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特表2022-529621キャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するための方法と予測モデルを生成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】キャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するための方法と予測モデルを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3504 20140101AFI20220616BHJP
   G01N 21/03 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/03 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560533
(86)(22)【出願日】2020-02-26
(85)【翻訳文提出日】2021-11-30
(86)【国際出願番号】 CA2020050250
(87)【国際公開番号】W WO2020198843
(87)【国際公開日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】62/828,750
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/740,026
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521441618
【氏名又は名称】ピコモル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ギーシャ・ベイダグヤン
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・クエンティン・パーヴス
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン・ダグラス・グラハム
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ジャスティン・スキーム
(72)【発明者】
【氏名】アンクーン・ピンヨマーク
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB02
2G057AB04
2G057AB06
2G057AC03
2G057BA01
2G057DA03
2G059AA01
2G059BB01
2G059BB12
2G059CC16
2G059DD12
2G059DD16
2G059EE01
2G059EE04
2G059EE09
2G059GG01
2G059GG03
2G059GG04
2G059HH01
2G059JJ13
2G059JJ22
2G059KK02
2G059LL03
2G059MM01
(57)【要約】
キャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析し、また予測モデルを生成するための方法とシステムを開示する。サンプルの少なくとも一部分をリングダウンキャビティ内に投入する。一組の波長のうちの各波長について、レーザビームを発生させてリングダウンキャビティ内に向ける。リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させる。リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを光強度センサシステムで記録する。一組の波長についての光強度減衰データから、サンプルが取り出された被検体が或る生理学的状態又は生理学的状態の程度を有する確率を、その生理学的状態の有無又は生理学的状態の程度が特定済みの事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するための方法であって、
リングダウンキャビティ内にサンプルの少なくとも一部分を投入することと、
一組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
少なくとも一つのプロセッサを用いて、前記一組の波長についての光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が生理学的状態又は生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みである事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することと、を備える方法。
【請求項2】
前記決定することが、前記光強度減衰データのデータセットに少なくとも部分的に基づく予測モデルを使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生理学的状態が肺がんである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルと前記事前分析サンプルが呼気サンプルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記一組の波長が第一組の波長であり、前記サンプルが熱脱着管から投入され、前記サンプルの少なくとも一部分が、前記リングダウンキャビティに投入するために第一脱着温度に加熱された前記熱脱着管から脱着したサンプルの第一部分であり、
第二脱着温度に加熱された前記熱脱着管から脱着した前記サンプルの第二部分を投入することと、
第二組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、を更に備える請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第二組の波長が前記第一組の波長に等しい、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルの第二部分の光強度減衰データを前記第一組の波長のうちの各波長について前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと組み合わせることを更に備える請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記決定することが、前記事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも部分的に用いて学習させた予測モデルを用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
制御モジュールが所望のレベルの光強度減衰データが収集されたと決定するまで、前記発生させることと前記消失させることと前記記録することが行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
キャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するためのシステムであって、
リングダウンキャビティと、
一組の波長のうちの各波長においてレーザビームを発生させ、前記リングダウンキャビティ内に前記レーザビームを向けるように動作する少なくとも一つのレーザと、
分析のためにサンプルの少なくとも一部分を前記リングダウンキャビティ内に投入し、前記サンプルの少なくとも一部分を前記リングダウンキャビティから取り出すためのサンプル投入システムと、
前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録するように位置する光強度センサシステムと、
前記サンプル投入システムと前記少なくとも一つのレーザと前記光強度センサシステムに結合されて動作する少なくとも一つのプロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶しているストレージと、を備え、該コンピュータ可読命令は前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、
前記サンプルの少なくとも一部分を前記リングダウンキャビティ内に投入するように前記サンプル投入システムを制御することと、
前記一組の波長のうちの各波長において、前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように前記少なくとも一つのレーザを作動させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
前記一組の波長についての光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が生理学的状態又は生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みである事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することと、を前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる、システム。
【請求項11】
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記光強度減衰データのデータセットに少なくとも部分的に基づく予測モデルを用いて前記確率を決定する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記生理学的状態が肺がんである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記サンプルと前記事前分析サンプルが呼気サンプルである、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記一組の波長が第一組の波長であり、前記サンプルが熱脱着管に入れられ、前記サンプルの少なくとも一部分が前記サンプルの第一部分であり、前記少なくとも一つのプロセッサが、前記熱脱着管を第一脱着温度に加熱することによって前記サンプルの第一部分を脱着させて前記サンプルの第一部分を前記リングダウンキャビティ内に投入するように前記サンプル投入システムを制御し、前記少なくとも一つのプロセッサが、前記サンプルの第一部分を前記リングダウンキャビティから取り出した後に、前記熱脱着管を第二脱着温度に加熱することによって前記サンプルの第二部分を脱着させて前記サンプルの第二部分を前記リングダウンキャビティ内に投入するように前記サンプル投入システムを制御し、
前記少なくとも一つのプロセッサが、第二組の波長のうちの各波長について、前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように前記少なくとも一つのレーザを作動させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行う、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第二組の波長が前記第一組の波長に等しい、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データを前記第一組の波長のうちの各波長について前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと組み合わせる、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記少なくとも一つのプロセッサが、前記事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも部分的に用いて学習させた予測モデルを用いて光強度減衰データから確率を決定する、請求項10に記載のシステム。
【請求項18】
前記少なくとも一つのプロセッサが所望のレベルの光強度減衰データが収集されたと決定するまで、前記少なくとも一つのプロセッサが前記作動させることと前記消失させることと前記記録することを繰り返す、請求項10に記載のシステム。
【請求項19】
キャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するための方法であって、
熱脱着管を第一脱着温度に加熱して該熱脱着管に含まれているサンプルの第一部分を脱着させることと、
前記サンプルの第一部分をリングダウンキャビティ内に投入することと、
第一組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
前記リングダウンキャビティから前記サンプルの第一部分を取り出すことと、
前記熱脱着管を第二脱着温度に加熱して該熱脱着管に含まれているサンプルの第二部分を脱着させることと、
前記サンプルの第二部分を前記リングダウンキャビティ内に投入することと、
第二組の波長のうちの各波長について、前記少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
前記第一脱着温度での脱着の光強度減衰データと前記第二脱着温度での脱着の光強度減衰データを分析することと、を備える方法。
【請求項20】
前記第一組の波長が前記第二組の波長に等しい、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記サンプルの第二部分の光強度減衰データを前記第一組の波長のうちの各波長について前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと組み合わせることを更に備える請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第二脱着温度が前記第一脱着温度よりも高い、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記第一脱着温度が前記第二脱着温度に等しい、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記分析することが、前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと前記サンプルの第二部分の光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が生理学的状態又は生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みである事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記決定することが、前記事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも部分的に用いて学習させた予測モデルを用いて行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
キャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するためのシステムであって、
リングダウンキャビティと、
前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように動作する少なくとも一つのレーザと、
分析のため前記リングダウンキャビティ内にサンプルの少なくとも一部分を投入し、前記リングダウンキャビティから前記サンプルの少なくとも一部分を取り出すためのサンプル投入システムであって、前記サンプルを含む熱脱着管を加熱するように構成された加熱器を含むサンプル投入システムと、
前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録するように位置する光強度センサシステムと、
前記サンプル投入システムと前記少なくとも一つのレーザと前記光強度センサシステムに結合されて動作する少なくとも一つのプロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶しているストレージと、を備え、該コンピュータ可読命令は前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、
前記熱脱着管を第一脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第一部分を脱着させて、前記リングダウンキャビティ内に前記サンプルの第一部分を投入するように前記サンプル投入システムを制御することと、
