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特表2022-529380キメラ抗原受容体構築物およびCAR-T細胞におけるそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-21
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体構築物およびCAR-T細胞におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220614BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220614BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220614BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220614BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20220614BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20220614BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20220614BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20220614BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220614BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20220614BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220614BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220614BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220614BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220614BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20220614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220614BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220614BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220614BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C07K19/00
C07K14/725
C07K16/30
C07K16/08
C12N15/85 Z
C12N5/10
C12N5/0783
A61K31/7088
A61K35/76
A61K48/00
A61P31/12
A61P31/18
A61P35/00
A61K35/17 Z
A61K38/17
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563033
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020029768
(87)【国際公開番号】W WO2020219843
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】62/839,175
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】514299550
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】スー リーシャン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZC55
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC55
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087BB65
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZC55
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA42
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA22
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)組成物、ならびに、癌および抗ウイルス免疫療法におけるそれらの使用方法に関する。特に、本発明のCARは、ヘルペスウイルスエントリーメディエータ―タンパク質(HVEM)またはその機能性フラグメントまたは変異体を含む、共刺激シグナル(CSS)ドメインを含む。そのようなHVEM CSSを含むCARは、高いエフェクター機能を示す。
【選択図】 図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、T細胞受容体ドメイン、および、ヘルペスウイルスエントリーメディエータ―(HVEM)タンパク質を含む共刺激シグナル(CSS)ドメインまたはそれと少なくとも90%同一性を有するその機能性フラグメントもしくは変異体を含む、
キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
請求項1のCARであって、
HVEM CSSドメインが配列番号1のアミノ酸配列またはその機能性フラグメントを含む、
CAR。
【請求項3】
請求項1または2のCARであって、
前記CSSドメインは、CD28 CSSドメイン、4-1BB CSSドメイン、OX-40 CSSドメイン、ICOS CSSドメイン、それらと少なくとも90%同一性を有する任意のCSSドメインの機能性フラグメントまたは変異体、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、
CAR。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項のCARであって、
前記T細胞受容体ドメインは、CD3ζシグナリングドメインまたはそれと少なくとも90%同一性を有するその機能性フラグメントまたは変異体を含む、
CAR。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項のCARであって、
前記CSSドメインは、前記CSSドメインを含まないCARと比較して、増大した解糖系およびミトコンドリア呼吸と関連する高いエフェクター機能を促進する、
CAR。
【請求項6】
請求項5のCARであって、
CAR-T解糖系が少なくとも25%増大される、
CAR。
【請求項7】
請求項5のCARであって、
ミトコンドリア呼吸が少なくとも25%増大される、
CAR。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項のCARであって、
前記抗原結合ドメインは、一価抗体フラグメントを含む、
CAR。
【請求項9】
請求項8のCARであって、
前記一価抗体フラグメントは、単鎖可変フラグメント(scFv)またはFabフラグメントを含む、
CAR。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項のCARであって、
前記抗原結合ドメインは、ウイルス粒子および/または癌細胞の表面上に存在する抗原を標的化する、
CAR。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項のCARであって、
前記抗原結合ドメインは、可溶性CD4タンパク質またはそれと少なくとも90%同一性を有するその機能性フラグメントまたは変異体を含む、
CAR。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか一項のCARであって、
前記抗原結合ドメインは、表面タンパク質CAIXを標的化する一価抗体フラグメントを含む、
CAR。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項のCARであって、
前記抗原結合ドメインは、表面タンパク質aDG2を標的化する一価抗体フラグメントを含む、
CAR。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項のCARをコードする、
核酸分子。
【請求項15】
請求項14の核酸分子であって、
配列番号7のヌクレオチド配列またはそれと少なくとも90%同一性を有する配列を含む、
核酸分子。
【請求項16】
請求項14または15の核酸分子を含む、
ベクター。
【請求項17】
請求項1から13のいずれか一項のCARを含む、
細胞。
【請求項18】
請求項14または15の核酸分子および/または請求項16のベクターを含む、
細胞。
【請求項19】
請求項17または18の細胞であって、
前記細胞は、αβT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、Th17細胞、γδT細胞およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される、
細胞。
【請求項20】
請求項1から13のいずれか一項のCAR、請求項14または15の核酸分子、請求項16のベクター、および/または請求項17から19のいずれか一項の細胞を、薬学的に許容できる担体中に含む、
組成物。
【請求項21】
標的に対する免疫応答を、それを必要とする対象において提供する方法であって、
前記方法は、前記対象に、有効量の請求項1から13のいずれか一項のCAR、請求項14または15の核酸分子、請求項16のベクター、および/または請求項17から19のいずれか一項の細胞を投与するステップを含み、
それにより、前記対象において前記標的に対する免疫応答を提供する、
方法。
【請求項22】
標的に対する免疫応答を、それを必要とする対象において提供する方法であって、
前記方法は、
癌および/または感染を有する対象由来のT細胞を得るステップ;
請求項14または15の核酸分子または請求項16のベクターを用いて前記T細胞をトランスフェクトするステップ;
前記トランスフェクトされたT細胞を培養するステップ;および
前記の、培養された、トランスフェクトされたT細胞を前記対象へ投与するステップ、
を含み、
それにより、前記対象において前記標的に対する免疫応答を提供する、
方法。
【請求項23】
請求項21または22の方法であって、
前記標的は、癌細胞または感染因子である、
方法。
【請求項24】
抗原に対する細胞の反応性を促進する方法であって、
前記方法は、請求項14または15の核酸分子または請求項16のベクターを用いて細胞をトランスフェクトして、細胞表面上に抗原結合ドメインを含むトランスフェクトされた細胞を産生するステップを含み、
ここで、前記抗原結合ドメインは前記抗原に特異的に結合し、
それにより、前記抗原に対する前記細胞の反応性を促進する、
方法。
【請求項25】
それを必要とする対象における感染を治療する方法であって、
前記対象に、有効量の請求項1から11のいずれか一項のCAR、請求項14または15の核酸分子、請求項16のベクター、および/または、請求項17から19のいずれか一項の細胞を投与するステップを含み、
それにより、前記対象における前記感染を治療する、
方法。
【請求項26】
それを必要とする対象における感染を治療する方法であって、
前記方法は、
感染を有する対象由来のT細胞を得るステップ;
請求項14または15の核酸分子または請求項16のベクターを用いて前記T細胞をトランスフェクトするステップ;
前記トランスフェクトされたT細胞を培養するステップ;および
前記の、培養された、トランスフェクトされたT細胞を、感染を有する対象へ投与するステップ、
を含み、
それにより、前記対象における前記感染を治療する、
方法。
【請求項27】
請求項25または26の方法であって、
前記感染はHIVである、
方法。
【請求項28】
それを必要とする対象における癌を治療する方法であって、
前記対象に、有効量の請求項1から13のいずれかのCAR、請求項14または15の核酸分子、請求項16のベクター、および/または、請求項17から19のいずれか一項の細胞を投与するステップを含み、
それにより、前記対象における癌を治療する、
方法。
【請求項29】
それを必要とする対象における癌を治療する方法であって、
前記方法は、
癌を有する対象由来のT細胞を得るステップ;
請求項14または15の核酸分子または請求項16のベクターを用いて前記T細胞をトランスフェクトするステップ;
前記トランスフェクトされたT細胞を培養するステップ;および
前記の、培養された、トランスフェクトされたT細胞を、固形腫瘍を有する対象へ投与するステップ、
を含み、
それにより、前記対象における癌を治療する、
方法。
【請求項30】
請求項28または29の方法であって、
前記癌が固形腫瘍である、
方法。
【請求項31】
請求項28から30のいずれか一項の方法であって、
前記癌が、腎臓癌または神経芽細胞腫である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の陳述]
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の下で、2019年4月26日に出願された米国仮出願番号62/839,175の利益を主張し、その内容全体は参照により本明細書中に援用される。
【0002】
[配列リストの電子出願に関する陳述]
連邦規則法典第37巻1.821条の下で提出されたASCIIテキスト形式の配列リストであって、2020年4月22日に作成されてEFS-Webを介して提出された、10,703バイトのサイズの5470-846WO_ST25.txtと題されたものは、紙のコピーの代わりに提供される。この配列リストは、その開示に関して参照により本明細書中に援用される。
【0003】
[本発明の分野]
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)組成物、ならびに、癌および抗病原体免疫療法におけるそれらの使用方法に関する。
【0004】
[政府支援]
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号AI077454の下で、政府支援によってなされた。政府は本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0005】
キメラ抗原受容体(CAR)は、キメラ免疫受容体、キメラT細胞受容体または人工T細胞受容体としても知られ、癌細胞を標的化するために新たな特異性を免疫細胞と組み合わせた改変された受容体である。典型的に、これらの受容体は、モノクローナル抗体の特異性をT細胞に融合させる。受容体は、異なる由来からの部分の融合であるためキメラと呼ばれる。CAR-T細胞療法は、そのような形質転換された細胞を、主に癌療法のために用いる治療を指す。
【0006】
CAR-T細胞デザインの基本的な原理は、抗原結合とT細胞活性化機能を組み合わせる組み換え受容体を含む。CAR-T細胞の一般的な前提は、癌細胞のような病変細胞上に見られるマーカーに対して標的化されるT細胞を人工的に生産することである。科学者は、ヒトからT細胞を取り出し、それらを遺伝学的に変更し、そして、それらを患者内に戻して病変細胞を攻撃することができる。T細胞が改変されてCAR-T細胞になった時点で、それは「生きた薬物(living drug)」として作用する。
【0007】
CAR-T細胞は、細胞外リガンド認識ドメインと細胞内シグナリング分子の間のリンクを作り、その結果、T細胞を活性化する。細胞外リガンド認識ドメインは通常、単鎖可変フラグメント(scFv)である。CAR-T細胞療法の安全性の重要な一態様は、癌性腫瘍細胞のみが標的化され、正常細胞は標的化されないことを確実にする方法である。CAR-T細胞の特異性は、標的化される分子の選択によって決定される。
【0008】
例えば、癌の治療では、CAR-T細胞は、患者自身の血液から採取することができるか(自家)、または、別の健康なドナーから採取することができる(同種間)。これらのT細胞は、人工T細胞受容体を発現するように遺伝学的に操作され、それを通して癌抗原へ標的化される。このプロセスはMHC非依存性であり、したがって、標的化効率は非常に増大される。CAR-T細胞は、腫瘍表面上に存在する抗原を標的化するようにプログラムされる。腫瘍上の抗原と接触するとCAR-T細胞は、シグナルペプチドを介して活性化され、増殖し、細胞傷害性になる。CAR-T細胞は、広範囲の刺激された細胞増殖のようなメカニズムを通して、細胞が他の生細胞に対して毒性である程度(すなわち、細胞毒性)を増大させ、免疫系において細胞から分泌される、生物内の他の細胞に対する効果を有する因子の産生を増大させることにより、癌細胞を破壊する。これらの因子はサイトカインと呼ばれ、インターロイキン、インターフェロンおよび増殖因子を含む。
【0009】
最近では、CAR-T細胞療法は、他の癌タイプ(例えば、固形腫瘍)および/または疾患(例えば、慢性ウイルス感染(例えば、HIV))のための治療選択肢として考えられている。したがって、CAR-T細胞療法に関する可能性のある適用の拡大により、現在のCAR-T細胞療法を改善して、次世代のCAR-T細胞療法の薬剤およびそれらの構成要素を生産する必要性が当該分野において続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)の組成物およびそれを使用する方法を提供し、ここで、共刺激シグナル(CSS)は、ヘルペスウイルスエントリーメディエータ―(HVEM)タンパク質(CD270とも呼ばれる)を含む。CARにおけるCSSは、癌(例えば、固形腫瘍)および病原体感染(例えば、慢性ウイルスまたは細菌感染)のような多種多様の疾患において用いられるCAR-形質導入T細胞(CAR-T細胞)の免疫活性を調整する場合に重要である。HVEM CSSを含むCARは、HVEMを含まないCSSドメインを含むCARと比較して、著しくより高い解糖系およびミトコンドリア呼吸と関連する高いエフェクター機能を示し、同等の割合のセントラルおよびエフェクターメモリーサブセットを誘導した。したがって、CAR-T細胞の機能は、CAR-T細胞のエネルギー代謝を再プログラムすることによって、HVEM共刺激を通して改善され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の一態様は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、T細胞受容体ドメイン、および、ヘルペスウイルスエントリーメディエータ―(HVEM)タンパク質を含む共刺激シグナル(CSS)ドメインまたはそれと少なくとも90%同一性を有するその機能性フラグメントもしくは変異体を含む、キメラ抗原受容体(CAR)に関する。
【0012】
本発明の別態様は、本発明のCARをコードする核酸分子に関する。
【0013】
本発明のさらなる一態様は、本発明の核酸分子を含むベクターに関する。
【0014】
本発明のさらなる一態様は、本発明のCARを含む細胞に関する。
【0015】
本発明の別態様は、本発明の核酸分子および/または本発明のベクターを含む細胞に関する。
【0016】
本発明のさらなる一態様は、本発明のCAR、本発明の核酸分子、本発明のベクター、および/または、本発明の細胞を、薬学的に許容できる担体中に含む、組成物に関する。
【0017】
本発明のさらなる一態様は、それを必要とする対象における標的に対する免疫応答を提供する方法に関し、その方法は、有効量の本発明のCAR、本発明の核酸分子、本発明のベクター、および/または、本発明の細胞を対象に投与するステップを含み、それにより、対象における標的に対する免疫応答を提供する。
【0018】
本発明の別態様は、それを必要とする対象における標的に対する免疫応答を提供する方法に関し、その方法は、癌および/または感染を有する対象由来のT細胞を得るステップ、本発明の核酸分子または本発明のベクターを用いてT細胞をトランスフェクトするステップ、トランスフェクトされたT細胞を培養するステップ、および、培養された、トランスフェクトされたT細胞を対象に投与するステップを含み、それにより、対象における標的に対する免疫応答を提供する。
