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特表2022-529638ビス(フルオロスルホニル)イミドの精製
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  • 特表-ビス(フルオロスルホニル)イミドの精製 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】ビス(フルオロスルホニル)イミドの精製
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/086 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
C01B21/086
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021560927
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(85)【翻訳文提出日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 US2020028068
(87)【国際公開番号】W WO2020214560
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/834,815
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/842,646
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ルーリー、マシュー エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ポイントナー、バーナード イー.
(57)【要約】
【解決手段】 精製ビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミド及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物を提供することと、次いで、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることと、を含む。ガス状アンモニアは、フルオロスルホン酸と反応して、アンモニウムフルオロスルファートを生成する。本方法は、液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離することを更に含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製ビス(フルオロスルホニル)イミドを製造する方法であって、
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物を提供することと、
前記液体混合物をガス状アンモニアと接触させることであって、前記ガス状アンモニアが前記フルオロスルホン酸と反応して、アンモニウムフルオロスルファートを生成することと、
前記液体混合物を前記アンモニウムフルオロスルファートから分離することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記液体混合物をガス状アンモニアと接触させることが、前記ガス状アンモニアを、前記液体混合物を含有する容器のヘッドスペースに導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ガス状アンモニアが、約100kPa~約200kPaの圧力で供給される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体混合物をガス状アンモニアと接触させることが、前記ガス状アンモニアを前記液体混合物へとバブリングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記液体混合物をガス状アンモニアと接触させることが、前記ガス状アンモニア及び前記液体混合物を対流カラム内で流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記液体混合物を前記アンモニウムフルオロスルファートから分離することが、前記液体混合物から前記アンモニウムフルオロスルファートを濾過することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記液体混合物を前記アンモニウムフルオロスルファートから分離することが、前記アンモニウムフルオロスルファートから前記ビス(フルオロスルホニル)イミドをフラッシュ蒸留することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記液体混合物から前記アンモニウムフルオロスルファートを分離した後の前記液体混合物中の前記ビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が、約90mol%~約99.95mol%である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記液体混合物を前記アンモニウムフルオロスルファートから分離した後に、前記液体混合物を提供することであって、前記液体混合物が、前記ビス(フルオロスルホニル)イミド及び残留フルオロスルホン酸を含む、ことと、
