IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

特表2022-5295009番染色体オープンリーディングフレーム72遺伝子発現のモジュレーターおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(54)【発明の名称】9番染色体オープンリーディングフレーム72遺伝子発現のモジュレーターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220615BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220615BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 5/0793 20100101ALI20220615BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20220615BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20220615BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220615BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220615BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20220615BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220615BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C12N15/12
C07K14/47
C12N15/864 100Z
C12N5/10
C12N5/0793
C12N5/0735
C12N7/01
C12N5/071
A61P25/28
A61P21/02
A61K38/02
A61K31/7088
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562980
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 US2020029590
(87)【国際公開番号】W WO2020219726
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】62/837,523
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/964,844
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508241200
【氏名又は名称】サンガモ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】ナバン,ジョセフ エフ
(72)【発明者】
【氏名】パッタマッタ,アムルタ
(72)【発明者】
【氏名】サミー,モハマド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA44
4C084CA53
4C084MA17
4C084MA56
4C084MA58
4C084MA59
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA15
4C084ZA23
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA56
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA16
4C086ZA23
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA02
4C087MA17
4C087MA56
4C087MA58
4C087MA59
4C087MA65
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA15
4C087ZA23
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、C9orf72関連疾患、例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)または前頭側頭型認知症(FTD)を有する患者を含む、それを必要とする患者において、C9orf72遺伝子の転写を調節するための組成物および方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジンクフィンガータンパク質(ZFP)ドメインおよび転写リプレッサードメインを含む融合タンパク質であって、ZFPドメインは、ヒトC9orf72遺伝子の突然変異体アレル上のエキソン1aと1bの間のイントロンセグメント中の標的領域に結合し、標的領域は、30より多いG(配列番号1)のタンデムリピートを含む、融合タンパク質。
【請求項2】
突然変異体アレルからのリピート含有mRNAの転写を抑制し、遺伝子からの野生型mRNAの転写を抑制しない、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
ZFPドメインが、標的領域中のセンス配列に結合し、センス配列が、ヘキサヌクレオチドGGGGCC(配列番号1)、GGGCCG(配列番号2)、GGCCGG(配列番号3)、GCCGGG(配列番号4)、CCGGGG(配列番号5)またはCGGGGC(配列番号6)の1つ~3つのタンデムリピートを含む、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
ヒト細胞における突然変異体C9orf72アレルからのセンス転写を抑制する、請求項1から3のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
C9orf72 1aプロモーターからのセンス転写を抑制し、C9orf72 1bプロモーターからのセンス転写を抑制しない、請求項4に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
ZFPドメインが、標的領域中のアンチセンス配列に結合し、アンチセンス配列が、ヘキサヌクレオチドGGCCCC(配列番号7)、GCCCCG(配列番号8)、CCCCGG(配列番号9)、CCCGGC(配列番号10)、CCGGCC(配列番号11)またはCGGCCC(配列番号12)の1つ~3つのタンデムリピートを含む、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
ヒト細胞において突然変異体C9orf72アレルからのアンチセンス転写を抑制する、前記の請求項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
ヒト細胞において突然変異体C9orf72アレルからのセンス転写およびアンチセンス転写の両方を抑制する、前記の請求項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
突然変異体C9orf72アレルからのセンスおよび/またはアンチセンス転写を、少なくとも約30%、40%、75%、90%または95%抑制し、C9orf72 1bプロモーターからのセンス転写を抑制しなくともよい、前記の請求項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
ZFPドメインが、
6つのジンクフィンガーを含み、
表1に示される標的配列に結合し、および/または
表1に示されるZFP転写因子の6つのジンクフィンガー配列を含み、表1に示されるような認識ヘリックス領域の外側の残基に対する1つまたは複数の突然変異を含んでもよい、前記の請求項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
転写リプレッサードメインが、ヒトKOX1由来のKRABドメインアミノ酸配列を含む、前記の請求項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
ZFPドメインが、ペプチドリンカーを介して転写リプレッサードメインに連結される、前記の請求項のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の融合タンパク質のコード配列を含む核酸コンストラクトであって、コード配列が、転写調節エレメントに作動可能に連結される、核酸コンストラクト。
【請求項14】
転写調節エレメントが、脳細胞において構成的に活性であるか、誘導性である哺乳動物プロモーターであり、プロモーターが、ヒトシナプシンIプロモーターであってもよい、請求項13に記載の核酸コンストラクト。
【請求項15】
ウイルスコンストラクトであり、ウイルスコンストラクトが、組換えアデノ随伴ウイルスコンストラクトであってもよい、請求項13または14に記載の核酸コンストラクト。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか一項に記載の核酸コンストラクトを含む宿主細胞。
【請求項17】
ヒト細胞である、請求項16に記載の宿主細胞。
【請求項18】
ヒト細胞が、ニューロンまたは多能性幹細胞であり、幹細胞が、胚幹細胞または人工多能性幹細胞(iPSC)であってもよい、請求項17に記載の宿主細胞。
【請求項19】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)であってもよい、請求項15に記載の核酸コンストラクトを含む組換えウイルス。
【請求項20】
請求項13から15のいずれか一項に記載の核酸コンストラクトまたは請求項19に記載の組換えウイルスおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項21】
ヒト細胞においてC9orf72遺伝子の突然変異体アレルの転写を阻害する方法であって、突然変異体アレルが、エキソン1aと1bの間のイントロンセグメント中に拡大されたG(配列番号1)リピート領域を含み、細胞に、請求項1から12のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項13から15のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト、請求項19に記載の組換えウイルスまたは請求項20に記載の医薬組成物を導入することを含む、方法。
【請求項22】
ヒト細胞が、ニューロン、グリア細胞、上衣細胞または神経上皮細胞である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
細胞が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびC9家族性前頭側頭型認知症(C9FTD)から選択されてもよいC9orf72関連障害を患っている患者の脳または脊髄中にある、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびC9家族性前頭側頭型認知症(C9FTD)から選択されてもよいC9orf72関連障害を患っている患者を処置する方法であって、患者に、請求項1から12のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項13から15のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト、請求項19に記載の組換えウイルスまたは請求項20に記載の医薬組成物を導入することを含む、方法。
【請求項25】
融合タンパク質が、融合タンパク質を発現する組換えウイルスを介して導入される、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
組換えウイルスが、血清型9もしくは偽型AAV2/9もしくはAAV2/6/9のものであってもよいアデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
組換えウイルスが、脳室内、くも膜下腔内、頭蓋内、後眼窩(RO)、静脈内、鼻腔内および/または大槽内経路によって患者に投与される、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1から12のいずれか一項に記載の2つ以上の融合タンパク質が導入され、2つ以上の融合タンパク質のコード配列が、同一組換えウイルスベクター上にあってもよい、請求項21から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項21から28のいずれか一項に記載の方法において使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の融合タンパク質、請求項13から15のいずれか一項に記載の核酸コンストラクト、請求項19に記載の組換えウイルスまたは請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項30】
請求項21から28のいずれか一項に記載の方法においてそれを必要とする患者を処置するための医薬の製造のための、請求項13から15のいずれか一項に記載の核酸コンストラクトまたは請求項19に記載の組換えウイルスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月23日に出願された米国特許出願第62/837,523号および2020年1月23日に出願された同62/964,844号の優先権を主張する。これらの優先出願の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含有する。2020年4月21日に作成された前記ASCIIコピーは、025297_WO017_SL.txtと名付けられ、19,880バイトの大きさである。
【背景技術】
【0003】
9番染色体オープンリーディングフレーム72(C9orf72)遺伝子は、ニューロンにおいて豊富に見出されるタンパク質をコードする。C9orf72タンパク質は、エンドソーム輸送において重要な役割を果たすと考えられている。C9orf72タンパク質の機能は、十分に理解されていないが、最近のデータにより、Rabタンパク質の機能を調節することによってエンドリソソーム経路に沿った膜輸送において役割を果たすということが示唆されている。
【0004】
C9orf72遺伝子は、イントロン1中にヘキサヌクレオチドセグメント(G;配列番号1)を含有する。このセグメントは、識別可能な生物学的効果を伴うことなく、最大30回タンデムに反復し得る。しかし、30回より多いリピート、ヘキサヌクレオチド拡大と呼ばれる現象は、C9orf72関連障害につながることがある(Renton et al., Neuron (2011) 72:257-68;Douglas, Non-coding RNA Res. (2018) 3:178-87)。この拡大は、常染色体優性表現型をもたらし、患者は通常、拡大されたアレルについてヘテロ接合性である。ヘキサヌクレオチド拡大は、細胞内でのRNAフォーカスの形成を引き起こし、これが、RNA結合タンパク質の隔離およびRNA代謝の破壊につながると思われる。また、非AUG依存性翻訳によって、ヘキサヌクレオチド拡大は、潜在的にセンスおよびアンチセンス両方向の6つのフレームすべてからのジペプチドリピート(DPR)を含有する非天然タンパク質の産生につながると思われる(Freibaum and Taylor, Front Mol Neurosci. (2017) 10:35; Douglas、前掲)。これらのタンパク質は、凝集する傾向がある(Gendron et al., Acta Neuropathol. (2013) 126:829)。DPRは、C9orf72関連疾患を有する患者の死後脳材料中に含まれていると報告されている(Riemslagh et al., Acta Neuropathol Commun. (2019) 7:39)。
【0005】
C9orf72関連障害として、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびC9家族性前頭側頭型認知症認知症(C9FTD)が挙げられる。ALSは、進行性の筋肉低下、筋量の減少ならびに動き、話し、飲み込み、および/または呼吸する能力が徐々に低下することを特徴とする。ALSは、100,000人あたり1~3症例の年間発生率を有し、最も一般的な成人発症型運動ニューロン障害である。この疾患は、最初の症状の3~5年以内にほとんどの患者にとって致死的である。米国および欧州では、C9orf72遺伝子における突然変異が、家族性ALSの約30~40パーセントに関与しており、弧発性ALSの5~10%を占める。C9orf72関連ALSを有する一部の患者は、C9前頭側頭型認知症(FTD)またはC9FTDと呼ばれる状態である、人格、行動および言語に影響を及ぼす神経変性性疾患も発症する(Benussi et al., Front Aging Neurosci. (2015) 7:171)。両状態を発症している個体は、ALS-FTDを有すると診断される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
C9orf72関連障害の有効な処置はなかった。したがって、これらの障害のための効果的な療法を開発することが緊急に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ヒトC9orf72のジンクフィンガータンパク質ベースの転写モジュレーターおよびC9orf72関連障害の処置におけるこれらのモジュレーターの使用を提供する。一態様では、本開示は、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)ドメインおよび転写リプレッサードメインを含み、ZFPドメインは、ヒトC9orf72遺伝子の突然変異体アレルのエキソン1aと1bの間のイントロンセグメント(イントロン1a)中の標的領域に結合する融合タンパク質を提供する。突然変異体アレルは、イントロン1a中に拡大されたG(配列番号1)リピート領域を有し、融合タンパク質は、この拡大されたリピート領域を標的とする。突然変異体アレルは、30より多いタンデムGリピート(例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000より多いリピート)を含み得る。野生型アレルは、30以下のこのようなリピート(例えば、25、20、15、10または5リピート以下)を含み得る。
