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特表2022-529438共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを発現する腫瘍溶解性アデノウイルスベクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(54)【発明の名称】共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを発現する腫瘍溶解性アデノウイルスベクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/861 20060101AFI20220615BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220615BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20220615BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C12N15/861 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/10 200Z
C12N7/01
C12N5/10
C12P21/02 C
A61P35/00
A61K35/761
A61K48/00
A61P35/02
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021561028
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 EP2020060727
(87)【国際公開番号】W WO2020212503
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】19169833.1
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516167808
【氏名又は名称】タルゴバックス エーエスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリーク ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】エリクセン ヨン アムンド
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ ロバート
(72)【発明者】
【氏名】メラー アン-ソフィー
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064DA01
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084MA52
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA52
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本発明は癌の治療法に関する。より具体的には、本発明は、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター、並びに該ベクターを含む細胞及び医薬組成物に関する。本発明はまた、被験体において癌を治療するための薬剤の製造における上記ベクターの使用、及び被験体において癌を治療する方法に関する。さらに、本発明は、細胞内で免疫調節リガンドのB7ファミリー及びADAを産生し、被験体において抗腫瘍効果及び特異的免疫応答の誘導を高める方法、並びに細胞内で導入遺伝子を産生し、被験体において抗腫瘍効果及び特異的免疫応答の生成を高めるための本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格と、E1のRb結合定常領域2における24bpの欠失(D24)と、E3領域において共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバーをコードする核酸配列及びADAをコードする核酸配列とを含む、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項2】
前記共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAがE3プロモーターの下に配置されている、請求項1に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項3】
前記共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAがCMV(Cuo)プロモーターの下に配置されている、請求項1に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項4】
前記共刺激リガンドのB7ファミリーがICOSLであり、ADAがADA1である、請求項1~3のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項5】
前記共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバーをコードする核酸配列及び前記ADAをコードする核酸配列がIRESと接続されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項6】
前記共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバーをコードする核酸配列及び前記ADAをコードする核酸配列がP2Aと接続されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項7】
天然のE1Aプロモーターを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項8】
キャプシド修飾としてAd5/3キメラ化を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項9】
配列番号1を含む、請求項1、3~5又は7~8のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターを含む細胞。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクターを含む医薬組成物。
【請求項12】
癌治療用、又は被験体における癌を治療する薬剤の製造用の、請求項1~9のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項13】
前記癌が、鼻咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、咽喉癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォンヒッペル-リンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、脳癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルチノイド、胃腸管のカルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、結腸直腸癌、直腸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼癌、頸部癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポシ肉腫、前立腺癌、肺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴノーマ、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫瘍、菌状息肉腫、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチノーマ、歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口の癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌、及び扁桃癌からなる群より選択される、請求項12に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項14】
前記被験体における癌の治療が、腫瘍内、筋肉内、動脈内、静脈内、胸膜内、小胞内、腔内若しくは腹腔内の注射、又は経口投与によって行われる、請求項12又は13に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項15】
前記注射又は前記投与が治療期間中に数回行われる、又は以前の治療のベクターと比較して異なるファイバーノブのキャプシドを有する腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを使用する、請求項14に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項16】
前記被験体における癌の治療が、被験体へのチェックポイント阻害剤、ベラパミル又は別のカルシウムチャネル遮断薬、オートファジー誘導剤、テモゾロミド、化学療法剤若しくは中和抗体の遮断のための抗CD20療法剤、被験体において制御性T細胞をダウンレギュレートすることができる物質、及び/又はシクロホスファミドの投与を更に含む、請求項12~15のいずれか一項に記載のアデノウイルスベクター。
【請求項17】
共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAをin vitroにおいて細胞内で産生する方法であって、
i.請求項1~9のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを含むビヒクルを細胞に運ぶことと、
ii.細胞内で前記ベクターの共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを発現させることと、
を含む、方法。
【請求項18】
in vitroにおいて細胞内で共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを産生するための、請求項1~9のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療法に関する。より具体的には、本発明は、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター、並びに該ベクターを含む細胞及び医薬組成物に関する。本発明はまた、被験体において癌を治療するための薬剤の製造における上記ベクターの使用、及び被験体において癌を治療する方法に関する。さらに、本発明は、細胞内で共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びアデノシンデアミナーゼ(ADA)を産生し、被験体において抗腫瘍効果及び特異的免疫応答の誘導を高める方法、並びに細胞内で導入遺伝子を産生し、被験体において抗腫瘍効果及び特異的免疫応答の生成を高めるための本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
過去20年間、遺伝子導入技術は徹底的に調べられてきた。癌遺伝子治療の目的は、腫瘍細胞に治療用遺伝子を導入することである。標的細胞に導入されたこれらの治療用遺伝子は、例えば、変異遺伝子を修正し、活性な癌遺伝子を抑制し、又は細胞に対して追加の特性を生じ得る。適切な外因性治療用遺伝子としては、限定されるものではないが、免疫療法遺伝子、血管新生抑制遺伝子、化学保護遺伝子及び「自殺」遺伝子が挙げられ、改変ウイルスベクター、又はエレクトロポレーション、遺伝子銃及び脂質コーテイング若しくはポリマーコーティングを含む非ウイルス法を利用することによってそれらの遺伝子を細胞に導入することができる。
