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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(54)【発明の名称】水性分散液組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/05 20060101AFI20220616BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20220616BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20220616BHJP
   C09D 131/04 20060101ALI20220616BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220616BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220616BHJP
   C09K 23/00 20220101ALI20220616BHJP
【FI】
C08J3/05 CER
C08K5/09
C08L31/04
C09D131/04
C09D5/02
C09D7/63
B01F17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021562028
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(85)【翻訳文提出日】2021-12-14
(86)【国際出願番号】 US2020020636
(87)【国際公開番号】W WO2020214257
(87)【国際公開日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/834,993
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ハッソ、ダグラス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クオ、インチョン
(72)【発明者】
【氏名】リポフスキー、ジェームス エム.
(72)【発明者】
【氏名】シガン、ルドウィク エス.
(72)【発明者】
【氏名】エスコバル マリン、カルロス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブズ、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4D077
4F070
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4D077AA03
4D077AB03
4D077AC05
4D077BA13
4D077CA12
4D077CA18
4D077DC27Y
4D077DD16X
4F070AA13
4F070AA28
4F070CA02
4F070CB02
4F070CB12
4F070FA05
4F070FB06
4F070FC05
4J002BB061
4J002BF021
4J002BF031
4J002EF006
4J002EF057
4J002EF086
4J002FD206
4J002FD207
4J002GG02
4J002GH00
4J038BA232
4J038CF021
4J038CF031
4J038JA38
4J038KA09
4J038NA24
4J038NA26
4J038PB04
4J038PC08
(57)【要約】
【解決手段】 (A)押出機を提供するステップと、(B)(i)少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマーと、(ii)少なくとも1つの相溶化剤と、分散剤との混合物を押出機に供給するステップと、(C)押出機内のステップ(B)の混合物に第1の水添加を供給して、ポリマー連続分散液を提供するステップと、(D)押出機内のステップ(C)の混合物に少なくとも1つの塩基を供給して、ステップ(C)の混合物中に存在する一切の利用可能な酸を中和するステップと、(E)押出機内のステップ(D)の混合物に第2の水添加を供給して、水連続分散液を形成する転相を提供するステップと、を含む押出機ベースの連続プロセスを使用して作製される水性分散液組成物を調製するための方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機ベースの連続プロセスを使用して作製される水性分散液組成物を作製するための方法であって、
(A)押出機を提供するステップと、
(B)(i)少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマーと、(ii)少なくとも1つの相溶化剤との混合物と、分散剤との混合物を前記押出機に供給するステップと、
(C)前記押出機内の前記ステップ(B)の混合物に第1の水添加を供給して、ポリマー連続分散液を提供するステップと、
(D)前記押出機内の前記ステップ(C)の混合物に少なくとも1つの塩基を供給して、前記ステップ(C)の混合物中に存在する一切の利用可能な酸を中和するステップと、
(E)前記押出機内の前記ステップ(D)の混合物に第2の水添加を供給して、水連続分散液を形成する転相を提供するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
