sensible heat storage)(SHS)材料として動作し、PCMが吸熱するにつれてPCMの温度が上昇する。しかしながら、従来のSHS材料とは異なり、PCMは、相が変化する相変化温度T(即ち、溶融温度)に達すると、ほぼ一定の温度で大量の熱を吸収する。PCMは、全てのPCMが液相に変換されるまで、温度の著しい上昇を伴わずに熱を吸収し続ける。液体材料の周囲温度が低下すると、PCMが固化し、貯蔵された潜熱を放出する。このように、PCMは、水、れんが、岩石などの従来の蓄熱材料に比べて、単位体積あたり5~14倍程度の熱を貯蔵することができる。
【0046】
一例では、PCMは、有機PCM、無機PCM、共晶PCM、吸湿PCM、固固(solid-solid)PCM及び熱合成物のうちの少なくとも1つを含む。PCMを選択する場合、相変化温度が所望の動作温度範囲にあり、単位体積あたりの融解潜熱が大きく、比熱が大きく、密度が高く、熱伝導率が高く、相変換時の体積変化が小さく、動作温度で蒸気圧が小さく、一致溶融し(congruent melting)、液相の過冷却(super cooling)を避けるために核生成速度が速く、結晶成長速度が速く、化学的に安定し、相変化が可逆的であり、相変化による劣化が生じせず、腐食せず、毒性がなく、不燃性があり、コストが低く、及び/又は入手可能であるという特性の1つ以上が望ましい。
【0047】
有機PCMは、例えば、パラフィン(C2n+2)、炭水化物及び脂質由来材料を含む。有機PCMの有益な特性は、過冷却をあまり伴わずに凍結し、一致溶融し(melting congruently)、自己核形成(self-nucleation)し、従来の構造材料と適合性があり、偏析(segregation)が無いかほとんど無く、化学的に安定し、融解熱が大きく、安全で、非反応性及び/又はリサイクル性があるという特性を含む。また、再生可能資源から炭水化物類及び脂質類のPCMを製造することができる。しかしながら、有機PCMは、固体熱伝導率が低く、凍結サイクル中に高い熱伝達速度、低い体積潜熱蓄熱容量及び/又は低い可燃性が要求される場合がある。信頼性の高い相変化点を得るために、メーカーは、典型的に、本質的にパラフィン混合物であり、かつ完全にオイルで精製された工業用のパラフィンを提供する。
【0048】
無機PCMは、例えば、塩水和物(MO)を含む。無機PCMの有益な特性は、体積潜熱蓄熱容量が大きく、入手可能で、コストが低く、融点が鮮明で、熱伝導性が高く、融解熱が大きく、及び/又は不燃性があるという特性を含む。しかしながら、無機PCMは、体積変化が大きく、固液遷移(solid-liquid transition)には過冷却及び/又は核形成剤(nucleating agent)が必要になる場合がある。
【0049】
例えば、相変化温度が-9℃~90℃の範囲である有機及び無機のPCMは、ルビサームテクノロジーズ社(ベルリン、ドイツ)から入手可能である。これらのPCMの蓄熱容量は、典型的には150kJ/kg~290kJ/kgである。
【0050】
共晶PCMは、例えば、c-無機化合物、無機-無機化合物(c-inorganic and inorganic-inorganic compounds)を含む。共晶PCMの有益な特性は、有機PCMに比べて、融点が鋭く(sharp)、及び/又は体積貯蔵密度が向上するという特性を含む。吸湿PCMは、例えば、水を吸収と放出することができるウール絶縁仕上げ(wool insulation)、土/粘土状仕上げなどの自然な建材を含む。固固PCMは、大量の熱の吸収と放出を伴う固相/固相遷移(solid/solid phase transitions)を起こし、固液PCMと同程度の潜熱を有する。核形成は、過冷却を防止するために必要ではない場合がある。現在、固固PCMの温度範囲は、相変化温度が25℃~180℃の範囲で、利用可能である。
【0051】
一例では、使用時、PCMの相変化温度は、水素貯蔵材料の脱離温度に対応する。例えば、水和塩S58(PCM Products Ltd、UKから入手可能)は、ランタンニッケル(lanthanum nickel)(LaNi)の脱離温度(desorption temperature)60℃に対応する相変化温度58℃を有する。
【0052】
一例では、相変化温度は、水素貯蔵材料の脱離温度の20℃以内であり、好ましくは10℃以内であり、より好ましくは5℃である。一例として、相変化温度は、水素貯蔵材料の脱離温度の20℃以下であり、好ましくは10℃以下であり、より好ましくは5℃以下である。このように、ヒステリシスが低減されるため、PCMによる熱の貯蔵と放出の効率が向上する。
【0053】
一例として、PCMの蓄熱容量は、100kJ/kg~1000kJ/kg、好ましくは150kJ/kg~500kJ/kg、より好ましくは200kJ/kg~300kJ/kgの範囲内であり、例えば230kJ/kgである。一般的には、より高い蓄熱容量が好ましい。しかしながら、PCMの第1の相変化温度は、選択時の判定要因となり、候補PCMを制限する場合がある。
【0054】
一例では、PCMは、カプセル化されたPCMを含む。PCMのカプセル化は、固液相転移(solid - liquid phase transformations)を行うPCMに要求される場合がある。カプセル化(encapsulation)の例は、マクロカプセル化、マイクロカプセル化、分子カプセル化(Molecular-encapsulation)を含む。大容量格納を伴うマクロカプセル化は、熱伝導率の低いPCMには不適切である可能性がある。これは、このようなPCMがマクロカプセル化のエッジで固化する傾向があり、その結果、効果的な熱伝達を妨げるためである。マイクロカプセル化により、一般的に、例えば、微視的なサイズのPCMを保護コーティングでコーティングすることにより、PCMを構造材料に組み込むことができる。分子カプセル化により、高分子化合物中のPCM濃度を非常に高くすることができる。一例では、カプセル化されたPCMは、セルに分割される。セルは、静落差を低減するように配置されてよい。セルの壁により、熱を効果的に伝達し、水が壁を介して通過することを制限し、漏れ及び/又は腐食に耐えることができ、及び/又はPCMに化学的に相溶することができる。セル壁材の例は、例えば、ステンレス鋼、ポリプロピレン及びポリオレフィンを含む。一例では、PCMは、PCMの熱伝導率を向上させるために配置された添加剤を含む。いくつかのPCM、例えばいくつかの有機PCMは、融解熱が大きく、熱伝導率が低い可能性がある。PCM内に添加剤を含有させることにより、PCMの熱伝導率を向上させ、例えばPCMの吸熱を促進することができる。添加物は、例えば、熱伝導率の高い粒子、繊維又はワイヤーを含んでもよい。
【0055】
〔発電機〕
一例では、電源は、水素ガスを用いて電気を生成するように構成され、かつ燃料電池と熱機関を含む発電機とからなる群(set)から選択される第1の発電機を含む発電機群、第1の解除可能な流体出口継手と連結可能な第2の解除可能な流体入口継手、及び/又は第1の電気出口と連結可能な第1の解除可能な電気出口継手を含む。第1の発電機は、第2の解除可能な流体入口継手と流体連通する第2の流体入口を含む。
【0056】
このように、水素貯蔵材料から放出された水素ガスを燃料として発電機群により電力を生成することができる。なお、発電機群は、各解除可能な流体継手を介して水素貯蔵装置群に連結されている。発電機群が水素貯蔵装置群と解除可能に連結されるため、前述したように、発電機群に関してモジュール性及び/又は拡縮可能性が提供される。第2の解除可能な流体入口継手は、必要な変更を加えて、第1の解除可能な流体入口継手に関して記載された通りであり得る。適切な解除可能な電気出口継手(接続器とも呼ばれる)は、プラグ型とソケット型の接続器を含む。
【0057】
一例では、第1の発電機は、熱機関を含み、例えば、水素を燃焼させるように配置された内燃機関と、内燃機関によって駆動される発電機とを含む発電機である。その他の発電機及び/又は熱機関も知られている。
【0058】
