(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】パノラマ層画像を生成するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/14 20060101AFI20220616BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A61B6/14 310
A61B6/00 350P
A61B6/00 360B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021540234
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(85)【翻訳文提出日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2020061261
(87)【国際公開番号】W WO2020216812
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100209048
【氏名又は名称】森川 元嗣
(72)【発明者】
【氏名】エルフェルス、ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ-ガンツリン、ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】アイヒナー、シュテファン
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA12
4C093CA21
4C093DA05
4C093FD03
4C093FF12
4C093FF13
4C093FF27
4C093FF35
4C093FF41
4C093FG04
(57)【要約】
本発明は、2DパノラマX線デバイスを用いることによって、撮像されるべき対象物(3)のパノラマ層画像(1、2)を生成するためのデバイス及び方法に関し、対象物は、X線源(7)によって生成されたX線(6)を投影方向(8)において対象物(3)を通して投影することと、X線検出器(9)で前記X線(6)を記録することと、によって撮像され、いくつかの2D X線投影画像が、X線源(7)及びX線検出器(9)が対象物(3)の周囲を回って移動する間に、様々な撮像方向から連続的に記録され、少なくとも1つのパノラマ層画像(1、2)が、記録された2D X線投影画像から再構成法によって計算される。パノラマ層画像(2)は、アクティブセンサ領域(73)に関して、少なくとも2つの2D X線投影画像(51)からの少なくとも1つの部分領域(50、52、55、57、65)を選択及び用いることによって計算される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2DパノラマX線デバイスを用いることによって、撮像されるべき対象物(3)のパノラマ層画像(1、2)を生成するための方法において、前記対象物(3)は、X線源(7)によって生成されたX線(6)を放射方向(8)において前記対象物(3)を通して投影することと、X線検出器(9)で前記X線を記録することと、によって撮像され、いくつかの2D X線投影画像が、前記X線源(7)及び前記X線検出器(9)が前記対象物(3)の周囲を回って移動する間に、様々な撮像方向から連続的に記録され、少なくとも1つのパノラマ層画像(2)が、記録された前記2D X線投影画像から再構成法によって計算され、
前記パノラマ層画像(2)が、アクティブセンサ領域(73)に関して、少なくとも2つの2D X線投影画像(51)からの少なくとも1つの部分領域(50、52、55、57、65)を選択及び使用することによって計算されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの部分領域(50、52、55、57、65)のサイズが、特定の前記2D X線投影画像(51)の80%以下又は40%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
