(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ステータ冷却を改良した回転電気機械
(51)【国際特許分類】
H02K 1/20 20060101AFI20220614BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20220614BHJP
H02K 3/24 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
H02K1/20 C
H02K9/19 A
H02K3/24 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551875
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(85)【翻訳文提出日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 FR2020050362
(87)【国際公開番号】W WO2020174180
(87)【国際公開日】2020-09-03
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521387774
【氏名又は名称】ニデック ピーエスエー イーモーターズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マスファロー, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ハミティ, タハール
(72)【発明者】
【氏名】ヌーリ, フサイン
(72)【発明者】
【氏名】デアク, ヨアン
【テーマコード(参考)】
5H601
5H603
5H609
【Fターム(参考)】
5H601AA16
5H601BB20
5H601CC01
5H601CC11
5H601DD01
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5H601EE26
5H601GB05
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5H601GE12
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5H609QQ02
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5H609QQ04
5H609QQ05
5H609QQ12
5H609RR27
5H609RR33
5H609RR46
(57)【要約】
回転電気機械(1)は、ケーシング(10)と、ステータ(40)とを備え、ステータ(40)は、ケーシング内に固定され、第1(411)および第2(412)の長手方向端面を備えるステータ本体(41)と、第1および第2の長手方向端面の間のステータ本体内に配され長手方向に延びる切り欠き(44)と、切り欠きを通ってステータ本体を長手方向に貫通し、ステータ本体の第1および第2の長手方向端面の少なくとも一方から突出して延びる第1(43)および第2(42)のコイルヘッドアセンブリを備えるコイルと、第1コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備える第1チャンバ(15)と、第2コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備える第2チャンバ(14)とを備え、第1および第2チャンバは切り欠きにより相互に流体連結され、第1および第2チャンバの一方は冷却剤入口チャンバであり、第1および第2チャンバの他方は冷却剤放出チャンバであって、回転電気機械の動作中、第1および第2環状チャンバの間の冷却剤の流れは切り欠き内へ送り込まれるようになっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(10)と、ステータ(40)とを備える回転電気機械(1)であって、前記ステータ(40)は、前記ケーシング内に固定され、第1(411)および第2(412)の長手方向端面を備えるステータ本体(41;146)と、前記第1および第2の長手方向端面の間の前記ステータ本体内に配され長手方向に延びる切り欠き(44;144)と、前記切り欠きを通って前記ステータ本体を長手方向に貫通し、前記ステータ本体の前記第1および第2の長手方向端面の少なくとも一方から突出する第1(43)および第2(42)のコイルヘッドアセンブリを備えるコイル(45)と、前記第1コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備える第1チャンバ(15)と、前記第2コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備える第2チャンバ(14)とを備え、前記第1および第2チャンバは前記切り欠きにより相互に流体連結され、前記第1および第2チャンバの一方は冷却剤入口チャンバであり、前記第1および第2チャンバの他方は冷却剤放出チャンバであって、前記回転電気機械の動作中、前記第1および第2環状チャンバの間の冷却剤の流れは前記切り欠き内へ送り込まれるようになっており、前記コイルは1組のピンを含むことを特徴とする回転電気機械(1)。