一例では、第1の発電機は、固体高分子形燃料電池PEMFC、アルカリ型燃料電池AFC及びリン酸型燃料電池PAFCからなる群から選択される燃料電池である。このように、部品を移動させずに、コンパクトに、比較的に低い温度で及び/又は効果的に電力を生成することができる。高分子電解質膜(polymer electrolyte membrane)(PEM)燃料電池とも呼ばれるPEMFCは、一般的に、電極、電解質、触媒及びガス拡散層を含む膜電極接合体(membrane electrode assembly)(MEA)で構成される。典型的には、触媒インク、カーボン、電極が固体電解質上に堆積され、カーボン紙が、電池の内部を保護するためにいずれかの側でホットプレスされ、電極としても機能する。PEMFCの基本部分は、電解質、触媒及び反応物質が混合して電池反応が生じる三相界面(triple phase boundary)(TPB)である。この膜は、導電性であってはならないため、半反応が混ざらない。一般的に、100℃を超える動作温度が望ましいため、水の副産物が蒸気になり、水管理がPEMFC設計でそれほど重要ではなくなる。適切なPEMFC、例えば、FCgen及びFCvelocityシリーズは、バラード・パワー・システムズ社(バーナビー、カナダ)から入手可能であり、例えば、Aerostacks及びHシリーズは、ホライゾンフューエルセルテクノロジー社(シンガポール)から入手可能である。AFC(ベーコン燃料電池(Bacon fuel cells)とも呼ばれる)は、製造上に安価で、最大70%の効率がある。PAFCは、液状リン酸を電解質として使用し、CO耐性を有し、最大70%の効率がある。典型的には、PAFCが150~200℃で動作するため、排出された蒸気が空気及び水の加熱に用いることができる。適切なPAFCは、ドーサン燃料電池(Doosan Fuel Cell)アメリカ社(コネチカット州、USA)及び富士電機株式会社(東京、日本)から入手可能である。
【0059】
一例では、電源は、水素ガスを生成するように構成された第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群、第3の解除可能な流体入口継手、及び/又は第1の解除可能な流体入口継手と連結可能な第2の解除可能な流体出口継手を含む。
【0060】
このように、水素を、水素ガス生成器群によって生成し、水素貯蔵装置群の水素貯蔵材料に貯蔵することができる。なお、水素ガス生成器群は、各解除可能な流体継手を介して水素貯蔵装置群に連結されている。水素ガス生成器群が水素貯蔵装置群と解除可能に連結されるため、前述したように、水素ガス生成器群に関してモジュール性及び/又は拡縮可能性が提供される。第3の解除可能な流体入口継手は、必要な変更を加えて、第1の解除可能な流体入口継手に関して記載された通りであり得る。第2の解除可能な流体出口継手は、必要な変更を加えて、第1の解除可能な流体出口継手に関して記載された通りであってもよい。
【0061】
一例では、第1の水素ガス生成器は、アルカリ電解セル(electrolysis cell)及びプロトン交換膜(PEM)電解セルからなる群から選択される電解セルを含む。PEM電解セルに比べて、アルカリ水電解セルは、典型的に、(PEM水電解に使用される白金族金属ベースの触媒に比べて)安価な触媒を使用し、電解質が交換可能であるため、耐久性が高く、陽極触媒の溶解度が低く、及び/又は、アルカリ電解液中のガス拡散性が低いため、ガス純度が高い。逆に、PEM電気分解セルは、より高い電流密度で動作することができ、それによって、特に風力や太陽光などの非常に動的なエネルギー源に結合されたPEM電解セルの運用コストを削減することができる。しかし、このような場合、突然のエネルギー入力の急増(spike)は、そうでなければ捕捉されないエネルギーとなってしまうかもしれない。
【0062】
一例では、第1の水素ガス生成器は、メタン改質器を含む。一般的に、メタン改質器は、メタンから触媒を用いて水素ガスを生成するための水蒸気改質、オートサーマル改質(autothermal reforming)又は部分酸化に基づくものである。一例では、メタン改質器は、水蒸気メタン改質器(steam methane reformer)(SMR)及びオートサーマル改質器(ATR)からなる群から選択される。水蒸気メタン改質と称されることもある水蒸気改質(SR)は、外部の熱ガス源を使用して管を加熱し、この管中で触媒反応が発生し、蒸気と、メタン、バイオガス又は製油所の原料などの軽質炭化水素(lighter hydrocarbons)を水素及び一酸化炭素(合成ガス)に変換する。合成ガスはさらに反応し、反応器内でより多くの水素及び二酸化炭素を生成する。最終精製のために、これらの炭素酸化物は、使用前に、モレキュラーシーブを使用した圧力変動吸着法(PSA)によって除去される。PSAは、合成ガス流から不純物を吸着して純粋な水素ガスを残すことにより機能する。オートサーマル改質(ATR)は、メタンとの反応において酸素及び二酸化炭素又は蒸気を使用して合成ガスを形成する。この反応は、メタンが部分的に酸化される単独のチャンバ内で発生する。この反応は、酸化のために発熱的である。ATRが二酸化炭素を使用する場合、生成されたH:COは1:1であり、ATRが水蒸気を使用する場合、生成されたH:COは2.5:1である。
【0063】
一例では、電源は第1の水素ガス生成器と連結可能な第1の電気入口を有し、及び/又は、第1の電気出口は第1の水素ガス生成器と連結可能である。このように、例えば、風力、太陽光、潮力(tidal)及び/又は地熱などの再生可能エネルギー源及び/又は余剰再生可能エネルギー源(excess renewable energy sources)から、余剰従来型エネルギー源(surplus conventional energy sources)から、必要に応じて電源の電力出力から、第1の水素ガス発生装置、より一般的に水素ガス生成器群に電力を供給することができる。好ましくは、この電力は、より強く及び/又はより長い風力(longer winds)、より多く及び/又はより強い日光、及び/又は、より強く及び/又はより長い潮力(tides)などの余剰再生可能エネルギー源からのものである。このように、この余剰電力(即ち、現在の需要に対する余剰な電力)が化学エネルギーとして貯蔵された水素ガスに効果的に貯蔵されるため、余剰電力が蓄えられる。
【0064】
一例では、電源は、第1の水素ガス生成器と、第1の水素貯蔵装置と、第1の発電機とが互いに切り離される第1の配置と、第1の水素ガス生成器と第1の発電機とが第1の水素貯蔵装置を介して流体的に連結される第2の配置と、になるように配置可能である。このように、前述したように、電源のモジュール性及び/又は拡縮可能性が提供される。
【0065】
一例では、電源は、第1の壁を含む壁群(set of walls)を含む筐体(housing)を含み、第1の壁は、水素貯蔵装置群を収容するように配置され、かつ第1の壁を通る第1の電気出口を有する。このように、電源は、筐体により例えば天候から保護され、遠隔地に設置されるための独立した電源として設置することができる。更に、筐体は、輸送時及び/又は使用時に電源を保護することができる。一例では、筐体は、複合貨物コンテナ(intermodal freight container)(通称、輸送コンテナ(shipping container)とも呼ばれる)、例えば20’(~6m)又は40’(~12m)の複合貨物コンテナを含み、及び/又はこのような複合貨物コンテナである。このように、標準的な保管、輸送及び/又は吊り手段を用いて電源を容易に保管、輸送及び/又は設置することができるため、コスト及び/又は煩雑さが低減される。一例では、筐体は、車輪群を含む。このように、電源の輸送が容易となる。一例では、筐体は、吊索用の吊金具又は吊点群、及び/又はフォークリフトポケット群(set of forklift pockets)を含む。
【0066】
一例では、電源は、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の加熱器を制御するように構成されたコントローラを含む。このように、水素貯蔵材料から水素を放出する速度を、電力の使用速度に応じて制御することができる。例えば、電力の使用速度が増加すると、加熱器をより更に、例えばより高い温度に加熱して、水素貯蔵材料から水素を放出する速度を増加させることができる。逆に、電力の使用速度(rate of usage of electrical power)が低下すると、加熱器をより少なく、例えばより低い温度に加熱して、水素貯蔵材料から水素を放出する速度を低下させることができる。このように、水素貯蔵材料から水素を放出する速度を電力の使用速度に一致させることにより、余剰電力を回避することができるため、電力の生成効率(efficiency of generation of electrical power)を向上させることができる。
【0067】