重み関数が、前記少なくとも1つの選択された部分領域(50、52、55、57、65)の画像データに適用され、重み付けされた前記部分領域が、前記パノラマ層画像(2)を計算するために使用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの部分領域が、固定幅(59、60)又は可変幅(62、63、64)を有する部分ストライプ(50、52、55、57、65)であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの部分領域(50、52、55、57、65)が、アクティブに照射される前記アクティブセンサ領域(73)に対するその位置に関して、そのサイズに関して、及びその形状に関して、全ての2D X線投影画像(51)に対して事前定義されるか、又は異なる2D X線投影画像(51)に対して可変であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの部分領域(50、52、55、57、65)が、ユーザによって手動で、又はアルゴリズムを用いることによって自動的に選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記2D X線投影画像(51)内の前記少なくとも1つの部分領域(50、52、55、57、65)の前記選択が、計算された前記パノラマ層画像(2)の焦点層(22)の幅を変更することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記2D X線投影画像(51)内の前記少なくとも1つの部分領域(50、52、55、57、65)の前記選択が、特定の前記2D X線投影画像の少なくとも1つの主放射方向(8)を生じさせ、従って、主放射方向を、計算された前記パノラマ層画像(2)の焦点層(22)の関連する局所位置へ調整させることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
特定の前記2D X線投影画像(51)の主放射方向(8)の調整が、前記少なくとも1つの部分領域(50、52、55、57、65)を選択することによって達成され、従って、前記対象物(3)の撮像された解剖学的構造(4)に応じた、前記焦点層(22)の幅の調整、及び/又は、前記焦点層(22)の中心局所放射方向の調整を特徴とする、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
特定の前記2D X線投影画像(51)の前記主放射方向(8)の前記調整が、前記部分領域(50、52、55、57、65)の前記選択によって達成され、それによって、歯間接触の開きへの前記焦点層(22)の前記主放射方向の前記調整が達成され、歯(14)間の接触点(13、18、20)が、決定及び事前定義され、適切な中心最適化放射方向(17、19、21)が、前記焦点層(22)の特定の位置に対して決定され、その結果、前記歯(14)が、前記計算されたパノラマ層画像(2)内の特定の接触領域(13)において可能な限り最も少ない重なりを有するか、又は全く重なりを有さないことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第1のパノラマ層画像(1)が、個々の前記2D X線投影画像(51)から計算され、前記2D X線投影画像(51)の全画像情報が、前記計算のために使用され、第2のパノラマ層画像(2)が、前記2D X線投影画像(51)の個々に選択された前記部分領域(50、52、55、57、65)から計算されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のパノラマ層画像の実際の放射方向(8)と、前記第2のパノラマ層画像(2)の最適化放射方向(17、19、21)との間の差が、重なっている歯の領域を自動的に決定することと、前記第1及び/又は第2のパノラマ層画像のグラフィカルレンダリングにおいて、後者をグラフィカルに強調表示することと、を行うために使用されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ユーザが、前記第1のパノラマ層画像(1)のグラフィカルレンダリングと、前記第2のパノラマ層画像(2)のグラフィカルレンダリングとを切り替えるために、制御デバイス(31)を用いることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
ユーザが、前記第1のパノラマ層画像(1)のグラフィカルレンダリングにおける領域(40、42、44)を選択するために、制御デバイス(32)を用い、前記第2のパノラマ層画像(2)からのこの領域の拡大レンダリング(41、43、45)が、拡大鏡機能の方法で重ね合わされることを特徴とする、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ(16)と、前記X線源(7)と、前記X線検出器(9)と、前記X線源(7)及び前記X線検出器(9)を前記撮像されるべき対象物(3)の周囲を回って移動させるための支持アームと、を備え、
