(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(54)【発明の名称】バイオマーカーとしてのインターロイキン4誘導遺伝子1(IL4I1)及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6851 20180101AFI20220615BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220615BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20220615BHJP
【FI】
C12Q1/6851 Z ZNA
G01N33/68
C12N15/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560638
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2020060259
(87)【国際公開番号】W WO2020208190
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504385513
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュングスツェントルム シュティフトゥング デス エッフェントリッヒェンレヒツ
(71)【出願人】
【識別番号】521445465
【氏名又は名称】ヘルムホルツ-ツェントルム フュル ウムベルトフォルシュング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング - ウーエフツェット
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアーネ アー.オーピッツ
(72)【発明者】
【氏名】アーマド サディク
(72)【発明者】
【氏名】ルイス フェリペ ソマルリバス パテルソン
(72)【発明者】
【氏名】サムヤ エル.モハパトラ
(72)【発明者】
【氏名】ミルヤ タマラ プレンツェル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ゼッカー
(72)【発明者】
【氏名】ザスキア トルンプ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045CA26
2G045CB01
2G045DA13
2G045DA14
2G045DA36
2G045FB02
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA13
4B063QQ08
4B063QQ20
4B063QR08
4B063QR42
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、新たに同定されたAHR活性化酵素、及び例えば、IL4I1調節介入による治療のための患者の選択及び治療反応のモニタリングための、診断及び治療におけるマーカーとしてのその使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞又は対象に由来する生物学的サンプル中のインターロイキン4誘発遺伝子1(IL4I1)の生物学的状態の変化を検出することを含む、細胞又は対象におけるアリール炭化水素受容体(AHR)の調節の検出方法であって、前記サンプル中のIL4I1の前記生物学的状態の変化が、対象サンプルに比較して、前記細胞又は対象におけるAHRのIL4I1関連調節を示し、ここで好ましくは、前記調節がAHRの活性化又は抑制から選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記調節が、前記細胞又は対象におけるAHR関連の生物学的又は病理学的状態を示し、好ましくは、前記生理学的又は病理学的状態が、中毒、癌、自己免疫疾患、変性、炎症、感染症、代謝性疾患及び状態、血管新生、薬物代謝、造血、脂質代謝、細胞運動性、免疫調節、ストレス状態、例えば、生物学的、機械的及び環境的ストレスから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出された生物学的状態が、突然変異、核酸メチル化、コピー数、発現、タンパク質の量、タンパク質修飾、細胞局在、代謝物、特に、例えばトリプトファン分解産物などのIL4I1によって産生される代謝物、及びIL4I1の生物活性から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的サンプルが、体液、哺乳類、例えばヒト、細胞、組織、全血、細胞系、細胞上清液、初代細胞、IPSC、ハイブリドーマ、組換え細胞、幹細胞、及び癌細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞、グリア細胞、上皮細胞、皮膚細胞、頭皮細胞、肺細胞、粘膜細胞、筋肉細胞、 骨格筋細胞、線条筋細胞、平滑筋細胞、心臓細胞、分泌細胞、脂肪細胞、血液細胞、赤血球、好塩基球、好酸球、単球、リンパ球、T細胞、B細胞、好中球、NK細胞、調節性T- 細胞、樹状細胞、Th17細胞、Th1細胞、Th2細胞、骨髄細胞、マクロファージ、単球由来間質細胞、骨髄細胞、脾臓細胞、胸腺細胞、膵臓細胞、卵細胞、精子、腎臓細胞、線維芽細胞、腸細胞、 女性又は男性の生殖管の細胞、前立腺細胞、膀胱細胞、眼細胞、角膜細胞、網膜細胞、感覚細胞、ケラチノサイト、肝細胞、脳細胞、腎臓細胞、及び結腸細胞、並びに前記細胞又は組織の形質転換された対応物を含む適切なサンプルから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、哺乳類対象、例えばヒト対象、例えばAHR関連の生理学的又は病理学的状態に苦しんでいるヒト患者から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象サンプルが、例えば健康な対象又は対象グループからのサンプルから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの候補体モジュレーター化合物と、生物学的サンプルとを接触し、そしてIL4I1又はIL4I1をコードする遺伝子の生物学的調節を検出することを含む、IL4I1の生物学的状態の少なくとも1つのモジュレーターについてスクリーニングするための方法であって、ここで前記調節又は活性が前記生物学的状態のモジュレーターを同定し、前記方法が好ましくは、さらに、生物学的サンプル中のIL4I1の生物学的状態の変化を検出することを含み、ここで前記少なくとも1つのモジュレーターの非存在下と比較して前記少なくとも1つのモジュレーターの存在下での前記IL4I1の生物学的状態の変化が、モジュレーターを同定することを特徴とする方法。
【請求項8】
前記検出された生物学的状態が、突然変異、核酸メチル化、コピー数、発現、タンパク質の量、タンパク質修飾、細胞局在、代謝物、特に、例えばトリプトファン分解産物などのIL4I1によって産生される代謝物、及びIL4I1の生物活性から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記モジュレーターが、IL4I1の前記生物学的状態の阻害剤又は誘導剤から選択される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
AHRの調節を検出することをさらに含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が、タンパク性ドメイン、小分子、ペプチド、抗体、例えばIL4I1に結合するモノクローナル抗体、環境物質、プロバイオティック、毒素、エアロゾル、薬、栄養素、生薬組成物、植物抽出物、揮発性化合物、ホメオパシー物質、香、医薬品 、ワクチン、生物、例えば動物、植物、真菌、細菌、古生物に由来する化合物又は化合物混合物、化合物、食品又は化粧品産業で使用される化合物、及び前記化合物のライブラリーから選択される、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
ある量の少なくとも1つの化合物と接触された生物学的サンプルに対して、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法を実施することを含む、前記少なくとも1つの化合物に応答してAHRの生物学的状態の調節をモニターするための方法であって、前記生物学的サンプルが前記量の前記化合物と接触されなかった対照サンプルと比較され、ここで好ましくは、前記生物学的サンプルが、治療の過程を通して得られ、そして/又は本明細書に記載されるように、適切な対照サンプル又は対象又は患者のグループに由来するサンプルと比較されることを特徴とする方法。
【請求項13】
IL4I1調節のサブグループへの前記サンプルの監視なしのクラスターリング又は監視ありの分類のために、及び任意には、AHR調節の異なるサブグループへの前記サンプルの監視なしのクラスターリング又は監視ありの分類のために、前記比較を用い、そして任意には、さらに、対象の特定グループ又は患者グループへの前記対象の分類を含む工程を、さらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法を、1つ又は別個の容器内で、任意には、補助剤及び/又は前記方法を実行するための指示と共に、実行するための材料を含む、診断キット。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法の請求項14に記載の診断キットへの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たに同定されたAHR活性化酵素、及び例えば、IL4I1調節介入による治療のための患者の選択及び治療反応のモニタリングための、診断及び治療におけるマーカーとしてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
IL4I1は、過酸化水素及びアンモニアを生成しながら、L-アミノ酸のアルファ-ケト酸への酸化的脱アミノ化を触媒するL-アミノ酸オキシダーゼである(1)。L4I1は、B細胞で前初期IL4誘導性遺伝子として最初に発見され(2、3)、後にマクロファージや樹状細胞でも同定された(4)。さらに、IL4I1は、腫瘍細胞自体又は腫瘍関連マクロファージのいずれかでヒトの悪性腫瘍に発現する(5)。IL4I1はT細胞の増殖を阻害し(4、6)、これは主にH2O2の産生に起因する。さらに、IL4I1はTh17細胞(7)及び制御性T細胞(8)の分化に関与しており、AHRの活性化によって調節されることが知られている(9-11)。
【0003】
現在、IL4I1関連状態の治療上の意味についてはほとんど知られていない。これは、それを必要とする対象の中枢神経系(CNS)組織におけるミエリン形成を促進する方法を開示する唯一の国際公開WO2016/040488号の存在によって例示することができ、この方法は、対象に治療的に有効量のIL4I1タンパク質を投与することを含む。