一例では、コントローラは、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する予測速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の加熱器を制御するように構成される。このように、水素貯蔵材料からの水素の放出を、事前に制御し、例えば、電気エネルギーの予測速度を満たすように増加させることにより、水素の放出の待ち時間(latency)を短縮することができる。逆に、水素貯蔵材料からの水素の放出を、事前に制御し、例えば電気エネルギーの予測速度を満たすように低下させることにより、余剰電気エネルギーの生成を抑制することができる。一例では、コントローラは、第1の加熱器に関して説明したように、加熱器群を共同で、及び/又は、独立して制御するように構成される。このように、第1の加熱器群の各加熱器を共同で、及び/又は独立して制御することにより、制御の精度を向上させることができる。
【0068】
一例では、コントローラは、前述したように、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する予測速度に少なくとも部分的に基づいて、冷却器を制御するように構成される。このように、水素貯蔵材料からの水素の放出を、必要な変更を加えて、第1の加熱器に関して説明したように、事前に制御することができる。
【0069】
一例では、コントローラは、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する速度及び/又は予測速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の発電機を含む発電機群を制御するように構成される。このように、電気エネルギーの生成速度を電力の使用速度及び/又は予測使用速度に一致させることにより、余剰電力を回避することができるため、電力の生成効率を向上させることができる。
【0070】
一例では、コントローラは、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する速度及び/又は予測速度に少なくとも部分的に基づいて、及び/又は、水素貯蔵材料から水素を放出する速度及び/又は予測速度、及び/又は、水素貯蔵材料に貯蔵された水素の量及び/又は電気分解用のエネルギーの入手可能性に基づいて、第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群を制御するように構成される。例えば、圧力計及び/又はMFCを用いて、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群の圧力及び/又は圧力変化から、及び/又は、水素貯蔵装置群からの水素の質量流量測定値から、水素の放出速度及び/又は貯蔵された水素の量を決定、計算及び/又は測定することができる。このように、水素ガスの生成速度を、電力の使用速度及び/又は予測使用速度及び/又は電気分解用のエネルギーの入手可能性に一致させることにより、電気分解用のエネルギーの入手可能性(availability of energy for electrolysis)を利用すると共に余剰電力を回避することができるため、電力の生成効率を向上させることができる。
【0071】
一例では、コントローラは、例えば、全体的に、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する速度及び/又は予測速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群と、第1の加熱器を含む加熱器群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群を含む加熱器/冷却器群と、第1の発電機を含む発電機群と、を制御するように構成される。これにより、水素ガスの生成、水素の貯蔵、水素の放出及び/又は電力の生成を最適化する。例えば、再生可能資源からのエネルギーの量が増加すれば、特定の水素貯蔵装置からの水素の放出を優先してこれらの水素貯蔵装置を完全に水素を排出させ、水素ガスの電気分解を増加させ、水素が事前に排出されたこれらの水素貯蔵装置に水素を貯蔵することができる。このように、貯蔵された水素の量を最適化すると共に電気分解用のエネルギーの入手可能性を向上させることができる。
【0072】
一例では、コントローラは、電気エネルギーを出力する予測速度(即ち、予測電力需要)を決定し、例えば計算又は推定するように構成される。例えば、コントローラは、電源のユーザーのエネルギー要求(需要)を学習することにより、例えば、ユーザーのエネルギー使用量に対して機械学習アルゴリズムを適用することにより、電気エネルギーを出力する予測速度を決定することができる。一例では、コントローラは、ユーザーのエネルギー使用量を測定することによりインターネットを介してデータベースから、及び/又はユーザーからユーザーのエネルギー要求を取得するように構成される。
【0073】
一例では、コントローラは、例えば、以前の使用情報(即ち、履歴データ)、ユーザー入力(即ち、ユーザー要求)及び/又はオンラインデータベース(静的及び/又は動的に更新された情報、即ち、ライブな更新情報(static and/or dynamically updated e.g. live updates))から、水素ガスを生成するための電気エネルギーを入力する予測速度を決定、例えば計算又は推定するように構成される。例えば、再生可能資源から水素ガスを生成するための電気エネルギーを取得すれば、コントローラは、緯度、経度及び/又は標高を含む電源及び/又は再生可能資源の位置(即ち、地理的位置)情報、電源及び/又は再生可能資源の各位置での気候情報(即ち、天候パターン)情報、及び/又は、電源及び/又は再生可能資源の各位置に関する天気予報情報から、電気エネルギーを入力する予測速度を決定することができる。一例では、コントローラは、インターネットを介してデータベースから、及び/又はユーザーから、位置情報、気候情報及び/又は天気予報情報を取得するように構成される。
【0074】
一例では、コントローラは、例えば、フィードバックループを用いて、水素ガスを生成するための電気エネルギーを出力する予測速度及び/又は電気エネルギーを入力する予測速度を繰り返し決定するように構成される。
【0075】
一例では、コントローラは、例えば、一般化線形モデル(GLM)、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン、K近傍法、決定木、AdaBoost、XGBoost、畳み込みニューラルネットワークなどのニューラルネットワーク、時系列分類、リカレンスプロット(recurrence plot)、線形混合モデル(linear mixed model)又はこれらの2つ以上の組み合わせを用いて、水素ガスを生成するための電気エネルギーを出力する予測速度及び/又は電気エネルギーを入力する予測速度を決定、例えば計算又は推定するように構成される。XGBoost及びGLMが好ましい。例えば、コントローラは、32×2.4GHzのプロセッサ及び32GBのRAMを含むコンピュータ装置を含んでよい。計算は、GLM及び/又はXGBoostを用いてRで実行されてよい。代替的に及び/又は追加的にKeras、Theanos及び/又はTensorFlowを用いてPythonで実行されてもよい。
【0076】
このように、コントローラは、水素ガスを生成するための電気エネルギーを出力する予測速度及び/又は電気エネルギーを入力する予測速度を決定することにより、「スマートメータリング」(smart metering)を提供して、例えば、フィードバックループを使用して、水素ガスを生成するための電気エネルギー出力及び/又は電気エネルギー入力の変化に応答して、電源を動的に制御することができる。このように、水素ガスの生成速度を、電力の使用速度及び/又は予測使用速度及び/又は電気分解用のエネルギーの入手可能性に一致させることにより、電気分解用のエネルギーの入手可能性を利用すると共に余剰電力を回避することができるため、電力の生成効率を向上させることができる。
【0077】
〔方法〕
第2の態様に係る、第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群と、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群と、第1の発電機を含む発電機群と、コントローラとを含む電源の制御方法において、第1の水素貯蔵装置は、第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に備えた第1の流体入口と第1の流体出口を有する圧力容器を含む。圧力容器は、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料を内部に収容するように配置される。好ましくは、熱伝導性ネットワークは、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。この方法は、第1の水素ガス生成器により、水素ガスを生成する工程と、第1の水素貯蔵装置により、生成された水素ガスを貯蔵する工程と、貯蔵された水素ガスを少なくとも部分的に放出する工程であって、コントローラにより第1の加熱器を制御して貯蔵された水素ガスを少なくとも部分的に放出することを必要に応じて含む工程と、第1の発電機により、放出された水素ガスを用いて電気エネルギーを生成する工程と、を含む。
