(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】内燃エンジンコントローラー
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20220616BHJP
【FI】
F02D45/00 372
F02D45/00 376
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021561896
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2020025181
(87)【国際公開番号】W WO2020216471
(87)【国際公開日】2020-10-29
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501169419
【氏名又は名称】パーキンズ エンジンズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Perkins Engines Company Limited
【住所又は居所原語表記】Eastfield Peterborough PE1 5FQ United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ、ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】ラドロー、ピーター
(72)【発明者】
【氏名】クリームン、リドワン
(72)【発明者】
【氏名】トン、パオヤン
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384AA03
3G384BA08
3G384BA13
3G384BA27
3G384DA04
3G384DA18
3G384EA07
3G384EE32
3G384FA15Z
3G384FA26Z
3G384FA38Z
3G384FA39Z
3G384FA45Z
3G384FA48Z
3G384FA56Z
3G384FA85Z
3G384FA86Z
(57)【要約】
【解決手段】 メモリーおよびプロセッサーを含む、内燃エンジン用の内燃エンジンコントローラー。メモリーは、複数の制御マップを記憶するように構成され、各制御マップは、内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定する。プロセッサーは、マップ更新モジュール、パラメーター更新モジュール、およびエンジン設定点モジュールを含む。マップ更新モジュールは、内燃エンジンの性能目的関数、内燃エンジンからのセンサーデータおよび複数の入力変数に基づいて、制御マップの少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算するように構成され、性能目的関数はパラメーターを含む。パラメーター更新モジュールは、内燃エンジンの動作状態の変化を決定する際に、性能目的関数のパラメーターを更新するように構成される。パラメーターが、エンジンモデルと関連付けられるエンジンパラメーター、コスト関数と関連付けられるコストパラメーターの一つまたは両方を含む。マップ更新モジュールは、最適化された超曲面に基づいて、制御マップの超曲面を更新するようにさらに構成される。エンジン設定点モジュールが複数の入力変数によって画定されるそれぞれの制御マップの超曲面上の位置に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力するように構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン用の内燃エンジンコントローラーであって、
複数の制御マップを格納するように構成されるメモリーであって、各制御マップが前記内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて前記内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定する、メモリーと、
プロセッサーであって、
前記内燃エンジン、前記内燃エンジンからのセンサーデータ、および前記複数の入力変数の性能目的関数に基づいて、前記制御マップの少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算するように構成され、前記性能目的関数がパラメーターを含む、マップ更新モジュールと、
前記内燃エンジンの動作状態の変化を決定する際に、前記性能目的関数のパラメーターを更新するように構成されるパラメーター更新モジュールであって、
前記パラメーターが、エンジンモデルと関連付けられるエンジンパラメーター、およびコスト関数と関連付けられるコストパラメーターのうちの一つまたは両方を含み、
前記マップ更新モジュールが、前記最適化された超曲面に基づいて、前記制御マップの前記超曲面を更新するように構成される、パラメーター更新モジュールと、
前記複数の入力変数によって画定される前記それぞれの制御マップの前記超曲面上の位置に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力するように構成されるエンジン設定点モジュールとを含む、プロセッサーと、を含む、内燃エンジン用の内燃エンジンコントローラー。
【請求項2】
前記マップ更新モジュールが、1秒の期間内に最適化された超曲面を計算するように構成される、請求項1に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項3】
前記マップ更新モジュールが、前記制御マップのそれぞれに対して最適化された超曲面を同時に計算するように構成され、
前記マップ更新モジュールが、前記それぞれの最適化された超曲面に基づいて、前記制御マップのそれぞれの前記超曲面を更新するように構成される、請求項1または2のいずれかに記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項4】
前記マップ更新モジュールが、
最適化された超曲面を検索するように構成されるオプティマイザーモジュールであって、前記性能目的関数によって評価されるアクチュエーター設定点の複数の候補グループを選択する、オプティマイザーモジュールを含み、
前記オプティマイザーモジュールが、前記性能目的関数により、アクチュエーター設定点の前記候補グループの前記評価に基づいて、前記少なくとも一つの制御マップに対して最適化された超曲面を出力するように構成される、請求項1~3のいずれかに記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項5】
前記性能目的関数が、
前記入力変数、前記内燃エンジンからの前記センサーデータ、前記エンジンパラメーター、およびアクチュエーター設定点の前記候補グループに基づいて、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成されるエンジンモデリングモジュールと、
前記エンジン性能変数を評価し、前記コストパラメーターに基づいてアクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを出力するように構成されるコストモジュールと、を含む、請求項1~4のいずれかに記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項6】
前記エンジンパラメーターが、前記内燃エンジンに接続される後処理システムからの入力に基づいて、時間変動するエンジンパラメーターを含む、請求項5に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項7】
前記コストパラメーターが、前記内燃エンジンに接続される後処理システムからの入力に基づいて、時間変動するコストパラメーターを含む、請求項5に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項8】
前記内燃エンジンの前記動作状態の変化が、前記モデルと前記内燃エンジンとの間の観察された差異に基づく、請求項1~7のいずれかに記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項9】
前記動作状態の前記変化が、前記センサーデータの予測値を表すエンジン性能変数に対する、前記内燃エンジンのセンサーからのセンサーデータ出力の変化に基づいて決定され、
前記パラメーター更新モジュールが、前記性能目的関数のエンジンパラメーターを更新して、前記センサーデータと、所定の閾値未満の前記センサーデータの予測値を表すエンジン性能変数との間の差を低減するように構成される、請求項8に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項10】
前記パラメーター更新モジュールが、前記内燃エンジンコントローラーへの前記入力変数、前記内燃エンジンからのセンサーデータ、および前記内燃エンジンの後処理システムからのセンサーデータのうちの少なくとも一つに基づいて、前記内燃エンジンの前記動作状態の変化を決定するように構成される、請求項1~9のいずれかに記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項11】
内燃エンジンを制御する方法であって、
複数の制御マップを提供することであって、各制御マップが前記内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、前記内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定する、提供することと、
前記内燃エンジン、前記内燃エンジンからのセンサーデータ、および前記複数の入力変数の性能目的関数に基づいて、前記制御マップの少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算することであって、前記性能目的関数がパラメーターを含む、計算することと、
前記内燃エンジンの動作状態の変化を決定する際に、前記性能目的関数のパラメーターを更新することであって、
