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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】発光構造、表示パネル及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20220616BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20220616BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220616BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20220616BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20220616BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H05B33/22 A
H05B33/14 Z
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/26 Z
H05B33/12 B
G09F9/30 365
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020572775
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 CN2020076750
(87)【国際公開番号】W WO2020215882
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】201910343913.6
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(71)【出願人】
【識別番号】519385216
【氏名又は名称】北京京▲東▼方技▲術▼▲開▼▲発▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE TECHNOLOGY DEVELOPMENT CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 407,Building 1,No.9 Dize Road,BDA,Beijing,100176,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲東▼
(72)【発明者】
【氏名】▲梅▼ 文▲海▼
(72)【発明者】
【氏名】ボリス・クリスタル
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD26
3K107DD57
3K107DD74
3K107DD85
3K107FF04
3K107FF13
3K107FF14
3K107FF19
5C094AA10
5C094AA37
5C094BA12
5C094BA27
5C094BA32
5C094CA24
5C094FA01
5C094FB02
5C094JA01
5C094JA03
(57)【要約】
発光構造、表示パネル及び表示装置であって、該発光構造(100)は、第1発光層(111)と、第1電子輸送層(112)と、第1陰極(113)とを含む第1発光素子(110)を含み、第1陰極(113)は第1電子輸送層(112)に接触して設置され、第1電子輸送層(112)の伝導帯下端のエネルギー準位は第1陰極(113)のフェルミ準位よりも高く、第1電子輸送層(112)の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極(113)のフェルミ準位との差の範囲は0.3~0.6eVである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光構造であって、
第1発光層と、第1電子輸送層と、第1陰極とを含む第1発光素子を含み、
前記第1陰極は前記第1電子輸送層に接触して設置され、前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第1陰極のフェルミ準位よりも高く、前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位と前記第1陰極のフェルミ準位との差の範囲は0.3~0.6eVである、発光構造。
【請求項2】
前記第1発光層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、前記第1電子輸送層はZnMgOナノ粒子を含み、前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は10%~20%である、請求項1に記載の発光構造。
【請求項3】
前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は13%~16%である、請求項2に記載の発光構造。
【請求項4】
前記第1発光層の材料はカドミウムフリー赤色量子ドット材料を含む、請求項2又は3に記載の発光構造。
【請求項5】
前記第1発光層の材料はインジウムリンを含む、請求項4に記載の発光構造。
【請求項6】
第2発光層と、第2電子輸送層と、第2陰極とを含む第2発光素子をさらに含み、
前記第2陰極は前記第2電子輸送層に接触して設置され、前記第1発光層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第2発光層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高い、請求項1~5のいずれか1項に記載の発光構造。
【請求項7】
前記第1陰極から前記第1電子輸送層への電子の障壁は前記第2陰極から前記第2電子輸送層への電子の障壁よりも大きい、請求項6に記載の発光構造。
【請求項8】
前記第1発光層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、前記第2発光層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、前記第2陰極のフェルミ準位は前記第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位とほぼ等しい、請求項6に記載の発光構造。
【請求項9】
前記第1電子輸送層はZnMgOナノ粒子を含み、前記第2電子輸送層はZnOナノ粒子又はZnMgOナノ粒子を含み、前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は前記第2電子輸送層におけるMgのモル百分率よりも高い、請求項6~8のいずれか1項に記載の発光構造。
【請求項10】
前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は10%~20%であり、前記第2電子輸送層におけるMgのモル百分率は5%未満である、請求項9に記載の発光構造。
【請求項11】
前記第1発光層及び前記第2発光層のうちの少なくとも1つは量子ドット発光層であり、前記第1陰極と第2陰極は同一導電層である、請求項6~10のいずれか1項に記載の発光構造。
【請求項12】
第3発光層と、第3電子輸送層と、第3陰極とを含む第3発光素子をさらに含み、