【請求項2】
ケーシング(10)と、ステータ(40)とを備える回転電気機械(1)であって、前記ステータ(40)は、前記ケーシング内に固定され、第1(411)および第2(412)の長手方向端面を備えるステータ本体(41;146)と、前記第1および第2の長手方向端面の間の前記ステータ本体内に配置され長手方向に延びる切り欠き(44;144)と、前記切り欠きを通って前記ステータ本体を長手方向に貫通し、前記ステータ本体の前記第1および第2の長手方向端面の少なくとも一方から突出する第1(43)および第2(42)のコイルヘッドアセンブリを備えるコイル(45)と、前記第1コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備える第1チャンバ(15)と、前記第2コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備える第2チャンバ(14)とを備え、前記第1および第2チャンバは前記切り欠きにより相互に流体連結され、前記第1および第2チャンバの一方は冷却剤入口チャンバであり、前記第1および第2チャンバの他方は冷却剤放出チャンバであって、前記回転電気機械の動作中、前記第1および第2環状チャンバの間の冷却剤の流れは前記切り欠き内へ送り込まれるようになっており、前記切り欠き(44)は横断面において閉じた形状を備えることを特徴とする回転電気機械(1)。
【請求項3】
前記第1コイルヘッドアセンブリは前記第1および第2の長手方向端面の一方から突起し、前記第2コイルヘッドアセンブリは前記第1および第2の長手方向端面の他方から突起することを特徴とする、請求項1または2に記載の機械。
【請求項4】
前記第1および第2チャンバは環状のチャンバであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の機械。
【請求項5】
前記第1および第2コイルヘッドアセンブリは前記第1および第2の長手方向端面の一方から突出し、前記コイルは、前記第1および第2の長手方向端面の他方から突出する第3コイルヘッドアセンブリを備え、前記機械は、前記第3コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備え、かつ、前記切り欠きを介して前記第1および第2チャンバと流体連結されている第3チャンバを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の機械。
【請求項6】
前記第3チャンバは環状のチャンバであることを特徴とする、請求項5に記載の機械。
【請求項7】
前記第1および第2チャンバの前記リング部分は完全なリングを形成することを特徴とする、請求項5または6に記載の機械。
【請求項8】
前記第1および第2チャンバは半円環状のチャンバであることを特徴とする、請求項7に記載の機械。
【請求項9】
前記第3チャンバは、前記ケーシングの壁に固定されたライナにより区切られていることを特徴とする、請求項5から8のいずれか一項に記載の機械。
【請求項10】
前記第1および第2チャンバは、前記ケーシングの壁に固定されたライナ(121、122、152、131、132、142)により区切られていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の機械。
【請求項11】
前記ケーシングは、前記ステータ本体の第1(12)および第2(13)の締め付け軸受を備え、前記ライナは前記第1および/または第2締め付け軸受内に設けられることを特徴とする、請求項9または10に記載の機械。
【請求項12】
前記入口チャンバからの冷却剤のための吸入手段(141)を備えることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の機械。
【請求項13】
前記冷却剤吸入手段は前記ケーシングの上部内に配置されていることを特徴とする、請求項12に記載の機械。
【請求項14】
前記放出チャンバから冷却剤を放出するための手段(151)を備えることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の機械。
【請求項15】
前記冷却剤放出手段は前記ケーシングの下部内に配置されていることを特徴とする、請求項14に記載の機械。
