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特表2022-529295ユーイング肉腫治療用キノリン系化合物又はその薬学的に許容される塩
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-20
(54)【発明の名称】ユーイング肉腫治療用キノリン系化合物又はその薬学的に許容される塩
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4709 20060101AFI20220613BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220613BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 31/475 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220613BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20220613BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20220613BHJP
【FI】
A61K31/4709
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/475
A61K31/675
A61K38/08
A61K31/704
A61K31/519
A61K31/7028
A61K31/7048
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562183
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 CN2020085552
(87)【国際公開番号】W WO2020211860
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】201910315417.X
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン,シャオレ
(72)【発明者】
【氏名】トゥー,リーファン
(72)【発明者】
【氏名】イァン,チャオチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン,シィーチュァン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シュンチィァン
(72)【発明者】
【氏名】シィー,ヂィエ
(72)【発明者】
【氏名】シィー,ピィン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チァンチィェン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA09
4C084BA17
4C084BA27
4C084BA32
4C084DA27
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086CB09
4C086CB21
4C086DA28
4C086DA35
4C086EA07
4C086EA10
4C086EA11
4C086GA06
4C086GA07
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は医薬品分野に属し、ユーイング肉腫治療用キノリン系化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、具体的にはユーイング肉腫の治療薬物を製造するための式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用、及びユーイング肉腫の治療用併用薬物を製造するための式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と第2治療剤との組み合わせの使用に関する。式Iで表される化合物の化学名は1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミンである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーイング肉腫の治療薬物を製造するための下記式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【化1】
【請求項2】
前記ユーイング肉腫は骨内性ユーイング肉腫、骨外性ユーイング肉腫、骨膜性ユーイング肉腫であり、
又は、前記ユーイング肉腫は溶骨性ユーイング肉腫、硬化性ユーイング肉腫、混合性ユーイング肉腫であり、
又は、前記ユーイング肉腫はこれまでの治療が失敗したユーイング肉腫であり、好ましくは、前記ユーイング肉腫は放射線療法及び/又は化学療法薬治療が失敗したユーイング肉腫であることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
ユーイング肉腫の治療用併用薬物を製造するための、第2治療剤と組み合わせた下記式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【化2】
【請求項4】
前記ユーイング肉腫は骨内性ユーイング肉腫、骨外性ユーイング肉腫、骨膜性ユーイング肉腫であり、
又は、前記ユーイング肉腫は溶骨性ユーイング肉腫、硬化性ユーイング肉腫、混合性ユーイング肉腫であり、
又は、前記ユーイング肉腫はこれまでの治療が失敗したユーイング肉腫であり、好ましくは、前記ユーイング肉腫は放射線療法及び/又は化学療法薬治療が失敗したユーイング肉腫であることを特徴とする請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記第2治療剤は化学療法薬及び/又は小分子標的化抗腫瘍薬であり、
好ましくは、前記化学療法薬はアルキル化剤、ポドフィルム系、カンプトテシン系、タ
キサン系、抗代謝薬系、抗生物質系抗腫瘍薬のうちの1種又は複数種であり、
より好ましくは、前記化学療法薬は白金系薬、フルオロピリミジン誘導体、タキサン系、カンプトテシン系、ビンブラスチン系、ペメトレキセド、カルムスチン、エトポシド(ラステット)、テニポシド、マイトマイシン、イホスファミド、シクロホスファミド、アザシチジン、ピラルビシン、アムルビシン、メトトレキサート、ベンダムスチン、エピルビシン、アドリアマイシン、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、テモゾロミド、LCL-161、KML-001、サパシタビン(Sapacitabine)、プリナブリン、トレオスルファン、チピラシル塩酸塩、153Sm-EDTMP、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、エンセキダル(encequidar)のうちの1種又は複数種であり、
さらに好ましくは、前記白金系薬はオキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ジシクロプラチンのうちの1種又は複数種であり、前記フルオロピリミジン誘導体はゲムシタビン、カペシタビン、フルオロウラシル、テガディフール、ドキシフルリジン、テガフール、カルモフール、トリフルリジンのうちの1種又は複数種であり、前記タキサン系はパクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、及びドセタキセルのうちの1種又は複数種であり、前記カンプトテシン系はカンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、トポテカンのうちの1種又は複数種であり、前記ビンブラスチン系はビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニンのうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記小分子標的化抗腫瘍薬はプロテインキナーゼ阻害剤であり、
より好ましくは、前記小分子標的化抗腫瘍薬はチロシンキナーゼ阻害剤、セリン及び/又はスレオニンキナーゼ阻害剤であり、
さらに好ましくは、前記小分子標的化抗腫瘍薬はエルロチニブ、アファチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、カボザンチニブ、ゲフィチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ロルラチニブ、トラメチニブ、ラロトレクチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、セルメチニブ、ソラフェニブ、オルムチニブ、サボリチニブ、フルキンチニブ、エヌトレクチニブ、ダサチニブ、エンサルチニブ、レンバチニブ、イタシチニブ(itacitinib)、ピロチニブ、ビニメチニブ、エルダフィチニブ、アキシチニブ、ネラチニブ、コビメチニブ、アカラブルチニブ、ファミチニブ、マシチニブ、イブルチニブ、ロシレチニブ(rociletinib)、ニンテダニブ、レナリドミド、エベロリムス、LOXO-292、ボロラニブ(Vorolanib)、ベムセンチニブ(bemcentinib)、カプマチニブ(capmatinib)、エヌトレクチニブ(entrectinib)、TAK-931、ALT-803、パルボシクリブ(palbociclib)、ファミチニブL-リンゴ酸塩(famitinib L-malate)、LTT-462、BLU-667、ニンゲチニブ(ningetinib)、チピファルニブ(tipifarnib)、ポジオチニブ(poziotinib)、DS-1205c、カピバセルチブ(capivasertib)、SH-1028、メトホルミン、セリシクリブ(seliciclib)、OSE-2101、APL-101、ベルゾセルチブ(berzosertib)、イデラリシブ(idelalisib)、レロシクリブ(lerociclib)、セララセルチブ(ceralasertib)、PLB-1003、トミボセルチブ(tomivosertib)、AST-2818、SKLB-1028、D-0316、LY-3023414、アリチニブ(allitinib)、MRTX-849、AP-32788、AZD-4205、リフィラフェニブ(lifirafenib)、バクトセルティブ(vactosertib)、ミベブレシブ(mivebresib)、ナパブカシン(napabucasin)、シトラバチニブ(sitravatinib)、TAS-114、モリブレシブ(molibresib)、CC-223、リボセラニブ(rivoceranib)、CK-101、LXH-254、シモチニブ(simotinib)、GSK-3368715、TAS-0728、マシチニブ(masitinib)、テポチニブ(tepotinib)、HS-10296、AZD-4547
