(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】空中栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20220616BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20220616BHJP
B05B 17/06 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
A01G31/00 601C
A01G9/02 E
B05B17/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021560556
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(85)【翻訳文提出日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 GB2020050950
(87)【国際公開番号】W WO2020208381
(87)【国際公開日】2020-10-15
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521442866
【氏名又は名称】レタス・グロウ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リリアン・ローズ・マンゾーニ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ジョージ・グローサー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ハイド・ディディオット-クック
【テーマコード(参考)】
2B314
2B327
4D074
【Fターム(参考)】
2B314MA33
2B314PB20
2B314PB22
2B327NC56
2B327ND01
2B327ND03
2B327UA03
2B327UA19
2B327UA22
4D074AA05
4D074AA10
4D074BB03
4D074BB06
4D074DD02
4D074DD12
4D074DD22
4D074DD32
4D074DD48
(57)【要約】
空中栽培装置1、201は、液体または溶液を収容するための容器11、211を有する育成ベッド3、203を備える。超音波噴霧器モジュール5、205は、育成ベッド3、203に取り付けられている。超音波噴霧器モジュール5、205は、超音波トランスデューサ27、227に接続された入力端部25、225と出力先端部35、235とを有する超音波ホーン23、223を備える。超音波ホーン23、223は、容器11、211の壁部33、233と接触している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体または溶液を収容するための容器(11、211)を有する育成ベッド(3、203)と、
前記育成ベッド(3、203)に取り付けられた超音波噴霧器モジュール(5、205)と、
を備え、
前記超音波噴霧器モジュール(5、205)が、超音波トランスデューサ(27、227)に接続された入力端部(25、225)と出力先端部(35、235)とを有する超音波ホーン(23、223)を備え、
前記超音波ホーン(23、223)が前記容器(11、211)の壁部(33、233)と接触していることを特徴とする空中栽培装置(1、201)。
【請求項2】
前記超音波ホーン(23、223)の前記出力先端部(35、235)が、前記容器(11、211)の前記壁部(33、233)を通過する開口部(31、231)内に位置しており、それにより、当該装置(1、201)の使用時に、前記出力先端部(35、235)が前記容器(11、211)内に収容されている前記液体または前記溶液と接触していることを特徴とする請求項1に記載の空中栽培装置。
【請求項3】
前記超音波ホーン(223)の前記出力先端部(235)が、前記容器(211)の前記壁部(233)の外側と接触していることを特徴とする請求項1に記載の空中栽培装置。
【請求項4】
前記超音波ホーン(223)の前記出力先端部(235)が、前記容器(211)の前記壁部(233)の前記外側から延在する凹所(251)内に位置することを特徴とする請求項3に記載の空中栽培装置。
【請求項5】
前記壁部(233)の厚さが、前記凹所において低減されていることを特徴とする請求項4に記載の空中栽培装置。
