(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(54)【発明の名称】湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を製造するための炭酸化養生方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20220615BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B22/08 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560110
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 CA2020050467
(87)【国際公開番号】W WO2020206541
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520431166
【氏名又は名称】カービクリート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100221899
【氏名又は名称】高倉 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】メールダッド マホーティアン
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB05
(57)【要約】
本発明は、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法に関し、特に、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、鋳型内で及び/又は養生チャンバ内に配置される鋳型内で鋳造され、事前調整され、二酸化炭素で養生される。湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、任意に強化される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法であって、前記方法は、
1)スラグ系結合材と、骨材と、水と、を提供する提供ステップと、
2)前記スラグ系結合材と、前記骨材と、前記水と、を混合して、0.2を超える第1の水対スラグ系結合材重量比を含む加工可能な非ゼロスランプコンクリート組成物を製造する混合ステップと、
3)a)前記非ゼロスランプコンクリート組成物を気密鋳型に移す及び/又は固めることによって前記非ゼロスランプコンクリートを鋳造及び/又は配置するステップであって、前記気密鋳型が少なくとも1つのガスパイプ及び/又はランスを含む鋳造/配置ステップ、又は
b)前記非ゼロスランプコンクリート組成物を気密鋳型に移す及び/又は固めることによって前記非ゼロスランプコンクリートを鋳造及び/又は配置するステップであって、少なくとも1つのガスパイプ及び/又はランスを前記非ゼロスランプコンクリート組成物に挿入するステップをさらに含む鋳造/配置ステップ、又は
c)前記非ゼロスランプコンクリート組成物を気密鋳型に移す及び/又は固めることによって前記非ゼロスランプコンクリートを鋳造及び/又は配置するステップであって、前記鋳型が鋳型壁と、前記鋳型壁の複数の入口と、を含み、前記複数の入口を任意に閉じて、スラリー非ゼロスランプコンクリートを保持する鋳造/配置ステップ、又は
d)前記非ゼロスランプコンクリート組成物を鋳型に移す及び/又は固めることによって前記非ゼロスランプコンクリートを鋳造及び/又は配置するステップであって、前記鋳型が開放上面を画定する鋳型壁と、前記鋳型壁の複数の入口と、を含み、前記複数の入口を任意に閉じて、前記加工可能な非ゼロスランプコンクリートを保持する鋳造/配置ステップと、
4)i)少なくとも1つのガスランスからの空気流及び/又は加圧空気と、ii)ヒーターと、iii)前記非ゼロスランプコンクリートに埋め込まれた加熱要素ワイヤと、のうち少なくとも1つを用いて前記鋳型内の前記非ゼロスランプコンクリート組成物を事前調整して、前記第1の水対スラグ系結合材重量比よりも小さい第2の水対スラグ系結合材重量比を含む事前調整済みスラグ系中間体を製造する事前調整ステップと、
5)鋳造ステップが鋳造ステップ3a)、3b)又は3c)であるとき、前記気密鋳型を密封する密封ステップと、
6)a)-b)前記鋳造ステップが鋳造ステップ3a)又は3b)であるとき、前記少なくとも1つのガスパイプ及び/又はランスからの、又は
c)前記鋳造ステップが鋳造ステップ3c)であるとき、前記鋳型壁の前記複数の入口を介して、又は
d)前記鋳造ステップが鋳造ステップ3d)であるとき、前記鋳型壁の前記複数の入口及び前記開放上面を介して、チャンバ/密閉空間/容器/部屋内で、
二酸化炭素を含有するガスを用いて前記事前調整済みスラグ系中間体を養生して、成形された湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を製造する養生ステップと、
7)前記成形された湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を脱型して、前記湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を提供する脱型ステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記非ゼロスランプコンクリートの前記鋳造ステップが、プレス/圧縮を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記養生ステップ後、前記少なくとも1つのガスパイプ及び/又はランス内の中空空間を、セメントグラウト、鋼繊維強化セメントモルタル及び/又はセメントペーストで充填するステップをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物の鋳造後、前記ガスパイプ及び/又はランスを挿入する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スラグ系結合材が、飛散灰、焼成頁岩、シリカヒューム、ゼオライト、GGBF(粉砕造粒高炉)スラグ、石灰石粉末、水硬性セメント及び非水硬性セメントからなる群から選択される少なくとも1つの他の結合材を含まないか、又はそれらと混合されたスラグである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記スラグが、製鋼スラグ、ステンレス製鋼スラグ、塩基性酸素転炉スラッジ、高炉スラッジ、亜鉛、鉄、銅生産の副産物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記鋳造ステップの前に前記気密鋳型に強化材を配置する強化ステップをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
強化材が、炭素鋼、ステンレス鋼及び/又はFRP強化鉄筋である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記スラグの累積ケイ酸カルシウム含有量が、少なくとも20重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記事前調整ステップを実施して、前記湿式鋳造スラグ系コンクリートの体積の少なくとも1%の多孔度を増加させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物が、5mm~250mmの範囲のスランプ値を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物が、0.7~1.0の範囲の生コンクリートの圧縮係数試験を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記スラグ系結合材が、還元製鋼スラグ、酸化製鋼スラグ、転炉製鋼スラグ、電気アーク炉(EAF)スラグ、塩基性酸素炉(BOF)スラグ、取鍋スラグ、高速冷却製鋼スラグ及び徐冷製鋼スラグ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される製鋼スラグである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記湿式鋳造スラグ系コンクリート製品が、プレキャストの鉄筋及び非鉄筋コンクリートパイプ、ボックスカルバート、排水製品、舗装スラブ、床スラブ、交通障壁、壁、マンホール、擁壁、舗装、タイル及び屋根材からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記湿式鋳造スラグ系コンクリートが、少なくとも5重量%のスラグ含有量を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物が、促進剤、遅延剤、粘度調整剤、空気混入剤、発泡剤、ASR(アルカリシリカ反応)阻害剤、洗い流し防止剤、防錆剤、収縮低減剤、コンクリート亀裂低減剤、可塑剤、超可塑剤、封止材、塗料、コーティング、減水剤、撥水剤、白華制御剤、ポリマー粉末、ポリマーラテックス及び加工性保持剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記非ゼロスランプコンクリート組成物が、セルロース繊維、ガラス繊維、マイクロ合成繊維、天然繊維、PP繊維、PVA繊維及び鋼繊維のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
CO
2養生が、追加の外部熱源及び/又はエネルギー源を含まない、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記二酸化炭素を含有するガスが、少なくとも5体積%の濃度のCO
2を含有するガスである、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記養生ステップ6c)において、穿孔管が、前記鋳型壁の前記複数の入口のうち少なくとも1つを通して挿入される、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記穿孔管が、前記気密鋳型の内部に挿入され、反対側の鋳型壁まで完全に又は部分的に横断する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法に関し、特に、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、鋳型内で及び/又は養生チャンバ内に配置される鋳型内で鋳造され、事前調整され、二酸化炭素で養生される。湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、任意に強化される。
【背景技術】
【0002】
冶金スラグは、一般的に埋め立てられる多量の廃棄物である。冶金スラグは、適切な条件下で結合材料として働くことがある。製鋼スラグを含む冶金スラグの新しい用途を見つける必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、湿式鋳造方法により、主結合材としての冶金スラグ及び二酸化炭素から作られる任意に強化したコンクリート製品の開発について説明する。
【0004】
一態様によれば、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法が提供され、本方法は、非ゼロスランプコンクリートの組成物を提供するステップであって、組成物は、スラグ系結合材と、骨材と、水と、を含む提供ステップと、スラグ系結合材と、骨材と、水と、を混合して、0.2を超える第1の水対結合材重量比を含む加工可能な非ゼロスランプコンクリートを製造する混合ステップと、非ゼロスランプコンクリートを少なくとも1つのガスパイプ/ランスを含む気密鋳型に移す/固めることによって、非ゼロスランプコンクリートを鋳造/配置する鋳造/配置ステップと、i)少なくとも1つのガスランスからの空気流/加圧空気と、ii)ヒーターと、iii)コンクリートに埋め込まれた加熱要素ワイヤと、のうち少なくとも1つを用いて鋳型内の非ゼロスランプコンクリートを事前調整して、第1の水対結合材重量比よりも小さい第2の水対結合材重量比を含む調整済みスラグ系中間体を製造する事前調整ステップと、気密鋳型を密封する密封ステップと、少なくとも1つのガスランスからの二酸化炭素を含有するガスを用いて調整済みスラグ系中間体を養生して、調整済みスラグ系中間体を活性化し、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を製造し、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を脱型する養生ステップと、を含む。
【0005】
別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートの鋳造ステップは、プレス/圧縮を含まない。
【0006】
また別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、養生後、少なくとも1つのガスランス内の中空空間を、セメントグラウト、鋼繊維強化セメントモルタル及びセメントペーストで充填する。
【0007】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートの鋳造後、ガスランスを挿入してもよい。
【0008】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグ系結合材は、飛散灰、焼成頁岩、シリカヒューム、ゼオライト、GGBF(粉砕造粒高炉)スラグ、石灰石粉末、水硬性セメント及び非水硬性セメントからさらになる群から選択される少なくとも1つの他の結合材を含まないか、又はそれらと混合されるスラグである。
【0009】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグは、製鋼スラグ、ステンレス製鋼スラグ、塩基性酸素転炉スラッジ、高炉スラッジ、亜鉛、鉄、銅産業の副産物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、鋳造ステップの前に気密鋳型に強化材を配置する強化ステップをさらに含む。
【0011】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、強化材は、炭素鋼、ステンレス鋼及び/又は繊維強化ポリマー(FRP)強化鉄筋である。
【0012】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグの累積ケイ酸カルシウム含有量は、少なくとも20重量%である。
【0013】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、事前調整ステップは、湿式鋳造スラグ系コンクリートの体積の少なくとも1%の多孔度を増加させる。
【0014】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、5mm~250mmの範囲のスランプ値を有する。
【0015】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、生コンクリートに対する圧縮係数試験を有し、0.7~1.0の範囲の値を見出さなければならない。
【0016】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、製鋼スラグは、還元製鋼スラグ、酸化製鋼スラグ、転炉製鋼スラグ、電気アーク炉スラグ(EAFスラグ)、塩基性酸素炉スラグ(BOFスラグ)、取鍋スラグ、高速冷却製鋼スラグ及び徐冷製鋼スラグ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0017】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリートは、プレキャストの鉄筋及び非鉄筋コンクリートパイプ、ボックスカルバート、排水製品、舗装スラブ、床スラブ、交通障壁、壁、マンホール、擁壁、舗装、タイル及び屋根板からなる群から選択される製品にさらに加工される。
【0018】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリートは、少なくとも5重量%のスラグ含有量を含む。
【0019】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、少なくとも1つの促進剤、遅延剤、粘度調整剤、空気混入剤、発泡剤、ASR(アルカリシリカ反応)阻害剤、洗い流し防止剤、防錆剤、収縮低減剤、コンクリート亀裂低減剤、可塑剤、超可塑剤、封止材、塗料、コーティング、減水剤、撥水剤、白華制御剤、ポリマー粉末、ポリマーラテックス及び加工性保持剤をさらに含む。
【0020】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、少なくとも1つのセルロース繊維、ガラス繊維、マイクロ合成繊維、天然繊維、ポリプロピレン(PP)繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維及び鋼繊維をさらに含む。
【0021】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、CO2養生は、追加の外部熱源/エネルギー源を含まない。
【0022】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、脱型調整済みスラグ系中間体は、少なくとも5体積%の濃度のCO2を含有するガスを用いて、チャンバ/密閉空間/容器/部屋内で養生される。
【0023】