前記液体混合物をガス状アンモニアと接触させることであって、前記ガス状アンモニアが前記液体混合物中の前記残留フルオロスルホン酸と反応して、追加のアンモニウムフルオロスルファートを生成することと、
前記液体混合物を前記追加のアンモニウムフルオロスルファートから分離することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記液体混合物から前記追加のアンモニウムフルオロスルファートを分離した後の前記液体混合物中の前記ビス(フルオロスルホニル)イミド濃度が、約98mol%~約99.95mol%である、請求項9に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルオロスルホン酸とビス(フルオロスルホニル)イミドとの液体混合物からフルオロスルホン酸を除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビス(フルオロスルホニル)イミド(HFSI)は、リチウムイオン電池に使用されるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)の製造において重要な原料である。HFSIは、いくつかの方法によって調製することができる。例えば、HFSIは、式1に示される、尿素とフルオロスルホン酸との反応によって調製することができる。
式1 5HSOF+2CO(NH→HN(SOF)+2CO+3NHSO
【0003】
別の例では、HFSIは、式2に示されるフルオロスルフリルイソシアナートとフルオロスルホン酸との反応によって調製することができる。
式2 HSOF+FSONCO→HN(SOF)+CO
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
式1及び式2の反応、及びHFSIを調製する他の反応において、HFSIは多くの場合、過剰なフルオロスルホン酸で汚染される。HFSI及びフルオロスルホン酸は、それぞれ170℃及び165℃で沸騰するため、2種を分離するのに必要なカラムが原因で、蒸留による精製は困難であり、かつ高価なものとなる。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドの製造において原料として使用するための高純度HFSIを供給するために、HFSIからフルオロスルホン酸を除去する改善された方法が必要とされる。
【0005】
本開示は、ガス状アンモニアを使用して、精製ビス(フルオロスルホニル)イミドを製造するためのプロセスを提供する。
【0006】
その一形態では、本開示は、精製ビス(フルオロスルホニル)イミドを製造するための方法を提供する。本方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミド及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物を提供することと、次いで液体混合物をガス状アンモニアと接触させることと、を含む。ガス状アンモニアは、フルオロスルホン酸と反応して、アンモニウムフルオロスルファートを生成する。本方法は、液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、粗HFSIの19F NMRスペクトルを示す。
【0008】
図2図2は、本開示による、アンモニアによる図1の粗HFSIの第1の処理後の精製HFSIを128倍拡大したスペクトルの一部分を含む、19F NMRスペクトルを示す。
【0009】
図3図3は、本開示による、アンモニアによる図2の精製HFSIの第2の処理後の精製HFSIを512倍拡大したスペクトルの一部分を含む、19F NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、フルオロスルホン酸及びビス(フルオロスルホニル)イミド(HFSI)を含む液体混合物からフルオロスルホン酸を除去してHFSIを精製する方法を提供する。アンモニアを使用して、HFSIからフルオロスルホン酸を容易にかつ安価に分離することができることが見出された。HFSIの存在下で、アンモニアは、式3に従いフルオロスルホン酸と優先的に反応して、アンモニウムフルオロスルファートを生成する。
式3: NH+HSOF→NHSO
【0011】
重要なことに、例えば、式1に示されるように、尿素とフルオロスルホン酸との反応によってHFSIが調製されるときには、いくつかの場合では、精製プロセスは、式1によるHFSIの合成で既に生成されているため、精製プロセスは、生成物流に新たな副生成物を導入しない。
【0012】