【請求項6】
電源を前記超音波噴霧器モジュール(5、205)に供給可能であるまたは前記超音波噴霧器モジュール(5、205)への電源の供給を取り除くことが可能である切替回路(7、207)をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項7】
前記容器(11、211)が、底壁部(33、233)と前記底壁部(33、233)から上方に突出する少なくとも1つの側壁部(15、215)とを有するトレイの形態にあることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項8】
前記超音波ホーン(23、223)が、金属から形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項9】
前記超音波ホーン(23、223)が、前記超音波トランスデューサ(27、227)に接着結合されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項10】
前記超音波ホーン(23、223)の長手方向が、使用時に前記超音波ホーン(23、223)内を進行する超音波の波長の1/4または1/4の奇数倍であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項11】
前記超音波ホーン(23、223)の長手方向が、使用時に前記超音波ホーン(23、223)内を進行する超音波の波長の1/2または1/2の奇数倍であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項12】
前記超音波トランスデューサ(27、227)が、分極圧電トランスデューサ(27、227)であり、極性の方向が、前記超音波ホーン(23、223)の長手方向軸X-Xに位置合わせされていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項13】
前記溶液が、水及び養分の混合体から形成された栄養溶液であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項14】
前記超音波ホーン(23、223)が、前記容器(11、211)と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1、2、6から12のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項15】
前記超音波ホーン(23、223)が、中実の一体部品体であり、下側半体(26、226)の質量よりも小さい質量である上側半体(24、224)を有し、
前記上側半体の高さが、前記下側半体の高さとほぼ同じであることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項16】
前記超音波ホーン(23、223)が、筒状上側半体(24、224)及び筒状下側半体(26、226)を有する中実の一体部品体であり、
前記上側半体(24、224)の直径が、前記下側半体(26、226)の直径よりも小さく、
前記上側半体(24、224)及び前記下側半体(26、226)が、同軸に位置合わせされていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば垂直農業または温室などの植物を成長させるための屋内農業システムで使用するための空中栽培装置に関する。特に、本発明は、栄養溶液の一部を霧化して密度が高く栄養が高いエアロゾルまたは霧を形成し、生育ベッドの直上に位置する植物の根系に供給するために、超音波ホーン(またはソノトロード)を用いた超音波噴霧器を利用して生育ベッドの容器内にある栄養溶液に超音波を当てる。用語「空中栽培」は、植物の根が栄養溶液内に伸びてそれにより植物の根が栄養溶液から直接水分を取り得ることを可能とする生育システムを包含するように理解される(このようなシステムは、水耕/空中栽培システムとも称され得る)。
【背景技術】
【0002】
超音波噴霧器(または超音波霧発生器)を使用してエアロゾルを形成し、植物の根に水分及び養分を供給することが知られている。しかしながら、超音波噴霧器を有する従来のシステムは、オペレータが利用する屋内農業システムのオペレータに関する複数の問題を引き起こすという特徴を有する。超音波トランスデューサまたは育成ベッドなどの設備の動作寿命を最大化した空中栽培装置を有することが望ましく、これら設備は、設備を建てるまたは購入すること及び設備を維持することの双方のコストを最小化するために、最小量の電気エネルギーを利用して所望レベルのエアロゾルを生成し、清潔なままとすることが容易であり、最小レベルの複雑さを有する。この要求リストは、満たすことが容易ではなく、従来技術の空中栽培システムは、この要求リストを満たしていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
