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特表2022-529254共振キャビティを調整する方法、およびキャビティリングダウン分光システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(54)【発明の名称】共振キャビティを調整する方法、およびキャビティリングダウン分光システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/39 20060101AFI20220613BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20220613BHJP
   H01S 3/00 20060101ALI20220613BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20220613BHJP
【FI】
G01N21/39
H01S3/10 Z
H01S3/00 F
G01N21/3504
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560524
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 CA2020050249
(87)【国際公開番号】W WO2020198842
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/828,750
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/564,662
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441618
【氏名又は名称】ピコモル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・クエンティン・パーヴス
(72)【発明者】
【氏名】ペリー・エフ・カイン
(72)【発明者】
【氏名】デニス・デュフール
【テーマコード(参考)】
2G059
5F172
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059BB12
2G059DD12
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE09
2G059GG01
2G059GG03
2G059GG09
2G059HH01
2G059JJ05
2G059JJ13
2G059JJ18
2G059JJ22
2G059KK01
2G059LL01
2G059LL03
2G059MM04
2G059MM14
5F172AD04
5F172AD05
5F172DD06
5F172NN24
5F172NP18
5F172NQ09
5F172NQ10
5F172NR03
5F172ZZ04
(57)【要約】
共振キャビティを調整する方法と、その方法を用いるキャビティリングダウン分光システムとが提供される。第1の鏡が、共振キャビティの第2の端における第2の鏡に対する第1の位置であって、第1の鏡と第2の鏡との間のキャビティ長さがレーザービームについての共振長さより小さい第1の位置と、第2の鏡に対する第2の位置であって、キャビティ長さが共振長さより大きい第2の位置との間の方向に移動させるために、共振キャビティの第1の端において作動させられる。事象が、キャビティ長さが共振長さに近接するときに引き起こされる。事象の間、第1の鏡は、第1の位置と第2の位置との間の方向において連続的に作動させられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振キャビティを調整する方法であって、
共振キャビティの第1の端における第1の鏡を作動させて、前記共振キャビティの第2の端における第2の鏡に対する第1の位置であって、前記第1の鏡と前記第2の鏡との間のキャビティ長さがレーザービームについての共振長さより小さい第1の位置と、前記第2の鏡に対する第2の位置であって、前記キャビティ長さが前記共振長さより大きい第2の位置との間の方向に移動させるステップと、
前記キャビティ長さが前記共振長さに近接するときに事象を引き起こすステップと、
前記事象の間、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記方向において前記第1の鏡を作動させ続けるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記事象は第1の事象であり、前記方向は第1の方向であり、前記方法は、前記続けるステップの後、
前記第1の鏡を作動させて、前記第1の方向と反対の第2の方向において前記第1の位置に向けて移動させるステップと、
前記キャビティ長さが前記共振長さに近接するときに第2の事象を引き起こすステップと、
前記第2の事象の間、前記第2の位置と前記第1の位置との間の前記第2の方向において前記第1の鏡を作動させ続けるステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の鏡を繰り返し作動させて、前記第1の方向および前記第2の方向に移動させるステップと、
前記キャビティ長さが前記共振長さに近接するときに事象を引き起こすステップと、
前記事象の間、前記第1の鏡を作動させ続けるステップと、
をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の鏡を前記第1の位置と前記第2の位置との間で作動させるために、前記第1の鏡に連結される少なくとも1つの圧電アクチュエータに電圧の波形を適用するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記波形は正弦波である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される前記波形の電圧にベース電圧を加えるステップをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記共振キャビティに連結される光検出器を介して光強度ピークの位置を見つけるために前記ベース電圧を制御するステップであって、前記光強度ピークは前記共振長さにおいて起こる、ステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記共振キャビティを照らすレーザービームの一波長より小さく前記第1の鏡を作動させる、前記少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される前記電圧の波形についての振幅を選択するステップと、
2つの光強度ピークが前記電圧の波形の各々の周期の間に検出されるように前記ベース電圧を制御するステップと
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
隣接の光強度ピークが前記電圧の波形の周期の半分だけ離間されるように前記ベース電圧を制御するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
検出された光強度が閾強度を達成するときに起こるように前記事象を引き起こすステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記事象はリングダウン事象である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光検出器はタイミング回路に連結され、前記タイミング回路は、レーザーからの前記レーザービームを消滅させるために、または、前記共振キャビティのための前記レーザーを離調するために、光変調器および前記レーザーの一方に連結される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
閾強度についての予測される再発時間を決定するステップと、
前記閾強度についての前記予測される再発時間において、前記レーザービームの前記消滅、または、前記共振キャビティのための前記レーザービームの前記離調を引き起こすステップと
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
光検出器を介して前記共振キャビティにおける光の強度を検出するステップをさらに含み、
前記引き起こすステップは、前記光検出器によって検出された前記共振キャビティにおける光強度が閾強度を達成するときに引き起こすことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記光検出器はタイミング回路に連結され、前記タイミング回路は、レーザーからの前記レーザービームを消滅させるために、または、前記レーザーを離調するために、光変調器および前記レーザーの一方に連結される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
共振キャビティを調整する方法であって、
共振キャビティの第1の端における第1の鏡と、前記共振キャビティの第2の端における第2の鏡との間のキャビティ長さを、レーザービームについての共振長さより小さい第1のキャビティ長さと、前記レーザービームについての前記共振長さより大きい第2のキャビティ長さとの間で変化させるステップと、
前記キャビティ長さが前記共振長さに近接するときに事象を引き起こすステップと、
前記事象の間、前記キャビティ長さを前記第2のキャビティ長さに向けて変化させ続けるステップと
を含む方法。
【請求項17】
共振キャビティを調整する方法であって、
共振キャビティの第1の端における第1の鏡を作動させて、前記共振キャビティの第2の端における第2の鏡に対する第1の位置であって、前記第1の鏡と前記第2の鏡との間のキャビティ長さがレーザービームについての共振長さより小さい第1の位置と、前記第2の鏡に対する第2の位置であって、前記キャビティ長さが前記共振長さより大きい第2の位置との間の方向に移動させるステップと、
前記キャビティ長さが前記共振長さに近接するとき、前記共振キャビティを照らすレーザービームの消滅、または、前記共振キャビティのための前記レーザービームの離調を引き起こすステップと、
光検出器が前記共振キャビティにおける光強度を登録する間、前記第1の位置と前記第2の位置との間の前記方向において前記第1の鏡を作動させ続けるステップと
を含む方法。
【請求項18】
前記方向は第1の方向であり、前記方法は、前記続けるステップの後、
前記レーザービームを照らすこと、または、前記共振キャビティのための前記レーザービームを再調整することを引き起こすステップと、
前記第1の鏡を作動させて、前記第1の方向と反対の第2の方向において前記第1の位置に向けて移動させるステップと、
前記レーザービームの前記消滅、または、前記共振キャビティのための前記レーザービームの前記離調を引き起こすステップと、