【0004】
アリール炭化水素受容体(AHR)は、胚発生、脈管形成、代謝、免疫、癌などの多様なプロセスの調節に関与するリガンド活性化転写因子である。前臨床研究では、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)及び/又はトリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO2)を介して生成されたトリプトファン代謝産物によるAHR活性化は、腫瘍細胞の運動性、アノイキ耐性、及びクローン原性生存を増強することによって、及び抗腫瘍免疫応答を抑制することによって、腫瘍の進行を促進した(12)。AHR標的遺伝子の発現は状況に固有であり(13)、そしてさまざまな細胞/組織にわたって、多様なAHRリガンドに応答してAHR活性化を効率的に検出するAHR活性化の新しいバイオマーカーの導入が必要される。さらに、IL4I1調節及びAHR調節の機能的意味合は、多くの共通の経路及びクロストークを共有しており、IL4I1をAHR調節の状態の潜在的なバイオマーカーとして考慮することの重要性を伴う。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
その第1の側面によれば、本発明は、細胞又は対象に由来する生物学的サンプルにおけるIL4I1の生物学的状態の変化を検出することを含む、細胞又は対象におけるAHRの調節を検出するための方法に関し、前記細胞又はサンプルにおけるIL4I1の前記生物学的状態の変化は、対照細胞又はサンプル、例えば、 健康な対象、患者又は患者グループに由来するサンプルと比較した場合、前記細胞又は対象におけるAHRのIL4I1関連の調節を示す。
【0006】
その第2の側面によれば、本発明は、本発明は、IL4I1又はIL4I1を発現する細胞を含むサンプルを少なくとも1つの候補体モジュレーター化合物と接触させ、そして前記IL4I1の調節を検出することを含む、IL4I1の発現及び/又は生物学的活性の少なくとも1つの潜在的モジュレーターをスクリーニングするためのインビトロ方法を提供し、ここで 前記調節は、IL4I1の発現及び/又は生物学的活性の潜在的なモジュレーターを同定する。
【0007】
好ましくは、この方法は、少なくとも1つの候補体モジュレーター化合物を生物学的サンプルと接触させ、そして生物学的サンプル中のIL4I1の前記生物学的状態の変化を検出することを含む、IL4I1の生物学的状態の少なくとも1つのモジュレーターをスクリーニングするための方法であり、 ここで前記少なくとも1つのモジュレーターの非存在下と比較して、前記少なくとも1つのモジュレーターの存在下での前記IL4I1の生物学的状態の変化が、モジュレーターを同定する。
【0008】
その第3の側面によれば、本発明は、少なくとも1つの化合物と接触された生物学的サンプルに対して本発明による方法を実施することを含む、少なくとも1つの化合物に応答するIL4I1の生物学的状態の調節をモニタリングするための方法に関すし、ここで前記生物学的サンプルは、前記化合物と接触されなかった対照サンプルと比較される。
【0009】
この方法のサブ側面によれば、本発明は、少なくとも1つの化合物を細胞に提供し、そして前記少なくとも1つの化合物に応答して、前記細胞におけるIL4I1の発現及び/又は生物学的機能などの生物学的状態の変化を検出することを含む、細胞内のAHRの生物学的状態をモニタリングするための方法に関し、ここで前記少なくとも1つの化合物の非存在下と比較された、前記少なくとも1つの化合物の存在下での発現又は生物学的機能などの生物学的状態の変化が、細胞内のAHRの前記生物学的状態に対する前記少なくとも1つの化合物の効果を示す。
【0010】
次に、本発明の別の好ましい側面によれば、本発明は、本発明を実施し、そして本発明による方法の結果に少なくとも部分的に基づく適切な治療を患者に提供し、例えば本明細書に記載されている通りに、同定された化合物を提供し、又は前記方法を含む治療をモニタリングすることを含む、前記治療を必要とする患者におけるAHR関連の疾患又は状態を治療及び/又は予防するための方法に関する。
【0011】
本発明の別の重要な側面は、本発明の方法を、1つ又は別個の容器内で、任意には、補助剤及び/又は前記方法を実行するための指示と共に、実行するための材料を含む、診断キットに関する。次に、本発明の別の重要な側面は、本発明による方法における前記診断キットの使用に関する。
【0012】
最後に、本発明は、本発明によるモジュレーターのスクリーニング又は本発明によるモニタリングのためのバイオマーカーIL4I1の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、IL4I1が種々の腫瘍実体で発現していることを示している。a、30の非罹患組織を含む遺伝子型-組織発現データセット(GTEX)におけるIDO1、IDO2、TDO2、及びIL4I1発現の100万当たりのlog2転写産物の中央値(log2 TPM)のヒートマップ表現。空の細胞は、発現が検出されなかったことを示す。ドットサイズ及び陰影の色は発現レベルに対応し、薄い灰色は発現レベルが低いことを示し、そして濃い灰色は発現レベルが高いことを示す。b、32個のTCGA腫瘍におけるIDO1、IDO2、TDO2、及びIL4I1発現の100万当たりのlog2転写産物の中央値(log2 TPM)のヒートマップ表現。
【0014】
【
図2-1】
図2は、IL4I1がAHRを活性化することを示している。a、120時間培養された、IL4I1発現のないshCtrl U-87MG細胞と比較しての、IL4I1を発現するshCtrl及びshAHR U-87MG細胞における選択されたAHR標的遺伝子のmRNA発現(破線)(EGR1、IL1B、MMP1についてはn = 3;他のすべての遺伝子についてはn = 4)。 b、120時間培養された、Ctrl及びIL4I1発現U-251MG細胞の上清液で4時間処理されたLN-229細胞におけるAHRタンパク質発現の核対細胞質比の免疫ブロット(左)及び定量化(右)(n = 3)。c、72時間培養された、siCtrlで処理された細胞と比較しての、IL4I1を標的とするsiRNAで処理されたCAS-1細胞におけるTIPARP mRNA発現(n = 4)。
【0015】
【
図2-2】d、120時間培養された、Ctrl及びIL4I1発現U-87MG細胞の上清液中のPhe、Tyr及びTrpの濃度(n = 3)。e、Phe、Tyr又はTrpの存在下でIL4I1を発現するU-87MG細胞の溶解物におけるIL4I1活性(n = 3)。f、Phe及びTrpのIL4I1のKm値(n = 5)。
【0016】
【
図2-3】g、40μMのPP(左)、HPP(中央)、又はI3P(右)にビークルと比較して24時間曝露されたU87MG細胞のマイクロアレイデータにおけるAHR標的遺伝子の異なる調節を示すVolcanoプロット(n = 5)。濃い灰色のデータポイントは、選択された規制対象のAHR標的遺伝子を表す。 薄い灰色のデータポイントは、他の全ての遺伝子を表す。垂直の点線は+/- 0.58のlog2FCを示し、そして水平の点線は0.01のp値カットオフにある。
【0017】
【
図2-4】h、PP、HPP、I3P又はビークル(破線)で24時間処理されたU-87MGでのTIPARP mRNA発現(n = 3)。i、25μMのPP、HPP、I3P又はビークルで4時間処理されたGFP-Ahr発現taoBpRc1c細胞の代表的な画像。 n値は独立した実験を表す。データは平均±SEMとして表され、そして両側の対応のあるスチューデントのt検定(c、d、e)、両側の対応のないスチューデントのt検定(f、h)、Tukeyの多重比較検定を使用した一元配置分散分析(g)又はダネットの多重比較検定(j)を使用した反復測定ANOVAによって分析されました。
* P <0.05、
** P <0.01、
*** P <0.001、
**** P <0.0001。 n.s.、有意ではない。 * IL4I1-shCtrlと比較されたshCtrl; #IL4I1-shAHRと比較されたIL4I1-shCtrl。
【0018】
【
図3-1】
図3は、IL4I1が芳香族アミノ酸を分解してAHRリガンドを生成することを示している。a、U87-ctrl及びU87-IL4I1細胞の上清液中のフェニルピルビン酸(PP)、フェニル酢酸(PAA)、ヒドロキシフェニルピルビン酸(HPP)、ヒドロキシベンズアルデヒド(HBA)及びヒドロキシフェニル酢酸(HPAA)(120時間)。
【0019】
【
図3-2】b、U251-ctrl及びU251-IL4I1細胞の上清液中のHBA、HPAA、HPP、PAA及びPP(120時間)。
【0020】
【
図3-3】c、U87-ctrl及びU87-IL4I1細胞の上清液中のキヌレニン(Kyn)、キヌレン酸(KynA)、インドール-3-ピルビン酸(I3P)、インドール酢酸(IAA)、インドール-3-カルボキサルデヒド(I3CA)及びインドール-3-乳酸(ILA)(120時間)。
【0021】
【
図3-4】d、U251-ctrl及びU251-IL4I1細胞の上清液中のKynA、Kyn、I3P、IAA、I3CA及びILA(120時間)。
*P≦0.05、
**P≦0.01、
***P≦0.001、
****P≦0.0001。 1つのサンプルt検定。
【0022】
【
図4-1】
図4は、IL4I1由来のTrp代謝物及びそれらのAHR活性への影響を示す。a、I3P又はビークルで24時間処理されたU-87MG細胞の上清液中のKyn、KynA、IAA、及びI3CAの相対存在量(n = 4)。b、KynA標準をオーバーレイされたHPLCで測定されたKynAを示す代表的なクロマトグラム(黒、最高ピーク、カラム上に20 pmol)。黒、最低ピーク:リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の3.33 mg / mLI3Pを24時間インキュベートした。 灰色のピーク:1 mMのH
2O
2の存在下でPBS中で24時間インキュベートされた3.33mg/mLの I3P(n = 2)。
【0023】
【
図4-2】c-e、IAA(c)、ILA(d)、I3CA(e)又はビークルで24時間処理されたU-87MG細胞におけるTIPARP mRNA発現(n = 3)。f、50μMのKynA又はビークルで24時間処理されたshCtrl及びshAHRU-87MG細胞におけるTIPARP mRNA発現(n = 3)。g、ビークル又は50μMのKynAのいずれかで1時間処理されたGFP-Ahr発現taoBpRc1c細胞の代表的な画像。 n値は独立した実験を表す。データは平均±S.E.Mとして表され、そして両側の対応のあるスチューデントt検定(a、b、h)又はダネットの多重比較検定(c、e-g)を使用した反復測定ANOVAによって分析された。
* P <0.05、