いくつかの従来技術のシステムにおいて、超音波噴霧器は、育成ベッドの容器の底部に固定されており、それにより、超音波トランスデューサ、及び圧電トランスデューサに関しては圧電ディスクは、栄養溶液と直接接触している。これにより、清掃が噴霧器それぞれの周囲で、例えば噴霧器が育成ベッドに結合している領域で行わなければならないので、装置を清掃するときに問題が引き起こされる。噴霧器それぞれの周囲の領域は、バクテリアのための培養地を形成しており、このため、育成ベッド内の植物の健康に危険をもたらす。不可避であることは、空中栽培システムが植物の腐食を形成してこのような有機物が噴霧器の周囲の領域及びこれら噴霧器がベッドに隣接する領域に蓄積すること、である。このような蓄積が有害なバクテリアが成長することを可能として蓄積が昆虫や他の害虫のための繁殖地になり得ること、である。圧電トランスデューサの場合において、不利であることは、圧電トランスデューサが圧電樹脂の上にある保護コーティング(樹脂)小さな割れを形成させて栄養溶液がその圧電材料と接触することになるので、圧電材料を栄養溶液内に配置すること、である。栄養溶液とのこの接触により、迷走電流が引き起こされ、この迷走電流は、トランスデューサの性能を低減し得るまたはトランスデューサの故障を引き起こし得る。しかしながら、従来技術の配置が超音波噴霧器を容器内に配置して栄養溶液と接触させることの良好な理由がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
超音波トランスデューサを栄養溶液と直接接触させる配置は、超音波の減衰レベルが非常に低いことを意味する。超音波トランスデューサと栄養溶液との間の界面は、結果として、超音波が超音波トランスデューサから栄養溶液を通って進行する際に超音波の減衰を招く。このため、電気エネルギーをエアロゾルの発生に変換する効率は、界面の低減を通して最大化される。効率の最大化が農場の運営コストを低減するので、これは、有利である。同様に留意することは、超音波が界面を通過する際に超音波の反射が発生し、結果としてこの反射が超音波の減衰を招くことであり、この減衰は、エアロゾルの発生のために利用可能な超音波エネルギーにおける減衰の大部分の原因である。界面で反射した音の伝搬は、材料のインピーダンスに応じる。界面における反射は、例えばプラスチックから金属そして液体など、超音波が高インピーダンス材料から低インピーダンス材料まで進行すると、低減される。
【0005】
また、超音波噴霧器を容器内に位置させる際に、これら噴霧器は、主としてネジ止固定またはボトル止固定など機械的固定で、容器の底部にあらかじめ固定され得る。
【0006】
事実であることは、超音波トランスデューサを動作させているときに超音波トランスデューサが多量の熱を発生させること、である。超音波トランスデューサを栄養溶液内に配置する場合、熱をその栄養溶液によって放散させる。熱を放散させるこのような効率的な方法がない場合、よくても超音波トランスデューサの動作時間を低減し、超音波トランスデューサが燃える可能性すらある。いずれの状況においても、農場の所有者は、農場の休止時間を伴って、望まない追加コストを支払い、結果として利益損失を招く。栄養溶液の熱放散の可能性は、同様に、超音波トランスデューサが過熱しないことを保証する。また、育成ベッドは、主として、ポリマー材料で形成されており、冷却されていない超音波トランスデューサからの熱は、ポリマー材料の分解を引き起こし得、育成ベッドの動作寿命の減少を招く。熱は、同様に、ポリマー材料を溶融させ、育成ベッドを機能させなくさせ、それにより、育成ベッドを即座に交換しなければならない。しかしながら、望ましくないことは、環境温度に対して測定して栄養溶液の温度を安定して維持すべきであるので、栄養溶液への過剰な熱の放出であり、収穫量を最大化して植物の健康を維持する。したがって、栄養溶液をヒートシンクとして利用することは、副次的に最適である(sub-optimal)。
【0007】
これら問題を解決するための直接的な解決法はない。
【0008】
