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特表2022-529399肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(54)【発明の名称】肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20220615BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61M 13/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
A61B34/10
A61M15/00 Z
A61M13/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526622
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 IN2020050381
(87)【国際公開番号】W WO2020217259
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】201921016322
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511109180
【氏名又は名称】シプラ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナンダン・クルカルニ
(72)【発明者】
【氏名】ジーナ・マルホトラ
(57)【要約】
個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための装置(100)、システム(200)、及び方法(500)が開示される。装置(100)は、口-咽喉モデル(102)と、口-咽喉モデル(102)において薬物及び呼吸の流れをそれぞれ分散させるための、口-咽喉モデル(102)に接続された吸入デバイス(104)及び呼吸シミュレータ(106)とを含む。装置(100)はまた、呼吸シミュレータ(106)及び吸入デバイス(104)と通信して、呼吸の流れの分散を検出し、且つ吸入デバイス(104)を作動させて薬物を分散させる制御ユニット(108)を含む。呼吸の流れ及び薬物は、口-咽喉モデル(102)及び呼吸シミュレータ(106)の下流に形成された混合ユニット(110)を通過する間に、一様に混合される。混合物は、次いで、混合ユニット(110)に対して下流に形成された肺キャストモデル(112)により受け取られて、薬物の沈着を収容する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための装置(100)であって、
口-咽喉モデル(102)と、
前記口-咽喉モデル(102)に接続され、且つ前記口-咽喉モデル(102)において薬物を分散させるように適合された吸入デバイス(104)と、
前記口-咽喉モデル(102)に接続され、且つ前記口-咽喉モデル(102)において呼吸の流れを分散させるように適合された呼吸シミュレータ(106)であって、前記呼吸の流れは、前記個人の呼吸プロファイルに基づいて生成される、前記呼吸シミュレータ(106)と、
前記呼吸シミュレータ(106)及び前記吸入デバイス(104)と通信する制御ユニット(108)であって、
前記口-咽喉モデル(102)への前記呼吸の流れの分散の検出を実行し、
前記検出に基づいて、前記口-咽喉モデル(102)における前記薬物を分散させるために、前記吸入デバイス(104)を作動させる、
ように適合された前記制御ユニット(108)と、
前記口-咽喉モデル(102)及び前記呼吸シミュレータ(106)の下流に形成されている混合ユニット(110)であって、前記呼吸の流れ及び前記薬物が、前記混合ユニット(110)を通過する間に一様に混合される、前記混合ユニット(110)と、
前記混合ユニット(110)の下流に形成され、且つ前記薬物の沈着を収容するために混合物を受け入れるように適合される肺キャストモデル(112)と、
を備える装置(100)。
【請求項2】
前記装置(100)が、
前記吸入デバイス(104)と通信し、且つ前記個人の少なくとも1つの呼吸パラメータを検出するように適合された感知ユニット(120)であって、前記少なくとも1つの呼吸パラメータが、前記個人が前記吸入デバイス(104)を介して吸入した場合に検出される、前記感知ユニット(120)を備え、
前記制御ユニット(108)が、前記感知ユニット(120)と通信し、且つ
前記少なくとも1つの呼吸パラメータに基づいて、前記個人の前記呼吸プロファイルを生成し、
前記呼吸の流れを生成するために、前記呼吸プロファイルを前記呼吸シミュレータ(106)に送信する、
ように適合される、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの呼吸パラメータが、呼吸の流量、全体の肺容量、温度の影響、湿度勾配、及び呼吸時の肺における粘膜層を含む、請求項2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記肺キャストモデル(112)は、前記個人の少なくとも1つの生理学的パラメータ及び前記呼吸プロファイルに基づいて形成される、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記装置(100)が、前記吸入デバイス(104)及び前記制御ユニット(108)と通信する流れレギュレータ(114)であって、前記口-咽喉モデル(102)において分散される前記吸入された薬物の流量を調節するように適合された前記流れレギュレータ(114)を備える、