(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】細孔
(51)【国際特許分類】
C07K 14/005 20060101AFI20220616BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220616BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20220616BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20220616BHJP
C12N 15/33 20060101ALN20220616BHJP
【FI】
C07K14/005 ZNA
C12M1/34 Z
G01N27/00 Z
C12N15/09 Z
C12N15/33
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560548
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(85)【翻訳文提出日】2021-11-01
(86)【国際出願番号】 GB2020050923
(87)【国際公開番号】W WO2020208357
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511252899
【氏名又は名称】オックスフォード ナノポール テクノロジーズ ピーエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】520305096
【氏名又は名称】ピーアンドゼット バイオロジカル テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ハク,ファージン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シャオイン
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤシンゲ,ラクマル ニシャンタ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,マイケル
【テーマコード(参考)】
2G060
4B029
4H045
【Fターム(参考)】
2G060AA05
2G060AA15
2G060AD06
2G060AG03
2G060AG11
2G060FA17
2G060JA07
2G060KA09
4B029AA07
4B029BB15
4B029BB20
4B029CC11
4B029FA15
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA01
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
バクテリオファージDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質であって、修飾されたポータルタンパク質が、膜に直接挿入することが可能であり、ポータルタンパク質の外面上の1つ以上のアミノ酸残基が、1つ以上の他のアミノ酸残基で置換されるように、ポータルタンパク質が、野生型ポータルタンパク質と比較して修飾されている、および/または野生型ポータルタンパク質と比較して、修飾されたポータルタンパク質の外面疎水性を変化させるように、1つ以上のアミノ酸残基が、ポータルタンパク質の外面上に挿入されている、修飾されたポータルタンパク質。
【選択図】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バクテリオファージDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質であって、前記修飾されたポータルタンパク質が、膜に直接挿入することが可能であり、前記ポータルタンパク質の外面上の1つ以上のアミノ酸残基が、1つ以上の他のアミノ酸残基で置換されるように、前記ポータルタンパク質が、野生型ポータルタンパク質と比較して修飾されている、および/または前記野生型ポータルタンパク質と比較して、前記修飾されたポータルタンパク質の前記外面疎水性を変化させるように、1つ以上のアミノ酸残基が、前記ポータルタンパク質の前記外面上に挿入されている、修飾されたポータルタンパク質。
【請求項2】
前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記ポータルタンパク質の中央疎水性ベルト領域にある、請求項1に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項3】
1つ以上のアミノ酸残基の前記導入が、前記野生型ポータルタンパク質と比較して、前記外面疎水性を増加させる、請求項1または2に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項4】
前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、Phi29 DNAパッケージングモーターの前記ポータルタンパク質のF24、I25、L28、F60、F128、P129、およびP132に対応する位置のうちの1つ以上の1つまたは2つのアミノ酸内の位置にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項5】
前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記ポータルタンパク質のN末端の約30個のアミノ酸内にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項6】
前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記Phi29 DNAパッケージングモーターの前記ポータルタンパク質のR10、E14、R17、Q18、およびR22に対応する位置にある、先行請求項のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項7】
前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記ポータルタンパク質の親水性シス層および/またはトランス層にある、先行請求項のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項8】
前記ポータルタンパク質の前記シス層の前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記Phi29 DNAパッケージングモーターの前記ポータルタンパク質のQ32、Y36、F52、K55、Q59、F60、Y62、N77、G78、A79、L80、S81、R84、R94、A96、S97、P98、およびQ101に対応する位置にあり、および/または前記ポータルタンパク質の前記トランス層の前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記Phi29 DNAパッケージングモーターの前記ポータルタンパク質のP129、T131、E135、Q168に対応する位置にある、請求項7に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項9】
前記ポータルタンパク質の前記シス層またはトランス層の前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記phi29 DNAパッケージングモーターの前記ポータルタンパク質のA79、E135、および/またはQ168に対応する位置にある、請求項8に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項10】
バクテリオファージDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質であって、前記修飾されたポータルタンパク質が、膜に直接挿入することが可能であり、1つ以上のアミノ酸残基が、前記ポータルタンパク質の外面上に導入されて、野生型ポータルタンパク質と比較して前記ポータルタンパク質の前記外面の疎水性を変化させる分子のウィングドメインの外側上またはストークドメイン内に1つ以上の結合部位が導入されている、修飾されたポータルタンパク質。
【請求項11】
前記ポータルタンパク質に導入された前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、システインまたは非天然アミノ酸である、請求項10に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項12】
前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記ポータルタンパク質の親水性シス層および/またはトランス層にある、請求項10または11に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項13】
前記ポータルタンパク質の前記シス層の前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、Phi29 DNAパッケージングモーターの前記ポータルタンパク質のQ32、Y36、F52、K55、Q59、F60、Y62、N77、G78、A79、L80、S81、R84、R94、A96、S97、P98、およびQ101に対応する位置にあり、および/または前記ポータルタンパク質の前記トランス層の前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記Phi29 DNAパッケージングモーターの前記ポータルタンパク質のP129、T131、E135、Q168に対応する位置にある、請求項12に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項14】
前記ポータルタンパク質の前記シス層またはトランス層の前記1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、前記phi29 DNAパッケージングモーターの前記ポータルタンパク質のA79、E135、および/またはQ168に対応する位置にある、請求項13に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項15】
前記少なくとも1つのアミノ酸が、置換および/または挿入によって導入される、先行請求項のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項16】
前記ポータルタンパク質が、前記ポータルタンパク質のN末端で1つ以上のアミノ酸残基の付加および/または削除によって修飾される、先行請求項のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項17】
phi29、T3、T4、T5、T7、SPP1、HK97、ラムダ、G20c、P2、P3、およびP22からなる群から選択されるバクテリオファージからのDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質である、先行請求項のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項18】
同一のサブユニットで構成されている、先行請求項のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項19】
前記野生型ポータルタンパク質と比較して、前記ポータルタンパク質の前記外面の前記疎水性を変化させる前記分子が、疎水性分子である、請求項10~18のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項20】
前記疎水性分子が、ポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、プロトポルフィリンIX、オクタエチルポルフィリン、コレステロール、ヘム、またはビリベルジンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質のサブユニット。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか一項に記載の修飾されたポータルタンパク質を含む、膜。
【請求項23】
脂質膜またはコポリマー膜である、請求項22に記載の膜。
【請求項24】
前記コポリマー膜が、ジブロックまたはトリブロックコポリマー膜である、請求項23に記載の膜。
【請求項25】
請求項22~24のいずれか一項に記載の2つ以上の膜を含む、アレイ。
【請求項26】
センサーデバイスへの挿入に適合している、請求項25に記載のアレイ。
【請求項27】
請求項25または26に記載のアレイと、膜全体に電位を印加するための手段と、前記膜全体で電荷を検出するための手段と、を備える、デバイス。
【請求項28】
前記膜に試料を供給するように構成された流体工学系をさらに備える、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
標的分析物の特徴を判定する方法であって、請求項22~24のいずれか一項に記載の膜を前記標的分析物と接触させることと、前記標的分析物がナノ細孔に対して移動するように前記膜全体に電位を印加することと、前記細孔に対して前記標的分析物が移動する際に1つ以上の測定を行い、それによって前記分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を決定することと、を含む、方法。
【請求項30】
前記測定が、電気的測定および/または光学的測定である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
複数の標的分析物が、特徴判定される、請求項29または30に記載の方法。
【請求項32】