【0003】
最適なウイルスベクターの要件は、特異的な標的細胞を見つけ、標的細胞でウイルスゲノムを発現させる効率的な能力を含む。さらに、最適なベクターは、標的の組織又は細胞内で活性を維持する必要がある。ウイルスベクターのこれら特性は全て過去数十年の間に開発されており、例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルスのベクターは生物医学で広く研究されてきた。
【0004】
腫瘍浸透及び抗腫瘍効果の局所増幅を更に改善するために、選択的に腫瘍溶解を起こす作用物質、例えば条件付きで複製するアデノウイルスが構築されている。腫瘍溶解性アデノウイルスは、癌の治療のための有望なツールである。腫瘍細胞は、腫瘍細胞内でのウイルスの複製により腫瘍溶解性アデノウイルスによって死滅し、複製の最終段階では、効果的な腫瘍浸透及び血管再感染のために、周囲の腫瘍組織に数千のビリオンが放出される。腫瘍細胞はウイルスの複製を可能にするが、ウイルスゲノム中の設計変更により正常細胞には害はなく、非腫瘍細胞での複製が妨げられる。
【0005】
複製を介した細胞死滅に加えて、腫瘍溶解性アデノウイルスを、様々な治療用導入遺伝子で武装させる(armed with)こともできる。このアプローチは、従来の遺伝子送達の利点と複製能力のある作用物質の効力を組み合わせたものである。ウイルスを武装させる目的の1つは、ウイルスの複製を可能にする細胞に対して免疫反応を誘導することである。ウイルス複製だけでは、免疫原性はあるが、通常、効果的な抗腫瘍免疫を誘導するには十分ではない。治療免疫の誘導を強化するため、ウイルスは、樹状細胞等の抗原提示細胞への腫瘍抗原の導入、並びにそれらの刺激及び/又は成熟を促進するためのサイトカイン等の刺激タンパク質で武装することができる。免疫療法遺伝子の腫瘍細胞への導入、更にはタンパク質の翻訳は、免疫応答の活性化及び腫瘍細胞の効率的な破壊につながる。この点で最も関連性のある免疫細胞は、ナチュラルキラー細胞(NK)、Tヘルパー細胞及び細胞傷害性CD8+T細胞である。
【0006】
アデノウイルスの50を超える様々な血清型がヒトで発見されている。アデノウイルス血清型5(Ad5)は呼吸器疾患を引き起こすことが知られており、遺伝子治療の分野で研究されている最も一般的な血清型である。最初のAd5ベクターでは、E1及び/又はE3領域が欠失され、ベクターへの外来DNAの挿入が可能になった。さらに、他の領域の欠失及び更なる変異は、ウイルスベクターに追加の特性を提供し、実際、効率的な抗腫瘍効果を達成するためのアデノウイルスの様々な改変が示唆されている。
【0007】
ICOS(誘導性T細胞共刺激因子)は、免疫チェックポイントタンパク質であり、活性化T細胞上で発現されるCD28スーパーファミリー共刺激分子であり、細胞間シグナル伝達、免疫応答、及び細胞増殖の調節に重要な役割を果たす(非特許文献1)。
【0008】
免疫調節リガンドのB7ファミリーは、誘導性共刺激因子リガンド(ICOSL)、プログラム死-1リガンド(PD-L1)、プログラム死-2リガンド(PD-L2)、B7-H3、及びB7-H4を含む。ヒトでは、ICOS-Lの細胞表面発現は、B細胞、樹状細胞、単球/マクロファージ、及びT細胞で報告されている。代わりに、ICOS-Lは、CD28及びCTLA-4に相同なT細胞特異的共刺激分子であるICOSに結合する。ICOSリガンドは、メモリーCD4+T細胞によるTh1及びTh2サイトカイン分泌を同時刺激する(非特許文献2)。
【0009】
ADA(アデノシンデアミナーゼ(アデノシンアミノヒドロラーゼ、すなわちADA)としても知られている)は、プリン代謝に関与する酵素である。ADAは、食品からのアデノシンの分解及び組織内の核酸の代謝回転に必要であり、ADAの2つのアイソフォームであるADA1及びADA2を含む。
【0010】
ICOS/ICOSL経路は、抗チェックポイント阻害剤の最適な治療効果に必要であり、したがって、この経路は、抗癌療法の有効性を改善するための将来の組合せ戦略の標的として関係があるとされている。ICOS/ICOSL経路は、抗CTLA-4の最適な抗腫瘍活性に重要であることが示されている(非特許文献3)。
【0011】
特許文献1は、アデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格と、アデノウイルスE1のRb結合定常領域2における24bpの欠失(D24)と、アデノウイルスE3領域のgp19k/6.7Kの欠失の代わりに、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)をコードする核酸配列とを含む、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを開示している。特許文献2はアデノウイルスに関するものである。例示的な腫瘍溶解性ウイルスとしては、ヒトE2F-1プロモーターが必須のE1aウイルス遺伝子の発現を駆動することで、ウイルス複製及び細胞毒性をRb経路欠損腫瘍細胞及びDNX-2401(以前はD24-RGDと呼ばれていた)に制限する、条件付きで複製する腫瘍溶解性血清型5アデノウイルス(Ad5)が挙げられ、これは、網膜芽細胞腫(Rb)経路欠損細胞において選択的に複製し、或る特定のRGD結合インテグリンをより効率的に発現する細胞に感染するように設計されたアデノウイルスである。
【0012】
それでも、より効率的で正確な遺伝子導入、並びに遺伝子治療の特異性の向上及び十分な腫瘍殺傷能力が必要とされている。治療用ベクターの安全記録も優れていなければならない。本発明は、新規で独創的な方法でアデノウイルスの腫瘍溶解性及び免疫療法性の両方の特性を利用することにより、これらの上記の特性を有する癌治療手段を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第2379586号
【特許文献2】国際公開第2016126608号
【0014】
【非特許文献1】Hutloff et al., 1999
【非特許文献2】Khayyamian et al., 2002
【非特許文献3】Fu et al., 2011
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、アデノウイルスの上記の特性を達成し、したがって、従来の癌治療法の課題を解決するための新規な方法及び手段を提供することである。より具体的には、本発明は、遺伝子治療のための新規な方法及び手段を提供する。
【0016】
アデノシン-アデノシンの誘導体(ATP、ADP)は、自然界に広く見られ、生化学的プロセスで重要な役割を果たす。複数の免疫抑制機構が、抗腫瘍免疫を妨げる。それらの中でも、細胞外アデノシンの蓄積は、プリン作動性受容体の活性化を通じて免疫監視を回避するために腫瘍によって利用される強力で広範な戦略である。腫瘍では、この経路が乗っ取られて抗腫瘍免疫が妨げられ、癌の進行が促進する(Allard et al., 2016)。アデノシンシグナル伝達は、ほとんどの免疫エフェクター細胞の機能をダウンレギュレートするが、抗腫瘍免疫応答の抑制に関与する免疫細胞の増殖及び活性を高める。アデノシンは、免疫制御からの腫瘍エスケープを促進する。これにより、アデノシン作動性経路を標的とする治療法が癌患者に利益をもたらすと見なすことができる(Muller-Haegele et al., 2014)。
【0017】
アデノシンデアミナーゼ(ADA)は、プリン代謝に関与する酵素であり、アデノシンを代謝することによって腫瘍の進行を阻害することができる(Kutryb-Zajac et al., 2018, Londono-R et al., 2018)。これは、癌免疫療法用のアデノシン経路の阻害剤の可能性のある用途を示す(Ohta, 2016)。
【0018】
本発明者らは、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバーとADAとの発現の組合せが腫瘍根絶に有益な効果を有するであろうと仮定した。より具体的には、本発明者らは、ICOSL及びADA1をコードする二重導入遺伝子コンストラクト(TGX-11)が腫瘍溶解性ウイルスの特性(すなわち、癌細胞制限複製のためのE1A領域における24bpの欠失の事実による腫瘍溶解(Kuryk et al., 2016)、またファイバーノブ改変(キメラウイルス5/3ノブ)による指向性の増強(Kuryk et al., 2018))を利用するという仮説を立てた。腫瘍溶解特性に加えて、2つの導入遺伝子の存在により、コンストラクトは、ICOSLとT細胞上のその受容体との相互作用によるT細胞活性化の増加、及びアデノシンの阻害による(ADAによる)抑制性腫瘍微小環境の低下により、抗腫瘍効果の増強を示すことができ、腫瘍抗原の交差提示、癌特異的T細胞のプライミング、及び腫瘍微小環境の調節の強化をもたらす。このコンストラクトは、ウイルスを注入した腫瘍と遠隔腫瘍との両方で、活性化T細胞の浸潤を改善することができる。また、ICOSL及びADA1を発現する腫瘍溶解性ウイルスTGX-11による免疫調節は、免疫チェックポイント遮断の全身的有効性を駆動するための有効な戦略となり得る。
【0019】
コンストラクトの腫瘍溶解特性を伴って生成された導入遺伝子は、相乗的な抗癌効果及び改善された臨床転帰をもたらすことができる。
【0020】
二重導入遺伝子ウイルスは、両方の導入遺伝子が別々のウイルスによってコードされているが一緒に使用されているモデルと比較して、より効率的なモデルであることがわかった。二重導入遺伝子では、特に臨床研究において、導入遺伝子を別々に発現する複合ウイルスに比べて生産プロセスが簡素化される。
【0021】
本出願は、組換えウイルスベクターの構築、ベクターに関連する方法、並びに腫瘍細胞株及び動物モデルにおけるそれらの使用について記載する。
【0022】
本発明は、アデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格と、アデノウイルスE1のRb結合定常領域2における24bpの欠失(D24)と、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAの導入遺伝子をコードする核酸配列とを含む腫瘍溶解性アデノウイルスベクターに関する。さらに、アデノウイルスE3領域において欠失された2.7kbpの代わりにIRESが存在する場合がある。
【0023】
本発明は更に、本発明のアデノウイルスベクターを含む細胞に関する。
【0024】
本発明はまた、本発明のアデノウイルスベクターを含む医薬組成物に関する。
【0025】
本発明はまた、被験体において癌を治療するための薬剤の製造における本発明のアデノウイルスベクターの使用に関する。
【0026】
本発明はまた、被験体において癌を治療する方法であって、被験体への本発明のベクター又は医薬組成物の投与を含む、方法に関する。
【0027】
さらに、本発明はまた、細胞内で共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを産生する方法であって、a)本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを含むビヒクルを細胞に運ぶことと、b)細胞内で上記ベクターの共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを発現させることとを含む、方法に関する。
【0028】
さらに、本発明はまた、被験体において腫瘍特異的免疫応答を高める方法であって、a)本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを含むビヒクルを標的の細胞又は組織に運ぶことと、b)細胞内で上記ベクターの共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを発現することと、c)上記標的の細胞又は組織中の細胞傷害性T細胞及び/又はナチュラルキラー細胞の量を増加させることとを含む、方法に関する。
【0029】
さらに、本発明はまた、細胞内で共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを産生するための本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの使用に関する。