【0078】
第1の水素ガス生成器を含む第1の水素ガス生成器群、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群、第1の加熱器を含む加熱器群、第1の発電機を含む発電機群、コントローラ、圧力容器、第1の流体入口、第1の流体出口、熱伝導性ネットワーク及び/又は水素貯蔵材料は、第1の態様に関して説明した通りであり得る。
【0079】
一例では、この方法は、コントローラにより、第1の発電機が電気エネルギーを生成する速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の加熱器を制御する工程を含む。このように、水素貯蔵材料からの水素の放出を、必要な変更を加えて、第1の態様に関して説明したように、事前に制御することができる。
【0080】
一例では、この方法は、コントローラにより、第1の発電機が電気エネルギーを生成する予測速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の加熱器を制御する工程を含む。このように、水素貯蔵材料からの水素の放出を、必要な変更を加えて、第1の加熱器に関して説明したように、事前に制御することができる。
【0081】
一例では、この方法は、コントローラにより、第1の発電機が電気エネルギーを生成する速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の水素ガス生成器が水素ガスを生成する速度を制御する。このように、水素ガスの生成を、必要な変更を加えて、第1の加熱器に関して説明したように、事前に制御することができる。
【0082】
一例では、この方法は、コントローラにより、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する予測速度に少なくとも部分的に基づいて、水素貯蔵材料を冷却するように制御する工程を含む。このように、水素貯蔵材料からの水素の放出を、必要な変更を加えて、第1の加熱器に関して説明したように、事前に制御することができる。
【0083】
一例では、この方法は、コントローラにより、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する速度及び/又は予測速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の発電機を含む発電機群を制御する工程を含む。このように、第1の態様に関して説明したように、電気エネルギーの生成速度を電力の使用速度及び/又は予測使用速度に一致させることができる。
【0084】
一例では、この方法は、コントローラにより、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する速度及び/又は予測速度に少なくとも部分的に基づいて、及び/又は、水素貯蔵材料から水素を放出する速度及び/又は予測速度、及び/又は、水素貯蔵材料に貯蔵された水素の量及び/又は電気分解用のエネルギーの入手可能性に基づいて、第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群を制御する工程を含む。このように、第1の態様に関して説明したように、水素ガスの生成速度を電力の使用速度及び/又は予測使用速度及び/又は電気分解用のエネルギーの入手可能性に一致させることができる。
【0085】
一例では、この方法は、コントローラにより、例えば、全体的に、第1の電気出口を介して電気エネルギーを出力する速度及び/又は予測速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群と、第1の加熱器を含む加熱器群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群を含む加熱器/冷却器群と、第1の発電機を含む発電機群と、を制御する工程を含む。これにより、水素ガスの生成、水素の貯蔵、水素の放出及び/又は電力の生成を最適化する。
【0086】
〔CRM〕
第3の態様に係る有形の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体には、プロセッサ及びメモリを含むコンピュータ装置によって実行されると、コンピュータ装置に第2の態様に係る方法を実行させる命令が記録される。
【0087】
本発明をよりよく理解し、例示的な実施形態がどのように実施されるかを示すために、以下、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】1つの例示的な実施形態に係る電源の概略図である。
図2図1の電源のより詳細な概略図である。
図3】1つの例示的な実施形態に係る方法の概略フロー図である。
図4図3の方法のより詳細な概略フロー図である。
図5図3の方法のより詳細な概略フロー図である。
図6図6のAは、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の軸方向断面概略図であり、図6のB~図6のDは、図6のAの水素貯蔵装置の横断面概略図である。
図7A】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の熱伝導性ネットワークを概略的に示す図である。
図7B】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の熱伝導性ネットワークを概略的に示す図である。
図7C】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の熱伝導性ネットワークを概略的に示す図である。
図8A】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の発泡体の写真である。
図8B】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置のより詳細な概略図である。
図9A】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の平面図である。
図9B図9Aの水素貯蔵装置の側面断面図である。
図10】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置のCAD破断斜視図(CAD cutaway perspective view)である。
図11図10の水素貯蔵装置のCAD軸方向断面図(CAD axial cross-section)である。
図12図10の水素貯蔵装置のCAD径方向断面図(CAD radial cross-section)である。
図13図10の水素貯蔵装置の代替的なCAD径方向断面図である。
図14】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の第1の加熱器のCAD斜視図(CAD perspective view)である。
図15】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の第1の加熱器の破断斜視図である。
図16】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の第1の加熱器の破断斜視図である。
図17A】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の破断斜視図である。
図17B】従来の水素貯蔵装置の破断斜視分解図である。
図18】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の破断斜視図である。
図19A】1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置のより詳細なCAD部分破断斜視図である。
図19B】水素貯蔵装置のより詳細なCAD縦方向断面図である。
図19C】熱伝導性ネットワークのより詳細なCAD斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下の例の少なくともいくつかは、電源及びこのような電源の制御方法を提供する。他の多くの利点及び改善点については、本明細書において詳細に説明する。