【0008】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、突然変異体アレルからのリピート含有RNA転写物(例えば、mRNA)の転写を抑制し、その遺伝子からの野生型RNA転写物(例えば、mRNA)の転写を抑制しない。
【0009】
一部の実施形態では、ZFPドメインは、標的領域中のセンス配列に結合し、センス配列は、ヘキサヌクレオチドGGGGCC(配列番号1)、GGGCCG(配列番号2)、GGCCGG(配列番号3)、GCCGGG(配列番号4)、CCGGGG(配列番号5)、またはCGGGGC(配列番号6)の1~3のタンデムリピートを含む。ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、ヒト細胞において突然変異体アレルからのセンス転写を抑制する。特定の実施形態では、融合タンパク質は、C9orf72 1aプロモーターからのセンス転写を抑制し、C9orf72 1bプロモーターからのセンス転写を抑制しない。
【0010】
一部の実施形態では、ZFPドメインは、標的領域中のアンチセンス配列に結合し、アンチセンス配列は、ヘキサヌクレオチドGGCCCC(配列番号7)、GCCCCG(配列番号8)、CCCCGG(配列番号9)、CCCGGC(配列番号10)、CCGGCC(配列番号11)、またはCGGCCC(配列番号12)の1~3のタンデムリピートを含む。ある特定の実施形態では、融合タンパク質は、ヒト細胞において突然変異体アレルからのアンチセンス転写を抑制する。
【0011】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、ヒト細胞において突然変異体C9orf72アレルからのセンス転写およびアンチセンス転写の両方を抑制する。一部の実施形態では、融合タンパク質は、野生型C9orf72アレルと比較して、突然変異体C9orf72アレルを優先的に抑制する。
【0012】
さらなる実施形態では、融合タンパク質は、突然変異体アレルからのセンスおよび/またはアンチセンス転写を少なくとも約30%、40%、75%、90%または95%抑制する。
【0013】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、1つまたは複数のZFPドメインを有し、その各々は、6つのジンクフィンガーを含んでもよく、表1に示される標的配列に結合する、および/または6つのジンクフィンガー(順序付けられたF1~F6)を含み、各ジンクフィンガーは、表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、表1に示されるような認識ヘリックス領域の外側の残基に対して1つまたは複数の突然変異を含んでもよい。さらなる実施形態では、融合タンパク質は、標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含み、ジンクフィンガーは、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号は、78021、75114、75115、74969、79895、79898、74986、79899、79901、79902、79904、79916、75027または79921である。
【0014】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、1つまたは複数の転写リプレッサードメインを有し、その各々は、ヒトKOX1由来のKRABドメインアミノ酸配列、例えば、以下にさらに記載されるものを含んでもよい。特定の実施形態では、ZFPドメインは、ペプチドリンカーを介して転写リプレッサードメインに連結される。
【0015】
別の態様では、本開示は、本明細書において記載される融合タンパク質のうち1つまたは複数のコード配列を含む核酸コンストラクトを提供し、コード配列は、転写調節エレメントに作動可能に連結されてもよい。一部の実施形態では、転写調節エレメントは、脳細胞において構成的に活性であるかまたは誘導性である哺乳動物プロモーターを含み、プロモーターは、ヒトシナプシンIプロモーターであってもよい。一部の実施形態では、コンストラクトは、組換えアデノ随伴ウイルス(「AAV」または「rAAV」)コンストラクトである。また、組換えAAVコンストラクトと、血清型1~10のカプシドとを含むrAAV(例えば、AAV2、AAV6またはAAV9)またはそれに由来する偽型のカプシドとを含むrAAV(例えば、AAV2/9、AAV2/6またはAAV2/6/9)も提供される。
【0016】
別の態様では、本開示は、本明細書において記載される、1つもしくは複数の融合タンパク質および/または1つもしくは複数の核酸コンストラクトを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、例えば、ヒト細胞、例えば、ニューロンまたは多能性幹細胞(例えば、胚幹細胞または人工多能性幹細胞)であり得る。
【0017】
また、本明細書において記載されるような、融合タンパク質のうち1つもしくは複数、1つもしくは複数の核酸コンストラクト(例えば、AAVコンストラクト)、核酸コンストラクトを含む組換えウイルス(例えば、rAAV)および/または1つもしくは複数の宿主細胞を、通常、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物も提供される。
【0018】
さらに別の態様では、本開示は、ヒト細胞(例えば、ニューロン、グリア細胞、上衣細胞または神経上皮細胞)において、突然変異体C9orf72アレルの転写を阻害する方法であって、突然変異体アレルが、イントロン1a中に拡大されたGリピート領域を含み、細胞に、本明細書において記載されるような、1つもしくは複数の融合タンパク質、1つもしくは複数の核酸コンストラクト(例えば、AAV)、1つもしくは複数の組換えウイルス、1つもしくは複数の宿主細胞および/または1つもしくは複数の医薬組成物を導入することを含む方法を提供する。一部の実施形態では、細胞は、C9orf72関連障害、例えば、ALSまたはC9FTDを患っている患者の脳または脊髄中にある。
【0019】
関連態様では、本開示は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびC9家族性前頭側頭型認知症(C9FTD)から選択されてもよいC9orf72関連障害を患っている患者を処置する方法であって、患者に、本明細書において記載されるような、1つもしくは複数の融合タンパク質、1つもしくは複数の核酸コンストラクト(例えば、AAV)、1つもしくは複数の宿主細胞および/または1つもしくは複数の医薬組成物を導入することを含む方法を提供する。
【0020】
本処置方法では、融合タンパク質は、融合タンパク質を発現する組換えウイルス(例えば、AAVベクター)を使用して導入され得る。一部の実施形態では、組換えウイルスは、脳室内、くも膜下腔内、頭蓋内、後眼窩(RO)、静脈内、鼻腔内および/または大槽内経路によって患者に投与される。一部の実施形態では、本開示の2つ以上の異なる融合タンパク質が導入され、2つ以上の融合タンパク質のコード配列は、同一または異なる組換えウイルスベクターに保持され得る。
【0021】
また、本明細書において記載される処置方法において使用するための、および本明細書において記載される処置方法において使用するための医薬の製造のための、融合タンパク質、核酸コンストラクトおよび組換えウイルスの使用のための、1つもしくは複数の融合タンパク質および/または1つもしくは複数の核酸コンストラクト、1つもしくは複数の組換えウイルスおよび1つもしくは複数の医薬組成物も本開示において提供される。
【0022】
本発明の他の特徴、目的および利点は、以下の詳細な説明において明らかである。しかし、詳細な説明は、本発明の実施形態および態様を示すが、制限ではなく単に例示として示されるということは理解されるべきである。本発明の範囲内で種々の変法および改変は、詳細な説明から当業者にとって明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1-1】図1A~Cは、C9orf72遺伝子および産生される転写物の模式図を表す。 図1Aは、野生型C9orf72アレルおよび拡大された突然変異体C9orf72アレルの両方の構造を示す。拡大された突然変異体アレル上のG拡大の位置が、示されている(エキソン1aと1bの間のゲノム領域、すなわち、イントロン1a中)。エキソンは、四角として示されている。Douglas、前掲から適応された;Rizzu et al. (2016) Acta Neuropathologica Communications 4:37も参照のこと。
図1-2】図1Bは、G拡大付近の突然変異体拡大されたC9orf72アレルの領域の拡大図であり、拡大されたアレルと関連するプロモーターおよび転写物を表す。センス鎖転写に関与しているプロモーター(実線矢印)およびアンチセンス転写に関与しているプロモーターのおよその位置(中白矢印)が示されている。また、これまでに記載されている5つの異なるセンス転写物ならびにアンチセンス方向にあるおよその位置および転写物も示されている。同書。
図1-3】図1Cは、拡大された領域を標的とするZFP-TFによる1aプロモーターおよびアンチセンスプロモーターの抑制のモデルを示し、ZFP-TFは、両プロモーターの下流であり、プロモーター調節にとって最適である位置において結合する。このモデルにおける1bプロモーターは、ZFP-TFの結合が1bプロモーターの上流であるので抑制されない。
図2-1】図2A~Dは、示されたZFP-TFを使用する示された細胞種におけるC9orf72発現(「総C9」)の抑制を示す。さらに、図は、拡大された突然変異体アレルによって主に産生される(「リピート含有アイソフォーム特異的」)、イントロン1aを含むより長いmRNAアイソフォーム(拡大された)の発現の抑制を示す。拡大されたアイソフォームは、C9患者株において主に発現される。 図2Aは、総C9アッセイのために使用されるPCRアッセイならびにセンスおよびアンチセンスリピート含有アイソフォーム特異的アッセイを例示する。図の上部は、野生型および拡大されたアレルのゲノム構造を表し、図の下部は、各アレルから作成されるmRNA産物を示す。mRNA図上の矢印セットは、総C9アッセイにおいて使用されるPCR標的を表す。
図2-2】図2B~Dは、健常個体由来の野生型細胞株およびALS患者由来の線維芽細胞細胞株「C9」における異なる例示的ZFP-TFのC9orf72発現アッセイの結果を示すグラフである。C9細胞株は、野生型アレル上(5)および拡大されたアレル上(850)のGリピートの数を指す「5/850」として特徴づけられる。最も左のグラフ:スクリーニングの第3ラウンド(「ラウンド3」)における野生型細胞における総C9orf72発現(「総C9」)。左から2番目のグラフ:ラウンド3におけるC9細胞における総C9。右から2番目のグラフ:スクリーニングの第2ラウンド(「ラウンド2」)におけるC9細胞における総C9。最も右のグラフ:アイソフォーム特異的C9orf72アッセイによって決定されるような拡大されたC9orf72アレルからの発現。ラウンド2スクリーニングは、ZFP-TF処置後の、アイソフォーム(または疾患)特異的C9orf72転写物レベル対総C9転写物レベルを評価するためにC9細胞で実施された。ラウンド3では、総C9は、C9細胞の野生型(WT)アレルに対するZFP-TFの効果を評価するためにC9細胞および野生型細胞において決定された。各ZFP-TFについて、1、3、10、30、100および300ngの濃度のmRNAが左から右に示されている。図2Bは、上部グラフではZFP-TF74949、74951、74954、74955および74964の結果を、ならびに下部グラフでは74969、74971、74973、74978および74979の結果を示す。図2Bは、出現順にそれぞれ配列番号1、1および3を開示する。図2Cは、上部グラフではZFP-TF74983、74984、74986、74987および74988の結果を、ならびに下部グラフでは74997、74998、75001および75003の結果を示す。図2Cは、出現順にそれぞれ、配列番号4および5を開示する。図2Dは、上部グラフではZFP-TF75023、75027、75031、75032、75055および75078の結果を、ならびに下部グラフでは75090、75105、75109、75114および75115の結果を示す。図2Dは、出現順にそれぞれ、配列番号8~11を開示する。グラフの下部の配列は、そのZFP-TFのDNA結合モチーフを表す。各ZFP-TFは、そのモチーフを含有する3つのヘキサヌクレオチドリピートに結合する。転写物レベルは、ZFP-TF mRNAとともにトランスフェクトされたGFP mRNAから発現された緑色蛍光タンパク質(GFP)のものに対して正規化した。グラフ中の水平方向の点線は、示されるような50%または70%抑制を示す。例えば、ZFP-TF75115について、C9株では、総アイソフォーム転写物のおよそ50%が抑制され、リピート含有アイソフォーム特異的転写物の約70%が抑制されたが、一方で、WT株では総アイソフォームの最小の抑制があった。グラフは、転写物の30%が残っていることを示し、これは、70%が抑制されたことを示す。
図2-3】同上。
図2-4】同上。
図2-5】同上。
図2-6】同上。
図2-7】同上。
図3図3は、C9orf72拡大されたアレルにおけるセンスおよびアンチセンス転写物のプロモーター領域の図を示す。センス、総およびアンチセンス転写物の特異的検出のためのプライマー対が示されている。AS:アンチセンス。ddPCR:液滴デジタルPCR。図は、出現順にそれぞれ、配列番号1、1および7を開示する。
図4図4Aおよび4Bは、イントロン1bを標的とするプライマーが、アンチセンスプレmRNAを特異的に検出することを示す。鎖特異的PCRを使用して、健常対照(Con)またはC9細胞(C9)からセンス(S)またはアンチセンス(AS)cDNA鋳型を作成した。例えば、C9-ASは、C9細胞から単離されたRNAから生成されたアンチセンスcDNA鋳型を用いて得られたddPCR結果を示す。図4Aは、cDNA鋳型C9-ASのみがPCR産物を生成することを示し、これは、アンチセンスプレmRNAの検出のためのプライマーの特異性を示す。図4Bは、図4Aにおける実験を、異なるGリピート長を有する7つの異なるC9orf72患者に由来する細胞株に、および6種の異なる健常対照株に拡張する。
図5-1】図5A~Cは、リピート含有アイソフォーム特異的アッセイを使用するC9細胞における転写物の抑制を示すグラフである。図5Aは、ZFP-TF74949、74978、75003、75027、75109、75114、75115、74960および74967が、3つの異なる用量(30、100または300ng)で与えられ、次いで、疾患センス転写物の量が測定された3実験を示す。図5Bは、疾患アンチセンス転写物を測定する3実験を示す。図5Cは、総C9orf72転写物を測定する3回の実施を示す。
図5-2】同上。
図5-3】同上。
図6図6は、その拡大されたアレルに異なるGリピート数(それぞれ、約600、800および850リピート)を各々含有する、異なるALS患者から得た3つの異なる線維芽細胞株における拡大されたセンスおよびアンチセンス転写物(疾患アイソフォーム)とともに総C9転写物の抑制を示す。細胞が、100ngのZFP-TF75109、75114および75115に曝露された後に、アイソフォーム選択的アッセイを使用して、抑制のレベルを評価した。3種のZFP-TFすべてが、3種の細胞株すべてにおいて選択的抑制を維持した。
図7図7は、そのアレルでの通常のGリピート数よりも大きい、健常個体から得た2つの細胞株における総C9転写物の抑制を示す。健常個体は、通常、そのC9orf72アレルの各々に2~5のGリピートを有する。しかし、一部の健常個体は、より多くのリピートを含有する。ZFP-TFの十分な結合部位が提供されることを確実にするために、通常よりも多いリピート数(5/8および5/20リピート)を含有する細胞株を使用した。これらの細胞株では、総C9転写物は、最小にしか影響を受けない。
図8-1】図8A~8Cは、ALS患者由来一次線維芽細胞(C921、C9021とも呼ばれる)における、マウス一次ニューロンにおける、およびヒト一次ニューロンにおけるマイクロアレイ分析の結果を示し、示されたリプレッサー(75027、75109、75114および75115)の特異性を示す。ZFP-TF75027は、反復されたGCCCCG(配列番号8)モチーフを標的とし、一方で、ZFP-TF75109、75114および75115は、C9orf72遺伝子のアンチセンス鎖中のCCGGCC(配列番号11)モチーフを標的とする。 図8Aは、そのデータベース中に21,000ウェルの注釈付き遺伝子を含有するThermo Fisher Clariom(商標)Sアッセイを使用する患者由来一次線維芽細胞(C9021)におけるマイクロアレイ分析の結果を示す。解析は、300ngのmRNA形態でのリプレッサーのC9021細胞への投与の24時間後に実施された。グラフは、示されたZFP-TFに応じて上方または下方制御された遺伝子を例示する。
図8-2】図8Bは、そのデータベース中に140,000の注釈付きおよび注釈なしコーディングおよび非コーディング転写物を含有するThermo Fisher Clariom(商標)Dアッセイを使用するマウス一次ニューロンにおけるマイクロアレイ分析の結果を示す。分析は、AAV形質導入の7日後に実施した。すべての細胞を3,000のMOIで形質導入した。グラフは、示されたZFP-TFに応じて上方または下方制御された遺伝子を例示する。
図8-3】図8Cは、Thermo Fisher Clariom(商標)Dアッセイを使用するヒト一次ニューロンにおけるマイクロアレイ分析の結果を示す。分析は、3,000のMOIでの細胞のAAV形質導入の19日後に実施した。グラフは、示されたZFP-TFに応じて上方または下方制御された遺伝子を例示する。
図9-1】図9は、C9orf72 BACトランスジェニックマウスにおけるZFPのインビボ(in vivo)標的関与を示す。パネルAは、注射に使用されたAAVコンストラクトを示す。コンストラクトは、シナプシンプロモーター、ZFP-KRABコード配列およびVenusタグを含有する。パネルBおよびCは、新生仔にZFP-KRAB発現コンストラクトを含有するAAVが脳室内に(ICV)注射され、下流分析のために注射の1カ月後に解体される研究デザインを示す。パネルDは、海馬および皮質におけるZFP-KRAB(75027)を注射された動物におけるセンス、アンチセンスおよび総C9RNAのレベルを示す。パネルEは、センスおよびアンチセンスRNAフォーカスの代表的な画像ならびにZFP-KRAB(75027)を注射された動物における海馬のアンモン角(CA)および歯状回(DG)領域からの定量化を示す。