前記光検出器が前記共振キャビティにおける光強度を登録する間、前記第2の位置と前記第1の位置との間の前記第2の方向において前記第1の鏡を作動させ続けるステップと
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の鏡を前記第1の位置と前記第2の位置との間で作動させるために、前記第1の鏡に連結される少なくとも1つの圧電アクチュエータに正弦波形を適用するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される前記正弦波形の電圧にベース電圧を加えるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記共振キャビティに連結される光検出器を介して光強度ピークの位置を見つけるために前記ベース電圧を制御するステップであって、前記光強度ピークは前記共振長さにおいて起こる、ステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記共振キャビティを照らすレーザービームの一波長より小さく前記第1の鏡を作動させる、前記少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される前記電圧の波形についての振幅を選択するステップと、
2つの光強度ピークが前記電圧の波形の各々の周期の間に検出されるように前記ベース電圧を制御するステップと
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
隣接の光強度ピークが前記電圧の波形の周期の半分だけ離間されるように前記ベース電圧を制御するステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記共振長さに近接する前記キャビティ長さは、検出された光強度が閾強度を達成することによって検出される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記光検出器はタイミング回路に連結され、前記タイミング回路は、レーザーからの前記レーザービームを消滅させるために、または、前記共振キャビティのための前記レーザーを離調するために、光変調器および前記レーザーの一方に連結される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
閾強度の達成のための予測される再発時間を、前記キャビティ長さが前記共振長さに近接するときのための代理として決定するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月3日に出願された米国仮特許出願第62/828,750号の利益を主張し、その内容は本明細書において参照により全体において組み込まれている。
【0002】
本明細書は、概して、共振キャビティに関し、詳細には、共振キャビティを調整するための方法、およびキャビティリングダウン分光システムに関する。
【背景技術】
【0003】
キャビティリングダウン分光(「CRDS: Cavity Ring-Down Spectroscopy」)は、概して、吸収スペクトルを介して気体試料を分析するために使用される手法である。典型的なCRDSシステムは、2つの高反射性鏡を有する室のキャビティへと向けられるビームを発生させるレーザーを用いる。ビームは、通常は、可視光スペクトルまたは近赤外線(「IR」)スペクトルの中にあり、単一波長へと調整される。そして、ビームは鏡同士の間で繰り返し反射され、これは、光の一部分をリングダウンキャビティから逃がすことができる。
【0004】
リングダウンキャビティを「満たす」ために、キャビティの長さは、レーザー波長と調和する必要がある。これは、概して、2つの鏡のうちの一方の位置を調節することで行われる。レーザーがキャビティモードと共振しているとき、強め合う干渉のため、強度がキャビティにおいて増加する。キャビティに入る光が消滅させられるとき、リングダウンキャビティにおける光の強度は、空のとき、所定の率で減衰する。僅かな一部分の光が鏡によって反射されず、リングダウンキャビティから逃げてしまう。逃げる光の強度は、減衰率を決定するためのセンサ構成部品によって測定される。
【0005】
気体試料がリングダウンキャビティに配置されるとき、気体試料に存在する被検物質が光の一部を吸収し、それによってリングダウンキャビティにおける光の強度の減衰を加速させる。吸収スペクトルは、特定の波長における気体試料のないときの光の減衰時間に対して、これらの波長における気体試料の存在するときの光の減衰時間を測定することで、生成される。気体試料における個々の被検物質の特定および定量化は、例えば、様々な被検物質の知られている吸収スペクトルによる、気体試料について測定された吸収スペクトルの線形回帰の性能など、いくつかの方法を介して達成され得る。
【0006】
強め合う干渉を介してリングダウンキャビティを「満たす」ために、リングダウンキャビティの長さは、レーザー波長と調和する必要がある。これは、鏡のうちの一方を鏡のうちの他方に対して移動させることによってキャビティ長さを調節することで達成される。鏡は、リングダウンキャビティの長さを調節するために圧電駆動体によって駆動される1つまたは複数の圧電性の(本明細書では「圧電」と称される)アクチュエータによって典型的には移動させられる。しかしながら、圧電駆動体は離散した出力電圧を生成し、鏡が位置決めされ得る離散した位置をもたらし、それによって鏡同士の間に離散したキャビティ長さを提供する。離散した位置、延いては離散したキャビティ長さのいずれも、特定の波長のレーザー光の強め合う干渉をもたらさない場合、リングダウンキャビティは、リングダウン事象を実施するために満たすのが難しくなり得る。より複雑/高価な圧電駆動体はより細かい分解能を有し得るが、そのコストはひどく高くなり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様において、共振キャビティの第1の端における第1の鏡を作動させて、共振キャビティの第2の端における第2の鏡に対する第1の位置であって、第1の鏡と第2の鏡との間のキャビティ長さがレーザービームについての共振長さより小さい第1の位置と、第2の鏡に対する第2の位置であって、キャビティ長さが共振長さより大きい第2の位置との間の方向に移動させるステップと、キャビティ長さが共振長さに近接するときに事象を引き起こすステップと、事象の間、第1の位置と第2の位置との間の方向において第1の鏡を作動させ続けるステップとを含む、共振キャビティを調整する方法が提供される。
【0008】
事象は第1の事象とでき、方向は第1の方向とでき、方法は、続けるステップの後、第1の鏡を作動させて、第1の方向と反対の第2の方向において第1の位置に向けて移動させるステップと、キャビティ長さが共振長さに近接するときに第2の事象を引き起こすステップと、第2の事象の間、第2の位置と第1の位置との間の第2の方向において第1の鏡を作動させ続けるステップとをさらに含み得る。
【0009】
方法は、第1の鏡を繰り返し作動させて、第1の方向および第2の方向に移動させるステップと、キャビティ長さが共振長さに近接するときに事象を引き起こすステップと、事象の間、第1の鏡を作動させ続けるステップとをさらに含み得る。
【0010】
方法は、第1の鏡を第1の位置と第2の位置との間で作動させるために、第1の鏡に連結される少なくとも1つの圧電アクチュエータに電圧の波形を適用するステップをさらに含み得る。
【0011】
波形は正弦波であり得る。
【0012】
方法は、少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される波形の電圧にベース電圧を加えるステップをさらに含み得る。
【0013】
方法は、共振キャビティに連結される光検出器を介して光強度ピークの位置を見つけるためにベース電圧を制御するステップであって、ピーク光強度は共振長さにおいて起こる、ステップをさらに含み得る。
【0014】
方法は、共振キャビティを照らすレーザービームの一波長より小さく第1の鏡を作動させる、少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される電圧の波形についての振幅を選択するステップと、2つの光強度ピークが電圧の波形の各々の周期の間に検出されるようにベース電圧を制御するステップとをさらに含み得る。
【0015】
方法は、隣接の光強度ピークが電圧の波形の周期の半分だけ離間されるようにベース電圧を制御するステップをさらに含み得る。
【0016】
方法は、検出された光強度が閾強度を達成するときに起こるように事象を引き起こすステップをさらに含み得る。
【0017】
事象はリングダウン事象であり得る。
【0018】
光検出器はタイミング回路に連結でき、タイミング回路は、レーザーからのレーザービームを消滅させるために、または、共振キャビティのためのレーザーを離調するために、光変調器およびレーザーの一方に連結され得る。
【0019】
方法は、閾強度についての予測される再発時間を決定するステップと、閾強度についての予測される再発時間において、レーザービームの消滅、または、共振キャビティのためのレーザービームの離調を引き起こすステップとをさらに含み得る。
【0020】
方法は、光検出器を介して共振キャビティにおける光の強度を検出するステップをさらに含むことができ、引き起こすステップは、光検出器によって検出された共振キャビティにおける光強度が閾強度を達成するときに引き起こすことを含む。
【0021】
光検出器はタイミング回路に連結でき、タイミング回路は、レーザーからのレーザービームを消滅させるために、または、レーザーを離調するために、光変調器およびレーザーの一方に連結され得る。
【0022】
他の態様において、共振キャビティの第1の端における第1の鏡と、共振キャビティの第2の端における第2の鏡との間のキャビティ長さを、レーザービームについての共振長さより小さい第1のキャビティ長さと、レーザービームについての共振長さより大きい第2のキャビティ長さとの間で変化させるステップと、キャビティ長さが共振長さに近接するときに事象を引き起こすステップと、事象の間、キャビティ長さを第2のキャビティ長さに向けて変化させ続けるステップとを含む、共振キャビティを調整する方法が提供される。
【0023】
さらなる態様において、共振キャビティの第1の端における第1の鏡を作動させて、共振キャビティの第2の端における第2の鏡に対する第1の位置であって、第1の鏡と第2の鏡との間のキャビティ長さがレーザービームについての共振長さより小さい第1の位置と、第2の鏡に対する第2の位置であって、キャビティ長さが共振長さより大きい第2の位置との間の方向に移動させるステップと、キャビティ長さが共振長さに近接するとき、共振キャビティを照らすレーザービームの消滅、または、共振キャビティのためのレーザービームの離調を引き起こすステップと、光検出器が共振キャビティにおける光強度を登録する間、第1の位置と第2の位置との間の方向において第1の鏡を作動させ続けるステップとを含む、共振キャビティを調整する方法が提供される。