第一組の波長のうちの各波長について、前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させるように前記少なくとも一つのレーザを作動させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
前記サンプルの第一部分を前記リングダウンキャビティから取り出すことと、
前記熱脱着管を第二脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第二部分を脱着させて、前記リングダウンキャビティ内に前記サンプルの第二部分を投入するように前記サンプル投入システムを制御することと、
第二組の波長のうちの各波長について、前記リングダウンキャビティに向けられる該波長のレーザビームを発生させるように前記少なくとも一つのプロセッサを作動させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
前記第一脱着温度での脱着の光強度減衰データと前記第二脱着温度での脱着の光強度減衰データを分析することと、を前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる、システム。
【請求項27】
前記第一組の波長が前記第二組の波長に等しい、請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記コンピュータ可読命令は、前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データを前記第一組の波長のうちの各波長について前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと組わせることを前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記第二脱着温度が前記第一脱着温度よりも高い、請求項26に記載のシステム。
【請求項30】
前記第一脱着温度が前記第二脱着温度に等しい、請求項26に記載のシステム。
【請求項31】
前記コンピュータ可読命令は、前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと前記サンプルの第二部分の光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が生理学的状態又は生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みの事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することを前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる、請求項26に記載のシステム。
【請求項32】
前記決定することが、前記事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも部分的に用いて学習させた予測モデルを用いて行われる、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
キャビティリングダウン分光法分析用の予測モデルを生成するための方法であって、
生理学的状態又は生理学的状態の程度を有するとして特定されていて少なくとも二つの熱脱着管に各々貯蔵されている複数のサンプルのうちの各サンプルに対して、少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの各脱着温度順序列について、
該サンプルを含む少なくとも二つの熱脱着管のうち以前に選択されていない熱脱着管を選択することと、
該脱着温度順序列中の各脱着温度について順に、
前記少なくとも二つの熱脱着管のうち以前に選択されていない熱脱着管を該脱着温度に加熱して該熱脱着管に含まれている該サンプルの一部分を脱着させることと、
リングダウンキャビティ内に該サンプルの一部分を投入することと、
一組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、該サンプルの一部分の該波長での光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
前記リングダウンキャビティから該サンプルの一部分を取り出すことと、
前記少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちのどの脱着温度順序列について、前記光強度減衰データが、前記複数のサンプルで特定済みの前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度とより大きな相関を有しているのかを特定することと、備える方法。
【請求項34】
前記少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの少なくとも一つの脱着温度順序列の各脱着温度がそれぞれ該少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの少なくとも一つの脱着温度順序列の一つ前の脱着温度よりも高い、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
キャビティリングダウン分光法分析用の予測モデルを生成するためのシステムであって、
リングダウンキャビティと、
前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように動作する少なくとも一つのレーザと、
分析のため前記リングダウンキャビティ内にサンプルの少なくとも一部分を投入し、前記リングダウンキャビティから前記サンプルの少なくとも一部分を取り出すためのサンプル投入システムであって、前記サンプルを含む熱脱着管を加熱するように構成された加熱器を含むサンプル投入システムと、
前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録するように位置する光強度センサシステムと、
前記サンプル投入システムと前記少なくとも一つのレーザと前記光強度センサシステムに結合されて動作する少なくとも一つのプロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶しているストレージと、を備え、該コンピュータ可読命令は前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、
生理学的状態又は生理学的状態の程度を有するとして特定されていて少なくとも二つの熱脱着管に各々貯蔵されている複数のサンプルのうちの各サンプルに対して、少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの各脱着温度順序列について、
該サンプルを含む少なくとも二つの熱脱着管のうち以前に選択されていない熱脱着管を選択することと、
該脱着温度順序列中の各脱着温度について順に、
前記少なくとも二つの熱脱着管のうち以前に選択されていない熱脱着管を該脱着温度に加熱して該熱脱着管に含まれている該サンプルの一部分を脱着させることと、
前記リングダウンキャビティ内に該サンプルの一部分を投入することと、
一組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、該サンプルの一部分の該波長での光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
前記リングダウンキャビティから該サンプルの一部分を取り出すことと
前記少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちのどの脱着温度順序列について、前記光強度減衰データが、前記複数のサンプルで特定済みの前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度とより大きな相関を有しているのかを特定することと、を前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる、システム。
【請求項36】
前記少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの少なくとも一つの脱着温度順序列の各脱着温度がそれぞれ該少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの少なくとも一つの脱着温度順序列の一つ前の脱着温度よりも高い、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
キャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するための方法であって、
熱脱着管を第一脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第一部分を脱着させることと、
前記サンプルの第一部分に対してキャビティリングダウン分光法を行わずに該サンプルの第一部分を放出することと、
前記熱脱着管を前記第一脱着温度と異なる第二脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第二部分を脱着させることと、
前記サンプルの第二部分をリングダウンキャビティ内に投入することと、
第二組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
前記光強度減衰データを分析することと、を備える方法。
【請求項38】
前記分析することが、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が生理学的状態又は生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みの事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
キャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するためのシステムであって、
リングダウンキャビティと、
前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように動作する少なくとも一つのレーザと、
分析のため前記リングダウンキャビティ内にサンプルの少なくとも一部分を投入し、前記リングダウンキャビティから前記サンプルの少なくとも一部分を取り出すためのサンプル投入システムであって、前記サンプルを含む熱脱着管を加熱するように構成された加熱器を含むサンプル投入システムと、
前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録するように位置する光強度センサシステムと、
前記サンプル投入システムと前記少なくとも一つのレーザと前記光強度センサシステムに結合されて動作する少なくとも一つのプロセッサと、
コンピュータ可読命令を記憶しているストレージと、を備え、該コンピュータ可読命令は前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、
熱脱着管を第一脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第一部分を脱着させることと、
前記サンプルの第一部分に対してキャビティリングダウン分光法を行わずに該サンプルの第一部分を放出することと、
前記熱脱着管を前記第一脱着温度と異なる第二脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第二部分を脱着させることと、
前記サンプルの第二部分を前記リングダウンキャビティ内に投入することと、
第二組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、
前記光強度減衰データを分析することと、を前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる、システム。
【請求項40】
前記コンピュータ可読命令は、前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が生理学的状態又は生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みの事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することを前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる、請求項39に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年4月3日出願の米国仮出願第62/828750号の優先権を主張し、その全内容は参照として本願に組み込まれる。
【0002】
本願は概して分光法に係り、特にキャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するための方法と予測モデルを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
特定の生理学的状態の診断は困難なものとなり得る。そうした生理学的状態の一つが肺がんであり、肺がんはがんの中でも有病率が高く致命的なものである。肺がんが初期の局所的な段階において発見される場合には予後が改善され得るが、大抵の場合は、がんが既に広がり始めた後に診断される。肺がんの生存率は、局所的な場合から他の領域に広がっていくにつれて、顕著に低下する。そのため、肺がんの早期検出は極めて重要なものである。
【0004】
現状では、低線量コンピュータトモグラフィ(LDCT,low‐dose computer tomography)が、肺がんを検査するのに推奨されている。しかしながら、この手法には高い偽陽性率が付きまとい、多くの患者が不必要な追跡評価を受けている。その技術に付随する高い費用と患者の放射線曝露に加えて、LDCTの低い特異度は高い偽陽性率に繋がり得るので、その技術に付随する高い費用と患者の放射線曝露に加えて、その感度の悪さがLDCTを魅力に欠けた解決策としている。
【0005】
肺がん検出用の呼気バイオマーカに関する夥しい数の最近の研究が、この代わりのスクリーニング法の有望性を示している。数千種の揮発性有機化合物(VOC,volatile organic compound)が人間の呼気中で特定されていて、その濃度は100万分の1体積分率(ppmv,parts per million by volume)から1兆分の1体積分率(pptv,parts per trillion by volume)に及んでいる。がん細胞が、血流を介して肺に伝わり呼気として体から排出される体内の或る一組のVOCの生成に影響を与えるという報告がある一方で、その特定の組のVOCが何であるかについては強い合意が得られていない。
【0006】
呼気中のVOC検出用に最も広く使用されている方法は質量分析法(MS,mass spectroscopy)であり、一般的にはガスクロマトグラフィ(GC,gas chromatography)と組み合わせられる(「GC‐MS」)。GC‐MSは、化合物検出における高い選択性及び感度並びに化合物特定(同定)における高い精度のために人気がある。二種の化合物が質量分析計とガスクロマトグラフの両方において同様に振る舞う傾向は低く、確実性が重要である場合にGC‐MSは信頼性のある選択肢となる。肺がん呼気バイオマーカを分析するためのGC‐MSの最初の使用は1985年におけるものである。その後いくつかの研究が続き、数十種の有力なバイオマーカがまとめて特定されている。この方法の進展にもかかわらず、GC‐MSは、高価で時間がかかり、サンプル収集に複雑な手順を有するので、広範な臨床用として現実的でなく、研究用の応用に限定されている。
【0007】
呼気分析に現れた他の技術は電子鼻(Eノーズ,electronic nose)であり、ガス検知センサのアレイを用いて、異なる複数の組のVOCを検出する。このVOC検出方法は、比較的低コスト、小型、速度、「オンライン」応用での使用可能性といったGC‐MSに対する利点を幾つか有する。オンライン呼気分析は、サンプル貯蔵の必要性を無くし、臨床医により素早くフィードバックを与える可能性を有する。しかしながら、Eノーズは理想的なものから程遠い。Eノーズは、頻繁な較正を要し、湿度と温度の変化に敏感であり、ドリフト効果とメモリ効果を受ける。また、Eノーズは、高感度、高選択性、個別の化合物を特定(同定)する性能といったGC‐MSを魅力的にしている特徴を欠く傾向にある。