図9-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、拡大されたGリピート領域を有するヒトC9orf72遺伝子アレルを優先的に標的とし、これらの突然変異体アレルのRNAへの転写を抑制するジンクフィンガータンパク質ベースの転写因子(ZFP-TF)を提供する。このような拡大された領域は、30より多いGリピートを有し得る。本ZFP-TFは、(i)突然変異体アレルのセンスまたはアンチセンス鎖いずれかのリピート内のDNAモチーフに特異的に結合する少なくとも1つのジンクフィンガータンパク質(ZFP)ドメインならびに(ii)センスおよびアンチセンス方向のいずれかまたは両方でアレルの転写を低減する少なくとも1つの転写リプレッサードメインを含有する融合タンパク質である。ZFP-TFを患者の神経系(例えば、脳および脊髄)中に導入することによってニューロンにおいて突然変異体C9orf72転写物のレベルを低減することは、細胞内での疾患が引き起こす細胞傷害性材料の形成を阻害(例えば、低減または停止)すると予測される。本ZFP-TFは、C9orf72関連障害、例えば、ALSおよびC9FTDの、予防および軽減を含む処置のために使用され得る。
【0025】
ALSおよびFTDを診断、予防および/または処置するための方法および組成物が本明細書において開示される。特に、遺伝子操作された転写因子リプレッサーおよびヌクレアーゼの使用を含む、特定の遺伝子を修飾して(例えば、その発現を調節して)、これらの疾患を処置するための方法および組成物が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、発現の調節は、センスおよび/またはアンチセンス発現の両方を調節することを含む。
【0026】
したがって、細胞(例えば、ニューロン)においてC9orf72遺伝子のリピートが拡大された突然変異体アレルのセンスおよび/またはアンチセンス転写を抑制する方法(インビボ、エキソビボ(ex vivo)および/またはインビトロ(in vitro))が、本明細書において記載される。方法は、細胞を、突然変異体C9orf72遺伝子アレルの1つまたは複数のリプレッサーを用いて処置することを含み、1つまたは複数のリプレッサーは、転写抑制ドメインおよび突然変異体C9orf72遺伝子アレル中の標的部位に結合するDNA結合ドメインを含む。リプレッサー(複数可)は、1つもしくは複数のジンクフィンガータンパク質転写因子(ZFP DNA結合ドメインを含むZFP-TF)、1つもしくは複数のTALエフェクタードメイン転写因子(TALエフェクタードメインDNA結合ドメインを含むTALE-TF)および/または1もしくは複数のCRISPR/Cas転写因子系(シングルガイドRNA DNA結合ドメインを含む)を含み得る。ある特定の実施形態では、2つ以上の異なるリプレッサー(例えば、2つ以上の異なるリプレッサーを含む1つまたは複数の医薬組成物)が使用される。ある特定の実施形態では、C9orf72遺伝子は、1つまたは複数の(G)リピートを含む突然変異体アレルを含み、リプレッサーのDNA結合ドメインによって結合される標的部位は、1または複数の(G)リピート内であってもよい。したがって、本発明は、それを必要とする対象(例えば、疾患が処置される、および/または症状が寛解される、ALSおよび/またはFTDを有する対象)における、センスおよび/またはアンチセンス転写のリプレッサー(例えば、未処置細胞/対象と比較して50%、70%まで、またはそれより多い)のための、1つまたは複数の(G)リピートを含む突然変異体C9orf72拡大されたアレルに結合する1または複数のZFP-TF、TALE-TFまたはCRISPR/Cas TFリプレッサー(例えば、1つまたは複数のリプレッサーを含む1つまたは複数の医薬組成物に製剤化される)の使用を提供する。ある特定の実施形態では、センスおよび/またはアンチセンス転写は、正常(対照)レベルの90%を超えて抑制されない。ある特定の実施形態では、アンチセンスおよびセンス両方の転写は、同一または異なるレベルで抑制される(例えば、アンチセンスおよびセンス転写は、同様に抑制される);アンチセンス転写は、センス転写よりも多く抑制される、またはセンス転写は、アンチセンス転写よりも多く抑制される。ある特定の実施形態では、特定のセンス転写物が抑制され、一方で他のものは抑制されない。一部の実施形態では、1bイントロンセグメント中のプロモーターからの転写は、抑制されず、一方で、1aイントロン中のプロモーターからの転写およびアンチセンス転写物は抑制される。ある特定の実施形態では、拡大されたリピートを含む転写物が選択的に抑制される(例えば、アンチセンス転写が抑制され、1aプロモーターからのセンス転写が抑制され、および/または1bプロモーターからのセンス転写は抑制されない)。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される方法および使用において、1つまたは複数の異なるリプレッサー(例えば、追加の異なるZFP-TF、例えば、表1に示されるようなZFPを含む1つまたは複数の追加のZFP-TF)と組み合わせてもよい、表1に示されるような、認識ヘリックス領域を含む1つまたは複数のZFP-TFリプレッサーが使用される。ある特定の実施形態では、リプレッサーのうち1つまたは複数が、1つもしくは複数の非ウイルスベクター(例えば、mRNAとして)および/またはウイルスベクター(例えば、AAV2/9などのAAV)を使用して細胞に投与される。1つまたは複数のモジュレーター(例えば、リプレッサー)の複数のコピーが、同一または異なる様式(例えば、mRNAおよび/またはAAV)を使用して投与され得る。ある特定の実施形態では、1つまたは複数の異なるモジュレーター(例えば、リプレッサー)を送達するために、同一または異なる様式が使用され得る。生存対象(例えば、ヒト)におけるインビボ法および使用は、それだけには限らないが、脳室内、くも膜下腔内、頭蓋内、後眼窩(RO)、静脈内、鼻腔内および/または大槽内静脈内を含む、任意の適した手段による投与(例えば、リプレッサーおよび/またはリプレッサーをコードするポリヌクレオチドを含む、1つまたは複数の医薬組成物の)を含み得る。脳投与は、片側性である場合も、両側性(例えば、海馬へ)である場合もある。任意の量(投与量)、例えば、1E10~1E13(例えば、6E11)vg/半球が投与され得る。本明細書において記載される方法および使用のいずれかでは、対象においてALSおよび/またはFTDが処置される(および/またはこれらの疾患の1つもしくは複数の症状が処置される)。
【0027】
C9orf72遺伝子の遺伝子モジュレーター、C9orf72遺伝子中の少なくとも12ヌクレオチドの標的部位と結合するDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、TALエフェクタードメインタンパク質(TALE)またはシングルガイドRNA)および転写調節ドメイン(例えば、抑制ドメイン)を含むモジュレーターが本明細書において提供される。1つまたは複数の本明細書において記載される遺伝子モジュレーターをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド(例えば、ウイルス性または非ウイルス性遺伝子デリバリー媒体、例えば、AAVベクター)も提供される。他の態様では、本明細書において提供されるような1つもしくは複数のポリヌクレオチドおよび/または1つもしくは複数の遺伝子デリバリー媒体を含む医薬組成物が本明細書において記載される。いくつかの実施形態では、遺伝子モジュレーターはレギュレータードメインを含み、遺伝子モジュレーター(および1つもしくは複数の遺伝子モジュレーターまたは1つもしくは複数の遺伝子モジュレーターをコードするポリヌクレオチドを含む医薬組成物)は、C9orf72遺伝子の発現を調節する(例えば、抑制するかまたは活性化する)。遺伝子のセンスおよび/またはアンチセンス鎖は、結合および/または調節され得る。また、本明細書において記載されるような1つもしくは複数の遺伝子モジュレーターを含む単離された細胞(細胞集団を含む)、1つもしくは複数のポリヌクレオチド、1つもしくは複数の遺伝子デリバリー媒体および/または1つもしくは複数の医薬組成物も本明細書において提供される。細胞において[インビトロ(in vitro)、インビボ(in vivo)またはエキソビボ(ex vivo)]C9orf72遺伝子を発現すること(例えば、抑制すること)を調節するための方法および使用も提供され、方法は、[それだけには限らないが、脳室内、くも膜下腔内、頭蓋内、後眼窩(RO)、静脈内または大槽内を含む任意の方法によって]、本明細書において記載されるような1つもしくは複数の遺伝子モジュレーター、1つもしくは複数のポリヌクレオチド、1つもしくは複数の遺伝子デリバリー媒体および/または1つもしくは複数の医薬組成物を細胞に投与することを含む。方法は、対象における筋萎縮性側索硬化症(ALS)または前頭側頭型認知症(FTD)の処置および/または予防のために使用され得る。対象におけるALSまたはFTDの処置および/または予防のための1つもしくは複数の遺伝子モジュレーター、1つもしくは複数のポリヌクレオチド、1つもしくは複数の遺伝子デリバリー媒体および/または1つもしくは複数の医薬組成物の使用も提供される。また、本明細書において記載されるような1つもしくは複数の遺伝子モジュレーター、1つもしくは複数のポリヌクレオチド、1つもしくは複数の遺伝子デリバリー媒体および/または1つもしくは複数の医薬組成物ならびに適宜、使用のための説明書を含むキットも提供される。
【0028】
したがって、一態様では、1つまたは複数の遺伝子の遺伝子操作された(天然に存在しない)遺伝子モジュレーター(例えば、リプレッサー)が提供される。これらの遺伝子モジュレーターは、アレルの発現を調節する(例えば、抑制する)系(例えば、ジンクフィンガータンパク質、TALエフェクター(TALE)タンパク質またはCRISPR/dCas-TF)を含み得る。野生型および/または突然変異体アレルの発現は、一緒にまたは別個に調節され得る。ある特定の実施形態では、突然変異体アレルの調節は、野生型アレルよりも大きいレベルでである(例えば、野生型アレルは、正常の50%以下抑制されるが、突然変異体アレルは、未処置対照と比較して少なくとも70%抑制される)。一部の実施形態では、発現の調節は、C9orf72遺伝子のセンスおよびアンチセンス両転写物を調節することを含み得る。一部の実施形態では、発現の調節は、センス転写物を主に調節する場合があり、他の実施形態では、発現の調節は、アンチセンス転写物を主に調節する場合がある。
【0029】
C9orf72アレルにおける拡大突然変異は、ALSおよびFTDに関連するセンスおよびアンチセンスRNA産物両方の発現をもたらし、そのため、一実施形態では、ALSまたはFTDの処置のために、これらの突然変異体C9orf72アレルの発現を抑制するように設計された遺伝子操作された転写因子が提供される。遺伝子操作されたジンクフィンガータンパク質またはTALEは、DNA結合ドメイン(例えば、認識ヘリックスまたはRVD)が予め選択された標的部位と結合するように変更されている(例えば、選択および/または合理的設計によって)天然に存在しないジンクフィンガーまたはTALEタンパク質である。本明細書において記載されるジンクフィンガータンパク質のいずれも、1、2、3、4、5、6つ以上のジンクフィンガーを含んでもよく、各ジンクフィンガーは、選択された配列(例えば、遺伝子)中の標的部分部位と結合する認識ヘリックスを有する。ある特定の実施形態では、ZFP-TFは、表1の単一列に示されるような認識ヘリックス領域を有するZFPを含む。同様に、本明細書において記載されるTALEタンパク質のいずれも、任意の数のTALE RVDを含み得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRVDは、非特異的DNA結合を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの認識ヘリックス(またはRVD)は、天然に存在しない。ある特定の実施形態では、TALE-TFは、表1に示されるような標的部位の少なくとも12塩基対と結合するTALEを含む。CRISPR/Cas-TFは、標的配列と結合するシングルガイドRNAを含む。ある特定の実施形態では、遺伝子操作された転写因子は、(例えば、ZFP、TALEまたはsgRNA DNA結合ドメインを介して)疾患と関連する遺伝子中の少なくとも9~12塩基対の標的部位、例えば、これらの標的部位(例えば、表1に示されるような標的部位)内の連続または非連続配列を含む、少なくとも9~20塩基対(例えば、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)を含む標的部位と結合する。ある特定の実施形態では、遺伝子モジュレーターは、転写抑制ドメインと作動可能に連結された(遺伝子リプレッサーを形成するために)、本明細書において記載されるようなDNA結合分子(ZFP、TALE、シングルガイドRNA)を含む。
【0030】
したがって、本明細書において記載されるようなジンクフィンガータンパク質(ZFP)、CRISPR/Cas系のCasタンパク質またはTALEタンパク質は、融合分子の一部として調節ドメイン(または機能的ドメイン)と作動性に連結して配置され得る。機能的ドメインは、例えば、転写活性化ドメイン、転写抑制ドメインおよび/またはヌクレアーゼ(切断)ドメインであり得る。DNA結合分子とともに使用するために活性化ドメインまたは抑制ドメインのいずれかを選択することによって、このような分子は、遺伝子発現を活性化するかまたは抑制するために使用され得る。ある特定の実施形態では、機能的または調節ドメインは、ヒストン翻訳後修飾において役割を果たし得る。いくつかの例では、ドメインは、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)、ヒストンメチラーゼ、またはヒストンをSUMO化するかもしくはビオチン化する酵素または翻訳後ヒストン修飾によって調節される遺伝子抑制を可能にする他の酵素ドメインである[Kousarides, (2007) Cell 128:693-705]。いくつかの実施形態では、遺伝子発現を下方制御するために使用され得る転写抑制ドメインに融合された、本明細書において記載されるような遺伝子(例えば、C9orf72)を標的とするZFP、dCasまたはTALEを含む分子が提供される。いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物は、真核生物を処置するために有用である。ある特定の実施形態では、調節ドメインの活性は、外因性小分子またはリガンドによって調節され、その結果、細胞の転写機構との相互作用は、外因性リガンドの不在下で起こらない。このような外部リガンドは、ZFP-TF、CRISPR/Cas-TFまたはTALE-TFの転写機構との相互作用の程度を制御する。調節ドメインは、1つまたは複数のZFP、dCasもしくはTALEの間、1つまたは複数のZFP、dCasもしくはTALEの外部およびそれらの任意の組合せを含む、ZFP、dCasまたはTALEのうち1つまたは複数の任意の部分と作動可能に連結され得る。好ましい実施形態では、調節ドメインは、標的とされる遺伝子(例えば、C9orf72)の遺伝子発現の抑制をもたらす。本明細書において記載される融合タンパク質のいずれも、医薬組成物に製剤化され得る。
【0031】
一部の実施形態では、人工レギュレーターは、遺伝子の転写開始部位(TSS)の上流の(例えば、5’の)プロモーター領域に結合する。一部の実施形態では、人工レギュレーターは、TSSの下流の領域に結合する。好ましい実施形態では、人工レギュレーターは、C9orf72遺伝子中の拡大されたリピート領域に優先的に結合する。一部の実施形態では、人工レギュレーターの、C9orf72遺伝子への結合は、1aイントロン中のプロモーターの発現を抑制する。一部の実施形態では、人工レギュレーターの、C9orf72遺伝子への結合は、1bイントロン中のプロモーターの発現を抑制する。一部の実施形態では、人工レギュレーターの結合は、1aプロモーターおよびアンチセンスプロモーターからの発現を抑制するが、1bプロモーターを抑制しない。図1Bおよび1Cも参照のこと。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明の方法および組成物は、本明細書において記載されるような2つ以上の融合分子、例えば、2つ以上のC9orf72モジュレーター(人工転写因子)の使用を含む。2つ以上の融合分子は、異なる標的部位と結合し、同一または異なる機能的ドメインを含むこともある。あるいは、本明細書において記載されるような2つ以上の融合分子は、同一標的部位と結合するが、異なる機能的ドメインを含むこともある。いくつかの例では、3つ以上の融合分子が使用され、他方では、4つ以上の融合分子が使用され、他方では、5つ以上の融合分子が使用される。いくつかの実施形態では、2つ以上、3つ以上の、4つ以上または5つ以上の融合分子(またはその構成成分)は、核酸として細胞にデリバリーされる。好ましい実施形態では、融合分子は、標的とされる遺伝子の発現の抑制を引き起こす。いくつかの実施形態では、2つの融合分子は、各分子が自身で活性であるが、組合せでは、抑制活性が相加的である用量で与えられる。いくつかの実施形態では、2つの融合分子は、自身ではいずれも活性ではないが、組合せでは、抑制活性が相乗的である用量で与えられる。
【0033】
さらに別の態様では、本明細書において記載されるDNA結合ドメインのいずれかをコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0034】
いくつかの実施形態では、DNA結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、mRNAである。いくつかの態様では、mRNAは、化学修飾され得る[例えば、Kormann et al., (2011) Nature Biotechnology 29(2):154-7]。他の態様では、mRNAは、ARCAキャップを含み得る(米国特許第7,074,596号および同第8,153,773号を参照のこと)。さらなる実施形態では、mRNAは、非修飾および修飾ヌクレオチドの混合物を含み得る(米国特許公開第2012/0195936号を参照のこと)。
【0035】