前記標的分析物が、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、炭水化物、代謝産物、または他の化学物質である、請求項29~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記標的分析物が、病状と関連している、請求項29~32のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、修飾されたポータルタンパク質、修飾されたポータルタンパク質を含む膜、および修飾されたポータルタンパク質を含む膜を使用して分析物の特徴を判定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ細孔センシングは、分析物分子とイオン伝導チャネルとの間の個々の結合または相互作用事象の観察に依存する分析物の検出および特徴判定へのアプローチである。ナノ細孔センサーは、ナノメートル寸法の単一細孔を絶縁膜内に置き、分析物分子の存在下で細孔を通る電圧駆動イオン電流を測定することによって作製され得る。ナノ細孔の内部または近くに分析物が存在すると、細孔を通るイオン流が変化し、チャネル全体で測定されるイオン電流または電流の変化をもたらす。分析物の同一性は、その固有の電流シグネチャ、とりわけ電流ブロックの期間および程度、ならびに細孔との相互作用時間中の電流レベルの変動を通して明らかになる。分析物は、有機および無機の小分子、ならびにポリヌクレオチド、ポリペプチド、および多糖類を含む様々な生物学的または合成高分子およびポリマーであり得る。ナノ細孔センシングは、感知された分析物の同一性を明らかにし、単一分子のカウントを実施することができるが、ヌクレオチド、アミノ酸、またはグリカン配列などの分析物の組成、ならびにメチル化およびアシル化、リン酸化、ヒドロキシル化、酸化、還元、グリコシル化、脱炭酸、脱アミノ化などの塩基、アミノ酸、またはグリカン修飾の存在に関する情報を提供することもできる。ナノ細孔センシングは、迅速かつ安価なポリヌクレオチド配列決定を可能にする可能性があり、数十~数万塩基長のポリヌクレオチドの単一分子配列リードを提供する。
【0003】
生体由来のナノ細孔は、天然の膜タンパク質に基づいており、精製したタンパク質と膜を接触させ、膜に電位を印加することによって、コポリマー膜に挿入することができる。
【0004】
phi29バクテリオファージgp10ポータルタンパク質は、gp10の12個のサブユニットからプロペラ様構造に組み立てられている。これは、14.6nmの外径および7.5nmの高さを有する。最も狭い狭窄部では、野生型チャネルは、3.6nmである。12個のサブユニットの各々は、3つのヘリックスバンドル、α-βモチーフ、およびより広いC末端の6本鎖SH3様ドメインで構成される、中央α-ヘリックスドメインを含む細長い形状を有する。ポータルタンパク質は、天然の膜タンパク質またはイオンチャネルではないが、分析物の特徴を判定するためのナノ細孔として提案されている。膜に挿入するためには、バクテリオファージphi29ポータルタンパク質を最初にリポソームに挿入し、次いでこれを平面脂質二重層と融合させる必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示されるのは、膜に自発的に挿入される修飾されたバクテリオファージポータルタンパク質である。挿入されたポータルタンパク質は、ナノ細孔として機能することができる。
【0006】
一態様では、膜に直接挿入することが可能である、バクテリオファージDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質が提供され、ポータルタンパク質の外面上の1つ以上のアミノ酸残基が、1つ以上の他のアミノ酸残基で置換されている、および/または1つ以上のアミノ酸残基が、ポータルタンパク質の外面上に挿入されて、野生型ポータルタンパク質と比較してポータルタンパク質の外面疎水性を変化させる。1つ以上のアミノ酸残基の置換および/または挿入による導入によって、野生型ポータルタンパク質と比較して、外面疎水性を増加または減少させることができる。タンパク質の特定の領域の外面疎水性を、増加または減少させることができる。
【0007】
ポータルタンパク質チャネルは、12個のサブユニットから組み立てられているので、1つのモノマー中の1つ以上の残基を変化させることによって、分子の同じ平面に変異が存在して、チャネル全体での効果が引き起こされるであろう。全体的には、ポータルタンパク質は、ウィングドメインおよびストークドメインの2つのドメインで構成されている。ストークドメインは、ポータルタンパク質のウィングの下に疎水性ベルト領域を含む。
【0008】
一実施形態では、1つ以上の導入されたアミノ酸残基のうちの少なくとも1つは、ポータルタンパク質の中央疎水性ベルト領域にある。1つ以上の導入されるアミノ酸残基は、例えば、置換および/または挿入によって導入され得る。Phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質の疎水性ベルト領域の残基には、F24、I25、L28、F60、F128、P129、およびP132が含まれる。一実施形態では、これらの位置のうちのいずれか1つ以上の1つもしくは2つの残基内の、または類似のポータルタンパク質の1つ以上の対応する位置のアミノ酸は、置換位置に天然に存在するアミノ酸よりも疎水性の高い1つ以上のアミノ酸で置換され得る。一実施形態では、疎水性アミノ酸は、これらの位置のうちのいずれか1つ以上の1つもしくは2つの残基内、または類似のポータルタンパク質の1つ以上の対応する位置に挿入され得る。ポータルタンパク質の各サブユニットのN末端残基は、疎水性ベルト領域にある。一実施形態では、1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つは、ポータルタンパク質のN末端の30個のアミノ酸内にある。例えば、1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つは、Phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質のR10、E14、R17、Q18、および/もしくはR22に対応する位置、または類似のポータルタンパク質内の対応する位置にある。
【0009】
一実施形態では、1つ以上の導入されたアミノ酸残基のうちの少なくとも1つは、ポータルタンパク質の親水性シス層および/またはトランス層にある。ポータルタンパク質のシス層のアミノ酸残基の例には、Phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質のウィングドメインのQ32、Y36、F52、K55、Q59、F60、Y62、N77、G78、A79、L80、S81、R84、R94、A96、S97、P98、およびQ101に対応する位置で含まれる。ポータルタンパク質のトランス層のアミノ酸残基の例は、Phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質のストークドメインのP129、T131、E135、Q168に対応する位置にある。
【0010】
特定の実施形態では、Phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質のA79、E135、および/またはQ168に対応する位置でポータルタンパク質のシス層またはトランス層に導入された1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つが、修飾される。
【0011】
一態様では、膜に直接挿入することが可能である、バクテリオファージDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質が提供され、1つ以上のアミノ酸残基が、ポータルタンパク質の外面上に導入されて、野生型ポータルタンパク質と比較してポータルタンパク質の外面の疎水性を変化させる分子のウィングドメインの外側上またはストークドメイン内に結合部位が導入される。結合部位は、ポータルタンパク質の表面上に存在する残基を別のアミノ酸残基で置換することによって、または1つ以上のアミノ酸残基を挿入することによって導入することができる。
【0012】
一実施形態では、ウィングドメインの外側上またはストークドメイン内に結合部位を導入するためにポータルタンパク質に導入される1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つは、システインおよび/または非天然アミノ酸である。
【0013】
一実施形態では、結合部位を導入するためにポータルタンパク質に導入される1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つは、ポータルタンパク質の親水性シス層および/またはトランス層にある。ポータルタンパク質のシス層のアミノ酸残基の例には、Phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質のウィングドメインのQ32、Y36、F52、K55、Q59、F60、Y62、N77、G78、A79、L80、S81、R84、R94、A96、S97、P98、またはQ101のうちの1つ以上に対応する位置のものが含まれる。ポータルタンパク質のトランス層のアミノ酸残基の例には、Phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質のストークドメインのP129、T131、E135、またはQ168に対応する位置のものが含まれる。
【0014】
特定の実施形態では、Phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質のA79、E135、および/またはQ168に対応する位置でポータルタンパク質のシス層またはトランス層の1つ以上のアミノ酸残基のうちの少なくとも1つは、結合部位を導入するために修飾される。
【0015】
一実施形態では、野生型ポータルタンパク質と比較してポータルタンパク質の外面の疎水性を変化させる分子は、疎水性分子である。例示的な疎水性分子は、ポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、プロトポルフィリンIX、オクタエチルポルフィリン、コレステロール、ヘム、またはビリベルジンを含む分子である。
【0016】
いくつかの実施形態では、修飾されたポータルタンパク質は、ポータルタンパク質のN末端で1つ以上のアミノ酸残基の付加および/または削除によって修飾される。
【0017】
特定の実施形態では、修飾されたポータルタンパク質は、phi29、T3、T4、T5、T7、SPP1、HK97、ラムダ、G20c、P2、P3、およびP22からなる群から選択されるバクテリオファージからのDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質である。
【0018】
一実施形態では、修飾されたポータルタンパク質は、同一のサブユニットで構成される。
【0019】
他の態様では、以下が提供される:
-本明細書に開示の修飾されたポータルタンパク質のサブユニット、
-本明細書に開示の修飾されたポータルタンパク質を含む膜、
-本明細書に開示の修飾されたポータルタンパク質を含む2つ以上の膜を含むアレイ、
-本明細書に開示の修飾されたポータルタンパク質を各々含む2つ以上の膜を含むアレイと、膜全体に電位を印加するための手段と、膜全体で電荷を検出するための手段と、を備えるデバイス、および
-標的分析物の特徴を判定する方法であって、本明細書に開示の修飾されたポータルタンパク質を含む膜を標的分析物と接触させることと、標的分析物がナノ細孔に対して移動するように膜全体に電位を印加することと、細孔に対して標的分析物が移動する際に1つ以上の測定を行い、それによって分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を決定することと、を含む、方法。
【0020】
一実施形態では、膜は、脂質膜、またはジブロックもしくはトリブロックコポリマー膜などのコポリマー膜である。
【0021】
一実施形態では、アレイは、センサーデバイスへの挿入に適合している。
【0022】
一実施形態では、デバイスは、試料を膜に供給するように構成された流体工学系をさらに備える。
【0023】
一実施形態では、方法は、電気的測定および/または光学的測定を行うことを含む。方法の一実施形態では、複数の標的分析物が特徴判定される。方法の一実施形態では、標的分析物は、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、炭水化物、代謝産物、または他の化学物質である。方法の一実施形態では、標的分析物は、病状と関連している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】異なる角度からのphi29 gp10ポータルタンパク質の構造を示している。細孔のサブユニット(モノマー単位)の構造も示す。疎水性基を組み込むための、phi29 gp10ポータルタンパク質表面上にコンジュゲーション部位を生成する代表的な位置を、タンパク質の1つのモノマーにおいて示している。A.野生型phi29 gp10細孔の側面図。直接膜に挿入するためにタンパク質操作が必要な対象の領域が、四角で囲まれている。残基は、Bに示されるように、ウィングドメインまたはストークドメインのいずれかに存在する。細孔の2つの別個のドメインが、モノマー単位で示されている。B.組み立てられた細孔のモノマー単位(12個の組み立てられたサブユニットのうちの1つ)が示されている。ウィングドメインを黒(残基1~125)で示し、ストークドメインを灰色(残基120~309)で示している。パネルAの四角で囲まれている対象の領域は、両方のタンパク質ドメインの一部を包含する。C.疎水性膜固定モジュールを組み込むためにコンジュゲーション部位を生成するための、WT phi29 gp10タンパク質の代表的な位置。ウィングドメインの特定の変異ポイントには、残基Q32、Y36、F52、K55、Q59、F60、Y62、N77、G78、A79、L80、S81、R84、R94、A96、S97、P98およびQ101が含まれ、ストークドメインの特定の変異ポイントには、P129、T131、E135、およびQ168が含まれる。D.20個の天然アミノ酸の疎水性スケールを示すチャート。典型的には、対象の領域の相対的な疎水性を向上するために、I、VL、またはFは、変異の標的ポイントに導入される。