【0008】
キャビティリングダウン分光法(cavity ring‐down spectroscopy,CRDS)は、ガス状サンプル内の単一の検体をその吸収スペクトルを用いて分析するのに一般的に用いられる手法である。典型的なCRDSシステムは、二つの高反射ミラーを有するチャンバのキャビティ内に向けられるビームを生成するレーザを用いる。ビームは通常は可視光スペクトル又は近赤外(near infrared,NIR)スペクトル内に通常はあり、単一の波長に同調される。そして、ビームはミラー同士の間で繰り返し反射されて、光の一部がリングダウンキャビティから出射するようにする。
【0009】
リングダウンキャビティを「充満」させるためには、キャビティの長さがレーザ波長に同調していなければならない。これは、一般的には、二つのミラーのうちの一方の位置を調節することによって行われる。レーザがキャビティモードで共振状態にあると、強め合う(建設的)干渉によりキャビティ内で強度が上がる。キャビティ内に入る光が消失して、空になると、リングダウンキャビティ内の光の強度が所定の割合で減衰する。僅かな光がミラーによって反射されずリングダウンキャビティから出射する。出射光の強度をセンサ部によって測定して、減衰率を決定する。
【0010】
サンプルがリングダウンキャビティ内に入れられると、サンプル内に存在する検体(例えば、揮発性有機化合物)が光の一部を吸収することによって、リングダウンキャビティ内の光の強度の減衰を加速する。特定の波長におけるサンプルの存在下における光の減衰時間を、その波長におけるサンプルの不存在下における光の減衰時間に対して測定することによって、吸収スペクトルが得られる。サンプル中の個別の検体の特定(同定)及び定量化は、幾つかの方法で達成可能であり、例えば、多様な検体の既知の吸収スペクトルを用いたガス状サンプルの測定吸収スペクトルの線形回帰で行われる。
【0011】
個々の検体は容易に特定可能であるが、肺がんの場合のように特定の生理学的状態の有無を正しく検出するのために使用可能な具体的な検体は、不明なものとなり得る。呼気サンプルは非侵襲的に患者から収集されCRDSで分析可能であるが、肺がんの有無の証拠となる呼気中の検体について広く受け入れられている合意は無く、呼気サンプルは、単一種の検体の検出を困難にし得る多数の交絡成分を含むものであるので、別の手法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様において提供されるキャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するための方法は、リングダウンキャビティ内にサンプルの少なくとも一部分を投入することと、一組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、少なくとも一つのプロセッサを用いて、前記一組の波長についての光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が或る生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みである事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することと、を備える。
【0013】
前記決定することは、前記光強度減衰データのデータセットに少なくとも部分的に基づく予測モデルを使用することを含み得る。
【0014】
前記生理学的状態は肺がんであり得る。
【0015】
前記サンプルと前記事前分析サンプルは呼気サンプルであり得る。
【0016】
前記一組の波長は第一組の波長であり得て、前記サンプルは熱脱着管から投入され得て、前記サンプルの少なくとも一部分は、前記リングダウンキャビティに投入するために第一脱着温度に加熱された前記熱脱着管から脱着したサンプルの第一部分であり得て、本方法は、第二脱着温度に加熱された前記熱脱着管から脱着した前記サンプルの第二部分を投入することと、第二組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、を更に備え得る。
【0017】
前記第二組の波長は前記第一組の波長に等しくなり得る。
【0018】
本方法は、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データを前記第一組の波長のうちの各波長について前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと組み合わせることを更に含み得る。
【0019】
前記決定することは、前記事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも部分的に用いて学習させた予測モデルを用いて行われ得る。
【0020】
制御モジュール所望のレベルの光強度減衰データが収集されたと決定するまで、前記発生させることと前記消失させることと前記記録することが行われ得る。
【0021】
他の態様において提供されるキャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するためのシステムは、リングダウンキャビティと、一組の波長のうちの各波長においてレーザビームを発生させ、前記リングダウンキャビティ内に前記レーザビームを向けるように動作する少なくとも一つのレーザと、分析のためにサンプルの少なくとも一部分を前記リングダウンキャビティ内に投入し、前記サンプルの少なくとも一部分を前記リングダウンキャビティから取り出すためのサンプル投入システムと、前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録するように位置する光強度センサシステムと、前記サンプル投入システムと前記少なくとも一つのレーザと前記光強度センサシステムに結合されて動作する少なくとも一つのプロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶しているストレージと、を備え、該コンピュータ可読命令は前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、前記サンプルの少なくとも一部分を前記リングダウンキャビティ内に投入するように前記サンプル投入システムを制御することと、前記一組の波長のうちの各波長において、前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように前記少なくとも一つのレーザを作動させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、前記一組の波長についての光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が或る生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みである事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することと、を前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる。
【0022】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記光強度減衰データのデータセットに少なくとも部分的に基づく予測モデルを用いて前記確率を決定し得る。
【0023】
前記生理学的状態は肺がんであり得る。
【0024】
前記サンプルと前記事前分析サンプルは呼気サンプルであり得る。
【0025】
前記一組の波長は第一組の波長であり得て、前記サンプルは熱脱着管に入れられ得て、前記サンプルの少なくとも一部分は前記サンプルの第一部分であり得て、前記少なくとも一つのプロセッサは、前記熱脱着管を第一脱着温度に加熱することによって前記サンプルの第一部分を脱着させて前記サンプルの第一部分を前記リングダウンキャビティ内に投入するように前記サンプル投入システムを制御し得て、前記少なくとも一つのプロセッサは、前記サンプルの第一部分を前記リングダウンキャビティから取り出した後に、前記熱脱着管を第二脱着温度に加熱することによって前記サンプルの第二部分を脱着させて前記サンプルの第二部分を前記リングダウンキャビティ内に投入するように前記サンプル投入システムを制御し得て、前記少なくとも一つのプロセッサは、第二組の波長のうちの各波長について、前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように前記少なくとも一つのレーザを作動させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行い得る。
【0026】
前記第二組の波長は前記第一組の波長に等しくなり得る。
【0027】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データを前記第一組の波長のうちの各波長について前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと組み合わせ得る。
【0028】
前記少なくとも一つのプロセッサは、前記事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも部分的に用いて学習させた予測モデルを用いて光強度減衰データから確率を決定し得る。
【0029】
前記少なくとも一つのプロセッサが所望のレベルの光強度減衰データが収集されたと決定するまで、前記少なくとも一つのプロセッサは前記作動させることと前記消失させることと前記記録することを繰り返し得る。
【0030】
更なる態様で提供されるキャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するための方法は、熱脱着管を第一脱着温度に加熱して該熱脱着管に含まれているサンプルの第一部分を脱着させることと、前記サンプルの第一部分をリングダウンキャビティ内に投入することと、第一組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、前記リングダウンキャビティから前記サンプルの第一部分を取り出すことと、前記熱脱着管を第二脱着温度に加熱して該熱脱着管に含まれているサンプルの第二部分を脱着させることと、前記サンプルの第二部分を前記リングダウンキャビティ内に投入することと、第二組の波長のうちの各波長について、前記少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、前記第一脱着温度での脱着の光強度減衰データと前記第二脱着温度での脱着の光強度減衰データを分析することと、を備える。
【0031】
前記第一組の波長は前記第二組の波長に等しくなり得る。
【0032】
本方法は、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データを前記第一組の波長のうちの各波長について前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと組み合わせることを更に含み得る。
【0033】
前記第二脱着温度は前記第一脱着温度よりも高くなり得る。
【0034】
前記第一脱着温度は前記第二脱着温度に等しくなり得る。
【0035】
前記分析することは、前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと前記サンプルの第二部分の光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が生理学的状態又は生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みである事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することを含み得る。
【0036】
前記決定することは、前記事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも部分的に用いて学習させた予測モデルを用いて行われ得る。
【0037】
更に他の態様において提供されるキャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するためのシステムは、リングダウンキャビティと、前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように動作する少なくとも一つのレーザと、分析のため前記リングダウンキャビティ内にサンプルの少なくとも一部分を投入し、前記リングダウンキャビティから前記サンプルの少なくとも一部分を取り出すためのサンプル投入システムであって、前記サンプルを含む熱脱着管を加熱するように構成された加熱器を含むサンプル投入システムと、前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録するように位置する光強度センサシステムと、前記サンプル投入システムと前記少なくとも一つのレーザと前記光強度センサシステムに結合されて動作する少なくとも一つのプロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶しているストレージと、を備え、該コンピュータ可読命令は前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、前記熱脱着管を第一脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第一部分を脱着させて、前記リングダウンキャビティ内に前記サンプルの第一部分を投入するように前記サンプル投入システムを制御することと、第一組の波長のうちの各波長について、前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させるように前記少なくとも一つのレーザを作動させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、前記サンプルの第一部分を前記リングダウンキャビティから取り出すことと、前記熱脱着管を第二脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第二部分を脱着させて、前記リングダウンキャビティ内に前記サンプルの第二部分を投入するように前記サンプル投入システムを制御することと、第二組の波長のうちの各波長について、前記リングダウンキャビティに向けられる該波長のレーザビームを発生させるように前記少なくとも一つのプロセッサを作動させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、前記光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、前記第一脱着温度での脱着の光強度減衰データと前記第二脱着温度での脱着の光強度減衰データを分析することと、を前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる。
【0038】
前記第一組の波長は前記第二組の波長に等しくなり得る。
【0039】
コンピュータ実行可能命令は、前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データを前記第一組の波長のうちの各波長について前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと組わせることを前記少なくとも一つのプロセッサに行わせ得る。
【0040】
前記第二脱着温度は前記第一脱着温度よりも高くなり得る。
【0041】
前記第一脱着温度は前記第二脱着温度に等しくなり得る。
【0042】
コンピュータ実行可能命令は、前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、前記サンプルの第一部分の光強度減衰データと前記サンプルの第二部分の光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が生理学的状態又は生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みの事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することを前記少なくとも一つのプロセッサに行わせ得る。
【0043】