前記第3陰極は前記第3電子輸送層に接触して設置され、前記第3発光層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第1発光層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、前記第2発光層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、前記第3電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、前記第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高い、請求項6~11のいずれか1項に記載の発光構造。
【請求項13】
前記第3陰極から前記第3電子輸送層への電子の障壁は前記第2陰極から前記第2電子輸送層への電子の障壁よりも大きく、且つ前記第1陰極から前記第1電子輸送層への電子の障壁よりも小さい、請求項12に記載の発光構造。
【請求項14】
前記第1電子輸送層はZnMgOナノ粒子を含み、前記第2電子輸送層はZnOナノ粒子又はZnMgOナノ粒子を含み、前記第3電子輸送層はZnMgOナノ粒子を含み、前記第3電子輸送層におけるMgのモル百分率は前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率よりも低く、且つ前記第2電子輸送層におけるMgのモル百分率よりも高い、請求項12に記載の発光構造。
【請求項15】
前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は10%~20%であり、前記第2電子輸送層におけるMgのモル百分率は5%未満であり、前記第3電子輸送層におけるMgのモル百分率は5%~10%である、請求項14に記載の発光構造。
【請求項16】
前記第1電子輸送層の電子移動度は前記第2電子輸送層の電子移動度よりも低い、請求項6~15のいずれか1項に記載の発光構造。
【請求項17】
前記第3電子輸送層の電子移動度は前記第2電子輸送層の電子移動度よりも高く、且つ前記第2電子輸送層の電子移動度よりも低い、請求項12に記載の発光構造。
【請求項18】
前記第1発光層は赤色光を発光するように配置され、前記第2発光層は青色光を発光するように配置される、請求項6~17のいずれか1項に記載の発光構造。
【請求項19】
アレイ状に設置された複数の発光構造を含む表示パネルであって、
各前記発光構造は請求項1~18のいずれか1項に記載の発光構造である、表示パネル。
【請求項20】
請求項19に記載の表示パネルを含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年04月26日に提出された中国特許出願第201910343913.6号の優先権を主張し、ここで、上記中国特許出願に開示されている全内容が本願の一部として援用されている。
【0002】
本開示の実施例は発光構造、表示パネル及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0003】
表示技術の継続的な発展に伴い、表示装置の種類はますます多くなる。発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)表示装置は、自己発光、高輝度、低作動電圧、低消費電力、長耐用年数、耐衝撃性、及び性能安定等の利点を有するため、業界で幅広く注目されている。また、発光ダイオード表示装置は、バックライトモジュールを付加的に設置する必要がないため、軽量であり、表示装置の軽量化・薄型化に役立ち、従って、市場での将来性が期待できる。
【0004】
量子ドット(Quantum Dot、QD)は、新型発光材料であり、光色純度が高く、発光量子効率が高く、発光色が調整可能であり、耐用年数が長い等の利点を有し、現在の新型LED発光材料の研究ホットスポットとなっている。従って、量子ドット材料を発光層とする量子ドット発光ダイオード(Quantum Dot Light Emitting Diode、QLED)は、現在の新型表示デバイスの研究の主な方向となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の実施例は発光構造、表示パネル及び表示装置を提供する。該発光構造は、第1発光層と、第1電子輸送層と、第1陰極とを含む第1発光素子を含み、第1陰極は第1電子輸送層に接触して設置され、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位は第1陰極のフェルミ準位よりも高く、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極のフェルミ準位との差の範囲は0.3~0.6eVである。該発光構造において、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位が第1陰極のフェルミ準位よりも高いため、電子が第1陰極から第1電子輸送層へ障壁を越える必要があり、また、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極のフェルミ準位との差の範囲が0.3~0.6eVであり、それにより第1発光素子の電子注入効率を適切に低下させて第1発光素子の正孔注入効率とマッチングすることができ、さらに第1発光素子の発光効率及び安定性を向上させる。
【0006】
本開示の少なくとも1つの実施例は発光構造を提供し、第1発光層と、第1電子輸送層と、第1陰極とを含む第1発光素子を含み、前記第1陰極は前記第1電子輸送層に接触して設置され、前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第1陰極のフェルミ準位よりも高く、前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位と前記第1陰極のフェルミ準位との差の範囲は0.3~0.6eVである。
【0007】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1発光層の材料はカドミウムフリー量子ドット材料を含み、前記第1電子輸送層はZnMgOナノ粒子を含み、前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は10%~20%である。
【0008】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1発光層の材料はインジウムリンを含む。
【0009】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は13%~16%である。
【0010】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造は、第2発光層と、第2電子輸送層と、第2陰極とを含む第2発光素子をさらに含み、前記第2陰極は前記第2電子輸送層に接触して設置され、前記第1発光層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第2発光層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高い。
【0011】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1陰極から前記第1電子輸送層への電子の障壁は前記第2陰極から前記第2電子輸送層への電子の障壁よりも大きい。
