(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-22
(54)【発明の名称】近視の進行を抑制するための動的光学特性を有する眼用レンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/06 20060101AFI20220615BHJP
G02C 7/04 20060101ALI20220615BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20220615BHJP
A61B 3/103 20060101ALI20220615BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G02C7/06
G02C7/04
A61B3/113
A61B3/103
G02F1/13 505
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021563096
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(85)【翻訳文提出日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 US2020029273
(87)【国際公開番号】W WO2020219518
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519400379
【氏名又は名称】サイトグラス・ヴィジョン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ホーンズ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ダブリュー・チャルバーグ・ジュニア
【テーマコード(参考)】
2H006
2H088
4C316
【Fターム(参考)】
2H006BC03
2H006BC04
2H006BD01
2H088EA42
2H088GA10
2H088HA02
2H088MA20
4C316AA13
4C316AA14
4C316AA21
4C316FA08
4C316FA18
4C316FA19
4C316FC21
4C316FY05
(57)【要約】
眼用レンズは、眼用レンズの光学面の第一エリアに対応している第一領域と、第一エリアと異なる眼用レンズの光学面の第二エリアに対応している第二領域とを含む。第二領域は、第一光学的状態とその第一光学的状態と異なる第二光学的状態との間で切り替え可能な光学的切り替え可能部品を有する。第一光学的状態において第二領域は第二エリアに入射する光を部分的に散乱又はデフォーカスする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用レンズであって、
該眼用レンズの光学面の第一エリアに対応している第一領域と、
前記第一領域と異なる該眼用レンズの光学面の第二エリアに対応している第二領域と、を備え、
前記第二領域が第一光学的状態と前記第一光学的状態と異なる第二光学的状態との間で切り替え可能な光学的切り替え可能部品を備え、前記第一光学的状態において前記第二領域が前記第二エリアに入射する光を部分的に散乱又はデフォーカスする、眼用レンズ。
【請求項2】
少なくとも一つの光学的状態において前記第一エリアが実質的に透明なエリアである、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記第一エリアが、略2mmから略10mmの範囲内の最大寸法を有する、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記第一エリアが円形エリアである、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記第一領域が前記光学的切り替え可能部品を備え、透明光学的状態と部分的散乱光学的状態との間で切り替え可能である、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記第二エリアが前記第一エリアを取り囲む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
前記第二光学的状態において前記第二領域が実質的に透明である、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
前記第二光学的状態において前記第二領域が、前記第一光学的状態とは異なる量で前記第二エリアに入射する光を部分的に散乱させる、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項9】
前記光学的切り替え可能部品が二つよりも多くの光学的状態の間で切り替え可能である、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項10】
前記光学的切り替え可能部品が異なる複数の光学的状態の間で連続的に調整可能である、請求項9に記載の眼用レンズ。
【請求項11】
前記第一エリアが前記眼用レンズの光軸と交わる、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項12】
前記第一エリアが、遠方視力用の使用者の中心窩視野と一致している、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項13】
前記第二エリアが、異なる複数の屈折力の間で切り替え可能である、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項14】
前記第二エリアが、前記第一エリアの屈折力に対応している第一屈折力と、前記第二エリアが前記眼用レンズを通る光に近視性デフォーカスをもたらす第二屈折力との間で切り替え可能である、請求項13に記載の眼用レンズ。
【請求項15】
前記第二エリアが一つ以上のレンズレットに対応している、請求項14に記載の眼用レンズ。
【請求項16】
前記第二エリアが一つ以上の環状領域に対応している、請求項14に記載の眼用レンズ。
【請求項17】
前記光学的切り替え可能部品が電気光学物質を備える、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項18】
前記電気光学物質が液晶物質を備える、請求項17に記載の眼用レンズ。
【請求項19】
前記電気光学物質がポリマー分散液晶(PDLC)物質である、請求項18に記載の眼用レンズ。
【請求項20】
前記電気光学物質が二つの透明基板の間の層内に位置する、請求項17に記載の眼用レンズ。
【請求項21】
少なくとも一つの基板が電極層を支持する、請求項20に記載の眼用レンズ。
【請求項22】
前記電極層が、透明導電性物質製である、請求項21に記載の眼用レンズ。
【請求項23】
各基板が電極層を支持し、少なくとも一つの電極層が、前記第一領域に対応する第一電極と前記第二領域に対応する第二電極とを備えるパターン化電極層である、請求項22に記載の眼用レンズ。
【請求項24】
前記電極層がピクセル化電極構造を与えるようにパターン化されている、請求項23に記載の眼用レンズ。
【請求項25】
前記電極層がパッシブアドレス指定可能電極である、請求項24に記載の眼用レンズ。
【請求項26】
前記電極層がアクティブアドレス指定可能電極である、請求項24に記載の眼用レンズ。
【請求項27】
前記眼用レンズが、平レンズ、単焦点レンズ、又は多焦点レンズである、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項28】
前記眼用レンズが眼鏡レンズ又はコンタクトレンズである、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項29】
眼鏡と電源と電子コントローラとを備えるシステムであって、
前記眼鏡が一対の眼用レンズを備え、各眼用レンズが少なくとも二つの異なる光学的状態の間で切り替え可能であり、前記一対の眼用レンズの片方又は両方の前記少なくとも二つの異なる光学的状態のうちの第一光学的状態において該システムが、各眼用レンズの第二領域を通して視られる像と比較して各眼用レンズの第一領域を通して視られる像のコントラストを低下させ、
前記電源が、前記少なくとも二つの異なる状態の間で各眼用レンズを切り替えるように前記一対の眼用レンズの電力を与えるように構成されていて、