【0024】
方向は第1の方向とでき、方法は、続けるステップの後、レーザービームを照らすこと、または、共振キャビティのためのレーザービームを再調整することを引き起こすステップと、第1の鏡を作動させて、第1の方向と反対の第2の方向において第1の位置に向けて移動させるステップと、レーザービームの消滅、または、共振キャビティのためのレーザービームの離調を引き起こすステップと、光検出器が共振キャビティにおける光強度を登録する間、第2の位置と第1の位置との間の第2の方向において第1の鏡を作動させ続けるステップとをさらに含み得る。
【0025】
方法は、第1の鏡を第1の位置と第2の位置との間で作動させるために、第1の鏡に連結される少なくとも1つの圧電アクチュエータに正弦波形を適用するステップをさらに含み得る。
【0026】
方法は、少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される波形の電圧にベース電圧を加えるステップをさらに含み得る。
【0027】
方法は、共振キャビティに連結される光検出器を介して光強度ピークの位置を見つけるためにベース電圧を制御するステップであって、ピーク光強度は共振長さにおいて起こる、ステップをさらに含み得る。
【0028】
方法は、共振キャビティを照らすレーザービームの一波長より小さく第1の鏡を作動させる、少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される電圧の波形についての振幅を選択するステップと、2つの光強度ピークが電圧の波形の各々の周期の間に検出されるようにベース電圧を制御するステップとをさらに含み得る。
【0029】
方法は、隣接の光強度ピークが電圧の波形の周期の半分だけ離間されるようにベース電圧を制御するステップをさらに含み得る。
【0030】
共振長さに近接するキャビティ長さは、検出された光強度が閾強度を達成することによって検出され得る。
【0031】
光検出器はタイミング回路に連結でき、タイミング回路は、レーザーからのレーザービームを消滅させるために、または、共振キャビティのためのレーザーを離調するために、光変調器およびレーザーの一方に連結され得る。
【0032】
方法は、閾強度の達成のための予測される再発時間を、キャビティ長さが共振長さに近接するときのための代理として決定するステップをさらに含み得る。
【0033】
なおも他の態様では、共振キャビティの第1の端における第1の鏡、および共振キャビティの第2の端における第2の鏡を有する共振キャビティと、共振キャビティにおける光強度を測定するために共振キャビティに連結される光検出器と、第1の鏡を作動させるために第1の鏡に連結される少なくとも1つの圧電アクチュエータと、少なくとも1つの圧電アクチュエータを制御して第1の鏡を作動させて、第2の鏡に対する第1の位置であって、第1の鏡と第2の鏡との間のキャビティ長さがレーザービームについての共振長さより小さい第1の位置と、第2の鏡に対する第2の位置であって、キャビティ長さが共振長さより大きい第2の位置との間の方向に移動させ、キャビティ長さが共振長さに近接するとき、共振キャビティを照らすレーザービームの消滅、または、共振キャビティのためのレーザービームの離調を引き起こし、光検出器が共振キャビティにおける光強度を登録する間、第1の位置と第2の位置との間の方向において第1の鏡を作動させ続けるために、少なくとも1つの圧電アクチュエータに連結される制御モジュールとを備えるキャビティリングダウン分光システムが提供される。
【0034】
方向は第1の方向とでき、制御モジュールは、レーザービームを照らすこと、または、共振キャビティのためのレーザービームを再調整することを引き起こし、第1の鏡を作動させて、第1の方向と反対の第2の方向において第1の位置に向けて移動させ、レーザービームの消滅、または、共振キャビティのためのレーザービームの離調を引き起こし、光検出器が共振キャビティにおける光強度を登録する間、第2の位置と第1の位置との間の第2の方向において第1の鏡を作動させ続けることができる。
【0035】
制御モジュールは、第1の鏡を第1の位置と第2の位置との間で作動させるために、第1の鏡に連結される少なくとも1つの圧電アクチュエータに正弦波形を適用することができる。
【0036】
制御モジュールは、少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される波形の電圧にベース電圧を加えることができる。
【0037】
制御モジュールは、共振キャビティに連結される光検出器を介して光強度ピークの位置を見つけるためにベース電圧を制御することができ、ピーク光強度は共振長さにおいて起こる。
【0038】
制御モジュールは、共振キャビティを照らすレーザービームの一波長より小さく第1の鏡を作動させる、少なくとも1つの圧電アクチュエータに適用される電圧の波形についての振幅を選択することができ、2つの光強度ピークが電圧の波形の各々の周期の間に検出されるようにベース電圧を制御することができる。
【0039】
制御モジュールは、隣接の光強度ピークが電圧の波形の周期の半分だけ離間されるようにベース電圧を制御することができる。
【0040】
制御モジュールは、検出された光強度が閾強度を達成するとき、キャビティ長さが共振長さに近接することを決定することができる。
【0041】
光検出器はタイミング回路に連結でき、タイミング回路は、レーザーからのレーザービームを消滅させるために、または、共振キャビティのためのレーザーを離調するために、光変調器およびレーザーの一方に連結され得る。
【0042】
他の技術的利点は、以下の図および記載の検討の後、当業者には容易に明らかになり得る。
【0043】
本明細書に記載された実施形態のより良い理解のために、および、実施形態がどのように実行に移され得るかをよりはっきりと示すために、ここで、例だけを用いて添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】一実施形態によるキャビティリングダウン分光システムの様々な光学構成部品および空気圧構成部品の概略図である。
図2図1のキャビティリングダウン分光システムのリングダウンキャビティの概略図である。
図3図1および図2に示されたキャビティリングダウン分光システムの様々な光学構成部品および空気圧構成部品を制御するための電気制御システムの概略図である。
図4A】単一の共振点が横断させられている、図2のリングダウンキャビティの後キャビティ鏡を作動させるために圧電駆動体に適用された三角波形の図である。
図4B図4Aの三角波形を用いて後キャビティ鏡の作動を駆動する圧電駆動体への三角波形の適用の間に検出された光強度を示す図である。
図4C】2つの共振点が横断させられている、図3のリングダウンキャビティの後キャビティ鏡を作動させるために圧電駆動体に適用された三角波形の図である。
図4D図4Cの三角波形を用いて後キャビティ鏡の作動を駆動する圧電駆動体への三角波形の適用の間に検出された光強度を示す図である。
図5図1のキャビティリングダウン分光システムを用いてキャビティリングダウン事象を較正および実施する大まかな方法を示す図である。
図6A図3のリングダウンキャビティの後キャビティ鏡を作動させるために圧電駆動体に適用された正弦波電圧と、キャビティ共振点に対応する電圧レベルとを示す図である。
図6B図6Aの正弦波電圧を用いて後キャビティ鏡の作動の間に検出される光強度の図である。
図6C】キャビティ共振点に対応する電圧レベルにピークが達するまで正弦波電圧を上向きに偏移させた後の図6Aの正弦波電圧の図である。
図6D図6Cの正弦波電圧を用いて後キャビティ鏡の作動の間に検出される光強度の図である。
図6E】キャビティ共振点に対応する電圧レベルが正弦波形の電圧範囲において中心に位置付けられるまで正弦波電圧を上向きに偏移させた後の図6Aおよび図6Cの正弦波電圧の図である。
図6F】ピーク強度が半周期ごとに起こる、図6Eの正弦波電圧を用いて後キャビティ鏡の作動の間に検出される光強度の図である。
図7A】時間tにおける後キャビティ鏡の位置と、対応する反射した光波とを示す図である。
図7B】時間tにおける後キャビティ鏡の位置と、対応する反射した光波とを示す図である。
図7C】時間tにおける後キャビティ鏡の位置と、対応する反射した光波とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
他に明確に記されていない場合、図面において描写されている物品は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【0046】
図示の簡潔性および明確性のために、適切であると考えられる場合、参照符号は、対応する要素または類似の要素を指示するために図の間で繰り返される可能性がある。また、数多くの特定の詳細が、本明細書に記載されている実施形態の完全な理解を提供するために述べられている。しかしながら、本明細書に記載されている実施形態がこれらの特定の詳細なしで実施できることは、当業者によって理解されるものである。他の例では、よく知られている方法、手順、および構成要素は、本明細書に記載されている実施形態を不明瞭にしないように、詳細に記載されていない。例示の実施形態が図において示されて以下に記載されているが、本開示の原理が、現在知られていようがなかろうが、いくつもの技術を用いて実施されてもよいことは、初めに理解されるべきである。本開示は、図面において示されて以下に記載されている例示の実施および技術にいかなる形でも限定されるべきではない。
【0047】
本記載を通じて使用されている様々な用語は、文脈が他に指示していない場合、以下のように読まれて理解され得る。全体を通じて使用されているような「または」は、「および/または」と書かれているかのように、包括的であり、全体を通じて使用されているような単一の品物および代名詞はそれらの複数の形態を含み、逆もまた然りであり、同様に、性別上の代名詞はそれらの反対の代名詞を含み、そのため代名詞は、本明細書において記載されたことを、片方の性別による使用、実行、実施に限定するとして理解されるべきではなく、「例示」は、「図示」または「例を用いる」として理解されるべきであり、他の実施形態に対して必ずしも「好ましい」として理解されるべきではない。用語についてのさらなる定義が本明細書において述べられる可能性があり、これらは、本記載を読むことから理解されるように、それらの用語の先の例および後の例に当てはまる可能性がある。
【0048】
変更、追加、または省略が、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されたシステム、装置、および方法に行われてもよい。例えば、システムおよび装置の構成部品は、一体化または分離されてもよい。さらに、本明細書に開示されているシステムおよび装置の動作は、より多くの構成部品、より少ない構成部品、または他の構成部品によって実施されてもよく、記載されている方法は、より多くのステップ、より少ないステップ、または他のステップを含んでもよい。また、ステップは任意の適切な順番で実施されてもよい。本明細書で使用されているように、「各々」は、セットの各々の部材、または、セットの部分セットの各々の部材を言っている。
