(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(54)【発明の名称】眼の治療のための高密度リポタンパク質ナノ粒子およびRNAテンプレート化リポタンパク質粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7105 20060101AFI20220615BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220615BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220615BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20220615BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20220615BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20220615BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220615BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220615BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220615BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220615BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220615BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220615BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220615BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20220615BHJP
C07K 14/775 20060101ALN20220615BHJP
【FI】
A61K31/7105
A61K47/42
A61K47/24
A61K9/14
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/69
A61K47/28
A61K47/18
A61P27/02
A61P31/00
A61P29/00
A61P43/00 111
A61P3/10
A61K48/00
C12N15/113 Z ZNA
C07K14/775
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563014
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020029752
(87)【国際公開番号】W WO2020219833
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タックストン, シー. シャド
(72)【発明者】
【氏名】ラブカー, ロバート エム.
(72)【発明者】
【氏名】マクマホン, ケイリン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ペン, ハン
(72)【発明者】
【氏名】カルバート, アンドレア イー.
(72)【発明者】
【氏名】カプラン, ニハル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA29
4C076AA65
4C076AA67
4C076AA95
4C076BB24
4C076BB36
4C076CC29
4C076CC31
4C076CC41
4C076DD49
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE41
4C076FF31
4C076FF43
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA43
4C084MA58
4C084NA12
4C084NA13
4C084ZA33
4C084ZB11
4C084ZB32
4C084ZC02
4C084ZC35
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA43
4C086MA58
4C086NA12
4C086NA13
4C086ZA33
4C086ZB11
4C086ZB32
4C086ZC02
4C086ZC35
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA55
4H045CA40
4H045EA20
(57)【要約】
RNA複合体化ナノ粒子(例えば、RNAテンプレート化リポタンパク質粒子、miRNA-高密度リポタンパク質粒子)を使用して、眼の障害、傷害、および感染症を処置するためのナノ構造体、組成物および方法が、本明細書で開示される。これらのナノ構造体は、局所治療において企図される。本開示は、眼(例えば、前眼部(例えば、角膜、角膜輪部、および結膜))の疾患または傷害を処置するための組成物および方法を示す。これらの領域の処置は、有効になるまでに多数の障壁に直面する。例えば、眼は、種々の物理的障壁(例えば、涙膜、脂質層、水性層、粘液層、上皮層、および細胞層(例えば、基質など)、ならびに機械的障壁(例えば、瞬目反射)を含む。よって、本開示は、処置のための組成物を送達するためにこれらの問題を克服し得る新たな組成物を提示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造体であって、前記ナノ構造体は、
コア、アポリポタンパク質、前記コアに結合した脂質シェルを含む高密度リポタンパク質ナノ粒子(HDL-NP)を含み、ここで前記脂質シェルは、リン脂質および前記リン脂質と会合しているRNA分子を含み、ここで前記RNA分子は、マイクロRNA(miRNA)である、構造体。
【請求項2】
アニオン性ナノ構造体であって、前記ナノ構造体は、
カチオン性脂質-RNA複合体およびテンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)の凝集物を含み、ここで前記TLPは、不活性コア、前記不活性コアを取り囲む脂質シェル、および前記不活性コアに対して官能化されたアポリポタンパク質を有する合成HDLであるアニオン性TLPを含み、ここで前記RNA分子は、マイクロRNA(miRNA)であり、カチオン性脂質-核酸複合体およびTLPの前記凝集物は、前記アニオン性ナノ構造体凝集物を形成する、ナノ構造体。
【請求項3】
前記アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-Iである、請求項1~2のいずれか1項に記載のナノ構造体。
【請求項4】
コレステロールをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のナノ構造体。
【請求項5】
前記カチオン性脂質-核酸複合体は、前記カチオン性脂質と複合体化した1本鎖miRNAから構成される、請求項2~4のいずれか1項に記載のナノ構造体。
【請求項6】
前記miRNAは、miR-205またはmiR-146aである、請求項1~5のいずれか1項に記載のナノ構造体。
【請求項7】
カチオン性脂質-核酸複合体およびTLPの前記凝集物は、負のζ電位を有する、請求項2~6のいずれか1項に記載のナノ構造体。
【請求項8】
カチオン性脂質-RNAの前記凝集物は、カチオン性脂質-センス鎖RNAおよびカチオン性脂質-アンチセンス鎖RNAの混合物を含む、請求項5に記載のナノ構造体。
【請求項9】
前記RNAは、化学的に改変されていない、請求項1~8のいずれか1項に記載のナノ構造体。
【請求項10】
前記RNAは、化学的に改変されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のナノ構造体。
【請求項11】
前記リン脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](PDP-PE)から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載のナノ構造体。
【請求項12】
前記ナノ構造体は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)およびmiRNAの交互の層を含む、請求項2~8のいずれか1項に記載のナノ構造体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のナノ構造体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物。
【請求項14】
眼の障害を有する被験体を処置する方法であって、前記方法は、
請求項1~12のいずれか1項に記載のナノ構造体を、有効量において前記被験体に投与し、それによって、前記眼の障害を処置する工程、
を包含する方法。
【請求項15】
眼の傷害または眼の感染症を有する被験体を処置する方法であって、前記方法は、
請求項1~12のいずれか1項に記載のナノ構造体を、有効量において前記被験体に投与し、それによって、前記眼の傷害または感染症を処置する工程、
を包含する方法。
【請求項16】
前記眼の障害、眼の傷害または眼の感染症は、それぞれ、角膜障害、角膜傷害、または角膜感染症である、請求項14~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
眼の炎症を有する被験体を処置する方法であって、前記方法は、
請求項1~12のいずれか1項に記載のナノ構造体を、有効量において前記被験体に投与し、それによって、前記眼の炎症を処置する工程、
を包含する方法。
【請求項18】
被験体においてNF
KBシグナル伝達を阻害する方法であって、前記方法は、
請求項1~2のいずれか1項に記載のナノ構造体を、有効量において前記被験体に投与する工程であって、ここで前記RNAはmiRNAであり、ここで前記miRNAはmiR-146aである工程、
を包含する方法。
【請求項19】
前記眼の障害は、糖尿病性角膜症である、請求項14~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記投与は局所である、請求項14~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体は、哺乳動物である、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体はヒトである、請求項8~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2019年4月26日出願の米国仮特許出願第62/839,579号の出願日の利益を主張する。上記で言及した出願の内容は、その全体において本明細書に参考として援用される。
【0002】
政府支援
本発明は、R01 EY019463およびR01 CA167041(ともに、National Institutes of Health(NIH)によって付与)の下で政府支援を得て行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
眼の障害(眼の疾患)、感染症、および傷害は、処置が困難であり、処置されずに放置されれば、患者に破壊的な影響を有し得る(例えば、取り返しのつかない損傷、失明など)。例えば、糖尿病角膜は、法的失明の原因第1位である。糖尿病を有する患者は、増殖性糖尿病性網膜症(PDR)を発生させ得、PDRを有する人々は、しばしば5年以内に彼らの視力を失う(1型および2型でそれぞれ、43%および60%)。これらの患者のうち、70%までが、角膜に問題がある。このような問題は、例えば、増大した角膜厚;上皮欠損、脆弱性、およびびらん;潰瘍;浮腫;表層性点在角膜症;内皮の変化;ニューロパチー;ならびに創傷修復の遅延および/または不完全として現れ得る。これらの問題をさらに複雑にさせるものは、多くの眼の疾患は、早期に症状がないことであり、このことは、それら(例えば、眼の障害)が一旦診断されれば、非常に効果的な処置の必要性を増大させる。眼の障害、感染症、および傷害に関する従来の処置が頻繁に効果的でなかったことに起因して、改善された治療の必要性が増大しつつある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の要旨
本開示は、眼(例えば、前眼部(例えば、角膜、角膜輪部、および結膜))の疾患または傷害を処置するための組成物および方法を示す。これらの領域の処置は、有効になるまでに多数の障壁に直面する。例えば、眼は、種々の物理的障壁(例えば、涙膜、脂質層、水性層、粘液層、上皮層、および細胞層(例えば、基質など)、ならびに機械的障壁(例えば、瞬目反射)を含む。よって、本開示は、処置のための組成物を送達するためにこれらの問題を克服し得る新たな組成物を提示する。
【0005】
本開示は、少なくとも部分的に、前眼部(例えば、角膜、角膜輪部、および結膜)の疾患または傷害を処置する(例えば、局所的に)ために、ナノ構造体(例えば、高密度リポタンパク質(HDL-NP)またはテンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)に結合したRNA(例えば、miRNA)を使用する組成物または方法に基づく。