前記決定することは、前記事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも部分的に用いて学習させた予測モデルを用いて行われ得る。
【0044】
更に他の別の態様において提供されるキャビティリングダウン分光法分析用の予測モデルを生成するための方法は、或る生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有するとして特定されていて少なくとも二つの熱脱着管に各々貯蔵されている複数のサンプルのうちの各サンプルに対して、少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの各脱着温度順序列について、該サンプルを含む少なくとも二つの熱脱着管のうち以前に選択されていない熱脱着管を選択することと、該脱着温度順序列中の各脱着温度について順に、前記少なくとも二つの熱脱着管のうち以前に選択されていない熱脱着管を該脱着温度に加熱して該熱脱着管に含まれている該サンプルの一部分を脱着させることと、リングダウンキャビティ内に該サンプルの一部分を投入することと、一組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、該サンプルの一部分の該波長での光強度減衰データを記録すること、を行うことと、前記リングダウンキャビティから該サンプルの一部分を取り出すことと、前記少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちのどの脱着温度順序列について、前記光強度減衰データが、前記複数のサンプルで特定済みの前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度とより大きな相関を有しているのかを特定することと、備える。
【0045】
前記少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの少なくとも一つの脱着温度順序列の各脱着温度は、それぞれ該少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの少なくとも一つの脱着温度順序列の一つ前の脱着温度よりも高くなり得る。
【0046】
他の態様において提供されるキャビティリングダウン分光法分析用の予測モデルを生成するためのシステムは、リングダウンキャビティと、前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように動作する少なくとも一つのレーザと、分析のため前記リングダウンキャビティ内にサンプルの少なくとも一部分を投入し、前記リングダウンキャビティから前記サンプルの少なくとも一部分を取り出すためのサンプル投入システムであって、前記サンプルを含む熱脱着管を加熱するように構成された加熱器を含むサンプル投入システムと、前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録するように位置する光強度センサシステムと、前記サンプル投入システムと前記少なくとも一つのレーザと前記光強度センサシステムに結合されて動作する少なくとも一つのプロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶しているストレージと、を備え、該コンピュータ可読命令は前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、或る生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有するとして特定されていて少なくとも二つの熱脱着管に各々貯蔵されている複数のサンプルのうちの各サンプルに対して、少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの各脱着温度順序列について、該サンプルを含む少なくとも二つの熱脱着管のうち以前に選択されていない熱脱着管を選択することと、該脱着温度順序列中の各脱着温度について順に、前記少なくとも二つの熱脱着管のうち以前に選択されていない熱脱着管を該脱着温度に加熱して該熱脱着管に含まれている該サンプルの一部分を脱着させることと、前記リングダウンキャビティ内に該サンプルの一部分を投入することと、一組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、該サンプルの一部分の該波長での光強度減衰データを記録すること、を行うことと、前記リングダウンキャビティから該サンプルの一部分を取り出すことと前記少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちのどの脱着温度順序列について、前記光強度減衰データが、前記複数のサンプルで特定済みの前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度とより大きな相関を有しているのかを特定することと、を前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる。
【0047】
前記少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの少なくとも一つの脱着温度順序列の各脱着温度は、それぞれ該少なくとも二つの相互に固有の脱着温度順序列のうちの少なくとも一つの脱着温度順序列の一つ前の脱着温度よりも高くなり得る。
【0048】
更なる態様において提供されるキャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するための方法は、熱脱着管を第一脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第一部分を脱着させることと、前記サンプルの第一部分に対してキャビティリングダウン分光法を行わずに該サンプルの第一部分を放出することと、前記熱脱着管を前記第一脱着温度と異なる第二脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第二部分を脱着させることと、前記サンプルの第二部分をリングダウンキャビティ内に投入することと、第二組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、前記光強度減衰データを分析することと、を備える。
【0049】
前記分析することは、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が或る生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みの事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することを含み得る。
【0050】
更なる態様において提供されるキャビティリングダウン分光法を用いてサンプルを分析するためのシステムは、リングダウンキャビティと、前記リングダウンキャビティ内に向けられるレーザビームを発生させるように動作する少なくとも一つのレーザと、分析のため前記リングダウンキャビティ内にサンプルの少なくとも一部分を投入し、前記リングダウンキャビティから前記サンプルの少なくとも一部分を取り出すためのサンプル投入システムであって、前記サンプルを含む熱脱着管を加熱するように構成された加熱器を含むサンプル投入システムと、前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録するように位置する光強度センサシステムと、前記サンプル投入システムと前記少なくとも一つのレーザと前記光強度センサシステムに結合されて動作する少なくとも一つのプロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶しているストレージと、を備え、該コンピュータ可読命令は前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、熱脱着管を第一脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第一部分を脱着させることと、前記サンプルの第一部分に対してキャビティリングダウン分光法を行わずに該サンプルの第一部分を放出することと、前記熱脱着管を前記第一脱着温度と異なる第二脱着温度に加熱して、該熱脱着管に含まれているサンプルの第二部分を脱着させることと、前記サンプルの第二部分を前記リングダウンキャビティ内に投入することと、第二組の波長のうちの各波長について、少なくとも一つのレーザを用いて前記リングダウンキャビティ内に向けられる該波長のレーザビームを発生させること、前記リングダウンキャビティに入射するレーザビームを消失させること、及び、光強度センサシステムを用いて前記リングダウンキャビティから出射する光の光強度減衰データを記録すること、を行うことと、前記光強度減衰データを分析することと、を前記少なくとも一つのプロセッサに行わせる。
【0051】
前記コンピュータ可読命令は、前記少なくとも一つのプロセッサによって実行されると、前記サンプルの第二部分の光強度減衰データから、前記サンプルが取り出された被検体が或る生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有する確率を、前記生理学的状態の有無又は前記生理学的状態の程度が特定済みの事前分析サンプルの光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、決定することを前記少なくとも一つのプロセッサに行わせ得る。
【0052】
他の技術的利点は、以下の図面と説明を読むことで当業者に明らかとなり得る。
【0053】
本開示の実施形態のより良い理解のため、また、実施形態が如何に実施可能であるのかをより明確に示すために、以下、添付図面を単に例として参照する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】一実施形態に係るCRDSシステムの多様な光学部品と空気圧部品の概略図である。
図2図1のCRDSのリングダウンキャビティ内に呼気サンプルを投入するのに用いられる熱脱着管の断面図である。
図3図1に示されるCRDSシステムの多様な光学部品と空気圧部品を制御するための電気制御システムの概略図である。
図4】一実施形態に係る図1のCRDSシステムを用いてサンプルを分析する一般的方法を示す。
図5】一実施形態に係る図1のCRDSシステムを用いて予測モデルを生成する方法を示す。
図6】他の実施形態に係る図1のCRDSシステムを用いてサンプルの光強度減衰データを分析する方法を示す。
図7図7Aは、他の実施形態に係るCRDS分析システムにおいて計算デバイスがCRDSシステムと通信している様子を示す。図7Bは、図7Aの計算デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
特に断らない限り、図面に示される物体は必ずしも縮尺通りではない。
【0056】
例示を単純明快にするため、適切であれば、対応又は類似の要素を指称するために参照番号を図面にわたって繰り返し得る。また、本開示の実施形態の完全な理解を与えるために多数の具体的な細部が与えられる。しかしながら、こうした具体的な細部を有さずとも本開示の実施形態が実施可能であることは当業者に理解されるものである。場合によっては、本開示の実施形態を曖昧にしないために周知の方法、手順、構成要素の詳細は説明されていない。最初に、例示的な実施形態が図面に示され以下説明されるが、本開示の原理は、現状で知られている又は知られていない多数の手法を用いて実施可能であることを理解されたい。本開示は、図面に示され以下説明される例示的な実施形態と手法に限定されるものではない。
【0057】
本開示全体にわたって使用されている多様な用語は、特に断らない限りは以下のように読まれ理解され得るものである。本願全体において用いられている「又は」は、「及び/又は」と記載されているかの如くに包括的なものである。本願全体において用いられている単数形での記載は複数形の場合を含むものであり、またその逆も同様である。同様に、性別に関する記載はその逆の性別の場合を含ものであって、本願記載の使用、実施、性能は単一の性別に限定されて理解されるものではない。「例示」は、「図示」や「例」と理解されるものであって、必ずしも他の実施形態に対して「好ましい」ものではない。用語に関する更なる定義が本願に与えられ得て、本開示を読むことで理解されるように、こうした用語はその記載の前の場合と後の場合にも当てはまり得る。
【0058】
本開示のシステム、装置、方法には、本開示の範囲を逸脱せずに、変更、追加、省略が行われ得る。例えば、システムや装置の構成要素は統合又は分離され得る。更に、本開示のシステムや装置の動作は、より多い構成要素、より少ない構成要素、又は他の構成要素によって実現可能であり、本開示の方法は、より多いステップ、より少ないステップ、又は別のステップを含み得る。更に、ステップはあらゆる適切な順序で実行可能である。本開示において、「各」は、或る集合(組)のうちの各部を称し、又は或る集合(組)の部分集合のうちの各部を称する。
【0059】
命令を実行するものとして本開示で例示されているあらゆるモジュール、ユニット、サーバ、コンピュータ、端末、エンジン又はデバイスは、記憶媒体、コンピュータ記憶媒体、データ記憶デバイス等のコンピュータ可読媒体(例えば、磁気ディスク、光学ディスク、テープ)を含むか、これらにアクセス可能である。コンピュータ記憶媒体としては、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、他のデータ等の情報の記憶用の方法や技術で実現されている揮発性、不揮発性、取り外し可能、取り外し不能の媒体が挙げられる。コンピュータ記憶媒体の例として、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ、他のメモリ技術、CD‐ROM、DVD(デジタル多用途ディスク)、他の光学ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ、他の磁気ストレージデバイスが挙げられ、又は、所望の情報を記憶するのに使用可能であってアプリケーション、モジュール若しくはこれら両者によってアクセス可能なあらゆる他の媒体が挙げられる。こうしたコンピュータ記憶媒体はデバイスの一部であるか、デバイスにアクセス可能又は接続可能なものである。また、特に断らない限りは、本開示中のプロセッサやコントローラは単一のプロセッサとして実現可能であり、又は複数のプロセッサで実現可能である。複数のプロセッサはアレイ型や分散型となり得て、本開示で言及されているあらゆる処理機能は複数のプロセッサのうち一つによって実行され得るが、単一のプロセッサとしても実現可能である。本開示のあらゆる方法、アプリケーション、モジュールは、こうしたコンピュータ可読媒体に記憶又は保持可能であって一つ以上のプロセッサによって実行可能なコンピュータ可読/実行可能命令を用いて、実行され得る。
【0060】
以下の開示は、CRDSを用いて分析を行う新規手法を与える。光強度減衰データを既知の単一種の検体の光強度減衰データを比較する従来の手法とは異なり、サンプルについて記録された光強度減衰データを、或る生理学的状態又はその生理学的状態の程度(度数)を有するものとして特定されている既に分析済みの一組のサンプルについての光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて、分析する。好ましい実施形態では、これは、一組の学習用データに対する機械学習を用いて生成された予測モデルで行われる。また、熱脱着管からサンプルを徐々に脱着させるプロセスを用いて、サンプルについての追加情報を提供することができる。更には、どの組み合わせの脱着温度及び/又は波長が、複数のサンプルが特定済みである生理学的状態又はその生理学的状態の程度とより大きな相関を有する光強度減衰データを与えるのかを決定する機械学習を用いることによって、予測モデルを改善することができる。
【0061】
生理学的状態は、被検体がなり得るあらゆる種類の状態である。生理学的状態として、疾病、感染症、一つ以上の臓器又は体組織の機能状態等が挙げられる。生理学的状態の程度(度数)としては、重症度、病期(ステージ)(がんステージ等)、成長サイズ、腺分泌量等が挙げられる。生理学的状態の程度は、場合によってはバイナリ(二元)であって、被検体中の生理学的状態の有無を表すものとなり得る。程度(度数)は、離散的なもの、又は連続的なものとなり得る。
【0062】