【0049】
命令を実行する本明細書で例示されている任意のモジュール、ユニット、コンポーネント、サーバー、コンピュータ、ターミナル、エンジン、またはデバイスは、例えば磁気ディスク、光学ディスク、またはテープなど、保存媒体、コンピュータ保存媒体、またはデータ保存デバイス(取り外し可能および/または取り外し不可能)などのコンピュータ読取可能媒体を含み得る、またはそれらへのアクセスを有し得る。コンピュータ保存媒体は、コンピュータ読取可能命令、データ構造、プログルラムモジュール、または他のデータなど、情報の保存のための任意の方法または技術で実施される揮発性、不揮発性、取り外し可能、および取り外し不可能な媒体を含み得る。コンピュータ保存媒体の例には、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、他の光学保存装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク保存装置、他の磁気保存装置、または、所望の情報を保存するために使用でき、アプリケーション、モジュール、もしくはそれら両方によってアクセスされ得る任意の他の媒体がある。任意のこのようなコンピュータ保存媒体は、装置の一部であり得る、または、装置にアクセス可能もしくは接続可能であり得る。さらに、文脈が他に明確に指示していない場合、本明細書に述べられている任意の処理装置または制御装置が、単一の処理装置として、または複数の処理装置として実施され得る。複数の処理装置は配列または分配されてもよく、本明細書で言及される任意の処理機能は、単一の処理装置が例示され得るとしても、1つまたは複数の処理装置によって実行されてもよい。本明細書に記載されている任意の方法、アプリケーション、またはモジュールは、このようなコンピュータ読取可能媒体によって保存またはそうでなければ保持され、1つまたは複数の処理装置によって実行され得るコンピュータ読取可能/実行可能な命令を用いて実施され得る。
【0050】
特定の実施形態によるCRDSシステム20の様々な構成部品が図1に示されている。COレーザー24および炭素-13 Oレーザー28が提供される。COレーザー24および炭素-13 Oレーザー28は、調節可能な回折格子装置を用いて素早く選択され得る疑似的に均等に離間されたよく知られている一連の周波数で発するガス入り管レーザーである。ガス入り管レーザー技術は長い歴史を有し、正確に知られている周波数で赤外線放射を発生させる安定した堅牢な方法である。COレーザー24と炭素-13 Oレーザー28との両方が中赤外スペクトルでの光を発する。
【0051】
COレーザー24と炭素-13 Oレーザー28との各々は、レーザーキャビティの長さの調節を可能にするアクチュエータおよび出力カプラと、キャビティの後における格子の角度を変化させることで、格子がどの波長を反射するかを調節するために格子のピッチを変化させるためのアクチュエータとを有する。レーザーキャビティの長さを調節することと、格子の角度を変化させることとの両方によって、レーザーは、特定の波長および所望のモード品質に非常に正確に調整させることができる。
【0052】
COレーザー24は第1のレーザービーム32を生成し、炭素-13 Oレーザー28は第2のレーザービーム36を生成する。望まれている光周波数に依存して、COレーザー24が調整されて第1のレーザービーム32を発生させる一方で、炭素-13 Oレーザー28が離調させられるか、炭素-13 Oレーザー28が調整されて第2のレーザービーム36を発生させる一方で、COレーザー24が離調させられるかのいずれかである。この手法では、最大でCOレーザー24および炭素-13 Oレーザー28の一方だけが任意の特定の時間にビームを出力し、そのため第1のビーム32と第2のビーム36とは同時に組み合わせられない。中赤外線、明確には、長い波長の赤外線が、最も揮発性の有機化合物がこの範囲における光を吸収するため、光の種類として選択された。結果として、複数の揮発性有機化合物が1つのシステムによって測定できる。COレーザーが、この範囲において動作し、リングダウン分光のための十分なパワーおよび線幅細さを有する。2つのレーザーを使用することは、CRDSシステム20が気体試料を分析するために使用できる利用可能な波長の範囲および数を増加させる。
【0053】
第1のレーザービーム32は、光学搭載部における鏡40を介してビームスプリッタ44に向けて方向転換される。ビームスプリッタ44は、ある程度は反射性で、ある程度は透過性であり、第1のレーザービーム32および第2のレーザービーム36の各々を、サンプリングビーム48と、サンプリングビーム48と同じ特性を有し、サンプリングビーム48と同様の強度のものであり得る作動ビーム52との2つのビームへと分割する。
【0054】
サンプリングビーム48は高速赤外線検出器56によって受け入れられる。高速赤外線検出器56は、オシロスコープを用いてサンプリングビーム48の振幅およびうなり周波数を測定する。うなり周波数は、COレーザー24または炭素-13 Oレーザー28の最適未満の調整から生じるより高い次元のモードの存在を指し示す可能性がある。望ましくないうなり周波数の検出に応答して、対応するレーザー24または28は、強度を最大化しつつ、うなり周波数の振幅が最小化または排除されるまで調整される。うなり周波数の振幅が許容可能なレベル未満へと低減できない場合、レーザーは異なる波長へと調整され得る。
【0055】
作動ビーム52は第1の光変調器60へと続き、第1の光変調器60は作動ビーム52を光学搭載部における鏡64へと偏向する。鏡64は光を第2の光変調器68に向けて方向転換し、光変調器68はさらに作動ビーム52を焦点レンズ72へと偏向する。光変調器は、レーザーによって発生させられる光ビームの強度を制御するために使用される。ここでの実施形態では、第1の光変調器60および第2の光変調器68は、ブラッグセルとも称される音響光学変調器(「AOM: Acousto-Optic Modulator」)である。AOMは、ゲルマニウムまたはガラスなどの材料に連結された圧電変換器を使用するある種類の光変調器である。記載されている実施形態では、材料はゲルマニウムである。振動する電気信号が圧電変換器に適用されるとき、圧電変換器は振動し、材料に音波を作り出す。これらの音波は材料を膨張および圧縮し、それによって屈折率に周期的な振動を作り出し、ブラッグ回折を可能にする。音波の伝搬の軸に対して垂直な平面に対する一次ブラッグ角においてAOMに入る光は、最大効率におけるブラッグ角の2倍に等しい大きさで偏向されることになる。電気信号を消滅させると、材料のブラッグ回折特性を除去し、光を偏向させずに通過させ、偏向された光路に沿って光を効果的に減衰させる。AOMの副産物は、偏向された光の周波数が偏移させられることである。
【0056】
他の実施形態では、光変調器は、代替で電気光学変調器であってもよい。電気光学変調器は、材料の分子の位置、配向、および/または形を歪めるためにDCまたは低周波の電界を材料に適用する別の種類の光変調器である。結果として、屈折率が変えられ、出て行くビームの位相を、適用された界の関数として変化させる。ビームを偏光子に通すように送ることで、位相変調が強度変調へと変換される。他の方法では、位相変調器が、干渉計の分岐に配置されるとき、強度変調器として作用することができる。
【0057】
さらに、CRDSシステム20が2つの光変調器を有するとして記載されているが、他の実施形態では、CRDSシステムは、より少ない数またはより多くの数の光変調器を有してもよい。
【0058】
第1の光変調器60および第2の光変調器68は、作動ビーム52の強度を調節し、リングダウン事象の開始においてビームを消滅させるために減衰器として作用する。リングダウン事象は、リングダウンキャビティを照らす作動ビーム52の消滅、または、リングダウン室のためのレーザーの離調と、リングダウン室からの光強度データの回収とを含む。第1の光変調器60および第2の光変調器68はAOMであるため、音波(通常は高周波における音波)を使用して光を回析するために音響光学効果を用いる。第1および第2の光変調器の各々において、圧電変換器が、ゲルマニウムまたはガラスなどの材料に連結され、振動する電気信号が圧電変換器を振動させるために使用される。振動する圧電変換器は、材料を膨張および圧縮し、それによって屈折率に周期的な振動を作り出し、ブラッグ回折を可能にする音波を材料に作り出す。音波の伝搬の軸に対して垂直な平面に対するブラッグ角においてAOMに入る光は、最大効率におけるブラッグ角の2倍に等しい大きさで偏向されることになる。電気信号を消滅させると、材料のブラッグ回折特性を除去し、光を偏向させずに通過させ、偏向された光路に沿って光を効果的に消滅させる。したがって、音の強度が、偏向されたビームにおける光の強度を変調させるために使用され得る。
【0059】
第1の光変調器60および第2の光変調器68の各々によって偏向された光の強度は、光変調器60、68の最大偏向効率を表す約85%と、入力光強度の約0.1%の第1の光変調器60および第2の光変調器68の各々の減衰限度との間になり得る。ゲルマニウムに適用される音波が消されるとき、偏向されたビームは先の強度の約30dBまたは99.9%を失う。減衰限度は、入力された光強度が光変調器によってどれくらい低減され得るかの上限を意味する。
【0060】
光変調器は、副作用として、入力された光が第1の端で受け入れられるとき、第1のモードで光の周波数をドップラー偏移させ、入力された光が第2の端で受け入れられ、減衰パワーが同じであるとき、第1のモードと反対の第2のモードで光の周波数をドップラー偏移させる点において非対称である。しかしながら、光の周波数のドップラー偏移は、光が第1の端において入るか第2の端において入るかに拘わらず、同じ方向にある。
【0061】
従来のCRDSシステムは単一の光変調器を使用し、結果として、周波数が偏移させられた作動ビームを有する。これらの周波数偏移が光の周波数に対して概して小さく、光がキャビティにおける物質によって吸収される手法を変え得るが、この周波数偏移は分析の間に補正されることができる。回析がAOMの音波源に向かう場合、周波数偏移は下向きであり、回析が音波源から離れる場合、周波数偏移は上向きである。先に検討されているように、影響は最小である。
【0062】
第2の光変調器68によって偏向させられた作動ビーム52は、焦点レンズ72を介して焦点が合わせられる。レーザービーム、延いては作動ビーム52は、COレーザー24または炭素-13 Oレーザー28から進むにつれて、分岐し続ける。焦点レンズ72は作動ビーム52を元の焦点に戻すように合わせる。
【0063】
その後、光学搭載部の鏡76は作動ビーム52をリングダウン室80に向けて方向転換する。2つの鏡64、76は作動ビーム52の経路の長さで延びる。
【0064】