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記装置(100)が、前記肺キャストモデル(112)及び前記制御ユニット(108)と通信するカスケードインパクタ(116)であって、前記肺キャストモデル(112)における前記薬物の沈着に関連付けられたパラメータを評価するように適合された前記カスケードインパクタ(116)を備える、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記沈着に関連付けられる前記パラメータが、沈着時に、特定の肺エリアにおける前記薬物の実際の消費量と、前記呼吸の流れ及び前記薬物の粒子サイズ分布とのうち少なくとも一方を含む、請求項6に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記装置(100)が、前記カスケードインパクタ(116)を介して前記呼吸の流れ及び前記薬物を吸い込むように適合された真空ポンプ(118)を備える、請求項6に記載の装置(100)。
【請求項9】
個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするためのシステム(200)であって、
吸入デバイス(104)と通信し、且つ前記個人の少なくとも1つの呼吸パラメータを検出するように適合された感知ユニット(120)であって、前記少なくとも1つの呼吸パラメータが、前記個人が前記吸入デバイス(104)を介して吸入した場合に検出される、前記感知ユニット(120)と、
前記感知ユニット(120)と通信し、且つ口-咽喉モデル(102)における呼吸の流れを分散させるように適合された呼吸シミュレータ(106)であって、前記呼吸の流れが、前記個人の前記少なくとも1つの呼吸パラメータに基づいて生成される、前記呼吸シミュレータ(106)と、
前記呼吸シミュレータ(106)及び前記吸入デバイス(104)と通信する制御ユニット(108)であって、
前記呼吸シミュレータ(106)による前記呼吸の流れの分散の検出を実行し、
前記検出に基づいて、前記口-咽喉モデル(102)において前記薬物を分散させるために、前記吸入デバイス(104)を作動させる、
ように適合された前記制御ユニット(108)と、
を備える前記システム(200)において、
前記呼吸の流れ及び前記薬物が、前記薬物を沈着させるために、肺キャストモデル(112)に向けて送られる、システム(200)。
【請求項10】
前記システム(200)が、前記肺キャストモデル(112)及び前記制御ユニット(108)と通信するカスケードインパクタ(116)であって、前記肺キャストモデル(112)における前記薬物の沈着に関連付けられたパラメータを評価するように適合された前記カスケードインパクタ(116)を備える、請求項9に記載のシステム(200)。
【請求項11】
前記システム(200)が、
前記感知ユニット(120)と通信する制御ユニット(108)であって、
前記少なくとも1つの呼吸パラメータに関する細部を受け取り、
前記少なくとも1つの呼吸パラメータに基づいて、前記個人の呼吸プロファイルを生成し、
前記呼吸の流れを生成するために、前記呼吸プロファイルを前記呼吸シミュレータ(106)に送信する、
ように適合された前記制御ユニット(108)を備える、請求項9に記載のシステム(200)。
【請求項12】
前記少なくとも1つのパラメータが、呼吸の流量、全体の肺容量、温度の影響、湿度勾配、及び呼吸時の肺における粘膜層を含む、請求項8に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記沈着に関連付けられた前記パラメータが、沈着時の特定の肺エリアにおける前記薬物の実際の消費量と、前記呼吸の流れ及び前記薬物の粒子サイズ分布とのうち少なくとも一方を含む、請求項10に記載のシステム(200)。
【請求項14】
個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための方法(500)であって、
感知ユニット(120)によって、前記個人の少なくとも1つの呼吸パラメータを検出するステップであって、前記少なくとも1つの呼吸パラメータが、前記個人が吸入デバイス(104)を介して吸入した場合に検出される、前記ステップと、
呼吸シミュレータ(106)によって、口-咽喉モデル(102)における呼吸の流れを分散させるステップであって、前記呼吸の流れが、前記個人の前記少なくとも1つの呼吸パラメータに基づいて生成される、前記ステップと、
制御ユニット(108)によって、前記呼吸シミュレータ(106)による前記呼吸の流れの分散を検出するステップと、
前記口-咽喉モデル(102)において前記薬物を分散させるために、前記制御ユニット(108)によって、前記吸入デバイス(104)を作動させる、前記ステップと、
肺キャストモデル(112)によって、前記個人の肺における前記吸入された薬物の沈着を解析するステップと、
を含む方法(500)。
【請求項15】
前記方法(500)が、カスケードインパクタ(116)によって、前記肺キャストモデル(112)における前記薬物の沈着に関連付けられたパラメータを評価するステップを含む、請求項14に記載の方法(500)。
【請求項16】
前記方法(500)が、
前記制御ユニット(108)によって、前記少なくとも1つの呼吸パラメータに関する細部を受け取るステップと、
前記制御ユニット(108)によって、前記少なくとも1つの呼吸パラメータに基づいて、前記個人の呼吸プロファイルを生成するステップと、
前記制御ユニット(108)によって、前記呼吸の流れを生成するために前記呼吸シミュレータ(106)に前記呼吸プロファイルを送るステップと、
を含む、請求項14に記載の方法(500)。