特定の実施形態に係るサンプルを分析するためのCRDSシステム20の多様な構成要素が図1に示されている。COレーザ24と炭素13(13C)Oレーザ28が設けられる。COレーザ24と炭素13Oレーザ28はガス管レーザであり、調節可能な回折格子装置を用いて急速選択可能な一続きの準均等間隔で周知の周波数において発光する。ガス管レーザ技術は長い歴史を有するものであり、正確に分かっている周波数において赤外線を発生させるための安定でロバストな方法である。COレーザ24と炭素13Oレーザ28は両方とも中赤外スペクトルで発光する。
【0063】
COレーザ24と炭素13Oレーザ28の各々は、レーザキャビティの長さの調節を可能にするためのアクチュエータ及び出力カプラと共に、キャビティ後方における格子の角度を変更するためのアクチュエータを有することによって、どの波長で反射するのかを調節するようにそのピッチを変更する。レーザキャビティの長さを変更することと格子の角度を変更することとの両方によって、レーザを特定の波長と所望のモード質に極めて正確に同調させることができる。
【0064】
COレーザ24が第一レーザビーム32を生成し、炭素13Oレーザ28が第二レーザビーム36を生成する。所望の光周波数に応じて、COレーザ24を同調させて第一レーザビーム32を発生させる一方で炭素13Oレーザ28を離調させるか、又は、炭素13Oレーザ28を同調させて第二レーザビーム36を発生させる一方でCOレーザ24を離調させるかのいずれかとなる。このようにして、最大でもCOレーザ24と炭素13Oレーザ28の一方のみが特定の時点においてビームを出力して、第一ビーム32と第二ビーム36が同時に組み合わさらないようにする。中赤外線、特に長波長赤外線が、この範囲内の光を大抵の揮発性有機化合物が吸収するので、光の種類として選択されていた。結果として、多数の揮発性有機化合物を単一のシステムで測定することができる。COレーザはこの範囲で動作し、リングダウン分光法に十分なパワーと線幅の狭さを有する。二つのレーザを用いることで、サンプルを分析するのにCRDSシステム20が使用することができる利用可能な波長の範囲と数が追加される。
【0065】
第一レーザビーム32は、光学系マウント上のミラー40を介してビームスプリッタ44に向け直される。ビームスプリッタ44は一部反射一部透過性であり、第一レーザビーム32と第二レーザビーム36の各々を、サンプリングビーム48とワーキングビーム52という二つのビームに分割し、ワーキングビーム52は、サンプリングビーム48と同じ特性を有し、サンプリングビーム48と同等の強度のものとなり得る。
【0066】
サンプリングビーム48は高速赤外線検出器56によって受光される。高速赤外線検出器56は、オシロスコープを用いてサンプリングビーム48の振幅とうなり(ビート)周波数を測定する。うなり周波数は、COレーザ24と炭素13Oレーザ28のうち最適同調未満のものに起因する高次モードの存在を示すことができる。望ましくないうなり周波数の検出に応答して、うなり周波数の振幅が最小になるか消失する一方で強度が最大になるまで、対応のレーザ24又は28を同調させる。うなり周波数の振幅を許容可能なレベル未満に低減させることができない場合には、レーザが別の波長に同調され得る。
【0067】
ワーキングビーム52は第一光変調器60に進み、第一光変調器60がワーキングビーム52を光学系マウント上のミラー64に偏向させる。ミラー64は光を第二光変調器68に向け直し、今度は、第二光変調器68がワーキングビーム52を集束レンズ72に偏向させる。光変調器は、レーザが発生させる光ビームの強度を制御するのに用いられる。本実施形態では、第一光変調器60と第二光変調器68は音響光学変調器(AOM,acousto‐optic modulator)(ブラッグセルとも称される)である。AOMは光変調器の一種であり、ゲルマニウムやガラス等の物質に結合された圧電トランスデューサを用いる。本開示の実施形態において、物質はゲルマニウムである。発振電気信号が圧電トランスデューサに印加されると、圧電トランスデューサが振動して、物質中に音波を発生させる。音波が物質を伸縮させることによって、屈折率の周期的な変動が生じて、ブラッグ回折を可能にする。音波の伝搬軸に対して垂直な平面に対する一次ブラッグ角でAOMに入射する光は、最大効率においてブラッグ角の二倍に等しい量で偏向される。電気信号の消失で、物質のブラッグ回折性が無くなり、光が偏向されずに通過するようになり、偏向させた光路に沿った光を効果的に減衰させる。AOMの副作用は、偏向されている光の周波数がシフトすることである。
【0068】
他の実施形態では、光変調器は代わりに電気光学変調器となり得る。電気光学変調器は別種の光変調器であり、DC(直流)又は低周波電場を物質に印加して、物質の分子の位置、向き及び/又は形状を乱す。結果として、屈折率が変更されて、出射ビームの位相が印加場の関数として変化する。ビームを偏光子に通すことによって、位相変調が強度変調に変換される。他の方法では、干渉計の分岐に配置された位相変調器が強度変調器として作用することができる。
【0069】
また、CRDSシステム20は二つの光変調器を有するものとして説明されているが、他の実施形態ではCRDSシステムはより少数又は多数の光変調器を有し得る。
【0070】
第一光変調器60と第二光変調器68は、ワーキングビーム52の強度を調節してリングダウン事象の開始時にビームを消失させる減衰器として作用する。リングダウン事象としては、リングダウンキャビティを照らすワーキングビーム52の消失や、リングダウンチャンバに対するレーザの離調、リングダウンチャンバからの光強度データの収集が挙げられる。AOMであると、第一光変調器60と第二光変調器68は音響光学効果を用いて、音波(通常は無線周波数の音波)で光を回折させる。第一光変調器と第二光変調器の各々において、圧電トランスデューサがゲルマニウムやガラス等の物質に結合され、発振電気信号を用いて、圧電トランスデューサを振動させる。振動している圧電トランスデューサは物質に音波を発生させ、音波が物質を伸縮させることによって、屈折率の周期的な変動を生じさせて、ブラッグ回折を可能にする。音波の伝搬軸に垂直な平面に対してブラッグ角でAOMに入射する光は、最大効率においてブラッグ角の二倍に等しい量で偏向される。電気信号の消失で、物質のブラッグ回折性が無くなり、光が偏向されずに通過するようになり、偏向させた光路に沿った光を効果的に消失させる。このように、音の強度を用いて、偏向ビーム中の光の強度を変調させることができる。
【0071】
第一光変調器60と第二光変調器68の各々によって偏向される光の強度は、入力光強度の略85%(光変調器60、68の最大偏向効率を表す)と略0.1%という第一光変調器60及び第二光変調器68の各々の減衰限界との間となり得る。ゲルマニウムに印加されている音波がオフに切られると、偏向ビームは、以前の強度の略30dB、つまり99.9%を失う。減衰限界は、光変調器によって入力光強度を減衰させることができる程度の上限を意味する。
【0072】
光変調器は非対称であり、つまり、副作用として、その第一端で入力光を受光する際に第一モードで光の周波数をドップラーシフトさせ、その第二端で入力光を受光する際に第一モードと逆の第二モードで光の周波数をドップラーシフトさせるが、減衰パワーは同じである。光の周波数のドップラーシフトは、光が第一端又は第二端に入射するのかにかかわらず、同じ方向に沿う。
【0073】
従来のCRDSシステムは、単一の光変調器を用いているので、結果として、周波数シフトされているワーキングビームを有する。こうした周波数シフトは、一般的に光の周波数に対しては相対的に小さく、光がキャビティ内の物体によって吸収される様を変化させ得るが、この周波数シフトは分析中に補償され得る。回折がAOMの音波源に向かう場合には周波数シフトは下方シフトとなり、回折が音波源から離れる場合には周波数シフトは上方シフトとなる。上述のように、この効果は最小である。
【0074】
第二光変調器68によって偏向されたワーキングビーム52は、集束レンズ72を介して集束される。レーザビーム、つまりはワーキングビーム52は、COレーザ24又は炭素13Oレーザ28から伝搬するので、発散し続ける。集束レンズ72は、ワーキングビーム52を集束させて戻す。
【0075】
その後、光学系マウント上のミラー76が、リングダウンチャンバ80にワーキングビーム52を向け直す。二つのミラー64、76は、ワーキングビーム52の経路長を伸ばす。
【0076】
リングダウンチャンバ80は、その内部でリングダウンキャビティ84と称される共振キャビティを画定する細長の管である。前方キャビティミラー88aと後方キャビティミラー88b(代わりにまとめてキャビティミラー88とも称される)がリングダウンキャビティ84の長手方向端に位置決めされる。キャビティミラー88は、リングダウンキャビティ84の外側からキャビティミラー88に向けられる光と、リングダウンキャビティ84内部からキャビティミラー88に向けられる光の両方に対して高反射性である。結果として、前方キャビティミラー88aに向けられたワーキングビーム52の一部(略0.1%)が前方キャビティミラー88aを通過して、リングダウンキャビティ84に入り、ワーキングビームの大部分(略99.9%)が反射されてミラー76に向けて戻される。
【0077】
キャビティミラー88はミラーマウント92上に取り付けられ、ミラーマウント92は、キャビティミラー88の位置と向きを調節するように作動可能である。特に、リングダウンダウンキャビティ84の前方に向かう前方キャビティミラー88aは、三つの機械式マイクロメータ96aを介して作動可能なミラーマウント92に取り付けられる。リングダウンキャビティ84の後方に向かう後方キャビティミラー88bは、三つの圧電マイクロメータ96bを介して作動可能なミラーマウント92に取り付けられ、これら三つの圧電マイクロメータ96bは、光整列用に手動で調節可能であり、又は圧電体を用い圧電ドライバで更に調節可能である。
【0078】
各キャビティミラー88の角度は、ミラーが十分に整列するように変更可能であり、光ビームがリングダウンキャビティ84に入る際に光ビームが逸脱しないようにする。一方のキャビティミラー88が斜めになっている場合、特に、一部の光がリングダウンキャビティ84の側方に反射され、光の強度が失われ、高次モードが生じる。また、マイクロメータ96は、角度整列に影響を与えずにリングダウンキャビティ84の長さを変更させるように同時に同調可能である。これが、リングダウンキャビティ84の同調を可能にして、リングダウンキャビティ84が、リングダウンキャビティ84に入射している光の周波数で共振する。
【0079】
集束レンズ72は、リングダウンキャビティ84の光学モードに整合するようにレーザ光を集束させて、ビームの最小ウエストがリングダウンキャビティ84の最小ビームウエストと同じ箇所に位置するようにする。集束レンズ72の位置は、或る範囲のレーザ波長の光モードに整合するように調節され得る。
【0080】
液体窒素冷却検出器100型の光強度センサシステムが後方キャビティミラー88bの後方に配置されて、そのミラーを出射する光を受光する。液体窒素冷却検出器100は、リングダウンキャビティ84を出射する光の強度を測定する。出射光の強度を測定するための他の種類の光強度センサシステムが液体窒素冷却検出器100に代えて使用可能である。
【0081】
検査用のサンプルを収集するのに用いられる熱脱着管104からリングダウンキャビティ84内にサンプルが投入される。
【0082】
次に図2を参照すると、例示的な熱脱着管104が示されている。熱脱着管104は、管状のステンレス鋼ケース105を有し、その両端に開口106を画定している。熱脱着管104の受け端107がサンプルを受ける。説明される例示的な実施形態では、サンプルは、検査用の人間から収集された人間の呼気である。発泡体セパレータ108がその受け端に向けて配置され、ステンレス鋼ケース105の断面にわたってより均一に流体圧力を分布させるように構成される。吸着材109が、発泡体セパレータ108及びもう一つの他の発泡体セパレータ110に隣接して配置される。セパレータは、代わりにワイヤメッシュ製や他の適切な物質製となり得る。吸着材109は極めて多孔質であり、比較的大きな表面積を有し、他の化合物の存在下であっても対象化合物を捕捉及び保持するための特定化合物サンプリング用に選択される。更に、吸着剤109は、収集された化合物を分析用に容易に脱着又は抽出することを可能にする。また、選択される固体吸着剤は、サンプルと反応しない。具体的な例では、固体吸着剤は、テナックス(Tenax)や炭素材である。サンプルが受け端107で受けられるので、サンプルは熱脱着管104の受け端107に向けてより濃くなる。他の実施形態では、当業者に理解されるように、熱脱着管の組成と構成は異なるものとなり得る。
【0083】
サンプル収集中においては、熱脱着管104が嵌め込まれている呼気収集装置で呼気が収集される。呼気収集装置は、ウェアラブルマスク等の比較的小型なものになり得て、又は、人間が息を吹き込む卓上ユニット等の比較的大型なものとなり得る。呼気サンプルは、熱脱着管104の受け端107で受けられる。そして、人間の呼気が含む多様な小型分子と大型分子は、熱脱着管104中の吸着材109によって捕捉される。他の実施形態では、他の種類のガス状サンプルが熱脱着管で収集され得る。
【0084】
再び図1を参照すると、サンプル投入システム112を用いて、熱脱着管104からリングダウンキャビティ84内にサンプルを投入し、リングダウンキャビティ84を含めサンプル投入システム112を排気する。サンプルの投入中に、サンプル投入システム112は、収集されたサンプルの少なくとも一部でリングダウンキャビティ84を充填し(つまり、熱脱着管104からサンプルを脱着させて、汚染物質を導入せずにリングダウンキャビティ84内にサンプルを入れる)、リングダウンキャビティ内の圧力を1気圧にし、温度を50℃にして、リングダウンキャビティ84を密封する。本実施形態では、測定吸収スペクトルと少なくとも間接的に比較される一組のサンプルの吸収スペクトルをこの圧力と温度において決定し、結果に影響を与え得るパラメータ同士の間の一貫性を保つ。しかしながら、他の実施形態では、圧力と温度は、既知の測定吸収スペクトルの他のレベルに固定され得る。サンプルの少なくとも一部の排気中に、サンプル投入システム112は、以前に提供されたサンプルを、リングダウンキャビティ84から除去し、また、熱脱着管104からリングダウンキャビティ84にサンプルを誘導するための種々の導管から除去する。
【0085】
サンプル投入システム112は、窒素ガス源116を含む吸気部を有する。窒素ガス源116は、加圧されている極めてクリーンな窒素ガスの供給源であるか、窒素ガスを1気圧以上に加圧することができるものである。本実施形態では、窒素ガス源116は、大気圧よりも高く5psiに加圧されるが、リングダウンキャビティ84を1気圧に、又は分析が行われるよう選択された他の大気圧に加圧するのに圧縮が十分なものである限りで変更可能である。図示の実施形態では、窒素ガス源116は、液体窒素容器から蒸発する窒素ガスである。窒素ガス源116は導管120を介してガス入口弁124aに接続される。補助ガス入口弁124bが他のガスの接続を可能にするが、通常は用いられない。ガス入口弁124aと補助ガス入口弁124bはガス吸入ライン120aと連通している。圧力計128がガス吸入ライン120aとガス吸入弁124cに沿って配置される。フィルタ130aが、キャビティ入口弁124dの前方においてガス吸入ライン120aに沿って配置され、そのキャビティ入口弁124dは、ガス吸入ライン120aをリングダウンキャビティ84から密封する。フィルタ130aは汚染物質がリングダウンキャビティ84に入り込むことを抑制するが、リングダウンキャビティ84において汚染物質はキャビティミラー88上に堆積して反射性に干渉し得るものである。
【0086】
ガス入口弁124aと補助ガス入口弁124bは、流路制御(pathing)弁124eと連通している。流路制御弁124eは、脱着管ライン120bとサンプル出口ライン120cに対する直接アクセスを有効又は無効にする。
【0087】
脱着管ライン120bは前方弁124fと後方弁124gを含む。熱脱着管104は前方弁124fと後方弁124gとの間に配置され、熱脱着管104の受け端107が後方弁124gに向けて配置される。熱脱着管104は、或る範囲の温度に熱脱着管104を加熱するように制御可能な加熱器132内に配置される。
【0088】
サンプル出口ライン120cは、サンプル出口弁124hと質量流量制御器136を含む。
【0089】
