IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フイルメニツヒ ソシエテ アノニムの特許一覧

<>
  • 特表-レタス抽出物 図1
  • 特表-レタス抽出物 図2
  • 特表-レタス抽出物 図3
  • 特表-レタス抽出物 図4
  • 特表-レタス抽出物 図5
  • 特表-レタス抽出物 図6
  • 特表-レタス抽出物 図7
  • 特表-レタス抽出物 図8
  • 特表-レタス抽出物 図9
  • 特表-レタス抽出物 図10
  • 特表-レタス抽出物 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】レタス抽出物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/10 20160101AFI20220616BHJP
   C07D 207/20 20060101ALI20220616BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20220616BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220616BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220616BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220616BHJP
   C11B 1/10 20060101ALI20220616BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20220616BHJP
   A23L 7/10 20160101ALN20220616BHJP
【FI】
A23L27/10 C
C07D207/20
A61K8/9789
A61K8/49
A61Q11/00
A61Q13/00 101
C11B1/10
C11B9/00 A
A23L7/10 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021538715
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020061381
(87)【国際公開番号】W WO2020216862
(87)【国際公開日】2020-10-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2019/084438
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シウ-フォン ホァ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュタルケンマン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ セアニー
(72)【発明者】
【氏名】イー-ミン ワン
【テーマコード(参考)】
4B023
4B047
4C069
4C083
4H059
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LE11
4B023LK13
4B023LP10
4B047LB03
4B047LE01
4B047LE06
4B047LF02
4B047LG28
4B047LG39
4B047LP01
4B047LP05
4B047LP07
4B047LP09
4B047LP20
4C069AB03
4C069BB02
4C069BB22
4C069CC24
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC851
4C083AC852
4C083CC41
4C083EE06
4C083KK02
4H059BA23
4H059BC23
4H059DA09
4H059EA36
(57)【要約】
本発明は、2-アセチル-1-ピロリン及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)、特に茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)からの抽出物、かかる抽出物を含むフレーバー付与組成物、並びにかかる抽出物の製造方法に関する。本発明は、さらに、消費者製品における味成分又はフレーバー成分としてのかかる抽出物の使用、及びかかる抽出物を使用することによって消費者製品の味又はフレーバーを高める、改善する、改質する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-アセチル-1-ピロリン及び、任意に、2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)からの抽出物。
【請求項2】
レタス(Lactuca sativa)が、茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)である、請求項1に記載の抽出物。
【請求項3】
抽出物が、レタスの葉、皮、根もしくは芯の軸又はそれらの任意の混合物から得られ、好ましくは抽出物が、レタスの葉、皮もしくは芯の軸又はそれらの任意の混合物から得られ、さらにより好ましくは抽出物が、レタスの皮もしくは芯の軸又はそれらの任意の混合物から得られ、最も好ましくは抽出物がレタスの芯の軸から得られる、請求項1又は2に記載の抽出物。
【請求項4】
抽出物が、水性抽出物又は粉末抽出物である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の抽出物。
【請求項5】