【請求項17】
前記方法(500)が、前記肺キャストモデル(112)によって、個人の肺の間で前記吸入された薬物の分布を解析するステップを含む、請求項14に記載の方法(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、薬物動態に関し、より詳細には、個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートすることに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に知られているように、吸入による薬物の投与は、喘息及び慢性の閉塞性肺疾患などの呼吸障害に対する広く一般的な治療プロセスである。例えば、臨床的な設定において、肺疾患を治療するために、抗生物質及び他の薬物がエアロゾルとして投与されている。しかし、エアロゾル送達及び肺沈着などの要素は、吸入された薬物の望ましい薬力学的効果を達成することにおいて、大きな障害であることを示している。実際に、肺における沈着部位は、個人の肺の生理機能、及び例えば、粒子サイズ分布などのエアロゾルの特性により影響されることが分かってきた。
【0003】
したがって、個人の肺に実際に送達される吸入された薬物の量を最大化するために、送達技法、及び個人の呼吸技法を改善する絶え間ない努力が行われている。特に、最近の数十年において、コンピュータシミュレーションにより、薬物動態プロセスにおいて、大幅な成長及び発展が見られてきた。コンピュータシミュレーション技法は、例えば、肺における吸入された薬物の沈着に関して、薬物の生体内挙動を予測するために、薬物動態プロセスを、定性的且つ定量的に評価することを目標としている。しかし、薬物吸入の臨床的な結果を正確に予測するためには、例えば、子供、健康な成人、及び病気の成人など、様々な個人に基づいて正確な呼吸の流量をシミュレートするなど、現実的な試験管内状態を達成することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、コンピュータ及び試験管内技法の広範囲な使用にかかわらず、肺における吸入された薬物の沈着を予測するには様々な欠点がある。したがって、個人により吸入されることを意味するどの薬物もそのすべての投与量及び薬力学的効果を予測することは課題である。当然ではあるが、これは、薬物の発展及び進化にも直接影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この要約は、概念の選択を簡略化された形で導入するために提供されており、それは、本開示の詳細な説明においてさらに述べられる。この要約は、本開示の重要な、又は基本的な発明の概念を特定するように意図されておらず、あるいは本開示の範囲を決定するようにも意図されていない。
【0006】
本開示の実施形態において、個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための装置が開示される。装置は、口-咽喉モデルと、口-咽喉モデルに接続され、且つ口-咽喉モデルに薬物を分散させるように適合された吸入デバイスと、口-咽喉モデルに接続され、且つ口-咽喉モデルにおける呼吸の流れを分散させるように適合された呼吸シミュレータとを含む。呼吸の流れは、個人の呼吸プロファイルに基づいて生成される。さらに、前記装置は、呼吸シミュレータ及び吸入デバイスと通信し、且つ口-咽喉モデルの中への呼吸の流れの分散を検出して、その検出に基づき、口-咽喉モデルにおける薬物を分散させるべく吸入デバイスを作動させるように適合された制御ユニットを含む。さらに装置は、口-咽喉モデル及び呼吸シミュレータの下流に形成された混合入口を含み、呼吸の流れ及び薬物が、混合入口を通過する間に一様に混合されるようにする。装置はまた、混合入口の下流に形成され、且つ混合物を受け入れて、肺の沈着を収容するように適合された肺キャストモデルを含む。
【0007】
本開示の別の実施形態では、個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするためのシステムが開示される。システムは、個人の少なくとも1つの呼吸パラメータを検出するために、吸入デバイスと通信する感知ユニット120を含み、少なくとも1つの呼吸パラメータは、個人が、吸入デバイスを介して吸入したとき検出される。さらにシステムは、感知ユニット120と通信し、且つ口-咽喉モデルにおける呼吸の流れを分散するように適合された呼吸シミュレータを含み、ここで、呼吸の流れは、個人の少なくとも1つの呼吸パラメータに基づいて生成される。システムはまた、呼吸シミュレータ及び吸入デバイスと通信し、呼吸シミュレータによる呼吸の流れの分散を検出し、且つその検出に基づいて、口-咽喉モデルにおける薬物を分散させるべく吸入デバイスを作動させるように適合された制御ユニットを含む。呼吸の流れ及び薬物は、薬物を沈着させるために肺キャストモデルに向けて送られる。
【0008】
本開示のさらに別の実施形態では、個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための方法が開示される。方法は、個人の少なくとも1つの呼吸パラメータを検出するステップを含み、ここで、少なくとも1つの呼吸パラメータは、個人が吸入デバイスを介して吸入したときに検出される。さらに検出ステップの後に、口-咽喉モデルにおいて呼吸の流れを分散させるステップが行われ、ここにおいて、呼吸の流れは、個人の少なくとも1つの呼吸パラメータに基づいて生成される。さらに、方法は、呼吸シミュレータにより、呼吸の流れの分散を検出するステップと、検出に基づいて、口-咽喉モデルにおいて薬物を分散させるように吸入デバイスを作動させるステップとを含み、ここで、呼吸の流れ及び薬物は、薬物を沈着させるために肺キャストモデルに向けて送られる。