さらにまた別の態様によれば、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法が提供され、本方法は、非ゼロスランプコンクリートの組成物を提供するステップであって、組成物は、スラグ系結合材と、骨材と、水と、を含む提供ステップと、スラグ系結合材と、骨材と、水と、を混合して、0.2を超える第1の水対結合材重量比を含む加工可能な非ゼロスランプコンクリートを製造する混合ステップと、非ゼロスランプコンクリートを気密鋳型に移す/固めることによって、非ゼロスランプコンクリートを鋳造/配置するステップであって、鋳型は、鋳型壁と鋳型壁の複数の入口とを含み、複数の入口を任意に閉じて、スラリー非ゼロスランプコンクリートを保持する鋳造/配置ステップと、i)鋳型壁の複数の入口を通る空気流/加圧空気と、ii)ヒーターと、iii)コンクリートに埋め込まれた加熱要素ワイヤと、のうち少なくとも1つを用いて鋳型内の非ゼロスランプコンクリートを事前調整して、第1の水対結合材重量比よりも小さい第2の水対結合材重量比を含む調整済みスラグ系中間体を製造する事前調整ステップと、鋳型を密封する密封ステップと、ガス源に接続された鋳型壁の複数の入口を介して二酸化炭素を含有するガスを用いて調整済みスラグ系中間体を養生して、調整済みスラグ系中間体を活性化し、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を製造し、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を脱型する養生ステップと、を含む。
【0024】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートの鋳造ステップは、プレス/圧縮を含まない。
【0025】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、少なくとも1つの穿孔管は、任意に入口の1つを通して挿入される。
【0026】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、少なくとも1つの穿孔管は、気密鋳型の内部に挿入され、反対側の鋳型壁まで完全に又は部分的に横断する。
【0027】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグ系結合材は、飛散灰、焼成頁岩、シリカヒューム、ゼオライト、GGBF(粉砕造粒高炉)スラグ、石灰石粉末、水硬性セメント及び非水硬性セメントからさらになる群から選択される少なくとも1つの他の結合材を含まないか、又はそれらと混合されるスラグである。
【0028】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグは、製鋼スラグ、ステンレス製鋼スラグ、塩基性酸素転炉スラッジ、高炉スラッジ、亜鉛、鉄、銅産業の副産物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、鋳造ステップの前に気密鋳型に強化材を配置する強化ステップをさらに含む。
【0030】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、強化材は、炭素鋼、ステンレス鋼及び/又はFRP強化鉄筋である。
【0031】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグの累積ケイ酸カルシウム含有量は、少なくとも20重量%である。
【0032】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、事前調整ステップは、湿式鋳造スラグ系コンクリートの体積の少なくとも1%の多孔度を増加させる。
【0033】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、5mm~250mmの範囲のスランプ値を有する。
【0034】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、生コンクリートに対する圧縮係数試験を有し、0.7~1.0の範囲の値を見出さなければならない。
【0035】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、製鋼スラグは、還元製鋼スラグ、酸化製鋼スラグ、転炉製鋼スラグ、電気アーク炉スラグ(EAFスラグ)、塩基性酸素炉スラグ(BOFスラグ)、取鍋スラグ、高速冷却製鋼スラグ及び徐冷製鋼スラグ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0036】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリートは、プレキャストの鉄筋及び非鉄筋コンクリートパイプ、ボックスカルバート、排水製品、舗装スラブ、床スラブ、交通障壁、壁、マンホール、擁壁、舗装、タイル及び屋根板からなる群から選択される製品にさらに加工される。
【0037】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリートは、少なくとも5重量%のスラグ含有量を含む。
【0038】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、少なくとも1つの促進剤、遅延剤、粘度調整剤、空気混入剤、発泡剤、ASR(アルカリシリカ反応)阻害剤、洗い流し防止剤、防錆剤、収縮低減剤、コンクリート亀裂低減剤、可塑剤、超可塑剤、封止材、塗料、コーティング、減水剤、撥水剤、白華制御剤、ポリマー粉末、ポリマーラテックス及び加工性保持剤をさらに含む。
【0039】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、少なくとも1つのセルロース繊維、ガラス繊維、マイクロ合成繊維、天然繊維、PP繊維、PVA繊維及び鋼繊維をさらに含む。
【0040】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、CO2養生は、追加の外部熱源/エネルギー源を含まない。
【0041】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、脱型調整済みスラグ系中間体は、少なくとも5体積%の濃度のCO2を含有するガスを用いて、チャンバ/密閉空間/容器/部屋内で養生される。
【0042】
さらにまた別の態様によれば、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法が提供され、本方法は、非ゼロスランプコンクリートの組成物を提供するステップであって、組成物は、スラグ系結合材と、骨材と、水と、を含む提供ステップと、スラグ系結合材と、骨材と、水と、を混合して、0.2を超える第1の水対結合材重量比を含む加工可能な非ゼロスランプコンクリートを製造する混合ステップと、非ゼロスランプコンクリートを鋳型に移す/固めることによって、非ゼロスランプコンクリートを鋳造/配置するステップであって、鋳型は、開放上面を画定する鋳型壁と鋳型壁の複数の入口とを含み、複数の入口を任意に閉じて、加工可能な非ゼロスランプコンクリートを保持する鋳造/配置ステップと、i)複数の入口を通る空気流/加圧空気と、ii)ヒーターと、iii)コンクリートに埋め込まれた加熱要素ワイヤと、のうち少なくとも1つを用いて鋳型内の非ゼロスランプコンクリートを事前調整して、第1のスラグ対水重量比よりも小さい第2のスラグ対水重量比を含む調整済みスラグ系中間体を製造する事前調整ステップと、鋳型壁の複数の入口及び開放上面を介して、チャンバ/密閉空間/容器/部屋内で、二酸化炭素を含有するガスを用いて調整済みスラグ系中間体を養生して、調整済みスラグ系中間体を活性化し、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を製造し、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を脱型する養生ステップと、を含む。
【0043】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートの鋳造ステップは、プレス/圧縮を含まない。
【0044】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグ系結合材は、飛散灰、焼成頁岩、シリカヒューム、ゼオライト、GGBF(粉砕造粒高炉)スラグ、石灰石粉末、水硬性セメント及び非水硬性セメントからさらになる群から選択される少なくとも1つの他の結合材を含まないか、又はそれらと混合されるスラグである。
【0045】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグは、製鋼スラグ、ステンレス製鋼スラグ、塩基性酸素転炉スラッジ、高炉スラッジ、亜鉛、鉄、銅産業の副産物、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0046】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、鋳造ステップの前に鋳型に強化材を配置する強化ステップをさらに含む。
