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  • 特表-歯科用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】歯科用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/54 20200101AFI20220616BHJP
   A61K 6/60 20200101ALI20220616BHJP
【FI】
A61K6/54
A61K6/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021559756
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2020060172
(87)【国際公開番号】W WO2020208148
(87)【国際公開日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】19168752.4
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502289695
【氏名又は名称】デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】クレー,ヨアヒム・エー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルム,マティアス
【テーマコード(参考)】
4C089
【Fターム(参考)】
4C089AA07
4C089AA08
4C089BA13
4C089BA20
4C089BD05
4C089BD20
4C089BE09
4C089CA03
(57)【要約】
一つ以上のジ又はポリエポキシドと;(ii)以下の式(I)の化合物とを含む歯科用組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)一つ以上のジ又はポリエポキシドと;
(ii)以下の式(I)
【化14】

(式中、
Lは、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基によって置換されていてもよい、1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり;
1、A2及びA3の少なくとも一つはCHを表し、残りの基は基C-R1であり;
1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも三つはCH2を表し、残りの基はCHR2基、CR34基又はC=NR5基であり;
nは0又は1であり;
1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
3及びR4は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、フッ素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基を表す、又はR3とR4とがつながって、それらが結合する炭素原子とともに、三~六員の飽和炭化水素環を形成してもよく;
5は、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
ただし、nが0であるとき、R1、R2、R3/R4及びR5の少なくとも一つが存在する)
の化合物と
を含む歯科用組成物。
【請求項2】
1、A2及びA3の少なくとも二つがCHを表す、請求項1記載の歯科用組成物。
【請求項3】
1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも五つがCH2を表す、請求項1又は2記載の歯科用組成物。
【請求項4】
nが1である、請求項1~3のいずれか1項記載の歯科用組成物。
【請求項5】
Lが以下の基:
【化15】

を表す、請求項1~4のいずれか1項記載の歯科用組成物。
【請求項6】
1、A2及びA3がCHを表し、X1、X2、X3、Y1、Y2及びY3がCH2を表す、請求項1~5のいずれか1項記載の歯科用組成物。
【請求項7】
nが0である、請求項1~3のいずれか1項記載の歯科用組成物。
【請求項8】
1が、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基である、請求項7記載の歯科用組成物。
【請求項9】
2が、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基又はC1-6アルコキシ基である、請求項7又は8記載の歯科用組成物。
【請求項10】
一つ以上のジ又はポリエポキシドが、以下の式(II):
【化16】

(式中、
Qは(m+1)価の有機基であり、
6、R7及びR10は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
8、R9及びR11は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
mは1~3の整数である)
の化合物である、請求項1~9のいずれか1項記載の歯科用組成物。
【請求項11】
以下の構造:
【化17】

(式中、
12は、水素又は置換もしくは非置換のC1-18アルキル基、置換もしくは非置換のC3-18シクロアルキル基又は置換もしくは非置換のC7-18アリールアルキル基であり、
13は、二官能性の置換もしくは非置換のC1~C18アルキレン基又は置換もしくは非置換のシクロアルキレン基であり、
A′は、ジ又はポリエポキシドなどの、アミンと付加反応することができる化合物に由来する部分であり、
cは整数である)
の化合物の中から選択される脂肪族ポリアミンをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項記載の歯科用組成物。
【請求項12】
放射線不透過性粒状充填材をさらに含む、請求項1~11のいずれか1項記載の歯科用組成物。
【請求項13】
根管充填組成物又は覆髄組成物である、請求項1~12のいずれか1項記載の歯科用組成物。
【請求項14】
長くても20時間のゲル化時間を有する、請求項1~13のいずれか1項記載の歯科用組成物。
【請求項15】
歯内疾患の治療又は予防に使用するための、以下の式(I):
【化18】

(式中、
Lは、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基によって置換されていてもよい、1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり;
1、A2及びA3の少なくとも一つはCHを表し、残りの基は基C-R1であり;
1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも三つはCH2を表し、残りの基はCHR2基、CR34基又はC=NR5基であり;
nは0又は1であり;
1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
3及びR4は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、フッ素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基を表す、又はR3とR4とがつながって、それらが結合する炭素原子とともに、三~六員の飽和炭化水素環を形成してもよく;