前記パラメーターが、エンジンモデルと関連付けられるエンジンパラメーター、およびコスト関数と関連付けられるコストパラメーターのうちの一つまたは両方を含み、
前記制御マップの前記超曲面が前記最適化された超曲面に基づいて更新される、更新することと、
前記複数の入力変数によって画定される前記それぞれの制御マップの前記超曲面上の位置に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力することと、を含む、方法。
【請求項12】
最適化された超曲面が、1秒の期間内で計算される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記制御マップのそれぞれに対する最適化された超曲面が同時に計算され、
前記制御マップのそれぞれの前記超曲面が、前記それぞれの最適化された超曲面に基づいて更新される、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
最適化された超曲面を計算することが、
前記性能目的関数によって評価されるアクチュエーター設定点の複数の候補グループを選択することによって、最適化された超曲面を検索することと、
前記性能目的関数によるアクチュエーター設定点の前記候補グループの各々の前記評価に基づいて、前記少なくとも一つの制御マップに対して最適化された超曲面を出力することと、を含む、請求項11~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記性能目的関数が、
前記入力変数、前記内燃エンジンからの前記センサーデータ、前記エンジンパラメーター、およびアクチュエーター設定点の前記候補グループに基づいて、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成されるエンジンモデルと、
前記エンジン性能変数を評価し、前記コストパラメーターに基づいてアクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを出力するように構成されるコストモデルと、を含む、請求項11~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記エンジンパラメーターが、前記内燃エンジンに接続される後処理システムからの入力に基づいて、時間変動するエンジンパラメーターを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記コストパラメーターが、前記内燃エンジンに接続される後処理システムからの入力に基づいて、時間変動するコストパラメーターを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記内燃エンジンの前記動作状態の変化が、前記モデルと前記内燃エンジンとの間の観察された差異に基づく、請求項11~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記動作状態の前記変化が、前記センサーデータの予測値を表すエンジン性能変数に対する、前記内燃エンジンのセンサーから出力されるセンサーデータの変化に基づいて決定され、
エンジンパラメーターを更新することによって、前記センサーデータと、所定の閾値未満の前記センサーデータの予測値を表す前記エンジン性能変数との差を低減する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記内燃エンジンの前記動作状態の変化を決定することが、前記内燃エンジンコントローラーへの前記入力変数、前記内燃エンジンからのセンサーデータ、および前記内燃エンジンの後処理システムからのセンサーデータのうちの少なくとも一つに基づく、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃エンジンの制御に関する。より具体的には、本開示は、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンは、多くの場合、内燃エンジンの排気からの排出物を管理するための一つまたは複数のシステムを含む。例えば、内燃エンジンは多くの場合、内燃エンジンによって生成される排気ガスを処理するための後処理システムを含む。
【0003】
典型的な後処理システムは、多くのセンサーおよび(制御)アクチュエーターを含み得る。さらなるセンサーおよびアクチュエーターは、内燃エンジンの排気ガス、性能、および/または効率を監視するための内燃エンジンに設けられてもよい。従って、内燃エンジンは、多くの独立した制御可能な変数および較正値を含み得る。従って、内燃エンジン用のエンジン制御システムの設計は、多次元制御問題である。
【0004】
エンジン制御システムは、内燃エンジンの動作状態のリアルタイム変化に応答して、内燃エンジンのアクチュエーターに設定点を提供する必要がある。排出規制を満たす高効率の内燃エンジンに対する要求は、制御システムの設計をさらに制限する。制御システムの設計に対するさらなる制限は、エンジン制御システムに利用可能な計算能力の量が制限され得ることである。
【0005】
従来、内燃エンジンおよび後処理システムの制御は、オンボードプロセッサー(エンジン制御モジュール)によって管理される。内燃エンジンおよび後処理システムの複雑さのために、実装されたエンジン制御は、通常、内燃エンジンおよび後処理システムに対する事前較正された、時間不変のエンジン設定点を含む一連の「制御マップ」に基づくオープンループ制御システムを利用する。典型的には、制御されるエンジン設定点は、燃料質量、注入開始(SOI)、排気ガス再循環(EGR)、および入口マニホールド絶対圧力(IMAP)を含む。
【0006】
一部の単純な制御マップは、いくつかの時間不変のエンジン設定点が、異なるエンジン動作条件と関連付けられて記憶される、複数の早見表を含む。エンジン制御モジュールは、所望のエンジン動作に関連付けられる制御マップからエンジン設定点を単に読み取ることができる。また、一部のエンジン制御マップは、限定された数の他の変数の関数として、一つの変数の推定値を提供することもできる。エンジン設定点マップは、追加の変数が含まれるにつれて、メモリーの指数関数的増加、およびマップの複雑さのため、限られた数の入力変数のみに基づくことができる。場合によっては、システムメモリーが補間誤差という代償を払って不都合であり得る。
【0007】
オープンループ制御スキームの性能に対する影響を低減するための一つの方法は、異なる動作レジームに対して異なる制御マップを提供することである。例えば、異なる制御マップが、アイドル動作およびフルスロットル動作、または起動のために提供され得る。内燃エンジンごとに多くの異なるエンジン制御マップを提供することにより、各内燃エンジンの較正は高額かつ時間がかかる。さらに、これらの事前較正されたマップは、時間不変の早見表である。従って、これらの時間不変制御マップは、例えば、エンジン部品における部品間の変動、または湿度などの未測定の影響を考慮に入れることができない。また、時間不変制御マップは、経時的なエンジン部品性能の変動にも対応できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
代替的なアプローチは、較正前制御マップを置き換えるために、エンジンのリアルタイム、オンボード、モデルベースの制御を実装することである。このように、エンジンモデルは、内燃エンジンの一つまたは複数の設定点を直接制御する。モデルベースのエンジン制御は、エンジン性能、排出、および動作状態を予測するための動的エンジンモデルを含み得る。予測エンジン性能をモデルにフィードバックして、エンジン設定点をさらに最適化することができる。このように、モデルベースの制御方法は、性能および排出を改善するために、ネガティブフィードバックの形態をエンジン制御システムに効果的に組み込む。
【0009】
モデルベースの制御は、エンジン設定点がリアルタイムに計算されなければならないため、実施が困難である。従って、予測要素を含むモデルベースのエンジンコントローラーは、理想的には、それらの予測をリアルタイムに完了する。従って、多くのモデルベースの制御スキームは、内燃エンジンを制御するのに好適な時間スケール内でモデル出力を最適化するために、かなりの計算リソースを必要とする。
【0010】
本開示の第一の態様によれば、内燃エンジンコントローラーが提供される。内燃エンジンコントローラーは、メモリーおよびプロセッサーを含む。メモリーは、複数の制御マップを記憶するように構成され、各制御マップは、内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定する。プロセッサーは、マップ更新モジュール、パラメーター更新モジュール、およびエンジン設定点モジュールを含む。マップ更新モジュールは、内燃エンジンの性能目的関数、内燃エンジンからのセンサーデータおよび複数の入力変数に基づいて、制御マップの少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算するように構成され、性能目的関数はパラメーターを含む。性能目的関数のパラメーターは、エンジンモデルに関連付けられるエンジンパラメーターおよび/またはコスト関数に関連付けられるコストパラメーターを含む。パラメーター更新モジュールは、内燃エンジンの動作状態の変化を決定する際に、性能目的関数のパラメーターを更新するように構成される。例えば、パラメーター更新モジュールは、エンジンパラメーターおよび/またはコストパラメーターを更新し得る。さらに、マップ更新モジュールは、最適化された超曲面に基づいて、制御マップの超曲面を更新するように構成される。エンジン設定点モジュールが複数の入力変数によって画定されるそれぞれの制御マップの超曲面上の位置に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力するように構成される。
【0011】