、メレスチニブ(merestinib)、オラプテスペゴル(olaptesed pegol)、ガルニセルチブ(galunisertib)、ASN-003、ジェダトリシブ(gedatolisib)、デファクチニブ(defactinib)、ラゼルチニブ(lazertinib)、CKI-27、S-49076、BPI-9016M、RF-A-089、RMC-4630、AZD-3759、アントロキノンロール(antroquinonol)、SAF-189s、AT-101、TTI-101、ナプチニブ(naputinib)、LNP-3794、HH-SCC-244、ASK-120067、CT-707、エピチニブコハク酸塩(epitinib succinate)、テセバチニブ(tesevatinib)、SPH-1188-11、BPI-15000、コパンリシブ(copanlisib)、ニラパリブ(niraparib)、オラパリブ(olaparib)、ベリパリブ(veliparib)、タラゾパリブトシル酸塩(talazoparibtosylate)、DV-281、シレマドリン(Siremadlin)、テラグレナスタット(Telaglenastat)、MP-0250、GLG-801、ABTL-0812、ボルテゾミブ(bortezomib)、パノビノスタット、ツシジノスタット(tucidinostat)、ボリノスタット(vorinostat)、レスミノスタット(resminostat)、エパカドスタット(epacadostat)、タゼメトスタット(tazemetostat)、エンチノスタット(entinostat)、モセチノスタット(mocetinostat)、キシノスタット(quisinostat)のうちの1種又は複数種であり、
一層好ましくは、前記小分子標的化抗腫瘍薬はソラフェニブ、エベロリムス、エルロチニブ、アファチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、カボザンチニブ、ゲフィチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ロルラチニブ、トラメチニブ、ラロトレクチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、セルメチニブ、オルムチニブ、サボリチニブ、フルキンチニブ、エヌトレクチニブ、ダサチニブ、エンサルチニブ、レンバチニブ、イタシチニブ(itacitinib)、ピロチニブ、ビニメチニブ、エルダフィチニブ、アキシチニブ、ネラチニブ、コビメチニブ、アカラブルチニブ、ファミチニブ、マシチニブ、イブルチニブ、ニンテダニブのうちの1種又は複数種であることを特徴とする請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】
前記第2治療剤はビンクリスチンとシクロホスファミドとアクチノマイシンDとの組み合わせであり、
又は、前記第2治療剤はビンクリスチンとシクロホスファミドとアドリアマイシンとの組み合わせであり、
又は、前記第2治療剤はアドリアマイシンとメトトレキサートとシクロホスファミドとアクチノマイシンDとブレオマイシンとビンクリスチンとの組み合わせであり、
又は、前記第2治療剤はビンクリスチンとシクロホスファミドとアクチノマイシンD及び/又はアドリアマイシンとの組み合わせであり、
又は、前記第2治療剤はイホスファミドとラステットとの組み合わせであり、
又は、前記第2治療剤はアドリアマイシンとシクロホスファミドとの組み合わせであり、
又は、前記第2治療剤はビンクリスチンとシクロホスファミドとの組み合わせであることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記第2治療剤はVAC療法、T9療法、IE療法又はAC療法のうちの1種であることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸
、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ドデシル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸のうちの任意の酸と式Iで表される化合物とが形成した塩であり、好ましくは塩酸塩又はマレイン酸塩であり、より好ましくは二塩酸塩であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
前記式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の1日用量は3mg~30mgであり、好ましくは5mg~20mgであり、より好ましくは8mg~16mgであり、さらに好ましくは8mg~14mgであり、最も好ましくは8mg、10mg又は12mgであり、
好ましくは、前記式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩は投与期間と休養期間を交互に繰り返す間隔投与方法で投与され、好ましくは、投与期間と休養期間との日数基準の比は2:0.5~5であり、より好ましくは2:0.5~3であり、さらに好ましくは2:0.5~2であり、一層好ましくは2:0.5~1であり、前記間隔投与方法として一層好ましくは、2週間の連続投与と2週間の休養、2週間の連続投与と1週間の休養、または5日間の連続投与と2日間の休養のいずれかのサイクルであり、前記サイクルは複数回繰り返すことができることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩及び第2治療剤は同時に、逐次的に又は特に順番がなく順に投与されることを特徴とする請求項3~9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
前記ユーイング肉腫の治療薬物及び/又は併用薬物は経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、経頬、鼻腔内、吸入、経膣、眼内、局所投与、皮下、脂肪内、関節内または髄腔内の任意の投与方法に適する製剤であることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
治療を必要とする被験者に治療有効量の式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与することを含むユーイング肉腫の治療方法。
【請求項13】
前記ユーイング肉腫は骨内性ユーイング肉腫、骨外性ユーイング肉腫、骨膜性ユーイング肉腫であり、
又は、前記ユーイング肉腫は溶骨性ユーイング肉腫、硬化性ユーイング肉腫、混合性ユーイング肉腫であり、
又は、前記ユーイング肉腫はこれまでの治療が失敗したユーイング肉腫であり、好ましくは、前記ユーイング肉腫は放射線療法及び/又は化学療法薬治療が失敗したユーイング肉腫である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を含むユーイング肉腫治療用医薬組成物。
【請求項15】
式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と第2治療剤とを含むユーイング肉腫の治療用併用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は2019年4月19日に中国国家知識産権局に提出された中国特許出願第201910315417.X号の優先権を主張し、当該出願で開示した全ての内容が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は医薬品分野に属し、具体的には、ユーイング肉腫治療用キノリン系化合物又はその薬学的に許容される塩、及びユーイング肉腫の併用療法用キノリン系化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0003】
ユーイング肉腫は一種の単独な骨腫瘍と認められており、神経外胚葉の骨又は軟部組織に由来する小円形細胞腫瘍と定義される。ユーイング肉腫は原発性骨腫瘍の6%~8%を占め、悪性骨腫瘍の10%~14.2%を占め、骨肉腫と軟骨肉腫に次いで小児や青少年に最も一般的な悪性原発性骨腫瘍であり、しかも女性より男性に多発している。
【0004】
痛みと腫れがユーイング肉腫に最もよく見られる初期症状で、患者の60%以上は初期に間欠的な痛みが起こり、しかも痛みの起こった部位は腫瘍の拡散に伴って広がっていく。痛みが強くなるのに伴って局所にしこりができ、しこりには顕著な圧痛が伴う。その後、神経根や脊髄などに神経機能損傷症状が起こり、一部の患者には38℃~40℃の発熱があり、高比重リポタンパク、コレステロール及び赤血球の沈降速度の明らかな上昇や、白血球数の増加及び貧血が伴う。病変部の軟部組織に大きなしこりが生じる場合がある。ユーイング肉腫の悪性度が高く、転移しやすいため、手術、放射線療法又は単剤化学療法だけでは効果が優れず、5年生存率は10%以下であった。
【0005】