前記電子コントローラが前記電源及び前記眼用レンズと通信し、前記電源から各眼用レンズへの電力の伝送を制御するようにプログラムされている、システム。
【請求項30】
前記システムが、前記第一領域に対応しているレンズのエリアに入射する光の散乱量を増やすことによって前記眼鏡の着用者が視る像のコントラストを低下させる、請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記システムが、前記第一領域に対応しているレンズのエリアを通して視られる像に光を加えることによって像のコントラストを低下させる、請求項29に記載のシステム。
【請求項32】
前記眼鏡が、使用者の眼に光を向けるプロジェクションディスプレイモジュールを備え、前記システムが、前記プロジェクションディスプレイモジュールを用いて前記第一領域に対応しているレンズのエリアを通して視られる像に光を加える、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記電子コントローラと通信する一つ以上のセンサを更に備え、前記センサのうち少なくとも一つが、使用者の眼の動きについての情報を前記電子コントローラに与える視線追跡センサである、請求項29に記載のシステム。
【請求項34】
前記電子コントローラが、前記使用者の眼の動きについての情報に応じて前記第二領域に対応している少なくとも一つの眼用レンズのエリアを変化させるようにプログラムされている、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記電子コントローラが、使用者の凝視軸と一致するように前記第二領域に対応しているエリアを変化させるようにプログラムされている、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記電子コントローラと通信する一つ以上のセンサを更に備え、前記センサのうち少なくとも一つが、使用者の環境についての情報を前記電子コントローラに与える環境センサである、請求項29に記載のシステム。
【請求項37】
前記環境センサが近接性センサであり、前記電子コントローラが、前記近接性センサからの情報に基づいて前記眼用レンズの光学的状態を変化させるようにプログラムされている、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記電子コントローラが、前記環境センサからの情報に基づいて前記眼用レンズの光学的状態を変化させるようにプログラムされている、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記電子コントローラが、前記第一領域に対応している各眼用レンズのエリアの箇所を変化させることによって光学的状態を変化させる、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
各眼用レンズが二つよりも多くの異なる光学的状態の間で切り替え可能であり、各光学的状態が各眼用レンズの第一領を通して視られる像の異なるレベルのコントラスト低下に対応している、請求項29に記載のシステム。
【請求項41】
前記電源がバッテリを備える、請求項29に記載のシステム。
【請求項42】
前記バッテリが再充電可能である、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記眼鏡が、前記電源と前記電子コントローラを収納する眼鏡フレームを備える、請求項29に記載のシステム。
【請求項44】
前記眼鏡と前記電源と前記電子コントローラとを備えるヘッドセットを更に備える請求項29に記載のシステム。
【請求項45】
前記ヘッドセットが拡張現実(AR)ヘッドセットである、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
人間の周辺視野に形成される像のコントラストを低下させるための方法であって、
前記人間が使用している眼用レンズの光学的切り替え可能物質を用いて、前記眼用レンズのエリアにおける散乱量を変化させることを備える方法。
【請求項47】
前記変化させることが、入射光を散乱させる眼用レンズのエリアを変化させることと、透明である眼用レンズのエリアを変化させることを備える、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記エリアを変化させることが、前記エリアのサイズを変化させることを備える、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記エリアを変化させることが、前記エリアの箇所を変化させることを備える、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記人間の視覚作業に基づいて前記散乱量を変化させる、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記人間の眼の動きに基づいて前記散乱量を変化させる、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記眼用レンズの透明なエリアを前記人間の中心視軸と整列させ、散乱領域を前記人間の周辺視野と整列させるように前記散乱量を変化させる、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
人間の周辺視野に形成される像のコントラストを低下させるための方法であって、
ヘッドマウント光プロジェクションモジュールを用いて、前記人間の眼に光を向けて、前記人間の中心視野に対応している箇所の前記人間の網膜に光を当てずに、前記人間の周辺視野に対応している箇所の前記人間の網膜に光を当てることを備える方法。
【請求項54】
前記人間の眼の動きに基づいて前記光を変化させることを更に備える請求項53に記載の方法。
【請求項55】
環境光レベルに基づいて前記光を変化させることを更に備える請求項53に記載の方法。
【請求項56】
眼用レンズの後方のコントラストセンサで眼用レンズを通過した像コントラストを測定し、電子回路で周辺像コントラストを略一定に維持することを備える請求項53に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年4月23日出願の米国仮出願第62/837688号の優先権を主張し、その全内容は参照として本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、動的(ダイナミック)光学特性を有する眼用レンズに係り、特に近視の進行を抑制するための動的光学特性を有する眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
目は光センサであり、外部源からの光を水晶体(レンズ)によって網膜(波長依存性の光センサのアレイ)の表面に集束させるものである。水晶体が取り得る多様な形状の各々は、外部光線が最適又はほぼ最適に集束する焦点距離に関係していて、目が観測した外部像に対応した反転画像を網膜表面上に生じさせる。水晶体は、その水晶体が取り得る多様な形状の各々において、目から特定の距離範囲内に存在する外部物体が放出する又は反射する光を最適に又はほぼ最適に集束させるが、その距離範囲外に存在する物体については焦点があまり合わず、又は焦点を合わせることができない。
【0004】
正常視力の人間では、眼軸長、又は水晶体から網膜表面までの距離は、遠方の物体にほぼ最適に焦点を合わせる焦点距離に対応している。正常視力の人間の目は、水晶体の形状を変化させる力を印加する筋肉への神経入力(「調節」と称される)を必要とせずに、遠方の物体に焦点を合わせる。通常視力の人間は、調節の結果として、より近方の物体に焦点を合わせる。
【0005】
しかしながら、多くの人々が、近視(近眼)等の目のピントに関する疾患に苦しんでいる。近視の人間の眼軸長は、調節無しで遠方の物体に焦点を合わせるのに必要な眼軸長よりも長くなる。結果として、近視の人間は、近方の物体をはっきりと見えることはできるが、遠方の物体はぼやけてしまう。近視の人間でも一般的に調節を行うことはできるが、物体に焦点を合わせることができる平均距離は、正常視力の人間のものよりも短くなる。
【0006】