また、サンプル投入システム112は、リングダウンキャビティ84と連通しているキャビティ出口弁124iを含む出口部も有する。出口ライン140はキャビティ出口弁124iと連通している。圧力計144が出口ライン140に沿って配置される。真空遮断弁124jが圧力計144と真空ポンプ148との間に配置される。真空吸入弁124kが真空ポンプ148と連通していて、ポンプ吸入ライン150を通して空気を吸い込む。フィルタ130bがポンプ吸入ライン150内に配置されて、真空ポンプ148の動作と干渉し得る汚染物質が入り込むことを抑制する。
【0090】
弁124a~124kは代わりにまとめて弁124と称され得る。
【0091】
キャビティ入口弁124dとキャビティ出口弁124iは特定の箇所においてリングダウンキャビティ84に適宜結合されているものとして示されているが、弁124d、124iがリングダウンキャビティ84に結合される箇所は異なり得ることを理解されたい。好ましい構成では、キャビティ入口弁124dは、前方キャビティミラー88aに隣接するリングダウンキャビティ84の端部に向けてリングダウンキャビティ84と連通していて、キャビティ出口弁124iは、後方キャビティミラー88bに隣接するリングダウンキャビティ84の端部に向けてリングダウンキャビティ84と連通している。
【0092】
新たなサンプルがリングダウンキャビティ84に投入される際には、新たなサンプルを含む熱脱着管104が図1に示されるようにサンプル投入システム112に結合される。
【0093】
排気段階中においては、真空吸入弁124kを開いて、真空ポンプ148をオンにする。次いで、真空吸入弁124kを閉じて、順に真空遮断弁124j、キャビティ出口弁124i、キャビティ入口弁124d、ガス吸入ライン弁124c、流路制御弁124eを開く。この流路に沿ったラインとリングダウンキャビティ84の含有物は、真空ポンプ48によってCRDSシステムから排気される。特に圧力計12が真空ポンプ148から遮断されている際に、圧力計144が、システムが十分に排気されていることの決定を可能にする。システムが十分に排気されていると決定されると、開いている上記弁124j、124i、124d、124c、124eを逆の順序で閉じる。その後、窒素充填段階中に、弁124a、124c、124d、124i、124jを開いて、窒素ガス源116からの窒素ガスがライン120aとライン140を充填するようにする。次いで、別の排気段階で窒素ガスを排気する。窒素充填段階と排気段階は、ラインを清浄に空にするために所望の通りに繰り返し可能である。このようにして、以前に検査されたサンプルがCRDSシステム20から排気される。
【0094】
新たなサンプルの投入中においては、熱脱着管104を洗浄し、熱脱着管104から二酸化炭素と水を除去して、リングダウンキャビティ104に投入される二酸化炭素と水の量を最小にする。熱脱着管104を洗浄するため、ガス吸入弁124a、ガス吸入ライン弁124c、後方弁124を開いて、熱脱着管104を洗浄するための窒素ガスの経路を与える。熱脱着管104は、二酸化炭素と水がサンプルと集まることを抑制するように選択されるが、それでも典型的には或る程度の二酸化炭素と水が熱脱着管104内に存在する。
【0095】
500mlの窒素ガスを熱脱着管に入れて、熱脱着管104内に残留している二酸化炭素と水を元々のサンプルから除去する。次いで、前方弁124fとサンプル出口弁124hを開いて、質量流量制御器136への経路を与える。質量流量制御器136は、窒素ガス並びに搬送された二酸化炭素及び水を特定の流量で放出することを可能にする。本構成では、流量は500ml/minである。次いで、全ての弁124を閉じる。
【0096】
二酸化炭素と水が熱脱着管104から除去されると、上述と同じプロセスを用いてサンプル投入システム112が再び排気され、サンプル投入システム112のラインに導入されたばかりの窒素ガスを除去する。次いで、熱脱着管104を取り囲む加熱器132が、熱脱着管104を所望の温度に加熱して、熱脱着管104内の新しいサンプルの少なくとも一部を熱脱着させる。次いで、ガス入口弁124a、流路制御弁124e、前方弁124f、後方弁124g、キャビティ入口弁124dを開いて、窒素ガス源116から、脱着した対象化合物を有する熱脱着管104を通りリングダウンキャビティ84に向かう窒素ガス用の直接流路を与える。
【0097】
リングダウンキャビティ84内を1気圧にすることが望ましいが、その理由は、収集及び分析される全ての基準データがこの圧力レベルにおけるものであることによって、結果が再現可能であることが保証されるからである。
【0098】
ガス入口弁124aはシステムによってトグル操作で開閉され、次いで、システムは圧力計128の圧力読取値が安定して1気圧に達するのを待つ。圧力計128が安定しても、圧力読取値が1気圧未満である場合には、ガス入口弁124aを再びトグル操作して、圧力読取値が1気圧になるまでプロセスを繰り返す。圧力計128がリングダウンキャビティ84内の圧力レベルが1気圧であることを示すと、全ての弁を閉じる。
【0099】
複数の温度値での脱着が望まれる場合には、真空ポンプ148をオンにして、キャビティ出口弁124iと真空遮断弁124jを開いて、リングダウンキャビティ84を排気する。次いで、脱着プロセスを繰り返す前にキャビティ出口弁124iを閉じる。
【0100】
後方弁124gとキャビティ入口弁124dの間には失われるであろうサンプルが或る程度存在しているので、一般的には複数の脱着の間で完全な排気は行われない。
【0101】
このようにしてサンプルを含む固定体積のリングダウンキャビティを所望の圧力レベルに加圧することによって、キャビティ内の圧力を所望のレベルに上昇させるのに使用可能な可変体積リングダウンキャビティと比較して、化合物が付着し得るリングダウンキャビティ内の表面積が減少し得る。
【0102】
更に、圧力計128が、熱脱着管104からリングダウンキャビティ84に向かうサンプルの流路の上流に存在することによって、サンプルによる汚染を防止する。
【0103】
図3は、例示的なCRDSシステム20の多様な構成要素用の電子制御サブシステム200の概略図である。全てのラインは電気又は電子信号を表し、矢印は一方向通信、電圧の設定等を表し、矢印無しのラインは双方向通信を表す。
【0104】
一つ以上のプロセッサを含む制御モジュール204は、図1に示される多様な構成要素の機能を制御するコンピュータシステムとして作用する。制御モジュール204は、一つ以上のプロセッサ205と、コンピュータ実行可能命令を記憶しているストレージ206とを有し、そのコンピュータ実行可能命令は、プロセッサ205によって実行されると、プロセッサが本開示のCRDSシステム20の他の構成要素に指示するようにする。制御モジュール204は、本開示のCRDSシステム20の他の構成要素の動作を制御するコンピュータ実行可能命令を実行する少なくとも一つのプロセッサを含むあらゆる種類の構成要素であり得る。
【0105】
一対のRFドライバ208が、COレーザ24と炭素13Oレーザ28に動力供給する略40MHz信号を送信する。レーザ24とレーザ28の各々は、出力カプラと回折格子を用いて同調される。格子アクチュエータ212が回折格子を作動(回転)させる。もう一つの他のアクチュエータが出力カプラを作動(並進移動)させる。各出力カプラは、1000Vの出力カプラ圧電体216によって駆動される。出力カプラ圧電体216に動力供給する2チャネル高電圧増幅器220は、0Vから1000Vの間で調節可能である。高電圧増幅器220は、制御モジュール204のデータ取得(「DAQ」)カード224からのアナログ出力信号で設定される。DAQは0Vから10Vの間の出力を発生させ、高電圧増幅器220は信号を100倍に増幅し、出力カプラ圧電体216に動力供給する0V~1000Vの信号を発生させる。格子の角度を変更する各格子アクチュエータ212は、RS‐232を介して制御ユニット204から命令を受けるアクチュエータドライバ228によって駆動される。各格子アクチュエータ212をミリメートル単位で動かし、これが、レーザ24、28のピッチ角に変換される。
【0106】
サンプル投入システム112の圧力計128、144からのデータ信号はRS‐232を通して受信される。
【0107】
高速赤外線検出器56が接続される小増幅器232とオシロスコープ236は、レーザ24、28を同調させるのに用いられるうなり信号の振幅と周波数を読み取るのに使用可能なものである。
【0108】
熱脱着管加熱器132用の温度制御器240は、制御モジュール204によってRS‐232を介して制御される。管加熱器132は、加熱テープで巻かれたアルミニウム片と温度センサを含む。加熱テープと温度センサはどちらも温度制御器240に接続され、その温度制御器240はPID(proportional integral derivative,比例積分微分)制御器である。PID制御器は、温度を設定し、RS‐232を介してメイン制御モジュール204にリードバックする。
【0109】
リレー板244は制御モジュール204に接続され、全てのソレノイド弁124と真空ポンプ148をオンオフするのに用いられる。
【0110】
3チャネル圧電ドライバ248は、リングダウンキャビティ84の長さを調節するようにマイクロメータ96を作動させる圧電アクチュエータ252を駆動させる。各チャネルは、RS‐232を介する圧電ドライバに対する通信と、DAQカード224からのアナログ入力という二つの成分を有する。他の実施形態では、二つ以上の圧電ドライバが採用され得る。
【0111】
各光変調器60、68は、略40MHzの信号を送信するRFドライバ256で駆動される。RFドライバ256の周波数を変更することで、所与の光波長に対してブラッグ角を変更し、又は、所与又は固定のブラッグ角が同調される光波長を変更する。RFドライバ256が特定の周波数に同調されてフルパワーに設定されると、ワーキングビーム52の大部分(略85%)が通過する。80%、70%に調節されると、光変調器60、68が減衰する。RFドライバ256がゼロに設定されると、光変調器60、68が完全にオフになる。RFドライバ256の周波数は、RS232を介した成分で設定される。アナログ及びデジタル成分がRFドライバ256のオンオフ条件と振幅を設定し得る。特に、DAQカード224はデジタル出力(DO)を介してタイミング回路260に信号を送信し、そのタイミング回路260がRFドライバの振幅を有効にして設定するのに必要な四つの必須信号を発生させる。また、タイミング回路260は、デジタイザ264を介して制御モジュール204と通信し、制御モジュール204が、タイミング回路260が四つの電圧値をゼロに設定し、次いで、所定時間後に以前の電圧レベルに戻るリングダウン始動条件又は定常状態条件のいずれかにその動作状態を制御することを可能にする。デジタイザ264は、タイミング回路260に始動パルスを送信し、光変調器60、68がリングダウン事象中にリングダウンキャビティ84に与えられているレーザ光を消失させるようにする。
【0112】
図1のCRDSシステム20を用いてサンプルを分析する方法300が図4に示されている。従来、CRDSを用いて分析されるサンプルは或る単一温度において脱着される。本方法300では、熱脱着管中のサンプルの一部分を第一温度においてまず脱着させ、次いで、サンプルの少なくとも一つの追加部分を少なくとも一つの追加温度において熱脱着管から脱着させ得る。場合によっては、CRDSシステム20で分析するためのサンプルの部分同士を分離することが望まれ得る。例えば、アセトンとアンモニアは低温において熱脱着管から脱着され得る。アセトンとアンモニアがスペクトルにおいて圧倒的となり、サンプル中の他の物質を難読化し得るので、多様な物質を他の物質から孤立化させるために異なる複数温度でサンプルの部分を脱着させて分析することが望ましくなり得る。他の実施形態では、サンプルを同じ温度において二回以上脱着させることが望ましくなり得るが、その理由は、サンプルのいくつかの成分がその温度において一回目に脱着し易く、サンプルの他の成分はその温度において一回目にあまり脱着し易くないが、二回目では同程度に脱着し易くなり得るからである。他の成分は脱着し易いものとなっているので、二回目で脱着してあまり存在しなくなり、他の成分がより孤立化され分離され得る。順序付けされた一組の脱着温度は、単一の脱着温度を含むものともなり得るし、順序付けされた二つ以上の脱着温度の組ともなり得る。
【0113】
次いで、図1図3及び図4を参照すると、方法300は、順序付けされた一組の脱着温度のうち第一脱着温度に加熱器132の温度を設定することで開始する(310)。この特定の構成では、サンプルを熱脱着管104から脱着させる一つ以上の温度の組の順序を決め得る。好ましい一手法では、脱着温度は低い方から高い方に順序付けされる。他の実施形態では、順序付けされた脱着温度の組は、同じ又は同様の二つの脱着温度を含み得る。脱着し易い成分/化合物を放出するように或る温度でサンプルの一部分を脱着させて分析し、次いで、脱着し難い成分/化合物を放出するように同じ温度でサンプルの他の部分を脱着させて、脱着し易い成分/化合物の量を減らして分析を行うことができる。
【0114】
順序付けされた脱着温度の組のうち第一脱着温度を選択して、加熱器132を作動させて、第一脱着温度に熱脱着管104を加熱する。熱脱着管104が加熱器132で第一脱着温度に加熱されると、上述のように、第一温度で脱着されたサンプルの一部がリングダウンキャビティ84に投入される(320)。リングダウンキャビティ84内にサンプルの一部を投入する際に、波長の組のうちの一波長に同調されているレーザ24とレーザ28の一方でレーザビームを発生させる(330)。レーザ24、28が所望の通りにビームを生成することができる波長の中から、その波長の組が選択され得る。発生したレーザビームは、第一光変調器60を通るように向けられ、ミラー64によって反射され、第二光変調域68を通り、ミラー72によって反射されて、リングダウンチャンバ80に入る。光変調器60、68は、ワーキングビーム52を減衰させて、その強度を或る程度変調する。
【0115】
ワーキングビーム52が前方キャビティミラー88aに達すると、その一部(略0.1%)が前方キャビティミラー88aを通り抜けて、リングダウンキャビティ84に入る。ワーキングビーム52の大部分(略99.9%)はまずは反射されて、同じ経路に沿って作動している方のレーザ24又は28に戻される。
【0116】
最初、リングダウンキャビティ84は照らされていない。光がリングダウンキャビティ84に入ると、リングダウンキャビティ84内の光の大部分は二つのキャビティミラー88の間で反射されるので、ワーキングビーム52を介して外部から更に光が導入されるにつれて、リングダウンキャビティ84内の光の量やパワーが増加し始める。特定の割合の光がキャビティミラー88から漏れ出す。リングダウンキャビティ84を光で「充満」させるには或る期間がかかり、これは、キャビティ長さが、同調させたレーザについてリングダウンキャビティ84の隣接共振長さと等しい場合に生じ得る。その時点において、入射光と漏光は平衡状態にある。
【0117】
この平衡状態が達成されると、リングダウンキャビティ84内に向けられたレーザビームを消失させる(340)。リングダウンキャビティ84に入射するレーザビームは幾つかの方法で消失させることができる。特定の実施形態では、デジタイザ264がタイミング回路260に始動パルスを送信して、光変調器60、68がリングダウンキャビティ84に与えられているレーザ光を消失させるようにする。他の実施形態では、レーザを切ってオフにして又は離調させて、構成されているキャビティ長さで共振しないようにすること等が行われる。
【0118】
タイミング回路260は、第一光変調器60からの光ビームの強度を低減するように光変調器60、68の減衰限界に又は減衰限界近傍に光ビームを減衰させるように第一光変調器60と第二光変調器68に同時に指示する。CRDSシステム20では、両方の光変調器60、68を同時にシャットオフするように指示することによって、短期間で第一光変調器60によって偏向される光の量が、第二光変調器68がシャットダウンされていることによって、顕著に減る。
【0119】