【0006】
したがって、本開示の1つの局面は、コア、アポリポタンパク質、上記コアに結合した脂質シェルを含む高密度リポタンパク質ナノ粒子(HDL-NP)を含むナノ構造体を提供し、ここで上記脂質シェルは、リン脂質および上記リン脂質と会合しているRNA分子を含む。本開示の別の局面は、コア、アポリポタンパク質、上記コアに結合した脂質シェルを含むテンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)を含むナノ構造体を提供し、ここで上記脂質シェルは、リン脂質および上記リン脂質と会合しているRNA分子を含む。いくつかの実施形態において、上記ナノ構造体におけるアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-I(本明細書でapoA-I、A-1、またはAIともいわれ得る)である。いくつかの実施形態において、上記ナノ構造体は、コレステロールをさらに含む。
【0007】
本開示の別の局面は、眼の障害を有する被験体を処置する方法であって、上記方法は、本明細書で記載されるとおりのナノ構造体のうちの少なくとも1つを、有効量において上記被験体に投与し、それによって、上記眼の障害を処置する工程を包含する方法を提供する。
【0008】
本開示の別の局面は、眼の傷害または眼の感染症を有する被験体を処置する方法であって、上記方法は、本明細書で記載されるとおりのナノ構造体のうちの少なくとも1つを、有効量において上記被験体に投与し、それによって、上記眼の傷害または感染症を処置する工程を包含する方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記眼の障害、眼の傷害、または眼の感染症は、それぞれ、角膜障害、角膜傷害、または角膜感染症である。いくつかの実施形態において、上記眼の障害は、糖尿病性角膜症である。いくつかの実施形態において、上記ナノ構造体の投与は、局所投与によるものである。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態において、上記RNA分子は、マイクロRNA(miRNA)である。いくつかの実施形態において、上記miRNAは、miR-205またはmiR-146aである。
【0010】
アニオン性ナノ構造体が本開示の他の局面において提供される。上記ナノ構造体は、カチオン性脂質-RNA複合体およびテンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)の凝集物を含み、ここで上記TLPは、不活性コア、上記不活性コアを取り囲む脂質シェル、および上記不活性コアに対して官能化されたアポリポタンパク質を有する合成HDLであるアニオン性TLPを含み、ここで上記RNA分子は、マイクロRNA(miRNA)であり、カチオン性脂質-核酸複合体およびTLPの上記凝集物は、上記アニオン性ナノ構造体凝集物を形成する。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記カチオン性脂質-核酸複合体は、上記カチオン性脂質と複合体化した1本鎖miRNAから構成される。いくつかの実施形態において、上記miRNAは、miR-205またはmiR-146aである。いくつかの実施形態において、カチオン性脂質-核酸複合体およびTLPの上記凝集物は、負のζ電位を有する。いくつかの実施形態において、カチオン性脂質-RNAの上記凝集物は、カチオン性脂質-センス鎖RNAおよびカチオン性脂質-アンチセンス鎖RNAの混合物を含む。いくつかの実施形態において、上記RNAは、化学的に改変されていない。いくつかの実施形態において、上記RNAは、化学的に改変されている。いくつかの実施形態において、上記リン脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](PDP-PE)から選択される。いくつかの実施形態において、上記ナノ構造体は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)およびmiRNAの交互の層を含む。
【0012】
本開示の別の局面は、本明細書で記載されるとおりのナノ構造体のうちのいずれか1つ、または本明細書で開示されるナノ構造体の組み合わせを含む薬学的組成物を提供する。
【0013】
いくつかの局面において、本開示は、眼の炎症を有する被験体を処置する方法であって、上記方法は、本開示のナノ構造体のいずれか1つのナノ構造体を、有効量において上記被験体に投与し、それによって、上記眼の炎症を処置する工程、を包含する方法に関する。
【0014】
いくつかの局面において、本開示は、被験体においてNFKBシグナル伝達を阻害する方法であって、上記方法は、本開示のナノ構造体のいずれか1つのナノ構造体を、有効量において上記被験体に投与する工程であって、ここで上記RNAはmiRNAであり、ここで上記miRNAはmiR-146aである工程、を包含する方法に関する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本開示のナノ構造体は、被験体を処置するために使用される。いくつかの実施形態において、上記被験体は、哺乳動物である。いくつかの実施形態において、上記被験体は、ヒトである。
【0016】
これらおよび他の局面および実施形態は、本明細書でより詳細に記載される。本開示のいくつかの例示的実施形態の説明は、例証目的で提供されるに過ぎず、限定であることを意味しない。さらなる組成物および方法がまた、本開示によって包含される。
【0017】
上記の要旨は、本明細書で開示される技術の実施形態、利点、特徴、および使用のうちのいくつかを、非限定的な様式で例証することが意味される。本明細書で開示される技術の他の実施形態、利点、特徴および使用は、詳細な説明、図面、実施例、および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本開示のある特定の局面をさらに示すために含まれ、これら局面は、本明細書で示される具体的実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面のうちの1またはこれより多くを参照することによってよりよく理解され得る。明瞭にする目的で、全ての構成要素が、全ての図面において表示されないこともある。図面で例証されるデータが本開示の局面を決して限定しないことは、理解されるべきである。図面において:
【0019】
【
図1-1】
図1A~1Bは、合成球状HDL-NP(
図1A)、ならびに天然HDLおよび合成HDL-NPの特性の比較(
図1B)を示す。
【
図1-2】
図1A~1Bは、合成球状HDL-NP(
図1A)、ならびに天然HDLおよび合成HDL-NPの特性の比較(
図1B)を示す。
【0020】
【
図2-1】
図2A~2Cは、テンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)合成(
図2A)ならびにCL:カルジオリピン(
図2B)および18:2 PG(
図2C)の構造を示す。
【
図2-2】
図2A~2Cは、テンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)合成(
図2A)ならびにCL:カルジオリピン(
図2B)および18:2 PG(
図2C)の構造を示す。
【0021】
【
図3】
図3A~3Bは、TLP輸送の手段としてのスカベンジャーレセプターB1(SR-B1)の2つの異なる模式図を示す(
図3A~3B)。
【0022】
【
図4-1】
図4A~4Eは、SR-B1が、角膜上皮細胞上に発現されることを示す。ヒト角膜(
図4A)、マウス角膜(
図4B)、およびマウス角膜輪部(
図4C)の免疫蛍光(IF)染色は、上皮細胞および基質におけるSR-B1発現(矢印)を示す。ヒト角膜上皮細胞(HCEC)は、ウェスタンブロットによって認められるようにSR-B1タンパク質を発現する(
図4D)。
【
図4-2】
図4A~4Eは、SR-B1が、角膜上皮細胞上に発現されることを示す。ヒト角膜(
図4A)、マウス角膜(
図4B)、およびマウス角膜輪部(
図4C)の免疫蛍光(IF)染色は、上皮細胞および基質におけるSR-B1発現(矢印)を示す。ヒト角膜上皮細胞(HCEC)は、ウェスタンブロットによって認められるようにSR-B1タンパク質を発現する(
図4D)。
【0023】
【
図5】
図5は、ヒト角膜上皮細胞(HCEC)およびその細胞の細胞質中に蓄積している高密度リポタンパク質ナノ粒子(HDL-NP)の画像を含む。
【0024】
【
図6-1】
図6A~6Fは、Akt鎮静創傷治癒経路の模式図(
図6A)、
図2Aの方法によるmiR-205 AI NP合成の吸光度の結果(
図6B)、SHIP2タンパク質発現が、ウェスタンブロット分析(
図6C)によって認められ、デンシトメトリー(
図6D)によって定量されるようにmiR-205-AI粒子で処置した場合に、ヒト角膜上皮細胞において減少されること、ホスホ-Aktタンパク質発現が、ウェスタンブロット分析によって認められるようにmiR-205-AI粒子で処置される場合に、ヒト角膜上皮細胞において増大されること(
図6E)、および処置後にmiR-205 HDL-NPがSHIP2を減少させ、p-Aktを増大させた(
図6F)ことを示す。
【0025】
【
図7】
図7は、miR-205-HDL-NPが擦過傷を迅速にシールすることを示す。
【0026】
【
図8】
図8は、miR-205-HDL-NPが、コントロール(ナノ粒子-NC-miR)と比較して、擦過傷を迅速にシールすることを示すプロットを含む。
【0027】
【
図9】
図9は、miR-146がNF-κB活性を低減することを示すプロットを含む。
【0028】
【
図10】
図10は、アポトーム光学切片を含む。1μM Cy-3コントロールRNA-TLPを、30分ごとに、合計4時間にわたってマウスの眼に適用した。TLPの最初の適用の24時間後に、マウスを屠殺し、眼を摘出し、OCTにおいて固定し、切片化した。スライドを、Cy3(RNA-TLP-赤)、ケラチン12(上皮-緑)、およびDAPI(核-青)に関して染色した。
【0029】
【
図11-1】
図11A~Gは、無傷の創傷のない角膜に対するHDL-NP(
図11A)およびCy3-HDL-NP(
図11B)処置の蛍光顕微鏡検査法の切片を含み;Cy3標識AIが、健常マウスの眼に由来する角膜上皮基底細胞(B)、翼細胞(W)、表層細胞(S)およびケラチノサイト(K)において検出されており(
図11C:非処置;
図11D:Cy3-Al NP);Cy3標識AIが、創傷したマウスの眼に由来する角膜上皮基底細胞(B)、翼細胞(W)、表層細胞(S)およびケラチノサイト(K)において検出されており(
図11E:非処置;
図11F:Cy3-Al NP);Cy3標識AIが、創傷後に眼の結膜において検出されている(
図11G)。
【0030】
【
図12-1】
図12A~Dは、HDL-NPおよびmiR-205-HDL-NPがインビボで生物学的活性を示すこと(
図12A~12D)を示すダイアグラムを含む。
図12Aは、24時間にわって撮影したこのような画像を含む。
図12Bは、経時的な創傷閉鎖の%を示すプロットを含む。食事誘導性肥満(DIO)に麻酔をかけ、角膜上皮においてダイアモンド刃を使用して1mm創傷を作製し、マウスは、30分ごとに2時間にわたって、miR-205-AIまたは混合miR-AIの局所適用を受容した。マウスを、創傷の24時間後までモニターした(
図12C~12D)。miR-205-AIおよびNC-miR-AIはともに、蛍光色素で認められるように、PBSと比較して、DIOマウスにおいて角膜創傷治癒を増強する(
図12C); DIOマウスは、通常食事(ND)のマウスと比較して、角膜創傷治癒を抑制し、粒子にコンジュゲートしたNC-miRまたはmiR-205ありまたはなしのAI NPは、DIOマウスにおいて同程度まで創傷治癒を減少させる(
図12D)。
【0031】
【
図13-1】
図13A~13Cは、miR-205-TLPがp-Aktを誘導し、SHIP2タンパク質発現を低減させ、Al NPが角膜上皮細胞においてp-Akt、pEphA2、およびDSG3を増大させること、ならびにAktシグナル伝達が、増強された創傷閉鎖に必要とされることを示す。hTCEpi、hTERT不死化ヒト角膜上皮細胞を、アンチセンス鎖+センス鎖(2本鎖)もしくは2倍量のmiR-205のアンチセンス鎖(1本鎖)のいずれかをコンジュゲートしたRNA-TLP、または陰性コントロールで処理した。レーンは、左から非処理(NT)細胞、陰性前駆体トランスフェクションコントロール、およびmiR-205トランスフェクションコントロールを示す(
図13A)。AI NPは、PEG-NPと比較して、ヒト角膜上皮細胞においてホスホ-Akt、ホスホ-EphA2、およびDSG3を増大させる(
図13B)。AI NPで処理したヒト角膜上皮細胞は、PEG NPと比較して擦過傷閉鎖を増強したが、これはPI3K/AktインヒビターLY294002によって抑止される(
図13C)。
【0032】
【
図14-1】
図14A~14Eは、RNA-TLPが創傷された角膜上皮に透過すること;Al NPが角膜上皮擦過傷の先端においてF-アクチンを増大させること;ならびにエフリン-A1の阻害およびSrcの活性化がAl NP創傷閉鎖に必要とされることを示す。約1mm直径の角膜剥離創傷を、マウスの角膜に作製した。1μM Cy3-コントロール-RNA-TLPを、30分ごとに4時間にわたって眼に局所適用した。創傷の24時間後に、眼を摘出し、OCTにおいて固定し、切片化した。スライドを、Cy3(RNA-TLP-赤)、ケラチン12(上皮-緑)、およびDAPI(核-青)に関して染色した(
