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特表2022-529660位置検出ユニット、位置検出ユニットを備えたクラッチアクチュエータおよび位置検出ユニットを備えた車両クラッチ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】位置検出ユニット、位置検出ユニットを備えたクラッチアクチュエータおよび位置検出ユニットを備えた車両クラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 23/12 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
F16D23/12 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561830
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(85)【翻訳文提出日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2020058518
(87)【国際公開番号】W WO2020212110
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】102019109972.2
(32)【優先日】2019-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン フーバー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス アルブレヒト
【テーマコード(参考)】
3J056
【Fターム(参考)】
3J056BA05
3J056BD23
3J056BD34
3J056BE05
3J056CD07
(57)【要約】
本発明は、車両クラッチ(20)のクラッチアクチュエータ(2)の作動部材(3)の位置を検出する位置検出ユニット(1)に関する。位置検出ユニット(1)は、作動部材(3)に結合可能な磁気エンコーダ素子(4)と、検出スペース(6)を有するセンサ(5)であって、センサ(5)は検出スペース(6)内で作動部材(3)の所定の移動範囲内の磁気エンコーダ素子(4)の位置を検出するように形成されて配置されている、センサ(5)と、検出スペース(6)から、磁気エンコーダ素子(4)により引きつけられたフェライトチップ(15)を除去するように形成された保護装置とを有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両クラッチ(20)のクラッチアクチュエータ(2)のケーシング(10)内に配置された作動部材(3)の位置を検出する位置検出ユニット(1)であって、
前記クラッチアクチュエータ(2)の前記ケーシング(10)内で前記作動部材(3)に設けられた磁気エンコーダ素子(4)と、
前記クラッチアクチュエータ(2)の前記ケーシング(10)の外側に設けられたセンサ(5)であって、該センサ(5)は検出スペース(6)を有しており、該検出スペース(6)内で、前記センサ(5)は前記磁気エンコーダ素子(4)の所定の移動範囲内の前記磁気エンコーダ素子の位置を検出可能であるように形成されて配置されている、センサ(5)と、
前記検出スペース(6)内での、前記磁気エンコーダ素子(4)により引きつけられたフェライトチップ(15)の付着を防ぐように形成された保護装置と
を有する、位置検出ユニット(1)。
【請求項2】
前記保護装置は、前記センサ(5)のケーシング(9)を有しており、該ケーシング(9)は、前記クラッチアクチュエータ(2)の前記ケーシング(10)の外面に設けられており、前記ケーシング(9)の寸法に基づき、前記検出スペース(6)の、前記クラッチアクチュエータ(2)の前記ケーシング(10)の外側に位置する部分を被覆しひいては前記検出スペース(6)内での前記フェライトチップ(15)の付着を防ぐように形成されている、請求項1記載の位置検出ユニット(1)。
【請求項3】
前記センサ(5)は、取付け装置(11)により取り付けられており、該取付け装置(11)は、保護装置として形成されている、請求項1または2記載の位置検出ユニット(1)。
【請求項4】