【0019】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の本発明の説明においてより詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A-1H】CARの共刺激シグナルは、ヒトT細胞株におけるCAR-T細胞活性を決定する。(図1A)CARを発現するレンチウイルスベクター構築物の略図。CARは、抗原認識ドメインとしてHIV Envタンパク質に結合し、共刺激シグナル配列が異なる、ヒトCD4(sCD4)の細胞外ドメインを含む。(図1B)形質導入ヒトT細胞株におけるCAR発現の分析のためのゲーティング戦略。GFP形質導入細胞をゲーティングして(下側パネル)、フローサイトメトリーによって、抗-c-mycタグ抗体を用いたCAR発現の分析に用いた(上側パネル)。それぞれの形質導入細胞の典型的なドットプロットおよびCARヒストグラムを示す。同様の形質導入効率が、レンチウイルスの形質導入によって達成された(図7Aおよび7Bも参照)。(図1C)異なるCSSを有するGFP細胞におけるCARの平均蛍光強度(MFI)(y軸)を示す(n=5)。**P<0.05(一元配置分散分析;bonfferoni’spost-hoc)。(図1D)異なるCSSを有するCAR形質導入T細胞株における、CAR(50kDa、上側パネル)、内因性CD3ζ(18kDa、中央パネル)およびアクチン(43kDa、下側パネル)発現レベルを、それぞれ抗-CD3ζおよび抗-アクチン抗体を用いたウエスタンブロットによって決定した。(図1E)形質導入(CD3GFP)または未形質導入(CD3GFP)T細胞における、活性化(CD69)細胞の頻度を、GFP(CHO-GFP)またはHIV-Env/GFP(CHO-Env-GFP)を発現する標的細胞との共培養アッセイによって決定した(図7Cも参照)。CD28(陰影バー)、4-1BB(灰色バー)およびHVEM(黒色バー)CSSを有するCAR-T細胞との共培養アッセイによる標準偏差と平均を示す(n=6)。**P<0.05(二元配置分散分析;bonfferoni’spost-hoc)。(図1F)共培養アッセイにおけるIL-2分泌をELISAによって測定した。CD28(陰影バー)、4-1BB(灰色バー)およびHVEM(黒色バー)CSSを有するCAR-T細胞との共培養アッセイによる標準偏差と平均を示す(n=5)。**P<0.05(二元配置分散分析;bonfferoni’spost-hoc)。(図1G)活性化されたCAR-T細胞の頻度(y軸)とCAR発現レベル(x軸)の間の線形回帰分析。(図1H)共培養アッセイにおいて抗原によって刺激されたCAR-T細胞からのIL-2分泌(y軸)とCAR発現レベル(x軸)の間の線形回帰分析。
図2A-2C】HVEM共刺激は、ヒトCAR-T細胞において最も高いCAR発現を示す。(図2A)異なるCSSDを有するCAR-T細胞間の細胞表面CAR発現の比較。棒グラフは、2人の異なるドナー由来の一次CD8 T細胞を用いた2つの別個の実験の標準偏差と平均を示す(n=6)。**P<0.05(一元配置分散分析;bonfferoni’spost-hoc)。(図2B)異なるCSSを有するCAR-T細胞間のCAR発現の比較。GFP形質導入一次ヒトCD8 T細胞におけるCAR発現を、フローサイトメトリーによって抗-c-mycタグ抗体を用いて分析した。2人の異なるドナー由来のGFP細胞におけるCAR発現(x軸)の代表的なヒストグラムを示す。各ヒストグラムにおける数字は、CARのMFIを示す。(図2C)異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞における、CAR(50kDa、上側パネル)、内因性CD3ζ(18kDa、中央パネル)およびアクチン(43kDa、下側パネル)発現レベルを、それぞれ抗-CD3ζおよび抗-アクチン抗体を用いたウエスタンブロットによって決定した。
図3A-3D】HVEM共刺激は、ヒトCAR-T細胞において最も高いエフェクター機能を示す。(図3A)異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞を、エフェクター:標的比を10:1、5:1および1:1でCHO-GFP(白丸)またはCHO-Env-GFP(黒丸)細胞と共培養した。結果は、2人の異なる健康なヒトドナー由来の一次CD8 T細胞を用いた2つの別個の実験の平均を示す(n=6)。(図3B)共培養アッセイのエフェクター:標的比を10:1でELISAによって測定した、IL-2(第1のパネル)、TNF-α(第2のパネル)およびIFN-γ(第3のパネル)分泌を示す(n=6)。**P<0.05(一元配置分散分析;bonfferoni’spost-hoc)。(図3C)10:1のエフェクター:標的比での、異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞間の細胞毒性の比較。**P<0.05(一元配置分散分析;bonfferoni’spost-hoc)。(図3D)異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞間の、共培養アッセイにおけるTNF-α分泌(y軸)とCAR発現レベル(x軸)の間の線形回帰分析。(IL-2、IFN-γまたは細胞毒性の線形回帰分析について、図8A-8Cも参照)。
図4A-4E】4-1BBおよびHVEMの共刺激は、CAR-T細胞の疲弊を回避する。(図4A)異なるCSSを有するGFP形質導入細胞上の、PD-1(x軸)およびLAG-3(y軸)の細胞表面発現の代表的なプロットを示す。各プロットにおける数字は、CAR-T細胞における各集団の頻度を示す。(図4B)棒グラフは、異なるCSSを有する各CAR-T細胞における、疲弊した(PD-1/LAG-3)集団を示す。2人の異なる健康なヒトドナー由来の一次CD8 T細胞を用いた2つの別個の実験の標準偏差と平均を示す(n=6)。**P<0.05(一元配置分散分析;bonfferoni’spost-hoc)。(図4C)異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞間の、共培養アッセイにおけるTNF-α分泌(y軸)と疲弊した(PD1+/LAG-3)CAR-T細胞の頻度(x軸)の間の線形回帰分析。(IL-2、IFN-γまたは細胞毒性の線形回帰分析について図9A-9Cも参照)。(図4D)棒グラフは、HVEM CAR-T細胞が、1つまたは2つの抑制性受容体を発現する集団の頻度がより低かったことを示す。(図4E)HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は、CAR-T細胞の疲弊を回避する。代表的なプロットは、異なるCSSDを有するCAR-T細胞上の、PD-1(x軸)およびLAG-3(y軸)の細胞表面発現を示す。各プロットにおける数字は、異なるCSSDを有するCAR-T細胞における各集団のパーセンテージを示す。
図5A-5D】共刺激シグナルは、メモリーT細胞集団のバランスに影響する。(図5A)異なるCSSを有するGFP細胞上の、CD45RO(x軸)およびCCR7(y軸)の細胞表面発現の代表的なプロットを示す。各プロットにおける数字は、CAR-T細胞における各集団の頻度を示す。(図5B)棒グラフは、異なるCSSを有する各CAR-T細胞における、ナイーブ(T:CCR7CD45RO)、セントラルメモリー(TCM:CCR7CD45RO)、エフェクターメモリー(TEM:CCR7CD45RO)および最終分化エフェクターメモリー(TEMRA:CCR7CD45RO)集団の頻度を要約する。(図5C)棒グラフは、異なるCSSを有するCAR-T細胞間の、TCMおよびTEM頻度(y軸)を示す。(図5D)棒グラフは、異なるCSSを有するCAR-T細胞間の、TCMおよびTEMの集団の比(TEMに対するTCM)を示す。結果は、2人の異なるドナー由来の一次CD8 T細胞を用いた2つの別個の実験の平均を示す(n=6)。**P<0.05(一元配置分散分析;bonfferoni’spost-hoc)。
図6A-6H】HVEM共刺激は、CAR-T細胞のエネルギー代謝を、よりエネルギー的に活性の状態に再プログラムする。(図6A)基礎代謝状態下およびミトコンドリア阻害剤に応答した、異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞の酸素消費速度(OCR)。データは、2人の異なる健康なヒトドナー由来の異なる分類がされた細胞を用いて行なわれた2つの実験の要約であり、標準偏差と平均としてプロットされる。(図6B)基礎OCRレベルの測定。(図6C)基礎細胞外酸性化速度(ECAR)レベルの決定。(図6D)(オリゴマイシン添加前の最後の速度測定値)-(オリゴマイシン添加後の最小速度測定値)として定義されるATP産生。(図6E)最大OCRレベルの測定。(図6F)予備呼吸の測定。(図6G)非ミト(Non-mito)呼吸の測定。(図6H)プロトン漏出の測定。棒グラフは、2人の異なる健康なヒトドナー由来の細胞を用いた2つの別個の実験の標準偏差と平均を示す。**P<0.05(一元配置分散分析;bonfferoni’spost-hoc)。
図7A-7C】レンチウイルス形質導入によって達成された、同様の形質導入効率。(図7A)CAR-形質導入Jurkat E6.1細胞の典型的なドットプロット。形質導入効率およびCAR発現を、GFP発現(y軸)および抗-c-mycタグ抗体染色(x軸)の後にフローサイトメトリーによって決定した。プロットにおける数字は、各細胞集団の頻度を示す。(図7B)示されたCSSを有するCAR-形質導入Jurkat E6.1細胞間の、GFP形質導入細胞(y軸)の頻度。標準偏差と平均を示す(n=5)。(図7C)共培養アッセイにおけるCAR-T細胞活性化を決定するためのゲーティング戦略。共培養アッセイにおける抗原活性化CAT-T細胞に関する分析戦略。標的細胞(HIV gp120GFPCHO細胞)を、CAR形質導入Jurkat E6.1細胞と共培養した。共培養後のGFP(y軸)対CD3(x軸)の代表的なドットプロット(左側パネル)。形質導入細胞を、GFP/CD3発現に基づいて標的細胞から分離して、CD69発現の分析に用いた(中央および右側パネル)。代表的なプロットは、標的細胞と共培養した際の、未形質導入(CD3GFP、中央プロット)または形質導入(CD3GFP、右側プロット)エフェクター細胞における、活性化された(CD69)細胞の頻度を示す。各プロットにおける数字は、活性化された細胞集団の頻度を示す。
図8A-8C】異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞間の、エフェクター機能とCAR発現レベルの間の線形回帰分析。グラフは、IL-2分泌(図8A)、IFN-γ分泌(図8B)または細胞毒性(図8C)(y軸)と、CAR発現レベル(x軸)の間の線形回帰分析の結果を示す。結果は、2人の異なる健康なヒトドナー由来の一次CD8 T細胞を用いた2つの別個の実験の平均を示す(n=6)。
図9A-9C】エフェクター機能と、異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞疲弊ヒトCAR-T細胞の間の線形回帰分析。グラフは、IL-2分泌(図9A)、IFN-γ分泌(図9B)または細胞毒性(図9C)(y軸)と、CAR発現レベル(x軸)の間の線形回帰分析の結果を示す。結果は、2人の異なる健康なヒトドナー由来の一次CD8 T細胞を用いた2つの別個の実験の平均を示す(n=6)。
図10A-10B】CD45ROおよびCCR7の表面発現による、メモリーT細胞サブセットの分析。(図10A)異なるCSSDを有するCAR-T細胞を有するセントラルメモリーT細胞の増大。(図10B)それぞれCD28および4-1BB由来のCSSDを有するCAR-T細胞を有するエフェクターメモリーT細胞およびセントラルメモリーT細胞の増大。
図11A-11C】ヒトCAR-T細胞における、HVEMに基づくCAR発現。(図11A)様々なCAR発現レンチウイルスベクター構築物の略図。CARは、細胞外抗原認識ドメインとして腎細胞腫瘍関連の膜貫通タンパク質炭酸脱水酵素IX(CAIX)に結合し、共刺激シグナル配列が異なる、抗-CAIX-scFVを含む。(図11B)CAR-形質導入ヒト細胞の典型的なドットプロット。形質導入効率およびCAR発現を、CAR-T細胞において、抗-c-mycタグ抗体染色の後にフローサイトメトリーを介して決定した(x軸)。プロットにおける数字は、それぞれの細胞集団の頻度を示す。(図11C)示されるように異なるCSSを有する細胞内のCARにおけるc-mycの平均蛍光強度(MFI)(y軸)。
図12A-12C】HVEM-CARは、ヒトCAR-T細胞において最も高いエフェクター機能を示す:腫瘍関連の膜貫通炭酸脱水酵素IX(CAIX)を発現する2つのヒト腎癌細胞株と、CAIX発現なしのコントロール腎癌細胞株。(図12A)形質導入ヒト腎癌細胞株ACHN、Ketr-3、およびOSRCにおける、CAR発現のゲーティングおよび分析。(図12B)ヒトCAR-T細胞が腎癌細胞を死滅化するカイネティクスを示すデータ。(図12C)ヒトCAR-T細胞が腎癌細胞を死滅化するのを示す要約データ。(図12D)ヒト腎癌細胞株Ketr-3と共培養したアッセイにおける、異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞のELISAによって測定したIFN-γ(左側パネル)およびIL-2(右側パネル)分泌。(図12E)ヒト腎癌細胞株OSRC-2と共培養したアッセイにおける、異なるCSSを有するヒトCAR-T細胞のELISAによって測定したIFN-γ(左側パネル)およびIL-2(右側パネル)分泌。
図13A-13C】HVEM-CAR T細胞は、より高い代謝活性を示す。(図13A)Seahorseアッセイによる、様々なCAR-T細胞のOCR。(図13B)基礎OCR。(図13C)最大OCR。
図14A-14C】マウスにおいてインビボで効率的な抗-腎臓腫瘍を示すHVEM-CAR T細胞。(図14A)マウスにおける、ヒト腎癌(RC)処置デザインを示す概略図。(図14B)NSGマウスにおける、14日目の末梢血中のヒトCAR-T細胞を示す要約データ。(図14C)肺に転移したヒト腎癌細胞を有するNSGマウスのCAR-T療法後の全生存。
図15A-15C】HVEM-CAR T細胞は、インビボでより良好の拡大を示す。(図15A)インビトロ形質導入後のCAR-T細胞のパーセンテージ。(図14B)14日目のNSGマウスにおける末梢血中のヒトCAR-T細胞。(図14C)全マウス血液細胞のパーセンテージとしてのヒトT細胞(左側パネル)またはヒトT細胞カウント/100μlのマウス血液(右側パネル)の要約データ。
図16】終了時に転移が減少したマウス肺の写真。
図17】終了時に転移が減少したマウス肺の組織病理学。
図18】第三世代のCARの略図。全ての構築物は、41BB、CD28、ICOS、またはOX40タンパク質由来の細胞質ドメインとともにHVEM共刺激ドメインを含む。最後の3つの構築物において、pRRL-VRC01-CD8-HVEM-OX40-CD3z構築物内のHVEMおよびOX40ドメイン間にリンカーを置き、または、CD3zドメイン内のITAM3モチーフをPD-1 ITIMに突然変異させた。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明はここで、本発明の好ましい実施態様が示される添付図面を参照して、より詳細に説明される。しかしながら本発明は異なる形で実現され得て、本明細書中に示される実施態様に制限されると解釈すべきでない。むしろ、これらの実施態様は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供されるものである。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書において、本発明の説明で用いられる専門用語は、特定の実施態様を説明する目的のためのみのものであり、本発明を制限することを意図しない。本明細書において引用される全ての刊行物、特許出願、特許、特許文献および他の参考文献は、参考文献が示される文章および/または段落に関連がある教示に関してそれらの全体で参照により援用される。
【0023】
ヌクレオチド配列は、別段の明確な指示がない限り、本明細書において、一本鎖のみによって、5’から3’の方向で、左から右に示される。ヌクレオチドおよびアミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される様式で、または、(アミノ酸については)一文字コードまたは三文字コードのいずれかによって、どちらも37 C.F.R.§1.822および確立された使用に従って表される。
【0024】
別段の指示がある場合を除き、当業者に公知の標準的な方法を、遺伝子クローニング、核酸の増幅および検出などに用いてよい。そのような技術は当業者に公知である。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 4th Ed.(Cold Spring Harbor,NY,2012);Ausubel et al.Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.およびJohn Wiley&Sons,Inc.,NewYork)を参照。
【0025】
本発明の説明および添付の特許請求の範囲において用いられるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形も含むことが意図される。
【0026】
また、本明細書において用いられる「および/または」は、関係がある挙げられたアイテムの1つまたは複数の任意および全てのあり得る組み合わせを指し、および包含し、ならびに、選択的に解釈される場合(「または」)は、組み合わせの欠失を指し、および包含する。
【0027】
さらに、本明細書において用いられる用語「約」は、本発明の抗体、化合物または薬剤の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指す場合、規定の量の±10%、±5%、±1%、±0.5%、または実に±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0028】
本発明のアミノおよび/またはヌクレオチド配列に適用される用語「から本質的になる」(および文法上の変形)は、挙げられた配列(例えば配列番号)と、挙げられた配列のN末端および/またはC末端および/または5’および/または3’末端上の合計10個以下(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)の追加のアミノ酸および/またはヌクレオチドの、両方からなるアミノおよび/またはヌクレオチド配列であって、アミノおよび/またはヌクレオチド配列がその標的に結合する能力が実質的に変更されないようなものを意味する。例えば、合計10個以下の追加のヌクレオチドは、5’および3’末端の両方の追加のヌクレオチドを足し合わせた合計数を含む。ヌクレオチド配列の結合に適用される用語「実質的に変更」とは、挙げられた配列からなるヌクレオチド配列の結合親和性と比較して、少なくとも約50%またはそれよりも高い結合親和性の増大または低減を指す。
【0029】
本発明の範囲において、用語「抗体」は、全長免疫グロブリンおよびそのフラグメントを指す。そのような全長免疫グロブリンは、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、ヒト化、べニア化(veneered)またはヒト抗体であってよい。
【0030】
用語「抗体フラグメント」は、全長免疫グロブリンの部分であって前記免疫グロブリンの標的化特異性を維持するものを含む。抗体フラグメントの全てではないが多くは、全長免疫グロブリンの定常領域(Fc領域)が少なくとも部分的に欠失している。一部の実施態様では、抗体フラグメントは、全長免疫グロブリンの消化によって生産される。抗体フラグメントは、免疫グロブリン部分または免疫グロブリン鎖を含む合成または組み換え構築物であってもよい(例えば、Holliger,P.and Hudson,J.Engineered antibody fragments and the rise of single domains.Nature Biotechnology 2005,vol.23,no.9,p.1126-1136を参照)。抗体フラグメントの例は、制限されずに、scFv、Fab、Fv、Fab’、F(ab’)フラグメント、dAb、VHH、ナノボディ、V(NAR)または最小認識単位を含む。「単鎖可変フラグメント」または「単鎖抗体」または「scFv」は、抗体フラグメントの1つのタイプである。scFvは、リンカーによって連結された免疫グロブリンのVHおよびVLを含む融合タンパク質である。それらはしたがって、全長免疫グロブリン内に存在する定常Fc領域が欠失しているが、元の免疫グロブリンの特異性を維持する。
