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特表2022-529547使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するためのキャスク及び方法
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  • 特表-使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するためのキャスク及び方法 図1
  • 特表-使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するためのキャスク及び方法 図2
  • 特表-使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するためのキャスク及び方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するためのキャスク及び方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20220616BHJP
   G21F 5/008 20060101ALI20220616BHJP
   G21F 5/12 20060101ALI20220616BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
G21C19/32 080
G21F5/008
G21F5/12 E
G21F9/36 501F
G21F9/36 501C
G21F9/36 511L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020573499
(86)(22)【出願日】2018-12-29
(85)【翻訳文提出日】2021-02-04
(86)【国際出願番号】 RU2018000911
(87)【国際公開番号】W WO2020139123
(87)【国際公開日】2020-07-02
(31)【優先権主張番号】2018147149
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520514746
【氏名又は名称】エヌエフシー ロジスティクス,ジョイント - ストック カンパニー(エヌエフシーエル ジェイエスシー)
(71)【出願人】
【識別番号】520514768
【氏名又は名称】サイエンス アンド イノヴェーションズ - ニュークリア インダストリー サイエンティフィック デベロップメント,プライベート エンタープライズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペトロフ エフゲニー ドミートリエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ソコロフ アンドレイ ヴァレレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルデーエフ アンドレイ ヴィクトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】モケイチェフ アンドレイ ミハイロヴィチ
(57)【要約】
【課題】使用済み核燃料を安全に長期乾式貯蔵することができるキャスク及び方法を提供する。
【解決手段】使用済み核燃料を使用済み核燃料キャスクの内部キャビティに収容し、前記内部キャビティに不活性ガスを注入し、前記内部キャビティを閉鎖する内側カバーを密封し、前記キャスクの外側カバー1を密封し、前記キャスクの内部キャビティにおける不活性ガスの気圧よりも、外側カバー1と内側カバーとの間のキャビティ5における不活性ガスの気圧のほうが高くなるように、外側カバー1と内側カバーとの間のキャビティ5に不活性ガスを注入する。外側カバー1にはキャビティ5に連通するラビリンス孔2が設けられており、圧力センサー13を用いて、当該ラビリンス孔2を経由して、外側カバー1と内側カバーとの間のキャビティ5の気圧を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するための方法であって、
使用済み核燃料を使用済み核燃料キャスクの内部キャビティに収容し、
前記内部キャビティに不活性ガスを注入し、
前記内部キャビティを閉鎖する内側カバーを密封し、
前記キャスクの外側カバーを密封し、