ここで図1および図2を参照すると、リングダウン室80は、リングダウンキャビティ84と称される共振キャビティを定める細長い管である。前キャビティ鏡88aおよび後キャビティ鏡88b(代替で、本明細書ではキャビティ鏡88と称される)が、リングダウンキャビティ84の長手方向の端に位置決めされている。キャビティ鏡88は、リングダウンキャビティ84の外側からキャビティ鏡88へと向けられる光と、リングダウンキャビティ84の中でキャビティ鏡88へと向けられる光との両方に対して高反射性である。結果として、作動ビーム52の一部分が前キャビティ鏡88aへと向けられ、約0.1%が前キャビティ鏡88aを通過し、リングダウンキャビティ84へ入り、約99.9%の作動ビーム52の大部分が鏡76に向けて戻るように反射させられる。
【0065】
キャビティ鏡88は、キャビティ鏡88の位置決めおよび配向を調節するために作動可能である鏡搭載部92に搭載される。具体的には、リングダウンキャビティ84の前に向かう前キャビティ鏡88aは、3つの機械化されたマイクロメータ96aを介して作動可能である鏡搭載部92に搭載される。リングダウンキャビティ84の後に向かう後キャビティ鏡88bは、光学的な位置合わせのために手作業で調節できる3つの圧電マイクロメータ96bを介して作動可能である鏡搭載部92、または、圧電駆動体でさらに調節させることができる圧電体で作動可能である鏡搭載部92に搭載される。
【0066】
キャビティ鏡88の各々の角度は、光ビームがリングダウンキャビティ84に入るときに光ビームが逸脱しないように十分に位置合わせされるために、変化させることができる。キャビティ鏡88のうちの1つが斜めである場合、光の一部はリングダウンキャビティ84の側面に反射させられ、光の強度が失われ、特には高次のモードが生じる。マイクロメータ96は、角度位置合わせに影響を与えることなくリングダウンキャビティ84の長さを変化させるように同時に調整され得る。これは、リングダウンキャビティ84に入る光の周波数においてリングダウンキャビティ84が共振するように、リングダウンキャビティ84の調整を可能にする。
【0067】
焦点レンズ72は、レーザー光の焦点をリングダウンキャビティ84の光学モードに合わせ、それによって、ビームの最小のウエストがリングダウンキャビティ84の最小のビームのウエストとして同じ場所に位置決めされる。焦点レンズ72の位置は、レーザー波長の範囲の光学モードに合致するように調節され得る。
【0068】
液体窒素で冷却される検出器100の形態での光センサが、後キャビティ鏡88bを通って逃げる光を受け入れるために後キャビティ鏡88bの後に位置決めされている。液体窒素冷却検出器100は、リングダウンキャビティ84から逃げる光の強度を測定する。逃げる光の強度を測定するための他の種類のセンサが、液体窒素冷却検出器100の代わりに使用されてもよい。
【0069】
気体試料が、試験のために気体試料を回収するために使用される熱脱離管104からリングダウンキャビティ84へと充填される。熱脱離管は、概してステンレス鋼から作られ、様々な種類の固体吸着材料を収容する。固体吸着剤は、他の化合物が存在していても興味のある化合物を捕らえて保持するために、特定の化合物をサンプリングするために選択され、回収さられた化合物を分析のために容易に脱離または抽出させることができる。また、選択される固体吸着剤は、興味のある化合物と反応しない。
【0070】
具体的な例では、気体試料は、患者から回収された人の呼気の試料である。熱脱離管104の受入端108が、試験のために人から回収された人の呼気を受け入れる。結果として、興味のある化合物は、熱脱離管104の受入端108に向けてより濃縮される。
【0071】
空気圧システム112が、気体試料を熱脱離管104からリングダウンキャビティ84へと充填し、リングダウンキャビティ84を含めて空気圧システム112の中身を排出するために使用される。気体試料の充填の間、空気圧システム112は、回収された気体試料でリングダウンキャビティ84を満たし(つまり、熱脱離管104から気体試料を脱離し、汚染物を導入することなく気体試料をリングダウンキャビティ84へと入れる)、リングダウンキャビティにおける圧力を1気圧にし、温度を摂氏50℃にし、リングダウンキャビティ84を封止する。この実施形態では、測定された吸収スペクトルが比較される試料のセットについての吸収スペクトルは、結果に影響を与え得るこれらのパラメータの間の一貫性を確保するために、この圧力および温度において決定される。しかしながら、他の実施形態では、圧力および温度は、知られている吸収スペクトルおよび測定された吸収スペクトルについて、他の高さで固定されてもよい。気体試料の排出の間、空気圧システム112は、先に提供された気体試料を、リングダウンキャビティ84と、熱脱離管104からリングダウンキャビティ84へと気体試料を案内するための様々な導管とから一掃する。
【0072】
空気圧システム112は、窒素ガス源116を含む吸入部分を有する。窒素ガス源116は、加圧される、または、1気圧の圧力を少なくとも上回る窒素ガスを加圧することができる非常に清浄な窒素ガスの供給部である。本実施形態では、窒素ガス源116は、周囲圧力を5psi上回って加圧されるが、リングダウンキャビティ84を、1気圧、または、分析が行われる他の選択された大気圧まで加圧するのに圧縮が十分である限り、変化させられてもよい。図示されている実施形態では、窒素ガス源116は、液体窒素容器から蒸発する窒素ガスである。窒素ガス源116は、導管120を介してガス入口弁124aに接続されている。補助ガス入口弁124bが、他のガスの接続を可能にしているが、通常は用いられない。ガス入口弁124aおよび補助ガス入口弁124bはガス吸入配管120aと連通している。圧力計128がガス吸入配管120aに沿って位置付けられており、ガス吸入配管弁124cも位置付けられている。フィルタ130aが、ガス吸入配管120aをリングダウンキャビティ84から封止するキャビティ入口弁124dの前でガス吸入配管120aに沿って位置付けられている。フィルタ130aは、汚染物がキャビティ鏡88に堆積し、反射と干渉する可能性があるリングダウンキャビティ84への汚染物の侵入を抑制する。
【0073】
ガス入口弁124aおよび補助ガス入口弁124bは経路弁124eと連通している。経路弁124eは、脱離管配管120bおよび試料出口配管120cへの直接的なアクセスを可能または不可能にする。
【0074】
脱離管配管120bは順行弁124fと逆行弁124gとを備える。熱脱離管104は、熱脱離管104の受入端108が逆行弁124gに向けて位置付けられた状態で、順行弁124fと逆行弁124gとの間に位置決めされている。熱脱離管104は加熱器132の中に位置付けられている。
【0075】
試料出口配管120cは試料出口弁124hと質量流制御装置136とを備える。
【0076】
空気圧システム112は、リングダウンキャビティ84と連通しているキャビティ出口弁124iを備える出口部分も有する。出口配管140がキャビティ出口弁124iと連通している。圧力計144が出口配管140に沿って位置付けられている。真空遮断弁124jが圧力計144と真空ポンプ148との間に位置付けられている。真空吸入弁124kが真空ポンプ148と連通しており、ポンプ吸入配管150を通じて空気を引き込む。フィルタ130bが、真空ポンプ148の作動と干渉する可能性がある汚染物の侵入を抑制するために、ポンプ吸入配管150に位置付けられている。
【0077】
弁124a~124kは、本明細書では代わりに弁124と称されることもある。
【0078】
キャビティ入口弁124dおよびキャビティ出口弁124iは、利便性のために、特定の場所においてリングダウンキャビティ84に連結されて示されているが、弁124d、124iがリングダウンキャビティ84に連結される場所が変わってもよいことは理解されるものである。好ましい構成では、キャビティ入口弁124dは、前キャビティ鏡88aに隣接のリングダウンキャビティ84の端に向けてリングダウンキャビティ84と連通しており、キャビティ出口弁124iは、後キャビティ鏡88bに隣接のリングダウンキャビティ84の端に向けてリングダウンキャビティ84と連通している。
【0079】
新たな気体試料がリングダウンキャビティ84へと充填されるとき、新たな気体試料を含む熱脱離管104が、図1に示されているように、空気圧システム112に連結される。
【0080】
排出の局面の間、真空吸入弁124kは開けられ、真空ポンプ148は始動させられる。次に、真空吸入弁124kは閉じられ、真空遮断弁124j、キャビティ出口弁124i、キャビティ入口弁124d、ガス吸入配管弁124c、および経路弁124eが連続して開けられる。この経路およびリングダウンキャビティ84に沿う配管の内容物は、真空ポンプ148によってCRDSシステム20から排出される。圧力計144は、システムが十分に排出されたときの決定、特には、圧力計128が真空ポンプ148から遮断されるときの決定を可能にする。システムが十分に排出されたことが決定されるとき、これらの同じ開いた弁124j、124i、124d、124c、および124eは逆の順番で閉じられる。その後、窒素充填の局面の間、弁124a、124c、124d、124i、および124jは、窒素ガス源116からの窒素ガスを配管120aおよび140に充填させるために開けられる。次に、窒素ガスは他の排出局面を用いてパージされる。窒素充填局面および排出局面は、配管を一掃するために望まれるときに繰り返され得る。したがって、CRDSシステム20から、先に試験された気体試料が排出される。
【0081】
新たな試料の充填の間、熱脱離管104は、リングダウンキャビティ84へと充填される二酸化炭素および水の量が最小とされるように、二酸化炭素および水を熱脱離管104から除去するためにフラッシングされる。熱脱離管104をフラッシングするために、ガス入口弁124a、ガス吸入配管弁124c、および逆行弁124gは、熱脱離管104を順行でフラッシングするように窒素ガスへの経路を与えるために、開けられる。熱脱離管104は、気体試料を伴う二酸化炭素および水の回収を抑制するために選択されるが、一般的に、熱脱離管104にはなおもいくらかの二酸化炭素および水がある。
【0082】
500mlの窒素ガスが、熱脱離管104に残っている二酸化炭素および水を元の試料から追い出すために、熱脱離管に通される。次に、順行弁124fおよび試料出口弁124hが、質量流制御装置136への経路を提供するために開けられる。質量流制御装置136は、窒素ガスと、含有された二酸化炭素および水とを、特定の流量で放出させることができる。ここでの構成では、この流量は500ml/分である。次に、すべての弁124が閉じられる。
【0083】
二酸化炭素および水が熱脱離管104から除去されると、空気圧システム112は、空気圧システム112配管において導入されたばかりの窒素ガスを除去するために、先に検討されたのと同じ処理を用いて再び排出される。次に、熱脱離管104を包囲する加熱器132が、熱脱離管104の中の新たな試料を熱的に脱離させるために、熱脱離管104を所望の温度へと加熱する。ガス入口弁124a、経路弁124e、順行弁124f、逆行弁124g、およびキャビティ入口弁124dが、窒素ガス源116から、興味のある脱離された化合物を有する熱脱離管104を通じ、リングダウンキャビティ84へと、窒素ガスに直接的な経路を提供する。