超音波噴霧器上にカバーを配置してそれにより超音波トランスデューサが栄養溶液ともはや接触しないことは、トランスデューサの動作寿命が栄養溶液との接触に起因してはもはや低減されないことを意味するが、栄養溶液の冷却効率は低減され、それにより、トランスデューサは、高すぎる温度で動作することに起因してより早く故障し得る。また、超音波噴霧器上にカバーを配置することにより、カバーの界面における超音波の減衰及び超音波の反射が引き起こされ、これは、超音波トランスデューサをより高いで駆動させることを必要とし、その結果、エネルギー消費が高くなって(エネルギー効率が低下して)トランスデューサの寿命が減少する。
【0009】
単純に圧電トランスデューサを栄養容器から取り出してトランスデューサを育成ベッドトレイの下面に接着することは、いずれの問題への解決も提供しない。圧電トランスデューサを栄養溶液によって提供されるヒートシンクから取り出す場合、この圧電トランスデューサは、最適温度よりも高い温度で動作されることに起因して、動作寿命が低減されることに苦しむ。同様に、育成ベッドは、育成ベッドの固有インピーダンス特性のために、そして、界面が超音波の一部の反射を引き起こすので、超音波を減衰させるように機能する。その結果、超音波トランスデューサをより強力に駆動する必要がある。より高い駆動電圧及びより高い瞬間電流を使用する。これは、特に電圧及び電流が閾値を超えると、圧電トランスデューサをこのような電圧及び電流に繰り返しさらすことがトランスデューサを損傷させ得るという欠点を有する。その結果、エネルギー使用がより高くなり(エネルギー効率が下がり)、トランスデューサの寿命が(上述のように)減少する。同様に、この結果、育成ベッドの過熱を引き起こし、材料の分解または不具合を招き得る。
【0010】
本発明によれば、空中栽培装置が提供されており、この空中栽培装置は、液体または溶液を収容するための容器を有する育成ベッドと、育成ベッドに取り付けられた超音波噴霧器モジュールと、を備え、超音波噴霧器は、超音波トランスデューサに接続された入力端部と出力先端部とを有する超音波ホーンを備えており、超音波ホーンは、容器の壁部に接続されている。超音波ホーンは、ホーンの形状が超音波トランスデューサによって生成されている超音波の振幅を増幅させる、すなわち増加させる一方で超音波トランスデューサの共振を維持するように構成されている。超音波の振幅を増幅させる、すなわち増加させる超音波ホーンは、電気的エネルギーから機械的エネルギーへの変換効率を増加させる。結果として、変換するエネルギーがより多くなり、無駄にするエネルギーがより少なくなる。超音波トランスデューサと容器内の液体または溶液との間に位置するいずれか界面を超音波が横断するときの貯音波の反射を補償するために増幅した/増加させた振幅を使用してそれにより超音波が所望量のエアロゾルを発生できるので、振幅の増幅/増加は、有利である。増幅によって超音波トランスデューサのエネルギー要求を低減することができるので、増幅は、同様に有利である。より少ない「駆動」電圧を利用して所望量のエアロゾルを発生させ得、これにより、農場を運営することをより安くする。増幅超音波ホーンにより、超音波噴霧器は、そうでない場合よりも低い電力消費で同じ量のエアロゾルを発生させることを可能とし、これにより、使用する電気量を低減する。電気的エネルギーから機械的エネルギーへの変換効率における増加は、エネルギーを高いグレードの形態で保存することを意味する。これは、トランスデューサから超音波を伝送するためのデバイスであってこれら超音波をより低いグレードの形態の音響エネルギー(例えば、低エネルギー密度)に変換するまたは超音波のエネルギーを廃熱に変換するデバイスと対比される。
【0011】
超音波ホーンは、同様に、ホーンの形状が超音波の振幅におけるいかなる増加を引き起こすことを意図しないがホーンが音響的に透明であるように構成され得る。このように音響的に透明なホーンは、電気エネルギーから機械エネルギーへの変換効率を低減も増加もしないことを意図している。
図1及び
図2に示す本発明の形態は、説明を簡素化するために単一の超音波噴霧器モジュールを図示している。本発明の実際の応用において、複数の超音波噴霧器モジュールを育成ベッドそれぞれに取り付けることがある。
【0012】