前記保護装置は、所定の透磁率を有する材料に関係するその寸法に基づき、前記検出スペース(6)内での前記保護装置に対する前記フェライトチップ(15)の付着は防ぐが、前記磁気エンコーダ素子(4)の位置の検出は可能にするように形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の位置検出ユニット(1)。
【請求項5】
前記保護装置は、所定の透磁率を有する材料に関係するその寸法に基づき、前記検出スペース(6)以外で前記フェライトチップ(15)の付着を可能にするように形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の位置検出ユニット(1)。
【請求項6】
前記ケーシング(9,10,12)のうちの少なくとも1つは、リブ(13)を有しており、該リブ(13)は、該リブ(13)の領域に前記フェライトチップ(15)を付着させることができるように形成されている、請求項5記載の位置検出ユニット(1)。
【請求項7】
前記保護装置は、前記検出スペース(6)外に配置された磁石(14)を有しており、該磁石(14)は、特に該磁石(14)が十分に強力な磁力を備えていることにより、前記フェライトチップ(15)を引きつけて、前記検出スペース(6)における前記フェライトチップ(15)の付着を防ぐように形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の位置検出ユニット(1)。
【請求項8】
前記センサ(5)は、磁気測定原理に基づくセンサとして形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の位置検出ユニット(1)。
【請求項9】
前記センサ(5)は、ホールセンサ、特に2Dホールセンサまたは3Dホールセンサとして、または磁気抵抗センサ、特に巨大磁気抵抗センサまたはトンネル磁気抵抗センサとして形成されている、請求項8記載の位置検出ユニット(1)。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項記載の位置検出ユニット(1)を備えたクラッチアクチュエータ(2)であって、請求項4記載の保護装置が、当該クラッチアクチュエータ(2)の前記ケーシング(10)を有している、クラッチアクチュエータ(2)。
【請求項11】
当該クラッチアクチュエータ(2)の前記ケーシング(10)は、前記センサ(5)の前記検出スペース(6)の範囲に、前記センサ(5)の前記検出スペース(6)の範囲以外よりも大きな壁厚さを有している、請求項10記載のクラッチアクチュエータ(2)。
【請求項12】
前記センサ(5)、前記取付け装置(11)または当該クラッチアクチュエータ(2)の前記ケーシング(9,10,12)は、前記検出スペース(6)の、当該クラッチアクチュエータ(2)の前記ケーシングの外側の部分全体を含むように形成されている、請求項10または11記載のクラッチアクチュエータ(2)。
【請求項13】
請求項5記載の位置検出ユニットを備えており、当該クラッチアクチュエータ(2)の前記ケーシング(10)の傍らには凹部が設けられており、該凹部は、収集ポケット(17)を形成し、該収集ポケット(17)内での前記フェライトチップ(15)の付着を可能にするように形成されている、請求項10または11記載のクラッチアクチュエータ(2)。
【請求項14】
請求項1から9までのいずれか1項記載の位置検出ユニットまたは請求項10から13までのいずれか1項記載のクラッチアクチュエータ(2)を備えた車両クラッチ(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正確な位置検出を可能にする位置検出ユニット、特に車両クラッチのクラッチアクチュエータの作動部材の位置を検出する位置検出ユニットに関する。
【0002】
磁気エンコーダ素子と、磁場を検出するセンサとを用いて作動部材の位置を検出する位置検出ユニットは周知である。しかしながら、困難な条件下で、つまり様々な汚れを有する環境で検出を行わねばならない場合でも、位置検出の精度に対する要求はますます高まっている。
【0003】