典型的には、乳児は遠視で産まれ、調節無しで遠方の物体に最適又はほぼ最適に焦点を合わせるのに必要なものよりも短い眼軸長を有する。目の正常な発達(「正視化」と称される)中において、眼軸長が、目の他の寸法に対して増加していき、調節無しで遠方の物体にほぼ最適に焦点を合わせる長さになる。理想的には、生体内作用で、眼球が最終的な成人のサイズに成長していくにつれて、眼球サイズに対する相対的な眼軸長はほぼ最適に維持される。しかしながら、近視の人間では、眼球全体のサイズに対する相対的な眼軸長が発達中に増加し続け、遠方の物体にほぼ最適に焦点を合わせる距離を超えて、進行性の近視をもたらす。
【0007】
近視は、遺伝的要因だけではなく行動要因の影響も受けると考えられている。従って、行動要因に対処する治療用デバイスによって近視を軽減することができる。例えば、特許文献1には、近視を含む目のピントに関する疾患を治療するための治療用デバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0313058号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0377884号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2017/0131567号明細書
【特許文献4】米国特許第7218375号明細書
【特許文献5】米国特許第8558985号明細書
【特許文献6】米国特許第8000022号明細書
【特許文献7】米国特許第7506983号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】http://www.montana.edu/jshaw/documents/18%20EELE582_S15_OTFMTF.pdf
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
概して第一態様において本発明が特徴とする眼用レンズは、眼用レンズの光学面の第一エリアに対応している第一領域と、第一エリアと異なる眼用レンズの光学面の第二エリアに対応している第二領域とを含み、第二領域は、第一光学的状態と第一光学的状態と異なる第二光学的状態との間で切り替え可能な光学的切り替え可能部品を有し、第一光学的状態において第二領域は第二エリアに入射する光を部分的に散乱又はデフォーカスする。
【0011】
眼用レンズの実施形態は、以下の特徴及び/又は他の態様の特徴のうちの一つ以上を含むことができる。例えば、少なくとも一つの光学的状態において第一エリアは実質的に透明なエリアである。
【0012】
第一エリアは、略2mmから略10mmの範囲内の最大寸法(例えば、直径)を有し得る。
【0013】
第一エリアは円形エリアであり得る。
【0014】
第一領域は光学的切り替え可能部品を有し得て、透明光学的状態と部分散乱光学的状態との間で切り替え可能である。
【0015】
第二エリアは第一エリアを取り囲み得る。
【0016】
第二光学的状態において第二領域は実質的に透明であり得る(例えば、CR‐39やポリカーボネートと同様の透明性(光透過性)を有する)。
【0017】
第二光学的状態において第二領域は、第一光学的状態とは異なる量で第二エリアに入射する光を部分的に散乱させ得る。
【0018】
光学的切り替え可能部品は、二つよりも多くの光学的状態の間で切り替え可能となり得る。例えば、光学的切り替え可能部品は、異なる複数の光学的状態の間で連続的に調整可能となり得る。
【0019】
第一エリアは眼用レンズの光軸と交わり得る。
【0020】
第一エリアは、遠方視力用の使用者の中心窩視野と一致し得る。
【0021】
第二エリアは異なる複数の屈折力の間で切り替え可能となり得る。例えば、第二エリアは、第一エリアの屈折力に対応している第一屈折力と、第二エリアが眼用レンズを通過する光に近視性デフォーカスをもたらす第二屈折力との間で切り替え可能となり得る。第二エリアは一つ以上のレンズレットに対応し得る。第二エリアは一つ以上の環状領域に対応し得る。
【0022】
光学的切り替え可能部品は、電気光学物質、例えば液晶物質等を含み得る。一部実施形態では、電気光学物質はポリマー分散液晶(PDLC)物質である。電気光学物質は二つの透明基板の間の層内に配置され得る。少なくとも一つの基板が電極層を支持し得る。電極層は透明導電性物質(例えば、インジウムスズ酸化物)製となり得る。各基板は一つの電極層を支持し得て、電極層のうち少なくとも一つが、第一領域に対応している第一電極と、第二領域に対応している第二電極とを含むパターン化電極層となり得る。電極層は、ピクセル化電極構造を与えるようにパターン化され得る。電極は、パッシブ(受動的)アドレス指定可能な電極又はアクティブ(能動的)アドレス指定可能な電極となり得る。
【0023】
レンズは平レンズ、単焦点レンズ、又は多焦点レンズとなり得る。
【0024】
レンズは眼鏡レンズ又はコンタクトレンズとなり得る。
【0025】
概して他の態様において本発明が特徴とするシステムは、一対の眼用レンズを含む眼鏡(各眼用レンズは、少なくとも二つの異なる光学的状態の間で切り替え可能であり、片方又は両方の眼用レンズの二つの異なる光学的状態のうちの第一の光学的状態において、システムは、各眼用レンズの第二領域を通して視られる像と比較して各眼用レンズの第一領域を通して視られる像のコントラストを低下させる)と、二つの異なる光学的状態の間で各眼用レンズを切り替えるために一対の眼用レンズの電力を供給するように構成されている電源と、電源及び眼用レンズと通信し、電源から各眼用レンズへの電力の伝送を制御するようにプログラムされている電子コントローラと、を含む。
【0026】
システムの実施形態は、以下の特徴及び/又は他の態様の特徴のうち一つ以上を含むことができる。例えば、システムは、第一領域に対応しているレンズのエリアに入射する光の散乱量を増やすことによって眼鏡の着用者が視る像のコントラストを低下させ得る。
【0027】
システムは、第一領域に対応しているレンズのエリアを通して視られる像に光を加えることによって像のコントラストを低下させ得る。眼鏡は、使用者の眼に光を向けるプロジェクションディスプレイモジュールを含み得て、システムは、プロジェクションディスプレイモジュールを用いて第一領域に対応しているレンズのエリアを通して視られる像に光を加える。
【0028】
システムは、電子コントローラと通信する一つ以上のセンサを含み得て、それらセンサのうちの少なくとも一つは、使用者の眼の動きについての情報を電子コントローラに与える視線追跡センサである。電子コントローラは、使用者の眼の動きについての情報に応じて第二領域に対応している少なくとも一方の眼用レンズのエリアを変化させるようにプログラムされ得る。電子コントローラは、使用者の凝視軸と一致するように第二領域に対応しているエリアを変化させるようにプログラムされ得る。
【0029】
システムは、電子コントローラと通信する一つ以上のセンサを含み得て、それらセンサのうちの少なくとも一つは、使用者の環境についての情報を電子コントローラに与える環境センサである。環境センサは近接性センサであり得て、電子コントローラは、近接性センサからの情報に基づいて眼用レンズの光学的状態を変化させるようにプログラムされ得る。電子コントローラは、環境センサからの情報に基づいて眼用レンズの光学的状態を変化させるようにプログラムされ得る。電子コントローラは、第一領域に対応している各眼用レンズのエリアの箇所を変化させることによって光学的状態を変化させ得る。
【0030】
各眼用レンズは、二つよりも多くの異なる光学的状態の間で切り替え可能となり得て、各光学的状態は、各眼用レンズの第一領域を通して視られる像の異なるレベルのコントラスト低下に対応している。
【0031】
電源は、バッテリ、例えば再充電可能バッテリを含み得る。
【0032】
眼鏡は、電源と電子コントローラとを収容する眼鏡フレームを含み得る。
【0033】
システムは、眼鏡と電源と電子コントローラとを備えるヘッドセットを含み得る。ヘッドセットは拡張現実(AR)ヘッドセットとなり得る。
【0034】
概して更なる態様において本発明が特徴とする人間の周辺視野に形成される像のコントラストを低下させるための方法は、人間が使用している眼用レンズの光学的切り替え可能物質を用いて、レンズのエリアの散乱量を変化させることを含む。
【0035】
本方法の実施形態は、以下の特徴及び/又は他の態様の特徴のうちの一つ以上を含むことができる。例えば、変化させることは、入射光を散乱させるレンズのエリアを変化させることと、透明であるレンズのエリアを変化させることとを含み得る。
【0036】