以下、
i. 2-アセチル-1-ピロリン、及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)からの少なくとも1種の抽出物
ii. フレーバーキャリヤー、フレーバー付与補助成分、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに
iii. 任意に少なくとも1種のフレーバー補助剤
を含む、フレーバー付与組成物。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の抽出物、又は請求項5に記載の組成物を含む、フレーバー付与した消費者製品。
【請求項7】
フレーバー付与成分として、2-アセチル-1-ピロリン及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)からの抽出物の使用。
【請求項8】
フレーバー付与組成物又はフレーバー付与した物品の味の特性を付与する、高める、改良する又は改質するための方法であって、前記組成物又は物品に、2-アセチル-1-ピロリン及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)からの抽出物の有効量を付加することを含む、前記方法。
【請求項9】
以下、
a) レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)を準備するステップ、
b) それらから2-アセチル-1-ピロリン、及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む抽出物を単離するステップ
を含む、2-アセチル-1-ピロリン、及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)の抽出物の製造方法。
【請求項10】
ステップb)が、次のステップ:
b.1.) レタスを熱処理して、加工したレタスを得るステップ、
b.2.) ステップb.1.の加工したレタスを、水蒸気蒸留又は真空蒸留、好ましくは真空蒸留するステップ、及び
b.3.) 蒸留物として抽出物を得るステップ
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップb.1.)が、25℃~100℃、好ましくは45℃~100℃、より好ましくは70℃~100℃から選択される温度、最も好ましくは80℃~90℃である温度で実施する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップb.1.)が、1~50分、好ましくは30~50分の範囲から選択される時間継続する、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
次の追加のステップ:
b.4.) ステップb.3.)において得られた抽出物を酸/塩基抽出するステップ、
任意に、b.5.) ステップb.4.)において得られた抽出物を、好ましくは固相抽出によってさらに濃縮するステップ
を含む、請求項10から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ステップb)が、次のステップ:
b.1.) 水溶液中でレタスを溶解して、レタスの残留物及び上清を得るステップ、
b.2.) 上清として抽出物を得るステップ
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
次のステップ:
c)抽出物を乾燥するステップ、好ましくは噴霧乾燥又は凍結乾燥によって抽出物を乾燥するステップ
を含む、請求項9から14までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2-アセチル-1-ピロリン及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)、特に茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)からの抽出物、かかる抽出物を含むフレーバー付与組成物、並びにかかる抽出物の製造方法に関する。本発明は、さらに、消費者製品における味成分又はフレーバー成分としてのかかる抽出物の使用、及びかかる抽出物を使用することによって消費者製品の味又はフレーバーを高める、改善する、改質する方法に関する。
【0002】
背景技術
米は、世界の人口の3分の2について主食であり、主な穀物作物である。中国及びインドが主な米の生産国である。香りは、特に消費者の受容を基準とする場合に、米の最も重要な特徴の1つである。今日、消費者は、自分たちが消費する米の品質をより意識するようになっている。消費者は、しばしばその特徴及び心地よいにおいにより香しい米を好む。したがって、香りのよい米の需要は、国内市場と国際市場の双方において増加している。このように、米の香りは、品質の特性として重要性が増している。したがって、インド及びパキスタンのバスマティ米、並びにタイのジャスミン米は、より高い市場価格がある。
【0003】
2-アセチル-1-ピロリン(2-AP)は、香り米における心地よい香りの要因となる主要な芳香化合物として同定された。さらに、2-APは、食品の「ポップコーンの香り」の要因であり、非常に低いにおい閾値(0.1μg/kg)を有する。したがって、非常に低い濃度で人間の鼻によりなお検出できる。
【0004】
2-APは、米飯において最も重要なフレーバー化合物として初めて同定された。しかしながら、その発見以来、2-APは、多種多様な生物系及び食品におけるその存在を明らかにし続けてきている。生物系及び食品とは別に、2-APは、低い収率でメイラード反応で形成されうる。アミノ酸であるプロリン及びオルニチンは、熱処理時に2-APに反応することによって2-APの前駆体として文献で議論されている。
