(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(54)【発明の名称】安定な凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスを製造し、サイトフルオロメトリー法によってその安定性を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220615BHJP
C12N 1/04 20060101ALI20220615BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220615BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20220615BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20220615BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220615BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220615BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220615BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C12N1/20 B
C12N1/04
C12N1/20 E
A23L33/135
A61K35/74 A
A61K35/747
A61K9/19
A61K9/16
A61K9/14
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561632
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 IB2020053732
(87)【国際公開番号】W WO2020212961
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】102019000006056
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512233329
【氏名又は名称】プロバイオティカル・ソシエタ・ペル・アチオニ
【氏名又は名称原語表記】PROBIOTICAL S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】モーニャ,ヴェラ
(72)【発明者】
【氏名】パーネ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】アッレジーナ,セレーナ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD85
4B018ME14
4B018MF05
4B018MF06
4B065AA01X
4B065BD11
4B065BD12
4B065CA41
4B065CA44
4C076AA29
4C076AA31
4C076BB01
4C076CC40
4C076DD26Q
4C076DD43
4C076DD56Q
4C076DD67Q
4C076FF36
4C076FF63
4C087AA03
4C087BC56
4C087CA09
4C087MA41
4C087MA43
4C087MA44
4C087MA52
4C087NA03
(57)【要約】
凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスの製造方法であって、下記工程:(i)細菌細胞の少なくとも1つの株を含む、先に製造した細菌細胞のバイオマス(細菌バイオマス)を発酵させて、発酵させた細菌細胞のバイオマス(発酵バイオマス)を得る工程;(ii)1×106細胞/mlの液体バイオマスから1×1012細胞/mlの液体バイオマスに含まれる細菌細胞濃度を有する濃縮した細菌細胞のバイオマス(濃縮バイオマス)を得るまで、工程(i)から得られた発酵バイオマスを濃縮する工程;(iii)工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを、(a)リン酸イオン塩またはリン酸、亜リン酸イオン塩または亜リン酸、リン酸一水素イオン塩、リン酸二水素イオン塩、ピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのリン塩、および(b)スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロースまたはマンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質を含むかまたはそれらからなる溶液と混合して、凍結保護した細菌細胞のバイオマス(凍結保護バイオマス)を得る工程;(iv)工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスを凍結乾燥して、凍結乾燥した細菌細胞のバイオマス(凍結乾燥バイオマス)を得る工程を含む方法。本発明はまた、前記方法により得られた凍結乾燥バイオマス、および上記凍結乾燥バイオマスを含む医薬組成物、または医療デバイス組成物、または美容用途組成物、または食品サプリメント組成物または食品用組成物または特別医療目的用食品(FSMP)組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスの製造方法であって、下記工程:
(i)細菌細胞の少なくとも1つの株を含む、先に製造した細菌細胞のバイオマス(細菌バイオマス)を発酵させて、発酵させた細菌細胞のバイオマス(発酵バイオマス)を得る工程;
(i.a)工程(i)から得られた発酵バイオマスのpH値を、6±0.1~6.5±0.1に含まれるpH値に調節して、pH調節した発酵バイオマスを得る工程;
(ii)1×10
6細胞/mlの液体バイオマスから1×10
12細胞/mlの液体バイオマスに含まれる細菌細胞濃度を有する濃縮した細菌細胞のバイオマス(濃縮バイオマス)を得るまで、工程(i.a)から得られたpH調節した発酵バイオマスを濃縮する工程;
(iii)工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、および(b)スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロースまたはマンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質を含むかまたはそれらからなる溶液と混合して、凍結保護した細菌細胞のバイオマス(凍結保護バイオマス)を得る工程;
(iv)工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスを凍結乾燥して、凍結乾燥した細菌細胞のバイオマス(凍結乾燥バイオマス)を得る工程
を含む方法。
【請求項2】
工程(iii)の前に:
(ii.a)工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを洗浄して、洗浄バイオマスを得る工程;
(ii.b)工程(ii.a)から得られた洗浄バイオマスを再濃縮して、再濃縮バイオマスを得る工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(iii)の前に:
(ii.a)工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを洗浄して、洗浄バイオマスを得る工程;
(ii.b)工程(ii.a)から得られた洗浄バイオマスを再濃縮して、再濃縮バイオマスを得る工程;
(ii.c)工程(ii.b)から得られた再濃縮バイオマスのpH値を、5±0.1~7±0.1に含まれるpH値に調節して、pH調節したバイオマスを得る工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸が、ピロリン酸カリウムおよび/またはピロリン酸ナトリウムおよびそれらの混合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(ii)の濃縮バイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオンまたはピロリン酸塩およびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質および(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる溶液と混合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)の濃縮バイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩、好ましくはピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムおよびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、好ましくはスクロースおよび/またはトレハロースおよびそれらの混合物、および所望により(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる溶液と混合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(ii)の濃縮バイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩、好ましくはピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムおよびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、好ましくはスクロースおよび/またはトレハロースおよびそれらの混合物、所望により(c)L-システイン、および(d)少なくとも1つのクエン酸塩、好ましくはクエン酸ナトリウムおよび/またはマグネシウムおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる溶液と混合する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(iv)の凍結乾燥バイオマスが、工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスのグラムごとに、1×10
6細胞/g~1×10
13細胞/gに含まれる細菌細胞の濃度、好ましくは1×10
7細胞/g~1×10
12細胞/gに含まれる濃度、さらにより好ましくは1×10
8細胞/g~1×10
12細胞/gに含まれる濃度、さらにより好ましくは1×10
9細胞/g~1×10
12細胞/gに含まれる濃度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(iv)の凍結乾燥が、工程(iii)の後に、下記工程:
(iv.a)工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスを凍結して、凍結バイオマスを得る工程;
(iv.b)工程(iv.a)から得られた凍結バイオマスの氷を昇華させて、凍結乾燥バイオマスを得る工程
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(iv.b)の昇華が:
(iv.b.1)工程(iv.a)から得られた凍結バイオマスを一次乾燥する工程、および
(iv.b.2)続いて、工程(iv.b.1)から得られたバイオマスを二次乾燥して、または脱着させて、凍結乾燥バイオマスを得る工程
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)に加えて、下記好ましい工程:
(viii)工程(i)から得られた発酵バイオマス、工程(ii)から得られた濃縮バイオマス、工程(iii)から得られた凍結保護バイオマス、および/または工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスを、2つの異なる蛍光色素と接触させて、蛍光発酵バイオマス、蛍光濃縮バイオマス、蛍光凍結保護バイオマスおよび/または蛍光凍結乾燥バイオマスを得る工程;
(ix)工程(viii)に続いて、フローサイトメトリーにより、蛍光発酵バイオマス、蛍光濃縮バイオマス、蛍光凍結保護バイオマスおよび/または蛍光凍結乾燥バイオマス中の完全な細胞膜を有する細菌細胞の量を検出する工程
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
該量が、下記相関関係:
TFU=AFU+nAFU
[式中、
TFU(総蛍光単位)は、全ての蛍光細菌単位または細胞であり;
nAFU(非活性蛍光単位)は、細胞膜が損傷した非活性な蛍光細菌単位または細胞である]
が適用される、活性蛍光単位または細胞(AFU)として表される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
細胞膜全体を有する細菌細胞の量が、工程(i)、工程(ii)、工程(iii)および/または工程(iv)を支配するプロセスパラメーターをモニターするために用いられる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)に加えて、工程(iv)に続く、工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスを破砕して、破砕バイオマスを得る工程(v)を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法により得られる、凍結乾燥した細菌細胞のバイオマス。
【請求項16】