5は、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
ただし、nが0であるとき、R1、R2、R3/R4及びR5の少なくとも一つが存在する)
の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の第一級アミン化合物を含む歯科用組成物に関する。本発明の歯科用組成物は、エポキシド・アミン付加ポリマーを形成するように適合されている。さらに、本発明は、歯内疾患の治療又は予防に使用するための特定の第一級アミン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性化合物を含有する重合性歯科用組成物は公知である。従来、重合性歯科用組成物は、広い範囲の用途のために提供され、したがって、多様な要件を満たさなければならない。たとえば、重合性歯科用組成物は、歯科用接着組成物、結合剤、小窩裂溝封鎖材、歯科用脱感作組成物、覆髄組成物、歯科用コンポジット、歯科用グラスアイオノマーセメント、歯科用セメント、歯科用根管充填シーラ組成物、根管充填組成物又は歯科用溶浸材であることができる。
【0003】
歯科用組成物は、強度及び外観に関して天然歯の構造に近づくことが望まれる。したがって、物性、生体適合性、美観及び取り扱い適性に関して改善された性質を有する歯科用組成物の開発に向けられた多大な尽力が従来技術によって記録されている。
【0004】
米国特許第5,624,976号は、アニリン、p-フルオロアニリン、ベンジルアミン、1-アミノアダマンタン、α-フェニルエチルアミン、ジメチル(アミノ)メチル)ホスフィンオキシド及びエタノールアミンをモノアミン化合物として使用することができる、根管をシールする歯科用充填組成物を開示している。
【0005】
根管充填組成物及び覆髄組成物から選択される歯科用組成物は、硬化した生成物が高い放射線不透過性を有することを求められ、組成物が硬化のために外部照射を必要としないというさらなる要件を課される。そのうえ、組成物は、歯根管の密封をさらに改善するために、根管の壁に付着することが望ましい。咀嚼及び温度変化の結果として根管の形状が変化し得ると仮定するならば、硬化した組成物は、根管の密封を損なうことなくそのような変化を許容しなければならない。
【0006】
したがって、そのようなさらなる性質を提供するために、根管充填組成物又は覆髄組成物は、硬化性マトリックス中に分散した放射線不透過性粒状充填材を含有する。しかし、放射線不透過性粒状充填材の分散は、充填材の高い密度及び硬化性マトリックスの低い粘度のせいで、分散系の安定性問題を生じさせる。
【0007】
そのうえ、光の非存在において根管充填組成物又は覆髄組成物を硬化させるために、組成物は、エポキシド前駆体化合物を逐次重合させることを含むことができる熱硬化機構によって硬化させる。
【0008】
歯根管のための従来技術の歯科用充填材は、比較的長い硬化時間、高い粘性及び変色を有する。
【0009】
現在、最良の全体的性質を提供する歯科用根管充填材のゴールドスタンダードはAH Plus(登録商標)(Dentsply DeTrey, Konstanz/Germany)である。AH Plus(登録商標)の良好な全体的性質は、特に、物理的及び機械的性質、ゲル化時間などの硬化特性ならびに流動性及び粘性などの取り扱い適性に関する。良好な全体的性質は、使用される充填材組成物と、AH Plus(登録商標)組成物の硬化工程中に形成するエポキシド・アミン付加ポリマーの構造とに大きく依存する。AH Plus(登録商標)歯科用根管充填組成物はアミンペースト及びエポキシドペーストからなる。AH Plus(登録商標)エポキシドペーストは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(EP、CAS:25068-38-6)を主成分として含み、AH Plus(登録商標)アミンペーストは、ジアミンN,N′-ジベンジル-5-オキサノナンジアミン-1,9(DA、CAS:113506-22-2)及びモノアミン1-アミノモノアダマンタン(MA、CAS:768-94-5)を主成分として含む。AH Plus(登録商標)のこれらの三つの主成分の分子構造を以下に示す。
【0010】
【化1】
【0011】
上記構造から見てとれるように、AH Plus(登録商標)組成物の三つの主成分EP、DA及びMAはミラー対称分子構造を有する。特に、モノアミン1-アミノアダマンタン(MA)は非常に高いレベルの対称性を有する。付加重合法が統計重合法であり、AH Plus(登録商標)に使用されるモノマーが主にミラー対称モノマーであるという事実により、重合工程中、ポリマー構造中に多数のミラー対称サブユニットが形成する。これらのミラー対称サブユニットは、形成するポリマーの性質に有意な影響を及ぼす。様々なジアステレオ異性体は別として、ポリマーの可能な最小ミラー対称サブユニットが以下に示されるが、AH Plus(登録商標)の硬化中に形成する、ポリマー中のより大きなミラー対称サブユニットもまた可能であるが、図示はされない。しかし、一般に、八つのミラー対称サブユニットが可能である。
【0012】
【化2】
【0013】
AH Plus(登録商標)に使用されるモノマーEP、DA及びMAは比較的大きなモノマーであり、したがって、ミラー対称サブユニットは最終的なポリマーの比較的大きなブロックを構成する。この理由のため、ミラー対称サブユニットは最終的なポリマーの物理的及び機械的性質に大きな影響を及ぼし、特に、粘性及び流動性はミラー対称サブユニットに依存する。その結果、ミラー対称サブユニットはAH Plusの全体的性質に多大に寄与する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、物理的及び機械的性質、生体適合性、美観ならびに取り扱い適性に関して優れた性質を有する歯科用組成物を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる課題は、高い放射線不透過性と、高い貯蔵安定性と、低い収縮及び可撓性と、比較的短い硬化時間とを有し、光の非存在において硬化させることができる歯科用組成物を提供することである。
【0016】
さらには、本発明の課題は、調節可能な貼合せ及び硬化時間と、適当な粘性とを有し、着色問題を示さない歯科用組成物を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる課題は、コスト効率的であり、シンプルであり、工業的に関連するスケールで利用可能である、根管充填組成物及び覆髄組成物から選択される硬化性歯科用組成物を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる課題は、AH Plus(登録商標)組成物と比べ、匹敵しうる、及び/又は改善された全体的性質を有する歯科用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
驚くことに、本発明の課題は、
(i)一つ以上のジ又はポリエポキシドと;
(ii)以下の式(I)
【0020】
【化3】
【0021】
(式中、
Lは、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基によって置換されていてもよい、1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり;
1、A2及びA3の少なくとも一つはCHを表し、残りの基は基C-R1であり;
1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも三つはCH2を表し、残りの基はCHR2基、CR34基又はC=NR5基であり;