【0009】
本開示の利点及び特徴をさらに明確にするために、本開示のより具体的な記述が、添付図面に示されたその特定の実施形態を参照して行われる。これらの図面は、本開示の典型的な実施形態だけを示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なすべきではないことを理解されたい。本開示は、添付図面を用いてさらなる特殊性及び細部と共に述べられ、且つ説明される。
【0010】
本開示の利点及び特徴をさらに明確にするために、本開示のより具体的な記述が、添付図面に示されたその特定の実施形態を参照することにより行われる。これらの図面は、本開示の典型的な実施形態だけを示しており、したがって、その範囲を限定するものと見なすべきではないことを理解されたい。本開示は、添付図面を用いて、さらなる特殊性及び細部を併せて述べられ、且つ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態による、個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための装置の概略図である。
図2】本開示の別の実施形態による、装置の様々な構成要素を示すブロック図である。
図3】本開示の別の実施形態による、吸入された薬物の沈着をシミュレートするための装置のシステムのブロック図である。
図4A】本開示の実施形態による装置を示す図である。
図4B】本開示の実施形態による、プロトタイプの肺キャストモデルを示す図である。
図5】本開示の実施形態による、肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートする方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
さらに当業者であれば、図面の要素は、簡略化するように示されており、必ずしも尺度を合わせて描かれていないことを理解されよう。さらに、デバイスの構成に関して、デバイスの1つ又は複数の構成要素は、従来の記号により図面で示されており、本明細書の記述の利益を有する当業者であれば、容易に明らかになる細部を用いて図面を曖昧にすることのないように、図面は、本発明の実施形態の理解に関係する特定の細部に限って示すことになる。
【0013】
本発明の原理の理解を促進するために、次に、図面に示された実施形態に対して参照を行うものとし、それを述べるために特有の文言が使用される。そうではあるが、それにより本発明の範囲を限定することは意図されていないことが理解されよう。示されたシステムにおけるこのような改変及びさらなる修正、ならびに本明細書に示された本発明の原理のこのようなさらなる適用は、本発明が関係する当業者であれば、通常想起されるものであるとして企図されることになる。特段の規定がない限り、本明細書で使用されるすべての技術的且つ科学的な用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で提供されるシステム、方法、及び例は、例示のためだけのものであり、限定することを意図するものではない。
【0014】
本明細書で使用される「いくつかの」という用語は、「何もない、又は1つ又は複数のもの、又はすべてのもの」であると理解すべきである。したがって、「何もない」、「1つの」、「複数の」、「すべてではないが複数のもの」、又は「すべてのもの」という用語は、「いくつかの」の定義にすべて含まれることになる。「いくつかの実施形態」という用語は、本開示の範囲を逸脱することなく、実施形態がない、又は1つの実施形態、又はいくつかの実施形態、又はすべての実施形態を指すことができる。
【0015】
本明細書で使用される専門用語及び構造は、いくつかの実施形態及びその特定の特徴を記述し、教示し、且つ明らかにするためのものである。それは、決して特許請求の範囲、又はその等価な形態の趣旨及び範囲を限定する、制限する、又は低減することはない。
【0016】
より具体的には、これだけに限らないが、「含む(includes)」、「備える/含む(comprises)」、「有する」、「からなる(consists)」、及びその文法的な変形など、本明細書で使用されるいずれの用語も、正確な限定又は制限を指定するものではなく、また実際に特段の指定のない限り、1つ又は複数の特徴もしくは要素の可能な追加を排除することはなく、さらに、限定する文言「~を備えなくてはならない」又は「~を含む必要がある」を用いて述べられない限り、列挙された特徴及び要素の1つ又は複数のものを除去できることを排除するものと理解されてはならない。
【0017】
いずれにしても、一定の特徴又は要素が、一度だけ使用されるように限定されているかどうかにかかわらず、なお「1つ又は複数の特徴」もしくは「1つ又は複数の要素」、又は「少なくとも1つの特徴」もしくは「少なくとも1つの要素」と呼ぶことができる。さらに、「1つ又は複数の」又は「少なくとも1つの」特徴又は要素という用語の使用は、「1つ又は複数の~である必要がある」又は「1つ又は複数の要素が必要である」など、制限する文言によって指定されない限り、その特徴又は要素が何もないことを排除するものではない。
【0018】
その他の形で規定されない限り、本明細書で使用されるすべての用語、及び特に任意の技術的且つ/又は科学的な用語は、当業者により普通に理解されるものと同じ意味を有するものと解釈され得る。
【0019】
本明細書において、いくつかの「実施形態」に対して参照が行われる。実施形態は、添付の特許請求の範囲において提示された任意の特徴及び/又は要素の可能な実装形態の例であることを理解されたい。いくつかの実施形態は、添付の特許請求の範囲の特定の特徴及び/又は要素が、特異性、実用性、及び非自明性の要件を満たしている可能な方法の1つ又は複数のものを明らかにするために述べられている。