【0030】
さらに、本発明はまた、被験体において腫瘍特異的免疫応答を高めるための本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの使用に関する。
【0031】
本発明は、癌(幾つかは現在のアプローチに抵抗性である)を治療する手段を提供する。また、治療に適した腫瘍の種類に関する制限は、他の多くの治療と比較してほとんどない。実際、全ての固形腫瘍を、提案される発明で治療することができる。質量がより大きな腫瘍及びより複雑な腫瘍を、本発明を使用することによって治療することができる。治療は、腫瘍内、腔内、静脈内、及びこれらの組合せで行うことができる。このアプローチは、局所注射にもかかわらず全身的な有効性を与えることができる。このアプローチはまた、腫瘍創始細胞(tumor initiating)として提案された細胞(「癌幹細胞」)を根絶することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】pTGX-04/pTGX-05用シャトルプラスミドのシャトルプラスミド構成を示す図である。
図2】pTGX-11(CMV(CuO)-ICOSL-IRES-ADA-SV40pA)用シャトルプラスミドのシャトルプラスミド構成を示す図である。
図3】TGX-04(AdV5/3-D24-ICOSL)、TGX-05(AdV5/3-D24-ADA)、TGX-11(AdV5/3-D24-CMV(CuO)-ICOSL-IRES-ADA-SV40pA)のコスミド構成を示す図である。
図4】TGX-04(AdV5/3-D24-ICOSL)ウイルスの構造を示す図である。E3領域に挿入されたICOSL(機能的発現カセット、場所:28371bp~29279bp)。このウイルスは、E1A CR2に24bpの欠失を含み(E1A中のRbタンパク質(LTCHEAGF)に対する2つの結合部位のうち最も強いものが除去された24bpの欠失を有するE1A保存領域2(CR2)、907bp~951bp)、Ad5/3ハイブリッドファイバー(場所:30967bp~32730bp)を発現する。ヌクレオチド配列は添付物(TGX-04)に含まれる。E1A、E3及びファイバーの領域における3つの遺伝子改変の配列同一性。
図5】TGX-05(AdV5/3-D24-ADA)ウイルスの構造を示す図である。E3領域に挿入されたADA(機能的発現カセット、場所:28371bp~30476bp)。このウイルスは、E1A CR2に24bpの欠失を含み(E1A中のRbタンパク質(LTCHEAGF)に対する2つの結合部位のうち最も強いものが除去された24bpの欠失を有するE1A保存領域2(CR2)、場所:907bp~951bp)、Ad5/3ハイブリッドファイバー(場所:32164bp~33927bp)を発現する。ヌクレオチド配列は添付物(TGX-05)に含まれる。E1A及びファイバーの領域における遺伝子改変の配列同一性;ADA CDS中のサイレント変異。
図6】TGX-11(AdV5/3-D24-CMV(CuO)-ICOSL-IRES-ADA-SV40pA)ウイルスの構造を示す図である。E3領域に挿入されたCMVプロモーター(28172~28705)及びCuOの制御下でのICOSL(機能的発現カセット、場所:28904bp~29812bp)-IRES(29813bp~30384bp)-ADA(機能的発現カセット、場所:31207~31950)-SV40pAの発現。このウイルスは、E1A CR2に24bpの欠失を含み(E1A中のRbタンパク質(LTCHEAGF)に対する2つの結合部位のうち最も強いものが除去された24bpの欠失を有するE1A保存領域2(CR2)、場所:907bp~951bp)、Ad5/3ハイブリッドファイバー(場所:32885bp~34648bp)を発現する。ヌクレオチド配列は添付物(TGX-13)に含まれる。E1A及びファイバーの領域における遺伝子改変の配列同一性;-マルチクローニング部位の2つの欠失である、ADA CDS中のサイレント変異。
図7a】感染後72時間後の1000VP/細胞の濃度でのヒト黒色腫細胞株A375の生存率に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。未処理細胞の吸光度を100%として表し、処理された細胞の吸光度を未処理細胞の吸光度のパーセンテージとして表す。結果を平均±SEMで表す。
図7b】感染後72時間後の1VP/細胞の濃度でのヒト黒色腫細胞株SK-MEL-2の生存率に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。未処理細胞の吸光度を100%として表し、処理された細胞の吸光度を未処理細胞の吸光度のパーセンテージとして表す。結果を平均±SEMで表す。
図7c】感染後72時間後の1000VP/細胞の濃度でのヒト黒色腫細胞株SK-MEL-2の生存率に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。未処理細胞の吸光度を100%として表し、処理された細胞の吸光度を未処理細胞の吸光度のパーセンテージとして表す。結果を平均±SEMで表す。
図7d】感染後72時間後の1000VP/細胞の濃度でのヒト黒色腫細胞株A2058の生存率に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。未処理細胞の吸光度を100%として表し、処理された細胞の吸光度を未処理細胞の吸光度のパーセンテージとして表す。結果を平均±SEMで表す。
図8】感染の72時間後の1000VP/細胞の濃度でのヒト細胞株A2058の細胞死誘導(アポトーシス)に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。アポトーシスの量を、試験した細胞株に対するアネキシンV染色によって評定した。結果を未処理細胞のパーセンテージとして表す。結果を平均±SEMで表す。
図9a】感染の72時間後の0.1VP/細胞の濃度で処理されたヒト細胞株A375の免疫原性細胞死(ATP放出の誘導)に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。ATPアッセイキットを使用してATP量を評価した。結果を未処理細胞のパーセンテージとして表す。結果を平均±SEMで表す。
図9b】感染の72時間後の10VP/細胞の濃度で処理されたヒト細胞株SKMEL-2の免疫原性細胞死(ATP放出の誘導)に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。ATPアッセイキットを使用してATP量を評価した。結果を未処理細胞のパーセンテージとして表す。結果を平均±SEMで表す。
図9c】感染の72時間後の0.1VP/細胞の濃度で処理されたヒト細胞株SKMEL-28の免疫原性細胞死(ATP放出の誘導)に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。ATPアッセイキットを使用してATP量を評価した。結果を未処理細胞のパーセンテージとして表す。結果を平均±SEMで表す。
図10】感染の72時間後の1000VP/細胞の濃度で処理されたヒト細胞株A375の免疫原性細胞死(カルレティキュリン曝露の誘導)に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。細胞の表面のカルレティキュリンを抗カルレティキュリン抗体で染色した。結果をカルレティキュリン陽性細胞のパーセンテージとして表す。結果を平均±SEMで表す。
図11】感染の72時間後の10VP/細胞の濃度で処理されたヒト細胞株A2058の免疫原性細胞死(HMGB1放出の誘導)に対する試験された腫瘍溶解性アデノウイルスの効果を示す図である。細胞の表面のカルレティキュリンを抗カルレティキュリン抗体で染色した。結果をng/mlで表す。結果を平均±SEMで表す。
図12a】屠殺時の腫瘍における免疫浸潤表現型を示す図である。ヒトグランザイムB+CD8 T細胞の%;免疫浸潤を屠殺時の腫瘍のフローサイトメトリーによって分析した。1群あたりN=6個~12個の腫瘍。各群について、個々のデータ及び平均±最小及び最大ウィスカー(whiskers:ひげ)を表示する。Anova検定を使用した。
図12b】屠殺時の腫瘍における免疫浸潤表現型を示す図である。ヒトPD1+CD8 T細胞の%;免疫浸潤を屠殺時の腫瘍のフローサイトメトリーによって分析した。1群あたりN=6個~12個の腫瘍。個々のデータ及び平均±最小及び最大ウィスカーを表示する。
図12c】屠殺時の腫瘍における免疫浸潤表現型を示す図である。ヒトCD4 T細胞の数/両方の腫瘍g;免疫浸潤を、屠殺時の腫瘍のフローサイトメトリーによって分析した。1群あたりN=6個~12個の腫瘍。個々のデータ及び平均±最小及び最大ウィスカーを表示する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
配列表
配列番号1.腫瘍溶解性アデノウイルスベクターAdV5/3-D24-CMV(CuO)-ICOSL-IRES-ADA-SV40pA(TGX-11)をコードする核酸配列。E3領域に挿入されたCMVプロモーター(28172~28705)及びCuOの制御下でのICOSL(機能的発現カセット、場所:28904bp~29812bp)-IRES(29813bp~30384bp)-ADA(機能的発現カセット、場所:31207~31950)-SV40pAの発現。このウイルスは、E1A CR2に24bpの欠失を含み(E1A中のRbタンパク質(LTCHEAGF)に対する2つの結合部位のうち最も強いものが除去された24bpの欠失を有するE1A保存領域2(CR2)、場所:907bp~951bp)、Ad5/3ハイブリッドファイバー(場所:32885bp~34648bp)を発現する。ヌクレオチド配列は添付物(TGX-13)に含まれる。E1A及びファイバーの領域における遺伝子改変の配列同一性;-マルチクローニング部位の2つの欠失である、ADA CDS中のサイレント変異。
配列番号2.腫瘍溶解性アデノウイルスベクターAdV5/3-D24-ICOSL(TGX-04)をコードする核酸配列。E3領域に挿入されたICOSL(機能的発現カセット、場所:28371bp~29279bp)。このウイルスは、E1A CR2に24bpの欠失を含み(E1A中のRbタンパク質(LTCHEAGF)に対する2つの結合部位のうち最も強いものが除去された24bpの欠失を有するE1A保存領域2(CR2)、907bp~951bp)、Ad5/3ハイブリッドファイバー(場所:30967bp~32730bp)を発現する。ヌクレオチド配列は添付物(TGX-04)に含まれる。E1A、E3及びファイバーの領域における3つの遺伝子改変の配列同一性。
配列番号3.腫瘍溶解性アデノウイルスベクターAdV5/3-D24-ADA(TGX-05)をコードする核酸配列。E3領域に挿入されたADA(機能的発現カセット、場所:28371bp~30476bp)。このウイルスは、E1A CR2に24bpの欠失を含み(E1A中のRbタンパク質(LTCHEAGF)に対する2つの結合部位のうち最も強いものが除去された24bpの欠失を有するE1A保存領域2(CR2)、場所:907bp~951bp)、Ad5/3ハイブリッドファイバー(場所:32164bp~33927bp)を発現する。ヌクレオチド配列は添付物(TGX-05)に含まれる。E1A及びファイバーの領域における遺伝子改変の配列同一性;ADA CDS中のサイレント変異。
配列番号4.E1A中のRbタンパク質に対する結合部位。
配列番号5.CR2-D24(コンストラクトTGX-04内)。
配列番号6.Ad5/3ファイバー(TGX-04)。
配列番号7.ICOSL(TGX-04)。
配列番号8.CR2-D24(TGX-05)。
配列番号9.Ad5/3ファイバー(TGX-05)。
配列番号10.ADA(TGX-05)。
配列番号11.CR2-D24(TGX-11)。
配列番号12.Ad5/3ファイバー(TGX-11)。
配列番号13.CMVプロモーター/エンハンサー(TGX-11)。
配列番号14.CUO(TGX-11)。
配列番号15.ICOSL(TGX-11)。
配列番号16.IRES(TGX-11)。