【請求項16】
前記チャンバと前記切り欠きとの接続部に密閉手段(60、160)が設けられていることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の機械。
【請求項17】
前記密閉手段は、前記切り欠きに対して求心的に位置する環状シール(60)を備えることを特徴とする、請求項16に記載の機械。
【請求項18】
前記切り欠き(44)は横断面において閉じた形状を備えることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の機械。
【請求項19】
前記切り欠き(144)は、半径方向に求心性の開口(145)を備え、前記機械はさらに、前記ステータ本体と同軸の、前記半径方向に求心性の開口を閉鎖するためのジャケット(160)を備えることを特徴とする、請求項1から17のいずれか一項に記載の機械。
【請求項20】
前記ステータ本体は、長手方向の1束のステータブレードまたはプレートを含むことを特徴とする、請求項1から19のいずれか一項に記載の機械。
【請求項21】
前記コイルは1組のピンを備えることを特徴とする、請求項2から20のいずれか一項に記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2019年2月28日に出願され、その内容(本文、図面および特許請求の範囲)がこの言及によって本文に編入される仏国出願第1902099号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、ケーシングと、ケーシングに締結されたステータと、ステータを冷却する手段とを備える種類の回転電気機械に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、自動車を動かすための高出力電動モータなどの回転電気機械は、そのような回転機械の高発熱の故に、様々な構成部品、特に、ステータのための冷却手段を必要とする。従って、ステータ、特に、コイルを効果的に冷却可能とすることが必要である。米国特許出願公開第2006/0119196号の文献には、ステータコイルを受容するため切り欠きが設けられた1束の磁性ブレードまたは磁性板から作製されたステータ本体を備える、そのような電動モータが記述されている。これらの切り欠きは長手方向に向いている。コイルのコイルヘッドを冷却するため、この文献は、冷却剤がコイルヘッドの巻線の間を循環する、コイルヘッドを囲む環状冷却チャンバをステータ本体の長手方向端面と共に形成するライナの配置を記述している。このように形成されたチャンバの各々は、コイルヘッドの制御された冷却の実現を可能とする、それ自体の冷却剤入口および出口を備えている。しかしながら、ステータ本体内にあるコイルの部分は適切に冷却されない。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、ステータコイルが、制御された最適な様態で冷却される回転電気機械を提供することにある。
【0005】
この目的のため、本発明によれば、ケーシングと、ステータとを備える回転電気機械であって、ステータは、ケーシング内に固定され、第1および第2の長手方向端面を備えるステータ本体と、第1および第2の長手方向端面の間のステータ本体内に配され長手方向に延びる切り欠きと、切り欠きを通ってステータ本体を長手方向に貫通し、ステータ本体の第1および第2の長手方向端面の少なくとも一方から突出する第1および第2のコイルヘッドアセンブリを備えるコイルと、第1コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備える第1チャンバと、第2コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備える第2チャンバとを備え、第1および第2チャンバは切り欠きにより相互に流体連結され、第1および第2チャンバの一方は冷却剤入口チャンバであり、第1および第2チャンバの他方は冷却剤放出チャンバであって、回転電気機械の動作中、第1および第2環状チャンバの間の冷却剤の流れは切り欠き内へ送り込まれるようになっている回転電気機械が提供される。
【0006】
有利であるが随意に、本発明による回転電気機械は、以下の技術的特徴の少なくとも1つを備える。
- 第1コイルヘッドアセンブリは第1および第2の長手方向端面の一方から突起し、第2コイルヘッドアセンブリは第1および第2の長手方向端面の他方から突起する。
- 第1および第2チャンバは環状のチャンバである。
- 第1および第2コイルヘッドアセンブリは第1および第2の長手方向端面の一方から突出し、コイルは、第1および第2の長手方向端面の他方から突出する第3コイルヘッドアセンブリを備え、機械は、第3コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備え、かつ、切り欠きを介して第1および第2チャンバと流体連結されている第3チャンバを備える。
