(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】特定の脱水素化方法(I)
(51)【国際特許分類】
C07C 403/12 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
C07C403/12 CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021556320
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2020059477
(87)【国際公開番号】W WO2020212163
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, マーク‐アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ウェステンベルグ, ベッティーナ
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB20
4H006AC12
4H006BA50
4H006BA60
4H006UC12
(57)【要約】
本発明は、特定の化合物の新規な脱水素化方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
【化1】
[式中、
Rは-CH=O又は-COOR’であり、R’は-C
1~C
16アルキル基(好ましくは-CH
3又は
-CH
2CH
3又は-C
15H
31)である]の化合物を製造する方法であって、
前記方法が、式(I)
【化2】
[式中、
Rは式(II)の化合物における場合と同じ意味を有する]の化合物の選択的脱水素化によるものであり、
前記脱水素化が、少なくとも1つの、式(III)
【化3】
[式中、
R
1は-CN、-Cl又は-Fであり、
R
2は-CN、-Cl又は-Fであり、
R
3は-H、-CH
3、-Cl又は-Fであり、及び
R
4は-H、-CH
3、-Cl又は-Fである]の酸化反応剤の存在下で行われる、
式(II)の化合物を製造する方法。
【請求項2】
前記酸化反応剤が、式(IIIa)、(IIIb)及び(IIIc)
【化4】
の化合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化反応剤が、式(IIIc)
【化5】
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記式(III)の酸化反応剤の量が、(式(II)の化合物に対して)0.5モル当量から5モル当量までである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの追加の化合物の存在下で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記追加の化合物が、ピリジン、ブチルヒドロキシルトルオール、ヒドロキノン及びトリエトキシアミンからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記追加の化合物が、(式(II)の化合物に対して)0.001~1モル当量の量で添加される、請求項5又は請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの不活性溶媒の存在下で行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が芳香族溶媒である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
0℃~120℃の温度で行われる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
式(Ia)
【化6】
の化合物。
【請求項12】
式(Ib)
【化7】
の化合物。
【請求項13】
式(Ic)
【化8】
の化合物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規な脱水素化方法に関する。
【0002】
本発明による新規な脱水素化方法は、次の式(I)
【化1】
[式中、
Rは-CH=O又は-COOR’であり、R’はC
1~C
16アルキル基である]の化合物の脱水素化である。
【0003】
脱水素化は、7、8位で起こっている。得られる生成物は、式(II)
【化2】
[式中、
Rは-CH=O又は-COOR’であり、R’は-C
1~C
16アルキル基(好ましくは-CH
3又は-(CH
2)
14CH
3)である]の化合物である。
【0004】
2つの脱水素化生成物は、式(IIa)及び(IIb)
【化3】
[式中、R’は上記に定義された意味と同じ意味を有する]のものである。
【0005】
式(I)及び式(II)の化合物は、あり得る任意の立体異性体を有することができる。3つ又は4つのC-C二重結合があるため、多様な立体異性体が存在する。本発明については、式(I)及び(II)の化合物の立体化学は重要ではない。
【0006】