固体形態、好ましくは顆粒または粉末形態である、請求項15に記載のバイオマス。
【請求項17】
請求項15または16に記載の凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスを含む、医薬組成物、または医療デバイス組成物、または美容用途組成物、または食品サプリメント組成物または食品組成物または特別医療目的用食品(FSMP)組成物。
【請求項18】
(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、および所望により(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる凍結保護溶液。
【請求項19】
少なくとも1つのピロリン酸イオン塩が、ピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムおよびそれらの混合物であり、ポリヒドロキシ物質が、スクロースおよび/またはトレハロースおよびそれらの混合物である、請求項18に記載の凍結保護溶液。
【請求項20】
該溶液が、(d)クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウムおよび/またはマグネシウムおよびそれらの混合物をさらに含む、請求項18または19に記載の凍結保護溶液。
【請求項21】
細菌細胞のバイオマス(細菌バイオマス)を凍結保護するための、少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、および所望により(c)L-システインの使用。
【請求項22】
少なくとも1つのピロリン酸イオン塩が、ピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムおよびそれらの混合物であり、ポリヒドロキシ物質が、スクロースおよび/またはトレハロースおよびそれらの混合物である、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
該溶液が、(d)クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウムおよび/またはマグネシウムおよびそれらの混合物をさらに含む、請求項21および22に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥した、高濃度で安定な細菌細胞のバイオマスに関する。また、本発明は、該凍結乾燥した、高濃度で安定な細菌細胞のバイオマスを製造するための方法に関する。本発明の凍結乾燥した細菌細胞は、サイトフルオロメトリー法によって決定される、AFUで表される生存性に関して、プレートカウントによって同じ細胞で決定され、CFUで表される安定性よりも高い安定性を有する。最後に、本発明は、組成物に、凍結乾燥した、該高濃度で安定な細菌細胞のバイオマスを含む、医薬組成物、または医療デバイス組成物、または美容用途組成物、または食品サプリメント組成物、または特別医療目的用食品(FSMP)組成物(これらの組成物のすべては、簡潔にするために、「本発明の組成物」と称する)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細菌細胞を含む製品は、食品業界(例えば乳製品の製造)、食品サプリメント業界(例えばプロバイオティクス製品)、および生きた生物学的製剤(LBP)などの製薬業界の両方で市場シェアを拡大している。これらの産業部門では、特にこのタイプの製品に関して、細菌細胞の安定性および生存性に関連する側面が極めて重要である。細菌細胞の生存性および完全性に関する安定性は、それらを製造するために使用される方法に強く依存する。実際のところ、前記製品に含まれる微生物または細菌細胞は、それらの生産のためのプロセス条件およびパラメーターに極めて敏感であり、それらはまた、環境保存条件によって極めて影響を受け、特に細菌細胞は敏感であり、生産環境の温度、光、紫外線、酸素、水分活性、湿度、および生産プロセスの下流での保存の影響を受ける。さらに、ほとんどの微生物は嫌気性菌であるか、一方、その生存性を低下させる酸素フリーラジカルの生成のために、酸素への曝露に極めて敏感である。
【0003】
したがって、そのような状況は、使用または消費するときになお十分な有効性を有するのに十分に多くのかつ十分に長い期間微生物または細菌細胞の生存性を保証する条件を確保することが極めて困難である特定の地理的領域(例として、世界保健機関によって特定されるゾーンIV.AおよびIV.B)における細菌細胞のバイオマスの流通における主要な制限の1つを表している。
【0004】
2005年10月に、WHOは、気候ゾーンIVを2つの異なるゾーンに分割し、ゾーンIV.A(高温多湿)とゾーンIV.B(高温超多湿)を導入することを推奨した。したがって、今日、ターゲット市場に応じて使用される、安定性試験を実施するための5つの異なる気候ゾーンと5つの異なる条件がある。
・ゾーンI:温暖な気候-長期保存条件:21℃/45%RH
・ゾーンII:亜熱帯および地中海性気候-長期保存条件:25℃/60%RH
・ゾーンIII:高温で乾燥した気候-長期保存条件:30℃/35%RH
・ゾーンIV.A:高温多湿の気候-長期保存条件:30℃/65%RH
・ゾーンIV.B.:高温超多湿の気候-長期保存条件:30℃/75%RH
【0005】
様々な国での試験の実施に必要な条件についての知識を促すために、WHOは、WHO Technical report series No. 953, 2009 Annex 2 "Stability testing of active pharmaceutical ingredients and finished pharmaceutical products"のガイドラインに関連する長期保存条件とともに、加盟国リストを公開した。
【0006】
US2004/0043374は、凍結および凍結乾燥などの技術を使用した生物学的試料の保存および安定性について言及している。記載されている保護溶液は、リン酸緩衝液中の水溶液を使用し、所定量のポリヒドロキシ物質およびリン酸イオンを加えることによって製造される。これらの緩衝保護溶液は、選択された生物学的材料のタイプに応じた量で生物学的材料と混合される。しかしながら、この文献は、ピロリン酸の使用について記載しておらず、凍結保護溶液での使用により生じる利点も評価していない。さらに、使用される保護溶液は緩衝化されており、緩衝液は好ましくはリン酸緩衝液である。結果として、バイオマスと混合された溶液中に存在するリン酸イオンは、少なくとも部分的には、緩衝液に由来する。
【0007】
WO20147082050は、細菌組成物およびその製造方法を記載している。この文献では、濃縮およびろ過した後、細菌細胞にゼラチン、トレハロースおよびリン酸緩衝液を含む保護溶液を加える。この文書は、ピロリン酸の使用について説明しておらず、凍結保護溶液での使用により生じる利点を評価していない。さらに、この文書は、細菌細胞の生存性および安定性を改善するのに適した製造方法について記載していない。
【0008】
したがって、気候ゾーンIV.AおよびIV.Bに存在する国において輸送、処理、販売および保存することができる、凍結乾燥した、高濃度で、安定し、生存している可能な細菌細胞のバイオマスを製造するための、実施および再現が容易な方法を有することができる必要性が感じられる。
【発明の概要】
【0009】
したがって、本発明は、上記で概説した分野に該当し、(1)凍結乾燥した、高濃度で安定な細菌細胞のバイオマス;(2)凍結乾燥した、高濃度で安定な細菌細胞の該バイオマスの製造方法;および(3)組成物に、凍結乾燥した、高濃度で安定な細菌細胞の該バイオマスを含む、医薬組成物、または医療デバイス組成物、または美容用途組成物、または食品サプリメント組成物または食品組成物または特別医療目的用食品(FSMP)組成物(これらの組成物のすべては、簡潔にするために、「本発明の組成物」と称する)を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の主題である凍結乾燥細菌細胞は、良好な生理学的状態にある良好に保存された細胞壁(または細胞膜壁)を有する細胞であり、それ故に、完全かつ生存している細胞である。細胞壁(または細胞膜壁)の完全性は、AFUで表され、サイトフルオロメトリー法によって決定される生存性に関して、より高い安定性を細胞に与える。当該安定性は、プレートカウントによって同一細胞で決定され、CFUで表される安定性よりも高くなる。より高い安定性により、細菌細胞のバイオマスの保存期間を延長でき、一方、より高い細胞生存性により、処置される対象に使用または投与されると、活性および有効性を高めることができる。
【0011】
本発明の一目的は、特許請求の範囲に示される特徴を有する、凍結乾燥した、高濃度で安定な細菌細胞のバイオマスである。
【0012】
本発明の別の目的は、特許請求の範囲に示される特徴を有する、凍結乾燥した、高濃度で安定な細菌細胞の該バイオマスの製造方法である。
【0013】
本発明の更なる目的は、特許請求の範囲に示される特徴を有する、組成物に、凍結乾燥した、高濃度で安定な細菌細胞の該バイオマスを含む、医薬組成物、または医療デバイス組成物、または美容用途組成物、または食品サプリメント組成物または食品組成物または特別医療目的用食品(FSMP)組成物(これらの組成物のすべては、簡潔にするために、「本発明の組成物」と称する)である。
【0014】
本発明の一目的は、特許請求の範囲に従った、凍結保護溶液である。
【0015】
本発明の一目的は、特許請求の範囲に従った、細菌細胞のバイオマス(細菌バイオマス)を凍結保護するための、少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、および所望により(c)L-システインの使用である。
【0016】
本発明の好ましい実施態様を、いかなる方法であれ、本発明の保護の範囲を制限することを意図することなく、以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
ここで、本発明を、非限定的な例としてのみ提供される図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、下記実施例6、試験A)による第1図を示す。
【
図2】
図2は、下記実施例6、試験B)による第2図を示す。
【
図3】
図3は、下記実施例6、試験C)による第3の図を示す。
【
図4】
図4は、補間線の傾斜に類する、ゾーンIV.B.に関する実施例6の低下率(k)を示す。
【
図5】
図5は、実施例7による6つの試料におけるピロリン酸検出アッセイの結果を示す。詳細には、
図5Aは6つの試料の第1セットを示し、
図5Bは6つの試料の第2セットを示す。(A)と(B)の両方における1つ目の試験管はネガティブコントロール(NEG=蒸留水)であり、(A)と(B)の両方における2つ目の試験管はポジティブコントロール(POS=ピロリン酸カリウム)である。
【
図6】
図6は、実施例7による6つの試料におけるスクロース検出アッセイの結果を示す。詳細には、
図6Aおよび6Bは第1セットを示し、
図6Cおよび6Dは第2セットを示す。1つ目の試験管はネガティブコントロール(NEG=蒸留水)であり、2つ目の試験管はポジティブコントロール(POS=ピロリン酸カリウム)である。
【
図7】
図7は、実施例7によるスクロースおよびピロリン酸カリウムのATR-FTIRスペクトルを示す。
【
図8】
図8は、実施例7による6つの試料(第1セット)のATR-FTIRスペクトルを示す。キー内:1は試料1に対応し、2は試料2に対応し、3は試料3に対応し、4は試料4に対応し、5は試料5に対応し、6は試料6に対応する。
【
図9】
図9は、実施例7に従って分析した6つの液体試料中のピロリン酸カリウムの電位差滴定を示す。
【
図10】
図10は、実施例7による、スクロースの検量線y=205.5x-6.182 R
2=0.999を示す。
【
図11】
図11は、実施例7によるスクロース標準溶液(5mg/ml)のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図12】
図12は、実施例7による、グルコース標準溶液(5mg/ml)のHPLCクロマトグラムおよびフルクトース標準溶液(5mg/ml)のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図13】
図13は、実施例7による試料6のHPLCクロマトグラムの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
いくつかの極めて有望な実験データによって動機付けられ、サポートされた、集中的で長期の研究開発活動の後、出願人は、バイオマス(一連の細菌細胞)に存在する細菌細胞の壁(細胞壁)の重要性を理解するようになった。
【0019】
実験結果は、最適化されかつ再現性のあるプロセスによって、凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスを製造するためのすべての工程中に、細胞壁の良好な保存状態および完全性を維持することは、安定し、生存している高濃度の細菌細胞を得ることを可能にすることを確認した。
【0020】
上記は、本発明の主題である凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスを製造するための特定の方法により可能となった。さらに、上記はまた、本発明の主題である、細胞壁の評価方法と該製造方法の組合せを提供する方法により可能となった。同じく本発明の主題である細胞壁の評価方法は、該細胞壁が良好な生理学的状態で十分に保存されているかを評価することを可能にする。細胞壁の良好な生理学的状態および完全性の保存は、細胞の安定性および生存性にとって重要である。
【0021】