【0047】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、強化材は、炭素鋼、ステンレス鋼及び/又はFRP強化鉄筋である。
【0048】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、スラグの累積ケイ酸カルシウム含有量は、少なくとも20重量%である。
【0049】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、事前調整ステップは、湿式鋳造スラグ系コンクリートの体積の少なくとも1%の多孔度を増加させる。
【0050】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、5mm~250mmの範囲のスランプ値を有する。
【0051】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、生コンクリートに対する圧縮係数試験を有し、0.7~1.0の範囲の値を見出さなければならない。
【0052】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、製鋼スラグは、還元製鋼スラグ、酸化製鋼スラグ、転炉製鋼スラグ、電気アーク炉スラグ(EAFスラグ)、塩基性酸素炉スラグ(BOFスラグ)、取鍋スラグ、高速冷却製鋼スラグ及び徐冷製鋼スラグ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0053】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリートは、プレキャストの鉄筋及び非鉄筋コンクリートパイプ、ボックスカルバート、排水製品、舗装スラブ、床スラブ、交通障壁、壁、マンホール、擁壁、舗装、タイル及び屋根板からなる群から選択される製品にさらに加工される。
【0054】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、湿式鋳造スラグ系コンクリートは、少なくとも5重量%のスラグ含有量を含む。
【0055】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、少なくとも1つの促進剤、遅延剤、粘度調整剤、空気混入剤、発泡剤、ASR(アルカリシリカ反応)阻害剤、洗い流し防止剤、防錆剤、収縮低減剤、コンクリート亀裂低減剤、可塑剤、超可塑剤、封止材、塗料、コーティング、減水剤、撥水剤、白華制御剤、ポリマー粉末、ポリマーラテックス及び加工性保持剤をさらに含む。
【0056】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、非ゼロスランプコンクリートは、少なくとも1つのセルロース繊維、ガラス繊維、マイクロ合成繊維、天然繊維、PP繊維、PVA繊維及び鋼繊維をさらに含む。
【0057】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、CO2養生は、追加の外部熱源/エネルギー源を含まない。
【0058】
さらにまた別の態様によれば、本明細書に記載の方法が提供され、調整済みスラグ系中間体は、少なくとも5体積%の濃度のCO2を含有するガスを用いて、チャンバ/密閉空間/容器/部屋内で養生される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本明細書に記載の一実施形態による、ガスパイプ/ランスを有する密封鋳型において行われる鋳造、事前調整及びCO
2養生を伴う湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法を示すプロセスブロック図である。
【
図2】本明細書の
図1に記載の一実施形態による、密封鋳型における鋳造、事前調整及びCO
2養生ステップの正面断面概略図である。
【
図3】本明細書の
図1に記載の別の実施形態による、密封鋳型における鋳造、事前調整及びCO
2養生ステップの正面断面概略図である。
【
図4】本明細書に記載の別の実施形態による、鋳型にガス流入に対する複数の穴を有する密封鋳型において行われる鋳造、事前調整及びCO
2養生を伴う湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の別の製造方法を示すプロセスブロック図である。
【
図5】
図4において本明細書に記載の一実施形態による、密封鋳型における鋳造、事前調整及びCO
2養生ステップの正面断面概略図である。
【
図6】
図4において本明細書に記載の別の実施形態による、密封鋳型における鋳造、事前調整及びCO
2養生ステップの正面断面概略図である。
【
図7】本明細書に記載の別の実施形態による、養生チャンバ又は密封筐体内に配置された、鋳型の側壁に複数の穴を有する、上部が開いた非密封鋳型において行われる鋳造、事前調整及びCO
2養生を伴う湿式鋳造スラグ系コンクリート製品のさらなる製造方法を示すプロセスブロック図である。
【
図8】
図7において本明細書に記載の一実施形態による、養生チャンバ又は他のガス筐体内の非密封鋳型における鋳造、事前調整及びCO
2養生ステップの正面断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
ここで、添付図面を参照する。
【0061】
従来、コンクリート製造における結合材としては新焼結ポルトランドセメントが使用され、湿式鋳造セメント系プレキャストコンクリート製品は、一般的に熱と蒸気で養生される。対照的に、本発明の湿式鋳造スラグ系コンクリートは、コンクリート及びプレキャスト製品の製造において、ポルトランドセメントに代わる主な結合材として、冶金工場の副産物、及び好ましい実施形態では製鋼工場の副産物を使用する。加えて、コンクリートを養生する活性剤として二酸化炭素が使用され、そのプロセス中に隔離される。好ましい実施形態では、CO2養生プロセス中に追加の熱又は蒸気を必要としない。任意に強化した、提案する湿式鋳造スラグ系コンクリート製品は、従来のセメント系プレキャスト製品と比較したとき、同等の又は優れた機械的特性及び耐久性を示す可能性があり、一方その製造による大気中への温室効果ガスの排出を削減する。また、提案する本発明は、スラグ系コンクリート製品に従来のセメントが使用されておらず、スラグ系コンクリート製品においては骨材含有量も少なくて済むため、天然資源の消費量も削減する。最終的に、提案する本発明により任意に強化された湿式鋳造スラグ系コンクリート製品を製造することで、プレキャストコンクリート生産施設における生産率を向上させる可能性がある。
【0062】
[材料]
湿式鋳造スラグ系コンクリート56の製造における主な結合材は、好ましい実施形態では、鋼又はステンレス鋼の生産に由来するスラグである。また、亜鉛、鉄及び銅の生産による他の副産物材料をスラグとして考えることができる。
【0063】
様々なスラグを、異なる鋼生産方法を実施する鋼工場から収集することができる。本明細書に記載の湿式鋳造スラグ系コンクリートの製造における主結合材として組み込むことができるスラグの種類の中には、ステンレス製鋼スラグ、還元製鋼スラグ、酸化製鋼スラグ、転炉製鋼スラグ、電気アーク炉スラグ(EAFスラグ)、塩基性酸素炉スラグ(BOFスラグ)、取鍋スラグ、高速冷却製鋼スラグ、徐冷製鋼スラグ、塩基性酸素転炉スラッジ、高炉スラッジ及びこれらの組み合わせがある。
【0064】
好ましい実施形態におけるスラグの酸化カルシウム重量含有量は、10%超、好ましくは15%超、好ましくは20%超である。好ましい実施形態における酸化シリカ重量含有量は、6%超、好ましくは8%超、好ましくは12%超である。好ましい実施形態におけるスラグの全酸化鉄含有量は、40%未満、好ましくは30%未満である。好ましい実施形態における製鋼スラグは、累積ケイ酸カルシウム含有量が少なくとも20%であり、遊離石灰濃度が15%未満、好ましくは7%未満のスラグである。好ましい実施形態におけるスラグの嵩密度は1.0~2.0g/cm3の範囲であり、見掛け密度は2.0~6.0g/cm3で変化し得る。
【0065】
スラグは、本明細書に記載の湿式鋳造スラグ系コンクリート混合物に組み込まれる前に、(必要に応じて)より小さなサイズに粉砕してもよい。スラグの粉砕は、ボールミル、ロッドミル、自生ミル、SAGミル、ペブルミル、高圧粉砕ロール、VSI又はタワーミルのような任意の機械的機械で行うことができる。粉砕プロセスは、湿式でも乾式でも実行することができる。乾式サイズ縮小プロセスが好ましいが、湿式プロセスを選択してスラグを粉砕する場合、粉砕されたスラグは、粉砕後に完全に乾燥させる又は半乾燥させることができる。スラグを分級機に通過させることは、より粒径/粒度の小さいスラグを得るための代替オプションである。使用される分級機は当技術分野で公知であり、スクリーン、遠心分離機及びサイクロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