エリアを変化させることは、エリアのサイズを変化させることを含み得る。エリアを変化させることは、エリアの箇所を変化させることを含み得る。
【0037】
散乱量を、人間の視覚作業(例えば、読書、スクリーンを視ること)に基づいて変化させ得る。
【0038】
散乱量を、人間の眼の動きに基づいて変化させ得る。散乱量を、レンズの透明エリアを人間の中心視軸と整列させ、散乱エリアを人間の周辺視野と整列させるように変化させ得る。
【0039】
概して更に他の態様における本発明が特徴とする人間の周辺視野に形成される像のコントラストを低下させるための方法は、ヘッドマウント光プロジェクションモジュールを用いて、人間の眼に光を向けて、人間の中心視野に対応している箇所の人間の網膜に光を当てずに、人間の周辺視野に対応している箇所の人間の網膜に光を当てるようにすることを含む。
【0040】
本方法の実施形態は、以下の特徴及び/又は他の態様の特徴のうちの一つ以上を含むことができる。例えば、本方法は、人間の眼の動きに基づいて光を変化させることを含み得る。
【0041】
本方法は、環境光レベルに基づいて光を変化させることを含み得る。
【0042】
本方法は、レンズ後方のコントラストセンサでレンズを通過した像コントラスト像を測定することと、電子回路で(例えばフィードバックループを提供して)周辺像コントラストを略一定に維持すること(例えば、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下で異なるようにする)を含み得る。
【0043】
本開示の実施形態の利点として特に、環境刺激と他の刺激に順応する視覚経験を与えながら、人間、例えば子供の近視の進行を軽減することができることが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図2A】
図1Aに示される動的レンズの使用時の断面図である。
【
図3】
図3Aと
図3Bは、それぞれ、第一動作状態のピクセルを特徴とする動的レンズの一実施形態の平面図と断面図である。
図3Cと
図3Dは、それぞれ、第二動作状態の
図3Aと
図3Bに示される動的レンズの平面図と断面図である。
【
図4A】拡張現実(AR)ヘッドセットの斜視図である。
【
図4B】
図4Aに示されるARヘッドセットで用いられるプロジェクションディスプレイモジュールの一実施形態の概略図である。
【
図5】着用者の周辺視野のコントラストを低下させる眼鏡の斜視図である。
【
図6】
図6Aは、動的レンズの他の実施形態の平面図である。
図6Bは、
図6Aに示される動的レンズの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
異なる図面中の同様の参照番号は同様の要素を指称している。
【0046】
図1Aと
図1Bを参照すると、眼用レンズ100は、互いに独立して異なる複数の光学的状態間で切り替え可能な二つの領域を含む。具体的には、レンズ100は、軸上領域102(つまり、レンズ100の光軸と交わる領域102)と、軸上領域102を取り囲む周辺領域104を含み、各領域が、その領域が入射光を部分的に散乱させる一つの状態と、その領域が透明(透過性)になる他の状態との間で切り替え可能である。レンズ100は、屈折力を有する二つの層110aと110bとの間にラミネートされた電気光学セルで構成された多層構造を有する。電気光学セルは、二つの対向する透明基板108aと108bの間に挟まれた電気光学物質の層124で構成されている。透明電極層106aと106bが、電気光学物質に隣接してそれぞれ基板108aと108bの対向面上に設けられる。
【0047】
頂部レンズ層110aは平凸層であり、その平坦な方の面が基板108aの頂面に取り付けられている(例えば、透明接着剤によって)。底部レンズ層は平凹層であり、その平坦な方の面が基板108bの底面に取り付けられている。従って、レンズ100はメニスカスレンズであり、その頂部の凸面は、頂部レンズ層110aの凸面によって与えられていて、その底部の凹面は、底部レンズ層110bの凹面によって与えられている。一般的には、レンズ100の全体的な屈折力は、これらの層の凸面と凹面の曲率を適切な選択することによって所望の値に設定可能なものである。例えば、レンズ100は、正の球面屈折力(球面度数)又は負の球面屈折力(球面度数)を有し得る。乱視の矯正及び/又は多焦点(例えば、累進)レンズも可能である。
【0048】
電極層106aと106bの各々は、領域102と104に対応する二つの電気絶縁領域を含む。これが、互いに別々の領域に対応する電気光学物質の電気的切り替えを可能にする。電極コネクタタブ112aと112bがレンズ100の周囲から延伸していて、電極層106aと10bを電源に接続するための電気接続点を与えている。電気絶縁ラインが、領域102に対応する各電極層の内側電極領域をタブ112aと112bを介して電源122に接続することを可能にしている。電極層106aと106bは、透明導電性物質(例えば、インジウムスズ酸化物等の透明導電性酸化物、導電性ポリマー、金属グリッド、カーボンナノチューブ、グラフェン、ナノワイヤメッシュ、極薄金属膜)製である。
【0049】
層124は、ポリマー分散液晶(PDLC,polymer dispersed liquid crystal)等の電気光学物質で構成され、そのPDLCとは、液晶物質(例えば、ネマチック液晶)を液体ポリマー中に分散又は溶解させ、次いで、固化又は硬化させることでポリマーマトリクス中の液晶ドロップレットの分散体を形成しているものである。一般的に、ポリマーの屈折率と液晶(LC)の屈折率は、電場印加時の液晶の配向が液晶ドロップレットとポリマーとの間の屈折率整合状態をもたらし、層124がレンズに入射する光に対して実質的に透明(透過性)になるように選択される。電場が無い状態では、液晶の配向子の向きはランダムとなり、入射光が少なくとも部分的に散乱される。散乱量は、印加電場の強さで制御可能である。従って、中間散乱状態(透明と最大散乱量との間の状態)も可能である。
【0050】
他の電気光学物質も使用可能である。例えば、一部実施形態の電気光学物質は、タングステン酸化物及び/又はホスファフェナレン等のエレクトロクロミック物質(例えば、印加電場に応じて色を変化させることによって、光を遮断及び/又は吸収する物質)で構成される。
【0051】
一部実施形態では、層124の電気光学物質は、懸濁粒子デバイスで構成され、これは、典型的には液体中に懸濁されたロッド状ナノ粒子から形成される。懸濁粒子は電極同士の間を自由に漂う。電場が存在しないと、懸濁粒子はランダムに組織化して光を散乱させる。電位が存在すると、懸濁粒子は整列して光を通過させる。
【0052】
電極層106aと106bは、透明基板108aと108b上に形成され、上部と底部に位置する基板108aと108bは、ガラス、プラスチック、又は他の適切な透明基板材製となり得る。電極層の物質は、例えばコーティングや物理的堆積プロセス(例えば、スパッタリング)等の多様な工程を用いて基板上に形成され得る。
【0053】
他の電極形状も可能であり、例えば、インタディジタル(櫛歯型)電極(例えば、単一の表面隣接層124上のもの)が挙げられる。
【0054】
頂部レンズ層110aと底部レンズ層100bは、それぞれ頂部の基板108aと底部の基板108bの外側面に取り付けられ、ガラスや透明ポリマー(例えば、ポリカーボネートやTrivex(トライベックス))や他の適切な透明レンズ材等の透明物質から形成される。透明接着剤を用いて、レンズ層を対応の基板面に接着し得る。
【0055】
一部実施形態では、頂部レンズ層110aと底部レンズ層110bの外側表面は、他の物質の一つ以上の層を含み得て、そうした層として、傷防止コーティング、ミラーコーティング、偏光フィルム、紫外線コーティング、引っかき防止コーティング、反射防止コーティング等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
一部実施形態では、頂部レンズ層と底部レンズ層の平坦な表面が、電極を形成するための表面を与えるので、別途の基板層が必要とされない。
【0057】
更に、層124は均一な層、つまり、領域102と領域104において組成が同じものとして示されているが、他の実施形態も可能である。例えば、層124は、異なる組成を有する複数の領域で構成され得る。例えば、領域102において、層124は領域104とは異なる組成を有し得る。例えば、層124は、領域102において透明物質(例えば、透明ポリマー)で構成され、領域104において光学的切り替え可能物質(例えばPDLC)で構成され得る。