従って、内燃エンジンコントローラーは、三つの処理モジュール、エンジン設定点モジュール、マップ更新モジュール、およびパラメーター更新モジュールを含む。エンジン設定点モジュールは、内燃エンジンの複数のアクチュエーターを制御するように構成される。例えば、エンジン設定点モジュールは、SOI、EGR、燃料質量、および内燃エンジンに対して要求される入口マニホールド絶対圧力(IMAPR)のうちの一つまたは複数を制御し得る。エンジン設定点モジュールは、例えば、トルク、エンジン速度などのユーザーの需要、または内燃エンジンからの指定されたセンサーデータ(例えば、現在の入口マニホールド絶対圧力)など、内燃エンジンへの性能入力に基づいて、これらのアクチュエーターを制御する。各アクチュエーターの制御は、各アクチュエーターの制御マップに基づいて決定される。各制御マップは、内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するための超曲面を画定する。このように、エンジン設定点モジュールは、制御マップに格納されるアクチュエーター設定点を利用して、効果的にアクチュエーターを制御する、オープンループ制御モジュールである。
【0012】
マップ更新モジュールは、エンジン設定点モジュールのオープンループ制御とは独立して効果的に動作する。マップ更新モジュールは、制御マップの超曲面を入力変数によって画定される位置に、更新することによって、内燃エンジンの制御を最適化するように構成される。制御される複数のアクチュエーターがあるため、超曲面の最適化は、多次元最適化問題である。第一の態様による内燃エンジンコントローラーは、多次元最適化問題を、計算的に効率的な方法によってリアルタイムで解決することを目指す、マップ更新モジュールを提供する。このように、マップ更新モジュールは、内燃エンジンのオンボードエンジン制御モジュールに利用可能な計算リソースを念頭に置いて設計される。
【0013】
複数の更新可能な制御マップを提供することによって、限定された数の制御マップを使用して異なる動作点の範囲に最適化され得る、制御マップベースのコントローラーが提供され得る。従って、本開示の更新可能なマップは、別々の制御マップが過去に較正されたことがある、異なる動作点の範囲をカバーする制御を提供することができるので、内燃エンジンに対して較正する必要のある制御マップの数が減少され得る。従って、内燃エンジンの初期較正およびセットアップの複雑さが低減され得る。
【0014】
さらに、異なる動作点の範囲をカバーする複数の制御マップの能力は、本開示の第一の態様によるパラメーター更新モジュールによって補完され得る。パラメーター更新モジュールは、内燃エンジンの動作状態の変化を反映するために、マップ更新モジュールの性能目的関数を更新し得る。従って、マップ更新モジュールの性能目的関数は、内燃エンジンのより広範な動作点に適用されてもよく、それによって、内燃エンジンに対して較正される追加の制御マップの必要性が低減される。
【0015】
性能目的関数には、パラメーター更新モジュールによって更新され得るエンジンパラメーターおよびコストパラメーターが含まれる。性能目的関数におけるエンジン性能の不確実性を補償するために、エンジンパラメーターを更新し得る。例えば、エンジン性能の不確実性は、内燃エンジン間の製造変動、内燃エンジンの劣化、および/または内燃エンジンの動作環境(例えば、大気条件)の不確実性から生じる場合がある。このように、内燃エンジンの観察された性能と内燃エンジンのモデル化された性能との間の時間変化の差異は、内燃エンジンの動作状態の変化として、パラメーター更新モジュールによって決定され得る。パラメーター更新モジュールは、性能目的関数に関連付けられるエンジンパラメーターを更新して、性能目的関数に関連付けられる不確実性を低減し得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、制御される内燃エンジンは、後処理システムを含み得る。従って、内燃エンジンから内燃エンジンコントローラーに提供されるセンサーデータは、後処理システムからのセンサーデータを含み得る。
【0017】
コストパラメーターは、性能目的関数の性能目標の変更を反映するために更新され得る。例えば、後処理システムの再生を制定するための性能目標は、コストパラメーターの変化を通して実施され得る。さらに、内燃エンジンコントローラーの性能目標を更新して、排出要件および/または内燃エンジンの動作環境の変化を反映し得る。
【0018】
従って、パラメーター更新モジュールは、内燃エンジンコントローラーへの入力変数、内燃エンジンからのセンサーデータ、内燃エンジンの後処理システムからのセンサーデータ、内燃エンジンの性能目標、およびリアルタイム性能モデルの出力のうちの少なくとも一つに基づいて、内燃エンジンの動作状態を決定するように構成され得る。
【0019】
マップ更新モジュールは、最適化された超曲面を検索するように構成されるオプティマイザーモジュールを含んでもよく、オプティマイザーモジュールは、性能目的関数によって評価されるアクチュエーター設定点の複数の候補グループを選択する。オプティマイザーモジュールは、性能目的関数により、アクチュエーター設定点の候補グループの評価に基づいて、少なくとも一つの制御マップに対して最適化された超曲面を出力するように構成される。
【0020】
性能目的関数は、エンジンモデリングモジュールおよびコストモジュールを含んでもよい。エンジンモデリングモジュールは、入力変数、内燃エンジンからのセンサーデータ、エンジンパラメーター、およびアクチュエーター設定点の候補グループに基づいて、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成され得る。コストモジュールは、エンジン性能変数を評価し、コストパラメーターに基づいてアクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを出力するように構成され得る。
【0021】
内燃エンジンの動作状態の変化は、モデルと内燃エンジンとの間の観察された差異に基づいてもよい。動作状態の変化は、センサーデータの予測値を表すエンジン性能変数に対する、内燃エンジンのセンサーからのセンサーデータ出力の変化に基づいて決定され得る。パラメーター更新モジュールは、センサーデータと、所定の閾値を下回るセンサーデータの予測値を表すエンジン性能変数との間の差を減少させるために、エンジンモデリングモジュールを更新するように構成され得る。
【0022】
エンジンパラメーターが、内燃エンジンに接続される後処理システムからの入力に基づいて、時間変動するエンジンパラメーターを含んでもよい。例えば、時間変動するエンジンパラメーターは、後処理システムからの入力を提供するセンサーに関連付けられる不確かさを補正するために更新され得る。性能目的関数に関連付けられる不確実性を低減することによって、マップ更新モジュールは、内燃エンジンの性能の向上をもたらす最適化された超曲面を計算し得る。
【0023】
コストパラメーターが、内燃エンジンに接続される後処理システムからの入力に基づいて、時間変動するコストパラメーターを含んでもよい。例えば、後処理システムの効率における時間変化の変化を補償するために、時間変化コストパラメーターを更新し得る。一般に、後処理システムの選択的触媒還元フィルター(SCR)の変換効率は、いくつかの要因によって経時的に変化し得る。SCR変換効率が低いときにテールパイプNOxを維持するため、関連するコスト関数パラメーターへの変更によって、エンジン出力NOx制約を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
ここで、本発明は、以下の非限定的な図に関して記述される。本開示のさらなる利点は、以下の図と併せて考慮されるとき、詳細な説明を参照することによって明らかである。
【0025】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による、内燃エンジンおよび内燃エンジンコントローラーを含むシステムのブロック図を示す。
【
図2】
図2aは、早見表制御マップの例であり、
図2bは、
図2aの早見表制御マップの値によって画定される超曲面のグラフィック表現である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による内燃エンジンコントローラーのブロック図を示す。
【
図4】
図4a、
図4b、および
図4cは、動作標的関数、排出関数、およびエンジン制約関数それぞれに対する適切な関数のグラフィック表現を示す。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態によるパラメーター更新モジュールおよびマップ更新モジュールの一部の詳細ブロック図を示す。
【
図6】
図6は、内燃エンジンの動作状態の変化の観測値に応答して、NOx補正パラメーターの時間変動する変化させるグラフィック表現である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の実施形態による内燃エンジン1および内燃エンジンコントローラー10の一般的なシステム図が
図1に示される。
【0027】
内燃エンジンコントローラー10は、プロセッサーおよびメモリー(図示せず)を含んでもよい。このように、内燃エンジンコントローラー10は、当技術分野で公知の任意の適切なコンピューティングデバイス上に実装され得る。内燃エンジンモジュールは、一つまたは複数のプロセッサーおよび集積メモリーを含む専用エンジン制御ユニット(例えば、エンジン制御モジュール)上に提供され得る。内燃エンジンコントローラー10は、本開示の制御スキームを実施するために、さまざまな入力および出力に接続され得る。このように、内燃エンジンコントローラー10は、さまざまな入力変数信号、センサーデータ、および制御スキームで使用され得る任意の他の信号を受信するように構成され得る。例えば、内燃エンジンコントローラー10は、エンジン速度、気圧、周囲温度、IMAP、入口マニホールド空気温度(IMAT)、EGR質量率(またはEGR質量推定値を求めるために使用されるセンサー)、燃料レール圧力、エアシステムバルブ位置、および/または燃料質量推定値などのエンジンセンサーデータを受信するように構成され得る。内燃エンジンコントローラーはまた、エンジン出力NOx(例えば、正味表示特定NOx)、テールパイプNOx、ディーゼル粒子フィルターすすセンサー(RFすすセンサーまたは差圧すすセンサー)、ディーゼル酸化触媒入口温度、および/またはSCR入口温度などの後処理センサーデータを受信するように構成され得る。
【0028】