好ましい実施形態における粉砕又は分級されたスラグは、メッシュ#10(2000ミクロン)、好ましくはメッシュ#50(297ミクロン)、好ましくはメッシュ#200(74ミクロン)、好ましくはメッシュ#400(37ミクロン)を通過し、これらの各々を単独で又は少なくとも1つの他の結合材と組み合わせて使用することができる。ふるいを利用して、粉砕後又は粉砕前のいずれかでスラグをスクリーニングしてもよい。したがって、適切な粒度分布を有するスラグを得るために、粉砕法及びスクリーニング法の1つ又は組み合わせを実行することができる。
【0067】
スラグは、少なくとも50m2/kg、好ましくは150m/kg、好ましくは少なくとも200m2/kgのブレイン繊度に粉砕及び/又はスクリーニングしてもよい。好ましい実施形態では、スラグ系湿式コンクリート中のスラグは、スラグの50パーセントが200ミクロン(D50=200μm)未満、好ましくは150ミクロン(D50=150μm)未満、好ましくは100ミクロン(D50=100μm)未満、好ましくは50ミクロン(D50=50μm)未満、好ましくは25ミクロン(D50=25μm)未満、好ましくは10ミクロン(D50=10μm)未満である。
【0068】
スラグの遊離石灰含有量は、混合物に組み込む前に、従来技術における任意の標準的な既知の方法で減少させてもよい。代替的に、スラグを最初に熟成させてスラグの遊離酸化カルシウム(遊離石灰)含有量を減少させ、次いで、混合物に組み込むことができる。湿式鋳造スラグ系コンクリートのスラグ含有量は、コンクリートの重量の5%以上、好ましくは湿式鋳造スラグ系コンクリート又は非ゼロスランプコンクリート組成物の重量の20%以上であるべきである。
【0069】
スラグ系結合材は、スラグ単独(すなわち別の結合材を含まないスラグ)、又はスラグとセメント系材料/ポゾラン材料などの少なくとも1つの他の結合材との組み合わせをさらに含んでもよい。一例として、スラグは、少なくとも1つの他の結合材と混合して、飛散灰、焼成頁岩、シリカヒューム、ゼオライト、GGBF(粉砕造粒高炉)スラグ、石灰石粉末、水硬性セメント、非水硬性セメント、及びこれらの組み合わせをさらに含むスラグ系結合材を製造することができる。
【0070】
湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造における充填材として、天然又は人工の通常重量及び軽量骨材を含む様々な種類の骨材をスラグ系湿式コンクリート製品に組み込むことができる。可能性のある軽量骨材の例としては、天然軽量骨材(例えば軽石)、膨張粘土骨材、膨張頁岩骨材及び膨張鉄スラグ骨材が挙げられる。その他の使用可能な骨材としては、砕石、製造砂、砂利、砂、再生骨材、花崗岩、石灰石、石英、チョーク粉末、大理石粉末、石英砂及び人工骨材が挙げられる。これらの骨材は、細骨材及び/又は粗骨材として混合物に組み込まれる。骨材含有量は、湿式鋳造スラグ系コンクリート又は非ゼロスランプコンクリート組成物の重量の90%まで高くすることができる。
【0071】
提案するスラグ系湿式コンクリートは、加工可能なコンクリートである。(スランプゼロコンクリートとは対照的に)湿式コンクリートを製造するためには、十分な水を乾燥成分に加えるべきである。必要な含水量は、主結合材として選択されるスラグの粒径、骨材の湿分及び結合材の含有量に依存する。より微細な粉砕スラグはより多くの水を吸収するため、湿式コンクリートを製造するためにはより多くの含水量が必要となる。水対結合材質量比は、0.9、好ましくは0.8、好ましくは0.7、好ましくは0.6、好ましくは0.5、好ましくは0.4、好ましくは0.3又は好ましくは0.2とすることができる。例えば、D50が25ミクロンのスラグのみからなる結合材については、水対結合材比が0.4であれば、加工可能な湿式コンクリートをもたらすことができる。骨材が非常に湿っている場合は、混合物に水を追加する必要がない場合がある。
【0072】
必要に応じて、混合物に化学混和剤を導入することができる。化学混和剤を混合物に導入するとき、特定の特性を満たす。可能な化学混和剤としては、促進剤、遅延剤、粘度調整剤、空気混入剤、発泡剤、ASR(アルカリシリカ反応)阻害剤、洗い流し防止剤、防錆剤、収縮低減剤、亀裂低減剤、可塑剤、超可塑剤、減水剤、撥水剤、白華制御剤及び加工性保持剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
必要に応じて、スラグ系湿式コンクリートに繊維を添加することができる。セルロース繊維、ガラス繊維、マイクロ合成繊維、マイクロ合成繊維、天然繊維、PP繊維、PVA繊維及び鋼繊維の1つ又は組み合わせを混合物に組み込むことができる。
【0074】
「ゼロスランプコンクリート」とは、スランプコーンを除去した後に測定可能なスランプを示さない、硬い又は極めて乾燥した稠度(consistency)をもつコンクリートと定義される。標準的な例示的なスランプ試験は、水硬性セメントコンクリートについてのASTM C143である。非ゼロスランプコンクリートは、ASTM C143のような試験によって、スランプコーンを除去した後に測定可能なスランプを示す、硬くもなく極めて乾燥した稠度もないコンクリートである。本明細書におけるスランプ値は、ASTM C143規格に記載された方法を使用して評価される。
【0075】
湿式鋳造スラグ系コンクリートの製造方法は、プレキャストの鉄筋コンクリートパイプ、ボックスカルバート、排水製品、舗装スラブ、床スラブ、交通障壁、壁、マンホール、プレキャストの非鉄筋コンクリート(プレーン)舗装、擁壁、タイル及び屋根板を含むがこれらに限定されない様々な製品を製造するように適応させることができる。製品は、地域及び国の規格及び規則を満たすものとする。
【0076】
図を参照すると、ここで提示する
図1、4及び7は、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品の製造方法のプロセスフロー図の3つの実施形態を示す。
図1、4及び7で使用される3桁の符号は、それぞれ1桁の接頭辞1XX、2XX及び3XXを含む。符号の2桁の接尾辞は、
図1、4及び7のそれぞれにおいて同じ構成を表す。すなわち、例えば符号120、220及び320は、それぞれのプロセスフロー図、具体的には
図1、
図4及び
図7のそれぞれにおける鋳造の単位操作を各々表している。
【0077】
A)ガスパイプ/ランスが鋳型の上面/蓋を通過する密封鋳型
図1を参照すると、少なくとも1つのガスパイプ/ランスを有する密封された気密鋳型における鋳造、事前調整及びCO
2養生を含むステップを伴う湿式鋳造スラグ系コンクリート製品156の製造方法101が概説されている。
【0078】
(i)湿式鋳造スラグ系コンクリート156の製造
湿式鋳造スラグ系コンクリート156の方法101は、非ゼロスランプコンクリート116の組成物を提供し、スラグ111及び混合するときにスラグ系結合材114を提供する任意の少なくとも1つの他の結合材113(すなわち、スラグ単独又はスラグ及び少なくとも1つの他の結合材)と、骨材115と、化学混和剤117と、繊維119と、水105と、を含むがこれらに限定されない組成物のすべての成分を均一に混合110することから始まる。本発明で使用される湿式鋳造スラグ系コンクリート156の水対結合材比は、乾燥鋳造又はゼロスランプコンクリートの含水量よりも高くすべきである。好ましい実施形態では、混合非ゼロスランプコンクリート116は、0.2、好ましくは0.25、好ましくは0.3、好ましくは0.35、好ましくは0.4、好ましくは0.45、好ましくは0.5、好ましくは0.55、好ましくは0.6又は好ましくは0.65よりも大きい第1の水対結合材重量比を有する。「水対スラグ系結合材重量比」及び「水対結合材重量比」という用語は同等のものである。
【0079】
非ゼロスランプコンクリート116は、好ましくは5~250mmのスランプ範囲を有する。非ゼロスランプコンクリート116は、好ましくは少なくとも5分間加工可能である。混合110は、非ゼロスランプコンクリート116が分離又はブリーディングの兆候がないことを保証すべきである。好ましい実施形態における非ゼロスランプコンクリート116の圧縮係数試験は、0.7~1.0の範囲である。鋳造前の非ゼロスランプコンクリート116の温度は、好ましくは0℃~30℃である。好ましい実施形態における生の非ゼロスランプコンクリート116は、任意の従来の方法(例示的な標準試験は、ASTM C231 for Air Content of Freshly Mixed Concrete by the Pressure Method(圧力法による生コンクリートの空気量))で測定される空隙含有量がコンクリートの体積の15%を超えてはならない。圧縮係数試験は、BS 1881-103:1993及びBS EN 12350-4:2009(BS EN 12350-4:2009、Testing fresh concrete Part 4:Degree of compatibility)に記載されている。これで、適切に混合した非ゼロスランプコンクリート116を鋳造120に移す準備が整った。