第二光変調器68は、第一光変調器60単独で達成される減衰を大幅に増強する。ここで説明する実施形態では、第一光変調器60が30dBの減衰を可能にし、第二光変調器68が更に30dBの減衰を可能にし、これら光変調器60、68で達成される全減衰は各減衰の和、つまり60dBとなる。リングダウンキャビティ84が光で満たされている間においては、光変調器60、68がワーキングビーム52を減衰させてその強度を変調する。本構成では、各光変調器60、68はワーキングビーム52を5dB減衰させ、10dBの全減衰となる。結果として、各光変調器60、68は、ワーキングビーム52の消失中における50dBの更なる全減衰のためワーキングビーム52を更に25dB減衰させるものとなり得る。従来の設定では、一つの光変調器がワーキングビームを10dB減衰させなければならず、ワーキングビームを消失させるための20dBの更なる減衰が残る。理解されるように、ワーキングビーム52は、一つの光変調での20dBの更なる減衰の場合よりも二つの光変調器60、68での50dBの更なる減衰ではるかに素早く減衰可能である。結果として、光変調器60、68をシャットダウンするように指示した後にリングダウンキャビティ84に導入される追加の光の量は、従来のCRDSシステムの単一光変調器設定で更に導入される光よりも少ない。ワーキングビーム52をより素早く消失させることによって、リングダウンキャビティ84内の光の測定減衰が、光変調器60、68の立ち下り時間中の追加の光の影響を受け難くなり、観測された減衰時間を既知の減衰時間と整合させる際の精度を高くする。
【0120】
リングダウンキャビティ84に与えられているレーザ光の消失が、リングダウン事象を開始させる。代替実施形態では、リングダウンキャビティ84に与えられている共振レーザ光の消失を他の方法で行うことができ、例えば、レーザを離調させることによって行われる。リングダウン事象の始動を閾値を用いて開始させることによって、リングダウン事象が、リングダウンキャビティ84がレーザ光と共振しているピーク中において生じて、ピークの一方の側で生じないようにタイミング調節することができる。更に、共振の帯域幅が略10ミリボルトであるので、圧電ドライバ248の分解能は、ピークを適切に追跡するには不十分な細かさとなる。
【0121】
リングダウン事象中において、制御モジュール204は、液体窒素冷却検出器100によて報告されるリングダウンキャビティ84の後端から出射する光の光強度減衰データを記録する(350)。本構成ではリングダウン事象は略10マイクロ秒間持続するが、他の実施形態ではより長く又は短く持続し得る。光減衰時間は略2マイクロ秒間である。
【0122】
次いで、リングダウン事象を繰り返すべきかどうかを決定する(360)。本実施形態では、CRDSシステム20は、500回のリングダウン事象について光強度減衰データを収集するように構成される。
【0123】
リングダウン事象を始動させてから略100マイクロ秒後に、タイミング回路260は、ワーキングビーム52がリングダウンキャビティ84に通ることを再開させるように光変調器60、68に指示する。500回のリングダウン事象から光強度減衰データが得られると、制御モジュール204は、圧電ドライバ248の動作を停止させて、リングダウン事象データから減衰率を決定する。リングダウン事象データは本願において光強度減衰データとも相互可換に称され得る。代わりに、360において、更に光強度減衰データを収集すべきであると決定されると、制御モジュール204は、後方キャビティミラー88bを作動させるように圧電ドライバ248に指示し続ける。総電圧が最大又は最小に達すると、逆方向での進行を開始させる。つまり、総電圧AVがその範囲内の最大電圧に達する前に増加していたのであれば、次いで、総電圧AVは減少して、共振長さRLに対応する電圧に戻る。代わりに、総電圧AVがその範囲内の最小電圧に達する前に減少していたのであれば、次いで、総電圧は増加して、共振長さRLに対応する電圧に戻る。このようにして、リングダウン事象を両方向で始動させる。
【0124】
多様な出力がドリフトし得るので、光強度減衰データは可能な限り素早く収集される。例えば、圧電アクチュエータ252は、圧電クリープと称される沈降時間を有し得る。
【0125】
他の実施形態では、あらゆる任意の数のリングダウン事象が各波長と脱着温度において用いられ得る。一実施形態では、所望のレベルの光強度減衰データが収集されるまで或る波長と脱着温度でリングダウン事象が行われ得る。そして、それまでに収集された光強度減衰データを収集されるや否や素早く分析して、有効であるかどうかを決定する。所望の数のリングダウン事象について有効な光強度減衰データが収集された後に、システムは、十分なデータがその波長と脱着温度において収集されたものと判断し得る。これは、多くの場合において分析を行うのに必要な時間を短縮することができる。
【0126】
選択された波長について光強度減衰データを収集する際には、特定のサンプル、脱着温度、波長についての光強度減衰データが制御モジュール204によって処理され得て、例えば、各リングダウン事象について減衰率を決定して、それら値を平均化する。リングダウン事象データを処理するのに他の手法も採用可能である。
【0127】
次いで、その組のうちにレーザが発生させるべき他の波長が存在するかどうかを決定する(370)。発生させるべき他の波長が存在する場合には、方法300は330に戻り、レーザ24、28を同調させて、新たに選択された波長のレーザビームを発生させる。
【0128】
プロセスを他の波長の光について繰り返して、特定の脱着温度におけるサンプルの吸収スペクトルを生成する。液体窒素冷却検出器100からの光強度データは、効果的に光強度減衰データを与え又は光強度減衰データに容易に変換可能であり、これは、リングダウンキャビティ84に投入されたサンプルの一部によって特定の波長の光がどの位素早く吸収されたのかを示すものである。
【0129】
例えば、COレーザ24が発生させる光が、或る範囲の波長について吸収係数を与える。同様に、炭素13Oレーザ28からの光について或る範囲の波長で吸収係数を生成することができる。このようにして、そのサンプルについての吸収スペクトルを展開することができる。
【0130】
第一温度で脱着したサンプルの一部について一組の波長にわたる吸収スペクトルが生成されると、そのサンプルの一部をリングダウンキャビティから取り出す(375)。順序付けされた組の中に熱脱着管140を加熱して分析用のサンプルの他の部分をリングダウンキャビティ84内に脱着させるべき他の温度が存在するかどうかを決定する(380)。サンプルの一部を脱着させるべき他の温度が存在していると決定されると、310において加熱器を次の脱着温度に設定する。本実施形態では、熱脱着管104が加熱される次の脱着温度は、熱脱着管104が加熱された以前の脱着温度よりも高い。順序付けされた脱着温度の組が単一の脱着温度を有する場合には、方法300は310に戻らない。
【0131】
上述のように、以前に脱着させた熱脱着管104の温度よりも高い他の温度で熱脱着管104に含まれるサンプルを脱着させることで、サンプル中の化合物/物質の別のサブセット(部分集合)がもたらされる。
【0132】
光強度減衰データが各脱着温度で収集されると、CRDSシステム20は、その波長の組と脱着温度の組についての光強度減衰データを分析して、サンプルが取り出された患者が特定の生理学的状態を有するか又はその病理学的状態の程度を有する確率を決定する(390)。その確率は、その生理学的状態(例えば、例示的な実施形態では肺がん)の有無又は生理学的状態の程度が特定済みである事前分析サンプルについての光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて決定される。その確率の決定は、事前分析サンプルについての光強度減衰データのデータセットに少なくとも部分的に基づく予測モデルを用い得る。
【0133】
CRDSシステム20は、サンプルが取り出された被検体が、その生理学的状態の離散的な程度(度数)の組のうちの一つを有する確率を決定することができ、その生理学的状態の最も確率が高い程度(度数)を表し、又は確率の完全な組を表す。更に、CRDSシステム20は各結果の信頼度を提供することもできる。
【0134】
各脱着温度で収集された光強度減衰データは、同じ又は同様の脱着温度で分類されている事前分析サンプルについての光強度減衰データのデータセットを少なくとも間接的に用いて分析され得る。好ましくは、事前分析サンプルについての光強度減衰データのデータセットは、サンプルの一部を脱着させるために同じ又は同様の温度順序列を用いて収集されたものである。代替実施形態では、サンプルについて二つ以上の脱着温度からの光強度減衰データを互いに組み合わせ、同じ又は同様に取り扱われている(つまり、対応の脱着温度についての光強度減衰データがまとめられている)事前分析サンプルについての光強度減衰データに少なくとも部分的に基づいて生成される予測データを用いて分析し得る。予測モデルは、事前分析サンプルについての光強度減衰データのデータセットから生成され得る。好ましい一手法は、教師付き機械学習を用いることによるものである。
【0135】
事前分析サンプルについての光強度減衰データのデータセットは、以前に収集されたサンプルの全体的な部分についてのスペクトルを表すものであって、いずれか一種の特定の揮発性有機化合物についてのものではない。このより全体論的な手法をサンプルを分析するのに採用することによって、現在分析されているサンプルがその生理学的状態を有している被検体からのものである確率を予測するのに、議論の対象となっている揮発性有機化合物の特定にあまり依存しないようになる。被検体は、人間又は他の動物や生命体であり得る。
【0136】
予測モデルは、光強度減衰データのデータセットを学習用データとして少なくとも部分的に使用することによる機械学習法を用いて生成される。
【0137】
特定の生理学的状態の有無を予測するのに十分大きなサンプルデータセットを得ることは困難となり得る。こうした状況では幾つかの前処理段階が有用となり得る。これは、特定の生理学的状況の場合に特に当てはまる。
【0138】
スペクトル中に欠けている値に対処するために、スペクトル中の近接吸収値を用いる内挿(補間)法(スプライン補間等)を用いることができる。利用可能な波長が等間隔ではない場合には、欠けている値を近似計算するVOC回帰法のようにしてk近傍法によって特定された同等の対象からの平均値を用いることができる。
【0139】
以前に収集されたデータに大きな変動が観測される場合、これは、自然なVOCの変動と他の交絡変数に起因するものであり得る。基準線補正を用いて、望ましくない傾向を排除することができ、例えば、一般的な分光法の傾向除去(detrending)法(例えば、線形傾向除去、二次傾向除去、サビツキー・ゴーレイ(Savizky‐Golay)傾向除去法)を用いる。また、アセトンやアンモニア等の全ての対象に共通であって、スペクトル中の小さくて重要な細部を覆い隠し得る高濃度VOCに対して差スペクトル法を用いることもできる。
【0140】
同様に、一般的な正規化法を用いて、サンプルの一貫性を改善するこっとができる、個々のスペクトルに基づいたもの(例えば、最大値・最小値、ピーク、標準正規変量の正規化)に加えて、全スペクトルにわたって正規化を行う方法(乗算的散乱補正等)が採用可能である。
【0141】
スペクトル的因子と臨床学的因子についての包括的分析を用いて、事前分析サンプルについての光強度減衰データのデータセットにおける自明ではない関係性と交絡因子を特定して、データ解釈を改善し、予測モデルに取り込まれているサブグループ(部分群)を特定する。呼気VOC分析には多数の交絡因子が存在し、年齢、性別、喫煙、飲酒、投薬、他の疾病が挙げられる。想定される交絡因子をに従ってスペクトルを分類する教師付き予測モデルと共に、教師無しクラスタ化法を用いて、こうした因子を評価する。同様に、異なる複数のサブグループについてのスペクトルデータを用いて、肺がん検出用に個々のモデルを学習させることができる。
【0142】
スペクトル派生型の特徴、投影型の特徴、ウェーブレット変換型の特徴等の特徴が、特徴抽出用に採用されている。派生型の特徴は、固有の基準線を与え、個人間の変動をスケール補正するものであるので、特に有用である。バーコード型の特徴や、1次元局所的バイナリパターン(1D‐LBP,one‐dimensional form of local binary pattern)も使用可能である。更に、異なる温度順序列におけるサンプルの脱着の時系列から導出された特徴も用いることができる。
【0143】
多様な前処理法と特徴抽出法を、交絡因子とサブグループの分析で見つかった情報と共に組み合わせて、最終的な分類体系を生成することがでいる。その体系の次元を減らし、無用で冗長な特徴を除去するため、幾つかの特徴選択法を使用することができる。最小冗長最大関連(mRMR,minimum redundancy maximun relevance)選択法等の統計型フィルタ法や、逐次特徴選択法(SFS,sequential feature selection)、遺伝アルゴリズム(GA,genetic algorithm)選択法などの分類型ラッパー法が使用可能である。単純なサポートベクターマシン(SVM,support vector machine)、線形又は二次の判別分析(LDAやQDA)、KNN(k近傍)分類子を用いて、ラッパー選択法の特徴を評価して、多数の分類モデルを構築して有効認証することができる。
【0144】
予測モデルを生成するのに多様な代替手段や方法を用いることもできる。
【0145】
図5は、予測モデルを生成するための方法400を示す。本手法では、一組の脱着温度順序列を探索用に特定する。脱着温度の順序列は、熱脱着管に含まれているサンプルの一部を脱着させるために熱脱着管が加熱される順序付けられた温度の組である。特定の順序の温度を用いてサンプルを脱着させることは、サンプルの異なる選択部分を別々に脱着させて分析することを可能にし、これは、サンプルの異なる態様をより容易に特定することを可能にする。サンプルの特定の特徴は、特定の脱着温度順序列で捕捉された光強度減衰データからより容易に明らかとなり得る。例えば、第一成分/化合物が、特定の温度において熱脱着管104から脱着可能であり、それより僅かに高温において脱着可能な第二成分/化合物と混同(交絡)する場合には、第一成分/化合物の脱着温度に等しい脱着温度を有し、次いで第二成分/化合物の脱着温度以上の脱着温度を有する脱着温度順序列を用いて、サンプルの光強度減衰データの特徴がより明らかとなり得る。こうした脱着温度順序列と明らかとされる特徴との間の関係性は、場合によっては容易に明らかとならないものとなり得る。結果として、その存在の有無に対する最良の相関をもたらす特定の順序列は、探索無しでは容易に明らかにならないものとなり得る。他の態様では、二つの脱着温度順序列において記録された光強度減衰データが、生理学的状態又はその生理学的状態の或る程度(度数)を有する被検体から取り出されたサンプルのサブセットに対して実質的に等しい相関をもたらす場合、例えば、より短い脱着温度順序列を選択することが望ましくなり得る。
【0146】
CRDSシステム20に関連した一般的な方法が説明されているが、複数の局所的又は分散型のCRDSシステムと、共通のパラメータセットと標準的技法を用いる他のコンピュータを用いて本方法を行うことができることを理解されたい。
【0147】
方法400はサンプルの選択で開始する(404)。サンプルは、或る生理学的状態を有する又はその生理学的状態を有さないとして特定済みである被検体からのサンプルの組から選択される。次いで、脱着温度順序列の組から或る脱着温度順序列を選択する(408)。脱着温度順序列の組は、科学的証拠に基づいて選択されるものやランダムに選択されるもの等となり得る。加熱器132の脱着温度を、その順序列のうちの次の脱着温度に設定する(412)。その順序列が未処理のままである場合には、その順序列のうちの第一脱着温度が選択される。
【0148】
次に、サンプルの一部分が脱着されて投入される(416)。加熱器132を順序列から選択された脱着温度に加熱して、サンプルの一部分を脱着させる。サンプル投入システム112は、サンプルの脱着部分をリングダウンキャビティ84内に投入する。
【0149】
次いで、制御モジュール204は、レーザ24とレーザ28のうち一方を作動させて、選択波長のレーザビームを発生させる。レーザビームはリングダウンキャビティ84内に向けられて、リングダウンキャビティ84を光で「充満」させる。
【0150】
制御モジュール204が、リングダウンキャビティ84内に十分な光が存在していると決定すると、制御モジュール204は、リングダウンキャビティ84内に向けられているレーザビームを消失させるように光変調器に指示する(424)。
【0151】