成分である(i)少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマー、(ii)少なくとも1つの相溶化剤、および(iii)少なくとも1つの分散剤の各々が、別々に前記押出機に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分である(i)少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマー、(ii)少なくとも1つの相溶化剤、および(iii)少なくとも1つの分散剤が、一緒に前記押出機に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記押出機が、前記押出機の前端近くに第1の供給ゾーン、前記押出機の中央近くに第2の供給ゾーン、および前記押出機の後端近くに第3の供給ゾーンを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の供給ゾーンの温度が、90℃~150℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の供給ゾーンの前記温度が、90℃~150℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第3の供給ゾーンの前記温度が、80℃~150℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法によって生成された前記分散液が、室温で1年超の貯蔵性を有し、2ミクロン未満の粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマーが、エチレン酢酸ビニルコポリマーであり、総固形分の50重量パーセント~90重量パーセントの濃度で前記押出機に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの相溶化剤が、高度に二量体化されたロジン酸であり、総固形分の5重量パーセント~30重量パーセントの濃度で前記押出機に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの分散剤が、オレイン酸であり、総固形分の0.1重量パーセント~5重量パーセントの濃度で前記押出機に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の水添加への前記押出機に供給される水の量が、前記総固形分および第1の水添加の3.5重量パーセント~6重量パーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの塩基である成分(e)が、水酸化カリウムであり、前記成分の理論的酸価の80パーセント~120パーセント中和の濃度で前記押出機に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の水添加で前記押出機に供給される前記水の量が、前記総固形分、第1および第2の水添加の3.5重量パーセント以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記水性分散液組成物が、ワックスを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法によって作製された前記分散液組成物を含む、食品包装用または工業用包装用のヒートシールコーティング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシールコーティング(HSC)として有用な水性分散液組成物に関し、より具体的には、本発明は、連続押出機ベースの転相プロセスによって生成される、HSCとして有用な水性分散液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食品および工業用包装業界では、ポリマー包装は、典型的には、接着剤組成物を使用して低温(例えば、摂氏150度[℃]未満[<])でヒートシールされ、低温では、接着剤組成物は、(1)安定し、(2)適度な粒径および粒径分布を有し、(3)組成物を基材に容易に適用することが可能であり、基材上にコーティングして、均一なヒートシールコーティングを提供し得る粘度およびレオロジー特性を有し、(4)環境に配慮し、(5)食品の包装に好適であるように食品接触規制要件を満たしている必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これまで、様々なプロセス条件(例えば、高温および高圧)での様々な乳化プロセスを使用して、例えば、CN108084370A、CN108148215A、およびCN108102472Aに開示されているようなエマルジョン接着剤生成物として使用するための低温ヒートシール組成物が調製されている。さらに、連続押出機ベースの直接分散プロセスを使用して、水性エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVAコポリマー)ベースのヒートシール生成物を調製しており、ポリマー溶融ブレンドは、押出機の乳化ゾーンにおいて中和剤、水、および界面活性剤を含む水性ストリームと接触して、分散液を形成する。しかしながら、上の直接乳化プロセスは、例えば、このプロセスによって生成されたエマルジョンが広い粒径分布を有し、これによって、黄変、潜在的な貯蔵寿命の安定性の低下、粒子間の非均一な粒子組成などを引き起こし得るなどの問題のうちの1つ以上を抱えてきた。従来技術のエマルジョンおよびプロセスに関する上の既存の問題を考慮して、上の問題を有さないヒートシールコーティングとして使用することができる分散液組成物を提供することが望まれるであろう。