前記キャスクの内部キャビティにおける不活性ガスの気圧よりも、外側カバーと内側カバーとの間のキャビティにおける不活性ガスの気圧のほうが高くなるように、外側カバーと内側カバーとの間のキャビティに不活性ガスを注入し、
圧力センサーを用いて外側カバーと内側カバーとの間のキャビティの気圧を検出する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
使用済み核燃料を長期乾燥貯蔵するためのキャスクであって、
使用済み核燃料を収容するキャニスターを格納するキャスク本体と、
当該キャスク本体を密封する内側カバーと、
前記内側カバーとの間にキャビティを形成して当該キャビティを密封する外側カバーと、を備え、
前記内側カバーと外側カバーとの間のキャビティは、前記キャスク本体の内部キャビティよりも高い気圧で不活性ガスが注入されており、
前記外側カバーは、
前記内側カバーとの間のキャビティに連通するラビリンス孔が設けられ、
当該ラビリンス孔を閉鎖するフランジと、
当該フランジに設けられた環状溝に取り付けられ、前記ラビリンス孔を密封するガスケットと、
前記フランジに取り付けられたアングル弁と、
前記アングル弁に接続された2つの圧力センサーと、
使用済み核燃料の長期乾式貯蔵中に、前記アングル弁と前記圧力センサーを保護する保護カバーと、を有する
ことを特徴とするキャスク。
【請求項3】
前記外側カバーは、
前記内側カバーとの間のキャビティに連通する通気路が設けられており、
当該通気路を閉鎖するバルブと、
当該バルブを覆う第2の保護カバーと、を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のキャスク。
【請求項4】
前記外側カバーは、使用済み核燃料の輸送中および長期乾式貯蔵中に、前記バルブを密封するバルブカバーを有する
ことを特徴とする請求項3に記載のキャスク。
【請求項5】
前記外側カバーは、
前記バルブを開閉制御するための弁棒と、
不活性ガスの注入システムおよび圧力センサーとの少なくとも一方を接続するためのクイックリリース継手と、を有する第3の保護カバーを有し、
前記内側カバーと外側カバーとの間のキャビティに不活性ガスを注入する際に、
前記バルブは、前記通気路を閉鎖し、
前記第3の保護カバーは前記バルブを保護する
ことを特徴とする請求項3に記載のキャスク。
【請求項6】
前記ラビリンス孔は、熱膨張グラファイトで両側が被覆された歯付きガスケットで密封される
ことを特徴とする請求項2に記載のキャスク。
【請求項7】
前記ガスケットは、熱膨張グラファイトで両側が被覆された二重歯の金属ガスケットである
ことを特徴とする請求項2に記載のキャスク。
【請求項8】
前記保護カバーは、
前記内側カバーと外側カバーとの間のキャビティ内の気圧を監視する集中制御システムのケーブルを接続するためのケーブルグランドと、
前記ケーブルグランドを密封する熱膨張グラファイト製のリングと、を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のキャスク。
【請求項9】
前記2つの圧力センサーは、一方が予備である
ことを特徴とする請求項2に記載のキャスク。
【請求項10】
前記圧力センサーが、前記ケーブルグランドを経由して、前記集中制御システムに接続されている
ことを特徴とする請求項8に記載のキャスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、核エネルギー分野における、使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するためのキャスク及び方法に関し、特に、VVER1000/1200型原子炉の使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するためのキャスク及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の急増に伴い、使用済み核燃料の信頼性が高く安全な貯蔵方法の必要性が高まっており、60年以上の長期間に亘って安全に保管する必要がある。
【0003】
従来、使用済み核燃料を燃料プールに保管する様々な方法が知られている(例えば、特許文献1~3)。
【0004】
しかし、キャスクの外壁が貯蔵プールの水と接触すると、腐食プロセスの影響によって、最終的にはキャスクの気密性が失われ、貯蔵プールの水が放射能によって汚染される。この問題は、使用済み核燃料を密封したキャニスターを空冷式の「ドライ」キャスクに保管する「乾式」貯蔵では発生しない。