好ましい第1形態にかかる空中栽培装置において、超音波ホーンの出力先端部は、容器の壁部を貫通する開口部内に位置しており、それにより、装置の使用時において、出力先端部は、容器内に収容されている液体または溶液と接触する。二次的な低減した冷却効果ではあるが、容器内の液体または溶液が超音波ホーンを介して超音波トランスデューサに冷却を提供できるので、これは有利である。超音波ホーンは、例えば超音波噴霧器モジュールの金属外側ケースに接続されることによって、ヒートシンクとしても機能し得、熱は、大気環境内へ放出される。これにより、加熱、換気及び空調システムは、冷却の一次源を提供し得る。また、超音波噴霧器内における及び超音波噴霧器とシステムの残りの部分との間における界面の数を最小化し、したがって、超音波の減衰及び反射数を最小化する。超音波ホーンは、開口部内に締まり嵌めされ得る、または、干渉嵌めされ得る。あるいは、有利であり得ることは、超音波ホーンと容器の壁部との間に音響反射材料を設けて液体または溶液に伝達される超音波量を最大化することを保証すること、である。
【0013】
本発明の第2形態によれば、超音波ホーンの出力先端部は、容器の壁部の外側と接触している。これは、容器の水密性を損なう可能性がある穴を容器の壁部に形成することを回避するので、利点をもたらす。
【0014】
第2形態にかかる装置において、超音波ホーンの出力先端部は、好ましくは、容器の壁部の外面から延在する凹所内に位置する。さらに、容器に隣接する部分における容器の壁部の厚さは、容器の壁部の平均厚さよりお小さい。有利であることは、超音波ホーンに隣接する部分における容器の壁部の厚さを最小厚さに維持して超音波の減衰を低減すること、である。
【0015】
好ましくは、空中栽培装置は、電源を超音波噴霧器モジュールに供給可能であるまたは超音波噴霧器モジュールへの電源の供給を取り除くことが可能である切替回路をさらに備える。
【0016】
好ましくは、容器は、底壁部お及び底壁部から上方に突出する少なくとも1つの側壁部を有するトレイの形態にある。
【0017】
好ましくは、超音波ホーンは、アルミニウム合金またはチタン合金のような金属から形成される。適切な金属は、音響損失が低く疲労強度が高い。
【0018】
好ましくは、超音波ホーンは、超音波トランスデューサに接着結合されている。螺着構成のような機械的固定がトランスデューサの音響特性を変化させやすいかつ/または超音波の強度を低減させやすいので、超音波ホーンと超音波トランスデューサとの間の接続に関して接着固定が好ましいことが分かっている。二液型エポキシ樹脂接着剤のような接着剤は、良好な音響特性を有しており、同様に所望レベルの熱伝導性をもたらし得る。しかしながら、機械的固定を利用することは可能である。
【0019】
好ましくは、超音波ホーンの長手方向長さは、使用時に超音波トランスデューサによって生成されて超音波ホーン内を進行する超音波の波長の1/4または1/4の奇数倍である(超音波の波長は、システム内の異なる材料を通過する際に変化する)。例えば、超音波ホーンの長手方向長さは、波長の3/4であり得る。音波の一部が超音波ホーンの出力先端部と栄養溶液との間の界面における内部反射を受けるときに引き起こされる破壊的な干渉を低減するので、有利である。出力先端部から超音波ホーンの本体内に反射して戻る超音波は、他の超音波と積極的に干渉する。このような超音波ホーンは、音響的に透明である。
【0020】
あるいは、超音波ホーンの長手方向長さは、使用時に超音波ホーン内を進行する超音波の波長の1/2または1/2の奇数倍である。このような超音波ホーンは、増幅させる。
【0021】
好ましくは、超音波トランスデューサは、分極圧電トランスデューサであり、極性の方向は、超音波ホーンの長手方向軸X-Xに位置合わせされている。
【0022】
好ましくは、液体は、水及び養分の混合体から形成された栄養溶液である。
【0023】
本発明の想定される形態において、超音波ホーンは、容器と一体的に形成されており、例えば、容器をアルミニウムから製造する場合、超音波ホーンは、容器の壁部に形成されるまたは壁部に鋳造される。
【0024】
好ましくは、超音波ホーンは、中実の一体部品体であり、下側半体の質量よりお小さい質量である上側半体を有し、上側半体の高さは、下側半体の高さとほぼ同じである。
【0025】