- 第3チャンバは環状のチャンバである。
- 第1および第2チャンバのリング部分は完全なリングを形成する。
- 第1および第2チャンバは半円環状のチャンバである。
- 第3チャンバは、ケーシングの壁に固定されたライナにより区切られている。
- 第1および第2チャンバは、ケーシングの壁に固定されたライナにより区切られている。
- ケーシングは、ステータ本体の第1および第2の締め付け軸受を備え、ライナは第1および/または第2の締め付け軸受内に設けられる。
- 機械は、入口チャンバへ冷却剤を供給するための手段を備える。
- 冷却剤供給手段はケーシングの上部内に配置されている。
- 機械は、放出チャンバから冷却剤を放出するための手段を備える。
- 冷却剤放出手段はケーシングの下部内に配置されている。
- チャンバと切り欠きとの接続部に密閉手段が設けられている。
- 密閉手段は、切り欠きに対して求心的に位置する環状シールを備える。
- 切り欠きは横断面において閉じた形状を備える。
- 切り欠きは、半径方向に求心性の開口を備え、機械はさらに、ステータ本体と同軸の、半径方向に求心性の開口を閉鎖するためのジャケットを備える。
- ステータ本体は、長手方向の1束のステータブレードまたはプレートを含む。
- コイルは1組のピンを備える。
【0007】
ステータコイルは、導電体を含んでもよく、これら導電体の少なくともいくつか、または、これら導電体の過半数はU字状またはI字状ピンの形状を備える。
【0008】
ヘアピン状および平坦な導電体が切り欠きの充填率を増大させることにより、機械はよりコンパクトなものとなる。高い充填率により、導電体とステータ主要部との熱交換が改善され、それにより、切り欠き内部の導電体の温度を低下させることが可能になる。このようにして、電気機械のエネルギー効率が改善される。
【0009】
また、ピン形態の導電体によって、ステータの作製を容易にすることができる。さらに、ピンを備えたコイルは、コイルヘッドにおけるピン間の接続のみを変更することによって、容易に変型することができる。最後に、ピンは開放した切り欠きを備える必要はないので、ピンを保持することが可能な閉じた切り欠きを備えることもでき、従って、ステータシムを挿入するステップを無くすこともできる。
【0010】
導電体、または導電体の過半数は切り欠き内で軸方向に延びる。機械の一方または両方の軸方向端部によって、導電体を対応する切り欠き内に導入することができる。
【0011】
I字状の導電体は、ステータの軸方向端部の一方にそれぞれ配置された2つの軸方向端部を備える。また単一の切り欠きを貫通するので、その軸方向端部の各々において、ステータの軸方向端部における他の2つの導電体に溶接することができる。ステータは例えば、6個または12個のI字状導電体を備えてもよく、その他の導電体のできる限りすべてをU字状としてもよい。
【0012】
U字状の導電体は、ステータの軸方向端部の一方に両方が配置される2つの軸方向端部を備える。U字状の導電体は2つの異なる切り欠きを貫通するので、その軸方向端部の各々において、ステータの軸方向の同じ側における他の2つの導電体に溶接することができる。U字の底はステータの軸方向の他の側に配置される。
【0013】
本発明において、各導電体は、1本または複数本の撚線(「ワイヤ」とも呼ばれる)を備える。「撚線」とは、導電のための最も基本的な単位を指す。撚線は、「ワイヤ」と呼ぶことが可能な丸い横断面、または平坦な横断面を備えることができる。平坦な撚線はピン、例えば、U字状またはI字状のピンに形成することができる。各撚線は絶縁性のエナメルで被覆されている。
【0014】
丸い横断面の撚線ではなく、扁平な撚線で構成されるヘアピン状導電体を使用することにより、冷却剤の流速を切り欠き内で大きくすることができる。これにより、交換面と熱伝達係数との積を大きくすることができる。その結果、導電体から冷却剤へ伝達されるエネルギー量が増大する。このようにして導電体の冷却が改善される。
【0015】
丸い横断面の撚線ではなく、平坦な撚線で作製されるヘアピン状導電体を使用することにより、導電体と冷却剤との接触面積が増大する。これにより、ステータ主要部における導電体によって消散される熱の除去が改善される。
【0016】
ヘアピン状導電体を使用することにより、ステータコイルの保持を改善することが可能になる。これにより、切り欠き内における導電体の変位のリスクが低減される。この場合、含浸ワニスにステータの導電体を含浸させる通常のステップを省くことができる。この結果、切り欠き内の冷却剤の通過を可能とするため、切り欠き内部の空間を確保することができる。含浸ステップを実行する場合、ワニスが切り欠き内の利用可能な空間すべてを満たすことになる。この時には、冷却剤をその中に循環させることができない。