【0020】
これだけに限らないが、「第1の実施形態」、「さらなる実施形態(a further embodiment)」、「代替の実施形態」、「一実施形態」、「実施形態」、「複数の実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」、「さらなる実施形態(further embodiment)」、「さらに他の実施形態」、「追加の実施形態」、又はそれらの変形形態を含む句及び/又は用語の使用は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。特段の指定のない限り、1つ又は複数の実施形態と関連して述べられた1つ又は複数の特定の特徴及び/又は要素は、1つの実施形態で見出すことができる、又は複数の実施形態で見出すことができる、又はすべての実施形態で見出すことができる、又はいずれの実施形態でも見出すことができない。1つ又は複数の特徴及び/又は要素を、本明細書において、単一の実施形態だけのコンテキストで、又は代替的に、複数の実施形態のコンテキストで、又はさらに代替的にすべての実施形態のコンテキストで述べることができるが、特徴及び/又は要素は、そうではなくて、別個に、又は任意の適切な組み合わせで提供され得る、又は全く提供されないこともあり得る。反対に、別々の実施形態のコンテキストで述べられた任意の特徴及び/又は要素は、代替的に、単一の実施形態のコンテキストで共に存在するものとして実現され得る。
【0021】
本明細書に記載される任意の特定の、またすべての細部は、いくつかの実施形態のコンテキストで使用され、したがって、必ずしも添付の特許請求の範囲に対する限定要素と解釈すべきではない。添付の特許請求の範囲、及びその法的に等価な形態は、以下の記述における例示的な実施例として使用されるもの以外の実施形態のコンテキストで実現することも可能である。
【0022】
本発明の実施形態は、添付図面を参照して以下で詳細に述べられる。
【0023】
本開示は、個人の肺における吸入された薬物の沈着に対する個人特有の装置、システム、及び方法を提供する。本開示は、個人の生理学的パラメータ及び呼吸プロファイルを考慮に入れる。そのようにすることにより、個人特有の装置は、例えば、健康な人と病気の人など、様々な個人の間において、吸入された薬物の効果を区別することができる。さらに本開示はまた、肺における有効且つ制御された薬物の沈着を容易にし、それにより、投与される薬物の効率を高める。
【0024】
図1は、本開示の実施形態による、個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための装置の概略図を示す。さらに図2は、本開示の別の実施形態による、装置100の様々な構成要素を示すブロック図を示す。図2はまた、装置100を通る流体の流れを示す。情報の重複を回避するために、図1及び図2の記述は、互いに関して説明される。
【0025】
図1及び図2を参照すると、装置100は、これだけに限らないが、口-咽喉モデル102と、口-咽喉モデル102に接続される吸入デバイス104と、口-咽喉モデル102に接続される呼吸シミュレータ106と、呼吸シミュレータ106及び吸入デバイス104と通信する制御ユニット108と、口-咽喉モデル102及び呼吸シミュレータ106の下流に形成される混合ユニット110と、混合ユニット110の下流に形成される肺キャストモデル112とを含むことができる。
【0026】
実施形態では、口-咽喉モデル102は、個人に対する現実的且つ生体に関連する経口吸入製品試験のための口及び咽喉を示すことができる。口-咽喉モデル102は、口腔、咽頭、喉頭、及び上側気管の一部を含むことができる。口-咽喉モデル102は、例えば、1つ又は複数の構成因子に基づいて、構成、幾何形状、形、内部空間容積のタイプにおいて異なる可能性がある。このような因子は、これだけに限らないが、個人の年齢、健康状態、及び性別を含むことができる。口-咽喉モデル102は、吸入デバイス104に接続される。
【0027】
さらに吸入デバイス104は、口-咽喉モデル102において、薬物を分散させるように適合され得る。したがって、薬物は、口-咽喉モデル102において分散されるように、吸入デバイス104を通して投与される。吸入デバイス104は、吸入された薬物を個人の肺に直接送達させることができるので、何らかの他の方法によって投与するのと比較して、有効な治療を行うために必要な薬物は少量になる。さらに薬物の投与に必要な時間も、本技法によれば低減される。実施形態では、吸入デバイス104は、計測される吸入器、乾燥粉末吸入器、及びソフトミスト吸入器のうちの1つとすることができる。別の実施形態では、吸入デバイス104は、薬物を投与し、且つ個人の肺に直接送達するために使用される任意の他の利用可能な吸入器とすることができる。
【0028】
さらに口-咽喉モデル102はまた、呼吸シミュレータ106と結合することができる。呼吸シミュレータ106は、口-咽喉モデル102における呼吸の流れを分散させるように適合され得る。実施形態では、呼吸の流れは、個人の呼吸プロファイルに基づいて生成される。実施形態では、呼吸の流れは、口-咽喉モデル102の中に引きこまれる空気の体積流量を示すことができる。当業者には理解されるように、呼吸の流れは、例えば、呼吸パラメータにおける差、したがって、呼吸プロファイルにおける差に基づいて、個人ごとに異なる可能性がある。
【0029】