【
図2】疎水性基を組み込むために、phi29 gp10ポータルタンパク質表面上にシステイン変異を生成する代表的な位置を示している。これらの位置には、ウィングドメインのA79C、ならびにストークドメインのE135CおよびQ168Cが含まれる。この図に示されていない他の位置には、ウィングドメインのQ32、Y36、F52、K55、Q59、F60、Y62、N77、G78、L80、S81、R84、R94、A96、S97、P98、Q101、およびストークドメインのP129、T131が含まれる。タンパク質は十二量体として組み立てられているので、各変異は、リングを生成する。システイン残基は、標準的なスルフヒドリル化学を介して疎水性モジュールの連結を可能にする。「クリック」化学が媒介する化学的コンジュゲーションのために、システインの代わりに、アルキン側鎖を有するアミノ酸などの任意の非天然アミノ酸も組み込んでもよい。
【
図3】ポリマー膜への挿入を容易にするために、phi29 gp10ポータルタンパク質表面上に疎水性変異を生成する代表的な位置を示している。これらの位置には、サブユニットのN末端に近いウィングドメインのR10、E14、R17、Q18、およびR22が含まれる。これらの残基は、典型的には、疎水性残基I、V、L、またはFで変異されている。タンパク質は、十二量体として組み立てられているので、各変異は、平面に沿って疎水性残基のリングを生成する。膜コアに対する疎水性アミノ酸または疎水性固定モジュールの位置によって、膜内で細孔が存在する位置が決定される。
【
図4】代表的なphi29 gp10ポータルタンパク質変異体A79Cが発現および精製されたことを示す、SDS-PAGEゲルである。変異体A79C遺伝子を発現ベクターにクローニングし、次いでE.coliに形質転換させた。形質転換に成功した細菌を、LB培地で一晩培養した。IPTGを添加することによって、タンパク質発現を誘導した。誘導後、細菌を収集し、次いで溶解させた。タンパク質と他の成分を、遠心分離によって区別した。Hisタグ付きのNi-NTA His結合樹脂を適用して、変異体タンパク質を精製した。図に示されるように、イミダゾールの濃度を増加させながら含有する溶出緩衝液を使用して、タンパク質を溶出させた。溶出液を収集し濃縮した後、FPLCで精製した。SDS-PAGEゲルを実行して、タンパク質試料をチェックした。
【
図5】代表的なphi29 gp10ポータルタンパク質変異体E135Cが発現および精製されたことを示す、SDS-PAGEゲルである。変異体E135C遺伝子を発現ベクターにクローニングし、次いでE.coliに形質転換させた。形質転換に成功した細菌を、LB培地で一晩培養した。IPTGを添加することによって、タンパク質発現を誘導した。誘導後、細菌を収集し、次いで溶解させた。タンパク質と他の成分を、遠心分離によって区別した。Hisタグ付きのNi-NTA His結合樹脂を適用して、変異体タンパク質を精製した。図に示されるように、イミダゾールの濃度を増加させながら含有する溶出緩衝液を使用して、タンパク質を溶出させた。溶出液を収集し濃縮した後、FPLCで精製した。SDS-PAGEゲルを実行して、タンパク質試料をチェックした。
【
図6】代表的なphi29 gp10ポータルタンパク質変異体Q168Cが発現および精製されたことを示す、SDS-PAGEゲルである。変異体Q168C遺伝子を発現ベクターにクローニングし、次いでE.coliに形質転換させた。形質転換に成功した細菌を、LB培地で一晩培養した。IPTGを添加することによって、タンパク質発現を誘導した。誘導後、細菌を収集し、次いで溶解させた。タンパク質と他の成分を、遠心分離によって区別した。Hisタグ付きのNi-NTA His結合樹脂を適用して、変異体タンパク質を精製した。図に示されるように、イミダゾールの濃度を増加させながら含有する溶出緩衝液を使用して、タンパク質を溶出させた。溶出液を収集し濃縮した後、FPLCで精製した。SDS-PAGEゲルを実行して、タンパク質試料をチェックした。
【
図7】代表的なphi29 gp10ポータルタンパク質変異体R10L、E14V、R17L、およびN-7Δ(変異体-b)(図のマーカーの左側)、ならびにR10L、E14V、R17L、Q18L、R22I、およびN-7Δ(変異体-c)(図のマーカーの右側)が、発現および精製されたことを示す、SDS-PAGEゲルである。変異体遺伝子を発現ベクターにクローニングし、次いでE.coliに形質転換させた。形質転換に成功した細菌を、LB培地で一晩培養した。IPTGを添加することによって、タンパク質発現を誘導した。誘導後、細菌を収集し、次いで溶解させた。タンパク質と他の成分を、遠心分離によって区別した。Hisタグ付きのNi-NTA His結合樹脂を適用して、変異体タンパク質を精製した。図に示されるように、イミダゾールの濃度を増加させながら含有する溶出緩衝液を使用して、タンパク質を溶出させた。溶出液を収集し濃縮した後、FPLCで精製した。SDS-PAGEゲルを実行して、タンパク質試料をチェックした。
【
図8】代表的なphi29 gp10ポータルタンパク質変異体N-I-L(変異体-d)(図のマーカーの左側)、およびR10L、E14V、R17L、N末端にI-Lが付加されたN-ter-7Δ(変異体-e)(図のマーカーの右側)が、発現および精製されたことを示す、SDS-PAGEゲルである。変異体遺伝子を発現ベクターにクローニングし、次いでE.coliに形質転換させた。形質転換に成功した細菌を、LB培地で一晩培養した。IPTGを添加することによって、タンパク質発現を誘導した。誘導後、細菌を収集し、次いで溶解させた。タンパク質と他の成分を、遠心分離によって区別した。Hisタグ付きのNi-NTA His結合樹脂を適用して、変異体タンパク質を精製した。図に示されるように、イミダゾールの濃度を増加させながら含有する溶出緩衝液を使用して、タンパク質を溶出させた。溶出液を収集し濃縮した後、FPLCで精製した。SDS-PAGEゲルを実行して、タンパク質試料をチェックした。
【
図9-1】Oxford Nanopore Technologies MinIONデバイスでphi29 gp10ポータルタンパク質の操作された変異体を使用して得られたデータを示している。A.ONT膜への直接挿入は、WT phi29 gp10細孔で観察されなかった。B~F.操作されたphi29 gp10細孔のONT膜への直接挿入、B.変異体(R10L、E14V)、C.ポルフィリンがコンジュゲートされた変異体A79C、D.変異体(R10L、E14V、R17L、7aaが削除され、ILタグが付加されたN末端)、E.変異体(R10L、E14V、R17L、7a.aが削除されたN末端)、F.コレステロールがコンジュゲートされた変異体(Q168C)。操作されたタンパク質チャネルをONT膜に挿入するために、1mg/ml濃度を有するタンパク質をC13緩衝液(25mMリン酸カリウム、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェロシアン化カリウム、pH8)で1000倍に希釈した。MinIONフローセルのプライミングポートを通じて、200ulの希釈したタンパク質試料を添加した。次いで、タンパク質チャネルの挿入を支援するために、+50~+350mV(5mV刻み、20秒保持)で増加させながら電圧を印加した。次いで、フローセルを2mLのC13緩衝液で流した。次いで、典型的には、保持時間を変動させながら(各電圧で2分~10分保持)、±50、±100、±150、±200mVでIV曲線を実行し、経時的な細孔挙動を観察した。DNAまたはペプチド(1pM濃度)などの分析物をC13緩衝液中に懸濁させ、フローセルに添加して細孔機能をチェックした。A~Fでは、-100mVの電圧を印加した。導電緩衝液:C13(ONT試薬)。分析物-機能的な細孔の指標である、特徴的な電流遮断事象で上昇するTATペプチド。G.WTおよび操作された変異体の相対的な挿入率。率は、WTに対する。記載の各カテゴリー内の異なる変異体にはバリエーションがあるが、全体的な傾向はチャートに示されている通りである。
【
図9-2】Oxford Nanopore Technologies MinIONデバイスでphi29 gp10ポータルタンパク質の操作された変異体を使用して得られたデータを示している(
図9-1の続き)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、特定の実施形態に関して、および特定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。特許請求の範囲のいかなる参照符号も、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。もちろん、必ずしもすべての態様または利点が本発明の特定の実施形態に従って達成されるわけではないことを理解されたい。したがって、例えば、当業者は、本明細書で教示または示唆され得る他の態様または利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示される1つの利点または利点のグループを達成または最適化する方法で本発明を具体化または実施することができることを認識するであろう。
【0026】
本発明は、組織および動作方法の両方に関して、その特徴および利点とともに、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解され得る。本発明の態様および利点は、以下に記載される実施形態を参照して明らかになり、解明されるであろう。本明細書を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での「一実施形態では」または「実施形態では」という句の出現は、必ずしもすべて同じ実施形態を指すとは限らないが、そうであってもよい。同様に、本発明の例示的な実施形態の説明では、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図、またはその説明にまとめられて、開示を簡素化し、様々な発明的態様のうちの1つ以上の理解を支援することを目的とする場合があることを理解されたい。しかしながら、この開示方法は、特許請求された発明が各特許請求項に明示的に列挙されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明的態様は、単一の前述の開示された実施形態のすべての特徴に満たない。
【0027】
さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別途明確に示さない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば、「ポリヌクレオチド」への言及は2つ以上のポリヌクレオチドを含み、「ポリヌクレオチド結合タンパク質」への言及は2つ以上のかかるタンパク質を含み、「ヘリカーゼ」への言及は2つ以上のヘリカーゼを含み、「モノマー」への言及は2つ以上のモノマーを指し、「細孔」への言及は2つ以上の細孔などを含む。
【0028】
本明細書中のすべての考察において、アミノ酸の標準的な1文字のコードが使用される。それらは以下の通りである:アラニン(A)、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、アスパラギン酸(D)、システイン(C)、グルタミン酸(E)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、リジン(K)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、プロリン(P)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、およびバリン(V)。標準的な置換記法も使用され、すなわち、Q42Rは、42位におけるQがRで置換されていることを意味する。
【0029】
ポータルタンパク質
ナノ細孔は、バクテリオファージDNAパッケージングモーターなどのウイルスDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質である。
【0030】
バクテリオファージDNAパッケージングモーターのポータルタンパク質は、円錐台構造を有する。タンパク質は、コネクタータンパク質サブユニットとも称される、12個のポータルタンパク質サブユニットによって形成された中央チャネルを有する。バクテリオファージphi29からの例示的な未修飾のウイルスDNAパッケージングモーターポータルタンパク質は精製されており、その三次元構造は、結晶学的に特徴判定されている(例えば、Guasch et al.,1998 FEBS Lett.430:283、Marais et al.,2008 Structure 16:1267)。phi29チャネルは、3.6nmの狭い部分および6nm幅の端部を有し、これは、ほとんどの膜タンパク質チャネルよりも大きい。したがって、本明細書に記載のいくつかの実施形態は、phi29 DNAパッケージングgp10モーターポータルタンパク質(例えば、Genbank受託番号ACE96033 UniProt ID:P04332、遺伝子ID:6446518、配列番号1)、ならびに/またはチャネルを形成することが可能であるその断片、バリアント、および誘導体を含む、そのポリペプチドサブユニット(例えば、受託番号gi29565762、gi31072023、gi66395194、gi29565739、gi157738604)を参照する。
【0031】