【0005】
2-APのピロリン環は、化合物を非常に不安定にする。商業的使用に関する限り、2-APの不安定な性質は、商業的合成には不適切になる。さらに、天然又は「クリーンラベル」バージョンとも呼ばれるバージョンは、合成のものよりも明らかに好まれる。したがって、食品に所望の2-APの香りを適用するために、他の方法を特定する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】2-APのマススペクトル。
図2】2-APのO-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン(PFBHA)誘導体のマススペクトル。
図3】パンダンリーフエッセンス(10倍)を使用した2-APの検量線。
図4】レタス芯の軸の熱プロセス中に適用した温度の関数での2-APの量。
図5】100℃でのインキュベーション継続時間の関数での2-APの量。
図6】100℃で50分間のインキュベーション前後のレタスの7個の異なるバッチ(異なる部分による)間の2-APの、質量分析計と組み合わせた固相マイクロ抽出及びガスクロマトグラフィー(SPME-GC/MS)分析。ピーク範囲は、抽出したイオンについてm/z 83を示す。
図7】レタスエッセンスの基本画分における2-APの安定性。
図8】固相抽出(SPE)による2-APの濃度。
図9】調理したレタスの上清及び残留物における2-APのレベル。
図10】凍結乾燥後の通常の上清及び再構成させた上清の双方についてのインキュベーション前後の2-APのレベル。
図11】白米(上段)及び調理した米(下段)のSPME-GC/MS分析(m/z 83のEIC)。
【0007】
発明の詳細な説明
本発明は、2-アセチル-1-ピロリン(2-AP)及び、任意に、2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)からの抽出物に関する。
【0008】
抽出物は、所望の化合物を、それらを抽出した食品マトリックスと比較して濃縮された形で含む調製物である。
【0009】
任意の実施形態に従って、レタス(Lactuca sativa)からの抽出物は、チャイニーズレタス又はステムレタスとも言われる茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)からの抽出物である。
【0010】
好ましくは、茎レタスは、波状の葉身を有する栽培品種である。さらにより好ましくは、茎レタスは、波状の葉身及び丸い葉先を有する栽培品種である。さらにより好ましくは、茎レタスは、波状の葉身、丸い葉先及び長く緩い節間を有する栽培品種である。
【0011】
レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)の抽出物は、好ましくは2-APの前駆体を含む。それによって、抽出物が2-APの前駆体を含みうるが、必ずしもそれらを含む必要はないことが理解される。
【0012】
2-AP前駆体は、化学反応によって2-APに変換されうる化学化合物である。2-APへの前駆体の反応は、特に熱処理によってトリガーされてよい。しかしUV光も、又は任意の種類の触媒の存在が、前駆体から2-APの形成をトリガーしてよい。触媒は、例えば酸、塩基、酵素又は他の有機/無機化合物、及びそれらの混合物であってよい。
【0013】
2-APの前駆体は、室温より高い温度での、好ましくは30℃~100℃での熱処理により2-APへと反応する。室温は、20℃~25℃の温度と定義される。2-APの相対的及び絶対的な定量のための慣用的な分析手法は、SPME-GC/MS(固相マイクロ抽出、及び質量分析計と組み合わせたガスクロマトグラフィー)である。
【0014】
好ましい実施形態において、2-APの前駆体は水溶性である。化合物は、これらの化合物の1mmol超を20℃で水1リットル中に溶解できる場合に水溶性と考えられる。
【0015】
好ましい実施形態において、2-APの前駆体は不揮発性である。不揮発性は、前駆体が、揮発性でない、すなわち通常の室温で高い蒸気圧を示さないことを意味する。したがって、不揮発性前駆体自体は、芳香化合物とみなされない。
【0016】
好ましい実施形態において、抽出物は、レタスの葉、皮、根もしくは芯の軸又はそれらの任意の混合物から、より好ましくはレタスの葉、皮もしくは芯の軸又はそれらの任意の混合物から、さらにより好ましくはレタスの皮もしくは芯の軸又はそれらの任意の混合物から、及び最も好ましくはレタスの芯の軸から得られる。好ましい実施形態において、レタスの葉、皮、根もしくは芯の軸又はそれらの任意の混合物は、そのまま使用することもでき、又は抽出プロセス前に粉砕するなど事前に準備することもできる。
【0017】
好ましい実施形態において、抽出物は、熱処理されたレタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)、又はその一部から得られる。熱処理は、25℃~100℃、好ましくは45℃~100℃、より好ましくは70℃~100℃から選択される温度、最も好ましくは80℃~90℃である温度で実施されうる。熱処理は、1~50分、好ましくは30~50分、より好ましくは40~50分から選択される時間から継続しうる。
【0018】
好ましい実施形態において、抽出物は、水性抽出物又は粉末抽出物、より好ましくは粉末抽出物である。水性抽出物は、抽出した材料の全体が、溶液中に存在することを意味し、ここで溶媒は水を含む。粉末抽出物は、抽出した材料の全体が、固体、粉末の形で中に存在することを意味する。
【0019】