図14A)。AI NPで処理したヒト角膜上皮細胞は、擦過傷の先端においてF-アクチンを増大させた(
図14B:PEG-NP;
図14C:HDL-NP)。AI NPで処理したヒト角膜上皮細胞は、PEG NPと比較して、擦過傷閉鎖を増強したが、これはエフリン-A1の過剰発現(
図14D)またはSrcの阻害剤(pp2)(
図14E)によって抑止される。
【0033】
【
図15】
図15は、RNA-TLPが創傷した皮膚に透過することを示す。穿刺創を、マウスの側腹部に作製した。1μM Cy3-コントロール-RNA-TLPを、30分ごとに4時間にわたって、創傷に局所適用した。創傷の24時間後に、皮膚を切除し、OCT(最適な切断温度化合物)において固定し、切片化した。スライドを、Cy3(RNA-TLP-赤)、ケラチン15(基底ケラチノサイト-緑)、ケラチン10(表皮ケラチノサイト-白)およびDAPI(核-青)に関して染色した。
【0034】
【
図16-1】
図16A~16Gは、miR-146aがNF
KBシグナル伝達経路に対して作用すること(
図16A);miR-146a-TLPがLPS誘導性NF-κBシグナル伝達を阻害すること(
図16B~16C)を示し、J774-Dualマウスマクロファージ細胞を、0.5ng/mL LPS(O111:B4)で1時間前処理し、続いて、40nM miR-146a-TLP、Ctrl-TLP、またはTLP単独で、またはリポフェクタミン送達miR-146aもしくはコントロールmiRNAで24時間処理した。QUANTI-Blueアッセイ(InVivoGen)を使用して、NF-κB SEAP(分泌型胚性アルカリホスファターゼ)活性を決定した;PBSまたはPEG NPで処置した眼は、傷害7日後に角膜の炎症の除去を有しなかったが、AI NPは、眼の炎症を有意に低減した(
図16D~16E); 傷害後にPEG NPもしくはAI NPで7日間処置した眼の角膜のH&E染色は、PEG NP処置の眼と比較して、AI NP処置の眼において炎症の増強された除去を示す(
図16F);傷害3日後に、AI NPで処置した角膜は、炎症性サイトカイン(IL1a、IL1b、IL6、iNOS、MMP9、およびCCL2)の有意な低減を有した(
図16G)。
【0035】
【
図17】
図17は、miR-205-TLPのUV-可視光スペクトルを含む。miR-205-TLPおよびNC-TLPは、520nm(AuNP)および260nmにおいてピークを有する、予測されるUV-可視光スペクトルを有することを含む。これは、TLP上にRNAが存在することを示す。
【0036】
【
図18】
図18は、miR-146a-TLP、miR-146a-TLPおよびCtrl-TLPのUV-可視光スペクトルが、520nm(AuNP)および260nm(RNA)においてピークを有するUV-可視光スペクトルを有することを含む。これは、TLP上にRNAが存在することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本開示は、ナノ構造体(例えば、高密度リポタンパク質(HDL-NP)またはテンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)に結合したRNA(例えば、マイクロRNA(miRNA))を使用して、前眼部(例えば、角膜、角膜輪部、および結膜)の疾患または傷害を(例えば、局所的に)処置する組成物または方法を提供する。いくつかの実施形態において、本開示のナノ構造体は、眼の疾患の予防的処置のために使用される。
【0038】
点眼剤を通じて眼に治療剤を送達することは、角膜に送達された薬物の低量をもたらす眼の障壁(例えば、涙膜および細胞層)、眼からの迅速な除去、およびターンオーバーを含む多くの難題に直面する。前部の表面上皮は、涙膜とともに、外部環境に対して効率的な障壁を提供し、角膜の透明性および剛性の維持に寄与する。このような障壁が、眼の健康状態に必須である一方で、逆説的には、それは、種々の疾患状態(例えば、炎症および感染症)と戦うために必要な薬物の送達を妨げ得る。送達は、瞬目反射(これは、眼の表面からデブリおよび微生物を除去することに加えて、局所適用される薬物も除去し得る)によってさらに悪化される。マイクロRNA(miRNA)は、RNA干渉(RNAi)サイレンシング機構の一部である短い(長さ約22ヌクレオチド)「非コード」または「非メッセンジャー」RNAである。miRNAは、mRNA標的化および翻訳抑制を通じて遺伝子発現を制御することによって、生物学的ホメオスタシスを調節する。よって、それらは、正常および疾患両方の状況において、広く種々の生物学的プロセスの調節に寄与する。結果的に、miRNAは、潜在的治療剤として非常に期待できる。この目的を達成するための大きなハードルは、治療用miRNAを効果的に製剤化しかつ安定な形態で標的細胞の細胞質へと送達することであった。以前のmiRNA関連の眼の処置は、これらの難題に起因して、局所的に送達されていなかった。
【0039】
高密度リポタンパク質(HDL)は、天然のインビボRNA送達ビヒクルである。天然の高密度リポタンパク質(HDL)は、ヒト血清から単離され、miRNAを含むことが見出され、これらHDLに結合したmiRNAは、裸のmiRNAと比較して、改善された安定性を有することが見出された。さらに、天然HDLは、結合したmiRNAを、HDLの高親和性スカベンジャーレセプタータイプB-1(SCARB1)レセプターを発現する細胞に送達する。SCARB1は、角膜上皮細胞上に発現される。
【0040】
ここで、RNA(例えば、miRNA)を眼に、好ましくは、角膜に局所的に送達し得る球状の機能的なHDL様ナノ粒子(HDL-NP)の使用が、糖尿病マウス角膜における創傷治癒に対して正の効果を有することが見出された。上記HDL-NPは、内因性miRNA(これは、疾患状態に伴って異なり得る)を送達するのみならず、miRNAをレシピエント細胞に、機能的遺伝子調節結果を伴って(例えば、発現に影響を及ぼす)送達することもできる。
【0041】
HDLの特徴にヒントを得て、カチオン性脂質との製剤化の後、RNA二重鎖対の1本鎖および1本鎖相補体で自己アセンブリするテンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)を、開発した。その得られたRNAテンプレート化リポタンパク質粒子(RNA-TLP)は、アニオン性であり、RNAアセンブリおよび機能に関して調整可能である。データから、角膜上皮細胞株において、miRNA-205(miR-205)-TLPがmiR-205を活発に標的化し、ダウンレギュレートし、SHIP-2を標的化し、リン酸化Akt(p-Akt)を増大させることが示される。インビボでは、Cy3発蛍光団で改変された非標的化RNA配列とコンジュゲートしたTLPの眼への局所投与は、角膜上皮における、特に、基底細胞およびケラチノサイトにおけるCy3標識RNAの透過を、縁上皮および基質における取り込みとともに示す。これは、インビトロにおいて標的遺伝子発現を強力に調節し、インビボで角膜上皮に透過する、活発に標的化されたアニオン性送達ビヒクルにRNAの1本鎖相補体を自己アセンブリすることによる、眼への局所的RNA送達のモジュール式アプローチである。
【0042】
本明細書で企図されるRNAテンプレート化リポタンパク質粒子(RNA-TLP)は、生物にヒントを得た合成のリポタンパク質およびカチオン性脂質-RNAアセンブリの組み合わせである。それらは、制御された自己アセンブリおよびRNA-TLPの機能調整可能性という利点を有する。さらに、RNA-TLP(HDL-NPのような)のモジュール式の性質は、治療用RNAカーゴの容易な交換、活発な細胞標的化、強力な標的遺伝子調節、および眼の投与後のインビボ有効性を可能にする。
【0043】
いくつかの実施形態において、RNA-TLPを合成するプロセスは、アポリポタンパク質A-I(apoA-I)、2種のリン脂質の混合物、およびコレステロールでの、固体粒子(例えば、5ナノメートル(nm)直径の金ナノ粒子(Au NP))テンプレートの表面官能化を含む。外側のリン脂質およびコレステロールは、核酸と有利に会合する。合成プロセスの間に、TLPおよびRNAの負電荷に起因してRNAと複合体化することが公知のカチオン性脂質(例えば、DOTAP)が、水またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中のRNAの混合物に添加される。PBS中で例えば、DOTAP-RNAと混合したTLPは、不可逆的に凝集し、沈殿する。
【0044】
RNAの眼への送達のために開発された技術はほぼ全て、カチオン性脂質またはカチオン性ポリマーに基づく。これらのビヒクルのカチオン性の性質および合成の特性に最も頻繁に起因して、それらは、高度に毒性である可能性があり、典型的には疾患特異的部位に標的化されない。本発明の組成物は、眼のRNA治療に対するこれらの障壁のうちの多くを克服する。なぜなら上記ナノ構造体は、それらがアニオン性であり、細胞の表面に位置する特異的レセプターを通じて固有に標的化されるように、製剤化されるからである。
【0045】
多くのRNA治療は、特異的疾患標的の周辺に設計されるが、本明細書で開示されるナノ構造体は高度にモジュール式であるため、目的の任意の1つまたは多数の標的を組み込むように想定して目的に合わせて作られ得る。
【0046】
既存の技術は、容易に拡大されず、インビボ毒性をもたらし得る未知の生物学的組成を有する。対照的に、本明細書で開示されるナノ構造体は、インビボで固有の毒性を有さないことが示されており、天然のRNA送達ビヒクルを模倣して、ビヒクル関連の毒性を回避するように製剤化される。
【0047】
ナノ構造体
いくつかの局面において、本開示は、ナノ構造体に関し、上記ナノ構造体は、コア、アポリポタンパク質、上記コアに結合したシェルを含む高密度リポタンパク質ナノ粒子(HDL-NP)を含み、上記脂質シェルは、リン脂質および前記リン脂質と会合しているRNA分子を含む。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「ナノ構造体」とは、高密度リポタンパク質様ナノ粒子(HDL-NP)またはテンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)であって、核酸と組み合わされ得るものを指す。本開示のナノ構造体は、RNA分子(例えば、miRNA)と複合体化されると企図される。本明細書で使用される場合、用語「HDL-NP」および「HDL様ナノ粒子」は、交換可能に使用される。高密度リポタンパク質(HDL)は、コレステロールを運び、特定の細胞タイプを標的化し、そして多くの疾患プロセスにおいて重要な役割を果たす天然の循環するナノ粒子である。結果として、合成HDL摸倣物は、有望な治療剤になった。しかし、今日までのアプローチは、最も存在量が豊富なHDL種であり、特定の臨床上重要である球状HDLの重要な特徴を再現することができなかった。本明細書で使用される場合、用語「会合した」は、脂質と複合体化しているナノ構造体における脂質を指すために使用される。本明細書で使用される場合、用語「複合体化される」および「結合した」とは、交換可能に使用される。
【0049】
いくつかの局面において、本開示は、テンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)から構成されるナノ構造体に関連し、上記テンプレート化リポタンパク質粒子は、コア、アポリポタンパク質、上記コアに結合したシェルを含み、ここで上記TLPは、カチオン性脂質を通じてRNA分子に複合体化される。TLPは、いくつかの実施形態において、RNAとともにアニオン性ナノ構造体凝集物を形成する。上記ナノ構造体は、カチオン性脂質-核酸複合体およびテンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)の凝集物を含み、ここで上記TLPは、不活性コア、上記不活性コアを取り囲む脂質シェル、および上記不活性コアに対して官能化されたアポリポタンパク質を有する合成HDLであるアニオン性TLPを含み;上記カチオン性脂質-核酸複合体は、カチオン性脂質と複合体化した1本鎖または2本鎖RNAから構成され、カチオン性脂質-核酸複合体およびTLPの上記凝集物は、負のζ電位を有し、アニオン性ナノ構造体凝集物を形成する。いくつかの実施形態において、二重鎖RNAの各鎖は、カチオン性脂質に対して別個にコンジュゲートされる。いくつかの実施形態において、上記RNAは、化学的に改変されていない。他の実施形態において、それは化学的に改変されている。いくつかの実施形態において、上記不活性コアは、金属(例えば、金)である。いくつかの実施形態において、上記リン脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](PDP-PE)である。いくつかの実施形態において、上記ナノ構造体は、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)およびRNAの交互の層を含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記ナノ構造体は、カチオン性脂質を含む。上記カチオン性脂質は、以下であり得る:例えば、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(DODMA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.C1)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.C1)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、または3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)もしくはそのアナログ、(3aR,5s,6aS)-N,N-ジメチル-2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエニル)テトラヒドロ-3aH-シクロペンタ[d][1,3]ジオキソール-5-アミン、(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート、またはこれらの混合物。