【0005】
使用済み核燃料を対流冷却キャスクに保管する方法も知られており、使用済み燃料の入ったバスケットを保管するための密閉蓋付きの金属キャニスターは、スペーサーおよび減衰要素を兼ねた熱放散用のサイドリブとエンドリブを有する。キャニスターは、空気を流通させるための隙間を残すようにキャスクに取り付けられ、キャニスターのリブはキャスク内部の側面および底面に接触する。キャスク本体は、外側および内側の金属シェルからなり、2つの金属シェルの間には耐火性コンクリートおよび/または中性子吸収組成物などの放射線遮蔽材料が充填されている。補強用のヒートシンク部材は、金属製の多孔板であって、内側のシェルの接線方向を向いた状態で外側のシェルに密接するように、内側のシェルに溶接される。キャスクの下部には供給冷却チャンネルが設けられ、蓋には出口冷却チャンネルが設けられている。容器を減圧する場合は、冷却チャネルをプラグで閉じる(特許文献4)。
【0006】
この技術的解決策の不利な点は、キャスクの密閉状態を常に監視することができないため、使用済み核燃料を収納した金属キャニスターが減圧された場合に環境に放射能が放出されるおそれがあることである。
【0007】
このような問題に対して、使用済み核燃料の「乾式」貯蔵に用いられるさまざまな装置が知られている(例えば、特許文献5~9)。
【0008】
乾式貯蔵および/または輸送のために原子炉から排出された使用済み核燃料を梱包する場合、放射性物質が環境へ放出されるのを防ぐために、放射性核燃料の貯蔵の信頼性が重要になる。この信頼性は、保管に用いるキャスクの気密性を継続的に監視することによって保証される。
【0009】
使用済み核燃料を長期に亘って乾燥貯蔵するために用いられるキャスクの気密性を監視する問題は、キャスクの外側または内側のいずれかでガス状媒体のパラメーター(温度、圧力、組成)を測定する等、さまざまな方法によって解決することができる。
【0010】
そのうち、最も信頼性が高いのは、キャスク内のガス状媒体のパラメーターを測定することによって、気密状態を監視できるように設計されたキャスクである。このキャスクによれば、環境へ放出される放射性物質を最小限に抑えることができる。
【0011】
放射性物質の輸送および/または貯蔵に用いられる公知のキャスクには、2つの着脱可能な蓋のうちの内蓋に外蓋を重ね合わせてキャスク本体に取り付けて、2つの蓋とキャスク本体とで密封形態をなし、3つの連続するキャビティ(モニターチャンバー)を形成する(特許文献10)。内蓋および外蓋の装着位置にはそれぞれ溝が設けられており、この溝にOリングを配設することによって、内蓋および外蓋の気密性が保障される。内蓋には、気密性を監視するための装置が設けられており、3つのモニターチャンバーそれぞれから延びるチャネルが当該監視装置の各バルブに連通している。各バルブは内蓋に設けられたソケットに取り付けられており、このソケットは上記の2つの蓋とは別の着脱可能な蓋で密閉される。当該別蓋は外蓋によって確実に閉鎖される。
【0012】
ただし、当該キャスクは、内部キャビティの気密性を監視するために、まず外蓋を外してから、漏れモニター用のバルブを密封している別蓋を外して各モニターチャンバーに順次アクセスできるようにする必要があり、手順が比較的複雑になってしまう。更に、漏れモニターのために外蓋を外すと、放射能汚染に関する安全性が低下する。
【0013】
従来技術に係る原子炉の使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するためのキャスクとして、キャスク本体、蓋および使用済み核燃料を収容するキャニスターからなるキャスクがある(特許文献11)。このキャスクには、不活性ガス(ヘリウム)の圧力を測定する圧力センサーが装備されており、当該圧力センサーはベローズ密閉式のセパレーターを備え、また、不活性ガス(ヘリウム)はポンプで使用済み核燃料キャニスター内部のキャビティへ送気される。ベローズ密閉式セパレーターは、使用済み核燃料キャスクの側面に蓋を装着して作られたキャビティ内に収容され、使用済み核燃料キャスクの上部に作られた通気路に接続されている。圧力センサーはキャスク側面に装着された蓋に設けられた通気路に取り付けられている。使用済み核燃料キャスクの上部には、その内部キャビティに不活性ガス(ヘリウム)を注入するための通気路が形成されており、この通気路にはノズルが取着されている。
【0014】