nは0又は1であり;
1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
3及びR4は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、フッ素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基を表す、又はR3とR4とがつながって、それが結合する炭素原子とともに、三~六員の飽和炭化水素環を形成してもよく;
5は、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
ただし、nが0であるとき、R1、R2、R3/R4及びR5の少なくとも一つが存在する)
の化合物と
を含む本発明の歯科用組成物によって解決され得るということがわかった。
【0022】
驚くことに、式(I)の非対称第一級アミンモノマーを使用することにより、AH Plus(登録商標)組成物と比べ、匹敵しうる、及び/又は改善された全体的性質を有する歯科用組成物を提供し得るということがわかった。式(I)の非対称第一級アミンモノマーを使用することにより、可能なミラー対称サブユニットの数が8から3へ減少し、したがって、最終的なポリマー中に統計的に形成するミラー対称サブユニットは62.5%減少する。したがって、驚くことに、硬化した歯科用組成物の最終的なポリマー中のミラー対称サブユニットの62.5%の減少(ポリマーの全体的性質に大きな影響を及ぼす)が、AH Plus(登録商標)組成物と比べ、匹敵しうる、及び/又は改善された全体的性質を有する歯科用組成物を生じさせるということがわかった。
【0023】
加えて、本発明は、放射線不透過性粒状充填材をさらに含む歯科用組成物を提供する。
【0024】
そのうえ、本発明は、根管充填組成物又は覆髄組成物である歯科用組成物を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、長くても20時間のゲル化時間を有する歯科用組成物を提供する。
【0026】
最後に、本発明は、歯内疾患の治療又は予防に使用するための、以下の式(I):
【0027】
【化4】
【0028】
(式中、
Lは、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基によって置換されていてもよい、1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり;
1、A2及びA3の少なくとも一つはCHを表し、残りの基は基C-R1であり;
1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも三つはCH2を表し、残りの基はCHR2基、CR34基又はC=NR5基であり;
nは0又は1であり;
1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
3及びR4は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、フッ素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基を表す、又はR3とR4とがつながって、それらが結合する炭素原子とともに、三~六員の飽和炭化水素環を形成してもよく;
5は、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
ただし、nが0であるとき、R1、R2、R3/R4及びR5の少なくとも一つが存在する)
の化合物を提供する。
【0029】
本発明は、式(I)の化合物を含む歯科用組成物が、AH Plus(登録商標)組成物と比べ、匹敵しうる、及び/又は改善された全体的性質を有する歯科用組成物を提供するという認識に基づく。そのうえ、本発明は、式(I)の化合物を含む歯科用組成物が、物理的及び機械的性質、生体適合性、美観ならびに取り扱い適性に関して優れた性質を有し、高い放射線不透過性と、高い貯蔵安定性と、低い収縮及び可撓性と、比較的短い硬化時間とを有し、光の非存在において硬化させることができる歯科用組成物を提供するという認識に基づく。さらに、本発明の歯科用組成物は、調節可能な貼合せ及び硬化時間と、適当な粘性とを提供し、着色問題を示さない。最後に、本発明は、コスト効率的であり、シンプルであり、工業的に関連するスケールで利用可能である、根管充填組成物及び覆髄組成物から選択される硬化性歯科用組成物を提供する。
【0030】
本発明の式(I)の第一級モノアミンモノマーは、優れた反応性を提供するモノマーとして働くように適合されており、その結果、優れた硬化特性を有する歯科用組成物が提供される。さらに、本発明の式(I)の第一級モノマーの使用は、AH Plus(登録商標)組成物の最終的なポリマーと比べ、少ない数のミラー対称サブユニットを有し、かつ匹敵しうる、及び/又は改善された全体的性質を有するポリマーをもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】実施例においてさらに開示される実験結果の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、特定の第一級アミン化合物を含む歯科用組成物に関する。本発明の歯科用組成物は、エポキシド・アミン付加ポリマーを形成するように適合されている。歯科用組成物は、ジ又はポリエポキシド及び式(I)の第一級モノアミン及び/又は他のモノアミン及び/又は第二級ジアミン及び/又は充填材を含む。本発明の歯科用組成物は重合性であり、重合すると熱可塑性ポリマーを形成する。
【0033】
さらに、本発明は、歯内疾患の治療又は予防に使用するための特定の第一級アミン化合物に関する。
【0034】
語「重合」及び「重合性」とは、大きな数のより小さな分子、たとえばモノマーが共有結合によって組み合わさって、より大きな分子、すなわち高分子又はポリマーを形成することをいう。モノマーは、直鎖状のみの高分子を形成するように組み合わさることもできるし、一般に架橋ポリマーと呼ばれる三次元高分子を形成するように組み合わさることもできる。たとえば、二官能性モノマーは直鎖状ポリマーを形成し、少なくとも三つの官能基を有するモノマーは、ネットワークとしても知られる架橋ポリマーを形成する。重合性モノマーの転化率がより高い場合、多官能性モノマーの量を減らすこともできるし、浸出問題を軽減することもできる。
【0035】
語「硬化」とは、官能性重合性化合物、たとえばモノマー、オリゴマー又はさらにはポリマーをポリマーネットワーク、好ましくは架橋ポリマーネットワークへと重合させることをいう。
【0036】
語「硬化性」とは、歯科用組成物が混合によって重合することをいう。
【0037】
「貼合せ時間(working time)」とは、ポリマーと改質された粒状反応性充填材とが水の存在において合わされる硬化反応の開始時と、硬化反応が、所期の歯科的又は医学的用途のためのさらなる物理的作業、たとえばへら操作又は再成形を系に対してもはや実施することができないところまで進行した時点との間で計測される時間である。
【0038】
「硬化時間」とは、充填域における硬化反応の開始時から、充填域の表面に対してその後の臨床的又は外科的処置を実施することを許すのに十分な硬化が起こったところの時点までで計測される時間である。硬化反応中、重合性基の存在のせいで重合反応が起こる。グラスアイオノマーセメントにおいては、重合反応に加えて、硬化反応はさらに、反応性粒状ガラスの形態の塩基による、たとえば重合性化合物の酸基の中和を含む。