【0051】
上記で具体的に記載されるものに加えて、およそ生理学的pHにおいて正味の正電荷を有する他のカチオン性脂質も、脂質ナノ粒子中に含まれ得る。このようなカチオン性脂質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない: N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」); N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル-N,N-N-トリエチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」); N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」); N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」); 1,2-ジオレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(「DOTAP.Cl」); 3β-(N--(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(「DC-Chol」)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチル-アンモニウムトリフルオロアセテート(「DOSPA」)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)、1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(「DOPE」)、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(「DODAP」)、N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)、および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DOPC」)。
【0052】
本開示のいくつかの局面において、上記ナノ構造体は、カチオン性脂質(例えば、DOTAP)を含み、核酸(例えば、RNA)と、約1:1の、約2:1の、約3:1の、約4:1の、約5:1の、約6:1の、約7:1の、約8:1の、約9:1の、約10:1の、約11:1の、約12:1の、約13:1の、約14:1の、約15:1の、約16:1の、約17:1の、約18:1の、約19:1の、約20:1の、約21:1の、約22:1の、約23:1の、約24:1の、約25:1の、約26:1の、約27:1の、約28:1の、約29:1の、約30:1の、約31:1の、約32:1の、約33:1の、約34:1の、約35:1の、約36:1の、約37:1の、約38:1の、約39:1の、約40:1の、約41:1の、約42:1の、約43:1の、約44:1の、約45:1の、約46:1の、約47:1の、約48:1の、約49:1の、約50:1の、約60:1の、約70:1の、約80:1の、約90:1の、または約100:1のモル比において混合される。いくつかの実施形態において、上記カチオン性脂質(例えば、DOTAP)は、核酸(例えば、RNA)と、10:1、20:1、30:1または40:1のモル比で混合される。
【0053】
「両親媒性脂質」とは、脂質物質の疎水性部分が、疎水性相へと配向する一方で、親水性部分が水性相に向かって配向する任意の適切な物質を指す。このような化合物としては、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なリン脂質としては、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレイルホスファチジルコリン、モホホスホリルリピドA(MPLA)、またはグリコピラノシドリピドA(GLA)が挙げられる。
【0054】
いくつかの実施形態において、本開示のナノ構造体は、アポリポタンパク質を含む。アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A(例えば、apo A-I、apo A-II、apo A-IV、およびapo A-V)、アポリポタンパク質B(例えば、apo B48およびapo B100)、アポリポタンパク質C(例えば、apo C-I、apo C-II、apo C-III、およびapo C-IV)、ならびにアポリポタンパク質D、E、およびHであり得る。さらに、本明細書で記載される構造体は、アポリポタンパク質(例えば、上記で記載されるもの)の1またはこれより多くのペプチドアナログを含み得る。当然のことながら、他のタンパク質(例えば、非アポリポタンパク質)がまた、本明細書で記載されるナノ構造体の中に含められ得る。いくつかの実施形態において、本開示のナノ構造体は、HDLの主要なタンパク質成分であるアポリポタンパク質A-I(apoA-I)を含む。本開示のナノ構造体は、SCARB1に対して高親和性で結合し得る。本開示のナノ構造体は、低減した毒性を有する。いくつかの実施形態において、上記アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-Iである。
【0055】
本開示のナノ構造体は、疾患、感染症、および傷害の処置のために使用される。本明細書で企図される障害、感染症および傷害としては、角膜傷害、ドライアイ、角膜炎、結膜炎、白内障、緑内障、眼の炎症、ぶどう膜炎、および虹彩炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
上記構造体に結合したオリゴヌクレオチドの表面密度はまた、制御され得る。オリゴヌクレオチド(例えば、DNA、RNA、またはsiRNA)は、静電吸着または化学吸着技術(例えば、Au-SHコンジュゲート化学)のような技術を使用して、ナノ構造体コアに結合され得る。
【0057】
高密度リポタンパク質ナノ粒子(HDL NP)コア
上記ナノ構造体のコアは、中空またはナノ構造体コアであり得る。上記ナノ構造体のコアは、ナノ構造体コアであろうが中空コアであろうが、任意の適切な形状および/またはサイズを有し得る。例えば、上記コアは、実質的に球状、非球状、長円形、ロッド形、ピラミッド状、立方体様、円盤形、ワイヤ様、または不規則な形状であり得る。いくつかの実施形態において、上記コアは、実質的に球状の形状を含む。いくつかの実施形態において、上記コアは、実質的に非球状の形状を含む。いくつかの実施形態において、上記コアは、実質的に長円形を含む。いくつかの実施形態において、上記コアは、実質的にロッド様の形状を含む。いくつかの実施形態において、上記コアは、実質的にピラミッド状の形状を含む。いくつかの実施形態において、上記コアは、実質的に立方体様の形状を含む。いくつかの実施形態において、上記コアは、実質的に円板様の形状を含む。いくつかの実施形態において、上記コアは、実質的にワイヤ様の形状を含む。いくつかの実施形態において、上記コアは、実質的に不規則な形状を含む。コア(例えば、ナノ構造体コアまたは中空コア)は、例えば、約500nm未満もしくはこれに等しい、約250nm未満もしくはこれに等しい、約100nm未満もしくはこれに等しい、約75nm未満もしくはこれに等しい、約50nm未満もしくはこれに等しい、約40nm未満もしくはこれに等しい、約35nm未満もしくはこれに等しい、約30nm未満もしくはこれに等しい、約25nm未満もしくはこれに等しい、約20nm未満もしくはこれに等しい、約15nm未満もしくはこれに等しい、または約5nm未満もしくはこれに等しい、最大断面寸法(または、ときおり、最小断面寸法)を有し得る。いくつかの場合には、上記コアは、約1:1より大きい、3:1より大きい、または5:1より大きいアスペクト比を有する。本明細書で使用される場合、「アスペクト比」とは、長さおよび幅が互いに対して垂直で測定され、その長さは、最長の直線的に測定される寸法をいう場合の長さ対幅の比に言及する。
【0058】
上記コアは、無機材料から形成され得る。上記無機材料としては、例えば、金属(例えば、Ag、Au、Pt、Fe、Cr、Co、Ni、Cu、Zn、および他の遷移金属)、半導体(例えば、ケイ素、ケイ素化合物および合金、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、ヒ化インジウム、およびリン化インジウム)、または絶縁物質(例えば、ケイ素酸化物のようなセラミック)が挙げられ得る。いくつかの実施形態において、上記コアは、金(Au)である。上記無機材料は、上記コアに、任意の適切な量、例えば、少なくとも1重量%(すなわち、1 wt%)、5 wt%、10 wt%、25 wt%、50 wt%、75 wt%、90 wt%、または99 wt%で存在し得る。1つの実施形態において、上記コアは、100 wt% 無機材料から形成される。上記ナノ構造体コアは、いくつかの場合に、量子ドット、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ、またはカーボンナノロッドの形態であり得る。いくつかの場合に、上記ナノ構造体コアは、生物学的起源でない材料を含むか、またはその材料から形成される。いくつかの実施形態において、ナノ構造体は、合成ポリマーおよび/もしくは天然ポリマーのような1またはこれより多くの有機材料を含むか、またはその材料から形成され得る。合成ポリマーの例としては、非分解性ポリマー(例えば、ポリメタクリレート)および分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびこれらのコポリマー)が挙げられる。天然ポリマーの例としては、ヒアルロン酸、キトサン、およびコラーゲンが挙げられる。ある特定の実施形態において、上記構造体、ナノ構造体またはナノ粒子コアは、ポリマー材料を含まない(例えば、それは非ポリマー性である)。
【0059】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される構造体、ナノ構造体、またはナノ粒子は、金コアに対して60~250倍モル過剰の脂質を有する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される構造体、ナノ構造体、またはナノ粒子は、上記コア(例えば、金コア)に対して、60~200倍、60~150倍、60~100倍、60~75倍、70~200倍、70~150倍、70~100倍、70~75倍、80~250倍、80~200倍、80~150倍、80~100倍、90~250倍、90~200倍、90~150倍、90~100倍、100~250倍、100~200倍、100~150倍、62.5倍、125倍、187.5倍、または250倍モル過剰の脂質を有する。
【0060】
高密度リポタンパク質ナノ粒子(HDL NP)シェル
HDL様ナノ粒子(HDLナノ粒子ともいわれる)は、それらの形状、サイズ、および表面組成(例えば、アポリポタンパク質A-I、リン脂質)において天然の球状HDLを模倣する。本明細書中のナノ構造体はまた、アポリポタンパク質(例えば、アポリポタンパク質A-I)のようなタンパク質を含み得る。本明細書中のナノ構造体はまた、コレステロール豊富であり得る(例えば、コレステロールを含む構造を有し得る)。上記シェルは、内側表面(内葉ともいわれる)および外側表面(外葉ともいわれる)を有し得、その結果、治療剤および/もしくはアポリポタンパク質は、上記外側シェルに吸着され得る、ならびに/または上記シェルの内側表面と外側表面との間に組み込まれ得る。
【0061】
上記方法において使用され得るナノ構造体の例は、本明細書で記載され、ここで記載される。構造体、ナノ構造体、またはナノ粒子(例えば、合成構造体または合成ナノ構造体)は、コアおよび上記コアを取り囲むシェルを有する。上記コアがナノ構造体である実施形態において、上記コアは、1またはこれより多くの構成要素が必要に応じて結合され得る表面を含む。例えば、いくつかの場合に、上記コアは、シェルによって取り囲まれたナノ構造体であり、上記シェルは、内側表面および外側表面を含む。上記シェルは、少なくとも部分的に、互いとおよび/または上記コアの表面と必要に応じて会合し得る、1またはこれより多くの構成要素(例えば、複数の脂質)から形成され得る。例えば、構成要素は、上記コアに共有結合的に結合されるか、物理吸着されるか、化学吸着されるか、あるいはイオン相互作用、疎水性相互作用および/もしくは親水性相互作用、静電相互作用、ファン・デル・ワールス相互作用、またはこれらの組み合わせを通じて上記コアに結合されることによって、上記コアと会合され得る。1つの特定の実施形態において、上記コアは、金ナノ構造体を含み、上記シェルは、金-チオール結合を通じて、上記コアに結合される。
【0062】