【0017】
「横断面において閉じた形状を備える切り欠き」という用語は、空隙に向かって半径方向に開いていない切り欠きを意味する。
【0018】
横断面において閉じた形状を備える切り欠きの存在により、高調波成分、導電体における渦電流損失、および切り欠きにおける漏れ磁束、ならびに空隙における磁界の変動および機械の加熱を最小化することで、空隙における磁界の質に関して電気機械の性能を向上させることが可能になる。また、横断面において閉じた形状を備えるこれら切り欠きの存在により、ステータを機械的に補強し、振動を低減することで、ステータの機械的剛性を向上させることが可能になる。
【0019】
このような切り欠きによって、電気機械の機械的空隙を増大させる附属部分を用いることなく、冷却剤回路の気密性を確保することが可能になる。結果として、提示された冷却方式が電気機械の回転に必要なトルクに及ぼす影響が最小化される。
【0020】
冷却剤は、気体、例えば空気、または液体、例えば水もしくは油とすることができる。
【0021】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の実施形態に関する以下の説明を読み込んだ場合に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による回転電気機械の模式断面図である。
【
図2】
図1の機械の環状チャンバの1つの一部分の詳細断面図である。
【
図3】
図1の機械のステータ本体の第1実施形態による切り欠きの詳細模式断面図である。
【
図4】切り欠きの第2実施形態を備えるステータ本体の三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から
図3を参照して、本発明による回転電気機械1の実施形態を説明する。
【0024】
本発明による回転電気機械1は、本明細書では、第1ケーシングカバー12と、ケーシング本体11と、第2ケーシングカバー13とから形成されるケーシング10を備える。本発明による回転電気機械1は、ケーシング10内に設けられ、ロータシャフト51に固定して取り付けられたロータ50をさらに備える。ロータシャフト51は、ケーシングカバー12内の軸受52と、第2ケーシングカバー13内の軸受53とにより、回転自在にケーシング1内に保持される。
【0025】
さらに、本発明による回転電気機械1は、ロータ50を完全に囲うようにケーシング本体12内に固定して取り付けられたステータ40を備える。本明細書では、ステータ40は、ステータ本体41と、ステータ本体41内に長手方向に受容され、かつ、ステータ本体41の各々の側においてステータ本体41の長手方向端面411および412から長手方向に突出するコイルヘッド42、43を備えるコイル45とを備える。ステータ本体41は、単一または1束のステータブレード、シートもしくはプレートとすることができる。
【0026】
ステータ本体41は、コイル45の導体が受容される、2つの長手方向端面411、412の間に長手方向に延びる一連の切り欠き44を備える。導体は任意に、導電材料の多重撚線で構成することができる。ある実施形態では、コイル45は、導電材料による1組のピンから形成される。
図3に示すように、横断面において、各切り欠き44は半径方向に伸長した閉じた形状を備えている。コイル45が所定の位置に置かれると、切り欠き44を貫通するコイル45の様々な導体および/または撚線の間、ならびに、前記導体および/または撚線と切り欠き44の側壁との間に隙間ができる。
【0027】
本明細書では、ケーシング本体11は円筒形状を備え、本明細書ではケーシング本体11内に締結されたステータ本体41の長手方向寸法と同様の長手方向寸法を備える。第1ケーシングカバー12は、本明細書では環状の第1冷却チャンバ15を部分的に区切るライナ121、122、152を備えている。ライナは、第1ケーシングカバー12の側壁121と、第1ケーシングカバー12の底壁122の半径方向外側環状部分と、底壁122から突出し、かつ、側壁121からは反対側で離間した半径方向内側壁152とを含んでいる。壁152は、第1ケーシングカバー12に固定されている。従って、形成されたライナは、第1ケーシングカバー12に対して固定される。本発明による回転電気機械1の組み立て時、第1ケーシングカバー12は、側壁121の自由端において、ケーシング本体11と、ステータ本体41の長手方向端面411の半径方向外側部分とに圧接し、ライナの壁152の自由端において、ステータ本体41の長手方向端面411の半径方向内側部分に圧接する。このようにして、ステータ本体41の長手方向端面411に関係する第1ケーシングカバー12のライナは、コイル45の第1コイルヘッド43が延びる、本明細書では環状の第1冷却チャンバ15を形成する。この時、第1コイルヘッド43は第1コイルヘッドアセンブリを形成する。その結果、切り欠き44は、ステータ本体41の長手方向端面411において第1環状チャンバ15内に連通する。さらに、第1ケーシングカバー12は、第1環状冷却チャンバ15からの冷却剤のための流体連結手段151を備えている。本明細書では、流体連結手段151は、第1ケーシングカバー12の底壁122を貫通して長手方向に延び、かつ、ケーシング10の下部に位置するパイプ部分である。