【0004】
本発明は、HSCとして有用な新規の水性酢酸ビニルコポリマー分散液組成物に関する。本発明の1つの好ましい実施形態によれば、酢酸ビニルコポリマーは、例えば、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー分散液組成物を含み得る。別の好ましい実施形態では、分散液組成物は、以下の成分:(a)少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマーと、(b)少なくとも1つの相溶化剤と、(c)中和後の分散剤としての少なくとも1つのアルキルカルボン酸と、(d)ポリマー連続分散液を提供するための第1の水添加と、(e)ポリマー連続系をもたらし続ける水添加とは別の利用可能な酸を中和するために添加された少なくとも1つの塩基と、(f)水連続分散液への転相を提供するための第2の水添加と、を含み得る。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、HSCとして有用な水性酢酸ビニルコポリマー分散液組成物を生成するための方法を含み、本方法は、連続押出機ベースの転相プロセスを使用して分散液を生成することを含む。本方法は、連続押出機を使用する直接乳化プロセスよりも少ない量(例えば、<1.5重量パーセント[重量%])の界面活性剤で、より小さな粒径およびより狭い粒径分布を有する分散液を生成することができるため、本方法は有利である。増加した量(例えば、2重量%超[>])の界面活性剤の使用は、界面活性剤の表面移動による耐水性の低下および耐久性能の低下など、得られる分散液生成物の適用性能に悪影響を有し得る。
【0006】
また別の実施形態では、本発明は、上の分散液組成物から調製されたHSC、および基材の表面の少なくとも一部分にHSCを含有する基材を含む。
【0007】
さらに別の実施形態では、本発明は、上のHSCでヒートシールされた食品および工業用包装材料、ならびに上のHSC組成物で調製されたヒートシール物品を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書における「相溶化剤」は、170℃で>1パスカル秒(Pa・s)の粘度を有し、樹脂1グラム当たり50ミリグラムの水酸化カリウム(KOH)(mg KOH/g樹脂)~200mg KOH/g樹脂の酸価を有し、100℃超の溶融点を有する樹脂を意味する。
【0009】
本明細書における「分散剤」は、脂肪酸、その場で生成された石鹸を意味する。
【0010】
本明細書における「中和剤」は、本明細書に記載のアルキルカルボン酸などの酸を中和するために使用される化合物を意味する。中和剤の例には、例えば、KOH、アンモニア、NaOH、アミン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0011】
本明細書における水は、本発明の水性分散液を作製する際に使用するのに適格な脱イオン(DI)水を意味する。
【0012】
広義の実施形態では、本発明の分散液組成物は、(a)少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマー、例えば、EVAと、(b)少なくとも1つの相溶化剤と、(c)少なくとも1つの分散剤と、(d)ポリマー連続分散液を提供するための第1の水添加と、(e)ポリマー連続系をもたらし続ける水添加とは別の利用可能な酸を中和するために添加された少なくとも1つの塩基と、(f)水連続分散液への転相を提供するための第2の水添加と、を含む。
【0013】
本発明の分散液組成物を調製するために使用される酢酸ビニルコポリマー化合物には、例えば、当技術分野で既知の1つ以上の酢酸ビニルコポリマー化合物が含まれる。例えば、コポリマー化合物には、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、酢酸ビニルエチレンコポリマー(VAE)、酢酸ビニルアクリレートコポリマーおよび酢酸ビニル-エチレン-スチレンコポリマーなどの他の酢酸ビニルコポリマーなど、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0014】
本発明の分散液組成物を調製するために使用されるコポリマー化合物の量は、例えば、一実施形態では総固形含有量の50重量%~90重量%、別の実施形態では80重量%~90重量%、およびまた別の実施形態では85重量%~90重量%である。
【0015】
酢酸ビニルコポリマー化合物によって示される有利な特性のいくつかの例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ホイル、および他の基材へのより良好な接着が含まれ得る。
【0016】
別の実施形態では、コポリマーは、例えば、モノマーのうちの1つとして(すなわち、酢酸ビニルコモノマーとのコモノマー)、酸素元素を含有するモノマーを使用することによって生成される。例えば、コモノマーは、エチレンなどのアルケンに加えて、以下の化合物のうちの1つ以上から選択される:酢酸ビニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルニトリルなど、およびそれらの混合物。
【0017】