【0090】
図1は、1つの例示的な実施形態に係る電源100の概略図である。電源装置100は、第1の電気出口110を有し、第1の水素貯蔵装置200Aを含む水素貯蔵装置群200と、必要に応じて、第1の加熱器300A(図示せず)を含む加熱器群300(図示せず)と、第1の解除可能な流体入口継手410及び/又は第1の解除可能な流体出口継手510と、を含む。第1の水素貯蔵装置200Aは、第1の加熱器300Aと必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワーク240A(図示せず)を内部に備えた第1の流体入口210Aと第1の流体出口220Aを有する圧力容器230Aを含む。圧力容器230Aは、熱伝導性ネットワーク240Aと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料250A(図示せず)を内部に収容するように配置される。第1の流体入口210A及び/又は第1の流体出口220Aは、それぞれ第1の解除可能な流体入口継手410及び/又は第1の解除可能な流体出口継手510Aと流体連通する。好ましくは、熱伝導性ネットワーク240Aは、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。
【0091】
この例では、電源100は、水素ガスを用いて電気を生成するように構成され、かつ燃料電池と熱機関を含む発電機とからなる群から選択される第1の発電機600Aを含む発電機群600、第1の解除可能な流体出口継手510と連結可能な第2の解除可能な流体入口継手420、及び/又は第1の電気出口110と連結可能な第1の解除可能な電気出口継手を含む。第1の発電機600Aは、第2の解除可能な流体入口継手と流体連通する第2の流体入口を含む。この例では、第1の発電機600Aは、固体高分子形燃料電池PEMFC、アルカリ型燃料電池(alkaline fuel cell)AFC及びリン酸型燃料電池(phosphoric acid fuel cell)PAFCからなる群から選択される燃料電池である。
【0092】
この例では、電源100は、水素ガスを生成するように構成された第1の水素ガス生成器700Aを含む水素ガス生成器群700、第3の解除可能な流体入口継手430、及び/又は第1の解除可能な流体入口継手と連結可能な第2の解除可能な流体出口継手520を含む。この例では、第1の水素ガス生成器700Aは、アルカリ電解セル及びプロトン交換膜(PEM)電解セルからなる群から選択される電解セルを含む。
【0093】
この例では、電源100は、第1の電気出口110を介して電気エネルギーを出力する速度及び/又は予測速度に少なくとも部分的に基づいて、第1の加熱器300Aを制御するように構成されたコントローラ800(図示せず)を含む。
【0094】
この例では、電源100は、水素ガス生成器700から水素を水素貯蔵装置群200に圧送することにより水素のために圧力を上昇させるように配置されたポンプ120を含む。この例では、電源100は、水素貯蔵装置群200を発電機群600から隔離するように配置された仕切弁(gate valve)130を含む。
【0095】
使用時、前述したように、仕切弁130を閉じ、水素ガス生成器700で生成された水素を、ポンプ120によって水素貯蔵装置群200に圧送して貯蔵する。貯蔵過程において、前述したように、水素貯蔵材料250Aが放出した熱を、熱伝導性ネットワーク240Aを介して第1の水素貯蔵装置200Aから外部に伝達することができる。続いて、前述したように、水素を貯蔵した後、仕切弁130を開き、水素貯蔵材料250Aから放出された貯蔵された水素が発電機群600に移動するとすぐに、放出された水素の化学エネルギーを電気エネルギーに変換して第1の電気出口110を介して出力する。水素貯蔵材料250Aから水素を放出する過程において、前述したように、熱伝導性ネットワーク240Aを介して熱を加熱器群300から水素貯蔵材料250Aに供給する。
【0096】
図2は、図1の電源のより詳細な概略図である。
【0097】
使用時、水素ガス生成器群700により水を電気分解し、電気分解用の電気エネルギーは、太陽光パネル(即ち、再生可能エネルギー源)から得られる。前述したように、生成された水素を乾燥させ、一方向の流れを確保するために逆止弁を介して水素貯蔵装置群200に導入して貯蔵する。
【0098】
エアフィルタにより空気(酸化剤(oxidant))を濾過し、ポンプ120により圧力変換器及び粒子状物質用の微粒子フィルタを介して加湿器(humidifier)に圧送し、ひいては発電機群600に圧送する。特に、圧力を圧力変換器で記録し、流れを他のフィルタで再濾過する。そして、空気を、固体高分子形燃料電池(PEMFC)(即ち、発電機群600)に入る前に加湿する。未使用の水素を水抜き部(water vent)に沿って発電機群600から排出する。この未使用の水素を粒子状物質のために濾過する。水を排出し、未使用の水素を水素貯蔵装置群200(図示せず)に送り返す。
【0099】
図3は、1つの例示的な実施形態に係る方法の概略フロー図である。この方法は、第1の水素ガス生成器を含む水素ガス生成器群と、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群と、第1の発電機を含む発電機群と、コントローラとを含む電源の制御方法である。第1の水素貯蔵装置は、第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に備えた第1の流体入口と第1の流体出口を有する圧力容器を含む。圧力容器は、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料を内部に収容するように配置される。好ましくは、熱伝導性ネットワークは、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。
【0100】
S31では、第1の水素ガス生成器により、水素ガスを生成する。
【0101】
S32では、第1の水素貯蔵装置により、生成された水素ガスを貯蔵する。
【0102】
S33では、貯蔵された水素ガスを少なくとも部分的に放出し、必要に応じて、コントローラにより第1の加熱器を制御して貯蔵された水素ガスを少なくとも部分的に放出する。
【0103】
S34では、第1の発電機により、放出された水素ガスを用いて電気エネルギーを生成する。
【0104】
この方法は、第1の態様及び/又は第2の態様に関して説明した工程のいずれかを含んでよい。
【0105】
図4は、図3の方法のより詳細な概略フロー図である。
【0106】
電源100は、前述したように、例えば図4に示すようなフィードバック制御ループの下で、出力又は3つのサブシステム(即ち、水素ガス生成器群、水素貯蔵装置群、発電機群)のそれぞれに予想される燃料又は電力を予測と供給するために、前述したように、スマートメータリングを用いてよい。
【0107】
入力エネルギーデータをユーザーから又はインターネット上の情報のデータベースに由来することができる。スマートメータにより、所望/必要な出力と、提供された情報とを比較することができる。これにより、必要な出力に応じて処理変数(流量、温度、圧力)を変化させるフィードバックループが形成される。
【0108】
図5は、図3の方法のより詳細な概略フロー図である。
【0109】
S51では、コントローラにより、エネルギーの吸い込み量/使用量を分析する。
【0110】
S52では、コントローラにより、エネルギーの使用割り当て量を設定する。
【0111】
S53では、コントローラにより、エネルギーの使用予定量を設定する。
【0112】
S54では、コントローラにより、エネルギーの配給を監視する。
【0113】
S55では、エネルギーの使用量が割り当て量の90%に近づくと、コントローラにより警報を出す。
【0114】
スマートメータリングシステムにより、ユーザー及び/又は他の供給データから使用統計を取得することができる。そして、エネルギー使用量の予想される見積もりを設定する。続いて、電力要求(需要)予定量に合わせて処理を行う。また、システムは、フィードバックシステムに応じてエネルギー使用量を監視する。エネルギーが予想される量の90%に近づくと、動作が実行される。
【0115】
通信プロトコルは、ZigBee、GPRS/GSM、Wi-Fi又はPLCであってよい。この通信プロトコルは、必要に応じて各特注のシステム(tailored to each bespoke system)に合わせたものである。代替的に、PLC規格は、関連する規格に従って適切なシステムを配置して全体で使用できる。
【0116】
〔実施例1〕水素貯蔵装置