** P <0.01、
*** P <0.001、
**** P <0.0001。 n.s.、有意ではない。
【0024】
【
図5】
図5は、IL4I1の発現がAHRによって調節されていることを示す 。siCtrlで処理された細胞と比較しての、AHRを標的とするsiRNAで処理されたCAS-1細胞におけるIL4I1 mRNA発現。
【0025】
【
図6】
図6は、本開示の側面によるシステムのブロック図を示している。 CPU:中央処理装置(「プロセッサー」)。
【0026】
【
図7】
図7は、例示的な実施形態のフローチャートを示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一般的に好ましいのは、バイオマーカーIL4I1のヒト変異体、又は他の霊長目又は哺乳類からのもののような密接に関連する種である。
【0028】
他の側面及び利点は、以下の説明及び非限定的な例を読むことから容易に導き出すことができる。
【0029】
本発明者らは、AHR活性の調節におけるトリプトファン分解酵素の役割を調査している間、ヒトの癌で発現され(
図1)、そしてAHR活性化に関与していないトリプトファン分解酵素であるIL4I1の発現がAHR標的遺伝子の発現と有意に相関することを発見した。遺伝子発現解析(
図2a)及びAHR核転座(
図2b)により、キヌレン酸を含むトリプトファン代謝物の生成を介してAHRを活性化するIL4I1が確立された(
図2g-i、
図3-4)。
【0030】
上記のように、本発明の文脈で実施された実験において、新しいバイオマーカーIL4I1が、AHRの上流の新しい成分として同定された。これは、少なくとも1つの候補体モジュレーター化合物を生物学的サンプルと接触させ、そして生物学的サンプル中のIL4I1の前記生物学的状態の変化を検出することを含む、IL4I1の生物学的状態の少なくとも1つのモジュレーターをスクリーニングするためのインビトロ方法を可能にし、ここで前記少なくとも1つのモジュレーターの非存在下と比較して、前記少なくとも1つのモジュレーターの存在下での前記IL4I1の生物学的状態の変化が、モジュレーターを同定する。モジュレーターは、IL4I1の前記生物学的状態の活性化因子(誘導因子)又は阻害剤であり得る。
【0031】
1つの代替において、IL4I1の発現及び/又は生物学的活性の潜在的なモジュレーターをスクリーニングするための方法は、IL4I1又はIL4I1を発現する細胞を含むサンプルを少なくとも1つの候補体モジュレーター化合物と接触させ、そして前記モジュレーターの前記IL4I1への結合を検出することを含み、 ここで、前記結合が、IL4I1の発現及び/又は生物学的活性の潜在的なモジュレーターを同定する。この方法は、好ましくは、前記細胞におけるIL4I1の発現及び/又は生物学的活性、又は前記サンプルにおけるIL4I1の生物学的活性を検出する工程をさらに含み、ここで、前記少なくとも1つの化合物の不在と比較して、前記少なくとも1つの存在下でのIL4I1の発現又は生物学的活性の変化がモジュレーターを同定する。
【0032】
前記モジュレーターが、前記発現又は生物学的活性の阻害剤又は誘導物質から選択される、本発明のそのような方法が好ましい。
【0033】
次に、本発明の別の重要な側面は、細胞に由来する生物学的サンプルにおけるIL4I1の生物学的状態の変化を検出することを含む、細胞及び/又は対象におけるAHR関連の疾患又は状態を診断するための方法に関し、ここで前記サンプル中のIL4I1の前記生物学的状態の変化は、対照サンプルと比較した場合、前記細胞及び/又は対象におけるAHR関連の生理学的又は病理学的状態を示す。
【0034】
1つの側面によれば、前記方法は、細胞/組織/生体液中のIL4I1の発現又は生物学的機能を検出することを含み、ここで、健康又は他の適切な対照と比較した場合、前記区画における発現又は生物学的機能、特に発現又は活性化の変化が、AHR関連の疾患又は状態を示す。そのような変化は、健康な細胞又は健康なヒト又は個人のグループに由来するサンプルの値などの適切な対照と比較した場合、又はハウスキーピング遺伝子のような内部標準と比較した場合、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%以上の 発現または生物学的機能のアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションでありえる。本発明の文脈において、「約」という用語は、他に示されない限り、所与の値の+/- 10%を意味する。
【0035】
本発明の文脈において、IL4I1の生物学的状態の変化を検出することによって検出されるような細胞又は対象におけるAHRの前記調節は、前記細胞又は対象におけるAHR関連の生理学的又は病理学的状態を示すことが見出された。好ましくは、層別化及び/又は診断されるべきAHR関連の生理学的又は病理学的状態は、中毒、癌、自己免疫疾患、変性、炎症、感染症、代謝性疾患及び状態、血管新生、薬物代謝、造血、脂質代謝、細胞運動性、免疫調節、及びストレス状態、例えば、生物学的、機械的及び環境的ストレスから選択される 。
【0036】
本発明の方法が好ましく、ここで検出される前記生物学的状態は、突然変異、核酸メチル化、コピー数、発現、タンパク質の量、タンパク質修飾、細胞局在、代謝物、特に、例えばトリプトファン分解産物などのIL4I1によって産生される代謝物、キヌレン酸を含むトリプトファン代謝物、及びIL4I1の生物活性から選択される。
【0037】
好ましい実施形態によれば、本発明による方法において、IL4I1の前記生物学的状態は、以下の表1による少なくとも1つの代謝産物バイオマーカーの存在量又は生物学的活性の変化を介して間接的に検出され、ここで、対照サンプルと比較した場合の前記少なくとも1つのバイオマーカーの前記発現又は生物学的活性の変化は、前記サンプル中のIL4I1の生物学的状態の変化を示す。
【0038】
本発明の方法においては、前記生物学的サンプルは、体液、哺乳類、例えばヒト、細胞、組織、全血、細胞系、細胞上清液、初代細胞、IPSC、ハイブリドーマ、組換え細胞、幹細胞、及び癌細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞、グリア細胞、上皮細胞、皮膚細胞、頭皮細胞、肺細胞、粘膜細胞、筋肉細胞、 骨格筋細胞、線条筋細胞、平滑筋細胞、心臓細胞、分泌細胞、脂肪細胞、血液細胞、赤血球、好塩基球、好酸球、単球、リンパ球、T細胞、B細胞、好中球、NK細胞、調節性T- 細胞、樹状細胞、Th17細胞、Th1細胞、Th2細胞、骨髄細胞、マクロファージ、単球由来間質細胞、骨髄細胞、脾臓細胞、胸腺細胞、膵臓細胞、卵細胞、精子、腎臓細胞、線維芽細胞、腸細胞、 女性又は男性の生殖管の細胞、前立腺細胞、膀胱細胞、眼細胞、角膜細胞、網膜細胞、感覚細胞、ケラチノサイト、肝細胞、脳細胞、腎臓細胞、及び結腸細胞、並びに前記細胞又は組織の形質転換された対応物を含む適切なサンプルから選択される。
【0039】
好ましいのは、本発明による方法であり、ここで前記対象は、哺乳動物対象、特にヒト対象、特にAHR関連の生理学的又は病理学的状態に罹患しているヒト患者から選択される。 前記対照サンプルは、上記のサンプルから選択することができる。
【0040】
次に、本発明の別の側面は、ある量の少なくとも1つの化合物と接触された生物学的サンプルに対して本発明による方法を実施することを含む、少なくとも1つの化合物に応答してIL4I1の生物学的状態の調節をモニターリングするための方法に関し、ここで前記生物学的サンプルは、前記量の前記化合物と接触されなかった対照サンプルと比較される。
【0041】
細胞に少なくとも1つの化合物を提供し、そして前記少なくとも1つの化合物に応答した前記細胞におけるIL4I1の発現又は生物学的機能の変化を検出することを含む、細胞内のAHR関連疾患又は状態をモニタリングするためのそのような方法が好ましく、 ここで、前記少なくとも1つの化合物の非存在下と比較して、前記少なくとも1つの化合物の存在下での発現又は生物学的機能の変化は、前記IL4I1関連疾患又は状態に対する前記少なくとも1つの化合物の効果を示す。
【0042】
本発明の文脈において、AHR関連疾患又は状態は、中毒、癌、自己免疫障害、変性、炎症、感染、代謝性疾患および状態、血管新生、薬物代謝、造血、脂質代謝、細胞の運動性、老化、免疫調節、ストレス状態、例えば、生物学的、機械的及び環境的ストレス、及びAHR調節のうちの少なくとも1つから選択され得る。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、前記状態は癌である。いくつかの実施形態によれば、前記癌は、以下から選択される:副腎皮質癌(ACC)、膀胱尿路癌(BLCA)、乳房浸潤癌(BRCA)、頸部扁平上皮癌及び子宮頸部腺癌(CESC)、胆管癌(CHOL)、結腸腺癌(COAD)、リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBC)、食道癌(ESCA)、多形性神経膠芽細胞腫(GBM)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、褐色細胞腫(KICH)、腎臓腎明細胞癌(KIRC)、腎臓腎乳頭細胞癌(KIRP)、脳低悪性度神経膠腫(LGG)、肝肝細胞癌(LIHC)、肺腺癌(LUAD)、肺扁平上皮癌( LUSC)、中皮腫(MESO)、卵巣漿液性嚢胞腺癌(OV)、膵臓腺癌(PAAD)、褐色細胞腫及び傍神経節腫(PCPG)、前立腺腺癌(PRAD)、直腸腺癌(READ)、肉腫(SARC)、皮膚皮膚黒色腫(SKCM)、胃腺癌(STAD)、精巣胚細胞腫瘍(TGCT)、甲状腺癌(THCA)、胸腺腫(THYM)、子宮 コーパス子宮内膜癌(UCEC)、子宮癌肉腫(UCS)、及びブドウ膜黒色腫(UVM)。
【0044】
本発明による方法は、1つの側面によれば、モジュレーターを探し、そして同定されたバイオマーカーIL4I1に対するその効果を解明するために提供される。同定されるそのような化合物の例は、小分子、ペプチド、及び前記化合物のライブラリーから選択することができる。同定された(スクリーニングされた)前記化合物は、低分子化学分子、ペプチド、抗体、及び短い干渉RNAから選択される。好ましくは、前記化合物は、以下から選択される:タンパク質性ドメイン、小分子、ペプチド、環境物質、プロバイオティック、毒素、エアロゾル、薬物、栄養素、生薬組成物、植物抽出物、揮発性化合物、ホメオパシー物質、香料、医薬品、 ワクチン、生物、例えば動物、植物、真菌、細菌、古生物に由来する化合物又は化合物混合物、化合物、食品又は化粧品産業で使用される化合物、及び前記化合物のライブラリー。
【0045】
本明細書に開示されるバイオマーカーを使用する同定およびスクリーニングは、当技術分野で知られているそれぞれの方法を使用して、好ましくはバイオマーカーの組換え産生タンパク質及び/又は組換え細胞モデルを使用して行うことができる。このために、バイオマーカーは、例えば、化学染料又は蛍光マーカーを使用した標識することができる。さらに、酵素は、任意には、スクリーニングされるバイオマーカーとの融合の形で使用することができる。 好ましくは、前記方法は自動化にも従順であり、そして前記スクリーニングは、好ましくは、自動化された及び/又は高スループットのフォーマットで評価される。