式(IIb)の化合物は、有機合成において(特に、ビタミンA及び/又はその誘導体の合成において)重要な中間体である。
【0007】
O.O.Tutorskayaら(Zh.Org.i Khim.1991,27,1414)から、類似の脱水素化が知られているが、それにより得られる収率は低く(31%)、得られる化合物であるカルボン酸エステルは、ビタミンAアセテートに変換することがより困難である。
【0008】
ビタミンAアセテート及びその中間体が重要であるため、そのような化合物を製造する新規な方法を提供する必要が常にある。
【0009】
驚くべきことに、式(II)の化合物は、式(I)の化合物の特定の脱水素化によって製造することができることが判明した。
【化4】
式中、Rは上記に定義された意味と同じ意味を有する。
【0010】
この方法は処理が容易であり、ビタミンA(及びその誘導体)の合成を短縮する可能性を提供することを可能にする。
【0011】
本発明の方法は、少なくとも1つの特定の酸化反応剤の存在下で行われる。
【0012】
本発明の方法において使用される酸化反応剤は、次式(III)
【化5】
[式中、
R
1は-CN、-Cl又は-Fであり、
R
2は-CN、-Cl又は-Fであり、
R
3は-H、-CH
3、-Cl又は-Fであり、及び
R
4は-H、-CH
3、-Cl又は-Fである]を有する。
【0013】
したがって、本発明は、式(II)
【化6】
[式中、
Rは-CH=O又は-COOR’であり、R’は-C
1~C
16アルキル基(好ましくは-CH
3又は-CH
2CH
3)である]の化合物を製造する方法(P)であって、
方法(P)が、式(I)
【化7】
[式中、
Rは式(II)の化合物における場合と同じ意味を有する]の化合物の選択的脱水素化によるものであり、
当該脱水素化が、少なくとも1つの、式(III)
【化8】
[式中、
R
1は-CN、-Cl又は-Fであり、
R
2は-CN、-Cl又はFであり、
R
3は-H、-CH
3、-Cl又は-Fであり、及び
R
4は-H、-CH
3、-Cl又は-Fである]の酸化反応剤の存在下で行われる、
式(II)の化合物を製造する方法(P)に関する。
【0014】
好ましい式(III)の酸化反応剤は、次式(IIIa)、(IIIb)及び(IIIc)
【化9】
のものである。
【0015】
式(IIIc)の化合物が極めて好ましい。
【0016】
したがって、本発明は、酸化反応剤が、式(IIIa)、(IIIb)及び(IIIc)
【化10】
の化合物からなる群から選択される、方法(P)である、式(II)の化合物を製造する方法(P1)に関する。
【0017】
したがって、本発明は、酸化反応剤が式(IIIc)の化合物である、方法(P)である、式(II)の化合物を製造する方法(P2)に関する。
【0018】
本発明による方法において使用される式(III)の酸化反応剤の量は変動し得る。式(III)の酸化反応剤の量は、通常、(式(II)の化合物に対して)0.5モル当量から5モル当量までである。好ましくは、(式(II)の化合物に対して)1~3モル当量。
【0019】
したがって、本発明は、式(III)の酸化反応剤の量が、(式(II)の化合物に対して)0.5モル当量から5モル当量までである、方法(P2)である、式(II)の化合物を製造する方法(P2’)に関する。
【0020】
したがって、本発明は、式(III)の酸化反応剤の量が、(式(II)の化合物に対して)1~3モル当量である、方法(P2)である、式(II)の化合物を製造する方法(P2’’)に関する。
【0021】
本発明による方法はまた、少なくとも1つの追加の化合物の存在下で行うこともできる。この追加の化合物は、通常、ピリジン、ブチルヒドロキシルトルオール、ヒドロキノン及びトリエトキシアミンからなる群から選択される。
【0022】
追加の化合物は、(式(II)の化合物に対して)0.001~1モル当量、好ましくは(式(II)の化合物に対して)0.003~1モル当量の量で添加される。
【0023】
したがって、本発明は、少なくとも1つの追加の化合物の存在下で行われる方法(P)、(P1)、(P2)、(P2’)又は(P2’’)である、式(II)の化合物を製造する方法(P3)に関する。
【0024】
したがって、本発明は、追加の化合物が、ピリジン、ブチルヒドロキシルトルオール、ヒドロキノン及びトリエトキシアミンからなる群から選択される、方法(P3)である、式(II)の化合物を製造する方法(P3’)に関する。
【0025】
したがって、本発明は、追加の化合物が、(式(II)の化合物に対して)0.001~1モル当量の量で添加される、方法(P3)又は(P3’)である、式(II)の化合物を製造する方法(P3’’)に関する。
【0026】
したがって、本発明は、追加の化合物が、(式(II)の化合物に対して)0.003~1モル当量の量で添加される、方法(P3)又は(P3’)である、式(II)の化合物を製造する方法(P3’’’)に関する。
【0027】
反応は通常、不活性溶媒の中で行われる。溶媒は通常、ベンゼン又はトルオールなどの芳香族炭化水素である。
【0028】