【0039】
本明細書中で使用される語「貯蔵安定性」とは、歯科用組成物が、たとえば約2年の長い貯蔵期間の後でさえ、その特性、特にその貼合せ時間及び硬化時間を維持することをいう。
【0040】
式(I)の化合物
本発明の歯科用組成物は、以下の式(I):
【0041】
【化5】
【0042】
(式中、
Lは、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基によって置換されていてもよい、1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり;
1、A2及びA3の少なくとも一つはCHを表し、残りの基は基C-R1であり;
1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも三つはCH2を表し、残りの基は基CHR2、CR34又はC=NR5であり;
nは0又は1であり;
1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
3及びR4は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、フッ素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基を表す、又はR3とR4とがつながって、それらが結合する炭素原子とともに、三~六員の飽和炭化水素環を形成してもよく;
5は、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
ただし、nが0であるとき、R1、R2、R3/R4及びR5の少なくとも一つが存在する)
の化合物を含む。
【0043】
式(I)の化合物において、Lは、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基によって置換されていてもよい、1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基を表す。好ましくは、Lは、1~8個の炭素原子を有する直鎖状の炭化水素基を表し、より好ましくは、Lは、2~6個の炭素原子を有する直鎖状の炭化水素基を表し、さらに好ましくは、Lは、2~4個の炭素原子を有する直鎖状の炭化水素基を表し、もっとも好ましくは、Lは、2個の炭素原子を有する直鎖状の炭化水素基を表す。
【0044】
Lは、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基によって置換されていてもよい。好ましくは、Lは、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基によって置換されている、又は非置換であり、より好ましくは、Lは、ヒドロキシル基によって置換されている、又は非置換であり、さらに好ましくは、Lは非置換である。
【0045】
特に好ましい実施形態において、Lは以下の基を表す。
【0046】
【化6】
【0047】
式(I)の化合物において、A1、A2及びA3の少なくとも一つはCHを表し、残りの基は基C-R1である。好ましくは、A1、A2及びA3の少なくとも二つ又は三つはCHを表し、残りの基は基C-R1であり、より好ましくは、A1、A2及びA3の少なくとも三つはCHを表す。
【0048】
式(I)の化合物において、X1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも三つはCH2を表し、残りの基は基CHR2、CR34又はC=NR5である。好ましくは、X1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも四つはCH2を表し、残りの基は基CHR2、CR34又はC=NR5であり、より好ましくは、X1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも五つはCH2を表し、残りの基は基CHR2、CR34又はC=NR5であり、もっとも好ましくは、X1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも六つはCH2を表す。
【0049】
好ましくは、X1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも三つ又は少なくとも四つ又は少なくとも五つはCH2を表し、残りの基はCHR2、CR34の基であり、より好ましくは、残りの基はCHR2の基である。
【0050】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、A1、A2及びA3がCHを表し、X1、X2、X3、Y1、Y2及びY3がCH2を表す化合物である。
【0051】
式(I)の化合物において、nは0又は1である。好ましくは、nは1である。しかし、一つの実施形態において、式(I)の化合物は、nが0である化合物である。nが0であるならば、R1、R2、R3/R4及びR5の少なくとも一つが存在する。
【0052】
式(I)の化合物において、R1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基である。好ましくは、R1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基であり、より好ましくは、R1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基であり、さらに好ましくは、R1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルキル基であり、特に、R1はヒドロキシル基である。
【0053】
式(I)の化合物において、R2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基である。好ましくは、R2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基であり、より好ましくは、R2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基であり、さらに好ましくは、R2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルキル基であり、特に、R2はヒドロキシル基である。
【0054】
式(I)の化合物において、R3及びR4は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、フッ素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基を表す、又はR3とR4とがつながって、それらが結合する炭素原子とともに、三~六員の飽和炭化水素環を形成してもよい。
【0055】
式(I)の化合物において、R5は、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基を表す。好ましくは、R5は、C1-6アルキル基、C6-10アリール基又はC7-14アリールアルキル基を表し、より好ましくは、R5は、C1-6アルキル基又はC6-10アリール基を表し、さらに好ましくは、R5はC1-6アルキル基を表す。
【0056】
特に好ましい実施形態において、式(I)の化合物は以下の化合物である。
【0057】
【化7】
【0058】
一つ以上のジ又はポリエポキシド