図1に示すように、内燃エンジンのアクチュエーターは、複数のエンジンアクチュエーター設定点によって制御される。エンジンアクチュエーター設定点は、内燃エンジンコントローラー10によって制御される。
図1の実施形態では、制御されるエンジンアクチュエーターは、EGR、SOI、燃料質量、およびIMAPである。当然のことながら、他の実施形態では、制御されるエンジンアクチュエーターは変化し得る。
【0029】
図1に示すように、内燃エンジンコントローラーは、エンジン設定点モジュール20を含む。エンジン設定点モジュール20は、エンジン設定点モジュール20複数の制御マップ30および入力変数に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力するように構成される。従って、エンジン設定点モジュール20の動作は、先行技術で公知のオープンループ、エンジンマップベースの制御スキームと類似している。このようなオープンループ制御スキームは、より複雑なモデルベースの制御スキームと比較して、比較的小さな計算要件を有する。
【0030】
エンジン設定点モジュール20への入力変数は、内燃エンジンの現在の動作に由来する異なる変数の組み合わせであり得る。入力変数の一部は、内燃エンジンの性能要求に基づいてもよい。入力変数の一部は、例えば、さまざまなセンサーによって測定されるように、内燃エンジンの現在の動作状態に基づいてもよい。入力変数は、制御マップに基づいてアクチュエーター設定点を決定するために使用されるので、制御マップ当たりの入力変数の総数は、内燃エンジンコントローラー10に利用可能な計算リソースによって制限され得ることが理解されよう。
【0031】
図1の実施形態では、入力変数は、要求トルク(TqR)、現在のエンジン速度(N)、および現在のIMAPである。他の実施形態では、現在のEGR(すなわち、EGRバルブの現在の位置)などの他の入力変数を使用し得る。
【0032】
一般に、内燃エンジンに関連付けられるいくつかの制御アクチュエーターは、それらに関連付けられるいくらかのタイムラグを有し得ることが理解されよう。そのため、要求されたアクチュエーター設定点(例えば、要求されたIMAP)の変化と、センサー(すなわち、現在のIMAPのセンサー読み取り)によって記録される変化との間のいくらかの時間遅延があり得る。
【0033】
複数の制御マップ30の各々は、一つまたは複数の入力変数とアクチュエーター設定点との間の関係を画定する。
図1の実施形態では、四つの制御マップ30が提供され、一つは、EGR、SOI、燃料質量、および要求されたIMAP(IMAPR)の各々を制御するためのものである。制御マップ30の各々は、TqR、Nおよび現在のIMAP(IMAPC)のうちの一つまたは複数に基づいて、エンジンアクチュエーター設定点を画定し得る。例えば、EGR制御マップは、TqR、N、およびIMAPCに基づいて、アクチュエーター設定点の超曲面を画定し得る。従って、TqR、N、およびIMAPCの組み合わせは、EGRに対するアクチュエーター設定点を計算できる超曲面の位置を画定する。同様に、SOIおよび燃料質量の制御マップ30は、TqR、N、およびIMAPCの関数である超曲面によっても画定され得る。
図1の実施形態におけるIMAPRの制御マップは、TqRおよびNの関数である超曲面によって画定され得る。そのため、異なる制御マップは、異なる次元数を有し得る。
【0034】
図1の制御マップ30の各々は、早見表として実装され得る。エンジンコントローラーの早見表制御マップ30は、当該技術分野で周知である。例示的な早見表制御マップ31を
図2aに示す。
図2aに示される早見表制御マップ31は、二つの入力次元および単一の出力次元を有する。従って、
図2aの実施形態では、制御マップ31は、2次元制御マップであり、列挙された次元の数が、入力次元の数によって決定される。
図2aの制御マップ31は、入力変数1(すなわち、第一の入力変数)および入力変数2(第二の入力変数)を含む。早見表は、入力変数1と入力変数2の異なる組み合わせに対して、複数の値(アクチュエーター設定点)を画定する。従って、早見表制御マップ31は、入力変数1および2の値に基づいてアクチュエーター設定点を選択するために使用され得る。
図2bは、早見表制御マップ31内の値によって画定される超曲面のグラフィック表現である。当技術分野で公知のように、早見表に画定される設定点の補間を使用して、一つまたは複数の入力変数が早見表に格納される値と厳密に一致しない、超曲面上の位置を見つけることができる。
【0035】
他の実施形態では、代替的な手段を使用して、各制御マップ30の超曲面を記述することができる。例えば、超曲面は、入力変数の関数として画定され得る。超曲面を画定するための適切な多次元関数は、ユニバーサル近似関数であり得る。好適なユニバーサル近似関数には、人工ニューラルネットワーク(例えば、放射状基底関数、多層パーセプトロン)、多変量多項式、ファジー論理、不規則な補間、クリングが含まれ得る。
【0036】
複数の制御マップ30は、内燃エンジンコントローラー10のさまざまな処理モジュールが制御マップ30にアクセスできるように、内燃エンジンコントローラー10のメモリーに記憶され得る。
【0037】
図1に示すように、内燃エンジンコントローラー10はまた、マップ更新モジュール40を含む。マップ更新モジュール40は、制御マップ30の少なくとも一つに対して最適化された超曲面を計算するように構成される。
図1の実施形態では、マップ更新モジュール40は、制御マップ30の各々に対して最適化された超曲面を同時に計算し得る。マップ更新モジュール40は、計算された最適化された超曲面に基づいて、制御マップ30の超曲面を更新するように構成される。従って、一つまたは複数の制御マップ30の超曲面は、内燃エンジン1の動作中に更新され得る。アップダブル制御マップ30のセットを提供することによって、異なる動作点の範囲に最適化され得る制御マップ30のセットが提供され得る。従って、内燃エンジン1に対して較正される必要のある制御マップの数は、本開示の更新可能な制御マップ30のセットが、別個の制御マップのセット(すなわち、複数の制御マップのセット)が過去に較正されたことがある、異なる動作点の範囲にわたって、内燃エンジン1を制御し得るため、減少され得る。
【0038】
マップ更新モジュール40は、性能目的関数に基づいて最適化された超曲面を計算するように構成される。性能目的関数は、例えば、履歴エンジンデータのオフライン計算ではなく、リアルタイムで評価され得る。性能目的関数は、内燃エンジン1および複数の入力変数(すなわち、内燃エンジンへ1のリアルタイム入力変数)からのセンサーデータを使用し、最適化された超曲面を計算する。性能目的関数は、最適化された超曲面を計算するために使用される、コスト関数に関連付けられるエンジンモデルおよび/またはコストパラメーターに関連付けられるエンジンパラメーターを含む。このように、性能目的関数は、多次元関数であり得る。効果的に、本開示の内燃エンジンコントローラー10は、マップベースの制御の計算複雑さを著しく増加させない方法で、内燃エンジン1の制御に追加的な変数(直接および/または間接のセンサーデータ変数)を組み込む。
【0039】
マップ更新モジュール40は、性能目的関数を使用して、最適化された超曲面を検索し得る。例えば、マップ更新モジュール40は、エンジンモデルに関連付けられるエンジンパラメーターに基づいて、内燃エンジン1のリアルタイム性能をモデル化することによって、最適化された超曲面を検索し、モデル化されたリアルタイム性能に関連付けられるコストを計算し得る。マップ更新モジュール40は、複数のアクチュエーター設定点の候補グループに対してこのプロセスを繰り返し、その後、アクチュエーター設定点の最低コストの候補グループに基づいて最適化された超曲面を決定し得る。
【0040】
例えば、マップ更新モジュール40は、IMAPR制御マップに対して最適化された超曲面を計算するように構成され得る。IMAPR制御マップ30は、エンジン速度(N)および要求トルク(TqR)の入力変数に基づいてもよい。マップ更新モジュール40は、複数のエンジンアクチュエーター設定点の候補グループに対する内燃エンジン1のリアルタイム性能をモデル化し得る。例えば、エンジンアクチュエーター設定点の候補グループには、SOI、燃料質量、要求EGR、およびIMAPRを含んでもよい。マップ更新モジュール40は、IMAPR制御マップ30に対して最適化された超曲面を検索するために、エンジンアクチュエーター設定点の各候補グループ間で、エンジンアクチュエーター設定点の一つまたは複数を変化させ得る。IMAPR制御マップ30のみが更新される一実施形態では、IMAPRのエンジンアクチュエーター設定点は、エンジンアクチュエーター設定点の候補グループのそれぞれの間で変化させられてもよい。各候補グループに対する性能目的関数の出力に基づいて、マップ更新モジュール40は、IMAPR制御マップに対して最適化された超曲面を決定し得る。上で論じたように、最適化された超曲面は、制御マップ30によって画定される総超曲面の一部分(すなわち、制御マップによって画定される総超曲面の一部分だけが更新され得る)であり得る。
【0041】
図1に示すように、内燃エンジンコントローラー10はまた、パラメーター更新モジュール50を含む。パラメーター更新モジュール50は、性能目的関数の一つまたは複数のパラメーターを更新するように構成される。特に、パラメーター更新モジュール50は、性能目的関数のエンジンパラメーターおよび/またはコストパラメーターを更新するように構成される。
【0042】
パラメーター更新モジュール50は、内燃エンジンの動作状態の変化を決定する際に、性能目的関数のパラメーターを更新するように構成される。内燃エンジンの動作状態は、内燃エンジンコントローラーへの入力変数、内燃エンジンからのセンサーデータ、および内燃エンジンの後処理システムからのセンサーデータのうちの少なくとも一つに基づいてもよい。これらの変数のうちの一つまたは複数を監視することによって、パラメーター更新モジュールは、動作状態の変化が発生したと判定し、変化に応答して、性能目的関数の一つまたは複数のパラメーター(コストパラメーターおよび/またはエンジンパラメーター)を更新することを選択し得る。パラメーター更新モジュール50による内燃エンジンの動作状態の変化の決定は、
図5に関連して以下でより詳細に論じられる。
【0043】