当面、ユーイング肉腫に効果的な治療は集学的な治療法であり、放射線療法と化学療法の上に手術を行うものと手術を行わないものがある。化学療法として多いのは複数の薬剤の併用療法である。複数の薬剤の併用による化学療法でユーイング肉腫などを治療する場合に5年生存率が顕著に向上することが既に関連の研究で判明したものの、ユーイング肉腫の多くは2年のうちに転移するため、化学療法の場合は一般に2年間続く。化学療法の長期化により、造血系、呼吸器系、心血管系、神経系、泌尿器系などの合併症をはじめ毒性と副作用が蓄えられる。そのため、ユーイング肉腫の新規治療の開発が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1態様では、ユーイング肉腫の治療薬物を製造するための式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の用途が提供される。
【0007】
式Iで表される化合物の化学名は、1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミンであり、構造式は次のとおりである。
【化1】
【0008】
いくつかの実施形態において、前記ユーイング肉腫は骨内性ユーイング肉腫、骨外性ユーイング肉腫、骨膜性ユーイング肉腫である。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記ユーイング肉腫は溶骨性ユーイング肉腫、硬化性ユーイング肉腫、混合性ユーイング肉腫である。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記ユーイング肉腫は進行期ユーイング肉腫である。いくつかの実施形態において、進行期ユーイング肉腫とは原発性腫瘍又は局所再発性腫瘍で、手術もしくは他の局所的治療法では根治できず、又は患者が手術もしくは他の局所的治療を受けようとしないユーイング肉腫をいう。いくつかの実施形態において、進行期ユーイング肉腫とは既に遠隔転移が起こっている場合に、転移の腫瘍は手術もしくは他の局所的治療法で根治できず、又は患者が手術もしくは他の局所的治療を受けようとしないユーイング肉腫をいう。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記ユーイング肉腫はこれまでの治療が失敗したユーイング肉腫である。好ましくは、前記ユーイング肉腫は放射線療法及び/又は化学療法薬治療が失敗したユーイング肉腫である。より好ましくは、前記ユーイング肉腫はシクロホスファミド、イホスファミド、ドキソルビシン、ピラルビシン、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、カルムスチン、エトポシド、アクチノマイシンD、メトトレキサート、シスプラチンのうちの1種又は複数種から選ばれる化学療法剤での治療が失敗したユーイング肉腫である。最も好ましくは、前記ユーイング肉腫の主体に用いられた化学療法剤はシクロホスファミド、イホスファミド、ドキソルビシン、ピラルビシン、ビンクリスチン、エトポシドのうちの1種又は複数種から選ばれる。
【0012】
本願に記載の式Iで表される化合物はその遊離塩基の形態で投与されてもよいし、その塩、水和物又はプロドラッグの形態で投与されてもよく、当該プロドラッグはインビボで式Iで表される化合物の遊離塩基の形態に変換される。例えば、薬学的に許容される式Iで表される化合物の塩は、本発明の開示を逸脱しない範囲で、本分野で周知される方法で異なる有機酸又は無機酸から生成される。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、ter
t-ブチル酢酸、ドデシル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸のうちの任意の酸と式Iで表される化合物とから形成された塩を含み、ただしそれらに限定されない。本発明では、前記式Iで表される化合物の薬学的に許容される塩の形態としては塩酸塩又はマレイン酸塩が好ましく、二塩酸塩がより好ましい。
【0014】
いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物の塩酸塩の形態で投与される。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物の一塩酸塩の形態で投与される。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物の二塩酸塩の形態で投与される。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物の塩酸塩の結晶の形態で投与される。特定の実施形態において、式Iで表される化合物の二塩酸塩の結晶の形態で投与される。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物のマレイン酸塩の形態で投与される。
【0015】
本発明の第2態様では、治療を必要とする患者に治療有効量の式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与するステップを含むユーイング肉腫の治療方法が提供される。
【0016】
式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩は複数種の方法で投与されてもよく、前記投与方法は経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、経頬、鼻腔内、吸入、経膣、眼内、局所投与、皮下、脂肪内、関節内、髄腔内から選ばれる方法を含み、ただしそれらに限定されない。特定の実施形態において、経口で投与される。
【0017】
式Iで表される化合物の投与方法は薬物の活性、毒性や患者の忍容性などから総合的に決定されてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩は経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、経頬、鼻腔内、吸入、経膣、眼内、局所投与、皮下、脂肪内、関節内、髄腔内のいずれかの投与方法に適する製剤として提供されてもよい。好ましくは経口に適する製剤である。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、好ましくは錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、滴丸、ペースト剤又は散剤として、より好ましくは錠剤又はカプセル剤として提供される。
【0019】
いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与量は疾患の重症度、疾患への応答、任意の治療関連毒性、患者の年齢と健康状態から決定される。いくつかの実施形態において、前記式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の1日用量は3mg~30mgであり、好ましくは5mg~20mgであり、より好ましくは8mg~16mgであり、さらに好ましい1日用量は8mg~14mgであり、最も好ましくは8mg、10mg又は12mgである。
【0020】
好ましくは、間隔投与で式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する。前記間隔投与は投与期間と休養期間とを含み、投与期間において毎日に1回又は複数回で式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する。例えば、投与期間において毎日に式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与し、その後、休養期間において一定期間投与をやめ、続いては投与期間、その後、休養期間となる。このとおりに複数回繰り返すことができる。ただし、投与期間と休養期間との日数基準の比は2:0.5~5、好ましくは2:0.5~3、より好ましくは2:0.5~2、さらに好ましくは2:0.5~1である。
【0021】
間隔投与方法として一層好ましくは、2週間の連続投与と2週間の休養、2週間の連続投与と1週間の休養、5日間の連続投与と2日間の休養から選ばれるいずれかのサイクルであり、前記間隔投与方法は複数回繰り返すことができる。
【0022】
本発明の第3態様では、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される少なくとも1種の担体とを含むユーイング肉腫治療用医薬組成物が提供される。
【0023】
前記医薬組成物は経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、経頬、鼻腔内、吸入、経膣、眼内、局所投与、皮下、脂肪内、関節内、髄腔内での投与に適する製剤を含み、ただしそれらに限定されない。好ましくは錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、滴丸、ペースト剤、散剤などを含む経口に適する製剤であり、好ましくは錠剤、カプセル剤である。錠剤とは通常の錠剤、分散錠、発泡錠、徐放錠、放出制御錠又は腸溶錠であってもよく、カプセル剤とは通常のカプセル、徐放性カプセル、放出制御性カプセル又は腸溶性カプセルであってもよい。前記経口製剤は本分野で周知される薬学的に許容される担体を使用して従来の方法で製造されてもよい。薬学的に許容される担体は充填剤、吸収剤、湿潤剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤などを含む。充填剤はデンプン、ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロースなどを含み、吸収剤は硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムなどを含み、湿潤剤は水、エタノールなどを含み、結合剤はヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、微結晶性セルロースなどを含み、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、界面活性剤、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどを含み、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、アエロジル、タルクなどを含む。医薬品添加剤として着色剤、甘味料などをさらに含む。