【0058】
図2Aを参照すると、領域102と104のサイズと位置は、眼用レンズの使用者の凝視軸116がレンズの光軸と実質的に整列して(例えば、使用者がレンズを含む眼鏡を通して真正面を見る場合)、領域102が中心窩視覚と一致し、領域104が周辺視野118と一致するようにして決められる。従って、レンズ100は、周辺像の光散乱量を異ならせて、使用者の視覚系のこの領域における像コントラスト低下量を制御することができる。
【0059】
例えば、PDLC等の電気光学物質を用いるレンズの場合、適切な強度の電場を層124に印加することによって、レンズ100は、二つの以上の異なる光学的状態で切り替えられるものとなる。電場は、電極層106aと電極層106bにわたって電位差を与えることによって印加される。
【0060】
「オフ」状態又は不活性状態において(例えば、層124にわたる電場が存在しない場合)、層124の電気光学物質は入射光を散乱させて、コントラストの低下した像を与える。「オン」状態又は活性状態において(例えば、十分な強度の電場が印加されている場合)、層124の電気光学物質は、透明になる。一部実施形態では、電極が活性化されているが、層124から全ての光散乱を無くすには不十分な強度の電圧である場合に、中間散乱状態が与えられる。電位の強度が増加するにつれて、層124が徐々に透明になっていく。
【0061】
従って、軸上領域102と周辺領域104の両方が、互いに独立して、一つ以上の散乱状態と透明状態との間で切り替え可能となる。多くの応用において、軸上領域は透明状態に維持される一方で、領域104によって与えられる散乱量が変化する。
【0062】
軸上領域102のサイズと形状は多様になり得る。一般的には、軸上領域102は、視力が最適に矯正され得る(例えば、20/15や20/20に矯正される)視円錐を使用者に与える。一部実施形態では、軸上領域102は、略0.2mmから(例えば、略0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上)から略1.5cmまで(例えば、略1.4cm以下、略1.3cm以下、略1.2cm以下、略1.1cm以下、略1cm以下)の範囲内の最大寸法を有する。軸上領域102は円形となるか(
図1Aに示されるように)、又は、非円形(例えば、楕円、多角形、不規則形状)となり得る。
【0063】
軸上領域102は、使用者の視野118内において略20度以下(例えば、略15度以下、略12度以下、略10度以下、略9度以下、略8度以下、略7度以下、略6度以下、略5度以下、略4度以下、略3度以下)の立体角に対し得る。水平視野平面に対する立体角と垂直視野平面に対する立体角は同じ又は異なるものとなり得る。
【0064】
領域104は使用者の周辺視力に対応している。周辺領域104は、レンズの縁まで延伸するか(
図1Aに示されるように)、又は、レンズの周囲までは延伸しないものとなり得る。一般的に、領域104は、レンズの縁までは延伸しない場合、多様な形状(例えば、円形、楕円形、多角形、又は他の形状)を有し得る。一般的に、領域104は、領域102を通して直接見ない場合であっても使用者の視野の実質的な部分にわたって使用者の周辺視力のコントラストを低下させるのに十分な大ききとなる。周辺領域104は、30mm以上(例えば、40mm以上、50mm以上、60mm以上、70m以上、80mm以上、また、例えば、100mm以下、90mm以下、80mm以下、70mm以下、60mm以下)の直径(又は、非円形の領域の場合の最大寸法)を有し得る。
図2Bを参照すると、近視の進行を抑制するための眼鏡200は、眼鏡フレーム210内に二つの光学的切り替え可能レンズ100を含む。フレーム210は、センサ142と、電子コントローラ114と電源112も収容している。コントローラ114は、レンズの電極に電気信号を与えて、領域102及び/又は領域104を異なる光学的状態の間で切り替える。一部実施形態では、眼鏡はユーザインタフェース(例えば、オン/オフスイッチや他の手動制御部)を含み、それを用いて、使用者がレンズの光学特性を手動で変更することができる。例えば、着用者が、着用者の周辺視野に高コントラストの網膜刺激を生じさせると知られている活動に従事する場合には、オンにして、領域104の光散乱量を増やすことができる。逆に、着用者が、着用者の視野全体にわたる最大視力を要する活動に従事する場合には、領域104の散乱をオフにして、レンズ100の全領域を透明にする。
【0065】
センサ142は、着用者の環境に関する一つ以上の態様を監視して、対応のデータをコントローラ114に与えて、コントローラが、着用者の環境についての情報に応じて片方又は両方のレンズの光学特性を変更することができるようにする。センサ142は、例えば、環境光センサ、近接性センサ、及び/又はイメージセンサを含み得る。
【0066】
一般的に、動作中において、眼鏡200は、着用者の周辺視野が高コントラスト像に晒されていそうな状況に対応する環境状態を検出し、それに応じて各レンズの領域104の散乱量を増減させる。例えば、センサ142からのイメージ又は近接性データを用いて、眼鏡200は、着用者が近くで何かを読んでいる(例えば、本や新聞を読んでいる、モバイルデバイスでコンテンツを読んでいる)ことを検出して、例えば使用者が何かを読んでいない場合と比較して、領域104中の散乱量を増やすことができる。代替的に又は追加的に、眼鏡200は、例えば、環境光センサを用いて、微光環境であると決定して、領域104中の光散乱量を減らすことができる。
【0067】
一部実施形態では、眼鏡の周辺領域内の一つ以上のセンサが、レンズ後方のコントラスト(つまり、光がレンズを透過した後のコントラスト)を測定する。制御ユニットのフィードバックループで、この測定結果を用いて、電気光学セルの光散乱を調節する。結果として、周辺においてレンズを透過した周辺コントラストが、視られている像のコントラストにかかわらず、一定レベルに維持され得る。
【0068】
一部実施形態では、散乱状態において、光学的切り替え可能物質は、着用者の周辺視野内の物体の像のコントラストを、その領域内の観察者の視力を顕著に落とさずに、低下させるのに十分な散乱を与えることができる。ここで、周辺視野とは、領域102に対応する視野外の視野のことを称する。領域104内の像コントラストは、領域102を通して視られる像コントラストに対して40%以上(例えば、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上)低下し得る。コントラスト低下は、個別の状況における必要性に応じて設定され得る。典型的なコントラスト低下は略50%から55%の範囲内にあると考えられる。50%未満のコントラスト低下が、極めて穏やかな場合には使用可能であるが、その影響を受け易い対象者は、55%よりも高いコントラスト低下を必要とし得る。有意なコントラスト低下を達成しながらも、周辺視力が、自覚式屈折で決定されるものとして、20/30以上(例えば、20/25以上、20/20以上)に矯正され得る。
【0069】
ここで、コントラストとは、同じ視野内での二つの物体間の輝度の差のことを称する。従って、コントラスト低下は、この差の変化のことを称する。
【0070】
コントラストとコントラスト低下は多様な方法で測定され得る。一部実施形態では、コントラストは、管理された条件下において透明状態のレンズの領域と散乱状態の領域を通して得られる標準パターン(例えば、白黒の市松模様)の異なる部分と部分の間の輝度の差に基づいて測定され得る。
【0071】
代替的な又は追加的に、コントラスト低下は、レンズの光学伝達関数(OTF,optical transfer function)に基づいて決定され得る(例えば、非特許文献1を参照)。OTFの場合、コントラストは、明領域と暗領域を多様な「空間周波数」において正弦曲線的に変調させる刺激の伝達として特定される。その刺激は、交互の明色バーと暗色バーが、或る範囲にわたって変化しているバー同士の間の間隔を有しているものとして見える。全ての光学系にとって、コントラストの伝達は、最も高い空間周波数を有して正弦曲線状に変化する刺激の場合に最も低くなる。全ての空間周波数についてコントラストの伝達を記述する関係式がOTFである。OTFは、点広がり関数のフーリエ変換によって得られる。点広がり関数は、レンズを通して検出器アレイに向かう光の点光源のイメージングと、点からの光が検出器にわたってどのように分布しているのかを求めることによって得られる。