性能目的関数のパラメーターを更新することによって、マップ更新モジュール40によって計算された最適化された超曲面は、内燃エンジンの動作状態の変化を考慮に入れ得る。従って、マップ更新モジュールは、内燃エンジンの性能における時間変動する変化により応答し得る。例えば、パラメーター更新モジュールは、内燃エンジンおよび/または後処理システムの一つまたは複数のセンサーのキャリブレーションの変化に関連付けられる内燃エンジンの動作状態の変化を検出し、経時的なセンサー較正を考慮に入れて関連付けられる性能パラメーターを更新するよう進んでもよい。あるいは、内燃エンジンのモデル化された性能と内燃エンジンの実際のリアルタイム性能との間の経時的な変動および/または不確実性は、パラメーター更新モジュールによって内燃エンジンの動作状態の変化として検出され得る。
【0044】
図3は、本開示の実施形態による内燃エンジンコントローラー10のより詳細なブロック図を示す。ブロック図は、マップ更新モジュール40が、性能目的関数およびオプティマイザーモジュール42を含むことを破線で示す。性能目的関数をさらに説明する目的で、性能目的関数は、エンジンモデリングモジュール44およびコストモジュール46を含むとして
図3に表される。もちろん、エンジンモデリングモジュール44およびコストモジュール46は、一つの組み合わされた「ブラックボックス」関数(すなわち、
図1の性能目的関数として)として提供され得ることが理解されよう。このように、内燃エンジンコントローラー10は、
図1に示す構造と類似の一般構造を有する。
【0045】
図3の内燃エンジンコントローラーは、10エンジン設定点モジュール20を含む。
図1および対応する説明を参照すると、
図3のエンジン設定点モジュール20は、複数の入力変数によって画定される、それぞれの制御マップ30の超曲面上の位置に基づいて、複数のアクチュエーター設定点を出力するように動作することが理解されよう。
【0046】
マップ更新モジュール40は、オプティマイザーモジュール42、およびエンジンモデリングモジュール44およびコストモジュール46を含む。上述したように、マップ更新モジュール40は、一つまたは複数の制御マップ30に対して最適化された超曲面を計算するように構成される。本実施形態では、マップ更新モジュール40は、複数の制御マップ30に対して最適化された超曲面を計算するように構成される。例えば、
図3の実施形態では、SOI、燃料質量、要求EGR、およびIMAPRの各々の制御マップが提供される。SOI、燃料質量、およびEGR要求に対する制御マップ30はそれぞれ、入力変数エンジン速度(N)、要求トルク(TqR)、およびIMAPCの関数である。IMAPRの制御マップは、エンジン速度(N)と要求トルク(TqR)の関数である。
【0047】
オプティマイザーモジュール42は、制御マップ30の少なくとも一つについて、最適化された超曲面を検索するように構成される。本実施形態では、オプティマイザーモジュール42は、SOI、燃料質量、および要求EGRのそれぞれの制御マップ30に対して最適化された超曲面を同時に検索するように構成される。オプティマイザーモジュール42は、異なる時間でIMAPR用に最適化された超曲面を検索するように構成され得る。従って、マップ更新モジュール40は、全ての制御マップを同時に更新する必要はないことが理解されよう。他の実施形態では、マップ更新モジュール40は、全ての制御マップを同時に更新し得ることが理解されよう。
【0048】
オプティマイザーモジュール42は、最適化された超曲面を検索するように構成され、オプティマイザーモジュール42は、複数のアクチュエーター設定点候補グループをエンジンモデリングモジュール44に提供する。アクチュエーター設定点の各候補グループは、効果的に、アクチュエーター設定点のベクトルである。アクチュエーター設定点の候補グループは、更新される各制御マップ30に対するアクチュエーター設定点を含み得る。アクチュエーター設定点の候補グループはまた、マップ更新モジュール40によって現在更新されていない制御マップ30のアクチュエーター設定点を含んでもよい。例えば、
図3の実施形態では、アクチュエーター設定点の候補グループは、SOI、燃料質量、要求EGR、およびIMAPRの各々の設定点を含む。候補グループにIMAPRアクチュエーター設定点を含めることによって、この制御マップ30は更新されていないが、リアルタイム性能モデルの精度が改善され得る。本質的に、
図3の実施形態では、IMAPRの設定点は、時間不変の設定点として扱われる。オプティマイザーモジュール42によって更新されない制御マップ(例えば、IMAPRの制御マップ)は、他の手段によって更新され得る。以下でさらに論じるように、複数の異なるオプティマイザー関数が提供されて、異なる制御マップを更新し得る。
【0049】
オプティマイザーモジュール42は、アクチュエーター設定点の各候補グループを性能目的関数の一部を形成するエンジンモデリングモジュール44に出力する。オプティマイザーモジュール42は、さまざまな方法で性能目的関数によって評価されるアクチュエーター設定点の候補グループを選択し得る。例えば、オプティマイザーモジュール42は、アクチュエーター設定点の候補グループ内の各アクチュエーター設定点を、所定の許容範囲のアクチュエーター設定点から無作為に選択し得る。従って、アクチュエーター設定点の候補グループは、本質的に無作為化されたアクチュエーター設定点のグループであり得る。従って、オプティマイザーモジュール42は、ランダムに(無作為化検索戦略)アクチュエーター設定点の候補グループを選択し得る。以下でより詳細に論じるように、代替検索戦略も利用され得る。
【0050】
オプティマイザーモジュール42によって選択されるアクチュエーター設定点の候補グループの数は、最適化された超曲面を計算するために利用可能な計算リソースに従って、あらかじめ決定され得る。マップ更新モジュール40は、内燃エンジンの現在の動作点に対応する制御マップ上の位置を最適化するように、最適化された超曲面を出力するように構成される。従って、マップ更新モジュール40は、制御マップをリアルタイムで更新してもよく、それによって、最適化された超曲面を計算するために利用可能な処理時間の量に限界を置く。例えば、
図3の実施形態では、マップ更新モジュールは、60ms以内で最適化された超曲面を出力するように構成される。性能目的関数を使用して、エンジンアクチュエーター設定点の単一の候補グループを評価するためにかかった処理時間は、単一の60ms期間内に評価され得る、可能性のある候補グループの数に上限を置くことになる。単一のエンジンアクチュエーター設定点の候補グループを評価するのにかかった処理時間は、性能目的関数の計算の複雑さに依存する。
【0051】
図3の実施形態では、処理時間は、以下でより詳細に説明する、エンジンモデリングモジュール42およびコストモジュール44の計算の複雑さに依存し得る。典型的には、性能目的関数を使用してエンジンアクチュエーター設定点の単一の候補グループを評価するには、約0.1msかかる場合がある。従って、
図3の実施形態では、エンジンアクチュエーター設定点の約200個の候補グループが、マップ更新モジュール40によって評価され、約20msかかってもよい。従って、最適化された超曲面を60ms以内で出力するように構成されるマップ更新モジュール40について、約30msの処理時間予算を、残りの処理および約10msのスラック時間に割り当てることができる。
【0052】
無作為化検索戦略の代替として、他の検索戦略がオプティマイザーモジュール42によって採用され得る。例えば、アクチュエーター設定点の候補グループは、反復検索戦略に従って選択され得る。反復検索戦略の一部として、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを特定し、上述のように分析して、関連コストを決定し得る。次いで、オプティマイザーモジュール42は、アクチュエーター設定点の第一のセットおよび関連するコスト(すなわち、候補グループの第一のセットの最低コストの候補グループに基づいて)に基づいて、アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットを選択し得る。適切な検索反復検索戦略の例としては、遺伝的アルゴリズム、シンプレックス、確率最適化、および/またはスウォームアルゴリズムが挙げられる。
【0053】
エンジンモデリングモジュール44は、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成される。エンジンモデリングモジュール44への入力は、制御マップの複数の入力変数、ならびに内燃エンジンからのセンサー入力、およびアクチュエーター設定点の候補グループである。このように、エンジンモデリングモジュール44は、内燃エンジンのリアルタイム動作点に関連付けられる複数の入力変数を含む。従って、エンジンモデリングモジュール44によって計算される複数のエンジン性能変数は、内燃エンジンのリアルタイム性能を表すことができる。
【0054】
図3の実施形態では、エンジンモデリングモジュール44は、SOI、燃料質量、要求EGR、およびIMAPRのアクチュエーター設定点の候補グループを含む。また、エンジンモデリングモジュールは、内燃エンジンの複数のセンサーからのリアルタイムデータを含む。内燃エンジン1からのセンサーデータは、内燃エンジン1に関連付けられるさまざまなセンサーからの情報を含み得る。センサーデータはまた、内燃エンジンの一つまたは複数のセンサーからのデータに由来する変数を含んでもよい。例えば、センサーデータは、入口マニホールド絶対圧力、入口マニホールド温度、燃料レール圧力、背圧バルブ位置、質量EGRフロー、質量総気流、燃料質量フロー、燃料レール圧力(FRP)を含み得る。
【0055】
エンジンモデリングモジュール44は、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成される一つまたは複数のエンジンモデルを含み得る。エンジンモデリングモジュール44への入力は、内燃エンジンへの入力変数およびセンサーデータを含むため、エンジン性能変数は、それらのアクチュエーター設定点に基づく内燃エンジンのリアルタイム性能を表すことが理解されよう。計算されるエンジン性能変数には、エンジントルク、質量空気流、ブレーキ平均有効圧力(BMEP)、正味表示平均有効圧力(IMEP)、ポンピング平均有効圧力(PMEP)、摩擦平均有効圧力(FMEP)、排気マニホールド温度、ピークシリンダー圧力、NOx量(例えば、正味表示特定NOx(NISNOx)、ブレーキ表示特定NOx)、すす量(例えば、正味表示特定すす、ブレーキ表示の特定のすす)、NOx/すす比、最小フレッシュチャージ、EGRポテンシャルが含まれてもよい。