酢酸ビニルコモノマーとともに使用される場合、コモノマー化合物の量は、例えば、一実施形態では5重量%~70重量%、別の実施形態では10重量%~50重量%、また別の実施形態では15重量%~40重量%、およびさらに別の実施形態では15重量%~30重量%である。
【0018】
本発明の分散液組成物を調製するために使用される相溶化剤化合物には、例えば、当技術分野で既知の1つ以上の相溶化剤化合物が含まれる。例えば、一実施形態では、相溶化剤化合物には、ロジン酸、ロジンエステル、テルペンフェノール、純粋なモノマー樹脂、およびフェノール樹脂、またはそれらの混合物が含まれる。
【0019】
一般に、相溶化剤化合物は、一実施形態では170℃で>1Pa・s、別の実施形態では1Pa・s~20Pa・s、また別の実施形態では5Pa・s~8Pa・sの粘度を有する。相溶化剤の粘度は、従来の粘度計、例えば、Brookfieldサーモセルを使用するなどの任意の周知の手段によって測定される。
【0020】
一般に、相溶化剤化合物は、一実施形態では10mg KOH/g樹脂~250mg KOH/g樹脂、別の実施形態では50mg KOH/g樹脂~200mg KOH/g樹脂、また別の実施形態では100mg KOH/g樹脂~200mg KOH/g樹脂、さらに別の実施形態では125mg KOH/g樹脂~200mg KOH/g樹脂、およびさらにまた別の実施形態では140mg KOH/g樹脂~180mg KOH/g樹脂の酸価を有する。相溶化剤の酸価は、任意の従来の滴定法によって測定され得る。
【0021】
相溶化剤化合物の溶融点には、例えば、一実施形態では40℃超、別の実施形態では50℃~200℃、また別の実施形態では100℃~200℃、およびさらに別の実施形態では120℃~180℃の溶融点が含まれる。相溶化剤の溶融点は、任意の周知の手段によって測定され得る。例えば、本発明の相溶化剤の溶融点は、従来の示差走査熱量測定(DSC)法によって測定される。
【0022】
本発明の分散液組成物を調製するために使用される相溶化剤化合物の量には、例えば、一実施形態では総固形含有量の5重量%~30重量%、別の実施形態では9重量%~20重量%、また別の実施形態では9重量%~15重量%、およびさらに別の実施形態では9重量%~12重量%が含まれる。
【0023】
相溶化剤化合物を使用することの利点のいくつかには、例えば、相溶化剤は、EVAポリマーと分散剤との容易な相互作用を提供し、相溶化剤は、EVAポリマーと基材との容易な相互作用を提供し、その結果、結合性能の向上が起こり得ることが含まれる。
【0024】
本発明の分散液組成物を調製するために使用される分散剤または分散剤化合物には、例えば、当技術分野で既知の1つ以上の分散剤が含まれる。例えば、一実施形態では、分散剤は、アルキルカルボン酸、オレイン酸(脂肪酸、その場で生成された石鹸)、二量体酸、各酸当たり>12~<20の炭素原子を有する他のアルキルカルボン酸、およびそれらの混合物を含む。
【0025】
本発明の分散液組成物を調製するために使用される分散剤の濃度には、例えば、一実施形態では配合物の<2重量%固形分、別の実施形態では<1.5重量%、また別の実施形態では<1重量%、さらに別の実施形態では0.66重量%~1重量%、およびさらにまた別の実施形態では0.66重量%~0.75重量%が含まれる。
【0026】
分散剤が適切に選択され、適切な量である場合に分散剤によって示される有利な特性のいくつかの例には、(1)分散液中のポリマー粒子に安定性を提供すること、および(2)基材に分散液の表面張力と湿潤能力とのバランスを提供することが含まれる。
【0027】
本発明の分散液組成物を作製するための方法は、本組成物への水の1つ以上の添加を含み得る。例えば、1つの好ましい実施形態では、第1の水添加が、ポリマー連続分散液を形成するのに十分な量で本組成物に添加される。
【0028】
例えば、第1の水添加の量は、総固形分および水に基づいて、一実施形態では3.5重量%~6重量%、別の実施形態では3.5重量%~5重量%、およびまた別の実施形態では3.5重量%~4.5重量%である。
【0029】
本発明の分散液組成物は、本組成物中の利用可能な酸を中和するための、かつポリマー連続系をもたらし続ける水添加と別の塩基を含む。本発明の分散液組成物を調製するために使用される塩基化合物には、例えば、当技術分野で既知の1つ以上の塩基が含まれる。例えば、中和剤または塩基化合物には、水酸化カリウム水溶液(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、アンモニア、およびそれらの混合物が含まれる。1つの好ましい実施形態では、塩基化合物は、例えば、10重量%~90重量%、別の実施形態では20重量%~90重量%、およびまた別の実施形態では40重量%~50重量%の濃度を有するKOHである。
【0030】
本発明の分散液組成物を調製するために使用される塩基の量は、例えば、一実施形態では、成分の理論的酸価の70パーセント(%)~130%の中和、別の実施形態では80%~120%、また別の実施形態では90%~110%、およびさらに別の実施形態では90%~100%である。
【0031】
塩基によって示される有利な特性のいくつかの例には、ポリマー粒子を安定化するための中和が含まれ得る。
【0032】
前述のように、本発明の分散液組成物を作製するための方法は、本組成物への水の1つ以上の添加を含む。好ましい実施形態では、第2の水添加が、例えば、水連続分散液に相転するのに十分な量で本組成物に添加される。
【0033】