細菌細胞のバイオマスの該製造方法のすべての工程で実施される、細胞壁の良好な保存状態および完全性のモニターおよび評価は、再現性があり、信頼性が高く、最適化されたプロセスによって、凍結乾燥した、安定し、生存している高濃度の細菌細胞のバイオマスを得る目的で製造方法の個々の工程を最適化することを可能にする。
【0022】
有利には、本発明の製造方法を、細胞壁の良好な保存状態および完全性の維持を評価するための方法と組み合わせて含む方法は、長期の安定性および優れた生存性を凍結乾燥細菌細胞に与える、完全で良好に保存された、凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスを得ること可能にした。
【0023】
本発明の文脈において、用語「完全な」は、細胞膜または細胞膜壁が、膜への損傷の増加による透過性の要素またはゾーンを有さないことを示すために用いられる。
【0024】
本発明の製造方法は、細胞の透過性を低下させることにより、細菌の細胞膜の密閉を改善する。
【0025】
長期安定性という表現は、サイトフルオロメトリー法によって決定された保存期間の安定性を示すために用いられ、標準的なプレートカウント法によって測定された同じ細菌細胞のバイオマスの安定性より大きくなる。
【0026】
さらに、完全で良好に保存された細胞壁(膜の完全性)は、細胞が対象体に投与されると、より大きな生存性および有効性を凍結乾燥細菌細胞に与える。
【0027】
本発明の製造方法により、ゾーンIV.AおよびゾーンIV.B.の条件下でも、好ましくは1分~10年、好ましくは1日~5年、より好ましくは4か月または12か月から48か月、さらにより好ましくは18か月~32か月、さらに好ましくは24か月~30か月に含まれる期間に、細胞が安定性を示す細菌細胞のバイオマスを製造することが可能である。
【0028】
本発明は、凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスの製造方法であって、下記工程:
(i)細菌細胞の少なくとも1つの株を含む、先に製造した細菌細胞のバイオマス(細菌バイオマス)を発酵させて、発酵させた細菌細胞のバイオマス(発酵バイオマス)を得る工程;
(ii)1×106細胞/mlの液体バイオマスから1×1012細胞/mlの液体バイオマスに含まれる細菌細胞濃度を有する濃縮した細菌細胞のバイオマス(濃縮バイオマス)を得るまで、工程(i)から得られた発酵バイオマスを濃縮する工程;
(iii)工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを、(a)リン酸イオン塩またはリン酸、亜リン酸イオン塩または亜リン酸、リン酸一水素イオン塩、リン酸二水素イオン塩、ピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのリン塩、および(b)スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロースまたはマンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質を含むかまたはそれらからなる溶液と混合して、凍結保護した細菌細胞のバイオマス(凍結保護バイオマス)を得る工程;
(iv)工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスを凍結乾燥して、凍結乾燥した細菌細胞のバイオマス(凍結乾燥バイオマス)を得る工程
を含む方法に関する。有利には、(a)少なくとも1つのリン塩は、ピロリン酸イオン塩またはピロリン酸、例えばピロリン酸ナトリウムまたはカリウムである。
【0029】
工程(iii)において、工程(ii)の濃縮バイオマスを、(a)少なくとも1つのリン塩、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質および(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる溶液(凍結保護剤)と混合し得る。
【0030】
工程(iii)において、工程(ii)から得られた凍結保護バイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、所望により(c)L-システイン、および(d)少なくとも1つのクエン酸塩を含むかまたはそれらからなる溶液(凍結保護剤)と混合し得る。クエン酸塩が、薬理学的に許容される塩であり得る場合、例えば、クエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウムまたはクエン酸マグネシウムまたはクエン酸カルシウムまたはそれらの混合物、好ましくはクエン酸ナトリウムおよび/またはマグネシウムおよびそれらの混合物であり得る。
【0031】
したがって、第1実施態様において、該溶液(凍結保護剤)は、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸、例えばピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウム、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、好ましくはスクロース、および/またはトレハロース、および(d)少なくとも1つのクエン酸塩、好ましくはクエン酸ナトリウムおよび/またはカリウムを含んでもよく、あるいはそれらからなり得る。一方、第2実施態様において、該溶液(凍結保護剤)は、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸、例えばピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウム、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、好ましくはスクロース、および/またはトレハロース(c)L-システイン、および(d)少なくとも1つのクエン酸塩、好ましくはクエン酸ナトリウムおよび/またはカリウムを含んでもよく、あるいはそれらからなり得る。
【0032】
工程(iii)で用いる凍結保護溶液(凍結保護剤)の例は、(a)ピロリン酸カリウムおよび/またはナトリウムおよびそれらの混合物、(b)スクロース、所望により(c)システイン、および(d)クエン酸ナトリウムおよび/またはマグネシウムおよびそれらの混合物を含む溶液であり得る。
【0033】
本発明による凍結保護溶液(凍結保護剤)の別の例は、(a)ピロリン酸カリウムおよび/またはナトリウムおよびそれらの混合物、(b)トレハロース、所望により(c)L-システイン、および(d)クエン酸ナトリウムおよび/またはマグネシウムおよびそれらの混合物を含む溶液であり得る。
【0034】
本発明による凍結保護溶液は、8.5±0.1~9.8±0.1、好ましくは8.8±0.1~9.5±0.1に含まれるpHを有し得て、例えば、凍結保護溶液のpHは、9.2±0.1であり得る。
【0035】
例えば、ピロリン酸カリウム、スクロースおよびクエン酸ナトリウムを含む凍結保護溶液は、pH9.2±0.1を有する。
【0036】
工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)に加えて、本発明の方法はまた、下記の好ましい工程の1つ以上を含み得る。
【0037】
工程(i)から得られた発酵バイオマスは、3.0±0.1~6.0±0.1、好ましくは5.0±0.1~6.0±0.1に含まれるpHを有し得る。
【0038】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、工程(i)から得られた発酵バイオマスのpHを、必要に応じて、6.0±0.1~6.8±0.1に含まれるpH値に調節して、調節されたpHの発酵バイオマスを得る、工程(a)を提供し得て;好ましくは、pH値は6.2±0.1~6.5±0.1に含まれ得て、例えば、pH値は6.4±0.1であり得る。この工程(ia)は、存在する場合、工程(ii)の前に実施される。測定されたpH値は、±0.1または±0.2の測定許容誤差を有し得る。
【0039】
一実施態様によれば、発酵バイオマスのpH値の調節は、弱塩基、好ましくは無機を加えることによって実施される。好ましくは、弱塩基は、アンモニウム水和物(NH4OH;CAS No.1336-21-6)を含むかまたはそれからなる。
【0040】
例として、pH値を調節するために使用可能なアンモニウム水和物は、31%~32%のアンモニア含量、好ましくは0.887~0.890g/cm3の比重を有する水溶液であり得る。
【0041】
好ましい実施態様において、工程(i)、(ii)に加えて、本発明の方法は、工程(iii)の前に好ましい工程(ii.a)をさらに提供し得る。好ましい工程(ii.a)において、工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを洗浄して、洗浄バイオマスを得る。
【0042】
一実施態様によれば、工程(ii.a)において、工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを、洗浄液、好ましくは水で洗浄する。
【0043】
好ましい実施態様において、工程(i)、(ii)、(ii.a)に加えて、本発明の方法は、工程(iii)の前に好ましい工程(ii.b)をさらに提供し得る。好ましい工程(ii.b)において、工程(ii.a)から得られた洗浄バイオマスを再濃縮して、再濃縮バイオマスを得る。
【0044】
本発明による再濃縮バイオマスにおいて、細菌細胞は、好ましくは、再濃縮された液体バイオマスのミリリットルごとに、1×106細胞/ml~1×1012細胞/ml、好ましくは1×107細胞/ml~1×1012細胞/ml、さらにより好ましくは1×108細胞/ml~1×1011細胞/ml、さらにより好ましくは1×109細胞/ml~1×1011細胞/ml、または1×1010細胞/ml~1×1011細胞/mlに含まれる濃度を有する。
【0045】
工程(ii)から得られた濃縮バイオマス、または工程(ii.a)から得られた洗浄バイオマス、または工程(ii.b)から得られた再濃縮バイオマスは、6.0±0.1~7.0±0.1、好ましくは6.4±0.1~6.7±0.1に含まれるpHを有し得る。
【0046】
好ましい実施態様において、工程(ii.a)および(ii.b)から得られた洗浄および再濃縮したバイオマスを、(a)リン酸イオンまたはリン酸塩、亜リン酸イオンまたは亜リン酸塩、リン酸一水素イオン塩、リン酸二水素イオン塩、ピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのリン塩、および(b)スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、マンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質を含むかまたはそれらからなる溶液と混合して、凍結保護バイオマスを得る。好ましくは、溶液は、(a)少なくとも1つのリン塩、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質と、好ましくは(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる。
【0047】
好ましい実施態様において、工程(ii.a)および(ii.b)から得られた洗浄および再濃縮したバイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、および(b)スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、マンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、および所望により(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる溶液と混合して、凍結保護バイオマスを得る。有利には、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩は、ピロリン酸ナトリウムまたはカリウムまたはそれらの混合物であり得る。
【0048】
好ましい実施態様において、工程(ii.a)および(ii.b)から得られた洗浄および再濃縮したバイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、および(b)スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、マンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、所望により(c)L-システイン、および少なくとも1つのクエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウムおよび/またはクエン酸カリウムを含むかまたはそれらからなる溶液と混合して、凍結保護バイオマスを得る。有利には、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩は、ピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムおよびそれらの混合物であり得る。
【0049】
好ましい実施態様において、工程(i)、(ii)、(ii.a)および(ii.b)に加えて、本発明の方法は、工程(iii)の前に好ましい工程(ii.c)をさらに提供し得る。好ましい工程(ii.c)において、工程(ii.b)から得られた再濃縮バイオマスを、必要に応じて、5±0.1~7±0.1に含まれるpH値に調節して、pH調節したバイオマスを得る;好ましくは、pH値は5.5±0.1~6.5±0.1に含まれ得て、さらにより好ましくは、pH値は6.2±0.1であり得る。
【0050】
一実施態様によれば、工程(ii.c)におけるpH値の調節は、弱塩基、好ましくは無機塩基を加えることによって実施される。好ましくは、弱塩基は、アンモニウム水和物(NH4OH;CAS No.1336-21-6)を含むかまたはそれからなる。