【0031】
本明細書において用いられる、抗体のVHおよびVLにおけるアミノ酸残基位置を同定するためのナンバリングシステムは、Honegger,A.およびPluckthun,Aによって説明される「AHo」システムに相当する。免疫グロブリン可変ドメインに関するさらに別のナンバリングスキーム:An automatic modelling and analysis tool.Journal of Molecular Biology 2001,vol.309,p.657-670。その文献は、AHoおよびKabatシステム(U.S.DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES.NIH Publicationsによって編集された、Kabat,E.A.,et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest.5th edition.,1991.p.91-3242)の間の換算表をさらに提供する。
【0032】
本明細書において用いられる、「核酸」、「ヌクレオチド配列」および「ポリヌクレオチド」は、相互交換可能に用いられ、RNAおよびDNAの両方を包含し、cDNA、ゲノムDNA、mRNA、合成(例えば化学合成)DNAまたはRNA、およびRNAとDNAのキメラを含む。ポリヌクレオチド、ヌクレオチド配列、または核酸という用語は、鎖長にかかわらずヌクレオチドの鎖を指す。
【0033】
用語「フラグメント」は、参照核酸またはヌクレオチド配列と比較して減少した長さのヌクレオチド配列を意味すると理解され、参照核酸またはヌクレオチド配列と同一の連続したヌクレオチドのヌクレオチド配列を含む、から本質的になる、および/またはからなる。本発明に係るそのような核酸フラグメントは、適切な場合、より大きなポリヌクレオチド内に含まれて、その一構成となっていてよい。一部の実施態様では、そのようなフラグメントは、本発明に係る核酸またはヌクレオチド配列の、少なくとも約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の長さの連続するヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを含むことができ、から本質的になることができ、および/または、からなることができる。
【0034】
本明細書において用いられる用語「同一性」は、2つのタンパク質または核酸の間の配列一致を指す。比較されるタンパク質または核酸配列は、例えばEMBOSS Needle(ペアワイズアライメント;www.ebi.ac.ukで利用可能)のような生物情報学ツールを用いて、最大の同一性を与えるようにアライメントされる。比較される配列内の同じ位置が同じ核酸塩基またはアミノ酸残基で占められている場合、その結果、それぞれの分子は、まさにその位置において同一である。したがって、「パーセント同一性」は、一致する位置の数を、比較される位置の数で割って100%をかけた関数である。例えば、10個のうち6個の配列位置が同一であるならば、その結果、同一性は60%である。2つのタンパク質配列間のパーセント同一性は、例えば、EMBOSS Needleに組み入れられているNeedlemanおよびWunschのアルゴリズム(Needleman,S.B.and Wunsch,C.D.A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins.Journal of Molecular Biology1970,vol.48、p.443-453)を用いて、「ギャップ開始ペナルティ(gap open penalty)」を10、「ギャップ伸張ペナルティ(gap extend penalty)」を0.5、偽(false)「エンドギャップペナルティ(end gap penalty)」、「エンドギャップ開始ペナルティ(end gap open penalty)」を10、「エンドギャップ伸張ペナルティ(end gap extend penalty)」を0.5で、BLOSUM62マトリックスを用いて決定することができる。同一の一次アミノ酸または核酸配列を有する2つの分子は、いかなる化学的および/または生物学的な改変にも関係なく同一である。例えば、同一の一次アミノ酸配列を有するがグリコシル化パターンが異なる2つの抗体は、この定義によると同一である。核酸の場合は、例えば、同一の配列を有するが結合構成要素がリン酸の代わりにチオリン酸のように異なる2つの分子は、この定義によると同一である。
【0035】
本明細書において用いられる用語「変異」は、本明細書において開示される親配列の少なくとも1つの所望の活性を維持しながら、1つまたは複数のアミノ酸残基または核酸塩基の付加(挿入を含む)、欠失および/または置換によって親配列と異なるアミノ酸または核酸配列を指す。CARの場合、かかる所望の活性は、特異的な標的結合を含んでよい。同様に、変異核酸配列は、1つまたは複数の核酸塩基の付加、欠失および/または置換によって、親配列と比較すると改変され得るが、コードされるCARは、上述の所望の活性を維持する。変異は、対立遺伝子またはスプライス変異のような天然起源であってよく、または人工的に構築されてよい。
【0036】
また、本明細書において用いられる「1つまたは複数」とは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20などを意味する。
【0037】
本明細書において用いられる、本発明によって治療され得る「対象」は、医学的および/または治療的目的のためのヒト対象および獣医学的および薬物スクリーニングおよび開発目的のための動物対象の両方を含む。他の適切な動物対象は、一般に、哺乳類対象、例えば、霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、齧歯類(例えば、ラットおよびマウス)などである。ヒト対象が最も好ましい。ヒト対象は、胎児、新生児、幼児、未成年、成人および老人対象を含む。
【0038】
本明細書において用いられる用語「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の低減、腫瘍細胞の数の低減、増殖速度の低減、転移数の低減、平均余命の増大、および/または、癌性状態と関連する様々な生理学的症候の寛解によって明らかにされ得る生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」は、本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体が、腫瘍の発生をそもそも遅らせる能力によっても明らかにされ得る。
【0039】
本明細書において用いられる用語「自家」は、後に再導入される同一個体から採取される任意の材料を指すことを意味する。
【0040】
「同種間(Allogeneic)」は、同一種の異なる動物から採取される移植組織を指す。
【0041】
「異種間(Xenogeneic)」は、異なる種の動物から採取される移植組織を指す。
【0042】
本明細書において用いられる、抗体の「抗原結合部分」または「抗原結合フラグメント」(または単純に「抗体部分」または「抗体フラグメント」)という用語は、抗原に特異的に結合する能力を維持する抗体の、1つまたは複数のフラグメント、部分またはドメインを指す。全長抗体のフラグメントは、抗体の抗原結合機能を果たすことができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント(VL、VH、CL1およびCH1ドメインからなる一価フラグメント);(ii)F(ab’)フラグメント(ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのF(ab)’フラグメントを含む二価フラグメント);(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.(1989)Nature 241:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン(VLおよびVH)は別個の遺伝子によってコードされるが、組み換え方法を用いて、VLおよびVH領域のペアが一価分子を形成する単一の連続した鎖として作製されるのを可能にする合成リンカーによって連結され得る(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879-5883を参照)。そのような単鎖抗体もまた、用語抗体の「抗原結合部分」という用語の範囲内に包含されることが意図される。ダイアボディのような単鎖抗体の他の形態も包含される(例えば、Holliger et al.(1993)Proc.Natl.AcadSci.USA90:6444-6448を参照)。
【0043】
用語「エピトープ」は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域内の特異的な抗原結合部位と相互作用する抗原性決定因子を指す。単一の抗原は、1つよりも多いエピトープを有し得る。エピトープは、立体構造的または線状のいずれかであってよい。立体構造的エピトープは、1つ(または複数)の線状ポリペプチド鎖(単数または複数)の異なるセグメント由来の空間的に並置されたアミノ酸によって生産される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接アミノ酸残基によって生産されるエピトープである。特定の実施態様では、エピトープは、他の部分、例えば、糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基を抗原上に含んでよい。
【0044】
本明細書において用いられる「抗体重鎖」は、全抗体分子内にそれらの天然起源の立体構造で存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の大きな方を指す。
【0045】
本明細書において用いられる「抗体軽鎖」は、全抗体分子内にそれらの天然起源の立体構造で存在する2つのタイプのポリペプチド鎖の小さな方を指し、κおよびλ軽鎖は、2つの主な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0046】
本明細書において用いられる用語「抗原」または「Ag」は、免疫応答を引き起こす分子として定義される。この免疫応答は、抗体生産もしくは特異的な免疫適格細胞の活性化のいずれか、またはその両方を伴い得る。当業者は、実質的に全てのタンパク質またはペプチドを含む任意の高分子が、抗原として作用することができることを理解している。さらに、抗原は、組み換えまたはゲノムDNAから得ることができる。当業者は、免疫応答を誘発するタンパク質をコードしている、ヌクレオチド配列または部分的ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、したがって、「抗原」を、その用語が本明細書において用いられる場合にコードすることを理解している。さらに、当業者は、抗原が、遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことを理解している。本発明は、制限されないが、1つよりも多い遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むこと、および、これらのヌクレオチド配列が様々な組み合わせで並べられて所望の免疫応答を誘発することが容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解している。抗原は、合成することができ、または生物学的サンプルから採取することができることが容易に明らかである。そのような生物学的サンプルは、制限されないが、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞または生物学的流体を含むことができる。
【0047】
本明細書において用いられる「アミノ酸」は、α炭素上に上に遊離カルボキシル基および遊離非置換アミノ基を有する化合物を指し、それが、ペプチド結合によって連結されて本明細書中に記載のペプチド活性剤を形成し得る。アミノ酸は、標準的または非標準的、天然または合成であってよく、例(およびそれらの略称)は、制限されないが以下を含む:
Asp=D=アスパラギン酸
Ala=A=アラニン
Arg=R=アルギニン
Asn=N=アスパラギン
Cys=C=システイン
Gly=G=グリシン
Glu=E=グルタミン酸
Gln=Q=グルタミン
His=H=ヒスチジン
Ile=I=イソロイシン
Leu=L=ロイシン
Lys=K=リジン
Met=M=メチオニン
Phe=F=フェニルアラニン
Pro=P=プロリン
Ser=S=セリン
Thr=T=トレオニン
Trp=W=トリプトファン
Tyr=Y=チロシン
Val=V=バリン
Orn=オルニチン
Nal=2-ナフチルアラニン
Nva=ルバリン
Nle=ノルロイシン
Thi=2-チエニルアラニン
Pcp=4-クロロフェニルアラニン
Bth=3-ベンゾチエニルアラニン(benzothienyalanine)
Bip=4,4’-ビフェニルアラニン
Tic=テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸
Aib=アミノイソ酪酸
Anb=α-アミノノルマル酪酸(aminonormal butyricacid)
Dip=2,2-ジフェニルアラニン
Thz=4-チアゾリルアラニン
【0048】
本明細書において言及される全てのペプチド配列は、通常の慣習に従って書かれ、したがって、N末アミノ酸が左側でありC末アミノ酸が右側である。2つのアミノ酸残基間の短い線(または線はない)は、ペプチド結合を示す。
【0049】
「塩基性アミノ酸」は、pH6.0で正電荷の任意のアミノ酸を指し、制限されないが、R、K、およびHを含む。「芳香族アミノ酸」は、α炭素に結合した側鎖内に芳香族基を有する任意のアミノ酸を指し、制限されないが、F、Y、W、およびHを含む。
【0050】
本明細書において用いられる用語「検出可能な部分」は、任意の適切な検出可能基、例えば、当技術分野でよく知られており公知技術に従って用いられる、放射標識(例えば35S、125I、131Iなど)、酵素標識(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなど)、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、グリーン蛍光タンパク質など)などを含む。
【0051】
「免疫応答」は、抗原の存在に対する対象の反応を指し、以下:抗体の作製、免疫の発生、抗原に対する過敏性の発生、および寛容の発生の、少なくとも1つを含んでよい。
【0052】
本明細書において用いられる用語「免疫応答を高める」は、抗原の存在に対する対象の反応が、本発明のCARの不存在下での抗原の存在に対する対象の反応と比較して、本発明のCARの存在下で増加および/または増幅されることを含意している。
【0053】
用語「治療する(treat)」、「治療するステップ(treating)」または「~の治療(treatment of)」によって、対象の状態の重症度が減少または少なくとも部分的に改善または改変されること、および、少なくとも1つの臨床症候における何らかの軽減、緩和または低減が達成されることが意図される。
【0054】
本明細書において用いられる「効果的な」量は、所望の効果を提供する量である。
【0055】
本明細書において用いられる「治療的に効果的な」量は、なんらかの改善または利益を対象に提供する量である。別の言い方をすると、「治療的に効果的な」量は、対象における少なくとも1つの臨床症候の何らかの軽減、緩和、または低減を提供する量である。当業者は、何らかの利益が対象に提供される限り、治療的効果は完全または治癒的である必要はないことを理解している。
【0056】
キメラ抗原受容体(CAR)は、抗原結合ドメイン、および、T細胞受容体によって仲介されるシグナル伝達経路を真似することが可能なシグナル伝達ドメインからなる人工抗原受容体である。標的分子に対する抗体の単鎖可変領域または天然リガンドが、CARの抗原結合ドメインとして用いられている。CARの利点は、抗原プロセッシングまたは主要組織適合複合体(MHC)によって制限される抗原提示を必要とすることなく所定の標的を認識することができ、T細胞発現CAR(CAR-T細胞)が広範囲の患者の養子免疫療法のための有用なツールとして役立つ可能性をもたらすことである(Dotti et al.,Immunol.Rev.257(1):107(2014))。シグナル伝達ドメインとしてCD3ζを有する第一世代CARを発現するT細胞は、しばしばアネルギー性になり、強力な免疫応答を誘発できない(Kershaw et al.,Clin.Cancer Res.12(20Pt1):6106(2006))。この問題を解決するために、CD28、4-1BBまたはICOS由来の1つおよび2つの共刺激シグナル(CSS)ドメインを有する第二および第三世代のCARが開発された(Dotti et al.,Immunol.Rev.257(1):107(2014))。モジュール構造を有するこれらのCARは、抗原刺激の際にT細胞受容体によって仲介されるシグナル伝達をうまく真似て、CAR-T細胞の増殖および活性化をもたらすことが示されている(Maus et al.,Blood 123(17):2625(2014))。
【0057】
CD19標的化CAR-T細胞を用いたB細胞悪性腫瘍に対する養子免疫療法の臨床試験は、有望な結果を示し(Maude et al.,Blood 125(26):4017(2015))、細胞はアメリカ食品医薬品局によって2017年に承認され、臨床適用のためのさらなる拡張の可能性が示唆された(Miller et al.,Oncol.Res.Treat.38(12):683(2015))。しかしながら、CAR-T細胞の養子移入は、リンパ性悪性腫瘍に対するものよりも目立たない治療的効果を固形腫瘍に対して示した(Newick et al.,Mol Ther.Oncolytics 3:16006(2016))。CAR-T細胞の腫瘍浸潤を促進するヘパラナーゼが抗腫瘍効果を増大させることが最近報告されているので(Caruana et al.,Nat.Med.21(5):524(2015))、固形腫瘍に対する治療有効性を改善するためには、腫瘍微小環境を改変することが助けとなり得る。CAR-T細胞によって仲介される免疫療法の有用性を増大させるためには、CAR-T細胞のエフェクター機能および特性をさらに改善することも必要であり得る。共刺激は、T細胞が、効果的なエフェクター機能を示すのに重要なイベントであり、共刺激分子によって仲介される。共刺激分子は、2つの主なファミリー;CD28ファミリー(CD28およびICOSを含む)、および、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー(TNFRSF)(4-1BB(TNFRSF9)およびヘルペスウイルスエントリーメディエータ―(HVEM、TNFRSF14)を含む)に分けられる。これまで、CD28または4-1BB由来のCSSドメインが、CARを構築するのに一般に用いられてきた。以前の研究では、4-1BB由来のCSSドメインを有する第二世代CARを発現するT細胞は、ほとんどの患者の血液中で6ヶ月よりも長く持続するが、CD28由来CSSドメインを有するCAR-T細胞は、3ヶ月後にはほとんど検出不可能になることが示されている(Zhang et al.,Oncotarget 6(32):33961(2015))。さらに、4-1BBによって仲介される共刺激は、ミトコンドリア生合成およびエネルギー生産のための酸化的代謝を選択的に誘導して、高い分化をもたらし、セントラルメモリーT細胞のインビトロでの持続性を増大させた(Kawalekar et al.,Immunity 44(2):380(2016))。さらに、4-1BBによって仲介される共刺激は、トニック(tonic)シグナリングによって誘導されるT細胞疲弊を回避する(Long et al.,Nat.Med.21(6):581(2015))。したがって、TNFRSF由来のCSSドメインは、第二世代CARの関連におけるCD28ファミリー由来のものよりも良好に機能すると考えられる。
【0058】