図6のAは、1つの例示的な実施形態に係る電源100の水素貯蔵装置200の軸方向断面概略図である。図6のB~図6のDは、図6のAの水素貯蔵装置200の横断面概略図である。
【0117】
図6は、電源100の水素貯蔵装置200を示している。水素貯蔵装置200は、圧力容器を構成する、中空の金属円筒(外側円筒状容器壁(outer cylindrical vessel wall)(1))と、2つの金属製のエンドキャップ(2)と、を含む。この容器の内部には、水素化可能な金属/金属合金(hydrideable metal/metal alloy)(5)、金属発泡体(図示せず)と接触するアルミニウムフラクタル(fractal)構造(4)がある。両方のエンドキャップ(2)は、複数のペルチェ素子(peltier devices)(6)及びヒート/コールドシンク(7)を設置するための内部空洞を含む。外側円筒状容器壁(1)には、加熱/冷却ガス(空気)がキャップの内部空洞にアクセスして熱を追加/除去することを可能にする3つのガス入口(10)と3つのガス出口(11)とがある。外側円筒状容器壁(1)には、電子的な入出口ポイント(entry/exit point)(12)もある。1つのエンドキャップには、圧力容器へのアクセスを可能にする4つのポート(孔)が含まれ、この4つのポート(孔)は、水素ガス入口(8)、水素ガス出口(9)、圧力センサー接続部(15)、温度センサー接続部(14)である。エンドキャップは、所定の位置に保持され、スレッドとOリングの配置(3)によってシールを形成する。圧力容器へのアクセスを容易にするためにエンドキャップを取り外すことができる。エンドキャップは、それらの内部に、加熱/冷却ガス格納容器へのアクセスを容易にするために取り外すことができるカバー(13)を有する。つまり、水素貯蔵装置200は、上記第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に備えた第1の流体入口8と第1の流体出口9を有する圧力容器1を含む。圧力容器1は、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料(図示せず)を内部に収容するように配置される。第1の流体入口8及び/又は第1の流体出口9は、それぞれ第1の解除可能な流体入口継手(図示せず)及び/又は第1の解除可能な流体出口継手(図示せず)と流体連通する。好ましくは、熱伝導性ネットワーク4は、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。
【0118】
〔実施例2〕熱伝導性ネットワークの構造形状
図7A図7Cは、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の熱伝導性ネットワークを概略的に示す図である。
【0119】
図7A図7Cは、水素貯蔵装置200の熱伝導性ネットワークに関して、(A)ゴスパー島、(B)「雪片」デザイン、(C)コッホ雪片という3つの代替的なフラクタルネットワークを示している。2Dの径方向に対称なフラクタルパターンは軸方向に延びている。フラクタルネットワークの軸方向断面図、中点径方向断面図及び斜視図が示されている。
【0120】
〔実施例3〕金属発泡体
図8Aは、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の発泡体の写真であり、図8Bは、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置のより詳細な概略図である。
【0121】
図8Aは、金属発泡体、特にアルミニウム発泡体の空隙(即ち、開放空間)の写真を示している。アルミニウム発泡体は、母合金の99%の純度を保持する6101アルミニウム合金から製造されたものである。発泡体は、セル(即ち、細孔(pores))が開口し、十二面体形状を有する網状の構造を有している。発泡体は、嵩密度(bulk density)が0.2g/cmであり、気孔率が93%であり、気孔率が約8孔/cmである。
【0122】
図8Bは、熱伝導性ネットワークと熱的に連結された金属発泡体中に含まれ、及び/又は金属発泡体と接触する金属水素化物粉末を概略的に示している。
【0123】
〔実施例4〕水素貯蔵装置のコンパクト設計
図9Aは、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置200’の平面図であり、図9Bは、図9Aの水素貯蔵装置200’の側面断面図である。
【0124】
図9A及び図9Bは、水素貯蔵装置200’のコンパクトな設計を概略的に示している。水素貯蔵装置200’は、四角板状(square-planar)の蓋(2)を備えた直方体状(cuboid-based)の格納容器(1)で形成された水素ガス格納容器を含む。蓋(2)は、4つの軸方向コーナーネジを用いてネジ固定部(screw fixings)(7)に固定され、容器(1)と蓋(2)との間に配置されたOリング(3)で密閉されている。水素格納容器は、その内部に水素化可能な金属/金属合金(5)と、金属発泡体(図示せず)とを有する。1つの面には、熱を径方向に分散するように機能する、偏平な正方形のフラクタル形状を有する熱伝導性ネットワーク(4)がある。熱伝導性ネットワーク(4)及び容器(1)の外部と熱的に連結されたペルチェ素子(6)は、加熱器/冷却器として機能する。蓋(2)及び熱伝導性ネットワーク(4)を貫通するように位置する2つの孔(8)、(9)は、それぞれ水素ガス入口(8)及び水素ガス出口(9)として機能する。つまり、水素貯蔵装置200’は、第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に備えた第1の流体入口8と第1の流体出口9を有する圧力容器1を含み、圧力容器1は、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料(図示せず)を内部に収容するように配置される。第1の流体入口8及び/又は第1の流体出口9は、それぞれ第1の解除可能な流体入口継手(図示せず)及び/又は第1の解除可能な流体出口継手(図示せず)と流体連通する。好ましくは、熱伝導性ネットワーク4は、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。
【0125】
図10は、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置200’’のCAD破断斜視図である。図11は、図10の水素貯蔵装置200’’のCAD軸方向断面図である。図12は、図10の水素貯蔵装置200’’のCAD径方向断面図である。水素貯蔵装置200’’は、第1の加熱器(図示せず)と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワーク204’’を内部に備えた第1の流体入口208’’と第1の流体出口209’’を有する圧力容器201’’を含む。圧力容器201’’は、熱伝導性ネットワーク204’’と少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料(図示せず)を内部に収容するように配置される。第1の流体入口208’’及び/又は第1の流体出口209’’は、それぞれ第1の解除可能な流体入口継手(図示せず)及び/又は第1の解除可能な流体出口継手(図示せず)と流体連通する。好ましくは、熱伝導性ネットワーク204’’は、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。
【0126】
この例では、圧力容器201’’は、一般的に略円筒状であり、一般的に皿状に形成された第1の端部(dished first end)と、第1の端部と対向するネック加工された第2の端部(necked second end)とを有し、第1の流体入口208’’及び第1の流体出口209’’の両方を形成する単独の開口部を有する。換言すれば、圧力容器201’’は、ボトル形状である。圧力容器201’’の内壁部201I’’は、第1の加熱器206’’(図示せず)を収容するように配置された軸方向円筒状で長尺状の盲通路210’’(blind passageway)を形成している。この盲通路210’’は、第1の端部から第2の端部に向かって延び、かつ圧力容器201’’の外壁部201O’’と同軸である。第1の端部の第2の盲通路は、熱電対(図示せず)を収容するように配置されている。
【0127】