例えば、第2の水添加の量は、(1)総固形分、(2)第1の水添加、および(3)第2の水添加に基づいて、一実施形態では>3.5重量%、別の実施形態では20重量%~90重量%、また別の実施形態では30重量%~70重量%、およびさらに別の実施形態では40重量%~60重量%である。
【0034】
本発明の分散液組成物はまた、他の追加の任意選択の化合物または添加剤を含み得、そのような任意選択の化合物は、成分(a)~(f)のうちの1つ以上と組み合わせて本組成物に添加され得る。本発明の分散液組成物を調製するために使用され得る任意選択の添加剤または薬剤には、例えば、それらの使用または機能について当技術分野で既知の1つ以上の任意選択の化合物が含まれる。例えば、任意選択の添加剤には、消泡剤、レオロジー調整剤、湿潤剤、およびそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の分散液組成物を調製するために使用される場合、任意選択の化合物の量には、例えば、一実施形態では0重量%~5重量%、別の実施形態では0.001重量%~3重量%、また別の実施形態では0.01重量%~2重量%、およびさらに別の実施形態では0.1重量%~1重量%が含まれる。
【0036】
一般の実施形態では、本発明の分散液組成物を作製するための方法は、(a)少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマー、例えば、EVAと、(b)少なくとも1つの相溶化剤と、(c)少なくとも1つの分散剤と、(d)ポリマー連続分散液を提供するための第1の水添加と、(e)ポリマー連続系をもたらし続ける水添加とは別の利用可能な酸を中和するために添加された少なくとも1つの塩基と、(f)水連続分散液への転相を提供するための第2の水添加と、を混和する、例えば、溶融ブレンドするステップを含む。
【0037】
一般に、均質な溶融ブレンドを形成するための本発明で有用なプロセス装置および補助機材には、熱可塑性樹脂を溶融ブレンドするために典型的に使用される任意の手段および任意の条件下が含まれ得、押出機ベースのプロセスに精通している人には知られている。例えば、本発明で使用され得る装置には、熱交換器、背圧調整器、溶融ポンプ、ギアポンプ、ニーダー、BANBURY(登録商標)ミキサー、ローターステーターミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機などが含まれる。
【0038】
さらに、プロセス機材をセットアップするための様々なスキームが使用され得る。例えば、一実施形態では、第1の混合装置は、第2の混合装置と組み合わせて使用される。例えば、いくつかの実施形態では、第1の混合装置は、例えば、ニーダー、BANBURY(登録商標)ミキサー、単軸スクリュー押出機、または多軸スクリュー押出機であり、第2の混合装置は、例えば、複数の加熱ゾーンを有する二軸スクリュー押出機などの押出機である。例えば、他の実施形態では、第1の混合装置は、例えば、二軸スクリュー押出機などの押出機であり、第2の混合装置は、ローターステーターミキサーである。
【0039】
別の実施形態では、単一の押出機、例えば、背圧調整器、溶融ポンプ、またはギアポンプなどの補助機材を備えた複数の加熱ゾーンを有する二軸押出機を使用して、本発明の水性分散液組成物を生成する。例えば、様々な実施形態では、押出機は、例えば、(1)搬送、溶融、および混合ゾーン、(2)乳化ゾーン、ならびに(3)希釈ゾーンを含む様々なゾーンを有し得、異なるゾーンは、所定の温度で操作され得る。いくつかの実施形態では、押出機の搬送、溶融、および混合ゾーン部分は、長さ「L」および直径「D」の直径のバレルを有し得、使用される長さ対直径比(L/D)は、例えば、1つの好ましい実施形態では、12対1以上、例えば、12対1~60対1である。いくつかの好ましい実施形態では、本発明で使用される上記の押出機ベースのプロセスは、例えば、Escobar Marinらによって2017年10月31日に申請された米国仮特許出願第62/579,354号にさらに詳細に記載されている。
【0040】
別の実施形態では、水性分散液組成物は、例えば、以下の一般方法による押出機ベースの連続プロセスを使用して調製される:本発明の組成物の上の成分(a)~(f)を、例えば、制御された速度のフィーダーを使用する押出機に供給する。上記のように、任意の従来の押出機を本発明で使用することができる。一実施形態では、押出機には、例えば、上記のようなL/D比を有する直径25ミリメートル(mm)の二軸スクリュー押出機が含まれる。成分(a)~(f)のグラム/分(g/分)での供給量は、例えば、一実施形態では60g/分~150g/分である。本発明の成分は、押出機を通って送られ、溶融されて、液体溶融材料を形成する。
【0041】
押出機の温度プロファイルは、所定の温度まで上昇させることができる。例えば、上昇温度は、一実施形態では70℃~240℃、別の実施形態では120℃~150℃である。次に、水は、所定の速度で、例えば、一実施形態では1.0g/分~2.0g/分の速度で押出機に供給される。給水に続いて、中和剤が押出機の第2の導入部位を使用して、所定の速度で、例えば、一実施形態では1.4g/分~2.4g/分の速度で押出機に供給される。転相水は、中和剤の後、押出機の入口位置を通って押出機に供給され、水は、所定の速度で、例えば、一実施形態では1.0g/分~8.0g/分の速度で押出機に供給される。希釈水もまた、所定の速度で、例えば、一実施形態では20g/分~90g/分の速度で、二つの別々のポンプを使用して押出機の1つまたは2つの入口位置(第1および第2の入口位置)で押出機に供給される。押出機の温度プロファイルは、押出機の端部近くで、例えば、100℃未満の温度に戻して冷却される。押出機出口で、背圧調整器を使用して、押出機バレル内の圧力を、蒸気形成を低減させるのに適合された圧力に調整する。一般に、一実施形態では、押出機バレル内の圧力は、例えば、2メガパスカル[MPa]~4MPaである。