精製前のHFSI及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物中のフルオロスルホン酸の濃度は、約0.001モル%(mol%)、約0.002mol%、約0.005mol%、約0.01mol%、約0.02mol%、約0.05mol%、約0.1mol%、約0.2mol%、約0.5mol%、約1mol%、約2mol%、約5mol%、若しくは約10mol%と同等の低さであってよく、又は約15mol%、20mol%、約25mol%、約30mol%、約35mol%、約40mol%、約45mol%、約50mol%、約55mol%、約60mol%、約65mol%、若しくは約70mol%と同等の高さであってよく、又は例えば約0.001mol%~約70mol%、約0.002mol%~約65mol%、約0.005mol%~約60mol%、約0.01mol%~約55mol%、約0.02mol%~約50mol%、約0.05mol%~約45mol%、約0.1mol%~約40mol%、約0.2mol%~約35mol%、約0.5mol%~約30mol%、約1mol%~約25mol%、約2mol%~約20mol%、約5mol%~約15mol%、約0.5mol%~約50mol%、約1mol%~約40mol%、約2mol%~約30mol%、約5mol%~約20mol%、約1mol%~約10mol%、若しくは約0.1mol%~約20mol%などの前述の値のうち、いずれか2つの間に定義された任意の範囲内であり得る。
【0013】
HFSIからフルオロスルホン酸を除去することは、式3に示されるように、ガス状アンモニアがフルオロスルホン酸と反応してアンモニウムフルオロスルファートを生成するように、HFSI及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物をガス状アンモニアと接触させることを含む。液体混合物をガス状アンモニアと接触させることは、液体混合物を含有する容器のヘッドスペース内にガス状アンモニアを導入することと、任意に混合物を攪拌することと、を含み得る。アンモニアがフルオロスルホン酸と反応すると、容器内の圧力が低下する。反応の実質的な完了は、容器内の圧力がもはや減少しないときに示される。反応の温度は重要ではない。
【0014】
あるいは、又はそれに加えて、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることは、液体混合物を通しながらガス状アンモニアをバブリングすることを含んでもよい。あるいは、又はそれに加えて、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることは、液体混合物及びガス状アンモニアを対流カラムに通して流すことを含んでもよい。
【0015】
ガス状アンモニアは、約100キロパスカル(kPa)、約110kPa、約120kPa、約130kPa、若しくは約140kPa、又は約150kPa、約160kPa、約170kPa、約180kPa、約190kPa、若しくは約200kPaと同等の低さの絶対圧力で、又は例えば、例えば、約100kPa~約200kPa、約110kPa~約190kPa、約120kPa~約180kPa、約130kPa~約170kPa、約140kPa~約160kPa、約140kPa~約150kPa、若しくは約150kPa~約160kPaなど、前述の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内であり得る。
【0016】
液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離することは、固体アンモニウムフルオロスルファートを液体混合物から濾過することを含み得る。あるいは、又は加えて、液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離することは、液体混合物から固体アンモニウムフルオロスルファートを噴霧乾燥させることを含んでもよい。あるいは、又はそれに加えて、アンモニウムフルオロスルファートから液体混合物を分離することは、アンモニウムフルオロスルファートからHFSIをフラッシュ蒸留して、固体アンモニウムフルオロスルファートを残すことを含んでもよい。
【0017】
液体混合物からアンモニウムフルオロスルファートを分離した後の液体混合物中のHFSIの濃度は、約90mol%、約92mol%、約94mol%、約95mol%、約96mol%、若しくは約97mol%と同等の低さであってよく、又は約98mol%、約98.5mol%、約99mol%、約99.5mol%、約99.7mol%、若しくは約99.9mol%と同等の高さであってよく、又は例えば約90mol%~約99.9mol%、約92mol%~約99.7mol%、約94mol%~約99.5mol%、約95mol%~約99mol%、約96mol%~約98.5mol%、約97mol%~約98mol%、若しくは約98.5mol%~約99.9mol%など、前述の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内であり得る。
【0018】
任意選択的には、HFSI及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物をガス状アンモニアと接触させ、次いで、上記のように、液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離するプロセスは、残留フルオロスルホン酸を除去し追加のアンモニウムフルオロスルファートを分離するために必要に応じて何回も繰り返されて、HFSIを更に精製することができる。
【0019】