【0051】
例として、工程(ii.c)においてpH値を調節するのに用いられ得るアンモニウム水和物は、31%~32%のアンモニア含量で、好ましくは0.887~0.890g/cm3の比重を有する水溶液であり得る。
【0052】
あるいは、工程(ia)でpHを調節した場合、前記工程(ii.c)を実施することができない。
【0053】
好ましい実施態様において、工程(i)、(i.a)、(ii)、(ii.a)、(ii.b)または工程(i)、(ii.a)、(ii.b)および(ii.c)から得られた、洗浄、再濃縮およびpH調節したバイオマスを、(a)リン酸イオンまたはリン酸塩、亜リン酸イオンまたは亜リン酸塩、リン酸一水素イオン塩、リン酸二水素イオン塩、ピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのリン塩、および(b)スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、マンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質を含むかまたはそれらからなる溶液と混合して、凍結保護バイオマスを得る。好ましくは、溶液は、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、および(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質と、好ましくは(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる。
【0054】
工程(ii)後、または工程(ii.a)および(ii.b)後、または工程(ii.a)、(ii.b)および(ii.c)後の工程(iii)において、工程(ii)から得られた濃縮したバイオマス、または工程(ii.a)および(ii.b)から得られた洗浄および再濃縮したバイオマス、または工程(ii.a)、(ii.b)および(ii.c)から得られた洗浄、再濃縮およびpH調節したバイオマスを、(a)リン酸イオンまたはリン酸塩、亜リン酸イオンまたは亜リン酸塩、リン酸一水素イオン塩、リン酸二水素イオン塩、ピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのリン塩、および(b)スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロース、マンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質を含むかまたはそれらからなる溶液と混合して、凍結保護バイオマスを得る。好ましくは、溶液は、(a)少なくとも1つのリン塩、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質を含むかまたはそれらからなり、(c)L-システインをさらに含み得る。有利には、(a)少なくとも1つのリン塩は、ピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物である。
【0055】
ピロリン酸ナトリウムまたはカリウムNa4P2O7またはK4O7P2は、ピロリン酸H4P2O7のナトリウムまたはカリウム塩である。ピロリン酸ナトリウムは、ピロリン酸ナトリウムNa2H2P2O7と区別するために、ピロリン酸テトラナトリウムとも呼ばれる。室温にて、ピロリン酸ナトリウムまたはカリウムは無色、無臭、水溶性の固体として現れる。他のナトリウムまたはカリウム二リン酸と一緒に、それはE450として食品添加物のリストにコード化されている。有利には、本発明による凍結保護溶液において、該ピロリン酸イオン塩は、ピロリン酸ナトリウムおよび/またはピロリン酸カリウムおよびそれらの混合物である。
【0056】
本発明において、有利には、少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物を用いて、細菌細胞のバイオマスを凍結保護する。少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物の使用は、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質と組み合わせて起こり得る。本発明の一実施態様において、ピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムは、スクロースおよび/またはトレハロースと組み合わせて溶液(凍結保護剤)において用いられ得る。
【0057】
凍結保護溶液における少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物の使用により、凍結乾燥した、高濃度で、安定し、生存している細菌細胞のバイオマスを得ることができる。有利には、(a)少なくとも1つのリン塩は、ピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、例えばピロリン酸ナトリウムまたはピロリン酸カリウムおよびそれらの混合物である。
【0058】
工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスは、7±0.1~10±0.1、好ましくは7±0.1~9±0.1、さらにより好ましくは7.5±0.1~8.5±0.1に含まれるpHを有し得る。
【0059】
続いて、工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスを、工程(iv)に従って凍結乾燥して、最適化し再現性のあるプロセスによって、凍結乾燥した、安定し、生存している高濃度の細菌細胞のバイオマスを得る。
【0060】
本明細書において、表現「濃縮バイオマス」または表現「濃縮した細菌細胞のバイオマス」における「濃縮した」という用語は、細菌細胞が発酵工程(i)の終わりに得られたものに対して容量単位あたりの数が増加した、工程(ii)から得られたバイオマスを示すために用いられる。
【0061】
濃縮バイオマスにおいて、細菌細胞は、濃縮された液体バイオマスのミリリットルごとに、1×106細胞/ml~1×1012細胞/ml、好ましくは1×107細胞/ml~1×1012細胞/ml、さらにより好ましくは1×108細胞/ml~1×1011細胞/ml、さらにより好ましくは1×109細胞/ml~1×1011細胞/ml、または1×1010細胞/ml~1×1011細胞/mlに含まれる濃度を有する。
【0062】
細菌細胞のバイオマスが、乾燥プロセス(例えばフレーク、顆粒または粉末)または凍結乾燥プロセス(例えば凍結乾燥粉末)後に固相で製造される場合、本明細書に記載の用語「濃縮した」は、工程(iv)から得られた乾燥バイオマスまたは凍結乾燥バイオマスのグラムごとに、1×106細胞/g~1×1013細胞/gに含まれる濃度、好ましくは1×107細胞/g~1×1012細胞/gに含まれる濃度、さらにより好ましくは1×108細胞/g~1×1012細胞/gに含まれる濃度、さらにより好ましくは1×109細胞/g~1×1012細胞/gに含まれる濃度に含まれる細菌細胞濃度を示すために用いられる。
【0063】
値が低いほど細菌細胞の代謝活性を低下/抑制することができる水分活性Awの活性値に関しては、工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスに存在する、0.01~0.3;好ましくは0.05~0.2;さらにより好ましくは0.1~0.15に含まれるAwの値が重要である。水分活性Awの活動値の測定および決定は、米国企業METER Group, Inc.によって製造された「AQUALAB 4TE」の装置モデルを使用して実施し得る。
【0064】
冷却した鏡での露点は、「AQUALAB 4TE」装置により用いられる技術である。このような技術によれば、分析すべき試料が装置のチャンバーに導入され、続いて密閉され、チャンバーの湿度条件は、該試料の「水分活性」(バイオマス細菌細胞に細胞結合による結合していない水として定義される)を用いて徐々に平衡にされる。装置はさらに、密閉されたチャンバーに挿入された少なくとも1つの温度調節された鏡、および温度調節された鏡に機能的に接続された1つ以上の検出センサーを含む。分析中に、チャンバーと試料の間で平衡状態に達すると、温度調節された鏡の表面は、チャンバーの内圧での水分の露点温度以下の温度に徐々に下げられる。その後、チャンバーの水分は、温度調節された鏡のこの表面に結露の形態で付着する。その後、検出センサーは、鏡の表面の最初の結露を検出し、これにより、装置は、水分活性Aw(試料の水分活性に対応)および最初の結露が発生した鏡の表面の温度を検出できる。
【0065】
本発明による凍結乾燥バイオマスの製造方法は、細菌細胞の少なくとも1つの株を含む先に製造した細菌細胞のバイオマス(細菌バイオマス)を、発酵させて、発酵させた細菌細胞のバイオマス(発酵バイオマス)を得る工程(i)を含む。
【0066】
工程(i)を対象とする細菌バイオマスは、Firmicutes、Actibacteria、Bacteroidetes、Proteobacteriaのファミリーに属する細菌細胞の株およびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される少なくとも1つの細菌細胞の株を含む。該少なくとも1つの細菌細胞の株は、Lactobacillus、Bifidobacterium、Streptococcus、Lactococcus、Akkermansia、Intestinimonas、Eubacterium、Faecalibacterium、Neisseria、Roseburia、Cutibacteriumの属に属する細菌細胞の株およびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される。該少なくとも1つの細菌細胞の株は、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus salivarius subsp. salivarius、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus paracasei subsp. paracasei、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus brevis、Lactobacillus casei、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus johnsonii、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium animalis subsp. lactis、Bifidobacterium breve、Bifobacterium catenulatum、Bifobacterium pseudocatenulatum、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium longum、Akkermansia munichipila、Intestinimonas butyriciproducens、Eubacterium hallii、Faecalobacterium prausnitzii、Neisseria lactamica、Roseburia hominis、Cutibacterium acnesの属に属する細菌細胞の株およびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される。
【0067】
一実施態様において、目的の細菌株の工程(i)を対象とする細菌バイオマスは、以下を含む液体発酵基質(または発酵ブロス)に接種される:i)炭素源、好ましくは20g/l~80g/lに含まれる濃度のデキストロース、ii)好ましくは植物由来のペプトン(例えば、発酵細菌株の機能としてのジャガイモ、コメまたはエンドウマメ)の組合せを含む、窒素源、およびiii)5g/l~50g/lに含まれる濃度の酵母抽出物。
【0068】
一実施態様によれば、液体発酵基質は、目的の細菌バイオマスの機能として、それぞれの塩が該基質または発酵ブロスの10g/l~0.01g/lに含まれる濃度のリン酸類または硫酸カリウム、マグネシウムまたはマンガンと共に加えられ得る。
【0069】
目的の細菌バイオマスは、液体発酵基質の容量に対して1~10容量%、好ましくは2~4容量%の量で上記の液体発酵基質に接種される。
【0070】
これにより摂取された細菌バイオマスを、30℃~40℃、好ましくは34℃~37℃に含まれる温度にて、1時間~48時間、好ましくは5時間~30時間に含まれる時間、液体発酵基質の接種および酸性化の機能として、インキュベートする。
【0071】
発酵工程(i)の終わりに、工程(ii)による濃縮に供される細菌バイオマスが得られる。
【0072】
工程(i)の細菌バイオマスを濃縮する工程(ii)は、液体画分を、正確に工程(i)の液体発酵基質で増殖した細菌細胞からなる固体または細胞画分から分離する、分離工程によって実施される。一実施態様において、該分離工程は、遠心分離によって実施し得る。
【0073】
分離工程は、溶液の物理的状態にある細菌バイオマスから、そこに含まれる液体画分を分離することを可能にし、その結果、バイオマスは、例えば細菌細胞などの他の成分に集中するようになる。
【0074】
濃度は、工程(i)において、基質または発酵ブロスの1×106細胞/ml~1×1011細胞/mlに含まれる濃度の該少なくとも1つの細菌株を含む細菌バイオマスから、工程(ii)の後に1×106細胞/ml~1×1012細胞/mlに含まれる濃度の該少なくとも1つの細菌株を含む濃縮バイオマスに、移行することにより達成される。
【0075】