【0012】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1発光層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、前記第2発光層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、前記第2陰極のフェルミ準位は前記第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位とほぼ等しい。
【0013】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1電子輸送層はZnMgOナノ粒子を含み、前記第2電子輸送層はZnOナノ粒子又はZnMgOナノ粒子を含み、前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は前記第2電子輸送層におけるMgのモル百分率よりも高い。
【0014】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は10%~20%であり、前記第2電子輸送層におけるMgのモル百分率は5%未満である。
【0015】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1発光層及び前記第2発光層のうちの少なくとも1つは量子ドット発光層であり、前記第1陰極と第2陰極は同一導電層である。
【0016】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造は、第3発光層と、第3電子輸送層と、第3陰極とを含む第3発光素子をさらに含み、前記第3陰極は前記第3電子輸送層に接触して設置され、前記第3発光層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第1発光層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、前記第2発光層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、前記第3電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位は前記第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、前記第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高い。
【0017】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第3陰極から前記第3電子輸送層への電子の障壁は前記第2陰極から前記第2電子輸送層への電子の障壁よりも大きく、且つ前記第1陰極から前記第1電子輸送層への電子の障壁よりも小さい。
【0018】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1電子輸送層はZnMgOナノ粒子を含み、前記第2電子輸送層はZnOナノ粒子又はZnMgOナノ粒子を含み、前記第3電子輸送層はZnMgOナノ粒子を含み、前記第3電子輸送層におけるMgのモル百分率は前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率よりも低く、且つ前記第2電子輸送層におけるMgのモル百分率よりも高い。
【0019】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1電子輸送層におけるMgのモル百分率は10%~20%であり、前記第2電子輸送層におけるMgのモル百分率は5%未満であり、前記第3電子輸送層におけるMgのモル百分率は5%~10%である。
【0020】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1電子輸送層の電子移動度は前記第2電子輸送層の電子移動度よりも低い。
【0021】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第3電子輸送層の電子移動度は前記第2電子輸送層の電子移動度よりも高く、且つ前記第2電子輸送層の電子移動度よりも低い。
【0022】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1発光層は赤色光を発光するように配置され、前記第2発光層は青色光を発光するように配置される。
【0023】
例えば、本開示の一実施例に係る発光構造において、前記第1発光層は赤色光を発光するように配置され、前記第2発光層は青色光を発光するように配置され、前記第3発光層は緑色光を発光するように配置される。
【0024】
本開示の少なくとも1つの実施例は表示パネルをさらに提供し、アレイ状に設置された複数の発光構造を含み、各前記発光構造は上記発光構造である。
【0025】
本開示の少なくとも1つの実施例は、上記表示パネルを含む表示装置をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本開示の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、実施例の図面を簡単に説明し、明らかに、以下に説明される図面は、本開示を制限するものではなく、本開示の一部の実施例に関するものに過ぎない。
【0027】
図1図1は本開示の一実施例に係る発光構造の構造模式図である。
図2図2は本開示の一実施例に係る発光構造の第1発光素子が異なる電子輸送層を用いた場合の電子注入効率と正孔注入効率の比較図である。
図3図3は本開示の一実施例に係る発光構造の第1発光素子が異なる電子輸送層を用いた場合の電流効率の比較図である。
図4図4は本開示の一実施例に係る発光構造の異なる発光層及び異なる電子輸送層のエネルギー準位の模式図である。
図5図5は本開示の一実施例に係る他の発光構造の異なる発光層及び異なる電子輸送層のエネルギー準位の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、本開示の実施例の図面を参照しながら、本開示の実施例の技術案を明確、かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は本開示の実施例の一部であり、実施例の全てではない。説明される本開示の実施例に基づき、当業者が進歩性のある労働を必要とせずに得る全ての他の実施例は、本開示の保護範囲に属する。
【0029】
特に定義されない限り、本開示で使用される技術用語又は科学用語は、当業者が理解できる一般的な意味を有する。本開示で使用される「第1」、「第2」及び類似する用語は、何らかの順序、数又は重要性を示すものではなく、異なる構成要素を区別するためのものに過ぎない。「備える」又は「含む」等の類似する用語は、該用語の前に記載された素子又は部材が、該用語の後に列挙される素子又は部材、及びそれらの同等物を含むことを指し、他の素子又は部材を排除しない。「接続」又は「結合」等の類似する用語は、物理的又は機械的接続に限定されず、直接接続されるか間接的に接続されるかに関わらず、電気的接続を含んでもよい。
【0030】