プロセスを繰り返す前のHFSI及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物中の残留フルオロスルホン酸の濃度は、約0.005モル%(mol%)、約0.007mol%、約0.01mol%、約0.02mol%、約0.03mol%、約0.04mol%、約0.5mol%、約0.06mol%、約0.08mol%、約0.1mol%、約0.15mol%、若しくは約0.2mol%と同等の低さであってよく、又は約0.3mol%、約0.5mol%、約1mol%、約1.5mol%、約2mol%、約3mol%、約5mol%、約10mol%、約15mol%若しくは約20mol%と同等の高さであってよく、又は例えば、約0.005mol%~約20mol%、約0.007mol%~約15mol%、約0.01mol%~約10mol%、約0.02mol%~約5mol%、約0.03mol%~約3mol%、約0.04mol%~約2mol%、約0.05mol%~約1.5mol%、約0.06mol%~約1mol%、約0.08mol%~約0.5mol%、約0.1mol%~約0.3mol%、約0.15mol%~約0.2mol%、若しくは約0.1mol%~約2mol%などの前述の値のいずれか2つの間に定義された任意の範囲内であり得る。
【0020】
液体混合物から追加のアンモニウムフルオロスルファートを分離した後の液体混合物中のHFSIの濃度は、約95mol%、約96mol%、又は約97mol%、約98mol%、若しくは約98.5mol%と同等の低さであってよく、又は約99mol%、約99.5mol%、約99.7mol%、約99.9mol%、若しくは約99.95mol%の高さであってよく、又は例えば、約95mol%~約99.95mol%、約96mol%~約99.9mol%、約97mol%~約99.7mol%、約98mol%~約99.5mol%、約98.5mol%~約99mol%、若しくは約99.5mol%~約99.95mol%など、前述の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内であり得る。
【0021】
本明細書に記載の方法は、HFSIからフルオロスルホン酸を除去するのに蒸留にのみ依存する、当該技術分野における既知のプロセスと比較して、はるかに多くのエネルギー効率及び資本効率である。更に、本明細書に記載される方法は、当該技術分野における既知のプロセスとは異なり、任意の追加の水又は有機溶媒をシステムに導入しない。したがって、本発明は、当該技術分野における既知のプロセスよりもHFSIからのフルオロスルホン酸の除去における有意な改善を表す。
【0022】
いくつかの実施形態では、プロセスは、上記のプロセスに従って精製するために液体混合物を提供する前に、フルオロスルホン酸及びHFSIを含む液体混合物を蒸留することを含んでもよい。蒸留によってHFSIからフルオロスルホン酸を除去するためのエネルギー及び資本コストは、蒸留プロセスで適度に純粋なHFSIを生成することのみが必要な場合は、代わりに、所望の品質へとHFSIを更に精製するための本明細書に記載の方法に頼り、大幅に削減される。
【0023】
蒸留後及び精製前のHFSI及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物中のフルオロスルホン酸の濃度は、約0.1mol%、約0.5mol%、約1mol%、約2mol%、約4mol%、若しくは約6mol%の低さであってよく、又は約8mol%、約10mol%、約15mol%、若しくは約20mol%の高さであってよく、又は約0.1mol%~約20mol%、約2mol%~約15mol%、約4mol%~約10mol%、約6mol%~約8mol%、若しくは約8mol%~約10mol%など、前述の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内であり得る。
【0024】
本明細書で使用するとき、「前述の値のうちのいずれか2つの間で定義される任意の範囲内」という句は、それらの値が列挙のより低い部分にあるか又は列挙のより高い部分にあるかにかかわらず、任意の範囲がそのような句の前に列挙された値のうちのいずれか2つから選択され得ることを意味する。例えば、1対の値は、2つのより低い値、2つのより高い値、又はより低い値及びより高い値から選択されてもよい。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでない旨を明確に指示しない限り、複数形を含む。
【0025】
不正確の用語に関して、用語「約」及び「およそ」が互換的に使用されてもよく、記述された測定値を含む測定を指し、また、記載された測定値に適度に近い任意の測定値も含む。記載された測定値に合理的に近い測定値は、当業者によって理解され、容易に確認されるように、合理的に小さい量だけ記載された測定値から逸脱する。そのような偏差は、例えば、性能を最適化するために行われる測定誤差又は微調整に起因し得る。当業者が合理的に小さい差異の値を容易に確認できないと判定された場合、用語「約」及び「およそ」は、記載された値のプラスマイナス10%を意味すると理解され得る。
【0026】
前述の説明は、本開示の単なる例示に過ぎないことが理解されるべきである。本開示から逸脱することなく、当業者によって様々な代替形態及び修正形態を考案することができる。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全てのかかる代替形態、修正形態、及び変動を包含することを意図する。
【実施例
【0027】
実施例1-アンモニアを有するHFSIからのフルオロスルホン酸の除去