工程(i)、(ii)に続き、工程(iii)の前である好ましい工程(ii.a)は、工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを洗浄液、好ましくは水で洗浄して、洗浄バイオマスを得ることを提供する。
【0076】
工程(iii)において、工程(ii)から得られた濃縮バイオマス、または工程(ii.b)から得られたpH調節したバイオマスを、(a)および(b)、および所望により(c)を含むかまたはそれらからなる溶液と混合する。
【0077】
そのような溶液(または凍結保護溶液)は、細菌バイオマスが凍結保護されるという点で、濃縮バイオマス、洗浄バイオマスまたはpH調節したバイオマスに凍結保護を与えることができる。これは、該細菌バイオマスに含まれる、使用される細菌株の細胞が凍結保護されていることを意味する。細胞凍結保護は、細菌株の細胞の生物組織(例えば細胞膜)が、凍結保護バイオマスを凍結乾燥する工程(iv)での凍結によって生じる可能性のある損傷から保護されることを意味する。例として、細胞への損傷は、膜の透過性が増加する可能性を伴う、細胞膜の裂傷または損傷を含み得る。
【0078】
一実施態様によれば、工程(iii)の該溶液は、水溶液、例えば、20℃~25℃の室温の蒸留水または再蒸留水である。
【0079】
一実施態様によれば、(a)リン塩は、ピロリン酸塩である。
【0080】
別の一実施態様によれば、少なくとも1つのリン塩(a)は、リン酸カリウム(K3PO4)、リン酸一水素カリウム(K2HPO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)および/またはピロリン酸カリウム(K4P2O7)の化合物より選択される。
【0081】
例として、本発明で使用できるリン酸一水素カリウムは、白色結晶の形態であり、90~100重量%、好ましくは95~99重量%、さらにより好ましくは97~99重量%に含まれる含量を有する。
【0082】
更なる例として、本発明で使用できるピロリン酸カリウム(CAS No.7320-34-5)は、粒子、粉末または顆粒の形態であり、90~100重量%、好ましくは95~99重量%、さらにより好ましくは96~98重量%に含まれる含量を有する。
【0083】
一実施態様によれば、リン酸イオン、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオンおよび/またはピロリン酸イオンは、6~27%W/Vに含まれる量で溶液(工程(iii)で細菌バイオマスと混合する前のこのような溶液を想定)中に存在し得て、ここで、%W/Vは、溶液の総容量に対する前記化合物の重量パーセント(すなわちグラム)を示すために使用される。
【0084】
一実施態様によれば、工程(iii)で用いる溶液中のリンの一または複数の塩(a)の濃度は、6~20%W/V、好ましくは6~15%W/V、さらにより好ましく10~14%W/Vに含まれ得る。
【0085】
(b)ポリヒドロキシ物質は、スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロースまたはマンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される。
【0086】
一実施態様によれば、スクロースは、ポリヒドロキシ物質として用い得る。一実施態様によれば、スクロースは、25~45%W/V含まれる濃度を有し得て、ここで、%W/Vは、凍結保護溶液(工程(iii)で細菌バイオマスと混合する前にこのような溶液を想定)の総容量に対するスクロースの重量パーセント(すなわちグラム)を示すために使用される。
【0087】
例として、(b)ポリヒドロキシ物質として使用可能なスクロースは、白色で水溶性の結晶の形態であり得る。好ましくは、スクロース結晶の85~100重量%、好ましくは90~95重量%に含まれる重量パーセントは、0.05~0.50mL、好ましくは0.1~0.35mLに含まれる粒子径分布を有する。
【0088】
したがって、一実施態様によれば、工程(iii)で用いる溶液は、溶媒(好ましくは水)、ピロリン酸イオンおよびリン酸イオン、リン酸一水素イオン、および/またはリン酸二水素イオン、好ましくはL-システイン、およびスクロースを含み得る。
【0089】
一実施態様によれば、工程(iii)で用いる溶液中のL-システインは、溶液1L当たり0.5gのL-システインから5gのL-システイン、好ましくは溶液1L当たり1g~4gのL-システイン、さらにより好ましくは溶液1L当たり2g~3gのL-システインに含まれる量で存在し得る。
【0090】
具体的には、L-システイン(CAS No.52-90-4)は酸素封鎖剤として機能し、それ故に溶液に添加すると、活性酸素種(ROS)の形成を制限または阻止する。さらに、L-システインは低分子量により特徴付けられ、それ故に細菌細胞の細胞膜に容易に浸透し、これにより酸素フリーラジカルによる損傷からの保護を強化し、膜構造の完全性を向上させる。
【0091】
例として、本発明の範囲内で使用できるL-システインは、一水和物であり得る。
【0092】
一実施態様によれば、本発明で使用できるL-システインは、結晶性粉末の形態であり、90~100重量%、好ましくは95~100重量%に含まれる含量を有する。
【0093】
一実施態様によれば、工程(iii)で用いる溶液は、約1:1.5~約1:6、好ましくは1:3含まれるピロリン酸:スクロースのイオンモル比でピロリン酸イオンおよびスクロースを含み得る。
【0094】
更なる実施態様によれば、工程(iii)で用いる溶液は、約1:0.75~約1:3、好ましくは1:1.5に含まれるリン酸、リン酸一水素、リン酸二水素:スクロースのイオンモル比でリン酸イオン、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオンおよびスクロースを含み得る。
【0095】
したがって、このような実施態様によれば、工程(iii)の溶液は、溶媒(好ましくは水)、ピロリン酸イオンおよび/またはリン酸イオン、リン酸一水素イオン、リン酸二水素イオン、スクロース、および好ましくはL-システインを含み得る。
【0096】
工程(iv)において、工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスを、凍結乾燥して、凍結乾燥バイオマスを得る。
【0097】
他に断らない限り、「凍結乾燥する」または「凍結乾燥」という表現は、予め凍結した凍結保護バイオマスの制御された脱水を示すために用いられ、そしてそれは、凍結乾燥プロセス全体(凍結、一次乾燥および二次乾燥)を示すために用いられる。
【0098】
実施例4は、本発明の可能な実施態様による凍結乾燥プロセスを説明する。
【0099】
一実施態様によれば、工程(iv)の凍結乾燥は、工程(iii)後に、下記工程:
(iv.a)工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスを凍結して、凍結バイオマスを得る工程;
(iv.b)工程(iv.a)から得られた凍結バイオマスの氷を昇華(または乾燥)させて、凍結乾燥バイオマスを得る工程
を含む。
【0100】
好ましくは、工程(iv.b)の昇華は、凍結乾燥バイオマスを得るための、工程(iv.a)から得られた凍結バイオマスの一次乾燥工程(iv.b.1)、および工程(iv.b.1)から得られたバイオマスに対するその後の二次乾燥(または脱着)を含む。
【0101】
一次乾燥工程(iv.b.1)において、工程(iv.a)から得られた凍結バイオマスを、最初に減圧に供して、凍結溶液の一部を昇華させて、減圧下でバイオマスを得て、続いて、二次乾燥工程(iv.b.2)において、減圧下のバイオマスを加熱して、凍結乾燥バイオマスを得る。
【0102】
好ましくは、前の一次乾燥工程(iv.b.1)における減圧下のバイオマスからすべての氷が昇華したとき、二次乾燥工程(iv.b.2)は開始する。
【0103】
二次乾燥工程(iv.b.2)において、一次乾燥工程(iv.b.1)から得られた減圧下のバイオマスに吸着した溶液を、減圧下でバイオマス温度を上げることにより脱着させる。
【0104】
一実施態様によれば、バイオマスの湿度が、バイオマス重量に対して0.5重量%~2.5重量%、好ましくは0.75重量%~2.0重量%、より好ましくは0.9重量%~1.5重量%、さらにより好ましくは0.95重量%~1.1重量%に含まれるとき、二次乾燥工程(iv.b.2)は終了する。
【0105】
工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)に加えて、一実施態様によれば、方法は、工程(iv)に続く工程(v)を含み得る。
【0106】
好ましい工程(v)において、工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスを破砕して、破砕バイオマスを得る。
【0107】
実際のところ、工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスがコンパクトな塊(ケーキ)である場合、破砕バイオマスを得るために、この塊を、破砕するか、すりつぶすかまたは粉砕しなければならない。好ましくは、工程(v)の破砕は、メッシュまたは篩によって実施する。
【0108】
より正確には、好ましい工程(v)において、工程(iv)から得られたコンパクトな塊またはケーキを、コンパクトな塊を破砕するか、すりつぶすかまたは粉砕するために、上記メッシュまたは篩に通す。
【0109】
工程(v)の終わりに得られた破砕バイオマスは、粉末または顆粒の形態であり、工程(iv)の凍結乾燥バイオマスに対して管理および取り扱いが容易である。例えば、このような取り扱い性の改善は、その後の秤量および/または包装作業において有用であり得る。
【0110】
工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)に加えて、一実施態様によれば、方法は、工程(v)に続く工程(vi)を含み得る。
【0111】
好ましい工程(vi)において、工程(v)から得られた破砕バイオマスを、好ましくは水分がない状態で、滅菌容器に包装して、包装バイオマスを得る。
【0112】
一実施態様において、工程(vi)から得られた包装バイオマスを、滅菌容器内のヘッドスペースの量(具体的には、包装バイオマスと容器の上部との間の空気の量)が極めて小さくなるように、滅菌容器に包装する。好ましくは、ヘッドスペースの量は無視できるほどである(すなわちほぼゼロ)。
【0113】
一実施態様によれば、包装バイオマスは、工程(vi)の終わりに得られた包装バイオマス1g当たり、1×108細胞/g~1×1011細胞/gに含まれる細菌細胞濃度、好ましくは1×109細胞/g~1×1010細胞/gに含まれる濃度を有する。
【0114】
工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)に加えて、一実施態様によれば、方法は、工程(vi)に続く工程(vii)を含み得る。
【0115】
好ましい工程(vii)において、工程(vi)から得られた包装バイオマスを、所定の時間後に水で再構成して、再構成バイオマスを得る。
【0116】
工程(vii)の所定の時間に関して、このような時間は、ゾーンIV.AおよびゾーンIV.B.の条件下でも、好ましくは1分~10年、好ましくは1日~5年、より好ましくは4か月または12か月から48か月、さらにより好ましくは18か月~32か月、さらに好ましくは24か月~30か月に含まれる。
【0117】
一実施態様によれば、工程(vi)の再構成は、典型的には、必ずしもではないが、工程(iv)の凍結乾燥中に減少した量と同等である、ある量の水を工程(vi)から得られた包装バイオマスへ再添加することを提供する。
【0118】
異なる実施態様によれば、工程(vi)で用いられる水は、純水、生理食塩水または緩衝溶液を含むかまたはそれらからなる群より選択される。
【0119】
一実施態様によれば、工程(vi)から得られた包装されている凍結乾燥バイオマスは、好ましくは等張水溶液であって、さらにより好ましくは実質的に中性のpH値、またはいずれの場合も6.0~7.0に含まれるpH値の水溶液によって、水溶液として工程(vi)において再構成(水和)され得る。6.0~7.0に含まれるこのようなpH値は、細菌細胞が、裸細胞であり、すなわち外層を欠く、工程(vi)から得られた包装バイオマスについて特に好ましい。
【0120】
一実施態様によれば、工程(vi)から得られた包装されている凍結乾燥バイオマスは、pH8.4のホウ酸緩衝溶液の水溶液として、工程(vii)において再構成(水和)され得る。このようなpH値8.4は、細菌細胞が、好ましくは脂質マトリックスまたは糖タンパク質マトリックス中の、マイクロカプセル化細胞である、工程(vi)から得られた包装バイオマスについて特に好ましい。
【0121】
一実施態様によれば、工程(vii)の再構成において、工程(vi)から得られた包装バイオマスは、105~107細胞/mlに含まれ、好ましくは約106細胞/mlの再構成バイオマス中の細菌細胞濃度を得るまで希釈される。
【0122】
これに関して、105~107細胞/mlに含まれ、好ましくは約106細胞/mlの再構成バイオマス中の細菌細胞濃度は、好ましくは、その後の水での希釈によって得られる。
【0123】
工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)に加えて、一実施態様によれば、方法は、下記好ましい工程:
(viii)工程(i)から得られた発酵バイオマス、工程(ii)から得られた濃縮バイオマス、工程(iii)から得られた凍結保護バイオマス、および工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスを、2つの異なる蛍光色素と接触させて、蛍光発酵バイオマス、蛍光濃縮バイオマス、蛍光凍結保護バイオマスおよび蛍光凍結乾燥バイオマス(全体として「蛍光バイオマス」をいう表現で示される)を得る工程;