【0024】
一実施形態において、当該医薬組成物は経口に適する固形製剤である。当該組成物は例えば、錠剤又はカプセルの形態である。特定の実施形態において、当該医薬組成物はカプセルである。本発明の特定の実施形態において、経口固形製剤における薬学的に許容される担体はマンニトール、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウムを含む。
【0025】
本発明の第4態様では、ユーイング肉腫の治療用併用薬物を製造するための式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と第2治療剤との組み合わせの用途が提供される。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記ユーイング肉腫は骨内性ユーイング肉腫、骨外性ユーイング肉腫、骨膜性ユーイング肉腫を含み、ただしそれらに限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記ユーイング肉腫は溶骨性ユーイング肉腫、硬化性ユーイング肉腫、混合性ユーイング肉腫を含み、ただしそれらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記ユーイング肉腫は進行期ユーイング肉腫である。いくつかの実施形態において、進行期ユーイング肉腫とは原発性腫瘍又は局所再発性腫瘍で、手術もしくは他の局所的治療法では根治できず、又は患者が手術もしくは他の局所的治療を受けようとしないユーイング肉腫をいう。いくつかの実施形態において、進行期ユーイング肉腫とは既に遠隔転移が起こっている場合に、転移の腫瘍は手術もしくは他の局所的治療法で根治できず、又は患者が手術もしくは他の局所的治療を受けようとしないユーイング肉腫をいう。
【0029】
いくつかの実施形態において、前記ユーイング肉腫はこれまでの治療が失敗したユーイ
ング肉腫を含み、ただしそれらに限定されない。好ましくは、前記ユーイング肉腫は放射線療法及び/又は化学療法薬治療が失敗したユーイング肉腫である。より好ましくは、前記ユーイング肉腫の主体に用いられた化学療法剤はシクロホスファミド、イホスファミド、ドキソルビシン、ピラルビシン、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ビンクリスチン、カルムスチン、エトポシド、アクチノマイシンD、メトトレキサート、シスプラチンのうちの1種又は複数種から選ばれる。最も好ましくは、前記ユーイング肉腫の主体に用いられた化学療法剤はシクロホスファミド、イホスファミド、ドキソルビシン、ピラルビシン、ビンクリスチン、エトポシドのうちの1種又は複数種から選ばれる。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記第2治療剤は化学療法薬で、アルキル化剤、ポドフィルム系、カンプトテシン系、タキサン系、抗代謝薬系、抗生物質系抗腫瘍薬のうちの1種又は複数種を含み、ただしそれらに限定されない。その例として、白金系薬(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、ネダプラチン、ジシクロプラチン(dicycloplatin))、フルオロピリミジン誘導体(例えば、ゲムシタビン、カペシタビン、フルオロウラシル、テガディフール、ドキシフルリジン、テガフール、カルモフール、トリフルリジン)、タキサン系(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル)、カンプトテシン系(例えば、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、トポテカン)、ビンブラスチン系(ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニン(vinflunine))、ペメトレキセド、カルムスチン、エトポシド(ラステット)、テニポシド、マイトマイシン、イホスファミド、シクロホスファミド、アザシチジン、ドキソルビシン、ピラルビシン、アムルビシン、メトトレキサート、ベンダムスチン、エピルビシン、アドリアマイシン、アクチノマイシンD、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、テモゾロミド、LCL-161、KML-001、サパシタビン(Sapacitabine)、プリナブリン(plinabulin)、トレオスルファン(treosulfan)、チピラシル塩酸塩(tipiracil hydrochloride)、153Sm-EDTMP、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム、エンセキダル(encequidar)のうちの1種又は複数種が挙げられ、ただしそれらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記化学療法薬はビンクリスチン、シクロホスファミド、イホスファミド、アドリアマイシン、ダクチノマイシン、ブレオマイシン、カルムスチン、エトポシド(ラステット)、アクチノマイシンD、メトトレキサート、シスプラチンのうちの1種又は複数種から選ばれる。
【0031】
所望により、前記第2治療剤は化学療法補助薬と組み合わせて使用されてもよい。前記化学療法補助薬はホリン酸カルシウム(CF)、フォリン酸、メスナ、ビスホスホネート、アミフォスチン、コロニー刺激因子(CSF)を含み、ただしそれらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記化学療法補助薬はホリン酸カルシウム(CF)、メスナ、フォリン酸である。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はカンプトテシン系とビンブラスチン系化合物との組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はカンプトテシン系の1種とビンブラスチン系化合物の1種との組み合わせである。いくつかの実施形態において、前記カンプトテシン系化合物はカンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、トポテカンのうちの1種又は複数種から選ばれ、前記ビンブラスチン系化合物はビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニンのうちの1種又は複数種から選ばれる。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はビンブラスチン系化合物と、カンプトテシン、ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン、トポテカンから選ばれる1種との組
み合わせである。いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はカンプトテシン系化合物と、ビノレルビン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンフルニンから選ばれる1種との組み合わせである。いくつかの特定の実施形態において、前記第2治療剤はイリノテカンとビンデシンとの組み合わせである。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はVAC-1療法で、具体的にはビンクリスチンとシクロホスファミドとアクチノマイシンDである。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はVAC-2療法で、具体的にはビンクリスチンとシクロホスファミドとアドリアマイシンである。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はT9療法で、具体的にはアドリアマイシンとメトトレキサートとシクロホスファミドとアクチノマイシンDとブレオマイシンとビンクリスチンである。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はIE療法で、具体的にはイホスファミドとラステットである。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はAC療法で、具体的にはアドリアマイシンとシクロホスファミドである。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記第2治療剤はプロテインキナーゼ阻害剤を含み、ただしそれに限定されない小分子標的化抗腫瘍薬である。前記プロテインキナーゼ阻害剤はチロシンキナーゼ阻害剤、セリン及び/又はスレオニンキナーゼ阻害剤、ポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP、poly ADP-ribose polymerase)阻害剤を含み、ただしそれらに限定されず、前記阻害剤の標的はEGFR(上皮成長因子受容体)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、MET遺伝子、ROS1遺伝子、HER2遺伝子、RET遺伝子、BRAF遺伝子、PI3Kシグナル伝達経路、DDR2(ディスクデスレセプタ2)遺伝子、FGFR1(線維芽細胞増殖因子受容体1)、NTRK1(神経栄養因子チロシンキナーゼ受容体1型)遺伝子、KRAS遺伝子を含み、ただしそれらに限定されない。