【0084】
リングダウンキャビティ84の中に1気圧の圧力を達成することは、回収および分析された参照データのすべてがこの圧力の高さにあるため望ましく、それによって結果が再現可能であることを確保する。
【0085】
ガス入口弁124aはシステムによってトグルで開閉され、そのため、システムは、1気圧を安定化および達成するために、圧力計128における圧力読取りを待つ。圧力計128の安定化において、圧力読取りがなおも1気圧未満である場合、ガス入口弁124aは、圧力読取りが1気圧となるまで過程を繰り返すために再びトグルされる。リングダウンキャビティ84における圧力の高さが1気圧であることを圧力計128が示すとき、弁はすべて閉じられる。
【0086】
複数の温度において脱離することが望まれる場合、真空ポンプ148が始動させられ、キャビティ出口弁124iおよび真空遮断弁124jは、リングダウンキャビティ84の中身を排出するために開けられる。次に、脱離過程が繰り返される前にキャビティ出口弁124iが閉じられる。
【0087】
完全な排出は、そうでない場合に失われることになるいくらかの気体試料が逆行弁124gとキャビティ入口弁124dとの間にまだあるため、複数の脱離の間には概して実施されない。
【0088】
気体試料を含む固定された容積のリングダウンキャビティをこの手法で所望の圧力の高さまで加圧することで、化合物が付着するリングダウンキャビティの中の表面積は、キャビティの中の圧力を所望の高さへと上昇させるために使用され得る可変容積リングダウンキャビティと比較して、小さくさせることができる。
【0089】
さらに、圧力計128は、熱脱離管104からリングダウンキャビティ84への気体試料の経路から上流にあり、それによって、試料によってその汚染を防止する。
【0090】
図3は、同じく図示されているCRDSシステム20の様々な構成部品のための電子制御サブシステム200の概略図である。すべての線は電気信号または電子信号を表しており、矢印は一方向の通信、電圧の設定などを表しており、矢印でない線は双方向通信を表している。
【0091】
1つまたは複数の処理装置を含むコンピュータ204が、図1および図2に示されている様々な構成部品の機能を制御する制御モジュールとして作用する。コンピュータ204は、1つまたは複数の処理装置205と、本明細書に記載されているように、処理装置205によって実行されるとき、処理装置205にCRDSシステム20の他の構成部品を指図させるコンピュータ実行可能命令を保存する保存装置206とを有する。
【0092】
RF駆動部208の対が、COレーザー24および炭素-13 Oレーザー28に電力供給するためにおおよそ40MHzの信号を送る。レーザー24、28の各々は、出力カプラおよび回析格子を使用して調整される。格子アクチュエータ212が回析格子を作動(回転)させる。他のアクチュエータが出力カプラを作動(並進)させる。各々の出力カプラは1000Vの出力カプラ圧電体216によって駆動される。出力カプラ圧電体216に電力供給する2チャンネル高電圧増幅器220は0Vと1000Vとの間で調節可能である。高電圧増幅器220は、コンピュータ204におけるデータ取得(「DAQ: Data Acquisition」)カード224からのアナログ出力信号で設定される。DAQは、0Vから10Vの間の出力を生成し、高電圧増幅器220は信号を100倍に増幅して0Vから1000Vの信号を生成し、出力カプラ圧電体216に電力供給する。格子について角度を変える各々の格子アクチュエータ212は、RS-232を介してコンピュータ204によって命令が与えられるアクチュエータ駆動部228によって駆動される。各々の格子アクチュエータ212は何ミリメートルも移動させられ、この移動はレーザー24、28のピッチ角へと変換される。
【0093】
空気圧システム112の圧力計128、144からのデータ信号はRS-232を通じて受信される。
【0094】
高速赤外線検出器56は、レーザー24、28を調整するために使用されるビート信号の振幅および周波数を読み取るために使用できる小さい増幅器232およびオシロスコープ236に接続される。
【0095】
熱脱離管の加熱器132のための温度制御装置240は、RS-232を介してコンピュータ204によって制御される。管加熱器132は、温度センサと、温度センサの周りに巻き付けられた加熱テープを有するアルミニウム片とを備える。加熱テープと温度センサとは、PID(比例・積分・微分)制御装置である温度制御装置240に両方とも接続されている。制御装置は、RS-232を介して主コンピュータ204に温度を設定して復唱する。
【0096】
中継基板244がコンピュータ204に接続され、ソレノイド弁124および真空ポンプ148のすべてをオンおよびオフするために使用される。
【0097】
3チャンネル圧電駆動体248が、リングダウンキャビティ84の長さを調節するためにマイクロメータ96bを作動させる圧電アクチュエータ252を駆動する。各々の通路は、RS-232を通じた圧電駆動体への通信部と、DAQカード224からのアナログ入力部との2つの構成部品を有する。他の実施形態では、2つ以上の圧電駆動体が用いられてもよい。
【0098】
各々の光変調器60、68は、おおよそ40MHzの信号を送るRF駆動部256で駆動される。RF駆動部256の周波数を変化させることで、所与の光学波長についてのブラッグ角を変化させる、または、所与または固定のブラッグ角が調和される光学波長を変化させる。RF駆動部256が特定の周波数に調整され、フルパワーに設定される場合、作動ビーム52のほとんど(約85%)は通過する。80%、70%に調節される場合、光変調器60、68は減衰することになる。RF駆動部256がゼロに設定される場合、光変調器60、68は完全に止まる。RF駆動部の周波数は、RS232を介して構成部品を通じて設定される。アナログおよびデジタルの構成部品は、RF駆動部256の振幅およびオン/オフ状態を設定することができる。具体的には、DAQカード224は信号をタイミング回路260に送り、タイミング回路260はさらに、RF駆動部の振幅を可能および設定するために必要とされる4つの必要信号を生成する。タイミング回路260は、定常状態条件で、または、タイミング回路260が4つの電圧をゼロに設定し、所定の時間の長さの後に以前の電圧レベルに戻るリングダウンを引き起こす条件とで動作することができる。
【0099】
タイミング回路260を制御するDAQカード224からのデジタル出力(「DO」)がある。
【0100】
ここで図1および図3を参照すると、気体試料がリングダウンキャビティ84に充填されると、1つのレーザー24、28が特定の波長に調整され、その光が第1の光変調器60を通るように向けられ、鏡64によって反射され、第2の光変調器68に通され、鏡76によってリングダウン室80へと反射される。光変調器60、68は、作動ビーム52の強度を変調させるために作動ビーム52をいくらか減衰させる。
【0101】
作動ビーム52が前キャビティ鏡88aに到達するとき、約0.1%の一部分が前キャビティ鏡88aを突き抜けてリングダウンキャビティ84に入る。約99.9%の作動ビームの大部分は、最初に、作動レーザー24または28への同じ経路に沿って戻るように反射される。
【0102】
最初に、リングダウンキャビティ84は照らされていない。光がリングダウンキャビティ84に入り、リングダウンキャビティ84における光の大部分は2つのキャビティ鏡88の間で反射させられるため、リングダウンキャビティ84における光の量またはパワーは、さらなる光が作動ビーム52を介して外部から導入されるにつれて増加し始める。光の特定の一部分はキャビティ鏡88を過ぎて漏れる。リングダウンキャビティ84を光で「満たす」のは時間の期間が掛かり、これは、キャビティ長さCLが、調整されたレーザーについてのリングダウンキャビティ84の隣接の共振長さに等しいときに起こり得る。この時点において、入ってくる光と漏れとの間には平衡がある。この平衡が達成されると、レーザー24、28は、消滅させられる、または、光変調器60、68を介してリングダウンキャビティ84に入ることから停止させられる。他の実施形態では、レーザーは、構成されたキャビティ長さについて共振しないように離調させられ得る。
【0103】
ここで、図2および図4Aを参照して、選択されたレーザー波長についてのリングダウンキャビティ84の隣接の共振長さの位置を見つけるための1つの手法が示されている。図示されている手法では、圧電駆動体248は、0ボルトにおいて開始し、100ボルトまで徐々に増加し、ここで記載されている構成において後キャビティ鏡88bの約7.5ミクロンの移動をもたらし、次に0ボルトへと戻るように徐々に低下する出力を、圧電アクチュエータ252の各々へと送信するために、コンピュータ204によって制御される。対応する三角波が図4Aに示されている。他の実施形態では、電圧の範囲は変化させられ得る。圧電アクチュエータ252に提供される電圧が増加または低下させられるとき、圧電マイクロメータ96bは、前キャビティ鏡88aに向かう方向、または前キャビティ鏡88aから離れる方向に、後キャビティ鏡88bを移動させ、それによってリングダウンキャビティ84のキャビティ長さCLを変化させる。キャビティ長さが隣接の共振長さに合致するように後キャビティ鏡88bを作動させるために圧電アクチュエータ252に加えられる必要がある電圧は、隣接の共振長さRLとして示され、代わりに、以後において隣接の共振長さRLとして称されてもよい。
【0104】
この三角波の選択された振幅およびレーザー光の構成された波長の結果として、キャビティ長さCLは、ゼロの電圧が圧電アクチュエータ252に加えられるときの初期のキャビティ長さCLと、初期電圧における第1の共振長さRLとの間の差に応じて、図4Aおよび図4Cにそれぞれ示されているように、共振長さRLの2倍または4倍のいずれかと等しくなる。
【0105】
リングダウンキャビティ84が共振しており、平衡に近づくとき(つまり、キャビティ鏡88を介して漏れ出す光の量が、作動ビーム52から入る光の量に等しいとき)、入ってくるレーザー光が前キャビティ鏡88aによってまったく反射されないように、または非常に僅かしか反射されないように、入ってくるレーザー光との弱め合う干渉がある。結果として、リングダウンキャビティ84が平衡になると、前キャビティ鏡88aに向けられるリングダウンキャビティの帯域幅内の作動ビーム52の一部分の反射は、実質的に排除される。
【0106】