商用車の場合には、例えばオートマチックトランスミッションが果たす役割がますます重要になっている。それというのも、オートマチックトランスミッションはマニュアルトランスミッションに比べ、燃料消費と摩耗最小化とにおいて多大な利点を有しているからである。オートマチックトランスミッションの1つの構成部材は、とりわけ所要の位置検出手段を備えたクラッチアクチュエータである。多くの用途では、使用された位置センサがクラッチアクチュエータのアルミニウム壁を介して、その直線運動によりクラッチを作動させる、つまり接続または切断する作動ピストンの位置を検出する。このためにはエンコーダ素子、いわゆるターゲットとして、作動ピストンに結合された永久磁石が使用される。磁石の検出には、最大限の精度を得るために、例えば磁気センサ素子、例えばホールチップまたは磁気誘導センサ等が、例えばPLCD原理に基づき使用される。
【0004】
しかしながら、エンコーダ素子の磁力により、例えばフライホイールの摩耗により生じるフェライトチップが引きつけられる。この場合、フェライトチップは、例えばクラッチディスクの摩耗から生じる有機物や、オイルまたはグリース等の潤滑剤と混合し、汚れとしてクラッチアクチュエータのアルミニウム壁に付着する。
【0005】
しかしながら、付着したフェライト粒子は、エンコーダ素子の検出すべき磁場を変化させるため、センサは作動ピストンの行程位置を、最早正確に検出することができない。
【0006】
中央クラッチレリーズの安全関連機能に基づき、クラッチ位置、特に摺動点が極めて正確に検出されねばならない。この理由から、汚れが行程信号に影響を及ぼすことがあってはならない。
【0007】
本発明の根底を成す課題は、前記問題を解決し、フェライトの汚れを有する環境条件下でも磁石による作動部材の位置の正確な検出を保証する位置検出ユニットを提供することにある。
【0008】
この課題は、請求項1記載の位置検出ユニット、請求項10記載のクラッチアクチュエータおよび請求項13記載の車両クラッチにより解決される。有利な改良は従属請求項に含まれている。
【0009】
本発明の1つの態様では、車両クラッチのクラッチアクチュエータのケーシング内に配置された作動部材の位置を検出する位置検出ユニットは、クラッチアクチュエータのケーシング内で作動部材に設けられた磁気エンコーダ素子と、クラッチアクチュエータ(2)のケーシング(10)の外側に設けられたセンサであって、センサは検出スペースを有しており、検出スペース内で、センサは作動部材の所定の移動範囲内の磁気エンコーダ素子の位置を検出可能であるように形成されて配置されている、センサと、磁気エンコーダ素子により引きつけられたフェライトチップの付着を防ぐように形成された保護装置とを有している。
【0010】
センサの検出スペースは、センサに隣接する体積として規定されており、この体積においてセンサは磁場の変化を検出する。検出スペースは、センサがエンコーダ素子の所定の移動範囲内での位置を検出可能な範囲を有しており、これにより、エンコーダ素子の位置を、作動部材の移動距離の少なくとも重要な部分にわたって検出することができるようになっている。移動距離の重要な部分とは、クラッチアクチュエータが確実に機能するために位置検出が必要とされる部分である。
【0011】
保護装置により、磁気エンコーダ素子により引きつけられたフェライトチップの、例えばクラッチアクチュエータのケーシングにおける付着または検出スペースにおける存在が防がれる。これに関連して防がれるとは、フェライトチップが検出スペース内にある程度しか含まれておらず、フェライトチップが作動部材の位置の正確な検出に影響を及ぼすことはない、ということを意味する。
【0012】
保護装置は3つの異なる基本原理に基づき、磁気エンコーダ素子により引きつけられたフェライトチップの、検出スペース内での付着を防ぐ。一方では、クラッチアクチュエータのケーシングの外側の検出スペースの部分は、全体が保護装置の内側に位置しているため、フェライトチップが検出スペースに侵入することはできない。この場合、全体とは、クラッチアクチュエータのケーシングの外側の検出スペースの部分の大部分が、フェライトチップがセンサの信号に機能上重大な影響を及ぼさないように、保護装置の内側に位置していることを意味する。他方では、所定の透磁率を有する保護装置の材料に関係する保護装置の寸法が、保護装置以外の領域内に磁気エンコーダ素子の磁気引力が通ることを防ぐという手段があり、これにより、フェライト粒子が検出スペースの範囲内で磁気エンコーダ素子により引きつけられて付着することはなくなる。またこの場合、付着を防ぐということは、チップがセンサの信号に機能上重大な影響を及ぼさない程度にしか付着しないということを意味する。第3の基本原理としては、フェライト粒子が磁力により検出スペース以外の範囲に引きつけられ、これにより、フェライト粒子が検出スペースに流入することを防ぐ手段があり、この場合も、チップはセンサの信号に機能上重大な影響を及ぼさない程度に、検出スペース内に流入し得る。