【0080】
(ii)強化
好ましい実施形態では、非ゼロスランプコンクリート116を鋳造する前に、鋳型を調製し、必要に応じて、炭素鋼、ステンレス鋼及び/又はFRP強化鉄筋などの強化材を気密鋳型内に配置する。鉄筋の直径は、5mm~60mmの範囲で変化し、耐力強度は100MPa~2100MPaの範囲であり得る。強化材は、規則及び規格に従って設計される。
【0081】
(iii)鋳造120、配置
打ち抜き中空パイプ/ランスが気密鋳型内に配置される。これらの幾何学的形状は円形又は長方形とすることができ、パイプ1本あたりの断面積は10,000mm2未満であり、壁の厚さは0.5mm超である。パイプ/ランスの材料は、炭素含有量が0.05%~1.4%の炭素鋼、ステンレス鋼又は合金鋼とすることができ、パイプ/ランスの耐力強度は100MPa~2100MPaである。パイプ/ランスは、機械工具、手動装置、又は剪断によって穴を開ける任意の工具で打ち抜くことができる。任意の実施形態では、パイプ/ランスは、それらの機能に適合する透過性スクリーン/メッシュ材料で作られてもよい。穴の最大寸法は、10mm、好ましくは5mm又は好ましくは1mmであるべきである。穴の間隔は、垂直方向及び水平方向ともに300mm、好ましくは200mm、好ましくは100mm、好ましくは50mmを超えてはならない。別の例では、打ち抜き中空パイプはアルミニウム又はプラスチックで作られる。パイプ/ランスを使用して、ガスを非ゼロスランプコンクリート116に移すことになる。
【0082】
生の調製済み非ゼロスランプコンクリート116は、適切な手段によって移され、従来技術における任意の既知の方法で調製された鋳型内で鋳造される。鋳型は、鋼、鉄、アルミニウム、プラスチック、FRP又は他の材料で作ることができる。鋳型は気密であるべきであり、可能な鋳型材料の1つ又は気密布で鋳型の頂部を覆って囲むように設計された蓋を使用して密封される。この蓋は、ヒンジ、クランプ及び/又はボルトで鋳型の本体に取り付けられる。いくつかの精密に機械加工された穴が蓋に切り込まれることにより、打ち抜き中空パイプ/ランスが鋳型蓋を通過できる。別の例では、コンクリートを鋳造した直後にパイプ/ランスをコンクリート/鋳型に挿入することができる。蓋は、鋳造の前に最初に鋳型に取り付けることができ、あるいは他の例では、コンクリートを鋳造した後に鋳型に取り付けることができる。
【0083】
鋳型は、脱型プロセス130を容易にするために、鋳造前に予め潤滑されるべきである。湿式鋳造コンクリート又はスラグ系中間体126は、内部又は外部の振動器によって、120秒以下で鋳型内に固められる。湿式鋳造コンクリート又はスラグ系中間体126は、鋳型内でプレス又は圧縮する必要はない。すなわち、好ましい実施形態における本方法は、プレス又は圧縮を含まない。スラグ系中間体126の含水量を減少させなければならない。
【0084】
(iv)事前調整140
事前調整140のプロセスステップは、水142を除去することにより、非ゼロスランプコンクリート116の含水量を減少させる。事前調整は、2つの方法のうち少なくとも1つで実施し得る。第1の方法では、中空パイプ/ランスを通して空気流141を導入する(
図2)。別の例では、空気流は加圧空気とすることができる。事前調整ステップでは、蓋を閉める必要はない。この事前調整ステップは、水蒸気142が鋳型から出ることで、初期の水対結合材含有量が最大90%、好ましくは80%、好ましくは70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%又は好ましくは10%減少するまで継続する。第2の方法は、好ましい実施形態ではコンクリートに埋め込まれた加熱要素ワイヤ143を使用する。これらのワイヤは、コンクリートを鋳造する前に鋳型内に配置される(
図3)。また、ワイヤを鋳型の高さに沿って300mm間隔で鉄骨フレーム上に配置してもよい。加熱ワイヤ及びフレームは、コンクリートの鋳造時及び養生後にコンクリート内に残される。次いで、フレーム及びワイヤに電流を流すことができる。あるいは、床暖房マット又はドラムヒーターなど、鋳型の外面を覆うように設置できるヒーターを使用することもできる。これらの要素は鋳型壁を加熱し、最終的に蒸発プロセスを増加させて、コンクリートの湿分を減少させる。2つの方法はさらに、空気141の乾燥及び加熱143の両方を含むように組み合わされ得る。
【0085】
事前調整140ステップは、初期の水対結合材含有量が90%、好ましくは80%、好ましくは70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%、好ましくは10%、好ましくは2%減少し、スラグ系中間体126が製造されるまで継続する。
【0086】
コンクリートにおける上記の事前調整方法のいずれかによって生成されるコンクリート体積に関して定められる多孔度の増加は、コンクリート体積の70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%、好ましくは10%又は好ましくは5%又は好ましくは1%である。いずれの方法の後も、中空ガスパイプ/ランスが突出する開口部に注意しながら、鋳型を密封し、蓋を閉め、鋳型の気密性を検査する。
【0087】
事前調整140プロセスの終了時に、コンクリート中の残留水は初期含水量の5質量%を下回ってはならず、非ゼロスランプコンクリート116の第1の水対結合材重量比よりも小さい第2の水対結合材重量比を有する調整済みスラグ系中間体146が形成される。事前調整ステップ140の完了後、鋳型を気密に密封する。
【0088】
(v)CO2活性化/養生150
調整済みスラグ系中間体146は、二酸化炭素、CO2又はそれらのガス混合物と接触する。二酸化炭素151ガスを導入して、調整済みスラグ系中間体146を、5%、好ましくは10%、好ましくは20%、好ましくは30%、好ましくは40%、好ましくは50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは80%、好ましくは90%又は好ましくは99.5%の純度で、打ち抜き中空パイプ/ランスを通して周囲温度で養生する。チャンバ/密閉空間/容器/部屋のゲージ圧は、0.1psi~100psiの範囲で徐々に増加する。図示されていないが、いくらかのガスがCO2活性化/養生ステップを逃れる場合があることが理解される。
【0089】
本発明のこの実施形態では、密封鋳型は養生チャンバとしても動作する。鋳型は二酸化炭素で10分間以上加圧され続けるが、CO2養生プロセスは48時間まで継続することができる。鋳型内温度は、発熱加速養生反応-「CO2活性化プロセス」の結果として少なくとも1℃上昇する。活性化プロセスの終了時に、残っているCO2があれば排出し、蓋を開ける。パイプ/ランスは、コンクリート内に残すことも、コンクリートから取り出すこともできる。少なくとも1つのガスランス内には、セメントグラウト、鋼繊維強化セメントモルタル、セメントペースト又はポリマーコンクリートで充填できる中空空間が残っていることが理解される。このガスランスの充填は、CO2養生又は脱型後に行われる。
【0090】
(vi)脱型130
脱型は、CO2活性化プロセスのすぐ後に又は直後に行われる。打ち抜き中空パイプ/ランス(コンクリート内に残っている場合)の余分な長さを切断し、中空パイプ又は形成された空間を、セメントグラウト、鋼繊維強化セメントモルタル、セメントペースト、ポリマーコンクリート又はそれらの組み合わせで充填155する。セメント又はポリマー系充填材料を1時間以上養生する。
【0091】
脱型130により、湿式鋳造スラグ系コンクリート156が製造される。
【0092】
B)鋳型の側壁に穴を有する密封鋳型
図4を参照すると、鋳型にガス流入に対する複数の穴を有する密封鋳型における鋳造、事前調整及びCO
2養生を含むステップを伴う湿式鋳造スラグ系コンクリート製品256の製造方法201が概説されている。
【0093】
(i)湿式鋳造スラグ系コンクリート256の製造
湿式鋳造スラグ系コンクリート256の製造方法201は、湿式鋳造スラグ系コンクリート156について前述した方法と同様に始まる。非ゼロスランプコンクリート216の組成物は、スラグ211及び任意の少なくとも1つの他の結合材213(スラグ系結合材214を提供する)と、集合体215と、化学混和剤217と、繊維219と、水205と、を含むが再びこれらに限定されない組成物の成分と均一に混合210される。湿式鋳造スラグ系コンクリート256のすべての特性は、湿式鋳造スラグ系コンクリート256について前述したものと同じである。
【0094】
混合210は、非ゼロスランプコンクリート216が分離又はブリーディングの兆候がないことを再び保証する。
【0095】
(ii)強化
湿式鋳造スラグ系コンクリート156について
図1で先ほど説明したように、湿式鋳造スラグ系コンクリート256は、任意に、前述したように強化材で調製された気密鋳型を含む。
【0096】
(iii)鋳造220、配置