前記X線検出器(9)が、5mm~40mmのアクティブに照射されるセンサ幅を有し、前記コンピュータ(16)が、前記2D X線投影画像の少なくとも1つの部分領域(50、52、55、57、65)を選択するために、選択アルゴリズムを用い、前記パノラマ層画像(2)を計算するために、計算アルゴリズムを使用することを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実行するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像されるべき対象物のパノラマ層画像を生成するためのデバイス及び方法に関し、対象物は、X線源によって生成されたX線を投影方向において対象物を通して投影することと、X線検出器で前記X線を記録することと、によって撮像され、いくつかの2D X線投影画像が、X線源及びX線検出器が対象物の周囲を回って移動する間に、様々な撮像方向から連続的に記録され、少なくとも1つのパノラマ層画像が、記録された2D X線投影画像からアルゴリズムによって計算される。
【背景技術】
【0002】
パノラマ層画像を生成するためのいくつかの方法が、先行技術から知られている。
【0003】
WO2015092119A1及びUS20150164446A1は、患者の頭部の周囲での様々なスキャン方向からの歯科パノラマ撮像スキャン中に取得される多数のフレーム画像からデジタル歯科パノラマ層画像を生成することに関する。パノラマ画像は、特定の時点におけるX線源及びX線検出器の位置及び向きに関する情報を使用することによって計算される。
【0004】
DE102008008733A1には、3Dボリュームから仮想パノラマ層画像を生成するための方法が開示されており、撮像されるべき対象物は、仮想X線源で仮想的に照射され、仮想的に生成された画像は、仮想検出器によって記録される。望ましくない構造は、仮想放射中に取り除かれ得る。
【0005】
この方法の欠点は、所望に応じて対象物を仮想的に照射するために、特に3Dボリュームを必要とする、不要な構造を考慮に入れるための複雑な手順に基づいて、パノラマ画像が補正されることである。
【0006】
従って、仮想パノラマ層画像を計算することは、関心対象物が仮想的に照射される3Dボリュームを必要とする。仮想パノラマ層画像の解像度は、しばしば古典的なパノラマ層画像についてのものよりも低く、追加のアーチファクトもまた発生し得る。3Dボリュームを作成することは、しばしば、より高い放射線量を必要とする。
【0007】
DE10016678A1には、対象物を照射するための方法が開示されており、検査される対象物は、金属充填物等の干渉する高吸収物体が顎の対向する半分の撮像について干渉を最小にするように照射される。
【0008】
EP0279294A1には、患者の顎のパノラマ層画像を作成するための歯科用X線診断装置が開示されている。指定された方法は、対象物における層をレンダリングすることを可能にし、その中心は、通常患者の顎である。パノラマ層画像は、放射線源-検出器構成を、撮像対象物の周囲を回って移動させることによって、及び、焦点層の外側にある部分をぼやけさせることによって層画像を生成するために、移動速度に対して変更される周波数でCCD検出器ラインをクロックすることによって、作成される。
【0009】
指定された方法の欠点は、パノラマ層画像の補正が、しばしば非常に複雑であるか、又は不要な重なり(unwanted overlaps)については完全に不可能であることである。
【0010】
本発明の目的は、撮像が繰り返されるのを回避し、診断能力を向上させるために、直接的なやり方で、パラメータを調整し得、従って画像を調整し得る、パノラマ層画像を生成するための方法を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、2DパノラマX線デバイスを用いることによって、撮像されるべき対象物のパノラマ層画像を生成するためのデバイス及び方法に関し、対象物は、X線源によって生成されたX線を放射方向において対象物を通して投影することと、X線検出器で前記X線を記録することと、によって撮像され、いくつかの2D X線投影画像が、X線源及びX線検出器が対象物の周囲を回って移動する間に、様々な撮像方向から連続的に記録され、少なくとも1つのパノラマ層画像が、記録された2D X線投影画像から再構成法によって計算される。パノラマ層画像は、アクティブセンサ領域に関して、少なくとも2つの2D X線投影画像の、少なくとも1つの部分領域を選択し、これらを計算のために使用することによって計算される。
【0012】