【0028】
同様に、第2ケーシングカバー13は、本明細書では環状の第2冷却チャンバ14を部分的に区切るライナ131、132,142を備える。ライナは、第2ケーシングカバー13の側壁131と、第2ケーシングカバー13の底壁132の半径方向外側環状部分と、底壁132から突出し、かつ、側壁131からは反対側で離間した半径方向内側壁142とを含んでいる。壁142は、第2ケーシングカバー13に固定されている。従って、形成されたライナは、第2ケーシングカバー13に対し固定される。本発明による回転電気機械1の組み立て時、第2ケーシングカバー13は、側壁131の自由端において、ケーシング本体11と、ステータ本体41の長手方向端面412の半径方向外側部分とに圧接し、ライナの壁142の自由端において、ステータ本体41の長手方向端面412の半径方向内側部分に圧接している。このようにして、ステータ本体41の長手方向端面412に関係する第2ケーシングカバー13のライナは、コイル45の第2コイルヘッド42が延びる、本明細書では環状の第2冷却チャンバ14を形成する。この時、第2コイルヘッド42は第2コイルヘッドアセンブリを形成する。その結果、切り欠き44は、ステータ本体41の長手方向端面412において第2環状チャンバ14内に連通する。さらに、第2ケーシングカバー13は、第2環状冷却チャンバ14からの冷却剤のための流体連結手段141を備えている。本明細書では、流体連結手段141は、第2ケーシングカバー13の側壁131を貫通して半径方向に延び、かつ、ケーシング10の上部に位置するパイプ部分である。
【0029】
本発明による回転電気機械1の組み立て時、第1ケーシングカバー12および第2ケーシングカバー13はそれぞれ、ステータ本体41の第1および第2の締め付け軸受を形成することに留意すべきである。さらに、第1冷却チャンバ15および第2冷却チャンバ14の外側における冷却剤のいかなる漏出も防止するため、第1チャンバ15および第2チャンバ14と切り欠きとの接続部には密閉手段60が設けられている。より詳細には、本明細書での密閉手段60は、それぞれライナの壁152、142の自由端と、ステータ本体41の長手方向端面411、412とに挟まれた環状シールである。この結果、冷却チャンバからの冷却剤がステータ40とロータ50との間に存在する空隙に向かって流れることが防止される。
【0030】
動作時、冷却剤は、例えば、冷却剤吸入手段となる流体連結手段141により、冷却剤入口チャンバを形成する第2冷却チャンバ14内へ導入される。好ましくは、冷却剤は、第2冷却チャンバ14の容積を最適に占めるように圧力をかけて注入されるので、第2コイルヘッドアセンブリ42は冷却剤中に完全に浸漬される。次に、冷却剤は、切り欠き44に進入し、前記隙間内においてコイル45の導体および/または撚線の周囲をそれらに沿って流れる。この冷却剤の流れは、
図2で確認できる矢印によって示されている。さらに、冷却剤は切り欠き44を第1冷却チャンバ15に向かって離れ、第1コイルヘッドアセンブリ43を完全に満たして溢れさせ、最適な冷却を行なう。この時、第1冷却チャンバ15は冷却剤放出チャンバを形成する。最終的に冷却剤は、冷却剤を放出する手段となる流体連結手段151により放出される。
【0031】
変型例において、冷却剤の循環は、逆の様態で行なうことができる。
【0032】
図4および
図5を参照して、本発明による回転電気機械1の第2の構成を簡潔に説明する。この構成は、コイル45の導体および/または撚線を受容するステータ本体146の切り欠き144が横断面において開放した形状を備える点で、前の実施形態と異なり、切り欠き144は、ステータ本体146の半径方向内側面で開口している、半径方向に求心性の開口145を備える。切り欠き144内における冷却剤の循環が可能となるように切り欠き144を閉鎖するため、半径方向に求心性の開口145を閉鎖するジャケット160が、ステータ本体146と同軸になっている。この結果、ジャケット160は、上記密閉手段60を完成させるものとなる。ジャケット160は、ライナの壁142と一体に形成することができる。ジャケットと第2ケーシングカバー13の底壁132との接続部においても、チャンバを密閉するための手段が設けられている。
【0033】