さらに別の態様では、本明細書において記載されるようなポリヌクレオチド(例えば、リプレッサー)のいずれかを含む遺伝子デリバリーベクターが提供される。ある特定の実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクター(例えば、Ad5/F35ベクター)、組込みコンピテントもしくは組込み欠陥レンチウイルスベクターを含むレンチウイルスベクター(LV)またはアデノウイルス随伴ウイルスベクター(AAV)である。ある特定の実施形態では、AAVベクターは、AAV2、AAV6、AAV8もしくはAAV9ベクターまたは偽型AAVベクター、例えば、AAV2/8、AAV2/5、AAV2/9およびAAV2/6である。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、血液脳関門を通過可能なAAVベクターである(例えば、米国特許公開第2015/0079038号)。他の実施形態では、AAVは、自己相補的AAV(sc-AAV)または一本鎖(ss-AAV)分子である。また、少なくとも1つのヌクレアーゼ(ZFNまたはTALEN)をコードする配列および/または標的遺伝子への標的化組込みのためのドナー配列を含む、アデノウイルス(Ad)ベクター、LVまたはアデノウイルス随伴ウイルスベクター(AAV)も本明細書において提供される。ある特定の実施形態では、Adベクターは、キメラAdベクター、例えば、Ad5/F35ベクターである。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、インテグラーゼ欠陥レンチウイルスベクター(IDLV)または組込みコンピテントレンチウイルスベクターである。ある特定の実施形態では、ベクターは、VSV-Gエンベロープを有する、またはその他のエンベロープを有する偽型である。
【0036】
さらに、核酸および/または人工転写因子(例えば、ZFP、CasもしくはTALEまたはZFP、CasもしくはTALEを含む融合分子)などの融合物を含む医薬組成物も提供される。例えば、ある特定の組成物は、薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わされた、調節配列と作動可能に連結された、本明細書において記載されるZFP、CasまたはTALEのうち1つをコードする配列を含む核酸を含み、調節配列は、細胞における核酸の発現を可能にする。ある特定の実施形態では、コードされるZFP、Cas、CRISPR/CasまたはTALEは、野生型および/または突然変異体アレルを調節する。いくつかの実施形態では、突然変異体アレルは、野生型アレルよりも優先的に調節される、例えば、抑制される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、突然変異体アレルを優先的に調節するZFP、CRISPR/CasまたはTALEおよび神経栄養因子を調節するZFP、CRISPR/CasまたはTALEを含む。タンパク質ベースの組成物は、1つまたは複数の本明細書において開示されるZFP、CRISPR/CasまたはTALEおよび薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。
【0037】
さらに別の態様ではまた、本明細書において記載されるようなタンパク質、融合分子、ポリヌクレオチドおよび/または組成物のいずれかを含む単離された細胞も提供される。単離された細胞は、診断および/もしくはスクリーニング方法のための細胞または動物モデルの提供などの非治療的使用のために、ならびに/またはエキソビボ細胞療法などの治療的使用のために使用され得る。
【0038】
さらに別の態様ではまた、本明細書において記載されるような1つまたは複数の遺伝子モジュレーター、1つまたは複数のポリヌクレオチド(例えば、遺伝子デリバリー媒体)および/または1つまたは複数の単離された細胞(例えば、その集団)を含む医薬組成物も提供される。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、2つ以上の遺伝子モジュレーターを含む。例えば、ある特定の組成物は、本明細書において記載されるような希少疾患と関連する遺伝子のうち1つ(例えば、C9orf72)の1つまたは複数の遺伝子モジュレーターをコードする配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、遺伝子モジュレーター(例えば、本明細書において記載されるZFP、CasまたはTALEを含む)は、調節配列に作動可能に連結され、薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わされ、調節配列は、細胞における核酸の発現を可能にする。ある特定の実施形態では、コードされるZFP、CRISPR/CasまたはTALEは、突然変異体または野生型アレル(例えば、C9orf72)に特異的である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、突然変異体および/または野生型アレル(例えば、C9orf72)を調節するZFP-TF、CRISPR/Cas-TFまたはTALE-TFを含み、野生型アレルと比較して突然変異体アレルを優先的に調節する(例えば、より大きいレベルで抑制する)TFを含む。タンパク質ベースの組成物は、本明細書において開示されるような1つまたは複数の遺伝子モジュレーターおよび薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。ある特定の実施形態では、2つ以上の遺伝子モジュレーター(同一または異なる種類のベクター、例えば、AAVベクターに保持される)を含む組成物が使用され、遺伝子モジュレーターのうち1つが、74949、74978、75027または75109と名付けられたZFPを含むZFP-TFリプレッサーを含んでもよい。
【0039】
本発明はまた、それを必要とする対象(例えば、本明細書において記載されるような希少疾患を有する対象)において遺伝子発現を抑制するための方法および使用であって、対象に、本明細書において記載されるような1つもしくは複数のポリヌクレオチド、1つもしくは複数の遺伝子デリバリー媒体および/または医薬組成物を提供することによってを含む方法および使用を提供する。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物は、ALSもしくはFTDの処置および/または予防のためを含む、対象において突然変異体C9orf72発現を抑制するために使用される。本明細書において記載される組成物は、脳(嗅内皮質、海馬、脳幹、線条体、視床、中脳、小脳を含むが、それだけに限らない前頭前皮質、頭頂皮質葉、後頭皮質葉、側頭皮質葉を含むが、それだけには限らない、前頭皮質葉を含むが、それだけには限らない)および脊髄(腰髄、胸髄および頸髄領域を含むがそれだけには限らない)において遺伝子発現を長期間(4週間、3カ月、6カ月~1年以上)抑制する。本明細書において記載される組成物は、対象に、脳室内、くも膜下腔内、頭蓋内、静脈内の、眼窩[後眼窩(RO)]、鼻腔内および/または大槽内投与を含むがそれだけには限らない任意の投与手段によって提供され得る。本明細書において記載されるような組成物(例えば、遺伝子モジュレーター、ポリヌクレオチド、医薬組成物および/または細胞)のうち1つまたは複数ならびにこれらの組成物の使用のための説明書を含むキットも提供される。
【0040】
別の態様では、本明細書において記載される方法および組成物を使用してCNS(例えば、ALSおよび/またはFTD)を処置および/または予防するための方法が本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、方法は、ポリヌクレオチドおよび/またはタンパク質が、ウイルスベクター、非ウイルスベクター(例えば、プラスミド)および/またはそれらの組合せを使用してデリバリーされ得る組成物に関与する。いくつかの実施形態では、方法は、人工転写因子(例えば、ZFP-TF、TALE-TFまたはdCas-TF)を含む幹細胞集団を含む組成物に関与する。本明細書において記載されるような組成物(タンパク質、ポリヌクレオチド、細胞ならびに/またはこれらのタンパク質、ポリヌクレオチドおよび/もしくは細胞を含む医薬組成物)の投与が、それだけには限らないが、ALSおよび/またはFTDと関連する臨床症状のいずれかの寛解または排除ならびにCNS細胞(例えば、ニューロン、星状細胞、ミエリンなど)の機能および/または数の増大を含む治療(臨床)効果をもたらす。ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組成物および方法は、標的遺伝子(例えば、C9orf72)のセンスおよび/またはアンチセンス転写物の発現を、本明細書において記載されるような人工リプレッサーを受け取っていない対照と比較して、少なくとも30%または40%、例えば、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または95%より多く低減する。いくつかの実施形態では、少なくとも50%の低減が達成される。ある特定の実施形態では、人工リプレッサーは、野生型アレルと比較して突然変異体アレル(例えば、拡大されたアレル)を例えば、少なくとも20%優先的に抑制する(例えば、野生型アレルを50%以下抑制し、突然変異体アレルを少なくとも70%抑制する)。一部の実施形態では、リプレッサーは、突然変異体アレルでセンス転写物を優先的に抑制し、他の実施形態では、リプレッサーは、突然変異体アレルでアンチセンス転写物を優先的に抑制する。一部の実施形態では、リプレッサーは、突然変異体アレルでセンスおよびアンチセンス転写物を抑制する。
【0041】
なおさらなる態様では、ウイルスまたは非ウイルスベクターを使用して遺伝子リプレッサーを対象の脳にデリバリーする方法が本明細書において記載される。ある特定の実施形態では、ウイルスベクターは、AAV9ベクターである。デリバリーは、カニューレの使用によって、を含む任意の好適な手段による任意の脳領域、例えば、海馬または嗅内皮質へであり得る。直接投与されるベクターではない、脳領域への順行性および逆行性軸索輸送によってを含む、遺伝子モジュレーター(例えば、リプレッサー)の対象の脳への広範なデリバリーを提供する任意のAAVベクター(例えば、被殻へのデリバリーは、皮質、黒質、視床などといったその他の構造へのデリバリーをもたらす)。ある特定の実施形態では、対象はヒトであり、他の実施形態では、対象は非ヒト霊長類である。投与は、単回用量で、または同時に与えられる一連の用量で、または複数投与(投与間の任意のタイミングで)で、であり得る。
【0042】
したがって、他の態様では、対象において疾患(例えば、ALSおよび/またはFTD)を予防および/または処置する方法であって、AAVを使用して遺伝子のリプレッサーを対象に投与することを含む方法が本明細書において記載される。ある特定の実施形態では、リプレッサーは、対象のCNS(例えば、海馬および/または嗅内皮質)またはPNS(例えば、脊髄/液)に投与される。他の実施形態では、リプレッサーは、静脈内に投与される。ある特定の実施形態では、対象においてALSまたはFTDを予防および/または処置する方法であって、1つまたは複数のAAVベクターを使用してC9orf72アレル(野生型および/または突然変異体)のリプレッサーを対象に投与することを含む方法が本明細書において記載される。ある特定の実施形態では、遺伝子モジュレーターをコードするAAVは、CNS(脳および/またはCSF)に、それだけには限らないが、脳室内、くも膜下腔内、頭蓋内、静脈内の、鼻腔内の、後眼窩または大槽内デリバリーを含む任意のデリバリー方法によって投与される。他の実施形態では、リプレッサーをコードするAAVが、対象の柔組織(例えば、海馬および/または嗅内皮質)中に直接的に投与される。他の実施形態では、リプレッサーをコードするAAVは、静脈内に(IV)投与される。本明細書において記載される方法のいずれでも、投与することは、1回行われてもよく(単回投与)、または投与あたり同一または異なる用量で複数回行われてもよい(投与の間の任意の回数を用いて)。複数回投与される場合には、同一または異なる投与量および/または投与様式のデリバリー媒体が使用されてもよい(例えば、IVおよび/またはICV投与される異なるAAVベクター)。方法は、すべて方法を受け取っていない対象との比較において、または方法を受け取ることに先立つ対象自体との比較において、筋肉機能の喪失、身体的協調の喪失、筋肉の硬化、筋肉攣縮、言語機能の喪失、嚥下の困難性、認知機能障害を低減する方法、運動機能の喪失を低減する方法および/またはALS対象において1つもしくは複数の認知機能の喪失を低減する方法を含む。したがって、本明細書において記載される方法は、以下:筋肉機能の喪失、身体的協調の喪失、筋肉の硬化、筋肉攣縮、言語機能の喪失、嚥下の困難性、認知機能障害、血液ならびに/もしくはG-CSF、IL-2、IL-15、IL-17、MCP-1、MIP-1α、TNF-αおよびVEGFレベル[Chen et al., Front Immunol. (2018) 9:2122を参照のこと]を含むALSと関連する脳脊髄液化学物質の変化、ならびに/または当技術分野で公知の他のバイオマーカーのうち1つまたは複数を含む、ALSまたはFTDなどの希少疾患のバイオマーカーおよび/または症状の低減をもたらす。ある特定の実施形態では、方法は、例えば、FTDを有する対象において、タウ(MAPT)の1つまたは複数の遺伝子リプレッサーを投与することをさらに含み得る。例えば、米国特許公開第2018/0153921号を参照のこと。
【0043】
本明細書において記載される方法のいずれにおいても、標的とされるアレルのリプレッサーは、ZFP-TF、例えば、アレルと特異的に結合するZFPおよび転写抑制ドメイン(例えば、KOX、KRABなど)を含む融合タンパク質であり得る。他の実施形態では、標的とされるアレルのリプレッサーは、TALE-TF、例えば、遺伝子アレルと特異的に結合するTALEポリペプチドおよび転写抑制ドメイン(例えば、KOX、KRABなど)を含む融合タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、標的とされるアレルリプレッサーは、CRISPR/Cas-TFであり、Casタンパク質中のヌクレアーゼドメインが不活性化されており、その結果、タンパク質がDNAをもはや切断しない。得られたCas RNAによってガイドされるDNA結合ドメインは、転写リプレッサー(例えば、KOX、KRABなど)に融合されて、標的とされるアレルを抑制する。いくつかの実施形態では、遺伝子操作された転写因子は、突然変異型アレルの発現を抑制可能であるが、野生型アレルは抑制可能ではない。さらなる実施形態では、DNA結合分子は、ヘキサマーGGGGCC(配列番号1)拡大を優先的に認識する。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるような遺伝子リプレッサー(例えば、ZFP-TF、TALE-TFまたはCRISPR/Cas-TF)をコードする配列は、ゲノム中に挿入され(組み込まれ)、他の実施形態では、リプレッサーをコードする配列は、エピソームに維持される。いくつかの例では、TF融合物をコードする核酸は、プロモーターを含むセーフハーバー部位に挿入され(例えば、ヌクレアーゼ媒介性組込みによって)、その結果、内因性プロモーターが発現を駆動する。他の実施形態では、リプレッサー(TF)ドナー配列は、セーフハーバー部位中に挿入され(ヌクレアーゼ媒介性組込みによって)、ドナー配列は、リプレッサーの発現を駆動するプロモーターを含む。いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、広く発現されるが、他の実施形態では、プロモーターは、組織または細胞/型特異的である。好ましい実施形態では、プロモーター配列は、神経細胞にとって特異的である。他の実施形態では、プロモーター配列は、筋肉細胞に特異的である。いくつかの実施形態では、選択されるプロモーターは、低発現を有することを特徴とする。有用なプロモーターの非限定的な例として、中性特異的プロモーターNSE、Synapsin、CAMKiiaおよびMECPが挙げられる。遍在性プロモーターの非限定的な例として、CMV、CAGおよびUbcが挙げられる。さらなる実施形態は、米国特許公開第2015/0267205号に記載されるような自己調節性プロモーターの使用を含む。さらなる実施形態は、米国特許公開第2015/0267205号に記載されるような自己調節性プロモーターの使用を含む。
【0045】
本明細書において記載される方法のいずれかにおいて、方法は、対象(例えば、ALSを有する対象)の1つまたは複数のニューロンにおける標的アレル(例えば、突然変異体または野生型C9orf72)の約50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、約70%以上、約75%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上または約95%以上の抑制、98%以上または99%以上をもたらし得る。ある特定の実施形態では、野生型アレルの発現は、対象において(未処置対象と比較して)50%以下抑制され、突然変異体アレルは、対象(未処置対象と比較して)において少なくとも70%(70%またはそれより上の任意の値)抑制される。一部の実施形態では、アンチセンスプロモーターの発現は、少なくとも70%抑制される。ある特定の実施形態では、C9orf72イントロン1a、1bおよび/または1cの領域において見出されるアンチセンスプロモーターの発現は、少なくとも70%抑制され、一方で、C9orf72イントロン1bの領域におけるセンスプロモーターの発現は、50%以下抑制される。
【0046】
本明細書において記載される方法のいずれにおいても、レギュレーター(例えば、リプレッサーまたはアクチベーター)は、対象に、タンパク質、ポリヌクレオチドまたはタンパク質およびポリヌクレオチドの任意の組合せとしてデリバリーされ得る。ある特定の実施形態では、1つまたは複数のリプレッサーは、AAVベクターを使用してデリバリーされる。他の実施形態では、レギュレーター(例えば、CRISPR/Cas系のsgRNA)の少なくとも1つの成分は、RNA形態としてデリバリーされる。他の実施形態では、レギュレーターは、本明細書において記載される発現コンストラクト、例えば、1つの発現コンストラクト(AAV9)上の1つのリプレッサー(またはその一部)および別個の発現コンストラクト(AAVまたはその他のウイルス性もしくは非ウイルス性コンストラクト)上の1つのリプレッサー(またはその一部)のいずれかの組合せを使用してデリバリーされる。