パノラマ層画像は、2DパノラマX線デバイスで記録される上顎及び/又は下顎の2次元X線画像である。パノラマX線デバイスは、例えば、X線検出器を有する撮像ユニットを備え得、X線検出器は、撮像プロセス中に患者の頭部の周りを回る動きを描く。それと反対側で同期して、X線源が、患者の頭部の周囲を回って移動する。X線源は、空間的に制限されたX線のビームを放射するように設計されており、このX線のビームは、例えば、X線検出器において、約0.25mm幅~約3mm幅に広がる。このビームは、対象物の顎セクションを照射し、顎全体の異なる顎セクションの2D X線投影画像を、X線検出器上でフレーム毎に記録させる。次いで、再構成法が、個々の2D X線投影画像を組み立てるか又は計算的にモデル化することによって、記録された2D X線投影画像からパノラマ層画像を計算するために使用される。個々の2D X線投影画像を組み立てるプロセスは、パノラマ層画像の焦点層を生成し、前記焦点層は、その内に位置する解剖学的構造を鮮明に示す。この焦点層は、一般に、歯、歯根、及び顎骨等の、上顎及び/又は下顎の主要な解剖学的構造を備える。焦点層の位置/形状は、撮像対象物に関してX線源及びX線検出器によって観測される経路によって決定される。焦点層に位置しない解剖学的構造は、影を生成し、ぼやけて見えなくなる。従って、焦点層の位置は、この経路と、スキャン対象物に対するX線検出器及びX線源によって観測される動きとによって決定され、焦点層の幅は、さらに、X線検出器の照射領域の幅によって、及び/又は、特定の2D X線投影画像の幅によって決定される。X線検出器のより狭い幅は、より広い焦点層をもたらし、より幅の広いX線検出器は、より狭い焦点層をもたらし、それと同時に、ビームをX線検出器幅に調整する。
【0013】
従って、本方法は、アクティブセンササイズに関して全2D X線投影画像を使用することによってパノラマ層画像を計算するだけでなく、単に、計算のためにこれらの2D X線投影画像の少なくとも部分領域を選択及び使用するだけでも、パノラマ層画像を計算する。従って、より小さい任意の形状のX線検出器が、少なくとも1つの部分領域を選択することによって、本質的にシミュレートされる。
【0014】
この方法の利点は、個々の2D X線投影画像の少なくとも1つの部分領域を選択することにより、焦点層の幅、そしてまた放射角が、所定の基準によって影響されることを可能にすることである。従って、2D X線投影画像の個々の部分領域は、パノラマ層画像の焦点層内の好ましくない重なり、例えば、歯及び/又は歯冠の重なりが低減され、歯及び歯根等の主要な解剖学的構造がより良好にレンダリングされるように選択され得る。
【0015】
本方法のなお別の利点は、本方法が新規のデバイスを必要とせずに実行され、その代わりに、従来の2DパノラマX線デバイスに基づき得ることであり、ソフトウェアのみが、第2のパノラマ層画像を計算するために、記録された2D X線投影画像の少なくとも1つの部分領域を選択するために使用される。
【0016】
本方法のなお別の利点は、パノラマ層画像を再構成するために使用される投影情報を限定することが、歯間接触を開くことを可能にし、従って、歯科医の診断能力を向上させ、繰り返しの撮像手順の数を低減させる。
【0017】
X線検出器は、例えば、1cm~4cmの幅を有するCMOS検出器又は直接変換検出器を備え得る。
【0018】
300~5000個の2D X線投影画像が、例えば、X線検出器が対象物の周囲を回って移動する間に記録され得る。これは、例えば、毎秒50~1000個の2D X線投影画像を記録することを伴う。
【0019】
部分領域のサイズは、有利には、特定の2D X線投影画像の最大80%を備え得る。
【0020】
その結果、2D X線投影画像の比較的大きい部分領域が選択される。この場合、少なくとも1つの部分領域は、個々の垂直ストライプ、斜めに配向されたストライプ、又は可変幅のストライプ等の、様々な形状を備え得る。いくつかの部分領域が使用されるとき、これらは、例えば、水平オフセットを有して、互いに対して任意に配置され得る。個々の2D X線投影画像のいくつかの部分領域は、例えば、いくつかの平行な垂直ストライプであり得る。
【0021】
従って、特定の2D X線投影画像の側部にあるより小さい部分領域を選択することは、焦点層の幅を増大させ、それに応じて、主放射方向をシフトさせる。可変幅を有する部分領域もまた、焦点層の幅をパノラマ層画像内で局所的に変化させることを可能にする。
【0022】
有利には、少なくとも1つの部分領域のサイズは、特定の2D X線投影画像のアクティブ領域の最大で40%を備え得る。
【0023】
その結果、比較的小さい部分領域が選択され、パノラマ層画像を計算するために使用され、従って、より大きな効果でパノラマ層画像を変更又は操作する。