TNFRSFの別のメンバーであるHVEMの、エフェクターCD8T細胞のエフェクター機能およびメモリーT細胞の発生(development)における役割を示唆した報告が蓄積している。CD8T細胞におけるHVEM不足は、エフェクターCD8T細胞の生存および防御免疫メモリーの発生を大いに損なわせることが示されている(Flynn et al.,PLoS One 8(10):e77991(2013))。BおよびTリンパ球アテニュエータ(HVEMのリガンドの1つ)、CD8T細胞上に発現されたHVEMとの相互作用も、細菌感染に応答して、生存およびメモリー産生(memory generation)を促進することが報告された(Steinberg et al.,PLoS One 8(10):e77992(2013))。さらに、抗-HVEM単鎖抗体を発現する腫瘍細胞は、共培養されたT細胞の強力な増殖およびサイトカイン産生を誘導し(Park et al.,Cancer Immunol.Immunother.61(2):203(2012))、HVEMが、T細胞において強力なCSSとして役立つことを示唆する。しかしながら、HVEMが、CAR-T細胞において、有用な共刺激シグナルとして働くことができるかどうかについては報告されていない。
【0059】
CARモジュールにおける効果的なCSSの同定は、固形腫瘍および病原体感染(例えば、慢性ウイルスまたは細菌の感染)のような、多種多様の疾患に対してCAR-T細胞療法を適用するための重要な要件の1つである。本発明者らは、CD28、4-1BBまたはHVEM由来のCSSドメインと組み合わせて、ヒト免疫不全ウイルスタイプ1(HIV-1)の表面エンベロープタンパク質(Env)を標的とする抗原結合ドメインとして、CD4の細胞外ドメイン(可溶性CD4(sCD4)として知られる)を含む、第二世代CARを開発した(図1A)。異なるCSSを有するsCD4-CARを用いて、本発明者らは、CAR-形質導入T細胞機能と、ヒトT細胞株および一次CD8T細胞の両方から作製されるCAR-T細胞上のCAR発現の間の関連性を観察した。この関連性は、CAR内のCSSに依存し、HVEM CSSが、最も強力なCSSを提供することが示された。表現型および代謝分析によって、HVEM CSSは、著しくより高い解糖系およびミトコンドリア呼吸とともに、同等の割合のセントラルおよびエフェクターメモリー表現型を誘導することが示された。さらに、HVEM CSSは、CAR-T細胞疲弊を回避した。これらの結果は予期されないものであり、驚くべきことに、CAR内のCSSが、エネルギー代謝の調整を通してCAR-T細胞の活性および特性に影響を与え、HVEMが、効果的なCAR-T細胞を開発するための有用なCSSであり得るという最初の証拠を提供することが示唆された。
【0060】
したがって、本発明は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、T細胞受容体ドメイン、および、ヘルペスウイルスエントリーメディエータ―(HVEM)タンパク質またはその機能性フラグメントを含む共刺激シグナル(CSS)ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)に関する。
【0061】
CSSドメインは、T細胞受容体ドメインの細胞内シグナルを促進してT細胞の活性化および増殖を開始するのに必須である。したがって、そのようなシグナルの促進は、選択されるCSSドメインおよび/またはその組み合わせに依存し得る。例えば、本発明では、HVEMタンパク質またはその機能性フラグメントもしくは変異体を含むCSSドメインは、T細胞の活性化および増殖を促進する。特に、本発明のHVEM CSSは、本発明のHVEM CSSドメインを含まないCARと比較して、増大した解糖系およびミトコンドリア呼吸と関連する高いエフェクター機能を促進する。
【0062】
一部の実施態様では、本発明のHVEM CSSドメインを含むCAR-T細胞は、本発明のHVEM CSSドメインを含まないCAR-T細胞と比較して、少なくとも約50%~約100%、約60%~約90%、または約70%~約80%(または少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%)、CAR-T解糖系が増大する。一部の実施態様では、本発明のHVEM CSSドメインを含むCAR-T細胞は、本発明のHVEM CSSドメインを含まないCAR-Y細胞と比較して、少なくとも約50%~約100%、約60%~約90%、または約70%~約80%(または少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約95%)、ミトコンドリア呼吸が増大する。
【0063】
一部の実施態様では、HVEM CSSドメインは、WVWWFLSGSLVIVIVCSTVGLIICVKRRKPRGDVVKVIVSVQRKRQEAEGEATVIEALQAPPDVTTVAVEETIPSFTGRSPNH(配列番号1)のアミノ酸配列、または、それと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有するその機能性フラグメントまたは変異体を含む、から本質的になる、またはからなる。一部の実施態様では、HVEM CSSは、LVIVIVCSTVGLIICVKRRKPRGDVVKVIVSVQRKRQEAEGEATVIEALQAPPDVTTVAVEETIPSFT(配列番号2)のアミノ酸を有するHVEMのフラグメント、または、それと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有するその変異体を含む、から本質的になる、またはからなる。
【0064】
一部の実施態様では、CSSドメインは、1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10個など)のさらなるCSSドメイン、その変異体、および/またはフラグメントをさらに含む。非限定的な例は、CD28 CSSドメイン、4-1BB CSSドメイン、OX-40 CSSドメイン、ICOSドメイン、または、それらと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有する、現在知られているかまたは後に同定される任意の他のCSSドメインおよび/またはそれらの機能性フラグメントまたは変異体を、任意の組み合わせで含む。一部の実施態様では、リンカーが、2個以上のドメインの間に存在してよい(例えば3~12残基のリンカー、例えば、5~8残基のリンカー)。例示的な構築物を図18に示す。
【0065】
T細胞受容体ドメインは、T細胞を部分的に活性化する細胞内シグナルに、受容体リガンド結合のイベントを伝達する、シグナリングドメインである。適切な共刺激シグナルがない場合は、このイベントは有用なT細胞活性化および増殖に不十分である。本発明のT細胞受容体ドメインの非限定的な例は、T細胞受容体ゼータ鎖(例えば、CD3ζ)のT細胞受容体ドメインである。一部の実施態様では、本発明のCARのT細胞受容体ドメインは、CD3ζシグナリングドメインまたはT細胞受容体由来の関連T細胞受容体ドメイン、またはそれらと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有するそれらの機能性フラグメントまたは変異体を含む、から本質的になる、またはからなる。一部の実施態様では、CD3ζドメイン内のITAM3モチーフは、PD-1 ITIMに突然変異され得る。関連T細胞受容体の例は、限定されないが、ITAMを含んでいる一次細胞質シグナリング配列、例えば、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79B、および/またはCD66dを含む。
【0066】
膜貫通ドメインは、全体としてのCARの安定性に必須である。一部の実施態様では、膜貫通ドメインは、細胞(例えば、T細胞)の膜全体に広がっている疎水性αヘリックスであってよい。一部の実施態様では、膜貫通ドメインは、任意のI型膜貫通タンパク質、例えば、CD4、CD28またはHVEM、または、それらと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有するそれらの機能性フラグメントまたは変異体由来であってよい。一部の実施態様では、膜貫通タンパク質は、CD28、または、それと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有するその機能性フラグメントである。
【0067】
抗原結合ドメインは、特定の病状と関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンド(すなわち抗原)を認識するように選択され得る。一部の実施態様では、抗原結合ドメインは、一価抗体フラグメントを含む。一部の実施態様では、一価抗体フラグメントは、単鎖可変フラグメント(scFv)またはFabフラグメントを含む。一部の実施態様では、一価抗体フラグメントは、約25~約30kDa(または約25kDa、約26kDa、約27kDa、約28kDa、約29kDa、または30kDa)の分子量を有する。一部の実施態様では、一価抗体フラグメントは、フレキシブルリンカーによっていずれかの方向で連結されたVHおよびVLドメイン(例えば、VL-リンカー-VHまたはVH-リンカー-VL)を有する。一部の実施態様では、方向は、VL-リンカー-VHであり、軽鎖可変領域がポリペプチドのN末端であり重鎖可変領域がポリペプチドのC末端である。フレキシブルリンカーは典型的に、10~約25アミノ酸を含み、例えば、グリシンは柔軟性を与え、および/または、セリンおよび/またはトレオニンは溶解度の改善のためである)。例えば、一部の実施態様では、(GGGGS)リンカー(配列番号3)またはその変異体が用いられる。3~5回の繰り返しを有する前記モチーフのバリエーションを用いてもよい。さらに適切なリンカーは、例えば、Alfthan,K.Properties of a single-chain antibody containing different linker peptides.Protein Engineering 1995,vol.8,no.7,p.725-731に記載されており、その全体で参照により援用される。
【0068】
本発明のCARの抗原結合ドメインによって標的化される病状は、癌および/または病原体感染(例えば、慢性ウイルスまたは細菌感染)であり得る。一部の実施態様では、抗原結合ドメインは、癌細胞および/またはウイルス粒子の表面上に存在する抗原を標的化する。例示的な癌および/または腫瘍細胞抗原は、S.A.Rosenberg(Immunity 10:281(1991))に記載される。他の例示的な癌および腫瘍抗原は、限定されないが以下を含む:BRCA1遺伝子産物、BRCA2遺伝子産物、gp100、チロシナーゼ、GAGE-1/2、BAGE、RAGE、LAGE、NY-ESO-1、CDK-4、β-カテニン、MUM-1、カスパーゼ-8、KIAA0205、HPVE、SART-1、PRAME、p15、メラノーマ腫瘍抗原(Kawakami et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:3515;Kawakami et al.,(1994)J.Exp.Med.,180:347;Kawakami et al.(1994)Cancer Res.54:3124)、MART-1、gp100 MAGE-1、MAGE-2、MAGE-3、CEA、TRP-1、TRP-2、P-15、チロシナーゼ(Brichard et al.(1993)J.Exp.Med.178:489);HER-2/neu遺伝子産物(米国特許第4,968,603号)、CA125、LK26、FB5(エンドシアリン)、TAG72、AFP、CA19-9、NSE、DU-PAN-2、CA50、SPan-1、CA72-4、HCG、STN(シアリルTn抗原)、c-erbB-2タンパク質、PSA、L-CanAg、エストロゲン受容体、乳脂グロブリン、p53腫瘍抑制タンパク質(Levine(1993)Ann.Rev.Biochem.62:623);ムチン抗原(国際特許公報番号WO90/05142);テロメラーゼ;核マトリックスタンパク質;前立腺酸性ホスファターゼ;乳頭腫ウイルス抗原;および/または、以下の癌(例えば、固形腫瘍)と関連することが現在知られているかまたは後に発見される抗原:黒色腫、腺癌、胸腺腫、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、肉腫、肺癌、肝臓癌、結腸癌、白血病、子宮癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、腎癌、膵癌、脳腫瘍、神経芽細胞腫、および、現在知られているかまたは後に同定される任意の他の癌または悪性状態(例えば、Rosenberg(1996)Ann.Rev.Med.47:481-91を参照)。
【0069】
一部の実施態様では、抗原結合ドメインは、癌細胞の表面上に存在する抗原を標的化する。一部の実施態様では、抗原結合ドメインは、腎癌細胞の表面上に存在する抗原を標的化する。腎癌細胞は、限定されないが、腎細胞癌、移行上皮癌、ウィルムス腫瘍、腎肉腫および/または転移性腎癌由来の細胞を含む。
【0070】
一部の実施態様では、抗原結合ドメインは、制限されないが、淡明細胞型(clear all)RCC、乳頭状RCC、嫌色素性RCC、集合管RCC、および/または分類されないRCCから選択される腎細胞癌(RCC)細胞の表面上に存在する抗原を標的化する。一部の実施態様では、腎細胞癌細胞は、制限されないが、Ketr-3および/またはORSC-2またはACHN腎癌細胞株から選択される。例示的な腎癌抗原は、限定されないが、当技術分野で知られているかまたは将来的に同定される腎癌細胞の表面上に存在する任意の表面タンパク質および/またはポリペプチドを含む。
【0071】
一部の実施態様では、本発明の抗原結合ドメインは、表面タンパク質炭酸脱水酵素IX(CAIX)を標的化する。一部の実施態様では、表面タンパク質炭酸脱水酵素IX(CAIX)を標的化する本発明の抗原結合ドメインは、抗-CAIX scFvのアミノ酸配列を含む一価抗体フラグメントまたはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有するその変異体を含む。
【0072】
一部の実施態様では、抗原結合ドメインは、神経芽腫細胞の表面上に存在する抗原を標的化する。一部の実施態様では、神経芽腫細胞はPDX細胞株由来であるが、他の神経芽腫細胞株を用いることもできる。例示的な神経芽細胞腫抗原は、限定されないが、当技術分野で知られているかまたは将来的に同定される神経芽腫細胞の表面上に存在する任意の表面タンパク質および/またはポリペプチドを含む。一部の実施態様では、本発明の抗原結合ドメインは、表面タンパク質ジシアロガングリオシドGD2を標的化する。一部の実施態様では、表面タンパク質ジシアロガングリオシドGD2(aGD2)を標的化する本発明の抗原結合ドメインは、aGD2のアミノ酸配列を含む一価抗体フラグメントまたはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有するその変異体を含む。
【0073】
一部の実施態様では、抗原結合ドメインは、ウイルス粒子の表面上に存在する抗原を標的化する。ウイルス粒子の例は、限定されないが、インフルエンザウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラッサ熱ウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルス、痘瘡ウイルス、アデノウイルス、乳頭腫ウイルス、パルボウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、パラインフルエンザウイルス、コロナウイルス、風疹ウイルス、狂犬病ウイルス、ヒトT細胞球向性ウイルス、ピコルナウイルス、ヘパドナ(hepa DNA)ウイルス、フラビウイルス、デルタウイルス、カリシウイルス、ポリオウイルス、ジカウイルス、ウエストナイルウイルス、SARS、風疹、ノロウイルス、ヒト乳頭腫ウイルス、マラリア、ヒトTリンパ球向性ウイルス、および/またはヘリコバクターピロリを含む。
【0074】
例示的なウイルス抗原は、限定されないが、上記に挙げたウイルス粒子の表面上に存在する任意の表面タンパク質および/またはポリペプチドを含む。そのような表面タンパク質および/またはポリペプチドの例は、限定されないがジカエンベロープドメイン-3、ジカエンベロープN、WNVエンベロープ、WNV Pre-M、VZV ORF9、VZV ORF26、CoV-NL63、CoV-229E、風疹E1、ノロウイルスグループ-1 P-ドメイン、ノロウイルスグループ-2 P-ドメイン、HPV11、HPV16、HPV18、HPV6、HPV16 E6、マラリアPf.MSP1、マラリアPv.MSP1、ラッサキャプシド、ラッサGP1、H1N1北京、H1N1カリフォルニア、H1N1ニューカレドニア、HTLV-1エンベロープ、HTLV-1 gp21、HTLV-1モザイク、HIV O型エンベロープ、HIV O型gp41、HIV-1エンベロープ、HIV-1 gag p17、p24、HIV-1 gp120 CM、CagAピロリ、Ompピロリ、HP-NAP、HAV P2C、HAV P2C-P3A、HAV P2C-P3B、HAV P3C、HAV VP1、HAV VP1-P2A(669-782a.a)、HAV VP1-P2A(722-830a.a.)、HAV VP3、HAV VP4-VP2、HSV 2 gG、HSV-1 gD、および/またはHSV-2 gBを含む。一部の実施態様では、ウイルス粒子はHIV粒子である。一部の実施態様では、抗原結合ドメインは、制限されないが、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1のエンベロープタンパク質ENVのようなHIV粒子の表面受容体を標的化する。
【0075】
一部の実施態様では、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1の表面エンベロープタンパク質ENVを標的化する本発明の抗原結合ドメインは、可溶性CD4タンパク質またはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有するその機能性フラグメントまたは変異体を含む。一部の実施態様では、可溶性CD4タンパク質は、アミノ酸配列:MNRGVPFRHLLLVLQLALLPAATQGKKVVLGKKGDTVELTCTASQKKSIQFHWKNSNQIKILGNQGSFLTKGPSKLNDADSRRSLWDQGNFPLIIKNLKIEDSDTYICEVEDQKEEVQLLVFGLTANSDTHLLQGQSLTLTLESPPGSSPSVQCRSPRGKNIQGGKTLSVSQLELQDSGTWTCTVLQNQKKVEFKIDIVVLA(配列番号4)を含む、から本質的になる、またはからなるヒト可溶性CD4タンパク質、またはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有するその機能性フラグメントまたは変異体である。
【0076】
一部の実施態様では、抗原結合ドメインおよび膜貫通ドメインは、スペーサーを用いて連結される。様々な異なるスペーサーを用いることができる。例えば、一部の実施態様では、スペーサーは、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または10個未満のアミノ酸を含む短いスペーサーである。一部の実施態様では、スペーサーは、Fc領域の少なくとも一部、例えば、CH3ドメインのヒトFc領域のヒンジ部またはその変異体を含むことができる。一部の実施態様では、スペーサーは、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)ヒンジ領域の全て又は一部、すなわち、免疫グロブリンのCH1およびCH2ドメインの間に入る配列、例えば、IgG4 FcヒンジまたはCD8ヒンジ領域を含む。例は、限定されないが、CD8ヒンジ、CD28ヒンジIgG4(HL-CH3)、またはIgG4(L235E、N297Q)を含む。一部の実施態様では、スペーサーは、AGEQKLISEEDLGALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLD(配列番号5)のアミノ酸配列を有するCD8ヒンジ領域を含む、から本質的になる、またはからなる。
【0077】
さらなる実施態様では、本発明のCARは、当技術分野で知られている検出可能な部分および/またはエフェクター分子(その非限定的な例は、薬物、毒素、小分子、抗体、および/または抗体フラグメントを、単独または任意の組み合わせで含む)をさらに含むことができる。一部の実施態様では、本発明のCARは、抗-c-mycタグを含む。
【0078】