本発明の歯科用組成物は一つ以上のジ又はポリエポキシドを含む。一つ以上のジ又はポリエポキシドは、歯科用途に適した、及び/又は当技術分野において公知である任意のジ又はポリエポキシドであることができる。
【0059】
具体的な実施形態において、一つ以上のジ又はポリエポキシドは、以下の式(II):
【0060】
【化8】
【0061】
(式中、
Qは(m+1)価の有機基であり、
6、R7及びR10は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
8、R9及びR11は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表し、
mは1~3の整数である)
の化合物である。
【0062】
式(II)の化合物において、Qは(m+1)価の有機基を表す。好ましくは、Qは2価の有機基又は3価の有機基を表し、より好ましくは、Qは2価の有機基を表す。
【0063】
(m+1)価の有機基は、合計1~40個の炭素原子、好ましくは2~20個の炭素原子を有する基であることができる。有機基は、脂肪族、脂環式もしくは芳香族部分又はそのような部分の二つ以上の組み合わせを含むことができる。有機基はさらに、二つ以上の脂肪族、脂環式又は芳香族部分をつなぐ一つ以上の官能基、たとえばアミド基、エステル基、ウレタン基、尿素基、ケト基、エーテル基、チオエーテル基、炭酸基又は第三級アミノ基を含んでもよい。さらに、有機基は、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基から選択される一つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0064】
好ましくは、(m+1)価の有機基は脂環式又は芳香族部分を含むことができ、より好ましくは、(m+1)価の有機基は芳香族部分を含むことができる。
【0065】
好ましい実施形態において、Qは以下の基を表す。
【0066】
【化9】
【0067】
式(III)の化合物において、mは1~3の整数である。好ましくは、mは1~2の整数であり、より好ましくは、mは1である。
【0068】
式(II)の化合物において、R6、R7及びR10は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表す。好ましくは、R6、R7及びR10は水素原子を表す。特に好ましい実施形態において、R6、R7及びR10の三つすべてが水素原子を表す。
【0069】
式(II)の化合物において、R8、R9及びR11は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、水素原子又はC1-6アルキル基を表す。さらに、式(II)の化合物において、一つよりも多いR8が存在するならば、一つよりも多いR8は異なってもよい。式(II)の化合物において、一つよりも多いR9が存在するならば、一つよりも多いR9は異なってもよい。式(II)の化合物において、一つよりも多いR11が存在するならば、一つよりも多いR11は異なってもよい。好ましくは、R8、R9及びR11は水素原子を表す。特に好ましい実施形態において、存在するR8、R9及びR11部分のすべてが水素原子である。
【0070】
特に好ましい実施形態において、式(II)の化合物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(CAS:25068-38-6)又はビス-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-メタン(CAS:9003-36-5)である。
【0071】
さらなる成分
脂肪族ポリアミン
本発明の歯科用組成物はさらに、脂肪族ポリアミンを含んでもよい。脂肪族ポリアミンは、歯科用途に適した、及び/又は当技術分野において公知である任意の脂肪族ポリアミンであることができる。
【0072】
具体的な実施形態において、脂肪族ポリアミンは、以下の構造:
【0073】
【化10】
【0074】
(式中、
12は、水素又は置換もしくは非置換のC1-18アルキル基、置換もしくは非置換のC3-18シクロアルキル基又は置換もしくは非置換のC7-18アリールアルキル基であり、
13は、二官能性の置換もしくは非置換のC1~C18アルキレン基又は置換もしくは非置換のシクロアルキレン基であり、
A′は、ジ又はポリエポキシドなどの、アミンと付加反応することができる化合物に由来する部分であり、
cは整数である)
の化合物の中から選択される。
【0075】
上記構造の脂肪族ポリアミンにおいて、好ましくは、R12は、水素、置換もしくは非置換のC3-18シクロアルキル基又はC7-18アリールアルキル基である。より好ましくは、R12は、置換もしくは非置換のC3-18シクロアルキル基又は置換もしくは非置換のC7-18アリールアルキル基である。さらに好ましくは、R12は、置換もしくは非置換のC7-18アリールアルキル基である。特に好ましい実施形態において、R12は非置換のC7-18アリールアルキル基である。
【0076】
上記構造の脂肪族ポリアミンにおいて、好ましくは、R13は、二官能性の置換もしくは非置換のC1~C18アルキレン基であり、より好ましくは、R13は、二官能性の非置換のC1~C18アルキレン基である。
【0077】
上記構造の脂肪族ポリアミンにおいて、A′は、ジ又はポリエポキシドなどの、アミンと付加反応することができる化合物に由来する部分である。好ましくは、A′は、式(II)のジ又はポリエポキシドとアミンとの付加反応に由来する部分である。より好ましくは、A′は、アミンと、ジエポキシドである式(II)の化合物との付加反応に由来する部分である。
【0078】
好ましい実施形態において、A′は、アミンと、ジエポキシドである式(II)の化合物との付加反応に由来する部分であり、式(II)の化合物中、Qは以下の構造を表す。
【0079】
【化11】
【0080】
上記構造の脂肪族ポリアミンにおいて、cは整数である。好ましくは、cは1~10の整数であり、より好ましくは、cは2~8の整数であり、さらに好ましくは、cは4~6の整数である。
【0081】
充填材
本発明の歯科用組成物はさらに充填材を含んでもよい。本発明の歯科用組成物中の充填材は、歯科用途に適した、及び/又は当技術分野において公知である任意の充填材であることができる。
【0082】
具体的な実施形態において、本発明の充填材は放射線不透過性粒状充填材である。本発明の放射線不透過性充填材は、歯科用途に適した、及び/又は当技術分野において公知である任意の放射線不透過性充填材であることができる。
【0083】
放射線不透過性充填材は通常、たとえば電子顕微鏡を使用することによって、又はMALVERN Mastersizer SもしくはMALVERN Mastersizer 2000装置によって具現化されるような従来のレーザ回折粒度測定法を使用することによって計測して0.005~100μm、好ましくは0.01~40μmの平均粒子径を有する。放射線不透過性粒状充填材は、異なる平均粒子径を有する二つ以上の放射線不透過性粒状画分の混合物を表すマルチモード放射線不透過性粒状充填材であってもよい。放射線不透過性粒状充填材はまた、異なる化学組成の粒子の混合物であってもよい。
【0084】