【0046】
次に、別の側面は、本発明によるモジュレーターのスクリーニング、又は本発明によるモニタリング、又は本発明による生物学的安全性の試験、又は本発明による診断のためのIL4I1の少なくとも1つのバイオマーカーの使用に関する。
【0047】
次に、本発明の別の好ましい側面によれば、本発明は、本発明による方法を実施すし、そして前記患者に適切な治療を提供することを含む、前記治療を必要とする患者の細胞におけるAHR関連疾患又は状態を治療及び/又は予防する方法に関し、 ここで、前記治療は、少なくとも部分的に、同定された化合物を提供し、又は治療をモニタリングするなど、本発明による方法の結果に基づかれる。
【0048】
本発明の文脈において、マーカータンパク質IL4I1(又はその機能的に関連する部分)を含む任意の生物学的サンプル、又は例えば、癌患者から得られた、マーカータンパク質IL4I1(またはその機能的に関連する部分)を含む細胞を含むサンプル、又は例えば表1に示されるように、IL4I1の下流で生成された代謝産物の少なくとも1つを含むサンプルは、それが分析及び/又はスクリーニングで使用される少なくとも1つのバイオマーカーを含む(又は含むと推定される)限り、使用され得る。好ましくは、生物学的サンプルは、以下を含むサンプルから選択される:バイオマーカー、細胞を含む体液を含むサンプル、生体液、ヒト細胞、組織、全血、細胞株、細胞上清、初代細胞、IPSC、ハイブリドーマ、組換え細胞、幹細胞、癌細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞、グリア細胞、上皮細胞、皮膚 細胞、頭皮細胞、肺細胞、粘膜細胞、筋肉細胞、骨格筋細胞、線条筋細胞、平滑筋細胞、心臓細胞、分泌細胞、脂肪細胞、血液細胞、赤血球、好塩基球、好酸球、単球、リンパ球、T細胞、B細胞、好中球、NK細胞、調節T細胞、樹状細胞、Th17細胞、 Th1細胞、Th2細胞、骨髄細胞、マクロファージ、単球由来間質細胞、骨髄細胞、脾臓細胞、胸腺細胞、膵臓細胞、卵母細胞、精子、腎臓細胞、線維芽細胞、腸細胞、雌又は雄の生殖管の細胞、 前立腺細胞、膀胱細胞、眼細胞、角膜細胞、網膜細胞、感覚細胞、ケラチノサイト、肝細胞、脳細胞、腎臓細胞、及び結腸細胞、並びに前記細胞又は組織の形質転換された対応物を含む適切なサンプル。サンプルはまた以下からも選択され得る:腫瘍組織(腫瘍又は転移)、生検、全血、末梢血、又はそれらの画分、血清、バフィーコート、リンパ液、尿、骨髄、ヘパリン化全血、及びそれらの凍結サンプル、例えば凍結ヘパリン化全血。本発明による方法で使用される細胞は、組換え型又は非組換え型であり得、そして所望の目的及び状況に応じて、細胞外来タンパク質を発現し得る。必要に応じて、全能性のヒト胚性幹細胞を除外することができる。 サンプルはまた、被験者のグループ、例えば、患者グループからの組み合わされたサンプルであり得る。
【0049】
次に、本発明の別の側面は、医薬製剤を製造する方法に関しここで、同定(スクリーニング)された前記化合物/モデュレーターは、同定(スクリーニング)された前記(少なくとも1つの)化合物を、医薬的に許容される担体と混合することによって医薬調製物にさらに処方される。医薬製剤は、好ましくは、注射剤、錠剤、カプセル、シロップ、エリキシル、軟膏、クリーム、パッチ、インプラント、エアロゾル、スプレー及び坐剤(直腸、膣及び尿道)の形態で存在することができる。 次に、本発明の別の側面は、本発明に従って調製される医薬製剤に関する。
【0050】
本発明の別の側面によれば、次に、本発明は、本発明による方法を1つ又は別個の容器に、任意には補助剤及び/又は前記本発明の方法を実施するための説明書とともに実施するための材料を含む診断キットに関する。
【0051】
「治療」とは、疾患の症状の軽減及び/又は改善を意味する。 効果的な治療は、例えば、腫瘍の質量及び癌細胞の数の縮小を達成する。 治療はまた、例えば、転移及び/又はその形成に影響を与えるなど、癌の広がりを回避(予防)及び低減することができる。治療は、ナイーブ治療(疾患の他の治療が開始される前)、又は最初の治療ラウンド後の治療(例えば、手術後又は再発後)であり得る。 治療はまた、例えば、化学療法、外科手術、及び/又は放射線治療を含む併用治療であり得る。
【0052】
本発明の方法では、一般的に、バイオマーカーは、任意の適切なアッセイを使用して検出及び/又は決定され得る。 検出は通常、定性的情報(「マーカーはい-いいえ」)に向けられるyが、決定にはマーカーの量(例えば、発現レベル及び/又は活性)の分析が含まれる。検出はまた、例えば、個々のマーカーの機能の変化を引き起こす突然変異を特定することにも向けられている。 アッセイの選択は、決定されるマーカーのパラメーター及び/又は検出プロセスに依存する。従って、決定及び/又は検出は、好ましくは、以下から選択された方法を含むことができる:サブトラクティブハイブリダイゼーション、マイクロアレイ分析、DNA配列決定、RNA配列決定、qPCR、ELISA、IP、PLA、BiFC、HPLC、WB、酵素活性試験、蛍光検出、細胞生存率アッセイ、例えばMTTアッセイ、ホスホレセプタチロシンキナーゼアッセイ、ホスホ- MAPKアレイ及び増殖アッセイ、例えば、BrdUアッセイ、プロテオミクス、サイトカインアレイ、及び質量分析。
【0053】
好ましくは、前記方法はまた自動化に適しており、そして前記活性及び/又は発現は、好ましくは、自動化された及び/又は高スループットのフォーマットで評価される。 通常、これにはチップ及びロボットなどのそれぞれの機械の使用が含まれる。
【0054】
本開示の別の側面は、生物学的サンプルのAHR活性化状態を決定するための方法に向けられている。 いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプルは対象から採取される。 いくつかの実施形態によれば、生物学的状態は、インターロイキン4誘導性遺伝子1(IL4I1)について決定/測定される。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、状態のAHR活性化シグネチャを決定するための方法は、以下を含む:(a)対象から生物学的サンプルを取得し; (b)生物学的サンプルにおいて、IL4I1の生物学的状態を決定し;(c)対照細胞において、IL4I1の生物学的状態を決定し;(d)工程(b)の生物学的状態を工程(c)の生物学的状態と比較し;そして(e)比較に基づいて生物学的サンプルのAHR活性化状態を決定する。
【0056】
いくつかの実施形態によれば、工程(b)で検出された生物学的状態はRNA発現である。 いくつかの実施形態によれば、生物学的状態の検出は、生物学的状態のレベルを測定することを含む。いくつかの実施形態によれば、バイオマーカーのRNA発現は、当技術分野で知られている方法、例えばqPCR、RT-qPCR、RNA-Seq、及びインサイチュハイブリダイゼーションによって検出されるが、但しそれらだけには限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態によれば、この方法は、対象をAHRシグナル伝達モジュレーター(「AHRモジュレーター」でもある)で治療することをさらに含む。いくつかの実施形態によれば、AHRシグナル伝達モジュレーターは、毎日、隔日、週2回、週1回、月1回、又は月2回投与される。いくつかの実施形態によれば、AHRシグナル伝達モジュレーターは、併用療法の一部として他の薬剤と一緒に投与される。
【0058】
本明細書で使用される「AHRシグナル伝達モジュレーター」又は「AHRモジュレーター」は、細胞内のAHRシグナル伝達に影響を与えるモジュレーターを指す。いくつかの実施形態によれば、AHRシグナル伝達モジュレーターは、AHRシグナル伝達に直接影響を及ぼす。 いくつかの実施形態によれば、AHRに対する直接の効果は、AHRへの直接の結合を介して媒介される。いくつかの実施形態によれば、直接モジュレーターは、AHRに対して完全又は部分的なアゴニスト及び/又はアンタゴニスト効果を示す。 いくつかの実施形態によれば、AHRモジュレーターは間接モジュレーターである。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、AHRシグナル伝達モジュレーターは小分子化合物である。 本明細書における「小分子化合物」という用語は、一般的に、2000ダルトン、1500ダルトン、1000ダルトン、800ダルトン、又は600ダルトン未満の分子量を有する小さな有機化合物を指す。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、AHRモジュレーターは、以下を含む:2-フェニルピリミジン-4-カルボキサミド化合物、硫黄置換3-オキソ-2,3-ジヒドロピリダジン-4-カルボキサミド化合物、3-オキソ-6-ヘテロアリール-2-フェニル-2,3-ジヒドロピリダジン-4-カルボキサミド 化合物、2-ヘテロアリールピリミジン-4-カルボキサミド化合物、3-オキソ-2,6-ジフェニル-2,3-ジヒドロピリダジン-4-カルボキサミド化合物、2-ヘテロアリール-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-4 -カルボキサミド化合物、PDM 2、1,3-ジクロロ-5-[(1E)-2-(4-メトキシフェニル)エテニル]-ベンゼン、α-ナフトフラボン、6、2 ‘、4’-トリメトキシフラボン、CH223191、テトラヒドロピリドピリミジン 誘導体、StemRegenin-1、CH223191、GNF351、CB7993113 HP163、PX-A590、PX-A548、PX-A275、PX-A758、PX-A446、PX-A24590、PX-A25548、PX-A25275、PX-A25758、PX -A26446、インドールAHR阻害剤、及びオキサゾール含有(OxC)化合物。
【0061】
いくつかの実施形態によれば、直接AHRモジュレーターは、以下を含む:
(a)薬物:例えば、 オメプラゾール、スリンダク、レフルノミド、トラニラスト、ラキニモド、フルタミド、ニモジピン、メキシレチン、4‐ヒドロキシ-タモキシフェン、ベムラフェニブなど、
(b)合成化合物:例えば、10-クロロ-7H-ベンズイミダゾ[2,1-a]ベンツ[デ]イソキノリン-7-オン(10-Cl-BBQ)、ピフィスリン―α臭化水素酸塩、
(c)天然化合物:例えば、キヌレニン、キヌレン酸、シンナバリン酸、ITE、FICZ、インドール-3-カルビノール、インドール-3-ピルビン酸、インドール-アルデヒド、微生物代謝物、食事成分、ケルセチン、レスベラトロール、クルクルミンを含むインドール、又は