配列番号17.ADARB1(ADA)(TGX-11)。
配列番号18.SV40ポリ(A)シグナル(TGX-11)。
配列番号19.プライマー288-17。
配列番号20.プライマー288-41。
配列番号21.プライマー288-18。
配列番号22.プライマー288-19。
配列番号23.プライマー288-20。
配列番号24.プライマー288-21。
【0034】
本開示の詳細な説明
本発明の二重導入遺伝子腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、アデノウイルスE1のRb結合定常領域2(CR2)に24bpの欠失(D24)を有するアデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格に基づく。ベクターは、アデノウイルスE3領域の欠失された2.7kbpの代わりに、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバーをコードする核酸配列と、ADAをコードする核酸配列とを含む。本発明の好ましい実施形態において、アデノウイルスベクター骨格は、特許文献1に開示されるONCOS-102であり、これは、GM-CSF/E3領域の代わりにIRES又はP2A配列に接続された共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAの導入遺伝子を含む。
【0035】
好ましくは、免疫調節リガンドのB7ファミリーはICOSLである。ICOSLの代わりに、プログラム死1リガンド(PD-L1)、プログラム死2リガンド(PD-L2)、B7-H3、及びB7-H4等の免疫調節リガンドのB7ファミリーの他のリガンドも本発明において使用され得る。最も好ましくは、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバーは、ヒトICOSLである。
【0036】
アデノシンデアミナーゼはADA1又はADA2であり得る。好ましくは、ADAはヒトADA1である。
【0037】
実験の結果は、二重導入遺伝子ウイルスの驚くべき優れた効果を示した。ICOSL及びADA1をコードする二重導入遺伝子ウイルス(TGX-11)は、単一導入遺伝子ウイルスTGX-04(ICOSLをコードする)、TGX-05(ADA1をコードする)、及びTGX-04とTGX-05との組合せ療法よりも、幾つかの異なる細胞型において抗癌優位性を示した(図7a~図7d、図8図9a~図9c、図10図11、及び図12a~図12c)。
【0038】
野生型アデノウイルスゲノムと比較して、本発明のアデノウイルスベクターは、E1領域、特にE1A領域においてCR2からの24塩基対、及びE3領域において2.7kbpを欠く。E1の24塩基対の欠失(D24)は、Rb腫瘍抑制因子/細胞周期調節タンパク質の結合に関与するCR2ドメインに影響を及ぼし、したがって、合成(S)期、すなわちDNA合成又は複製期の誘導を可能にする。pRbとE1Aとの相互作用には、E1Aタンパク質の保存領域の8つのアミノ酸121~127が必要であり、これらは本発明では欠失されている。D24を有するウイルスは、G1-Sチェックポイントを克服し、この相互作用が不要な細胞、例えばRb-p16経路に欠陥のある腫瘍細胞で効率的に複製する能力が低下していることが知られている。
【0039】
E3領域は、in vitroでのウイルス複製に必須ではないが、E3タンパク質は、宿主の免疫応答の調節、すなわち自然免疫応答と特異的免疫応答との両方の阻害に重要な役割を果たす。E3の欠失は、アデノウイルスE3A領域からの2.7k塩基対の欠失を指す。得られたアデノウイルスコンストラクトでは、gp19k遺伝子及び6.7K遺伝子と共に2.7kbpが欠失されている。gp19k遺伝子産物は、小胞体において主要組織適合遺伝子複合体I(MHC1)分子に結合して隔離し、細胞傷害性Tリンパ球による感染細胞の認識を防ぐことが知られている。多くの腫瘍はMHC1を欠損しているため、gp19kを欠失すると、ウイルスの腫瘍選択性が高まる(ウイルスは、野生型ウイルスよりも早く正常細胞から除去されるが、腫瘍細胞では違いがない)。6.7Kタンパク質は細胞表面に発現し、TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL)受容体2のダウンレギュレーションに関与する。
【0040】
IRESと略記される内部リボソーム侵入部位は、タンパク質合成のより大きなプロセスの一部として、キャップに依存しない方法で翻訳開始を可能にするRNA要素である。真核生物の翻訳では、開始複合体の組み立てには5’キャップ認識が必要であるため、開始は典型的には、mRNA分子の5’末端で発生する。
【0041】
これらの大きなIRES配列の代わりに、はるかに短い自己切断2Aペプチドを使用することができる。ウイルス由来のペプチド配列はリボソームスキッピング事象を媒介し、1つのmRNAから複数の別々のペプチド産物を生成することを可能にする。ブタテッショウウイルス-1(P2A)由来のペプチドは、複数の導入遺伝子の発現を促進する。
【0042】
本発明では、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAの導入遺伝子は、E3プロモーター又はCMV(Cuo)プロモーターの下で、2.7kbpの欠失したE3領域に配置される。これにより、導入遺伝子の発現が腫瘍細胞に制限され、ウイルスの複製及びそれに続くE3プロモーターの活性化が可能になる。E3プロモーターは、当該技術分野で知られている任意の外因性又は内因性のプロモーター、好ましくは内因性プロモーターであり得る。本発明の好ましい実施形態において、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAをコードする核酸配列は、ウイルスE3プロモーターの制御下にある。CMV(CuO)プロモーターは、cumateオペレーター(CuO)のコピーを含む。「通常の」293細胞及びその他の細胞株では、CuOオペレーターは不活性であり、転写はCMVプロモーターから行われる。CymRリプレッサーを発現する293-CymR細胞では、CymRリプレッサーがCuOオペレーターに結合し、それによって導入遺伝子の転写が妨げられる。
【0043】
本発明のベクターはまた、上で言及されるように、CR2及びE3の部分的欠失並びにICOSL配列及びADA配列の挿入以外の改変を含み得る。本発明の好ましい実施形態において、Ad5ベクターの他の全ての領域は野生型である。本発明の別の好ましい実施形態において、E4領域は野生型である。本発明の好ましい実施形態において、野生型領域は、E1領域の上流に位置する。「上流」とは、発現方向においてE1領域の直前を指す。E1 B領域はまた、本発明のベクターにおいて改変され得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、キャプシドの「Ad5/3キメラ化」は、ファイバーのノブ部分がAd血清型3に由来し、ファイバーの残りがAd血清型5に由来するキメラ化を指す。
【0045】
発現カセットは、ベクターを利用して、細胞等の標的で導入遺伝子を発現させるために使用される。本明細書で使用される場合、「発現カセット」という表現は、cDNA又は遺伝子をコードするヌクレオチド配列、及び該cDNA又は遺伝子の発現を制御及び/又は調節するヌクレオチド配列を含むDNAベクター又はその一部を指す。類似又は異なる発現カセットを、1つのベクター又は幾つかの異なるベクターに挿入することができる。本発明のAd5ベクターは、幾つか又は1つの発現カセットのいずれかを含み得る。しかしながら、1つの発現カセットのみで十分足りる。本発明の好ましい実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、少なくとも1つの発現カセットを含む。本発明の好ましい実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、1つの発現カセットのみを含む。
【0046】
本発明のアデノウイルスベクターを含む細胞は、真核生物の細胞、細菌細胞、動物細胞、ヒト細胞、マウス細胞等の任意の細胞であり得る。細胞は、in vitro、ex vivo又はin vivoの細胞であり得る。例えば、細胞は、in vitro、ex vivo、若しくはin vivoでアデノウイルスベクターを産生するために使用され得るか、又は細胞は、アデノウイルスベクターに感染した腫瘍細胞等の標的であり得る。
【0047】
細胞内で共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAの導入遺伝子を産生する方法において、本発明のベクターを含むビヒクルが細胞に運ばれ、更に共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAの導入遺伝子が発現され、そしてタンパク質が翻訳されてパラクリン様式で分泌される。「ビヒクル」は、本発明のベクターを標的細胞に送達することができる、任意のウイルスベクター、プラスミド、又は粒子等の他のツールであり得る。ベクターを細胞に送達するために、当該技術分野で知られている任意の従来の方法を使用することができる。
【0048】
腫瘍特異的免疫応答は、本発明によって被験体において高められ得る。ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、及び/又はナチュラルキラー細胞は、コンストラクトの特性の結果として刺激され、産生され、標的化される。
【0049】
本発明の組換えAd5ベクターは、Rb経路、具体的にはRb-p16経路に欠陥がある細胞における複製能力に対して構築されている。これらの欠陥細胞は、動物及びヒトの全ての腫瘍細胞を含む。本発明の好ましい実施形態において、ベクターは、Rb経路に欠陥を有する細胞において選択的に複製可能である。本明細書で使用される場合、「Rb経路の欠陥」は、経路の任意の遺伝子又はタンパク質における変異及び/又はエピジェネティックな変化を指す。これらの欠陥のため、腫瘍細胞はE2Fを過剰発現し、したがって、効果的な複製に通常必要とされるE1A CR2によるRbの結合が不要である。
【0050】
悪性腫瘍と良性腫瘍との両方、並びに原発腫瘍と転移とを含む全ての癌又は腫瘍は、遺伝子治療の標的となり得る。本発明の特定の実施形態において、癌は任意の固形腫瘍である。本発明の好ましい実施形態において、癌は、鼻咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、咽喉癌(throat cancer)、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォンヒッペル-リンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、脳癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルチノイド、胃腸管のカルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、結腸直腸癌、直腸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼癌、頸部癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポシ肉腫、前立腺癌、肺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴノーマ、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、トロホブラスト癌(trophoblastic cancer)、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫瘍、菌状息肉腫、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチノーマ、歯肉癌、心臓癌、下咽頭癌(Hp cancer)、髄膜癌、口の癌(mouth cancer)、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌、及び扁桃癌からなる群より選択される。