多くの治療剤が、代表的には、ナノ構造体のシェルと会合される。例えば、少なくとも20の治療剤が、1つの構造体あたりに会合され得る。概して少なくとも20~30、20~40、20~50、25~30、25~40、25~50、30~40、30~50、35~40、35~50、40~45、40~50、45~50、50~100、または30~100の治療剤が、1つの構造体あたりに会合され得る。
【0063】
必要に応じて、構成要素は、互いに架橋され得る。シェルの構成要素の架橋は、例えば、上記シェルへの、または上記シェルに対して外側の領域と上記シェルの内側の領域との間での、種の輸送の制御を可能にし得る。例えば、比較的多量の架橋は、ある特定の低分子が上記シェルの中にまたは上記シェルを通過することを可能にし得るが、大分子はそうでないのに対して、比較的少量の架橋または架橋無しでは、より大きな分子が上記シェルの中にまたは上記シェルを通過することが可能であり得る。さらに、上記シェルを形成する構成要素は、単層または多層の形態であり得、これはまた、分子の輸送または隔離を促進することも妨害することもできる。1つの例示的な実施形態において、上記シェルは、本明細書で記載されるように、コレステロールを隔離するおよび/または細胞からのコレステロール流出を制御するように配置された脂質二重層を含む。
【0064】
コアを取り囲むシェルが、上記コアを完全に取り囲む必要はないが、このような実施形態が、考えられ得かつ企図されることは、理解されるべきである。例えば、上記シェルは、コアの表面積のうちの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも99%を取り囲み得る。いくつかの場合に、上記シェルは、コアを実質的に取り囲む。他の場合には、上記シェルは、コアを完全に取り囲む。上記シェルの構成要素は、上記コアの表面にわたっていくつかの場合には均一に、および他の場合には不均一に分布され得る。例えば、上記シェルは、いくつかの場合には、いかなる材料をも含まない部分(例えば、孔)を含み得る。望ましい場合には、上記シェルは、ある特定の分子および構成要素の、上記シェルの中または外への透過および/または輸送を可能にするように設計され得るが、他の分子および構成要素の上記シェルの中または外への透過および/または輸送を防止し得る。ある特定の分子が上記シェルの中および/または横断して透過および/または輸送される能力は、例えば、上記シェルを形成する構成要素の充填密度ならびに上記シェルを形成する構成要素の化学的および物理的特性に依存し得る。上記シェルは、1つの材料層、またはいくつかの実施形態において複数の材料層を含み得る。
【0065】
さらに、構造体のシェルは、任意の適切な厚みを有し得る。例えば、シェルの厚みは、少なくとも10Å、少なくとも0.1nm、少なくとも1nm、少なくとも2nm、少なくとも5nm、少なくとも7nm、少なくとも10nm、少なくとも15nm、少なくとも20nm、少なくとも30nm、少なくとも50nm、少なくとも100nm、または少なくとも200nm(例えば、上記シェルの最も内側の表面から最も外側の表面まで)であり得る。いくつかの場合に、シェルの厚みは、200nm未満、100nm未満、50nm未満、30nm未満、20nm未満、15nm未満、10nm未満、7nm未満、5nm未満、3nm未満、2nm未満、または1nm未満(例えば、上記シェルの最も内側の表面から最も外側の表面まで)である。このような厚みは、本明細書で記載されるとおりの分子を隔離する前または隔離した後に決定され得る。
【0066】
本明細書で記載される構造体のシェルは、任意の適切な材料(例えば、疎水性材料、親水性材料、および/または両親媒性材料)を含み得る。上記シェルは、1またはこれより多くの無機材料(例えば、上記ナノ構造体コアに関して上記で列挙されるもの)を含み得るが、多くの実施形態において、上記シェルは、有機材料(例えば、脂質またはある特定のポリマー)を含む。上記ナノ粒子の結合親和性は、コレステロールを(例えば、脂質単層または二重層の流動性を調節するために)含めることによってさらに変更され得る。
【0067】
実施形態の1セットにおいて、本明細書で記載される構造体またはその一部(例えば、構造体のシェル)は、1またはこれより多くの天然または合成の脂質または脂質アナログ(すなわち、親油性分子)を含む。1またはこれより多くの脂質および/または脂質アナログは、単一層(例えば、脂質一重層)または多数層(例えば、二重層、脂質二重層)の構造を形成し得る。多数層が形成されるいくつかの場合には、上記天然または合成の脂質または脂質アナログは、(例えば、異なる層間で)互いに組み合わさる(interdigitate)。天然または合成の脂質または脂質アナログの非限定的な例としては、脂肪酸アシル、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質およびポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合から得られる)、ならびにステロール脂質およびプレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合から得られる)が挙げられる。
【0068】
いくつかの実施形態において、上記シェルは、ポリマーを含む。例えば、両親媒性ポリマーが使用され得る。上記ポリマーは、ジブロックコポリマー、トリブロックコポリマーなどであり得、例えば、ここで1つのブロックは疎水性ポリマーであり、別のブロックは親水性ポリマーである。例えば、上記ポリマーは、α-ヒドロキシ酸(例えば、乳酸)およびポリエチレングリコールのコポリマーであり得る。いくつかの場合に、シェルは、疎水性ポリマー(例えば、ある特定のアクリル、アミドおよびイミド、カーボネート、ジエン、エステル、エーテル、フルオロカーボン、オレフィン、スチレン、ビニルアセタール、ビニルおよびビニリデンクロリド、ビニルエステル、ビニルエーテルおよびケトン、ならびにビニルピリジンおよびビニルピロリドンポリマーを含み得るポリマー)を含む。他の場合には、シェルは、親水性ポリマー(例えば、ある特定のアクリル、アミン、エーテル、スチレン、ビニル酸、およびビニルアルコールを含むポリマー)を含む。上記ポリマーは、荷電されていても荷電されていなくてもよい。本明細書で注記されるように、上記シェルの特定の構成要素は、上記構造体の特定の機能性を付与するように選択され得る。
【0069】
RNA
天然のRNA送達ビヒクルの合成模倣物を開発することは、非常に関心がもたれている。特に、高密度リポタンパク質(HDL)は、これらがマイクロRNA(miRNA)のような内因性RNAと天然に結合し、1本鎖RNA(ssRNA)をヌクレアーゼ分解に対して安定化し、それらを標的細胞に送達して、遺伝子発現を調節することから、魅力的である。RNAのHDL媒介性送達は、スカベンジャーレセプタータイプB-1(本明細書でSCARB1および/またはSR-B1ともいわれる)の標的細胞発現に依存する。スカベンジャーレセプタークラスB、タイプI(SR-BI)は、眼の組織を含む、多くの細胞タイプおよび組織において見出される膜内在性タンパク質である。それは、成熟物(例えば、表面にアポリポタンパク質A-I(apoA-I)を有する成熟HDL)に関する高親和性レセプターである。SR-B1は、高密度リポタンパク質からのコレステリルエステルの取り込みを促進する。さらに、SR-B1は、脂溶性ビタミン取り込みにおいて極めて重要である。HDLに結合することに加えて、SR-B1は、広く種々のサイズのアニオン性分子およびリガンドに結合する。
【0070】
用語「マイクロRNA」および「miRNA」とは、本明細書で交換可能に使用され得るように、mRNAの安定性および翻訳の両方に影響を及ぼすことによって、多細胞生物における遺伝子発現の転写後調節に関与する、短い(例えば、長さが約20~約24ヌクレオチド)の非コードリボ核酸(RNA)を指す。miRNAは、タンパク質コードまたは非コードのいずれかであり得るキャップされ、ポリアデニル化された一次転写物(pri-miRNA)の一部として、RNAポリメラーゼIIによって転写される。その一次転写物は、DroshaリボヌクレアーゼIII酵素によって切断されて、長さがおよそ70ヌクレオチドのステム-ループ前駆miRNA(pre-miRNA)を生成し、これは、RNAi経路においてさらに処理される。この経路の一部として、上記pre-miRNAは、細胞質Dicerリボヌクレアーゼによって切断されて、成熟miRNAおよびアンチセンスmiRNAスター(miRNA*)生成物を生成する。上記成熟miRNAは、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)へと組み込まれ、これは、上記miRNAとの不完全な塩基対形成(すなわち、部分的相補性)を通じて標的mRNAを認識し、最も一般的には、標的mRNAの翻訳阻害または不安定化を生じる。この機序は、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)に対する上記miRNAの結合を通じて最も頻繁に認められ、これは、翻訳を(例えば、翻訳のためにリボソームにアクセスすることを遮断することによって)阻害するか、または転写物の分解を直接的に引き起こすかのいずれかによって、遺伝子発現を減少させ得る。その用語(すなわち、miRNA)は、対象のmiRNA(例えば、前駆体、一次および/または成熟miRNA)のうちの任意の形態に対して本明細書で使用され得る。いくつかの実施形態において、上記RNA分子はmiRNAである。いくつかの実施形態において、上記miRNAはmiR-146aである。いくつかの実施形態において、上記miR-146aは、配列番号1の配列を含む配列を有する。いくつかの実施形態において、上記miRNAはmiR-205である。いくつかの実施形態において、上記miR-205は、配列番号2の配列を含む配列を有する。いくつかの実施形態において、単一のナノ構造体は、これに複合体化された2つの異なるタイプのRNA分子(例えば、miRNA)を有し、ここでRNA分子のタイプは、異なる機能(例えば、抗炎症性、血管新生抑制性)を有する。
【0071】
リン脂質
リン脂質は、疎水性脂肪酸鎖ならびにホスフェート基およびグリセロール分子を有する親水性ヘッドを含む脂質のクラスである。リン脂質は、種々の理由(改善されたバイオアベイラビリティー、低減された毒性および増大された膜透過性が挙げられるが、これらに限定されない)から、局所、経口および非経口薬物のリソソーム、エトソーム、および他のナノ製剤を調製するために広く使用されてきた。天然に存在するリン脂質は、2本の長鎖脂肪酸および塩基に連結されるリン酸ラジカルを含む脂肪様トリグリセリドである。それらは、全ての動物および植物細胞に、特に、脳、心臓、肝臓、卵黄、およびダイズに存在する。天然に存在するリン脂質の中で最も重要なリン脂質は、セファリンおよびレシチンであり、ここでコラミンまたはクオリン(quoline)は、塩基として存在する。
【0072】
リン脂質の非限定的な例としては、以下が挙げられる: 1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール(DPPTE)、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、レシチン、β,γ-ジパルミトイル-α-レシチン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、N-(2,3-ジ(9-(Z)-オクタデセニルオキシ))-プロパ-1-イル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、セファリン、カルジオリピン、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、パルミトイル-オレオイル-ホスファチジルコリン、ジステアロイル-ホスファチジルコリン、ステアロイル-パルミトイル-ホスファチジルコリン、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイル-ホスファチジルセリン、ジオレイル-ホスファチジルコリン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール(DPPTE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](16:0 PDP PE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](18:1 PDP PE)、およびこれらの組み合わせまたは誘導体。
【0073】
薬学的組成物
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書で開示されるとおりのナノ構造体のうちのいずれか、および薬学的に受容可能な賦形剤を含む組成物に関する。本明細書で記載される場合、「薬学的組成物」または「薬学的に受容可能な」組成物は、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤(例えば、キャリア、添加剤、および/または希釈剤)と一緒に製剤化された、本明細書で記載される構造体(例えば、ナノ構造体)のうちの1またはこれより多くの治療有効量を含む。本明細書で記載される任意の適切な構造体が、図面に関連して記載されるものを含め、このような薬学的組成物において使用され得ることは、理解されるべきである。いくつかの場合に、薬学的組成物における構造体は、無機材料を含むナノ構造体コアおよび上記ナノ構造体コアを実質的に取り囲みかつ結合したシェルを有する。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記薬学的組成物は、液体またはゲル形態において製剤化される: 経口投与、例えば、水薬(水性または非水性の液剤または懸濁物)、非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内または硬膜外注射による(例えば、滅菌液剤または懸濁物として)、または徐放製剤;局所適用(例えば、眼に適用されるクリーム剤、軟膏剤またはスプレーとして);眼にまたは経皮的に。