【0072】
測定結果が矛盾する場合には、OTF法が優先される。
【0073】
一部実施形態では、レンズの光学特性を制御するのに使用可能な他のソースからの情報を眼鏡200が受信し得る。例えば、眼鏡200は、他のデバイス(例えば、携帯電話)とコントローラ114との間のデータ転送を促進する無線送受信器(例えば、Wi‐Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)データ転送用のもの)を含み得る。例えば、眼鏡は、使用者の位置(例えば、GPSや携帯基地局のデータに基づく)、使用者の動き(例えば、使用者が歩いている又は運転している)及び/又は使用者の活動(例えば、ビデオコンテンツを見ている、読書している、デバイスを用いてビデオゲームで遊んでいる)についての情報を受信して、それに応じて周辺光散乱を増減させることができる。
【0074】
レンズ100は、レンズの二つの異なる領域(領域102と104)に対応している分割電極を特徴としているものであるが、他の実施形態も可能である。例えば、一部実施形態では、レンズを二つよりも多くの領域に分割し得る。例えば、領域104を、異なる光学的状態の間で独立して変化可能な複数の領域(例えば、同心円状の領域)に更に分割し得る。
【0075】
特定の実施形態では、動的レンズは、独立してアドレス指定可能な複数のピクセルからなるアレイを含み得る。例えば、
図3Aを参照すると、眼用レンズ300は、複数のピクセル310からなるアレイを含み、各ピクセルは異なる光学的状態(例えば、透明と散乱)の間で独立して切り替え可能である。
【0076】
図3Bを参照すると、レンズ300は、上述のレンズ100と同様の構造を有するが、電極層306aと306bがピクセルアレイ310を与えるようにパターン化されて構成されている点が異なる。また、電極接続タブ312が、採用されている電極駆動方式に適した電気接続端子を与えている。
【0077】
一般的に、レンズ300のピクセルは、アクティブ(能動的)又はパッシブ(受動的)にアドレス指定されるピクセルであり得る。例えば、アクティブアドレス指定ピクセルの各々は、そのピクセルにおける電場を制御する集積回路(例えば、一つ以上のトランジスタを含むもの)を含み得る。パッシブアドレス指定ピクセルは、電極層306a/306bのうち一方の上にコンダクタの列を形成し、他方の上にコンダクタの行を形成することによって与えられ得る。液晶ディスプレイに従来適用されているアクティブとパッシブのアドレス指定方式が使用可能である。
【0078】
各ピクセル310のサイズは所望の通りに多様なものとなり得る。一部実施形態では、ピクセルは、1mm以下(例えば、0.5mm以下、0.3mm以下、0.2mm以下、0.1mm以下、0.05mm以下)の最大寸法を有し得る。
【0079】
ピクセル化されたレンズは、レンズの散乱特性の精細な空間調節を可能にするだけけではなく、レンズのクリアな領域の位置及び/又は形状を変更することも可能にする。例えば、
図3A及び
図3Bは、レンズ中心の領域302を示す。この領域に対応しているピクセルは、
図3Bに示されるように、使用者がこの領域を通して直接見る場合に、透明状態に切り替え可能である。つまり、使用者の凝視軸316aは、領域302aを直接通過して、使用者の中心窩視野に対する最適な視力を与える。レンズの残りの領域(領域302aの外側)に対応しているピクセルは、散乱状態に切り替えられる。従って、使用者の周辺視野は、層124における光散乱に起因してコントラストの低下した像を受ける。
【0080】
図3C及び
図3Dを参照すると、レンズ300は、レンズの中心から離れる動く使用者の凝視軸に応答して、レンズの光学特性を動的に調節する。ここでは、使用者が下方を見ていて(例えば、読書をしている)、レンズが、軸外領域302bのピクセルを活性化させて、使用者の調節された凝視軸316bに一致するクリアなアパーチャを与えている。更に、レンズは、領域302b外のピクセルを散乱状態に切り替えて、使用者の周辺視野318bにコントラストの低下した像を与える。
【0081】
レンズ300を搭載した眼鏡は、視線追跡(アイトラッキング)センサを含み得て、コントローラが、視線追跡センサからのデータに応答して、クリアアパーチャの位置を調節するようにプログラムされ得る。一般的に、多様で適切な視線追跡法が使用可能である。例えば、カメラで直接瞳孔を撮ることによって、又はレンズの後側での瞳孔反射を視ることによって視線追跡を行うことができる。
【0082】
上記の全ての例では、入射光を散乱させることによって、使用者の周辺視野における像のコントラストを低下させるレンズを特徴としているが、他の実施形態も可能である。例えば、周囲環境の像形成光を光に追加することによって、像のコントラストを低下させることができる。従って、一部実施形態では、眼鏡は、使用者の周辺視野に光を伝達するように配置構成された光源を含み得る。このような実施形態として挙げられるのは、例えば、拡張現実(AR)眼鏡であり、例えば、使用者の視野にコンピュータ生成画像を重ねるためのプロジェクションディスプレイシステムを含むものである。
【0083】
図4Aを参照すると、ARヘッドセット400の一例は、屈折力を生じさせている状態又は生じさせていない状態となり得る一対のレンズ420を保持するフレーム410を含む。ヘッドセット400は、一対のプロジェクションディスプレイモジュール430を更に含み、各プロジェクションディスプレイモジュールは、着用者の視野に画像を表示するように位置決めされている。ARヘッドセット400は、センサ442と、視線追跡センサ444と、コントローラ414と、電源422を含む。
【0084】
センサ442は、使用者の環境についてのデータをコントローラに与える。センサ442としては、環境光センサ、像センサ(例えば、使用者の視野を監視するためのもの)、近接性センサ、加速度計等が挙げられるがこれらに限定されない。視線追跡センサ444は、使用者の瞳孔の位置を監視して、凝視データ(例えば、凝視の方向や持続時間/強さ)、例えば、使用者の凝視軸416の方向と視野418をコントローラ414に与える。
【0085】
コントローラ414は、センサ442と視線追跡センサ444からのデータを受信して、そのデータに応じてプロジェクションディスプレイモジュール430を制御する。
【0086】
図4Bを参照すると、プロジェクションディスプレイモジュール430は、プロジェクションディスプレイ434とビームスプリッタ432を含む。プロジェクションディスプレイ434は光426をビームスプリッタ432に伝え、ビームスプリッタがその光を使用者の視野内に向け直す。従って、使用者の視野は、ビームスプリッタ432を透過した環境光424に加えて、プロジェクションディスプレイからの光426を受ける。ヘッドセット450は、光426を変調して、プロジェクションディスプレイ434からの光が使用者の周辺視野418のみに限定される一方で、使用者の中心視野416に対応している領域402には光を伝えないようにする。視線追跡センサ444からのデータを用いて、プロジェクションディスプレイモジュールは、投影された光場を動的に変調して、領域402が中心視野416と一致するようにする。このようにして、プロジェクションディスプレイからの光426は、中心視野内の像に影響を与えずに、使用者の周辺視野に形成される像のコントラストを低下させる。
【0087】
更に、上述の実施形態のように、ARヘッドセット400は、環境変化及び/又は使用者の動作に応答して使用者の周辺視野におけるコントラスト低下量を適合させることができる。
【0088】
一般的に、プロジェクションディスプレイ434は、光変調器、例えば、MEMS(微小電気機械システム)ミラーアレイやLCD(液晶ディスプレイ)(例えば、LCOS(液晶オンシリコン)LCD)を含み得る。プロジェクションディスプレイ434は、光変調器に光を与えるための一つ以上の光源(例えば、一つ以上の発光ダイオード(LED)等)も含み得る。プロジェクションディスプレイ434は、ビームスプリッタ432に光を伝えるために光変調器によって変調される前及び/後の光を成形する追加部品(イメージング光学素子及び/又は導光体)を含み得る。
【0089】
代わりのプロジェクションディスプレイモジュールも使用可能である。例えば、ビームスプリッタではなく、プロジェクションディスプレイモジュールは、プロジェクションディスプレイからの光を使用者の眼に伝える導光フィルムを含み得る。
