(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】二相発熱急冷
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6569 20140101AFI20220616BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220616BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20220616BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01M10/613
H01M10/651
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560038
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(85)【翻訳文提出日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 US2020028576
(87)【国際公開番号】W WO2020214850
(87)【国際公開日】2020-10-22
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517405976
【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ,アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ ネイビー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ディクソン,マイケル,アール.
(72)【発明者】
【氏名】マックスウェル,ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】カーター,レイチェル
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031HH06
5H031HH08
5H031KK08
(57)【要約】
バッテリセルを冷却する方法は、マイクロノズルからバッテリセルの外表面に移動するのに十分な冷却流体の流れの運動量を保持しながら、エアロゾル化液滴の噴流を生成するのに十分な圧力でマイクロノズルを通して冷却流体を押し流すことによって冷却流体を霧化するステップと、エアロゾル化液滴の噴流の噴霧をバッテリセルの外表面に衝突させるステップと、外表面上の液滴を部分的に蒸発させて外表面からの熱を伝導するステップと、冷却流体を介してバッテリの外表面からの熱を対流させるステップとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高エネルギー密度バッテリセルにおける熱暴走を防止し停止させる方法であって、
マイクロノズルから前記バッテリセルの外表面に移動するのに十分な冷却流体の流れの運動量を保持しながら、エアロゾル化液滴の噴流を生成するのに十分な圧力で前記マイクロノズルを通して前記冷却流体を押し流すことによって前記冷却流体を霧化するステップと、
前記エアロゾル化液滴の前記噴流の噴霧を前記バッテリセルの外表面に衝突させるステップと、
前記外表面上の前記液滴を部分的に蒸発させて、前記外表面から熱を伝導するステップと、
前記冷却流体を介して前記バッテリの前記外表面からの熱を対流させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記マイクロノズルを通る前記流体の膨張によって前記流体を等エントロピー的に冷却するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記霧化するステップは、前記バッテリセルが熱暴走状態にあるかまたは熱暴走に近づいているときに生じるように構成される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記霧化するステップは、前記バッテリセルが前記流体の飽和温度以上であるときに生じるように構成される、請求項1~請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
蒸発を促進するために、前記流体の飽和圧力で前記バッテリセルを気密封止状態に保持するステップをさらに含む、請求項1~請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロノズルは、空間および時間における前記バッテリセルの加熱プロファイル、前記ノズルを通る流量、および前記バッテリ表面上の前記霧化流体の流体力学に基づいて構成された位置、向き、およびプロファイルを有する、請求項1~請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記バッテリセルを収容するバッテリパックの構造体に組み込まれた流体ネットワークを通して流体を送るステップをさらに含む、請求項1~請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記流体ネットワークは、複合構造体における流体チャネルの内部ネットワークを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記霧化は、熱暴走が防止された後、かつ完全な急冷が達成される前に終了するように構成される、請求項1~請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記霧化は、前記バッテリセルを反復的に冷却するために、連続的にパルスオンおよびパルスオフするように構成される、請求項1~請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記流体はR134aである、請求項1~請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロノズルは、約0.013インチ(約0.33mm)の直径を有する、請求項1~請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記バッテリセルは18650型バッテリであり、前記霧化するステップは、20個の噴霧ノズルを通して霧化することを含む、請求項1~請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記蒸発は、前記バッテリセルが約130℃の温度に達したときに始まる、請求項1~請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記蒸発は、前記バッテリセルが約106℃の温度に達したときに始まる、請求項1~請求項14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記蒸発は、前記バッテリセルが約90℃の温度に達したときに始まる、請求項1~請求項15のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年4月16日に出願された米国仮出願特許第62/834812号の利益を主張するものである。この特許の内容を参照によって本願明細書に組み込むものとする。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記述
米国政府は、本発明における所有権を有する。ライセンスの問い合わせは、米海軍調査研究所の技術移転機関(Code1004、ワシントンDC20375、USA、+1.202.767.7230;techtran@nrl.navy.mil、NC110845参照)宛てに送ることができる。
【0003】
本発明は、全般的に、バッテリ冷却に関し、より詳細には、二相流体急冷を使用するバッテリ冷却に関する。
【背景技術】
【0004】
高エネルギー密度バッテリは、その先行技術と比較して単位体積および単位質量当たりのエネルギー貯蔵量が著しく多いので、エネルギー貯蔵の最先端にある。高効率構造に充填されるエネルギー量の増加に伴って、これらのバッテリの揮発性は安全性のリスク要因となっている。不適切な充電ならびに放電、製造欠陥、および不十分な機械的もしくは熱的設計により、これらの高エネルギー密度バッテリセルが「熱暴走」状態、すなわち、過剰な熱が反応を促進して熱を指数関数的に発生させ、激しいエネルギー放出をもたらす自己強化熱化学加熱サイクルに達し得る。極端な場合では、これは爆発を引き起こした。バッテリパックが熱暴走し、近接した物体を破壊した、いくつかの事例が発生している。熱暴走は、家庭用機器から航空機まで商業市場において高エネルギー密度バッテリが標準装備となっているので、過去数年にわたっていくつかの重大な故障の原因であった。
【0005】
熱暴走を管理するための現況の技術は、以下の方法のうちの1つまたは複数である。
(1)バッテリパック内の隣接セルが100℃(熱暴走が伝播しない)を超えることを防止するための固液相変化材料(PCM)の使用。このことにより、熱暴走中のセルは、隣接するセル内で熱暴走を開始することなく、自己燃焼することができる。これは隣接セルへの熱誘起故障の伝播を防止するが、バッテリパックへのPCMの体積および質量の相当な追加を必要とする。
(2)セル間の空間および材料を増して、周囲セルの温度を低下させる。このことにより、熱暴走中のセルは、隣接セルに伝播することなく、自己燃焼することができる。この方法は隣接セルへの熱誘起故障の伝播を防止するが、バッテリパックへのケーシングの体積および質量の相当な追加を必要とする。
(3)液体冷却ループ。この技術は、循環流体システム、ポンプ、および電力を必要とする。冷却システムを動作させるのに必要な電力は、バッテリパック全体の効率を低下させる。このシステムは、かなりのサイズ、重量、および複雑さを伴う。
(4)バッテリに接触するチャネルを通して極低温流体を流す。これは、循環流体の維持およびそのシステムに関連するコストを必要とする。また、動作するために電力を必要とし、バッテリパック全体の効率を低下させる。最後に、低温作動流体も必要であり、これは比較的大型のバックエンド熱冷却装置/冷凍システムを必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
隣接セルへの熱誘起損傷の伝播を停止させるのに有効であるが、上述の方法には重大な欠点がある。高エネルギー密度バッテリは、それらがコンパクトなサイズおよび低重量であるために望ましいが、これらの方法は、質量、体積、電力の要件を相当に増やし、場合によっては能動的制御を追加するものである。バッテリパック設計における現況の技術は、隣接セルへの熱暴走の伝播を最小限に抑えるための技術である。現在、バッテリパックのシステム全体のアーキテクチャ、重量、および体積に相当な影響を及ぼすことなく、既に進行中のセルの熱暴走を停止させる技術は存在しない。
【0007】