【0051】
本発明の医薬組成物は、本発明のベクターの少なくとも1つのタイプを含む。さらに、組成物は、本発明の少なくとも2つ又は3つの異なるベクターを含み得る。本発明のベクターに加えて、医薬組成物はまた、他のアデノウイルスベクター等の任意の他のベクター、他の治療上有効な作用物質、薬学的に許容可能な担体、緩衝剤、賦形剤、アジュバント、防腐剤、充填剤、安定剤若しくは増粘剤等の任意の他の作用物質、及び/又は対応する製品に通常見られる任意の成分も含み得る。
【0052】
医薬組成物は、投与に適した、固体、半固体、又は液体の形態等の任意の形態であり得る。製剤は、限定されるものではないが、溶液、エマルション、懸濁液、錠剤、ペレット剤及びカプセル剤からなる群より選択され得る。
【0053】
ベクターの有効用量は、少なくとも治療を必要とする被験体、腫瘍の種類、腫瘍の場所、及び腫瘍の病期に依存する。用量は、例えば、約10e8ウイルス粒子(VP)~約10e14VP、好ましくは約5×10e9VP~約10e13VP、より好ましくは約8×10e9VP~約10e12VPで変化し得る。本発明の特定の一実施形態において、用量は、約5×10e10VP~5×10e11VPの範囲にある。
【0054】
本発明のベクター又は医薬組成物は、植物、動物及びヒトからなる群より選択される任意の真核生物の被験体に投与することができ、本発明の好ましい実施形態において、被験体はヒト又は動物である。動物を、ペット、家畜及び生産動物からなる群より選択することができる。
【0055】
ベクター又は組成物を被験体に投与するために、任意の従来の方法を使用することができる。投与経路は、組成物の処方又は形態、疾患、腫瘍の場所、患者、併存症及び他の要因に依存する。本発明の好ましい実施形態において、投与は、腫瘍内、筋肉内、動脈内、静脈内、胸膜内、小胞内、腔内若しくは腹腔内の注射、又は経口投与によって行われる。
【0056】
本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは1回だけの投与で治療効果を有し得る。しかしながら、本発明の好ましい実施形態において、腫瘍溶解性アデノウイルスベクター又は医薬組成物は、治療期間中に数回投与される。腫瘍溶解性アデノウイルスベクター又は医薬組成物を、例えば、最初の2週間、4週間、毎月、又は治療期間中に1回~10回投与することができる。本発明の一実施形態において、投与は、最初の2週間、次いで4週間目に、その後毎月3回~7回行われる。本発明の特定の実施形態において、投与は、最初の2週間、次いで4週間目に、その後毎月4回行われる。治療期間の長さは様々な場合があり、例えば、2ヶ月~12ヶ月以上続く場合がある。
【0057】
本発明の遺伝子治療は単独で有効であるが、アデノウイルス遺伝子治療と従来の治療法等の他の治療法との組合せは、いずれか単独よりも有効であり得る。例えば、併用療法の各作用物質は、腫瘍組織において独立して作用することができ、アデノウイルスベクターは、化学療法若しくは放射線療法に対して細胞を感作することができ、及び/又は化学療法剤は、ウイルス複製のレベルを増強し、若しくは標的細胞の受容体状態に影響を及ぼし得る。併用療法の作用物質を同時に又は連続して投与することができる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態において、方法又は使用は、被験体への同時放射線療法の適用を更に含む。本発明の別の好ましい実施形態において、方法又は使用は、被験体への同時化学療法の適用を更に含む。本明細書で使用される場合、「同時」は、本発明の遺伝子治療の前、その後、又はそれと同時に適用された治療法を指す。同時療法の期間は、数分から数週間まで様々な場合がある。好ましくは、同時療法は数時間続く。
【0059】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤」又は「チェックポイント阻害剤」という用語は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を全体的又は部分的に低減、阻害、干渉、又は調節する分子を指す。チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化又は機能を調節する。免疫チェックポイントプロセスの中心は、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)及びプログラム死1(PD-1)の免疫チェックポイント経路である。CTLA-4及びPD-1の経路は、免疫応答の種々の段階で機能すると考えられている。CTLA-4は、ナイーブT細胞活性化の初期段階で、典型的にはリンパ節において自己反応性T細胞を停止させる可能性があるため、免疫チェックポイント阻害剤の「リーダー(leader)」と見なされる。PD-1経路は、主に末梢組織において、免疫応答の後期に先に活性化されたT細胞を調節する。
【0060】
免疫チェックポイント経路の阻害により、イピリムマブ(抗CTLA-4;Yervoy(商標))、ペムブロリズマブ(抗PD-1;Keytruda(商標))、ニボルマブ(抗PD-1;Opdivo(商標))の幾つかの新薬が承認された。また、アテゾリズマブ(MPDL3280)、アベルマブ(MSB0010718C)、及びデュルバルマブ(MEDI4736)等のPD-L1阻害剤も利用可能である。これらのアンタゴニスト抗体は、癌患者の客観的な臨床応答と関連付けられている。CTLA-4を標的とする抗体は、転移性黒色腫用に既に市販されている(例えば、イピリムマブ、Yervoy、Bristol-Myers Squibb、BMS)。抗PD-L1(例えば、MPDL3280A、Roche)、抗PD-1(例えば、ニボルマブ、BMS)による抗体療法も進行中である。
【0061】
他の免疫チェックポイント阻害剤としては、可溶性Ig融合タンパク質であるIMP321等のリンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)阻害剤が挙げられる。他の免疫チェックポイント阻害剤としては、B7-H3及びB7-H4の阻害剤等のB7阻害剤、特に、抗B7-H3抗体MGA271が挙げられる。TIM3(T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3)阻害剤も挙げられる。或る特定の実施形態において、PD-1遮断薬としては、抗PD-L1抗体が挙げられる。或る特定の他の実施形態において、PD-1遮断薬としては、抗PD-1抗体、及びニボルマブ(MDX 1106、BMS 936558、ONO 4538)、PD-1にそのリガンドPD-L1及びPD-L2によって結合してPD-1の活性化を遮断する完全ヒトIgG4抗体30等の同様の結合タンパク質;ランブロリズマブ(MK-3475又はSCH 900475)、PD-1に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体;PD-1に結合するヒト化抗体CT-011;B7-DCの融合タンパク質であるAMP-224;抗体Fc部分;PD-L1(B7-H1)遮断用のBMS-936559(MDX-1105-01)が挙げられる。或る特定の実施形態において使用することができるPD-L1阻害剤の更なる例は、アテゾリズマブ(MPDL3280)、アベルマブ(MSB0010718C)、及びデュルバルマブである。
【0062】
好ましくは、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブ(Keytruda)及びニボルマブ(Opdivo)が本発明で使用される。また、デュルバルマブ等のPD-L1阻害剤を抗PD-1抗体と組み合わせて使用することができる。したがって、本発明の好ましいチェックポイント阻害剤は、PD-1及びPD-L1に対するものである。
【0063】
併用療法に適した作用物質としては、限定されるものではないが、オールトランスレチノイン酸、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イマチニブ、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンが挙げられる。
【0064】
本発明の好ましい実施形態において、方法又は使用は、被験体へのベラパミル又は別のカルシウムチャネル遮断薬の投与を更に含む。「カルシウムチャネル遮断薬」は、カルシウムチャネルの伝導を妨害する薬物及び天然物質のクラスを指し、ベラパミル、ジヒドロピリジン、ガロパミル、ジルチアゼム、ミベフラジル、ベプリジル、フルスピリレン及びフェンジリンからなる群より選択され得る。
【0065】
本発明の好ましい実施形態において、方法又は使用は、被験体へのオートファジー誘導剤の投与を更に含む。オートファジーとは、リソソーム機構を介した細胞自体の成分の分解を伴う異化プロセスを指す。「オートファジー誘導剤」は、オートファジーを誘導することができる作用物質を指し、限定されるものではないが、mTOR阻害剤、P13K阻害剤、リチウム、タモキシフェン、クロロキン、バフィロマイシン、テムシロリムス、シロリムス及びテモゾロミドからなる群より選択され得る。本発明の特定の実施形態において、方法は、被験体へのテモゾロミドの投与を更に含む。テモゾロミドは、経口又は静脈内テモゾロミドのいずれかであり得る。
【0066】
本発明の一実施形態において、方法又は使用は、化学療法若しくは抗CD20療法、又は中和抗体を遮断するための他のアプローチの適用を更に含む。「抗CD20療法」は、CD20陽性細胞を死滅させることができる作用物質を指し、リツキシマブ及び他の抗CD20モノクローナル抗体からなる群より選択され得る。「中和抗体を遮断するためのアプローチ」は、通常は感染に起因する抗ウイルス抗体の生成を阻害することができる作用物質を指し、種々の化学療法剤、免疫調節物質、コルチコイド及び他の薬物からなる群より選択され得る。これらの物質は、限定されるものではないが、シクロホスファミド、シクロスポリン、アザチオプリン、メチルプレドニゾロン、エトポシド、CD40L、CTLA4Ig4、FK506(タクロリムス)、IL-12、IFN-ガンマ、インターロイキン10、抗CD8抗体、抗CD4抗体、骨髄破壊及び経口アデノウイルスタンパク質からなる群より選択され得る。
【0067】
本発明の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、腫瘍細胞のビリオン媒介性腫瘍溶解を誘導し、腫瘍細胞に対するヒト免疫応答を活性化する。本発明の好ましい実施形態において、方法又は使用は、被験体において制御性T細胞をダウンレギュレートすることができる物質の投与を更に含む。「制御性T細胞をダウンレギュレートすることができる物質」とは、サプレッサーT(T-suppressor)細胞又は制御性T細胞として識別される細胞の数を減らす作用物質を指す。これらの細胞は、CD4+、CD25+、FoxP3+、CD127-及びGITR+の免疫表現型マーカーの1つ又は多くからなることが特定されている。サプレッサーT細胞又は制御性T細胞を減少させるかかる作用物質は、抗CD25抗体又は化学療法剤からなる群より選択され得る。
【0068】