【0047】
さらに、本明細書において記載される方法のいずれにおいても、レギュレーター(例えば、リプレッサー)は、細胞に(エキソビボまたはインビボで)所望の効果を提供する任意の濃度(用量)でデリバリーされ得る。いくつかの実施形態では、レギュレーターは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを10,000~500,000ベクターゲノム/細胞(またはその間の任意の値)で使用してデリバリーされる。ある特定の実施形態では、レギュレーターは、レンチウイルスベクターを、250から1,000の間(またはその間の任意の値)のMOIで使用してデリバリーされる。他の実施形態では、レギュレーターは、プラスミドベクターを0.01~1,000ng/100,000個細胞(またはその間の任意の値)で使用してデリバリーされる。他の実施形態では、リプレッサーは、mRNAとして150~1,500ng/100,000個細胞(またはその間の任意の値)でデリバリーされる。さらに、インビボ使用のために、本明細書において記載される方法のいずれかにおいて、遺伝子モジュレーター(例えば、リプレッサー)は、それを必要とする対象において所望の効果をもたらす任意の濃度(用量)でデリバリーされ得る。いくつかの実施形態では、リプレッサーは、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを10,000~500,000ベクターゲノム/細胞(またはその間の任意の値)で使用してデリバリーされる。ある特定の実施形態では、リプレッサーは、レンチウイルスベクターを250から1,000の間(またはその間の任意の値)のMOIで使用してデリバリーされる。他の実施形態では、リプレッサーは、プラスミドベクターを0.01~1,000ng/100,000個細胞(またはその間の任意の値)で使用してデリバリーされる。他の実施形態では、リプレッサーは、mRNAとして0.01~3000ng/細胞数(例えば、50,000~200,000個(例えば、100,000)個細胞(またはその間の任意の値)でデリバリーされる。他の実施形態では、リプレッサーは、1~300μLの固定容量のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用して、1E11~1E14VG/mlで脳柔組織へデリバリーされる。他の実施形態では、リプレッサーは、0.5~10mlの固定容量のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用して、1E11~1E14VG/mlでCSFへデリバリーされる。
【0048】
本明細書において記載される方法のいずれにおいても、方法は、対象の1つまたは複数の細胞において標的とされるアレルの約50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、約70%以上、約75%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上または約95%以上の調節(例えば、抑制)をもたらし得る。いくつかの実施形態では、野生型および突然変異体アレルは、異なって調節される、例えば、突然変異体アレルは、野生型アレルと比較して優先的に修飾される(例えば、突然変異体アレルは、少なくとも70%抑制され、野生型アレルは、50%以下抑制される)。
【0049】
本明細書において記載される方法のいずれかでは、方法は、対象の1つまたは複数の細胞において標的とされたアレル(複数可)のアンチセンス発現の約50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、約70%以上、約75%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上または約95%以上の調節(例えば、抑制)をもたらし得る。一部の実施形態では、突然変異体アレルにおけるセンス発現およびアンチセンス発現は、異なって調節される、例えば、アンチセンス転写物の発現は、突然変異体アレルにおけるセンス転写物の発現と比較して優先的に調節される(例えば、アンチセンス発現は、少なくとも70%抑制され、センス発現は、50%以下抑制される)。
【0050】
さらなる態様では、本明細書において記載されるような転写因子、例えば、ジンクフィンガータンパク質(ZFP-TF)、TALE(TALE-TF)およびCRISPR/Cas-TFのうち1つまたは複数、例えば、ZFP-TF、TALE-TFまたはCRISPR/Cas-TFを含む転写因子が、対象の脳(例えば、ニューロン)において突然変異体および/または野生型アレル(例えば、C9orf72)の発現を抑制するために使用される。抑制は、対象の未処置(野生型)細胞と比較した、対象の1つまたは複数の細胞における、標的とされるアレルの約50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、約75%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上または約95%以上の抑制であり得る。ある特定の実施形態では、野生型アレルの抑制は、50%以下(未処置細胞または対象と比較して)であり、突然変異体(罹患またはアイソフォーム変異体)の抑制は、少なくとも70%である(未処置細胞または対象と比較して)。ある特定の実施形態では、アンチセンス転写は、完全に(十分に)抑制される。ある特定の実施形態では、センス転写物の抑制は、50%以下(未処置細胞または対象と比較して)であり、アンチセンス転写物の抑制は、少なくとも70%(未処置細胞または対象と比較して)である。ある特定の実施形態では、標的とされる転写因子の調節は、本明細書において記載される方法のうち1つまたは複数を達成するために使用され得る。
【0051】
したがって、外因性配列(人工TFなど)の発現を用いるかまたは用いない抑制を含む、本明細書において開示される希少障害と関連する遺伝子の発現を調節するための方法および組成物が、本明細書において記載される。組成物および方法は、インビトロ(例えば、その調節による、薬物発見のためならびに/またはトランスジェニック動物および動物モデルを作製するための、標的遺伝子の研究のための細胞の提供のため)、インビボまたはエキソビボで使用するためである場合があり、適宜、ヌクレアーゼによる切断後に遺伝子中に組み込まれるドナーを有するヌクレアーゼの場合には、希少疾患と関連する遺伝子を標的とするDNA結合分子を含む人工転写因子またはヌクレアーゼを投与することを含む。いくつかの実施形態では、ドナー遺伝子(導入遺伝子)は、細胞において染色体外で維持される。ある特定の実施形態では、細胞は、疾患を有する患者中にある。他の実施形態では、細胞は、本明細書において記載される方法のいずれによっても修飾され、修飾された細胞は、それを必要とする対象(例えば、希少疾患を有する対象)に投与される。本明細書において記載される方法によって作製された細胞を含む、遺伝的に修飾された遺伝子(例えば、外因性配列)を含む遺伝的に修飾された細胞(例えば、幹細胞、前駆体細胞、T細胞、筋肉細胞など)も提供される。これらの細胞は、例えば、細胞を、それを必要とする対象に投与することによって、あるいは、細胞によって産生されるタンパク質を単離することおよびタンパク質を、それを必要とする対象に投与すること(酵素置換療法)によって、希少疾患を有する対象に治療用タンパク質を提供するために使用され得る。
【0052】
また、本明細書において記載されるような遺伝子モジュレーター(例えば、リプレッサー)および/または標的-モジュレーター(またはその構成成分)の構成成分を含むポリヌクレオチドおよび/または標的-モジュレーター(またはその構成成分)をコードするポリヌクレオチドのうち1つまたは複数を含むキットも提供される。キットは、細胞(例えば、ニューロンまたは筋肉細胞)、試薬(例えば、例えば、CSFにおいてタンパク質を検出および/または定量化するための)および/または本明細書において記載されるような方法を含む使用するための説明書をさらに含み得る。
【0053】
本方法および組成物は、以下に詳細にさらに記載される。
【0054】
I.ジンクフィンガータンパク質転写因子
本ZFP-TFは、DNA結合ジンクフィンガータンパク質(ZFP)ドメインおよび転写リプレッサードメインを含有する融合タンパク質であり、2つのドメインは、直接ペプチジル連結もしくはペプチドリンカーによって、または二量体化(例えば、ロイシンジッパー、STATタンパク質N末端ドメインまたはFK506結合タンパク質を介した)によって互いに会合し得る。本明細書において、「融合タンパク質」とは、共有結合によって連結されたドメインを有するポリペプチドならびに非共有結合によって互いに会合しているポリペプチドの複合体を指す。転写リプレッサードメインは、ZFPドメインのC末端またはN末端を含む任意の適した位置でZFPドメインと会合し得る。
【0055】
一部の実施形態では、本ZFP-TFは、ヒト突然変異体C9orf72遺伝子の転写を45%以上(例えば、50%、60%、70%、80%、90%または95%以上)抑制する。一部の実施形態では、患者において本ZFP-TFのうち2つ以上が同時に使用され、ZFP-TFは、突然変異体C9orf72転写の最適抑制を達成するために、拡大されたC9orf72領域のセンスおよび/またはアンチセンス鎖中の異なるDNAモチーフに結合する。
【0056】
A.ZFPドメインの標的
本融合タンパク質のZFPドメインは、突然変異体ヒトC9orf72遺伝子アレル中の拡大された領域に優先的に結合する。ヒトC9orf72遺伝子は、9番染色体の短い(p)アームの位置21.2に(9p21.2)位置する。染色体上の塩基対27,546,546~27,573,866にまたがる。ヒトC9orf72のゲノム構造は、図1Aに示されている。ZFP-TFのDNA結合性ZFPドメインは、融合タンパク質を、突然変異体C9orf72遺伝子の拡大されたリピート領域に向け、融合タンパク質の転写リプレッサードメインを標的領域にもたらす。次いで、リプレッサードメインは、RNAポリメラーゼによるC9orf72遺伝子転写を抑制する。
【0057】
一部の実施形態では、拡大された領域中の標的配列は、少なくとも8bpの長さである。例えば、標的配列は、8bp~40bpの長さ、例えば、12、15、16、17、18、19、20、21、24、27、30、33または36bpの長さであり得る。ある特定の実施形態では、本ZFP-TFの標的配列は、12~20(例えば、12~18、15~19、15、18または19)bpの長さである。一部の実施形態では、標的配列は、連続していない部分配列を含む。
【0058】
リピートは、遺伝子のセンスおよびアンチセンス鎖中に以下のヘキサヌクレオチドDNAモチーフを生じさせる:
センスC9orf72鎖中のモチーフ:
(i) GGGGCC(配列番号1)
(ii) GGGCCG(配列番号2)
(iii) GGCCGG(配列番号3)
(iv) GCCGGG(配列番号4)
(v) CCGGGG(配列番号5)
(vi) CGGGGC(配列番号6)
【0059】
アンチセンスC9orf72鎖中のモチーフ:
(vii) GGCCCC(配列番号7)
(viii) GCCCCG(配列番号8)
(ix) CCCCGG(配列番号9)
(x) CCCGGC(配列番号10)
(xi) CCGGCC(配列番号11)
(xii) CGGCCC(配列番号12)
【0060】
一部の実施形態では、本ZFP-TFの標的配列は、これらのDNAモチーフの1つまたは複数の(例えば、2、3または4つの)タンデムリピートを含む。一部の実施形態では、標的配列は、モチーフのうち1つの3つのタンデムリピートからなる。一部の実施形態では、標的配列は、モチーフの1つまたは複数の(例えば、2つまたは3つの)タンデムリピートおよび上流および/または下流の隣接配列から少数の(例えば、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの)ヌクレオチド(例えば、CC(GGG)(配列番号75)を含む。
【0061】
標的配列は、遺伝子のセンス鎖上にある場合も、遺伝子のアンチセンス鎖上にある場合もある。ある特定の実施形態では、患者において使用されるZFP-TFは、突然変異体アレルのセンスおよびアンチセンス鎖両方に結合する。標的化の正確性を確実にするために、ZFP-TFによるオフターゲット結合を低減するために、選択されたC9orf72標的領域の配列は、ゲノム中の他の遺伝子中の配列に対して、好ましくは、75%未満の相同性(例えば、70%未満、65%未満、60%未満または50%未満の相同性)を有する。
【0062】
標的セグメントをさらに評価するための他の基準として、このようなセグメントまたは関連セグメントへのZFP結合のこれまでの利用可能性、所与の標的セグメントに結合する新規ZFPを設計する容易さおよびオフターゲット結合のリスクが挙げられる。
【0063】
B.ジンクフィンガータンパク質ドメイン
「ジンクフィンガータンパク質」または「ZFP」とは、亜鉛によって安定化されるDNA結合ドメインを有するタンパク質を指す。ZFPは、配列特異的にDNAに結合する。個々のDNA結合ドメインは、「フィンガー」と呼ばれる。ZFPは、少なくとも1つのフィンガーを有し、各フィンガーは、DNAの2~4の塩基対、通常、DNAの3または4の塩基対に結合する。各ジンクフィンガーは、通常、およそ30個のアミノ酸を含み、亜鉛をキレートする。遺伝子操作されたZFPは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して新規の結合特異性を有し得る。遺伝子操作法として、それだけには限らないが、合理的な設計および種々の種類の選択が挙げられる。合理的な設計は、例えば、トリプレット(またはクアドラプレット)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することを含み、各トリプレットまたはクアドラプレットヌクレオチド配列は、特定のトリプレットまたはクアドラプレット配列に結合するジンクフィンガーの1個または複数のアミノ酸配列と関連している。例えば、米国特許第5,789,538号、同5,925,523号、同6,007,988号、同6,013,453号、同6,140,081号、同6,200,759号、同6,453,242号、同6,534,261号、同6,979,539号、同8,586,526号、同8,841,260号、同8,956,828号および同9,234,016号ならびに国際特許公開WO95/19431、WO96/06166、WO98/53057、WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO98/54311、WO00/27878、WO01/60970、WO01/88197、WO02/016536、WO02/099084およびWO03/016496に詳細に記載されるZFP設計法を参照のこと。
【0064】
本ZFP-TFのZFPドメインは、少なくとも3つの(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13またはそれより多い)ジンクフィンガーを含み得る。3つのフィンガーを有するZFPドメインは、通常、9~12ヌクレオチドを含む標的部位を認識する。4つのフィンガーを有するZFPドメインは、通常、12~15ヌクレオチドを含む標的部位を認識する。5つのフィンガーを有するZFPドメインは、通常、15~18ヌクレオチドを含む標的部位を認識する。6つのフィンガーを有するZFPドメインは、18~21ヌクレオチドを含む標的部位を認識できる。
【0065】
ZFPドメインの標的特異性は、例えば、米国特許公開第2018/0087072号に記載されるようなZFP骨格へ突然変異によって改善され得る。突然変異には、DNA骨格上のリン酸と非特異的に相互作用できるが、ヌクレオチド標的特異性には関与しないZFP骨格中の残基に行われるものが含まれる。一部の実施形態では、これらの突然変異は、カチオン性アミノ酸残基を、中性またはアニオン性アミノ酸残基に突然変異することを含む。一部の実施形態では、これらの突然変異は、極性アミノ酸残基を、中性または非極性アミノ酸残基に突然変異することを含む。さらなる実施形態では、突然変異は、DNA結合性ヘリックスに対して(-5)、(-9)および/または(-14)の位置で行われる。一部の実施形態では、ジンクフィンガーは、(-5)、(-9)および/または(-14)の位置に1つまたは複数の突然変異を含み得る。さらなる実施形態では、マルチフィンガーZFPドメイン中の1つまたは複数のジンクフィンガーは、(-5)、(-9)および/または(-14)の位置に突然変異を含み得る。一部の実施形態では、(-5)、(-9)および/または(-14)の位置のアミノ酸(例えば、アルギニン(R)またはリシン(K))が、アラニン(A)、ロイシン(L)、Ser(S)、Asp(N)、Glu(E)、Tyr(Y)および/またはグルタミン(Q)に突然変異される。一部の実施形態では、(-5)の位置のR残基は、Qに突然変異される。
【0066】
あるいは、DNA結合ドメインは、ヌクレアーゼに由来し得る。例えば、ホーミングエンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼ例えば、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIの認識配列は公知である。また、米国特許第5,420,032号および同第6,833,252号;Belfort et al., Nucleic Acids Res. (1997) 25:3379-88; Dujon et al., Gene (1989) 82:115-8; Perler et al., Nucleic Acids Res. (1994) 22:1125-7; Jasin, Trends Genet. (1996) 12:224-8; Gimble et al., J. Mol Biol. (1996) 263:163-80; Argast et al., J. Mol Biol. (1998) 280:345-53;ならびにNew England Biolabsカタログを参照のこと。
【0067】