一般的なQLEDデバイスでは、量子ドット材料のエネルギー準位の位置等により、赤色及び緑色量子ドット発光層の電子注入効率が一般的に正孔注入効率よりも高く、その結果、赤色及び緑色量子ドット発光層のキャリアにおける電子の数は正孔の数よりも大きく、逆に、青色量子ドット発光層の電子注入効率が正孔注入効率よりも低く、その結果、青色量子ドット発光層のキャリアにおける正孔の数は電子の数よりも大きい。従って、QLEDデバイスにおける量子ドット発光層の電子と正孔が不均一になり、電子-正孔の不均一により、注入された電荷が励起子に転化される能力を低下させるだけでなく、QLEDデバイス内の電荷の蓄積をもたらし、帯電励起子の非放射遷移を増加し、効率を低下させ、耐用年数を短くし、それにより、QLEDデバイスの効率及び安定性の更なる向上を制限するボトルネックとなる。
【0031】
それに対して、本開示の実施例は発光構造、表示パネル及び表示装置を提供する。該発光構造は、第1発光層と、第1電子輸送層と、第1陰極とを含む第1発光素子を含み、第1陰極は第1電子輸送層に接触して設置され、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位は第1陰極のフェルミ準位よりも高く、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極のフェルミ準位との差の範囲は0.3~0.6eVである。該発光構造において、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位が第1陰極のフェルミ準位よりも高いため、電子が第1陰極から第1電子輸送層へ障壁を越える必要があり、また、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極のフェルミ準位との差の範囲が0.3~0.6eVであり、それにより第1発光素子の電子注入効率を適切に低下させて第1発光素子の正孔注入効率とマッチングすることができ、さらに第1発光素子の発光効率及び安定性を向上させる。
【0032】
以下、図面を参照しながら本開示の実施例に係る発光構造、表示パネル及び表示装置を説明する。
【0033】
図1は本開示の一実施例に係る発光構造の構造模式図である。図1に示すように、該発光構造100は、第1発光層111と、第1電子輸送層112と、第1陰極113とを含む第1発光素子110を含み、第1陰極113は第1電子輸送層112に接触して設置され、第1発光素子110が発光する時、第1陰極113は電子を提供することに用いられる。第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位は第1陰極113のフェルミ準位よりも高く、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極113のフェルミ準位との差の範囲は0.3~0.6eVである。なお、上記「接触して設置される」ことは、直接接触の状況を指し、第1陰極と第1電子輸送層との間に他の膜層構造が設置されていない。
【0034】
本開示の実施例に係る発光構造において、第1発光層の電子注入効率が正孔注入効率よりも高い場合、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位が第1陰極のフェルミ準位よりも高いため、電子が第1陰極から第1電子輸送層へ障壁を越える必要があり、また、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極のフェルミ準位との差の範囲が0.3~0.6eVであり、それにより第1発光素子の電子注入効率を適切に低下させて第1発光素子の正孔注入効率とマッチングすることができ、さらに第1発光素子の発光効率及び安定性を向上させる。
【0035】
例えば、いくつかの例では、図1に示すように、第1発光層111は第1電子輸送層112に接触して設置され、つまり、第1発光素子110に電子注入層が設置されておらず、それにより、第1発光素子110の電子注入効率を低下させるとともに、第1発光素子110の厚さを薄くし、軽くて薄い発光構造を提供することができる。
【0036】
例えば、いくつかの例では、第1発光層111は赤色量子ドット発光層であってもよい。一般的な赤色量子ドット発光層の電子注入効率が一般的に正孔注入効率よりも高いため、赤色量子ドット発光層のキャリアにおける正孔と電子は非常に不均一になり、本開示の実施例に係る発光構造は、適切な材料を選択することにより、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位が第1陰極のフェルミ準位よりも高く、第1電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極のフェルミ準位との差の範囲が0.3~0.6eVであり、第1発光素子の電子注入効率が正孔注入効率とマッチングし、それにより、第1発光素子の発光効率及び安定性を向上させることができる。
【0037】
例えば、いくつかの例では、第1発光層111の材料は、カドミウムフリー量子ドット材料を含んでもよく、それにより、環境に対する汚染を減らす。第1電子輸送層112は、ZnMgOナノ粒子、すなわち、MgがドーピングされたZnOナノ粒子を含み、第1電子輸送層112におけるMgのモル百分率は10%~20%であり、それにより、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極113のフェルミ準位との差の範囲を0.3~0.6eVにすることができる。
【0038】
例えば、いくつかの例では、第1陰極113の材料は銀又はアルミニウムであってもよい。それにより、第1陰極113のフェルミ準位は-4.3~-4.2eVの範囲になり得る。
【0039】
例えば、いくつかの例では、第1発光層111の材料は、インジウムリン(InP)を含んでもよく、第1電子輸送層112におけるMgのモル百分率は13%~16%である。この時、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位がほぼ-3.83eVであり、第1陰極113のフェルミ準位の範囲が-4.3~-4.2eVであり、それにより、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極113のフェルミ準位との差はほぼ0.37~0.47eVである。この時、第1発光素子110の発光効率及び安定性を大幅に向上させることができる。
【0040】
図2は本開示の一実施例に係る発光構造の第1発光素子が異なる電子輸送層を用いた場合の電子注入効率と正孔注入効率の比較図であり、図3は本開示の一実施例に係る発光構造の第1発光素子が異なる電子輸送層を用いた場合の電流効率の比較図である。図2及び図3の第1発光素子は赤色量子ドット発光素子であり、第1発光層はインジウムリン(InP)で製造される。
【0041】
図2に示すように、曲線1は第1発光素子の正孔注入効率であり、曲線2は電子輸送層にMgのモル百分率が15%のZnMgOナノ粒子を用いる第1発光素子の電子注入効率であり、曲線3は電子輸送層にMgのモル百分率が5%のZnMgOナノ粒子を用いる第1発光素子の電子注入効率であり、曲線4は電子輸送層にZnOナノ粒子又はMgのモル百分率が0%のZnMgOナノ粒子、すなわち、ZnOナノ粒子を用いる第1発光素子の電子注入効率である。実験結果によれば、曲線2に示される電子注入効率は曲線1に示される正孔注入効率とよりマッチングし、第1発光素子の発光効率及び安定性を向上させることに役立つ。なお、曲線1の正孔注入効率は第1発光素子が発光層及び正孔輸送層のみを含む場合で測定された曲線であり、曲線2の電子注入効率は第1発光素子が発光層及び電子輸送層のみを含む場合で測定された曲線であり、曲線3の電子注入効率は第1発光素子が発光層及び電子輸送層のみを含む場合で測定された曲線であり、曲線4の電子注入効率は第1発光素子が発光層及び電子輸送層のみを含む場合で測定された曲線である。