この例では、熱伝導性ネットワーク204’’は、3次元の格子形状を有している。この熱伝導性ネットワーク204’’において、一般的に、各ノードは、4つのアームにより、軸方向に隣接する先行層(preceding layer)中の他の4つのノードにそれぞれ接続される。このように、一般的に、各ノードは、8つのアームにより、軸方向に隣接する先行層中の4つのノード及び軸方向に隣接する先行層中の4つのノードの他の8つのノードに接続される。内壁部201I’’と外壁部201O’’の近接するノードは、同様にそれぞれ内壁部201I’’と外壁部201O’’に接続される。一例では、格子形状の有効密度(格子体積比(lattice volume ratio)とも呼ばれる)は、1次元、2次元又は3次元(即ち、互いに直交する次元)で均一である。この例では、格子形状の有効密度は、第1の次元、特に軸方向に均一であり、かつ互いに直交する第2の次元及び第3の次元、特に径方向に不均一である。特に、有効密度が径方向外向きに減少する。このように、熱が通路410、ひいては第1の加熱器の近くでより速く伝達される。この例では、熱伝導性ネットワーク404は、アルミニウム合金で形成される。代替的に、熱伝導性ネットワーク404は、前述したように、銅、黄銅合金又は青銅合金などの銅の各合金、及び/又はステンレス鋼で形成されてもよい。
【0128】
図13は、図10の水素貯蔵装置200’’の代替的なCAD径方向断面図である。この例では、格子形状のノード密度(即ち、単位体積あたりのノード数)は、一般的に、必要な変更を加えて、図12の格子形状のノード密度と同様である。しかし、図12の格子形状のノード密度より比較的に低い。アームの断面積は、図12のアームの断面積よりも比較的に大きい。
【0129】
図14は、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の第1の加熱器206’’のCAD斜視図である。この例では、第1の加熱器206’’は、通路210’’に収容されている長尺状のカートリッジヒーターである。第1の加熱器206’’と圧力容器201’’の内壁部201I’’との熱的連結を改善するために、第1の加熱器206’’を通路210’’に押し込んでもよい。追加的及び/又は代替的に、例えば、導電性ペースト又ははんだを用いて第1の加熱器206’’を内壁部201I’’と熱的に接合してもよい。
【0130】
図15は、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の第1の加熱器206’’’、特にワトロー社から入手可能なファイヤーロッド・カートリッジヒーターの破断斜視図である。
【0131】
図16は、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の第1の加熱器206’’’’、特にワトロー社から入手可能なファイヤーロッド・カートリッジヒーター(部品番号G10A31、長さ10インチ、直径3/8インチ、600W(240V))の破断斜視図である。第1の加熱器506のメトリックは、第1の加熱器206’’’と同等である。
【0132】
図17Aは、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置200の破断斜視図である。水素貯蔵装置200は、第1の加熱器300Aと熱的に連結された熱伝導性ネットワーク240を内部に備えた第1の流体入口210と第1の流体出口220を有する圧力容器230を含む。圧力容器230は、熱伝導性ネットワーク240と少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料(図示せず)を内部に収容するように配置される。第1の流体入口210及び/又は第1の流体出口220は、それぞれ第1の解除可能な流体入口継手(図示せず)及び/又は第1の解除可能な流体出口継手(図示せず)と流体連通する。熱伝導性ネットワーク240は、3次元の格子形状を有する。
【0133】
この例では、圧力容器230は、一般的に略円筒状であり、一般的に皿状に形成された第1の端部と、第1の端部と対向するネック加工された第2の端部とを有し、第1の流体入口210及び第1の流体出口220の両方を形成する単独の開口部を有する。換言すれば、圧力容器230は、缶状である。圧力容器230の内壁部230Iは、加熱器群300の第2の加熱器300B(図示せず)、特にカートリッジヒーター(図示せず)を必要に応じて収容するように配置された軸方向円筒状で長尺状の盲通路Pを形成している。この盲通路Pは、第1の端部から第2の端部に向かって延び、かつ圧力容器230の外壁部230Oと同軸である。第2の端部の盲通路は、熱電対(thermocouples)TCを収容するように配置されている。この例では、第1の加熱器300Aは、例えば、加熱器と連結された燃料電池からの排熱を使用して加熱される還流型加熱器によって構成され、入口310及び出口320を有しかつ熱伝導性ネットワーク20と熱的に接触する二重螺旋加熱管(double helix heating tube)350を含む。この熱伝導性ネットワーク20は、加熱管350の内側螺旋350Iと外側螺旋350Oの間に配置されている。二重螺旋加熱管350は、第2の端部から第1の端部に向かって延び、圧力容器230の外壁部230Oと同軸である。二重螺旋加熱管350の内側螺旋350I及び外側螺旋350Oは、それぞれ、圧力容器230の内壁部230I及び外壁部230Oと直接的に熱的に接触する。圧力計PGは第2の端部に設置される第2の端部は、メカニカルファスナを用いて圧力容器230に機械的に解除可能に連結されている。
【0134】
この例では、熱伝導性ネットワーク240は、3次元の格子形状を有している。この熱伝導性ネットワーク240において、一般的に、各ノードは、4つのアームにより、軸方向に隣接する先行層中の他の4つのノードにそれぞれ接続される。このように、一般的に、各ノードは、8つのアームにより、軸方向に隣接する先行層中の4つのノード及び軸方向に隣接する先行層中の4つのノードの他の8つのノードに接続される。加熱管350の内側螺旋350I及び外側螺旋350Oの近位のノードは、内側螺旋350I及び外側螺旋350Oと互いに熱的に接触している。この例では、格子形状の有効密度は、第1の次元、特に軸方向に均一であり、かつ互いに直交する第2の次元及び第3の次元、特に径方向に不均一である。この例では、熱伝導性ネットワーク240は、少なくとも90%の気孔率(porosity)を有する。この例では、熱伝導性ネットワーク240は、アルミニウム合金で形成される。この例では、熱伝導性ネットワーク240は、円環状を有する内側部240Iと外側部240Oとを有する。外側部240Oは、二重螺旋加熱管350の内側螺旋350I及び外側螺旋350Oと熱的に接触するようにそれらの間に収容される。内側部240Iは、内側螺旋350Iと熱的に接触するようにその内側に収容される。
【0135】
図17Bは、従来の水素貯蔵装置200の破断斜視分解図である。図17Aの水素貯蔵装置200に比べて、図17Bの水素貯蔵装置200の熱伝導性ネットワーク240は、内側部240I、中間部240M及び外側部240Oを含む。内側部240Iは円筒状であり、中間部240M及び外側部240Oは円環状である。外側部240Oは、二重螺旋加熱管350の外側螺旋350Oと熱的に接触するようにその外側に収容される。中間部240Mは、内側螺旋350I及び外側螺旋350Oと熱的に接触するようにそれらの間に収容される。内側部240Iは、内側螺旋350Iと熱的に接触するようにその内側に収容される。
【0136】
図14は、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置の破断斜視図である。水素貯蔵装置200は、図17A及び図17Bの水素貯蔵装置200に関して概略的に説明した通りであり、同一の符号は同一の特徴を示す。
【0137】
図17A及び図17Bの水素貯蔵装置200に比べて、この水素貯蔵装置200は、図17A及び図17Bの圧力容器230の内壁部230Iを含まず、かつ熱電対を収容するための第2の端部の盲通路を含まない。図17A及び図17Bの水素貯蔵装置200に比べて、この熱伝導性ネットワーク240は円筒状であり、圧力容器230の外壁部230Oと熱的に接触するように収容される。図17A及び図17Bの水素貯蔵装置200に比べて、二重螺旋加熱管350の内側螺旋350I及び外側螺旋350Oは、熱伝導性ネットワーク240内に組み込まれる。したがって、二重螺旋加熱管350の内側螺旋350I及び外側螺旋350Oは、熱伝導性ネットワーク240を介して、互いに離間し、かつそれぞれ圧力容器230の外壁部230Oのみと間接的に熱的に接触する。この例では、水素貯蔵装置200は、水素貯蔵材料を一軸的に圧縮して(uniaxially compressing)熱伝導性ネットワークとの熱的接触を改善するために、第1の端部の近位で圧力容器230に内蔵されたベッド圧縮円盤(bed compression disc)231と、ベッド圧縮円盤231と機械的に連結され、かつ第1の端部を通って延びるベッド圧縮円盤ボルト(bed compression disc bolt)232と、を含む。Oリング233が外壁部230Oに配置されて圧縮時の水素貯蔵材料の損失を防止する。