実施形態では、装置100は、吸入デバイス104と通信する感知ユニット120を含むことができる。感知ユニット120は、個人の少なくとも1つの呼吸パラメータを検出することができる。実施形態では、感知ユニット120は、個人が吸入デバイス104を介して吸入したとき、少なくとも1つの呼吸パラメータを検出することができる。実施形態では、呼吸パラメータは、これだけに限らないが、呼吸の流量、全体の肺容量、温度の影響、湿度勾配、及び呼吸時の肺の粘膜層を含むことができる。実施形態では、感知ユニット120は、制御ユニット108と通信することができる。
【0030】
呼吸パラメータに基づいて、制御ユニット108は、個人の呼吸プロファイルを生成するように適合され得る。実施形態では、呼吸プロファイルは、個人の呼吸数を示すことができる。さらに制御ユニット108は、口-咽喉モデル102において、呼吸の流れの生成及び分散を行うために呼吸シミュレータ106に、生成された呼吸プロファイルを送ることができる。
【0031】
実施形態では、制御ユニット108は、口-咽喉モデル102への呼吸の流れの分散を検出するように適合され得る。実施形態では、制御ユニット108は、口-咽喉モデル102への呼吸の流れの分散を検出するための1つ又は複数のセンサを含むことができる。検出に基づいて、制御ユニット108は、吸入デバイス104を作動させて、薬物を口-咽喉モデル102の中に分散させることができる。実施形態では、制御ユニット108は、吸入された薬物を同時に口-咽喉モデル102の中に分散させるために、呼吸の流れの検出に応じて信号を送信して、吸入デバイス104を作動させることができる。作動されると、吸入デバイス104は、口-咽喉モデル102の中へと薬物を分散させ、そこでは、呼吸に必要な流れはすでに、呼吸シミュレータ106によって受け取られている。
【0032】
肺キャストモデル112に導かれる前に、呼吸の流れ及び薬物が、確実に適切に混合されることが重要である。したがって、混合ユニット110は、呼吸の流れ及び薬物が、混合ユニット110を通過する間に一様に混合されるように、口-咽喉モデル102及び呼吸シミュレータ106の下流に形成される。実施形態では、混合ユニット110は、混合入口及び混合出口を有することができる。分散された薬物及び呼吸の流れは、口-咽喉モデル102から、混合入口を通って混合ユニット110に送られる。混合ユニット110は、呼吸の流れと分散された薬物との一様な混合を提供する特性を有することができ、したがって、混合出口において、混合ユニット110を離れる混合物は、呼吸の流れと吸入された薬物の一様な混合物である。
【0033】
肺キャストモデル112は、薬物の沈着を収容するために、呼吸の流れ及び吸入された薬物の一様な混合物を受け入れるように適合され得る。肺キャストモデル112は、したがって、沈着パターンが、個人の肺における薬物の実際の肺沈着と同様になるように形成される。
【0034】
実施形態において、肺キャストモデル112は、個人の少なくとも1つの生理学的パラメータ、及び呼吸プロファイルに基づいて形成することができる。したがって、肺キャストモデル112は、個人特有なものに作ることができる。このような実施形態において、肺キャストモデル112に影響する生理学的パラメータは、これだけに限らないが、個人の呼吸頻度、1回の換気量すなわち1回の吸気もしくは呼気において吐き出された空気の体積、換気すなわち個人の肺から吸入もしくは吐き出された空気の体積、肺活量すなわち個人が最大の吸入後に肺から吐き出すことのできる空気の最大量、酸素の摂取量、二酸化炭素の生成量、及び酸素に相当する呼吸交換を含むことができる。別の実施形態では、個人の生理学的パラメータは、高解像度コンピュータ断層撮影(HRCT)、及び個人の肺の走査により決定され得る。
【0035】
実施形態では、装置100は、吸入デバイス104及び制御ユニット108と通信する流れレギュレータ114をさらに含むことができる。流れレギュレータ114は、口-咽喉モデル102において分散される、吸入された薬物の流量を調節するように適合される。実施形態では、制御ユニット108は、吸入デバイス104から薬物の流れを検出し、それに従って、流れレギュレータ114に信号を送信することができる。流れレギュレータ114は、通常、吸入された薬物の流量を制御するために、制御ユニット108により生成され、且つ送信される信号に応じる制御弁を有することができる。例では、流れレギュレータ114は、臨界気流コントローラ、モデルTPKとすることができる。実施形態では、流れレギュレータ114の性能は、吸入デバイス104により生ずる流れに対する抵抗、薬物の流量、吸入の持続期間、及び薬物の流量の安定性により影響され得る。
【0036】
実施形態では、装置100はまた、肺キャストモデル112及び制御ユニット108と通信するカスケードインパクタ116を含むことができる。カスケードインパクタ116は、肺キャストモデル112における薬物の沈着に関連付けられたパラメータを評価するように適合され得る。沈着に関連付けられるパラメータは、沈着時の特定の肺エリアにおける薬物の実際の消費量と、呼吸の流れ及び薬物の粒子サイズ分布との少なくとも一方を含む。実施形態では、カスケードインパクタ116は、測定に関連するデバイスとすることができる。
【0037】
実施形態では、カスケードインパクタ116は、順次細かくなるノズルのカスケードを通して、混合物を取り出すことにより、薬物及び呼吸の流れの混合物に存在する粒子を分類することができる。これらのノズルからのジェットは、平面サンプリング面に衝突し、ノズルの各段階において、その前の段階よりも細かい粒子を収集することができる。収集されたサンプルは、次いで、各段階で沈着された薬物の量を取得するために解析することができる。
【0038】