このキャスクは、圧力センサーが故障したときや、長期貯蔵中の検証を目的として、圧力センサーを交換することができないという欠点がある。また、使用済み核燃料を貯蔵するためのキャスクが多数に上る場合に、キャスク毎に圧力センサーの指示値を記録しようとすると、ビデオカメラを設置する必要がある。ベローズ密閉式セパレーターは、使用済み核燃料キャスク内のキャビティと連通しているので、ベローズ密閉式セパレーターから放射性ガスが漏れている可能性がある場合、その修理作業中に作業員を放射性ガスから保護することができない。
【0015】
この実用新案による技術的解決策では、圧力の低下を検知した場合に、必要に応じて、使用済み核燃料キャスクの内部キャビティへ不活性ガスを送気することが提案されている。キャビティ内の圧力が閾値を下回って降下している場合には、封止材料の気密性の損なわれている恐れがあるので、それらを交換する必要が生じる。また、不活性ガスを補充するための手順においては、作業員が放射性ガスに暴露する危険性がある。
【0016】
放射性物質を輸送および/または保管するためのキャスクの外側に設けられたソケットにボルトで固定することによって取着される密閉用カバーが知られている(特許文献12)。密閉用カバーは可動式になっており、試験ガス用の空洞と外部装置と連通するための通気路が設けられている。提案された技術的解決策では、シーリング部材を分解することなくキャスクの内部環境へのアクセスすることができるだけでなく、キャスクの内部キャビティから過剰な圧力を逃がすことも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ロシア国特許出願公開第2,403,633号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/069,621号明細書
【特許文献3】ロシア国特許出願公開第2,407,083号明細書
【特許文献4】ロシア国特許出願公開第2,231,837号明細書
【特許文献5】米国特許第6,802,671号明細書
【特許文献6】米国特許第8,098,790号明細書
【特許文献7】ロシア国特許第2,519,248号明細書
【特許文献8】特開2017-129365号公報
【特許文献9】国際公開第2018/162,767号
【特許文献10】米国特許第4,495,139号明細書
【特許文献11】ロシア国実用新案第146,031号
【特許文献12】ロシア国特許第2,464,657号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、このキャスクを密閉するために用いられる耐熱ガスケットは、ゴムその他のエラストマーでできているので、火災を想定した温度条件にまでは耐えることができない。また、使用済み核燃料を長期貯蔵する際に要求される、物理的および機械的な耐久性は保証されない。更に、密閉用カバーは、キャスクの内部キャビティと直接連通しており、安全バリアが追加されていないので、放射線漏れに関して安全性が低い。
【0019】
本開示は、使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するためのキャスクおよび方法であって、当該キャスクの外側カバーと内側カバーとの間に注入された不活性ガスの気圧を監視することによって、当該キャスクの密閉度を常時監視するとともに、当該気圧を監視するための圧力センサーを長期の貯蔵期間中に定期的に保守することができるキャスクおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するための方法は、使用済み核燃料を使用済み核燃料キャスクの内部キャビティに収容し、前記内部キャビティに不活性ガスを注入し、前記内部キャビティを閉鎖する内側カバーを密封し、前記キャスクの外側カバーを密封し、前記キャスクの内部キャビティにおける不活性ガスの気圧よりも、外側カバーと内側カバーとの間のキャビティにおける不活性ガスの気圧のほうが高くなるように、外側カバーと内側カバーとの間のキャビティに不活性ガスを注入し、圧力センサーを用いて外側カバーと内側カバーとの間のキャビティの気圧を検出することを特徴とする。
【0021】