好ましい実施形態において、抽出物は、ベンズアルデヒド、オクタナール、2-アセチルピロール及び/又はノナナール、又はそれらの任意の混合物も含む。より好ましい実施形態において、抽出物は、ベンズアルデヒド、オクタナール、2-アセチルピロール及びノナナールも含む。大量の前記追加の化合物が、熱処理したレタスから得られた抽出物中で観察されうる。前記化合物又は化合物の組み合わせは、抽出物のさらにより好ましいフレーバーの印象に寄与しうる。
【0020】
本発明の抽出物は、フレーバー付与成分として使用されてもよい。
【0021】
本発明は、フレーバー成分として、2-アセチル-1-ピロリン及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)からの抽出物の使用にも関する。言い換えれば、本発明は、フレーバー付与成分又はフレーバー付与した物品の味の特性を付与する、高める、改良する又は改質するための方法に関し、該方法は、該組成物又は物品に、本発明の抽出物の有効量を付加すること、例えばその典型的なノートを付与することを含む。
【0022】
典型的な有効量は、組み込まれる組成物又は物品の質量に対して、本発明の抽出物の0.001ppm~1000ppm、より好ましくは0.1ppm~500ppm、より好ましくは0.5ppm~350ppm、最も好ましくは1ppm~100ppmである。
【0023】
「抽出物の使用」に関して、フレーバー産業において有利に使用されてよい本発明の抽出物を含むあらゆる組成物の使用もここで理解すべきである。
【0024】
「味」に関しては、味の知覚及び味の感覚を示すことを意味する。
【0025】
実際にフレーバー付与成分として有利に使用される前記組成物は、本発明の目的でもある。
【0026】
したがって、本発明は、以下、
i. 前記で定義した、2-アセチル-1-ピロリン、及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)からの少なくとも1種の抽出物
ii. フレーバーキャリヤー、フレーバー付与補助成分、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の成分、並びに
iii. 任意に少なくとも1種のフレーバー補助剤
を含む、フレーバー付与組成物にも関する。
【0027】
「フレーバーキャリヤー」に関しては、フレーバー付与成分の感覚刺激性の特性を著しく変更しない限りは、フレーバーの観点から実質的に中性である材料を意味する。前記キャリヤーは、液体又は固体であってよい。
【0028】
適した液体キャリヤーは、例えば、乳化系、すなわち溶剤及び界面活性剤系、又はフレーバーにおいて慣用的に使用される溶剤を含む。フレーバーにおいて慣用的に使用される溶剤の性質及びタイプの詳細な説明は網羅できない。適した溶媒は、例えば、プロピレングリコール、トリアセチン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(neobee(登録商標))、トリエチルシトレート、ベンジルアルコール、エタノール、植物油、例えばアマニ油、ヒマワリ油もしくはココヤシ油、又はテルペンを含む。
【0029】
適した固体キャリヤーは、例えば、吸収性ゴム又はポリマー、又はさらに封入材料を含む。かかる材料の例は、造壁材料及び可塑材料、例えば単糖、二糖又は三糖、天然デンプン又は化工デンプン、親水コロイド、セルロース誘導体、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、タンパク質又はペクチン、又はさらに、参考文献、例えばH. Scherz, Hydrokolloid : Stabilisatoren, Dickungs- und Geliermittel in Lebensmitteln, Band 2 der Schriftenreihe Lebensmittelchemie, Lebensmittelqualitaet, Behr’s VerlagGmbH & Co., Hamburg, 1996において挙げられている材料を含んでよい。カプセル化は、当業者に周知の方法であり、かつ例えば噴霧乾燥、凝集、押し出し、コアセルベーション等のような技術を使用して実施されてよい。
【0030】
「フレーバー付与成分」に関しては、ここでは、心地よい効果を付与するためのフレーバー付与調製物又は組成物において使用される化合物を意味する。言い換えれば、フレーバー付与成分であると考えられるべきかかる成分は、ポジティブ又は好ましい方法で組成物の味を付与又は改質することができると、及び単に1つの味を有するだけでないと当業者によって認識される必要がある。
【0031】
前記フレーバー付与組成物中に存在するフレーバー付与補助成分の性質及びタイプは、ここでより詳細な記載を保証するものではなく、その際当業者は、一般の知識に基づいて、及び任意の使用又は適用及び所望された感覚刺激性効果に従って、それらを選択することができる。一般的な用語で、これらのフレーバー付与補助成分は、アルコール、アルデヒド、ケトン、エステル、エーテル、アセテート、ニトリル、テルペノイド、窒素又は硫黄の複素環化合物及び精油と多様な化学品種に属し、かつ該付香補助成分は、天然又は合成由来のものであってよい。これらの補助成分の多くは、いずれにしても、参考文献、例えばS. ArctanderによるPerfume and Flavor Chemicals, 1969, Montclair, New Jersey, USA、又はその最新版において、又は同様の種類の他の著作において、並びにフレーバーの分野における豊富な特許文献において挙げられている。前記補助成分は、制御された方法で種々のタイプのフレーバー付与化合物を放出することが公知の化合物であってもよいとも解される。
【0032】