粒状充填材又はナノフィラーの形態の放射線不透過性充填材は、亜鉛、イッテリビウム、イットリウム、ガドリニウム、ジルコニウム、ストロンチウム、タングステン、タンタル、トリウム、ニオブ、バリウム、ビスマス、モリブデン及びランタン金属、それらの合金、それらの有機金属錯体、それら酸化物、硫酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、次硝酸塩、タングステン酸塩及び炭化物、ヨウ素及び無機ヨウ化物のいずれかから単独で、又は組み合わせて選択されることができる。好ましい実施形態において、放射線不透過性充填材は、三酸化ビスマス、炭酸ビスマス、塩化酸化ビスマス、次硝酸ビスマス、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、タングステン酸バリウム及びタングステン酸カルシウムのいずれかから単独で、又は組み合わせて選択される。さらに好ましい実施形態において、放射線不透過性充填材は、タングステン酸バリウム及びタングステン酸カルシウムから単独で、又は組み合わせて選択される。好ましくは、放射線不透過性充填材はタングステン酸カルシウムである。
【0085】
本発明の歯科用組成物は、放射線不透過性粒状充填材を、組成物全体の重量に基づいて好ましくは1~85重量%、より好ましくは40~85重量%、さらに好ましくは40~70重量%含む。
【0086】
非硬化組成物の粘性及びチキソトロピー性ならびに硬化組成物の物性は、充填材のサイズ及び表面積を変えることによって制御することができる。
【0087】
充填材は、一つ以上のシラン処理剤によって表面処理されてもよい。好ましいシラン処理剤は、少なくとも一つの重合性二重結合及び水で容易に加水分解する少なくとも一つの基を有するものを含む。そのようなシラン処理剤の例は、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルジメトキシ-モノクロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルジクロロモノメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリ-クロロシラン、3-メタクリルオキシプロピルジクロロモノメチル-シラン、3-メタクリルオキシプロピルモノクロロジメチルシラン又は2,3-エポキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びそれらの混合物を含む。
【0088】
脂肪族モノ及びジアミン
本発明の歯科用組成物はさらに、脂肪族モノ及び/又はジアミンを含んでもよい。脂肪族モノ及び/又はジアミンは、歯科用途に適した、及び/又は当技術分野において公知である任意の脂肪族モノ及び/又はジアミンであることができる。
【0089】
好ましい実施形態において、本発明の歯科用組成物は、ベンジルアミン、1-アミノアダマンタン、α-フェニルエチルアミン、ジメチル(アミノメチル)ホスフィンオキシド及びエタノールアミンからなる群から選択されるモノアミンを含む。
【0090】
好ましい実施形態において、本発明の歯科用組成物は、N,N′-ジベンジルエチレンジアミン、N,N′-ジベンジル-3,6-ジオキサオクタンジアミン-1,8、N,N′-ジベンジル-5-オキサノナンジアミン-1,9(CAS:113506-22-2)、N,N′-ジベンジル-(2,2,4)トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N′-ジベンジル-(2,2,4)トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N′-ジベンジルシクロヘキシレンジアミン、N,N′-ジベンジル-キシリレンジアミンからなる群から選択されるジアミンを含む。
【0091】
特に好ましい実施形態において、本発明の歯科用組成物は一つ以上の第一級脂肪族ジアミンを含む。好ましくは、歯科用組成物は一つの第一級脂肪族ジアミンを含む。
【0092】
好ましくは、第一級脂肪族ジアミンは、以下の式(III):
【0093】
【化12】
【0094】
(式中、
Q′は、置換又は非置換のC3-20アルキレン基又は置換又は非置換のC3-20シクロアルキレン基を表し、置換C3-20アルキレン基及び置換C3-20シクロアルキレン基は、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルキル基、C3-12シクロアルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基によって置換されていてもよい)
の化合物である。
【0095】
式(III)の化合物において、好ましくは、Q′は、置換又は非置換のC3-20シクロアルキレン基を表し、より好ましくは、Q′は置換シクロアルキレンを表し、さらに好ましくは、Q′は、置換基が一つ以上のC1-6アルキル基、C3-12シクロアルキル基であることができる置換シクロアルキレンを表す。
【0096】
特に好ましい実施形態において、本発明の歯科用組成物は、オクタヒドロ-4,7-メタノ-1H-インデンジメチルアミン(CAS:68889-71-4)及びイソホロンジアミン(CAS:2855-13-2)からなる群から選択される第一級脂肪族ジアミンを含む。
【0097】
さらなる任意選択の成分
本発明の歯科用組成物は、上記成分の他に、さらなる任意選択の成分を含んでもよい。本発明の歯科用組成物は、任意選択で、歯科用途に適した、及び/又は当技術分野において公知である任意の添加物を含有することができる。
【0098】
たとえば、本発明の歯科用組成物は、水又は当技術分野において公知の任意の溶剤を含んでもよい。本発明の歯科用組成物は、好ましくは、水又は当技術分野において公知の任意の溶剤を、組成物の総重量に基づいて5~20重量%含むことができる。
【0099】
任意選択で、歯科用組成物はさらに、安定剤及び/又は顔料を含んでもよい。
【0100】
好ましくは、本発明の歯科用組成物は根管充填組成物及び覆髄組成物である。より好ましくは、本発明の歯科用組成物は根管充填組成物である。
【0101】
本発明の歯科用組成物は長くても20時間のゲル化時間を有する。好ましくは、本発明の歯科用組成物は長くても18時間のゲル化時間を有し、より好ましくは、本発明の歯科用組成物は長くても15時間のゲル化時間を有する。
【0102】
さらに、本発明は、歯内疾患の治療又は予防に使用するための、式(I)の化合物を提供する。
【0103】
【化13】
【0104】
式中、
Lは、一つ以上のフッ素原子、ヒドロキシル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基によって置換されていてもよい、1~8個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐状の炭化水素基であり;
1、A2及びA3の少なくとも一つはCHを表し、残りの基は基C-R1であり;
1、X2、X3、Y1、Y2及びY3の少なくとも三つはCH2を表し、残りの基は基CHR2基、CR34又はC=NR5であり;
nは0又は1であり;
1は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
2は、フッ素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
3及びR4は、同じであっても異なっていてもよく、互いに独立して、フッ素原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C1-6アルキルチオ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基を表す、又はR3とR4とがつながって、それらが結合する炭素原子とともに、三~六員の飽和炭化水素環を形成してもよく;