【0056】
該当する場合、内燃エンジンコントローラーは、ブレーキ指示特定性能変数ではなく、正味表示特定エンジン性能変数(例えば、IMEP、NISNOx)を計算する。IMEPは、エンジンサイクル全体にわたって内燃エンジンの平均有効圧力を反映する。対照的に、BMEPは、ブレーキトルクから計算された平均有効圧力である。エンジンがアイドリングである時でさえ、これらの値はゼロではないので、正味表示特定値(例えば、IMEP、NISNOX)をいくつかの実施形態において、使用し得る。
【0057】
本開示では、正味表示特定NOx(NISNOx)およびブレーキ表示特定NOxは、後処理システムにおける処置の前に、内燃エンジンによって出力されるNOx量を指すことがさらに意図される。当然のことながら、当業者は、NOx量も後処理システムの下流で推定され得ること(例えば、テールパイプNOx)を理解するであろう。
【0058】
上記エンジン性能変数のうちの一つまたは複数を、エンジンモデリングモジュール44への入力から計算するために、一つまたは複数のエンジンパラメーターを使用し得る。エンジンパラメーターは、上記性能変数のうちの一つまたは複数と、エンジンモデリングモジュールへの入力との間の関係を画定するために使用され得る。例えば、上記の性能変数と、エンジンモデリングモジュールに提供される入力との間のさまざまな物理的関係は、当業者に周知である。このように、エンジンモデリングモジュールは、上記性能変数のうちの一つまたは複数を計算するために、一つまたは複数の物理学ベースのモデルを提供し得る。物理学ベースのモデルの代替として、エンジンモデリングモジュール44はまた、経験/ブラックボックスモデル、または経験ベースモデルと物理学ベースのモデルの組み合わせ(すなわち、半物理/グレーボックスモデル)を使用して、上記の性能変数のうちの一つまたは複数を計算し得る。
【0059】
例えば、エンジンモデリングモジュール44は、平均値エンジンモデルを含み得る。平均値エンジンモデルは、BMEP、エンジントルク、質量空気流などのエンジン性能パラメーターをモデル化するために当業者に周知である。本開示の使用に適した平均値エンジンモデルのさらなる説明は、Urs Christen et al、SAE Technical Paper Seriesによる「Event-Based Mean-Value Modeling of DI Diesel Engines for Controller Design」で見出され得る。従って、平均値エンジンモデルを使用して、エンジンモデリングモジュール44への入力に基づいて、エンジン性能変数を計算し得る。
【0060】
平均値モデルの使用に加えて、または代替として、エンジンモデリングモジュール44は、一つまたは複数のエンジン性能変数を計算するための一つまたは複数のニューラルネットワークベースのモデルを含み得る。例えば、正味表示特定NOx(NISNOx)エンジン性能変数は、適切に訓練されたニューラルネットワークを使用して、センサーデータから計算され得る。ニューラルネットワークを使用してNOx量(例えば、NISNOx)などのエンジン性能変数を計算するための適切な手法の詳細については、Michele Steyskal et al、SAE Technical Paper Seriesによる「Development of PEMS Models for Predicting NOx Emissions from Large Bore Natural Gas Engines」を参照し得る。
【0061】
一つまたは複数の内燃エンジン構成要素の物理学ベースのモデルが提供され得る。例えば、適切なエンジン性能変数を計算するのを助けるために、コンプレッサーモデル、タービンモデル、または排気ガス再循環冷却器モデルが提供され得る。
【0062】
エンジンモデリングモジュール44は、エンジン性能変数をコストモジュール46に出力する。コストモジュール46は、エンジン性能変数を評価し、性能変数に基づいてアクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを出力するように構成される。
図3の実施形態では、コストモジュール46は、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを、オプティマイザーモジュール42に出力するように構成される。他の実施形態では、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストの評価は、オプティマイザーモジュール42とは別個のさらなるモジュールによって行われてもよい。
【0063】
コストモジュール46は、内燃エンジンのモデル化された性能をアクチュエーター設定点の候補グループの元で、評価するために、コストをさまざまな性能目標に割り当てるように構成される複数のコスト関数を含んでもよい。各コスト関数は、一つまたは複数のエンジン性能変数および一つまたは複数のコストパラメーターに基づいて、コストを決定し得る。例えば、複数のコスト関数は、一つまたは複数の動作標的関数、一つまたは複数の排出関数、および一つまたは複数のエンジン制約関数を含んでもよい。複数のコスト関数の各々は、一つまたは複数のエンジン性能変数および一つまたは複数のコストパラメーターの関数に基づいて、コストを出力するように構成され得る。コストパラメーターは、各エンジン性能変数に関連付けられるコストの大きさを決定し得る。コストパラメーターはまた、他のコスト関数に対する各コスト関数の相対コストも決定し得る。
図3の実施形態では、コスト関数は、より低いコストがより最適な性能と関連付けられるように構成される。
【0064】
動作標的関数は、内燃エンジンを動作させるための特定の標的を満たすように内燃エンジンを最適化するように構成されるコスト関数であり得る。例えば、一つの目標は、ブレーキ特定燃料消費量(BSFC)または正味表示特定燃料消費量(NISFC)を最小化する一方で、内燃エンジンを動作させることであり得る。別の動作標的は、トルク誤差(すなわち、実際の出力トルクと要求トルクとの間の差)を最小化することであり得る。こうした形態の動作標的関数は、重み付き二乗法則関係を有する関数(すなわち、Cost=Weight*(性能変数)^2の形態)によって表され得る。従って、動作標的関数について、動作標的関数の重量は、コストパラメーターである。適切な動作標的関数のグラフィック表現を
図4aに示す。例えば、NISFC(Cost
NISFC)の動作標的に関連付けられるコストは、
Cost
NISFC=Weight
NISFC*NISFC^2であり得る。
【0065】
排出関数は、内燃エンジンによって生成される排出物に関連して特定の目的を満たすために、内燃エンジンを最適化するように構成される関数であり得る。例えば、一つまたは複数の排出関数は、内燃エンジンによって生成される排出物に関連するエンジン性能変数に基づいて提供され得る。従って、一つまたは複数の排出関数は、NOx量(NISNOx、すす(NISCF)、NOxすす比、最小フレッシュ電荷、および/またはEGR電位に基づいてもよい。排出関数は、任意の適切な関数を使用して、コストとエンジン性能変数との間の関係を画定し得る。例えば、
図3の実施形態では、排出関数は、一辺の正方形の法則関数として提供され得る。適切な排出関数のグラフィック表現を
図4bに示す。
【0066】
例えば、排出関数は、標的上限(TU)を含み得る。標的上限は、それを超えると発生するコストが有意となるエンジン性能変数の値を画定することができ、標的上限を下回る値については、コストなし、または最小コストが発生する。例えば、一部の内燃エンジンについては、NISNOxの標的上限は4g/kWhとし得る。従って、排出関数に対して、標的上限および/または重量は、コストパラメーターとし得る。他の実施形態では、標的限界は、標的下限として提供され得る。
【0067】
従って、エンジン性能変数NISNOxに基づく排出関数(CostNOx)は、
NISNOx<TUのとき、CostNOx=0、
NISNOx≧TUのとき、CostNOx=WeightNOx*(NISNOx-TU)^2であり得る。
【0068】
いくつかの排出関数はまた、最小または標的下限(TL)によって画定され得る。例えば、エンジン性能変数排気最小温度(EMT)に基づく排出関数(CostEMT)は、以下のように画定され得る。
EMT>TLのとき、CostEMT=0
EMT≦TL、CostEMT=WeightEMT*(EMT-TL)^2
【0069】
エンジン制約関数は、内燃エンジンの動作に関連付けられる制約を反映するように構成される関数であり得る。従って、コントローラーが特定のエンジンアクチュエーター設定点で内燃エンジンを動作させることを妨げ、または防止するために、一つまたは複数のエンジン制約関数が提供され得る。例えば、一つまたは複数のエンジン制約関数は、内燃エンジンの物理的要件のために超えることができない固定限界を有するエンジン性能変数に基づいてもよい。このように、一つまたは複数のエンジン制約関数は、ピークシリンダー圧力(PCP)、排気マニホールド温度、コンプレッサー出口温度に基づいてもよい。また、最大ト許容トルク誤差などの望ましい固定限界を有し得るさらなるエンジン性能変数は、対応するエンジン制約関数を有し得る。各エンジン制約関数は、任意の適切な関数を使用して、コストと一つまたは複数のエンジン性能変数との間の関係を画定し得る。また、エンジン制約関数は、コストパラメーターを含んでもよい。例えば、
図3の実施形態では、エンジン制約関数は、Cost=1/エンジン性能変数の形態で提供され得る。適切なエンジン制約関数のグラフィック表現を
図4cに示す。
【0070】
例えば、エンジン性能変数PCPに対するエンジン制約関数は、PCP上限Lに基づいて提供され得る。エンジン制約関数によって計算されたコストは、PCP上限Lが近づくにつれて非対称的に上昇し得る。従って、限界Lはまた、コストパラメーターであり得る。従って、エンジン性能変数PCPに基づくエンジン制約関数(CostPCP)は、