方法201に対する鋳型は、再び、鋼、鉄、アルミニウム、プラスチック又はFRPで作ることができる。鋳型は、好ましくは気密であり、非ゼロスランプコンクリート256を移した後に前述した材料でトップカバーを設計した蓋を使用して密封可能である。気密鋳型の蓋は、ヒンジ、クランプ及び/又はボルトを組み合わせて、鋳型の本体に再び取り付けられる。方法201の実施形態は、鋳型の蓋に前の実施形態のガスパイプ/ランスに対する特別な開口部を必要としない。
【0097】
方法201の2つの実施形態の2つの異なる構築方法に対して2つの異なるタイプの気密鋳型が提示されている。
図5の概略図の実施形態では、鋳型は側壁に複数の小さな穴を有する。これらの穴の最大直径は10mmを超えてはならない。隣接する穴の間隔は、垂直方向及び水平方向ともに300mmを超えてはならない。
図6に示す方法201の第2の実施形態では、気密鋳型は、側壁に複数の少ないが大きい穴(大きい穴の最大間隔は500mm、400mm、300mm、好ましくは200mm、好ましくは100mm、好ましくは50mm)を有し、これらの穴は、大きな鋳型側壁穴を通過する少なくとも1つの多孔管を含む。鋳型の壁の大きい穴の直径は、10mmから200mmの範囲でなければならない。穴を任意に閉じて、生の非ゼロスランプコンクリートを保持する。鋳型壁に配置される穿孔管は、鋼、FRP、ステンレス鋼、プラスチック又はアルミニウムで作られる。これらの穿孔管は、任意に、反対側に到達するまで、又は鋳型内のある距離で終わるまで、鋳型内部を横断する。管の断面、間隔及び面積は、側壁の穴と一致する。穿孔管はガスを透過させ、好ましくは各オリフィス間の最大間隔が30mmである多数のオリフィスを画定する。穿孔管は、気密鋳型の内部に挿入されて、反対側の鋳型壁まで完全に又は部分的に横断してもよい。穿孔管内に残された中空空間及び側壁の穴は、当業者に既知の方法で密封することができる。
【0098】
鋳型の壁に配置される穿孔管は、壁の厚さが0.5mmを超えることがある。穿孔管の材料は、炭素含有量が0.05%~1.4%、強度が100MPaから2100MPaである炭素鋼、ステンレス鋼又は合金鋼とすることができる。穿孔管は、機械工具、手動装置、又は剪断によって穴を開ける任意の工具、又は適合する透過性スクリーン材料で打ち抜くことができる。穴の最大寸法は、10mm、好ましくは5mm又は好ましくは1mmであるべきである。別の例では、穿孔管はアルミニウム又はプラスチックで作られる。穿孔管を使用して、ガスを非ゼロスランプコンクリート216に移すことになる。穿孔管は、コンクリートを鋳造する前に鋳型内に配置することができ、あるいはコンクリートを鋳造した後に大型の穴を通して挿入することができる。
【0099】
生の調製済み非ゼロスランプコンクリート216は、従来技術における任意の既知の方法で調製された鋳型に移される。鋳型は再び、気密であるべきであり、可能な鋳型材料の1つ又は気密布で鋳型の頂部を覆って囲むように設計された蓋を使用して密封される。この蓋は、ヒンジ、クランプ及び/又はボルトで鋳型の本体に取り付けられる。
【0100】
鋳型は、脱型プロセス230を容易にするために、鋳造前に再び予め潤滑される。湿式鋳造コンクリート又はスラグ系中間体226は、内部又は外部の振動器によって、120秒以下で鋳型内に固められる。湿式鋳造コンクリート又はスラグ系中間体126は、鋳型内でプレス又は圧縮する必要はない。すなわち、好ましい実施形態における本方法は、プレス又は圧縮を含まない。スラグ系中間体226の含水量を減少させなければならない。
【0101】
(iv)事前調整240
事前調整240のプロセスステップは、再び、スラグ系中間体226の含水量を減少させる。事前調整は、2つの方法のうち少なくとも1つで実施し得る。第1の方法では、鋳型壁の複数の開口部を通して空気流241を導入する(
図5)。別の例では、空気流は加圧空気とすることができる。この事前調整ステップは、方法101におけるように、初期の水対結合材含有量を減少させる。別の実施形態では、加熱要素/ワイヤ243を使用する。これらのワイヤは、湿式鋳造スラグ系コンクリート226を鋳造する前に鋳型外に配置されるか(
図5)、又はスラグ系中間体226内に埋め込まれてもよい。ワイヤを鋳型の高さに沿って300mm間隔で鉄骨フレーム上に配置してもよい。また、加熱要素/ワイヤは、鋳型の外面を覆うように設置される床暖房マット又はドラムヒーターであってもよい。これらの要素は鋳型壁を加熱し、最終的に蒸発プロセスを増加させて、スラグ系中間体226の湿分を減少させる。湿気を減少させる2つの実施形態は、さらに、空気241の乾燥及び加熱243の両方を同時に使用するように組み合わされ得る。
【0102】
事前調整240ステップは、初期の水対結合材含有量がステップ140におけるように減少するまで、水蒸気242を放出し続ける。
【0103】
コンクリートにおける上記の事前調整方法のいずれかによって生成されるコンクリート体積に関して定められる多孔度の増加は、コンクリート体積の70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%、好ましくは10%又は好ましくは5%又は好ましくは1%である。いずれの実施形態の後も、
図6に示す実施形態の場合、鋳型壁に穿孔管を通す開口部に注意しながら、鋳型蓋を閉め、鋳型の気密性を検査する。
【0104】
事前調整240プロセスの終了時に、コンクリート中の残留水は初期含水量の5質量%を下回ってはならず、非ゼロスランプコンクリート216の第1の水対結合材重量比よりも小さい第2の水対結合材重量比を有する調整済みスラグ系中間体246が形成される。事前調整ステップ240の完了後、鋳型を気密に密封する。
【0105】
(v)CO2活性化/養生250
鋳型内の調整済みスラグ系中間体246は、二酸化炭素、CO2又はCO2を含有するガスと接触する。鋳型の側面の穴は、パイプを介してCO2を含有するガス源に接続される。二酸化炭素251ガスを導入して調整済みスラグ系中間体146を養生し、CO2は、5%、好ましくは10%、好ましくは20%、好ましくは30%、好ましくは40%、好ましくは50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは80%、好ましくは90%又は好ましくは99.5%の純度であり、調整済みスラグ系中間体246に、鋳型の側壁開口部を通して周囲温度で注入される。ガスのゲージ圧は、0.1psiから任意に100psiの範囲で徐々に増加する。図示されていないが、CO2活性化/養生ステップにおいていくらかのガスが鋳型から逃れる場合があることが理解される。
【0106】
本発明のこの実施形態では、密封鋳型は養生チャンバとしても動作する。鋳型は二酸化炭素で10分間以上加圧され続けるが、CO2養生プロセスは48時間まで継続することができる。鋳型内温度は、発熱加速養生反応-「CO2活性化プロセス」の結果として少なくとも1℃上昇する。活性化プロセスの終了時に、残っているCO2があれば排出し、蓋を開ける。
【0107】
(vi)脱型230
脱型は、CO2活性化プロセスの完了後すぐに又は完了直後に行われる。穿孔管は、コンクリート内に残すことも、コンクリートから取り出すこともできる。鋳型側壁からの余分な長さの管がもしあれば切断し、空間を、セメントグラウト、鋼繊維強化セメントモルタル、セメントペースト、ポリマーコンクリート又はそれらの組み合わせで充填255する。管内のセメント又はポリマー系充填材料を1時間以上養生する。
【0108】
脱型230により、湿式鋳造スラグ系コンクリート256が製造される。
【0109】
C)養生室又は筐体にガスが供給される開放鋳型
図7を参照すると、湿式鋳造スラグ系コンクリート製品356の製造方法301が示されており、本方法は、養生チャンバ又は他の筐体内に配置された、鋳型の複数の穴を有する開放鋳型における鋳造、事前調整及びCO
2養生ステップを含む。筐体は、少なくともチャンバ、密閉空間、容器及び部屋のいずれかであり得る。
【0110】
(i)湿式鋳造スラグ系コンクリート356の製造
湿式鋳造スラグ系コンクリート356の製造方法301は、方法101及び201と同様に、非ゼロスランプコンクリート316の組成物を提供し、スラグ311及び任意の少なくとも1つの他の結合材313(スラグ系結合材314を提供する)と、骨材315と、化学混和剤317と、繊維319と、水305と、を含むがこれらに限定されない組成物のすべての成分を均一に混合310することから始まる。本発明で使用される湿式鋳造スラグ系コンクリート356の水対結合材比は、乾燥鋳造又はゼロスランプコンクリートの含水量よりも高くすべきである。好ましい実施形態では、混合非ゼロスランプコンクリート316は、0.2、好ましくは0.25、好ましくは0.3、好ましくは0.35、好ましくは0.4、好ましくは0.45、好ましくは0.5、好ましくは0.55、好ましくは0.6又は好ましくは0.65よりも大きい第1の水対結合材重量比を有する。「水対スラグ系結合材重量比」及び「水対結合材重量比」という用語は同等のものである。
【0111】