【0042】
図3に示すように、曲線5は電子輸送層にMgのモル百分率が15%のZnMgOナノ粒子を用いる第1発光素子の電流効率であり、曲線6は電子輸送層にMgのモル百分率が5%のZnMgOナノ粒子を用いる第1発光素子の電流効率であり、曲線7は電子輸送層にZnOナノ粒子又はMgのモル百分率が0%のZnMgOナノ粒子、すなわち、ZnOナノ粒子を用いる第1発光素子の電流効率である。実験結果によれば、明らかに、曲線5に示される第1発光素子の電流効率は曲線6及び曲線7よりも高く、また、Mgのモル百分率が向上することに伴って、曲線5に示される第1発光素子の電流効率は線形に向上することではなく、突然変化し、曲線6及び曲線7よりも大幅に高い。それにより、電子輸送層にMgのモル百分率が15%のZnMgOナノ粒子を用いる場合、第1発光素子は高い電流効率を有する。なお、曲線5、曲線6及び曲線7に示される第1発光素子の他の膜層(例えば、正孔輸送層等)はいずれも同じ材料及び構造を用いる。
【0043】
例えば、いくつかの例では、図1に示すように、第1発光素子110は第1正孔輸送層114、第1正孔注入層115、及び第1陽極116をさらに含む。第1正孔輸送層114は第1電子輸送層112から離れた第1発光層111の一方側に設置され、第1正孔注入層115は第1発光層111から離れた第1正孔輸送層114の一方側に設置され、第1陽極116は第1正孔輸送層114から離れた第1正孔注入層115の一方側に設置される。
【0044】
例えば、第1陽極116は、透明な導電性酸化物又は導電性ポリマーを用いてもよく、透明な導電性酸化物は、酸化インジウムスズ(ITO)、FTO(SnO)等であってもよい。また、第1正孔輸送層114及び第1正孔注入層115の材料は実際の状況に応じて選択でき、本開示の実施例はこれを制限しない。
【0045】
例えば、いくつかの例では、図1に示すように、該発光構造は上記第1発光素子110を載せるためのベース基板101をさらに含む。例えば、ベース基板101は透明基板、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等であってもよい。ベース基板101はフレキシブル透明基板、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板であってもよい。
【0046】
例えば、いくつかの例では、図1に示すように、該発光構造100は第2発光素子120をさらに含み、第1発光素子110及び第2発光素子120は異なる色の光を発光することに用いられる。第2発光素子120は第2発光層121と、第2電子輸送層122と、第2陰極123とを含む。第2陰極123は第2電子輸送層122に接触して設置され、第1発光層111の伝導帯下端のエネルギー準位は第2発光層121の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位は第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高い。
【0047】
この例に係る発光構造において、異なる発光素子(例えば第1発光素子及び第2発光素子)は異なる材料で製造された電子輸送層を用いる。第1発光層111の伝導帯下端のエネルギー準位が第2発光層121の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低いため、第1電子輸送層112から第1発光層111への電子移動難度は、第2電子輸送層122から第2発光層121への電子移動難度よりも低く、この時、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位が第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高いため、第1陰極113と第2陰極123のフェルミ準位がほぼ同じである場合、第1陰極113から第1輸送層112への電子の障壁は第2陰極123から第2電子輸送層122への電子の障壁よりも大きく、それにより、第1発光層111への電子注入効率をある程度低下させて、第1発光層111における正孔注入効率と均一になり、また、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位が第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高いため、この例に係る発光構造はさらに、第2陰極123から第2電子輸送層122への電子の障壁を小さくし、第2発光層121への電子注入効率をある程度向上させ、それにより、第2発光層121における正孔注入効率と均一になり、さらに第1発光素子110及び第2発光素子120の発光効率及び安定性を向上させる。
【0048】
例えば、いくつかの例では、第1陰極113及び第2陰極123は同一導電層であり、すなわち、第1発光素子110と第2発光素子120は陰極層を共有する。この時、第1陰極113から第1電子輸送層112への電子の障壁は第2陰極123から第2電子輸送層122への電子の障壁よりも大きい。
【0049】
図4は本開示の一実施例に係る発光構造の異なる発光層及び異なる電子輸送層のエネルギー準位の模式図である。図4に示すように、第1発光層111の伝導帯下端のエネルギー準位は第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、第2発光層121の伝導帯下端のエネルギー準位は第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、つまり、第1電子輸送層112から第1発光層111への電子の障壁は存在しないか、又はほとんど存在しないが、電子が第2電子輸送層122から第2発光層121へ障壁を越える必要がある。この時、第2陰極123のフェルミ準位は第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位とほぼ等しく、つまり、第2陰極123から第2電子輸送層122への電子の障壁は存在しないか、又はほとんど存在しない。それにより、該発光構造は第2陰極123から第2発光層121への電子注入効率をある程度向上させることができ、第2発光層121における正孔注入効率と均一になり、さらに第2発光素子120の発光効率及び安定性を向上させる。なお、上記第2陰極のフェルミ準位が第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位とほぼ等しいことは、第2陰極のフェルミ準位と第2電子輸送層の伝導帯下端のエネルギー準位との差と、第2陰極のフェルミ準位の絶対値との比率範囲が4%以内にあることを指す。
【0050】
例えば、いくつかの例では、第1電子輸送層112はZnMgOナノ粒子を含み、第2電子輸送層122はZnOナノ粒子又はZnMgOナノ粒子を含み、第1電子輸送層112におけるMgのモル百分率は第2電子輸送層122におけるMgのモル百分率よりも高い。
【0051】
例えば、いくつかの例では、第1電子輸送層112におけるMgのモル百分率は10%~20%であり、第2電子輸送層122におけるMgのモル百分率は5%未満である。なお、第2電子輸送層122がZnOナノ粒子である場合、第2電子輸送層122はMgのモル百分率が0のZnMgOナノ粒子であると見なされる。
【0052】