【0024】
有利には、重み関数が、少なくとも1つの選択された部分領域の画像データに適用され得、重み付けされた部分領域は、パノラマ層画像を計算するために使用される。
【0025】
例えば、ガウス関数が、重み関数として使用され得る。この場合、選択された部分領域の中央にある画像データには、周辺領域よりも高い重みが割り当てられる。
【0026】
有利には、部分領域は、固定幅又は可変幅を有する部分ストライプであり得る。
【0027】
垂直な部分ストライプを選択することによって、2D X線投影画像の各々は、例えば、重なりを有して配置されることもできる40個の部分ストライプに分割され得、その結果、個々の部分ストライプごとに、偏移する主放射方向を有する個々のパノラマ層画像が計算され得る。この場合、結果として、例えば、可変主放射方向を有する40個の異なるパノラマ層画像が、同じ2D X線投影画像から計算され得る。
【0028】
可変幅を有する部分ストライプの場合、例えば、幅は、部分ストライプの上部領域及び下部領域において低減され、部分ストライプの中央領域において拡大され得、その結果、2つの顎の中央領域における-例えば、咬合面の領域における-焦点層の幅は、第2のパノラマ層画像において低減され、従って、特に、歯に焦点を合わせて表示する。焦点層の幅は、パノラマ層画像の上部領域及び下部領域においてより大きく、その結果、焦点層内に配置された対象物-例えば、顎骨及び歯根等-は、他の隣接する解剖学的構造も焦点層内に位置するので、より分離が少ない状態で表示され、従って、より容易に識別可能になる。
【0029】
有利には、少なくとも1つの部分領域は、ユーザによって手動で、又はアルゴリズムを用いることによって自動的に選択され得る。
【0030】
従って、ユーザは、少なくとも1つの部分領域を手動で選択し得る。ユーザは、例えば、少なくとも1つの部分領域を直接決定し得、次いで、これらの入力に基づいて自動的に、2D X線投影画像内の対応する部分領域が、コンピュータによって自動的に選択される。ユーザはまた、例えば、2つの歯の間の接触領域における、所望の主放射方向を定義し得、この場合、再構成に必要な部分領域は、主放射方向を調整するために、コンピュータによって自動的に決定される。
【0031】
部分領域はまた、完全に自動的に選択され得、焦点層の位置/形状及び幅、並びに個々の歯の間の接触点上への主放射方向の配置は、基準頭部に基づいて、又は、上顎及び/若しくは下顎の3Dモデル等の事前知識に基づいて、自動的に決定され、次いで、部分領域は、所望のパノラマ層画像を計算するために、これらの入力に基づいて決定される。
【0032】
有利には、2D X線投影画像内の少なくとも1つの部分領域の選択は、計算されたパノラマ層画像の焦点層の幅が変更されることを可能にする。
【0033】
これは、部分領域を選択することによって、焦点層の幅に影響を及ぼす。
【0034】
有利には、2D X線投影画像内の少なくとも1つの部分領域を選択することは、特定の2D X線投影画像の少なくとも1つの主放射方向の調整を可能にし、従って、計算されたパノラマ層画像の焦点層の関連する位置への主放射方向の調整を可能にする。
【0035】
少なくとも1つの部分領域を選択することは、計算されたパノラマ層画像の主放射方向を調整する。例えば、2つの臼歯間の接触点の2D X線投影画像の左側にある部分ストライプが選択され、選択された部分ストライプからパノラマ層画像が計算される場合、2つの臼歯間の接触位置への主放射方向もシフトされる。このようにして、例えば、2つの臼歯間の接触点上で、特定の歯間接触上に開きが生じ得、従って、パノラマ層画像における臼歯の重なりを可能な限り低減させる。
【0036】
有利には、特定の2D X線投影画像の主放射方向の調整、従って、焦点層の主放射方向の調整、及び/又は焦点層の幅の調整は、撮像されるべき対象物の解剖学的構造に応じて行われ得る。
【0037】
従って、主放射方向及び焦点層の幅は、撮像されるべき対象物の解剖学的構造、すなわち2つの顎に応じて調整される。例えば、2つの顎の光学3D画像からの3Dモデルが、この目的のために依拠され得、焦点層の幅及び主放射方向は、上顎及び/又は下顎の形状及び範囲に応じて、歯間の接触点上で決定され得る。
【0038】
有利には、特定の2D X線投影画像の主放射方向の調整、従って、焦点層の主放射方向の調整は、歯間接触の開きに向けて行われ得、歯間の接触点が決定及び事前定義され、適切な中心最適化放射方向が、焦点層の特定の位置に対して決定され、その結果、これら歯は、計算されたパノラマ層画像内の特定の接触点において可能な限り最も低い重なりを有するか、又は全く重なりを有さない。