【0013】
1つの有利な改良では、保護装置は、センサのケーシングを有しており、ケーシングは、クラッチアクチュエータのケーシングの外面に設けられており、検出スペースの、クラッチアクチュエータのケーシングの外側に位置する部分を被覆しひいてはその寸法に基づきフェライトチップの付着を防ぐように形成されている。
【0014】
センサのケーシングの寸法は、簡単にセンサの検出スペースの大きさに適合され得、これにより、検出スペース内でのフェライトチップの付着を防ぐということが、問題なく廉価に可能である。
【0015】
1つの別の有利な改良では、センサは、取付け装置により取り付けられており、この場合、取付け装置は保護装置として形成されている。
【0016】
ケーシングが、検出スペース内でのフェライトチップの付着を防ぐ取付け装置を設ける場合には、センサを、任意のケーシング形状を有するケーシングと共に設けることが可能である。センサは、取付け装置を介して、例えば車両クラッチのケーシングまたはクラッチアクチュエータのケーシングに取り付けられる。
【0017】
1つの別の有利な改良では、保護装置は、所定の透磁率を有する材料に関係するその寸法に基づき、検出スペース内での保護装置に対するフェライトチップの付着は防ぐが、磁気エンコーダ素子の位置の検出は可能にするように形成されている。
【0018】
透磁率は、磁束に対する材料の透過性を示す。所定の透磁率を有する材料を有する保護装置の寸法を調整することにより、検出スペース内でフェライトチップが保護装置に付着することを防ぐことが可能である。他方では、所定の透磁率に関係する保護装置の寸法は、磁気エンコーダ素子の位置の検出が可能であるように選択されている。フェライトチップが保護装置の外面に付着することがないため、保護装置の外面が検出スペース内にも位置し得るように、保護装置の寸法を減少させることが可能であり、これにより、材料および重量が節減され得る。
【0019】
1つの別の有利な改良に相応して、保護装置は、所定の透磁率を有する材料に関係するその寸法に基づき、検出スペース以外でフェライトチップの付着を可能にするように形成されている。
【0020】
検出スペース以外で保護装置にフェライトチップが付着することにより、磁気センサ付近の自由なチップの量が減らされ、これにより、検出スペースからフェライトチップをより簡単に除去することができる。検出スペース以外で保護装置に付着させると同時に検出スペース内での付着は防ぐ、ということは、例えば検出スペースの内と外とで異なる材料を使用することにより可能になる。
【0021】
1つの別の有利な改良では、ケーシングのうちの少なくとも1つがリブを有しており、リブは、リブの領域にフェライトチップを付着させることができるように形成されている。
【0022】
この改良では、自由なチップの量を減らす効果の他に、ケーシングの強度をも高めることができる。
【0023】
1つの別の改良に相応して、保護装置は、検出スペース外に配置された磁石を有しており、磁石は、特に磁石(14)が十分に強力な磁力を備えていることにより、フェライトチップを引きつけて、検出スペースにおけるフェライトチップの付着を防ぐように形成されている。
【0024】
この磁石によっても、磁気センサ付近の自由なチップの量を減らすことができ、これにより、検出スペースからフェライトチップをより簡単に除去することができる。この磁石は好適な位置に配置されていてよく、これにより、可能な限り多くのフェライトチップが付着することになり、したがってフェライトチップが検出スペース内に侵入しないようになっている。
【0025】
1つの有利な改良では、センサは磁気測定原理に基づくセンサとして形成されている。
【0026】
これらのセンサを用いて、比較的簡単な手段により作動部材の位置を検出することができる。
【0027】
1つの別の有利な改良では、センサはホールセンサ、特に2Dホールセンサまたは3Dホールセンサまたは磁気抵抗センサ、特に巨大磁気抵抗センサまたはトンネル磁気抵抗センサとして形成されている。
【0028】
これらのセンサにより、作動部材の正確なもしくは高精度の検出が可能である。
【0029】