「フレーバー補助剤」に関しては、ここで、追加の付加効果、例えば色、特定の耐光性、化学安定性等を付与することができる成分を意味する。フレーバー付与組成物において慣用的に使用される補助剤の性質及びタイプの詳細な説明は網羅できない。それにもかかわらず、かかる補助剤は、その一般的な知識に基づいて及び意図された使用又は適用に従ってそれらを選択することができるであろう当業者に周知である。
【0033】
少なくとも1つの本発明の抽出物及び少なくとも1つのフレーバーキャリヤーからなる組成物は、本発明の特定の実施形態を示し、及び少なくとも1つの本発明の抽出物、少なくとも1つのフレーバーキャリヤー、少なくとも1つのフレーバー補助成分、及び任意に少なくとも1つのフレーバー補助剤を含むフレーバー付与組成物を示す。
【0034】
さらに、本発明の抽出物は、フレーバーの分野において、前記抽出物に付加される消費者製品の味をポジティブに付与する又は改良するために有利に使用されうる。したがって、本発明は、前記で定義した本発明の組成物を含むフレーバー付与した消費者製品に関する。
【0035】
本発明の抽出物は、フレーバー付与した消費者製品に添加されてよく、本発明のフレーバー付与組成物自体又はフレーバー付与組成物の一部を添加してよい。
【0036】
明確性の理由から、「フレーバー付与した消費者製品」に関しては、食品又は飲料品であってよく、油で揚げられるか揚げられていないか、及び冷凍されているか冷凍されていないか、低脂質であるか低脂質でないか、マリネにされるか、衣を付けられるか、冷蔵されるか、水分を抜かれるか、インスタントであるか、缶詰めにされるか、もどされるか、レトルトにされるか、又は保存されてよい、食用製品を示すことを意味する。したがって、本発明に従ってフレーバー付与した物品は、本発明の抽出物、及び所望の食用品の味覚及びフレーバープロフィールに対応する任意に有効物質、例えば風味付けキューブを含む。
【0037】
食料又は飲料品の構成物の性質及びタイプは、ここでのより詳細な記載を保証せず、その際当業者は、一般の知識に基づいて、及び該製品の性質に従って、性質及びタイプを選択することができる。
【0038】
前記フレーバー付与した消費者製品の典型的な例としては、以下を含む:
・ 調味料又は香辛料、例えば煮出し汁、風味付けキューブ(savory cube)、パウダーミックス、フレーバー付けしたオイル、ソース(例えば、レリッシュ、バーベキューソース、ドレッシング、グレービーソース又は甘い及び/又は酸味のあるソース)、サラダドレッシング又はマヨネーズ;
・ 肉ベースの製品、例えば家禽、牛肉もしくは豚肉ベースの製品、シーフード、すり身、又は魚肉ソーセージ;
・ スープ、例えば澄ましスープ、クリームスープ、チキン又はビーフスープ、トマト又はアスパラガススープ;
・ 炭水化物ベースの製品、例えばインスタント麺、米、パスタ、ポテトフレーク又はフライ、麺、ピザ、トルティーヤ、ラップ;
・ 乳製品又は脂製品、例えばスプレッド、チーズ、普通のマーガリン、低脂肪マーガリン、バター/マーガリンブレンド、バター、ピーナッツバター、ショートニング、加工又は味付けチーズ;
・ 風味付けした製品、例えばスナック、ビスケット(チップスもしくはクリスプなど)又は卵製品、ポテト/トルティーヤチップ、電子レンジ用ポップコーン、ナッツ、プレッツェル、餅、煎餅など;
・ 菓子類、例えばパン屋の菓子(例えば甘いペストリー又はケーキ)、砂糖菓子(例えばスイーツ、キャンディー、砂糖漬けナッツ、チョコレート、チューインガム及びバブルガム、砂糖漬け果物、パスティヤージュ、シュガーレス菓子、又はチョコレート菓子;
・ オーラルケア製品、例えば練り歯磨き、マウスウォッシュ、デンタルケア製品(例えば義歯接着剤)、デンタルリンス、マウススプレー、デンタルパウダー、デンタルジェル又はデンタルフロス;
・ 人工製品、例えば乳製品(例えば、油、脂肪及び増粘剤から製造された改良チーズ(reformed cheese))又は海産物又は肉(例えば、ベジタリアンの肉の代用品、野菜バーガー)又は類似品;
・ ペット又は動物の食品;又は
・ 飲料、例えばホットドリンク(例えば茶)、炭酸を含むソフトドリンク、アルコールドリンク、すぐに飲めるドリンク又は粉末ソフト。
【0039】
いくつかの前記フレーバー付与した消費者製品は、本発明の抽出物にとってアグレッシブな媒体であることもあるため、例えばカプセル化によって早すぎる分解から保護する必要がある場合がある。
【0040】
好ましい実施形態において、抽出物は、食品を熱処理する前に、すなわち、例えば料理、ロースト、又はグリルする前に、食品に添加される。食品を熱処理する前に抽出物を食品に添加する場合に、2-APの前駆体が熱処理中に2-APに反応するため、抽出物を含む食品の熱処理時に2-APの量が増加する。
【0041】
種々の前記製品中に組込まれてよい本発明の抽出物又は組成物の割合は、広い範囲の値で変動する。これらの値は、フレーバー付与されるべき消費者製品の性質に、並びに所望の感覚受容性効果及び本発明による組成物が、付香又はフレーバー付与成分、溶剤又は先行技術において慣用的に使用される添加剤と混合される場合に、所与のベースにおける補助成分の性質に依存する。
【0042】
例えば、フレーバー付与した消費者製品の場合に、典型的な濃度は、組み込まれる消費者製品の質量に対して、本発明の抽出物又は組成物の0.001ppm~1000ppm、より好ましくは0.1ppm~500ppm、さらにより好ましくは0.5ppm~350ppm、最も好ましくは1ppm~100ppmである。
【0043】
本発明は、以下、
a)レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)を準備するステップ、
b)それらから2-アセチル-1-ピロリン、及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む抽出物を単離するステップ