一部の実施態様では、本発明のCARは、MNRGVPFRHLLLVLQLALLPAATQGKKVVLGKKGDTVELTCTASQKKSIQFHWKNSNQIKILGNQGSFLTKGPSKLNDRADSRRSLWDQGNFPLIIKNLKIEDSDTYICEVEDQKEEVQLLVFGLTANSDTHLLQGQSLTLTLESPPGSSPSVQCRSPRGKNIQGGKTLSVSQLELQDSGTWTCTVLQNQKKVEFKIDIVVLAAGEQKLISEEDLGALSNSIMYFSHFVPVFLPAKPTTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEASRPAAGGAVHTRGLDWVWWFLSGSLVIVIVCSTVGLIICVKRRKPRGDVVKVIVSVQRKRQEAEGEATVIEALQAPPDVTTVAVEETIPSFTGRSPNHRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号6)のアミノ酸配列またはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または99.5%同一性を有する配列を含む、から本質的になる、またはからなる。
【0079】
本発明はさらに、本発明のCARをコードする核酸分子を提供し、一部の実施態様では、その核酸分子は、atgaaccggggagtcccttttaggcacttgcttctggtgctgcaactggcgctcctcccagcagccactcagggaaagaaagtggtgctgggcaaaaaaggggatacagtggaactgacctgtacagcttcccagaagaagagcatacaattccactggaaaaactccaaccagataaagattctgggaaatcagggctccttcttaactaaaggtccatccaagctgaatgatcgcgctgactcaagaagaagcctttgggaccaaggaaacttccccctgatcatcaagaatcttaagatagaagactcagatacttacatctgtgaagtggaggaccagaaggaggaggtgcaattgctagtgttcggattgactgccaactctgacacccacctgcttcaggggcagagcctgaccctgaccttggagagcccccctggtagtagcccctcagtgcaatgtaggagtccaaggggtaaaaacatacagggggggaagaccctctccgtgtctcagctggagctccaggatagtggcacctggacatgcactgtcttgcagaaccagaagaaggtggagttcaaaatagacatcgtggtgctagctgaattcgagcagaagctgatcagcgaggaggacctgggcgccctgagcaacagcatcatgtacttcagccacttcgtgcccgtgttcctgcccgccaagcccaccaccacccccgccccccgcccccccacccccgcccccaccatcgccagccagcccctgagcctgcgccccgaggccagccgccccgccgccggcggcgccgtgcacacccgcggcctggactgggtgtggtggttcctgagcggcagcctggtgatcgtgatcgtgtgcagcaccgtgggcctgatcatctgcgtgaagcgccgcaagccccgcggcgacgtggtgaaggtgatcgtgagcgtgcagcgcaagcgccaggaggccgagggcgaggccaccgtgatcgaggccctgcaggccccccccgacgtgaccaccgtggccgtggaggagaccatccccagcttcaccggccgcagccccaaccaccgcgtgaagttcagccgcagcgccgacgcccccgcctaccagcagggccagaaccagctgtacaacgagctgaacctgggccgccgcgaggagtacgacgtgctggacaagcgccgcggccgcgaccccgagatgggcggcaagccccgccgcaagaacccccaggagggcctgtacaacgagctgcagaaggacaagatggccgaggcctacagcgagatcggcatgaagggcgagcgccgccgcggcaagggccacgacggcctgtaccagggcctgagcaccgccaccaaggacacctacgacgccctgcacatgcaggccctgcccccccgctaa(配列番号7)のヌクレオチド配列またはそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、07%、98%、99%、または99.5%同一性を有する配列を含む、から本質的になる、またはからなる。
【0080】
本発明の核酸分子を含んでいるベクターが、本明細書においてさらに提供される。ベクターは、限定されないが、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルスベクター、またはコスミドベクターを含む。本発明のTリンパ球は、例えば、CARがTリンパ球において生産される条件下でウイルスベクターを用いて形質導入され得る。ベクターの選択は、導入される宿主細胞にしばしば依存する。
【0081】
一部の実施態様では、本発明は、本発明のCARを含んでいる細胞を提供し、一部の実施態様では、本発明は、本発明の核酸分子および/またはベクターを含んでいる細胞を提供する。本発明の細胞の非限定的な例は、αβT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、Th17細胞、γδT細胞、および任意のそれらの組み合わせを含む。
【0082】
一部の実施態様では、本発明は、癌細胞および/またはウイルス粒子の表面上に存在する抗原を認識して結合するCARを含んでいる細胞傷害性Tリンパ球を提供する。例えば、一部の実施態様では、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1の表面エンベロープタンパク質ENVを認識して結合する、CARを含んでいる細胞傷害性Tリンパ球である。一部の実施態様では、癌細胞の表面タンパク質、例えば、腎癌細胞の表面タンパク質(すなわち、CAIX)および/または神経芽腫細胞の表面タンパク質(すなわち、aGD2)を認識して結合する、CARを含んでいる細胞傷害性Tリンパ球である。細胞傷害性Tリンパ球を、それから、ウイルスベクターを用いて形質導入することができ、または、本発明のCARをコードするヌクレオチド配列を含んでいるプラスミドまたは核酸構築物を用いてトランスフェクトすることができ、一部の実施態様では、ヌクレオチド配列は、他のCAR-T細胞に関して病院で用いられる任意のレンチウイルスまたはレトロウイルスベクターであってよい。
【0083】
特定の実施態様では、本発明は、癌細胞および/またはウイルス粒子の表面上に存在する抗原(例えば、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1の表面エンベロープタンパク質ENV、CAIXおよび/またはsGD2)に特異的な抗原結合フラグメント、膜貫通ドメイン(例えば、CD28)、T細胞受容体ドメイン(例えば、CD3ζ)、および本発明のHVEMタンパク質を含むCSSドメインまたはそれと少なくとも90%同一性を有するその機能性フラグメントまたは変異体を含む、CARを含むように改変されたTリンパ球を含む。特定の実施態様では、抗原(例えば、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1の表面エンベロープタンパク質ENV、CAIXおよび/またはsGD2)のためのモノクローナル抗体フラグメントは、単鎖可変フラグメント(scFv)である。
【0084】
特定の実施態様では、本発明は、癌細胞および/またはウイルス粒子の表面上に存在する抗原(例えば、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1の表面エンベロープタンパク質ENV、CAIX、aGD2)に特異的な細胞を提供し、ここで前記細胞は、例えばCD4タンパク質、CAIX、aGD2および/またはそれらのフラグメント由来の細胞外抗原結合ドメインを、T細胞受容体ζ鎖由来のT細胞受容体ドメイン、および、HVEMタンパク質を含むCSSドメインまたはそれと少なくとも90%同一性を有するその機能性フラグメントまたは変異体に結合することによって生産される、細胞表面上のCARを有する。
【0085】
本発明のさらなる実施態様では、抗原に対する細胞の反応性を促進するための方法が提供され、その方法は、本発明の核酸分子および/または本発明のベクターを用いて細胞をトランスフェクトして、細胞表面上に抗原結合ドメインを含むトランスフェクトされた細胞を生産するステップを含み、ここで、抗原結合ドメインは、抗原に特異的に結合し、それにより、抗原に対する細胞の反応性を促進する。本明細書において用いられる「反応性」は、抗原の結合の際に細胞が免疫応答を促進する能力を指す。本発明のCARを用いて改変された細胞は、本発明のCARを用いない細胞と比較して、免疫応答の増大(例えば、より強い、より速い、および/または、より効果的な免疫応答)を促進し得る。一部の実施態様では、抗原は、癌細胞および/またはウイルス粒子の表面上に存在する。一部の実施態様では、抗原は、ウイルス粒子、例えば、HIV粒子上に存在する。一部の実施態様では、抗原は、癌細胞、例えば、固形腫瘍(例えば、腎癌)上に存在する。一部の実施態様では、細胞は、細胞傷害性Tリンパ球である。
【0086】
さらなる実施態様では、本発明は、薬学的に許容できる担体中の、本発明のCAR、本発明の核酸分子、本発明のベクターおよび/または本発明の細胞を含む、から本質的になる、またはからなる、組成物(例えば医薬組成物)を提供する。
【0087】
さらなる実施態様では、本発明は、それを必要とする対象における、標的(例えば、癌細胞および/または感染因子)に対する免疫応答を提供する方法を提供する。一部の実施態様では、その方法は、有効量の本発明のCARおよび/または本発明の核酸分子および/または本発明のベクター、および/または本発明の細胞を、対象に投与するステップを含み、それにより、対象における標的に対する免疫応答を提供する。一部の実施態様では、標的は感染因子であり、本発明のCARおよび/または本発明の核酸分子および/または本発明のベクター、および/または本発明の細胞の投与は、対象における感染を治療する。一部の実施態様では、標的は癌であり、本発明のCARおよび/または本発明の核酸分子および/または本発明のベクター、および/または本発明の細胞の投与は、対象における癌を治療する。一部の実施態様では、癌は固形腫瘍を含む。
【0088】
一部の実施態様では、その方法は、本発明のCARを含む改変されたT細胞(すなわちTリンパ球)を投与するステップを含む。本発明のCARを含む改変されたTリンパ球を調製する方法は、当業者によく知られている。例えば、一部の実施態様では、細胞傷害性リンパ球(すなわちT細胞)は、標的(例えば癌細胞および/または感染因子)に対する免疫が易感染性である対象および/または標的に対して免疫不全になるリスクがある対象から得ることができる。一部の実施態様では、対象は癌を有する。一部の実施態様では、対象は感染を有する。一部の実施態様では、細胞傷害性リンパ球(すなわちT細胞)は、当技術分野でよく知られている技術を用いて末梢血から単離される(例えば、Ficoll密度勾配遠心分離の後に、望ましくない細胞を除去するためのネガティブ選択を行なう)。
【0089】
細胞傷害性リンパ球は、本発明のCARをコードする本発明の発現ベクターおよび/または核酸分子を用いてリンパ球の集団をトランスフェクトすることによって、本発明のCARを発現するように改変され得る。本発明のCARを発現するリンパ球のトランスフェクトされた集団を調製するのに適切な方法は当業者によく知られており、限定されないが、レトロウイルス、レンチウイルス(ウイルス媒介性CAR遺伝子送達システム)、スリーピング・ビューティー(sleeping beauty)、および/またはpiggyback(ピギーバック)(非ウイルス媒介性CAR遺伝子送達システムを含むトランスポゾン/トランスポサーゼシステム)を含む。
【0090】
トランスフェクトされたリンパ球は、対象(例えばヒト)に導入される細胞の集団に適切な条件下で培養される。特定の考慮は、ウシ血清のようないかなる動物産物も含まない培養培地の使用を含む。他の考慮は、細菌、菌類、およびマイコプラズマの汚染を避けるための滅菌条件を含む。一部の実施態様では、対象へ投与される前に、培養されたトランスフェクトされたリンパ球は、ペレット化され、洗浄され、薬学的に許容できる担体または希釈剤中に再懸濁されてよい。トランスフェクトされたリンパ球の対象への投与は、標的(例えば、癌細胞および/または感染因子)に対する免疫応答を与え得て、または高め得る。一部の実施態様では、トランスフェクトされたリンパ球の対象への投与は、対象における癌および/または病原体感染を治療し得る。一部の実施態様では、対象はヒトである。一部の実施態様では、治療される病原体感染は、慢性ウイルス感染、例えば、HIVである。
【0091】
一部の実施態様では、治療される標的は癌である。一部の実施態様では、治療される癌は固形腫瘍を含む。一部の実施態様では、治療される癌は腎癌である。例示的な腎癌は、限定されないが、腎細胞癌、移行上皮癌、ウィルムス腫瘍、腎肉腫および/または転移性腎癌を含む。一部の実施態様では、腎癌は腎細胞癌(RCC)である。一部の実施態様では、腎細胞癌は、制限されないが、淡明細胞型RCC、乳頭状RCC、嫌色素性RCC、集合管RCC、および/または分類されないRCCを含む。
【0092】
一部の実施態様では、本発明の方法は、有効量の本発明のCARおよび/または本発明の核酸分子および/または本発明のベクター、および/または本発明の細胞を、それを必要とする対象に投与して、癌(すなわち、腎癌)を治療するステップを含む。一部の実施態様では、治療は、腫瘍サイズの減少をもたらす。一部の実施態様では、腫瘍サイズ/体積は、未治療の腫瘍と比較して、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%減少する。一部の実施態様では、治療は、対象の生存率の増大をもたらす。一部の実施態様では、生存率は、未治療の対象と比較して、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%増大する。
【0093】
一部の実施態様では、本発明の方法は、有効量の本発明のCARおよび/または本発明の核酸分子および/または本発明のベクター、および/または本発明の細胞を、それを必要とする対象に投与して、対象内に存在する癌細胞の数を減少させるステップを含む。一部の実施態様では、癌細胞の数は、未治療の対象と比較して、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、または10倍減少する。
【0094】
本発明のCAR改変T細胞は、単独で、または希釈剤および/または他の成分と組み合わせた医薬組成物として投与され得る。簡潔に説明すると、本発明の医薬組成物は、本明細書中に記載の細胞集団を、1つまたは複数の薬学的または生理的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含んでよい。そのような組成物は、中性緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水、滅菌食塩水などのようなバッファー;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えばEDTAおよび/またはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)および/または防腐剤を、単独または任意の組み合わせで含んでよい。本発明の医薬組成物は、治療および/または予防する疾患に適切な様式で投与することができる。投与の量および頻度は、対象の状態、ならびに対象の疾患のタイプおよび重症度のような因子によって決定されるが、一部の実施態様では、適切な投薬量は、臨床試験によって決定され得る。
【0095】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」または「治療的量」が示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および、患者(対象)の状態における個々の違いを考慮して、医師によって決定され得る。一部の実施態様では、本発明の細胞を含む医薬組成物は、約10~約1010細胞/kg体重の投薬量で投与することができ、一部の実施態様では、投薬量は、約10~約10細胞/kg体重または約10~約10であってよく、これらの範囲内の全ての整数値(例えば、10、10、10、10、10、10)を含む。
【0096】
本発明の細胞組成物は、これらの投薬量で、複数回(例えば、1時間ごと、1日4回、1日3回、1日2回、毎日、1週間に2回、1週間に3回、毎週、毎月、隔月、半年ごと、毎年など)投与することができる。
【0097】
本発明の細胞は、免疫療法において一般に知られているインフュージョン技術を用いて投与することができる(例えば、Rosenberg et al.New Eng.J.of Med.319:1676(1988)を参照)。特定の対象のための最適な投薬量および治療レジメンは、疾患の兆候について対象を監視して、それに応じて治療を調整することによって、医学の分野における当業者によって容易に決定され得る。
【0098】
一部の実施態様では、活性化されたT細胞を対象に投与して、続いて、血液を再度採取して(redraw)(またはアフェレーシスを行なう)、本明細書に記載のように、そこからT細胞を活性化して、これらの活性化および拡大されたT細胞を対象に再注入することが望ましくあり得る。このプロセスは、複数回、例えば、毎週または数週ごとに行なうことができる。特定の実施態様では、T細胞は、約10cc~約400ccの採血から活性化することができる。特定の実施態様では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または100ccの採血から活性化される。理論によって拘束されずに、この複数回の採血/複数回の再注入プロトコルを用いることは、T細胞の特定の集団を選択するのに役立ち得る。
【0099】
本発明の組成物の投与は、エアロゾル吸入、注入、経口摂取、輸血、埋め込み(implantation)および/または移植(transplantation)を含む任意の様式で行なうことができる。本発明の組成物は、皮下、皮内、腫瘍内、節内(intranodally)、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注入、および/または腹腔内によって、患者に投与することができる。一部の実施態様では、本発明のT細胞組成物は、皮内または皮下注入によって対象へ投与することができる。別の実施態様では、本発明のT細胞組成物は、i.v.注入によって投与することができる。一部の実施態様では、T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節および/または感染部位へ直接注入することができる。
【0100】
本発明の一部の実施態様では、本明細書中に記載の方法またはT細胞が治療的レベルに拡大される当技術分野で知られている他の方法を用いて活性化および拡大された細胞は、任意の数の関連のある治療モダリティとともに(例えば、前、同時および/または後に)、対象へ投与され得る。一部の実施態様では、本発明のCARおよび/または核酸分子、および/または改変されたT細胞は、治療される疾患に応じて、他の治療選択肢(例えば、薬物および/または外科的処置)と組み合わせて用いられ得る。
【0101】
本発明は、以下の非限定的な実施例において、より詳細に以下に説明される。以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様をより完全に説明するために提供される。しかしながら、決して、本発明の広い範囲を制限すると解釈されるべきでない。
【実施例
【0102】
[実施例1:共刺激シグナルは、ヒトT細胞株におけるCAR-T細胞活性を決定する。]
CD4の細胞外ドメイン(アミノ酸1~148)に対応するヒトsCD4分子は、HIV Env gp120の結合を通してHIV感染細胞を選択的に標的化することが報告された(Chaudhary et al.,Nature 335(6188):369(1988))。HIV Env-標的化CARを生産するために、異なるCSSと組み合わせてsCD4-CARを発現するレンチウイルスベクターを作製した(図1A)。GFP形質導入Jurkat E6.1細胞におけるCAR発現を、抗-c-Mycタグ抗体を用いたフローサイトメトリーによって分析した(図1B~1C)。形質導入率は、形質導入細胞間で明確には異ならなかったが(図7A~7B)、細胞表面上のsCD4-CARの発現レベルは、異なるCSSを有するCAR-T細胞間で異なることが分かった(図2C)。異なるCSSを有するCAR-T細胞間の内因性CD3ζおよびアクチンの同様の発現レベルの下で、全細胞溶解物におけるCARの発現レベルもまた、異なるCSSを有するCAR-T細胞間で異なっていた(図2C)。したがって、これらのデータによって、CARの発現レベルがCSSに依存性であることが示唆された。