(d)有毒化合物:例えば、 TCDD、タバコの煙、3-メチルコラントレン、ベンゾ(a)ピレン、2,3,7,8-テトラクロロジベンゾフラン、燃料排出物、ハロゲン化及び非ハロゲン化芳香族炭化水素、農薬。
【0062】
いくつかの実施形態によれば、間接AHRモジュレーターは、AHRアゴニスト又はアンタゴニストのレベルの調節を通じてAHRの活性化に影響を与える。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、AHRアゴニスト又はアンタゴニストのレベルの調節は、以下の1つ又は複数を介して媒介される:
(a)AHRリガンドを修飾する酵素、例えば3 'メトキシ-4'ニトロフラボン(MNF)、アルファ-ナフトフラボン(α-NF)、フルオランテン(FL)、フェナントレン(Phe)、ピレン(PY)などを含むシトクロムp450酵素阻害剤によるチトクロームp450酵素 の調節、
(b)トリプトファン分解酵素の直接的及び間接的な阻害剤/活性化因子/誘導物質、例えばIDO1経路モジュレーター(インドキシモド、NLG802)、IDO1阻害剤(1-メチル-L-トリプトファン、エパカドスタット、PX-D26116、navoximod、PF-06840003、NLG-919A、BMS-986205、INCB024360A、KHK2455、LY3381916、MK-7162)、IDO2阻害剤(680C91、LM10、4-(4-フルオロピラゾール-1-イル)-1,2-オキサゾール-5-アミン、縮合イミダゾ-インドール、インダゾール)、デュアルIDO/TDO阻害剤(HTI-1090 / SHR9146、DN1406131、RG70099、EPL-1410)、免疫チェックポイント阻害、ワクチン接種、細胞療法、化学療法、免疫刺激剤、放射線療法、UV光への曝露、及び標的療法を含む免疫療法、例えばイマチニブなどを含む、AHRリガンドを産生する酵素の調節。
【0064】
いくつかの実施形態によれば、間接AHRモジュレーターは、17-アリルアミノ-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG)、セラストロールなどのHSP90阻害剤を含む、AHRの発現の調節を通じてAHRの活性化に影響を及ぼす。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、間接AHRモジュレーターは、例えばエストロゲン受容体α(ESR1)を含む、AHRの効果を調節する結合パートナー/補因子に影響を与えることによってAHRの活性化に影響を与える。
【0066】
AHRモジュレーターの例が以下に示されている:US9175266、US2019 / 225683、WO2019101647A1、WO2019101642A1、WO2019101643A1、WO2019101641A1、WO2018146010A1、AU2019280023A1、WO2020039093A1、WO2020021024A1、WO2019206800A1、WO2019185870A1、WO2019115586A1、EP3535259A1、WO2020043880A1 及びEP3464248A1、それらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、AHRシグナル伝達モジュレーターの有効量は約0.01mg / kg~100mg / kgである。いくつかの実施形態によれば、AHRシグナル伝達モジュレーターの有効量は、約0.01mg / kg、0.05mg / kg、0.1mg / kg、0.2mg / kg、0.5mg / kg、1mg / kg、5mg / kg、8mg / kg、 10mg / kg、15mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60m/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、 100mg/kg、150mg / kg、175mg/kg又は200mg/kgのAHRシグナル伝達モジュレーターである。
【0068】
本開示の別の側面は、本発明による方法を実施し、そして、患者に適切な治療を提供することをふくむ、前記治療を必要とする患者の細胞におけるAHR関連疾患又は状態を治療及び/又は予防する方法に関し、 ここで、前記治療は、少なくとも部分的に、本発明による方法の結果に基づいており、例えば、同定された化合物を提供するか、又は本明細書に記載の方法を含む治療をモニターリングする。
【0069】
本開示の別の側面は、1つ又は別個の容器内で、任意に補助剤及び/又は前記方法を実行するための説明書とともに、本発明による方法を実行するための材料を含む診断キットに関する。
【0070】
本開示の別の側面は、AHR活性を調節する化合物のスクリーニング又は同定に向けられている。 本開示の別の側面は、細胞のAHR活性化状態に対する化合物の効果を決定するための方法に向けられている。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、細胞は候補体化合物で処理され、そして細胞内でIL4I1の生物学的状態が決定/測定される。いくつかの実施形態によれば、生物学的サンプル中のIL4I1の生物学的状態は、対照サンプル中のIL4I1の生物学的状態と比較される。いくつかの実施形態によれば、生物学的状態はIL4I1 RNA発現である。
【0072】
いくつかの実施形態によれば、候補体化合物で処理されたサンプルからのIL4I1の生物学的状態が対照サンプルからのIL4I1の生物学的状態よりも小さい場合、候補体化合物はAHRシグナル伝達の阻害剤として分類され、そして候補体化合物は、候補体化合物で処理されたサンプルからのIL4I1の生物学的状態が対照サンプルからのIL4I1の生物学的状態よりも大きい場合、AHRシグナル伝達の活性化因子として分類される。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、候補体化合物は、IL4I1の生物学的状態で少なくとも1.5倍の絶対的なアップレギュレーションをもたらす場合、AHR活性化因子として特徴付けられる。いくつかの実施形態によれば、候補体化合物は、IL4I1の生物学的状態において、少なくとも2の絶対倍率、少なくとも2.5の絶対倍率、少なくとも3つの絶対倍率、少なくとも3.5の絶対倍率、少なくとも4の絶対倍率、少なくとも4.5の絶対倍率、又は少なくとも5の絶対倍率のアップレギュレーションもたらす場合、AHR活性化因子として特徴付けられる。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、候補体化合物は、生物学的状態で少なくとも0.67の絶対倍率のダウンレギュレーションをもたらす場合、AHR阻害剤として特徴付けられる。いくつかの実施形態によれば、候補体化合物は、生物学的状態において、少なくとも1の絶対倍率、2の絶対倍率、少なくとも2.5の絶対倍率、少なくとも3の絶対倍率、少なくとも3.5の絶対倍率、少なくとも4の絶対倍率、少なくとも4.5の絶対倍率、又は少なくとも5の絶対倍率のダウンレギュレーションをもたらす場合、AHR阻害剤として特徴付けられる。
【0075】
「倍率変化」という句は、2つの異なる条件における特定のバイオマーカーの値間の比率を指す。いくつかの実施形態によれば、2つの条件のうちの1つは対照である可能性がある。「絶対倍率変化」(「絶対倍率のアップレギュレーション」及び「絶対倍率のダウンレギュレーション」を含む)という句は、2つの条件間で特定のバイオマーカーの対数変換値を比較する場合に使用される。絶対倍率変化は、対数の指数を倍率変化値まで上げてから、数値の係数を報告することによって計算される。
【0076】
本開示の種々の側面は、コンピュータまたは機械の使用可能または読み取り可能な媒体、又はコンピュータ、プロセッサ、及び/又はマシン上で実行された場合、コンピュータ又はマシンに方法の工程を実行させる媒体グループに具体化又は保存されたプログラム、ソフトウェア、又はコンピュータ命令として具体化され得る。本開示に記載される種々の機能性及び方法を実行するためにマシンによって実行可能な命令のプログラムを具体的に具体化する、マシンによって読み取り可能なプログラム記憶装置、例えば、コンピュータ可読媒体も提供される。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、CPU、ディスプレイ、ネットワークインターフェース、ユーザインターフェース、メモリ、プログラムメモリ、及び作業メモリ(
図6)を含むシステムを含み、ここで前記システムは、プログラム、ソフトウェア、又は本開示の方法又はプロセスに向けられた指示コンピュータを実行するようにプログラムされている。例示的な実施形態は
図7に示されている。
【0078】
「プロセッサ」という用語は、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、単一のデバイスに配置された複数のプロセッサ、又は相互に有線又は無線通信でデバイスのネットワーク、インターネット、又は クラウドを介して配布された複数のプロセッサを含むことができる。従って、本明細書で使用される場合、「プロセッサ」によって実行又は実行されるように構成された機能、特性、又は命令は、単一コアプロセッサによる機能、特性、又は命令の実行を含み得、マルチコアプロセッサの複数のコアによる機能、特性、又は命令の集合的又は協調的なパフォーマンスを含むことができ、又は複数のプロセッサによる集合的又は協調的な機能、特性、又は命令のパフォーマンスを含むことができ、ここで各プロセッサ又はコアはすべての機能、特性、又は命令を個別に実行する必要がない。プロセッサは、CPU(中央処理装置)であってもよい。プロセッサは、GPU(グラフィック処理ユニット)などの他のタイプのプロセッサを含むことができる。本開示の他の側面によれば、プログラムメモリにプログラムされたCPU実行命令の代わりに、又はそれに加えて、プロセッサは、ASIC(特定用途向け集積回路)、アナログ回路、又はFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)、PAL(位相交互ライン)又はPLA(プログラマブルロジックアレイ)などの他の機能論理であり得る。
【0079】
CPUは、本明細書で説明する機能を実行するために、プログラムメモリに保存されたプログラム(本明細書ではモジュール又は命令としても説明される)を実行するように構成される。メモリは、RAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読み取り専用メモリ)、及び永続ストレージであり得るが、これらだけには限定されない。メモリは、例えば、データ、プログラム、命令、プログラムコード、及び/又は他の適切な情報などの情報を、一時的及び/叉は永続的に保存することができる任意のハードウェアである。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、開示は、以下を実行するようにプログラムされたプロセッサに向けられている:
(a)サンプルからのインターロイキン4誘導遺伝子1(IL4I1)の生物学的状態を対照サンプルからのIL4I1の生物学的状態と比較し;そして
(e)比較工程に基づいて生体サンプルのAHR活性化状態を決定する。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、本開示は、以下を実行するための命令を含む、コンピュータ可読記憶装置に向けられている:
(a)サンプルからのインターロイキン4誘導遺伝子1(IL4I1)の生物学的状態を対照サンプルからのIL4I1の生物学的状態と比較し;そして
(e)比較工程に基づいて生体サンプルのAHR活性化状態を決定する。
【0082】
従って、本発明は、以下の項目に関する:
項目1:細胞又は対象に由来する生物学的サンプル中のインターロイキン4誘発遺伝子1(IL4I1)の生物学的状態の変化を検出することを含む、細胞又は対象におけるアリール炭化水素受容体(AHR)の調節の検出方法であって、前記サンプル中のIL4I1の前記生物学的状態の変化が、対象サンプルに比較して、前記細胞又は対象におけるAHRのIL4I1関連調節を示す。
【0083】
項目2:前記調節がAHRの活性化又は抑制から選択される、項目1に記載の方法。
【0084】
項目3:前記調節が、前記細胞又は対象におけるAHR関連の生物学的又は病理学的状態を示す、項目1又は2に記載の方法。
【0085】
項目4:前記生理学的又は病理学的状態が、中毒、癌、自己免疫疾患、変性、炎症、感染症、代謝性疾患及び状態、血管新生、薬物代謝、造血、脂質代謝、細胞運動性、免疫調節、ストレス状態、例えば、生物学的、機械的及び環境的ストレスから選択される、項目3に記載の方法。
【0086】
項目5:前記検出された生物学的状態が、突然変異、核酸メチル化、コピー数、発現、タンパク質の量、タンパク質修飾、細胞局在、代謝物、特に、例えばトリプトファン分解産物などのIL4I1によって産生される代謝物、及びIL4I1の生物活性から選択される、項目1~4のいずれか1項目に記載の方法。
【0087】
項目6:前記生物学的サンプルが、体液、哺乳類、例えばヒト、細胞、組織、全血、細胞系、細胞上清液、初代細胞、IPSC、ハイブリドーマ、組換え細胞、幹細胞、及び癌細胞、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞、グリア細胞、上皮細胞、皮膚細胞、頭皮細胞、肺細胞、粘膜細胞、筋肉細胞、 骨格筋細胞、線条筋細胞、平滑筋細胞、心臓細胞、分泌細胞、脂肪細胞、血液細胞、赤血球、好塩基球、好酸球、単球、リンパ球、T細胞、B細胞、好中球、NK細胞、調節性T- 細胞、樹状細胞、Th17細胞、Th1細胞、Th2細胞、骨髄細胞、マクロファージ、単球由来間質細胞、骨髄細胞、脾臓細胞、胸腺細胞、膵臓細胞、卵細胞、精子、腎臓細胞、線維芽細胞、腸細胞、 女性又は男性の生殖管の細胞、前立腺細胞、膀胱細胞、眼細胞、角膜細胞、網膜細胞、感覚細胞、ケラチノサイト、肝細胞、脳細胞、腎臓細胞、及び結腸細胞、並びに前記細胞又は組織の形質転換された対応物を含む適切なサンプルから選択される、項目1~5のいずれか1項目に記載の方法。
【0088】
項目7:前記対象が、哺乳類対象、例えばヒト対象、例えばAHR関連の生理学的又は病理学的状態に苦しんでいるヒト患者から選択される、項目1~6のいずれか1項目に記載の方法。
【0089】
項目8:前記対象サンプルが、例えば健康な対象又は対象グループからのサンプルから選択される、項目1~7のいずれか1項目に記載の方法。
【0090】
項目9:少なくとも1つの候補体モジュレーター化合物と、生物学的サンプルとを接触し、そしてIL4I1又はIL4I1をコードする遺伝子の生物学的調節を検出することを含む、IL4I1の生物学的状態の少なくとも1つのモジュレーターについてスクリーニングするための方法であって、ここで前記調節又は活性が前記生物学的状態のモジュレーターを同定することを特徴とする方法。
【0091】
項目10:前記方法が好ましくは、さらに、生物学的サンプル中のIL4I1の生物学的状態の変化を検出することを含み、ここで前記少なくとも1つのモジュレーターの非存在下と比較して前記少なくとも1つのモジュレーターの存在下での前記IL4I1の生物学的状態の変化が、モジュレーターを同定する、項目9に記載の方法。
【0092】
項目11:前記検出された生物学的状態が、突然変異、核酸メチル化、コピー数、発現、タンパク質の量、タンパク質修飾、細胞局在、代謝物、特に、例えばトリプトファン分解産物などのIL4I1によって産生される代謝物、及びIL4I1の生物活性から選択される、項目9又は10に記載の方法。
【0093】
項目12:前記モジュレーターが、IL4I1の前記生物学的状態の阻害剤又は誘導剤から選択される、項目9~11のいずれか1項目に記載の方法。
【0094】
項目13:AHRの調節を検出することをさらに含む、項目9~12のいずれか1項目に記載の方法。
【0095】
項目14:前記化合物が、タンパク性ドメイン、小分子、ペプチド、抗体、例えばIL4I1に結合するモノクローナル抗体、環境物質、プロバイオティック、毒素、エアロゾル、薬、栄養素、生薬組成物、植物抽出物、揮発性化合物、ホメオパシー物質、香、医薬品 、ワクチン、生物、例えば動物、植物、真菌、細菌、古生物に由来する化合物又は化合物混合物、化合物、食品又は化粧品産業で使用される化合物、及び前記化合物のライブラリーから選択される、項目9~13のいずれか1項目に記載の方法。
【0096】
項目15:ある量の少なくとも1つの化合物と接触された生物学的サンプルに対して、項目1~8のいずれか1項目に記載の方法を実施することを含む、前記少なくとも1つの化合物に応答してAHRの生物学的状態の調節をモニターするための方法であって、前記生物学的サンプルが前記量の前記化合物と接触されなかった対照サンプルと比較されることを特徴とする方法。
【0097】
項目16:前記生物学的サンプルが、治療の過程を通して得られ、そして/又は本明細書に記載されるように、適切な対照サンプル又は対象又は患者のグループに由来するサンプルと比較される、項目15に記載の方法。
【0098】
項目17:IL4I1調節のサブグループへの前記サンプルの監視なしのクラスターリング又は監視ありの分類のために、及び任意には、AHR調節の異なるサブグループへの前記サンプルの監視なしのクラスターリング又は監視ありの分類のために、前記比較を用いる工程をさらに含む、項目1~16のいずれか1項目に記載の方法。
【0099】
項目18:さらに、対象の特定グループ又は患者グループへの前記対象の分類を含む、項目1~16のいずれか1項目に記載の方法。
【0100】
項目19:前記方法が、高スループット法を使用することを含む、項目1~18のいずれか1項目に記載の方法。
【0101】
項目20:項目1~19のいずれか1項目に記載の方法を、1つ又は別個の容器内で、任意には、補助剤及び/又は前記方法を実行するための指示と共に、実行するための材料を含む、診断キット。
【0102】
項目21:項目1~19のいずれか1項目に記載の方法の項目20に記載の診断キットへの使用。
【0103】
項目22:項目1~19のいずれか1項目に記載の方法を実施し、そして本発明による方法の結果に少なくとも部分的に基づく適切な治療を患者に提供することを含む、前記治療を必要とする患者におけるAHR関連の疾患又は状態を治療及び/又は予防するための方法。
【0104】
【0105】
次に、本発明は、添付の図を参照し、それにもかかわらず、それに限定されることなく、以下の実施例でさらに説明されるものとする。 本発明の目的のために、本明細書で引用される全ての参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0106】
配列番号1~26は、本発明で使用されるようなオリゴマーの配列を示す。
【実施例】
【0107】
材料及び方法
マイクロアレイ及びRNA-seqデータ分析
アレイデータセット-affymetrixマイクロアレイチップ「ヒト遺伝子2.0ST」を、オリゴパッケージを使用して分析し、そしてNetAffxを使用して注釈を付けた(14)。生のCELファイルはRMAで正規化され、そして要約された。 マイクロアレイ用のリムマパイプラインを使用して、差次的遺伝子発現を行った(15)。
【0108】
RNA-seqデータセット-The Cancer Genome Atlas(TCGA)腫瘍データセットの調和したFPKMデータは、GDC(https://gdc.cancer.gov)のTCGAbiolinks(16)を使用してダウンロードされ、そして「原発性固形腫瘍」という識別子を持つ患者のみが保持された。FPKM値はTranscriptsper Million(TPM)(17)に変換され、正常組織のTPMデータはGenotype-Tissue Expressionデータセット(GTEX-https://gtexportal.org/home/)からダウンロードされた。 すべてのTPM値はlog2変換された。
【0109】
細胞培養
HEK293T、LN-229、Tao BpRc1、及びU-87MGをATCCから入手した。CAS-1及びU-251MGは、それぞれICLC及びECACCからのものであった。CAS-1、HEK293T、LN-229、U-87MG、及びU-251MGを、10%のFBS(Gibco、10270106)、2mMの L-グルタミン(Gibco、25030-024)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Gibco、11360-039)、100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco、 15140-122)により補充された、フェノールレッドを含まない高グルコースDMEM培地(Gibco、31053028)(以降、完全DMEMと呼ぶ)において培養した。TAO BpRc1細胞を上記のように培養しが、完全なフェノールレッドを含まないDMEMと5μg/mLのテトラサイクリン(Sigma-Aldrich、T3383)を使用した。転座アッセイには、10%Tet System Approved FBS(Clontech、631107)を含む培地を使用した。 細胞を37℃及び5%CO2で培養した。
【0110】
トランスジェニック細胞系の生成