前記小分子標的化抗腫瘍薬の標的はCOX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)、APE1(プリン/アピリミジンエンドヌクレアーゼ1)、VEGFR-2(血管内皮増殖因子受容体2)、CXCR-4(ケモカイン受容体4)、MMP(マトリックスメタロプロテイナーゼ)、IGF-1R(インスリン様成長因子受容体)、エズリン(Ezrin)、PEDF(色素上皮由来因子)、AS、ES、OPG(骨保護分子)、Src、IFN、ALCAM(活性化白血球接着分子)、HSP、JIP1、GSK-3β(グリコーゲン合成酵素キナーゼ3β)、CyclinD1(サイクリンD)、CDK4(サイクリン依存性キナーゼ)、TIMP1(組織メタロプロテアーゼ阻害剤)、THBS3、PTHR1(副甲状腺ホルモン関連ペプチド1)、TEM7(ヒト腫瘍血管内皮マーカー7)、COPS3、カテプシンKをさらに含む。小分子標的化抗腫瘍薬の例として、エルロチニブ(Erlotinib)、アファチニブ(Afatinib)、クリゾチニブ(Crizotinib)、セリチニブ(Ceritinib)、ベムラフェニブ(Vemurafenib)、ダブラフェニブ(Dabrafenib)、カボザンチニブ(Cabozantinib)、ゲフィチニブ(Gefitinib)、ダコミチニブ(Dacomitinib)、オシメルチニブ(Osimertinib)、アレクチニブ(Alectinib)、ブリガチニブ(Brigatinib)、ロルラチニブ(Lorlatinib)、トラメチニブ(Trametinib)、ラロトレクチニブ(Larotrectinib)、イコチニブ(icotinib)、ラパチニブ(Lapatinib)、バンデタニブ(Vandetanib)、セルメチニブ(Selumetinib)、ソラフェニブ(Sorafenib)、オルムチニブ(Olmuti
nib)、サボリチニブ(Savolitinib)、フルキンチニブ(Fruquintinib)、エヌトレクチニブ(Entrectinib)、ダサチニブ(Dasatinib)、エンサルチニブ(Ensartinib)、レンバチニブ(Lenvatinib)、イタシチニブ(itacitinib)、ピロチニブ(Pyrotinib)、ビニメチニブ(Binimetinib)、エルダフィチニブ(Erdafitinib)、アキシチニブ(Axitinib)、ネラチニブ(Neratinib)、コビメチニブ(Cobimetinib)、アカラブルチニブ(Acalabrutinib)、ファミチニブ(Famitinib)、マシチニブ(Masitinib)、イブルチニブ(Ibrutinib)、ロシレチニブ(rociletinib)、ニンテダニブ(nintedanib)、レナリドミド、エベロリムス、LOXO-292、ボロラニブ(Vorolanib)、ベムセンチニブ(bemcentinib)、カプマチニブ(capmatinib)、エヌトレクチニブ(entrectinib)、TAK-931、ALT-803、パルボシクリブ(palbociclib)、ファミチニブL-リンゴ酸塩(famitinib L-malate)、LTT-462、BLU-667、ニンゲチニブ(ningetinib)、チピファルニブ(tipifarnib)、ポジオチニブ(poziotinib)、DS-1205c、カピバセルチブ(capivasertib)、SH-1028、メトホルミン、セリシクリブ(seliciclib)、OSE-2101、APL-101、ベルゾセルチブ(berzosertib)、イデラリシブ(idelalisib)、レロシクリブ(lerociclib)、セララセルチブ(ceralasertib)、PLB-1003、トミボセルチブ(tomivosertib)、AST-2818、SKLB-1028、D-0316、LY-3023414、アリチニブ(allitinib)、MRTX-849、AP-32788、AZD-4205、リフィラフェニブ(lifirafenib)、バクトセルティブ(vactosertib)、ミベブレシブ(mivebresib)、ナパブカシン(napabucasin)、シトラバチニブ(sitravatinib)、TAS-114、モリブレシブ(molibresib)、CC-223、リボセラニブ(rivoceranib)、CK-101、LXH-254、シモチニブ(simotinib)、GSK-3368715、TAS-0728、マシチニブ(masitinib)、テポチニブ(tepotinib)、HS-10296、AZD-4547、メレスチニブ(merestinib)、オラプテスペゴル(olaptesed pegol)、ガルニセルチブ(galunisertib)、ASN-003、ジェダトリシブ(gedatolisib)、デファクチニブ(defactinib)、ラゼルチニブ(lazertinib)、CKI-27、S-49076、BPI-9016M、RF-A-089、RMC-4630、AZD-3759、アントロキノンロール(antroquinonol)、SAF-189s、AT-101、TTI-101、ナプチニブ(naputinib)、LNP-3794、HH-SCC-244、ASK-120067、CT-707、エピチニブコハク酸塩(epitinib succinate)、テセバチニブ(tesevatinib)、SPH-1188-11、BPI-15000、コパンリシブ(copanlisib)、ニラパリブ(niraparib)、オラパリブ(olaparib)、ベリパリブ(veliparib)、タラゾパリブトシル酸塩、DV-281、シレマドリン(Siremadlin)、テラグレナスタット(Telaglenastat)、MP-0250、GLG-801、ABTL-0812、ボルテゾミブ(bortezomib)、パノビノスタット(panobinostat)、ツシジノスタット(tucidinostat)、ボリノスタット(vorinostat)、レスミノスタット(resminostat)、エパカドスタット(epacadostat)、タゼメトスタット(tazemetostat)、エンチノスタット(entinostat)、モセチノスタット(mocetinostat)、キシノスタット(quisinostat)のうちの1種又は複数種が挙げられ、ただしそれらに限定されない。いくつかの実施形態において、前記小分子標的化抗腫瘍薬はソラフェニブ、エベロリムス、エルロチニブ、アファチニブ、クリゾチニブ、セリチニブ、ベムラ
フェニブ、ダブラフェニブ、カボザンチニブ、ゲフィチニブ、ダコミチニブ、オシメルチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ、ロルラチニブ、トラメチニブ、ラロトレクチニブ、イコチニブ、ラパチニブ、バンデタニブ、セルメチニブ、オルムチニブ、サボリチニブ、フルキンチニブ、エヌトレクチニブ、ダサチニブ、エンサルチニブ、レンバチニブ、イタシチニブ(itacitinib)、ピロチニブ、ビニメチニブ、エルダフィチニブ、アキシチニブ、ネラチニブ、コビメチニブ、アカラブルチニブ、ファミチニブ、マシチニブ、イブルチニブ、ニンテダニブのうちの1種又は複数種である。
【0040】
いくつかの実施形態において、併用薬物における式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与量は疾患の重症度、疾患への応答、任意の治療関連毒性、患者の年齢と健康状態から決定される。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の1日用量は3mg~30mgである。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の1日用量は5mg~20mgである。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の1日用量は8mg~16mgである。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の1日用量は8mg~14mgである。特定の実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の1日用量は8mgである。特定の実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の1日用量は10mgである。特定の実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の投与の1日用量は12mgである。
【0041】
式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩は毎日に1回又は複数回投与する。いくつかの実施形態において、毎日に1回で式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する。
【0042】
式Iで表される化合物の投与方法は薬物の活性、毒性や患者の忍容性などから総合的に決定されてもよい。
【0043】
好ましくは、間隔投与で式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する。前記間隔投与は投与期間と休養期間とを含み、投与期間において毎日に1回又は複数回で式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与する。例えば、投与期間において毎日に式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を投与し、その後、休養期間において一定期間投与をやめ、続いては投与期間、その後、休養期間となる。このとおりに複数回繰り返すことができる。ただし、投与期間と休養期間との日数基準の比は2:0.5~5、好ましくは2:0.5~3、より好ましくは2:0.5~2、さらに好ましくは2:0.5~1である。
【0044】
いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、2週間の連続投与と2週間の休養、2週間の連続投与と1週間の休養、5日間の連続投与と2日間の休養のいずれかの間隔投与方法で投与され、前記間隔投与方法は複数回繰り返すことができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び第2治療剤は同時投与、逐次投与又は順次投与で投与される。いくつかの実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び第2治療剤はそれぞれ医薬組成物として製造されて投与される。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記ユーイング肉腫の治療用併用薬物は経口、非経口、腹腔内、静脈内、動脈内、経皮、舌下、筋肉内、直腸、経頬、鼻腔内、吸入、経膣、眼内
、局所、皮下、脂肪内、関節内、髄腔内の任意の投与方法に適する製剤を含み、ただしそれらに限定されない。
【0047】
式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩は、好ましくは錠剤、カプセル剤、粉末剤、顆粒剤、滴丸、ペースト剤、散剤などを含む経口に適する製剤であり、好ましくは錠剤、カプセル剤である。錠剤とは通常の錠剤、分散錠、発泡錠、徐放錠、放出制御錠又は腸溶錠であってもよく、カプセル剤とは通常のカプセル、徐放性カプセル、放出制御性カプセル又は腸溶性カプセルであってもよい。前記経口製剤は本分野で周知される薬学的に許容される担体を使用して従来の方法で製造されてもよい。薬学的に許容される担体は充填剤、吸収剤、湿潤剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤などを含む。充填剤はデンプン、ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロースなどを含み、吸収剤は硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウムなどを含み、湿潤剤は水、エタノールなどを含み、結合剤はヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、微結晶性セルロースなどを含み、崩壊剤はクロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、界面活性剤、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどを含み、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム、アエロジル、タルクなどを含む。医薬品添加剤として着色剤、甘味料などをさらに含む。
【0048】
いくつかの特定の実施形態において、イリノテカンを静脈注射し、毎回の用量は10~40mg/mであり、同時に式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を非限定的に毎日3~30mgから選ばれる用量で1回又は複数回経口投与し、2週間の連続投与と1週間の休養で投与する。
【0049】
いくつかの特定の実施形態において、イリノテカンを静脈注射し、毎回の用量は10~40mg/mであり、毎回の用量が1~4mg/mでビンデシンを投与し、同時に式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を非限定的に毎日3~30mgから選ばれる用量で1回又は複数回経口投与し、2週間の連続投与と1週間の休養で投与する。
【0050】
いくつかの特定の実施形態において、イリノテカンの毎回の用量は10~40mg/mであり、ビンデシンの毎回の用量は1~4mg/mであり、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と毎日8~12mgの用量で経口投与し、2週間の連続投与と1週間の休養で投与する。いくつかの特定の実施形態において、イリノテカンの毎回の用量は10、15、20、25、30、35又は40mg/mであり、ビンデシンの毎回の用量は1、2、3又は4mg/mであり、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と毎日8~12mgの用量で経口投与し、2週間の連続投与と1週間の休養で投与する。
【0051】
いくつかの特定の実施形態において、3週間を1治療サイクルとし、ただし、イリノテカンは各サイクルの1~5日目及び8~10日目に投与し、ビンデシンは各サイクルの初日及び8日目に投与し、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と各サイクルの1~14日目に投与する。
【0052】
特定の実施形態において、3週間を1治療サイクルとし、ただし、イリノテカンは各サイクルの1~5日目及び8~10日目に投与し、毎日に1回投与し、毎回の用量は10、15又は20mg/mであり、ビンデシンは各サイクルの初日及び8日目に毎日1回で投与し、毎回の用量は2、3又は4mg/mであり、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と各サイクルの1~14日目に、毎日に1回投与し、毎回の用量は8~12mgである。
【0053】
いくつかの特定の実施形態において、ビンクリスチンを1.5mg/mで静脈注射し
、週に1回であり、シクロホスファミドを500mg/mで静脈注射し、週に1回であり、合計6週間で、ビンクリスチンと一緒に投与し、6週間後は、前記2種の化学療法薬を同じ用量で静脈注射し、週に1回であり、同時に式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を非限定的に毎日3~30mgから選ばれる用量で1回又は複数回経口投与し、2週間の連続投与と1週間の休養で投与し、根治手術を併施する。
【0054】
いくつかの特定の実施形態において、アクチノマイシンDを450μg/mで静脈注射し、1回/日×5であり、15日目及び29日目にそれぞれアドリアマイシンの20mg/m静脈注射を開始し、1回/日×3であり、43日目にビンクリスチンの1.5mg/m静脈注射を開始し、1回/週×4であり、且つシクロホスファミドを1200mg/mで静脈注射し、1回/2週×2であり、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を非限定的に毎日3~30mgから選ばれる用量で1回又は複数回で経口投与し、2週間の連続投与と1週間の休養で投与する。
【0055】
いくつかの特定の実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩とVAC-1療法とを併用する。詳細は次のとおりである。ビンクリスチン2mgを初日に静脈注射し、アクチノマイシンDを2mg/mで初日に点滴静脈注射し、シクロホスファミドを1200mg/mで初日に点滴静脈注射し、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を非限定的に毎日3~30mgから選ばれる用量で1回又は複数回で経口投与し、2週間の連続投与と2週間の休養で、28日間を1サイクルとする。
【0056】
いくつかの特定の実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩とVAC-2療法とを併用する。詳細は次のとおりである。ビンクリスチン2mgを初日に静脈注射し、アドリアマイシンを75mg/mで初日に点滴静脈注射し、シクロホスファミドを1200mg/mで初日に点滴静脈注射し、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を非限定的に毎日3~30mgから選ばれる用量で1回又は複数回で経口投与し、5日間の連続投与と2日間の休養で、7日間を1サイクルとする。
【0057】
いくつかの特定の実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩とT9療法とを併用する。詳細は次のとおりである。アドリアマイシンを20mg/mで1~3日目、42~44日目に点滴静脈注射し、メトトレキサートを12mg/mで1~3日目、42~44日目に点滴静脈注射し、シクロホスファミドを1.2g/mで初日、42日目に点滴静脈注射し、アクチノマイシンDを0.5mg/mで21~23日目に点滴静脈注射し、ブレオマイシンを10mg/mで21~23日目に点滴静脈注射し、ビンクリスチンを1.5mg/mで1、7、14、21、30日目に点滴静脈注射し、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を非限定的に毎日3~30mgから選ばれる用量で1回又は複数回経口投与し、5日間の連続投与と2日間の休養とする。
【0058】
いくつかの特定の実施形態において、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩とIE療法、AC療法との併用での逐次治療とする。詳細は次のとおりである。イホスファミドを1.6g/mで1~5日目に点滴静脈注射し、ラステットを100mg/mで15日目に点滴静脈注射し、21日間を1サイクルとして、3サイクル後は続いてアドリアマイシンを35mg/mで8日目に点滴静脈注射し、シクロホスファミドを1.50g/mで1~7日目に経口投与し、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩を非限定的に毎日3~30mgから選ばれる用量で1回又は複数回で経口投与し、2週間の連続投与と1週間の休養で投与する。
【0059】
本発明の第5態様では、治療を必要とする患者に有効量の式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩、及び治療有効量の第2治療剤を同時投与、間隔投与又は順に投
与治療するステップを含むユーイング肉腫の治療方法が提供される。