CostPCP=1/(L-PCP)であり得る。
【0071】
エンジン制約関数は、通常、内燃エンジンの物理的要件に基づいて固定限界を有するエンジン性能変数に関係するため、いくつかの実施形態では、パラメーター更新モジュールは、エンジン制約関数に関連付けられるコストパラメーターを更新しなくてもよい。例えば、PCP上限Lは、時間不変のコストパラメーターであり得る。
【0072】
上述のように、動作標的関数、排出関数、およびエンジン制約関数に関して、さまざまなコストパラメーターが記述される。コストパラメーターは、例えば、コストパラメーターベクトルとして、コストモジュール46によって保存され得る。
【0073】
従って、コストモジュール46は、上で計算された各コスト関数によって計算されたコストに基づいて、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる総コストを計算し得る。アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる総コストは、さらなる処理のためにオプティマイザーモジュール42に提供され得る。
【0074】
図3に示すように、一つまたは複数のコストパラメーターは、パラメーター更新モジュール50によって更新され得る。コストパラメーターの更新については、以下でより詳細に論じる。
【0075】
オプティマイザーモジュール42は、アクチュエーター設定点の候補グループおよび関連するコストに基づいて、少なくとも一つの制御マップ30に対して最適化された超曲面を出力するように構成される。従って、アクチュエーター設定点の各候補グループに対する総コストに基づいて、オプティマイザーモジュール42は、最適な性能を有するアクチュエーター設定点のグループを識別し得る。例えば、総コストが最も低いアクチュエーター設定点の候補グループは、最適な性能を提供し得る。従って、オプティマイザーモジュール42は、最小総コストを有するアクチュエーター設定点の候補グループが、アクチュエーター設定点の最適化されたグループであると決定し得る。マップ更新モジュールは、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに基づいて、入力変数によって画定される位置で、制御マップの超曲面のうちの一つまたは複数を更新し得る。
【0076】
従って、
図3に示す図に従った内燃エンジンコントローラー10が提供され得る。
【0077】
図5は、パラメーター更新モジュール50およびマップ更新モジュール40の一部のより詳細なブロック図を示す。パラメーター更新モジュール50は、性能目的関数の一つまたは複数のエンジンパラメーターおよび/またはコストパラメーターを更新することを目的としている。更新するパラメーターは、一般的に二つの目的のうちの一つに役立つ。エンジンモデル(すなわち、エンジンモデリングモジュール44の一部を形成する)に関連付けられるエンジンパラメーターは、エンジンモデリングモジュール44のエンジンモデルにおける不確実性を低減するために更新され得る。上述のコスト関数に関連付けられるコストパラメーターは、内燃エンジンコントローラーの優先度の変更(すなわち、内燃エンジン1の動作モードの変更)をもたらすために更新され得る。
【0078】
上述のように、性能目的関数のエンジンモデリングモジュール44は、内燃エンジンのモデルを利用して、エンジン性能変数を決定する。計算されるエンジン性能変数に関連付けられるいくつかの不確実性があることが理解されよう。内燃エンジンの寿命にわたって、例えば、内燃エンジンの老化、および/または内燃エンジンの製造における変形は、エンジンモデリングモジュール44によってモデル化された性能とわずかに異なる内燃エンジンの実際の性能をもたらし得ることが理解されよう。特に、寿命に関する不確実性は、時間的に変動し得る。パラメーター更新モジュール50は、エンジンパラメーターを経時的に更新して、エンジンモデリングモジュール44に対する時間変化の不確実性の影響を相殺しようとするために提供される。
【0079】
上述したように、性能目的関数(エンジンモデリングモジュール44)は、センサーデータおよび複数の入力変数を利用して、一つまたは複数のエンジン性能変数を計算する。これらのエンジン性能変数の一部は、さらなるエンジンセンサーによって観察され得る内燃エンジンの物理特性に関連し得る。パラメーター更新モジュール50は、内燃エンジンから得られたセンサーデータに基づいて、所与のエンジン性能変数のモデル観察およびエンジン性能変数の物理的観察を行うように構成される。モデル観察と物理的観察を比較することによって、パラメーター更新モジュール50は、モデル観察と物理的観察との間の任意の差異を減少させるためにエンジンパラメーターを決定するように構成される。パラメーター更新モジュールによって使用されるエンジンモデルは、時間不変であることが理解されよう。従って、エンジン性能変数のモデル観察とエンジン性能変数の物理的観察との間の経時的な差異は、内燃エンジン1の動作状態の変化に起因すると効果的にみなされる。
【0080】
図5に示すように、パラメーター更新モジュール50は、マップ更新モジュール40の性能目的関数にエンジンパラメーターを出力する。性能目的関数は、不確実性を低減するために、エンジンパラメーターを利用して、エンジンモデリングモジュール44によって計算された対応するエンジン性能変数を更新する。更新されたエンジン性能変数は、性能目的関数のコストモジュール46部分に入力される。
【0081】
例えば、一実施形態では、NOx量を表すエンジン性能変数は、センサーデータに基づいて、エンジンモデリングモジュール44によって計算され得る。しかし、この計算されたNOx量に関連付けられる不確実性があるかもしれない。不確実性は、内燃エンジンの製造変動、内燃エンジンの劣化、および/または環境不確実性から生じる場合がある。例えば、所与の内燃エンジンによって生成される実際のNOx量は、エンジン摩耗または湿度などの未測定の外乱に依存し得る。こうした不確実性に対抗しようと、パラメーター更新モジュール50は、一つまたは複数のエンジンパラメーターを更新して、エンジン性能変数の計算における不確実性を低減し得る。
【0082】
パラメーター更新モジュール50は、内燃エンジン1に接続される後処理システムからの追加のセンサーデータが提供されてもよく、そこから実際のNOx量を決定し得る。例えば、パラメーター更新モジュールは、後処理システムに接続されるNOxセンサーからのセンサーデータが提供され得る。パラメーター更新モジュール50にはまた、マップ更新モジュール40と同じセンサーデータ、およびパラメーター更新モジュールがエンジンモデリングモジュール44と同じエンジンモデルを使用してNOx量を計算できる入力パラメーターも提供され得る。
【0083】
パラメーター更新モジュール50は、NOx補正パラメーターを決定し、エンジンモデリングモジュールによって計算されたNOx量と、内燃エンジン1に接続されるセンサーによって観測される実際のNOx量との間の差異を減少させるように構成される。
【0084】
図6は、内燃エンジン1の動作状態の変化の観察に応答してNOx補正パラメーターの時間変動する変化の例を示す。
図6の実施例では、内燃エンジン1は、本開示による内燃エンジンコントローラー10の制御下、定常状態条件下で動作している。時間t=120秒で、EGRセンサーに人工質量誤差が導入された。EGRセンサーデータは、エンジンモデリングモジュール44によって使用されるセンサーデータ入力のうちの一つを使用して、NOx量エンジン性能変数を計算する。
図6のグラフ1)に示すように、EGRセンサーにおける外乱は、エンジンモデリングモジュール44によって計算されたNOx量エンジン性能変数における外乱をもたらす。
図6はまた、同じ期間にわたって後処理システムに接続されるNOxセンサーによって測定されるNOx量のプロットを示す。
図6に示すように、内燃エンジンによって出力される実際のNOx量は、時間t=120秒で変化しない。
【0085】
図6のグラフ2)は、グラフ1の対応する期間にわたるNOx補正パラメーターのプロットを示す。時間t=120秒の以前に、内燃エンジンは定常状態で稼働しているため、NOx補正パラメーターは約1.23に設定される。t=120秒の時点でEGRセンサーにおける外乱が導入されると、パラメーター更新モジュール50は、NOx数量エンジン性能変数のモデル観察と、NOxセンサーによるNOx数量の物理的観察との間の差異を観察する。パラメーター更新モジュールは、
図6に示すように、モデル観察と物理的観察との間の差を減少させるために、経時的にNOx補正パラメーターを調整する。従って、パラメーター更新モジュール50は、EGR質量センサーに導入された外乱を補正し、NOx量のモデル観察とセンサーによって検出された実際のNOx量との差を減少させる。
【0086】
本開示の理解を助けるために、EGRセンサーに人為的外乱が適用される
図6の例が提供され、本開示は、短期的な瞬時外乱に対抗することのみに限定されることが理解されよう。さらに、
図6の例では、パラメーター更新モジュール50の効果を実証するためにセンサーにおける外乱が使用されるが、本開示はセンサーエラーに対抗することに限定されないことが理解されよう。例えば、パラメーター更新モジュール50はまた、エンジンモデリングモジュール44によって計算された値に対する内燃エンジンの性能および/または排出の差をもたらす、内燃エンジンへの入力感度を考慮するように構成され得る。
【0087】
図5にさらに示すように、パラメーター更新モジュール50は、内燃エンジンの動作状態の変化を決定する際に、性能目的関数の一つまたは複数のコスト関数に関連付けられる一つまたは複数のコストパラメーターを更新し得る。上述のように、性能目的関数のコスト関数は、動作標的関数、排出関数、および/またはエンジン制約関数を含み得る。これらのタイプのコスト関数のそれぞれは、それらに関連付けられる一つまたは複数のコストパラメーターを有し得る。パラメーター更新モジュール50は、各コスト関数の相対的有意性を、アクチュエーター設定点の各候補グループに対して計算された総コストに調整するために、これらのコストパラメーターの相対的値を更新し得る。従って、パラメーター更新モジュール50は、最適化された超曲面を検索する際に、マップ更新モジュール40の戦略に時間変化調整を効果的に提供し得る。これにより、内燃エンジンコントローラー10は、制御マップの数を減少させて、異なる環境の範囲および異なる動作点で動作することが可能になる。