図4Aに示されているように、電圧が増加させられるとき、液体窒素冷却検出器100によって検出される光の強度はPにおいてピークに達し、電圧が低下させられるとき、液体窒素冷却検出器100によって検出される光の強度はPにおいてピークに達する。興味のあるのは、Pが起こる電圧が、Pが起こる電圧より概して高いことである。例えば、電圧が増加させられているとき、光強度ピークは70ボルトにおいて起こり、電圧が低下させられているとき、光強度ピークは63ボルトにおいて起こり得る。これは、圧電マイクロメータ96bの圧電アクチュエータ252のヒステリシスの結果としてであり得る。液体窒素冷却検出器100によって検出された結果生じた光強度は、図4Bに示されている。
【0107】
同様に、図4Cに示されているように、電圧が増加させられるとき、液体窒素冷却検出器100によって検出される光の強度はPおよびPにおいてピークに達し、電圧が低下させられるとき、液体窒素冷却検出器100によって検出される光の強度はPおよびPにおいてピークに達する。PおよびPが起こる電圧は、PおよびPが起こる電圧より概して高い。液体窒素冷却検出器100によって検出された結果生じた光強度は、図4Dに示されている。
【0108】
リングダウンキャビティ84を調整し、キャビティリングダウンを回収する異なる方法が開発されて、概して図5において符号300で示されている。方法300は、圧電駆動体248へと送信される正弦波形の発生で開始する(310)。コンピュータ204は、デジタイザ264を介して、正弦波形を発生させて圧電駆動体248へと送信させるようにDAQ224に指図する。発生させられた正弦波形電圧は、この実施形態では30,000点から発生させられるアナログ波形であるが、この数は相当に変化させられ得る。本実施形態における正弦波形は約200Hzの周波数を有し、正弦波形電圧は、約2ボルトの振幅と2ボルトのオフセットとを有するが、これらは他の実施形態において変化させられ得る。一秒間あたり500,000個のサンプルにおいてデジタルで発生させられる正弦波形が、電圧を圧電アクチュエータ252にどのように加えるかを圧電駆動体248に命令するために使用される。したがって、圧電駆動体248は正弦波形電圧を圧電アクチュエータ252に適用する。正弦波形電圧を介した後キャビティ鏡88bの作動224は、三角波形の山と谷とにおいて起こり得るなど、速度における鋭い変化の周りで起こり得る振動の発生を軽減する。
【0109】
図6Aは、DAQ224から正弦波形を受信することに応答して、圧電駆動体248によって発生させられる正弦波形電圧SVを示している。見て分かるように、正弦波形電圧SVを介した後キャビティ鏡88bの移動は、リングダウンキャビティの隣接の共振長さRLに合致するための、後キャビティ鏡88bの作動を介したキャビティ長さCLの調節をもたらさない。後キャビティ鏡88bの効果的な一定の運動は、圧電体におけるデジタル設定の低い分解能を克服させることができる。点が離散的であるが、圧電アクチュエータ252の滑らかな運動を提供するための十分な点がある。実際、圧電アクチュエータ252は、点同士の間で駆動されるときに運動量を有し、したがって、はるかにより大きな有効な分解能を可能にする。
【0110】
図6Bは、図6Aの正弦波形SVを用いた後キャビティ鏡88bの移動の結果として、液体窒素冷却検出器100によって検出された結果生じた光強度を示している。キャビティ長さCLが共振長さRLの近づかないため、弱め合う干渉が光強度をリングダウンキャビティ84において増加させない。
【0111】
図5に戻って参照すると、次に、隣接の共振長さRLが正弦波形電圧SVにおいて中心に位置付けられるまで正弦波形電圧SVが偏移させられる(320)。コンピュータ204は、圧電駆動体248に、RS-232を介して送られるデジタル信号を介して、レーザー光強度ピークが液体窒素冷却検出器100によって検出されるまで、ベース電圧を正弦波形電圧に加え、ベース電圧を増加させるように圧電駆動体248に指図する。液体窒素冷却検出器100は、検出された光強度レベルをデジタイザ264に報告し、延いてはコンピュータ204に報告し、それによってフィードバックループを作り出す。連続曲線をデジタルベース電圧に効果的に模倣させる正弦波形電圧を加えることで、はるかにより高い分解能が、より高い電圧において達成される。
【0112】
図6Cは、総電圧AVを発生させるために、正弦波形電圧SVに加えられたベース電圧BVを示している。総電圧AVは、後キャビティ鏡88bを、キャビティ長さCLが前キャビティ鏡88aと後キャビティ鏡88bとの間のキャビティ長さCLがリングダウンキャビティ84の隣接の共振長さRLに等しくなる位置を通じて移動させ、その位置を通じて再び戻すように移動させる。
【0113】
図6Dは、図6Cに示されているように総電圧AVが圧電駆動体248に加えられるとき、液体窒素冷却検出器100によって検出されて折り返し報告される対応する光強度を示している。キャビティ長さCLが共振長さRLピークに合致する時間における光強度は、ピークP、P、およびPに示されているようにピークに達し、これらの事象の間では、概してノイズと見なされる。
【0114】
コンピュータ204は、液体窒素冷却検出器100によって検出される光強度ピークが、図6Eに示されているように、半分の周期T/2で時間に関して等しく離間されるまで、RS-232を介してベース電圧BVを増加させ続ける。光強度ピークが等しく離間されているとき、共振長さRLは、総電圧AVの最小値と最大値との間のキャビティ長さCLの中間によって合致させられる。ベース電圧BVが調節されている間、隣接の共振長さRLに対応する電圧における変動が監視される。初期化過程の間、隣接の共振長さRLに対応する電圧は、可及的に少なくとも部分的に構成部品の「ウォーミングアップ」の結果として、変動する可能性がある。この電圧は、概して短時間の後に安定する。正弦波形電圧SVにおいて隣接の共振長さに対応する電圧を中心に位置付けるための正弦波形電圧SVの偏移は、隣接の共振長さRLに対応する電圧が安定したと考えられるきに完了されるだけである。
【0115】
図6Fは、図6Eに示されているように、圧電駆動体248に加えられる総電圧AVに対応する、液体窒素冷却検出器100によって検出された光強度を示している。見て分かるように、ピークP~Pは、デジタイザ264の15,000点に等しい、正弦波形電圧SVの周期の半分またはT/2によって等しく離間されている、または分離されている。
【0116】
図7A図7Cは、図6Eにそれぞれ示された時間t、t、およびtにおけるリングダウンキャビティ84におけるレーザー光の弱め合う干渉または強め合う干渉を示している。具体的には、図7Aでは、キャビティ長さCLは、圧電駆動体264に適用される電圧の増加を通じて、延いては、前キャビティ鏡88aに向かう後キャビティ鏡88bの移動を通じて短くされているが、リングダウンキャビティ84の隣接の共振長さRLより長くなっている。結果として、後キャビティ鏡88bから反射する光は、後キャビティ鏡88bに近づく光を伴う位相から外れ、弱め合う干渉をもたらす。光が前キャビティ鏡88aと後キャビティ鏡88bとの間で続いて反射されるとき、弱め合う干渉が光の強度を打ち消してしまう。
【0117】
図7Bでは、キャビティ長さCLは、圧電駆動体264に加えられる電圧の増加を通じてなおも短くされており、リングダウンキャビティ84の共振長さRLと等しい。結果として、後キャビティ鏡88bから反射する光は、後キャビティ鏡88bに近づく光と同相となり、強め合う干渉をもたらし、それによってリングダウンキャビティ84における光を増大させる。この位置において、後キャビティ鏡88bは、前キャビティ鏡88aに向けて連続的に作動させられ、したがって、キャビティ長さが隣接の共振長さに等しい位置を、効果的に停止することなく通過する。
【0118】
図7Cでは、キャビティ長さCLは、圧電駆動体264に加えられる電圧の増加を通じてなおも短くされているが、リングダウンキャビティ84の隣接の共振長さRLより短くなっている。ここで、後キャビティ鏡88bは前キャビティ鏡88aに向けて連続的に進む。結果として、後キャビティ鏡88bから反射する光は、後キャビティ鏡88bに近づく光を伴う位相から外れ、弱め合う干渉をもたらす。光が前キャビティ鏡88aと後キャビティ鏡88bとの間で続いて反射されるとき、弱め合う干渉が光の強度を打ち消してしまう。
【0119】
再び図5を参照すると、共振長さRLに対応する電圧が総電圧AVの範囲において中心に位置付けられると、コンピュータは閾光強度を決定する(330)。この実施形態では、閾光強度は、電子構成部品が遅れを有するため、レーザー光が消滅される時間を可能にするために、実験的にピーク光強度の90%に設定される。光強度は液体窒素冷却検出器100から受信される。
【0120】
次に、コンピュータ204は、図6Eに示されている総電圧AVを用いて後キャビティ鏡88bを作動させ続ける。具体的には、コンピュータ204はベース電圧BVを発生させるように圧電駆動体248に指図し、DAQ224を制御して、圧電駆動体248によって使用される正弦波形を圧電駆動体248に提供して、総電圧AVに到達するようにベース電圧BVに加えられる正弦波形電圧SVを発生させる。圧電駆動体248によって発生させられる総電圧AVは、キャビティ長さCLが共振長さRLと等しくなる位置を通じて、後キャビティ鏡88bを第1の方向または第2の方向に移動させる(340)。
【0121】
先に決定された閾強度を検出すると、デジタイザ264は、リングダウンキャビティ84に提供されるレーザー光を光変調器60、68に消滅させるために、起動パルスをタイミング回路260に送る(350)。具体的には、デジタイザ264はタイミング回路260を起動してRF駆動部の電圧をゼロに設定する。
【0122】
タイミング回路260は、光ビームの強度を第1の光変調器60から低減するために光変調器60、68の減衰限度またはその近くに光ビームを減衰するように、第1の光変調器60および第2の光変調器68に同時に指図する。CRDSシステム20では、両方の光変調器60、68を同時に止めるように指図することで、短い時間の長さの間に第1の光変調器60によって偏向される光の量は、第2の光変調器68が止められるため、第2の光変調器68によって著しく低減される。
【0123】
第2の光変調器68は、第1の光変調器60だけを介して達成される減衰を大きく増加させる。ここに記載されている実施形態では、第1の光変調器60が30dBの減衰を可能とし、第2の光変調器68が追加の30dBの減衰を可能とする場合、光変調器60、68を介して達成される全体の減衰は、それらの減衰の合計、すなわち60dBである。リングダウンキャビティ84を光で満たす間、光変調器60、68は作動ビーム52を減衰させてその強度を変調させる。ここでの構成では、光変調器60、68の各々は、10dBの全体の減衰のために、作動ビーム52を5dBだけ減衰させる。結果として、光変調器60、68の各々は、作動ビーム52の消滅の間、50dBの全体のさらなる減衰のために、作動ビーム52を25dBだけなおもさらに減衰することができる。従来の設定では、1つの光変調器が作動ビームを10dBだけ減衰する必要があり、20dBのさらなる減衰を、作動ビームを消滅させるために利用可能とする。理解されるように、作動ビーム52は、20dBのさらなる減衰を伴う1つの光変調器より、2つの光変調器60、68を介したさらなる50dBの減衰を介してはるかに素早く消滅させることができる。結果として、光変調器60、68が止まるように指図された後にリングダウンキャビティ84へと導入された追加の光の量が、従来のCRDSシステムにおける単一の光変調器の設定によってさらに導入される光の小さい一部分である。作動ビーム52をより素早く消滅させることで、リングダウンキャビティ84における光の測定される減衰は、光変調器60、68のランプダウン時間の間に追加の光によって影響を受けにくく、したがって、知られている減衰時間に対して観測された減衰時間を一致させるときにより高い精度を与える。