【0075】
語句「薬学的に受容可能な」は、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触した状態での使用に適切であり、合理的な利益/リスク比と釣り合っている、それらの構造、材料、組成物、および/または投与形態に言及するために本明細書で使用される。
【0076】
語句「薬学的に受容可能なキャリア」とは、本明細書で使用される場合、本発明の化合物を1つの器官または身体の一部から、別の器官または身体の一部へと運ぶかまたは輸送することに関与する、薬学的に受容可能な材料、組成物またはビヒクル(例えば、液体または固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、または材料を被包する溶媒)を意味する。各キャリアは、製剤の他の成分と適合性であり、かつ患者に対して有害でないという意味において「受容可能」でなければならない。薬学的に受容可能なキャリアとして働き得る材料のいくつかの例としては、以下が挙げられる:糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース);粉末化トラガカント;モルト;ゼラチン;タルク;賦形剤(例えば、カカオ脂および坐剤用ワックス);油(例えば、ラッカセイ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油);グリコール(例えば、プロピレングリコール);ポリオール(例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール);エステル(例えば、オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチル);アガー;緩衝化剤(例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム);アルギン酸;発熱物質非含有水;等張性食塩水;リンゲル液;エチルアルコール;pH緩衝化溶液;ポリエステル、ポリカーボネートおよび/またはポリ無水物;ならびに薬学的製剤中で使用される他の非毒性適合性物質。
【0077】
いくつかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤を有する。企図される薬学的に受容可能な賦形剤の非限定的な例としては、水、緩衝化生理食塩水、生理食塩水、水、乳酸化リンゲル液、細胞培養培地、血清、希釈血清、クリーム、ポリマー、およびヒドロゲルが挙げられる。
【0078】
湿潤剤、乳化剤および滑沢剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)ならびに着色剤、放出剤(release agent)、コーティング剤、甘味剤、矯味矯臭剤および芳香剤、保存剤および抗酸化剤がまた、組成物中に存在し得る。
【0079】
薬学的に受容可能な抗酸化剤の例としては、以下が挙げられる:水溶性抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);油溶性抗酸化剤(例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど);および金属キレート剤(例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)。
【0080】
本明細書で記載される構造体は、経口投与され得る、非経口投与され得る、皮下投与され得る、および/または静脈内投与され得る。ある特定の実施形態において、構造体および薬学的調製物は、経口投与される。他の実施形態において、上記構造体または薬学的調製物は、静脈内投与される。代替の投与経路としては、舌下投与、筋肉内投与および経皮的投与が挙げられる。代替の投与経路としては、舌下投与、筋肉内投与、および経皮投与が挙げられる。
【0081】
単一投与形態を生成するためにキャリア物質と組み合わされ得る活性成分の量は、処置される宿主、および特定の投与様式に応じて変動する。単一投与形態を生成するためにキャリア材料と組み合わされ得る活性成分の量は、一般には、治療効果を生じる化合物の量である。概して、この量は、約1%~約99%の活性成分、約5%~約70%、または約10%~約30%の範囲に及ぶ。
【0082】
本明細書で記載される構造体の投与のための液体投与形態としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、分散物、懸濁物、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられ得る。本発明の構造体に加えて、上記液体投与形態は、当該分野で一般に使用される不活性希釈剤(例えば、水または他の溶媒のような)、可溶化剤および乳化剤、例えば、セチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含み得る。
【0083】
不活性希釈剤の他に、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤、芳香剤および保存剤のような補助物質を含み得る。
【0084】
懸濁物は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天およびトラガカント、ならびにこれらの混合物として、懸濁剤を含み得る。
【0085】
本明細書で記載される構造体の局所または経皮的投与のための投与形態としては、散剤、スプレー、軟膏剤、パスタ剤、フォーム剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル、液剤、パッチ、滴注剤(drop)、および吸入剤が挙げられる。活性化合物は、無菌条件下で、薬学的に受容可能なキャリアと、および必要とされ得る任意の保存剤、緩衝化剤、またはプロペラントと、混合され得る。
【0086】
上記軟膏剤、パスタ剤、クリーム剤およびゲルは、本発明の構造体に加えて、賦形剤(例えば、動物性および植物性の脂肪)、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはこれらの混合物)を含み得る。本明細書で企図される眼用製剤は、眼用軟膏剤、点眼剤、散剤、液剤などを含む。
【0087】
非経口投与に適した本明細書で記載される薬学的組成物は、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な無菌の等張性の水性または非水性の液剤、分散物、懸濁物もしくはエマルジョン、または使用直前に無菌の注射用液剤もしくは分散物に再構成され得る無菌の散剤と組み合わせて、1またはこれより多くの本発明の構造体を含み、上記組成物は、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝化剤、静菌剤、上記製剤を意図したレシピエントの血液と等張性にする溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含み得る。
【0088】
本明細書で記載される薬学的組成物において使用され得る適切な水性および非水性のキャリアの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびこれらの任意の適切な混合物、植物性油(例えば、オリーブ油)、ならびに注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)が挙げられる。例えば、コーティング材料(例えば、レシチン)の使用によって、分散物の場合には必要とされる粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。
【0089】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤のような補助物質を含み得る。本発明の構造体上での微生物活動の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール ソルビン酸など)を含めることによって促進され得る。等張剤(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)を上記組成物に含めることはまた、望ましいことであり得る。さらに、上記注射用薬学的形態の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含めることによってもたらされ得る。
【0090】
本明細書で記載される構造体が医薬としてヒトおよび動物に投与される場合、それらは、それ自体で、または例えば、約0.1%~約99.5%、約0.5%~約90%などの構造体を、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて含む薬学的組成物として与えられ得る。
【0091】
投与は、処置されるべき状態に依存して、局所的(例えば、特定の領域、生理学的系、組織、器官、または細胞タイプに)または全身的であり得る。例えば、上記組成物は、非経口的注射、移植物、経口、膣、直腸、口内、肺、局所的、鼻、経皮的、外科的な投与、または上記組成物による標的へのアクセスが達成される任意の他の投与方法を通じて、投与され得る。本発明とともに使用され得る非経口的モダリティーの例としては、静脈内、皮内、皮下、腔内、筋肉内、腹腔内、硬膜外、または髄腔内が挙げられる。移植物モダリティーの例としては、任意の移植可能なまたは注射可能な薬物送達システムが挙げられる。経口投与は、患者および投与スケジュールへの利便性のため、処置によっては有用であり得る。
【0092】
選択される投与経路にかかわらず、本明細書で記載される構造体(これは、適切な水和形態において使用され得る)および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に受容可能な投与形態へと製剤化される。
【0093】
本明細書で記載される組成物は、投与量において、例えば、いかなる潜在的に有害な副作用をも回避するかまたは最小化しながら最大量において与えられ得る。上記組成物は、単独で、または他の化合物と組み合わせて、有効量で投与され得る。例えば、がんを処置する場合、組成物は、本明細書で記載される構造体およびがんを処置するために使用され得る他の化合物のカクテルを含み得る。異常な脂質レベルと関連する状態を処置する場合には、組成物は、本明細書で記載される構造体および脂質レベルを低減するために使用され得る他の化合物(例えば、コレステロール降下剤)を含み得る。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」または「治療有効量」は、患者に投与される場合に、処置されている疾患状態もしくは障害のための処置を提供するか、またはさもなければ所望の効果(例えば、効果的な免疫応答の誘導、疾患の症状の改善)を提供する、本発明のナノ構造体または組成物の量である。「治療有効量」を構成する本発明の化合物の量は、その化合物、疾患状態およびその重篤度、処置されるべき患者の年齢などに応じて変動する。治療有効量は、知識および本開示を考慮して、当業者によって慣用的に決定され得る。
【0095】
方法
好ましい実施形態において、本開示のナノ構造体は、局所的処置のためのものである。眼の疾患のための現在の局所的治療(例えば、点眼剤、眼用軟膏剤、およびゲル)は、前眼房へのそれらのペイロードのうちの約5%を送達するに過ぎず、角膜上皮には容易に入らない。本開示のナノ構造体(例えば、RNA-TLP)は、インビボで角膜上皮における細胞によって取り込まれる。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりのナノ構造体および/または組成物は、局所適用のために製剤化される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載されるとおりのナノ構造体および/または組成物は、局所投与される。
【0096】
糖尿病に関する眼の治療
いくつかの実施形態において、本開示のナノ構造体は、糖尿病被験体における眼の障害または眼の疾患(例えば、糖尿病性角膜症)の処置のために使用され得る。糖尿病性角膜症は、糖尿病で起こる眼の合併症である。いくつかの実施形態において、上記眼の障害は、糖尿病性角膜症である。いくつかの実施形態において、上記眼の障害は、糖尿病網膜症である。いくつかの実施形態において、本開示のナノ構造体および組成物は、炎症を処置するために使用される。いくつかの実施形態において、本開示のナノ構造体および組成物は、NFKBシグナル伝達を阻害するために使用される。いくつかの実施形態において、本開示のナノ構造体および組成物は、眼の創傷を処置するために使用される。いくつかの実施形態において、上記創傷は、角膜上皮に対する損傷を含む。いくつかの実施形態において、上記創傷は、角膜上皮を取り囲む組織に対する損傷を含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、本開示のナノ構造体および組成物は、眼の傷害または眼の感染症を有する被験体を処置するために使用される。いくつかの実施形態において、上記眼の障害、眼の傷害または眼の感染症は、それぞれ、角膜障害、角膜傷害、または角膜感染症である。
【0098】