【0103】
異なるCSSを有するCAR-T間の機能性活性を決定するために、HIV Envを発現している標的細胞を用いて共培養アッセイを実証した。標的細胞(CHO-GFPまたはCHO-Env-GFP)を、CAR-T細胞と1:2比で24時間、共培養した。細胞を含んでいる上清を回収して、IL-2 ELISAのために遠心分離によって透明に(clear)した。残っている細胞をフローサイトメトリー分析に用いて、抗原依存性刺激の際のCD69発現を決定した。標的細胞(CD3GFP)を、エフェクター細胞(CD3)から分離することができた(図7C、左側パネル)。GFPおよびGFPエフェクター細胞活性化の両方を、CD69上方調節によって決定した(図7C、中央および右側パネル)。図1Eに示されるように、最小の活性化は、CHO-GFP細胞との共培養に際してGFPおよびGFPエフェクター細胞の両方において観察された。最小の活性化がGFPエフェクター細胞において観察されたが、明らかなエフェクター細胞活性化がCHO-Env-GFP細胞との共培養に際して全てのCAR-T細胞において見られた。IL-2分泌も、HIV-Envを発現する標的細胞との共培養の際は観察されたが、GFPのみを発現する標的細胞との共培養では観察されなかった(図1F~1H)。これらのデータは、この試験で作製されたCAR-T細胞は、抗原依存性の様式で活性化されることを示唆した。さらに、エフェクター細胞活性化およびIL-2分泌の両方とも、異なるCSSを有するCAR-T細胞間で異なることが分かった(図3B)。CAR発現レベルとCAR-T細胞活性の間の関係を決定するために、線形回帰分析を行なった。活性化されたCAR-T細胞の頻度およびCAR発現レベルに対するIL-2分泌について、明確な相関がみられた(図3D)。線形回帰分析によって、この関連性はCSSの由来に依存することが明確に明らかにされた。合わせると、これらのデータによって、CSSはヒトT細胞株におけるCAR-T細胞活性を決定することが示唆された。
【0104】
[実施例2:HVEM共刺激は、ヒトCAR-T細胞において最も高いCAR発現を示す。]
T細胞株において観察されたCSSの効果がヒトCAR-T細胞においても観察されるかどうかを試験するために、一次ヒトCD8T細胞を用いて、異なるCSSを有するCAR-T細胞を開発した。CAR-形質導入CD8T細胞をGFP発現に基づいて分類して、エフェクター機能および特性の分析に用いた。細胞表面上および全細胞溶解物中のCARの発現レベルは、異なるCSSを有するCAR-T細胞において異なっており(図2A~2C)、CAR-形質導入T細胞株において観察されたのと同様の傾向であった(図1Bおよび1D)。これらのデータからも、HVEM共刺激が、この研究において試験されたヒトCAR-T細胞において最も高いCAR発現をもたらすことが示唆された。
【0105】
[実施例3:HVEM共刺激は、ヒトCAR-T細胞において最も高いエフェクター機能を示す。]
CAR発現レベルの違いが一次細胞セッティングにおけるCAR-T細胞のエフェクター機能と相関するかどうか試験するために、標的細胞との共培養の際の、細胞傷害性活性およびサイトカイン分泌を測定した。図3Aに示されるように、T細胞は、HIV Envを発現する標的細胞に対して、抗原特異的な細胞傷害性活性を示した。これらのデータからも、細胞傷害性活性がCSSに依存性であること、および、HVEM共刺激を有するCAR-T細胞が、この研究において試験されたCAR-T細胞の中で最も高い細胞傷害性活性を示すことが示唆された(図3C)。同様の傾向が、IL-2、TNF-αおよびIFN-γのようなサイトカイン分泌においても観察された(図3B)。興味深いことに、CD28共刺激を有するCAR-T細胞においてサイトカイン分泌はほとんど観察されず、このことは、CD28 CSSを有するGD2 CAR-T細胞の以前の報告結果と同様であった(Long et al.,Nat.Med.21(6):581(2015))。CAR発現レベルとCAR-T細胞エフェクター機能の間の関係を決定するために、線形回帰分析を行なった。ヒトT細胞株による結果と一致して、CAR発現とCAR-T細胞エフェクター機能の間の明確な相関が観察された(図3Dおよび図8A~8C)。これらの相関はCSSの由来に依存していた。したがって、これらのデータにより、CARにおけるCSSの由来が、CAR-T細胞の機能性活性を決定することができること、および、HVEM共刺激が、ヒトCAR-T細胞において、一般に用いられるCSSに対して最も高いエフェクター機能を示すことが示唆された。
【0106】
[実施例4:TNFRSF共刺激は、CAR-T細胞疲弊を回避する。]
図3A~3Dに示されるように、機能性活性は、CARにおけるCSSの由来に依存していた。我々および他の研究者らは、CD28共刺激を有するCAR-T細胞はエフェクター機能が減少することを示しており、CARにおけるCSSがCAR-T細胞疲弊に影響を及ぼすという仮説を我々にもたらした。疲弊したT細胞は、低い増殖性およびサイトカイン産生能を有し(高アポトーシス率と関連する)、高レベルの抑制性受容体、例えばPD-1およびLAG-3を発現する(Virgin et al.,Cell 2009;138(1):30(2009);Wherry,Nat.Immunol.12(6):492(2011))。したがって、異なるCSSを有するCAR-T細胞における疲弊した集団の頻度(PD-1/LAG-3)を試験した(図4A)。CD28 CSSを有するCAR-T細胞は疲弊した集団の増大を示したが、4-1BBまたはHVEM CSSを有するCAR-T細胞は、疲弊した集団が明らかにより少なかった(図4Bおよび4D)。線形回帰分析は、異なるCSSを有するCAR-T細胞の間で、エフェクター機能と疲弊した集団の頻度の間に明らかな相関を示し、TNFRSF共刺激がCAR-T細胞疲弊を回避することが示唆された(図4Cおよび図9A~9C)。
【0107】
[実施例5:CARにおけるCSSは、メモリーT細胞サブセットのバランスに影響を及ぼす。]
CAR-T細胞におけるメモリーサブセットの割合が、CAR-T細胞のインビボでの持続性に影響することが示唆されている(Sommermeyer et al.,Leukemia 30(2):492(2016);Busch et al.,Semin.Immunol.28(1):28(2016))。CSSとメモリー表現型の間の関係を理解するために、CD45ROおよびCCR7の表面発現を、メモリーT細胞サブセットに関するマーカーとして分析した(Boots et al.,Nat.Rev.Rheumatol.9(10):604(2013))。結果は、CSSが、メモリーT細胞サブセットの発生に影響することを示した(図5Aおよび5B)。最も著しく影響を受けたメモリー集団は、セントラル(TCM:CD45ROCCR7)およびエフェクター(TEM:CD45ROCCR7)メモリー集団であった(図5C)。4-1BB CSSを有するCAR-T細胞は、有意に増大されたTCM集団を含んだが、CD28 CSSは、より少ないTCM集団を誘導した(図5D)。興味深いことに、HVEM CSSを有するCAR-T細胞は、TCMおよびTEM集団の同等の集団を含んでいた(図5D)。これらのデータによって、CARにおけるCSSがメモリーT細胞集団のバランスに影響することが示唆された。
【0108】
[実施例6:HVEM共刺激は、CAR-T細胞エネルギー代謝をよりエネルギー的に活性の段階へ再プログラムする。]
最近の報告により、CARシグナリングドメインがT細胞代謝を再プログラムすることが示唆されたが(Kawalekar et al.,Immunity 44(2):380(2016))、HVEM CSSが、細胞の代謝の異なる調整をすることができるかどうかは未だに知られていない。異なるCSSを有するCAR-T細胞およびコントロールT細胞の酸素消費速度(OCR)を基礎条件で測定し、その後に、オリゴマイシン(ATPシンターゼの阻害剤)、カルボニルシアニド-4(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP;ATP生産から酸素消費を脱共役する)、およびロテノンとアンチマイシンA(それぞれ、複合体IおよびIIIに関する電子伝達鎖の阻害剤)を連続的に添加して、ミトコンドリアおよび非ミトコンドリアの酸素消費機構の相対的寄与を分析した(図6A)。結果は、ミトコンドリア呼吸の指標である基礎OCRレベルが、異なるCSSを有するCAR-T細胞およびコントロールT細胞の間で有意に異なることを示した。CD28 CSSを有するCAR-T細胞におけるOCRレベルは、コントロールT細胞におけるものよりも低かった。対照的に、4-1BBまたはHVEM CSSを有するCAR-T細胞は、CD28 CSSを有するCAR-T細胞およびコントロールT細胞と比較して、OCRが高かった(図6B)。驚くべきことに、解糖系の指標である基礎細胞外酸性化速度(ECAR)は、HVEM CSSを有するCAR-T細胞でのみ有意に増大した。ATP生産および最大OCRレベルは、基礎のOCRレベルの結果と同様の傾向を示した(図6C~6E)。さらなる研究は、予備呼吸能(図6F)、非ミト呼吸(図6G)、およびプロトン漏出(図6H)の測定を含んだ。これらのデータから、CD28を有するCAR-T細胞は低いエネルギー状態を示すが、4-1BB CSSは、CAR-T細胞において高いミトコンドリア呼吸を誘導することが示唆された。さらに、HVEM CSSを有するCAR-T細胞は、高い解糖系およびミトコンドリア呼吸を示し、HVEM共刺激がCAR-T細胞においてよりエネルギー的に活性の状態を誘導することが示唆された。
【0109】
[実施例7:実施例1~6による結果の考察。]
シグナリングドメイン内に異なるCSSを有する抗-HIV-1 CARを、sCD4を抗原認識ドメインとして用いて開発した。このシステムを1つのモデルとして用いて、CAR内のCSSがヒトT細胞株およびヒト一次CD8T細胞由来CAR-T細胞の両方においてCAR-T細胞活性を決定することが示された。エフェクター機能、メモリーサブセットの発生、T細胞疲弊およびエネルギー代謝の間の相互作用も明らかにされ、CAR内のCSSが、CAR-T細胞の機能および特性に著しく影響を及ぼすことが示唆された。特に、HVEM共刺激は、エネルギー代謝を再プログラムすることによってCAR-T細胞のエフェクター機能を高めた。これらの試験は、CSSの選択がCAR-T細胞の機能および特性の結末に影響し得るという見識、および、HVEMが、固形腫瘍だけでなく持続的な感染性疾患に対しても効果的なCAR-T細胞を生じさせる有望な候補となり得るという見識を明らかにした。
【0110】
これらのデータにより、CAR-T細胞活性がCAR-形質導入T細胞株およびヒトCAR-T細胞の両方においてCAR発現と相関することが示唆された。このことは驚くことではなかった。なぜならば、細胞表面上のCAR密度が特定の範囲において高ければ高いほど、抗原刺激の際にCAR-T細胞のより高い活性化が好適に誘導されるからである。驚くべきことに、CAR発現レベルおよびCAR-T細胞活性もまた、異なるCSSを有するCAR-T細胞間で明らかに異なっていた。全細胞溶解物を用いたウエスタンブロット分析もまた、異なるCSSにおいてCAR発現の違いを示し、安定性よりむしろ、CAR発現レベル自体が、異なるCSSセッティングにおいて異なることが示唆された。CSS間のこの違いの1つの説明は、異なるシグナル伝達経路の誘導に起因し得る。CD28共刺激は、PI3K-Akt経路を誘導するが、4-1BB共刺激は、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)およびp38を活性化するTNFR関連因子(TRAF)によって主に仲介される(Kim et al.,Mol.Cells 10(3):247(2000);Cannons et al.,J.Immunol.165(11):6193(2000))。さらに、4-1BBおよびHVEMを含むTNFRSFメンバーはそれぞれ代替のNF-κB経路を活性化することが可能である(Hauer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA102(8):2874(2005))。シグナル伝達経路におけるこれらの違いが、転写および翻訳の違いを生じさせ(Mehta et al.,Nat.Rev.Immunol.17(10):608(2017))、T細胞活性化状態およびCAR発現レベルにおける違いをもたらす。
【0111】
抗原非依存性のトニックシグナリングは、エクスビボの拡大中に一部のCAR-T細胞において誘導され得て、T細胞の分化および疲弊をもたらす。CAR-T細胞疲弊は、CD28共刺激によって誘導されることが示されているが、4-1BB共刺激によって回避される(図4Aおよび4B)(Long et al.,Nat.Med.21(6):581(2015))。これらの試験では、HVEM共刺激もまた、CAR-T細胞疲弊を回避し、TNFRSF共刺激がCAR-T細胞疲弊を回避するのに重要であり得ることを示唆している(図4Cおよび図9A~9C)。最近の報告では、ガンマレトロウイルスLTRプロモーターからの発現増大はT細胞アポトーシスを生じさせるが、自己不活性型レンチウイルスベクター内のEF1αプロモーターからのCAR発現の減少は、この毒性を減衰させることが示されている(Gomes-Silva et al.,Cell Rep.21(1):17(2017))。CAR発現がレンチウイルスベクター内のEF1αプロモーター由来だとしても、CD28共刺激はCAR-T細胞疲弊を誘導した。これらのデータは、CAR発現レベルだけでなくCSSの由来も、CAR-T細胞疲弊の誘導に影響することを示唆している。この仮説を支持するために、PD-1/Shp2複合体は、CD28に選択的に結合して脱リン酸化し、減少したT細胞拡大と疲弊をもたらす(Hui et al.,Science 355(6332):1428(2017))。したがって、CAR T細胞のエクスビボでの拡大中のCD28共刺激は、T細胞疲弊を誘導するように仕向け得る。
【0112】
以前の知見と一致して、CD28共刺激は、エフェクターメモリーサブセットの増大とともに低いエネルギー代謝を示し、一方で、4-1BB共刺激は、セントラルメモリーサブセットの増大と関連するより高いミトコンドリア呼吸を誘導することが示された。これらのデータは、HVEM共刺激が、同様の頻度のセントラルおよびエフェクターメモリーサブセットの発生と関連する高いミトコンドリア呼吸および解糖系を示すことも示している。これらのデータは、別個の共刺激が、特異的な代謝経路を調節し、メモリーサブセットの発生に影響することを示唆している(Kawalekar et al.,Immunity 44(2):380(2016))。特に、この研究において試験された4-1BBおよびHVEMを含むTNFRSF共刺激は、異なるTRAFを動員し、異なる大きさでNF-κB経路を活性化し得て、異なったエネルギー代謝レベル、メモリーサブセットの発生およびエフェクター機能をもたらす。さらに、CAR発現レベルは、エネルギー状態とも関連し(図2A~2Cおよび図6A~6E)、異なるシグナル伝達経路が、代謝要求を満たすためのエネルギー代謝レベルに影響を与え得ることが示唆された。例えば、翻訳は、細胞における最もエネルギーを要求するプロセスである(Lindqvist et al.,Curr.Opin.Genet.Dev.48:104(2018);Topisirovic et al.,Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.76:355(2011);Buttgereit et al.,Biochem.J.312(Pt1):163(1995))。
【0113】
HIV-1感染は、抗-レトロウイルス療法(ART)によって制御することができるが、ARTは潜在的感染細胞を除去することができないので根絶することはできず、HIV感染患者は効果的なARTを一生受けなければならないことを表わしている。根絶の最近の試みは、免疫学的メカニズムによるART中に存続する潜在的感染細胞の死滅化に注目した。これを達成するために、HIV特異的な免疫毒素またはHIV特異的なCAR-T細胞を成功的に開発して、HIV感染細胞を死滅化した(Denton et al.,PLoS Pathog.10(1):e1003872(2014);Sahu et al.,Virology 446(1-2):268(2013);Liu et al.、J.Virol.89(13):6685(2015);Alietal.,J.Virol.90(15):6999(2016);Liu et al.,J Virol.90(21):9712(2016);Leibman et al.,PLoS Pathog.13(10):e1006613(2017))。また、広域中和抗体(bNAb)は、抗体依存性細胞傷害によってHIV感染細胞を除去することが示されている(Bruel et al.,Nat.Commun.7:10844(2016))。これらの研究は、HIV感染細胞が、標的化された細胞傷害性療法によって除去され得ることを示す。さらに、HIV特異的CTLまたはbNAbによる、薬理学的に再活性化された潜在的感染細胞の死滅化である「ショックおよび死滅化(shock and kill)」アプローチが提案されている(Halper-Stromberg et al.,Cell 158(5):989(2014))。しかしながら、広域のCTL応答が、エスケープ突然変異に起因して、潜在的HIV-1を取り除く(clear)ために必要とされることが報告されており(Deng et al.,Nature 517(7534):381(2015))、保存領域を標的化することは、潜在的HIV-1を取り除くのに有益であると考えられることが示唆された。この概念と一致して、最近の報告によって、CD4に基づくCAR-T細胞は、TCRに基づくCAR-T細胞またはbNAbに基づくCAR-T細胞よりも効率的に、HIVを制御することが報告されている。さらに、4-1BB共刺激を有するCAR-T細胞は、インビトロおよびインビボで、HIV治療モデルを用いて、CD28共刺激を有するCAR-T細胞よりも強力であることが、示されている(Leibman et al.,PLoS Pathog.13(10):e1006613(2017))。本発明では、HVEM共刺激を有するCAR-T細胞は、CD28または4-1BB共刺激を有するCAR-T細胞よりも強力であることが示されており、HVEM共刺激を有するCAR-T細胞が、HIV複製を制御するのにより有益であり得ることが示唆された。
【0114】
このデータは、CAR内のCSSが、CAR-T細胞のエフェクター機能および特性を決定することを示した。この試験において示されるように、HVEM共刺激は、一般に用いられるCAR内のCSSのデザイン、例えばCD28および4-1BBと比較して優れた特性と関連する高いエフェクター機能を誘導する。このことは、HVEMが、優れた機能および特性を有するCAR-T細胞の開発のための有望な候補であり得ることを示唆している。我々は、将来的なCAR-T細胞療法のために、CSSのパネルをCARの関連において試験してCARのデザインを拡張することによって、より強力なCSSを発見し得る。
【0115】
要約すると、これらの結果は、CAR-T細胞を作製するためのHVEM共刺激が、広く用いられるCD28または4-1BBのような共刺激と比較して、より強力なCAR-T細胞をデザインするためのCSSを解明することを示す。この研究は、所望の機能および特性を有するCAR-T細胞を調節および作製するための最初のステップを提供する。
【0116】
[実施例8:実験モデルおよび対象の詳細]
A.対象の詳細
ヒトサンプルの回収
ヒト末梢血サンプルを健康なドナーから採取した。健康なドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、獨協医科大学の科学倫理委員会によって承認されたプロトコルの下でFicoll-Paque(GE Healthcare Life Sciences,Pittsburgh,PA)密度勾配によって調製した。インフォームド・コンセントは全対象から得られた。
【0117】
細胞株