好ましくは、超音波ホーンは、筒状上側半体及び筒状下側半体を有する中実の一体部品体であり、上側半体の直径は、下側半体の直径よりお小さく、上側半体及び下側半体は、同軸に位置合わせされている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる空中栽培装置を示す概略断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態にかかる空中栽培装置を示す概略断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態または第2実施形態において使用するための4つの超音波ホーン形状を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、屋内農業システムで使用するための本発明の第1実施形態にかかる空中栽培装置1を示す。空中栽培装置1は、育成ベッド3を備え、この育成ベッドには、一体型超音波噴霧器モジュール5が接着剤によってまたは機械的固定具によってなど、任意の適切な手段によって取り付けられている。電源供給部は、一体型超音波噴霧器モジュール5に電力を供給し、切替回路7によってスイッチをオンオフされる。超音波噴霧器モジュール5内に位置する変化回路8は、使用されている超音波トランスデューサに適しているように電源供給部を変化させ得る。植物支持体9は、育成ベッド3の上方に位置する。
【0028】
育成ベッド3は、栄養溶液容器11を備え、この栄養溶液容器には、水及び植物肥料の混合物などの栄養溶液13が収容されている。育成ベッド3は、植物支持体9を支持する側壁部15を有する。植物支持体9は、部分的に開口した構成を有しており、植物17は、植物支持体に支持されており、植物の根19は、根ベッド空間21内へ根を伸ばし得る。
【0029】
一体型超音波噴霧器モジュール5は、超音波ホーン23を備えており、この超音波ホーンは、二液型エポキシ樹脂接着剤を用いて、ホーン23の入力端部25において圧電超音波トランスデューサ27に接着で固着されている。超音波ホーン23は、断面で段状外形を有しかつ上面視で円状を有する。上側セクション24は、同様に中実の柱状体の形状にある下側セクション26よりも小径の中実の柱状体形状にある。上側セクション24及び下側セクション26は、同一材料から一体的に形成されており、それにより、超音波ホーン23は、一部品で形成されており、またそれにより、上側セクション24の質量は、下側セクション26の質量よりも低い。圧電超音波トランスデューサは、露出した、樹脂コーティングされた圧電セラミックディスクを有し、このトランスデューサは、PZT-4の圧電結晶体を使用する。PZT-4の圧電結晶体は、逆圧電効果を示す、すなわち、圧電結晶体が電荷に露出されると、材料は、寸法を変化させる。圧電結晶体に正弦波の形状を有する電源供給を供給すると、圧電結晶体、ひいては圧電トランスデューサは、その正弦波の周波数で発振する。圧電トランスデューサ27は、トランスデューサの振動方向が圧電トランスデューサ27の長手方向軸X-Xに沿うように極付けされており、それにより、これら振動を超音波に変換すると、この超音波は、超音波ホーン23をX-X方向の超音波伝搬のほぼ全てで通過して、側方に向けられた超音波に取り込まれるエネルギー量が最小になる。超音波ホーン23の長さは、超音波ホーン23内を進行する超音波の波長の1/4である。外側ケース29は、圧電超音波ホーン23及び超音波トランスデューサ27を部分的に囲み、圧電超音波トランスデューサ27は、外側ケース29と超音波ホーン23との間で圧縮されている。圧電トランスデューサ27は、10kPa以上30kPa以下の圧力で機械的に予負荷されており、例えばエネルギー損失を制限することなどによって、動作効率を改善する。
【0030】
育成ベッド3には、容器11の底壁部33に開口部31が設けられており、超音波ホーン23は、超音波ホーンの出力先端部35が底壁部33の内面と面一で位置するように開口部31と位置合わせされている。超音波ホーン23は、開口部31に締まり嵌めされており、この嵌合は、干渉嵌りであり得る。シール37は、容器が水密であるように設けられている。
【0031】
切替回路7は、機械的リレー(図示略)を有しており、この機械的リレーは、超音波噴霧器モジュール5に電源を供給するためにまたは電源のこの供給を除去するために使用される。機械的リレーは、LettUs Grow社のOstara(登録商標)ソフトウエアなどの農業制御ソフトウエアによって命令され得る。
【0032】
使用中において、エアロゾルを介して水及び栄養を植物の根に供給することが望ましい場合に、切替回路7は、農業制御ソフトウエアによって動作されており、変化回路8への電源の供給を提供する。変化回路8は、供給した電源供給の周波数を圧電トランスデューサ27の固有共振周波数(すなわち、1.7MHz以下)と一致する周波数へ変更し、特有の電源供給波形を有するその電源供給を圧電トランスデューサ27に提供する。
【0033】