本発明の1つの別の態様に基づき、クラッチアクチュエータは位置検出ユニットを有しており、この場合、保護装置が、クラッチアクチュエータのケーシングを有しており、ケーシングは、所定の透磁率を有する材料に関係するその寸法に基づき、検出スペース内での保護装置に対するフェライトチップの付着は防ぐが、磁気エンコーダ素子の位置の検出は可能にするように形成されている。
【0030】
クラッチアクチュエータのケーシングが、フェライトチップの付着を防ぐように形成されている場合には、センサと、任意のケーシング形状を有する取付け装置とを使用することができる。
【0031】
1つの別の有利な改良では、クラッチアクチュエータのケーシングは、センサの検出スペースの範囲に、センサの検出スペースの範囲以外よりも大きな壁厚さを有している。
【0032】
検出スペースの範囲により大きな壁厚さを設けることにより、検出スペース全体がクラッチアクチュエータのケーシングの壁の外面の内側に含まれていてよく、このことは、小さな手間を余分にかけることだけで可能である。
【0033】
1つの有利な改良では、センサ、取付け装置またはクラッチアクチュエータのケーシングは、検出スペースの、クラッチアクチュエータのケーシングの外側の部分全体を含むように形成されている。
【0034】
この改良により、追加的な装置を設けることなしに、フェライトチップは検出スペース内に侵入不可能になる。
【0035】
1つの別の有利な改良では、クラッチアクチュエータのケーシングの傍らに複数の凹部が設けられており、凹部は、収集ポケットを形成し、収集ポケット内でのフェライトチップの付着を可能にするように形成されている。
【0036】
収集ポケットを設けることにより、フェライトチップを収集することができ、これにより、車両クラッチのケーシング内で自由に動くフェライトチップが検出スペース内に流入しないように減らされる。
【0037】
本発明の1つの別の態様に基づき、車両クラッチは、位置検出ユニットを有している。
【0038】
車両クラッチに位置検出ユニットまたはクラッチアクチュエータを設けることにより、フェライト汚れを有する環境条件下でも、車両クラッチの作動部材の位置を正確に検出することが可能である。
【0039】
次に、添付の図面を参照して本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】第1の実施形態による位置検出ユニットの概略図である。
図2】第2の実施形態による位置検出ユニットの概略図である。
図3】第3の実施形態による位置検出ユニットの概略図である。
図4】第4の実施形態による位置検出ユニットの概略図である。
図5】第5の実施形態による位置検出ユニットの概略図である。
図6】第6の実施形態による位置検出ユニットの概略図である。
【0041】
図1には、本発明に基づく第1の実施形態による位置検出ユニット1の概略図が示されている。位置検出ユニット1は、概略的に示唆した車両クラッチ20、特に車両クラッチ20のクラッチアクチュエータ2に設けられている。クラッチアクチュエータ2は、中央クラッチレリーズとして形成されているが、しかしまた択一的に、別の箇所に配置されるクラッチアクチュエータとして想定されていてもよい。クラッチアクチュエータ2は、作動部材3を有している。作動部材3は、中央クラッチレリーズ2の切断状態を変えるために用いられる。クラッチアクチュエータ2は、液圧式に操作されるクラッチレリーズとして設けられているため、作動部材3はピストンとして液圧シリンダ内に設けられている。択一的に別の駆動原理も考えられ、この場合、作動部材3は、例えば電気的なリニア駆動装置のスピンドルとして形成されている。
【0042】
位置検出ユニット1は、磁気エンコーダ素子4を有している。磁気エンコーダ素子4は、作動部材3に結合されているもしくは作動部材3に取り付けられているため、磁気エンコーダ素子4は作動部材3の動きに追従するようになっており、磁気エンコーダ素子4を介して、作動部材3の動きを検出することができる。エンコーダ素子4は、クラッチアクチュエータ2のケーシング10内に設けられている。
【0043】
さらに、位置検出ユニット1はセンサ5を有している。センサ5は、磁気エンコーダ素子4の位置を、エンコーダ素子、つまり作動部材3の所定の移動範囲内で検出するように形成されて配置されている。センサ5は、ホールセンサとして形成されている。択一的な実施形態では、特に2Dホールセンサまたは3Dホールセンサが設けられている、または磁気測定原理に基づく別のセンサ、例えば磁気抵抗センサ、特に巨大磁気抵抗センサまたはトンネル磁気抵抗センサが設けられている。