眼の疾患および傷害は、糖尿病被験体において特に処置が困難である。その治癒プロセスはまた、眼の表面の上皮が損なわれている手術(例えば、硝子体切除術、水晶体摘出)後の糖尿病に関しては非常に困難である。角膜上皮創傷修復のプロセスは、糖尿病被験体において長くなることに加えて、彼らを感染症に攻撃されやすくし、これは、取り返しの付かない損傷を生じ得る。従来の処置方法は頻繁に、これらの問題に対処するにあたって効果がなかった。それらはまた、糖尿病に二次的な角膜治癒の遅れの根本的な病態生物学に対処できない。
【0099】
ナノ構造体の適用
本開示のナノ構造体は、他の局所的な眼の処置と比較して、眼において増大した取り込みを示す。ここでは、RNA-TLPは、インビボで角膜上皮における細胞によって取り込まれることが示される。本開示のHDL-NPおよびRNA-HDL-NP(例えば、miR-205-HDL-NP)は、眼の創傷(例えば、角膜上皮創傷)を治癒するための正の薬剤である。従って、HDL-NPまたはmiR-205-HDL-NPのいずれかを含む局所的処置(例えば、点眼剤、眼用軟膏剤、およびゲル)は、本明細書で企図される。局所的処置は、企図されるように、創傷した角膜(例えば、裂傷を受けた角膜上皮)を処置するために有効である。
【0100】
眼、好ましくは角膜上皮の疾患および傷害(例えば、ドライアイ、角膜炎、眼の感染症)から生じる炎症(すなわち、眼の炎症)を処置または防止するにあたって有効である、HDL-NPと複合体化された、抗炎症特性を有するRNA分子(例えば、miRNA)(例えば、miR-146a)の使用がまた、本明細書で企図される。有効な抗炎症性RNA複合体化ナノ構造体(例えば、miR-HDL-NP)は、ステロイドが有する有害な副作用(例えば、角膜の菲薄化、緑内障の誘導)なしに、ステロイドとして機能する。
【0101】
角膜血管新生(これはしばしば、角膜の摂動後に起こり得る)を防止するにあたって有効である、HDL-NPと複合体化した血管新生抑制特性を有するRNA(例えば、miRNA)(例えば、miR-184)がまた企図される。
【0102】
本開示は、創傷治癒特性を示し、従って、現在利用可能でない糖尿病性角膜症のための処置(例えば、創傷治癒)として使用され得るナノ構造体と複合体化したRNA(例えば、miRNA)を提供する。
【0103】
処置
本明細書で使用される場合、用語「処置する」とは、特定の疾患、障害、および/もしくは状態の1もしくはこれより多くの症状もしくは特徴を部分的にまたは完全に緩和する、改善する、軽減する、それらの発生を遅らせる、それらの進行を阻害する、それらの重篤度を低減する、ならびに/またはそれらの発生率を低減することを指す。例えば、がんを「処置する」は、腫瘍の生存、増殖、および/または拡がりを阻害することを指し得る。処置は、疾患、障害、および/もしくは状態と関連する病理を発生させるリスクを減少させる目的で、上記疾患、障害、および/もしくは状態の徴候を示さない被験体に、ならびに/または上記疾患、障害、および/もしくは状態の早期の徴候のみを示す被験体に、投与され得る。いくつかの実施形態において、処置は、被験体への本発明の標的化粒子の送達を含む。
【0104】
被験体
本明細書で使用される場合、「被験体」または「患者」とは、任意の哺乳動物(例えば、ヒト)、例えば、疾患または身体の状態(例えば、眼の疾患または障害である疾患または身体の状態のような)に罹りやすい可能性のある哺乳動物を指す。被験体または患者の例としては、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコまたは齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター、またはモルモット)が挙げられる。被験体は、ある特定の疾患もしくは身体の状態と診断されたか、またはさもなければ疾患もしくは身体の状態を有することが既知である被験体であり得る。いくつかの実施形態において、被験体は、疾患もしくは身体の状態を発症していると診断され得るか、またはその発症のリスクがあることが既知であり得る。ある特定の実施形態において、被験体は、上記被験体において既知の疾患または身体の状態に基づいて処置のために選択され得る。いくつかの実施形態において、被験体は、上記被験体において疑われる疾患または身体の状態に基づいて処置のために選択され得る。いくつかの実施形態において、上記組成物は、疾患または身体の状態の発症を防止するために投与され得る。しかし、いくつかの実施形態において、既存の疾患または身体の状態の存在が疑われるが、未だ同定されていなくてもよく、本発明の組成物は、上記疾患または身体の状態のさらなる発症を診断または防止するために投与され得る。
【0105】
さらに作り込むことなく、当業者は、上記の記載に基づいて、その完全な程度まで本発明を利用し得ると考えられる。従って、以下の具体的実施形態は、例証に過ぎないと解釈されるべきであり、本開示の残りをどのようにしても限定するものではない。本明細書で引用される全ての刊行物は、本明細書で言及される目的または主題に関して参考として援用される。
【実施例】
【0106】
実施例1: 金ナノ粒子(Au NP)、テンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)、およびRNA-TLPの合成
金コアナノ粒子(Au NP)を、標準的プロトコール(Piellaら, 2016)を使用して合成する。約3.5nm Auシードを、このAuシードを核化するように過剰のクエン酸ナトリウムおよび微量のタンニン酸中のテトラクロロ金酸によって合成する。テトラクロロ金酸および過剰のクエン酸ナトリウムをさらに添加すると、シード成長アプローチにおいて単分散性の5nm Au NPが生じ、70nMの濃度を生じる。これらの5nm Au NPの水性溶液を、ガラスバイアル中で5倍モル過剰の精製ヒトapoA-Iと混合する。上記Au NP/apoA-I混合物を、60rpmの平底シェーカー上で1時間、室温(RT)においてインキュベートする。次に、クロロホルム(CHCl3, 1mM)またはジクロロメタン(CH2Cl2, 1mM)中に溶解した1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](PDP-PE; Avanti Polar Lipids)を、上記Au NP/apoA-I溶液に、上記Au NPに対して250倍モル過剰において添加する。その溶液をボルテックスにかけ、続いて、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC; Avanti Polar Lipids)、またはCHCl3(1mM)またはCH2Cl2(1mM)中に溶解したカルジオリピン(心臓、ウシ)(CL; Avanti Polar Lipids)および1,2-ジリノレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセロール)(18:2 PG; Avanti Polar Lipids)の1:1溶液を上記Au NP/apoA-I/PDP-PE溶液に、上記Au NPに対して250倍モル過剰において添加し、上記溶液をボルテックスにかける。次に、CHCl3(1mM, Sigma Aldrich)またはCH2Cl2に溶解したコレステロールを、上記Au NPに対して25倍モル過剰において添加する。上記混合物をボルテックスにかけ、短時間超音波処理(約2分間)すると、溶液は不透明で色が桃色になる。その得られる混合物を、約65℃へと一定に撹拌しながら徐々に加熱してCHCl3を蒸発させるかまたは約40℃へと一定に撹拌しながら徐々に加熱してCH2Cl2を蒸発させてリン脂質を粒子表面上におよび水相へ移す(約20分間)。上記反応は、その溶液が透明な赤色になると完了である。その得られるTLPを、60rpmの平底シェーカー上で一晩RTにおいてインキュベートし、次いで、タンジェンシャルフロー濾過(TFF; KrosFlo Research Iii TFF System, Spectrum Laboratory, モデル900-1613)を介して精製および濃縮する。TLPを、使用するまで4℃で貯蔵する。上記TLPの濃度を、UV-Vis分光法(Agilent 9453)を使用して測定する。ここでAu NPはλmax=520nmの特徴的な吸収を有し、5nm Au NPの吸光係数は9.696×106 M-1cm-1である。
【0107】
例示的なRNA-TLPを合成するために、RNAおよび1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)を、先ず混合した。miR-205、miR-146a、antagomiR-210またはコントロール(Ctrl)(Integrated DNA Technologies)の個々のセンスRNAおよびアンチセンスRNA配列を、ヌクレアーゼ非含有水中に再懸濁した(最終500μM)。次いで、相補的な対を、各RNA配列の25倍モル過剰(1つのRNA配列につき最終2.5μM)において、TLP(100nM)への直接付加を可能にする濃度で、ヌクレアーゼ非含有水中で混合した。次いで、DOTAPのエタノール(EtOH)溶液を、上記RNAに対して40倍モル過剰において添加した。DOTAPおよびRNAの混合物を、短時間超音波処理し、ボルテックスにかけ(×3)、次いで、RTにおいて15分間インキュベートし、その後、水中100nM TLPの溶液に添加した。上記DOTAP-RNA混合物を上記TLPに添加した後、溶媒混合物は、9:1、水:EtOH(v/v)である。この溶液を、60rpmの平底シェーカー上で一晩RTにおいてインキュベートした。得られるRNA-TLPを、遠心分離(15,870×g、50分間)を介して精製した。結合していない出発材料を有する上清のうちの大部分を、除去する。得られたペレットを、短時間超音波処理して溶液に戻し、この材料を濃縮RNA-TLPとして1本のチューブの中で合わせた。上記RNA-TLPの濃度を、TLPに関して記載されるように計算した。RNA-TLPに関しては、λmax=260nmにおける強い吸収から、RNAの存在が確認された。上記RNA対のうちの一方の鎖のみで合成した粒子に関して、その合成手順を同様に進めた;しかし、上記RNAの量の2倍を、上記TLPに添加した(最終5μM)。
【0108】
実施例2: miR-205 HDL-NPは、HCECにおいてSHIP2を標的化する
miR-205は、上皮細胞において脂質ホスファターゼSHIP2を負に調節し、Aktシグナル伝達の活性化をもたらした。SHIP2は、上皮への細胞移動を制限する。SHIP2を抑制することによって、miR-205は、コフィリン活性化を介して上皮移動を促進する。ここでは、1本鎖miR-205摸倣物を、HDL-NPに複合体化し、HCECを、上記miR-205-HDL-NPに48時間曝した。陰性粒子と比較して、miR-205-HDL-NPは、50nMにおいてSHIP2を減少させ、p-Aktを増大させた(
図6F)。
【0109】
実施例3: miR-205-HDL-NPは、擦過傷を迅速にシールする。
直線状の擦過傷を、0.3mM Ca
+2中でコンフルエントになるまで増殖させ、マイトマイシン処理した角膜上皮細胞株(hTCEpi)に作製した。細胞を、コントロールまたはmiR-205 HDL-NPの10nm溶液で処理し、画像化し、Nikon Biostationで分析した。miR-205-HDL-NP処理したhTCEpi細胞は、6時間で創傷を完全にシールしたのに対して、コントロールHDL-NP処理したhTCEpi細胞は、18時間で創傷をシールした(
図7および8)。
【0110】
実施例4: miR-146a-HDL-NPは、NF-κB活性を低減する
miR-146aは、角膜縁上皮(LEC)維持において役割を果たすが、角膜上皮最終分化においてはそうではない。それは、糖尿病LECにおいてアップレギュレートされ、糖尿病角膜縁上皮および角膜上皮細胞において細胞移動および創傷閉鎖を遅らせる。さらに、それは、NF-κBによって調節される炎症促進性シグナル伝達の重要な遺伝子メディエーターであると考えられる。マウスJ774.1マクロファージは、NF-κBコンセンサス転写応答エレメントの下流に分泌型アルカリホスファターゼ(AP)遺伝子を有する。
【0111】
ここでは、miR-146a摸倣物を、HDL-NPに複合体化し、J774.1マウスマクロファージをmiR-146a-HDL-NPに曝した(4.5時間)。LPSを追加した後、Quant B比色アッセイを使用して、分泌型APに関して、細胞培養培地をサンプリングすることによって、NF-κB活性を定量した。miR146aを有するHDL-NPは、LPS誘導性分泌型APのシグナルを有意に低減した(
図9)。
【0112】
実施例5: HDL-NPの局所適用は、摂動されていない眼の表面に透過し得る
ここでは、3μlのCy-3タグ化HDL-NP(PBS中1μM)を、無傷の創傷のない角膜に、30分ごとに4時間にわたって局所適用した。処置後24時間で眼を採取し、OCTにおいて包埋し、切片化し、蛍光顕微鏡で見た(
図10および11A~11B)。
【0113】
実施例6: HDL-NPおよびmiR-205-HDL-NPは、インビボで生物学的活性を示す
miR-205は、Aktシグナル伝達を部分的に介する角膜上皮創傷治癒の正の調節因子である。HDLは、PI3K/Aktシグナル伝達を介して、増殖、移動および「管」形成を促進することによって、内皮細胞治癒に寄与する。HDL-apoA-Iは、ヒト大動脈内皮細胞におけるアンギオポエチン様4遺伝子を誘導した。これは、Aktシグナル伝達のインヒビターによって遮断できた。HDLおよびmiR-205は、同じシグナル伝達経路を活性化することから、臨床評価を介してmiR-205の任意の付加的な効果を検出することは困難である。