【0138】
図19Aは、1つの例示的な実施形態に係る電源の水素貯蔵装置200のより詳細なCAD部分破断斜視図である。図19Bは、水素貯蔵装置200のより詳細なCAD縦方向断面図である。図19Cは、熱伝導性ネットワークのより詳細なCAD斜視図である。
【0139】
水素貯蔵装置200は、第1の加熱器300Aと熱的に連結された熱伝導性ネットワーク240を内部に備えた第1の流体入口210と第1の流体出口220を有する圧力容器230を含む。圧力容器230は、熱伝導性ネットワーク240と少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料(図示せず)を内部に収容するように配置される。第1の流体入口210及び/又は第1の流体出口220は、それぞれ第1の解除可能な流体入口継手(図示せず)及び/又は第1の解除可能な流体出口継手(図示せず)と流体連通する。熱伝導性ネットワーク240は、3次元の格子形状を有する。この例では、水素貯蔵材料は、液体有機水素キャリアLOHCを含み、及び/又は液体有機水素キャリアLOHCである。この例では、水素貯蔵装置200は、動的な(dynamic)水素貯蔵装置200である。この例では、第1の流体入口210及び第1の流体出口220を第1の容器230の対向する端部において互いに離間させることにより、例えば、熱伝導性ネットワーク240の空隙を介して、第1の流体入口210と第1の流体出口220との間に水素貯蔵材料及び/又は水素を流す経路を少なくとも部分的に区画することができる。この例では、第1の流体入口210及び第1の流体出口220は、解除可能な継手を備えることにより、例えば、対応する継手を例えば繰り返し、連結して、切り離すことができる。この例では、格子形状は、ブラベ格子(Bravais lattice)であり、特に立方格子であり、具体的に単純立方格子である。この例では、熱伝導アームの断面寸法(例えば、直径又は幅)は、約0.5mmである。この例では、熱伝導性ネットワーク240は、第1の容器230の少なくとも90体積%で第1の容器230の内部容積を部分的に充填する。この例では、熱伝導性ネットワーク240は、例えば、その表面上及び/又はその中に提供されたLOHC水素化及び/又は脱水素化触媒を含む。この例では、熱伝導性ネットワーク240の気孔率は、熱伝導性ネットワーク240の75体積%~95体積%の範囲内である。この例では、熱伝導性ネットワーク240の比表面積は、1m-1~10m-1の範囲内であり、特に7m-1である。この例では、熱伝導性ネットワーク240は、例えば、その表面上及び/又はその中に提供されたLOHC水素化及び/又は脱水素化触媒を含む。この例では、第1の加熱器は、水素貯蔵材料を150℃~300℃の範囲の温度に加熱するように配置される。この例では、水素貯蔵装置200は、水素貯蔵材料を第1の容器230に流すように配置されたポンプ(図示せず)を備える。この例では、水素貯蔵装置200は、反応器である。
【0140】
一般的には、第1の容器230は、(脱水素化のために約260℃の温度で約2barの動作圧力に耐えるために)Ti合金で形成された長尺状の円筒であり、かつ第1の加熱器、特にジュールカートリッジヒーターに用いられ第1の容器230を通って延びるボアを有する。第1の流体入口210及び第1の流体出口220には、スウェージロック社製の解除可能な継手が設置される。特定の用途に合わせるために、第1の流体入口210は第1の容器の軸線に対して鋭角に配置され、第1の流体出口は軸線と平行に配置される。
【0141】
〔概要〕
電源及びその電源を制御する方法が提供される。この電源は、第1の電気出口を有し、第1の水素貯蔵装置を含む水素貯蔵装置群と、必要に応じて、第1の加熱器を含む加熱器群と、第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手と、を含む。第1の水素貯蔵装置は、第1の加熱器と必要に応じて熱的に連結された熱伝導性ネットワークを内部に備えた第1の流体入口と第1の流体出口を有する圧力容器を含む。圧力容器は、熱伝導性ネットワークと少なくとも部分的に熱的に接触する水素貯蔵材料を内部に収容するように配置される。第1の流体入口及び/又は第1の流体出口は、それぞれ第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手と流体連通する。好ましくは、熱伝導性ネットワークは、2次元及び/又は3次元の格子形状、螺旋形状及び/又はフラクタル形状を有する。このように、この電源は、水素貯蔵材料に貯蔵された水素から得られる、モジュール化及び/又は拡縮可能な電力供給源を提供する。特に、水素貯蔵材料に貯蔵された水素を、例えば、第1の加熱器により熱伝導性ネットワークを介して加熱することによって放出することができる。その後に、放出された水素の化学エネルギーを、発電機を介して少なくとも部分的に電気エネルギーに変換することができる。更に、第1の解除可能な流体入口継手及び/又は第1の解除可能な流体出口継手により、電源のモジュール性及び/又は拡縮可能性が提供される。例えば、第1の解除可能な流体入口継手を連結してから再連結することにより、異なる容量、入手可能性及び/又は特性を有する異なる水素ガス生成器を水素貯蔵装置群と連結することができる。例えば、第1の解除可能な流体出口継手を連結してから再連結することにより、異なる容量、効率、入手可能性及び/又は特性を有する燃料電池及び/又は従来の燃焼発電機などの異なる発電機を、水素貯蔵装置群と連結することができる。このように、電源は、予想される使用量及び/又は需要に応じて、特定の電力出力、例えば、電源のピーク電力出力、総容量及び/又は持続時間のために効率的に構成できる。
【0142】
〔定義〕
本明細書に記載された例示的な実施形態の少なくとも一部は、専用の特定目的向け(dedicated special-purpose)ハードウェアを用いて部分的又は全体的に構成されてよい。本明細書において用いられる「部品」、「モジュール」、「ユニット」などの用語は、特定のタスクを実行するか又は関連する機能を提供する、個別又は統合部品の形態の電気回路などのハードウェアデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit)(ASIC)を含んでよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、記載された要素は、実体的な、永続的な、アドレス可能(addressable)な記憶媒体上に存在するように構成されてよく、そして1つ以上のプロセッサ回路上で実行するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、これらの機能要素は、一例として、ソフトウェア部品、オブジェクト指向ソフトウェア部品、クラス部品、タスク部品などの部品、処理、機能、属性、手順、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバ、ファームウェア、マイクロコード、電気回路、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ及び変数(variables)を含む。
【0143】
本明細書において説明した部品、モジュール及びユニットを参照して例示的な実施形態を説明した。しかし、このような機能要素は、より少ない要素を組み合わせられ、又は追加の要素に分離してもよい。本明細書において必要に応じた機能の様々な組み合わせが説明されている。説明された特徴は、任意の適切な組み合わせで組み合わせることができることが理解されるであろう。特に、任意の1つの例示的な実施形態の特徴は、組み合わせが相互に排他的である場合を除いて、他の任意の実施形態の特徴と適宜組み合わせることができる。本明細書において、「含み」(“comprising”)又は「含む」(“comprises”)という用語は、指定された部品を含むことを意味する場合があるが、他の部品の存在を除外することを意図するものではない。
【0144】
いくつかの例示的な実施形態が示され、説明されたが、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正を行うことができることが当業者によって理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図19C
【国際調査報告】