培養培地、MEM、DMEMおよびRPMI(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を、10%ウシ胎児血清(FBS)(Thermo Fisher Scientific)、2mMグルタミン(Thermo Fisher Scientific)、10U/mLペニシリンおよび10μg/mLストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)で補充し、それぞれ短縮してM10、D10およびR10と命名した。CHO細胞およびそのトランスフェクタントを、非必須アミノ酸で補充されたM10(M10-NEAA)中で維持した。293FT細胞をD10中で培養して、DS Pharmaを通してEuropean Collection of Authenticated Cell Cultureから取得したJurkat E6.1細胞を、R10中で維持した。全ての細胞を37℃および5%COで増殖させた。
【0118】
一次細胞培養
PBMCを、5% FBS、10mM HEPESで補充されたAIM-V(Thermo Fisher Scientific)(完全AIM-V)中で一晩培養して、プラスチック付着性単球を除去した。単球由来PBMCを形質導入実験において用いた。細胞を37℃および5%COで増殖させた。
【0119】
別の方法は、培養培地、MEM、DMEMおよびRPMI(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA)を用いる方法であり、それらは10%FBS(Thermo Fisher Scientific)、2mMグルタミン(Thermo Fisher Scientific)、10U/mLペニシリンおよび10μg/mLストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)で補充されており、それぞれ短縮してM10、D10およびR10と命名した。CHO細胞およびそれらのトランスフェクタントを非必須アミノ酸で補充されたM10(M10-NEAA)中で維持した。293FT細胞をD10中で培養して、DS Pharmaを通してEuropean Collection of Authenticated Cell Culturesから取得したJurkat E6.1細胞を、R10中で維持した。健康なドナー由来のヒト末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll-Paque(GE Healthcare LifeSciences,Pittsburgh,PA)密度勾配によって調製して、5% FBS、10mM HEPESで補充されたAIM-V(Thermo Fisher Scientific)(完全AIM-Vと短縮)中で一晩培養して、プラスチック付着性単球を除去した。単球由来PBMCを形質導入実験に用いた。全ての細胞を37℃にて5%COで増殖させた。
【0120】
B.方法の詳細
ベクターの構築
複数の制限酵素部位を導入するために、DNAリンカーを、レンチウイルスベクタープラスミドpTK643-CMV-IRES-GFP/ブラストサイジン(BSD)内に導入した。XbaI-XhoI-BsiWI-BstBI-BamHI制限酵素部位を含んでいるDNAリンカーを、2つのオリゴDNA L1およびL2を1:1のモル比で70℃にて10分間インキュベートして、室温に2時間置くことによって作製した。リンカーDNAを、XbaI/BamHIによって消化したpTK643-CMV-IRES-GFP/BSD(pTK643-CMV-MCS-IRES-GFP/BSD)内に挿入した。
【0121】
sCD4(ヒトCD4の1~148アミノ酸)DNAフラグメントを作製するために、ISOGEN(ニッポンジーン、東京、日本)によってJurkat E6.1細胞から抽出した全RNAを、ReverTra Ace(東洋紡、大阪、日本)によって製造元の説明に従ってcDNA合成に用いた。XbaI/EcoRI部位を含んでいるsCD4 DNAフラグメントを、KOD-FX(東洋紡)を用いて増幅させた。精製されたDNAフラグメントを、Ampli Taq(Thermo Fisher Scientific)とともに72℃で10分間インキュベートしてAテールを付加した。テール付きDNAフラグメントを、pGEM-Tイージー・ベクター(Promega,WI)内にライゲーションした。配列を、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencingキット(Thermo Fisher Scientific)を用いて確認した。sCD4-CAR発現レンチウイルスベクターを作製するために、sCD4 DNAフラグメントをXbaI/EcoRIで消化したものと、Genscript(Piscataway,NJ)によって人工的に合成された異なるCSS(CD28、4-1BBまたはHVEM)を含んでいるDNAフラグメントをEcoRI/BamHIで消化したものを、XbaI/BamHIで消化したpTK643-EF1a-IRES-GFP/BSD内にライゲーションした。
【0122】
HIV Env(NL4-3株)発現レンチウイルスベクタープラスミドを作製するために、Dr.Noriaki Hosoyaから提供されたpRE11-NL43をXbaI/XhoIで消化したものを、XbaI/XhoIで消化したpTK643-CMV-MCS-IRES-GFP/BSD内にライゲーションした。
【0123】
組み換えレンチウイルスの生産
組み換えレンチウイルスを、以前の説明(Cockrell et al.,Mol Ther.14(2):276(2006))を少し改変して生産した。簡潔に説明すると、293FT細胞を、コラーゲンでコーティングした10cm皿(イワキ、静岡、日本)上で、80~90%の密集度で培養した。培養培地を、25μMクロロキン(SIGMA、Darmstadt、ドイツ)を含むD10(抗生物質を含まない)で置換した。ΔNRFがパッキングされたベクターについては、以下のプラスミド量:15μgのレンチウイルスベクタープラスミド、10μgのΔNRF、および5μgのpMD.Gを用いた。プラスミドを、293FT細胞内に、ポリエチレンイミン「MAX」(Polysciences,Warrington,PA)によって、2:1のDNA:PEI比で共トランスフェクトした。上清を、5mMの酪酸ナトリウム(sodium butylate)(和光、大阪、日本)および10μMのフォルスコリン(東京化成工業、東京、日本)を含んでいるD10を用いて置換した。組み換えレンチウイルスを含んでいる培養上清を、トランスフェクションの48時間後に回収して、遠心分離および0.45μm濾過(Millipore、Darmstadt、ドイツ)によって透明にした(cleared)。組み換えレンチウイルスを、高速遠心分離によって18000rpmで3時間、Himac CR21N(日立工機(Hitachi Koki)、東京、日本)を用いて濃縮させた。
【0124】
レンチウイルスベクターによる形質導入
レンチウイルスを含んでいる上清を用いて、CAR/GFP遺伝子をJurkat E6.1細胞内に、および、HIV Env遺伝子をCHO細胞内に、それぞれ形質導入させた。簡潔に説明すると、6ウェルプレート中の、200万個のJurkat E6.1細胞または半コンフルエントCHO細胞を、8μg/mLのポリブレン(polybrane)存在下で、未濃縮のレンチウイルスを含んでいる上清1mLに曝した。細胞を5500rpmで3時間、22℃で遠心分離して、ウイルス感染を高めた。上清の除去後、細胞を37℃にてCOインキュベーター内で48時間培養した。培養培地を、10μg/mLのBSDで補充された培地で置換した。その後に、形質導入細胞を、以下のアッセイを行なうまで10μg/mLのBSDを含む培地中で維持した。
【0125】
ヒト一次CD8 T細胞を、FACS Aria II(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)上の細胞選別によって、抗-ヒトCD3-APC、CD4-PEおよびCD8PE/Cy7抗体(Biolegend,SanDiego,CA)を用いて単球由来PBMCから単離した(ルーチン的に、95%よりも高い純度が達成される)。精製されたCD8 T細胞を、40U/mLの組み換えヒトIL-2(NIH AIDS Reagent Program、エイズ部門、NIAIDを通して、Dr.Maurice Gately,Hoffmann-La Roche Inc.から取得)で補充された完全AIM-Vを用いて、3日間、抗-CD3/CD28ビーズ(Thermo Fisher Scientific)を3:1のビーズ:細胞比で用いて活性化した。抗-CD3/CD28ビーズの除去後、活性化されたCD8 T細胞を、レトロネクチン(TAKARA、滋賀、日本)でコーティングされたプレートを製造元の説明に従って用いて、3日目および4日目に、レンチウイルスベクターで形質導入した。その後、300U/mLのIL-2を含んでいる培地(完全AIM-V)を、細胞選別に十分な数の細胞が増殖するまで2~3日ごとに交換した。
【0126】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーにおいて用いた抗体は、別段の指定がない限りBiolegendから取得した。形質導入されたJurkat E6.1細胞上のCAR発現を、抗-c-mycタグ抗体(Santa Cruz Biotechnology,Dallas,TX)の後に抗-マウスIgs-PE(Agilent Technologies)を用いて分析した。共培養アッセイにおけるCAR形質導入Jurkat E6.1細胞の活性化を、抗-ヒトCD3-APC抗体、CD69-PE抗体およびGFPを用いて分析した(ゲーティング戦略については図7Aおよび7Bを参照)。ヒトCAR-T細胞のCAR発現およびT細胞疲弊を、ビオチン化抗-c-mycタグ抗体(Biolegend)の後にストレプトアビジン-PE(TONBO biosciences)、抗-ヒトPD-1-APC抗体、抗-ヒトLAG-3-PE/Cy7抗体(eBioscience)およびGFPを用いて分析した。CAR-T細胞のメモリー表現型を、CD45RO-PE、CD8-PE-Cy7、CCR7-APCおよびGFPを用いて分析した。遠心分離された細胞を、FACSバッファー(2%FBSおよび0.02%アジ化ナトリウムを含んでいるPBS)中の抗体溶液を用いて再懸濁して、氷上で30分間インキュベートした。氷冷FACSバッファーで洗浄後、1%パラホルムアルデヒド/PBSを用いて細胞を固定した。染色された細胞を固定化して、FACS Calibur(Becton Dickinson)によって分析した。
【0127】
ウエスタンブロット
500万個の細胞を、氷冷PBSで1回洗浄して、Complete Mini(Roche,Mannheim,ドイツ)および1mM PMSFで補充された150μlのRIPAバッファー(10mM TrisHCl(pH7.4)、1% NP-40、0.1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、0.15M NaCl、1mM EDTA)中に再懸濁させて、氷上で30分間インキュベートした。遠心分離によって透明にした(cleared)細胞溶解物(20μl)を、NuPAGE LDSサンプルバッファー(Thermo Fisher Scientific)および0.1M DTTと混合して、95℃で5分間ボイルした。ボイルしたサンプルを、NuPAGE 10% Bis-Trisゲル(Thermo Fisher Scientific)中で電気泳動によって分離して、Immobilon Pメンブレン(Millipore)に移した。ブロッキングバッファー(5%脱脂粉乳および0.1%Tween-20、TBS中)を用いて30分間、メンブレンをブロックした。ブロックされたメンブレンを、4℃で一晩、ブロッキングバッファー中に希釈された抗-アクチン抗体(I-19)または抗-CD3ζ抗体(F-3)(Santa Cruz Biotechnology)を用いてインキュベートした。それから、メンブレンを、ブロッキングバッファー中に希釈された抗-ヤギIgG-HRP(Millipore)または抗-マウスIgG-HRP(GE Healthcare Life Sciences)とともにインキュベートした。全ての抗体インキュベーションステップ後に、メンブレンを0.1%Tween-20/TBSで洗浄した。Lumi-Light PLUS(Roche)を基質として用いて免疫活性を可視化して、Light-Capture II(ATTO、東京、日本)を用いて検出した。
【0128】
共培養アッセイ
CAR-形質導入Jurkat E6.1細胞の活性化およびIL-2分泌を、標的細胞(CHO-GFPまたはCHO-Env-GFP)と共培養することによって決定した。10万個の標的細胞を、96ウェル平底プレートの各ウェル内に蒔いた。20万個のCAR-T細胞を添加して一晩共培養した。翌日、細胞を含んでいる培養上清を回収した。細胞および無細胞上清を、3,000rpmで5分間4℃にて、遠心分離によって分離した。上清中へのIL-2分泌を、Human IL-2 ELISA MAX Deluxe(Biolegend)を用いて製造元の説明に従って測定した。残っている細胞を用いて、CD69発現をフローサイトメトリーによって決定した。
【0129】
CAR-T細胞の細胞毒性を決定するために、10000個の標的細胞を96ウェル平底プレートの各ウェル内に蒔いた。異なる標的:エフェクター比でCAR-T細胞を添加して、0.2mL/ウェルのフェノールレッドを含まないNEAA含有R10中で共培養した。一晩のインキュベーション後、上清を回収して、3000rpmで10分間4℃にて遠心分離して、細胞デブリを除去した。上清中の乳酸デヒドロゲナーゼ放出を、CytoTox96非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を用いて製造元の説明に従ってアッセイした。細胞選別および培養後の純度が不均質である場合は、未形質導入T細胞を添加して、CART細胞の数とT細胞の合計数の両方がCAR-T細胞群にわたって一貫して維持されることを確実にした。回収した上清を用いて、Human IL-2、TNF-α、IFN-γ ELISA MAX Deluxe(全てBiolegend)を用いて、製造元の説明に従って、IL-2、TNF-αおよびIFN-γ分泌も決定した。
【0130】
エネルギー代謝の分析
CAR-T細胞のミトコンドリア機能を、細胞外フラックスアナライザーXFp(Agilent Technologies)を用いて分析した。細胞培養マイクロプレートの各ウェルを、製造元の説明に従ってCellTak(Corning)でコーティングした。ミトコンドリア機能をアッセイするために、異なるCSSを有する選別したCAR-T細胞を、5.5mMグルコース、2mM L-グルタミンおよび1mMピルビン酸ナトリウムで補充されたXF RPMI培地中に懸濁して、30万個/ウェルで蒔いた。プレートを200xgで1分間遠心分離して、37℃にて非COインキュベーター内で30~60分間インキュベートした。インキュベーション中、機器XFpおよびそのアッセイカートリッジを、製造元の説明に従ってキャリブレーションした。酸素消費速度(OCR)を、基礎条件下、および、1μMのオリゴマイシン、1μMのFCCPおよび1μMのロテノン/アンチマイシンA(XFp Cell Mito Stress Kit,Agilent technologies)を用いた処理後に測定した。各条件で4回の測定を行なった。ATP生産を、(オリゴマイシン添加前の最後の速度測定値)-(オリゴマイシン添加後の最小速度測定値)として定義した。
【0131】
統計解析
統計解析は以前に説明された(Nunoya et al.,J.Infect.Dis.209(7):1039(2014))。ボンフェローニ多重比較検定による一元配置分散分析または二元配置分散分析(ANOVA)、線形回帰分析を行ない、GraphPad Prism(Graph Pad Software,San Diego,CA)を用いてR値を計算した。<0.05のp値を統計的に有意と考えた。
【0132】
[実施例9:ヘルペスウイルスエントリーメディエータ―共刺激シグナルドメインを有するキメラ抗原受容体T細胞は、機能性効能を示す。]
キメラ抗原受容体(CAR)は、細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わせられた細胞外抗原結合ドメインを含む(Dotti et al.,Immunol.Rev.257:107(2014))。CD3ζをCARのシグナル伝達ドメインとして有する第一世代のCAR-形質導入T(CAR-T)細胞は、しばしばアネルギー性になり、強力な免疫応答を誘発できない(Kershaw et al.,Clin.CancerRes.12:6106(2006))。第二世代および第三世代のCAR-T細胞は、CAR内にそれぞれ1つおよび2つの共刺激シグナルドメイン(CSSD)を加えることによって開発された(Dotti et al.,Immunol.Rev.257:107(2014))。モジュール構造を有するこれらのCAR分子は、同起源抗原刺激の際に、T細胞受容体によって仲介されるシグナル伝達を成功的に模倣して、CAR-T細胞の増殖および活性化をもたらすことが示されている(Maus et al.,Blood 123:2625(2014))。
【0133】
CD19標的化CAR-T細胞を用いた免疫療法は、B細胞悪性腫瘍に対する顕著な有効性を示した(Maude et al.,Blood 125:4017(2015))。可能性を様々な臨床適用へ拡張するためには(Maldini et al.,Nat.Rev.Immunol.18:605(2018))、CAR-T細胞有効性をさらに改善する必要があり得る。共刺激分子に由来するCSSDによって推測されるシグナリングは、強力なCAR-T細胞有効性を示すための重要なイベントであることが知られている(Dotti et al.,Immunol.Rev.257:107(2014))。しかしながら、CAR-T細胞の機能および特性に対するCSSDの効果は未だに多くが不明である。共刺激分子は2つの主なファミリー;CD28およびICOSを含むCD28ファミリー、ならびに、4-1BBおよびヘルペスウイルスエントリーメディエータ―(HVEM)を含むTNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)に分類することができる。これまでに、CD28または4-1BB由来のCSSDが、CARを構築するために一般に用いられてきた(Miller et al.,Oncol.Res.Treat.38:683(2015))。以前の研究によって、4-1BB由来CSSDを有する第二世代のCAR-T細胞は、ほとんどの患者の血中で6ヶ月よりも長く持続するが、CD28由来CSSDを有するCAR-T細胞は、3ヶ月後にほとんど検出不可能になることが示されている(Zhang et al.,Oncotarget 6:33961(2015))。さらに、4-1BB共刺激は、セントラルメモリーサブセットへの高い分化を誘導し、インビトロでの持続性が増大した(Kawalekar et al.,Immunity 44:380(2016))。4-1BB共刺激はまた、ミトコンドリア生合成およびエネルギー生産のための酸化的代謝を増大させ、トニックシグナリングによって誘導されるT細胞疲弊を回避することも示されている(Long et al.,Nat.Med.21:581(2015))。したがって、TNFRSF由来のCSSDは、第二世代CAR-T細胞の関連におけるCD28ファミリー由来のものよりも良好に機能すると考えられる。
【0134】
CD8T細胞のエフェクター機能およびメモリー発生における、TNFRSFの別メンバーであるHVEMの潜在的役割を示唆する報告が蓄積している。例えば、CD8T細胞におけるHVEMの不足は、エフェクターCD8T細胞の生存および防御免疫学的メモリーの発生を大いに損なわせることが示されている(Flynn et al.,PLoS One 8:e77991(2013))。CD8T細胞ならびにB-およびT-リンパ球アテニュエータ上に発現されたHVEM間の相互作用は、細菌感染に応答して、生存および免疫学的メモリーの発生を促進することも報告されている(Steinberg et al.,PLoS One 8:e77992(2013))。さらに、抗-HVEM単鎖抗体を発現する腫瘍細胞は、共培養されたT細胞の強力な増殖およびサイトカイン産生を誘導する(Park et al.,Cancer Immunol.Immunother.61:203(2012))。これらの知見は、HVEMがT細胞において強力な共刺激分子として作用することを示しており、HVEM由来のCSSDが、CAR-T細胞の関連においても有用であり得ることを示唆している。
【0135】
[実施例10:HVEM由来CSSDを有するCARは、ヒトT細胞株において効率的に発現される。]