また、本開示の一形態に係る使用済み核燃料を長期乾燥貯蔵するためのキャスクは、使用済み核燃料を収容するキャニスターを格納するキャスク本体と、当該キャスク本体を密封する内側カバーと、前記内側カバーとの間にキャビティを形成して当該キャビティを密封する外側カバーと、を備え、前記内側カバーと外側カバーとの間のキャビティは、前記キャスク本体の内部キャビティよりも高い気圧で不活性ガスが注入されており、前記外側カバーは、前記内側カバーとの間のキャビティに連通するラビリンス孔が設けられ、当該ラビリンス孔を閉鎖するフランジと、当該フランジに設けられた環状溝に取り付けられ、前記ラビリンス孔を密封するガスケットと、前記フランジに取り付けられたアングル弁と、前記アングル弁に接続された2つの圧力センサーと、使用済み核燃料の長期乾式貯蔵中に、前記アングル弁と前記圧力センサーを保護する保護カバーと、を有することを特徴とする。
【0022】
この場合において、前記外側カバーは、前記内側カバーとの間のキャビティに連通する通気路が設けられており、当該通気路を閉鎖するバルブと、当該バルブを覆う第2の保護カバーと、を有してもよい。
【0023】
また、前記外側カバーは、使用済み核燃料の輸送中および長期乾式貯蔵中に、前記バルブを密封するバルブカバーを有してもよい。
【0024】
また、前記外側カバーは、前記バルブを開閉制御するための弁棒と、不活性ガスの注入システムおよび圧力センサーとの少なくとも一方を接続するためのクイックリリース継手と、を有する第3の保護カバーを有し、前記内側カバーと外側カバーとの間のキャビティに不活性ガスを注入する際に、前記バルブは、前記通気路を閉鎖し、前記第3の保護カバーは前記バルブを保護してもよい。
【0025】
また、前記ラビリンス孔は、熱膨張グラファイトで両側が被覆された歯付きガスケットで密封されてもよい。
【0026】
また、前記ガスケットは、熱膨張グラファイトで両側が被覆された二重歯の金属ガスケットであってもよい。
【0027】
また、前記保護カバーは、前記内側カバーと外側カバーとの間のキャビティ内の気圧を監視する集中制御システムのケーブルを接続するためのケーブルグランドと、前記ケーブルグランドを密封する熱膨張グラファイト製のリングと、を有してもよい。この場合において、前記圧力センサーが、前記ケーブルグランドを経由して、前記集中制御システムに接続されているのが好ましい。
【0028】
また、前記2つの圧力センサーは、一方が予備であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
本開示の技術的な成果は、使用済み核燃料キャスクの内側カバーと外側カバーとの間のキャビティであって、当該キャスク本体の内部キャビティとは直接連通していないキャビティに、ポンプで注入した不活性ガスの気圧を常時監視することによって、使用済み核燃料を長期に亘って貯蔵する際の安全性を向上させることにある。
【0030】
以下に述べるように、本開示の課題が解決され、その技術的成果が達成される。すなわち、本開示の一形態に係る使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するための方法は、使用済み核燃料キャスクの内部キャビティに使用済み核燃料を収容し、当該内部キャビティに不活性ガスを注入し、当該内部キャビティを閉鎖する内側カバーを密封し、前記使用済み核燃料キャスクの外側カバーを密封し、当該キャスク本体の内部キャビティ内の気圧よりも高い圧力で、当該内側カバーと当該外側カバーとの間のキャビティに不活性ガスを注入し、当該内側カバーと当該外側カバーとの間のキャビティ内の気圧を検出する圧力センサーを接続する。
【0031】
また、本開示の一形態に係る使用済み核燃料キャスクは、使用済み核燃料を収容するキャニスターを格納するキャスク本体、前記キャスク本体を密封する内側カバーおよび外側カバー、2つの圧力センサー、アングル弁および保護カバーを備え、前記内側カバーと外側カバーとは、前記キャスク本体の内部キャビティ内よりも高い気圧で不活性ガスが注入されるキャビティを形成し、前記外側カバーは、環状の溝を有するフランジで閉鎖され、前記環状の溝に取着されたガスケットで密封されたラビリンス孔が開けられており、前記アングル弁は前記フランジに取着され、前記2つの圧力センサーは前記アングル弁に接続され、前記保護カバーは、長期貯蔵時に、前記アングル弁と2つの圧力センサーとを覆う。
【0032】
また、外側カバーには、外側カバーと内側カバーとの間のキャビティに連通する通気路と、当該通気路を閉鎖するバルブと、当該バルブを密封するカバーが設けられている。
【0033】
キャスクの輸送中および長期貯蔵中の場合に、通気路を閉鎖するバルブは保護カバーで密封される。
【0034】