本発明の目的は、アデノウイルス血清型5(Ad5)核酸骨格と、E1のRb結合定常領域2における24bpの欠失(D24)と、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバーをコードする核酸配列及びADAをコードする核酸配列とを含む、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターである。本発明のより好ましい目的は、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAがE3プロモーターの下に配置されている腫瘍溶解性アデノウイルスベクターである。更に別の好ましい実施形態は、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAがCMV(Cuo)プロモーターの下に配置されている腫瘍溶解性アデノウイルスベクターである。更に好ましい目的は、E3に2.7kbpの欠失がある腫瘍溶解性アデノウイルスベクターである。さらに、共刺激リガンドのB7ファミリーがICOSLであり、ADAがADA1である腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、本発明の好ましい態様である。また、共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバーをコードする核酸配列及びADAをコードする核酸配列がIRESと接続されている腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、本発明の好ましい態様である。共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバーをコードする核酸配列及びADAをコードする核酸配列がP2Aと接続されている腫瘍溶解性アデノウイルスベクターもまた、本発明の好ましい態様である。天然のE1Aプロモーターを含む腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、本発明の更に別の好ましい態様である。本発明の別の目的は、キャプシド修飾としてAd5/3キメラ化を更に含むこの腫瘍溶解性アデノウイルスベクターである。本発明の更に別の目的では、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、配列番号1を含む。
【0069】
本発明の1つの目的は、少なくとも1つの発現カセットを含む腫瘍溶解性アデノウイルスベクターである。本発明の別の目的では、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、Rb経路に欠陥を有する細胞において選択的に複製することができる。
【0070】
また、アデノウイルスベクターを含む細胞は、本発明の一態様である。
【0071】
本発明の別の態様は、本発明のアデノウイルスベクターを含む医薬組成物である。癌の治療又は被験体において癌を治療するための薬剤の製造に使用されるアデノウイルスベクターもまた、本発明の一態様である。癌は、鼻咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、咽喉癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォンヒッペル-リンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、脳癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルチノイド、胃腸管のカルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、結腸直腸癌、直腸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼癌、頸部癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポシ肉腫、前立腺癌、肺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴノーマ、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫瘍、菌状息肉腫、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチノーマ、歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口の癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌、及び扁桃癌からなる群より選択され得る。
【0072】
治療の被験体は、ヒト又は動物であり得る。
【0073】
被験体におけるアデノウイルスベクターによる癌の治療は、腫瘍内、筋肉内、動脈内、静脈内、胸膜内、小胞内、腔内若しくは腹腔内の注射、又は経口投与によって行われ得る。注射又は投与は、治療期間中に数回行われ得る。また、以前の治療のベクターと比較して異なるファイバーノブのキャプシドを有する腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを使用することができる。被験体における癌の治療は、被験体への同時放射線療法及び/又は同時化学療法の適用を更に含み得る。被験体における癌の治療は、チェックポイント阻害剤、ベラパミル又は別のカルシウムチャネル遮断薬、オートファジー誘導剤、テモゾロミド、化学療法剤若しくは抗CD20療法剤、又は中和抗体を遮断するための他のアプローチ、及び/又は被験者において制御性T細胞をダウンレギュレートすることが可能な物質の投与を更に含み得る。
【0074】
共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAをin vitroにおいて細胞内で産生する方法であって、
a.腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを含むビヒクルを細胞に運ぶことと、
b.細胞内で上記ベクターの共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを発現させることと、
を含む、方法は本発明の一態様である。
【0075】
また、in vitroにおいて細胞内で共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを産生するための腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの使用は、本発明の一態様である。
【0076】
本発明の更なる目的は、癌の治療を必要とするヒト被験体において癌を治療する方法であって、配列番号1を含む腫瘍溶解性アデノウイルスと希釈剤又は担体とを含む医薬製剤を治療有効量、投与する、方法である。本発明の別の目的は、配列番号2を含む腫瘍溶解性アデノウイルスと配列番号3を含む腫瘍溶解性アデノウイルスとの組合せを含む医薬製剤を治療有効量、投与する方法である。該方法は、腫瘍内注射を介して、有効量の腫瘍溶解性アデノウイルスベクター又は腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを含む医薬組成物を被験体に投与することを更に含むことができ、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、本発明によるアデノウイルスを含む。該方法では、有効量の腫瘍溶解性アデノウイルスベクターは、5×10e10~5×10e11のウイルス粒子を含む。それらはまた、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターから共刺激リガンドのB7ファミリーのメンバー及びADAを発現する腫瘍において、CD8+T細胞の活性化を含む特異的な抗腫瘍免疫応答を誘導する。上記治療方法では、腫瘍溶解性アデノウイルスベクターを、治療の最初の2週間で3回~7回投与することができる。
【0077】
上記治療方法では、癌は、鼻咽頭癌、滑膜癌、肝細胞癌、腎癌、結合組織の癌、黒色腫、肺癌、腸癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、脳癌、咽喉癌、口腔癌、肝臓癌、骨癌、膵臓癌、絨毛癌、ガストリノーマ、褐色細胞腫、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォンヒッペル-リンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、脳癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨癌、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルチノイド、胃腸管のカルチノイド、線維肉腫、乳癌、パジェット病、子宮頸癌、結腸直腸癌、直腸癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼癌、頸部癌、腎臓癌、ウィルムス腫瘍、肝臓癌、カポシ肉腫、前立腺癌、肺癌、精巣癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、皮膚癌、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣癌、内分泌膵臓癌、グルカゴノーマ、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、下垂体癌、軟組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸癌、胃癌、胸腺癌、甲状腺癌、トロホブラスト癌、胞状奇胎、子宮癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、聴神経腫瘍、菌状息肉腫、インスリノーマ、カルチノイド症候群、ソマトスタチノーマ、歯肉癌、心臓癌、口唇癌、髄膜癌、口の癌、神経癌、口蓋癌、耳下腺癌、腹膜癌、咽頭癌、胸膜癌、唾液腺癌、舌癌、及び扁桃癌からなる群より選択され得る。
【0078】
一実施形態によれば、単数又は複数のアデノウイルスベクター又は医薬組成物の投与は、腫瘍内、筋肉内、動脈内、静脈内、胸膜内、小胞内、腔内若しくは腹腔内の注射、又は経口投与によって実施され得る。別の実施形態によれば、単数又は複数のアデノウイルスベクター又は医薬組成物を、治療期間中に数回投与することができる。好ましい実施形態によれば、同時放射線療法を被験体に適用することができる。より好ましい実施形態によれば、同時化学療法を被験体に適用することができる。更により好ましい実施形態によれば、ベラパミル又は別のカルシウムチャネル遮断薬を被験体に投与することができる。
【0079】
本発明の1つの好ましい目的は、被験体において制御性T細胞をダウンレギュレートすることができる物質を投与することを更に含む、単数又は複数のアデノウイルスベクターによる治療方法である。
【0080】
本発明の任意の方法又は使用は、in vivo、ex vivo又はin vitroの方法又は使用のいずれかであり得る。
【0081】
本発明を以下の実施例によって解説するが、これらは決して限定することを意図するものではない。
【実施例
【0082】
腫瘍溶解性ウイルスのクローニング
腫瘍溶解性ウイルスを、遺伝子工学ツールを使用して構築した。腫瘍溶解性ベクターの構築は、以下の工程を含んだ。
【0083】
1.シャトルプラスミドの構築:
TGX-04/05の場合、ベクターAd5/3-d24-GMCSFのGM-CSFコード配列と全く同じ位置でE3領域に導入遺伝子を挿入した。そのベクターでは、E3 6.7K ORF及びgp19K ORFを包含する0.9kbのBsiWI-MfeIフラグメントが欠失され、GM-CSFコード配列に置き換えられた。このクローニングには、本発明者らは、WT E3領域とハイブリッドAd5/3ファイバーとを含むシャトルプラスミドpAd1129-14を使用した。ICOSLリガンド(ICOSL)配列、ADA(ADARB1)配列を、標準的なクローニング方法を使用して、pAd1129-14のBsiWI部位とMfeI部位との間に挿入した(図1)。シャトルプラスミドの同一性を、制限分析及び配列決定によって確認した。
【0084】
TGX-11の場合、ほとんどのその遺伝子で欠失されるE3領域の代わりに、ジシストロニックカセットCMV-ICOSL-IRES-ADA-SV40pAを挿入した。本発明者らは、Ad5 E3領域及びハイブリッドAd5/3ファイバー遺伝子を含むシャトルプラスミドpAd1129-27を使用した。2.7kbのBglIIフラグメントをE3領域から欠失させ、マルチクローニング部位に置き換えた。標準的なクローニング方法を使用して、両方のジシストロニックカセットをpAd1129-27に挿入した(図2)。プラスミドの同一性を、制限分析及び配列決定によって検証した。
【0085】
2.コスミド構築
組換えアデノウイルスの全ゲノムをコスミドで再構成した(図3)。トランスフェクショングレードのコスミドDNAを精製し、制限分析によってそれらの同一性を確認した。