【0124】
リングダウンキャビティ84に提供されるレーザー光の消滅はリングダウン事象を開始させることができる。リングダウンキャビティ84に提供される共振レーザー光は、例えばレーザーを離調させることで、代替の実施形態において他の手法で消滅されてもよい。閾を介してリングダウン事象を引き起こすことを開始することで、リングダウン事象はピークの間に起こるように時間調整させることができる一方で、リングダウンキャビティ84はレーザー光と共振しており、ピークの一方の側にない。さらに、共振の帯域幅が約10ミリボルトであるため、圧電駆動体248の分解能は、ピークを適切に追従するのには不十分な粗さである。
【0125】
リングダウン事象の間、コンピュータ204は、リングダウンキャビティ84の後端から出る液体窒素冷却検出器100によって報告される光強度データを登録する(360)。リングダウン事象は、ここでの構成では約10マイクロ秒にわたって続くが、他の実施形態ではより長い時間またはより短い時間にわたって続いてもよい。光減衰時間は約2マイクロ秒である。
【0126】
リングダウン事象が引き起こされたときから約100マイクロ秒後に、タイミング回路260は、リングダウンキャビティ84へと作動ビーム52を通過させることを再び開始するために光変調器60、68を指図する(370)。次に、十分なリングダウンデータが回収されたかどうかが決定される(380)。CRDSシステム20は、この実施形態では、500回のリングダウン事象からデータを回収するように構成されている。500回のリングダウン事象からのデータが捕らえられた場合、コンピュータ204は、圧電駆動体248の動作を停止し、次にリングダウン事象データから減衰率を決定する。代わりに、符号380において、さらなるリングダウンデータが回収されることが決定される場合、コンピュータ204は、後キャビティ鏡88bを作動させるように圧電駆動体248に指図し続ける。図6Eに示されているように、総電圧AVが最大または最小を達成するとき、総電圧AVは反対方向に進行し始める(390)。つまり、総電圧AVが、その範囲における最大電圧を達成する前に増加している場合、総電圧AVは、共振長さRLに対応する電圧に向けて戻るように低下する。代わりに、総電圧AVが、その範囲における最小電圧を達成する前に低下している場合、総電圧AVは、共振長さRLに対応する電圧に向けて戻るように増加する。この手法では、リングダウン事象は両方の方向において引き起こされる。
【0127】
リングダウン事象データ(つまり、リングダウン事象の間の光強度)は、様々な出力が流れ得るため、できるだけ素早く回収される。例えば、圧電アクチュエータ252は、圧電クリープと称される整定時間を有し得る。
【0128】
一方向において回収されるリングダウンキャビティにおける光強度減衰についてのリングダウン事象データが、他方の方向において回収されるリングダウン事象データにおいて起こり得るエラーと反対であるエラーを生み出す可能性がある。したがって、リングダウン事象のデータを平均化することは、より正確なデータをもたらし得ることが分かっている。
【0129】
始まりの強度の1/e(おおよそ0.37に等しい)までの低下に対する強度についての時間の長さとして定義される減衰定数、または他のレベルが決定でき、光が気体試料によってどれくらい吸収されているかを決定するために、試料なしでの基準の減衰時間と比較される。リングダウンにおける加速は、リングダウンキャビティ84における気体試料の存在に起因する。測定された減衰時間を用いることで、吸収係数が周波数/波長について計算され得る。
【0130】
上記の方法300は、レーザー調整およびリングダウンキャビティ84の調整を常に追跡することと対照的に、レーザーを調整および設定させることができ、リングダウンキャビティ84をレーザーに対して調整させて設定させることができる。さらに、効果的な連続的な動作を通じてキャビティ鏡の少なくとも一方を互いに対して作動させることで、マイクロボルトの分解能を伴う高価な圧電駆動体を用いる必要性が回避できる。なおもさらには、圧電駆動体によって発生させられる電圧が小さい範囲にわたって一掃されるため、リングダウン事象データは比較的短い時間の期間(この実施形態では数秒間)にわたって回収され得る。
【0131】
中心に位置付ける方法の使用は、共振点の近くのピークのより正確なサンプリングを可能にし、はるかにより厳しい分解能と、より小さい標準偏差とを与える。
【0132】
気体試料についての吸収スペクトルを発生させるために、複数の周波数の光について処理が繰り返される。例えば、COレーザー24によって発生させられる光は、ある範囲の周波数についての吸収係数を提供する。同様に、吸収係数が、炭素-13 Oレーザー28からの光についてのある範囲の周波数について発生させられ得る。この手法では、吸収スペクトルが試料について発展させられ得る。
【0133】
他の代替の実施形態では、共振ピークの時間調整された場所が決定でき、閾強度が達成されるときの時間調整された場所が登録され得る。これらの時間調整された場所は、閾強度と、共振長さに対するキャビティ長さの近接との検出のための代理として用いられてもよい。
【0134】
先に記載されている実施形態では、光源が、中赤外線範囲での光を生成する2つのレーザーであるが、他の光源が用いられ得ることは理解されるものである。例えば、可視スペクトルでの光を生成するレーザー、または近赤外線のレーザーが用いられてもよい。さらに、いくつかの状況では、CRDSシステムは、作動ビームを発生させるために、1つだけのレーザー、または3つ以上のレーザーを備え得る。
【0135】
電気光学変調器が音響光学変調器の代わりに使用されてもよい。
【0136】
音響光学変調器は、作動ビームの周波数が上または下に偏移されるように構成され得る。音響光学変調器によってもたらされる正味の周波数の偏移が、反射した光が発生させられるレーザー光の帯域幅から外れるように、レーザーによって発生させられる作動ビームの周波数から相当に離れるように作動ビームの周波数を偏移させる限り、反射した光と発生させられた作動ビームとの間の干渉の大きさは最小限とされ得る。
【0137】
他の実施形態では、3つ以上の光変調器が、さらなる消滅能力を提供して、リングダウン事象の開始において作動ビームをより素早く消滅させるために、CRDSシステムに用いられてもよい。さらに、さらなる実施形態では、1つだけの光変調器が用いられてもよい。
【0138】
1つまたは複数の焦点レンズが他の実施形態では用いられてもよく、レーザーの各々の波長のモード一致を可能にするようにレンズの再位置決めを可能にするために並進させられ得る。
【0139】
同じ手法が、他の種類の共振キャビティのために、特には、光学共振キャビティのために採用されてもよい。
【0140】
他の種類の事象は、キャビティ長さが具体的に選択された波長についてのキャビティの共振長さに近接するときに引き起こされ得る。
【0141】
気体試料の分析は、他の実施形態では1気圧以外の圧力の高さで実施され得る。したがって、吸収スペクトルの幅が変化してもよい。
【0142】
特定の利点が先に列挙されたが、様々な実施形態は、列挙された利点のうちのいくつか、もしくは全部を含んでもよく、またはいずれも含まなくてもよい。
【0143】
先に記載されている実施形態では、共振キャビティがリングダウンキャビティであるが、他の実施形態では、他の種類の共振キャビティが採用されてもよい。
【0144】
当業者は、なおもより多くの代替の実施および変形が可能であることと、上記の例は1つまたは複数の実施の単なる例示であることとを理解するものである。そのため、範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって限定されるだけである。
【符号の説明】
【0145】
20 CRDSシステム
24 COレーザー
28 炭素-13 Oレーザー
32 第1のレーザービーム
36 第2のレーザービーム
40 鏡
44 ビームスプリッタ
48 サンプリングビーム
52 出力ビーム
56 高速赤外線検出器
60 第1の光変調器
64 鏡
68 第2の光変調器
68 焦点レンズ
76 鏡
80 リングダウン室
84 リングダウンキャビティ
88 キャビティ鏡
88a 前キャビティ鏡
88b 後キャビティ鏡
92 鏡搭載部
96 マイクロメータ
96a 機械化されたマイクロメータ
96b 圧電マイクロメータ
100 液体窒素冷却検出器
104 熱脱離管
108 受入端
112 空気圧システム
116 窒素ガス源
120 導管
120a ガス吸入配管
120b 脱離管配管
120c 試料出口配管
124 ソレノイド弁
124a ガス入口弁
124b 補助ガス入口弁
124c ガス吸入配管弁
124d キャビティ入口弁
124e 経路弁
124f 順行弁
124g 逆行弁
124h 試料出口弁
124i キャビティ出口弁
124j 真空遮断弁
124k 真空吸入弁
128 圧力計
130a、130b フィルタ
132 加熱器
136 質量流制御装置
140 出口配管
144 圧力計
148 真空ポンプ
150 ポンプ吸入配管
200 電子制御サブシステム
204 コンピュータ
205 処理装置
206 保存装置
208 RF駆動部
212 格子アクチュエータ
216 出力カプラ圧電体
220 高電圧増幅器
224 DAQカード
228 アクチュエータ駆動部
232 増幅器
236 オシロスコープ
240 温度制御装置
244 中継基板
248 3チャンネル圧電駆動体
252 圧電アクチュエータ
256 RF駆動部
260 タイミング回路
264 デジタイザ
CL キャビティ長さ
、P、P、P、P ピーク
RL、RL、RL 共振長さ
t 時間
V 電圧
300 方法
310 波形を発生させて圧電駆動体へと送信する
320 共振長さが中心に位置付けられるまで波形を偏移させる
330 閾強度の位置を決定する
340 共振長さを通じて鏡を第1または第2の方向に作動させる
350 閾強度の位置において光を消滅させる
360 リングダウンデータを回収する
370 キャビティを照らすことを再び開始する
380 十分なデータが回収されたか?
390 他方の方向へと変化する
SV 正弦波形電圧
T 周期
BV ベース電圧
AV 総電圧
、t、t 時間
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
【国際調査報告】