本発明による回転電気機械1の代替的実施形態によれば、第1コイルヘッドアセンブリは例えば第1コイルヘッド43の一部分により形成され、第2コイルヘッドアセンブリは第1コイルヘッド43の別の部分により形成される。従って、第1および第2のコイルヘッドアセンブリは同じ長手方向端面411から突出する。その結果、第1コイルヘッドアセンブリの周囲に配される第1冷却チャンバはリング部分の形状とならない。同様に、第2コイルヘッドアセンブリの周囲に配される第2冷却チャンバはリング部分の形状とならない。例えば、第1および第2チャンバのリング部分が完全なリングを形成する。また例えば、第1および第2冷却チャンバは半円環状である。冷却チャンバの他の区画および数も実現可能である。
【0034】
本発明による回転電気機械1の、この代替的実施形態では、コイルは、第1長手方向端面411および第2長手方向端面412の他方412から突出する第2コイルヘッド42のすべて、または一部分により形成される第3コイルヘッドアセンブリを備えている。特に、第3コイルヘッドアセンブリは、一方で、第1冷却チャンバに連通する切り欠き44に関係するコイルヘッド42を備え、他方で、第2冷却チャンバに連通する切り欠き44に関係するコイルヘッド42を備える。この場合、本発明による回転電気機械1は、この第3コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状を備えた第3冷却チャンバを備える。このようにして、この第3冷却チャンバは、切り欠き44を介して第1および第2冷却チャンバと流体連結している。従って、第1および第2冷却チャンバは、前記切り欠き44を介して相互に流体連結される。例えば、第1および第2チャンバのリング部分が完全なリングを形成する場合、第3冷却チャンバは環状のチャンバとなる。さらに、附属図面に示した本発明による回転電気機械1の実施形態に関して上述したように、第3冷却チャンバは、第1冷却チャンバ14および第2冷却チャンバ15と同様に作製される。
【0035】
本発明による回転電気機械の、この代替的実施形態の動作は、上述の本発明による回転電気機械1と同様である。例えば、冷却剤は、冷却剤吸入手段となる流体連結手段により、冷却剤入口チャンバを形成する第1冷却チャンバ内へ導入される。好ましくは、冷却剤は、第1冷却チャンバの容積を最適に占めるように圧力をかけて注入されるので、第1コイルヘッドアセンブリは冷却剤中に完全に浸漬される。次に、冷却剤は、第1冷却チャンバに連通する、関係する切り欠き44に進入し、上記隙間内においてコイル45の導体および/または撚線の周囲をそれらに沿って流れる。さらに、冷却剤はこれらの切り欠き44を第3冷却チャンバに向かって離れ、第3コイルヘッドアセンブリを完全に満たして溢れさせ、最適な冷却を行なう。次に、冷却剤は、第2冷却チャンバに連通する、関係する切り欠き44に進入し、上記隙間内においてコイル45の導体および/または撚線の周囲をそれらに沿って流れる。第3冷却チャンバは接続チャンバを形成する。さらに、冷却剤はこれらの切り欠き44を第2冷却チャンバに向かって離れ、第2コイルヘッドアセンブリを完全に満たして溢れさせ、最適な冷却を行なう。この時、第2冷却チャンバは冷却剤放出チャンバを形成する。最終的に冷却剤は、第2冷却チャンバに関係する、冷却剤を放出する手段となる流体連結手段により放出される。
【0036】
冷却チャンバの他の配置も実現可能である。
【0037】
本発明による回転電気機械1の代替的実施形態では、第1ケーシングカバー12および第2ケーシングカバー13の一方がケーシング本体11に対し固定される。
【0038】
ここまで説明した、本発明による回転電気機械1により、本発明による回転電気機械1のステータ40から放出される熱の源であるコイル45の導体および/または撚線と冷却剤との直接の接触によって、コイル45、従ってステータ40の冷却が可能となる。
【0039】
ここまで説明した、本発明による回転電気機械1は、同期機または非同期機とすることができる。具体的には、乗用車、バン、トラック、バスもしくはコーチなどの電気自動車(バッテリ式電気自動車)および/またはハイブリッド式自動車(ハイブリッド式電気自動車-プラグインハイブリッド電気自動車)の牽引または推進のための機械である。本発明による回転電気機械1は、風力タービン、ボートまたは潜水艦などの工業的用途および/またはエネルギー生産用途に用いることができる。
【0040】
当然ながら、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明に対する多くの変型を実施することが可能である。
【手続補正書】
【提出日】2021-11-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(10)と、ステータ(40)とを備える回転電気機械(1)であって、前記ステータ(40)は、前記ケーシング内に固定され、第1(411)および第2(412