したがって、本発明は、少なくとも1つの不活性溶媒の存在下で行われる方法(P)、(P1)、(P2)、(P2’)、(P2’’)、(P3)、(P3’)、(P3’’)又は(P3’’’)である、式(II)の化合物を製造する方法(P4)に関する。
【0029】
したがって、本発明は、溶媒が芳香族溶媒である、方法(P4)である、式(II)の化合物を製造する方法(P4’)に関する。
【0030】
したがって、本発明は、溶媒がベンゼン及びトルオールからなる群から選択される、方法(P4)である、式(II)の化合物を製造する方法(P4’’)に関する。
【0031】
現在による方法は、通常、昇温で行われる。通常、本発明による方法は、0℃~120℃、好ましくは5℃~100℃の温度で行われる。
【0032】
したがって、本発明は、0℃~120℃の温度で行われる方法(P)、(P1)、(P2)、(P2’)、(P2’’)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P3’’’)、(P4)、(P4’)又は(P4’’)である、式(II)の化合物を製造する方法(P5)に関する。
【0033】
したがって、本発明は、5℃~100℃の温度で行われる方法(P)、(P1)、(P2)、(P2’)、(P2’’)、(P3)、(P3’)、(P3’’)、(P3’’’)、(P4)、(P4’)又は(P4’’)である、式(II)の化合物を製造する方法(P5’)に関する。
【0034】
さらに、本発明による方法のための出発材料のうち一部は新規である。
【0035】
次の3つの化合物(式(Ia)、(Ib)及び(Ic)の化合物)
【化11】
は新規である。
【0036】
したがって、本発明はまた、式(Ia)
【化12】
の化合物にも関する。
【0037】
したがって、本発明はまた、式(Ib)
【化13】
の化合物にも関する。
【0038】
したがって、本発明はまた、式(Ic)
【化14】
の化合物にも関する。
【0039】
これらの新規な化合物は、式(IV)の化合物(Law,Wing C.ら、米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society)、1988,vol.110,(17),p.5915-5917に従って得られる)から出発する一般に知られている方法に従って、対応する無水物とともに製造される。
【化15】
【0040】
上に述べたように、本発明による方法は、ビタミンA(及び/又はその誘導体)の合成における1つの重要なステップである。
【0041】
以下の実施例は、本発明を例示する役割を果たす。温度は℃で記載され、パーセンテージは全て重量に関する。
【0042】
[実施例]
[実施例1:]
7,8-ジヒドロレチニルアクテート(7,8-Dihydroretinylactate)(150mg、1.0当量)をトルエン(5mL)に溶解し、DDQ(1.0当量)及びトリエトキシアミン(0.5モル%)を添加した。反応混合物を90℃で0.5時間撹拌した。溶液をシリカのプラグで濾過し、揮発分を全て減圧下で蒸発させた。カラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を得た(収率54%)。
【0043】
[実施例2:]
7,8-ジヒドロレチニルアクテート(7,8-Dihydroretinylactate)(150mg、1.0当量)をトルエン(5mL)に溶解し、DDQ(1.0当量)を添加した。反応混合物を90℃で4時間撹拌した。溶液をシリカのプラグで濾過し、揮発分を全て減圧下で蒸発させた。カラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を得た(収率30%)。
【0044】
[実施例3:]
7,8-ジヒドロレチナール(150mg、1.0当量)をトルエン(5mL)に溶解し、フルオラニル(2.0当量)を添加した。反応混合物を60℃で24時間撹拌した。溶液をシリカのプラグで濾過し、揮発分を全て減圧下で蒸発させた。カラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を得た(収率29%)。
【0045】
[実施例4:]
7,8-ジヒドロレチニルアセテート(180mg、1.0当量)を酢酸エチル(20mL)に溶解し、DDQ(1.0当量)及びトリエトキシアミン(0.5モル%)を添加した。反応混合物を77℃で0.5時間撹拌した。溶液をシリカのプラグで濾過し、揮発分を全て減圧下で蒸発させた。カラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を得た(収率74%)。
【0046】
[実施例5:]
7,8-ジヒドロレチニルアセテート(181mg、1.0当量)を酢酸エチル(5mL)に溶解し、DDQ(1.0当量)及びトリエトキシアミン(0.5モル%)を添加した。反応混合物を室温で0.5時間、及び77℃でo.5時間撹拌した。溶液をシリカのプラグで濾過し、揮発分を全て減圧下で蒸発させた。カラムクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物を得た(収率75%)。
【国際調査報告】