圧電トランスデューサ27は、電源供給の電気エネルギーを超音波に変換する。超音波は、超音波ホーン23の入力端部25を通過し、超音波ホーン23とトランスデューサ27との間の接着結合界面を横断する。超音波は、超音波ホーン23を通して出力先端部35まで長手方向軸X-X軸に沿って広がる。超音波ホーン23は、圧電超音波トランスデューサ27によって生成される超音波の振幅を増幅する、すなわち、増加させる。
【0034】
超音波が出力先端部35に達すると、超音波は、出力先端部35と栄養溶液との間の界面を横断して伝搬される。そして、超音波は、超音波が栄養溶液の表面に達するまで栄養溶液を通って広がる。超音波の高圧は、栄養溶液の柱を表面から延在させる。柱の弾性表面波は、表面張力波の運動を促進し、エアロゾルを形成する。
【0035】
水分及び栄養を植物の根に供給する目的のために十分なエアロゾルを形成すると、切替回路7は、圧電超音波トランスデューサ27への電源供給を中止し、それにより、超音波の発生を中断する。
【0036】
図2は、屋内農業システムで使用するための本発明の第2実施形態にかかる空中栽培装置201を示す。第2実施形態は、第1実施形態と多くの特徴を共通しており、これら共通する特徴は、第1実施形態と同じ参照符号を利用して参照されるが、符号2を先頭に付けている。第2実施形態では、容器211の底壁部233に開口部がない。その替わりに、凹所251は、壁部233に設けられており、それにより、凹所251における壁部233の厚さを低減している。超音波ホーン223は、凹所251内に位置する。
【0037】
図3は、超音波ホーン23、223の4つの可能性のある形態を示している。
図3(a)は、錘状ホーンを示しており、
図3(b)は、指数関数状ホーンを示しており、
図3(c)は、段状ホーンを示しており、
図3(d)は、筒状ホーンを示している。超音波ホーン23全ては、単一材料からの一部品の中実形態として形成されており、これらホーンは、上側半体及び下側半体を有すると考えられ得、上側半体の高さは、h1であり、下側半体の高さは、h2であり、h1は、h2に等しい。
【0038】
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)は、超音波ホーンの上側半体の質量m1が超音波ホーンの下側半体の質量m2よりも低いことを示す。
【0039】
使用時において、錐状の、指数関数状の、及び段状のホーン23a、23b及び23cそれぞれは、超音波ホーンを入力端部25に取り付けると、超音波トランスデューサ27、227によって生成された超音波の振幅の増加を引き起こす。
【0040】
図3(d)は、筒状超音波ホーン23dについて、上側半体の質量m1が下側半体の質量m2と同じであること、を示す。
【0041】
使用時において、超音波は、超音波トランスデューサ27、227によって生成され、これら超音波は、トランスデューサ27、227を超音波ホーン23dの入力端部25に取り付けると、超音波ホーン23d内を通過する。筒状ホーン23dは、超音波の振幅の増加を引き起こさない。超音波の振幅は、超音波が超音波ホーン23dを通過する際と同じままである。筒状ホーン23dは、ホーン23dを通って進行する超音波の振幅の1/4または1/4の奇数倍の長手方向長さを有する。この結果、超音波ホーン23dは、音響的に透過である。
【符号の説明】
【0042】
1,201 空中栽培装置、11,211 容器、3,203 育成ベッド、5,205 一体型超音波噴霧器モジュール、15,215 側壁部、23,23a,23b,23c,23d,223 筒状超音波ホーン、24,224 筒状上側半体、25,225 入力端部、26,226 筒状下側半体、27,227 分極超音波トランスデューサ、33,233 底壁部、35,235 出力先端部
【手続補正書】
【提出日】2021-05-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体または溶液を収容するための容器(11、211)を有する育成ベッド(3、203)と、
前記育成ベッド(3、203)に取り付けられた超音波噴霧器モジュール(5、205)と、
を備え、
前記超音波噴霧器モジュール(5、205)が、超音波トランスデューサ(27、227)に接続された入力端部(25、225)と出力先端部(35、235)とを有する超音波ホーン(23、223)を備え、
前記超音波ホーン(23、223)が前記容器(11、211)の壁部(33、233)と接触して
おり、
前記超音波トランスデューサ(27、227)が、前記超音波ホーン(23、223)と外側ケース(29、229)との間にあり、前記超音波ホーン(23、223)及び前記超音波トランスデューサ(27、227)を部分的に囲んでいることを特徴とする空中栽培装置(1、201)。