ウイルスのポータルタンパク質は、配列相同性をほとんど共有せず、分子量が異なるが、顕著な根本的な構造的類似性がある。特に、他のdsDNAウイルスのDNAパッケージングモーターコネクタータンパク質(例えば、T4、ラムダ、P22、P2、T3、T5、およびT7)は、phi29コネクターと配列相同性をほとんど共有せず、分子量が異なるにもかかわらず、顕著な根本的な構造的類似性を呈する(例えば、Bazinet et al.,1985 Ann Rev.Microbiol.39:109-29)。
【0032】
特定の実施形態では、他のdsDNAウイルスから単離されたウイルスDNAパッケージングモーターポータルタンパク質の使用が企図され、これらには、単離されたdsDNAウイルスDNAパッケージングモーターポータルタンパク質(例えば、T4(受託番号NP-049782)(Driedonks et al.,1981 J Mol Biol 152:641)、ラムダ(受託番号gi549295、gi6723246、gi15837315、gi16764273)(Kochan et al.,1984 J Mol Biol 174:433)、SPP1(受託番号P54309)、P22(受託番号AAA72961)(Cingolani etal.,2002 J Struct Biol 139:46)、G20c(受託番号KX987127.1)、P2(受託番号NP-046757、P3(Nutter et al.,1972J.Viral.10(3):560-2)、T3(受託番号CAA35152)(Carazo et al.,1986Jl,.Ultrastruct Mol Struct Res 94:105)、T5(受託番号AAX12078、YP-006980;AAS77191;AAU05287)、T7(Acc.No.NP-041995)(Cerritelli et al.,1996 J Mol Biol 285:299、Agirrezabala et al.,2005 J Mol Biol 347:895))などのファージラムダ、P2、P3、P22、T3、T4、T5、SPP1、HK97およびT7のうちのいずれかから単離されたウイルスDNAパッケージングモーターポータルタンパク質が含まれるがそれらに限定されない。いくつかの実施形態では、コネクタータンパク質は、バクテリオファージT3コネクタータンパク質gp8を含む。いくつかの実施形態では、コネクタータンパク質は、バクテリオファージT7コネクタータンパク質gp8を含む。いくつかの実施形態では、コネクタータンパク質は、バクテリオファージT4コネクタータンパク質gp20を含む。いくつかの実施形態では、コネクタータンパク質は、バクテリオファージT5コネクタータンパク質gp7を含む。いくつかの実施形態では、コネクタータンパク質は、バクテリオファージSPP1コネクタータンパク質gp6を含む。いくつかの実施形態では、コネクタータンパク質は、バクテリオファージHK97コネクタータンパク質gp3を含む。
【0033】
本明細書に例示されるphi29 DNAパッケージングモーターポータルタンパク質のように、実質的に構造的に特徴判定されているこれらおよび他のdsDNAウイルスパッケージングモーターポータルタンパク質は、それらが膜層に組み込まれて、phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質と同じ方法で電位が膜全体に印加されるとコンダクタンスが発生し得る開口部を形成するように修飾され得る。したがって、phi29ポータルタンパク質に関する本明細書の開示は、そのような他の単離されたdsDNAウイルスDNAパッケージングモーターポータルタンパク質のうちのいずれかの使用が企図される、関連する実施形態を例示することを意図している。
【0034】
phi29 DNAパッケージングモーターのポータルタンパク質、または別のバクテリオファージDNAパッケージングモーターのポータルタンパク質は、本明細書に見られる教示に従って修飾することができる。
【0035】
本開示に従った膜組み込みの特性(例えば、膜層への安定した膜貫通統合)を有するように人工的に操作されている、単離されたDNAパッケージングモーターポータルタンパク質は、がんバイオマーカーのための導電性バイオセンサーとして使用することができる。ポータルタンパク質はまた、ポータルタンパク質によって形成された膜貫通チャネルの導電特性に影響を与えるように人工的に操作することもできる。
【0036】
phi29コネクターなどの修飾された単離された二本鎖DNAウイルスDNAパッケージングモータータンパク質コネクターは、タンパク質結晶学的構造データが容易に入手可能である場合、本開示の実施形態で使用するために所望の構造を有するように操作することができる。phi29コネクターの大規模生産および精製のための手順が開発されている(Guo et al.,2005、Ibanez et al.,Nucleic Acids Res.12,2351-2365(1984)、Robinson et al.,Nucleic Acids Res.34,2698-2709(2006)、Xiao et al.,ACS Nano 3、100-107(2009)。
【0037】
一実施形態では、修飾されたバクテリオファージphi29ウイルスDNAパッケージングモーターポータルタンパク質(例えば、配列番号1)は、野生型タンパク質または野生型phi29ウイルスDNAパッケージングモーターコネクタータンパク質由来のその一部分に対して少なくとも80%、90%、または95%の同一性を有し、その一部分は、少なくとも240、260、280、285、290、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330以上を含む、少なくとも150、175、200、225、250、275個のアミノ酸を含有する。
【0038】
他の実施形態では、修飾されたポータルタンパク質は、ファージT4、ラムダファージ(受託番号gi549295、gi6723246、gi15837315、gi16764273)、ファージSPP1(受託番号P54309)、ファージP22(受託番号AAA72961)、ファージP2(受託番号NP-046757)、ファージP3(Nutter et al.,1972 J.Virol.10(3):560-2)、ファージT3(受託番号CAA35152)、ファージT5(受託番号AAX12078、YP006980;AAS77191;AAU05287)、ファージT7(受託番号NP041995)、およびファージHK97(受託番号NP_037699)などの別のバクテリオファージからの修飾された二本鎖DNAポータルタンパク質である。例えば、修飾されたポータルタンパク質は、これらのバクテリオファージウイルスDNAパッケージングモーターポータルタンパク質のうちのいずれかの変異体であり得、例えば、本明細書に開示のポリペプチドおよびそのようなポリペプチドの断片に対して少なくとも80%、90%、または95%の同一性を有し得る。変異体ポータルタンパク質サブユニットの「断片」は、一般に、少なくとも240、260、280、285、290、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330以上を含む、少なくとも150、175、200、225、250、275個のアミノ酸を含有する。
【0039】
本明細書で使用される「アミノ酸同一性」という用語は、比較のウィンドウにわたって、配列がアミノ酸ごとに同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較のウィンドウ上で2つの最適に整列された配列を比較し、同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列で発生する位置の数を決定し、一致する位置の数を算出し、一致した位置の数を比較のウィンドウ内の位置の合計数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割り、結果に100を掛けて配列同一性のパーセンテージを算出する。
【0040】
ポータルタンパク質は、上のバクテリオファージポータルタンパク質のうちのいずれかの修飾された類似体であり得る。ウイルスDNAパッケージングモーターポータルタンパク質に言及するときの「類似体」は、ウイルスDNAパッケージングモーターポータルタンパク質の天然の相同体またはバリアントを意味する。ポータルタンパク質は、典型的には、オリゴマー、例えばホモ十二量体チャネルに自己集合することが可能であるサブユニットで構成されている。
【0041】
ポータルタンパク質は、(i)アミノ酸残基のうちの1つ以上が保存または非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)で置換されており、そのような置換されたアミノ酸残基は、遺伝子コードによってコードされているものであってもなくてもよいもの、または(ii)アミノ酸残基のうちの1つ以上が置換基を含むもの、または(iii)追加のアミノ酸が、変異体ポータルタンパク質の検出または特定の機能変化に用いられるアミノ酸を含む、1つ以上のポータルタンパク質サブユニットに遺伝子的に融合しているもの、であり得る。
【0042】
修飾されたポータルタンパク質は、単離される。「単離された」という用語は、材料が元の環境(例えば、天然の場合は天然環境)から取り出されることを意味する。例えば、無傷の天然のウイルスに存在する天然のタンパク質は単離されていないが、天然系で共存する材料のうちのいくつかまたはすべてから分離された同じタンパク質は単離されている。そのようなタンパク質は、組成物の一部であり得、そのようなベクターまたは組成物は、その天然環境の一部ではないという点で依然として単離されている。バクテリオファージモータータンパク質のポータルタンパク質を単離する方法は、当該技術分野において既知である。本明細書に記載の方法および組成物で使用するためのバクテリオファージモータータンパク質のポータルタンパク質は、当該技術分野で周知の組み換えにおいて使用されている方法で生産することができる。
【0043】
一実施形態では、修飾されたタンパク質は、ポータルタンパク質の短縮バージョンであり、および/または修飾されたタンパク質は、ポータルタンパク質のサブユニットのうちの1つ以上の一端もしくは両端に追加のアミノ酸を含み得、および/またはポータルタンパク質のアミノ酸配列内の1つ以上のアミノ酸の置換、削除、または付加を含み得る。
【0044】
短縮ポータルタンパク質は、N末端および/またはC末端で短縮され得る。例えば、最大約20個などの最大約30個のアミノ酸がN末端から削除され得、10、9、8、または7個のアミノ酸がN末端から削除され得る。あるいは、または加えて、最大約20個などの最大約30個のアミノ酸がC末端から削除され得、10、9、8、または7個のアミノ酸がC末端から削除され得る。3~約20、4~約10、5~9、または6、7、もしくは8個のアミノ酸などの2~約30個などの1つ以上のアミノ酸が、N末端、および/もしくはC末端、または短縮されたN末端および/もしくは短縮されたC末端に付加され得る。
【0045】
修飾されたポータルタンパク質は、チャネルを含む。一実施形態では、ポータルタンパク質は、ナノ細孔のチャネルの1つ以上の特性を変化させるように修飾される。一実施形態では、これは、チャネルの内側にある、および/またはチャネルへの入口のアミノ酸残基のうちの1つ以上を修飾することによって達成される。
【0046】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔は、ポータルタンパク質の完全長サブユニットのみを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、ナノ細孔は、7、8、9、10、11、または12個のサブユニットなどの6つ以上のポータルタンパク質サブユニットで形成された多量体タンパク質である。例えば、ナノ細孔は、十二量体タンパク質であり得る。サブユニットのうちの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個などの1つ以上が、修飾され得る。一実施形態では、サブユニットのうちの1つ以上は、例えば、ナノ細孔の一端または両端での親水性を増加させるなどのために、C末端および/またはN末端で修飾され得る。例えば、サブユニットのうちの1つ以上は、C末端および/またはN末端への柔軟なリンカーおよび/またはペプチドタグの付加によって修飾され得る。いくつかの実施形態では、ナノ細孔は、同一のサブユニットで構成される。例えば、4または5~10、好ましくは6~8個のアミノ酸などの3~12個のアミノ酸を含むリンカーなどの任意の好適なリンカーが使用され得る。リンカーのアミノ酸は、リジン、セリン、アルギニン、プロリン、グリシン、アラニンアスパラギン酸、チロシン、イソロイシン、および/またはスレオニンから選択され得る。好適なリンカーの例には、以下:GGGS、PGGS、PGGG、RPPPPP、RPPPP、VGG、RPPG、PPPP、RPPG、PPPPPPPPP、RPPG、GGG、GGGG、GGGGG、GGGGGG、およびDYDIPTTが挙げられるがこれらに限定されない。
【0048】
修飾されたポータルタンパク質は、例えば、その精製を容易にするために、タグを含み得る。ポータルタンパク質の精製を容易にするために、任意の好適なペプチドタグが使用され得る。例えば、一実施形態では、タグは、strepタグであり得る。一実施形態では、strepタグは、8~11個のアミノ酸の長さを有し、および/またはstrepタグアミノ酸配列は、モチーフHPQを含有する。strepタグは、例えば、アミノ酸配列WSHPQSEK、WSHPQFEK、NWSHPQFEK、PWSHPQFEK、またはGGSHPQFEGを含むかまたはそれらからなり得る。この配列は、コア「HPQ」モチーフが維持されているという条件で、アミノ酸のうちの2、3、4、または5つなどの1つ以上の付加、削除、または置換によって変動させることができる。バリアント配列は、典型的には、8~11個のアミノ酸NWSHPQFEK、PWSHPQFEK、およびGGSHPQFEGである。別の実施形態では、タグは、Hisタグ(典型的には、His6(HHHHHH))であり得る。
【0049】