ヒトCD4の1~148アミノ酸に対応するsCD4は、HIV Envへの結合を通してHIV感染細胞を選択的に標的化することが報告された(Chaudhary et al.,Nature 335:369(1988))。HIV Env-標的化CAR-T細胞を生産するために、CD28、4-1BBまたはHVEM由来のCSSDと組み合わせてCARを発現するレンチウイルスベクターを構築した(図1A)。フローサイトメトリー分析は、異なるレンチウイルスベクターを用いたJurkat E6.1細胞の形質導入率が互いに似ていることを示した(図7A~7B)。他方で、GFP細胞の細胞表面上のCAR発現レベルはかなり異なっており(図1B)、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞上で最も高かった(図1C)。ウエスタンブロット分析によって、全細胞溶解物において、HVEM由来CSSDを有するCARの量は、CD28または4-1BB由来CSSDを有するCARの量よりも多いことも明らかとなった(図1D)。
【0136】
[実施例11:HVEM由来CSSDを有するCARを発現するヒトT細胞株は、同起源抗原刺激の際に効率的に活性化される。]
異なるCSSDを有するCAR-形質導入Jurkat E6.1細胞の機能を試験するために、CD3標的細胞(CHO-GFPまたはCHO-Env-GFP)を、CAR発現レンチウイルスベクターを用いて形質導入されたCD3Jurkat E6.1細胞と共培養した(図7C、左側パネル)。それから、GFPおよび成功的に形質導入されたGFPJurkat E6.1細胞を、T細胞活性化の指標であるCD69上方調節について試験した(図7C、右側パネル)。図1Eに示されるように、コントロールCHO-GFP細胞との共培養に際して、GFPまたはGFPJurkat E6.1細胞において有意な活性化は観察されなかった。CHO-Env-GFP細胞を標的細胞として用いた場合、GFPJurkat E6.1細胞は効率的に活性化されなかったが、GFPは効率的に活性化された(図1E)。また、培養上清におけるIL-2の測定は、CAR-形質導入Jurkat E6.1細胞によるIL-2分泌が、CHO-Env-GFP細胞との共培養の際は誘導されるが、コントロールCHO-GFP細胞との共培養の際は誘導されないことを示した(図1E)。これらのデータによって、この研究において構築されたCAR発現ベクターを用いたヒトT細胞形質導入は、同起源抗原刺激の際に特異的に活性化されることが示された。線形回帰分析は、同起源抗原刺激の際の活性化されたT細胞のパーセンテージおよびIL-2分泌は、細胞表面上のCAR発現レベルと相関することを示した(図1Gおよび1H)。さらに、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞が抗原依存性T細胞活性化を誘導する能力は、この研究において用いられる状況において、CD28または4-1BB由来CSSDを有するCAR-T細胞の能力を上回った。
【0137】
[実施例12:HVEM由来CSSDを有するヒト一次T細胞由来CAR-T細胞は、強力なエフェクター機能を示す。]
異なるCSSDを有するCAR-T細胞をより詳細に比較するために、ヒト一次CD8を、CAR発現レンチウイルスベクターで形質導入して、それらのエフェクター機能について分析した。Jurkat E6.1細胞における観察と同様に(図1B~1D)、細胞表面上および全細胞溶解物中のCAR発現レベルは、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞について最も高く、CD28由来CSSDを有するものについて最も低かった(図2B~2C)。異なるCSSDを有するCAR-T細胞のエフェクター機能も比較した。3つのCAR-T細胞の全てが、HIV Env発現標的細胞に対する抗原特異的な細胞傷害性活性をもたらしたが、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞が最も高い活性を示した(図3A)。同様に、IL-2、TNF-αおよびIFN-γのようなサイトカインの最も高いレベルは、この研究において試験された他のCAR-T細胞と比較して、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞から分泌された(図3D)。Jurkat E6.1細胞における観察(図1Gおよび1H)と同様に、細胞傷害性活性およびサイトカイン分泌によって測定されたCAR-T細胞のエフェクター機能は、細胞表面上のCAR発現レベルと相関した(図3Dおよび図8A~8C)。したがって、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は強力であると考えられた。
【0138】
[実施例13:HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は、セントラルおよびエフェクターメモリーサブセットの両方へ効率的に分化する。]
CAR-T細胞におけるメモリーサブセットの相対的割合は、インビボでのそれらの機能および持続性に影響を及ぼすことが示唆されている(Sommermeyer et al.,Leukemia 30:492(2016);Busch et al.,Semin.Immunol.28:28(2016))。防御免疫に特に重要なメモリーサブセットは、セントラルメモリー(TCM、CD45ROCCR7)およびエフェクターメモリー(TEM、CD45ROCCR7)T細胞として知られている(Boots et al.,Nat.Rev.Rheumatol.9:604(2013))。したがって、メモリーT細胞サブセットの割合を、CD45ROおよびCCR7の表面発現によって分析した(図10Aおよび10B)。コントロールT細胞はTEMサブセットを優位に含んでいたが、異なるCSSDを有するCAR-T細胞は、より大きなパーセンテージのTCMサブセットを示した(図10A)。異なるCSSDを有するCAR-T細胞間の比較において、CD28および4-1BB由来CSSDを有するCAR-T細胞は、それぞれTEMおよびTCMサブセットを優位に含んでいた(図10B)。興味深いことに、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は、同等のパーセンテージのTCMおよびTEMサブセットを含んでおり(図10B)、HVEM由来CSSDが、TEMおよびTCMサブセットの両方を効率的に誘導することが示唆された。
【0139】
[実施例14:HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は、T細胞疲弊を回避する。]
T細胞の長期の刺激は、増殖の低減、サイトカイン産生レベルの低下、高いアポトーシス率および抑制性受容体、例えば、プログラム細胞死1(PD-1)およびリンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)の発現によって特徴付けられる疲弊を引き起こすことが知られている(Virgin et al.,Cell 138:30(2009);Wherry,Nat.Immunol.12:492(2011))。T細胞疲弊に対するCSSDの効果を決定するために、PD-1、LAG-3およびPD-1/LAG-3疲弊T細胞集団のパーセンテージを試験した(図4E)。結果は、CD28由来CSSDを有するCAR-T細胞は相対的に大きなパーセンテージの疲弊T細胞を含むが、4-1BB由来CSSDを有するものは、有意により低いパーセンテージの疲弊T細胞を含むことを示した(図9A~9C)。さらに、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は、この研究において試験されたCAR-T細胞の中で、最も低いパーセンテージの疲弊T細胞を含んだ(図9A~9C)。興味深いことに、PD-1またはLAG-3細胞のパーセンテージは、4-1BB由来CSSDを有するものよりも、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞について、それぞれ、より大きく、および、より小さかった。合わせると、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は、T細胞疲弊を回避した。
【0140】
[実施例15:HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は、再プログラムされたエネルギー代謝を示す。]
T細胞疲弊は、エネルギー代謝の欠損を伴うことが最近になって示された(Fisicaro et al.,Nat.Med.23:327(2017);Bengsch et al.,Immunity 45:358(2016))。したがって、異なるCSSDを有するCAR-T細胞の代謝状態を、基礎条件および試薬の逐次添加後に比較して、ミトコンドリアおよび非ミトコンドリアの酸素消費機構の相対的寄与を分析した(図6A)。ミトコンドリア呼吸および解糖系は、それぞれ、酸素消費速度(OCR)および細胞外酸性化速度(ECAR)によって測定することができる。HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞が最も高いレベルの基礎OCRを示し、その次に4-1BB由来CSSDを有するものが続き、コントロールT細胞およびCD28由来CSSDを有するものが最も低いレベルの基礎OCRを示した(図6B~6E)。ATP関連呼吸も、ATPシンターゼ阻害剤オリゴマイシンを添加することによって測定し、最大OCRレベルを、カルボニルシアニド-4(トリフルオロメトキシ)フェニルヒドラゾン(FCCP;ATP生産から酸素消費を脱共役する)を添加することによって測定した(図6A)。結果は、異なるCAR-T細胞におけるATP関連呼吸および最大OCRレベルが、基礎OCRレベルと同様に上昇することを示した(図6Cおよび6D)。興味深いことに、基礎ECARは、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞についてのみ有意に増大した(図6E)。これらのデータにより、CD28由来CSSDを有するCAR-T細胞は低いエネルギー状態を示すが、4-1BB由来CSSDを有するものはより高いミトコンドリア呼吸を誘導することが示された。さらに、HVEM由来CSSDを有するCAR-T細胞は、高い解糖系も誘導した。これらの結果は、HVEM由来CSSDが、エネルギー代謝の再プログラムを導くことができることを示唆した。
【0141】
[実施例16:実施例10~15の考察]
CD28、4-1BBまたはHVEM由来のCSSDと組み合わせて抗原認識ドメインとしてのsCD4からなるCARを発現する、レンチウイルスベクターを開発した。これらのベクターを用いてヒトT細胞株および一次T細胞を形質導入することにより、CAR構築物におけるCSSDが、細胞表面上のCAR発現レベルに関する極めて重要な決定因子であり、CAR-T細胞の活性およびエフェクター機能と相関すると考えられることが示された。また、この研究において、T細胞疲弊、エネルギー代謝およびメモリーT細胞サブセットの誘導も、CAR構築物におけるCSSDによって影響を受けることも示された。この研究において試験したCSSDのうち、HVEM由来CSSDは、最も高いレベルのCAR発現、CAR-T細胞の最も強力なエフェクター機能、疲弊の回避、および、セントラルおよびエフェクターメモリーT細胞サブセットの両方のバランスの取れた誘導をもたらした(高い解糖系およびミトコンドリア呼吸と関連する)。この研究の結果は、HVEM由来CSSDが、特定の状況において効果的なCAR-T細胞を作製するのに有用であり得ることを示唆する。
【0142】
CSSDが、細胞表面上のCAR発現レベルをどのように制御しているのかは、未だ知られていない。全細胞溶解物中のCAR分子の量は、細胞表面発現のレベルと相関したので、トラフィッキング以外のCAR合成は、CSSDによって影響を受け得る。他の可能性のうち、異なるCSSDは、異なるシグナル伝達経路を活性化し得て、異なるレベルの遺伝子発現をもたらす。例えば、CD28によって仲介される共刺激はPI3K-Akt経路を誘導するが、4-1BBによって仲介される共刺激は主に、TNFR関連因子を通してJNKおよびp38を活性化する(Kim et al.,Mol.Cells 10:247(2000);Cannons et al.,J.Immunol.165:6193(2000))。また、4-1BBおよびHVEMは、代替のNF-ΚB経路を活性化することが可能であることも示されている(Hauer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA102:2874(2005))。シグナル伝達経路におけるこれらの違いは、転写または翻訳レベルでCAR発現に影響し得る(Mehta et al.,Nat.Rev.Immunol.17:608(2017))。
【0143】
エクスビボでの拡大中の抗原非依存性のトニックシグナリングは、CD28由来CSSDを有するCAR-T細胞の疲弊を生じさせるが、4-1BB由来CSSDを有するものは疲弊に対して相対的に不応性であることが示されている(Long et al.,Nat.Med.21:581(2015))。本研究は、これらの観察を確認しただけでなく、HVEM由来CSSDがCAR-T細胞の疲弊を防ぐことができることも示した。さらに、これらのデータは、CAR構築物におけるCSSDが、抑制性受容体発現に対する異なる効果を通してT細胞疲弊の程度に影響し得ることを示唆した(図4D)。4-1BBおよびHVEMはTNFRSF内に分類されるので、TNFRSFに由来するCSSDは、CD28ファミリーに由来するものとは異なり、CAR-T細胞が疲弊を防ぐのを可能にし得る可能性がある。
【0144】
ミトコンドリア動態は、代謝プログラムを通してT細胞の結末を制御することが示唆されている(Buck et al.,Cell 166:63(2016))。さらに、4-1BBによって仲介される共刺激は、セントラルメモリーサブセットの増大とともにミトコンドリア呼吸を高めることが報告されている(Kawalekar et al.,Immunity 44:380(2016))。本発明の結果は、これらの以前の研究と矛盾なく、また、HVEM由来CSSDが、解糖系およびミトコンドリア呼吸の両方を高めることも示し、相対的に低いレベルのT細胞疲弊も示した。また、様々なT細胞サブセットは、それらの機能をサポートするために別個の代謝プログラムを必要とすることも示されている(Araki et al.,Nature 460:108(2009);Pearce et al.,Nature 460:103(2009);Rao et al.,Immunity 32:67(2010))。本発明のデータは、共刺激シグナルが、セントラルおよびエフェクターメモリーT細胞サブセットへのCAR-T細胞の分化に影響を及ぼすこと、および、HVEM由来CSSDが、効率的かつバランスの取れた分化を誘導することを示唆した。異なる共刺激シグナルは、別個の様式で代謝プログラムが特異的なメモリーT細胞サブセットに分化するのに影響する可能性がある。
【0145】
新規の抗-HIV薬物の開発および抗-レトロウイルス療法(ART)における進歩は、HIV感染患者の予後を劇的に改善した。しかしながら、ARTは、潜在的感染細胞の持続性に起因して、患者の体からHIVを完全に除去することは成功していない。この目的を達成するために、潜在的感染細胞の薬理学的再活性化およびその後のHIV特異的CTLまたは広域中和抗体(bNAb)による免疫療法を組み合わせる、いわゆる「ショックおよび死滅化」アプローチが提案されている(Halper-Stromberg et al.,Cell 158:989(2014))。このプロトコルでは、HIV-1 Envの保存領域を標的化するCD4に基づくCAR-T細胞は、エスケープ突然変異を有する抗原を認識することができないTCRに基づくCAR-T細胞またはbNAbに基づくCAR-T細胞よりも有用であり得る。実際に、最近の研究は、HIV治療のインビトロおよびインビボのモデルにおいて、4-1BB由来CSSDを有するCAR-T細胞の有望な結果を報告している(Leibman et al.,PLoS Pathog.13:e1006613(2017))。本発明の研究の結果は、HVEM由来CSSDを有するCD4に基づくCAR-T細胞(CD28または4-1BB由来CSSDを有するものよりも強力なエフェクター機能を示した)は、HIV感染の「ショックおよび死滅化」治療のための有用なツールでもあり得ることを強く示唆する。
【0146】
要約すると、本発明の結果は、CARにおけるCSSDが、CAR-T細胞のエフェクター機能および特性に関する極めて重要な決定因子であることを示し、CARにおけるCSSDが、より強力なCAR-T細胞を設計するのに重要であることを示す。さらに、HVEM由来CAR-T細胞は、効果的なCAR-T細胞を作製するための有望な候補であり得る。
【0147】
[実施例17:CAIX CAR発現試験]
様々なCAR構築物を、図11Aに示されるように抗-CAIX scFvおよび異なるCSSドメインを用いて調製した。4つの構築物によって形質導入されたc-myc+ヒトCAR-T細胞のFACS検出を図11Bに示す。平均の表面c-myc発現レベル(MFI)を図11Cに示す。
【0148】
3つの標的腎臓/腎癌細胞株を用いて、CAIX CAR-T細胞の有効性を試験した。ACHNは、CAIX発現がないネガティブコントロールである。FACSによって検出した結果、Ketr-3はCAIXの発現が高く、OSRC-2はCAIXの発現が低い(図12A)。CAIX-HVEV CAR-T細胞は、CAIX+標的細胞を、他のCAR-T細胞よりも効率的に死滅化した(図12Bおよび12C)。また、CAIX-HVEV CAR-T細胞は、CAIX+標的細胞との共培養に応答して、他のCAR-T細胞よりも多くのIL-2およびIFN-γを産生した(Ketr-3(図12D)およびOSCR-2(図12E))。
【0149】
精製されたc-myc+CAR-T細胞をSeahorseアッセイによって分析して、それらの代謝活性を測定した。図13Aは、Seahorseアッセイによる様々なCAR-T細胞の酸素消費速度(OCR)を示す。HVEMに基づくCAIX CAR-T細胞は、より高い基礎OCR(図13B)および最大OCR(図13C)を示した。
【0150】
[実施例18:インビボでの腎癌の試験]
実施例16のCAIX CAR-T細胞を用いた腎癌治療の試験を、NPGマウスにおいて行なった。試験デザインを図14Aに示す。マウスに、1×10個のOSCR-2ヒト腎癌細胞を1日目に静脈内注入した。1×10個のCAR-T細胞を7日目に静脈内注入した。図14Bは、14日目のマウスの末梢血中のヒトCAR-T細胞のレベルを示す。マウスの全生存を図14Cに示す。HVEMに基づくCAIX CAR-T細胞は、他のCAR-T細胞よりも有意に良好の生存を提供した。
【0151】
6匹のマウス/群における肺転移腫瘍を、図16に示される時点において試験した。HVEM CAR-T群のマウスは、腫瘍注入の90日後に終了したが、他の群のマウスは、腫瘍注入の50日後に終了した。白斑は、肺における転移腫瘍を示す。HVEMに基づくCAIX CAR-T細胞は、他のCAR-T細胞よりも有意に減少した(recued)腫瘍転移を提供した。図17は、終了時の1匹のマウス/群の代表的なヘマトキシリン/エオシン肺組織病理学を示す。HVEM CAR-T群のみが機能性な肺構造を示し、他の群は全て、肺の構造および機能が失われた重度に浸潤された肺を示した。
【0152】
繰り返しの実験において、HVEM-CAR T拡大の同様の結果が、腫瘍注入の14日後およびCAR-T細胞移行の7日後にインビボで観察された。図15Aは、インビトロ形質導入後のCAR-T(myc+)細胞のパーセンテージを示す。図15Bは、CAR-T細胞移行後7日目のマウス血液中のヒトCAR-T細胞のレベルを示す。図15Cは、全マウス血液細胞のパーセンテージ(左)またはヒトT細胞カウント/100μlマウス血液としての、ヒトT細胞の要約データを示す。HVEM CAR-T細胞は、より良好な拡大をインビボで示した。
【0153】
前述したものは本発明の例示であり、それらを制限するものと解釈されるべきでない。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の等価物は本明細書中に含められる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B-6C】
図6D-6E】
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図7C
図8A-8C】
図9A-9C】
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図13A
図13B-C】
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
【配列表】
2022529380000001.app
【国際調査報告】