【0042】
上の方法ステップの後、得られた水性分散液生成物は、押出機から出る。次に、1つの好ましい実施形態では、水性分散液は、200ミクロン(μm)のフィルターを通して濾過される。得られた濾過された水性分散液は、重量パーセント(重量%)で測定された固形含有量を有し、分散液の固形粒子は、ミクロン単位で測定された体積平均粒径を有する。例えば、分散液の固形含有量は、一実施形態では30重量%~50重量%であり、分散液中の粒子の粒径は、一実施形態では0.9μm~2.0μmである。いくつかの実施形態では、粒径モードも記録され得る。水性分散液の固形含有量は、従来の機器、例えば、Ohaus(登録商標)MB45赤外線固形分析器(Ohaus Corporationから入手可能)を使用して測定され、水性分散液の固形粒子の粒径もまた、従来の機器、例えば、Coulter(登録商標)LS-230粒径分析器(Beckman Coulter Corporationから入手可能)を使用して測定される。1つの好ましい実施形態では、分散液の固形含有量および固形粒子の平均粒径(PS)は、実施例の表IVに記載される通りである。
【0043】
一実施形態では、水性分散液組成物は、例えば、ワックスを含まない水性分散液組成物である。好ましい実施形態では、ワックスを含まない水性分散液組成物は、例えば、押出機ベースの連続プロセスを使用して作製される。方法ステップは、例えば、
(A)押出機を提供する方法ステップと、
(B)(i)少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマーと、(ii)少なくとも1つの相溶化剤と、分散剤との混合物を押出機に供給する方法ステップと、
(C)押出機内のステップ(B)の混合物に第1の水添加を供給して、ポリマー連続分散液を提供する方法ステップと、
(D)押出機内のステップ(C)の混合物に少なくとも1つの塩基を供給して、ステップ(C)の混合物中に存在する一切の利用可能な酸を中和する方法ステップと、
(E)押出機内のステップ(D)の混合物に第2の水添加を供給して、水連続分散液を形成する転相を提供する方法ステップと、を含む。
【0044】
別の実施形態では、上の方法のステップ(B)は、2つのステップに分離することができる。例えば、(i)少なくとも1つの酢酸ビニルコポリマーおよび(ii)少なくとも1つの相溶化剤を最初に一緒に混合して、混合物を形成し、次に混合物をストリームとして押出機に供給し、少なくとも1つの分散剤を、別々のストリームとして押出機に供給する。
【0045】
上記の方法に従って調製された本発明の分散液組成物は、例えば、小さい粒径および狭い粒子分布を含むいくつかの有益な特性を有し、そのような特性は、例えば、良好なコーティング外観、良好なコーティング均一性、より良好な貯蔵性、および好ましい固形含有量を有利にもたらす。
【0046】
例えば、本発明の分散液の固形含有量は、一実施形態では20%固形分~80%固形分、別の実施形態では30%固形分~70%固形分、また別の実施形態では35%固形分~55%固形分である。分散液の固形含有量は、例えば、Ohaus MB45赤外線水分分析器(Ohaus Corporationから入手可能)または熱オーブンによって測定され得る。好ましい実施形態では、分散液の固形含有量は、上の水分分析器によって測定される。
【0047】
例えば、本発明の分散液の粘度特性は、一実施形態では、10ミリパスカル秒(mPa.s)~100mPa.s、別の実施形態では20mPa.s~60mPa.s、およびまた別の実施形態では30mPa.s~50mPa.sである。分散液の粘度特性は、例えば、Brookfield DV-II+(Brookfieldから入手可能)を使用して測定される。
【0048】
例えば、本発明の分散液中の粒子の粒径は、一実施形態では、0.2ミクロン(μm)~6μm、別の実施形態では0.3μm~4μm、およびまた別の実施形態では0.4μm~2μmである。分散液の粒径は、任意の周知の粒径測定機器によって測定され得る。一実施形態では、分散液の粒径は、例えば、Beckman Coulter LS13 320機器を使用して測定される。
【0049】
上の特性に加えて、分散液組成物の性能は、例えば、貯蔵性の観点から評価され、45℃での加速温度エージングおよび冷蔵条件で試験される。例えば、本発明の分散液の貯蔵性は、分散液の毎週の相分離および粘度を記録することによって、(1)冷蔵(4℃)環境および(2)加熱(45℃)オーブンでのエージングによって評価される。分散液が沈殿し、2つの層に分離するか、100%を超える粘度の大幅な変化が起きるか、またはゼラチン状になる(すなわち、ゲル化が起こる)場合、分散液の貯蔵性は不安定である。
【0050】
次に、分散液の全体的な安定性を、バッチプロセスを使用して生成された市販製品と比較することができる。一実施形態では、分散液は、例えば、バッチプロセス製品と比較して、「良好な」貯蔵性または「より悪い」貯蔵性を有すると評価される。例えば、「良好な」貯蔵性は、分散液の性能がバッチプロセスの市販製品と同じか、より良好であることを意味し、「より悪い」貯蔵性は、分散液の性能がバッチプロセスの市販製品よりも悪いことを意味する。