ポータルタンパク質は、細孔の組み立ての前または後に、タグおよび/またはリンカーをサブユニットから除去することを可能にするための切断部位を含み得る。任意の好適な切断部位を使用することができる。一例は、TEV(Tobacco Etch Virus)切断部位(Q残基とG残基との間で切断が発生するENLYFQG)である。
【0050】
挿入を容易にするためのアミノ酸の導入による修飾
一態様では、ポータルタンパク質は、1つ以上のアミノ酸を導入して細孔の表面の疎水性を変化させることによって、膜への直接挿入を容易にするように修飾される。1つ以上のアミノ酸は、置換および/または挿入によって導入され得る。挿入されたアミノ酸は、ポータルタンパク質サブユニットのアミノ酸鎖の一端もしくは両端に、および/または鎖内の2つのアミノ酸の間に挿入され得る。サブユニットが折りたたまれ、細孔に組み立てられると、導入されたアミノ酸は、細孔の外面上に存在する。
【0051】
導入は、細孔のサブユニットのうちの1つ以上の少なくとも1つのアミノ酸に対して行われる。細孔の各サブユニットは、独立して、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上のアミノ酸導入などの1つ以上の導入されたアミノ酸を含み得る。細孔は、同一の修飾されたサブユニットで構成され得るが、細孔のサブユニットのうちの1つ以上は、他とは異なり得る。細孔は、例えば、3つ以上の異なるサブユニットからなどの、2つ以上の異なるサブユニットで構成され得る。例えば、4、5、6、7、8、9、10、または11個の異なる修飾されたサブユニットが細孔に存在し得る。一実施形態では、すべてのサブユニットは、互いに異なり得る。典型的には、少なくとも1つのアミノ酸が、細孔の各サブユニットに導入される。例えば、細孔が12個のサブユニットを含む場合、細孔は、細孔の表面の疎水性を変化させるために、12個以上の導入または置換されたアミノ酸を含む。
【0052】
修飾は、典型的には、細孔の外側周囲の中央疎水性ベルトで行われる。中央疎水性ベルト領域の位置を、
図1に示す。細孔の中央ベルト領域は、典型的には、その疎水性を増加させるために修飾される。疎水性の増加は、例えば、親水性、中性、または比較的疎水性の低いアミノ酸(例えば、アラニンおよび/またはメチオニンなど)をより疎水性の残基(例えば、ロイシン、バリン、および/またはイソロイシンなど)で置換することによって達成され得る。
図1Dは、アミノ酸の相対的な疎水性を示している。疎水性を増加させるための置換は、置き換えられるアミノ酸よりも
図1Dに示される疎水性スケールでより正の数を有する任意のアミノ酸で、細孔に存在する1つ以上のアミノ酸を置換することであり得る。
【0053】
疎水性の増加は、ポータルタンパク質サブユニットのアミノ酸鎖の中および/または末端に1つ以上の疎水性アミノ酸を挿入することによって達成され得る。疎水性アミノ酸を、
図1Dに示す。
【0054】
導入された疎水性アミノ酸の位置によって、膜内で細孔が存在する位置が決定され得る。膜に対する細孔の位置は、上下に(例えば、いずれかの方向に最大0.5nm)シフトさせることができる。したがって、膜における細孔の位置を制御して、膜の細孔の安定性を改善することができる。細孔の固有の電気生理学は、典型的には、細孔の外面上のアミノ酸の変化によって変更されない。
【0055】
一実施形態では、ウィングドメインの下のベルト領域に1つ以上のアミノ酸を導入することによって、疎水性を変化させる。標的位置には、phi29ポータルタンパク質サブユニットのPhe24、Ile25、Leu28、Phe60、Phe128、Pro129、およびPro132、ならびに類似のサブユニットの対応する位置が含まれる。追加の疎水性残基は、これらの標的位置のうちの2、3、4、5、6、7、または8つなどの、これらの標的位置のうちのいずれか1つ以上の前および/または後のいずれかの、1つまたは2つのアミノ酸内で置換または挿入され得る。例えば、配列番号1の位置22、23、26、27、29、30、58、59、61、62、126、127、130、131、133、および/または134に対応する位置でのアミノ酸残基の疎水性は、アミノ酸残基の置換または挿入によって増加させることができる。変更は、これらの位置のうちのいずれか2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上などの、任意の1つ以上で行うことができる。変異の他の例示的な位置には、配列番号1のArg10、Glu14、Arg17、Gln18、およびArg22に対応する位置が挙げられる。これらのアミノ酸のうちのいずれか1つ以上を、より疎水性の残基で置換して、細孔の中央領域の表面の疎水性を増加させることができる。
【0056】
一実施形態では、親水性特性を変更するために、タンパク質ストークの2つの遠位部分で濃縮された、ストーク領域で露出した電荷残基(配列番号1のArg17、Arg22、および/またはLys172に対応する残基など)、ならびにAsn/Gln残基(配列番号1のAsn166、Asn167、Gln168、Gln173、Asn176、および/またはGln177に対応するそのような残基)を変化させてもよい。
【0057】
疎水性を変化させる分子のコンジュゲーションを容易にするためのアミノ酸の導入による修飾
一態様では、膜に直接挿入することが可能であるように修飾されたバクテリオファージDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質は、ポータルタンパク質の外面上の1つ以上のアミノ酸残基が別のアミノ酸残基で置換されているもの、および/または1つ以上のアミノ酸残基がポータルタンパク質の外面上に導入されて、野生型ポータルタンパク質と比較してポータルタンパク質の外面の疎水性を変化させる分子の結合部位を導入するものである。結合部位は、ウィングドメインの外側上またはストークドメイン内に導入される。結合部位は、分子の付着部位として機能する。分子は、典型的には、ポータルタンパク質の表面の疎水性を増加させる疎水性分子である。
【0058】
導入された結合部位は、一実施形態では、システイン残基であり得る。別の実施形態では、結合部位は、非天然アミノ酸であり得る。
【0059】
非天然アミノ酸は、天然ではタンパク質に見られないアミノである。非天然アミノ酸は、好ましくは、ヒスチジン、アラニン、イソロイシン、アルギニン、ロイシン、アスパラギン、リジン、アスパラギン酸、メチオニン、システイン、フェニルアラニン、グルタミン酸、スレオニン、グルタミン、トリプトファン、グリシン、バリン、プロリン、セリン、またはチロシンではない。非天然アミノ酸は、より好ましくは、前の文の20個のアミノ酸またはセレノシステインのうちのいずれでもない。
【0060】
本発明で使用するための好ましい非天然アミノ酸には、4-アジド-L-フェニルアラニン(Faz)、4-アセチル-L-フェニルアラニン、3-アセチル-L-フェニルアラニン、4-アセトアセチル-L-フェニルアラニン、O-アリル-L-チロシン、3-(フェニルセラニル)-L-アラニン、O-2-プロピン-1-イル-L-チロシン、4-(ジヒドロキシボリル)-L-フェニルアラニン、4-[(エチルスルファニル)カルボニル]-L-フェニルアラニン、(2S)-2-アミノ-3-{4-[(プロパン-2-イルスルファニル)カルボニルフェニル}プロパン酸、(2S)-2-アミノ-3-{4-[(2-アミノ-3-スルファニルプロパノイル)アミノ]フェニル}プロパン酸、O-メチル-L-チロシン、4-アミノ-L-フェニルアラニン、4-シアノ-L-フェニルアラニン、3-シアノ-L-フェニルアラニン、4-フルオロ-L-フェニルアラニン、4-ヨード-L-フェニルアラニン、4-ブロモ-L-フェニルアラニン、O-(トリフルオロメチル)チロシン、4-ニトロ-L-フェニルアラニン、3-ヒドロキシ-L-チロシン、3-アミノ-L-チロシン、3-ヨード-L-チロシン、4-イソプロピル-L-フェニルアラニン、3-(2-ナフチル)-L-アラニン、4-フェニル-L-フェニルアラニン、(2S)-2-アミノ-3-(ナフタレン-2-イルアミノ)プロパン酸、6-(メチルスルファニル)ノルロイシン、6-オキソ-L-リジン、D-チロシン、(2R)-2-ヒドロキシ-3-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、(2R)-2-アンモニオオクタノエート3-(2,2’-ビピリジン-5-イル)-D-アラニン、2-アミノ-3-(8-ヒドロキシ-3-キノリル)プロパン酸、4-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、S-(2-ニトロベンジル)システイン、(2R)-2-アミノ-3-[(2-ニトロベンジル)スルファニル]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-3-[(2-ニトロベンジル)オキシ]プロパン酸、O-(4,5-ジメトキシ-2-ニトロベンジル)-L-セリン、(2S)-2-アミノ-6-({[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、O-(2-ニトロベンジル)-L-チロシン、2-ニトロフェニルアラニン、4-[(E)-フェニルジアゼニル]-L-フェニルアラニン、4-[3-(トリフルオロメチル)-3H-ジアジレン-3-イル]-D-フェニルアラニン、2-アミノ-3-[[5-(ジメチルアミノ)-1-ナフチル]スルホニルアミノ]プロパン酸、(2S)-2-アミノ-4-(7-ヒドロキシ-2-オキソ-2H-クロメン-4-イル)ブタン酸、(2S)-3-[(6-アセチルナフタレン-2-イル)アミノ]-2-アミノプロパン酸、4-(カルボキシメチル)フェニルアラニン、3-ニトロ-L-チロシン、O-スルホ-L-チロシン、(2R)-6-アセトアミド-2-アンモニオヘキサノエート、1-メチルヒスチジン、2-アミノノナン酸、2-アミノデカン酸、L-ホモシステイン、5-スルファニルノルバリン、6-スルファニル-L-ノルロイシン、5-(メチルスルファニル)-L-ノルバリン、N6-{[(2R,3R)-3-メチル-3,4-ジヒドロ-2H-ピロール-2-イル]カルボニル}-L-リジン、N6-[(ベンジルオキシ)カルボニル]リジン、(2S)-2-アミノ-6-[(シクロペンチルカルボニル)アミノ]ヘキサン酸、N6-[(シクロペンチルオキシ)カルボニル]-L-リジン、(2S)-2-アミノ-6-{[(2R)-テトラヒドロフラン-2-イルカルボニル]アミノ}ヘキサン酸、(2S)-2-アミノ-8-[(2R,3S)-3-エチニルテトラヒドロフラン-2-イル]-8-オキソオクタン酸、N6-(tert-ブトキシカルボニル-L-リジン、(2S)-2-ヒドロキシ-6-({[(2-メチル-2-プロパニル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、N6-[(アリルオキシ)カルボニル]リジン、(2S)-2-アミノ-6-({[(2-アジドベンジル)オキシ]カルボニル}アミノ)ヘキサン酸、N6-L-プロリル-L-リジン、(2S)-2-アミノ-6-{[(プロプ-2-イン-1-イルオキシ)カルボニル]アミノ}ヘキサン酸、およびN6-[(2-アジドエトキシ)カルボニル]-L-リジンが含まれるが、これらに限定されない。最も好ましい非天然アミノ酸は、4-アジド-L-フェニルアラニン(Faz)である。
【0061】
ポータルタンパク質にコンジュゲートすることができる好適な疎水性分子の例には、ポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン、プロトポルフィリンIX、オクタエチルポルフィリン、コレステロール、ヘム、およびビリベルジンが挙げられる。これらおよび他の疎水性分子は、ポータルタンパク質の膜固定を可能にするためにポータルタンパク質に付着され得る。
【0062】
疎水性分子の結合部位の正確な位置を制御して、膜内で細孔が存在する位置を決定することができる。疎水性分子を使用して、膜に対する細孔の位置をシフトさせることができる。例えば、細孔は、疎水性分子によって膜内で上下に(例えば、いずれかの方向に最大0.5nm)シフトさせてもよい。したがって、膜における細孔の安定性を制御することができる。細孔の外面上に疎水性分子を配置しても、細孔の固有の電気生理学的特性は変更されない。
【0063】
結合(またはコンジュゲーション)部位が、Phi29 Gp10ポータルタンパク質に導入され得る位置の例には、Q32、Y36、F52、K55、Q59、F60、Y62、N77、G78、A79、L80、S81、R84、R94、A96、S97、P98、Q101、P129、T131、E135、Q168が挙げられる。Phi29 Gp10ポータルタンパク質のこれらの位置または他のポータルタンパク質の対応する位置の残基のうちの任意の1つ以上を、例えば、システインまたは非天然アミノ酸で置換して、疎水性分子の結合側を導入することができる。あるいは、システイン残基または非天然アミノ酸残基を、これらの位置の1つまたは2つの残基内に挿入してもよい。
【0064】
一実施形態では、疎水性は、サブユニット分子の末端の一方または両方に1つ以上の天然または非天然アミノ酸を付加することによって、膜へのポータルタンパク質の挿入を容易にするように調節される。例えば、親水性または疎水性のタグを、末端の一方または両方に付加してもよい。典型的には、疎水性タグは、分子の中央ベルト領域に存在するN末端に付加され、および/または親水性タグは、C末端ドメインに付加され得る。親水性および/または疎水性タグは、リンカーを介してポータルタンパク質に接合され得る。好適なリンカーは、上に記載されている。
【0065】
例えば、タグは、3または4~10個、例えば5、6、7、8、または9個のアミノ酸などの2~12個のアミノ酸を含み得る。一実施形態では、タグのすべてのアミノ酸は、親水性アミノ酸である。親水性アミノ酸は、(
図1Dに示される)疎水性スケールで負の数を有するアミノ酸である。親水性タグの残基のうちの1つ以上は、疎水性スケールで位置0での残基であり得る。一実施形態では、親水性タグは、全体的に親水性であり得るが、疎水性スケールで正の数を有する1つ以上の疎水性残基を含み得る。
【0066】