さらなる実施形態では、肺キャストモデル112における吸入された薬物の沈着は、高効率液体クロマトグラフィー(HPLC)技法により評価することができる。HPLC技法は、混合物における各成分を分離し、識別し、且つ定量化するために使用される。カスケードインパクタ116は、固体の吸収性材料で満たされたカラムを介して、加圧された混合物を通過させるように適合されたポンプを含むことができる。混合物における各成分は、吸収性材料とわずかに異なって相互作用することができ、それにより、カラムから流れ出る間に、異なる成分に対する異なる流量、及び成分の分離を生ずる。別の実施形態では、HPLC機器は、これだけに限らないが、脱ガス装置、試料採取器、ポンプ、及び検出器を含むことができる。試料採取器は、混合物を移動相ストリームへと移すことができ、それは、カラムに混合物を搬送することができる。ポンプは、カラムを通る移動相の望ましい流れ及び組成を送達することができる。検出器は、カラムから出現する混合物の量に比例する信号を生成することができ、それにより、混合物成分の定量的な解析を可能にする。
【0039】
さらなる実施形態では、プルーム(plume)視覚化デバイスを含めることができ、粒子画像流速計(PIV)、又は位相ドップラー式粒子分析機(PDI)技法を用いることにより、吸入された薬物のプルーム強度及び粒子挙動を特徴付ける。PIV技法においては、光散乱粒子が加えられ、且つレーザビームが、光散乱粒子を照明する光シートの中へと形成される。PDI技法においては、高い時間解像度を備えた動的な実験において速度の測定が可能である。理解されるように、HPLC技法、PVI技法、及びPDI技法は、肺キャストモデル112における吸入された薬物の沈着を評価できるようにする。
【0040】
実施形態では、カスケードインパクタ116は、これだけに限らないが、次世代インパクタ(NGI)を含むことができる。NGIは、calu-3細胞及びA549細胞培養の少なくとも一方を用いることにより、肺における吸入された薬物の細胞浸透を解析するのに適合され得る。実施形態では、数値流体力学(CFD)モデルを、肺キャストモデル112における吸入された薬物の沈着の評価を向上させるために、装置100と一体化することができる。
【0041】
さらに装置100は、カスケードインパクタ116と肺キャストモデル112の間に設けられた真空ポンプ118を含むことができる。真空ポンプ118は、評価するために、カスケードインパクタ116を介して、呼吸の流れ及び薬物を吸い込むように適合され得る。真空ポンプ118は、それを介して混合物を迅速に吸い込むことにより、カスケードインパクタ116の性能を高めることができ、それにより、肺キャストモデル112における薬物の沈着に関連付けられたパラメータを評価する効率及び速度を高める。
【0042】
実施形態では、感知ユニット120、呼吸シミュレータ106、制御ユニット108、及びカスケードインパクタ116は、装置100のシステムを形成する。図3は、本開示の別の実施形態による、システム200のブロック図を示す。システム200は、個人の肺における薬物の沈着をシミュレートするための装置100に実装され得る。システム200の構成要素の構成及び動作的な細部は、図1及び図2の記述ですでに説明されている。
【0043】
図4Aは、本開示の実施形態による装置100を示す。図4Aを参照すると、装置100は、これだけに限らないが、左葉模倣品402、及び右葉模倣品404に接続された肺キャストモデル112を含むことができる。実施形態では、葉模倣品402、404は、フィルタを含む金属製のドームユニットとすることができ、フィルタの能力は、0.1ミクロンとすることができる。さらに葉模倣品はまた、1つ又は複数の生体適合性のある材料から作ることのできる拡大可能なバルーンを含むことができる。実施形態では、拡大可能なバルーンは、ポンプからの吸引中に、知られた事前定義の体積へと拡大するように適合され得る。前記体積は、実際の患者の吸入パターン、及びその患者における左右の肺葉の寄与をそれぞれ模倣している。
【0044】
例では、患者Aが、最高で60リットル/分(LPM)の吸入流量、及び2Lの吸気体積を有する場合、左右葉の寄与は、同一ではない可能性がある。特定の場合、左葉の寄与は40%とすることができるが、右葉の寄与は、肺キャストモデルの生理機能のために、60%であり得る。この場合、左葉模倣品のバルーンは800ml膨張するが、右葉模倣品は、1200mlまで拡大して完全な吸入を形成する。さらに肺キャストモデルの生理機能に従って、拡大の割合が変化する。したがって、同じ例において、患者Aが、左葉からの流量に対して45%の寄与を有する場合、左葉模倣品におけるバルーンの拡大の割合は、21LPMとなるが、右葉模倣品404におけるバルーンの拡大の割合は、39LPMになり得る。
【0045】
実施形態では、上記の実験を実施した後、左葉模倣品402及び右葉模倣品404を示す2つの金属製のドームユニットは、左葉模倣品402及び右葉模倣品404の上部に設けることのできるハンドルを使用して取り外される。実施形態では、(図4Aの)バルーン及びフィルタユニットは、葉402、404に沈着された薬物の量を測定するために、クロマトグラフィーにより解析され得る。
【0046】
図4Bは、本開示の実施形態によるプロトタイプの肺キャストモデル112を示す。プロトタイプは、これだけに限らないが、葉の分布、誘導気道、気管408、及び心臓陰影410を含むすべての解剖学的構造の特徴を備えた被検者の肺キャストモデルであり、被検者の放射線撮像から導くことができる。実施形態では、葉の分布は、左肺上葉402A、左肺中葉402B、左肺下葉402C、右肺上葉404A、右肺中葉404B、右肺下葉404C、及び葉裂(lobar fissures)406をさらに含むことができる。実施形態では、患者特有の解剖学的、且つ生理学的差異は、実験で正確に捕捉し、それにより、吸入された薬物の葉の分布と共に、口-咽喉モデル102、肺キャストモデル112の間の吸入された薬物の分布を解析することができる。