表1は本開示の一実施例に係る電子輸送層のエネルギー準位のデータテーブルである。表1では、第1電子輸送層112はMgのモル百分率が15%のZnMgOナノ粒子であり、第2電子輸送層122はMgのモル百分率が0%のZnMgOナノ粒子である。これで分かるように、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位は第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高い。第1陰極113及び第2陰極123のフェルミ準位範囲が-4.3~-4.2eVである場合、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極113のフェルミ準位との差はほぼ0.37~0.47eVであり、第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位と第2陰極123のフェルミ準位との差は0.1eV未満である。それにより、該発光構造は第1発光層111への電子注入効率をある程度低下させることができ、第1発光層111における正孔注入効率と均一になり、さらに、第2発光層121への電子注入効率をある程度向上させ、第2発光層121における正孔注入効率と均一になる。
【0053】
【表1】
【0054】
例えば、いくつかの例では、第1電子輸送層112の電子移動度は第2電子輸送層122の電子移動度よりも小さく、それにより、第1発光層111への電子注入効率をある程度低下させ、第1発光層111における正孔注入効率と均一になり、さらに第2発光層121への電子注入効率をある程度向上させ、第2発光層121における正孔注入効率と均一になる。例えば、第1電子輸送層112はMgのモル百分率が15%のZnMgOナノ粒子であり、第2電子輸送層122はMgのモル百分率が0%のZnMgOナノ粒子である場合、第1電子輸送層112の電子移動度は第2電子輸送層122の電子移動度よりも小さい。
【0055】
例えば、いくつかの例では、第1発光層及び第2発光層のうちの少なくとも1つは量子ドット発光層である。例えば、第1発光層は赤色量子ドット発光層であってもよく、第2発光層は青色量子ドット発光層であってもよく、第1発光層はカドミウムフリー赤色量子ドット発光材料、例えば、インジウムリン(InP)、例えばInP/ZnSコアシェル型量子ドット材料を用いてもよく、第2発光層は青色量子ドット発光材料、例えば、セレン化カドミウム(CdSe)、例えばCdSe/ZnSコアシェル型量子ドット材料を用いてもよい。
【0056】
例えば、いくつかの例では、図1に示すように、第2発光素子120は第2正孔輸送層124、第2正孔注入層125、及び第2陽極116をさらに含む。第2正孔輸送層124は第2電子輸送層122から離れた第2発光層121の一方側に設置され、第2正孔注入層125は第2発光層121から離れた第2正孔輸送層124の一方側に設置され、第2陽極126は第2正孔輸送層124から離れた第2正孔注入層125の一方側に設置される。
【0057】
例えば、第2陽極126は、酸化インジウムスズ(ITO)、FTO(SnO)等であってもよい透明な導電性酸化物又は導電性ポリマーを用いてもよい。また、第2正孔輸送層124及び第2正孔注入層125の材料は実際の状況に応じて選択でき、本開示の実施例はこれを制限しない。
【0058】
例えば、いくつかの例では、図1に示すように、第1発光素子110及び第2発光素子120はベース基板101上の同じ層に設置される。つまり、第1発光素子110の第1陽極116と第2発光素子120の第2陽極126は同じ層に設置されてもよく、第1発光素子110の第1正孔注入層115と第2発光素子120の第2正孔注入層125は同じ層に設置されてもよく、第1発光素子110の第1正孔輸送層114と第2発光素子120の第2正孔輸送層124は同じ層に設置されてもよく、第1発光素子110の第1発光層111と第2発光素子120の第2発光層121は同じ層に設置されてもよく、第1発光素子110の第1電子輸送層112と第2発光素子120の第2電子輸送層122は同じ層に設置されてもよい。なお、第1正孔注入層115及び第2正孔注入層125は実際の状況に応じて異なる厚さを選択でき、第1正孔輸送層114及び第2正孔輸送層124は実際の状況に応じて異なる厚さを選択できる。
【0059】
例えば、第1陽極116及び第2陽極126は同じ材料で製造されてもよく、従って、第1陽極116及び第2陽極126は同一導電層を用いてパターン化して形成されてもよい。
【0060】
例えば、ベース基板101は透明基板、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等であってもよい。ベース基板101はフレキシブル透明基板、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板であってもよい。
【0061】
例えば、いくつかの例では、図1に示すように、該発光構造100は、第3発光層131と、第3電子輸送層132と、第3陰極133とを含む第3発光素子130をさらに含む。第3陰極133は第3電子輸送層132に接触して設置され、第3発光層131の伝導帯下端のエネルギー準位は第1発光層111の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、第2発光層121の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、第3電子輸送層132の伝導帯下端のエネルギー準位は第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高い。
【0062】
この例に係る発光構造において、異なる発光素子(例えば第1発光素子及び第2発光素子)は、異なる材料の電子輸送層を用いる。第3発光層131の伝導帯下端のエネルギー準位が第1発光層111の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、第2発光層121の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、すなわち、第3発光層131の伝導帯下端のエネルギー準位が第1発光層111と第2発光層121との間にあるため、第3電子輸送層132から第3発光層131への電子移動難度も第1電子輸送層112から第1発光層111への電子移動難度と第2電子輸送層122から第2発光層121への電子移動難度との間にあり、この時、第3電子輸送層132の伝導帯下端のエネルギー準位が第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、且つ第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高いため、第1陰極113、第2陰極123及び第3陰極133のフェルミ準位がほぼ同じである場合、第3陰極133から第3輸送層132への電子の障壁は第1陰極113から第1電子輸送層112への電子の障壁よりも小さく、且つ第2陰極123から第2電子輸送層122への電子の障壁よりも大きく、それにより、第3発光層131への電子注入効率をある程度低下させ、第3発光層131における正孔注入効率と均一になり、さらに、第1発光素子110、第2発光素子120、及び第3発光素子130の発光効率及び安定性を向上させることができる。
【0063】
例えば、いくつかの例では、第1陰極113、第2陰極123及び第3陰極133は同一導電層であり、すなわち、第1発光素子110、第2発光素子120及び第3発光素子130は陰極層を共有する。第3陰極133から第3電子輸送層132への電子の障壁は第2陰極123から第2電子輸送層122への電子の障壁よりも大きく、且つ第1陰極113から第1電子輸送層112への電子の障壁よりも小さい。