不活性ガスが封入されている状態で通気路を閉鎖するバルブは保護カバーで密封され、当該保護カバーはバルブ制御用の弁棒と、不活性ガス注入システムと圧力センサーとの少なくとも一方を圧力センサーに接続するためのクイックリリース継手と、を備える。
【0035】
外側カバーに設けられたラビリンス孔は、両側が熱膨張グラファイトで被覆された歯付きガスケットで密封される。
【0036】
両側が熱膨張グラファイトで被覆された歯付きガスケットは、環状の溝に嵌め込まれる。
【0037】
保護カバーは、キャスク内の気圧を監視する集中制御システムのケーブルを敷設するために設計されたハーメチックシール(ケーブルグランド)を備える。当該ケーブルグランドは、環状の熱膨張グラファイトでケーブルを密封する。
【0038】
更に、前記ケーブルグランドは、二重歯の金属ガスケットを構成する2つの部品の間のキャビティ部分に穴が設けられており、熱膨張グラファイト製のシールリング付きのプラグを用いて外側から密封される。
【0039】
アングル弁に接続に接続されている2つの圧力センサーのうち、一方は予備である。
【0040】
圧力センサーは、保護カバーのケーブルグランドを経由して、キャスク内の気圧を監視する集中制御システムに接続される。外側カバーと内側カバーとの間のキャビティに不活性ガスを注入し、当該キャビティ内の気圧を使用済み核燃料キャスクの内部キャビティ内の気圧よりも高くすることによって、使用済み核燃料キャスクからの放射性ガスの漏出を防止する追加的な保護策が提供される。外側カバーに取り付けられた圧力センサーを使用して、外側カバーと内側カバーの間のキャビティ内の不活性ガス圧力を継続的に監視すれば、内側カバーの気密状態が低下することによってキャビティ内の圧力が変化したか否かを判断することができる。
【0041】
本開示に係る技術的解決策によれば、使用済み核燃料キャスクの内部キャビティと直接連通していない気密な回路をいくつか使用して、使用済み核燃料キャスクの外側カバーと中側カバーとの間のキャビティに注入された不活性ガスの気圧を継続的かつ安全に制御することができる。
【0042】
予備の圧力センサーを備えた冗長な構成をとっているので、一方の圧力センサーに障害が発生した場合であっても、使用済み核燃料キャスク内の圧力を中断なく監視し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】使用済み核燃料キャスクを輸送する際の取り付け位置にある外側カバー1の構成を示す図である。
図2】仕切弁カバー7に代えて保護カバー8を取着した外側カバー1の構成を示す図である。
図3】使用済み核燃料を長期乾式貯蔵する際の外側カバー1の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、キャスクを輸送する際の取り付け位置にある外側カバーを示す図である。
【0045】
外側カバー1には、ラビリンス孔2が設けられている。ラビリンス孔2は、外側カバー1と内側カバーとの間のキャビティ5に連通する。Radioactiveは、プラグ3を備えたフランジによって閉鎖され、金属ガスケット4で密封される。プラグ3の上には、金属ガスケット4を備えた仕切弁カバー6が配設されている。また、外側カバー1には、ラビリンス孔とは別に、キャビティ5に連通する通気路が設けられており、この通気路はバルブ6´によって密封され、更に、仕切弁カバー7で閉鎖される。キャスクを郵送する際には、外側カバー1はこのような態様をとる。
【0046】
図2は、保護カバー8を示す図である。保護カバー8は、バルブ6´の弁棒とクイックリリース継手9とを有し、クイックリリース継手9は、不活性ガスの注入システムや圧力センサーを接続するのに使用される。
【0047】
図3は、長期貯蔵の際の外側カバー1の態様を表した図であって、センサー13が保護カバー11の内側から気密シール(ケーブルグランド)12に接続されている。
【0048】
使用済み核燃料キャスクの内部キャビティは、内側カバーを経由して真空乾燥させてから、使用済み核燃料キャスクに使用済み核燃料を長期(60年以上)貯蔵する際に内部キャビティに封入しなければならないとの規定に従って、ヘリウム等の不活性ガスを注入した後、内側カバーが密封される。使用済み燃料キャスクには、更に、外側カバー1が取着され、密封される。
【0049】
使用済み核燃料を輸送する際には、仕切弁カバー7で通気路が閉鎖される。
【0050】