【0044】
作動部材3ひいては磁気エンコーダ素子4の所定の移動範囲は、クラッチを少なくとも完全接続状態から完全切断状態に、かつその逆に移行させるために必要とされるピストンの行程距離である。
【0045】
センサ5は、検出スペース6を検出することができるように構成されている。より正確に言うと、センサ5の検出スペース6は、センサ5に隣接する体積であり、この体積においてセンサ5は磁場の変化を検出する。検出スペース6が有する寸法内で、センサ5は、磁気エンコーダ素子4の磁場の移動による磁場の変化を介して所定の移動範囲内で磁気エンコーダ素子4の位置と位置変化とを検出することができる。つまり、エンコーダ素子4ひいては作動部材3の位置をピストンの行程に沿って検出することができる。
【0046】
センサ5は、二重矢印8が示すように、トランスミッション制御装置7に接続されており、これによりセンサ5に電圧が供給され、データ交換することができる。
【0047】
さらに位置検出ユニット1は、磁気エンコーダ素子4により引きつけられたフェライトチップ15が検出スペース6内に付着することを防ぐように形成された保護装置を有している。これに関連して、磁気エンコーダ素子4により引きつけられたフェライトチップ15の付着を防ぐということは、フェライトチップ15が、作動部材3の位置の正確な検出を損なわない程度にしか検出スペース6に侵入し得ない、ということを意味する。フェライトチップ15は、例えば車両クラッチ20のフライホイールの摩耗により生じ、車両クラッチ20のケーシング内に広がる恐れがある。
【0048】
この第1の実施形態における保護装置は、センサ5のケーシング9を有しており、ケーシング9はその寸法に基づき、検出スペース6内でのフェライトチップ15の付着を防ぐように形成されている。つまり、センサ5のケーシング9は、検出スペース6の、クラッチアクチュエータ2のケーシング10の外側の大部分、最良の場合には全体を覆う寸法を有しており、これにより、クラッチアクチュエータ2のケーシング10の外側の検出スペース6の部分は大部分、最良の場合には全体が保護装置の内側に位置することになるため、フェライトチップ15の付着が防がれる、もしくはフェライトチップ15がセンサ5の信号に機能上重大な影響を及ぼすことはない。
【0049】
図2には、第2の実施形態による位置検出ユニット1の概略図が示されている。第2の実施形態は第1の実施形態と、センサ5のケーシング9(図1)が、検出スペース6の、クラッチアクチュエータ2のケーシング10の外側全体を覆うのではなく、クラッチアクチュエータ2の、内部に磁気エンコーダ素子4が配置されたケーシング10が、検出スペース6内でのフェライトチップ15の付着を防ぐ寸法に基づき形成されている、という点において相違している。このためには検出スペース6全体が、クラッチアクチュエータ2のケーシング10の外面の内側に含まれている。このためにクラッチアクチュエータ2のケーシング10はセンサ5の検出スペース6の範囲に、センサ5の検出スペース6以外よりも大きな壁厚さを有している。この特性をより良く示すために、図2においてクラッチアクチュエータ2のケーシング10は断面図で示されている。択一的に、検出スペース6がケーシング10の外面の内側に位置する限り、クラッチアクチュエータ2のケーシング10の壁厚さが検出スペースの範囲においてより大きくなっているということは必須ではない。
【0050】
さらに保護装置は、任意には所定の透磁率を有する材料に関係するその寸法に基づき、検出スペース6以外の位置でのフェライトチップ15の付着を可能にするように形成されている。このことは、検出スペース6を全体的に覆うことにより可能になる。
【0051】
図3には、第3の実施形態による位置検出ユニットの概略図が示されている。第3の実施形態は第2の実施形態と、検出スペース6は全体的にクラッチアクチュエータ2のケーシング10の外面の内側に含まれているのではなく、保護装置が所定の透磁率を有する材料に関係するその寸法に基づき、保護装置に対するフェライトチップ15の付着を防ぐという点において相違している。つまり、クラッチアクチュエータ2のケーシング10の材料は、フェライトチップ15がケーシングに付着することをクラッチアクチュエータ2のケーシング10の壁厚さに関連して防ぐ、所定の透磁率を有している。したがって図3において看取されるように、検出スペース6全体を覆うことは必要とされていない。第3の実施形態のこの原理は、第2の実施形態にも、前記第1の実施形態および後述する第4の実施形態にも適用可能である。