(ix)工程(viii)に続いて、フローサイトメトリーにより、蛍光発酵バイオマス、蛍光濃縮バイオマス、蛍光凍結保護バイオマスおよび蛍光凍結乾燥バイオマス中の完全な細胞膜を有する(したがって生存している)細菌細胞の量を検出する工程
を含み得る。
【0124】
したがって、蛍光バイオマスのサイトフルオロメトリー検出が凍結乾燥バイオマスを製造するための異なる工程で実施されるこの実施態様による方法は、工程(i)、工程(ii)、工程(iii)および工程(iv)を支配するパラメーターをモニターする(したがって、改善された方法で介入/調節する)ことを可能にする。
【0125】
一実施態様によれば、工程(ix)の検出工程において、そしてISO 19344:2015(E)規格に記載された方法に従って、細胞膜を透過する第1色素(好ましくはチアゾールオレンジ、または(登録商標)SYTO 24-緑色スペクトルの蛍光色素)は、すべての細菌細胞に浸透でき、蛍光バイオマスの総蛍光単位または細胞(TFU)を提供する。第2色素(好ましくはヨウ化プロピジウム)は、細胞膜が損傷した細菌細胞にのみ浸透でき、蛍光バイオマスの非活性または非生存蛍光単位または細胞(nAFU)を提供する。
【0126】
特に好ましい実施態様によれば、細胞膜全体を有する生存細菌細胞の量は、下記相関関係:
TFU=AFU+nAFU
[式中、
TFUは、全ての蛍光細菌単位または細胞であり;
nAFUは、細胞膜が不完全であるかまたは損傷した非活性な蛍光細菌単位または細胞単位(すなわち、第2色素、好ましくはヨウ化プロピジウムに対して陽性である単位)である]
が適用される、活性蛍光単位または細胞(AFU)、すなわち蛍光分析における第1色素(好ましくはチアゾールオレンジ、またはSYTO(登録商標)24)に対してのみ陽性である単位として表され得る。
【0127】
一実施態様によれば、工程(ix)のフローサイトフルオロメトリーを、分析される蛍光バイオマスの体積測定を実施し、細胞濃度(AFUおよびTFU)を直接計算するように、構成および/または較正する。
【0128】
別の一実施態様によれば、蛍光バイオマスにおけるAFUおよびTFUの値を得るために、工程(ix)のフローサイトフルオロメトリーは、蛍光バイオマスに添加された少なくとも1つの内部蛍光標準を使用する。
【0129】
一実施態様によれば、内部蛍光標準は、蛍光ボールまたはビーズの形態であり、既知の濃度で分析すべき各蛍光バイオマスに加えられる。その後、分析される蛍光バイオマスにおけるAFUとTFUの値は、既知の量に比例して計算できる。
【0130】
更なる実施態様によれば、溶液または凍結保護溶液は、約5,000u~約80,000uの分子量を有するポリマーを含まず、および/または工程(ii)の濃縮バイオマスと混合された溶液中に存在する可能性のあるリン酸イオンは、緩衝溶液の一部ではない。
【0131】
前記目的は、上記の実施態様のいずれかによる方法によって得られた凍結乾燥バイオマスによって達成される。
【0132】
一実施態様によれば、そのような凍結乾燥バイオマスは、固体形態、好ましくは顆粒または粉末の形態である。
【0133】
前記目的は、最後に、組成物に、上記の実施態様のいずれかによる方法による凍結乾燥バイオマスを含む、医薬組成物、または医療デバイス組成物、または美容用途組成物、または食品サプリメント組成物または食品組成物または特別医療目的用食品(FSMP)組成物によって達成される。
【0134】
一実施態様によれば、本発明の組成物は、生物学的製剤(LBP)を含むかまたはそれからなり、このような表現は、細菌細胞(特に生存している)および少なくとも1つの薬物または活性成分を含む、障害、疾患または状態の処置、予防または治療に適用できる、生物学的組成物であって、免疫原特異的ワクチンを含まないまたはそれから構成されない、組成物を示すために使用される。
【0135】
以下、本発明は、非限定的な例としてのみ提供されるいくつかの例に基づいて説明する。
【実施例】
【0136】
実施例1:工程(iii)で使用できる溶液または凍結保護溶液の製造
以下の原材料が、示した比率で、1Lを測定するのに適切な容量の容器に注加される:
- スクロース:400g/l;
- クエン酸ナトリウム:50g/l;
- リン酸一水素カリウム:135g/l;
- L-システイン:2.5g/l。
【0137】
本発明で使用できるスクロースは、Suedzucker AGが製造し、Giusto Faravelli S.p.A. (www.faravelli.it)が販売するSUCROSE RFF EP、cod.649400である。
【0138】
本発明で使用できるクエン酸ナトリウムは、水溶性結晶の形態である。好ましくは、85%~100%、好ましくは90%~95%に含まれる重量パーセントのクエン酸ナトリウム結晶は、149μm~595μmに含まれる粒子径分布を有する。
【0139】
例として、本発明で使用できるクエン酸ナトリウムは、S.A. Citrique Belge N.V.が製造し、Giusto Faravelli S.p.A.(www.faravelli.it)が販売するSODIUM CITRATE TRIB.2H2O FINE CRYST. E331-BP-USP/NF-EP、code 674500である。
【0140】
本発明で使用できるリン酸一水素カリウムは、Giusto Faravelli S.p.A.(www.faravelli.it)が販売するPOTASSIUM PHOSPHATE BIB.ANHYDROUS E340、cod.593500である。
【0141】
本発明で使用できるL-システインは、Giusto Faravelli S.p.A.(www.faravelli.it)が販売する、発酵により製造されたL-CYSTEINE HCL MONOHYDRATE、code 285400である。
【0142】
このようにして得られた溶液を、原料が完全に溶解するまで撹拌する。
【0143】
次の工程において、そのような溶液を、特に熱的手段によって滅菌する。より正確には、そのような溶液を、約90℃の温度に加熱(低温殺菌)し、そしてこのような温度で約30~35分間維持する。
【0144】
その後、溶液を約6℃~8℃の温度に冷却し、使用できる状態になる。
【0145】
冷却中に、溶液にガス状窒素を吹き込んで溶存酸素を除去し、これにより凍結保護溶液と厳密な嫌気性微生物との適合性を向上させることができる。
【0146】
実施例2:工程(iii)で使用できる別の凍結保護溶液の製造
リン酸一水素カリウムの代わりに、約128g/lのアルカリ性ピロリン酸、好ましくはピロリン酸カリウム(CAS No. 7320-34-5)を使用し、溶媒および他の原料は比率に関してさえそのまま使用して、実施例1のように進める。
【0147】
本発明で使用できるピロリン酸カリウムは、Sigma-Aldrich(Saint Louis、MO 63103、United States;sigma-aldrich.com)が販売する「Potassium pyrophosphate 97%」、製品番号322431である。
【0148】
実施例2A:工程(iii)で使用できる別の凍結保護溶液の製造
リン酸一水素カリウムの代わりに、約128g/lのアルカリ性ピロリン酸、好ましくはピロリン酸カリウム(CAS No.7320-34-5)を使用し、溶媒および他の原料は比率についてもそのまま使用して、実施例1のとおりに進める。この実施例では、L-システインを使用しなかった。
【0149】
本発明で使用できるピロリン酸カリウムは、Sigma-Aldrich(Saint Louis、MO 63103、United States;sigma-aldrich.com)が販売する「Potassium pyrophosphate 97%」、製品番号322431である。
【0150】
実施例2B:下記を含む、工程(iii)で使用できる別の凍結保護溶液の製造:
- トレハロース:350g/l;
- クエン酸ナトリウム:50g/l;
- ピロリン酸カリウム:128g/l。
【0151】
実施例2C:下記を含む、工程(iii)で使用できる別の凍結保護溶液の製造:
- トレハロース:350g/l;
- クエン酸ナトリウム:50g/l;
- ピロリン酸カリウム:128g/l;
- L-システイン:2.5g/l。
【0152】
実施例3:工程(i)に従って発酵させたバイオマスおよび工程(ii)に従って濃縮したバイオマスの製造
Lactobacillus rhamnosus GG(ATCC 53103)の株を含有する、生存している細菌細胞(細菌バイオマスの場合)の培養から開始して、適切な発酵基質(またはブロス)で約16~18時間発酵を行う。
【0153】
例として、前記株の活性培養物に、上記の量のデキストロース、植物ペプトンおよび酵母抽出物、ならびにマンガン塩および界面活性剤からなる発酵基質中の2~4%V/V(基質の容量に対する培養物の容量パーセント)、好ましくは3%の量で接種する。培養物を31℃~33℃で約16時間インキュベートし、pHを5.45~6.0、好ましくは5.80~5.90の間で一定に保つ。
【0154】
発酵工程(i)の終わりに、発酵バイオマスのpHを6.2±0.1に調節する工程(i.a)を、弱塩基、好ましくは無機(好ましくはNH4OH)を用いて実施する。
【0155】
続いて、発酵バイオマスの第1濃縮(工程(ii))を、具体的には、前記発酵ブロスを遠心分離し、水相を固相または細胞相から分離することによって実施する。
【0156】
その後、固相に含まれる微生物を、細菌バイオマスの重量に対して4:1の比率で滅菌水(好ましくは再蒸留)を用いて洗浄できる(工程(ii.a))。
【0157】
前記比率で滅菌水と混合した細菌バイオマスの第2遠心分離によって、その後、洗浄バイオマスを再び濃縮し(工程(ii.b))、全容量濃度係数(VCF)は約10~30倍、好ましくは約20倍に含まれる。これは、そこに含まれる同じ細菌細胞を考慮すると、最終容量が初期容量に対して約10~30倍、好ましくは約20倍減少することを意味する。
【0158】
その後、洗浄され、再濃縮されたバイオマスを得る。
【0159】
あるいは、工程(i.a)を実施しない場合、洗浄および再濃縮したバイオマスのpHを、pH調節したバイオマスを得るために、弱塩基、好ましくは無機塩基(好ましくはNH4OH)を加えることにより、約6.2±0.1のpHに調節し得る(工程(ii.c))。
【0160】
本発明で使用できる水酸化アンモニウムは、F.lli Bonafede S.a.s.(21013 Gallarate(VA)、Italy)が販売するAMMONIUM HYDRATEである。
【0161】
実施例4:工程(iii)の混合工程および工程(iv)の凍結乾燥工程
その後、実施例1(または実施例2)の凍結保護溶液を、実施例3のpH調節したバイオマスに加え、これにより、工程(iii)の生成物として凍結保護バイオマス(CB)を得る。
【0162】
pH6.2±0.1のバイオマスの重量と凍結保護溶液の容量との間の比は、約80:20から75:25に含まれ、その後、凍結乾燥を行う。これは、実施例1(または実施例2)の凍結保護溶液を、最終混合物全体の容量に基づいて計算して20%、または好ましくは、凍結保護バイオマス(CB)と呼ばれる最終混合物全体の容量に基づいて計算して25%の量で混合することを意味する。
【0163】
その後、CBを負荷し、すなわち、凍結乾燥機に入れ、「凍結乾燥(freeze-drying)」(凍結乾燥(lyophilisation))と呼ばれる凍結乾燥プロセスに供する。
【0164】
この目的のために、凍結保護バイオマスの温度を徐々に下げて、凍結保護バイオマスの完全な凍結(工程(iv.a))を容易にし、凍結バイオマスを得る。具体的には、生成物を-40℃~-45℃に含まれる温度まで約2時間かけて徐々に(約1℃/4分)冷却し、その後、上記の温度にて約2~4時間凍結保存する。
【0165】
そのような完全な凍結(iv.a)後、チャンバーの圧力を、約5.00E-02~5.00E-03 mbar、好ましくは1.00E-03 mbarの値に低下させる(工程(iv.b.1))。
【0166】
その後、この圧力値を維持することにより、凍結保護溶液の昇華を引き起こすため、温度を再び上昇させる(工程(iv.b.2))。昇華の現象は、基本的に、そのような混合物の状態図の三重点より下で、凍結により固化した溶液が、液化することなく、気相でのみその凝集状態を変更できるという事実による。
【0167】
例えば、製品に適用可能な加熱ランプは、例えば、温度を5℃刻みで上昇させることによって、約8~10時間で-45℃から-20℃~-10℃の温度まで徐々に変化させ、その後約-10℃の温度でさらに4~8時間維持する。最初に0℃でこの温度を約4時間維持し、その後約15℃までさらに約4時間維持する、少なくとも2つの更なる加熱工程が続く。その後、生成物を0.5℃/分の速度で約25℃~30℃の最終温度にし、前記最終温度で約8時間~12時間維持する。
【0168】
凍結乾燥プロセス(工程(iv))は、関与する株にもよるが、通常2~3日続く。Lactobacillus rhamnosus GG(ATCC 53103)の本例では、凍結乾燥プロセスは約60~72時間続けた。
【0169】
これにより得られた凍結乾燥バイオマスを、好ましくは凍結乾燥プロセスの終わりに得られた生成物(ケーキ)の適切な破砕/すりつぶし(工程(v))後に保存でき、該保存を、所望により、以下の実施例6に示す単位または用量での包装工程(工程(vi))後に実施し得る。
【0170】
実施5:凍結乾燥バイオマスの分析
その後、得られた試料を、実施例4に示す手順に従って分析した。
【0171】
下記表1において、左から右の列に、実施した分析のタイプ、分析で得られた要件または値、および量または値を試験するのに適用した方法を報告する。
【表1】
上記の規格はすべて、本特許出願の優先日に有効な版であることを確認すべきである。
【0172】
実施例6:保存期間の分析