【0064】
図5は本開示の一実施例に係る他の発光構造の異なる発光層及び異なる電子輸送層のエネルギー準位の模式図である。図5に示すように、第1発光層111の伝導帯下端のエネルギー準位は第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位よりも低く、第2発光層121の伝導帯下端のエネルギー準位は第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、第3発光層131の伝導帯下端のエネルギー準位は第3電子輸送層132の伝導帯下端のエネルギー準位よりもやや高い。つまり、第1電子輸送層112から第1発光層111への電子の障壁は存在しないか、又はほとんど存在せず、電子が第2電子輸送層122から第2発光層121へ大きな障壁(第3発光素子に対して)を越える必要があり、電子が第3電子輸送層132から第3発光層131へ小さな障壁を越える必要がある。この時、第1陰極113から第1電子輸送層112への電子の障壁は大きく、第2陰極123から第2電子輸送層122への電子の障壁は存在しないか、又はほとんど存在せず、第3陰極133から第3電子輸送層132への電子の障壁は小さい。それにより、該発光構造は第1陰極113から第1発光層111への電子注入効率を大幅に低下させ、第3陰極133から第3発光層131への電子注入効率をわずかに低下させるとともに、第2陰極123から第2発光層121への電子注入効率を向上させ、また、第1発光層111、第2発光層121及び第3発光層131における正孔-電子注入効率を均一にし、該発光構造の発光効率及び安定性を向上させる。
【0065】
例えば、いくつかの例では、第1電子輸送層112はZnMgOナノ粒子を含み、第2電子輸送層122はZnOナノ粒子又はZnMgOナノ粒子を含み、第3電子輸送層132はZnMgOナノ粒子を含み、第3電子輸送層132におけるMgのモル百分率は第1電子輸送層112におけるMgのモル百分率よりも低く、且つ第2電子輸送層122におけるMgのモル百分率よりも高い。
【0066】
例えば、いくつかの例では、第1電子輸送層112におけるMgのモル百分率は10%~20%であり、第2電子輸送層122におけるMgのモル百分率は5%未満であり、第3電子輸送層132におけるMgのモル百分率は5%~10%である。なお、第2電子輸送層122がZnOナノ粒子である場合、第2電子輸送層122はMgのモル百分率が0のZnMgOナノ粒子であると見なされる。
【0067】
表2は本開示の一実施例に係る他の電子輸送層のエネルギー準位のデータテーブルである。表2では、第1電子輸送層112はMgのモル百分率が15%のZnMgOナノ粒子であり、第2電子輸送層122はMgのモル百分率が0%のZnMgOナノ粒子であり、第3電子輸送層132はMgのモル百分率が5%のZnMgOナノ粒子である。それで分かるように、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位は第3電子輸送層132の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高く、第3電子輸送層132の伝導帯下端のエネルギー準位は第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位よりも高い。第1陰極113、第2陰極123及び第3陰極133のフェルミ準位範囲が-4.3~-4.2eVである場合、第1電子輸送層112の伝導帯下端のエネルギー準位と第1陰極113のフェルミ準位との差はほぼ0.37~0.47eVであり、第2電子輸送層122の伝導帯下端のエネルギー準位と第2陰極123のフェルミ準位との差は0.1eV未満であり、第3電子輸送層132の伝導帯下端のエネルギー準位と第3陰極133のフェルミ準位との差は0.2eV未満である。それにより、該発光構造は第1発光層111への電子注入効率をある程度低下させることができ、第1発光層111における正孔注入効率と均一になり、第2発光層121への電子注入効率をある程度向上させ、第2発光層121における正孔注入効率と均一になり、また、第3発光層131への電子注入効率をある程度低下させ、第3発光層131における正孔注入効率と均一になる。
【0068】
【表2】
【0069】
例えば、いくつかの例では、第3電子輸送層132の電子移動度は第2電子輸送層122の電子移動度よりも大きく、且つ第2電子輸送層112の電子移動度よりも小さい。それにより、該発光構造はさらに、第1陰極113から第1発光層111への電子注入効率を大幅に低下させ、第3陰極133から第3発光層131への電子注入効率をわずかに低下させるとともに、第2陰極123から第2発光層121への電子注入効率を向上させ、また、第1発光層111、第2発光層121及び第3発光層131における正孔-電子注入効率を均一にし、該発光構造の発光効率及び安定性を向上させる。
【0070】
例えば、第1電子輸送層112はMgのモル百分率が15%のZnMgOナノ粒子であり、第2電子輸送層122はMgのモル百分率が0%のZnMgOナノ粒子であり、第3電子輸送層132はMgのモル百分率が5%のZnMgOナノ粒子である場合、第3電子輸送層132の電子移動度は第2電子輸送層122の電子移動度よりも大きく、且つ第2電子輸送層112の電子移動度よりも小さい。
【0071】
例えば、いくつかの例では、第1発光層は赤色量子ドット発光層であってもよく、第2発光層は青色量子ドット発光層であってもよく、第3発光層は緑色量子ドット発光層であってもよく、第1発光層はカドミウムフリー赤色量子ドット発光材料、例えば、インジウムリン(InP)、例えばInP/ZnSコアシェル型量子ドット材料を用いてもよく、第2発光層は青色量子ドット発光材料、例えば、セレン化カドミウム(CdSe)、例えばCdSe/ZnSコアシェル型量子ドット材料を用いてもよく、第3発光層はカドミウムフリー緑色量子ドット発光材料、例えば、インジウムリン(InP)、例えばInP/ZnSコアシェル型量子ドット材料を用いてもよい。
【0072】
例えば、いくつかの例では、図1に示すように、第3発光素子130は第3正孔輸送層134、第3正孔注入層135及び第3陽極136をさらに含む。第3正孔輸送層134は第3電子輸送層132から離れた第3発光層131の一方側に設置され、第3正孔注入層135は第3発光層131から離れた第3正孔輸送層134の一方側に設置され、第3陽極136は第3正孔輸送層134から離れた第3正孔注入層135の一方側に設置される。
【0073】
例えば、第3陽極136は、透明な導電性酸化物又は導電性ポリマーを用いてもよく、透明な導電性酸化物は、酸化インジウムスズ(ITO)、FTO(SnO)等であってもよい。また、第3正孔輸送層134及び第3正孔注入層135の材料は実際の状況に応じて選択でき、本開示の実施例はこれを制限しない。
【0074】