疎水性タグを使用する実施形態では、疎水性タグは、例えば、疎水性スケールで正の数を有する残基のみを含み得る。あるいは、疎水性タグは、0の疎水性を有する1つ以上の残基を含み得る。タグが全体的に疎水性であるという条件で、タグは、疎水性スケールで負の数を有する1つ以上の極性または帯電したアミノ酸を含み得る。
【0067】
ナノ細孔センサーとしての使用を容易にするための変異
修飾されたポータルタンパク質は、細孔の他の特性を変化させるために1つ以上の追加の修飾を含み得る。そのような変化は、典型的には、ナノ細孔センサーとしての細孔の使用を容易にする。そのような修飾の例には、以下が含まれる:
【0068】
負に帯電したArg/LysまたはAsp/Glu残基のリングを変化させることによって、チャネル内部の全体的な電気陰性特性を変更すること。Arg/Gly残基は、例えば、正に帯電したまたは中性のアミノ酸で置換され得る。1つ以上のAsp/Glu残基は、正に帯電した、負に帯電した、または中性のアミノ酸で置換され得る。親水性を変更するために、配列番号1のGlu189、Asp19、およびAsp194などの狭い方の端部の内側チャネル入口の酸性残基を、任意のアミノ酸で変化させること。
【0069】
機能を追加するための、または細孔の電気生理学的特性を変化させるために、これらのアミノ酸を固定ポイントとして使用することの目標で、末端にいくつかのアミノ酸(任意の天然または非天然)を付加すること。
【0070】
細孔の電気生理学的特性および/または検出能力を変更するための、内部の柔軟なループ、例えばphi29 Gp10ポータルタンパク質の残基229~244を変化(削除、短縮、変異)させること。
【0071】
変異体または修飾タンパク質、モノマー、もしくはペプチドはまた、任意の方法および任意の部位で化学的に修飾することもできる。変異体または修飾モノマーもしくはペプチドは、好ましくは、1つ以上のシステインへの分子の結合(システイン結合)、1つ以上のリジンへの分子の結合、1つ以上の非天然型アミノ酸への分子の結合、エピトープの酵素修飾、または末端の修飾によって化学的に修飾される。そのような修飾を実施するための好適な方法は、当該技術分野で周知である。修飾タンパク質、モノマー、またはペプチドの変異体は、任意の分子の結合によって化学的に修飾され得る。例えば、修飾タンパク質、モノマー、またはペプチドの変異体は、色素またはフルオロフォアの結合によって化学的に修飾され得る。
【0072】
膜
任意の好適な膜をシステムで使用することができる。膜は、好ましくは、両親媒性層である。両親媒性層は、親水および親油特性の両方を有する、リン脂質などの両親媒性分子から形成された層である。両親媒性分子は、合成または天然であり得る。非天然型両親媒性物質および単分子層を形成する両親媒性物質は、当該技術分野で既知であり、例えば、ブロックコポリマー(Gonzalez-Perez et al.,Langmuir,2009,25,10447-10450)が含まれる。ブロックコポリマーは、2つ以上のモノマーサブユニットが一緒に重合されて単一ポリマー鎖を作製する、ポリマー材料である。ブロックコポリマーは、典型的には、各モノマーサブユニットによって寄与される特性を有する。しかしながら、ブロックコポリマーは、個々のサブユニットから形成されたポリマーが保有しない固有の特性を有し得る。ブロックコポリマーは、モノマーサブユニットのうちの1つが疎水性(すなわち、親油性)である一方、他のサブユニットが水性媒体中で親水性であるように操作することができる。この場合、ブロックコポリマーは、両親媒性特性を保有し得、生体膜を模倣する構造を形成し得る。ブロックコポリマーは、ジブロック(2つのモノマーサブユニットからなる)であり得るが、3つ以上のモノマーサブユニットから構築されて、両親媒性物質として挙動するより複雑な配置でもあり得る。コポリマーは、トリブロック、テトラブロック、またはペンタブロックコポリマーであってもよい。膜は、好ましくは、トリブロックコポリマー膜である。
【0073】
古細菌二極性テトラエーテル脂質は、脂質が単分子層膜を形成するように構築される天然型脂質である。これらの脂質は、一般に、厳しい生物環境で生き残る好極限性細菌、好熱菌、好塩菌、および好酸球において見出される。それらの安定性は、最終二分子層の融合性質から得られると考えられている。一般モチーフ親水性-疎水性-親水性を有するトリブロックポリマーを作製することによってこれらの生物学的存在を模倣するブロックコポリマーを構築することは簡単である。この材料は、脂質二分子層と同様に挙動するモノマー膜を形成し、ベシクルから層状膜に至るまで幅広い相挙動を包含し得る。これらのトリブロックコポリマーから形成された膜は、生体脂質膜に対していくつかの利点を有する。トリブロックコポリマーは合成されているため、その性格な構造を慎重に制御して、膜を形成し、細孔および他のタンパク質と相互作用するために必要とされる正しい鎖長および特性を提供することができる。
【0074】
ブロックコポリマーはまた、脂質サブ材料として分類されないサブユニットから構築されてもよく、例えば、疎水性ポリマーは、シロキサンまたは他の非炭化水素系モノマーから作製され得る。ブロックコポリマーの親水性サブセクションはまた、低いタンパク質結合特性を保有し得、これは、生の生体試料に曝露されたときに高度に耐性である膜の作製を可能にする。このヘッド基単位はまた、非分類脂質ヘッド基に由来してもよい。
【0075】
トリブロックコポリマー膜はまた、生体脂質膜と比較して増加した機械的および環境的安定性、例えば、はるかに高い動作温度またはpH範囲を有する。ブロックコポリマーの合成性質は、ポリマー系膜を幅広い用途のためにカスタマイズする基盤を提供する。
【0076】
膜は、最も好ましくは、国際出願第WO2014/064443号または同第WO2014/064444号に開示されている膜のうちの1つである。
【0077】
両親媒性分子は、ポリヌクレオチドへのカップリングを容易にするように化学的に修飾または官能化され得る。両親媒性層は、単分子層または二分子層であり得る。両親媒性層は、典型的には、平面である。両親媒性層は、湾曲してもよい。両親媒性層は、支持されていてもよい。
【0078】
両親媒性膜は、典型的には天然には移動性であり、約10-8cm s-1の脂質拡散速度を有する二次元流体として本質的に作用する。これは、細孔および結合したポリヌクレオチドが、典型的には、両親媒性膜内で移動することができることを意味する。
【0079】
膜は、脂質二分子層であり得る。脂質二分子層は、細胞膜のモデルであり、幅広い実験研究のための優秀な基盤として機能する。例えば、脂質二分子層は、単一チャネル記録による膜タンパク質のインビトロ調査のために使用することができる。代替的には、脂質二分子層は、幅広い物質の存在を検出するためのバイオセンサーとして使用することができる。脂質二分子層は、任意の脂質二分子層であり得る。好適な脂質二分子層には、平面脂質二分子層、支持二分子層、またはリポソームが挙げられるが、これらに限定されない。脂質二分子層は、好ましくは、平面脂質二分子層である。好適な脂質二分子層はWO2008/102121、WO2009/077734、およびWO2006/100484に開示されている。
【0080】
脂質二分子層を形成するための方法は、当該技術分野において既知である。脂質二分子層は、Montal and Mueller(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,1972;69:3561-3566)の方法によって一般に形成され、脂質単分子層は、水溶液/空気界面上で、その界面に対して垂直な開口部のいずれかの側を通り過ぎて担持される。脂質は通常、最初にそれを有機溶媒に溶解し、次に少量の溶媒を開口部の両側にある水溶液の界面上で蒸発させることを可能にすることによって、電解質水溶液の表面に添加される。有機溶媒が蒸発すると、開口部の両側の溶液/空気界面は二分子層が形成されるまで開口部を通過して物理的に上下に移動する。平面脂質二分子層は、膜の開口部を横切ってまたは陥凹部への開口部を横切って形成されてもよい。
【0081】
Montal&Muellerの方法は、タンパク質細孔挿入に好適な良質の脂質二分子層を形成するための費用対効果が高く、比較的簡単な方法であるので、人気がある。二分子層形成の他の一般的な方法には、先端浸漬(tip-dipping)、二分子層の塗装(painting bilayers)、およびリポソーム二分子層のパッチクランプが含まれる。
【0082】
先端浸漬二分子層形成は、脂質の単分子層を担持している試験溶液の表面上に開口面(例えば、ピペットチップ)を接触させることを伴う。ここでも、脂質単分子層は、有機溶媒中に溶解した少量の脂質を溶液表面で蒸発させることによって最初に溶液/空気界面で生成される。次いで、二分子層はラングミュア-シェーファー法によって形成され、溶液表面に対して開口部を移動させるための機械的自動化を必要とする。
【0083】
二分子層の塗装については、有機溶媒中に溶解した少量の脂質を試験水溶液に浸されている開口部に直接適用する。脂質溶液は、塗装用刷毛または同等のものを使用して開口部にわたって薄く広げられる。溶媒を薄くすることは、脂質二分子層の形成をもたらす。しかしながら、二分子層から溶媒を完全に除去することは困難であり、その結果、この方法によって形成された二分子層は安定性が低く、電気化学的測定中にノイズを生じやすい。
【0084】
パッチクランプは、一般的に、生体細胞膜の研究に使用されている。細胞膜は吸引によりピペットの端部に留められ、膜のパッチが開口部の上に付着するようになる。この方法は、リポソームを留めてから破裂させて脂質二分子層をピペットの開口部を覆って密封することにより、脂質二分子層を産生するために適合されてきた。この方法は、安定している巨大で単分子層のリポソーム、およびガラス表面を有する材料に小さな開口部を製造することを必要とする。
【0085】
リポソームは、超音波処理、押出、またはMozafari法によって形成することができる(Colas et al.(2007)Micron 38:841-847)。
【0086】
好ましい実施形態では、脂質二分子層は、国際出願第WO2009/077734号に記載されるように形成される。この方法では有利に、脂質二分子層は乾燥脂質から形成される。最も好ましい実施形態では、脂質二分子層は、WO2009/077734に記載されるように、開口部を横切って形成される。
【0087】
脂質二分子層は脂質の2つの対向する層から形成される。2つの脂質層は、それらの疎水性テール基が互いに向き合って疎水性内部を形成するように配置される。脂質の親水性ヘッド基は、二分子層の両側で水性環境に向かって外側に向いている。二分子層は、液体無秩序相(流体層状)、液体秩序相、固体秩序相(ラメラゲル相、櫛型ゲル相)、および平面二分子層結晶(ラメラサブゲル相、ラメラ結晶相)を含むがこれらに限定されない、いくつかの脂質相に存在してもよい。
【0088】
脂質二分子層を形成する任意の脂質組成物を使用してもよい。脂質組成物は、必要とする特性、例えば表面荷電、膜タンパク質を支持する能力、充填密度、または機械的特性を有する脂質二分子層が形成されるように選択される。脂質組成物は、1つ以上の異なる脂質を含んでもよい。例えば、脂質組成物は100個までの脂質を含んでもよい。脂質組成物は、好ましくは、1~10個の脂質を含む。脂質組成物は、天然型脂質および/または人工脂質を含んでもよい。
【0089】
脂質は、典型的には、ヘッド基、界面部分、および同一でも異なってもよい2つの疎水性テール基を含む。好適なヘッド基には、ジアシルグリセリド(DG)およびセラミド(CM)などの中性ヘッド基、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)およびスフィンゴミエリン(SM)などの双性イオンヘッド基、ホスファチジルグリセロール(PG)などの負に帯電したヘッド基、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジン酸(PA)およびカルジオリピン(CA)、ならびにトリメチルアンモニウム-プロパン(TAP)などの正に帯電したヘッド基が含まれるが、これらに限定されない。好適な界面部分には、天然型界面部分、例えばグリセロール系またはセラミド系部分が含まれるが、これらに限定されない。好適な疎水性テール基には、飽和炭化水素鎖、例えばラウリン酸(n-ドデカノール酸(n-Dodecanolic acid))、ミリスチン酸(n-テトラデコノニン酸(n-Tetradecononic acid))、パルミチン酸(n-ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(n-オクタデカン酸)、およびアラキジン酸(n-エイコサン酸)、不飽和炭化水素鎖、例えばオレイン酸(シス-9-オクタデカン酸)、ならびに分岐炭化水素鎖、例えばフィタノイルが含まれるが、これらに限定されない。鎖の長さ、ならびに不飽和炭化水素鎖中の二重結合の位置および数は変化し得る。分岐炭化水素鎖中の鎖の長さならびにメチル基などの分岐の位置および数は変更することができる。疎水性テール基は、エーテルまたはエステルとして界面部分に結合することができる。脂質はミコール酸であってもよい。
【0090】
脂質は化学的に修飾することもできる。脂質のヘッド基またはテール基は、化学的に修飾され得る。そのヘッド基が化学的に修飾されている好適な脂質には、PEG修飾脂質、例えば1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000];官能化PEG脂質、例えば1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3 ホスホエタノールアミン-N-[ビオチニル(ポリエチレングリコール)2000];ならびにコンジュゲーションのために修飾された脂質、例えば1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(スクシニル)および1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-(ビオチニル)が含まれるが、これらに限定されない。そのテール基が化学的に修飾されている好適な脂質には、重合性脂質、例えば1,2-ビス(10,12-トリコサジイノイル(tricosadiynoyl))-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;フッ化脂質、例えば1-パルミトイル-2-(16-フルオロパルミトイル)-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;重水素化脂質、例えば1,2-ジパルミトイル-D62-sn-グリセロ-3-ホスホコリン;およびエーテル結合脂質、例えば1,2-ジ-O-フィタニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンが含まれるが、これらに限定されない。脂質は、ポリヌクレオチドのカップリングを容易するために化学的に修飾または官能化されてもよい。