【請求項2】
前記超音波ホーン(23、223)の前記出力先端部(35、235)が、前記容器(11、211)の前記壁部(33、233)を通過する開口部(31、231)内に位置しており、それにより、当該装置(1、201)の使用時に、前記出力先端部(35、235)が前記容器(11、211)内に収容されている前記液体または前記溶液と接触していることを特徴とする請求項1に記載の空中栽培装置。
【請求項3】
前記超音波ホーン(223)の前記出力先端部(235)が、前記容器(211)の前記壁部(233)の外側と接触していることを特徴とする請求項1に記載の空中栽培装置。
【請求項4】
前記超音波ホーン(223)の前記出力先端部(235)が、前記容器(211)の前記壁部(233)の前記外側から延在する凹所(251)内に位置することを特徴とする請求項3に記載の空中栽培装置。
【請求項5】
前記壁部(233)の厚さが、前記凹所において低減されていることを特徴とする請求項4に記載の空中栽培装置。
【請求項6】
電源を前記超音波噴霧器モジュール(5、205)に供給可能であるまたは前記超音波噴霧器モジュール(5、205)への電源の供給を取り除くことが可能である切替回路(7、207)をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項7】
前記容器(11、211)が、底壁部(33、233)と前記底壁部(33、233)から上方に突出する少なくとも1つの側壁部(15、215)とを有するトレイの形態にあることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項8】
前記超音波ホーン(23、223)が、金属から形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項9】
前記超音波ホーン(23、223)が、前記超音波トランスデューサ(27、227)に接着結合されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項10】
前記超音波ホーン(23、223)の長手方向が、使用時に前記超音波ホーン(23、223)内を進行する超音波の波長の1/4または1/4の奇数倍であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項11】
前記超音波ホーン(23、223)の長手方向が、使用時に前記超音波ホーン(23、223)内を進行する超音波の波長の1/2または1/2の奇数倍であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項12】
前記超音波トランスデューサ(27、227)が、分極圧電トランスデューサ(27、227)であり、極性の方向が、前記超音波ホーン(23、223)の長手方向軸X-Xに位置合わせされていることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項13】
前記溶液が、水及び養分の混合体から形成された栄養溶液であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項14】
前記超音波ホーン(23、223)が、前記容器(11、211)と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1、2、6から12のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項15】
前記超音波ホーン(23、223)が、中実の一体部品体であり、下側半体(26、226)の質量よりも小さい質量である上側半体(24、224)を有し、
前記上側半体の高さが、前記下側半体の高さとほぼ同じであることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【請求項16】
前記超音波ホーン(23、223)が、筒状上側半体(24、224)及び筒状下側半体(26、226)を有する中実の一体部品体であり、
前記上側半体(24、224)の直径が、前記下側半体(26、226)の直径よりも小さく、
前記上側半体(24、224)及び前記下側半体(26、226)が、同軸に位置合わせされていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の空中栽培装置。
【国際調査報告】