【0039】
それによって、ある特定の最適化放射方向が、歯間の個々の接触点に対して決定され、及び、それに応じて、第2のパノラマ層画像が計算され、接触点における歯の重なりが可能な限り最小化される。
【0040】
有利には、第1のパノラマ層画像が、個々の2D X線投影画像から計算され得、2D X線投影画像の全アクティブセンサ領域の全画像情報が、計算のために使用され、第2のパノラマ層画像が、2D X線投影画像の選択された部分領域から計算される。
【0041】
それによって、第1のパノラマ層画像は、全2D X線投影画像から計算され、第2のパノラマ層画像は、選択された部分領域から計算される。
【0042】
有利には、第1のパノラマ層画像の実際の放射方向と、第2のパノラマ層画像の最適化放射方向との間の差が、歯のミスアラインメント(tooth misalignments)を自動的に決定することと、第1及び/又は第2のパノラマ層画像のグラフィカルレンダリングにおいてこれらを強調表示することと、を行うために使用され得る。
【0043】
パノラマ層画像の実際の放射方向と、第2のパノラマ層画像の最適化放射方向との間の差が、それによって示され、その結果、接触点における歯間の重なりを低減させるために、どの位置で放射方向が変更されたかが明らかになる。
【0044】
歯間接触及び/又は個々の歯間の接触点上への最適化放射方向は、ユーザによって手動で、又はコンピュータによって自動的に決定され得、個々の歯は、セグメント化され得、特定の接触点が分析され得る。これは、第2の計算されたパノラマ層画像における接触点に沿った歯の可能な限り低い重なりをもたらす、個々の2D X線投影画像のX線の放射線ビームの範囲の下で最適化放射方向を決定することを伴う。
【0045】
有利には、ユーザは、第1のパノラマ層画像のグラフィカルレンダリングと、第2のパノラマ層画像のグラフィカルレンダリングとを切り替えるために、制御装置を用い得る。
【0046】
それによって、ユーザは、第1のパノラマ層画像と第2のパノラマ層画像とを任意に切り替え得る。第1のパノラマ層画像及び第2のパノラマ層画像はまた、表示装置を用いて同時に表示され得る。
【0047】
有利には、ユーザは、第1のパノラマ層画像のグラフィカルレンダリングにおける領域を選択するために、制御装置を使用し得、第2のパノラマ層画像からのこの領域の拡大レンダリングが、拡大鏡機能の方法で重ね合わされる。
【0048】
それによって、ユーザは、2つの歯の間のある特定の接触点等の、第1のパノラマ層画像内のある特定の領域を選択し得、その結果、この領域は、開いた歯間接触を有する第2のパノラマ層画像から拡大鏡機能の方法で重ね合わされる。このようにして、次いで、ユーザには、重なりを有する接触点上で、歯間接触を開くことが可能にされるという更なる機能と共に、従来のパノラマ層画像が表示される。
【0049】
本発明は更に、コンピュータと、X線源と、X線検出器と、X線源及びX線検出器を撮像されるべき対象物の周囲を回って移動させるための支持アームと、を備える、上述の方法を実行するための装置に関する。この場合のX線検出器は、少なくとも5mmの幅を有し、コンピュータは、2D X線投影画像内の少なくとも1つの部分領域を選択するために、選択アルゴリズムを用い、次いで、パノラマ層画像を計算するために、計算アルゴリズムを用いる。
【0050】
従って、上述の方法を実行するための装置は、コンピュータ及び従来の2DパノラマX線装置の要素を備える。X線検出器はまた、部分領域の位置がより大きな柔軟性で選択され得るように、5mm~40mmの幅を有し得る。
【0051】
本装置の利点は、本方法を実行するには、パノラマ層画像の少なくとも2つの従来の対応する2D X線投影画像及びコンピュータのみで十分であることである。この場合、ソフトウェアは、2D X線投影画像内の少なくとも1つの部分領域の選択及び第2のパノラマ層画像の計算のみを行う。
【0052】
本発明を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】
図1は、本方法の一実施形態を例示するためのスケッチ図である。
【
図2】
図2は、第2の仮想ツールの拡大鏡機能のスケッチ図である。
【
図3】
図3は、部分ストライプを有する2D X線投影画像のスケッチ図である。
【
図4】
図4は、斜めの部分ストライプを有する2D X線投影画像のスケッチ図である。
【
図5】
図5は、2つの部分ストライプを有する2D X線投影画像のスケッチ図である。
【
図6】
図6は、可変幅を有する部分ストライプを有する2D X線投影画像のスケッチ図である。
【
図7】