【0090】
全般的に上記例は眼鏡形状のARヘッドセットのものであるが、より一般的には、多様なARヘッドセットが使用可能である。例えば、ARゴーグルが使用可能である。更に、電子コントローラと電源はヘッドセット400の眼鏡内に集積されているものとして図示されているが、一部実施形態では、制御電子機器及び/又は電力供給部は、ヘッドセットと別であり得て、ケーブル及び/又は無線でヘッドセットの部品と通信(やり取り)することができる。
【0091】
他の実施形態も可能である。例えば、一部実施形態では、眼鏡又はヘッドセットのフレームに搭載された一つ以上のLEDによって放出された光を用いて、使用者の周辺視野のコントラストを低下させることができる。
図5を参照すると、このことを実現するシステムの例は眼鏡500であり、フレーム510、レンズ520(例えば、Rx(度付き)レンズ)、着用者の方に向けてフレーム510のリム(縁部)に搭載されたLED530を含む。着用者は、例えばスライドスイッチ540を用いて、LEDの輝度を手動で制御することができる。代替的に又は追加的に、LED530の輝度は自動制御可能であり、例えば、上述のようなセンサとフィードバック機構を用いて、及び/又は、遠隔で、例えば、無線接続を介したモバイルデバイスのアプリケーションを用いて、自動制御される。
【0092】
LED530は、放出光を特定の方向に向ける一つ以上の光学部品(例えば、一つ以上のレンズ)を含み得て、例えば、使用者の周辺視野内のコントラストのみを顕著に低下させ、中心窩視力がほとんど影響を受けないようにする。
【0093】
また、LED530は、着用者の網膜に直接光を当てるように配置されているが、一部実施形態では、LEDからの光は間接的に与えられるものとなり得て、例えば、レンズ520の背面からの反射によるものとなり得る。
【0094】
上記実施形態は、入射光を散乱させることによって使用者の周辺視野内の像の像コントラストを低下させる実施形態を含むものであるが、網膜から離れた像の焦点位置を移動させる非同軸レンズレットのアレイを特徴とするレンズも、近視の進行を防止及び/又は遅延させるのに有用であると考えられる。例えば、特許文献2と特許文献3を参照。従って、一部実施形態では、眼用レンズは、少なくとも二つの状態の間で切り替え可能であり、その一つの状態において、レンズは従来の平レンズ又はRx(度付き)レンズとして機能して、使用者に屈折力を与えない、単焦点を与える、又は多焦点像補正を与えるものとなる(つまり、基本状態)。少なくとも一つの他の状態において、レンズは、非同軸の近視性デフォーカス(MD,myopic defocus)を与える複数の領域を含む。例えば、
図6Aを参照すると、眼用レンズ600は、軸上領域602(例えば、レンズ600の光軸及び/又は使用者の遠方視軸と交わる領域602)と、軸上領域602を取り囲む周辺領域604を含み、各領域は、近視性デフォーカス状態と他の状態(レンズが屈折力を与えない又は従来のRx(度付き)レンズとして機能する状態)との間で切り替え可能である。近視性デフォーカス(MD)状態では、領域604は複数のレンズレット606を含むことを特徴とし、各レンズレットがレンズの残りの部分とは異なる屈折力を有する。例えば、各レンズレット606は、近視の進行速度を抑制するのに十分なように使用者の網膜の前方に正の焦点距離の光を伝え得る。
【0095】
一般的に、レンズレット606が与える屈折力の量は、その実施に応じて多様なものとなり得る。一部実施形態では、近視性デフォーカス(MD)状態において、レンズレット606は、レンズ600の基本屈折力よりも+0.5D以上(例えば、+1.0D以上、+2.0D以上、+3.0D以上、+4.0D以上、+5.0D以上、+6.0D以上、+7.0D以上、+8.0D以上)の屈折力を有する。一部実施形態では、各レンズレットは、0Dから最大屈折力までの複数の異なる状態間で切り替え可能である。
【0096】
レンズレット606のサイズ及び/又は形状も多様なものとなり得る。例えば、レンズレットは、0.4mmから5mmの範囲内(例えば、0.5mm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、4mm以下、3mm以下)の直径を有する円形となり得る。一部実施形態では、レンズレット606は、0.4mmから5mmの範囲内(例えば、0.5mm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、4mm以下、3mm以下)の最大寸法を有する細長形状(例えば、楕円)のものである。
【0097】
一般的に、多様な適切な電気光学技術が切り替え可能なレンズレットアレイを提供するのに使用可能である。例えば、特許文献4や特許文献5等に記載の可変焦点LC技術が使用可能である。
【0098】
例えば、
図6Bを参照すると、一部実施形態では、レンズ600は、屈折力を有する二つの層610aと610bの間にラミネートされた電気光学セルで構成された多層構造を有する。電気光学セルは、透明分離層625によって分離された液晶(LC)物質の二つの層624aと624bで構成される。層624aと624bも、二つの対向する透明基板108aと108bの間に挟まれる。透明基板624aと624bの各々は、対応のLC層に隣接した透明電極を支持する。透明分離層625の両側も透明電極層を支持する。電極層を信号発生器に接続するための電気接続を与えるタブ612を介して電極が電気的にアクセス可能なものとなっている。ここでは、電気光学セルは二つの別々に切り替え可能なLCセルで構成され、各LCセルは、二つの透明電極層の間のLC物質の層で構成される。電極層は、例えば上述のもののようにパターン化された電極層となり得て、アクティブ又はパッシブのアドレス指定ピクセルを含み得る。また、各LCセルは、電極層の上に形成された配向層(例えば、けがき(buffed,バフ仕上げ)ポリマー層)も含み得る。配向層は、電極に隣接するLC物質の好ましい配向方向を保証する。層614a中のLC物質の配向方向は、層624b中の配向方向と直交し得て、セルを介する直交偏光状態の屈折率変化を保証する。
【0099】
頂部レンズ層610aは平凸層であり、その平坦な方の面が基板608aの頂面に取り付けられる(例えば、透明接着剤を用いて)。底部レンズ層は平凹レンズであり、その平坦な方の面が基板608bの底面に取り付けられる。従って、レンズ600はメニスカスレンズであり、その頂部凸面が頂部レンズ層610aの凸面によって与えられ、底部凹面が底部レンズ層610bの凹面によって与えられる。一般的に、レンズ600の基本屈折力は、それら層の凸面と凹面の曲率を適切な選択することによって所望の値に設定可能なものである。例えば、レンズ600は、正の球面屈折力(球面度数)又は負の球面屈折力(球面度数)を有し得る。乱視の矯正及び/又は多焦点(例えば、累進)レンズも可能である。
【0100】
他の切り替え可能なレンズ技術も展開可能である。例えば、光学流体及び/又は電気活性ポリマーを用いた可変焦点レンズが使用可能である。例えば、特許文献6を参照。更に、レンズ600はレンズレットのアレイを特徴とするものであるが、他の実施形態も可能である。例えば、より一般的に、近視性デフォーカス(MD)を与える領域は、レンズレットアレイ以外の他の形状に成形可能である。一部実施形態では、周辺領域全体の屈折力を調節して、近視性デフォーカス(MD)を与えるのに十分な屈折力を与えるようにする一方で、中心領域が遠方視力用の屈折力を与えるようにする。他の例では、アパーチャを囲む異なる屈折力の複数の切り替え可能な環状領域を用いることができる(例えば、特許文献7の構造を参照)。このようなレンズの一例が
図7に示されるレンズ700である。ここで、レンズ700は、軸上領域702(例えば、遠方視力用の矯正を有する)と、一連の複数の環状領域705a~705eを含み、各環状領域は、隣接する領域に対して異なる屈折力を有する。各領域の屈折力は、互いに別々の制御可能であり、異なる屈折力を有するように変更可能である。一つ以上の領域が、少なくとも特定の状態において、像に近視性デフォーカス(MD)をもたらす屈折力を有し得る。
【0101】