5は、ヒドロキシル基、アミノ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、C6-10アリール基、C6-10アリールオキシ基、C7-14アリールアルキル基又はC7-14アリールアルコキシ基であり;
ただし、nが0であるとき、R1、R2、R3/R4及びR5の少なくとも一つが存在する。
【0105】
次に、以下の実施例によって本発明をさらに説明する。
【0106】
実施例
材料
リマンタジン(1-(1-アダマンチル)エチルアミン)塩酸塩は、abcrから購入し、ジエチルエーテルと水酸化ナトリウム溶液(2N)の混合物中で撹拌したのち、ジエチルエーテルで抽出することにより、遊離塩基に変換した。減圧下で溶剤を除去すると、遊離リマンタジン塩基が定量的収率で得られた。ビスフェノールAジグリシジルエーテル(Araldite GY 250、CAS 25068-38-6)及びビスフェノールFジグリシジルエーテル(Araldite GY 285、CAS 9003-36-5)。TCDジアミン(3(4),8(9)-ジ(アミノメチル)トリクロロ[5.2.1.0(2.6)]デカン、CAS 68889-71-4)はOxea GmbHから購入した。イソホロンジアミン(IPDA)はSigma Aldrichから購入した。N,N′-ジベンジル-5-オキサノナンジアミン-1,9(OPC-91)はA.M.B LIFE & SIENCE ApSから入手した。CaWO4(1μm及び6μm、グレードB)粒子はStarck H.C. GmbHから購入した。Aerosil200はCSC Jakle Chemieによって提供された。SICOVIT(登録商標)(Yellow 10 E 172)はSimon und Werner GmbHから購入した。他すべての化学物質は普通の薬品供給業者から購入した。
【0107】
ゲル化時間[方法]
アミンペーストとエポキシドペーストとを、混合プレート上、へらを使用して混合した(mAmine/mEpoxide、混合比は適用例ごとに記す)。混合は、均質なペースト・ペースト混合物が達成されるまで30秒間適用した。個々のペーストそれぞれの質量を天秤によって±0.0001gの精度で測定した。約6gのペースト・ペースト混合物を、丸くカットされたプラスチックの蓋及びガラス棒を備えたガラスバイアル(10mL)に移した。ガラス棒をペースト混合物と接触させなければならない。バイアルを、37℃(t0)(温度制御[ΔT=±1℃])及び相対湿度30~50%の人工気候室に入れた。ガラス棒の回転がもはや不可能になったとき、ゲル化が達成されたものとした(tgelation)。
【0108】
ペースト調合
AH Plus(登録商標)参照
AH Plusアミンペースト(バッチ番号:1901000196)とAH Plusエポキシドペースト(バッチ番号:1812100076)とを比mAmine/mEpoxide=0.86207で混合した。混合ペーストは、16時間未満のゲル化時間(上記方法)、23±0mmの流れ(ISO6876:2012)及び20±8μmの膜厚さ(ISO6876:2012)を示した。
【0109】
ペーストA1
エポキシドペーストA1(SAR3-08-01)の調製
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(7.7205g)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(0.9766g)、CaWO4グレードB(16.9399g)、CaWO4(1μm)(4.2365g)及びSICOVIT(登録商標)(Yellow 10 E172)(0.0438g)を加え、高速混合を適用した(2150rpmで1分)。Aerosil(登録商標)200(0.0850g)を加えたのち、高速ミキサランを実施した(2150rpmで1分)。ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な淡黄色のペーストを得た。密度(T=23℃):2.7277g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0110】
アミンペーストA1(SAR3-06-01)の調製
リマンタジン(1-(1-アダマンチル)エチルアミン)(1.4835g)、N,N′-ジベンジル-5-オキサノナンジアミン-1,9(OPC-91)(3.3351g)及びイソホロンジアミン(IPDA)(0.1983g)を高速ミキサ容器に移し、2150rpmで5分間混合した。CaWO4(1μm)(4.8203g)及びCaWO4グレードB(19.2703g)を加え、高速混合を適用した(2150rpm、1000mBarで5分)。Aerosil(登録商標)200(0.5847g)及びBaysilone M500(0.3189g)を加え、ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な白色のペーストを得た。密度(T=23℃):3.0609g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0111】
ペーストA1の混合物(SAR3-06-01+SAR3-08-01)
アミンペーストA1とエポキシドペーストA1とを比mAmine/mEpoxide=0.89112で混合した。混合ペーストは、16時間未満のゲル化時間(SAR3-25-1)、23.3±0.5mmの流れ、27±5μmの膜厚さ(いずれもISO6876:2012に準拠)を示した。
【0112】
ペーストA2
エポキシドペーストA2(SAR3-07-01)の調製
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(6.5473g)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(0.8571g)、CaWO4グレードB(22.5025g)及びSICOVIT(登録商標)(Yellow 10 E172)(0.0423g)を加え、高速混合を適用した(2150rpmで1分)。Aerosil(登録商標)200(0.0844g)を加えたのち、高速ミキサランを実施した(2150rpmで1分)。ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な淡黄色のペーストを得た。密度(T=23℃):2.9568g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0113】
アミンペーストA2(SAR3-05-01)の調製
リマンタジン(1-(1-アダマンチル)エチルアミン)(1.3287g)、N,N′-ジベンジル-5-オキサノナンジアミン-1,9(OPC-91)(2.9887g)及びイソホロンジアミン(IPDA)(0.1983g)を高速ミキサ容器に移し、2150rpmで5分間混合した。CaWO4グレードB(24.5983g)を加え、高速混合を適用した(2150rpm、1000mBarで5分)。Aerosil(登録商標)200(0.5849g)及びBaysilone M500(0.3165g)を加え、ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な白色のペーストを得た。密度(T=23℃):3.2928g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0114】
ペーストA2の混合物(SAR3-05-01+SAR3-07-01)