図7は、フレームとセンサ領域とを備えるX線検出器のスケッチ図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、撮像対象物3の第1のパノラマ層画像1及び第2のパノラマ層画像2を生成するための本発明の一実施形態を例示するためのスケッチ図を示し、患者の頭部5の顎4を照射する、点線で表されるX線のビーム6は、X線源7によって生成され、対象物は、X線のビーム6の主放射方向8に沿って照射される。次いで、X線6は、CMOS検出器等のX線検出器9に衝突し、後者によって記録される。撮像手順中、X線検出器9は、例えば、矢印10によって示されるように、対象物3の周囲を回って連続的に移動する。これは、異なる撮像方向及び/又は主放射方向からの個々の2D X線投影画像を記録することを伴う。X線検出器9と同期して、X線源7は、反対側に取り付けられており、且つ、それにより、矢印11によって示されるように、患者の頭部5の周囲で円周経路に沿って移動する。
【0055】
例えば、500個の2D X線投影画像が、円周経路10の途中で記録され得る。例えば、主放射方向8は、X線のビーム6の個々の方向の平均値として計算され得る。次いで、個々の2D X線投影画像は、第1のパノラマ層画像1を計算するために使用され、X線検出器9のアクティブセンサ領域に関する全画像情報が使用される。
【0056】
重なっている歯間接触を開くためには、患者の頭部5の利用可能な3Dモデルが分析され得、上顎及び/又は下顎4の個々の歯12がセグメント化され、接触点上で最適化された最適化放射方向が決定される。前方の切歯14間の第1の接触点13上には、矢印15によって示されるように、歯の重なりが第1のパノラマ層画像1において存在する。次いで、第1の中心最適化放射方向17が、コンピュータ16によって決定される。第2の最適化放射方向19が、第2の接触点18に対して決定される。第3の最適化放射方向21が、第3の接触点20に対して決定される。指定された最適化放射方向17、19、及び21に基づいて、並びに焦点層22の位置/形状に基づいて、次いで、コンピュータ16は、2D X線投影画像の部分領域の選択を計算し、その結果、第2のパノラマ層画像2は、選択された部分領域から計算される。第2のパノラマ層画像2は、特に、前方の切歯14間の第1の接触点13上の歯間接触が、矢印24、25、及び26によって示されるように、第2の接触点18上及び第3の接触点20上で開かれたことを示す。接触点上の歯の重なりは、可能な限り低減された。キーボード27及びマウス28等のデータ入力デバイスが、コンピュータ16に接続されている。モニタ等の表示装置29がまた、第1の計算されたパノラマ層画像1及び第2のパノラマ層画像2をグラフィカルにレンダリングするために、コンピュータ16に接続されている。ユーザは、カーソル30によってパノラマ層画像1及び2内をナビゲートするために、データ入力デバイス27及び28を用い得る。第1の仮想ツール31を用いることによって、ユーザは、第1のパノラマ層画像1のレンダリングと、第2のパノラマ層画像2のレンダリングとを交互に切り替え得る。第2の仮想ツール32を用いることによって、ユーザは、拡大鏡機能を使用し得、ユーザは、接触点13、18、及び20等の、第1のパノラマ層画像1内のある特定の領域を選択するために、拡大鏡を使用し得、この領域は、第2のパノラマ層画像2から拡大されてレンダリングされる。
【0057】
図2は、
図1からの第2の仮想ツール32の拡大鏡機能のスケッチ図を示し、ユーザは、-第1のパノラマ層画像1において-第1の接触点13の位置上の第1の重なり領域40を選択し、これは、第2のパノラマ層画像2からのセクション41として拡大されてレンダリングされる。同様に、第2の重なり領域42が、第2の接触点18の位置上で選択され、第2のセクション43としてレンダリングされる。その後、第3の重なり領域44が、第3の接触点20の位置上で選択され、第3のセクション45として拡大されてレンダリングされる。拡大されたセクション41、43、及び45は、歯間接触が接触点13、18、及び20上で開かれ、その結果、歯の第1のパノラマ層画像1内の重なりが低減されたことを明確に示す。
【0058】
図3は、X線検出器9の2D X線投影画像51のスケッチ図を示し、斜線で表される選択された部分領域50が、2D X線投影画像51の左端に配置されている。従って、第2のパノラマ層画像2は、個々の2D X線投影画像51の選択された部分領域50のみを使用することによって計算される。その結果、主放射方向もシフトされることになる。X線検出器9の2D X線投影画像51内では、他のパノラマ層画像を計算するために、例えば、同じく重なり得る他の部分ストライプも選択され得る。X線検出器9の2D X線投影画像51は、例えば、40個の異なるパノラマ層画像が計算され得るように、40個の平行な部分ストライプに分割され得る。一実施形態では、次いで、ユーザは、様々なパノラマ層画像をスクロールし得、放射方向は、それに応じて変化する。このようにして、歯間接触の開きをグラフィカルにたどることができる。次いで、ユーザは、十分に開いた歯間接触を有する適切なパノラマ層画像を手動で選択し得る。