液体窒素冷却検出器100が後方キャビティミラー88bを介してリングダウンキャビティ84から出射する光の光強度を記録する(428)。光検出減衰データは、経時的にリングダウンキャビティ84から出射する光の検出強度に対応していて、制御モジュール204に送信される。リングダウンの完了時に、制御モジュール204は、リングダウン事象を繰り返すかどうかを決定する(430)。リングダウン事象は、異常の影響を減らすように複数回にわたって繰り返され得る。もう一回のリングダウン事象が選択波長において繰り返されることになった場合には、方法400は420に戻り、その選択波長においてレーザビームを発生させる。次いで、その組の中に使用すべき他の波長が存在するかどうかを決定する(432)。他の波長が存在する場合には、方法400は420に戻り、次に選択された波長でレーザビームを発生させる。代わりに、その組の中に他の波長が存在しないと決定された場合には、その順序列の中に他の脱着温度が存在するかどうかを決定する(436)。その順序列の中に少なくとも一つの他の脱着温度が存在する場合には、その順序列中の次の脱着温度を選択して、加熱器132をその温度に加熱して、サンプルの他の部分を脱着させる(412)。
【0152】
代わりに、その順序列の中に他の脱着温度が存在しないと決定されると(436)、探索すべき他の脱着温度順序列が存在するかどうかを決定する(440)。探索されていない他の脱着温度順序列が存在する場合には、次の脱着温度順序列を選択する(408)。新たな脱着温度順序列が選択される場合には、以前に用いられた熱脱着管104中のサンプルが少なくとも部分的に脱着してしまっているため、同じ被検体からの新たな熱脱着管を使用する。
【0153】
全ての脱着温度順序列が探索されると、その組の中に分析すべき他のサンプルが存在するかどうかを決定する(444)。その組の中に分析されていないサンプルが存在する場合には、分析のため他のサンプルを選択する(404)。
【0154】
代わりに、全てのサンプルが分析済みであると決定されると(444)、光強度減衰データと、或る生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有するとしてサンプルが取り出された被検体の特定結果との間の対応関係が各脱着温度順序列について決定される(448)。光強度減衰データと、或る生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有するというサンプルの特定結果との間の対応関係は、その生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有するとして特定された被検体からのサンプルに顕著に見られる一組の特徴が存在する場合に、強くなる。つまり、特定の脱着温度順序列について或る生理学的状態を有する被験体のうち85パーセントと、その生理学的状態を有さない被検体のうち20パーセントとに各々生じる特定の組の特徴が存在している場合には、その脱着温度順序列についての光強度減衰データは、サンプルが取得された被検体におけるその生理学的状態の有無に対して比較的良好な相関関係を有し得る。これは一例であるが、光強度減衰データと生理学的状態の存在又は生理学的状態の程度(度数)との間の何らかのパターンが、光強度減衰データと生理学的状態の存在又は生理学的状態の程度(度数)との間の相関関係の存在を示し得る。
【0155】
次いで、各脱着温度順序列について光強度減衰データと、生理学的状態又はその生理学的状態の程度を有するとしてサンプルが取り出された被検体の特定結果との間の対応関係に基づいて、或る脱着温度順序列を選択する(452)。その脱着温度順序列は、測定された相関関係に完全に基づいて選択され、又はその相関関係と他の因子の組み合わせに基づいて選択され得る。他の因子が、脱着温度順序列の選択を決め得て、例えば、順序列における脱着温度の数を決め得て、それによって、分析を行うための時間が決まり得る。
【0156】
次いで、相関関係に少なくとも部分的に基づいて選択された選択脱着温度順序列を用いて予測モデルを生成する(452)。
【0157】
或る順序列の温度を用いて熱脱着管からサンプルを脱着させる場合、特定の温度において脱着するサンプルの部分を分析することは不都合となり得る。特定の温度での脱着は、他の温度で脱着される場合よりも対象ではない物質を除去するように行われ得る。
【0158】
図6は、CRDSでサンプルを分析する方法500を示す。方法500では、サンプルの一部分は、第一温度で脱着され、患者の生理学的状態の有無に対してあまり相関関係を有さないものであり得るので廃棄される。サンプルの第二部分を第二温度で脱着させる。サンプルの第二部分は、生理学的状態の有無又はその生理学的状態の程度に対して比較的高い相関関係を有しているものとみなされて、CRDSで分析される。
【0159】
方法500は、制御モジュール204によって加熱器132の温度を第一脱着温度に設定することで開始する(510)。加熱器132を第一脱着温度に加熱するこで、熱脱着管104が加熱されて、サンプルの第一部分が脱着する。次いで、制御モジュール204は、第一部分に対するCRDSを行わずにサンプルの第一部分を放出するようにサンプル投入システム112に指示する。サンプルの第一部分は周囲雰囲気に放出され、収集容器に放出され、又は他の適切な手法で熱脱着管104とリングダウンキャビティ84との間の経路から取り出され得る。現状で好ましい実施形態では、二酸化炭素と水を熱脱着管104から放出する場合とほぼ同じ様にして弁124bと124dを閉じ、弁124aと124cと124gと124fと124hを開けることによって、第一サンプルを質量流量制御器136を通して放出する。
【0160】
サンプルの第一部分を放出した後に、加熱器を第二脱着温度に加熱する(530)。第二脱着温度は一般的には第一脱着温度よりも高く、結果として、熱脱着管104から別の物質を脱着させる。他の実施形態では、第二脱着温度は第一脱着温度以下である。或る成分/化合物のかなりの部分が以前の脱着温度において既に脱着しているものとなり得る一方で、実質的に全ての他の交絡物質も脱着されているものとなり得るので、これらの化合物/成分の分離孤立化が促進される。次いで、上述のようにサンプルの第二部分が分析のためにリングダウンキャビティ84内に投入される(540)。次に、制御モジュール204は、レーザ24とレーザ28の一方を作動させて、選択波長においてレーザビームを発生させる(550)。レーザビームはリングダウンキャビティ84内に向けられて、キャビティを光で充満させる。リングダウンキャビティ84が充満されると、レーザビームを消失させる(560)。次いで、液体窒素冷却検出器100が、後方キャビティミラー88bを介してリングダウンキャビティ84から出射する光の光強度を記録する(570)。リングダウンキャビティ84から出射する光は、液体窒素冷却検出器100によって記録されて制御モジュール204に送信される光強度減衰データを表す。
【0161】
リングダウン事象が完了すると、リングダウン事象を再び繰り返すかどうかを決定する(580)。上述のように、リングダウン事象を複数回にわたって繰り返し、各リングダウンについて光強度減衰データの減衰率を決定し、異常の影響を最小にするように減衰率を平均化することによって、一つ以上の集合的基準を決定することが望ましくなり得る。もう一つのリングダウン事象を繰り返す場合、選択波長においてレーザビームを発生させる(550)。代わりに、これ以上リングダウン事象が行われない場合には、波長の組のうちに分析すべき他の波長が存在するかどうかを決定する(590)。分析すべき他の波長が存在すると決定されると、次の波長のレーザビームを発生させる(550)。代わりに、CRDSを行うためにレーザビームを発生させる波長がこれ以上存在しない場合には、570において収集された光強度減衰データを分析し(595)、その後、方法500が終了する。次いで、収集された光強度減衰データを分析する。
【0162】
光強度減衰データを分析して予測モデルを生成する少なくとも一つのプロセッサは、CRDSシステムの他の素子と完全に統合されているものとして図示され説明されているが、他の実施形態では、その少なくとも一つのプロセッサのうち一つ以上が、ストレージを有し上述の例示の実施形態の制御モジュールの機能の一部又は全部を行う別個のコンピュータシステムに設けられ得る。
【0163】
図7Aは、他の実施形態におけるCRDSを用いてサンプルを分析するためのシステム600を示す。システム600は、図1と同様のCRDSシステム604を含む。CRDSシステム604は、CRDSシステム604の多様な素子の動作を制御するための少なくとも一つのプロセッサを有する制御モジュール608を有する。制御モジュール608は、データ通信ネットワーク616上でコンピュータシステム612と通信する。コンピュータシステム612は、単一のコンピュータ、又は所望の機能を与えるように局所的及び/又は遠隔で互いに結合された複数のコンピュータであり得る。データ通信ネットワーク616は、制御モジュール608とコンピュータシステム612が少なくとも光強度減衰データとそれに関連する関連パラメータ、例えば、波長、サンプルの少なくとも一部が脱着する温度等と、他の被検体特定のデータ、例えば、上述の交絡因子、被検体識別子、サンプルがいつどこで分析されたかについての時間と位置情報等をやり取りすることを可能にするのに適したあらゆる媒体であり得る。
【0164】
図7Bは、コンピュータシステム612の複数の物理的構成要素と論理的構成要素を示し、中央処理ユニット(CPU,central processing unit)624、ランダムアクセスメモリ(RAM,random access memory)628、入出力(I/O,input/output)インタフェース632、通信インタフェース636、不揮発性ストレージ640、CPU624が他の構成要素と通信することを可能にするローカルバス644が含まれている。CPU624は、一つ以上のプロセッサを含み、少なくともオペレーティングシステムとスペクトル評価アプリケーションを実行することができる。RAM628は、CPU624に対する比較的高速な揮発性ストレージを与える。I/Oインタフェース632は、キーボード、マウス等の一つ以上のデバイスから入力を受信して、ディスプレイ及び/又はスピーカ等の出力デバイスに情報を出力することを可能にする。通信インタフェース636は、データ通信ネットワーク616等のコンピュータネットワーク上で制御モジュール608等の他の通信デバイスとの通信を可能にする。不揮発性ストレージ640は、オペレーティングシステムとプログラムを記憶していて、スペクトル評価アプリケーションを実行するためのコンピュータ実行可能命令を含む。コンピュータシステム612に動作中において、オペレーティングシステム、プログラム及びデータは不揮発性ストレージ640から回収されて、RAM623に置かれ、実行を促進し得る。
【0165】
上述の実施形態における光源は中赤外範囲の光生成する二つのレーザであるが、他の光源も使用可能であることを理解されたい。例えば、可視スペクトルの光を生成するレーザや近赤外レーザが使用可能である。更に、場合によっては、CRDSシステムは、ワーキングビームを発生させるために、三つ以上のレーザ、又は単一のレーザを含むことができる。
【0166】
音響光学変調器に代えて電気光学変調器が使用可能である。
【0167】
音響光学変調器は、ワーキングビームの周波数を上方又は下方シフトするように構成可能である。音響光学変調器によって実現される正味の周波数シフトが、レーザが生成しているワーキングビームの周波数からワーキングビームの周波数を顕著に離してシフトさせて、反射光が、生成されているレーザ光の帯域幅外である限り、反射光と生成ワーキングビームとの間の干渉量を最小にすることができる。
【0168】
他の実施形態では、二つよりも多くの光変調器をCRDSシステムにおいて用いて、リングダウン事象の開始時にワーキングビームをより素早く消失させる更なる消失性能を与えることができる。更に、追加実施形態では、単一の光変調器が使用可能である。
【0169】
他の実施形態では一つ以上の集束レンズが使用され、レーザの各波長のモード整合を可能にするためにレンズを最配置するように並進移動し得る。
【0170】
他の種類の共振キャビティ、特に光共振キャビティにも同じ手法が適用可能である。
【0171】
キャビティ長さが、特定の選択波長についてのキャビティの共振波長近傍となるようにして他の種類の事象を始動させることができる。
【0172】
他の実施形態ではサンプルの分析を1気圧以外の圧力レベルで行うことができる。それに応じて吸収スペクトルの幅が変化し得る。
【0173】
具体的な利点を上記で列挙してきたが、多様な実施形態は、列挙されている利点の一部、全部を含むもの、またいずれも含まないものとなり得る。
【0174】
上述の実施形態では共振キャビティはリングダウンキャビティであるが、他の実施形態では他の種類の共振キャビティが使用可能である。
【0175】
更なる代替実施形態や修正が可能であり、上記例は一つ以上の実施形態の単に例示であることを当業者は理解するものである。従って、その範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0176】
20 CRDSシステム
24 COレーザ
28 炭素13Oレーザ
32 第一レーザビーム
36 第二レーザビーム
40 ミラー
44 ビームスプリッタ
48 サンプリングビーム
52 出力ビーム
56 高速赤外線検出器
60 第一光変調器
64 ミラー
68 第二光変調器
72 集束レンズ
76 ミラー
80 リングダウンチャンバ
84 リングダウンキャビティ
88 キャビティミラー
88a 前方キャビティミラー
88b 後方キャビティミラー
92 ミラーマウント
96 マイクロメータ
96a 機械式マイクロメータ
96b 圧電マイクロメータ
100 液体窒素冷却検出器
104 熱脱着管
105 ステンレス鋼ケース
106 開口
107 受け端
108 発泡体セパレータ
109 吸着材
110 発泡体セパレータ
112 サンプル投入システム
116 窒素ガス源
120 導管
120a ガス吸入ライン
120b 脱着管ライン
120c サンプル出口ライン
124 ソレノイド弁
124a ガス入口弁
124b 補助ガス入口弁
124c ガス吸入ライン弁
124d キャビティ入口弁
124e 流路制御弁
124f 前方弁
124g 後方弁
124h キャビティ出口弁
124i サンプル出口弁
124j 真空遮断弁
124k 真空吸入弁
128 圧力計
130a フィルタ
130b フィルタ
132 加熱器
136 質量流量制御器
140 出口ライン
144 圧力計
148 真空ポンプ
150 ポンプ吸入ライン
200 電子制御サブシステム
204 制御モジュール
205 プロセッサ
206 ストレージ
208 RFドライバ
212 格子アクチュエータ
216 出力カプラ圧電体
220 高電圧増幅器
224 DAQカード
228 アクチュエータドライバ
232 増幅器
236 オシロスコープ
240 温度制御器
244 リレー板
248 3チャネル圧電ドライバ
252 圧電アクチュエータ
256 RFドライバ
260 タイミング回路
264 デジタイザ
RL 共振長さ
300 方法
310 温度を選択し設定
320 サンプルの少なくとも一部を投入
330 選択波長でレーザビームを発生
340 レーザビームを消失
350 光強度減衰データを記録
360 リングダウン事象を繰り返すか?
370 他の波長があるか?
375 サンプルの一部を取り出す
380 順序列中に他の温度があるか?
390 生理学的状態の確率を決定
400 方法
404 サンプルを選択
408 温度順序列を選択
412 加熱器温度を設定
416 サンプルの一部を投入
420 波長でレーザビームを発生
424 レーザビームを消失
428 光強度減衰データを記録
430 リングダウン事象を繰り返すか?
432 他の波長があるか?
436 他の温度があるか?
436 生理学的状態の確率を決定
440 他の温度順序列があるか?
444 他のサンプルがあるか?
448 相関の強い温度順序列を特定
452 温度順序列を選択
456 予測モデルを生成
500 方法
510 加熱器を第一温度に設定
520 サンプルの第一部分を放出
530 加熱器を第二温度に設定
540 サンプルの第二部分を投入
550 選択波長でレーザビームを発生
560 レーザビームを消失
570 光強度減衰データを記録
580 リングダウン事象を繰り返すか?
590 他の波長があるか?
595 収集された光強度減衰データを分析
600 システム
604 CRDSシステム
608 制御モジュール
612 コンピュータシステム
616 データ通信ネットワーク
624 プロセッサ
628 RAM
632 I/Oインタフェース
636 通信インタフェース
640 不揮発性ストレージ
642 バス
648 データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】