【0060】
本発明の第6態様では、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と第2治療剤とを含むユーイング肉腫の治療用併用医薬組成物が提供される。
【発明の効果】
【0061】
本発明は従来の技術に比べて、次の有益な効果を有する。本発明では式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩をユーイング肉腫の治療に用いて、顕著な効果が得られる。本発明では式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩と第2治療剤を組み合わせて使用し、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩は薬物、特に化学療法薬のユーイング肉腫に対する殺傷効果を強めて、効果を高める一方、化学療法薬の使用量が低減することで、副作用が軽減される。本発明はユーイング肉腫の治療、特にこれまでの放射線療法、化学療法薬治療が失敗したユーイング肉腫の二次治療に新規な方向性を示している。
【0062】
説明がある場合を除き、本願の目的、本明細書及び特許請求の範囲で使用する用語の意味は下記のとおりである。
【0063】
本願では、アンロチニブが言及される場合に、その有効成分は式Iで表される化合物である。
【0064】
本願では、説明がある場合を除き、式Iで表される化合物又はその薬学的に許容される塩の用量及びその範囲は、いずれも式Iで表される化合物の遊離塩基の分子量に基づく。
【0065】
「患者」とは哺乳動物を言い、好ましくはヒトである。本明細書では、「患者」、「被験者」又は「主体」は入れ替えて使用する。
【0066】
本明細書で使用する用語「併用医薬組成物」とは、同時に又は順に投与する2種又は2種以上の有効成分(各有効成分そのもので投与されてもよいし、又はその薬学的に許容される塩もしくはエステルなどの誘導体、プロドラッグもしくは組成物の形態で投与されてもよい)の組み合わせをいう。本明細書では、用語「併用医薬組成物」、「併用薬物」、「薬物組み合わせ」は入れ替えて使用する。
【0067】
本明細書で使用する「併用」又は「組み合わせて使用」とは2種の又はそれ以上の種の有効成分が、それぞれ単独の製剤として同時に、又はそれぞれ単独の製剤として任意の順番で順に、被験者に投与されることをいう。
【0068】
「薬学的に許容される」とは医薬組成物の製造のために使用されることを言い、当該医薬組成物は一般に安全で毒性はなく、生物学的においても他の分野においても不適合はなく、且つそれを含んだもののヒト用薬物への使用が認められる。
【0069】
「薬学的に許容される塩」は塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸と形成した酸付加塩、及び酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチル酢酸、ドデシル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸などの有機酸と形成した酸付加塩を含み、ただしそれらに限定されない。
【0070】
「治療有効量」とは化合物を疾患治療のためにヒトに投与する場合に、当該疾患の寛解を実現させるだけのその十分な使用量をいう。
【0071】
「治療」とは治療有効量の化合物の任意の方法での投与を言い、以下の事項を含む。
(1)病理学的に又は症候学的に疾患の症状又は疾患の罹患が認められたヒトにおける当該疾患の阻害(即ち、病理学上及び/又は症候学上の進行を抑えること)、又は、
(2)病理学的に又は症候学的に疾患の症状又は疾患の罹患が認められたヒトにおける当該疾患の改善(即ち、病理学上及び/又は症候学上の逆転)。
【0072】
本明細書では、説明がある場合を除き、用語「含む、含有(comprise、comprises、comprising)」又は同等な用語は非限定的な表現で、記された要素、成分又はステップの他に、明記していない要素、成分又はステップを含んでもよいことをいう。
【0073】
本明細書では説明及び開示のために、特許、特許出願又は既存の刊行物の全てがここに組み込まれる。これらの刊行物は本願の出願日前に発表されたため提供が可能である。これらの書類の開示日に関する声明やその内容に関する記載は出願人が知り得た情報に基づき、これらの書類の開示日やその内容が正しいと承諾するものではない。しかもどの国においても、これらの刊行物の援用で、当該刊行物が本分野の周知の常識になると認めるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0074】
次に、具体的な実施例及び実験例と結び付けて、本発明をさらに説明する。これらの実施例は本発明の説明に過ぎず、本発明の範囲への限定にならない。下記の実施例で具体的な実験条件を示さない実験方法は、通常の条件で行う。
【0075】
実施例1:1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミン二塩酸塩(式Iで表される化合物の二塩酸塩)
【化2】
【0076】
国際特許WO2008112407の実施例24の方法を参照して1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミンを製造し、その後、国際特許WO2008112407の明細書の「塩形態の実施例」の製造方法を参照して、表題化合物を製造した。
【0077】
又は、中国特許出願第CN102344438A号に記載の方法を参照して製造しても
よい。
【0078】
実施例2:1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミン二塩酸塩(式Iで表される化合物の二塩酸塩)カプセルの製造
成分と担体の名称及びその使用量(1000粒当たり)は次のとおりである。式Iで表される化合物の二塩酸塩14.16g(12gの式Iで表される化合物相当)、マンニトール89g、微結晶性セルロース138.4g、ヒドロキシプロピルセルロース5.9g、ステアリン酸マグネシウム0.99g。
【0079】
式Iで表される化合物の二塩酸塩を粉砕し、80メッシュの篩に通した。その後、マンニトール、ヒドロキシプロピルセルロースと均一に混合し、続いて配合量の微結晶性セルロースを加えて、均一に混合し、0.8mmの篩に通した。最後に配合量のステアリン酸マグネシウムを加えて均一に混合し、カプセルに充填した。
【0080】
式Iで表される化合物の二塩酸塩の含有量が上記と異なるカプセルは、前記比率及び配合を参照して製造してよい。
【0081】
実施例3:薬力学実験
被験薬:
1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミン二塩酸塩(略称は式Iで表される化合物の二塩酸塩)、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シクロホスファミド。
【0082】
1.ユーイング肉腫の増殖に対する式Iで表される化合物の二塩酸塩の影響
調製手順:
濃度が25mg/mLになるよう式Iで表される化合物の二塩酸塩を水に溶解し、その後、蒸留水で250μg/mLに希釈した。
【0083】
実験動物整備:
BALB/cA-ヌードマウスを用い、飼育基準はSPFである。ヌードマウスにヒトユーイング肉腫細胞A673を皮下接種し、腫瘍が100~250mmに増殖したら、動物をランダムに群分けした(d0)。
【0084】
実験手順:
式Iで表される化合物の二塩酸塩を6.25mg/kgの用量で、毎日10mL/kgで動物に連続14日経口投与し、週に2~3回腫瘍体積を測定し、マウスの体重を測定し、数値を記録した。
【0085】
腫瘍体積(V)の計算式は、V=1/2×a×bである。式中、aは長さ、bは幅を表す。
【0086】
T/C(%)=(T-T0)/(C-C0)×100%。式中、Tは実験終了時の投与群のマウスの腫瘍体積、Cは同対照群(溶媒群)のマウスの腫瘍体積を表す。T0は群別投与時(d0)の投与群のマウスの腫瘍体積、C0は同対照群(溶媒群)のマウスの腫瘍体積を表す。
【0087】
投与後相対腫瘍体積(relative tumor volume、RTV)の計算式は、RTV=TV/TV0である(TVは投与後の毎回測定の腫瘍体積、TV0は群別
投与時(d0)の腫瘍体積を表す)。
【0088】
実験結果から、1-[[[4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イル)オキシ-6-メトキシキノリン-7-イル]オキシ]メチル]シクロプロピルアミン二塩酸塩(式Iで表される化合物の二塩酸塩)はユーイング肉腫の増殖を顕著に阻害できることが分かった。
【0089】
2.ユーイング肉腫の細胞増殖に対する式Iで表される化合物の二塩酸塩と第2治療剤との併用の影響
調製手順:
被験薬はいずれもジメチルスルホキシドで溶解して、100mmol/Lの母液を調製し、-20℃下で保管しておいた。使用時はDMEM血清液体培地で所定の濃度にして、ビンクリスチンとアドリアマイシンとシクロホスファミドとを混合し(VAC-2療法)、また式Iで表される化合物の二塩酸塩希釈液とビンクリスチン、アドリアマイシン、シクロホスファミドとを混合した。
【0090】
細胞培養:
10%ウシ胎児血清と0.1g/Lのストレプトマイシンとペニシリン(最終濃度100U/mL)とを含むDMEM完全液体培地においてヒトユーイング肉腫細胞株A673を培養し、37℃の定温で5%COインキュベータに入れて培養した。細胞コンフルエンスが約85%になると、0.02%のEDTA+0.25%のトリプシン混合液で消化して細胞を収集し、1000r/minで遠心分離し、継代培養した。
【0091】
実験手順:
本分野通常の方法(例えば、MTT法)でIC50値を測定してもよいし、下記の手順(MTT法)で測定してもよい。