【0059】
図4は、斜めに配置された部分ストライプの形態での選択された部分領域52を有する、更なる実施形態のスケッチ図を示す。従って、部分ストライプの上部領域53では、部分ストライプ53の主放射方向は、2D X線投影画像51の初期主放射方向に対して右にシフトされ、下部領域54では、部分ストライプ53の主放射方向は、2D X線投影画像51の初期主放射方向に対して左にシフトされる。これは、斜めに配置されたX線検出器をシミュレートする。
【0060】
図5は、更なる実施形態のスケッチ図を示し、選択された部分領域は、2D X線投影画像51の上部領域56における第1の部分ストライプ55と、2D X線投影画像51の下部領域58における第2の部分ストライプ57とを備える。このようにして、2D X線投影画像51の上部領域、すなわち上顎の領域における主放射方向は、左にシフトされ、2D X線投影画像51の下部領域における、下顎の領域における主放射方向は、2D X線投影画像51の初期主放射方向に対して本質的に不変である。第1の部分ストライプ55の第1の幅59及び第2の部分ストライプ57の第2の幅60は、第2の計算されたパノラマ層画像2における焦点層22の幅を定義する。
【0061】
図6は、選択された部分領域が可変幅を有するストライプ65の形状である、更なる実施形態を示し、2D X線投影画像51の中央領域61では、第1の幅62が、2D X線投影画像51の上部領域における第2の幅63及び2D X線投影画像51の下部領域における第3の幅64よりも大きい寸法である。その結果、第2のパノラマ層画像2における焦点層22は、中央領域が、上部領域又は下部領域よりも狭くなる。結果として、中央領域内の歯は、上部領域及び下部領域内の対象物よりも異物構造からより大きく分離してレンダリングされ得る。
【0062】
図7は、フレーム70とセンサ領域71とを備えるX線検出器9のスケッチ図を示し、センサ領域71は、未使用及び/又は非アクティブ領域72と、使用及び/又はアクティブセンサ領域73とを備える。従って、2D X線投影画像51は、アクティブセンサ領域73を用いて記録される。点線で示された部分領域50が、記録された2D X線投影画像51の画像データから選択される。アクティブセンサ領域73はまた、センサ領域71と同じサイズを有し得る。結果として、このような実施形態では、非アクティブセンサ領域72は存在しない。
【0063】
[符号の説明]
1 第1のパノラマ層画像
2 第2のパノラマ層画像
3 撮像対象物
4 顎
5 患者の頭部
6 X線の放射線ビーム
7 X線源
8 放射線ビームの放射方向
9 X線検出器
10 X線検出器の円周経路についての矢印
11 X線源の円周経路についての矢印
12 顎の個々の歯
13 切歯の第1の接触点
14 切歯
15 歯の重なりのレンダリングについての矢印
16 コンピュータ
17 第1の中心最適化放射方向
18 切歯の第2の接触点
19 第2の最適化放射方向
20 切歯の第3の接触点
21 第3の最適化放射方向
22 焦点層の幅
23 臼歯の領域
24 矢印
25 矢印
26 矢印
27 キーボード
28 マウス
29 表示装置
30 カーソル
31 第1の仮想ツール
32 第2の仮想ツール
40 第1の領域
41 第1の領域の拡大されたセクション
42 第2の領域
43 第2の領域の拡大されたセクション
44 第3の領域
45 第3の領域の拡大されたセクション
50 選択された部分領域
51 2D X線投影画像
52 選択された部分領域
53 部分ストライプの上部領域
54 部分ストライプの下部領域
55 第1の部分ストライプ
56 2D X線投影画像の上部領域
57 第2の部分ストライプ
58 2D X線投影画像の下部領域
59 第1の部分ストライプの第1の幅
60 第2の部分ストライプの第2の幅
61 2D X線投影画像の中央領域
62 2D X線投影画像の中央領域における第1の幅
63 2D X線投影画像の上部領域における第2の幅
64 2D X線投影画像の下部領域における第3の幅
65 可変幅を有するストライプ
70 フレーム
71 センサ領域
72 未使用及び/又は非アクティブセンサ領域
73 使用及び/又はアクティブセンサ領域
【国際調査報告】