この実施例では、上記のように、HFSIとフルオロスルホン酸の混合物の、ガス状アンモニアを用いた精製が示されている。HFSI及びフルオロスルホン酸の出発混合物をFluorine~19核磁気共鳴分光法により分析し、約92.6mol%のHFSI及び約7.4mol%のフルオロスルホン酸を含むことが見出された。19F NMRスペクトルを図1に示す。混合物を、HFSIとフルオロスルホン酸との混合物を含むフラスコのヘッドスペースに、約130kPa~約150kPaの絶対圧力でガス状アンモニアを導入することによって精製した。フラスコの内容物を、Teflon(商標)~コーティングされた磁気撹拌棒を用いて撹拌した。圧力をモニタリングしながら、フラスコを室温で静置した。反応は、フラスコが存在するフルオロスルホン酸の量に応じて暖かくなったため、この反応は発熱性であることが観察された。圧力が約3kPa未満の残留圧力まで低下することが観察され、フラスコが周囲に冷却された後、別の充填分のガス状アンモニアをフラスコのヘッドスペースに導入し、圧力をモニタリングしながら内容物を撹拌した。ヘッドスペースをガス状アンモニアで再充填し、残留圧力レベルよりもはるかに高く圧力が安定化するまで撹拌を繰り返し、反応が実質的に完了したことを示した。フラスコ内の混合物をフラッシュ蒸留し、第1の留出物を回収した。第1の留出物は無色透明の液体であった。フラスコ内に残っている固体白色粉末を赤外分光法により分析し、アンモニウムフルオロスルファートであることを確認した。
【0028】
第1の留出物をFluorine~19核磁気共鳴分光法により分析し、約98.8mol%のHFSI及び約1.2mol%のフルオロスルホン酸を含むことが見出された。図2は、フルオロスルホン酸を示すピークを正確に見ることができるように、19F NMRスペクトル、及び128倍に拡大したスペクトルのインセット部分を示す。第1の留出物を、約130kPa~約150kPaの絶対圧力で、第1の留出物を含むフラスコのヘッドスペース内にガス状アンモニアを導入することによって精製した。フラスコの内容物を、Teflon(商標)~コーティングされた磁気撹拌棒を用いて撹拌した。フラスコは、圧力をモニタリングしたときに室温で飽和させた。圧力が約3kPa未満の残留圧力まで低下することが観察され、フラスコが周囲に冷却された後、ガス状アンモニアの別の充填分をフラスコのヘッドスペースに導入し、圧力をモニタリングしながら内容物を撹拌した。ヘッドスペースをガス状アンモニアで再充填し、残留圧力レベルよりもはるかに高く圧力が安定化するまで撹拌を繰り返し、反応が実質的に完了したことを示した。フラスコ中の第1の留出物をフラッシュ蒸留し、第2の蒸留物を回収した。第2の留出物は無色透明の液体であった。
【0029】
第2の留出物をFluorine~19核磁気共鳴分光法により分析し、これがHFSIを含むが、観察可能なフルオロスルホン酸を含まないことを見出した。図3は、フルオロスルホン酸を示すピークを正確に見ることができるように、19F NMRスペクトル、並びにスペクトルの挿入部分を512倍拡大して示す。フルオロスルホン酸を示すピークは存在せず、ここからスペクトルの512倍であっても、残留フルオロスルホン酸が観察されなかったことを示す。
態様
【0030】
態様1は、精製ビス(フルオロスルホニル)イミドの製造方法である。本方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミド及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物を提供することと、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることであって、ガス状アンモニアがフルオロスルホン酸と反応してアンモニウムフルオロスルファートを生成することと、液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離することと、を含む。
【0031】
態様2は、提供工程において、液体混合物中のフルオロスルホン酸の濃度が約0.001mol%~約70mol%である、態様1に記載の方法である。
【0032】
態様3は、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることが、ガス状アンモニアを、液体混合物を含有する容器のヘッドスペースに導入することを含む、態様1又は態様2に記載の方法である。
【0033】
態様4は、ガス状アンモニアが約100kPa~約200kPaの圧力で供給される、態様3に記載の方法である。
【0034】
態様5は、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることが、ガス状アンモニアを液体混合物へとバブリングすることを含む、態様1~4のいずれかに記載の方法である。
【0035】
態様6は、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることが、ガス状アンモニア及び液体混合物を対流カラム内で流すことを含む、態様1~4のいずれかに記載の方法である。
【0036】
態様7は、液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離する工程が、液体混合物からフルオロスルファートを濾過することを含む、態様1~6のいずれかに記載の方法である。
【0037】