例えば、いくつかの例では、図1に示すように、第1発光素子110、第2発光素子120及び第3発光素子130はベース基板101の同じ層に設置されてもよい。つまり、第1発光素子110の第1陽極116、第2発光素子120の第2陽極126及び第3発光素子130の第3陽極136は同じ層に設置されてもよく、第1発光素子110の第1正孔注入層115、第2発光素子120の第2正孔注入層125及び第3発光素子130の第3正孔注入層135は同じ層に設置されてもよく、第1発光素子110の第1正孔輸送層114、第2発光素子120の第2正孔輸送層124及び第3発光素子130の第3正孔輸送層134は同じ層に設置されてもよく、第1発光素子110の第1発光層111、第2発光素子120の第2発光層121及び第3発光素子130の第3発光層131は同じ層に設置されてもよく、第1発光素子110の第1電子輸送層112、第2発光素子120の第2電子輸送層122及び第3発光素子130の第3電子輸送層132は同じ層に設置されてもよい。なお、第1正孔注入層115、第2正孔注入層125及び第3正孔注入層135は実際の状況に応じて異なる厚さを選択でき、第1正孔輸送層114、第2正孔輸送層124及び第3正孔輸送層134は実際の状況に応じて異なる厚さを選択できる。
【0075】
例えば、第1陽極116、第2陽極126及び第3陽極127は同じ材料で製造されてもよく、従って、第1陽極116、第2陽極126及び第3陽極137は同一導電層を用いてパターン化して形成されてもよい。
【0076】
例えば、ベース基板101は透明基板、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等であってもよい。ベース基板101はフレキシブル透明基板、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板であってもよい。
【0077】
例えば、図1に示すように、該発光構造100は異なる発光素子の間(例えば、第1発光素子110と第2発光素子120の間、第2発光素子120と第3発光素子130の間、第3発光素子130と第1発光素子110の間)に位置する画素定義層180をさらに含む。
【0078】
本開示の少なくとも1つの実施例は発光構造の製造方法を提供する。該製造方法は以下のステップS201~S205を含む。
【0079】
ステップS201:
ベース基板上に第1陽極、第2陽極及び第3陽極を形成する。
【0080】
例えば、堆積方法でベース基板上に陽極層を形成し、そして陽極層をパターン化して第1陽極、第2陽極及び第3陽極を形成し、ベース基板は透明基板、例えば、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板等であってもよく、陽極層は、透明な導電性酸化物又は導電性ポリマーを用いてもよく、透明な導電性酸化物は、酸化インジウムスズ(ITO)、FTO(SnO)等であってもよい。
【0081】
ステップS202:
ベース基板から離れた第1陽極、第2陽極及び第3陽極の一方側にそれぞれ第1正孔注入層、第2正孔注入層及び第3正孔注入層を形成する。
【0082】
例えば、インクジェット印刷又はナノインプリントの方法を用いて、ベース基板から離れた第1陽極、第2陽極及び第3陽極の一方側にそれぞれ第1正孔注入層、第2正孔注入層及び第3正孔注入層を形成する。第1正孔注入層、第2正孔注入層及び第3正孔注入層の材料は有機正孔注入材料、例えば、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホン酸)、又は無機酸化物、例えば酸化モリブデン(MoOx)であってもよい。
【0083】
ステップS203:
ベース基板から離れた第1正孔注入層、第2正孔注入層及び第3正孔注入層の一方側にそれぞれ第1正孔輸送層、第2正孔輸送層及び第3正孔輸送層を形成する。
【0084】
例えば、第1正孔輸送層、第2正孔輸送層及び第3正孔輸送層は有機正孔輸送材料、例えば、PVK(ポリビニルカルバゾール)、TFB(ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-CO-N-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン))、TPD(N,N’-diphenyl-N、N’-bis(3-methyllphenyl)-(1,1’-biphenyl)-4,4’-diamine)及びその誘導体、又は無機正孔輸送材料、例えば酸化ニッケル(NiOx)及び酸化バナジウム(VOx)であってもよい。
【0085】
ステップS204:
ベース基板から離れた第1正孔輸送層、第2正孔輸送層及び第3正孔輸送層の一方側にそれぞれ第1発光層、第2発光層及び第3発光層を形成する。
【0086】
ステップS205:
ベース基板から離れた第1発光層、第2発光層及び第3発光層の一方側にそれぞれ第1電子輸送層、第2電子輸送層及び第3電子輸送層を形成する。
【0087】
例えば、第1電子輸送層はMgのモル百分率が10%~20%のZnMgOナノ粒子であり、第2電子輸送層はMgのモル百分率が5%未満のZnMgOナノ粒子であり、第3電子輸送層はMgのモル百分率が5%~10%のZnMgOナノ粒子である。
【0088】
ステップS206:
ベース基板から離れた第1電子輸送層、第2電子輸送層及び第3電子輸送層の一方側に陰極層を形成する。
【0089】
例えば、蒸着の方法を用いて、ベース基板から離れた第1電子輸送層、第2電子輸送層及び第3電子輸送層の一方側に陰極層を形成し、陰極層は、材料がアルミニウム又は銀であってもよく、厚さの範囲が100~150ナノであってもよい。
【0090】
本開示の少なくとも1つの実施例は表示パネルをさらに提供する。該表示パネルはアレイ状に設置された複数の発光構造100を含み、該発光構造は上記実施例に係る発光構造である。それにより、該表示パネルは第1発光素子の電子注入効率を適切に低下させて第1発光素子の正孔注入効率とマッチングすることができ、さらに第1発光素子の発光効率及び安定性を向上させる。また、該表示パネルは上記実施例の異なる発光素子が異なる電子輸送層を用いる発光構造を用いる場合、該表示パネルは第1発光素子、第2発光素子及び第3発光素子の発光効率及び安定性を同時に向上させることができ、具体的に発光構造の実施例についての具体的な説明を参照できる。
【0091】
本開示の少なくとも1つの実施例は、上記実施例に係る表示パネルを含む表示装置をさらに提供する。それにより、該表示パネルは第1発光素子の電子注入効率を適切に低下させて第1発光素子の正孔注入効率とマッチングすることができ、さらに第1発光素子の発光効率及び安定性を向上させる。また、該表示パネルは上記実施例の異なる発光素子が異なる電子輸送層を用いる発光構造を用いる場合、該表示パネルは第1発光素子、第2発光素子及び第3発光素子の発光効率及び安定性を同時に向上させることができ、具体的に発光構造の実施例についての具体的な説明を参照できる。
【0092】
例えば、いくつかの例では、該表示装置はスマートフォン、タブレットパソコン、テレビ、ディスプレイ、ノートパソコン、デジタルフォトフレーム、ナビゲータ等の、表示機能を有する任意の製品又は部材であってもよい。
【0093】
(1)本開示の実施例の図面は、本開示の実施例に係る構造のみに関し、他の構造は通常の設計を参照すればよい。
【0094】
(2)矛盾がない限り、本開示の同一実施例及び異なる実施例の特徴を互いに組み合わせることができる。
【0095】
以上は、本開示の具体的な実施形態に過ぎないが、本開示の保護範囲はこれに限定されるものではなく、当業者は本開示に開示される技術範囲内の変更又は置換を容易に想到でき、この変更又は置換は本開示の保護範囲内に属すべきである。従って、本開示の保護範囲は特許請求の範囲の保護範囲を基準とするべきである。
【符号の説明】
【0096】
100 発光構造
110 第1発光素子
111 第1発光層
112 第1電子輸送層
113 第1陰極
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】