【0051】
前述のように、本発明の分散液組成物が作製されると、分散液組成物は、様々な用途のためのHSCとして使用され得る。例えば、一実施形態では、HSC分散液組成物を使用して、食品包装用のフィルムなどの基材上にHSCを生成することができ、次にフィルム基材をヒートシールすることができる。
【0052】
HSC分散液組成物は、グラビアコーティング、マイヤーロッドコーティング、カーテンコーティング、エアナイフコーティングプロセス、フレキソ印刷プロセス、およびオフセット印刷プロセスなどの様々な従来のコーティング方法を使用して基材に適用され得る。
【0053】
本発明の分散液組成物は、食品および工業用包装をヒートシールためなどの様々な用途に有利に使用され得るHSCを提供する。本発明のHSCはまた、例えば、良好なコーティング外観、高い結合強度、および高いホットタック、および黄変がないことを含む、いくつかの有益な特性を示す。
【0054】
例えば、一実施形態では、本発明のHSC分散液から形成されたコーティングの外観は、本発明のコーティングを視覚的に観察し、PETフィルム上にコーティングされた本発明のHSCをバッチプロセスHSCと比較することによって評価される。HSCの外観は、例えば、以下の評価システムに従って報告され得る:目視観察によって決定される場合の「良好な」コーティング外観を有するHSC対目視観察によって決定される場合の「油性」コーティング外観を有するHSC。「良好な」コーティング外観を有するHSCは、許容範囲の光沢および良好な滑らかなコーティングを有することが観察されたコーティングであり、「油性」コーティング外観は、醜い油性外観を有することが観察されたHSCであり、許容範囲ではない。さらに、従来のバッチプロセスを使用して作製されたHSCはまた、「黄変」の外観を有さないが、代わりにクリアコーティングを有することが観察され得る本発明に従って作製されたHSCと比較して、目視観察によって望ましくない「黄色」の色または不明瞭に見える可能性がある。
【0055】
例えば、一実施形態では、本発明のHSCのシーリング性能は、結合強度に関して、バッチプロセスよりも良好である。例えば、本発明のHSCの結合強度は、一実施形態ではバッチプロセスよりも20%~300%良好であり、別の実施形態ではバッチプロセスよりも50%~200%良好であり、また別の実施形態ではバッチプロセスよりも60%~150%良好であり、およびさらに別の実施形態ではバッチプロセスよりも70%~100%良好である。HSCのシーリング特性は、例えば、本明細書の以下の実施例に記載されるような結合試験によって測定される。
【0056】
例えば、一実施形態では、本発明のHSCのホットタック特性は、バッチプロセスよりも良好である。例えば、本発明のHSCのホットタック特性は、一実施形態ではバッチプロセスよりも10%~200%良好であり、別の実施形態ではバッチプロセスよりも20%~150%良好であり、また別の実施形態ではバッチプロセスよりも25%~100%良好であり、およびさらに別の実施形態ではバッチプロセスよりも30%~80%良好である。HSCのホットタック特性は、例えば、ASTM F1921、試験方法Bに従って200ミリメートル/秒(mm/秒)の速度で操作される温度制御されたインストロン試験機器を使用して測定される。
【0057】
前述のように、分散液組成物は、食品包装物品用のHSCを製造するために使用され得る。分散液組成物が使用され得る他の用途には、例えば、工業用スキン包装、および医療用包装用途などが含まれる。
【実施例
【0058】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。すべての部および割合は、特に指示がない限り重量である。
【0059】
以下の本発明実施例(Inv.Ex.)および比較例(Comp.Ex.)で使用される様々な用語および呼称、ならびに原材料または成分を表Iに記載する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【0060】
比較例A~D
分散液を調製するための一般手順
比較例A~Dでは、以下の一般手順を使用して水性分散液を調製した。
表IVに記載の成分1~3を、制御された速度のフィーダーを使用して直径25mmの二軸スクリュー押出機に供給し、表IVに記載されるように、g/分単位の供給量を使用した。成分1~3を押出機に通し、溶融させて、液体溶融材料を形成した。
【0061】
押出機温度プロファイルを、表IVの「ポリマー溶融ゾーン」欄に記載の温度まで上昇させた。水および/または中和剤を一緒に混合し、初期の水導入部位での中和のために表IVに記載の供給量で押出機に供給した。次に、希釈水を、表IVに記載の供給量で、2つの別々のポンプを使用して、1つの入口位置または2つの別々の入口位置(第1および第2の入口位置)で押出機に供給した。押出機の温度プロファイルを押出機の端部近くで100℃未満の温度に戻して冷却した。押出機出口で、背圧調整器を使用して、押出機バレル内の圧力を、蒸気形成を低減させるのに適合された圧力に調整した。
【0062】
水性分散液生成物が押出機から出た。水性分散液を、200μmのフィルターを通して濾過した。得られた濾過された水性分散液は、重量パーセント(重量%)で測定された固形含有量を有し、分散液の固形粒子は、ミクロン単位で測定された体積平均粒径(V平均PS)を有し、表IVに記録した。場合によっては、粒径モードも記録した。水性分散液の固形含有量を、赤外線固形分析器を使用して測定し、水性分散液の固形粒子の粒径を、Coulter LS-230粒径分析器(Beckman Coulter Corporationから入手可能)を使用して測定した。分散液の固形含有量および固形粒子の平均粒径(PS)を表IVに記載する。