使用済み核燃料を長期貯蔵するためにそのキャスクを保管施設に配送した後、以下の技術的な操作が実行される。すなわち、まず仕切弁カバー7を取り外し、その代わりに保護カバー8を取着して密封する(図2)。保護カバー8は、バルブ6´を制御するための弁棒と、不活性ガスの注入システムや圧力センサーを接続するためのクイックリリース継手9とを備えている。輸送後の使用済み核燃料キャスクの内側カバーの気密性を確認するためには、圧力センサーをクイックリリース継手9に接続し、弁棒を用いてバルブ6´を開放して、外側カバー1と内側カバーとの間のキャビティの気圧を確認する(内側カバーの気密性が低下して、キャスク内部のガスが漏出していると、圧力センサーが表示する圧力が上昇する)。内側カバーの気密状態を確認した後、圧力センサーを取り外し、その代わりに、不活性ガスの注入システムをクイックリリース継手9に接続する。次に、仕切弁カバー6(図1)とプラグ3とを取り外して、その代わりにアングル弁14(図3)を取り付ける。アングル弁14に2つの圧力センサー13を取り付ける(圧力センサー13の一方がメインであり、他方が予備である)。アングル弁14を閉鎖し、弁棒を用いてバルブ6´を開放する。不活性ガスの注入システムを用いて、不活性ガスをクイックリリース継手9およびバルブ6´を経由してキャビティ5へ注入する。キャビティ5内の不活性ガスが所定の気圧に達したら、バルブ6´を閉鎖し、不活性ガスの注入システムによる不活性ガスの注入を停止し、保護カバー8を取り外し、歯(好ましくは二重歯)付き金属ガスケットを備えた保護カバー7を取り付ける。保護カバー7の気密状態を確認した後、アングル弁14を開放する。保護カバー11(図3)の内部においては、圧力センサー13をハーメチックシール(ケーブルグランド)12に接続し、その後、保護カバー11を歯(好ましくは二重歯)付き金属ガスケットで密封し、その気密状態を確認する。保護カバー11の外部においては、使用済み核燃料貯蔵施設に収容した使用済み核燃料キャスク内の気圧を監視する集中制御システムのケーブルをケーブルグランド12に接続する。
【0051】
使用済み核燃料キャスク内の気圧を監視する集中制御システムによれば、使用済み核燃料貯蔵施設に収容した使用済み核燃料キャスク毎に内部キャビティ5の気圧を継続的に監視して、その監視結果を遠隔貯蔵管理パネルに表示することができる。監視対象の使用済み核燃料キャスクのうちのどれかで内部キャビティ5の気圧が閾値に達すると、遠隔貯蔵管理パネルで警報が作動し、当該使用済み核燃料キャスクにおいて密封ガスケットの気密状態が低下したことが報知される。この警報に従って、使用済み核燃料貯蔵施設の要員は、当該使用済み核燃料キャスクからの漏洩を阻止するための措置をとることになる。
【0052】
使用済み核燃料キャスク毎に圧力センサーを2つずつ用いれば、圧力センサーの誤動作などに起因して警報が誤作動するリスクを排除することができる。
【0053】
圧力センサーが故障しているか、および圧力センサーを交換する場合には、次の手順に従う。
【0054】
まず、ケーブルグランド12(図3)に接続されているケーブルを保護カバー11の外側から取り外すとともに、保護カバー11を取り外す。次に、ケーブルグランド12および圧力センサー13に接続されている接続さケーブルを保護カバー11の内側から取り外す。アングル弁14を閉鎖し、圧力センサー13の一方または両方を取り外す。圧力センサー13を交換した後、アングル弁14を開放し、保護カバー11を密封し、使用済み核燃料キャスク内の気圧を監視する集中制御システムのケーブルをケーブルグランド12に接続する。
【0055】
本開示のように使用済み核燃料キャスクを設計すれば、VVER-1000/1200(Voda Voda Energo Reactor-1000/1200)型の原子炉から排出された使用済み核燃料を長期に亘って安全に乾式貯蔵することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示は、原子力分野における、使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するための容器及び方法であって、特に、VVER1000/1200型原子炉の使用済み核燃料を長期乾式貯蔵するための容器及び方法として有用である。
【符号の説明】
【0057】
1…………外側カバー
2…………ラビリンス孔
3…………プラグ
4…………金属ガスケット
5…………キャビティ
6、7……仕切弁カバー
6´、9…バルブ
8、11…保護カバー
12………ケーブルグランド
13………圧力センサー
14………アングル弁
図1
図2
図3
【国際調査報告】