【0114】
ここで、食事誘導性肥満(DIO)マウスに麻酔をかけ、中心角膜上皮の1mm領域を、回転式ダイアモンド刃で除去した。創傷の直後に、マウス(8)は、1μlのmiR-205-HDL-NP溶液(PBS中1μモル)または混合miR-HDL-NP溶液を局所的に、30分ごとに2時間にわたって受容した。治癒の程度を、2% フルオレセイン染色を使用して臨床的にモニターし、上皮治癒の速度を、画像処理ソフトウェア(ImageJ v.1.5)で創傷サイズを測定することによって評価した。HDL-NPおよびmiR-205-HDL-NPは、インビボで生物学的活性を示すことが見出された。スクランブルしたmiR-HDL-NPおよびmiR-205-HDL-NPはともに、創傷治癒に対して明確な効果を示す(
図12A~12D)。
【0115】
結論
合成の機能的HDL-NPは、miRNAを初代ヒト角膜上皮細胞、マクロファージ細胞株および角膜輪部/角膜の無傷の組織に送達できる。スクランブルしたmiR-HDL-NPおよびmiR-205-HDL-NPはともに、糖尿病マウスの角膜上皮における創傷治癒に対して明確な効果を有する。これらの所見は、正常および病的な状況における角膜表面へのmiRNA送達に基づく革新的な処置レジメンの基礎を提供する。1つのこのような処置選択肢は、生物学的プロセス(例えば、血管新生および炎症)に同時に影響を及ぼすために、2つのmiRNAを有する「超」miRNA-HDL-NP眼処置(例えば、点眼剤)の開発である。
【0116】
例示的配列
この表は、本明細書によって開示されるとおりのいくつかの例示的配列を示すが、限定ではない。本明細書は、テキストファイルとしてASCIIフォーマットで、本明細書と同時に提出された配列表を含む。この配列表およびその中に含まれる情報の全ては、明示的に本明細書に援用され、提出時の本明細書の一部を構成する。
【0117】
【表1】
*別段特定されなければ、核酸配列は、5’→3’で記載され、アミノ酸配列は、N末端からC末端へと記載される。
【0118】
他の実施形態
実施形態1. ナノ構造体であって、前記ナノ構造体は、
コア、アポリポタンパク質、前記コアに結合した脂質シェルを含む高密度リポタンパク質ナノ粒子(HDL-NP)を含み、ここで前記脂質シェルは、リン脂質および前記リン脂質と会合しているRNA分子を含む、構造体。
【0119】
実施形態2. コア、アポリポタンパク質、前記コアに結合したシェルを含むテンプレート化リポタンパク質粒子(TLP)を含むナノ構造体であって、ここで前記脂質シェルは、リン脂質および前記リン脂質と会合しているRNA分子を含む、ナノ構造体。
【0120】
実施形態3. 前記アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-Iである、実施形態1~2のいずれか1つに記載のナノ構造体。
【0121】
実施形態4. コレステロールをさらに含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載のナノ構造体。
【0122】
実施形態5. 前記RNA分子は、マイクロRNA(miRNA)である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のナノ構造体。
【0123】
実施形態6. 前記miRNAは、miR-205またはmiR-146aである、実施形態5に記載のナノ構造体。
【0124】
実施形態7. 実施形態1~6のいずれか1つに記載のナノ構造体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物。
【0125】
実施形態8. 眼の障害を有する被験体を処置する方法であって、前記方法は、
実施形態1~7のいずれか1つに記載のナノ構造体を、有効量において前記被験体に投与し、それによって、前記眼の障害を処置する工程、
を包含する方法。
【0126】
実施形態9. 眼の傷害または眼の感染症を有する被験体を処置する方法であって、前記方法は、
実施形態1~7のいずれか1つに記載のナノ構造体を、有効量において前記被験体に投与し、それによって、前記眼の傷害または感染症を処置する工程、
を包含する方法。
【0127】
実施形態10. 前記眼の障害、眼の傷害または眼の感染症は、それぞれ、角膜障害、角膜傷害、または角膜感染症である、実施形態8~9のいずれか1つに記載の方法。
【0128】
実施形態11. 前記眼の障害は、糖尿病性角膜症である、実施形態8~10のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
実施形態12. 前記投与は局所である、実施形態8~11のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
実施形態13. 前記被験体は、哺乳動物である、実施形態8~12のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
実施形態14. 前記被験体はヒトである、実施形態8~13のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
本明細書で開示される特徴の全ては、任意の組み合わせにおいて組み合わせられ得る。本明細書で開示される各特徴は、同じ、等価な、または類似の目的に役立つ代替の特徴によって置き換えられ得る。従って、別段明示的に述べられなければ、開示される各特徴は、一般的な一連の等価なまたは類似の特徴の例に過ぎない。
【0133】
上述の説明から、当業者は、本発明の本質的な特徴を容易に確認し得、その趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明を種々の使用法および条件に適合させるために、本発明に対して種々の変更および改変を行い得る。従って、他の実施形態もまた、特許請求の範囲内である。
【0134】
均等物
いくつかの本発明の実施形態が、本明細書で記載および例証されてきたが、当業者は、その機能を果たすならびに/または結果および/もしくは本明細書で記載される利点のうちの1もしくはこれより多くを得るために、種々の他の手段および/または構造を容易に想定し、このようなバリエーションおよび/または改変の各々は、本明細書で記載される発明の実施形態の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書で記載される全てのパラメーター、寸法、材料、および構成は例示であることが意味され、実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される具体的適用に依存することを容易に認識する。当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書で記載される具体的な発明の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または確認し得る。従って、前述の実施形態が、例示によって示されるに過ぎず、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、発明の実施形態が、具体的に記載され、特許請求されるとおり以外の別の方法で実施され得ることは、理解されるべきである。本開示の発明の実施形態は、本明細書で記載される各個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関する。さらに、2またはこれより多くのこのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾しなければ、本開示の発明の実施形態の発明の範囲内に含まれる。
【0135】
全ての定義は、本明細書で定義および使用される場合、辞書の定義、参考として援用される文書中の定義、および/または定義される用語の通常の意味に対して優先されることは、理解されるべきである。
【0136】
本明細書で開示される全ての参考文献、特許および特許出願は、各々が引用され、いくらかの場合には、その文書の全体を包含し得る主題に関して参考として援用される。
不定冠詞「1つの、ある(a)」および「1つの、ある(an)」は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、明らかに逆に示されなければ、「少なくとも1(at least one)」を意味することが理解されるべきである。
【0137】
語句「および/または(and/or)」は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、そのように結合された要素の「いずれかまたは両方(either or both)」、すなわち、いくらかの場合には接続的に示され、他の場合には離節的に示される要素を意味することが理解されるべきである。「および/または」とともに列挙される多数の要素は、同じ様式において、すなわち、そのように結合された要素の「1またはこれより多くの(one or more)」と解釈されるべきである。他の要素は、「および/または」の文節によって具体的に特製される要素以外に、それらの具体的に特定される要素に関連しようが関連しまいが、必要に応じて存在し得る。従って、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む、包含する(comprising)」のような制限のない文言とともに使用される場合、1つの実施形態では、Aのみ(必要に応じて、B以外の要素を含む)に;別の実施形態では、Bのみ(必要に応じて、A以外の要素を含む)に;さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(必要に応じて、他の要素を含む)に;他に言及し得る。
【0138】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「または(or)」は、上記で定義されるとおりの「および/または」と同じ意味を有することが理解されるべきである。例えば、リストの中の項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包括的、すなわち、多くの要素または要素のリスト、および必要に応じて、さらなる列挙されない項目のうちの少なくとも1を含むが、1より多くをも含むとして解釈されるものとする。「のうちの1つのみ(only one of)」もしくは「のうちの正確に1つ(exactly one of)」、または特許請求の範囲の中で使用される場合、「からなる(consisting of)」のような、逆を明らかに示す用語のみが、多くの要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことに言及する。概して、用語「または」は、本明細書で使用される場合、「いずれか(either)」、「のうちの1つ(one of)」、」「のうちの1つのみ」または「のうちの正確に1つ」のような排他性の用語が先立つ場合、排他的な代替物(すなわち、「一方または他方であるが、両方ではない(one or the other but not both)」)を示すとして解釈されるに過ぎないものとする。「から本質的になる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲の中で使用される場合、特許法の分野で使用されるとおりのその通常の意味を有するものとする。
【0139】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、語句「少なくとも1」は、1またはこれより多くの要素のリストに言及して、要素のリストの中の要素のうちのいずれか1つまたはこれより多くから選択される少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリスト内に具体的に列挙される各々および全ての要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含むわけではなく、要素のリストの中の要素の任意の組み合わせを排除しないことを意味することが理解されるべきである。この定義はまた、語句「少なくとも1」が言及する要素のリスト内で具体的に同定される要素以外の要素が、それら具体的に特定される要素に関連しようが関連しまいが、必要に応じて存在し得ることを可能にする。従って、非限定的な例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または等しくは、「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、または等しくは、「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態において、少なくとも1つの(必要に応じて、1より多くを含む)A、Bは存在しない(および必要に応じて、B以外の要素を含む)に;別の実施形態において、少なくとも1つの(必要に応じて、1より多くを含む)B、Aは存在しない(および必要に応じて、A以外の要素を含む)に;さらに別の実施形態において、少なくとも1つの(必要に応じて、1より多くを含む)Aおよび少なくとも1つの(必要に応じて、1より多くを含む)B(必要に応じて、他の要素を含む)に;他に言及し得る。
【0140】
明確に逆に示されなければ、1より多くの工程または行為を含む本明細書で特許請求される任意の方法において、上記方法の工程または行為の順序は、上記方法の工程または行為が記載される順序に必ずしも限定されないことがまた、理解されるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】