したがって、二相熱伝達流体の外部霧化噴流の噴霧衝突によってセルを能動的または受動的に冷却することによって、高エネルギー密度バッテリセルの熱暴走を防止するための方法およびシステムが提示される。熱伝達流体は、噴霧衝突前に低温への等エントロピー膨張のために任意選択的に予圧され得る、または最大蒸発効率を可能にするために飽和条件下で任意選択的に貯蔵および噴霧され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、高エネルギー密度バッテリセルにおける熱暴走を防止し停止させる方法は、マイクロノズルからバッテリセルの外表面に移動するのに十分な冷却流体の流れの運動量を保持しながら、エアロゾル化液滴の噴流を生成するのに十分な圧力でマイクロノズルを通して冷却流体を押し流すことによって冷却流体を霧化するステップと、エアロゾル化液滴の噴流の噴霧をバッテリセルの外表面に衝突させるステップと、外表面上の液滴を部分的に蒸発させて外表面からの熱を伝導するステップと、冷却流体を介してバッテリの外表面からの熱を対流させるステップと、を含む。
【0009】
任意選択で、該方法は、マイクロノズルを通る流体の膨張によって流体を等エントロピー的に冷却するステップを含む。
【0010】
任意選択で、霧化するステップは、バッテリセルが熱暴走状態にあるかまたは熱暴走に近づいているときに生じるように構成される。
【0011】
任意選択で、霧化するステップは、バッテリセルが流体の飽和温度以上であるときに生じるように構成される。
【0012】
任意選択で、該方法は、蒸発を促進するために、流体の飽和圧力でバッテリセルを気密封止状態に保持するステップを含む。
【0013】
任意選択で、マイクロノズルは、空間および時間におけるバッテリセルの加熱プロファイル、ノズルを通る流量、およびバッテリ表面上の霧化流体の流体力学に基づいて構成された位置、向き、およびプロファイルを有する。
【0014】
任意選択で、該方法は、バッテリセルを収容するバッテリパックの構造体に組み込まれた流体ネットワークを通して流体を送るステップを含む。
【0015】
任意選択で、流体ネットワークは、複合構造体における流体チャネルの内部ネットワークを含む。
【0016】
任意選択で、霧化は、熱暴走が防止された後、かつ完全な急冷が達成される前に終了するように構成される。
【0017】
任意選択で、霧化は、バッテリセルを反復的に冷却するために、連続的にパルスオンおよびパルスオフするように構成される。
【0018】
任意選択で、流体はR134aである。
【0019】
任意選択で、マイクロノズルは約0.013インチ(約0.33mm)の直径を有する。
【0020】
任意選択で、バッテリセルは18650型バッテリであり、霧化するステップは、20個の噴霧ノズルを通して霧化することを含む。
【0021】
任意選択で、蒸発は、バッテリセルが約130℃の温度に達したときに始まる。
【0022】
任意選択で、蒸発は、バッテリセルが約106℃の温度に達したときに始まる。
【0023】
任意選択で、蒸発は、バッテリセルが約90℃の温度に達したときに始まる。
【0024】
本発明の前述および他の特徴は、添付図面を参照しながら以下により詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】1つのバッテリセル用の例示的な冷却システムの概略図である。
【
図2】例示的な冷却方法の試験中のバッテリ表面温度の例示的な結果を示す図である。
【
図4】通常の熱暴走条件下のバッテリと例示的な方法を用いて冷却されたバッテリとの比較を示す図である。
【
図5】複数のバッテリセルを有する例示的なバッテリパック内の流体通路の例示的な埋め込みネットワークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
二相発熱急冷(TPEQ:Two-Phase Exothermic Quenching)は、冷却流体の蒸発噴流の噴霧衝突によって高エネルギー密度バッテリセルにおける熱暴走を防止し停止させる方法として提案されている。冷却流体は、適度な圧力でマイクロノズルを通して押し流すことによって霧化されて、流れの相当な運動量を保持しながらエアロゾル化液滴の噴流を生成する。作動流体の加圧貯蔵は、任意選択で、ノズルを通る膨張中に流体の等エントロピー冷却を可能にする。霧化された噴流はセルの外面(例えば、円筒面)に衝突し、そこで熱伝達が2つの主要なメカニズム、すなわち液滴の部分蒸発と二相流体ジェットの対流とによって促進される。単相対流のみによって達成可能な熱伝達係数は、提案される方法よりも容易に1~2桁小さくなる可能性があり、提案される方法は、単相方法と比較して大幅に改善された熱的能力をもたらす。
【0027】
ノズルが噴霧流体を熱暴走状態にあるか熱暴走に近づいているバッテリセルに向けることにより、小さな液滴がセルの表面に衝突する。セルが選択された流体の飽和温度以上になると、流体は蒸発する。セルは、任意選択で、蒸発を促進するために、作動流体の飽和圧力で気密封止状態に保持される。蒸気の生成は、セルから熱エネルギーを抽出し、セルの急速な冷却をもたらし、熱暴走を食い止める。
【0028】
図1は、システム100がバッテリ110と二相流体130を噴霧するための噴霧ノズル122をそれぞれ有する複数の噴霧器120とを含む例示的な概略設計を示す。各々の噴霧器120には、パイプ、チューブ、または他の流体輸送手段などの導管140によって供給され得る。
【0029】
概念実証設計では、4つの銅管が18650型バッテリの中心軸に平行に延びている。5つの直径0.013インチ(約0.33mm)の孔を等間隔で流体供給管内に機械加工し、合計20個の噴霧ノズルをバッテリの表面に向けた。共通マニホルドを使用して銅管を50psigに保持された水の加圧リザーバに接続した。流体の流れを手動作動用に設定された電気ソレノイド弁によって制御した。
【0030】
熱暴走を誘発するために、バッテリセルおよび噴霧冷却アセンブリを熱量計内に配置した。熱量計は、バッテリの自己加熱(発熱)を感知するまで、環境温度をゆっくりと上昇させた。自己加熱が検出されると、熱量計コントローラは、断熱環境を維持するためにバッテリ上の熱電対の温度を一致させた。
【0031】