【0091】
両親媒性層、例えば、脂質組成物は、通常は、層の特性に影響を与える1つ以上の添加剤を含む。好適な添加剤には、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸などの脂肪酸、パルミチンアルコール、ミリスチンアルコールおよびオレインアルコールなどの脂肪アルコール、コレステロール、エルゴステロール、ラノステロール、シトステロールおよびスチグマステロールなどのステロール、1-アシル-2-ヒドロキシ-sn-グリセロ-3-ホスホコリンなどのリゾリン脂質、およびセラミドが含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
別の好ましい実施形態では、膜は、固体層を含む。固体層は、微細電子材料、絶縁材料、例えばSi3N4、A12O3、およびSiO、有機および無機ポリマー、例えばポリアミド、プラスチック、例えばTeflon(登録商標)またはエラストマー、例えば二成分付加硬化シリコンゴム、およびガラスを含むがこれらに限定されない有機および無機材料の両方から形成することができる。固体層はグラフェンから形成してもよい。好適なグラフェン層は、WO2009/035647に開示されている。膜が固体層を含む場合、細孔は、典型的には、固体層内、例えば固体層内の穴、ウェル、間隙、チャネル、溝、または切れ目内に含まれる両親媒性膜または層内に存在する。当業者であれば、好適な固体/両親媒性ハイブリッド系を調製することができる。好適な系は、WO2009/020682およびWO2012/005857に開示されている。上で考察された両親媒性膜または層のいずれかを使用することができる。
【0093】
この方法は、典型的には、(i)細孔を含む人工両親媒性層、(ii)細孔を含む単離された天然型脂質二分子層、または(iii)細孔が内部に挿入された細胞を使用して実施される。この方法は、典型的には、人工トリブロックコポリマー層などの人工両親媒性層を使用して実施される。層は、細孔に加えて、他の膜貫通タンパク質および/または膜内タンパク質、ならびに他の分子を含んでもよい。好適な装置および条件は、以下で考察される。本発明の方法は、典型的には、インビトロで実施される。
【0094】
修飾された細孔を膜に挿入するための方法
本明細書に開示されるのは、バクテリオファージDNAパッケージングモーターの修飾されたポータルタンパク質を、ナノ細孔として使用するために膜に挿入するための方法である。
【0095】
精製したタンパク質と膜を接触させ、膜に電位を印加することによって、修飾されたポータルタンパク質をコポリマー膜に挿入することができる。そのような方法は、ナノ細孔を膜に挿入するために当該技術分野で使用されている。
【0096】
1つの例示的な方法は、修飾されたポータルタンパク質と膜を接触させ、電圧を増加させながら印加して、膜へのポータルタンパク質の挿入を支援してチャネルを形成することを含む。当業者は、好適なポータルタンパク質の濃度および電圧を容易に決定することができるであろう。例えば、各電圧で約20秒保持した状態で電圧を5mV刻みで増加させながら、例えば、+50~+350mVの増加させた電圧を印加することができる。センサーとして使用する前に、余分なポータルタンパク質を洗い流してもよい。
【0097】
アレイ
本開示は、ナノ細孔を含む膜のアレイを提供し、ナノ細孔が、修飾されたポータルタンパク質で構成されている。好ましい実施形態では、アレイの各膜は、1つのナノ細孔を含む。アレイが形成される方法に起因して、例えば、アレイは、ナノ細孔を含まない1つ以上の膜、および/または2つ以上のナノ細孔を含む1つ以上の膜を含み得る。アレイは、約2~約1000、例えば、約10~約800、約20~約600、または約30~約500の膜を含み得る。
【0098】
一実施形態では、修飾されたポータルタンパク質ナノ細孔を含有する膜のアレイは、ハイスループット配列決定に好適なデバイスに存在し得る。
【0099】
センサーデバイス
本開示は、修飾されたポータルタンパク質ナノ細孔を含有する膜のアレイを備える、デバイスを提供する。例えば、デバイスは、水溶液を含むチャンバと、チャンバを2つの区画に分離する障壁と、を備え得る。障壁は、典型的には、ナノ細孔を含有する膜が形成される開口部を有する。あるいは、障壁は、細孔が存在する膜を形成し得る。
【0100】
したがって、デバイスは、第1のチャンバと、第2のチャンバと、を備え得、第1および第2のチャンバが、修飾されたポータルタンパク質ナノ細孔を含む膜によって分離されている。標的ポリヌクレオチドの特徴を判定するために使用される場合、デバイスは、標的ポリヌクレオチドをさらに含み得、標的ポリヌクレオチドが、ポータルタンパク質によって形成されたチャネル内に一時的に位置し、標的ポリヌクレオチドの一端が、第1のチャンバに位置し、標的ポリヌクレオチドの一端が、第2のチャンバに位置する。
【0101】
一実施形態では、デバイスは、複数のナノ細孔および膜を支持することが可能であり、ナノ細孔および膜を使用して分析物の特徴判定を実施するように動作することが可能である。一実施形態では、デバイスは、特徴判定を実施するための材料を送達するための、少なくとも1つのポートを備える。一実施形態では、デバイスは、特徴判定を実施するための材料を保持するための、少なくとも1つのリザーバを備える。一実施形態では、デバイスは、少なくとも1つのリザーバからセンサーデバイスに材料を制御可能に供給するように構成された流体工学系と、それぞれの試料を受け取るための1つ以上の容器と、を備え、流体工学系が、1つ以上の容器からセンサーデバイスに試料を選択的に供給するように構成されている。デバイスはまた、電位を印加し、膜および複合体全体の電気シグナルを測定することが可能である、電気回路を備え得る。
【0102】
デバイスは、WO2008/102120、WO2009/077734、WO2010/122293、WO2011/067559、またはWO00/28312に記載のもののうちのいずれかであり得る。
【0103】
一実施形態では、デバイスは、分析物の特徴を判定するためのシステムの一部を形成する。一実施形態では、システムは、ナノ細孔と接触する導電性溶液と、膜全体に電位を提供する電極と、ナノ細孔を通る電流を測定するための測定システムと、を備え得る。一実施形態では、膜および細孔複合体に印加される電圧は、+5V~-5V、例えば-600mV~+600mVまたは-400mV~+400mVである。使用される電圧は、より好ましくは、100mV~240mVの範囲内、より好ましくは120mV~220mVの範囲内である。増加した印加される電位を使用することによって、細孔ごとに異なるヌクレオチド間の識別を増加させることが可能である。任意の好適な導電性溶液を使用することができる。例えば、溶液は、金属塩、例えばアルカリ金属塩、ハロゲン化物塩、例えば塩化物塩、例えばアルカリ金属塩化物塩などの任意の電荷担体を含み得る。電荷担体には、イオン性液体または有機塩、例えば、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化トリメチルフェニルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、または1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドが含まれ得る。例示的なシステムでは、塩は、チャンバ内の水溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化セシウム(CsCl)、またはフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの混合物が典型的に使用される。KCl、NaCl、およびフェロシアン化カリウムとフェリシアン化カリウムとの混合物が好ましい。電荷担体は、膜にわたって非対称であり得る。例えば、電荷担体のタイプおよび/または濃度は、膜の各側で、例えば各チャンバ内で異なり得る。
【0104】
塩濃度は、飽和であり得る。塩濃度は、3M以下であり、典型的には、0.1~2.5M、0.3~1.9M、0.5~1.8M、0.7~1.7M、0.9~1.6M、または1M~1.4Mであり得る。塩濃度は、好ましくは、150mM~1Mである。本方法は、好ましくは、少なくとも0.3M、例えば、少なくとも0.4M、少なくとも0.5M、少なくとも0.6M、少なくとも0.8M、少なくとも1.0M、少なくとも1.5M、少なくとも2.0M、少なくとも2.5M、または少なくとも3.0Mの塩濃度を使用して実施される。高い塩濃度は、高いシグナル対ノイズ比を提供し、正常な電流変動のバックグラウンドに対する、ヌクレオチドの存在を示す電流の同定を可能にする。
【0105】
導電性溶液中に緩衝液が存在し得る。典型的には、緩衝液は、リン酸緩衝液である。他の好適な緩衝液は、HEPESおよびTris-HCl緩衝液である。導電性溶液のpHは、4.0~12.0、4.5~10.0、5.0~9.0、5.5~8.8、6.0~8.7、または7.0~8.8、または7.5~8.5であり得る。使用されるpHは、好ましくは、約7.5である。
【0106】
デバイスは、ハイスループット装置と互換性があり得る。例えば、デバイスは、Oxford Nanopore Technologies Ltdによって開発されたSmidgION、MinION、GridION、PromethION機器であってもよい。これらの機器は、ナノ細孔がコポリマー膜に埋め込まれている異なるタイプのフローセルに装着することができる。デバイスは、フローセルであってもよい。コポリマー膜は、少なくとも数ヶ月間安定であり、より高い電圧にも耐性がある。各チャネルは、それ自体の電極ペアを含有し、したがって、チャネル間の電気信号は分離される。
【0107】
分析物を特徴判定する方法
さらなる態様では、標的分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を判定する方法が開示される。本方法は、標的分析物を、細孔複合体を含む膜と接触させることであって、それにより標的分析物が、連続チャネルに関して、例えば連続チャネル中または連続チャネルを通って移動し、それぞれ細孔複合体にナノ細孔および補助タンパク質またはペプチドによって提供される少なくとも2つの構成を含む、接触させることと、分析物がチャネルに関して移動する間に1つ以上の測定値を取り、それによって分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を決定することと、を伴う。分析物は、ナノ細孔狭窄、続いて補助タンパク質狭窄を通過することができる。代替の実施形態では、分析物は、膜内の細孔複合体の配向に応じて、補助タンパク質狭窄、続いてナノ細孔狭窄を通過することができる。
【0108】
一実施形態では、方法は、標的分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を判定するためのものである。本方法は、少なくとも1つの分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を判定するためのものであってもよい。本方法は、2つ以上の分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を判定することに関してもよい。本方法は、任意の数の分析物、例えば2、5、10、15、20、30、40、50、100個それ以上の分析物の存在、不在、または1つ以上の特徴を判定することを含んでもよい。1つ以上の分析物の任意の数の特徴、例えば1、2、3、4、5、10個以上の特徴が判定され得る。
【0109】
細孔複合体のチャネル内、またはチャネルのいずれかの開口部の近くでの分子の結合は、細孔を通るオープンチャネルイオン流に影響を及ぼし、これは細孔チャネルの「分子センシング」の本質である。核酸配列決定アプリケーションと同様の方法で、オープンチャネルイオン流の変動は、電流の変化による好適な測定技法を使用して測定することができる(例えば、WO2000/28312およびD.Stoddart et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,2010,106,7702-7またはWO2009/077734)。電流の低減によって測定されるようなイオン流の低減の程度は、細孔内または細孔の近くの障害のサイズに関する。したがって、細孔内または細孔の近くでの「分析物」とも称される目的の分子の結合は、検出可能かつ測定可能な事象を提供し、それによって「生物学的センサー」の基礎を形成する。ナノ細孔センシングに好適な分子には、核酸、タンパク質、ペプチド、多糖類、および小分子(ここでは、低分子量(例えば、<900Daまたは<500Da)の有機または無機化合物を指す)、例えば医薬品、毒素、サイトカイン、および汚染物質が含まれる。生体分子の存在を検出することは、個別化された医薬品開発、医学、診断、ライフサイエンス研究、環境モニタリング、ならびにセキュリティおよび/または防衛産業での用途を見出す。
【0110】