態様8は、液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離することが、アンモニウムフルオロスルファートからビス(フルオロスルホニル)イミドをフラッシュ蒸留することを含む、態様1~6のいずれかに記載の方法である。
【0038】
態様9は、液体混合物からアンモニウムフルオロスルファートを分離した後の液体混合物中のビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が約90mol%~約99.95mol%である、態様1~8のいずれかに記載の方法である。
【0039】
態様10は、
液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離した後に、液体混合物を提供することであって、液体混合物が、ビス(フルオロスルホニル)イミド及び残留フルオロスルホン酸を含む、ことと、
液体混合物をガス状アンモニアと接触させることであって、ガス状アンモニアが液体混合物中の残留フルオロスルホン酸と反応して、追加のアンモニウムフルオロスルファートを生成することと、
液体混合物を追加のアンモニウムフルオロスルファートから分離することと、を更に含む、態様1~9のいずれかに記載の方法である。
【0040】
態様11は、提供工程において、液体混合物中の残留フルオロスルホン酸の濃度が約0.005mol%~約20mol%である、態様10に記載の方法である。
【0041】
態様12は、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることが、ガス状アンモニアを、液体混合物を含有する容器のヘッドスペースに導入することを含む、態様10又は態様11に記載の方法である。
【0042】
態様13は、ガス状アンモニアが約100kPa~約200kPaの圧力で供給される、態様12に記載の方法である。
【0043】
態様14は、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることが、ガス状アンモニアを液体混合物へとバブリングすることを含む、態様10又は態様11に記載の方法である。
【0044】
態様15は、液体混合物をガス状アンモニアと接触させることが、ガス状アンモニア及び液体混合物を対流カラム内で流すことを含む、態様10又は態様11に記載の方法である。
【0045】
態様16は、液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離することが、液体混合物からフルオロスルファートを濾過することを含む、態様10~15のいずれかに記載の方法である。
【0046】
態様17は、液体混合物をアンモニウムフルオロスルファートから分離することが、アンモニウムフルオロスルファートからビス(フルオロスルホニル)イミドをフラッシュ蒸留することを含む、態様10~15のいずれかに記載の方法である。
【0047】
態様18は、液体混合物から追加のアンモニウムフルオロスルファートを分離した後の液体混合物中のビス(フルオロスルホニル)イミド濃度が、約98mol%~約99.95mol%である、態様10~17のいずれかに記載の方法である。
【0048】
態様19は、提供工程の前に、ビス(フルオロスルホニル)イミド及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物を蒸留することを更に含む、態様10~18のいずれかに記載の方法である。
【0049】
態様20は、提供工程において、液体混合物中のフルオロスルホン酸の濃度が約1mol%~約20mol%である、態様19に記載の方法である。

図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2021-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精製ビス(フルオロスルホニル)イミドを製造する方法であって、
ビス(フルオロスルホニル)イミド及びフルオロスルホン酸を含む液体混合物を提供することと、
前記液体混合物をガス状アンモニアと接触させることであって、前記ガス状アンモニアが前記フルオロスルホン酸と反応して、アンモニウムフルオロスルファートを生成することと、
前記液体混合物を前記アンモニウムフルオロスルファートから分離することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記液体混合物から前記アンモニウムフルオロサルファートを分離した後の前記液体混合物中の前記ビス(フルオロスルホニル)イミドの濃度が、約90mol%~約99.95mol%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体混合物を前記アンモニウムフルオロサルファートから分離した後に、前記液体混合物を提供することであって、前記液体混合物が、前記ビス(フルオロスルホニル)イミド及び残留フルオロスルホン酸を含む、ことと、
前記液体混合物をガス状アンモニアと接触させることであって、前記ガス状アンモニアが前記液体混合物中の前記残留フルオロスルホン酸と反応して、追加のアンモニウムフルオロサルファートを生成することと、
前記液体混合物を前記追加のアンモニウムフルオロサルファートから分離することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。

【国際調査報告】