試験が開始されると、熱量計はバッテリの加熱を開始した。80℃では、バッテリの自己発熱(発熱)が検出され(dT/dt>開始温度)、熱量計は断熱環境を維持するためにバッテリの温度を一致させた。
【0032】
106℃では、バッテリが熱暴走状態にあり、自己加熱を継続させた場合に温度上昇速度が破壊的故障を引き起こすことが試験指揮者によって確認された。この時点で、TPEQソレノイド弁を約25秒間手動で作動させた。実験中に約1.0Lの水を放出した。バッテリの外側円筒壁上の基準熱電対の温度急冷を以下の
図2に示す。
【0033】
バッテリ表面の温度は約3秒で106.3℃から25.8℃まで低下し、これは120gの水分散に相当する。セルは、最終的に25秒後に20.9℃の温度まで低下した。急冷作用の拡大図が
図3に示されている。
【0034】
この試験の結果は、
図4において同じ試験環境における同様の18650型Liイオンバッテリと比較して示されている。
【0035】
同じ環境における非冷却の参照バッテリは、熱暴走中に603℃のピーク温度に達した。2014年の研究は、約90℃でバッテリ内の固体電解質界面(SEI)が分解し始め、約130℃でバッテリ内のポリエチレン系セパレータが溶融し始めることを示している。したがって、90℃は、この研究において「回復不能な損傷」閾値として定義され、その時点で、バッテリは、許容可能な動作温度まで冷却されても、適切に機能しなくなる。130℃は、熱暴走が完全に起こり始める点である。
図3は、TPEQシステムにより、バッテリが干渉なしに回復不能な損傷の点に達することができ、その時点で、急冷プロセスがバッテリのさらなる加熱を防止し、最終的に熱暴走を回避したことを示している。
【0036】
このPOC試験の最終結果は、周囲空気雰囲気中の水を使用してバッテリを急冷することにより、熱暴走を防止するのに十分な熱エネルギーをバッテリから取り出すことができたということであった。
【0037】
上述の基本設計に対する任意選択の例示的な改良は、以下を含む。
(1)ノズル形状は、流体霧化および高運動量の単相または多相流体噴流の知識に基づいて、より最適に選択され、機械加工され得る。
(2)ノズルの位置、向き、および量は、空間および時間におけるバッテリセルの加熱プロファイル、ノズルを通る流量、およびバッテリ表面上の霧化流体の流体力学に基づいて最適に選択され得る。
(3)流体ネットワークは、例えば、
図5に示されるように、バッテリパックの構造体内に組み込まれ得る。内部高圧流体チャネルを複合構造体に組み込むことができる単純な製造方法は、例えば、システムの重量、コスト、および製造可能性を改善することができる。
(4)総システム重量を低減するために、より少ない作動流体が使用され得る。実験中の冷却の96%はわずか3秒で生じ、その時間の間にシステムは約120gの水を放出した。熱暴走自己加熱反応速度は、温度に指数関数的に依存し、ほんの少量の冷却で暴走を防止することができ、周囲温度までの完全な急冷は必要でないことを示している。さらに、連続的またはパルス状の急冷は、冷却流体とバッテリの外部界面との温度差およびバッテリの内部から外面への熱伝達率を最適化することによって、流体のより効率的な使用につながり得る。
(5)気密封止環境は、蒸発率を高めるために飽和状態の作動流体と共に使用され得る。このことにより、必要とされる作動流体の量が減少する。
(6)異なる作動流体を様々な利点と共に使用することができる。例えば、大気圧では、R134aの飽和温度は約-25℃であり、これは蒸発率を高め、高圧からのその膨張は衝突噴流を予冷する。
【0038】
熱暴走を防止するためにTPEQを使用する主な利点は以下の通りである。
(1)噴霧冷却は、単相対流熱伝達と比較して表面熱伝達を少なくとも一桁高めることができる。
(2)TPEQの実装は、ポンプまたは加圧システムのいずれかを使用することによって能動的および受動的の両方で行われ得る。構成におけるこの多用途性により、この技術は現況の技術よりも多くの異なる環境および用途に適応可能になる。
(3)噴霧冷却は、流体が冷却するために使用される材料と適合する任意の作動流体を使用することができる。
(4)高効率の熱伝達および熱暴走を停止させるのに必要な少量の熱エネルギー除去により、該システムでは、非常に少量の作動流体しか必要でない。
(5)セルの燃焼および爆発が防止され、システムレベルの安全性が向上する。
(6)該システムは、任意選択で、動作するための電力を必要としない。該システムは、調整可能な溶融温度ノズル閉塞または設計バースト点での飽和下の流体リザーバなどの受動作動で構成され得る、またはセル温度監視および作動アルゴリズムに基づいて能動的に制御され得る。
【0039】
本発明を1つまたは複数の特定の実施形態に関して図示し説明してきたが、本明細書および添付の図面を読んで理解すれば、当業者が同等の変更および修正が思い付くことは明らかである。 特に、上述の要素(構成要素、アセンブリ、デバイス、組成物など)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は、別段の指示がない限り、説明した要素の指定された機能を実行する(すなわち、機能的に等価である)任意の要素に対応することが意図されるが、本発明の本明細書に示された1つまたは複数の例示的な実施形態における機能を実行する本開示の構造と構造的に等価ではない。さらに、本発明の特定の特徴は、示されているいくつかの実施形態のうちの1つのみまたは複数に関して上述されているが、そのような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途にとって望ましく、有利であり得るように、他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合わされ得る。
【国際調査報告】