【0086】
3.ウイルスのレスキュー及び特性評価
工程2で得られたコスミドからのアデノウイルスゲノムの切除、及び293細胞又は293-Cymr細胞又はA549細胞へのトランスフェクション。コンストラクトごとに3つのウイルスプラークを採取し、小規模で増幅した。3種類の酵素(Hirt上清)を使用したゲノムの制限分析により、それらの同一性を検証する。
【0087】
4.ウエスタンブロット
ウイルスからの様々な導入遺伝子の発現は、レポーター細胞株に様々なウイルスクローンを感染させ、感染の24時間後に細胞を溶解し、PAGEによって総タンパク質内容物を分離し、化学発光によって様々な導入遺伝子産物を検出する抗ICOSL抗体及び抗ADA抗体を使用してウエスタンブロッティング(WB)を実施することにより評定した。これらの実験により、増幅及び精製のためにウイルスクローンを選択することができる。
【0088】
5.小規模増幅
ウイルスクローンの小規模増幅、2つのCsCl勾配での精製、等張バッファー(GTSバッファー:2.5%グリセロール、25mM NaCl、20mM Tris-HCl、pH8.0)に対する透析、低タンパク質結合0.22μmフィルターによる濾過、及び紫外線吸収によるウイルス粒子(VP)濃度の決定(Abs260-SDS法)を実施した。
【0089】
6.配列決定によるウイルスの同一性の確認
精製された組換えアデノウイルスの同一性を、E1A CDSにおける24bpの欠失、E3領域に挿入されたモノシストロニック又はジシストロニックカセット全体、Ad5/3ハイブリッドファイバー、及びコスミド構築中に互いにライゲーションされたDNAフラグメント間の接合部を含む、これらの組換えウイルスに特異的なウイルスゲノムの領域を配列決定することによって確認した。実験配列をコンティグに組み立て、ウイルスの予想される配列と整列させた。プロテイナーゼKを使用してCsCl精製ウイルス粒子からウイルスゲノムDNAを抽出し、30μLのTE(pH7.5)に再懸濁した。それらの品質を、分光光度法(Abs260/280/320nm)及びアガロースゲル電気泳動によって評定した。TGXウイルスのDNAを、ショットガンライブラリの作成及び配列決定のため第三者に送った。ライブラリを、Nextera XTキット(Illumina, Inc)を使用して生成した。それらをプールし、qPCRによって定量し、2×300 MiSeqの実行(Illumina, Inc)で配列決定した。.fastqファイルを、プログラム「BWA Aligner」を使用して処理した。ソフトウェアGeneious v11.1.5(Biomatters Ltd)を使用して、.bamファイルを可視化し、コンセンサス配列を計算した。ソフトウェアSnapGene v4.2.6を使用して、コンセンサス配列をウイルスゲノムの予測配列と整列させた。
【0090】
7.ウイルス懸濁液の滴定
ウイルス懸濁液の滴定:ウイルス懸濁液1mLあたりの感染単位の濃度の決定を、TCID50アッセイによって行った。
【0091】
TGX-04(Ad5/3-D24-ICOSL)のクローニングの詳細
以下の性質を特徴とする腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの構築、増幅、精製、滴定、及び特性評価を行う:
E1A CR2における24bpの欠失
E3領域に埋め込まれたICOSLをコードする配列
ハイブリッドAd5/3ファイバー
【0092】
組換えアデノウイルスTGX04を、そのゲノム全体をコスミド(pTGX04)で再構成することによって構築した。次の3つのDNAフラグメントを互いにライゲーションした。
1.pAd5/3-d24-WTE3からの27kbのPacI-SpeIフラグメント
2.pTGX103からの8833bpのSpeI-PacIフラグメント
3.pAd5dSfiからの8kbのPacIフラグメント
ここでは、
pAd5/3-d24-WTE3(pAd5/3-d24-GMCSF)
pTGX103は、E3領域のBsiWI部位とMfeI部位との間に挿入されたICOSLコード配列と共に、ウイルスゲノムの右端(pAd5/3.d24-WTE3からのSpeI-PacI配列)を含むプラスミドである。
pAd5dSfiIは、Ad5ゲノム全体を含むコスミドである。8kbのPacIフラグメントは、pTGX04のコスミド骨格を提供する。
【0093】
pTGX103を、pTGX101の対応する部位の間にpAd1129-ICOSLからの1070bpのBsiWI-NotI DNAフラグメントを挿入することによって構築した。
ここでは、
pTGX101は、Ad5/3.d24-WTE3ゲノムの右端(pAd5/3.d24-WTE3からのSpeI-PacIフラグメント)を含むプラスミドである。
pAd1129-ICOSLは、E3領域のBsiWI部位とMfeI部位との間にICOSLコーディングシーケンサー(coding sequencer)を含むシャトルプラスミドである。
【0094】
pAd1129-ICOSLを、pAd1129-14のBsiWI部位とMfeI部位との間にICOSLをコードする969bpの合成dsDNAを挿入することによって構築した。
ここでは、
pAd1129-14は、WT Ad5 E3領域及びハイブリッドAd5/3ファイバーを含むシャトルプラスミドである。
gBlock-ICOSL(転写バリアント1、909bp、NM_015259.4)
【0095】
TGX-05(Ad5/3-D24-ADA)のクローニングの詳細
以下の性質を特徴とする腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの構築、増幅、精製、滴定、及び特性評価を行う:
E1A CR2における24bpの欠失
E3領域に埋め込まれたADARB1をコードする配列
ハイブリッドAd5/3ファイバー
【0096】
組換えアデノウイルスTGX05を、そのゲノム全体をコスミド(pTGX05)で再構成することによって構築した。次の3つのDNAフラグメントを互いにライゲーションした。
1.pAd5/3-d24-WTE3からの27kbのPacI-SpeIフラグメント
2.pTGX104からの10030bpのSpeI-PacIフラグメント
3.pAd5dSfiからの8kbのPacIフラグメント
ここでは、
pAd5/3-d24-WTE3(pAd5/3-d24-GMCSF)
pTGX104は、E3領域のBsiWI部位とMfeI部位との間に挿入されたADARB1コード配列と共に、ウイルスゲノムの右端(pAd5/3.d24-WTE3からのSpeI-PacI配列)を含むプラスミドである。
pAd5dSfiIは、Ad5ゲノム全体を含むコスミドである。8kbのPacIフラグメントは、pTGX05のコスミド骨格を提供する。
【0097】
pTGX104を、pTGX101の対応する部位の間にpAd1129-ADARB1からの2267bpのBsiWI-NotI DNAフラグメントを挿入することによって構築した。
ここでは、
pTGX101は、Ad5/3.d24-WTE3ゲノムの右端(pAd5/3.d24-WTE3からのSpeI-PacIフラグメント)を含むプラスミドである。
pAd1129-ADARB1は、E3領域のBsiWI部位とMfeI部位との間にADARB1コード配列を含むシャトルプラスミドである。
【0098】
pAd1129-ADARB1を、pAd1129-14のBsiWI部位とMfeI部位の間にADARB1をコードする2166bpの合成dsDNAを挿入することによって構築した。
ここでは、
pAd1129-14は、WT Ad5 E3領域及びハイブリッドAd5/3ファイバーを含むシャトルプラスミドである。
gBlock-ADARB1(GenBank番号NM_001112.3)
【0099】
TGX-11(Ad5/3-D24-ICOSL-ADA)のクローニングの詳細
以下の性質を特徴とする腫瘍溶解性アデノウイルスベクターの構築、増幅、精製、滴定、及び特性評価を行う:
E1A CR2における24bpの欠失
E3領域の代わりに(2.7kbのBglII欠失)ICOSL及びADARB1を発現するジシストロニックカセット
ハイブリッドAd5/3ファイバー
【0100】
組換えアデノウイルスTGX11を、そのゲノム全体をコスミド(pTGX11)で再構成することによって構築した。次の3つのDNAフラグメントを互いにライゲーションした。
1.pAd5/3-d24-WTE3からの27kbのPacI-SpeIフラグメント
2.pTGX110cからの10751bpのSpeI-PacIフラグメント
3.pAd5dSfiからの8kbのPacIフラグメント
ここでは、
pAd5/3-d24-WTE3(pAd5/3-d24-GMCSF)
pTGX110cは、E3領域の代わりにCMV-ICOSL-IRES-ADARB1カセットが挿入されたウイルスゲノムの右端(pAd5/3.d24-WTE3からのSpeI-PacI配列)を含むプラスミドである。
pAd5dSfiIは、Ad5ゲノム全体を含むコスミドである。8kbのPacIフラグメントは、pTGX11のコスミド骨格を提供する。
【0101】
pTGX110cを、次の3つのDNAフラグメントを互いにライゲーションすることによって構築した。
1.pTGX101からの1349bpのCsiI-RsrIIフラグメント
2.pTGX101からの6491bpのRsrII-NheIフラグメント
3.pTGX110bからの5482bpのNheI-CsiIフラグメント
ここでは、
pTGX101は、Ad5/3.d24-WTE3ゲノムの右端(pAd5/3.d24-WTE3からのSpeI-PacIフラグメント)を含むプラスミドである。
pTGX110bは、E3領域の代わりに(2.7kbのBglII欠失)CMV-ICOSL-IRES-ADARB1-SV40pAシグナルカセットを含むプラスミドである。
【0102】
CMV-ICOSL-IRES-ADARB1カセットに隣接するSpeIサイトを破壊するために、pTGX110をSpeIで消化し、粘着末端をクレノウ(Klenow)で埋め、両方のフラグメントを相互に再ライゲーションすることによってpTGX110bを構築した。
ここでは、
pTGX110は、E3領域の代わりに(2.7kb BglII欠失)CMV-ICOSL-IRES-ADARB1-SV40pAシグナルカセットを含むプラスミドである。
【0103】
pTGX110を、pAd1129-GrB-FのSacII部位とAcc65I部位との間に次の4つのフラグメントを挿入することによって構築した。
1.テンプレートとしてpAd1129-ICOSLを使用し、プライマー288-17及び288-41を使用してPCRによって増幅された945bpのICOSLコード配列
2.テンプレートとしてpAd1129-IRES-attを使用し、プライマー288-18及び288-19を使用してPCRによって増幅された645bpのIRES-attエレメント
3.BsiWI/MfeI消化によってプラスミドpAd1129-ADARB1から単離された2112bpのADARB1コード配列
4.テンプレートとしてpAd1129-GrB-Fを使用し、プライマー288-20及び288-21を使用してPCRによって増幅された174bpのSV40pAシグナル。
ここでは、
pAd1129-ICOSLをTGX04の構築のため作製した。
pAd1129-ADARB1をTGX05の構築のために作製した。
pAd1129-GrB-FをTGX01の構築のために作製した。
pAd1129-IRES-attは、EMCV内部リボソーム進入部位(IRES)の弱毒化バージョンを含むプラスミドである。
【0104】
プライマー:
288-17: ACACCGGGACCGATCCAGCCTCCGCGGGCCGCCACCATGCGGCTGGGCAGTCCTGGACTGC
288-41: TCAAACGTGGCCAGTGAGCTCTGTC
288-18: AGCTCACTGGCCACGTTTGACCCCTCTCCCTCCCCCCCCT
288-19: TCTTCATCTTCTATATCCATGTCGACTCTAGAGGATCCCG
288-20: AGTTCTCACTCACGCCCTGAAACTTGTTTATTGCAGCTTA
288-21: TAGTTAAAGGGAATAAGATCGGTACC.