Gateway適合性組換え部位に隣接するヒトIL4I1 cDNAクローンを、MyBiosource(MBS1270935)から購入した。cDNAクローンをレンチウイルス適合性ゲートウェイ発現ベクターpLX301(D.Rootからの贈り物、Addgeneプラスミド25895)に再結合しました(18)。レンチウイルスの生成を、FuGENE HD(Promega、E2311)を使用して、製造元のプロトコルに従って、HEK293TにpMD2.G(D.Tronoからの贈り物、Addgeneプラスミド12259)、psPAX2(D.Tronoからの贈り物、Addgeneプラスミド12260)、及びレンチウイルスプラスミドをトランスフェクトすることによって達成した。ウイルスの上清液を48時間及び72時間で回収し、プールし、そして0.45μmの細孔フィルターで濾過した。安定したIL4I1過剰発現(pLX301-IL4I1)及び対照(pLX301)細胞系を、8μg/mLのポリブレン(Merck Millipore、TR-1003-G)の存在下でU-87MG及びU-251MG細胞をそれぞれのウイルス上清液に24時間感染させ、その後、1μg/mLのピューロマイシン(AppliChem、A2856)を含む培地で選択することによって、生成した。IL4I1の安定した過剰発現は、qRT-PCR、ウエスタンブロット、及びIL4I1酵素活性によって確認された。
【0111】
U-87MG細胞におけるAHRの安定したノックダウンは、AHRを標的とするshERWOOD UltramiRレンチウイルスshRNA(transOMIC Technologies、TLHSU1400-196-GVO-TRI)を使用して達成された。神経膠腫細胞を、shAHR又はshControl(shC)配列のいずれかを含むウイルス上清液により感染させて、安定した細胞系を生成した。hERWOOD UltramiR shRNA配列は次の通りである:shAHR (ULTRA-3234821): 5’-TGCTGTTGACAGTGAGCGCAGGAAGAATTGTTT TAGGATATAGTGAAGCCACAGATGTATATCCTAAAACAATTCTTCCTTTGCCTACTGCCTCGGA-3’ (配列番号1); shC (ULTRA-NT#4): 5’- TGCTGTTGACAGTGA GCG AAGGCAGAAGTATGCAAAGCATTAGTGAAGCCACAGATGTAATGCTTTGCATACTTCTGCCTGTGCCTACTGCCTCGG A-3 (配列番号2)’。 IL4I1のsiRNAを介した遺伝子ノックダウンは、ON-TARGETplus Human SMARTpool siRNA試薬(Dharmacon、L-008109-00-0005)を使用して実施された。AHRのsiRNAを介した遺伝子ノックダウンは、ON-TARGETplus Human SMARTpool siRNA試薬(Dharmacon、L-004990-00-0005)を使用して実施された。siRNAトランスフェクションは、Lipofectamine RNAiMAX(Thermo Fisher Scientific、13778100)を使用して、製造元のプロトコルに従って行われた。 ON-TARGETplus非標的プールsiRNA(Dharmacon、D-001810-10-05)を対照として使用した。
【0112】
テトラサイクリン制御下でGFPタグ付きAhrを発現する、安定的にトランスフェクトされたtao BpRc1c細胞を使用して、Ahrの核移行を視覚化した。 マウスAhrは、tet-off発現システム(pRevTRE、CLONTECH)を含むpEGFP-C1ベクター(CLONTECH、カリフォルニア州パロアルト)にクローン化された。Phoenixパッケージングラインが、内因性Ahr発現を欠くマウス肝細胞癌BpRc1細胞へのレトロウイルストランスフェクションに使用された。
【0113】
細胞培養処理条件
確立された仮想のAHRリガンドで接着細胞を処理するために、ウェル当たり4 x 105個の細胞を6つのウェルプレートに播種し、そして処理前に24時間インキュベートした。非接着細胞を24ウェルプレートに1mL中5x105細胞で播種し、そしてすぐに処理した。生成されたAHRシグネチャを検証するために、細胞を確立されたAHRアゴニストKyn(50μM、SigmaAldrich、K8625)で24時間処理した。直接及び下流のIL4I1代謝物がAHRを活性化する可能性を調査するために、細胞を、I3P(3.125μM~100μM、Sigma-Aldrich、I7017)、HPP(8μM~1000μM、Sigma-Aldrich、114286)、PP(8μM~1000μM、Alfa Aesar、L11934)、キヌレン酸(50μM、Sigma-Aldrich、K3375)、インドール-3-乳酸(25μM~100μM、Sigma-Aldrich、I5508)、3-インドール酢酸(25μM~100μM、Sigma-Aldrich、I2886)、インドール -3-カルボキサルデヒド(6.25μM~100μM、Sigma-Aldrich、129445)及びU-87MG又はU-251MG対照とil4I1発現細胞の上清液により24時間、処理した。AHRアンタゴニストSR1(1μM、Merck Millipore、182706)を使用する場合、細胞を単独で、又はAHRリガンドと組み合わせて24時間処理した。 DMSOを、培地中の最終濃度が0.2%を超えないように全ての化合物を溶解するために使用した。
【0114】
U-87MG及びU-251MG対照とIL4I1発現細胞を含む遺伝子及びタンパク質発現実験では、ウェル当たり4 x 105細胞を、6ウェルプレートの2mLに播種し、そして72時間又は120時間インキュベートした。メタボロミクス実験では、6ウェルプレートの2 mLの完全DMEMに、ウェル当たり4x105細胞の密度で細胞を播種し、24時間インキュベートした。 より多くの細胞と上清液が必要な場合、ウェル当たり2.6x106個の細胞を10cmディッシュの13.3mLの完全DMEMに播種し、24時間インキュベートした。4時間後、細胞をPBSで1回洗浄し、2又は13.3mLの新鮮なFBSフリーDMEMを添加し(使用したウェルサイズと細胞密度に応じて)、細胞を120時間インキュベートした。 サンプル準備は以前の研究から適応された(19,20)。簡単に説明すると、上清液を液体窒素で急速凍結し、代謝物を測定するまで-80℃で保存した。 細胞を含むプレートを37℃に予熱した細胞培養グレードの水で1回すばやく洗浄し、液体窒素でクエンチし、代謝物を測定するまで-80℃で保存した。
【0115】
CAS-1細胞でIL4I1をノックダウンした実験では、6ウェルプレートのウェル当たり4x105細胞を播種し、24時間インキュベートした。 細胞にそれぞれの対照又は標的siRNAをトランスフェクトした。 トランスフェクションの24時間後に完全DMEMを1.5mLのFBSフリーDMEMに交換し、細胞を72時間インキュベートした。
【0116】
RNA単離及びリアルタイムPCR
RNeasy Mini キット(Qiagen、80204)を使用して培養細胞から全RNAを回収した後、High Capacity cDNA逆転写酵素キット(Applied Biosystems、4368813)を使用してcDNAを合成した。StepOne PlusリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems)を使用して、SYBR Select Masterミックス(Thermo Scientific、4309155)を使用してcDNAサンプルのリアルタイムPCRを実行した。データは、StepOne Software v2.3を使用して処理及び分析された。 標的遺伝子の相対的定量化は、2ΔΔCt法を使用して参照遺伝子としてのRNA18Sに対して行われた。 ヒトプライマー配列を以下のように表2に示す。
【0117】
【0118】
タンパク質の単離及びウエスタンブロット
HR転座アッセイでは、LN-229神経膠腫細胞の核画分と細胞質画分のタンパク質含有量をイムノブロッティングで比較した。LN-229細胞をU-251MG対照又はIL4I1発現細胞の上清液で4時間処理した(120時間)。溶解物を液体窒素で急速凍結し、各凍結融解サイクルの後に超音波処理を10サイクル行った後、3回解凍した。 2つの異なる細胞画分からタンパク質を単離するために、NE-PER(登録商標)核及び細胞質抽出試薬(Thermo Fisher Scientific Inc.)を使用した。抽出は、製造元の指示に従って実行された。 核特異的ラミンAは適切な分画の対照として機能し、ポリクローナルウサギ抗ラミンA(1:500、BioLegend)をそれぞれ使用して検出された。 AHRは、一次マウスモノクローナル抗AHR抗体クローンRPT1(Abcam、ベルリン、ドイツ)を使用して検出された。
【0119】
AHR核転座アッセイ
トランスジェニックtao BpRc1c細胞におけるGFP-Ahr発現の誘導のために、転座アッセイの24時間前に細胞をテトラサイクリンから取り出した。 アッセイは、150μl/ウェルで7500細胞/ウェルの黒色透明底の96ウェルプレート(BD、#353219)で実施した。代謝物を50μL/ウェルの誘導培地に添加した。 細胞をそれぞれ25μMの PP、HPP、およびI3Pに4時間曝露した。 培地を廃棄し、細胞をPBS中の予熱した3.7%ホルムアルデヒドで固定した(RTで10分)。固定後、細胞を界面活性剤緩衝液(DB、PBS中0.01%Tween20、Sigma Aldrich)で洗浄し、続いてPBS中0.1%Triton X-100(Sigma Aldrich)でRTで15分間透過処理した。細胞をDBで2回洗浄し、0.4ng/mlの Hoechst 33342(Sigma Aldrich)とRTで30分間、光から保護してインキュベートした。 DB及びPBSで洗浄した後、転座分析まで細胞を4℃でPBSに保存した。KynAによる転座は、適切な負の培地対照を含む3時間の曝露後に生細胞イメージングによってモニターされた。 異なる代謝物によるAhrの転座は、BD Pathway Imager855でモニターされた。
【0120】
メタボロミクス分析