を含む、2-アセチル-1-ピロリン、及び任意に2-アセチル-1-ピロリンの前駆体を含む、レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)の抽出物の製造方法にも関する。
【0044】
レタス(Lactuca sativa)、好ましくは茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)は、前記で定義したものであってよい。レタス、特に前記で定義したレタスの葉、皮、根もしくは芯の軸又はそれらの任意の混合物は、そのままで提供されてもよく、又は単離ステップ前にレタスを粉砕するなど事前に調製してもよい。
【0045】
抽出物は、当該技術分野において任意の公知の抽出技術、例えば溶媒抽出もしくは蒸留、又は抽出技術の組み合わせによって単離されてよい。
【0046】
溶媒抽出下では、溶媒、例えば水もしくは任意の他の適した溶媒又は溶媒の組み合わせによる食品マトリックスからの所望の化合物の抽出が理解されるべきである。好ましくは、抽出のための溶媒は、水性溶媒、より好ましくは水である。
【0047】
蒸留は、選択的な沸騰及び凝縮を使用することにより液体混合物から特定の成分又は物質を分離するプロセスを定義する。したがって、蒸留は、混合物中の成分の揮発性における差異を利用する。種々の蒸留技術は、当業者に周知である。水蒸気蒸留は、熱に不安定な芳香化合物の蒸留に特に適している。水蒸気蒸留中に、混合物中の芳香化合物は、水蒸気と一緒に運び出されるため、混合物から芳香化合物を穏やかに分離することが可能である。真空蒸留も、熱に不安定な芳香化合物の蒸留に特に適している。真空蒸留中に、混合物中の芳香化合物は、減圧、すなわち大気圧下の圧力によって運び出されるため、非常に効率的な方法で芳香化合物を混合物から穏やかに分離することが可能である。
【0048】
好ましくは、抽出物は、溶媒抽出により単離される。さらにより好ましくは、抽出物は、溶媒抽出、続いて蒸留、例えば水蒸気蒸留又は真空蒸留、好ましくは真空蒸留によって単離される。
【0049】
特定の実施形態に従って、方法ステップb.)は、さらに、次のステップ:
b.1.) レタスを熱処理して、加工したレタスを得るステップ、
b.2.) ステップb.1.の加工したレタスを、水蒸気蒸留又は真空蒸留、好ましくは真空蒸留するステップ、及び
b.3.) 蒸留物として抽出物を得るステップ
を含む。
【0050】
レタスの熱処理は、レタスを加熱ステップにかけることを意味する。好ましくは、ステップb.1.)は、25℃~100℃、より好ましくは45℃~100℃、さらにより好ましくは70℃~100℃から選択される温度、最も好ましくは80℃~90℃である温度で実施する。好ましくは、ステップb.1.)は、1~50分、より好ましくは30~50分から選択される時間継続する。
【0051】
好ましい実施形態において、前記方法は、次の追加のステップ:
b.4.) ステップb.3.)において得られた抽出物を酸/塩基抽出するステップ、
任意に、b.5.) ステップb.4.)において得られた抽出物を、好ましくは固相抽出、正浸透又はパーベーパレイションによって、より好ましくは固相抽出によってさらに濃縮するステップ
を含む。
【0052】
酸/塩基抽出は、液体-液体抽出のタイプである。典型的に、水中及び有機溶媒中での異なる溶解性のレベルを含む。有機溶媒は、水(無極性溶媒)中で不溶性である任意の炭素ベースの液体であってよく、慣用的な無極性溶媒は、エーテル、酢酸エチル、ジクロロメタン、又はペンタンである。酸/塩基抽出は、抽出物からグリーンアロマノートを取り出すために適用されうる。それにより、抽出物を、酸、例えば硫酸で酸性化することができ、化合物、例えば2-APをイオン性にし、したがって水相に可溶になる。したがって、中性分子、例えば多くのグリーンアロマノートは、イオン性化合物、例えば2-APが酸性化水相に残る無極性溶媒で効果的に抽出されうる。抽出後に、水相を、塩基、例えば炭酸ナトリウムで再度中和してよい。
【0053】
固相抽出(SPE)は、液体混合物中で溶解又は懸濁させた化合物を、その物理的特性及び化学的特性に従って混合物中の他の化合物から分離することによる試料調製技術である。濃縮される化合物は固相に吸収されるが、一方で試料中の他の化合物は固相に吸収されない。好ましくは、固相は、オクタデシル-炭素鎖結合シリカ(C18相)である。したがって、試料中の特定の化合物を互いに分離できる。次に、濃縮される化合物は、適した溶媒(溶出液)で固相から再び溶出できる。好ましくは、溶出液は、70%エタノール(水/エタノール;30/70;v/v)の溶液である。
【0054】
他の特定の実施形態において、方法ステップb.)は、次のステップ
b.1.) 水溶液中でレタスを溶解して、レタスの残留物及び上清を得るステップ、
b.2.) 上清として抽出物を得るステップ
を含む。
【0055】
水溶液は、水を含む任意の種類の溶媒であってよい。好ましくは、水溶液は水である。好ましくは、ステップb.2.)におけるレタスの残留物及び上清の分離は、レタスの残留物及び上清を遠心分離することによって促進して、上清として透明な抽出物を得られる。好ましくは、ステップb.2.)におけるレタスの残留物及び上清を遠心分離、続いて膜濾過、例えば濾過、精密濾過、限外濾過、正浸透、逆浸透、又はそれらの組み合わせを使用して上清を濾過することによって実施されてよい。
【0056】
好ましい実施形態において、前記方法は、追加のステップ:
c1) 抽出物を乾燥するステップ、好ましくは噴霧乾燥又は凍結乾燥によって抽出物を乾燥するステップ、又は
c2) 抽出物を希釈するステップ
を含む。
【0057】