【0047】
図5は、本開示の実施形態による、肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための方法500を示す流れ図を示す。実施形態では、方法500は、コンピュータで実施される方法500とすることができる。実施形態では、方法500は、システム200によって実行され得る。さらに、簡単にするために、図1図2図3図4A、及び図4Bの記述で詳細に説明された本開示の特徴は、図5の記述において詳細に説明しないものとする。
【0048】
ステップ502で、方法500は、個人の呼吸パラメータを検出することを含む。呼吸パラメータは、個人が、吸入デバイス104を介して吸入したときに検出される。実施形態では、装置100の感知ユニットが、呼吸パラメータを検出することができる。
【0049】
さらにステップ504で、方法500は、口-咽喉モデル102において、呼吸の流れを分散させることを含む。呼吸の流れは、個人の呼吸パラメータに基づいて生成され得る。実施形態では、装置100の呼吸シミュレータ106が、口-咽喉モデル102における呼吸の流れを分散させる。
【0050】
実施形態では、方法500は、個人の少なくとも1つの呼吸パラメータに関する細部を受け取り、且つ少なくとも1つの呼吸パラメータに基づいて、個人の呼吸プロファイルを生成することを含むことができる。その後に、呼吸プロファイルは、呼吸の流れを生成するために、呼吸シミュレータ106に送信され得る。
【0051】
ステップ506で、方法500は、呼吸シミュレータ106による呼吸の流れの分散を検出することを含む。実施形態では、装置100の制御ユニット108は、呼吸の流れの分散を検出することができる。
【0052】
ステップ508で、方法500は、吸入デバイス104を作動させて、口-咽喉モデル102における薬物を分散させることを含む。実施形態では、制御ユニット108は、吸入デバイス104を作動させることができる。
【0053】
実施形態では、方法500は、肺キャストモデル112における薬物の沈着に関連付けられたパラメータを評価し、それにより、肺キャストモデルにおける吸入された薬物の沈着を解析することを含むことができる。実施形態では、カスケードインパクタ116が、パラメータを評価することができる。
【0054】
理解されるように、本開示は、個人の肺における吸入された薬物の沈着をシミュレートするための広範囲な手法を提供する。まず、装置100は、様々な個人に基づく吸入の動作条件を操作する能力を有する。呼吸の流れのシミュレーションを考慮して、装置100は、様々な個人における薬物吸入からの結果を広範囲に解析するために、試験プロセスの動作パラメータを変化させる柔軟性を有する。さらに装置100は小型の装置であり、簡便に取り扱い、維持し、及び動作させることができる。本開示の肺キャストモデル112は、解析全体の正確さを保証するために、実生活の状態の再現を容易にするように形成される。加えて、流れレギュレータ114は、薬物分散の流れに依拠して、装置100の性能を最適化することができる。
【0055】
したがって、装置100、システム200、及び方法500は、個人の肺における薬物の有効な、且つ制御された沈着を容易にし、それにより、投与される薬物の作用の効率を高める。本開示は、個人の肺における吸入された薬物の沈着を行うための個人特有のシステムを提供する。それは、個人の生理学的パラメータ及び呼吸プロファイルを考慮に入れる。それはまた、健康な人と病気の人の間における吸入された薬物の効果を区別することもできる。例では、80才の人、又は慢性の呼吸障害を患う人は、他の人とは異なる可能性のあるその呼吸プロファイルに基づいて薬物を投与することができる。こうすることは、個人の肺における薬物の良好な沈着を保証し、それにより、薬物の治療結果を向上させる。したがって、本開示の装置100、システム200、及び方法500は、広範囲な、柔軟な、正確な、コンパクトなものであり、薬物の吸入に対して、個人特有の解析を保証する。
【0056】
諸図及び前述の記述は、実施形態の例を与えるものである。当業者であれば、述べられた要素の1つ又は複数のものは、単一の機能要素に良好に組み合わせ得ることが理解されよう。代替的に、いくつかの要素は、複数の機能要素へと分割することができる。1つの実施形態からの要素を、別の実施形態に加えることもできる。例えば、本明細書で述べられたプロセスの順序は、変更することができ、また本明細書で述べられた方法に限定されない。さらにいずれの流れ図のアクションも、示された順序で実施される必要がなく、必ずしも行為のすべてが実施される必要はない。さらに、他の行為に依存しない行為は、他の行為と並列に実施することができる。実施形態の範囲は、決してこれらの特定の例により限定されない。明細書で明示的に示されているかどうかにかかわらず、構造、寸法、及び材料の使用における差など、数多くの変形形態が可能である。実施形態の範囲は、少なくとも添付の特許請求の範囲で示されたものと同様の広さを有する。
【符号の説明】
【0057】
100 装置
102 口-咽喉モデル
104 吸入デバイス
106 呼吸シミュレータ
108 制御ユニット
110 混合ユニット
112 肺キャストモデル
114 流れレギュレータ
116 カスケードインパクタ
118 真空ポンプ
120 感知ユニット
200 システム
402 左葉模倣品
402A 左肺上葉
402B 左肺中葉
402C 左肺下葉
404 右葉模倣品
404A 右肺上葉
404B 右肺中葉
404C 右肺下葉
406 葉裂
408 気管
410 心臓陰影
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】