IL4I1を発現及び非発現するU-87MG及びU-251MG細胞によるフェニルアラニン、チロシン、及びTrpの消費を、120時間のインキュベーション後の細胞培養上清液中のアミノ酸の定量化によって評価した。フェニルアラニン及びチロシンを検出するために、アミノ酸を製造元のプロトコルに従って蛍光色素AccQ-Tag(登録商標)(Waters)で標識した。誘導体化生成物は、Acquity蛍光検出器(FLR)(Waters)に接続されたAcquity HクラスUPLCシステム(Waters)を使用して、Acquity BEH C18カラム(Waters)で42℃で分離された。サンプルは、Yang et. al., 2015(21)よって以前に説明されたようにUPLCで分析された。Trp消費の分析のために、上清液を等量の12%過塩素酸と混合し、氷上で10分間インキュベートした。 分析の前に、サンプルを4℃、16,400 gで10分間遠心分離し、タンパク質を沈殿させ、残っている細胞片を除去した。次に、代謝物を、Acquity HクラスUPLCシステム(Waters)に接続されたAcquity HSS T3カラム(100 mm x 2.1 mm、1.7 μm、Waters)での逆相クロマトグラフィーによって分離した。 カラムを37℃に加熱し、5カラム容量の100%溶媒A(20mMの酢酸ナトリウム、3mMの酢酸亜鉛、pH 6)で0.55mL/分の流速で平衡化した。Trpの明確な分離は、溶媒A中の溶媒B(アセトニトリル)の濃度を次のように増加させることによって達成された:4分0%B、10分5%B、13分15%B、15分25%B、3分で0%Bに戻る。Trpは蛍光によって検出された(Acquity FLR検出器、Waters、励起:254nm、発光:401nm)。 定量化には標準を使用した(Sigma)。データの取得と処理は、Empower3ソフトウェアスイート(Waters)を使用して実行された。 非標的メタボロミクスアプローチを採用して、120時間培養したIL4I1発現細胞と非発現U-87MG及びU-251MG細胞の上清液に差次的に豊富な代謝物を同定した。 この目的のために、50μlの細胞培養上清液を200μlの氷冷アセトニトリルとボルテックスで混合した後、-20℃で1時間インキュベートした。サンプルを4℃で15分間遠心分離し、TruView UPLC-MSバイアル(Waters)に移した。 プールサンプルは、全てのサンプルを等量混合して調製した。 サンプルは、Vion IMS QTof MS(Waters)に接続されたIクラスUPLCシステムを使用して測定された。Cogent Diamond Hydride 2.0カラム(150x2.1mm、2.2μm; MicroSolv USA)又はHSS T3カラム(100x2.1mm、1.8μm; Waters)のいずれかを使用して代謝物を分離した。 機器の制御とMSデータの取得には、UNIFI 1.8.2(Waters)を使用しました。 フォローアップデータ分析は、Progenesis QI(Waters)を使用して実行された。ILAは204.0662Da(負のモード;予想されるモノアイソトピック質量:205.0739Da;偏差-2ppm)で検出され、116.0495、128.0495、130.0652、及び204.0655Daの予想されるフラグメントイオンによって識別された。選択された示差的に豊富なTrp、フェニルアラニン、及びチロシン由来の代謝物(IAA、I3CA、KynA、PP、HPP、HBA)及びさらに下流の変換産物(Kyn、PAA、HPAA)を、トリプルクワッドMS(Agilent 6460)と外部標準を組み合わせたHPLC(Agilent 1290)を使用した疑わしいLC-MS測定から得られたフラグメンテーションパターンを比較することにより、同定した。
【0121】
代謝物の標的化された定量化には、MRMモードを使用した。 全ての試験化合物について、必要量を1.5mLエッペンドルフセーフロックチューブに重量分析で添加し、試験化合物を1mLのDMSOに溶解することにより、10mMのストック溶液を調製した。 各化合物について、ストック溶液は10mM~0.039mMの濃度範囲をカバーした。 代謝物の定量化のために、300μLの各バイオアッセイ上清液をエッペンドルフセーフロックチューブに添加した。関連するキャリブレーションサンプルは、300μLの細胞培養培地と1μLの試験化合物ストック溶液をエッペンドルフセーフロックチューブに添加することによって調製した。 続いて、300μLのアセトニトリルを添加し、培地成分の沈殿を引き起こした。 全てのサンプルを8000rpmで4分間遠心分離し、150μLの上清液をHPLC分析用に200μLのガラスインサートを備えた1.5mLガラスバイアルに移した。分析のために5μlのサンプルを注入した。 水と0.1%ギ酸を含むアセトニトリルをそれぞれ溶離液AとBとして使用し、流速0.5mL/分で5分間のHPLC分離を行った。 分離は、長さ50mmのPoroshell120 EC-C18 2.7ミクロンカラム(Agilent)を使用して行った。Agilent Jetstream ESIソースは、ガス及びガスシース温度300℃、ガス流量10L/分、シースガス流量11L/分に設定した。 ネブライザーの圧力は55psiに設定し、キャピラリー電圧は実行中2000Vに設定しました。 機器の制御とデータ取得には、MassHunterソフトウェアスイート(Agilent)を使用した。
【0122】
IL4I1活性アッセイ
IL4I1及び対照形質導入対応物を安定して発現するU-87MG及びU-251MG細胞を0.1%TritonX-100 / PBSで溶解した。 転移性黒色腫の切除から得られたヒト組織を、ミキサーミルMM301内でステンレス鋼ビーズと共に40Hzで1分間の2サイクル振盪することにより1%TritonX-100 /PBSで溶解した。IL4I1活性を、CLARIOstar(登録商標)(BMG LABTECH)プレートリーダーを使用して、黒色の96ウェルプレートでAmplex(登録商標)Red蛍光(530nmでの励起と590nmでの発光)を介して毎分60分間H2O2生成を測定することにより決定した。反応はPBSで調製し、図の凡例に示すように、50μMのAmplex(登録商標)Red(Cayman Chemicals、#Cay10010469)、0.1U/mLのHRP(Merck Millipore、#516531)、及びIL4I1基質としてのアミノ酸を含んだ。 IL4I1非依存性H2O2産生は、アミノ酸の非存在下で評価され、基質の存在下で得られた活性から差し引かれた。IL4I1を介したH2O2生成は、H2O2検量線(最終0-10 μM)を使用して計算され、ブラッドフォードアッセイによって定量化されたサンプルタンパク質含有量に対して正規化された。
【0123】
ソフトウェア及び統計
GraphPad Prismソフトウェアバージョン6.0及び8.0を使用して、遺伝子(リアルタイムPCR)及びタンパク質発現データ、並びに代謝物データのグラフィカル及び統計分析を行った。特に明記しない限り、データは少なくとも3回の独立した実験の平均±S.E.Mを表す。 データが変化の倍数として表された場合、これらの値はLog10変換され、結果の値は統計分析に使用された。データに応じて、次の統計分析が適用された:両側スチューデントt検定(対応のある又は対応のない)、Tukeyの多重比較検定を使用した一元配置分散分析及びDunnettの多重比較検定を使用した反復測定ANOVA。 有意差は、* p <0.05、** p <0.01、*** p <0.001、**** p <0.0001として報告された。 n.s. 有意差がないことを示す。
【0124】
正常(GTEX)及び腫瘍組織におけるTrp分解酵素の発現レベルを比較すると、本発明者らは、IDO1及びTDO2、AHRの活性化に関与する他のトリプトファン分解酵素と同様に、IL4I1発現が正常組織と比較して癌組織で増強されることを見出した(
図1a、b)。 本発明者らは、AHR標的遺伝子のqRT-PCRが、IL4I1によって媒介されるAHR活性化を確認したことを示している(
図2a)。IL4I1を介したAHRの活性化をさらに確認すると、IL4I1発現細胞の上清液で処理した神経膠芽腫細胞でAHRの核/細胞質局在の増加が検出されました(
図2b)。 逆に、IL4I1を構成的に発現する神経膠芽腫細胞におけるIL4I1のノックダウンは、AHR標的遺伝子TIPARPの発現を減少させた(
図2c)。 まとめると、本発明者らの結果は、IL4I1が実際にAHRを活性化することを明らかにしている。
【0125】
次に、本発明者らは、IL4I1がどのようにAHRを活性化するかを調査することに着手した。 以前の報告と一致して、il4I1の発現はフェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンのレベルを低下させ(
図2d)、フェニルアラニンが最も効率的に異化された(
図2e、f)。IL4I1は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンをそれぞれフェニルピルビン酸(PP)、ヒドロキシフェニルピルビン酸(HPP)、及びインドール-3-ピルビン酸(I3P)に変換する(1)。 従って、本発明者らは、AHRに熟達した神経膠芽腫細胞をこれらの代謝物に曝露し、それらがAHRを活性化するかどうかを調査した。PP及びHPPはAHR標的遺伝子の関連する調節を誘発しなかったが、遺伝子発現分析は、AHR依存性であるI3P(
図2g、h)に応答したAHR活性化シグネチャー遺伝子の有意な調節を明らかにした。 並んで、AHRの核転座はI3Pに応答してのみ観察された(
図2i)。要約すると、本発明者らの結果は、IL4I1が主にI3Pの生成を通じてAHRを活性化することを示しており、これは、D-アミノ酸オキシダーゼ及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼによって生成される微生物叢由来のI3P及びI3Pからの発見と一致している(22-25)。
【0126】
IL4I1発現細胞は、高レベルのPP及びHPPと、それらの下流代謝物であるフェニル酢酸(PAA)、4-ヒドロキシベンズアルデヒド(HBA)、及びヒドロキシフェニル酢酸(HPAA)を示した(
図3a、b)。 発明者の驚いたことに、発明者はI3Pを検出できなかった(
図3c、d)。 しかしながら、本発明者らは、インドール酢酸(IAA)、インドール-3-カルボキサルデヒド(I3CA)及びインドール-3-乳酸(ILA)を含むI3Pに由来する化合物のレベルの増加を検出し(
図3c、d)、このことは、I3Pを介した代謝フラックスが非常に速いことを示唆している。さらに、キヌレン酸のレベルは、IL4I1発現細胞の上清液で上昇した(
図3c、d)。 膠芽腫細胞をI3Pの濃度を増加させて処理すると、細胞上清液中のIAA、I3CA、及びキヌレン酸が用量依存的に増加した(
図4a)。 IL4I1がキヌレン酸レベルを高めることができる1つの反応は、キヌレニンアミノトランスフェラーゼがアミノ基受容体としてI3P、PP、又はHPPを使用できるため、キヌレニン(IDO1及び/又はTDO2によって生成される)のアミノ基転移によるものである(26)。しかしながら、キヌレニン濃度はIL4I1発現細胞では減少せず、この仮説はありそうになかった(
図3c、d)。 キヌレン酸はI3Pから自発的に形成され、H
2O
2の存在下で増強され(
図4b)、IL4I1によってI3Pと同時に生成されたH
2O
2がキヌレン酸への変換を促進することを示唆している。 実際、ラット組織でトリプトファンアミノ基転移を介して生成されたI3Pからのキヌレン酸の生成は以前に記載されている(27)。本発明者らは、IAA又はI3L(
図4c、d)に応答したAHR標的遺伝子TIPARPの関連する誘導を観察しなかったが、I3CA(
図4e)及びキヌレン酸(
図4f)はTIPARP転写物を誘導した。 キヌレン酸によって媒介されるAHRの活性化は、AHRの核移行によって確認された(
図4g)。要約すると、本発明者らのデータは、IL4I1がキヌレン酸及びI3CAを含むI3Pの下流生成物を介してAHRを活性化し、AHR活性化化合物の混合物を生成することを示唆している。
【0127】
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【国際調査報告】