「電子コントローラ」との用語は、データ処理ハードフェアのことを称し、データを処理するためのあらゆる種類の装置、デバイス、機器を含むものであり、例えば、プログラマブルプロセッサが挙げられる。また、コントローラは、専用論理回路、例えば、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)やASIC(特定用途向け集積回路)であるか、又はこれらを更に含み得るものである。コントローラは、任意選択的に、ハードウェアに加えて、コンピュータプログラム用の実行環境を生じさせるコード、例えば、プロセッサファームウェア、プロトコルスタック、データベース管理システム、オペレーティングシステム、これらのうち一つ以上の組み合わせを構築するコードを含み得る。
【0102】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリ、モジュール、ソフトウェアモジュール、スクリプト、コードとも称される)は、コンパイラ型言語、インタプリタ型言語、宣言型言語、手続き型言語等のあらゆる形式のプログラミング言語で記述され得て、また、スタンドアローンプログラムとして、又は、計算環境での使用に適したモジュール、コンポーネント、サブルーチン、他のユニット等のあらゆる形式で展開可能である。プログラムは、ファイルシステム中のファイルに対応し得るが、必須ではない。プログラムは、他のプログラムやデータを保持するファイルの一部に記憶され得て、例えば、マークアップ型言語文書に記憶された一つ以上のスクリプト、対象プログラム専用の単一ファイル、複数のコーディネート済みファイル、例えば、一つ以上のモジュール、サブプログラム、又はこコードの一部を記憶するファイルに記憶される。コンピュータプログラムは、一つのコンピュータで実行されるか、又は一箇所に位置する又は複数箇所にわたって分散していてデータ通信ネットワークによって相互接続されている複数のコンピュータで実行されるように展開可能である。
【0103】
本明細書に記載のプロセスと論理フローは、一つ以上のプログラマブルコンピュータによって実行可能であり、一つ以上のコンピュータプログラムが、入力データで動作して、出力を生成することでその機能を果たす。プロセスと論理フローは、専用論理回路(例えば、FPGAやASIC)によっても実行可能であり、専用論理回路と一つ以上のプログラム済みコンピュータの組み合わせによっても実行可能である。
【0104】
コンピュータプログラム命令とデータを記憶するのに適したコンピュータ可読媒体は、あらゆる形式の不揮発性メモリ、メディア、メモリデバイスを含み、例えば、半導体メモリデバイス(例えば、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリデバイス)、磁気ディスク(例えば、内蔵ハードディスクやリムーバブルディスク)、磁気光学ディスク、CD‐ROM、DVD‐ROMのディスクが挙げられる。
【0105】
複数の実施形態を説明してきたが、他の実施形態が添付の特許請求の範囲内にあるものである。
【符号の説明】
【0106】
100 眼用レンズ
102 軸上領域
104 周辺領域
106 電極層
108 基板
110 レンズ層
112 タブ
114 電子コントローラ
116 凝視軸
118 周辺視野
122 電源
142 センサ
200 眼鏡
210 眼鏡フレーム
【手続補正書】
【提出日】2021-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用レンズであって、
該眼用レンズの光学面の第一エリアに対応している第一領域と、
前記第一領域と異なる該眼用レンズの光学面の第二エリアに対応している第二領域と、を備え、
前記第二領域が第一光学的状態と前記第一光学的状態と異なる第二光学的状態との間で切り替え可能な光学的切り替え可能部品を備え、前記第一光学的状態において前記第二領域が前記第二エリアに入射する光を部分的に散乱又はデフォーカス
し、
前記第二光学的状態において前記第二領域が、前記第一光学的状態とは異なる量で前記第二エリアに入射する光を部分的に散乱させる、眼用レンズ。
【請求項2】
少なくとも一つの光学的状態において前記第一エリアが実質的に透明なエリアである、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項3】
前記第一エリアが、略2mmから略10mmの範囲内の最大寸法を有する、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項4】
前記第一エリアが円形エリアである、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項5】
前記第一領域が前記光学的切り替え可能部品を備え、透明光学的状態と部分的散乱光学的状態との間で切り替え可能である、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項6】
前記第二エリアが前記第一エリアを取り囲む、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項7】
前記第二光学的状態において前記第二領域が実質的に透明である、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項8】
前記光学的切り替え可能部品が二つよりも多くの光学的状態の間で切り替え可能である、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項9】
前記光学的切り替え可能部品が異なる複数の光学的状態の間で連続的に調整可能である、請求項
8に記載の眼用レンズ。
【請求項10】
前記第一エリアが前記眼用レンズの光軸と交わる、
及び/又は、前記第一エリアが遠方視力用の使用者の中心窩視野と一致している、請求項1に記載の眼用レンズ。
【請求項11】
眼用レンズであって、
該眼用レンズの光学面の第一エリアに対応している第一領域と、
前記第一領域と異なる該眼用レンズの光学面の第二エリアに対応している第二領域と、を備え、
前記第二領域が第一光学的状態と前記第一光学的状態と異なる第二光学的状態との間で切り替え可能な光学的切り替え可能部品を備え、前記第一光学的状態において前記第二領域が前記第二エリアに入射する光を部分的に散乱又はデフォーカスし、
前記第二エリアが異なる複数の屈折力の間で切り替え可能であり、前記第二エリアが、前記第一エリアの屈折力に対応している第一屈折力と、前記第二エリアが前記眼用レンズを通る光に近視性デフォーカスをもたらす第二屈折力との間で切り替え可能である
、眼用レンズ。
【請求項12】
前記第二エリアが一つ以上のレンズレットに対応している、請求項
11に記載の眼用レンズ。
【請求項13】
前記第二エリアが一つ以上の環状領域に対応している、請求項
11に記載の眼用レンズ。
【請求項14】
前記光学的切り替え可能部品が電気光学物質を備える、請求項1
又は11に記載の眼用レンズ。
【請求項15】
前記電気光学物質が液晶物質を備える、請求項
14に記載の眼用レンズ。
【請求項16】
前記電気光学物質がポリマー分散液晶(PDLC)物質である、請求項
15に記載の眼用レンズ。
【請求項17】
前記電気光学物質が二つの透明基板の間の層内に位置
し、少なくとも一つの基板が電極層を支持する、請求項
14に記載の眼用レンズ。
【請求項18】
前記電極層が、透明導電性物質製である、請求項
17に記載の眼用レンズ。
【請求項19】
各基板が電極層を支持し、少なくとも一つの電極層が、前記第一領域に対応する第一電極と前記第二領域に対応する第二電極とを備えるパターン化電極層である、請求項
18に記載の眼用レンズ。
【請求項20】
人間の周辺視野に形成される像のコントラストを低下させるための方法であって、
前記人間が使用している眼用レンズの光学的切り替え可能物質を用いて、前記眼用レンズのエリアにおける散乱量を変化させることを備える方法。
【請求項21】
前記変化させることが、
(i)入射光を散乱させる眼用レンズのエリアを変化させることと透明である眼用レンズのエリアを変化させること
、(ii)入射光を散乱させる眼用レンズのエリアのサイズを変化させること、及び、(iii)入射光を散乱させる眼用レンズの箇所を変化させること、のうち一つ以上を備える、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記人間の視覚作業に基づいて前記散乱量を変化させる、請求項
20に記載の方法。
【請求項23】
前記人間の眼の動きに基づいて前記散乱量を変化させる、請求項
20に記載の方法。
【請求項24】
前記眼用レンズの透明なエリアを前記人間の中心視軸と整列させ、散乱領域を前記人間の周辺視野と整列させるように前記散乱量を変化させる、請求項
23に記載の方法。
【国際調査報告】