【0105】
細胞株
黒色腫細胞株であるA2058(ATCC(商標)CRL-1147(商標))、A375(ATCC(商標)CRL-1619(商標))及びSK-MEL-2(ATCC(商標)HTB-68(商標))、SK-MEL-28(ATCC(商標)HTB-72(商標))を10%FCS及びペニシリン/ストレプトマイシンを添加したDMEM高グルコース培地で培養した。トリプシン-EDTAを使用して、in vitroアッセイのため、80%のコンフルエンスで細胞を分離及び継代培養した。
【0106】
黒色腫マウスモデル-ヒト化異種移植マウスモデル
ウイルスを用いる治療によって生じた免疫調節特性(様々な免疫細胞、TILを腫瘍に浸潤させる能力)を、ヒト化黒色腫マウスモデルで評定した。本発明者らは、以前に、ヒト臍帯血由来のCD34+HSC細胞を用いたNOD/Shi-scid/IL-2Rynull免疫不全症(NOG)に基づくヒト化マウスモデルを開発し、試験した(Kuryk et al., 2018)。NOGマウスに間葉系幹細胞及び造血幹細胞を移植した。このモデルは、患者の抗腫瘍応答をより厳密に表したものを生成する。このアプローチの強みは、T細胞及びB細胞、樹状細胞、並びにNK細胞を含む複数の造血系統を生成できることである。マウスの両脇腹にA2058ヒト黒色腫腫瘍細胞を皮下注射し、種々の治療群に無作為化した(n=8/群)。ウイルスを腫瘍内(局所)投与した。一連の治療(ウイルスの5回の注射)の後、マウスを屠殺し、腫瘍を解剖し、浸潤した白血球の表現型をフローサイトメトリーによって分析した。
【0107】
データ分析
GraphPad Prismソフトウェア(バージョン7)を使用して、全てのパラメーターを分析した。統計学的分析を、RM-一元配置分散分析とそれに続くテューキー事後検定又はT検定(マン・ホイットニー検定)を使用して実施した。
【0108】
実施例1 in vitro-細胞生存率アッセイ(MTS)
細胞生存率は、製造元の指示に従い、以下の変更を加えて、MTS細胞増殖アッセイキット(Abcam)を使用して評価した。MTSアッセイキットは、生細胞を高感度で定量するための比色法である。これは、細胞増殖、細胞生存率、及び細胞毒性を評定するために使用することができる。MTSアッセイは、生存可能な哺乳動物細胞によるMTSテトラゾリウム化合物の還元に基づいており、細胞培養培地に可溶な着色ホルマザン色素を生成する。この変換は、代謝的に活性な細胞のNAD(P)H依存性デヒドロゲナーゼ酵素によって行われると考えられている。ホルマザン色素は、490nmでの吸光度を測定することによって定量される。細胞を96ウェルプレートに3000細胞/ウェル及び5000細胞/ウェルの濃度で播種した。0.1ウイルス粒子(VP)、1VP、10VP、100VP、及び1000VPの被験ウイルスと共に、又はウイルス粒子を含まずに細胞をインキュベートした。処理を200μLの最終容量で開始した。72時間後、MTSアッセイを製造業者のプロトコルに従って実施した。プレートをシェーカーで短時間振盪し、490nmで吸光度を測定した。未処理細胞の吸光度値を100%の生存率に対応するように設定し、処理された細胞の生存率を未処理対照の吸光度値のパーセンテージとして表した。
【0109】
ICOSL及びADAをコードする二重導入遺伝子ウイルス(TGX-11)は、A375細胞株においてin vitroで、1000VP/細胞の濃度で投与した場合、単一導入遺伝子ウイルスTGX-04(ICOSLをコードする、未処理細胞の60.94%)及びTGX-05(ADAをコードする、未処理細胞の64.71%)よりも抗癌優位性を示した(それぞれ、未処理細胞の33.51%)。重要なことに、二重導入遺伝子ウイルスTGX-11は、TGX-04とTGX-05との組合せ療法よりも強力な抗癌効果を示した(94.88%)(図7a)。
【0110】
二重導入遺伝子ベクターはまた、1VP/細胞及び1000VP/細胞の濃度で試験した場合、SK-MEL-2細胞株において、単一の導入遺伝子ベクター(TGX-04及びTGX-05)、及びTGX-04とTGX-05との組合せ療法に対して、抗癌優位性(TGX-11)を示した(それぞれ1VP/細胞の場合、未処理細胞の79.69%;114.22%;100.73%、122.85%、及び1000VP/細胞の場合、未処理細胞の45.83%;69.19%;91.56%;116.27%)(図7b及び図7c)。
【0111】
TGX-11の増強された抗癌効果(未処理細胞の56.29%)は、単一の導入遺伝子ベクターTGX-04及びTGX-05、並びにTGX-04とTGX-05との組合せ療法(それぞれ、未処理細胞の67.72;75.5%及び85.64%)に対して1000VP/細胞の濃度でもA2058細胞株においても記録された(図7d)。
【0112】
実施例2 in vitro-アポトーシス細胞死
初期及び後期のアポトーシス細胞の評価に焦点を当てた治療効果に関する補足分析も実施した。初期アポトーシスに関連する細胞膜の変化を特定するために、アネキシンVコンジュゲートによる染色を行った。A2058細胞株の場合、細胞を1ウェルあたり1.5×10細胞の密度で24ウェルプレートに播種した。播種と同じ日に処理を開始し、製造業者の指示に従って死細胞アポトーシスキットを使用し、フローサイトメトリーによって処理の開始から72時間後にアポトーシス細胞及び壊死細胞の量を測定した。
【0113】
ICOSL及びADAをコードする二重導入遺伝子ウイルス(TGX-11)は、A2058細胞株においてin vitroで、1000VP/細胞の濃度で投与された場合、単一導入遺伝子ウイルスTGX-04(ICOSLをコードする、未処理細胞の120.76%)、TGX-05(ADAをコードする、未処理細胞の159.17%)、及びTGX-04とTGX-05との組合せ療法(未処理細胞の162.75%)よりも、抗癌優位性(アポトーシス細胞死の誘導)を示した(それぞれ未処理細胞の175.43%)(図8a)。
【0114】
実施例3 in vitro-免疫原性細胞死(ICD)
癌細胞死は免疫原性又は非免疫原性である可能性があることが示されている(Tesniere et al., 2008)。免疫原性細胞死は、細胞表面の構造の変化を伴い、免疫原性因子の放出をもたらす(Kroemer et al., 2013)。続いて、抗原提示細胞(APC)を引き付けて腫瘍抗原を取り込み、それらを処理し、最後に抗腫瘍免疫応答(特定の抗腫瘍T細胞)を誘発する(Tesniere et al., 2008)。癌治療の成功は、免疫原性腫瘍細胞死の誘導及び抗腫瘍免疫応答の誘導に依存する(Kepp et al., 2011)。細胞死は、細胞膜外膜上のカルレティキュリン(CRT)等の免疫原性細胞死バイオマーカーの存在と、それに続く高移動度群ボックス1タンパク質(high-mobility group box 1 protein)(HM-GB1)及びアデノシン三リン酸(ATP)の細胞外放出とによって評価され得る(Kepp et al., 2011、Obeid et al., 2007、Kroemer et al., 2013)。
【0115】
細胞を、A375細胞株及びSK-MEL-2細胞株の場合は1ウェルあたり2.5×10細胞の密度で、A2058細胞株及びSK-MEL-28細胞株の場合は1ウェルあたり1.5×10細胞の密度で24ウェルプレートに播種した。ウイルスによる処理を播種の日に開始した。処理開始から72時間後、処理細胞又は未処理細胞の上清を採取した。カルレティキュリンを、製造業者(Abcam)の指示に従って、抗カルレティキュリン抗体で細胞の表面にて染色した。ATP量(上清から)を、供給業者(Abcam)の指示に従ってATPアッセイキットを使用して評価した。HMGB-1を、製造業者の指示に従ってELISA(IBL International)によって測定した。
【0116】
ICOSL及びADAをコードする二重導入遺伝子ウイルス(TGX-11)は、A375細胞株において0.1VP/細胞の濃度で投与した場合、単一導入遺伝子ウイルスTGX-04(ICOSLをコードする)、TGX-05(ADAをコードする)、及びTGX-04とTGX-05との組合せ療法よりも免疫原性細胞死(ATP放出)の増強を示した(図9a)。SK-MEL-2細胞株及びSK-MEL-28細胞株にそれぞれ10VP/細胞及び0.1VP/細胞の濃度で投与した場合、二重導入遺伝子ウイルスの同様の優位性(ATP放出)が観察された(図9b及び図9c)。
【0117】
ICOSL及びADAをコードする二重導入遺伝子ウイルス(TGX-11)は、A375細胞において、1000VP/細胞の濃度で投与した場合、単一導入遺伝子ウイルスTGX-04(ICOSLをコードする、未処理細胞の4.08%)、TGX-05(ADAをコードする、未処理細胞の2.17%)、及びTGX-04とTGX-05との組合せ療法(未処理細胞の3.54%)よりも免疫原性細胞死の増強(カルレティキュリン発現レベル、未処理細胞の5.31%)を示した(図10)。
【0118】
ICOSL及びADAをコードする二重導入遺伝子ウイルス(TGX-11)は、A2058細胞株において、10VP/細胞の濃度で投与した場合、単一導入遺伝子ウイルスTGX-04(ICOSLをコードする、8.53ng/mlの未処理細胞)、TGX-05(ADAをコードする、6.59ng/mlの未処理細胞)及びTGX-04とTGX-05 A2058との組合せ療法(4.4ng/mlの未処理細胞)よりも免疫原性細胞死の増強(HMGB1放出、9.69ng/mlの未処理細胞)を示した(図11)。
【0119】
実施例4 in vivo-ヒト化黒色腫マウスモデル
ICOSL及びADAをコードする二重導入遺伝子ウイルス(TGX-11)による治療は、腫瘍塊へのグランザイムB CD8+T細胞、PD-1 CD8+T細胞、及びCD4+T細胞の浸潤を増強し、A2058ヒト化黒色腫マウスモデルにおける単一導入遺伝子ウイルスTGX-04(ICOSLをコードする)、TGX-05(ADAをコードする)、及びTGX-04とTGX-05との組合せ療法の効果よりも優れていた(図12a、図12b、及び図12c)。
【0120】
参考文献
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9a
図9b
図9c
図10
図11
図12a
図12b
図12c
【配列表】
2022529438000001.app
【国際調査報告】