標的分析物は、金属イオン、無機塩、ポリマー、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、多糖類、染料、漂白剤、薬剤、診断薬、レクリエーショナルドラッグ、爆発物、毒性化合物、または環境汚染物質であり得る。本方法は、2つ以上の同じタイプの分析物、例えば2つ以上のタンパク質、2つ以上のヌクレオチド、または2つ以上の医薬品の存在、不在、または1つ以上の特徴を判定することに関してもよい。代替的には、本方法は、2つ以上の異なるタイプの分析物、例えば1つ以上のタンパク質、1つ以上のヌクレオチド、および1つ以上の医薬品の存在、不在、または1つ以上の特徴を判定することに関してもよい。
【0111】
標的分析物は、細胞から分泌され得る。代替的には、標的分析物は、細胞の内部に存在する分析物であり得、それにより分析物は、方法が実施され得る前に細胞から抽出されなければならない。
【0112】
一実施形態では、分析物は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質である。アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、天然型であっても非天然型であってもよい。ポリペプチドまたはタンパク質は、それらの中に合成または修飾アミノ酸を含み得る。アミノ酸へのいくつかの異なるタイプの修飾が、当該技術分野で既知である。好適なアミノ酸およびその修飾は、上記である。標的分析物は、当該技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾され得ることを理解されたい。
【0113】
好ましい実施形態では、分析物は、核酸などのポリヌクレオチドである。ポリヌクレオチドは、2つ以上のヌクレオチドを含む高分子として定義される。DNAおよびRNAにおける天然型核酸塩基は、それらの物理的サイズによって識別される場合がある。核酸分子または個々の塩基がナノ細孔のチャネルを通過すると、塩基間のサイズの違いにより、チャネルを通るイオン流が直接相関して低減する。イオン流の変動を記録することができる。イオン流の変動を記録するための好適な電気測定技法は、例えば、WO2000/28312およびD.Stoddart et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,2010、106、pp7702-7(単一チャネル記録機器)、ならびに例えば、WO2009/077734(マルチチャネル記録技法)に記載されている。好適な較正により、イオン流の特徴的な低減を使用して、チャネルを通過する特定のヌクレオチドおよび関連する塩基をリアルタイムで同定することができる。典型的なナノ細孔核酸配列決定では、ヌクレオチドによるチャネルの部分的遮断のために、目的のヌクレオチド配列の個々のヌクレオチドがナノ細孔のチャネルを連続的に通過する間に、オープンチャネルイオン流が低減する。上記の好適な記録技法を使用して測定されるのは、このイオン流の低減である。イオン流の低減は、チャネルを通る既知のヌクレオチドについて測定されたイオン流の低減に合わせて較正することができ、その結果、どのヌクレオチドがチャネルを通過するかを決定するための手段が得られ、したがって、順次行われる場合、ナノ細孔を通過する核酸のヌクレオチド配列を決定する方法が得られる。個々のヌクレオチドを正確に決定するために、典型的には、チャネルを通るイオン流の低減が、狭窄(または「リーディングヘッド」)を通過する個々のヌクレオチドのサイズに直接相関することが必要である。配列決定は、例えば、関連するポリメラーゼまたはヘリカーゼの作用を介して細孔に「挿通される」無傷の核酸ポリマーに対して行われ得ることが理解されるであろう。代替的には、配列は、細孔に近接する標的核酸から連続的に除去されたヌクレオチド三リン酸塩基の通過によって決定され得る(例えば、WO2014/187924を参照されたい)。
【0114】
ポリヌクレオチドまたは核酸は、任意のヌクレオチドの任意の組み合わせを含み得る。ヌクレオチドは、天然であっても人工であってもよい。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、酸化またはメチル化されてもよい。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、損傷していてもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジンダイマーを含んでもよい。かかるダイマーは、典型的には、紫外線による損傷と関連付けられ、皮膚メラノーマの主因である。ポリヌクレオチド中の1つ以上のヌクレオチドは、例えば標識またはタグによって修飾され得、その好適な例は当業者に知られている。ポリヌクレオチドは、1つ以上のスペーサを含み得る。ヌクレオチドは、典型的には、核酸塩基、糖、および少なくとも1つのリン酸基を含有する。核酸塩基および糖は、ヌクレオシドを形成する。核酸塩基は、典型的には、複素環である。核酸塩基には、プリンおよびピリミジン、より具体的には、アデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、およびシトシン(C)が含まれるが、これらに限定されない。糖は、典型的には、五炭糖である。ヌクレオチド糖には、リボースおよびデオキシリボースが含まれるが、これらに限定されない。糖は、好ましくは、デオキシリボースである。ポリヌクレオチドは、好ましくは、以下のヌクレオシド、デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)および/またはチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)、ならびにデオキシシチジン(dC)を含む。ヌクレオチドは、典型的には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは、典型的には、一リン酸、二リン酸、または三リン酸を含む。ヌクレオチドは、3個超のリン酸、例えば4または5個のリン酸を含み得る。リン酸は、ヌクレオチドの5’または3’側に結合し得る。ポリヌクレオチド中のヌクレオチドは、任意の様式で互いに結合され得る。ヌクレオチドは、典型的には、核酸と同様に、それらの糖およびリン酸基によって結合される。ヌクレオチドは、ピリミジンダイマーと同様に、それらの核酸塩基を介して接続し得る。ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドの少なくとも一部は、好ましくは、二本鎖である。ポリヌクレオチドは、最も好ましくは、リボ核酸核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA)である。特に、ポリヌクレオチドを分析物として代替的に使用する該方法は、(i)ポリヌクレオチドの長さ、(ii)ポリヌクレオチドの同一性、(iii)ポリヌクレオチドの配列、(iv)ポリヌクレオチドの二次構造、および(v)ポリヌクレオチドが修飾されているか否かから選択され1つ以上の特徴を判定することを含む。
【0115】
ポリヌクレオチドは、任意の長さ(i)であり得る。例えば、ポリヌクレオチドは、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400、または少なくとも500ヌクレオチドまたはヌクレオチド対の長さであり得る。ポリヌクレオチドは、1000以上のヌクレオチドもしくはヌクレオチド対、5000以上のヌクレオチドもしくはヌクレオチド対の長さ、または100000以上のヌクレオチドもしくはヌクレオチド対の長さであり得る。任意の数のポリヌクレオチドを調査することができる。例えば、方法は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、50、100個以上のポリヌクレオチドの特徴判定に関し得る。2個以上のポリヌクレオチドが特徴判定された場合、それらは、異なるポリヌクレオチドであるか、または同じポリヌクレオチドの2つの実例であり得る。ポリヌクレオチドは、天然であっても人工であってもよい。例えば、本方法を使用して、製造されたオリゴヌクレオチドの配列を確かめることができる。本方法は、典型的には、インビトロで実施される。
【0116】
ヌクレオチドは同一性(ii)を有し得、アデノシン一リン酸塩(AMP)、グアノシン一リン酸塩(GMP)、チミジン一リン酸塩(TMP)、ウリジン一リン酸塩(UMP)、5-メチルシチジン一リン酸塩、5-ヒドロキシメチルシチジン一リン酸塩、シチジン一リン酸塩(CMP)、環状アデノシン一リン酸塩(cAMP)、環状グアノシン一リン酸塩(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸塩(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸塩(dGMP)、デオキシチミジン一リン酸塩(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸塩(dUMP)、デオキシシチジン一リン酸塩(dCMP)、およびデオキシメチルシチジン一リン酸塩が含まれ得るが、これらに限定されない。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、dCMP、およびdUMPから選択される。ヌクレオチドは、脱塩基(すなわち、核酸塩基を欠く)であってもよい。ヌクレオチドはまた、核酸塩基および糖を欠いてもよい(すなわち、C3スペーサである)。ヌクレオチドの配列(iii)は、ポリヌクレオチド株全体で、鎖の5′から3′方向に互いに結合している以下のヌクレオチドの連続的な同一性によって決定される。
【0117】
以下の実施例は、本発明を説明する。
【0118】
実施例1:タンパク質の発現および精製
phi29ポータルタンパク質チャネルの操作された遺伝子を、発現ベクターにクローニングした。新しく構築したクローンを、BL21(DE3)E.coli細菌に形質転換した。形質転換に成功した細菌を、10mLのLuria-Bertani(LB)培地で、37℃で一晩培養した。これらの培養した細菌を、500mLの新鮮なLB培地に移した。OD600が0.5~0.6に達したら、0.5mMのIPTGを培養培地に添加して、タンパク質発現を誘導した。遠心分離誘導の3時間後に、細菌を収集した。フレンチプレスを使用して細菌壁を溶解させ、タンパク質と他の成分とを遠心分離によって区別した。Hisタグ付きのNi-NTA His結合樹脂を適用して、変異体タンパク質を精製した。要約すると、2mlの再生His樹脂を、カラムに充填した。遠心分離によって区別した上清を、カラムに充填した。次いで、カラムを洗浄緩衝液で洗浄して、汚染タンパク質をすべて除去した。500mMのイミダゾールを含有する溶出緩衝液を使用して、タンパク質を溶出させた。溶出液を収集し、5mLに濃縮した。12000rpmで10分間、溶出液を遠心分離し、次いでシリンジで上清を吸収し、AKTA FPLCに注入した。注入前に、試料ループを10mLの溶解緩衝液で洗浄した。サイズ排除カラムを通過させた後、タンパク質を収集した。SDS-PAGEゲルを実行して、タンパク質試料をチェックした。この方法で、すべての野生型および変異体タンパク質を発現および精製した。典型的には、タンパク質は、-20°Cで保存し、凍結融解サイクルの繰り返しを回避するために複数のチューブに分注した。
【0119】
phi29ポータルタンパク質の配列は、既知であり、Genbank(Genbank Acc.No.ACE96033)で入手可能である。以下の変異を有する変異体phi29 gp10ポータルタンパク質を生成した:
-A79C、
-E135C、
-Q168C、
-R10L、E14V、R17L、およびN-7Δ(変異体-b)、
-R10L、E14V、R17L、Q18L、R22I、およびN-ter-7Δ(変異体-c)、
-N末端に付加されたIL(変異体-d)、ならびに
-R10L、E14V、R17L、N末端にILが付加されたN-ter-7Δ(変異体-e)
【0120】
実施例2:MinIONデバイスへの細孔挿入
操作されたタンパク質チャネルをONT膜に挿入するために、1mg/ml濃度を有するタンパク質をC13緩衝液(25mMリン酸カリウム、150mMフェロシアン化カリウム、150mMフェロシアン化カリウム、pH8)で1000倍に希釈した。MinIONフローセルのプライミングポートを通じて、200μlの希釈したタンパク質試料を添加した。次いで、タンパク質チャネルの挿入を支援するために、+50~+350mV(5mV刻み、20秒保持)で増加させながら電圧を印加した。次いで、フローセルを2mLのC13緩衝液で流した。次いで、典型的には、保持時間を変動させながら(各電圧で2分~10分保持)、±50、±100、±150、±200mVでIV曲線を実行し、経時的な細孔挙動を観察した。DNAまたはペプチド(1pM濃度)などの分析物をC13緩衝液中に懸濁させ、フローセルに添加して細孔機能をチェックした。
【0121】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で引用される刊行物およびそれらが引用される資料は、参照により明確に組み込まれる。
【0122】
当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識し、または日常実験にすぎないことを使用して確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【0123】
配列リスト
配列番号1-野生型phi29gp-10のアミノ酸配列
1 MARKRSNTYR SINEIQRQKR NRWFIHYLNY LQSLAYQLFE WENLPPTINP
51 SFLEKSIHQF GYVGFYKDPV ISYIACNGAL SGQRDVYNQA TVFRAASPVY
101 QKEFKLYNYR DMKEEDMGVV IYNNDMAFPT TPTLELFAAE LAELKEIISV
151 NQNAQKTPVL IRANDNNQLS LKQVYNQYEG NAPVIFAHEA LDSDSIEVFK
201 TDAPYVVDKL NAQKNAVWNE MMTFLGIKNA NLEKKERMVT DEVSSNDEQI
251 ESSGTVFLKS REEACEKINE LYGLNVKVKF RYDIVEQMRR ELQQIENVSR
301 GTSDGETNE
【国際調査報告】