実施例5の生成物を、包装の外側から内側に向かって、紙の層(40g/m2)、それぞれの厚さが9μmのアルミニウムの2つの層、および組成物に直接接触するポリエチレンの層(厚さ:35μm)の層を形成する、紙とアルミニウムの一次包装に保存した。
【0173】
一次包装を収納する二次包装として段ボール箱を用いた。
【0174】
下記の表A)、B)、C)で報告するパラメーターを、A)、B)、C)でマークしたテストで、示した期間(月単位で表される)使用し、次の気候ゾーンの条件をシミュレートした(WHO Technical report series No.953, 2009 guidelines, Annex 2, Appendix 1, 表1, page 117による):
A)ゾーンII(亜熱帯および地中海性気候)-長期保存条件:25℃/60±5%相対湿度(RH);試験期間:30か月;
B)ゾーンIV.B(高温超多湿気候)-長期保存条件:30℃/75±5%RH;試験期間:30か月。
【0175】
加速試験を、次の極端な条件下でも実施した:
C)40℃/75±5%RH;試験期間:6か月。
【表2】
【0176】
これまでの実験カウントデータ(CFUおよびAFU)を、
図1の図の形式で報告する。
【表3】
【0177】
これまでの実験カウントデータ(CFUおよびAFU)を、
図2の図の形式で報告する。
【0178】
代わりに、
図4は、以下で説明するように、低下率(k)CFUおよびAFUを、アレニウス線形モデルの実験データの補間線の勾配値の勾配値として報告する。
【表4】
【0179】
これまでの実験カウントデータ(CFUおよびAFU)を、
図3の図の形式で報告する。
【0180】
上記の実験結果から、化学的物理的および微生物学的パラメーター(外観、aw、TAMC、TYMC、グラム陰性胆汁耐性菌、Escherichia coli、Staphyloccocus aureusおよびSalmonella spp.)に関するデータが、最も極端な条件であっても、適用されるすべての条件に適用される規則に準拠していることが常に見られたことが観察できる。
【0181】
さらに、活性蛍光単位(AFU)と比較した値を観察することが重要であり、これは、完全な細胞膜を有し、それ故に生存している細菌細胞の数を定義する指標であることを覚えておくべきである。
【0182】
本発明の発明者によれば、ACF値は、CFC値が生存しているが培養不可能な細胞(VBNC)の存在によって歪められる可能性があるため、分析された細菌細胞の生存性および機能性を完全に理解するために極めて重要である。
【0183】
実際のところ、CFU値は、休止状態または非コロニー生成細胞を考慮していないが、いずれの場合も代謝活性を示すか、適切な環境条件下で(例えば腸管系との接触時)、亜致死的損傷から回復する可能性がある。
【0184】
さらに、培養可能細胞(CFU)がサブグループを表す完全な細胞(AFU)は、細菌ゲノムによって表される機能ユニットのパケットとして意図でき、したがって、膜の完全性に関する細菌集団のモニタリングは、複製および場合によってはコロニー形成の能力としてだけでなく、遺伝情報のベクトルとしても意図された細胞の培養可能性および機能性の要件を克服する。したがって、このアプローチは、細菌細胞が遺伝情報を水平方向に伝達する能力により、腸内細菌叢を完全な細胞(AFU)によって輸送される新しい情報と統合することが可能であるため、未だ探求されていない潜在的なアプリケーションに開かれる。
【0185】
上記のアレニウスモデルに関して、このモデルは、ラクトバチルスラムノサスGG Lactobacillus rhamnosus GG(ATCC 53103)の安定性(例として)に対する温度の影響を評価するために構築された。
【0186】
予測微生物学は、以下の式に示されるように、時間(t)に対する自然対数LN(Nt/N0)の表現によって示されるように、一次低下に続く、時間経過に伴う細菌の生存性の指数関数的損失を説明する。
Nt=N0e-kt
式中、
- Nt=時間tでの細菌数;
- N0=時間ゼロでの細菌数;
- k=低下率。
【0187】
したがって、上記の式から、生存している細菌細胞の濃度が初期量の10分の1に達するのに必要な時間として定義される10分の1減少時間(decimal reduction time)(D1)を計算することができる。例えば、下記表に示されるD1値は、次の式に従って計算した、月単位で表す10分の1減少時間の値を示している。
D1=ln10/k
【0188】
低下率(k)は、各補間線の傾きに基づいて、あらゆる温度で決定できる。
【0189】
図4を参照して、低下率データを、CFU値については下記表D)に、AFU値については表E)に示す。
【表5】
【0190】
上記の表は、試験A)と試験C)に関する計算も示しているが、これらのデータを、試験B)については
図4のような図には示していない。
【表6】
【0191】
上記の表は、試験A)と試験C)に関する計算も示しているが、これらのデータを、試験B)については
図4のような図には示していない。
【0192】
表E)に概説する10分の1減少時間D1は、細菌細胞の10分の1減少の驚くべき時間を示し、これは、最も過酷な保存条件で21か月以上に達する。したがって、本組成物の安定性は、夏期においても、そして制御されていない空調の増加の条件下においても確保される。
【0193】
また、AFUパラメーターを使用すると、微生物の細胞膜が完全であるため、生存しているが培養不可能な細胞(VBNC)物が存在する可能性があるにもかかわらず、微生物の実際の生存性の忠実な写真を取得できることに注意することも重要である。
【0194】
実施例7:実施例2Aによる凍結保護溶液中のピロリン酸カリウムイオン、スクロースおよび酸素フリーラジカルの分析的検出
欧州薬局方に示されているアッセイの指示に従って実施される、凍結保護溶液中のピロリン酸イオン、スクロースおよび酸素フリーラジカルを同定するための試験を実施した。
【0195】
分析評価を、実施例2Aに従って製造した凍結保護溶液を含む6つの液体試料のセットで実施した。
【0196】
以下に報告するように、試料を異なる時間に重複して採取した。
・試料1:実施例2Aに従って製造した溶液
・試料2:低温殺菌した実施例2Aに従って製造した溶液(低温殺菌の日に採取した試料)
・試料3:低温殺菌から1日目の実施例2Aに従って製造した溶液
・試料4:低温殺菌から3日目の実施例2Aに従って製造した溶液
・試料5:低温殺菌から5日目の実施例2Aに従って製造した溶液
・試料6:低温殺菌から7日目の実施例2Aに従って製造した溶液
【0197】
試料中のピロリン酸およびスクロースの存在を評価するための定性分析を、欧州薬局方に示されているアッセイの指示に従って実施した。
【0198】
ピロリン酸分析
特に、硝酸銀溶液5mlを、ピロリン酸含有溶液5mlに加え、必要に応じて中和する。結果として、白い沈殿物が形成される。
【0199】
スクロース分析
新たに調製した硫酸銅溶液0.15mlおよび希釈水酸化ナトリウム溶液2mlを、スクロース含有溶液5mlに加える。溶液は青色透明になり、沸騰後も変化しない。希塩酸4mlを熱い溶液に加え、混合物を1分間沸騰させる。希釈水酸化ナトリウム溶液4mlを加える。オレンジ色の沈殿物が形成される。
【0200】
前記の検出アッセイを、実施例2Aによる6つの凍結保護溶液試料の2つのセット、ならびにそれぞれの分析においてポジティブコントロールとして使用する既知のピロリン酸カリウム溶液および既知のスクロース溶液で実施した。蒸留水をネガティブコントロールとして使用した(
図5および
図6を参照)。
【0201】
ピロリン酸分析は、溶液中の物質の存在を特徴付ける白い沈殿物が存在するため、第1および第2のセットで分析したすべての液体試料(重複サンプリングに対応)がピロリン酸カリウム検出アッセイの要件を満たしていることを示した(
図5)。
【0202】
スクロース分析は、第1および第2のセットで分析したすべての液体試料(重複サンプリングに対応)が、最初に青色の溶液を形成し、続いてオレンジ色の固体が沈殿することで示されるように、スクロース検出アッセイの要件を満たしていることを示した(
図6)。
【0203】
続いて、ピロリン酸およびスクロースの化学構造を赤外分光法によって検出した。
【0204】
6つの液体試料および対応する重複物を、Perkin Elmer Spectrum 100FT-IR装置を用いったATR-FTIR赤外分光法によって評価した。スペクトルデータを、ソフトウェアバージョン10.03により取得した。
【0205】
ピロリン酸のFTIRスペクトルは、1250~900cm
-1の領域に特徴的なバンドを有する。
【化1】
ピロリン酸の化学構造
【0206】
特に、約900cm-1のバンドは、P-O-P基の振動伸縮に関するものである。
【0207】
一連の液体試料を評価するための基準として分析した粉末ピロリン酸カリウム試料において、約1018cm
-1および973cm
-1のピークを検出できる(
図7を参照)。
【化2】
スクロースの化学構造
【0208】
粉末スクロースのFTIRスペクトルは、約3500~3325cm-1の領域で、グルコース分子(約3384cm-1)およびフルクトース分子(約3327cm-1)の両方を指すヒドロキシル官能基(OH)の特徴的なピークを示す。さらに、1500~750cm-1のスペクトルには、スクロース分子に存在する官能基COおよびCCの伸縮に関する一連の強いピークがある。
【0209】
一連の液体試料を評価するための基準として分析した粉末スクロース試料において、物質の特徴的なピークを検出できる(
図7を参照)。
【0210】
ATR-FTIR分析により、試験中の2つのセットの液体試料を直接FTIR分析に供することができた。
図8に示すように、分析した試料のスペクトルはすべて重ね合わせることができ、ピロリン酸カリウムおよびスクロースの吸収バンドを有する。
【0211】
続いて、ピロリン酸カリウム含有量の定量分析を、欧州薬局方に示されているアッセイに従って実施される電位差滴定によって、重複して採取した6つの試料で実施した。
【0212】
液体試料中のピロリン酸含有量を定量的に決定するために、1MのHCl水溶液を用いて25mlの試料に対して電位差滴定を行った。
【0213】
第1変曲点で加えた量(mL)を計算に考慮する。薬局方で示されているように、1MのHCl水溶液1mlは、223.0mgのNa4O7P2,10H2Oに相当する。
【0214】
図9に示すように、すべての曲線は同様のプロファイルを有し、6つの液体試料のセットでピロリン酸カリウム含有量に有意差は観察されない。対応する重複試料でも同じ結果が得られた。
【0215】
すべての試料において、1~1.2mLに含まれるHCl 1Mの溶液量を添加した後に変曲点が検出された。
【0216】
下記に示す薬局方によって示されている計算によれば、1MのHCl水溶液1mlは、223.0mgのNa4O7P2,10H2Oに相当する。
【0217】
このような計算によれば、分析した一連の液体試料中のピロリン酸カリウムの濃度は、12.05~14.45mg/mLの範囲で変化する。
【0218】
続いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により、スクロース含有量(g/ml)の定量分析を行った。
【0219】
6つの試料に存在するスクロースの量の分析決定を、逆相法の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により実施した。
【0220】
用いたパラメーターを下記に示す。
【0221】
HPLC分析パラメーター:
・カラム:BIO-RAD Bio-Sil NH2 250×4.6mm
・移動相:アセトニトリル-H2O溶液(75-25v/v)
・流量:1mL/分
・検出器:屈折率
・合計時間:12分
・保持時間:約8分
【0222】
検量線について、既知量のスクロースを分析スケールで秤量し、蒸留水に溶解した。この溶液を移動相で希釈して、0.5~10mg/mlの濃度範囲の一連の標準溶液を得た。これらの溶液をHPLCに注入した。0.1~10mg/mlの濃度範囲で線形検量線が得られ、R
2の値は0.999であった(
図10参照)。
【0223】
図11は、5mg/mlの濃度でのスクロースの標準クロマトグラムを示す。
【0224】
さらに、5mg/mlの濃度のグルコース溶液およびフルクトース溶液を蒸留水中で調整し、同じ分析条件下でHPLCにより分析した。これにより、2つの単糖、グルコースおよびフルクトースにおけるスクロースの加水分解の可能性を検証できる(
図12)。
【0225】
グルコースおよびフルクトースのクロマトグラフィーピークがスクロースと比較して異なる保持時間を有することを考慮すると、加水分解の存在の可能性を評価することが可能である。
【0226】
6つの試料(および対応する重複物)に存在するスクロースの量を分析的に決定するために、各試料を移動相容量(1:100v/v)で希釈した。続いて、各試料をろ過し、HPLCに注入した。例として、試料6のクロマトグラムを
図13に示す。
【0227】
HPLC分析は、6つの試料すべておよび重複物におけるスクロースの存在が検出したが、微量のグルコースまたはフルクトースは検出されなかった。これらの結果は、分析した試料中のスクロースが保存中に加水分解されなかったことを示している。
【0228】
表2は、HPLC分析によって試料中で測定されたスクロースの濃度を示す。
【表7】
【0229】
個々の試料の測定を3回繰り返し、表2に示した値は、標準偏差を伴う平均値である。
【0230】
分析を試料の第2セットでも繰り返し、得られた値は6つの試料の第1セットで報告された値と一致している。
【0231】
実施例7で得られた結果から、分析したすべての液体試料(溶解、低温殺菌後、ならびに冷蔵温度での保存の1、3、5および7日目)は、ピロリン酸カリウムおよびスクロースの検出のためのアッセイ要件を満たしていると結論付けることができる。ATR-FTIRスペクトルは重ね合わせることができ、電位差滴定曲線は、ピロリン酸カリウム含有量に有意な変化がなく、同様のプロファイルを有する。