対数増殖期細胞を96ウェル培養用プレート(180μL/ウェル、10個の細胞/ウェル)に接種した。37℃、5%COの条件下で2時間増殖し、それぞれ式Iで表される化合物の二塩酸塩(濃度勾配が0、0.005、0.1、0.05、0.1、0.5、1.5、4、12、30μg/mLの溶液)及び2μg/mLのビンクリスチン+75μg/mLのアドリアマイシン+500μg/mLのシクロホスファミドを加えて培養し、各濃度で同一のウェルを2つ設置し、各ウェルには20μLを加え、また相当濃度の生理食塩水溶媒対照及びアポプトーシスなしウェルを併設した。37℃、5%COの条件下で腫瘍細胞を再び24時間培養した(合計で48時間)。薬物作用が消えると、各ウェルにMTTワーキングソリューションを加え、4時間後に、トリプル溶液で溶解して37℃で一晩保持した。翌日、マイクロプレートリーダー(SPECTRA max 190)を用いて波長570nm及び630nmでOD値を測定した(波長570nmで測定したOD値から対照波長630nmでのOD値を引いて計算)。下式で細胞増殖阻害率を計算した。
阻害率=(対照ウェルOD値-投与ウェルOD値)/対照ウェルOD値×100%。
【0092】
各濃度の阻害率から、ソフトウェアGraphPad Prism 5を用いて半数阻害濃度IC50を計算した。
【0093】
実験結果:
ヒトユーイング肉腫A673細胞に対する、式Iで表される化合物の二塩酸塩+ビンクリスチン+アドリアマイシン+シクロホスファミド及び陽性対照としてビンクリスチン+アドリアマイシン+シクロホスファミドのインビトロ薬力学結果から、式Iで表される化合物の二塩酸塩と第2治療剤との併用が、ヒトユーイング肉腫A673細胞の増殖に明らかな阻害効果があることが示された。
【0094】
3.ユーイング肉腫の細胞アポトーシスに対する式Iで表される化合物の二塩酸塩と第2治療剤との併用の影響
フローサイトメトリーによる細胞アポトーシスの検出:
対数増殖期のヒトユーイング肉腫A673細胞を10個の細胞/ウェルでそれぞれ、2μg/mLのビンクリスチン+75μg/mLのアドリアマイシン+500μg/mLのシクロホスファミドを含むDMEM完全液体培地、及び濃度0、0.005、0.1、0.05、0.1、0.5、1.5、4、12、30μg/mLの溶液として式Iで表される化合物の二塩酸塩+2μg/mLのビンクリスチン+75μg/mLのアドリアマイシン+500μg/mLのシクロホスファミドを含むDMEM完全液体培地に加えて培養し、24時間後に細胞を収集し、1000r/minで3~5分間遠心分離して、PBSで洗浄した。その後、Annexin-V-FITC/PI細胞アポトーシス検出キットを用いてアポトーシスを検出し、細胞を100μLの1×結合(Binding)バッファーに加えて再懸濁させ、5μLのAnnexinV-FITC及び2.5μLのPI色素を追加して、暗所で振盪して均一に混合させて、室温下で15分間反応させ、その後、さらに300μLの1×結合(Binding)バッファーを加えて均一に混合させ、フローサイトメトリーにおいて検出を行った。試験を3回繰り返した。
【0095】
試験結果:
古典的なAnnexin-V-FITC/PI細胞アポトーシス検出方法を利用して検出したところ、異なる濃度の式Iで表される化合物の二塩酸塩はビンクリスチン+アドリアマイシン+シクロホスファミド(VAC-2療法)が引き起こすユーイング肉腫細胞株のアポトーシスを顕著に増強できることが判明した。
【0096】
実施例4:臨床試験
測定可能病変(RECIST 1.1基準)を含むユーイング肉腫患者を対象に式Iで表される化合物の二塩酸塩カプセルと第2治療剤(VAC-2療法)との併用で臨床試験を行い、患者群は既に化学療法を受けていた患者、及び化学療法を受けていない患者を含み、式Iで表される化合物の二塩酸塩カプセルを毎日1回12mgで経口投与し(2週間の連続投与と1週間の休養を1治療サイクルとした)、同時にVAC-2療法として、ビンクリスチン2mgを初日に静脈注射、アドリアマイシンを75mg/mで初日に点滴静脈注射、シクロホスファミドを1200mg/mで初日に点滴静脈注射した(28日間を1サイクルとした)。評価指標には、無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、寛解持続期間(DOR)、疾患安定(SD)率、臨床的有用率(CBR)、全生存期間(OS)などの効果指標、有害事象発生率、重症度などの安全性指標、ライフクオリティなどを含む。
【0097】
臨床試験結果:
式Iで表される化合物の二塩酸塩とVAC-2療法との併用はユーイング肉腫の治療に効果的であり、全生存期間の改善などを認めた。
【0098】
実施例5:
29歳の男性患者であった。2014年11月に左側恥骨穿刺生検を受け、病理学的診断では小円形細胞悪性腫瘍と判断された。臨床診断は左側恥骨ユーイング肉腫術後の化学療法後、両側肺に転移があった。
【0099】
2014年11月から2018年10月まで、ビンクリスチン(VCR)+アドリアマイシン(ADM)+シクロホスファミド(CTX)治療を合計で9サイクル、イホスファミド(IFO)+エトポシド(VP-16)治療を合計で10サイクル受け、化学療法期間中にIII度の骨髄抑制が何度か起こっていた。そして2015年3月に全身麻酔下「
骨盤内巨大腫瘍切除術+人工股関節置換・半側骨盤切除術」を受けた。術後病理学的検査では、左側股関節における小細胞悪性腫瘍と判断され、免疫表現型及び分子検査結果と結び付けて、ユーイング肉腫と初歩的に判断された。2018年12月から再び「ビンクリスチン+ドキソルビシン+シクロホスファミド」化学療法を2サイクル受けて、2019年3月CTなどの検査結果で、肺部に進行があり、化学療法は効果が優れないことが判明した。その後、毎日1回の12mgの用量(2週間の連続投与と1週間の休養を1治療サイクルとした)でアンロチニブ二塩酸塩カプセル(有効成分は式Iで表される化合物)の経口投与治療を開始した。
【0100】
アンロチニブ二塩酸塩カプセルの投与治療の1週間前に、CTスキャンの所見では、測定可能目的病変(左下肺野結節)の直径の和は16mmで、投与後、定期的にCTスキャンを行い、10サイクルの治療後、目的病変の直径の和が10mmに減少し、効果評価では部分寛解(partial response、PR)と認められ、減少率は37.5%であった。16サイクルの治療後、目的病変の直径の和が9mmに減少し、効果評価ではPRと認められ、新規病変はなかった。治療期間中に、全体的に忍容性がよく、当面治療が続いている。
【0101】
実施例6:
28歳の男性患者であった。2016年に穿刺生検を受け、病理学的診断は未分化神経外胚葉性腫瘍であった。臨床診断は仙骨ユーイング肉腫/未分化神経外胚葉性腫瘍術後の化学療法後、両側肺に転移があった。
【0102】
2016年5月から2016年7月まで、リポソームドキソルビシン40mg d1+シクロホスファミド1g d1、イホスファミド4g d1~3+ラステット100mg
d1~3、リポソームドキソルビシン40mg d1+シクロホスファミド1g d1、イホスファミド4g d1~3+ラステット100mg d1~3で治療を受けてきた。2016年8月に、患者は全身麻酔下「仙骨後部腫瘍切除固定術」を受け、術後病理学的検査では仙骨における小円形細胞悪性腫瘍で、ユーイング肉腫/未分化神経外胚葉性腫瘍の可能性が高いと判断された。術後は、エピルビシン110mg d1+シクロホスファミド1g d1、イホスファミド4g d1~3+ラステット100mg d1~3、エピルビシン110mg d1+シクロホスファミド1g d1+ビンデシン3mg d1、イホスファミド4g d1~3+ラステット100mg d1~3、エピルビシン110mg d1+シクロホスファミド1g d1+ビンデシン3mg d1で相次いで5サイクルの化学療法を行った。化学療法後にII度の骨髄抑制が起こり、最終の化学療法は2017年2月であった。2017年8月に、イリノテカン40mg d1~4+テモゾロミド140mg d1~5、イリノテカン40mgで相次いで投与を受けた。2017年9月から、イリノテカン40mg d1~4+テモゾロミド140mg d1~5、イリノテカン40mg、イリノテカン40mg d1~4+シクロホスファミド500mg d1~4、イリノテカン40mg d1~4+テモゾロミド140mg d1~5で相次いで投与治療を受けた。
【0103】
2019年1月から毎日1回で12mgの用量(2週間の連続投与と1週間の休養を1治療サイクルとした)のアンロチニブ二塩酸塩カプセルの経口投与治療を開始した。
【0104】
アンロチニブ二塩酸塩カプセル投与の3日前、CTスキャン所見では、測定可能目的病変の直径の和は36mm(右下肺野36mm)であった。各治療サイクルの終了後、直ちにCTスキャンを行い、結果を表1に示す。被験者にはこれまでに20サイクルの服用があり、服用し続けてよいと医師が評価した。治療期間中に、全体的に忍容性がよかった。
【表1】
【0105】
実施例7:
これまでの治療が失敗した進行期ユーイング肉腫患者を、A、Bの2群に分けた。A群は16歳以上の患者23例であり、毎日1回で12mgの用量のアンロチニブ二塩酸塩カプセルd1~d14(2週間の連続投与と1週間の休養を1治療サイクルとした)+毎日1回のイリノテカン15mg/m静脈注射d1~d5、d8~d10(3週間を1治療サイクルとした)+ビンデシン3mg/m(d1、d8投与、3週間を1治療サイクルとした)で経口投与を行った。B群では年齢が16歳未満の患者12例であり、毎日1回のアンロチニブ二塩酸塩カプセル経口投与(2週間の連続投与と1週間の休養を1治療サイクルとし、用量は体表面積(BSA)基準で次のとおりに設定した。BSA<1.0mである場合は8mg、d1~d14投与、BSA≧1.0mである場合は12mg、d1~d14投与)+毎日1回のイリノテカン20mg/m静脈注射d1~d5、d8~d10(3週間を1治療サイクルとした)+ビンデシン3mg/m d1、d8(3週間を1治療サイクルとした)とした。
【0106】
12週間でA、B群の実験結果を評価した。2群の患者の12週間ORRはそれぞれ62.5%、83.3%で、16歳以上の患者23例のうち1例が完全寛解(complete response、CR)と認められた。
【国際調査報告】