)長手方向端面を備えるステータ本体(41;146)と、前記第1および第
2長手方向端面の間の前記ステータ本体内に配され長手方向に延びる切り欠き(44;144)と、前記切り欠きを通って前記ステータ本体を長手方向に貫通し、前記ステータ本体の前記第1および第
2長手方向端面の少なくとも一方から突出する第1(43)および第2(42
)コイルヘッドアセンブリを備えるコイル(45)と、前記第1コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状
の第1チャンバ(15)と、前記第2コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状
の第2チャンバ(14)とを備え、前記第1および第2チャンバは前記切り欠きにより相互に流体連結され、前記第1および第2チャンバの一方は冷却剤入口チャンバであり、前記第1および第2チャンバの他方は冷却剤放出チャンバであって、前記回転電気機械の動作中、
環状の前記第1および第
2チャンバの間の冷却剤の流れは前記切り欠き内へ送り込まれるようになっており、前記コイルは1組のピンを含むことを特徴とする回転電気機械(1)。
【請求項2】
前記第1コイルヘッドアセンブリは前記第1および第
2長手方向端面の一方から突起し、前記第2コイルヘッドアセンブリは前記第1および第
2長手方向端面の他方から突起することを特徴とする、請求項
1に記載の機械。
【請求項3】
前記第1および第2チャンバは環状のチャンバであることを特徴とする、請求項1
または2に記載の機械。
【請求項4】
前記第1および第2コイルヘッドアセンブリは前記第1および第
2長手方向端面の一方から突出し、前記コイルは、前記第1および第
2長手方向端面の他方から突出する第3コイルヘッドアセンブリを備え、前記機械は、前記第3コイルヘッドアセンブリの周囲に配されたリング部分の形状
で、かつ、前記切り欠きを介して前記第1および第2チャンバと流体連結されている第3チャンバを備え
、かつ/または、前記第3チャンバは環状のチャンバであり、かつ/または、前記第1および第2チャンバの前記リング部分は完全なリングを形成し、かつ/または、前記第1および第2チャンバは半円環状のチャンバであることを特徴とする、請求項
1に記載の機械。
【請求項5】
前記第3チャンバは、前記ケーシングの壁に固定されたライナにより区切られていることを特徴とする、請求項
4に記載の機械。
【請求項6】
前記第1および第2チャンバは、前記ケーシングの壁に固定されたライナ(121、122、152、131、132、142)により区切られていることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の機械。
【請求項7】
前記ケーシングは、前記ステータ本体の第1(12)および第2(13
)締め付け軸受を備え、前記ライナは前記第1および/または第2締め付け軸受内に設けられることを特徴とする、請求項
5または
6に記載の機械。
【請求項8】
前記入口チャンバからの冷却剤のための吸入手段(141)を備えることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の機械。
【請求項9】
前記冷却剤
のための吸入手段は前記ケーシングの上部内に配置されていることを特徴とする、請求項
8に記載の機械。
【請求項10】
前記放出チャンバから冷却剤を放出するための手段(151)を備えることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の機械。
【請求項11】
前記冷却剤
を放出
するための手段は前記ケーシングの下部内に配置されていることを特徴とする、請求項
10に記載の機械。
【請求項12】
前記チャンバと前記切り欠きとの接続部に密閉手段(60、160)が設けられていることを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載の機械。
【請求項13】
前記密閉手段は、前記切り欠きに対して求心的に位置する環状シール(60)を備えることを特徴とする、請求項
12に記載の機械。
【請求項14】
前記切り欠き(44)は、横断面において閉じた形状を備え、または、前記切り欠き(144)は、半径方向に求心性の開口(145)を備え、前記機械はさらに、前記ステータ本体と同軸の、前記半径方向に求心性の開口を閉鎖するためのジャケット(160)を備えることを特徴とする、請求項1から
13のいずれか一項に記載の機械。
【請求項15】
前記ステータ本体は、長手方向の1束のステータブレードまたはプレートを含むことを特徴とする、請求項1から
14のいずれか一項に記載の機械。
【国際調査報告】