アミンペーストA2とエポキシドペーストA2とを比mAmine/mEpoxide=0.89797で混合した。混合ペーストは、16時間未満のゲル化時間(SAR3-24-02)、22.7±0.5mmの流れ、20±2μmの膜厚さ(いずれもISO6876:2012に準拠)を示した。
【0115】
ペーストA3
エポキシドペーストA3(SAR3-171-01)の調製
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(7.7238g)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(0.9798g)、CaWO4グレードB(16.9416g)、CaWO4(1μm)(4.2352g)及びSICOVIT(登録商標)(Yellow 10 E172)(0.0425g)を加え、高速混合を適用した(2150rpmで1分)。Aerosil(登録商標)200(0.0843g)を加えたのち、高速ミキサランを実施した(2150rpmで1分)。ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な淡黄色のペーストを得た。密度(T=23℃):2.7255g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0116】
アミンペーストA3(SAR3-172-01)の調製
リマンタジン(1-(1-アダマンチル)エチルアミン)(1.4856g)、N,N′-ジベンジル-5-オキサノナンジアミン-1,9(OPC-91)(3.3376g)及び3(4),8(9)-ジ(アミノメチル)トリクロロ[5.2.1.0(2.6)]デカン(TCDジアミン)(0.1909g)を高速ミキサ容器に移し、2150rpmで5分間混合した。CaWO4グレードB(2.4096g)、CaWO4(1μm)(21.6828g)を加え、高速混合を適用した(2150rpm、1000mBarで5分)。Aerosil(登録商標)200(0.6325g)及びBaysilone M500(0.2685g)を加え、ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な白色のペーストを得た。密度(T=23℃):3.1421g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0117】
ペーストA3の混合物(SAR3-171-01+SAR3-172-01)
アミンペーストA3とエポキシドペーストA3とを比mAmine/mEpoxide=0.86742で混合した。混合ペーストは、16時間未満のゲル化時間(SAR4-15-01)、21.0±0.0mmの流れ(SAR4-16-02)、8±2μmの膜厚さ(SAR4-16-01)(いずれもISO6876:2012に準拠)を示した。
【0118】
ペーストA4
エポキシドペーストA4(SAR3-173-01)の調製
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(8.6969g)、CaWO4グレードB(19.0581g)、CaWO4(1μm)(2.1156g)及びSICOVIT(登録商標)(Yellow 10 E172)(0.0437g)を加え、高速混合を適用した(2150rpmで1分)。Aerosil(登録商標)200(0.0850g)を加えたのち、高速ミキサランを実施した(2150rpmで1分)。ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な淡黄色のペーストを得た。密度(T=23℃):2.6902g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0119】
アミンペーストA4(SAR3-174-01)の調製
リマンタジン(1-(1-アダマンチル)エチルアミン)(1.4824g)、N,N′-ジベンジル-5-オキサノナンジアミン-1,9(OPC-91)(3.3362g)及び3(4),8(9)-ジ(アミノメチル)トリクロロ[5.2.1.0(2.6)]デカン(TCDジアミン)(0.1912g)を高速ミキサ容器に移し、2150rpmで5分間混合した。CaWO4グレードB(4.8162g)、CaWO4(1μm)(19.2744g)を加え、高速混合を適用した(2150rpm、1000mBarで5分)。Aerosil(登録商標)200(0.5413g)及びBaysilone M500(0.3596g)を加え、ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な白色のペーストを得た。密度(T=23℃):3.1541g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0120】
ペーストA4の混合物(SAR3-173-01+SAR3-174-01)
アミンペーストA4とエポキシドペーストA4とを比mAmine/mEpoxide=0.85292で混合した。混合ペーストは、16時間未満のゲル化時間(SAR4-15-02)、21.3±0.5mmの流れ(SAR4-17-02)、8±2μmの膜厚さ(SAR4-17-01)(いずれもISO6876:2012に準拠)を示した。
【0121】
ペーストA5(比較)
エポキシドペーストA5(SAR3-173-01)の調製
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(8.6969g)、CaWO4グレードB(19.0581g)、CaWO4(1μm)(2.1156g)及びSICOVIT(登録商標)(Yellow 10 E172)(0.0437g)を加え、高速混合を適用した(2150rpmで1分)。Aerosil(登録商標)200(0.0850g)を加えたのち、高速ミキサランを実施した(2150rpmで1分)。ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な淡黄色のペーストを得た。密度(T=23℃):2.6902g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0122】
アミンペーストA5(SAR3-175-01)の調製
3-アミノアダマンタン-1-オール(1.4824g)、N,N′-ジベンジル-5-オキサノナンジアミン-1,9(OPC-91)(3.3362g)及び3(4),8(9)-ジ(アミノメチル)トリクロロ[5.2.1.0(2.6)]デカン(TCDジアミン)(0.1912g)を高速ミキサ容器に移し、2150rpmで5分間混合した。CaWO4グレードB(4.8162g)、CaWO4(1μm)(19.2744g)を加え、高速混合を適用した(2150rpm、1000mBarで5分)。Aerosil(登録商標)200(0.5413g)及びBaysilone M500(0.3596g)を加え、ペーストをへらによって手作業で混合して容器壁からの充填材残渣を分散させたのち、もう一回の高速ミキサランを実施して(2150rpmで1分)、均質な白色のペーストを得た。密度(T=23℃):3.1541g/mL(ヘリウムピクノメータによって計測)。
【0123】
ペーストA5の混合物(SAR3-173-01+SAR3-175-01)
アミンペーストA5とエポキシドペーストA5とを比mAmine/mEpoxide=0.85292で混合した。混合ペーストは、18時間のゲル化時間、13.0±0.5mmの流れ及び97±2μmの膜厚さ(いずれもISO6876:2012の要求事項を満たさず)を示した。
図1
【国際調査報告】