非ゼロスランプコンクリート316は、好ましくは5~250mmのスランプ範囲を有する。非ゼロスランプコンクリート316は、好ましくは少なくとも5分間加工可能である。混合310は、非ゼロスランプコンクリート316が分離又はブリーディングの兆候がないことを保証すべきである。好ましい実施形態における非ゼロスランプコンクリート316の圧縮係数試験は、0.7~1.0の範囲である。鋳造前の非ゼロスランプコンクリート316の温度は、好ましくは0℃~30℃である。好ましい実施形態における生の非ゼロスランプコンクリート316は、任意の従来の方法(例示的な標準試験は、ASTM C231 for Air Content of Freshly Mixed Concrete by the Pressure Method(圧力法による生コンクリートの空気量))で測定される空隙含有量がコンクリートの体積の15%を超えてはならない。圧縮係数試験は、BS 1881-103:1993及びBS EN 12350-4:2009(BS EN 12350-4:2009、Testing fresh concrete Part 4:Degree of compatibility)に記載されている。これで、適切に混合した非ゼロスランプコンクリート316を鋳造320に移す準備が整った。
【0112】
(ii)強化
好ましい実施形態では、非ゼロスランプコンクリート316を鋳造する前に、鋳型を調製し、必要に応じて、炭素鋼、ステンレス鋼及び/又はFRP強化鉄筋などの強化材を鋳型内に配置する。鉄筋の直径は、5mm~60mmの範囲で変化し、耐力強度は100MPa~2100MPaの範囲であり得る。強化材は、規則及び規格に従って設計される。
【0113】
(iii)鋳造320、配置
鋳型の側壁は、複数の開口部を含む。方法301の本実施形態に対する鋳型は、興味深いことに、気密でもなく蓋もない。鋳型は、鋼、鉄、アルミニウム、プラスチック又はFRPで作られる。また、既存のコンクリート鋳型は、壁に穴を開けて調整することができる。複数の開口部は、好ましくは直径1~500mmであり、又は開口部は少なくとも1mm
2の表面積を有する任意の形状を有してもよい。鋳型側壁の開口部により、鋳型が養生チャンバ又は他の筐体内にある間、空気(及びその後のCO
2)が鋳型に入ることができる。
図8に示すように、任意の方向における開口部の各々の間の空間は、好ましくは1000mm未満である。任意に、開口部を栓で一時的に埋めて、非ゼロスランプコンクリート316の移送時に生の非ゼロスランプコンクリート316が鋳型から漏出するのを防止することができ、ゴム栓が一般的な選択肢である。栓を使用する場合、事前調整ステップ340及び炭酸化養生ステップ350それぞれに対してガスの通過を可能にする前に、栓を取り外すべきである。
【0114】
生の調製済み非ゼロスランプコンクリート316は、適切な手段によって移され、従来技術における任意の既知の方法で調製された鋳型内で鋳造される。
【0115】
鋳型は、脱型プロセス330を容易にするために、鋳造前に予め潤滑されるべきである。湿式鋳造コンクリート又はスラグ系中間体326は、内部又は外部の振動器によって、120秒以下で鋳型内に固められる。湿式鋳造コンクリート又はスラグ系中間体126は、鋳型内でプレス又は圧縮する必要はない。すなわち、好ましい実施形態における本方法は、プレス又は圧縮を含まない。スラグ系中間体326の含水量を減少させなければならない。
【0116】
(iv)事前調整340
事前調整340のプロセスステップは、(現在はスラグ系中間体326の)含水量342を減少させる。事前調整は、2つの方法のうち少なくとも1つで実施し得る。第1の方法では、空気流又は加圧空気341を養生チャンバ又は筐体の内側又は外側に導入する。さらなる実施形態の方法では、加熱要素/ワイヤ343を使用する。これらのワイヤは、コンクリート320を鋳造する前に、鋳型壁の上又は近くに配置される(
図7)。任意に、ワイヤを鋳型の高さに沿って300mm間隔で鉄骨フレーム上に配置する。加熱ワイヤ及びフレームは、コンクリート鋳造時及びコンクリート養生後にコンクリート内に残される。次いで、フレーム及びワイヤに電流を流すことができる。また、加熱要素/ワイヤは、鋳型の外面を覆うように設置される床暖房マット又はドラムヒーターであってもよい。これらの要素は鋳型壁を加熱し、最終的に蒸発プロセスを増加させて、コンクリートの湿分を減少させる。2つの方法はさらに、空気341の乾燥及び加熱343の両方を含むように組み合わされ得る。
【0117】
事前調整340ステップは、初期の水対結合材含有量が最大90%、好ましくは80%、好ましくは70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%、好ましくは10%又は好ましくは2%減少するまで継続する。
【0118】
コンクリートにおける上記の事前調整方法のいずれかによって生成されるコンクリート体積に関して定められる多孔度の増加は、コンクリート体積の70%、好ましくは60%、好ましくは50%、好ましくは40%、好ましくは30%、好ましくは20%、好ましくは10%又は好ましくは5%又は好ましくは1%である。いずれの方法の後も、複数の開口部を注意/検査することにより、空気がスラグ系中間体326に接触することが保証される。
【0119】
事前調整340プロセスの終了時に、コンクリート中の残留水は初期含水量の5質量%を下回ってはならず、非ゼロスランプコンクリート316の第1の水対結合材比重量比よりも小さい第2の水対結合材重量比を有する調整済みスラグ系中間体346が形成される。
【0120】
(v)CO2活性化/養生350
調整済みスラグ系中間体346は、養生チャンバ又は適切なガス筐体からの二酸化炭素、CO2又はCO2を含有するガスと接触する。二酸化炭素351ガスを導入して、調整済みスラグ系中間体346を、5%、好ましくは10%、好ましくは20%、好ましくは30%、好ましくは40%、好ましくは50%、好ましくは60%、好ましくは70%、好ましくは80%、好ましくは90%又は好ましくは99.5%の純度で、養生室又は筐体の大気から鋳型の側壁の複数の開口部を通して調整済みスラグ系中間体346に、周囲温度で養生する。チャンバ/密閉空間/容器/部屋のゲージ圧は、0.1psi~100psiの範囲で徐々に増加する。図示されていないが、CO2活性化/養生ステップの間にいくらかのガスが鋳型から逃れる場合があることが理解される。
【0121】
本発明のこの実施形態では、鋳型は二酸化炭素で10分間以上加圧され続けるが、CO2養生プロセスは48時間まで継続することができる。鋳型内温度は、発熱加速養生反応-すなわち「CO2活性化プロセス」の結果として少なくとも1℃上昇する。活性化プロセスの終了時に、残っているCO2があれば養生チャンバ又は筐体から排出する。
【0122】
図8は、
図7において本明細書に記載の一実施形態の方法301による、非密封鋳型の正面断面図における鋳造320、事前調整340及びCO
2養生350ステップを示す。
【0123】
(vi)脱型330
脱型は、CO2活性化プロセスのすぐ後に又は直後に行われる。
【0124】
脱型330により、湿式鋳造スラグ系コンクリート356が製造される。
【0125】
本明細書に記載の方法による1立方メートルのコンクリートの製造に対するいくつかのパラメータを以下に示す。
【0126】
鉄鋼スラグ含有量=600kg、第1の水/結合材比=0.35、スランプ=5mm、事前調整方法=空気流
【0127】
鉄鋼スラグ含有量=500kg、石灰石粉末=50kg、第1の水/結合材比=0.55、スランプ=200mm、事前調整方法=空気流
【0128】
ステンレススラグ含有量=350kg、第1の水/結合材比=0.45、ポリマー粉末=50kg、水硬性セメント=30kg、飛散灰=200kg、スランプ=100mm、事前調整方法=加圧空気
【0129】
鉄鋼スラグ含有量=400kg、非水硬性セメント=100kg、第1の水/結合材比=0.4、事前調整方法=ヒーター
【0130】
ステンレススラグ含有量=480kg、第1の水/結合材比=0.45、シリカヒューム=20kg、防錆剤=5kg、事前調整方法=加熱要素ワイヤ
【0131】
鉄鋼スラグ含有量=650kg、第1の水/結合材比=0.45、空気混入混和剤=2リットル、スランプ=120mm、事前調整方法=加熱要素ワイヤ
【0132】
鉄鋼スラグ含有量=700kg、第1の水/結合材比=0.45、鋼繊維=80kg、粘度調整混和剤=1リットル、スランプ=50mm、事前調整方法=空気流
【0133】
鉄鋼スラグ含有量=1200kg、第1の水/結合材比=0.30、超可塑剤=15リットル、撥水剤=5リットル、スランプ=150mm、事前調整方法=加圧空気
【0134】
上記の説明は単に例示的なものであり、当業者であれば、開示された発明から逸脱することなく説明された実施形態に変更を加えることができることを理解するだろう。本発明の範囲内に入るさらに他の修正は、本開示の検討に照らして当業者には明らかであり、そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。
【国際調査報告】