一部の実施形態では、本ZFP-TFは、1つまたは複数のジンクフィンガードメインを含む。ドメインは、拡大可能な可動性リンカーを介して一緒に連結されることがあり、その結果、例えば、1つのドメインが、1つまたは複数の(例えば、4、5または6の)ジンクフィンガーを含み、別のドメインが、追加の1つまたは複数の(例えば、4、5または6つの)ジンクフィンガーを含む。一部の実施形態では、リンカーは、標準のフィンガー間リンカーであり、その結果、フィンガーアレイが、8、9、10、11または12またはそれより多いフィンガーを含む1つのDNA結合ドメインを含む。他の実施形態では、リンカーは、可動性リンカーなどの非定型リンカーである。例えば、2つのZFPドメインは、立体配置(N末端からC末端に)ZFP-ZFP-TF、TF-ZFP-ZFP、ZFP-TF-ZFPまたはZFP-TF-ZFP-TF(2つのZFP-TF融合タンパク質が、リンカーを介して一緒に融合されている)で転写リプレッサーTFに連結され得る。
【0068】
一部の実施形態では、ZFP-TFは、「両手型」である、すなわち、それらは、介在するアミノ酸によってわけられた2つのジンクフィンガークラスター(2つのZFPドメイン)を含有し、その結果、2つのZFPドメインは、2つの不連続標的部位に結合する。両手型のジンクフィンガー結合タンパク質の一例として、SIP1があり、4つのジンクフィンガーのクラスターが、タンパク質のアミノ末端に位置し、3つのフィンガーのクラスターが、カルボキシル末端に位置する[Remacle et al., EMBO J. (1999) 18(18):5073-84を参照のこと]。これらのタンパク質中のジンクフィンガーの各クラスターは、独特の標的配列と結合可能であり、2つの標的配列間の空間は、多数のヌクレオチドを含み得る。
【0069】
代替実施形態では、機能においてZFP-TFと同様であるタンパク質が、ZFP-TFの代わりに使用され得る。例えば、ZFPドメインの代わりに、転写リプレッサー融合タンパク質は、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)DNA結合ドメインに由来するDNA結合ドメインを含み得る。例えば、米国特許第8,586,526号および同9,458,205号、米国特許公開第2013/0196373号および同2013/0253040号、WO2010/079430、Schornack et al., J Plant Physiol (2006) 163(3):256-72)、Kay et al., Science (2007) 318:648-51、Moscou and Bogdanove, Science (2009) 326:1501およびBoch et al., Science (2009) 326:1509-12を参照のこと。さらに別の例では、転写リプレッサー融合タンパク質は、CRISPR/Cas系のシングルガイドRNAであるDNA結合ドメインを含み得る。例えば、米国特許公開第2015/0056705号、Jinek et al., Science (2012) 337:816;Ramalingam et al., Genome Biol. (2013) 14:107;Hwang et al., (2013) Nature Biotechnology 31(3):227を参照のこと。
【0070】
C.転写リプレッサードメイン
本ZFP-TFは、突然変異体C9orf72アレルの転写活性を弱める、1つまたは複数の転写リプレッサードメインを含む。転写リプレッサードメインの限定されない例として、KOX1のKRABドメイン、KAP-1、MAD、FKHR、EGR-1、ERD、SID、TGF-ベータ誘導性初期遺伝子(TIEG)、v-ERB-A、MBD2、MBD3、DNMTファミリーのメンバー(例えば、DNMT1、DNMT3A、DNMT3B)、RbおよびMeCP2がある。例えば、Bird et al., Cell (1999) 99:451-54;Tyler et al., Cell (1999) 99:443-46;Knoepfler et al., Cell (1999) 99:447-50;およびRobertson et al., Nature Genet. (2000) 25:338-42を参照のこと。さらなる例示的抑制ドメインとして、それだけには限らないが、ROM2およびAtHD2Aが挙げられる。例えば、Chem et al., Plant Cell (1996) 8:305-21; およびWu et al., Plant J. (2000) 22:19-27を参照のこと。
【0071】
一部の実施形態では、転写リプレッサードメインは、ヒトジンクフィンガータンパク質10/KOX1(ZNF10/KOX1)(例えば、GenBank番号NM_015394.4)のクルッペル関連ボックス(KRAB)ドメイン由来の配列を含む。例示的KRABドメイン配列は以下である:
DAKSLTAWSR TLVTFKDVFV DFTREEWKLL DTAQQIVYRN VMLENYKNLV SLGYQLTKPD VILRLEKGEE PWLVEREIHQ ETHPDSETAF EIKSSV(配列番号13)
【0072】
このKRAB配列の変異体も、同一または同様の転写リプレッサー機能を有する限り使用され得る。
【0073】
D.ペプチドリンカー
本ZFP-TFのZFPドメインおよび転写リプレッサードメインならびに/またはZFPドメイン内のジンクフィンガーは、ペプチドリンカー、例えば、約5~200個のアミノ酸(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはそれより多いアミノ酸)の非切断性ペプチドリンカーを介して連結され得る。いくつかの好ましいリンカーは、組換え融合タンパク質として合成される可動性アミノ酸配列である。例えば、上記の説明および米国特許第6,479,626号、同6,903,185号、同7,153,949号、同8,772,453号および同9,163,245号ならびにWO2011/139349を参照のこと。本明細書において記載されるタンパク質は、適したリンカーの任意の組合せを含み得る。リンカーの限定されない例として、DGGGS(配列番号14)、TGEKP(配列番号15)、LRQKDGERP(配列番号16)、GGRR(配列番号17)、GGRRGGGS(配列番号18)、LRQRDGERP(配列番号19)、LRQKDGGGSERP(配列番号20)、LRQKD(GS)ERP(配列番号21)、TGSQKP(配列番号22)、LRQKDAARGS(配列番号26)、およびLRQKDAARGSGG(配列番号76)がある。
【0074】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、3~20個のアミノ酸残基の長さであり、Gおよび/またはSが豊富である。このようなリンカーの限定されない例として、GS型リンカー(配列番号23として開示される「GS」)、すなわち、1つもしくは複数の(例えば、2、3または4つの)GGGGS(配列番号23)モチーフまたはモチーフの変形(例えば、モチーフ中に1つ、2つまたは3つのアミノ酸挿入、欠失および置換を有するもの)を含有するリンカーがある。
【0075】
一部の実施形態では、ZFP-TFは、核局在性シグナル(例えば、SV40中型T抗原に由来するもの)および/またはエピトープタグ(例えば、FLAGおよび血球凝集素)を含む。
【0076】
II.ZFP-TFの発現
本開示のZFP-TFは、それをコードする核酸分子によって患者に導入され得る。例えば、核酸分子は、RNA分子であり、RNA分子は、脂質:核酸複合体(例えば、リポソーム)を含む組成物の注射によって患者の脳中に導入される。あるいは、ZFP-TFは、ZFP-TFのコード配列を含む核酸発現ベクターによって患者に導入され得る。発現ベクターは、神経系(例えば、中枢神経系)の細胞におけるZFP-TFのコード配列の発現を可能にする発現制御配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、転写シグナル配列および転写終結配列を含み得る。一部の実施形態では、発現ベクターは、安定なエピソームとして細胞中に存在するままである。他の実施形態では、発現ベクターは、細胞のゲノム中に組み込まれる。
【0077】
一部の実施形態では、脳におけるZFP-TF発現を指示するためのベクター上のプロモーターは、構成的に活性なプロモーターまたは誘導プロモーターである。適したプロモーターとして、制限するものではないが、ラウス肉腫ウイルス(RSV)長い末端反復配列(LTR)プロモーター(RSVエンハンサーを有してもよい)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(CMVエンハンサーを有してもよい)、CMV最初期プロモーター、サルウイルス40(SV40)プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)プロモーター、β-アクチンプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、EFlαプロモーター、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)LTR、クレアチンキナーゼベースの(CK6)プロモーター、トランスサイレチンプロモーター(TTR)、チミジンキナーゼ(TK)プロモーター、テトラサイクリン応答性プロモーター(TRE)、B型肝炎ウイルス(HBV)プロモーター、ヒトα1-アンチトリプシン(hAAT)プロモーター、キメラ肝臓特異的プロモーター(LSP)、E2因子(E2F)プロモーター、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)プロモーター、CMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチン/ウサギβ-グロビンプロモーター(CAGプロモーター;Niwa et al., Gene (1991) 108(2):193-9)およびRU-486応答性プロモーターが挙げられる。ニューロン特異的プロモーター、例えば、シナプシンIプロモーター、カルシウム/カルモジュリン依存性タンパク質キナーゼII(CamKII)プロモーター、メチルCpG結合性タンパク質2(MeCP2)プロモーター、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)プロモーターおよびカルビンディン(Calb)プロモーターも使用され得る。星状細胞特異的プロモーター、例えば、グリア線維性酸性タンパク質タンパク質(GFAP)プロモーターまたはアルデヒドデヒドロゲナーゼ1ファミリー、メンバーL1(Aldh1L1)プロモーターも使用され得る。乏突起神経膠細胞特異的プロモーター、例えば、Olig2プロモーターも使用され得る。さらに、プロモーターは、それによってZFP-TFが結合し、自身の発現レベルをプリセットした閾値に抑制できる1つまたは複数の自己調節性エレメントを含み得る。米国特許第9,624,498号を参照のこと。
【0078】
それだけには限らないが、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、カチオン性またはアニオン性リポソーム、核局在性シグナルと組み合わせたリポソーム、天然に存在するリポソーム(例えば、エキソソーム)またはウイルス性形質導入を含む、ヌクレオチド配列を細胞中に導入する任意の方法が使用され得る。
【0079】
発現ベクターのインビボ送達のために、ウイルス性形質導入が使用され得る。本開示における使用のために当技術分野で公知の種々のウイルスベクター、例えば、ワクシニアベクター、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクターおよびハイブリッドウイルスベクターが適応され得る。一部の実施形態では、本明細書において使用されるウイルスベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。AAVが分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染し、極めて低い免疫原性を有し、ウイルスゲノムが、長期発現のための安定なエピソーム構造として存在するので、AAVベクターは、中枢神経系(CNS)遺伝子送達に特に適している(Hadaczek et al., Mol Ther. (2010) 18:1458-61;Zaiss, et al., Gene Ther. (2008) 15:808-16)。任意の適したAAV血清型が使用され得る。例えば、AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV3b、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV8.2、AAV9またはAAVrh10、または偽型のもの(例えば、AAV2/8、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/9またはAAV2/6/9)であり得る。例えば、米国特許第7,198,951号および同9,585,971号を参照のこと。
【0080】
一部の実施形態では、発現ベクターは、AAVベクターであり、そのゲノムが、産生系、例えば、昆虫細胞/バキュロウイルス産生系または哺乳動物細胞産生系におけるAAVビリオンの産生を可能にするように両端にAAV逆方向末端反復配列(ITR)配列を有することを含むコンストラクトを含む組換えAAVビリオンによって、標的ヒト細胞に導入される。AAVは、そのカプシドタンパク質がヒトにおいて低減された免疫原性または増強された形質導入能を有するように遺伝子操作され得る。一部の実施形態では、AAV9が使用される。本明細書において記載されるウイルスベクターは、当技術分野で公知の方法を使用して生成され得る。ウイルス粒子を生成するために任意の適した許容またはパッケージング細胞種が使用され得る。例えば、パッケージング細胞株として哺乳動物(例えば、293)または昆虫(例えば、Sf9)細胞が使用され得る。
【0081】
それを必要とする患者の神経系において、ZFPを含む治療用タンパク質を発現させる方法については、米国特許第6,309,634号、同6,453,242号、同6,503,717号、同6,534,261号、同6,599,692号、同6,607,882号、同6,689,558号、同6,824,978号、同6,933,113号、同6,953,575号、同6,979,539号、同7,013,219号、同7,163,824号、同7,182,944号、同8,309,355号、同8,337,458号、同8,586,526号、同9,050,299号および同9,089,667号も参照のこと。
【0082】
III.医薬適用
本ZFP-TFは、C9orf72発現の下方制御、特に、突然変異体C9orf72アレルの発現の下方制御を必要とする患者を処置するために使用できる。患者は、C9orf72関連神経変性性疾患、例えば、ALSおよびC9FTDを患っている、またはそれを発生するリスクにある。リスクにある患者として、遺伝的な傾向があるもの、反復された脳傷害、例えば、脳震盪に苦しんできたものおよび環境的神経毒に曝露されてきたものが挙げられる。本開示は、C9orf72関連神経疾患(例えば、ALSおよびC9FTD)を、それを必要とする対象、例えば、ヒト患者において処置する方法であって、対象の神経系(例えば、CNS)に、ZFP-TF(例えば、それを発現するrAAVベクター)の治療上有効な量(例えば、突然変異体C9orf72アレル発現の十分な抑制を可能にする量)を導入することを含む方法を提供する。「処置する」という用語は、症状の軽減、症状の発症の予防、疾患進行の減速、生活の質の改善および生存の増大を包含する。
【0083】
本開示は、その組換えゲノムがZFP-TFの発現カセットを含むウイルスベクター、例えば、rAAVを含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、薬学的に許容される担体、例えば、水、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、デキストロース、グリセロール、スクロース、ラクトース、ゼラチン、デキストラン、アルブミンまたはペクチンをさらに含み得る。さらに、組成物は、補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、分解防止剤または医薬組成物の有効性を増強する他の試薬を含有し得る。医薬組成物は、送達媒体、例えば、リポソーム、ナノカプセル、微粒子、ミクロスフェア、脂質粒子および小胞を含有し得る。
【0084】
本開示の治療薬によって標的とされる細胞は、制限するものではないが、神経細胞(例えば、運動ニューロン、感覚ニューロン、ドーパミンニューロン、コリン作動性ニューロン、グルタミン酸作動性ニューロン、GABA作動性ニューロンまたはセロトニン作動性ニューロン)、グリア細胞(例えば、乏突起神経膠細胞、星状細胞、周皮細胞、シュワン細胞または小グリア細胞)、上衣細胞または神経上皮細胞を含む、脳および/または脊髄中の細胞である。標的とされる脳領域は、皮質領域、前頭側頭型領域、嗅内皮質、海馬、小脳、脳橋および髄質であり得る。これらの領域は、海馬内注射、大脳内注射、大槽内(ICM)注射によって、より一般的には、実質内注射、脳室内(ICV)注射、くも膜下腔内注射または静脈内注射によって直接到達され得る。他の投与経路として、制限するものではないが、大脳内、脳室内、鼻腔内または眼球内投与が挙げられる。一部の実施形態では、ウイルスベクターは、例えば、くも膜下腔内および/もしくは大脳内の注射または大槽内注射または脳室内注射による脳脊髄液(CSF)中への直接投与後、CNS組織中に広がる。他の実施形態では、ウイルスベクターは、静脈内投与後に、血液脳関門を通過し、対象のCNS組織中にわたる広範な分布を達成する。他の実施形態では、ウイルスベクターは、実質内注射によって標的領域に直接デリバリーされる。一部の場合には、ウイルスベクターは、実質内送達後に他の脳領域への逆行性または順行性輸送を受ける場合がある。一部の態様では、ウイルスベクターは、別個のCNS組織標的化能(例えば、CNS組織指向性)を有し、これによって安定な非毒性遺伝子導入を高効率で達成される。
【0085】
例として、医薬組成物は、脳室内投与を介して患者に、例えば、患者の前脳の脳室領域、例えば、右側脳室、左側脳室、第3脳室または第4脳室中に提供され得る。医薬組成物は、大脳内投与、例えば、脳の大脳、髄質、脳橋、小脳、頭蓋内腔、髄膜、硬膜、くも膜または脳軟膜中またはその付近への組成物の注射を介して患者に提供され得る。大脳内投与は、一部の場合には、薬剤の、脳周囲のくも膜下腔の脳脊髄液(CSF)への投与を含み得る。
【0086】