【0052】
さらにクラッチアクチュエータ2のケーシング10は、リブ13を有している。リブ13によりケーシング10の強度の増大が達成され、さらに、リブ13の範囲にはフェライトチップ15が付着し得る。リブ13は、ここではセンサ5に隣接して配置されている。フェライトチップ15の付着は、リブ13を適当な所定の透磁率を有する材料から形成することにより達成される。択一的な実施形態では、リブ13は、ケーシング10の別の箇所に設けられていてもよい。さらに択一的には、複数のリブ13が設けられている、またはリブは別のケーシングに設けられている、またはリブ13は一切設けられていない。
【0053】
図4には、第4の実施形態による位置検出ユニットの概略図が示されている。第4の実施形態は先行実施形態と、センサ5が取付け装置11を有しており、取付け装置11は、センサ5を少なくとも部分的に包囲しかつ車両クラッチ20のケーシングに取り付けるように形成された、取付け装置11のケーシング12を備えている、という点において相違している。第4の実施形態はさらに、取付け装置11のケーシング12がその寸法に基づき、検出スペース6内でのフェライトチップ15の付着を防ぐように形成されている点においても相違している。択一的な実施形態では、センサ5がケーシング12により少なくとも部分的に包囲されておらず、センサ5は車両クラッチ20のケーシングにではなく、例えばクラッチアクチュエータ2のケーシング10に取り付けられている。
【0054】
取付け装置11は、クラッチアクチュエータ2を制御する電磁弁を有する電磁弁ユニットである。1つの択一的な実施形態では、取付け装置11は電磁弁ユニットではなく、例えばセンサ5を保持するためだけに設けられたホルダである。
【0055】
図5には、第5の実施形態による位置検出ユニット1の概略図が示されている。第5の実施形態は第1~4の実施形態と、保護装置が検出スペース6を直接に保護するのではなく、保護装置は検出スペース6以外に配置された磁石14を有しており、磁石14はフェライトチップ15を引きつけて、検出スペース6をフェライトチップ15が除去された状態に保つように形成されている、という点において相違している。
【0056】
第5の実施形態の磁石14は、第1~4の実施形態の保護装置と組み合わせることができる。同様に第1および第4の実施形態の特徴と、第2および第3の実施形態の特徴とを組み合わせてもよい。
【0057】
図6には、第6の実施形態による位置検出ユニット1の概略図が示されている。この図には、磁気エンコーダ素子4の磁場の磁力線16も示されている。
【0058】
この実施形態では、クラッチアクチュエータ2のケーシング10の傍らに複数の収集ポケット17が設けられている。収集ポケット17は、クラッチアクチュエータ2のケーシング10の傍らに凹部として形成されている。凹部は別個の部材に設けられているため、クラッチアクチュエータ2のケーシング10の外側に配置されているが、択一的にクラッチアクチュエータ2のケーシング10に凹ませて設けられていてもよい。収集ポケット17は、隣接する材料の透磁率に関係する寸法との協働において、フェライトチップ15がセンサ5の検出スペース6の外側に、ただし磁力線16の作用範囲の内側に付着しひいては収集ポケット17に集められるように配置されている。図6には、この実施形態と第1の実施形態との組合せが示されているが、この実施形態は択一的に第2~4の実施形態のうちの1つと組み合わせられていてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 位置検出ユニット
2 クラッチアクチュエータ
3 作動部材
4 磁気エンコーダ素子
5 センサ
6 検出スペース
7 トランスミッション制御装置
8 電圧供給およびデータ交換
9 センサのケーシング
10 クラッチアクチュエータのケーシング
11 取付け装置
12 取付け装置のケーシング
13 リブ
14 磁石
15 フェライトチップ
16 磁力線
17 収集ポケット
20 車両クラッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】