抽出物を乾燥させることは、乾燥ステップ後に抽出物に本質的に溶媒が残らないこと、好ましくは、乾燥ステップ後に抽出物に溶媒が全く残らないことを意味する。したがって、抽出物は固体であり、乾燥ステップ後に粉末化される。噴霧乾燥は、高温ガスで急速に乾燥させることにより、液体又はスラリーから乾燥粉末を生成する方法である。一方で、凍結乾燥は、製品を凍結し、圧力を下げ、そして昇華によって氷を取り除く低温脱水プロセスである。挙げた双方の乾燥方法は、穏やかな乾燥方法であり、したがって、熱に不安定な化合物、例えば多くの芳香化合物に特に適している。
【0058】
本発明による抽出物は、好ましくは、上記で定義した調製方法に従って得られる。
【0059】
実施例
実施例1:試料調製
試料として、茎レタス(Lactuca sativa var. angustana)のレタスの種々の部分(心の茎(heart stem)、葉、根、及び皮の損傷で分泌される乳状液、及び皮(乳状液を含む))を使用する。
【0060】
全ての新鮮なレタス試料を、均質性を確実にするために液体窒素によって冷却した極低温ミラーで微粉末に粉砕した。粉末試料を、冷凍庫で-80℃で保存した。
【0061】
実施例2:2-APの分析方法
a) SPME-GC/MS
実施例1からの試料1~2gを、サンプリングのために20mLのヘッドスペースバイアルに入れる。SPMEのサンプリングのために、Supelco DVB/CAR/PDMS SPME繊維(1cm、膜厚50/30μm、Supelco、Bellefonte、PA)を使用した。サンプリングの前に、それぞれの試料を40℃で10分間平衡にした。平衡後に、SPME繊維を、バイアルのヘッドスペースに15分間同一の温度(40℃)で曝した。全体のサンプリング手順を、SPMEについてのGerstelオートサンプラーによって実行した。そして、繊維を250℃でGC/MS注入ポートに3分間脱着させた。
【0062】
GC/MSシステムは、Agilent 6890N GC、Agilent 5975質量分析計、及び30m×0.25mm id×0.25μm DB-1ms(J&W 122-0132)カラムを備えていた。
【0063】
GC/MS法:
炉:50℃(3分保持)~100℃/分で250℃、3分保持。入口温度:250℃。キャリヤーガス:ヘリウム。流量:0.7mL/分。スプリット比:25:1。質量分析計イオン化電圧:70eV。スキャン範囲:m/z 29~450。四重極温度:150℃。イオン源温度:230℃。
【0064】
2-APを、図1において示すように、DB-1msカラムで886のLRIで、及びマススペクトルで検出する。
【0065】
b) PFBHAでの2-APの誘導体化及び定量化
2-APを含む水性試料に、過剰量のPFBHA(O-(2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンジル)ヒドロキシルアミン)を添加し、適切に混合する。反応物を室温で2時間放置し、その後その反応物を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、その有機相をGC/MSに注入する。DB-1msカラム中の2-APのPFBHA誘導体の線形保持指数(LRI)値は1625であり、その質量スペクトルを図2に示す。
【0066】
GC/MSシステムは、Agilent 6890N GC、Agilent 5975質量分析計、及び30m×0.25mm id×0.25μm DB-1ms(J&W 122-0132)カラムを備えていた。
【0067】
GC/MS法:
炉:50℃(5分保持)~5℃/分で300℃、そして50℃/分で340℃(3分保持)。入口温度:250℃。キャリヤーガス:ヘリウム。流量:0.7mL/分。スプリット比:25:1。質量分析計イオン化電圧:70eV。スキャン範囲:m/z 29~450。四重極温度:150℃。イオン源温度:230℃。
【0068】
不溶性成分を有するレタス試料について、試料を、最初に45℃で30分間超音波で処理し、そして濾過する。過剰量のPFBHAを濾液に添加し、そして十分に混合する。反応物を室温で2時間放置し、その後その反応物を酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、その有機相をGC/MSに注入する。
【0069】
この方法を使用して2-APの検量線を、パンダンリーフエッセンス(10倍)で確立した。
【0070】
c) 内部標準での2-APの定量化
定量化を、方法b)において記載した手順により内部標準としてバニリンを使用して実施する。
【0071】
実施例3:種々のレタスの部位における2-APの検出
種々のレタスの部位(心の茎、葉、根、及び皮の損傷で分泌される乳状液、及び皮(乳状液を含む))を、単一のレタス植物から分離し、それぞれの部位について質量を表1に示した。それぞれの部位分をSPME-GC/MS方法で分析した。乳状液(0.1g)を除き、全ての他の部位を試料2グラムで分析した。結果を表1に示す。レタスの最も重い部位である心の茎は、最高レベルの2-APを示す。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例4:調理したレタスにおける著しい2-APの増加
1gの粉末のレタス心の茎(-80℃)を、20mLのヘッドスペースサンプリングバイアルに入れた。いくつかのバイアルをこのように準備し、それらをそれぞれ異なる温度(25℃、45℃、70℃、100℃)で30分間インキュベートした。インキュベート後に、全ての試料を室温まで冷却し、そしてSPME-GC/MSで分析した(図4)。2-APのレベルは温度と共に著しく増加した。一般的な調理条件の限界である100℃の温度を超えることはなかった。
【0074】
実施例5:インキュベート時間の最適化