一部の場合には、大脳内投与は、定位固定手順を使用する注射を含む。定位固定手順は、当技術分野で周知であり、通常、注射を特定の大脳内領域、例えば、脳室領域へガイドするために一緒に使用されるコンピュータおよび三次元スキャニングデバイスの使用を含む。マイクロインジェクションポンプ(例えば、World Precision Instruments製)も使用され得る。一部の場合には、ウイルスベクターを含む組成物を送達するためにマイクロインジェクションポンプが使用される。一部の場合には、組成物の注入速度は、1μl/分~100μl/分の範囲にある。当業者には理解されるであろうが、注入速度は、例えば、対象の年齢、対象の体重/大きさ、AAVの血清型、必要な投与量および標的とされる大脳内領域を含む種々の因子に応じて変わる。したがって、当業者によって、他の注入速度がある特定の状況において適当であると考えられ得る。
【0087】
対象へのrAAVの送達は、例えば、静脈内投与によって達成され得る。ある特定の例では、rAAVを脳組織、脊髄、脳脊髄液(CSF)、神経細胞、グリア細胞、髄膜、星状細胞、乏突起膠細胞、間質性空間などに局所的に送達することが望ましい場合がある。一部の場合には、組換えAAV(例えば、10~1015Vg/用量)が、脳室領域中への、および/または海馬、皮質、小脳小葉または他の脳領域への注射によってCNSに直接送達され得る。AAVは、当技術分野で公知の神経外科的技術を使用して、例えば、定位固定注射によってニードル、カテーテルまたは関連デバイスを用いて送達され得る。例えば、Stein et al., J Vir. (1999) 73:3424-9;Davidson et al., PNAS. (2000) 97:3428-32;Davidson et al., Nat Genet. (1993) 3:219-223;およびAlisky and Davidson, Hum. Gene Ther. (2000) 11:2315-29;米国特許第7,837,668号および同8,092,429号を参照のこと。
【0088】
本明細書において別に定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するべきである。例示的方法および材料が以下に記載されるが、本開示の実施または試験において本明細書において記載されるものと同様または等価の方法および材料も使用され得る。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が制御する。一般に、本明細書において記載される神経学、医学、医薬化学および薬学化学ならびに細胞生物学に関連して使用される命名法およびそれらの技術は、当技術分野では周知であり一般的に使用される。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般に達成されるように、または本明細書において記載されるように製造業者の仕様に従って実施される。さらに、文脈によって別に必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むべきであり、複数形の用語は、単数形を含むべきである。本明細書および実施形態を通じて、「有す(have)」および「含む(comprise)」という語句または「有する(has)」、「有している(having)」、「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」などの変形は、記載された整数または整数の群を含むが、任意の他の整数または整数の群を含まないことを暗示すると理解されるであろう。本明細書において言及されたすべての刊行物および他の参考文献は、その全体が参照によって組み込まれる。いくつかの文書が本明細書において引用されるが、この引例は、これらの文書のいずれかが当技術分野における共通の一般知識の一部を形成するという承認を構成するものではない。本明細書において、目的の1つまたは複数の値に適用されるような「およそ」または「約」という用語は、記載された参照値と同様である値を指す。ある特定の実施形態では、この用語は、別に記載のない限り、または文脈から別に明らかでない限り、記載された参照値のいずれかの方向(より大きいまたはより小さい)に10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%またはそれより小さいもの以内に入る値の範囲を指す。
【0089】
本発明がより良好に理解され得るように、以下の実施形態および実施例を示す。これらの実施形態および実施例は、単に例示目的であって、いかなる形であれ本発明の範囲を制限すると理解されるべきではない。
【0090】
IV.例示的実施形態
本開示の限定されない実施形態を以下に記載する。
1.細胞においてC9orf72遺伝子のセンスおよび/またはアンチセンス転写を抑制する方法であって、細胞を、C9orf72遺伝子の1つまたは複数のリプレッサー、転写抑制ドメインおよびC9orf72遺伝子中の標的部位に結合するDNA結合ドメインを含む1つまたは複数のリプレッサーを用いて処置することを含み、1つまたは複数のリプレッサーが、1つもしくは複数のジンクフィンガータンパク質転写因子(ZFP-TF)、1つもしくは複数のTAL-エフェクタードメイン転写因子(TALE-TF)および/または1つもしくは複数のCRISPR/Cas転写因子を含んでもよい、方法。
2.C9orf72遺伝子が、1つまたは複数の拡大された(G)リピートを含む突然変異体アレルを含み、標的部位が、1つまたは複数の(G)リピート内であってもよい、請求項1の方法。
3.それを必要とする対象におけるセンスおよび/またはアンチセンス転写の抑制のための、1つまたは複数の(G)リピートを含む突然変異体C9orf72拡大されたアレルに結合する、1つまたは複数のZFP-TF、TALE-TFおよび/またはCRISPR/Cas TFリプレッサーの使用。
4.アンチセンス転写が、未処置細胞と比較して少なくとも50%抑制される、前記の実施形態のいずれかの方法または使用。
5.アンチセンス転写が、未処置細胞と比較して少なくとも70%抑制される、前記の実施形態のいずれかの方法または使用。
6.拡大されたリピートを含む転写物が選択的に抑制され、アンチセンス転写が抑制されてもよく、1aプロモーターからのセンス転写が、抑制されてもよく、および/または1bプロモーターからのセンス転写が抑制されなくてもよい、前記の実施形態のいずれかの方法または使用。
7.1つまたは複数のZFP-TFリプレッサーが、表1に示される順序で認識ヘリックス領域を有するZFPを含む、前記の実施形態のいずれかの方法または使用。
8.1つまたは複数のZFP-TFリプレッサーが、mRNAとして、またはウイルスベクターを使用して細胞に投与される、前記の実施形態のいずれかの方法または使用。
9.ウイルスベクターが、AdまたはAAVベクターである、実施形態8の方法または使用。
10.AAVベクターが、AAV2/9ベクターである、実施形態9の方法または使用。
11.細胞が、生存対象中にあり、1つまたは複数のZFP-TFリプレッサーが、対象に投与される、前記の実施形態のいずれかの方法または使用。
12.1つまたは複数のZFP-TFリプレッサーが、対象に脳室内、くも膜下腔内、頭蓋内、後眼窩(RO)、静脈内、鼻腔内および/または大槽内静脈内投与される、実施形態11の方法または使用。
13.ZFP-TFリプレッサーが、1E10~1E13(例えば、6E11)vg/半球の用量でAAVベクターを使用してもよく、対象の海馬に片側性にまたは両側性に投与される、実施形態12の方法または使用。
14.細胞がニューロンである、前記の実施形態のいずれかの方法または使用。
15.2つ以上のZFP-TFリプレッサーが投与される、これまでの実施形態のいずれかの方法または使用。
16.2つ以上のZFP-TFリプレッサーが、同一または異なる非ウイルスまたはウイルスベクターに保持される、実施形態15の方法または使用。
17.対象においてALSおよび/またはFTDが処置される、前記の実施形態のいずれかの方法または使用。
18.対象においてALSおよび/またはFTDの1つまたは複数の症状が寛解される、前記の実施形態のいずれかの方法または使用。
19.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が78021である、ZFP-TF融合タンパク質。
20.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が75114である、ZFP-TF融合タンパク質。
21.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が75115である、ZFP-TF融合タンパク質。
22.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が74969である、ZFP-TF融合タンパク質。
23.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が79895である、ZFP-TF融合タンパク質。
24.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が79898である、ZFP-TF融合タンパク質。
25.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が74986である、ZFP-TF融合タンパク質。
26.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が79899である、ZFP-TF融合タンパク質。
27.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が79901である、ZFP-TF融合タンパク質。
28.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が79902である、ZFP-TF融合タンパク質。
29.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が79904である、ZFP-TF融合タンパク質。
30.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が79916である、ZFP-TF融合タンパク質。
31.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が75027である、ZFP-TF融合タンパク質。
32.標的配列に結合し、表1に示されるようなSBS番号に対応するジンクフィンガーを含むZFP-TF融合タンパク質であって、ジンクフィンガーが、SBS番号について表1の単一列に示されるDNA結合(認識)ヘリックス配列を含み、SBS番号が79921である、ZFP-TF融合タンパク質。
33.ZFP-TF融合タンパク質が、配列番号13を含む転写リプレッサードメインを含む、実施形態19~32のいずれか1つのZFP-TF融合タンパク質。
34.ジンクフィンガードメインおよび転写リプレッサードメインが、配列番号26を含むペプチドリンカーによって連結される、実施形態19~33のいずれか1つのZFP-TF融合タンパク質。
【実施例
【0091】
[実施例1]
人工転写リプレッサー
ZFP-TFのパネルを、拡大されたヒトC9orf72アレルを標的とするように作成した。例示的ZFP-TFは、以下の表1に示されている。これらのZFP-TFは、6つのフィンガーを有するZFPドメインおよび上記のようなKRABドメイン(配列番号13)を各々含有していた。ペプチドリンカーを使用して、ZFPドメインをKRABドメインに連結した。リンカーは以下のアミノ酸配列:LRQKDAARGS(配列番号26)を有していた。
【0092】
表1は、各ZFP-TF中の標的部位のDNA配列および各ジンクフィンガー(F1~F6)のDNA結合ヘリックスのアミノ酸配列を示す。配列番号は、括弧中に示されている。標的部位中のZFPドメインによって結合される標的配列は、大文字で示されており、それぞれの両端に位置する配列は、小文字で示されている。配列番号24は、遺伝子アレルのセンス鎖上の標的部位であり、配列番号25は、遺伝子アレルのアンチセンス上の標的部位である。
【0093】
DNA結合ヘリックスは、ジンクフィンガーの可変部分であり、通常、6個または7個のアミノ酸残基を含有する。ZFPドメインの標的特異性は、例えば、米国特許公開第2018/0087072号に記載されるようなZFP骨格への突然変異によって改善され得る。表中の記号「^」は、示されたヘリックス中の第1のアミノ酸の上流第4位のアルギニン(R)残基が、グルタミン(Q)に変更されることを示す。各ジンクフィンガーヘリックス配列中、7個のDNA結合性アミノ酸の位置は、-1、+1、+2、+3、+4、+5および+6と番号付けられる。したがって、RからQへの置換の位置は、(-5)と番号付けられる。
【0094】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】

【0095】
ZFP-TFを、標準SELEX分析によって評価した(例えば、Miller et al., Nat Biotech. (2010) doi:10.1038/nbt.1755;Wilen et al., PLoS (2011) 7(4):e1002020を参照のこと)。すべては、その標的部位に結合すると示された。
【0096】
研究には5種類のヒト細胞株および1種のマウス細胞株を使用した。C9021線維芽細胞細胞株は、コロンビア大学のALS研究所(ALS Institute)から入手し、ALS-FTD患者に由来していた。その正常アレル上に5つのGリピートを含有し、その拡大されたアレル上におよそ850のリピートを含有していた。野生型線維芽細胞細胞株(NDS00035)、353TRADおよび204TDP線維芽細胞株は、神経疾患および卒中の国立研究所(National Institute of Neurological Disorders and Stroke)から入手した。野生型株は、各アレル上に2つのGリピートを含有する。353TRAD株は、一方のアレル上に5つのリピートおよびもう一方のアレル上に8つのリピートを含有する。204TDPは、一方のアレル上に2つのリピートおよびもう一方のアレル上に20のリピートを有する。すべての線維芽細胞実験のために、ヒトニューロンは、Cell Dynamics Internationalから入手した(iCell GABANeuronsキット、01434;カタログ番号R1013;細胞ロット番号104901)。マウス皮質ニューロンは、GIBCO(カタログ番号A15586)から入手した。その標的領域に結合するが、観察可能な抑制効果は有さなかったZFP 74960は、陰性対照として使用した。
【0097】
患者由来線維芽細胞において行われたすべての実験のために、ZFP-TF mRNAの、細胞へのトランスフェクションを、Lonza製の96ウェルのShuttle Nucleofectorシステムを使用して実施した。40,000個細胞あたり1、3、10、30、100および300ngのZFP-TF mRNAを、CA-137プログラムを使用するAmaxa P2 Primary Cells Nucleofectorキットを使用してトランスフェクトした。一晩インキュベートした後、Cells-to-Ctキット(Thermo Fisher Scientific)を使用して、トランスフェクトされた細胞からcDNAを作製し、続いて、qRT-PCRを使用して遺伝子発現解析をした。
【0098】
神経細胞形質導入のために、ZFPをAAV6プラスミド中に作成した。ニューロンにAAV6-ZFP形質導入した。すべての形質導入は、3,000MOIで実施した。マウスニューロンは、形質導入の7日後に収集し、一方、ヒトニューロンは、形質導入の19日後に収集した。細胞を収集した後、それらをマイクロアレイ分析のために処理した。
【0099】
スクリーニング分析を複数ラウンドで実施した。各ラウンドにおいて、ZFPを複数濃度で試験して、適したオンターゲット(選択的抑制)パターンを有するZFP-TFを同定した。スクリーニングのラウンド2を、C9(C9021)細胞において実施して、ZFP-TF処置後の、拡大されたセンス転写物(疾患)C9orf72対総C9orf72(「総C9」)成熟mRNAのレベルを評価した。RT-PCRアッセイでは、イントロン領域1aを標的とするプライマー/プローブセットを使用した。
拡大されたセンスC9orf72転写物:
フォワード:5’ CCCTCTCTCCCCACTACTTG 3’(配列番号61)
リバース:5’ CTACAGGCTGCGGTTGTTTCC 3’(配列番号62)
プローブ:5’ TCTCACAGTACTCGCTGAGGGTGA 3’(配列番号63)
【0100】
拡大は、非効率的なスプライシングおよび拡大含有プレmRNAの蓄積につながる(図2A)。対照的に、効率的にスプライシングされる野生型(WT)プレmRNAは、桑馬手低いレベルで存在する。C9021細胞においてこのアッセイを使用することによって、本発明者らは、試験されたZFP-TFが、拡大されたセンス(疾患)C9orf72転写物の広範な抑制を呈したことを示した(図2B~D)。
【0101】
総C9orf72 mRNAの抑制を評価するために、「総C9」として表される異なるプライマー/プローブセット(図2A)を使用した:
総C9orf72 mRNA:
フォワード:5’ CTATGTGTGTGGTGGGATATGG 3’(配列番号58)
リバース:5’ CTCCAGGTTATGTGAAGCAGAA 3’(配列番号59)
プローブ:5’ AGGCCTGCTAAAGGATTCAACTGGAA 3’(配列番号60)
【0102】
このプライマー/プローブセットは、エキソン8および9をまたぐ領域を含むmRNAを検出できた。この領域は、C9orf72 mRNAアイソフォームのすべてに存在する。図2bに示されるように、多数のZFP-TFは、総C9orf72転写物の中程度の抑制を示した。例えば、ZFP-TF75114および75115は、拡大されたセンス(疾患)転写物を70%よりも多く抑制し、一方で、総C9orf72 mRNAの発現を50%よりも多く防いだ(図2D、ラウンド2データ)。
【0103】
ラウンド3では、総C9orf72 mRNAを評価し、C9021細胞と野生型(WT)細胞の間で比較して、総C9orf72 mRNAレベルに対する、試験されたZFP-TFの効果をさらに評価した。データは、突然変異体細胞における総C9orf72 mRNAレベルが、WT細胞におけるものよりもかなりより劇的に低下し、同一ZFP-TFによって処置された野生型細胞では、はるかに少なくしか影響を受けなかったことを示す(図2B~D)。全体的なデータは、一部のZFP、例えば、75109、75114および75115について、C9患者線維芽細胞株では、総C9転写物の約50%を維持しながら、拡大されたアイソフォームが大幅に抑制された(約70%)ことを例示する。
【0104】