【0088】
例えば、パラメーター更新モジュール50は、後処理システムの再生が実施されると決定するために、後処理システムからのデータを利用し得る(例えば、再生が必要であるという後処理システムからの表示)。こうした表示は、DPFすす負荷が閾値を超えて上昇したという判定に基づいてもよい。従って、一つまたは複数のコストパラメーターは、マップ更新モジュール40が戦略を、例えば、低燃料消費量を優先する順位を、高排気温度を優先する順位に変更するように更新され得る。従って、パラメーター更新モジュール50は、後処理システムの再生をもたらすために、性能目的関数のコストパラメーターの一部を更新し得る。
【0089】
例えば、排出関数が提供されて、コストを関連する排気最小温度コストパラメーター(TL)を含む排気最小温度エンジン性能変数に割り当てることができる。後処理システムを再生成するために(例えば、ディーゼル粒子フィルター(DPF)を再生成するために)、パラメーター更新モジュール50は、コストパラメーターTLを無視できる値(例えば、-273.15℃)から高い値(例えば、400℃)に増加させ得る。内燃エンジンは、このような排気温度に達することができない場合があるが、この値からの偏差を最小化する解を見つけることが促され、それによって、後処理システムが再生成されるように、排気温度を増大させる。このように、コストパラメーターTLは、内燃エンジンからの排気ガス温度出力が増加する後処理熱管理モードをトリガーするために使用され得る。後処理熱管理が不要となった(例えば、再生プロセスが完了すると)とき、パラメーター更新モジュール50は、パラメーターTLを無視できる値(例えば、-180℃)に調整し得る。従って、後処理熱管理が不要な場合、EMTに対する排出関数の重要性は、他のコスト関数と比較して低減される。
【0090】
DPFが再生成されるべきかどうかを決定するために、DPFすす負荷を表すエンジン性能変数をパラメーター更新モジュール50に提供し得る。あるいは、DPFすす負荷は、内燃エンジンによって提供されるセンサーデータから、パラメーター更新モジュール50によって導出され得る。例えば、DPFすす負荷は、例えば、DPFすす負荷を推定するために測定されるDPF圧力差と比較して、所与の質量流における予想されるDPF差圧の比較など、DPFすす負荷を表すセンサーデータから、内燃エンジンコントローラーによって導出されるエンジン性能変数であり得る。
【0091】
一部の動作環境では、実際のDPFのすす負荷は、例えば、DPF上のすすの蓄積などによって変化し得る。パラメーター更新モジュール50は、DPFすす負荷が上限DPFすす負荷閾値を超えたと判定することに応答して、コストパラメーターTLを更新し得る。従って、DPFのすす負荷の変化は、内燃エンジンの動作状態の変化を表す。従って、いくつかの実施形態では、パラメーター更新モジュール50は、DPFすす負荷が上限DPFすす負荷閾値を超えて上昇するとき、DPFが再生されるべきであると決定し得る。従って、パラメーター更新モジュール50は、コストパラメーターTLを、無視できる値(例えば、-273.15℃)から、より高い値(例えば、400℃)に更新し得る。DPFが再生成されると(すなわち、DPFを焼き付けてDPFすす負荷を低減する)、パラメーター更新モジュール50は、パラメーターTLを無視できる値(例えば、-180℃)に調整し得る。DPFは、DPFすす負荷がより低いすす負荷閾値を下回っていると判定することに基づいて、パラメーター更新モジュール50によって再生成されるように決定され得る。代替的に、またはより低いDPFすす負荷基準に加えて、パラメーター更新モジュール50は、DPFが所定の期間が過ぎた後に再生されると決定し得る。内燃エンジンおよびDPFの特定の要件に応じて、他の実施形態における所定の閾値は変化し得る。例えば、DPFのすす負荷閾値は、少なくとも85%、90%、または95%とすることができる。
【0092】
他の実施形態では、パラメーター更新モジュール50は、後処理システムの再生を引き起こすために、コスト関数の相対的値を更新させ得る。このように、コスト関数の重みパラメーターは、低燃料消費量を優先する選択から、例えば、コスト関数に関連付けられる一つまたは複数の重みパラメーターを変更することによって、高排気温度を優先する選択へと更新され得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、パラメーター更新モジュール50は、性能目的関数のパラメーターを更新するための複数の関数を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、パラメーター更新モジュール50は、SCR触媒の温度(例えば、SCR入口温度)を表すセンサーデータに基づいて、排気最小温度TLを更新するためのSCR温度関数を含んでもよい。この関数は、代替として、または上述のようにDPFを熱的に管理すべきかどうかを決定するパラメーター更新モジュール50に加えて提供され得る。パラメーター更新モジュールのSCR温度関数は、SCR触媒温度(TSCR)を表すセンサーデータが閾値SCR低温度(kSCR1)を下回ると判定することに応答して、排気最小温度コストパラメーターTLを増加するように構成される。SCR触媒温度を増加するために、パラメーター更新モジュール50は、コストパラメーターTLを、無視できる値(例えば、-273.15℃)から高い値(例えば、400℃)に増加させ得る。このように、SCR温度関数はまた、後処理熱管理モードを提供するために、コストパラメーターTLを更新し得る。TLのより高い値は、TSCRが、TLは無視できる値に更新され得る、閾値上限温度を超えるまで維持され得る。効果的に、SCR温度関数は、SCR温度関数の結果としてTLへの更新の頻度を平滑化するために、kSCR1とkSCR2との間のヒステリシスの形態を組み込み得る。
【0094】
パラメーター更新モジュール50は、内燃エンジンの排出に関連する後処理システムから受信した排出データを記憶し得る。パラメーター更新モジュール50は、排出データを利用して、内燃エンジンの排出性能を監視し得る。いくつかの実施形態では、パラメーター更新モジュール50は、監視された排出性能に基づいて、排出関数のうちの一つまたは複数を調整し得る。従って、内燃エンジンコントローラー10は、さまざまな排出規制に適合する様式で内燃エンジン1を制御するように構成され得る。排出規制は、内燃エンジンの運転場所に応じて変化し得ることが理解されよう。事前に特定の排出目標に準拠するために個別に較正され得る、時間不変制御マップとは異なり、内燃エンジンのパラメーター更新モジュール50は、必要に応じて現地の排出規制に準拠するために更新され得る。従って、内燃エンジンコントローラー10の較正要件がさらに低減され得る。
【0095】
例えば、パラメーター更新モジュール50は、SCR変換効率の変化に応答して、排出関数(CostNOx)に関連付けられるコストパラメーターを更新し得る。パラメーター更新モジュール50は、SCR変換効率の変化に応答して、コストパラメーター標的上限TUを更新し得る。従って、パラメーター更新モジュール50は、テールパイプNOx量の任意の変動が減少または除去されるように、SCR効率の変動を相殺しようと、コストパラメーターTUを変化させ得る。
【0096】
一実施形態では、パラメーター更新モジュール50は、SCR変換効率の変動を考慮に入れた、コストパラメーターT
Uを更新するための標的更新関数を含み得る。本実施形態によれば、パラメーター更新モジュールは、NOX量について、所望の上限D
Uを決定するか、またはこれを含み得る。例えば、パラメーター更新モジュールは、制御される内燃エンジンに応じて、NOx量の所望の上限を用いて較正され得る。
図5の実施形態では、例えば、D
Uは4g/kWhであり得る。パラメーター更新モジュール50は、D
Uに基づいてT
Uを計算し、SCR変換効率(k
CE)に基づいてスケーリング係数を計算し得る。
T
U=D
U*k
CE
【0097】
スケーリング係数kCEは、予想されるSCR変換効率(例えば、エンジンモデリングモジュールによって想定される予想されるSCR変換効率)と、パラメーター更新モジュール50によってリアルタイムに決定される実際のSCR変換効率との間の差を反映し得る。スケーリング係数kCEは、実際のSCR変換効率が、予想されるSCR変換効率と等しいか、またはそれより大きい場合に対応する上限1を有し得る。スケーリング係数kCEは、実際のSCR変換効率がSCR変換効率閾値以下である場合、下限Xを有してもよく、Xは、1未満であり、約0.4より大きくてもよい。例えば、下限Xは、0.4、0.5、0.6、または0.7であり得る。従って、一実施形態では、標的更新関数は、NOx量に対する標的上限をSCR触媒が95%効率で動作しているときの4g/kWhから、SCR触媒が90%効率で動作しているときの2g/kWhにスケールし得る。これらの値の間の範囲にわたるスケーリングは、線形、または適切な関係の任意の他の形態であり得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、パラメーター更新モジュール50は、コストパラメーターを計算するのに使用されるスケーリング係数を更新することにより、監視された排出性能に基づいて、排出関数のうちの一つまたは複数を調整し得る。例えば、パラメーター更新モジュールは、監視された排出性能に基づいてスケーリング係数kCEを更新することによって、コストパラメーターTUを更新し得る。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示の内燃エンジンコントローラー10は、さまざまな構成で内燃エンジンを制御するように構成され得る。
【0100】
一つの用途は、
図1に示すように、内燃エンジンのアクチュエーター設定点を制御するためのものであり得る。内燃エンジンは、例えば、車両または機械の一部に取り付けてもよく、または発電機の一部を形成し得る。
【国際調査報告】