インキュベート時間を、100℃でさらに最適化した。1gの粉末のレタス心の茎(-80℃)を、20mLのヘッドスペースサンプリングバイアルに入れた。いくつかのバイアルをこのように準備し、それらを100℃でそれぞれ異なる時間(10分、20分、30分、40分、50分)インキュベートした。試料を室温まで冷却し、そしてSPME-GC/MSで分析した(図5)。明らかに、最高レベルの2-APを生成するための100℃でのインキュベートについては40~50分が最適な時間である。
【0075】
実施例6:レタスの異なる部位及び異なるバッチでの2-APの熱生成
レタスの7つの異なるバッチを、100℃で50分間のインキュベート前後に、SPME-GC/MSを使用して2-APについて部位(葉、皮、及び芯の軸)により分析した。結果を図6で示す。
【0076】
実施例7:調理したレタスからのエッセンスの調製
粉末状のレタスの心の茎40gをガラスバイアルに入れ、しっかりと密封し、そして100℃で1時間インキュベートした。試料を室温まで冷却した後に、蒸留のためにフラスコに移した。蒸留を、65℃でSolvent Assisted Flavor Extraction装置(SAFE)で実施し、試料をわずかに沸騰するように真空を調整した。蒸留を0.5時間で終了し、レタス茎のアロマ水として留出物を採取した。アロマ水は、レタスの茎(グリーン+アロマライス)のような典型的な香りがした。アロマ水のさらなるSPME-GC/MS分析は、グリーンなにおいが主にC6アルコール及びアルデヒドに由来することを示した。
【0077】
実施例8:エッセンスの基本画分の調製
エッセンスからグリーンノートを取り除くために、実施例7のエッセンスを酸/塩基抽出によってさらに処理した。
【0078】
アロマ水を最初に10%硫酸でpH=3に酸性化し、そしてペンタンで3回洗浄して、中性分子を除去した。酸性水を回収し、Na2CO3でpH8に中和した。この基本画分のSPME-GC/MS分析は、揮発性プロファイルについて主に2-APを示した。
【0079】
実施例9:エッセンスの基本画分における2-APの安定性
基本画分をしっかりと閉じ、室温に置いた。対照試料を-80℃で凍結させた。室温及び-80℃での試料を、異なる時点(0日、19日、52日、及び84日)で分析した。52日目に2-APの軽微な分解を観察し、84日目に顕著な分解を観察した(図7)。
【0080】
実施例10:固相抽出(SPE)による濃縮エッセンスの調製
実施例8のレタスエッセンスを、SPEによってさらに濃縮させた。実施例8において記載した手順に従って調製したレタスエッセンスの塩基性画分200gを、C18カラム(1g)によりロードした。そして、カラムをそれぞれ1mLずつ70%エタノールで3回溶出した。それぞれの画分(100μL)を、水で10倍に希釈して1mLにし、SPME-GC/MSで分析した。画分2は、元のエッセンスの約15倍の濃度で最高レベルの2-APを示した(図8)。画分1及び画分2の双方は、強くクリーンなライスアロマの香りがした。
【0081】
実施例11:前駆体の研究
熱処理中の2-AP形成についての2-APの前駆体の効果を示すために、レタスの心の茎のスラリー(室温まで温めた粉末試料)を遠心分離して、上清と残留物を分離した。残留物をさらに水で3回洗浄した。4つの試料を、次のように、20mLのヘッドスペースサンプリングバイアル中で準備した:
試料1:上清1g;
試料2:上清0.5g+残留物0.5g;
試料3:上清0.5g+水0.5g;
試料4:残留物1g。
【0082】
全ての試料を、100℃で50分間インキュベートし、2-APの含有量を誘導体化法で測定した(図9)。
【0083】
試料1は、試料2及び3における2-APのレベルの2倍を示したが、試料4では2-APのレベルは非常に低く、これは、熱プロセスでの2-AP生成のために必要な全ての前駆体が上清に存在し、残留物に含まれる前駆体の量が少ないことを示す。
【0084】
上清10gを、さらに2日間凍結乾燥させて、水及び揮発性物質を可能な限り除去した。凍結乾燥後の残留物を水で10グラムに再構成した。再構成した上清及び通常の上清を、100℃で50分間インキュベートした前後に、SPME-GC/MS法で2-APについて分析した。
【0085】
分析は、再構成された上清が、インキュベート前後の双方について通常の上清よりもわずかに多い2-APを示したことを示し(図10)、熱処理における2-AP生成に必要な全ての前駆体が少ない揮発性成分であったことを示した。
【0086】
実施例12:凍結乾燥させた水性レタス抽出物で炊いた米
凍結乾燥させた水性レタス抽出物のプロフレーバー特性を試験するために、レタス芯の軸の上清60gを24時間凍結乾燥させ、薄緑色の粉末3.2gを得た。普通の米100gを、炊飯器で凍結乾燥させた粉末1.6gと一緒に炊いた。対照試料を、レタス抽出物を添加せずに炊いた。双方の試料を室温まで冷却し、そして12人のパネリストによって評価し(咀嚼及び嚥下)、11人は明らかにはるかに強い米のアロマを味わい、3人はレタス抽出物と一緒に炊いた試料の方が甘いと感じた。
【0087】
2つの試料(2g)もSPME-GC/MSで分析した。レタス抽出物と一緒に炊いた試料において2-APを観察したが、対照試料においては観察されなかった(図11)。
【0088】
実施例13:レタス粉末
新鮮なレタス20.3kgに以下の操作をした。
【0089】
絞り
新鮮なレタスをジューサーで2回絞り、ジュース14.4kgを得た。
【0090】
濾過
ジュースを、0.1μmの膜サイズを有する精密濾過プラントに供給した。濾過後、濾液8.7kgを得た。
【0091】
噴霧乾燥
キャリヤー、カプセル0.06kg及びマルトデキストリン18DE0.56kgを濾液に添加し、30分間混合した。その溶液を400ml/hrの流速で噴霧乾燥に導入した。生成物0.6kgを得た。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】