【0232】
続いて、6つの液体試料中の活性酸素種(ROS)の存在を決定した。
【0233】
この測定を行うために、蛍光プローブH2DCFDA(2',7'-ジクロロジヒドロフルオレセイン二酢酸)の酸化に基づく蛍光法を用いた。この分子は、ROSにより酸化される前に蛍光を示さず、酸化に対して極めて敏感である。この酸化は、蛍光化合物への変換を可能にする。この目的のために、H2DCFDA(10mM)のエタノール溶液2mlおよび0.01M NaOH 0.5mlを加えて、化合物DCFH(非蛍光化合物)中の化合物H2DCFDAを加水分解する。加水分解生成物を室温で30分間保持し、10mlのPBSリン酸緩衝液(50mM、pH7.2)で中和する。ROSの存在下で、DCFH化合物は急速にDCF(2',7'-ジクロロフルオレセイン)に酸化される。
【0234】
DCF化合物の緑色蛍光を、485nmに等しい励起波長と530nmに等しい発光波長に設定した分光蛍光光度計(EnSightTM自動マルチモードプレートリーダー装置、Perkin Elmer)を用いて測定した。ROSの濃度を、0.001~2μmの濃度範囲で一連の標準DCF溶液の蛍光を測定することにより作成した検量線を用いて測定した(
図14)。
【0235】
測定から、0.001~2μmの濃度範囲で線形検量線が得られ、R2の値は0.998であった。
【0236】
6つの液体試料のセットおよび重複物中のROSを決定するために、それらを蒸留水で希釈した(1:100v/v)。2mlの希釈試料の後、DCFHの溶液を5μmに等しい濃度で加える。試料を室温で光を避けて20分間放置し、反応を完了させる。その後、試料に存在する蛍光強度を、分光蛍光光度計(485nm励起、530nm発光)で60分間測定する。
【0237】
試験中の2セットの試料において、表3に示すROSの濃度が決定された。
【表8】
【0238】
分析アッセイを、送達された各試料に対して3回繰り返した。
【0239】
アッセイは、低温殺菌プロセス後にROS濃度が増加したが、制御された温度で7日間試料を保存しても、溶液中に存在するROSの濃度には影響しなかったことを示した。
【0240】
凍結乾燥した生存している細菌細胞の存在下、および水で再構成した後に、試験を繰り返した。
【0241】
この分析は、生存している細菌細胞がピロリン酸イオンの検出においてマスキング効果を有しないことを示した。
【0242】
革新的に、本発明は、事前に設定した目的を達成することを可能にする。
【0243】
より正確には、本発明は、微生物の細胞膜をわずかに損傷させながら、凍結保護剤の存在下で生存している細菌細胞を凍結乾燥することができるプロセスを提供する。
【0244】
有利には、本発明は、存在する全細菌細胞内で生存しているが培養不可能な細胞を確実に区別できる分析手順を提供する。
【0245】
前記の方法、組成物および製剤の実施態様に関して、当業者は、偶発事象に応じて、記載された特性を置き換えまたは変更きる。これらの実施態様はまた、以下の特許請求の範囲で形式化された保護の範囲に含まれると見なされるべきである。
【0246】
さらに、いずれの実施態様が、記載された他の実施態様とは独立して実施され得ることに留意すべきである。
【0247】
以下の実施態様は、本発明の一部である。
【0248】
E1. 凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスの製造方法であって、下記工程:
(i)細菌細胞の少なくとも1つの株を含む、先に製造した細菌細胞のバイオマス(細菌バイオマス)を発酵させて、発酵させた細菌細胞のバイオマス(発酵バイオマス)を得る工程;
(ii)1×106細胞/mlの液体バイオマスから1×1012細胞/mlの液体バイオマスに含まれる細菌細胞濃度を有する濃縮した細菌細胞のバイオマス(濃縮バイオマス)を得るまで、工程(i)から得られた発酵バイオマスを濃縮する工程;
(iii)工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、および(b)スクロース、フルクトース、ラクトース、ラクチトール、トレハロースまたはマンニトールおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる群より選択される、少なくとも1つのポリヒドロキシ物質を含むかまたはそれらからなる溶液と混合して、凍結保護した細菌細胞のバイオマス(凍結保護バイオマス)を得る工程;
(iv)工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスを凍結乾燥して、凍結乾燥した細菌細胞のバイオマス(凍結乾燥バイオマス)を得る工程
を含む方法。
【0249】
E2. 工程(ii)の前に:
(i.a)工程(i)から得られた再濃縮バイオマスのpH値を、6±0.1~6.5±0.1に含まれるpH値に調節して、pH調節した発酵バイオマスを得る工程
を含む、E1に記載の方法。
【0250】
E3. 工程(iii)の前に:
(ii.a)工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを洗浄して、洗浄バイオマスを得る工程;
(ii.b)工程(ii.a)から得られた洗浄バイオマスを再濃縮して、再濃縮バイオマスを得る工程
を含む、実施態様E1またはE2に記載の方法。
【0251】
E4. 工程(iii)の前に:
(ii.a)工程(ii)から得られた濃縮バイオマスを洗浄して、洗浄バイオマスを得る工程;
(ii.b)工程(ii.a)から得られた洗浄バイオマスを再濃縮して、再濃縮バイオマスを得る工程;
(ii.c)工程(ii.b)から得られた再濃縮バイオマスのpH値を、5±0.1~7±0.1に含まれるpH値に調節して、pH調節したバイオマスを得る工程
を含む、E1に記載の方法。
【0252】
E5. (a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸が、ピロリン酸カリウムおよび/またはピロリン酸ナトリウムおよびそれらの混合物である、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0253】
E6. 工程(ii)の濃縮バイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質および(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる溶液と混合する、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0254】
E7. 工程(ii)の濃縮バイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩、好ましくはピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムおよびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、好ましくはスクロースおよび/またはトレハロースおよびそれらの混合物、および所望により(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる溶液と混合する、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0255】
E8. 工程(ii)の濃縮バイオマスを、(a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩、好ましくはピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムおよびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、好ましくはスクロースおよび/またはトレハロースおよびそれらの混合物、所望により(c)L-システイン、および(d)少なくとも1つのクエン酸塩、好ましくはクエン酸ナトリウムおよび/またはマグネシウムおよびそれらの混合物を含むかまたはそれらからなる溶液と混合する、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0256】
E9. 工程(iv)の凍結乾燥バイオマスが、工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスのグラムごとに、1×106細胞/g~1×1013細胞/gに含まれる細菌細胞の濃度、好ましくは1×107細胞/g~1×1012細胞/gに含まれる濃度、さらにより好ましくは1×108細胞/g~1×1012細胞/gに含まれる濃度、さらにより好ましくは1×109細胞/g~1×1012細胞/gに含まれる濃度を有する、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0257】
E10. 工程(iv)の凍結乾燥が、工程(iii)の後に、下記工程:
(iv.a)工程(iii)から得られた凍結保護バイオマスを凍結して、凍結バイオマスを得る工程;
(iv.b)工程(iv.a)から得られた凍結バイオマスの氷を昇華させて、凍結乾燥バイオマスを得る工程
を含む、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0258】
E11. 工程(iv.b)の昇華が:
(iv.b.1)工程(iv.a)から得られた凍結バイオマスを一次乾燥する工程、および
(iv.b.2)続いて、工程(iv.b.1)から得られたバイオマスを二次乾燥して、または脱着させて、凍結乾燥バイオマスを得る工程
を含む、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0259】
E12. 工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)に加えて、下記好ましい工程:
(viii)工程(i)から得られた発酵バイオマス、工程(ii)から得られた濃縮バイオマス、工程(iii)から得られた凍結保護バイオマス、および/または工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスを、2つの異なる蛍光色素と接触させて、蛍光発酵バイオマス、蛍光濃縮バイオマス、蛍光凍結保護バイオマスおよび/または蛍光凍結乾燥バイオマスを得る工程;
(ix)工程(viii)に続いて、フローサイトメトリーにより、蛍光発酵バイオマス、蛍光濃縮バイオマス、蛍光凍結保護バイオマスおよび/または蛍光凍結乾燥バイオマス中の完全な細胞膜を有する細菌細胞の量を検出する工程
を含む、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0260】
E13. 該量が、下記相関関係:
TFU=AFU+nAFU
[式中、
TFU(総蛍光単位)は、全ての蛍光細菌単位または細胞であり;
nAFU(非活性蛍光単位)は、細胞膜が損傷した非活性な蛍光細菌単位または細胞である]
が適用される、活性蛍光単位または細胞(AFU)として表される、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0261】
E14. 細胞膜全体を有する細菌細胞の量が、工程(i)、工程(ii)、工程(iii)および/または工程(iv)を支配するプロセスパラメーターをモニターするために用いられる、実施態様E12またはE13に記載の方法。
【0262】
E15. 工程(i)、(ii)、(iii)および(iv)に加えて、工程(iv)に続く、工程(iv)から得られた凍結乾燥バイオマスを破砕して、破砕バイオマスを得る工程(v)を含む、先行する実施態様のいずれかに記載の方法。
【0263】
E16. 先行する実施態様のいずれかに記載の方法により得られる、凍結乾燥した細菌細胞のバイオマス。
【0264】
E17. 固体形態、好ましくは顆粒または粉末形態である、先行する実施態様に記載のバイオマス。
【0265】
E18. 実施態様E16またはE17に記載の凍結乾燥した細菌細胞のバイオマスを含む、医薬組成物、または医療デバイス組成物、または美容用途組成物、または食品サプリメント組成物または食品組成物または特別医療目的用食品(AFMS)組成物。
【0266】
E19. (a)少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、および所望により(c)L-システインを含むかまたはそれらからなる凍結保護溶液。
【0267】
E20. 少なくとも1つのピロリン酸イオン塩が、ピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムおよびそれらの混合物であり、ポリヒドロキシ物質が、スクロースおよび/またはトレハロースおよびそれらの混合物である、実施態様E19に記載の凍結保護溶液。
【0268】
E21. 該溶液が、(d)クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウムおよび/またはマグネシウムおよびそれらの混合物をさらに含む、実施態様E19およびE20に記載の凍結保護溶液。
【0269】
E22. 細菌細胞のバイオマス(細菌バイオマス)を凍結保護するための、少なくとも1つのピロリン酸イオン塩またはピロリン酸およびそれらの混合物、(b)少なくとも1つのポリヒドロキシ物質、および所望により(c)L-システインの使用。
【0270】
E23. 少なくとも1つのピロリン酸イオン塩が、ピロリン酸ナトリウムおよび/またはカリウムおよびそれらの混合物であり、ポリヒドロキシ物質が、スクロースおよび/またはトレハロースおよびそれらの混合物である、実施態様E22に記載の使用。
【0271】
E24. 該溶液が、(d)クエン酸塩、例えばクエン酸ナトリウムおよび/またはマグネシウムおよびそれらの混合物をさらに含む、実施態様E22およびE23に記載の使用。
【国際調査報告】