【0063】
実施例1および2、ならびに比較例E~I
本発明実施例および2、ならびに比較例E~Iでは、押出機の温度プロファイルを表IVの「ポリマー溶融ゾーン」欄に記載の温度まで上昇させた後に、水および中和剤を押出機に別々に供給したことを除いて、上の比較例A~Dに記載の分散液を調製するための一般手順を使用して、水性分散液を調製した。表IVに記載の速度で水を押出機に供給し、続いて、表IVに記載の速度で、第2の導入部位で中和剤を供給した。中和剤の後、押出機の入口位置で押出機に転相水を供給した。
【0064】
特性測定
固形含有量測定
分散液の固形含有量をOhaus MB45赤外線水分分析器によって測定した。分析器を150℃に設定し、測定完了を90秒(s)で<1ミリグラム(mg)の損失に設定した。
【0065】
粘度測定
分散液の粘度をBrookfield DV-II+によって試験した。RVスピンドルを使用して、毎分20回転(RPM)および25℃で測定を行った。
【0066】
粒径測定
分散液の粒径測定をBeckman Coulter LS 13 320機器で実行した。DI水を含むユニバーサル液体モジュールを機器に取り付け、データを1.332の流体屈折率、ならびに1.5実数および0虚数の試料屈折率を有する光学モデルを使用して分析した。
【0067】
性能評価試験
分散液組成物のすべての性能を、分散液の性能をバッチプロセスによって作製された市販製品の性能と比較することによって評価した。「バッチプロセスの市販製品」は、The Dow Chemical CompanyからAdcote37JD1198として入手可能である。
【0068】
分散液試料を、マイヤーロッドドローダウンバーとおよびドローダウン法を使用して手作業によって基材上にコーティングし、乾燥コーティング重量を約5.5~6.0g/mに調整した。ドローダウン後、湿潤コーティングを約2分(分)間、オーブン中で90℃で乾燥させた。
【0069】
貯蔵性
分散液の貯蔵性を、毎週の相分離および粘度を記録することによって、(1)冷蔵(4℃)環境および(2)加熱(45℃)オーブンエージングで評価した。分散液の各々の全体的な安定性をバッチプロセスの市販製品と比較し、結果を次の評価システムに従って報告した:「良好な」貯蔵性を有する分散液は、分散液の性能がバッチプロセスの市販製品と同じであることを意味し、「より悪い」貯蔵性は、分散液の性能がバッチプロセスの市販製品よりも悪いことを意味した。
【0070】
コーティングの外観
PETフィルム上の分散液から形成されたHSCの外観を視覚的に観察し、Adcote37JD1198と比較した。コーティングの外観を次の評価システムに従って報告した:「良好な」コーティング外観を有するHSCは、許容範囲の光沢および良好な滑らかなコーティングを有することが観察され、「油性」コーティング外観は、醜い油性外観を有することが観察され、許容範囲ではなかった。
【0071】
ヒートシール基材
ヒートシール基材を、以下の方法を使用して、プライマー基材を第2の基材にヒートシールすることによって調製した。
【0072】
プライマー基材は、市販の92gのPET、プレラミネートPET-アルミホイル側を含んだ。
【0073】
第2の基材は、市販の92gのPET、ポリ塩化ビニル(PVC)シート4ミル、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)シート4ミル、低密度ポリエチレン(LDPE)シート4ミル、アルミニウム(Al)ホイルを含んだ。
【0074】
本発明の分散液組成物を、ハンドドローダウン手順を使用してプライマー基材の表面上にコーティングした。次に、湿潤分散液組成物でコーティングしたプライマー基材を、第2の基材と接触させた。湿潤コーティングしたプライマー基材および第2の基材を90℃のオーブンで約2分間乾燥させた。乾燥対象コーティング重量を5.5g/m~6.0g/mに調整した。
【0075】
ヒートシール基材の結合試験
ヒートシール基材の結合試験を、2.76バールの圧力、1.0秒の時間、および2つの異なる温度(93.33℃および121.11℃)で実施した。
【0076】
結合試験を、254mm/分の速度で、25.4×25.4mmのシールされた領域のストリップを使用して実施した。各試料について3つのストリップを試験し、平均値を報告した。
【0077】
ヒートシール基材のホットタック
ヒートシール基材のホットタック測定を、ASTM F1921、試験方法Bに記載の方法に従って、200mm/秒の速度で温度制御されたInstron(登録商標)機器(Instronから入手可能)を使用して実施した。
【0078】
貯蔵寿命の安定性
貯蔵寿命の安定性を評価するために、様々な期間の間、試料を4℃(冷蔵庫内)に保管し、試料を45℃(オーブン内)に保管した。試料の貯蔵寿命の安定性を目視観察によって試験し、試験の結果を表Vに要約する。
【表5】
【0079】
様々な期間の間、試料を4℃(冷蔵庫内)に保管し、試料を45℃(オーブン内)に保管した後の、分散液の粘度に関する貯蔵寿命の安定性を表VIに要約する。
【表6】
【0080】
比較例Hおよび比較例Iの試料は、かすんだ油性コーティングの外観を生成したため、比較例Hおよび比較例Iの試料に対してそれ以上の結合強度試験を実施しなかった。
【表7】
【表8】
【表9】

【国際調査報告】