その拡大されたアレル上に異なるG拡大リピート(600、800および850)を含有する3つの異なる患者に由来する線維芽細胞において、ZFP-TF75109、75114および75115のアイソフォーム選択的抑制を評価した(図6)。3つのZFPはすべて、リピート拡大長とは独立して同様の挙動を示し、これは、ZFP-TFの選択的抑制が、G4C2リピート長から独立していることを例示した。
【0105】
そのアレル上に正常Gリピート数よりも大きいものを有する健常個体から得た2つの細胞株において、総C9転写物の抑制を評価した(図7)。健常細胞株では、総C9転写物は、最小にしか影響を受けなかった。総C9 mRNA転写物を検出するために使用したPCRアッセイは、拡大されたおよび拡大されていない(WT)アイソフォームの両方に存在するエキソン8および9を標的とするので、患者由来細胞株(C9021)における総C9 mRNA転写物のZFP媒介性抑制は、WTアイソフォームレベルを真に代表するものではない(図2A)。そのアレル上に異なるGリピート長を有する2つの異なる健常株において、アイソフォーム選択的ZFP-TF(75109、75114および75115)に応じた総C9 mRNA転写物の抑制を評価した(図7)。細胞株353TREADは、一方のアレル上に5つのリピートおよびもう一方のアレル上に8つのリピートを有し、一方で、細胞株204TDPは、一方のアレル上に2リピートおよびもう一方のアレル上に20リピートを有する。C9株C921(拡大されていないアレル上に5リピートおよび拡大されたアレル上に850リピート)において、総C9 mRNA転写物は、用量依存的に抑制されたが、拡大されたアレルを有さない2つの他の細胞株では最小にしか影響を受けず、これは、疾患株(5/850)における総C9アイソフォームの抑制は、拡大されたアイソフォームの抑制の結果であり、拡大されていないアイソフォームの発現は、選択的ZFP-TFによって影響を受けないということを示した(図7)。
【0106】
理論に捉われようとは思わないが、本ZFP-TFが協同的に作動して、多数のリピートを有するアレルを選択的に抑制できるということが可能である。それは、高次複合体によって、例えば、ZFPによって連結されたKRABドメインと会合するKAP1コリプレッサーの補充を介して媒介され得る。この仮説の下では、複数のZFP-TFにわたるKAP1/KRAB「足場」は、転写抑制機構の安定性を高め、拡大されたC9orf72アレルの、野生型アレルを上回る優先的抑制を可能にする。
[実施例2]
【0107】
C9orf72抑制の特異性
表1に示されたZFP-TFの全体的な特異性を、3種の細胞株:C9021線維芽細胞、一次マウス皮質ニューロンおよびヒトニューロンにおいてマイクロアレイ分析によって評価した。C9021細胞について、手短には、100ngのmRNAをコードするZFP-TFを、150,000個のC9021細胞中に4連でトランスフェクトした。24時間後、全RNAを抽出し、製造業者のプロトコール(Affymetrix Genechip MTA1.0)によって処理した。ロバストマルチアレイ平均(RMA)を使用して、各プローブセットからの生シグナルを正規化した。解析は、「遺伝子レベル差次的発現解析」オプションを備えたトランスクリプトーム解析コンソール3.0(Affymetrix)を使用して実施した。ZFP-TFがトランスフェクトされたサンプルを、無関係のZFP-TF(C9orf72標的部位と結合しないもの)を用いて処理されているサンプルと比較した。変化呼び出しは、対照に対して平均シグナルにおいて>2倍の相違およびP値<0.05(各プローブセットについて一元ANOVA解析、独立T検定)を有する転写物(プローブセット)について報告された。また、ニューロンについて、それらに3000のMOIでAAV6を形質導入し、マウスニューロンについては7日間およびヒトニューロンについて19日間培養し、その後回収したことを除いて同様の手順を行った。
【0108】
例示的データが図8A~8Cに示されている。データは、ヒトおよびマウスの両方において線維芽細胞およびニューロンの両方において、ZFP-TF75027が、C9orf72(丸で示される)に加えていくつかのオフターゲットを示した、ZFP-TF75109、75114および75115は、C9orf72のみを抑制し、最小のオフターゲットを有していたことを示す。これらの結果は、代表的なZFP-TFは、C9orf72に対して高度に特異的であることを実証する。
[実施例3]
【0109】
アンチセンス特異的抑制の検出
センスおよびアンチセンス転写物は、DNAの重複する領域によってコードされるので、本発明者らは、転写物の示差的処理に基づく検出戦略を開発した。拡大されたアレルに由来するセンスmRNAについて、拡大された領域を含有するイントロン(イントロン1a)は、ミススプライシングされ、保持されるが、イントロン1bを含むすべての他のイントロンは除去される。対照的に、イントロン1b領域は、アンチセンスmRNA転写物では予測されたエキソンであり、保持されるべきである。したがって、本発明者らは、イントロン1b内に位置するプライマーを設計し、試験し、以下にさらに記載されるようなアンチセンス転写物の特異的検出を実証した。
【0110】
C9orf72転写物を検出するために、本発明者らは、液滴デジタルPCR(ddPCR)を使用した。手短には、センスまたはアンチセンスcDNA鋳型を作出するために、RNAをC9orf72患者および健常対照細胞(C9orf72株:C9-3、C9-6、C9-7、C9-5、C9-10、C9-11、C9-2、C9-4;対照株:KinALS6、Con3、Kin1ALS17、Con8、Con10、Con1;Lagier-Tourenne et al., PNAS (2013) 110(47):E4530-9を参照のこと)から精製し、これを使用し、以下のようにSuperscript III(Thermo Fischer Scientific)第1鎖合成システムを使用してcDNAを合成した:
【0111】
1)0.5μgのRNA、0.5μLの10mM鎖特異的プライマーおよびdNTPミックスを混合し、水を用いて10μLとした。センス鋳型の作成のために、プライマー5’CTCTAGCGACTGGTGGAATTG3’(配列番号64)を使用した。アンチセンス鋳型を作成するために、プライマー5’GTGCATGGCAACTGTTTGAATA3’(配列番号65)を使用した。
2)この反応物を、変性のために65℃で5分間インキュベートし、氷上に少なくとも1分間置いた。
3)これらの試薬:10×RTバッファー(2μL);25mM MgCl2(4μL);0.1M DTT(2μL);RNアーゼOUT(1μL);Superscript III(1μL)を使用して、cDNA合成ミックスを調製した。
4)この反応物の10μLを、RNAミックスに添加し、50℃で50分間インキュベートした。次いで、反応物を85℃で5分のインキュベーションによって不活性化した。
【0112】
次いで、鋳型を、標識されたプローブを製造業者のプロトコールに従って使用してddPCRに付した。手短には、PCR反応を、プローブ(Bio-Rad)のためのdUTP不含ddPCR Supermixを使用してABI PCR 96ウェルプレートにおいて行った。PCRマスターミックスを、製造業者の指示に従って調製した。イントロン1b領域に位置するアンチセンスプライマー-プローブセット(図3)は、以下に示される。
フォワード:5’ CAAAGCCTGGTGGTGTTCAA 3’(配列番号66)
リバース:5’ GGACATGACCTGGTTGCTTC 3’(配列番号67)
プローブ:5’ CGCGGCCAGATAGACCCAATGAGCA 3’(配列番号68)
【0113】
反応物は以下の通りに設定した:
1)完全マスターミックスを、ABI PCRプレートの8つのウェルの間で均等に分配した。
2)10μLの1:10希釈RT反応物または水を、サンプルウェルに添加した。
3)15μLのマスターミックスを、RT含有ウェル中に移した。
4)プレートを密閉し、ボルテックス処理し、短時間の間、遠心沈殿させた。
【0114】
液滴を作成するために、以下のようにカートリッジを使用した:
1)70μLのプローブオイルをカートリッジ上のウェル標識されたオイル中に入れ、20μLのddPCR反応物をウェル標識されたサンプル中に入れた。
2)ゴム製ガスケットをカートリッジの頂部に置いた。
3)40μLの液滴を、新しいエッペンドルフ96ウェルプレートに移した。プレートをアルミホイルで密閉し、PCRを製造業者のプロトコールに従って実施した。
【0115】
データは、C9orf72線維芽細胞株において、これらのプライマーは、アンチセンスの拡大されたプレmRNA(C9-AS)中のエキソンを増幅したということおよび相補性領域はセンス領域(C9-S)になかったということを示す(図4A)。したがって、本明細書においてddPCRアンチセンスプライマーは、アンチセンスプレmRNAを特異的に検出し、これは、6種の異なる対照線維芽細胞と比較して、7種の異なるC9患者由来線維芽細胞において明らかに上昇した(図4B)。
[実施例4]
【0116】
拡大されたアレルセンスおよびアンチセンスプレmRNA抑制
拡大されたアレルでのZFP-TFリプレッサーの活性を試験するために、細胞を、上記のようにZFP-TF74949、74978、75003、75027、75109、75114、75115、74967(表1)または74960(陰性対照)を用いて処置した。2つの別個のPCRアッセイを使用して、サンプル順序を知らされていない研究者によってZFP-TF媒介性抑制を評価した。各アッセイは、異なるプライマー/プローブを使用する(図5A~5C)。
【0117】
実行番号1および番号2について、当技術分野における標準プロトコールに従ってランダムヘキサマーを用いて、および以下に示されるプライマーを用いて増幅を実施した点を除いて、拡大されたセンス、拡大されたアンチセンスおよび総C9を測定するためのアッセイを上記のように実施した:
アンチセンスの拡大されたC9orf72プレmRNA(図5B):上記の実施例3に示されるような。
センスの拡大されたC9orf72プレmRNA(図5A):このプライマー/プローブセットは、エキソン1aおよびイントロン1aをまたぐ領域を含むmRNAを検出できた。
フォワード:5’ ACTACTTGCTCTCACAGTACTCG 3’(配列番号69)
リバース:5’ TAGCGCGCGACTCCTGAGTTCC 3’(配列番号70)
プローブ:5’ AGGGAAACAACCGCAGCCTGTAGCAAGCTC 3’(配列番号71)
総C9orf72 mRNA(図5C):このプライマー/プローブセットは、エキソン2内の領域を含むmRNAを検出できた。
フォワード:5’ TGTGACAGTTGGAATGCAGTGA 3’(配列番号72)
リバース:5’ GCCACTTAAAGCAATCTCTGTCTTG 3’(配列番号73)
プローブ:5’ TCGACTCTTTGCCCACCGCCA 3’(配列番号74)
【0118】
実行番号3(図5Aおよび5C)は、実施例1において上記で示されたプライマー(図2B~2D)を使用した。アンチセンス疾患転写物について、イントロン領域1bを検出するために以下のプライマー/プローブを使用した(図5B)。
フォワード:5’ CAGCTTCGGTCAGAGAAATGAG 3’(配列番号78)
リバース:5’ AAGAGGCGCGGGTAGAA 3’(配列番号79)
プローブ:5’ CTCTCCTCAGAGCTCGACGCATTT 3’(配列番号80)
【0119】
異なるプライマー/プローブセットおよび異なるPCRアッセイを使用した(実行番号1および実行番号2を、同様であるが、実行番号3とは異なるアッセイによって実施した)という事実にもかかわらず、データは、一貫しており、抑制レベルは同等であった。
【0120】
総合すると、すべての実行は、ZFP-TFの一部は、3種の転写物すべて(センス、アンチセンスおよび総)を強力に抑えることができた(例えば、ZFP-TF74978、75003および75027)が、一部のZFP-TF(例えば、ZFP-TF75109、75114および75115)は、総C9転写物を保ちながら、センスおよびアンチセンス疾患転写物を選択的に抑制した(選択的抑制)ということを一貫して実証した。
[実施例5]
【0121】
BAC C9orf72トランスジェニックマウスニューロンにおけるヒトC9orf72の調節
BACマウスC9orf72を標的とするすべてのリプレッサーを、発現を駆動するためのCMVプロモーターを使用してrAAV6ベクターにクローニングする。組換えAAVは、当技術分野で公知の方法に従って、HEK293T細胞において産生され、CsCl密度勾配を使用して精製され、リアルタイムqPCRによって力価測定される。 精製されたウイルスを使用して、3E5、1E5、3E4および1E4 Vg/細胞で培養一次マウス皮質ニューロンに感染させる。7日後、全RNAを抽出し、RT-qPCRを使用して、C9orf72センスおよびアンチセンス転写物ならびに2種の参照遺伝子(例えば、Atp5bおよびEif4a2)の発現をモニタリングする。
【0122】
すべてのZFP-TFをコードするAAVベクターは、広範な感染用量にわたってマウス細胞においてその標的を効率的に抑制し、一部のZFPは、複数回用量で標的を95%よりも多く低減する。対照的に、同等用量で試験されたCMV-GFP rAAV6ウイルスまたは偽処置ニューロンについて遺伝子抑制は観察されない。
[実施例6]
【0123】
AAVによってデリバリーされるZFP-TFによって駆動されるインビボ遺伝子抑制
標的関与研究に使用したC9orf72 BACトランスジェニックマウスは、98kbの、約500のGリピートを有する全長C9orf72遺伝子アレルおよび実質的にそれぞれの両端に位置する配列を含有するヒト導入遺伝子を含有する(Liu et al., Neuron (2016) 90(3):521-34)。種々の効力を有する2種のZFP-TF、ZFP-TF75027またはZFP-TF75114(ZFP-TF75027はより強力である;図2D)をこの研究のために選択した。2種の融合タンパク質の発現カセットを両方とも、発現を駆動するシナプシンプロモーターおよび自己切断可能ペプチド(例えば、2Aペプチド、例えば、T2AまたはP2A)のコード配列と、それに続く体内分布を測定するためのVenusタグを含有するrAAVベクター中にクローニングした(図9、パネルA)。HEK293T細胞においてrAAVを産生し、ITR上のプライマーを使用するddPCRによって力価測定した。
【0124】
インビボで拡大を含有するセンスおよびアンチセンス転写物の抑制に対するZFP-TF発現の効果を評価するために、ZFP-TF rAAVを、脳室内(ICV)注射によってP0 C9-BACまたはWTマウス中に送達した。手短には、媒体(PBS)またはZFP-TF 75027 rAAVもしくはZFP-TF 75114 rAAV(脳室あたり2E10 Vgの総用量)を、新生仔C9-BACマウス(リピート長について対応している)またはWTマウス中に両側性に投与した(脳室あたり2μl)(図9、パネルC)。注射の4週間後に動物を屠殺し、一方の半球をRNAフォーカス分析のために包埋し、もう一方の半球を、さらなる分析のために皮質、海馬および小脳に顕微解剖した(図9、パネルB)。ウイルスゲノムおよびVenus mRNAおよびタンパク質の定量化によって、同等の形質導入ならびにZFP-TF75027およびZFP-TF75114両方の発現を有する広範な体内分布が示された。
【0125】
皮質および海馬組織から全RNAを抽出し、iScript cDNA合成キット(BioRad)を使用してcDNAを作成した。ddPCRを実施して、センスおよびアンチセンスの拡大を含有する転写物の発現ならびにマウスTBPレベルに対して正規化された総C9 mRNAレベルを測定した。このアッセイに使用したプライマーは、以下であった:
総C9 mRNA:
フォワード:5’TGTGACAGTTGGAATGCAGTGA3’(配列番号72)
リバース:5’GCCACTTAAAGCAATCTCTGTCTTG3’(配列番号73)
プローブ:5’TCGACTCTTTGCCCACCGCCA3’(配列番号74)
センスの拡大されたプレmRNA:
フォワード:5’ ACTACTTGCTCTCACAGTACTCG 3’(配列番号69)
リバース:5’ TAGCGCGCGACTCCTGAGTTCC 3’(配列番号70)
プローブ:5’ AGGGAAACAACCGCAGCCTGTAGCAAGCTC 3’(配列番号71)
アンチセンスの拡大されたプレmRNA:
フォワード:5’AGTCGCTAGAGGCGAAAGC3’(配列番号81)
リバース:5’CGAGTGGGTGAGTGAGGAG3’(配列番号82)
プローブ:5’AAGAGGCGCGGGTAGAAGCGGGGGC3’(配列番号83)
【0126】
データは、ZFP-TF75027が、PBSが注射された対照に対して、C9-BAC動物の海馬および皮質において総C9 mRNA、センスおよびアンチセンスの拡大を含有する転写物のレベルを抑制したことを示す(図9、パネルD)。(トランスジェニックマウスはWTヒトC9orf72アレルを含有せず、マウス(moue)C9orf72遺伝子は、Gリピートを含有しないので、この動物モデルを用いた場合、選択的抑制は観察できなかった)。ZFP-TF75114を用いた場合、抑制は観察されなかった。
【0127】
さらに、蛍光in situハイブリダイゼーションを使用して、ZFP-TF注射後に海馬において見出されたセンスおよびアンチセンスRNA凝集体(フォーカス)のレベルを測定した(図9、パネルE)。手短には、10μmの切片をフルオロフォア標識されたプローブとハイブリダイズさせた:5’GGCCCCGGCCCCGGCCCC-Cy3(配列番号84)を使用して、センスRNAフォーカスを測定し、5’GGGGCCGGGGCCGGGGCC-Cy3(配列番号85)を使用して、アンチセンスRNAフォーカスを測定した。スタック画像は、共焦点顕微鏡(LSM880)で40×ズームで取得した。細胞の総数に対して正規化されたセンスおよびアンチセンスRNAフォーカスの数を、海馬のアンモン角(CA)領域から定量化した。ZFP-TF75027を注射された動物において、より小さいパーセンテージのアンチセンスRNAフォーカスが観察された。
【0128】
これらの結果は、C9orf72を標的化するZFP-TFは、インビボで疾患を引き起こすC9orf72アレルの発現を効率的に抑制できることおよびZFP-TFの効力の相違が観察され得ることを示す。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
図9-2】
【配列表】
2022529500000001.app
【国際調査報告】